ドロシー「またハニートラップかよ…って、プリンセスに!?」

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692 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/04/11(木) 01:28:23.76 ID:vpROMSsr0
マティルダ「……私、せっかく「ファーム」に入れたんだから、一流のエージェントを目指したいと思っているんです///」あどけない子供っぽさを感じさせるような笑みを浮かべて、頬を赤く染めた……

パープル「まぁ、立派な心がけね♪」

マティルダ「ありがとうございます……でも、そう思って頑張ってはいるんですけどなかなか結果に結びつかなくって」

パープル「そうなの?」

マティルダ「はい。例えばミス・アンジェのように顔色ひとつ変えずに課題をこなそうと思ってもうっかりミスをしてしまうし……」

パープル「あらあら」

マティルダ「ミス・ドロシーみたいに射撃や格闘でいい成績を出そうとしても、射撃はまともに中心に当たってくれないですし、格闘をすれば攻撃が空を切るかちっとも効果がないかのどっちかで……」

パープル「……続けて?」

マティルダ「ミス・パープルみたいに相手をとろけさせるようなキスやえっちをしようとしても「くすぐったい」って言われるか「なんだか妹がじゃれついてきているみたい」って言われちゃうし……私も教官みたいなすべすべの髪とか、フランス人形みたいな綺麗なブルーの瞳だったら良かったのに……ミス・パープル、どうやったら私は一流エージェントらしくなれるでしょうか?」

パープル「なるほど、ずいぶん悩んでいたのね……でも心配はいらないわ、貴女には良いところがいっぱいあるもの♪」髪を撫で、ほっぺたに優しいキスをする……

マティルダ「そうでしょうか?」

パープル「ええ、貴女のその純真無垢な可愛らしさは何物にも代えがたい立派な特質よ? エージェントにはさまざまな性格、偽装が与えられるものだというのは覚えているでしょう?」

マティルダ「はい」

パープル「冷静で目立たず、さらりと会話を盗み聞きするようなタイプもいれば、私みたいな甘い言葉で相手を誘惑するエージェントや、常に派手な交友関係をひけらかして敵をあざむくエージェントもいる……でも、似たようなタイプのエージェントばっかりでは活動できる範囲も限られてしまうし、なによりすぐ敵方にバレてしまう」

マティルダ「つまり、私でもエージェントとして役に立てるってことでしょうか?」

パープル「もちろん。それどころか、むしろ貴女みたいなタイプは情報部にとってはとっても重宝する存在なの。これからもくじけずに頑張って行けば、きっとひとかどの情報部員になれるわ♪」

マティルダ「……ミス・パープルにそう言われたらやる気が出てきました♪」

パープル「そう、良かったわ……私たちは教官なんだから、分からないことや相談したいことがあったら遠慮せずに聞きに来ていいのよ? その時は、美味しい紅茶とお菓子を用意してあげる♪」そう言いながらずっしりした乳房を下から持ち上げるようにして、マティルダの顔に押しつけた……

マティルダ「ふぁ……い///」

パープル「それじゃあ次の娘が待っているから……ね?」人差し指をマティルダの唇にあてがい、チャーミングな笑みを浮かべてみせた……

マティルダ「はい、ありがとうございました♪」

パープル「ええ……またいつでもいらっしゃいね?」

………

…しばらくして…

パープル「……と言うことがありまして」

ブラック「ああ、あの娘か……真面目なことは確かだが射撃全般や爆発物の取り扱いに関しては絶望的だから、その方面では使い物にはならんな。これだけ過程が進んだ段階でも、まだピストルを持つのにおっかなびっくりと言った具合だ」

ホワイト「ふーむ、彼女は徒手格闘も苦手でね。小柄で腕力がないのもあるが、どうにも優しすぎて相手に対する攻撃性が発揮できないようだね……ブルー、君は?」

ブルー「ナイフもダメだ。カカシ相手の訓練で自分の手を切ってしまうようではな……やる気があるのは結構だが、あのセンスのなさではモノにならないだろう」

スカーレット「追跡と監視も、あのちょこまかした歩き方では見つけてくれと頼んでいるようなものでして。本人はしごく真面目でいい娘なのですが……」

マーガレット「ええ、本当にいい子なのですが……いかんせん、お洒落なドレスもお化粧もあまり似合わないのが残念ですわ」衣服や化粧、身ごなしといった分野を担当するマドモアゼル・マーガレットがフランス流に肩をすくめた……

グレイ「同感ですね。マナーに関しては決して悪くはないのですが、どうにも貴族の令嬢には見えません……よくて「庶民のいい子」どまりです」

ブラック「まったく、候補生不足なのか知らんが、上層部はなんであんな娘を候補生として送り込んできたのやら」

ブルー「あれではファームを出ても、誰も引き受けたがらないような地味な監視任務や連絡役にされるのがせいぜいだろうな……」

ブラウン「……」

ブルー「……何か意見がおありのようですな、ミセス・ブラウン?」

ブラウン「まぁ「意見」というほどの物ではないけれども、ちょっとね……」

ホワイト「ミセス・ブラウン、貴女ほどの元エージェントが抱いた感想だ。是非とも拝聴させていただきましょう」

ブラウン「ミスタ・ホワイト、こんなおばさんをからかっちゃいけませんよ……あのね」

………

693 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/04/24(水) 02:11:24.91 ID:zZwpKeq00
ブラウン「どんなエージェントでもそれぞれ「使いどころ」というのがあるものよ」

スカーレット「使いどころ、ですか」

ブラウン「ええ……確かにマティルダは「良い子」というだけで、いまのところ訓練生としてこれといった取り柄があるわけではないわ」

ブラック「そこなのだ、ミセス・ブラウン……私だって彼女が無事に訓練を終えて、いつかひとかどのエージェントとして活躍してもらいたいという気持ちはある……だが、この世界ではただの「良い子」にはロクな任務が与えられない事くらいご存じのはずだ。それだったらいっそ早めにあきらめさせて、もっと有意義な方面で活動してもらった方が良いのではないか?」

ホワイト「同感だね。私の同期にもひとり、世間で言う「いい人」に該当するような者がいたが、退屈で実りのないひどい任務ばかり与えられて、みんなに「彼はいいやつなんだが……」と言われ続け、いつしか現場から退けられてしまったよ……ミス・マティルダにはああなって欲しくはないね」

ブラウン「そうね……でもあの子のいかにも「小市民」らしいところ、私は活かしようがあると思っているわよ?」

パープル「まぁ、ミセス・ブラウンがそうおっしゃるということはよっぽどなのね♪」

ブラウン「こらこら、わたしを口説いたって何も出ないわよ?」

パープル「あら、残念」

スカーレット「それで、ミセス・ブラウンのおっしゃる「小市民らしいところ」とはなんでしょう?」

ブラウン「ああ、それね……あの子とおしゃべりしているとね、私は不思議となごやかな気持ちになるのよ。暖炉で暖められた部屋にいて、お気に入りの椅子に腰かけ、テーブルには甘いお茶とケーキがある……そんな気分にね」

パープル「言いたい意味は分かります。どうもあの子と一緒にいると、小さい妹を見ているような気分になります……それだけに、ベッドに入ってもみだらな気分にならないのですけれど♪」

ホワイト「邪気や殺気がないというのは確かだね……生まれ持っての小動物らしさというか「良い子」という呼び方がしっくりくる」

ブラウン「そこなのよ。あの子なら見ず知らずの方のお葬式に参列してもきっと涙を流すでしょうし、たった一ペニーだってお釣りをごまかしたりしない」

ブラック「しかし、それこそエージェント候補生として不適当だと証明しているようなものではないか……バカみたいに法律を破ってまわれとはいわないが、目的のためにはどんな手段もいとわないのが情報部員だ。それができないようでは内勤の使い走りがいいところだ」

ブラウン「ミスタ・ブラック、あなたの言う通りね。そして私が言いたいのもまさにそこなのよ」

ブラック「分からんね。射撃はできない、格闘もダメ。尾行も下手なら色仕掛けもできず、暗号解読も遅いときた……どう使い道がある?」

シルバー「……ミセス・ブラウン、どうやら貴女の言いたいことが分かってきたような気がするよ」

ブラウン「ふふ、そうでしょうとも……つまりね、あの子はおおよそ「スパイとはかくあるべし」の正反対みたいな存在なのよ。それだけにあの子がエージェントだと思うような人間はまずいない。人物調査をしたって返ってくる答えは「冗談言っちゃいけません、あんな良い子がスパイなわけないでしょう?」だと確信できるわ」

ホワイト「いいたいことは分かるが、それにしても彼女は良い子すぎるね。経済的にはごく普通ながらも温かな家庭で両親に愛され、世の中の辛酸を味わわずに済むように育てられた……あの子からはそんな雰囲気を感じるよ」

???「慧眼だな、ホワイト」

ホワイト「おや、あなたでしたか……熱心ですね」

L「この先に備えるためにも我々にはエージェント候補生が必要だからな……ありがとう」ミセス・ブラウンからお茶のカップを受け取ると礼を言って、空いている椅子に腰かけた……

ブラウン「それで、先ほどミスタ・ホワイトに言った「慧眼」というのはどういう意味かしら?」

L「候補生マティルダのことだ……ごく一般的な暮らし向きの温かい家庭で良い子に育てられた。まさにその通りだ」

シルバー「彼女のことをご存じなので?」

L「候補生の生い立ちについては全て目を通すことにしている……あの子の両親は数年前に交通事故で亡くなったのだ。誕生日だからと家族そろって出かけたところで自動車に突っ込まれてな……それから養育院に入れられたのだが、あの子は性格がねじ曲がることもなく「良い子」のまま育ったというわけだ」

ホワイト「確かに何事にもめげない芯の強さがありますね」

L「だから「ポインター」が候補者として情報を持ってきたときにサインしたのだ……本人いわく「私を養ってくれた人たちの役に立ちたい」とのことでな。実に立派な動機だ」

ブラウン「ほら、ね?」

ブラック「しかし、努力家だからといって実力の伴わない人間を置いておく余裕など情報部にはないはずだ」

L「いかにも。だが使いどころならこちらで見つける、心配は無用だ……ともかくエージェントとしての基本的な知識と技術を教え込んでやってくれ」

ブラウン「ええ、それは間違いなく……あの子は実に真面目な良い子です。確かに覚えの悪い所はありますけれど、要領よく小手先で済ませてしまう娘たちよりもずっと教え甲斐がありますよ」

ホワイト「そこは同感だね」

ブラック「まぁ、一生懸命で真面目な部分は認めるが……」

パープル「あの子がハニートラップに向かないのはあの子のせいではありませんものね」

マーガレット「ウィ、同感ですわ。あのマドモアゼルにはごく普通なつつましい格好が似合います……世の中にはバラだけではなく、道端のヒナゲシだって必要なのですわ」

シルバー「最近はラテン語のつづりも上手になってきましたからね、ここで訓練から脱落させるのは惜しい♪」

L「結構、意見が一致したようだな……では引き続きよろしく頼む」

………

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