ドロシー「またハニートラップかよ…って、プリンセスに!?」

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696 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/06/04(火) 01:11:59.76 ID:c3x55s1d0
〜Case・プリンセス×アンジェ×ドロシー「The cocktail of death(死のカクテル)」〜

…ロンドン市内・とあるパブ…

L「ご苦労、待っていたぞ」

ドロシー「どうも……じきじきにお目見えとは光栄だな」

L「なにしろ懸案の課題が片付いた訳だからな……どうだ?」レミーマルタンのボトルを指し示す……

ドロシー「ああ、もらおうか」

L「水か氷は?」

ドロシー「いいや、ストレートで」

L「うむ」グラスにとろりとした琥珀色の液体が注がれる……

ドロシー「どうも」

L「……なかなか大変な任務だったようだな。ずいぶん疲れているように見える」

ドロシー「まぁ、色々とな……」

L「そうか。とにかく報告を聞こうか」

ドロシー「ああ」

…数週間前…

ドロシー「……暗殺?」

L「うむ。この六ヶ月間に四人消された。我が方のエージェントが二人、協力者が一人……それに共和国との融和を唱えていた王国側の有力者が一人。いずれも公的には「急な発作」ということになっている」

ドロシー「そう何人も相次いで発作を起こすってのはおかしいよな」

L「その通り。こちらとしては王国側による暗殺だと考えている」

ドロシー「まぁそうだろうな……石ころを投げれば王国情報部の工作員に当たるようなご時世だ、おかしくもない」

L「うむ、こちらとしても実行を指示したのがどこかという事については悩んでなどいない……ただ」

ドロシー「ただ、なんだ?」

L「……暗殺の手段が分からんのだ」

ドロシー「へぇ?」

L「エージェントのうちの一人は共和国・王国間で取引を行っている貿易商という触れ込みで王国入りしていたのでな、大使館を通じて遺体はこちらに引き渡されたのだが……検死を行ってみても、これと言った外傷や内傷は見当たらない」

ドロシー「鉛玉を心臓に詰まらせた「発作」じゃないってわけか」

L「いかにも。死因は物理的なものではなく何らかの毒かショックだと思われるが、本人たちも十分注意を払っていたうえ、直前に一人きりになるような事もなかった」

ドロシー「つまり、オーダーメイドの毒を盛られるような機会がなかった」

L「さよう」

ドロシー「ホテルのルームサービスを頼んだり、誰かにもらったキャンディーをうっかりつまんだり……なんていうのもなし?」

L「なしだ」

ドロシー「……じゃあ誰が下手人かも分からない?」

L「うむ。それだけに状況は厳しい……誰が王国の工作員か分からず、かつどうやって暗殺を行っているのかも不明ときてはな」

ドロシー「それで私たちにお鉢が回ってきたというわけか」

L「そうだ。君たちの「植え込み」に関してはこちらも慎重を期してきた……昨日今日で慌てて送り込んだ粗製濫造のエージェントとは訳がちがう。その切り札を使わざるを得ないほどの事態だと思えば、こちらがどういう状態にあるか分かってくれるだろう」

ドロシー「スペードのエースを切らなきゃならないほど切羽詰まっているってことか……今度の任務もずいぶんキツそうだ」

L「君たちに過度の負担を強いていることは私も理解している。とはいえ六ヶ月に四人だ、このままでは王国での活動そのものに支障が生じかねん」

ドロシー「分かった分かった……それじゃあまた追加の「お小遣い」をねだらせてもらっても良いよな?」

L「額にもよるが、無事に解決してくれれば君らの活動予算に色を付けることもやぶさかではない」

ドロシー「よし、決まりだ。 それじゃあさっそく、小遣いついでにもう一杯もらおうかな♪」そう言ってグラスを軽く揺さぶってみせる……

L「いいだろう、そのくらいの価値はある」

………

697 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/06/13(木) 01:28:46.50 ID:6K0VhKh+0
アンジェ「……暗殺、ね」

ドロシー「ああ、おまけに手段も下手人も分からないときた」

アンジェ「だとしたら、暗殺された人物から地道に共通項を探していくしか方法はないわね」

ドロシー「そうだな」

アンジェ「まずはそれぞれのカバー(偽装)ね。どんな人物として壁のこちら側に潜り込んでいたのか」

ドロシー「消されたのは年若い植民地帰りのインド成金、それから裕福な商人とその取引相手という触れ込みで接触していた二人組、最後の一人はエージェントじゃなくて王国政界の有力者だ……いずれもそれなりに大物との付き合いがあって、金にも不自由はしていなかった」

アンジェ「それじゃあそれぞれ「成金」「貿易商」「取引相手」「名士」とでも呼ぶことにしましょうか……いずれにせよ、それだけでは何とも言えないわね」

ドロシー「とはいえ共通項はその程度なんだよな……」

…そういって肩をすくめるとスコーンにジャムとクローテッドクリームを塗り、それから口に運んだ……そばに置いてあるティーセットはケイバーライト革命風で、カップは歯車をあしらった絵柄が金色の絵付けで施され、ケイバーライトを模した青緑色の縁取りが施されている……ドロシーは時々思い出したように銀のティースプーンでカップの中をかき回しながら、暗殺されたエージェントたちの特徴を並べていく…

ドロシー「まず「成金」だが、インドにいた時分はサイだの象だのといった大物撃ちのハンティングが好きで、こっちに帰ってきてからは金にあかせて贅沢なパーティなんかを楽しんでいた。「貿易商」の方はパーティや食事、観劇は好きだが運動の苦手なタイプで「取引相手」は観劇こそ共通項だが暮らし向きはまるで違って、テニスに乗馬、クリケットの好きなスポーツマンタイプだ。通っていた社交クラブも違う」

アンジェ「なら、王国穏健派の「名士」というのは?」

ドロシー「人物名鑑や新聞記事で漁ってみたが、これもまたタイプが違う……趣味はキツネ狩りと犬の育種で、持っている猟犬や血統書付きの犬はケネル・クラブでも高い評価を得ているって言う大の犬好きだが、テニスもクリケットも好きじゃなかった。観劇も劇場から券をもらっていた手前義理で来ていたが、本人よりもっぱら夫人の方が楽しみにしていたらしい」

アンジェ「見事にバラバラね」小さく首を傾げてみせた……

ドロシー「ああ、まさに「あちらが立てばこちらが立たず」さ……」

アンジェ「どこかで一緒になるような機会はあったのかしら」

ドロシー「それも調べてみたが結果はなし……こっちのエージェントはみんな、王国防諜部が目を光らせているはずの王国穏健派の有力者には近づかないよう指示されているからな」

アンジェ「それもそうね」

ドロシー「とりあえず以上がこっちで調べてみて分かったことだ……そっちは?」

アンジェ「私の方は死因とタイミング……社交界のニュースを微に入り細を穿って書き連ねてくれるゴシップ記事には感謝しないといけないわね……亡くなったのはいずれも食事のあと」

ドロシー「……初めて共通点が出てきたな」

アンジェ「ええ。貿易商は夕食を済ませたあとにホテルのベッドで苦しみだして、医者を呼んだときにはもう手の施しようがなかった」

ドロシー「取引相手は?」カップをかき回す手を止めてティースプーンをソーサーに置くと、手を組んで少し身を乗り出した……

アンジェ「途中で軽食を挟んだクリケットの試合中に身もだえを始め、お抱え運転手がストランド街のかかりつけ医へ飛ばしていったけれど間に合わず」

ドロシー「ふーむ……それじゃあ穏健派の名士ってのは?」

アンジェ「ケネル・クラブで犬の品評会のあと開催された昼食会で突然のたうち回り始めて意識不明、居合わせたキツネ狩り仲間の医師が処置するも助からず」

ドロシー「……やっぱり毒物じゃないのか」

アンジェ「だとしても「誰が」「どうやって」という疑問が残る……もし飲食物に毒を盛るとしても、不特定多数の人間がいるところでその人物にだけ毒を仕込むのは難しいわ」

ドロシー「そうでもないさ。給仕やメイドのフリをしたエージェントがそいつの皿にだけ混ぜればいい」

アンジェ「残念ながら、名士の場合は自分で好きなように料理を取るビュッフェ・スタイルの昼食会だった……どの食器を使うか、どの料理を取るかまでは分からない。まさか会場の全員に毒を盛るわけにもいかない」

ドロシー「くそっ、それじゃあ振り出しだな」

アンジェ「ええ。とはいえどこで誰が盛ったか分からないままでは困る」

ドロシー「仕方ない、それじゃあまずはパーティの料理を担当した連中をあたってみるか」

アンジェ「私は参加者名簿を洗ってみる。まさか引っかかるとは思えないけれど」

ドロシー「気を付けろよ? 探りに来たことがバレたらこっちだって毒を盛られるだろうからな」

アンジェ「そのくらい予見はしているわ……ところで、コントロールはなにか言っていた?」

ドロシー「いいや。現状ではどんな毒物を……毒物だとしての話だが……使ったのか分からない以上、予防薬も解毒薬も作りようがないとさ」

アンジェ「頼もしいことね」

ドロシー「ま、いつものことだな」

アンジェ「それじゃあお互いに気を付けるとしましょう」

ドロシー「そうだな……耳よりな情報が入ったら教えてくれ」

アンジェ「そうするわ」
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