淫魔の国と、こどもの日

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112 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/15(火) 07:17:49.59 ID:L8XfZl3U0

だが、美しくとも――――人とはかけ離れた特徴がやはりある。
後ろからでも見てとれる……小さなあどけない頭に存在を主張する、ねじれ尖った山羊の巻き角。
それは彼女の頭部と比較してみると、重心を大きく狂わされそうなほどに逞しい。

薄く張り出た肩甲骨のやや下部から生えていたはずの翼は影も形も無い。
己の意思で収納できるから、今は気遣い消しているのか――――。
そこから徐々に視線を下ろしていけば、やわらかな円みを帯びた尻、その切れ目の始まる頃の場所から“尾”が伸びている。
短いベルベット地にも似た体毛が湯で濡れて光り、深みを持つ紫色に輝いていた。
その先端は矢じりのように、あるいは――――心臓を、“心”を示す図案のような形を描く。

サキュバスBの後ろ姿は、今の自身と比べれば変わりないほどの背丈で――――可憐な少女の背中そのものだ。
全てが美しく均整がとれ、はなはだしく主張する凹凸もないのに弾けるような瑞々しさに溢れ、何より……見合わぬほどの色気を放っていた。
背筋の切れ込み、薄い肩甲骨、小さく丸い尻、細い鎖骨。

すべて、すべてが――――触れれば溶けてしまいそうな少女の姿のまま、男の情欲をくすぐるまでの色気を宿し、催すような香りを放っていた。

――――それを、勇者は受けた。
――――鋭敏になった、五感と――――その奥底にある、雄の本能そのもので。
113 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/15(火) 07:18:37.14 ID:L8XfZl3U0

サキュバスB「どうしたの?」

勇者「い、いや……えっと……」

サキュバスB「あっはは、照れてる?かわいー……ほら、洗って?」

勇者「う、うん……」

先ほどそうされたように、彼女の背におずおずと触れ、泡をまとった布を施す。
指先が触れるたびに彼女は小さく喘ぎ、ぴくん、と小さな背を震わせた。
たちまちに泡立つ石鹸が彼女の蒼肌を覆い隠してしまい、もはや見えない。
湯船から立ち上り流れて来る湯煙と、泡とに隠されていながら……サキュバスBから漂う、石鹸とも湯の花とも違う香りに中てられる心地に震えた。
“匂い”から――――“色”を意識する。
サキュバスの翼の持つ深い紫。サキュバスの内側に宿る、美麗な桃色。
全てが、嗅ぐだけで脳裏を過るような……今の自身には過分なほどの劣情を催してしまった。

サキュバスB「んっ……こら。何か当たってるよ?」

勇者「うわっ!? ご、ごめ……」

自然、抑えられない“それ”が反り上がるようにしながら、座る彼女の尻へ、無意識のうちにすりつけられてしまっていた事に気付く。
だが、彼女はそれを言葉で制しはしても……咎めない。

サキュバスB「……ね、きみ」

勇者「……ん」

ほんの少しだけ振り返った、彼女の顔は。

サキュバスB「……お姉ちゃんと、したくなっちゃった?」


――――“魔性”だった。
114 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/15(火) 07:19:46.11 ID:L8XfZl3U0
それでは、また次
ではの
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/15(火) 08:09:28.58 ID:MvyiEeBSO
やっぱりBが一番だ
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/05/15(火) 13:52:21.43 ID:68X3ybUV0
最高なのはAだぞ?
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/05/15(火) 14:59:44.12 ID:ejZYTJTUO
いやいや堕女神が…
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [Sage]:2018/05/15(火) 15:31:50.82 ID:UBzGd74U0
いやCの良さがわからんとか...
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/15(火) 15:38:44.99 ID:iL51F/QSO
戦乙女「あ、あの!」
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/15(火) 16:08:41.39 ID:cx/0DDXtO
>>119
無かった事にされてて悲しい…
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/15(火) 19:04:12.68 ID:J+ZJPs+Po
皆最高
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/05/16(水) 03:19:49.06 ID:vUSyNwLo0
AのドMっぷりがたまらぬ
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/16(水) 22:55:21.94 ID:jX2gMyUsO
ナイトメアです…出番が無いとめあって身内ネタやってたら出番が来て大歓喜です…
ナイトメアです…待ってたよ…
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/16(水) 22:56:58.88 ID:i+5BnDqj0
出番が来た(開幕のみ
125 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/05/16(水) 23:25:58.00 ID:+btcL/IB0
一日開いて申し訳ない
飛び飛びだな、畜生何がなんだか

始めます>>113より
126 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/16(水) 23:26:28.04 ID:+btcL/IB0

*****

湯船に注がれる湯の音に混じり、ぬめる水音と――――ふたつの喘ぎが重なり、溶けていく。
忍び笑いを堪えるような、鼻にかかった甘い吐息は“淫魔”より。
漏れているという意識すらないまま、絞り出されるような必死の吐息は“少年”より。
くちゃ、くちゃ、ぬる、ぬちっ――――。
粘液をまぶし合わせるような“淫律”が、徐々に、徐々に速度を増す。

サキュバスB「ん、ふふふっ……すごく熱いね、きみの……硬くて……すごく立派……」

勇者「ふ、あっ……!」

にゅる、にゅる、と……淫魔の小さな手中から幾度も“それ”は頭を見せる。
床に膝を立てて広げて座る“少年”を後ろから支え、もたれかけさせながらの手淫だった。
つぶれたバストの危ういほどの柔らかさを背中に感じて。
耳もとからのサキュバスの囁きを脳髄を侵すように届けられて。
体が震えるたびに閉じそうになる脚は、そのたびに彼女の脚に絡め取られ、閉じられないようにより深く開脚させられた。

今、勇者は――――あられもなく脚を開かされたまま、サキュバスBに抱き留められて――――泡をまとう手で、“自身”をくどく、そして優しく扱かれていた。
127 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/16(水) 23:27:06.87 ID:+btcL/IB0

サキュバスB「ふふっ……お姉ちゃんのお尻に勝手にこすりつけちゃって。だめだよ?こんな事しちゃ……女のコに嫌われちゃうよ?」

勇者「あ、ぁ……ごめ……な……」

サキュバスB「あんな悪い事、どこで覚えたのかなぁ。……ほら? きもちいいね……お姉ちゃんの手で“しこしこ”されちゃって……ね?」

昂ぶり続けて、今にも果ててしまいそうなのに――――その瞬間が、いつになっても訪れない。
密着されて薫るサキュバスBの匂いそのものが、鼻から流し込まれたように鼻腔の奥に突き刺さり、
その度、思考が遠くへ連れ去られて行く。
いつもなら抗えたはずだ。
いつもなら、意識を保てたはずだ。

勇者「ハッ……あぁぁ……っ!」

それなのに、背中に押しつけられてぐにぐにと形を変える果実の感触が。
尖端にある乳首のしこった硬さが。
背中を愛撫するように蠢くたびに――――ぞくぞくと痺れが走り、股間に向かい、びきびきと震えさせている。

やがて、硬さを注がれて反り返っていくささやかな怒張の包皮が押し広げられて――――つつましいピンク色の亀頭が、顔を覗かせる。

サキュバスBはそれを見ると――嬉しそうに、喉奥にいたずらな笑いを潜める。
128 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/16(水) 23:27:43.38 ID:+btcL/IB0

サキュバスBの戯れるような魔手の導きはまだ止まない。
現れたピンク色の亀頭へまだ触れないよう、注意を指先に込めつつ、小さな茎を上下にしごき、
空いた片手が解きほぐすように伸びたのは――――湯の中で皺が伸び、
つるんとした薄皮に包まれた指先だけでつまめてしまうほどの二つの珠。

サキュバスB「ね。この中……分かる?今、きっと……いっぱい、お精液つくられてってるみたい。早く出したい?苦しい?」

柔らかく、猫の喉でも撫でるような繊細なタッチでふたつの珠を嬲られる。
細い指先が“嚢”の中にしまわれたそれを優しく捕まえ、その内に滾る白いスープを想うように――――じわり、じわりと。
刺激の度に陰嚢は脈打ち、どぷんっ、という音と脈動が体を駆け上り、沸き立つような感覚と共に体が跳ねた。

勇者「ぐ、っ……!」

だが、それでも……縛めから逃れる事はできない。
背後をとる“淫魔”に身体の中心の茎を文字通りに掌握され、あと少し力を込めれば――――薄皮の中の珠も、指先で弾けてしまうだろう。

否、もしそれらがなかったとしても。
この快楽の呪縛から逃れる事など、できはしなかった。

もはや視界には何も映らず。
ただ、ひたすら――――チカチカと明滅し、おぼろげに時折大浴場に上り揺らぐ湯煙が見えるのがやっとだった。
129 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/16(水) 23:28:30.79 ID:+btcL/IB0

小さな肉竿は、とめどなく作られていく若い精のスープで満ちていく。
それを淫魔の掌中で弄ばれ続け、もはや脚をふんばる事さえできないままにずるずるとだらしなく力が抜けていった。
泡と、先走りの吐液と、堪えられない顎の端から垂れ、薄い胸板の上を、筋肉の凹凸ない腹部を経て秘部まで流れ落ちる唾液。
ぐちゃぐちゃにそれらの混交液がサキュバスBの手で掻き混ぜられ、肉竿を蕩かせる潤滑液へと変わっていった。

サキュバスB「あっははは……すごいお顔。イきたい? ね、どぴゅ、どぴゅ、ってしたいでしょ?」

勇者「っ……は……っは……っ……っ!」

快楽は留まるところを知らず、そうしている間にも肉の竿は漲り続け――――
パンパンに張り裂けそうなまま、いつまでも作り出された快楽をせき止められ、決壊の寸前にあった。

サキュバスB「もう辛いよね?おねだり……は許してあげるね。
         だって、もう喋れないみたいだし……それじゃ、ボク。初めてのお射精、してみよっか?」
130 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/16(水) 23:29:24.08 ID:+btcL/IB0

ずり、ずりゅ、ぬちゅ、ぬちゃ、しゅこ、しゅこっ――――
湿り滑る水音と、摩擦の奏でる――――誰の耳にも明らかな、“手淫”の調べ。
その中にはもう、堪える少年のうめきはない。
うめく体力すら奪い尽くされ――――快楽の奔流に押し流されるその時を、ただ待つことだけが許された。

尖端を覗かせる桃色の亀頭を、包皮ごと扱き上げ――――同時に、ぐりんっ、と勇者は睾丸より更に下へ異物感を覚える。
見るでもなく、聞くでもなく――――昂ぶりを極めた下肢の触感が、その身に起こったことを理解する。

勇者「っ……ゥ……く、はっ……!」

サキュバスB「えへ、へっ……ここで、合ってるかなぁ……」

睾丸を弄んでいた左手、その中指が――――抵抗を失い緩んだ“門”の隙をつき、深く、深くへ槍として。
そして、槍は“鉤”へと変わり――その奥にある、膀胱から肉茎へ繋がる“管”に隣接する何かを探し求めてうねる。
やがて、抵抗虚しく探り当てられた“そこ”を、くりっ、と指先で腸壁越しに押された、途端――――

勇者「っ――――――………!!」

吸う事すら難しかった息が肺の奥までとっさに吸い込まれ、満ちる。
酸素が血流として運ばれ、全身へと急稼働で運ばれ、ちりちりに滾り、燃え、そして尽きる――――そんな、破滅のような快感に襲われた。
131 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/16(水) 23:29:58.30 ID:+btcL/IB0

サキュバスB「わきゃっ……!?す、すごい勢い……!わたしの顔にまで飛んできちゃってるよぉ」

体ごとガクン、ガクン、と震えながら、少年の肉茎は粥のように詰まった“精通”の飛沫を吐き出していく。
下腹部どころではなく、勢いに任せ……調節の狂った噴水のように断続的に噴き出しながら、少年の姿の勇者の胸へ、顔へ。
後ろから抱きすくめ縛めるサキュバスBの顔にすら降りかかり、上気した蒼肌へ、“白”を化粧していくように。

ふたつの珠が溜め込み、作り出したとは思えない――――水分低下による卒倒を招くのではないかと思えるほどの射精は、
集めればワイングラスのふちから零れてしまうほどの量だ。
大量などという生易しさではなく、人体が、子供が吐き出してしまっては危険なほどの量を。

サキュバスB「……ふふ、いっぱい出たね♪ えらいえらーい♪」
132 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/16(水) 23:30:34.05 ID:+btcL/IB0

勇者「うっ……ぁあ……っ」

サキュバスB「お顔、汚れちゃったね?拭くのもったいないから……わたしが、綺麗にするね」

自らの白濁で染まった少年の頬に、淫魔の舌が伸び、丹念に舐め取る。
胸まで飛び散ったそれを掌に掬い取り、徐々に、少年の体を床に寝そべらせるように解いていき――――
勢いを失い、白濁液の残りを情けなく吐き出しぴくぴくと震える肉茎へ唇を寄せて。

サキュバスB「んふっ……きみの、すっごく美味しいよ。一滴も残せないなー……ほら、見ふぇ?」

ちゅる、ちゅるり、と尿道にまで残った全てを吸い集め、小さな口腔の中になみなみと溜まったそれを、億劫に首だけを起こした少年へ見せつける。

サキュバスB「こんらに……いっふぁい……んっ……!こくっ……ふふ、きみの、美味しかったなぁ。ごちそーさま、陛……あっ」
133 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/16(水) 23:31:53.28 ID:+btcL/IB0

勇者「……おい」

サキュバスB「な、何かなー?うん、元気みたいでよかったよかった。それじゃ上がろ?ね?一緒に冷たいミルクでも……」

堕女神「“ミルク”なら、充分なのではありませんか?」

先ほどまでの妖艶もどこへ消えたか。
狼狽し、振り返った淫魔の視線の先には――――湯浴み用のタオルに身体を包んだ、この城のNo.2の静かな憤怒の表情。

サキュバスB「あえっ、だ、堕……め……いや、これは……!」

勇者「サキュバスB?気付いてたな?最初から知ってたんだな!?俺が――――俺、俺はなぁ!!」

サキュバスB「いや、待っ……は、話せば分かるんです。ね、ね!?これには訳が!」

堕女神「貴女は……貴女という、方は……」

勇者「尻を出せ。サキュバスB。淫魔じゃなく――――人間の伝統のやり方でお仕置きだ」

吐き出すものを吐き出し、萎えていた両脚へ力が吹き込まれ、立ち上がる。
指先までぴしりと伸ばした左手に青白い稲妻が走り――――

サキュバスB「い゛っ……きゃあぁぁぁぁぁぁっ!!」

広い浴場へ、目の覚めるような快音が響き渡った。

134 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/16(水) 23:32:38.29 ID:+btcL/IB0
今夜分投下終了

(子どもに)えっちなのはいけないと思います
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/16(水) 23:40:40.27 ID:EwJS92Yh0
乙!
いつものサキュBで安心した
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2018/05/17(木) 00:04:22.94 ID:RR0YeS240
おつ!
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [Sage]:2018/05/17(木) 09:10:42.55 ID:Dz+1WxJ5O
Bは気づいてたし陛下は子供のフリしてたしってこれは幼児プレイってことでいいんですかね
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/17(木) 12:21:03.98 ID:VD3iWawvo
つまり陛下はバブみを感じておぎゃったわけですよ変態だ
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/05/18(金) 01:32:02.40 ID:iYEfo/po0
今日はなしかな?
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/18(金) 08:04:16.25 ID:WLMP3uDSO
悪いもの体に入れたら出さないといけないからな(棒)
141 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/05/18(金) 22:21:01.63 ID:xOMyQe3L0
こんばんは
すまん、昨晩文字直ししてたら崩れ落ちていて……投下を開始します
142 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/05/18(金) 22:21:31.54 ID:xOMyQe3L0

*****

サキュバスB「うっ……うぅぅ……っ」

勇者「……大げさな奴」

すっかり夜も深まった城内を歩くのは風変わりな組み合わせの三人。
最後尾のひとりは、真白い肌と濡れ羽色の艶やかな髪の堕ちた女神。
ひとりは、動きやすそうな服に身を包み……今は腰を砕かせ、ヒップを幾度もさすりながらぎこちなく歩くサキュバスの少女。
そして先頭は、膝小僧から下を晒す絹のズボンと短靴、やや袖の長いシャツから指先を覗かせる“人間”の少年。

ときおり、サキュバスの少女――――サキュバスBが立ち止まり、尻をさするたびに一行は立ち止まり、促しながらも、待ち続ける。

サキュバスB「お、尻……“ビリッ”……て……何、するんですかぁ……ただのお尻叩きじゃ……まだひきつるぅ……」

勇者「こっちのセリフだ。……何するんだお前は」

サキュバスB「つ、つい……陛下が、なんか……変な事が起きちゃって、また……変な……」

勇者「“また”って言うな、またって。俺のせいじゃないんだぞ」
143 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/18(金) 22:22:26.99 ID:xOMyQe3L0

堕女神「……本当にそうでしょうか?言いきれますか?陛下?」

勇者「……ん……」

堕女神「ナイトメアを説き伏せて郊外へお出かけになりましたね。聴取の結果、彼女は陛下を止めたそうですよ。それをしつこく説得したと……」

勇者「んっ……!」

わざとらしい咳払いを二回挟み込んでも、堕女神の言及は止まない。

堕女神「二つ目。これも思い出したのですが――――城下町で“なぞの液”を浴びた時も。
     サキュバスAを巧みに誘導し、もしくは誘導されて向かったと。間違いありませんか?」

勇者「……ごほっ」

堕女神「“ごほ”では分かりかねますが」

サキュバスB「……やんちゃな事してるからバチが当たったんじゃないですかね?」

堕女神「貴女がそれを言えますか。……ともかく、今申し上げた理由の一つ目は否定されました」
144 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/18(金) 22:23:34.63 ID:xOMyQe3L0

勇者「へ」

堕女神「ナイトメアと一緒に召し上がったという果実です。ご安心ください、調べた結果、あれは無毒です。
     人界の山中にも生えているものですから問題ありません」

勇者「そう、なのか……良かった」

堕女神「いえ、良くは……。二つ目、街中で浴びた“なぞの液”……いったい何なのでしょう、“なぞの液”とは。全く……」

勇者「本当に謎らしいんだ。“服だけ溶かす液”よりマシだったろ。流石に裸で城まで帰ってくるのはマズいじゃないか」

堕女神「全身を白濁させて帰るのも問題ですけれど」

サキュバスB「そうですよー。酔っ払った子じゃないんですから」

勇者「酔……?どういう事だ、それ?」

サキュバスB「暑くなってくるといるんですよー。スライムって、すっごくヒンヤリしてて気持ちいいんです。
         体を冷やしてくれますし、体温……水温?どっちなんでしょ……とにかくそれも一定に調整されてるからぬるくならないんです。
         ですから、スライム浴で涼む子とかいるんです。で、たまにスライムが寝ちゃった子を置いてどっか行っちゃって……」

勇者「で、スライムまみれで残されるだらしない酔っ払いサキュバスが出ると……」
145 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/18(金) 22:24:23.16 ID:xOMyQe3L0

堕女神「それはそうと、陛下。何故あのような事に?」

勇者「……あまり掘り返さないでほしいな」

浴場での“惨劇”は、思い出すにはあまりにあまりの出来事だった。
サキュバスBに、まさか――――ああも、と。
だがすぐに言葉の曇りを察した堕女神はニュアンスを切り替え、言葉を補う。

堕女神「いえ……いつもならば、サキュバスBの放つ淫気にああまで中てられはしないでしょう。何か……」

その指摘は、当然のところを言い当てていた。
まがりなりにも“勇者”の持つ耐性のためか、彼女らの持つ魔力に中毒する事はなかった。
一糸まとわず密着すれば、サキュバスの魔の淫気を感じはしたものの不覚に陥るほどではなかった。
例外は隣女王で、正体を見せた彼女のそれは――――もはや、“攻撃”と言っても過言ではない。

サキュバスB「つまり、わたしにメロメロになっちゃいましたか。そーですかー……くふっ」
146 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/18(金) 22:25:24.61 ID:xOMyQe3L0

勇者「畜生……まさか……サキュバスBなんかに……!!」

サキュバスB「いやあの、本気で悔しがらないでくださいよ……さすがに傷付きますから」

堕女神「恐らくは、浴場というのも不運だったのでしょう。多量の発汗を促し、湯煙に溶けて漂う、裸体を晒し合う空間。
     それと……恐らく、魔力への耐性が下がっていますね」

勇者「……でも、魔法は使えるぞ」

堕女神「そこは不自然ではありますが……ともかく、仮説ではありますが、でなければ……ああも不覚に陥る説明はつきません」

サキュバスB「あの、堕女神さま。一つだけ訊いていいですか?」

堕女神「は……?何でしょうか」

サキュバスB「えっと、どのあたりから見てました?」

堕女神「……陛下が、その……達する、直前ほど……流石に、と、止めに入ってしまうのは……陛下も、お苦しい事になるかと……」

勇者「正直に言う。“死にたい”」

サキュバスB「さっきは“いきたい”って言ってましたよ?」

勇者「うるさい」
147 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/18(金) 22:26:09.56 ID:xOMyQe3L0

途中で自室へ戻るサキュバスBと別れ、寝室までの道のりを歩く。
二日目となれば歩幅にも慣れ、少なくといつまづく事はなくなった。
それも、“手を引かれる子供”が、“先行して歩く子供”になっただけ――――と言えばそれまでだ。

勇者「……そういえば、鉢合わせたが……どうして浴場に?」

寝室のドアに手をかけ、開く寸前に訊ねる。
しかし、彼女から返答はない。
怪訝に思い、振り向けば――――暗闇の中でも覗ける赤い瞳が当てどなく泳いでいた。

勇者「……訊かなかった。ごめん」

堕女神「い、いえ……偶然でしょう。はい。それより、本日は――――」

???「嘘をおっしゃいなさいな。いたいけな幼子に性を感じていたのではなくて?なんとした事でしょうか……」

勇者「!?」
148 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/18(金) 22:27:06.61 ID:xOMyQe3L0

ドアが力を込めるまでも無く内側へ引かれ、開く。
その中から姿を見せたのは、闇に溶ける翼と蒼肌を持つ紫水晶を想わせる瞳の――――

勇者「サキュバスA?どうして……戻るのは明日じゃなかったのか?」

サキュバスA「えぇまぁ、そのつもりだったのですけれど……それより、中へどうぞ。狭いお部屋で申し訳ありませんが……」

勇者「狭くて悪かったな!」

サキュバスA「ほら、保護者様も。幼子と交わす睦まじき蜜月を阻まれたからと言ってそうお怒りになるものでは」

堕女神「怒っては……いえ、そもそも誰が“保護者”ですか!」

サキュバスA「これは失礼を。しかし……その割には堂に入ったものでしたわよ?」

堕女神「は……?」

寝室へ二人を迎えたサキュバスAが扉を閉め、勇者はベッドの上に腰かけ、堕女神は近くのベッドサイドの椅子を引いて座り、
最後にサキュバスAが、手近な壁に立ち姿のままもたれかかる。
149 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/18(金) 22:28:07.46 ID:xOMyQe3L0

サキュバスA「無垢な子供の唇を吸い寄せて、その二つの果実に儚く小さな童顔を埋めて。頼りなく細い爪先にて太ももを優しく掻かれて……
        “ああ、陛下。くすぐったいです……おやめください……”などというやり取りです。何と度し難い……何と乱れた……」

堕女神「っ!?な、何故それ、……え……!?」

サキュバスA「ああ、やっぱりしたんですの?大胆ですわ。では、“ふふっ……まるで、赤ちゃんのようですね……私と……貴方の……”」

勇者「そこまではしてない」

サキュバスA「そこまではいけませんでしたか。もっと攻めてもよいでしょう……嘆かわしい」

紫の瞳の闖入者が軽妙に投げかける言葉の数々で、堕女神の顔が段々と赤らみ、
俯き――――ひとしきり嗜虐心を満足させた頃か、彼女が話題を変える。

サキュバスA「さてさて、だいぶお困――――ってはおりませんね、一見しました処」

勇者(……そう言えば、あまり困ってない気がするな)

サキュバスA「ほら見なさいな、ボイン大好きしょ○太くん」

勇者「誰だよ!」
150 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/18(金) 22:28:58.24 ID:xOMyQe3L0

堕女神「……陛下が不便を感じておられないなら何よりですが。ともかく、理由は……」

勇者「そう。理由が分からないんだ。病気か?」

サキュバスA「ひとまず、ここ数日の出来事を更に洗い出していく事ですわね。更に丁寧に。
         更に――――ええ、エグく、クドく、しつこく、しつこーく……」

勇者「変な言い方はやめないか。……最初に訊いたが、何で今夜戻った?」

サキュバスA「ええ。ひとつだけ。――――ひどく、気に入らないモノを見つけてしまいましたの」

いつの時も余裕を見せ、善意も悪意も露わにしない彼女には珍しく――――攻撃性を帯びた物言いだった。
彼女が取り出したのは、一本の羽根。
それも……曇りひとつない、“純白”の。

勇者「白鳥の羽根?」

サキュバスA「流石は陛下。……ですが、だからこそ。見逃せないのです」

勇者「……?」

サキュバスA「人間界ではありません。――――この世界に、“白鳥”はいない」
151 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/18(金) 22:29:42.86 ID:xOMyQe3L0
今夜投下終了です

サキュバスAはガンガン話を進めてくれるので非常に得難い
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/18(金) 23:29:58.26 ID:WLMP3uDSO
某AVかわかります
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/05/18(金) 23:46:03.68 ID:LFg4Qo3f0
最高じゃ
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/20(日) 02:56:32.58 ID:ecjxLmPTO
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [Sage]:2018/05/21(月) 01:20:18.25 ID:5gUEO7pB0
創造神は随分とご多忙のようであるな
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/21(月) 01:24:20.65 ID:GB84xGo7o
おー、まだ続いてたのか懐かしいな
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/05/21(月) 02:39:04.47 ID:6BBOHM3F0
さみしくなってきた
158 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/05/21(月) 04:59:25.63 ID:yxSbP5Ah0
ここで変な時間に投下していきます
どうも二日に一回ペースになってる……大ウソつきか私は
159 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/21(月) 05:00:27.48 ID:yxSbP5Ah0

“魔族”の翼には、羽毛がない。
サキュバスに限らず――――魔界を出身とする種族は例外なく、そうだ。
人間界では珍しくない生き物、闇を駆る蝙蝠はかつて地を這う生き物だった頃、
古代現れた魔族の姿を模倣してその前肢を翼へ進化させたという寓話も勇者は聞いた事があった。

サキュバスA「無論、抜け落ちる羽根を持つ“堕天使”もこの国にはおります。ですがその色は漆黒。白鳥の羽根など、この国に落ちるはずがない」

勇者「その羽根、見せてくれ。……まだ新しいな」

堕女神「人間界から迷い込んだ可能性は?ここ最近は人間界に出向くサキュバスも多く……」

サキュバスA「ええ、その可能性も捨て切れませんけれど……白鳥が現れたという噂も聞きません。そもそも、この羽根……」

勇者「魔力がある。……いや、魔力じゃない。もっと……」

サキュバスA「いえ、ここまでとしましょうか。悩み事など、夜にすべきではありませんのよ。……その羽根は陛下がお持ちになっていてくださいな」
160 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/21(月) 05:01:20.59 ID:yxSbP5Ah0

背を預けていた壁から離れ、サキュバスAが尾を振り立てて背後から堕女神へ忍び寄り、耳もとへ口を寄せる。
たおやかな指先で彼女の細い顎を弄ぶようになぞり、微かに持ち上げ――――燭光が蠱惑を照らし出す。

サキュバスA「久しぶりに……“真夜中の密会”と洒落込みましょうか、堕女神様」

堕女神「!? へ、変な言い方をしないでください!陛下、違います。単に……」

サキュバスA「そう。真夜中に、魔性を持つ女がもつれ合い、赤裸々に全てを曝け出し……響くは淫魔達の嬌声。まさしく淫魔の国にふさわしく――――」

勇者「要するに飲むんだな。俺も行く」

サキュバスA「いえ、それはなりません。……何故ならば、子供は眠る時間です。“殿下”」

勇者「誰が殿下だ」

サキュバスA「まぁ、それはそれとし……“殿下”。実際、眠そうですわね?」

勇者「ん……」

一日を終え、夕食を終え、風呂に入ってよけいな“運動”までさせられた。
普段であればまだ降りてこないはずの眠気がゆっくり襲い……とろとろと瞼が落ちてくる。
161 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/21(月) 05:02:49.64 ID:yxSbP5Ah0

堕女神「……もしや……それも、またその御姿だから?」

勇者「ん……変だな……こんな時間に、眠く……なんて……」

サキュバスA「まだ宵の口ですが――――続きは明日の朝ですわよ。おやすみなさいませ」

もはや目を開けているのが億劫なほどに眠気は強い。
ベッドの上を力無く這うように、枕へ近づくと、うつ伏せで顔を横に向けたままとうとう力尽き、一瞬で夢の世界へ誘われた。

サキュバスA「さて、“王子様”も眠った事です。厨房をお借りしますわ。実は下町の狐の店から、良い仔豚の肉を分けていただきまして……」

堕女神「です、が……そんな、場合では……」

サキュバスA「言ったでしょう。夜中に考え事などするものではありません。一日の終わり、疲れた頭で何が思い浮かぶものでしょう?
         ……夜とは、“何も考えない”ためにあるのですから」

堕女神「……では、ご相伴に与らせていただきます。……陛下、おやすみなさい」

すっかり寝息を立てる勇者に毛布をかけ、頬をひと撫でずつしてから、二人は寝室を出た。
162 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/21(月) 05:03:24.54 ID:yxSbP5Ah0

*****

サキュバスA「さて、本日は仔豚のバックリブを焼き上げて――――」

堕女神「お待ちください」

サキュバスA「はて、どうなさいましたの?」

堕女神「……どうして彼女が?」

尖塔のひとつにある、サキュバスAの隠し部屋へ招かれ――――そこには既に、先客があった。
はめ殺しの窓辺に脚を投げ出して座り、片手にぷらぷらとエール酒の小瓶を弄び、足もとにはいくつもの空いた酒瓶。
その無作法な“先客”は料理の匂いへ顔を向けるなり歯噛みし、苦々しい顔をわざとらしく見せつけた。

サキュバスC「……テメェこそ何でいんだよ」

堕女神「こちらの台詞ですが。侵入者はどちらだと?」

サキュバスC「あァ、うるせぇな“お利口さん”は。……おい、アイツは?」

サキュバスA「陛下ならお眠りに。子供に夜更かしは厳禁ですわ」

サキュバスC「いい言葉じゃねーか。吐いたのがサキュバスなんぞじゃなけりゃもっといい」
163 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/21(月) 05:04:22.50 ID:yxSbP5Ah0

一角に竪琴の鎮座する、さして広くもない隠し部屋に芳醇な香りがふわふわと漂う。
テーブルの上に並ぶ料理の数々は無作法な先客、サキュバスCの目と鼻を釘付けにし、不満げな表情を浮かべる堕女神もまた、静かに喉を鳴らす。

岩塩をふって焼き上げた骨付きのバックリブと分厚いベーコンの肉山からは溶けた脂の薫りが立ち上り、黒胡椒の粒もそれを強調する。
触れただけでほどけてしまいそうな柔らかさは、見るだけで伝わるほどだ。

サキュバスC「へぇ、こんなもん何処で仕入れた?超うまそーじゃん」

サキュバスA「狐の師弟のお店よ。分けてもらったの。……それと、今日はこんなものも用意したわよ?」

堕女神「……それは、チーズ……ですか?煮溶かした?」

肉山の隣に、小鍋いっぱいになみなみと湛えられたチーズに三人の視線が移る。
魔術で保温され、くつくつと沸くチーズの上にはハーブが一振り。
やがてサキュバスAは、笑いを含みながらその意図を明かす。

――――魔の誘惑を。

サキュバスA「この上質の仔豚肉を、とろとろのチーズにくぐらせて――――かぶりつくなんて、いかが?」
164 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/21(月) 05:05:13.30 ID:yxSbP5Ah0

堕女神「い……いけません、そんな!」

サキュバスC「おいおい……悪魔かテメェ……正気か、こんな時間だぞ!?」

堕女神は慌てて目を逸らし、サキュバスCはそうしたくとも目を逸らせず――――
ちらちらと肉山とチーズの小鍋を交互に見やりながら、提案の主を咎めるように声を張り上げた。
更に畳みかけるようにサキュバスAは無言のまま、テーブルの上に発泡ワインと軽い果実酒を並べる。

サキュバスA「フフッ。体は正直ねぇ。ほぅら……こんなによだれを垂らして……欲しがっているわよ?」

サキュバスC「いや、垂らしてねェし……くそ、マジか……マジか、テメェ……」

本能を直撃する魔の食撰に抗えず――――サキュバスCの手が伸びる。
震える手で骨付き肉をつまみ上げると、どっぷりとチーズの鍋に浸し、すくい上げると、どこまでも追いすがるようにチーズの糸が引く。
こんがりと焼きあがったバックリブの肉汁の薫りが、チーズの熱い香りと合わさる事で、魔性そのものへ変わる。
そこで一度、サキュバスCの意識が途切れ――――

サキュバスC「……はっ!?」

気がつけば、三切れ目をその手に取っており、目の前に、ふたつ分の骨だけが転がっていた。
165 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/21(月) 05:06:12.50 ID:yxSbP5Ah0

サキュバスA「……貴方、まさか食べながら気絶してたのかしら?」

サキュバスC(おい、おい……全然記憶に……ねェ……)

ちらり、と視線を横にずらすと堕女神がグラスを傾け、楚々とした仕草で発泡ワインで喉を潤していた。

サキュバスC(このアマ、何気取りくさって……あん?)

グラスから離れた唇は肉の脂で濡れて光り、彼女の前にある取り皿には丹念に肉をしゃぶり取られた骨が二本。
やがてグラスを置いた堕女神は、どこか放心したように虚空を見つめていた。

サキュバスC(コイツ……肉食ってイったんじゃねぇだろうな)

堕女神「下品な事を考えないでいただけますか?」

サキュバスC「はァ!?てめェ、何使って……!」

堕女神「何も。貴方の考える事などお見通しですよ」

サキュバスC「ふん。変態がエラそーにほざきやがるな、オイ」

堕女神「誰の事を言っているのでしょう?……くどいようですが、何故貴方がここに?」
166 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/21(月) 05:06:57.53 ID:yxSbP5Ah0

サキュバスC「いやぁ、アイツがガキになったってから……これは笑ってやらねぇとな、ってさ」

堕女神「良い度胸ですね」

サキュバスA「仲睦まじいのは喜ばしいけれど……そこまでになさったら、ご両人?」

堕女神「睦まじくなどありません」

サキュバスC「アタシの台詞だ。……つゥか、鉢合わせにさせたのはテメェだろ、サキュバスA」

サキュバスA「あら、そうだったかしら。私はただ、貴方を誘ってこっそり飲もうとしただけよ?」

サキュバスC「そしたらコイツ連れてきてんじゃねーか。何のつもりだ?性悪め」

サキュバスA「別に他意なんてないわよ、失礼ねぇ。たまにはいいじゃない、こういうのも」

堕女神「……あなたは面白がっているだけでしょう」

サキュバスA「あら、バレてしまいました?」

サキュバスC「……あー、もう、よせよせ。コイツまともに相手すんの死ぬほど疲れっから」

堕女神「ええ、ですね」

サキュバスA「あぁん、酷い」
167 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/21(月) 05:07:55.80 ID:yxSbP5Ah0

――――――淫魔二人と堕女神の酒宴は続き。
うず高く盛られた肉山は段々と減り、皿の底が見えてきた頃。

サキュバスC「だからよォ。いちいち暗いんだよテメーは……辛気くせェんだ。爆笑する事なんてあんのか?」

堕女神「……それを言うなら貴方こそ。どうしてそう物言いが雑なのですか」

サキュバスC「へいへい。……これでよろしゅうございますか、堕女神様?」

堕女神「なるほど。貴方が丁寧な言葉を使うとおぞましいものがありますね」

サキュバスC「乳首もぐぞ、テメェコラ」

互いに歯に衣着せぬ応酬、“かまし合い”ながらもどちらも椅子から腰を上げる事はない。
そんな二人を悠然と眺めながらサキュバスAは、のんびりと唇を酒で湿らせ、耳を傾ける。
話を振られた時には混ぜっ返し、優勢な側の暴露話をおもむろに打ち明け、どちらにも形勢が傾かないように話を長引かせて。

やがて酒宴が終わると堕女神はよろよろと自室へ引き上げ、サキュバスCは酔い潰れてテーブルに沈む。
最後に生き残ったのは――――最初から最後まで変わらず飲み続けた調停者だけだった。

サキュバスA「……本当、前回の物語ではなんであんなに酔ったのかしらね?私」
168 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/21(月) 05:11:56.74 ID:yxSbP5Ah0
早朝の投下終了いたします

忙しいというより、ちょい心がグラつくイベントがスレ立ててから二度ほど起きてしまって立て直しに時間がかかってしまいました
ですが一たびスレを立てた以上、完走は無論

それではまた今夜ー
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/21(月) 06:28:05.46 ID:nUr/xTYPo
おつ
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/21(月) 07:13:32.77 ID:7k2XzIfIo
おつおつ
相変わらずグルメの描写うまいよな……
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [Sage]:2018/05/21(月) 09:32:22.41 ID:5gUEO7pB0
朝っぱらから腹の減る話を...
肉くいてえ..
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/05/21(月) 23:19:22.81 ID:corhc4wI0
くそう飯テロ食らった・・・
リアルで色々あると大変ですよね、ご自愛くださいな
173 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/05/22(火) 03:41:56.26 ID:WTvi5IbN0
変な時間だがまぁいいじゃないか
投下
174 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/22(火) 03:42:24.67 ID:WTvi5IbN0

*****

勇者「……ふぁあ……」

気付けば――――疲労感とは無縁の目覚めが訪れた。
むくりと体を起こしても、もはや見慣れたもので……小さな手も、広すぎるベッドも、太い支柱も、遠すぎる天蓋も……もう、驚きはない。
そのたびにこれは夢では無いと思い知らされるのも、もう慣れた。
過ごした日々が泡のように消えたかのごとく。
最初から、この城で“王子”として生まれたかのごとく。

子供の姿のままで、何度目かの朝を迎えた。

勇者「……スッキリしたな。……二度寝もできない」

眠気がきれいさっぱり拭われてしまった。
窓の外は明るいものの、小鳥の声はまだ聴こえない。

勇者「……ちょっと、庭にでも出るか」

175 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/22(火) 03:43:18.05 ID:WTvi5IbN0

穿き慣れない膝丈のズボンの裾から入り込む冷たい空気にはまだ慣れない。
踏み締める朝の庭、濡れた青草はどこか懐かしいものの、故郷の外仕事で踏み締めていたそれとは違い、繊細だ。
鼻腔を広げて吸い込んだ朝露に濡れた青草の香りの瑞々しさは、小さな胸の内を満たしてくれる。
昇った日は赤みを失い、段々と黄金に輝きながら青空へ向かう。
それは――――勇者に既視感を覚えさせた。
そしてすぐに既視感の正体は、あっけないほどに早く解き明かされた。

勇者「あぁ、そっか。――――あの時も、こんなだったかな」

“ぼうけんをはじめた日”の、事だ。
朝早く、日が昇りきらぬうちに、朝ぼらけの空から村を見渡した出立の朝の事。
勇者のいない世界が勇者と魔王の物語の舞台へ変わった、あの日の空の色。

誰も起こさず、朝早くにひとりで村を出た、あの日に似た空を、勇者の小さな目が再び映す。
176 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/22(火) 03:44:22.65 ID:WTvi5IbN0

勇者「……っくしゅ!う……まだ、寒いな。上に羽織るものも無いんだもんなぁ」

しかし郷愁にひたる暇もなく、寒さにくすぐられた鼻がくしゃみを誘う。
朝の空気は、だいぶましになったとはいえまだまだ冷たく、まして今の勇者にはなおの事。
シャツの袖で鼻の下を擦りながら、朝の散歩を楽しみ――――ふと、蹄の音に気付き振り返る。
そこには、いつにもまして大きく映る馬体。
黒く澄んだ目を朝焼けに輝かせながら、生け垣を食み、くちゃくちゃと噛み慣らしながら耳をくりん、と一回転させ、勇者を見下ろしていた

勇者「なんだ、お前も散歩か?……こうして見ると大きいな、ナイトメア」

ナイトメア『――――フッ』

勇者「……おい、お前今せせら笑っただろ。おい」

馬の姿のまま、“彼女”は口の端を持ち上げ、言葉にする事無く嘲るような表情を作る。
追求してもどこ吹く風とばかりに蹄を鳴らし、敷かれた石畳に音を立てるばかりだ。
やがて舞い飛んできた蝶を鼻先に止まらせるとそのまま瞬きほどの間に身体が縮み、もうひとつの姿へ変わる。

ナイトメア「……ちっさ。プッ……」

勇者「貴様」

顔の真ん中に蝶を止まらせたまま、今の勇者とそう変わらない――――
否、少しだけ背の高い白金髪の貫頭衣の少女が、今度ははっきりと、笑った。
177 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/22(火) 03:44:58.21 ID:WTvi5IbN0

ナイトメア「ださっ……」

勇者「……サキュバスCとは違う失礼さだなお前」

ナイトメア「フッ」

勇者「鼻で笑うかよ。ちなみにずっと止まってるぞ、鼻」

指摘すると、ずっと鼻に止まりっぱなしの蝶が羽を開き――――仮面のようにナイトメアの目を隠すと、彼女がそれを得意げに指差し。

ナイトメア「……いっぱつげい。ぶとうかいマスク」

勇者「……え、どうやってるのそれ」

ナイトメア「ないしょ。ちなみにこれ……“が”ではできない。りんぷんがひどい」

勇者「するなよ」

ナイトメア「クワガタでもやっちゃだめ」

勇者「だからしないっての。で、朝から何の用だ」
178 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/22(火) 03:45:54.97 ID:WTvi5IbN0

ナイトメア「べつに。……そっちこそ何、してる」

勇者「目が覚めちまったから、朝の散歩。心配しなくても、堕女神が呼びに来るまでには戻る」

ナイトメア「? なら、そろそろ……じゃ?」

勇者「ん……」

空を見れば、そこそこにいい時間が経っていた事が分かる。
どこか懐かしい空の色に見入ってしまっていた間は、思いのほか長かったのだ。
体が冷えてしまった事にも頷ける程度には。

勇者「そっか。……ってか、生け垣の草を食うな」

ナイトメア「ついむしゃくしゃして……いまは、はんすう、している?」

勇者「腹壊すぞ。……といえば、昨日は俺を差し置いて飲んでたんだったな。羨ましい。堕女神と、サキュ……」

眠りに落ちる寸前に見た二人の顔を思い出し、その後に開かれた秘密の夜会を羨みつつも想い描こうとした、瞬間。

「ア゛ーーーーッハハハハハハハハハハハ!! 何、おま……ひ、ひひひゃひゃひゃひゃ!」
179 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/22(火) 03:46:31.23 ID:WTvi5IbN0

ひどく酒焼けを起こしてはいても聞き覚えのある――――しかし今まで聞いた事もないひきつけを起こしたような笑い声が聴こえて、
勇者も、ナイトメアも思わず体を震わせ、驚いた。

勇者「え……サキュバスC?どうして……っいや、それより何が起きたんだ!?」

ナイトメア「へい、ぼうや。乗りな」

勇者「ん?……え!?」

言うが早いか、ナイトメアは再び馬の姿へ化けると脚をたたみ、乗れ、と急かすように嘶いた。
それを見て取り、よじ登るように裸馬の背にまたがり、首に縋るように抱きつくと
夢魔の馬体はふわりと浮かび上がり、笑い声の今も聴こえる窓へ向け音もなく飛ぶ。
その声の聴こえた部屋は、逆算すれば堕女神の部屋だと勇者は思い出す。
幸いにも開いていた窓から、用心して背負った剣に手をかけながら飛びこめば――――

サキュバスC「あっははははははは!増えた!増えた、くく、はははははひひひっ!」

サキュバスA「ぐっ……くっ、くくっ……お、おやめ……なさ……っ!」

地獄絵図。
真鍮の片脚をがしゃがしゃと鳴らしながら床に転がり、部屋の主のベッドと、窓から飛び込んできた“少年”を、
交互に見やりながら身を折って爆笑するサキュバスにはまだ酒が残っている。
対して、その隣で必死に忍び笑いに抑えつけようとするサキュバス。
何が起こっているのかまるで掴めないままの勇者。
窓の外で浮かぶ、夢魔の白馬。
180 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/22(火) 03:47:14.29 ID:WTvi5IbN0

勇者「……おい、何が……起きた?」

サキュバスC「ぷはっ……!ま、マジかこいつ……!も、無理……死ぬ……!」

勇者「さっきからお前……そういえば、堕女神は!?」

サキュバスA「さ、先ほどから……ずっと、ここに……」

勇者「?」

堕女神「……何ですか、朝から……騒々し…………っ!?」

ベッドに身を起こした、その姿は果たしていかなる事か。
踝にまで伸びる艶めく黒髪、白い肌、縦に割れた瞳と、赤黒の眼。
“彼女”のそれら全てを残しながら――――身の丈だけが。
否。

滑らかな裸身は“引っ掛かり”をなくして、黒のドレスが縄抜けの奇術のようにするりと脱げ落ちていく。
寝ぼけまなこを擦りながら起きた彼女はそれに気付くと。

堕女神「えっ――――――!?き、きゃあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

広いベッドの中心で身を抱くように戸惑い、絹を裂くような声を上げるその身体は、どこから見ても
年端もいかない、なだらかな少女のものへと変わっていた。

181 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/22(火) 03:48:48.66 ID:WTvi5IbN0
今夜分終了です
ではまた
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/22(火) 04:12:19.99 ID:W6+uEPXc0
ロリ堕女神キターーーー(゚∀゚ 三 ゚∀゚)
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/05/22(火) 04:17:19.06 ID:el+37jeE0
増えたー
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/22(火) 06:40:40.35 ID:+PbSRhu3O
増えた!?
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/22(火) 12:51:55.21 ID:hTU9Vfw5o
ほう……

ほう!!?
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/05/22(火) 15:26:41.38 ID:N3SIPoch0
堕女神とのおねショタじゃ…ないのか…
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/05/22(火) 17:05:21.54 ID:bjWG5u8V0
インピ・・・・ゲフンケゲフン
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/22(火) 17:35:32.97 ID:0gy35n6IO
ショタ×ロリの未成熟幼子プレイの予感?
189 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/05/24(木) 00:12:56.47 ID:k1yU/iWI0
こんばんは
今日も投下していきます

わちゃわちゃと
190 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/24(木) 00:13:29.06 ID:k1yU/iWI0

*****

いつになく重苦しい雰囲気が包む玉座の間で、しかし未だに笑いを堪えるべく必死のサキュバスがまずひとり。
笑いを抑えきったサキュバスがひとり。
ぷい、と横を向いて寝そべる白馬が一頭。
大きすぎる玉座にちょこんと座るのは淫魔の国の現王、勇者――――だった少年。
その隣には、彼とほぼ等しい年頃の姿にまで縮んでしまった、その王佐――――堕女神だった少女。

勇者「……えぇー……こうなるのか……」

堕女神「……嘘……こんなの、嘘です……」

身体のラインを強調するドレスは、これまでの彼女とは真逆のそれを示す。
肩口から先も露わに、胸にぴったりと張りつくような仕立てが……残酷なほどに変貌を浮き立たせていた。
サキュバスCがそこを見るたび指差し、噴き出しそうになり、その度に堕女神は睨み返す。

――――たわわに実っていた双丘は影も形も無い。
――――あるのは細い体に映えはしても、滑らかな平坦面のみだ。

踝まである黒髪は持て余して高い位置で編み込み、束ねてようやく妨げにならなくなった。
更に儚げな印象、子供だけが至る永遠の偶像めいた幼い触れ難さが、皮肉なことに彼女の麗しさを押し上げる。
191 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/24(木) 00:14:18.02 ID:k1yU/iWI0

勇者「いったい何したんだ?昨日、あの後。……俺に内緒で」

サキュバスC「くくっ。スネてんじゃねぇって……お、王……子……さま……ぷははっ!」

勇者「……はぁ」

結局、心配してくれたのは堕女神だけではないか――――と、呆れながらあらためて彼女へ目を移す。
そこには、いちいち煽るようなサキュバスCに冷たく視線で釘を刺すも……しかし迫力のない、可愛らしさが拭い去れない堕女神がいるだけだ。
視線に気付いた彼女はふと振り返り、気恥ずかしいのか頬を染めて目を逸らす。

勇者「もう一度訊く。昨日何をした。……俺に内緒で何を飲んだ」

サキュバスA「何、と申されましても……珍しくもないお酒、仔豚肉のロースト、バックリブ、ベーコン、それと耳皮の煮込み。
         チーズとバゲット、干し鱈のトマトクリーム煮と彩りの野菜と、それから……あぁ、ドライフルーツも少々。あとは……」

勇者「もういい、もういい。……俺が寝たと思って、ずいぶんと豪勢な……」

サキュバスA「格別でしたわ。夜中にこっそり集まって飲み食いするのは」

サキュバスC「だけど解せねぇ。コイツが食ったのはアタシらも食った。なんでコイツだけ、こんな……ち、ちっこく……くふふ、はっはははははは!!」
192 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/24(木) 00:15:25.17 ID:k1yU/iWI0

堕女神「……いいかげんになさい。“おもらしのCちゃん”」

その呼び名を聞いて、サキュバスCの哄笑は止んで……代わりに、血の気の失せたような表情。それは次第に赤みを帯びていき――――

サキュバスC「……ンだって?」

堕女神「あら、覚えておいででは……。昨晩聞いた話ですよ。貴方は昔」

サキュバスC「……おい、そろそろオトナの歯が生える頃だろ?前歯、何本いっとく?」

堕女神「ああ、譲っていただけるのですか?ご丁寧にありがとうございます。それでは表に……」

勇者「やめないか!」

子供の姿に変わってしまってなおも堕女神は臆せず、対等のように売られたら買う。
割って入るのもいつもの事で、もう一人いる“大人”は楽しそうに意地悪な微笑みを浮かべるのみ。
数分して、ひとしきり煽り合いが落ち着いてからようやくサキュバスAが話に混じる。
193 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/24(木) 00:15:53.68 ID:k1yU/iWI0

サキュバスA「……しかし、奇妙。……堕女神様。貴方は……“子供の姿”などおありですか?」

堕女神「私……ですか?私は……いえ、そもそも子供の時代があったとしても、この姿ではないはずです」

勇者「この姿では、ない……?」

堕女神「はい。私の髪が黒く、目が赤く変じたのも、堕天の際の事。陛下が良く知る姿の私に、“子供時代”など無いのですから」

本来、彼女が“愛の女神”だった頃の髪は黄金に輝いて、その眼の色も淡く澄んでいたという。
時を巻き戻す何かだとすれば、彼女は――――その時の姿に変わるはず。
勇者はそう考え至ったところで……共通点を見つけ出した。
堕女神と自分との、変化の前日の共通点だ。

勇者「おい、サキュバスA。言ってたな。……狐の酒場から肉を貰ったって?」

サキュバスA「え?ええ……あいにくなのですが、もう残っては……」

勇者「それはいい。出所に話がある。時間が惜しい。呼ぶのも面倒だから俺から行こう」
194 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/24(木) 00:16:51.19 ID:k1yU/iWI0

堕女神「それでは、私もご一緒に……」

勇者「いや。堕女神はここで待っていてくれ。……確証がある訳じゃないし、確信もないんだ」

告げて玉座から立ち上がり、壇を下りて扉へ向かう素振りを見せるも、それでも不服そうな堕女神の頭へ、掌が置かれる。
もはや年の離れた姉妹のような身長差を、してやったり、と言うかのように――――

サキュバスC「ははっ、そういう事だ。お留守番してな、“堕女神ちゃん”。ガキはガキらしくな」

堕女神「っ、触らないでください、不敬な! そもそも貴方はいつまでここに……!」

サキュバスC「悪ぃ悪ぃ、つい手が置きやすかったもんで……おー、コワ。元気だなお嬢ちゃんよー」

勇者「……やっぱり一緒に行く?」

堕女神「……いえ、仰せのままに。私が行けば彼女もついてくるでしょうし、でなくとも彼女をここに一人残しては何をする事やら……」

サキュバスC「何もしねェーよ。心配しなくてもすぐ消えるよ。コイツを気が済むまで弄り倒してからな」

勇者「…………なるべく早く戻る」

堕女神「……平気です、陛下。お気になさらず……行ってらっしゃいませ」
195 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/24(木) 00:17:33.38 ID:k1yU/iWI0

後ろ髪を引かれる思いのまま、せめてできるだけ早く戻ってやらねば堕女神がもたないか、でなければ……最悪、血を見る。
サキュバスAを連れ、近くにいたナイトメアにせめて「ひどい時は仲裁しろ」と託すように申しつけはしたが――――聞いていたかどうかは、怪しい。

子供の姿に変わってしまったのが、人間の自分だけではない。
神の眷族だったはずの堕女神までもが変わってしまったのだ。
その理由は――――恐らく、狐の酒場にある。

何故なら。

勇者もまたこの姿で目覚める前日――――間違いなく、そこへ行ったのだ。
196 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/24(木) 00:21:58.27 ID:k1yU/iWI0
では、また明日

おねショタはいい
ショタおねもいい

どちらもやりたいからやる
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/24(木) 00:24:15.78 ID:A62nSMHuO
珍しくリアタイで読めるかと思いきや終わってしまった
また覗きに来ます
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [Sage]:2018/05/24(木) 00:31:37.70 ID:TjOA3USq0
過去作もう一度読み返してくるかぁー
魔法使いたちが淫魔の国の勇者の噂を聞く場面とかが見てみたいな
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/05/25(金) 07:03:08.32 ID:go34Zxb90
サキュAエロの補充しにきました
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/25(金) 09:37:24.59 ID:yRwiI5YSO
Bに甘やかされたい人生だった…
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/25(金) 23:36:03.49 ID:KF+q9nyDO
Cに美味しいケーキ差し入れしてなかなか気が利くじゃねーかって言われたい
202 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/05/26(土) 02:08:43.48 ID:3ltYXf/90
遅れた、遅れた

投下始めます
深夜二時に

>>199
もうちょい後になるんだ、済まない
203 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/26(土) 02:09:18.38 ID:3ltYXf/90

*****

???「ほほう……堪らなく良い。この……頼りない軽さ……腿から伝わる、柔な感触……」

勇者「……おい、もういい、だろ……!?そろそろ……!」

???「急くでない。其方こそ……堪能せぬか。罰当たりじゃの」

勇者「……っ」

がら空きの店内に漂う優艶な香が、その場を包む
人里離れた化生の庵に漂う空気に似たそれは、淫魔のそれとは違う……香木を炊く事で放たれる純粋な物質界の芳香だった。
その中で勇者は、店内の一角で、芳香の主の膝にちょこんと座るように身を預けながら話す事となっていた。

???「ああ、愛い……愛いぞ。この、汗くさく埃っぽい頭皮の薫り……脳髄の奥までとろけるようじゃ……」

膝上に座る童を愛でるように頭を撫で、鼻先を寄せてくんくんと匂いを嗅がれるこそばゆさと気恥ずかしさを覚え
歯痒さを堪えている勇者の目に映るのは獣毛に覆われたいくつもの黄金の尾。
それらが視界の端でわさわさと蠢き、もふ、もふ、と膝小僧や腕に触れ、足が届かずぷらぷらと投げ出しているスネに巻きつき、くすぐる。
204 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/26(土) 02:10:07.00 ID:3ltYXf/90

???「この体毛の少なさといい……人間の童は一番よ。何とまぁ、愛い。この骨ばった膝も……
     嗚呼、ずっとこのままでも構わぬのに。何故に時など流れるのじゃ」

勇者「っ……だから……!」

抗議の声を上げようとすれば、指の一本一本までが細く、ひんやりとした手で目隠しをされる。
更に、睫毛を指の腹で撫でるようにさわさわと撫でられると……眠気を催すような、涼やかな風がそよぐ錯覚すら起こる。
遠い世界の果ては吹き飛ばされ、風に弄ばれるような心地を起こさせるのは――――獣毛の尻尾の愛撫によるものだ。
もはや、自分の体勢すら意識できない。

???「……くふ。どうした?少しぐらいは抗ってみせい」
205 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/26(土) 02:10:48.54 ID:3ltYXf/90

*****

――――話は、ほんの二十分ほど前に遡る。
“狐の酒場”まで辿りついたところでサキュバスAは別口を少し当たると言い残して去り、勇者は一人で聞き込む事になったのが発端だ。
酒場へ訪れても当然営業時間外だったものの、奇怪にも扉は開いており、呼びかけとともに扉をくぐる。
その店内には……見慣れない姿があった。

一番奥の席で、すっかり客の引けた店内の静けさをものともせずに……指先でつまめるほどの、
硝子細工の器を啄むように彼女はひとり嗜んでいた。

入り口の窓から洩れてくるかすかな日差しを受け止め愛でるように、薄暗い店の奥で。
琥珀色の瞳は哀愁に沈んだように潤み、吸い込んだ酒の一口一口に嘆息する儚げな美貌を浮き立たせる。
薄暗い遠目でも見てとれる、重厚な絹を幾重にも織り金銀の糸で刺繍したそれを――――さらに幾重にも重ねて着る、見慣れぬ装い。
長い裾から微かに覗く足首の白さと、指で作る輪に収まってしまうような細さが目を奪う。
澄み渡る、その透明感ゆえ金とも銀ともつかぬ髪がほのかな風に揺れ、ゆっくりと彼女は振り向いた。

???「おぅ……?済まぬな、童。開けてはおらぬ。それに……此処は童の入る場ではない。
     迷うたか?ならしばし待たせてやらぬでもない。座るが良い」
206 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/26(土) 02:11:41.50 ID:3ltYXf/90

柔らかさの中に格調を感じさせる、細面の吊り目を引き絞り、瞬く。
それだけの仕草が誘因するような、抗えない感覚をも引き起こし――――しかしすんでのところで気を取り直し、椅子を引き、彼女の対面へ座る。

???「……ヒトの童が何故かような地へ。癖の悪い夜魔どもの慰みか?まったく、せわしないの」

勇者「あ、いや……俺は。それより、いつもの給仕は……?」

???「さての。その口ぶりだと一見客ではないか?折角じゃ、付き合え、童」

通りに面した扉と、窓から差し込む日が届いてこない最奥の席が彼女の輪郭をおぼろげなものにする。
気付けば勇者の目の前に小さなグラスが置かれ、その中を透明な液体が満たしていた。
鼻を寄せれば、甘みの強い酒精の香が立ち上るのが分かる。
穀物の発酵臭にかすかに顔をしかめれば……目の前の奇妙な“客人”が、更に目を細め、愛おしむようにじっと見つめている事に気付いた。
その視線は、さながら――――籠に閉じ込めた小さな鼠が懸命に餌をかじる様子でも見ているような悦楽、そして慈しみに溢れていた。

視線に呑まれるようにグラスに口をつけ少量吸い込むと、口の中を、芳醇な甘さが覆い尽くす。
その甘さに覆い隠されてはいても、酒精は高く……まだ飲み込んでなどいないのに、カッと体が熱くなるようだった。
207 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/26(土) 02:12:40.09 ID:3ltYXf/90

勇者(……何だ、今……)

最初の一口を飲み込むと、視線がぐらりと揺れた拍子に奇怪なものが見えた。
それは、彼女の背後に揺れ蠢く数本の影だ。

???「……ほう、まさか飲み下せるとは。いけるのぅ、童。気に入ったぞ。そぅら……褒美じゃ。こちらへ来やれ」

この姿で酒を入れたせいか、それとも……目の前の“魔性”から漂う妖艶な色香の所業か。
ふわり、ふわり、と、まるで漂うように招き寄せられ――――抱え上げるように、勇者は今まで座っていた席を対面に望んでいた。
下肢から伝わるのは、危険なほどに柔い太ももの弾力。
もしも頭を預けたのならば……二度と起き上がる事ができなくなってしまうのではないかとすら思えた。
重厚な絹の装いからは、炊き締めてまとわせた香木の匂いが更に深く嗅覚を惑わせる。

勇者「だから、……貴方は……いったい……」

???「……いや。名乗るまいて。時には、何者でもなき一時も欲しゅうなるもの。ましてそれがやんごとなき……いや、忘れよ。それにしても……」

上気したように赤みを帯びた手が、ゆっくりと、勇者の顎、頬とさするように撫でた。

???「愛いのう。……実に、愛い」
208 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/26(土) 02:13:52.24 ID:3ltYXf/90

*****

そして時は、今へ戻る。
それからというもの、足を組み換える事すら許されないまま、ひたすら膝の上に抱かれ、
弄ぶように撫でられながら、彼女の“肴”となっていた。
卓上の小瓶からは無限のように酒が注がれ、硝子細工の杯を何度も傾け
彼女はそれを乾すと、喉に笑いを潜めながら満足げに勇者の頬を、顎を、頭を撫でた。
装束から漂う媚香と酒の匂い、そして、日差しを浴びて手入れされた毛皮のような甘酸っぱい香りに、思わず身震いする。
彼女の太腿から伝う体温が、更には――――股間を持ち上げる。

???「くふ……あまり、もぞもぞするでない。尻癖を落ち着けぬか。妾とて……妙な気分になってしまうぞ?」

勇者「……そろそろ、下りても……」

???「嫌じゃ」

勇者「嫌、って……」

???「嫌じゃ。絶対に嫌じゃ。妾の膝から下りたいとな?無礼者め。無礼な童は……こうしてくれようぞ」

勇者「っわ……!?」
209 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/26(土) 02:15:30.40 ID:3ltYXf/90

膝の上からテーブルに正対する姿勢が、真横へ傾けられる。
そうさせたのは腕ではなく、彼女の持つ数本もの獣の尻尾によるものだ。
気付けば左を向けられ、視界には板壁があるだけで――――更に、
背をもたれさせるように支える尻尾が段々と傾き、視線は天井へと移っていく。
やがて、天井と、“獣の魔性”――――彼女の細面を同時に視界に捉える。
ほぼ寝そべるほどまでの体を支えるのは……城の寝台に劣らぬ寝心地の三本の尻尾が、背中を。
そして太腿に尻を支えられ、脚にも更に一本の尻尾が支えに入る。
そうなってから、ようやく――――彼女の頭部がはっきりと間近に見えた。
頭頂部近くにぴょこんと鋭く突き出た、二つの長い耳がぴくぴくと蠢く。

勇者「……狐?」

???「……ほう、童。妾の耳が見えるか?面白い。……それよりも、気の利いた事ぐらい言えぬか」

酒精を含んだ甘い吐息をかけられ、目を閉じた刹那――――背を預ける尻尾が柔らかくうねる。
矮躯をぴったりと包み、受け止め、雲の上にいるかのような心地良さに……ようやく、気付いた。
傾けた彼女の頭から垂れる、細い金糸のような髪が頬を撫でる。
それは、夢の世界へ誘うような上質の愛撫。

???「……ふふ、眠りたいか?どれ……あぁ、しかしじゃ。こちらは……まだ起きていたいとな?」

一抹の涼しささえ感じないままだった。

“彼女”の指が、そこを……優しく、直に、捉えたのは。
210 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/26(土) 02:22:47.93 ID:3ltYXf/90
今夜分終了

>>198
やるとしたら、多分pixivの方に短編でやるかもしれません


それではまた明日か、明後日への変わり際にお会いしましょう
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/26(土) 03:11:54.61 ID:mwuLk6GT0
新キャラからのオネショタ…しかも狐っ子だと…神過ぎる
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