【リョナ注意】緑輝「歯形祭り。」葉月「はっ?」【響け!ユーフォニアム】

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102 :100/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:19:29.86 ID:j7V3WS/C0
久美子「それは……その……あ……。」


 やばい。


麗奈 「んー? どうしたのお?」


久美子「んーん、なんでもないよ。」


 峠は越した。尿意が引いていく。


麗奈 「そう、なんでもないの。……ねえねえ、どうして駄目なの……かな?」


久美子「どうしてって……あ。」


 また込み上げてきた。今の言動からして、更に強く圧迫したのかも知れない。


麗奈 「ほらほら。」


久美子「あ、ちょ……で、出ちゃう……。」


麗奈 「えー? なにが出ちゃうの?」


 もー、分かってる癖に!
103 :101/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:20:00.03 ID:j7V3WS/C0
久美子「お、おしっこ……。」


麗奈 「そーなの。久美子ちゃんはおしっこが出ちゃうの。……出しちゃえばいいじゃなーい♪」


久美子「だ、駄目だよお……。」


麗奈 「そお? どーして駄目なのお?」


久美子「その……、こ、こんな所で、するってゆーのは、その……、あ、……人間として――」


麗奈 「人間じゃなくて吸血鬼じゃない。」


久美子「そーだけど、……とにかく駄目なの……。」


麗奈 「ふふっ。……そう、分かったわ。」


 高坂さんが力を緩めてくれたのか、尿意から解放される。
 助かった。
 高坂さんが、私の御中から、両手を引き抜く。そのまま、素早くナイフを取り上げる。


麗奈 「さあ、体を起こして。」


久美子「え?」
104 :102/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:20:29.85 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「速く! 体を起こして。傷が治っちゃうわ。」


久美子「あ、うん。」


 高坂さんの意図は良く分かんないけど、取り敢えず、腕を使って上体を起こした。


麗奈 「御尻も持ち上げて。私みたいに。」


 そう言われたので、膝を曲げて足の裏を地面に付けてから、腕に力を入れて御尻を浮かせた。更に上半身を前へ動かそうとすると、


麗奈 「あ、腕と上半身はそのままでいいわ。」


 と言われたので、両手は背中の後ろで、地面に付けたままにした。上半身も、後ろに傾けた姿勢のままになった。変な体勢になった。


麗奈 「よし、そのままよ。」


 高坂さんは立ち上がると、素早く動いて、私の後方のレジャーシートの上にナイフを置いてから、私の真後ろに戻ってきて、座って、なぜか急に、抱き付いてきた。


久美子「あっ。」


 背中に、幸せな感触。
 そして、私の御中に、再び手を突っ込む。
105 :103/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:21:00.42 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「ねえ、もうちょっと脚を開いて。」


久美子「え、こお?」


 指示に従って脚を開くと、


麗奈 「うん、そう。いい子ね。じゃあ……」


 御褒めの言葉と共に、再び、私の御中の中を、グチャグチャと掻き回し始める。
 幸せだ。……この恰好だと、前方からは陰部が丸見えだけど。
 嬉しい様な、恥ずかしい様な。
 そう思っていると、手が止まり、


麗奈 「はーい、見付けたあ。」


 という、嬉しそうな声が響く。


久美子「え? なにを……。」


麗奈 「こーれっ!」


 強い尿意。


久美子「あっ。」


 はっとした。目一杯振り向く。
106 :104/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:21:30.00 ID:j7V3WS/C0
久美子「ちょっと、高坂さん!」


麗奈 「んー? なにー?」


 さっきと変わらない、恍けた様な声。
 なにを考えているか分からない怖さがあった。思わず、語勢が弱まる。


久美子「さっきやめてくれるって言ったじゃない……。」


麗奈 「えー? そんな事一言も言ってないじゃなーい。」


久美子(えー?)


 愕然とした。と同時に、尿意が強くなる。


久美子「あ……。」


麗奈 「さあ、さっさと出しちゃいなさい♪」


久美子「ちょ、ちょっと……あ……。」


麗奈 「んー、なにー?」


 峠を越したのか、尿意が引いてゆく。別に高坂さんが力を強めたり弱めたりしている訳ではあるまい。
107 :105/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:21:59.92 ID:j7V3WS/C0
久美子「ご、後生ですから、その……。」


麗奈 「なに言ってんの。せっかく体が濡れない恰好にして上げたんじゃない。……さあ、遠慮無くぶちまけちゃいなさい♪」


 確かに、この恰好なら濡れない……って、ぶちまけないよ!


久美子「ご、御主人様……あ……。」


 周期的に尿意が込み上げて来る。なんでこんな仕組みが体に備わっているのか。


麗奈 「……ん? ……出すの?」


久美子「だ、出さないよ……。」


麗奈 「そう、しぶといわね。……さっき飲ませた水が足りなかったのかしら。」


久美子(え?)


 その為に飲ませたのか!
 尿意が静まっていく。


麗奈 「ねえ久美子。御水、御代わりしない?」


久美子「しません……。」


 する訳無い。
108 :106/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:22:30.22 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「そう。御主人様の御勧めを断るの。……悲しいなー。」


久美子(!)


 急に寂しそうな声を出され、どきんとする。


麗奈 「……ねー、ほんとに出してくれないの?」


久美子「だ、出さないってば……あ……。」


 また込み上げて来る。


麗奈 「そう。……出してくれないと泣いちゃうかも……。」


久美子「……え? ……うっ。」


 本当に泣き出しそうな声だった。胸を締め付けられる様な気分になる。あと、尿意がきつい。


麗奈 「……出してくれないの?」


久美子「だ、出しません……。」


麗奈 「ふーん。あっそ。」


 口調が元に戻る。
109 :107/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:22:59.88 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「でも私、久美子が出してくれるまでやめないわよ?」


久美子「……え?」


麗奈 「どーするう? このまま力を入れ続けたら、膀胱が破裂しちゃうんじゃないかしら♪」


久美子「え? ちょ、ちょっと待って!」


麗奈 「だから、さっさと出しちゃいなさい。……どーせ眷族は主人には逆らえないんだしね。」


久美子「ひ、酷い……。あ。」


麗奈 「なに言ってんの。全然酷くないわ。酷いのは御主人様の言う事を聞かない久美子の方なのよ?」


久美子「そんな……。」


麗奈 「そんなじゃない。久美子は悪い子だわ。」


久美子「え?」


 胸が、ちくりと痛む。
110 :108/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:23:29.93 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「わ、る、い、子。……やっぱり御仕置きが必要かしら。」


久美子「え? 私……。」


麗奈 「どーするう? ……出す? ……それとも御仕置きがいい? ……いっその事、このまま膀胱を押し潰しちゃうのも悪くはないわね。」


久美子「え、高坂さん、あ……。」


麗奈 「大丈夫。どうせ直ぐに再生するわ。」


久美子「そ、そーだけど……。」


 そう言った所で、会話が数秒途切れる。


麗奈 「……ねえ。」


久美子「え?」


麗奈 「久美子は、私の事……嫌い?」


久美子「え? き、嫌いじゃないよ。大好きだよ。」


麗奈 「そう。……私も久美子の事、大好きよ?」
111 :109/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:23:59.91 ID:j7V3WS/C0
久美子「え、じゃあ――」


麗奈 「ぶちまけてくれたら、もっと好きになるわ。」


 う、そう来たか……。


麗奈 「さあ、出して。」


 もう、やるしかないのかも知れない。


久美子「あ、あの……。」


麗奈 「久美子、こんな格言があるわ。……吸血鬼は諦めが肝心。」


久美子「え……?」


 そんな格言初めて聞いたよ……。


麗奈 「さあ、……ぶ、ち、ま、け、て♪」


久美子「あ、あのさ……。」
112 :110/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:24:30.00 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「ん?」


久美子「出したら私の事、ほんとに好きになってくれる?」


麗奈 「勿論よ。」


久美子「ずっと側に居てくれる?」


麗奈 「ええ。ずっと一緒よ。」


久美子「じゃあ、私……、出すよ……。」


麗奈 「ええ。」


 膀胱に、意識を向ける。


久美子「いくよ……。」


 ちょろちょろと少しだけ出し、直ぐにバルブを閉じる。
 何とか止まった。


麗奈 「あ! ねえ! なんでとめるの。」
113 :111/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:24:59.95 ID:j7V3WS/C0
久美子「え? とめちゃ駄目なの? あ。」


 込み上げて来る。さっきまでより強い。


麗奈 「当たり前じゃない! 全部出して! さあ!」


久美子「あ、出す、出すよ!」


 一気に放水する。


久美子「ああ……。」


 今度はとめない。
 出ている。……愛する御主人様の為に、野外で放尿してしまっている。
 なんて気持ちがいいんだろう。
 御中がすっきりする感覚と共に、石畳の上の水溜まりが、勾配に従って面積を広げてゆく。


麗奈 「ふふっ。」


久美子「……なに?」


麗奈 「偉いわ。」
114 :112/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:25:29.86 ID:j7V3WS/C0
久美子「あ……。」


 軈て、尿の勢いが衰えてゆき、止まる。


久美子「はあ……。全部出たよ。」


麗奈 「ふふっ、偉いわ。良く出来ました。……御褒美にキスして上げる。」


 キス?
 ちゅっ、と背中に感触。


久美子「え?」


 今のってまさか……。
 やばい高坂さんにキスされたキスされたキスされた。


久美子「あ、あ……。」


 頭が沸騰しそうになる。
          *
 頭は沸騰しなかった。
 高坂さんが、少し移動しましょう、と言ったので、私は、抱き付かれて御中に手を突っ込まれた状態のまま、一メートル程移動した。尿の水溜まりから離れるのが目的だった。
 その位置で、高坂さんは、さっきと同じ様に仰向けに寝る様に指示をした。直後に、両手を引き抜いて、私から離れる。
 なにかを取りに行ったのだろう。そのあいだに、私は、石畳の上に手ばしこく寝っ転がる。
 直後、高坂さんは、タオル数枚とナイフを持って、素早く戻ってきた。
 彼女は、そのタオルの中から一枚を選んで適当に広げると、しゃがんで、私の御中の切れ目に突っ込んだ。残りのタオルは、私に手渡した。
 切れ目の端までタオルを噛ませながら、
115 :113/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:25:59.93 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「これでいい筈。」


 と呟いているのを見て、理解した。
 それは、傷口がくっついて治癒してしまうのを防ぐ為の行いだった。
 高坂さんは、作業を終えてから、その意図が成功している事を確認すると、少し笑みを浮かべ、


麗奈 「もっと早くにこうしておけば良かった。」


 と、自嘲する様に言った。


麗奈 「そう思うでしょ、久美子。」


久美子「え、いや、私は……。」


 そんな風には露思わなかった。
 というか、そもそも「傷口をひらいたままにしよう」などとは全く思わない。


麗奈 「ま、いいや。……じゃあ、続きね。」


 今度は、鳩尾の下にナイフを突き立てて来る。
 そのまま、正中線に沿って、御中を真っ直ぐに割いてしまう。私の御中に、丁字形の傷が出来上がった。
 直ぐに傷口をひらいて、私の手からタオルを一枚もぎ取ると、新しく出来た縦の切創に、素早く宛がってゆく。これで裂け目は塞がらない筈である。
116 :114/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:26:29.80 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「じゃ、内臓出しちゃいましょーね♪」


 高坂さんはそう言うと、御中の中に手を突っ込み、ナイフを使ってなにかを切りながら、私の内臓の一部を、御中から引っ張り出してしまう。
 彼女は取り出した内臓の表面をじっと見詰めると、


麗奈 「あーやっぱり。久美子のはらわたは、とても綺麗な色をしていると思ったの。」


 なにかに一人で納得している。
 そう言われた私は、どう反応したらいいんだろう。


麗奈 「じゃ、残りも全部出しちゃいましょう。」


 高坂さんは、それがさも当然であるかの様に宣言すると、両手とナイフを使って、どんどんと引き出し始めた。
 御中から内臓が引っ張り出される、不思議な感覚。
 出した「はらわた」は、私の胸の部分に、無造作に載せられてゆく。
 量が多く、載り切らなかった小腸(……これって小腸だよね?)が、体のふちから滑り落ちる。
 なんか偉い事になってしまった。引っ張り出されたこの内臓は、無事に元に戻るのだろうか? と、少し不安な気分になる。


久美子「あ、あの……、」


麗奈 「ん?」


久美子「私、こんなに出しちゃって大丈夫なのかな……。」
117 :115/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:26:59.87 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「ああ、だいじょぶ。吸血鬼の回復力で、全部元に戻るわ。」


 高坂さんは、作業をしながら答える。


久美子「そーなんだ……。それならいいんだけど……。」


 それで納得するしかなかった。
 そうこうしていると、高坂さんの手が止まる。全部出し終えたのだろうか。
 顔をこちらを向けて、微笑む。


麗奈 「ふふ、綺麗よ。」


久美子「あ、ありがと……。」


 一応礼を言う。
 全部出し終えたらしい。
 私の小腸の上にゆっくりと顔を近付けてきて、くんくん、とにおいを嗅ぐ。
 穏やかに笑い、


麗奈 「これが久美子のはらわたのにおいなのね。」


 満足気に呟く。
 居住まいを正し、
118 :116/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:27:30.04 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「じゃ、次は私。」


 すっと立ち上がる。
 私の顔の横を歩く。姿が見えなくなる。
 しょうがないので、首を目一杯動かす。
 ……やっぱり見えない。
 しかし、直ぐに視界の中に帰ってくる。
 私の体の真横に戻ってきた高坂さんは、立ったまま微笑みを浮かべ、


麗奈 「いくわよ。」


 と言いながら、右手と左手を下腹部の左側に持っていく。左手にはペンチ、右手にはナイフが握られていた。
 高坂さんが、狙いを定め、


麗奈 「んっ。」


 右手のナイフを、突き立てる。
 そのまま、左手を添えた状態で、右手のナイフを真横に動かし、御中を切り裂いてゆく。
 右端までいった所で、ナイフを引き抜き、透かさず、傷口がくっつかない様にする為であろう、御中の切れ目に両手の指先を、少し差し入れる。
 その状態で、私の直ぐ側に膝を突く。


麗奈 「ねえ、タオルを一枚頂戴。」


久美子「あ、うん。」
119 :117/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:28:00.04 ID:j7V3WS/C0
 急いで渡す。これで私の手元のタオルは残り一枚になった。
 高坂さんは受け取ったタオルを傷口に宛がうと、私の時と同じ様に、鳩尾から下も真っ直ぐ割く。


麗奈 「久美子、タオルを頂戴。」


 私が渡すと、


麗奈 「じゃあ、代わりにこれを持ってて。」


 ペンチを渡してくる。
 高坂さんはタオルを縦の傷に挟むと、今度は自分の内臓を引っ張り出し始める。
 三十センチメートル程ずるりと引き出すと手をとめ、


麗奈 「どお? これが私のはらわたよ。」


 と話し掛けてくる。
 なんとも返答に困る問い掛けに対して私が黙っていると、程無く笑みを浮かべ、続きを引き出し始める。どうやら初めから返事は期待していなかったらしい。
 引っ張り出された小腸の先っぽが、私の小腸の上に載っかる。
 そのまま続きがずるずると引き出され、次々と、私の体に載せられていく。
 上からどんどん来る。
 小腸の上に小腸が載せられてゆく。私の内臓が、高坂さんの内臓を受け入れていた。
 正直、両者は見分けが付かなかった。
 じっと見ていると、変な気分になってくる。
 それは、気持ちが悪かった。液体に塗れていた。私の胸の上で、音を立てていた。滑り落ちていた。重さで、胸が圧迫されていた。はっきり言って、私の御主人様は頭がおかしかった。こんな体験が出来る人間は世界にそうそう居まい。私は特別だった。
 軈て、小腸を引き出し終えたのか、高坂さんの動きが止まる。
120 :118/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:28:29.86 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「久美子、これも持ってて。」


 ナイフを渡して来る。
 私が受け取ると、高坂さんは笑えを浮かべながら、両手を近付けて来る。


麗奈 「それえ♪」


 一気に手を伸ばし、私の小腸と自分の小腸を交ぜ始める。


麗奈 「あはははは。」


 楽しそうだ。
 彼女が楽しそうだと、私も幸せな気分になる。
 少し交ぜた所で、


麗奈 「あ、そうだ。」


 高坂さんは手を止め、


麗奈 「ねえ、目を閉じて。」


 と話し掛けてくる。
121 :119/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:28:59.98 ID:j7V3WS/C0
久美子「目?」


麗奈 「うん。」


久美子「なんで?」


麗奈 「なんでも。」


久美子「あ、うん。分かった。」


 御主人様の望みだ。素直に従う。
 私が目を閉じると、高坂さんは、


麗奈 「よしよし。」


 と言ってから、再び手を動かし始める。
 なにをしているのだろう。
 内臓を動かしてはいるが、交ぜている、という感じではない。
 二十秒程経った所で、私が


久美子「未だ?」


 と声を掛けると、
122 :120/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:29:29.86 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「もうちょっと待って。」


 との返事。
 続いて、


麗奈 「もう直ぐ終わるからねー♪」


 という、軽快な口調。
 いい事が待っているに違いない。声ねから、そんな期待が生ずる。
 程無く、胸の上で手が動いている感覚が、無くなる。


麗奈 「うん、いいよ。」


 独り言の様な、判断に迷う台詞だった。私が、


久美子「……え?」


 と漏らすと、


麗奈 「目を開けていいわ。」


 と返って来た。
 目を開ける。高坂さんは、両手に一本ずつ、小腸を持っていた。
123 :121/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:29:59.94 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「じゃーん。第一回、内臓当てクイーズ!」


 なんか始まった。


麗奈 「それでは問題です。どちらが久美子ちゃんの小腸でしょーか。制限時間は十秒。」


久美子「え?」


麗奈 「いーち。」


久美子「ちょ……。」


麗奈 「にーい。」


 どうしよう、全然時間が無い。


麗奈 「さーん。」


 全然分かんないし。


麗奈 「しーい。」
124 :122/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:30:29.90 ID:j7V3WS/C0
 カウントは無情に進む。考えても分かる様な物では無さそうだったので、当てずっぽうで答えを決める。「九」まで行った所で回答を促す様な雰囲気になったので、


久美子「こっち!」


 と、向かって左側、高坂さんが右手で持っている方を指し示す。


麗奈 「ファイナルアンサー?」


久美子「……フィイナルアンサー。」


麗奈 「……では、こちらの左手の小腸は、もう選べません。」


 と言いながら、左手に持っていた方を、ゆっくりと下ろしてゆく。なんの真似だよ。
 下に置いてから、


麗奈 「じゃあ久美子、ニッパーを頂戴。」


 と言う。


久美子「……ニッパー?」


麗奈 「その左手で持ってる奴よ。」
125 :123/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:30:59.71 ID:j7V3WS/C0
久美子「あ、これか。」


 今まで私が持っていたペンチは、「ニッパー」という名のペンチだったのか。
 左手に持っていたニッパーを、高坂さんの左手に渡す。


麗奈 「ありがと。……ねえ、代わりにこっちを持って。」


 空いた左手に、右手の小腸を押し付けてきたので、受け取る。感触が気持ち悪い。
 すると、高坂さんは、


麗奈 「じゃ、答え合わせね。」


 と言って、自分の小腸を御中に入れ始める。
 どんどんと入れてゆく。
 しかし、私が手で持っている部分が強く引っ張られる事は無い。
 私の体の上にぶちまけられている高坂さんの小腸の量が減ってゆくに連れて、当たりを引いた、という確信が強くなってゆく。
 軈て、残りが少なくなると、高坂さんは入れるのをやめ、私の小腸の上に載せたままの自分の小腸を掴んだ状態で、私に向かって微笑む。


麗奈 「せーかいはっぴょー♪」


 まあ、私の持っている方が正解だったって、もう判ってるんですけどね。
 あの掴んでいる部分は、十中八九、私の小腸とは繋がっていまい。


麗奈 「えい!」
126 :124/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:31:29.81 ID:j7V3WS/C0
 高坂さんが勢い良く両手を持ち上げると、彼女が掴んでいた小腸は、果たして、私の体から、完全に離れた。


麗奈 「だいせーかーい!」


 高坂さんが、小腸を私の胸の上に下ろし、左手のニッパーを右手に移す。


麗奈 「では、正解した久美子ちゃんに御褒美です。」


久美子(え?)


 御褒美あるんだ。やった♪


麗奈 「貸して。」


 高坂さんが、私の左手から、小腸を受け取る。


麗奈 「御褒美ターイム! ……今から、久美子ちゃんの小腸を、このニッパーで、ちょきちょきします。」


 ……ん? それって御褒美なの?
 と思いながら見ている前で、切る場所を定め、


麗奈 「いきまーす。」
127 :125/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:31:59.92 ID:j7V3WS/C0
 ちょきん、と刃を入れる。
 そのままちょきちょきと切り続け、苦も無く、私の小腸を切断してしまう。完全に切り離されて二つに分かれたので、左手に支えられていなかった方が、私の体の上に、ぽとりと落ちる。


麗奈 「はーい切れたー。……じゃあ久美子、また持ってて。」


 高坂さんが、右手のニッパーを渡してくるので、受け取る。


麗奈 「じゃあこれを、こーして……。」


 彼女は空いた右手で、切り落とされた方の小腸を、私の胸の上で、少し動かす。
 そして若干手を離したかと思うと、勢い良く引っ張り上げる。私に小腸の真横が見える様にして、その断面に、左手で持っていた方の断面を、近付ける。


麗奈 「ここからが本番よ。」


 そう言うと高坂さんは、切断面をくっつけ、傷口がぴたりと合う様に、位置を微調整する。
 程無く、繋ぎ目が判らなくなる。


麗奈 「ほおら、繋がった。」


久美子「……あ、うん。」


 見れば分かる。
 しかし高坂さんは、私の返事に満足しなかったのか、その顔に少し疑問の色を滲ませる。
128 :126/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:32:30.32 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「……繋がったのよ?」


久美子「うん、そうだね。」


麗奈 「……あ、気付いてないのね。」


久美子「え? なにを?」


麗奈 「ふふふ、目を閉じて。」


久美子「え?」


 また? と思いつつ、さっさと目を閉じる。
 すると、今度は私の小腸が御中の中に仕舞われていく様な感覚が、下腹部に訪れる。
 出した分を全部仕舞う積もりなのか、中々終わらない。


麗奈 「こんなもんでいいかな。」


 その言葉と共に、高坂さんの手の動きがにぶくなる。
 しかし、胸と御中の上には、未だ小腸が残っている感覚がある。
 訝しんでいると、その残った小腸が、胸の上から持ち上げられる。


麗奈 「久美子、目を開けて。」
129 :127/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:32:59.85 ID:j7V3WS/C0
 開ける。高坂さんが右手で、私の小腸を鷲掴みにしていた。彼女の指からぶらりと垂れた小腸が、私の御中へと続いている。
 高坂さんは、どうだ、と言わんばかりの表情で私の顔を覗き込んでいるけれど、意図が良く分からない。


麗奈 「未だ気付かない? 良く見て。」


 と言うと高坂さんは、右手でまとめて掴んでいた二本の小腸の内の一本を、左手で掴み、


麗奈 「これでどーだ。」


 と呟きながら、両手を使って、するすると伸ばしてゆく。そして、三十センチメートルぐらい真っ直ぐに伸ばした所で、手をとめる。
 いや、なんか変だ。私の二本の小腸を、なにかで固定している?
 と思った直後に、


麗奈 「えい。」


 がくんと傾ける。
 落ちた。


久美子(え?)


 想定していなかった動きをした。
 高坂さんが左手を下に、右手を上に動かすと、私の御中に続いている私の小腸が、高坂さんの左手の上に、落ちた。高坂さんが掴んでいるのは、私の小腸じゃなかった。
130 :128/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:33:29.92 ID:j7V3WS/C0
久美子「……え?」


 高坂さんに伝わる様に、大きな声を出す。
 その彼女は私の反応に満足したのか、にやりと笑みを浮かべてから、両手を水平に戻し、


麗奈 「そーれ。」


 と言いながら、今度は反対側に傾ける。
 落ちる。
 高坂さんの左手に触れていた私の小腸が、高坂さんの右手の上に、落ちた。
 私の小腸は、ぴんと張った高坂さんの小腸の上に、載っているだけの様だった。


久美子「え? それ、どうなってるの?」


麗奈 「シーソー。」


 と言いながら、高坂さんは手を水平に戻し、


麗奈 「ガタン。……ゴトン。……ガタン。……ゴトン。」


 両手を交互に上下させ、遊ぶ。いやいや、そういう意図の質問ではないんですけど……。


麗奈 「久美子も遣ってみる? ガタン。」


 どうしよう、全然遣りたいと思えない。
131 :129/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:34:01.24 ID:j7V3WS/C0
久美子「んーん。」


 少し首を振る。


麗奈 「そう。……ゴトン。」


久美子「あの、それより……。」


麗奈 「ん?」


久美子「そろそろ起きたいんですけど……。」


麗奈 「ああ。じゃあ起きてもいいわよ。」


 ん、遠回しに「このプレイをやめて内臓と御中を戻してくれ」って伝えたかったんだけど、通じなかった。
 高坂さんが、ぱっと、両手を開く。
 ぼとりと、手にしていた小腸が落ちる。
 若干右側に移動してから、


麗奈 「さあ。」


 と言いながら両手を伸ばして、私の手首を掴んでくる。
132 :130/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:34:30.12 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「そおれっ。」


 強引に引っ張られる。
 がくんと、上半身が起きた。


久美子「あ、ありがと。」


 高坂さんは微笑を作ると、


麗奈 「いいのよ。」


 と言って、私の手首を離す。
 私も手を下ろし、同時に、視線も下ろす。
 高坂さんの小腸と私の小腸が、私の右太股に載っていた。
 そのまま御中の切れ目まで視線を動かしてから、ゆっくりと顔を高坂さんに向けて、


久美子「あの、これ、戻していいかな?」


 と訊く。


麗奈 「これ?」


 と返ってきたので、私は、ちらりと腹部に目を遣ってから、
133 :131/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:35:00.25 ID:j7V3WS/C0
久美子「私の御中。」


 と、怖ず怖ずと答える。
 すると、高坂さんは事も無げに、


麗奈 「ああ、それ、戻せないわよ。」


 と言う。


久美子「……え?」


麗奈 「だって繋がってるもん。……見て。」


 高坂さんは自分の腹部に顔を向けると、御中から出ている小腸を、両手で指差す。


麗奈 「私の小腸がこう伸びてて、そこで久美子の小腸と――」


久美子「あ。」


 ようやく意味が判った。


久美子「繋がってる! 繋がってたんだ! 自転車の鍵みたいに!」


麗奈 「ピンポーン。」
134 :132/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:35:30.11 ID:j7V3WS/C0
久美子「そーだったんだー。」


 改めて確認する。
 私の御中から飛び出した小腸が、私の太股の上で高坂さんの小腸の下をくぐり、そこでぐるりとUターンし、今度は高坂さんの小腸の上を通り、また御中の中へ戻っていた。


麗奈 「どお? 私と繋がった気分は。……これからずっと一緒ね。」


久美子「え? ずっと? ……戻さないの?」


麗奈 「ん、戻して欲しいの? 久美子は私と一緒に、居たくないの?」


久美子「いや、そういう訳じゃ――」


麗奈 「じゃあどういう訳?」


 強い語調。


久美子「えーと……。」


 高坂さんがきつい目差を向けてくる。
 どうしよう、困った。


久美子「その……、あした学校あるし……。」
135 :133/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:35:59.91 ID:j7V3WS/C0
 私がたじろぎながら弁明すると、高坂さんの表情が俄に和らぎ、


麗奈 「ふふっ、冗談よ。直ぐに戻して上げる。……吸血鬼の体でしか出来ない事を遣ってみたかっただけ。」


 と言う。


久美子「吸血鬼の体でしか出来ない……。」


麗奈 「そう。小腸を殆ど引っ張り出したのだって、そう。……普通の人間だったら出血多量で死ぬわよ。……便利よね、出血しない体って。」


久美子「そうだったんだ……。」


 そういえば、さっきから一滴も血を見ていない。


麗奈 「ねえ、もう一つ人間の体じゃ出来ない事があるんだけど、いいかな?」


久美子「ん、なに?」


麗奈 「その前に、ニッパーを頂戴。」


久美子「ああ、うん。」
136 :134/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:36:29.94 ID:j7V3WS/C0
 私がニッパーを返すと、高坂さんは二人の御中を元に戻した。若干体液を吸った四枚のタオルは、レジャーシートの上に置いて、私の座っている所へと戻って来る。
 右斜め後ろに膝を突いたので、改めて訊く。


久美子「で、やりたい事ってなに?」


麗奈 「うん。……首、切っていい?」


久美子「首?」


 右手の人差指で首に触れ、


久美子「この首?」


 と訊く。


麗奈 「うん。その首。」


久美子「いいけど……。」


麗奈 「いいの? 完全に切断するわよ?」


久美子「え、だって、吸血鬼なら死なないんでしょ?」
137 :135/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:36:59.89 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「そうだけど……、」


 そう言うと、にやりと笑い、


麗奈 「その認識が間違ってて、実際には死んじゃうかもよ?」


 と続ける。
 あはは、意図が判った。私も笑って、


久美子「またまたあ。死ぬ様な事は、しないんでしょ?」


 と応じる。
 そうすると、今度はナイフをゆっくりと近付けて来る。
 刃を、私の首に、ぴたりと付けて、


麗奈 「ほんとにいいの?」


 と威して来る。
 顔がにやついているから、恐怖は皆無だった。


久美子「いいよ。一杯切って♪」


 私の体は、その為にあるんだから。
 すると、高坂さんは顔を伏せて、くっくっと笑いながらナイフを離す。そして、
138 :136/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:37:30.58 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「あーあ、詰まんないの。脅えてくれないと面白くないじゃない。」


 本音を打ちまける。


久美子「ふふふっ。」


 こんなの全然怖くない。今の私にとって一番怖いのは、高坂さんに嫌われる事だ。嫌われるくらいだったら、死んだ方が増しだ。


麗奈 「じゃあさ、若し、私の気が変わったら、どうする?」


久美子「え? 『どうする』って?」


麗奈 「切断した久美子の首を、二度と体に戻さなかったら。」


久美子「そうしたらどうなるの?」


麗奈 「その時は、確実に死ぬわね。……どうする? 切り取った久美子の首を、部屋に飾りたくなっちゃったら。」


久美子「部屋に?」


麗奈 「うん。ホルマリンに漬けて♪」
139 :137/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:38:00.01 ID:j7V3WS/C0
 高坂さんは、嬉々として言った。
 私の御主人様への気持ちを試しているのかな。
 そんなの、答えは一つだ。


久美子「いいよ。」


麗奈 「ん、ほんとにいいの?」


久美子「うん。私、高坂さんの為にだったらなんでもするよ。」


 と言うと、高坂さんは少し笑う。


麗奈 「なんでもって、さっきは服を脱ぐのや放尿するのを嫌がったじゃない。」


久美子「んー、そうだけど……、逆にあれで吹っ切れちゃったのかも。今は、高坂さんの為にだったら、私、なんでも出来るよ。」


麗奈 「そう、なんでも? ……嬉しい、愛してるわ、久美子。」


 あ、愛し――


久美子「わ、私も! 高坂さんの事、世界で一番、愛してるよ!」


麗奈 「あはは、世界で一番なんて、大袈裟ね。」
140 :138/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:38:29.85 ID:j7V3WS/C0
久美子「んーん、大袈裟じゃないよ。私、高坂さんの為にだったら死ねるよ。」


麗奈 「まあ、じゃあほんとに飾っちゃおうかしら。」


久美子「うん。いいよ。」


 私が答えると、高坂さんは私を見詰めながら、すっと両手を伸ばしてくる。
 頬に両手を触れながら、


麗奈 「いい子。」


 と言う。
 ああ、幸せ。
 この人とずっと一緒に居たい。この人の希望を叶えたい。この人の為なら死んでもいい。仮に、この人の期待に応えられないんだったら、私の人生に意味など無い。


麗奈 「久美子、愛してるわ。」


久美子「あ、私も、高坂さんの事、愛して――」


麗奈 「久美子。」


 高坂さんの表情から、微笑が消える。


久美子「……え?」
141 :139/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:38:59.81 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「麗奈。」


 ゆっくり、はっきり発音する。
 どういう意味だ?
 私が反応出来ずに固まっていると、


麗奈 「麗奈って、呼んで。」


 と付け足す。


久美子「麗奈……さん。」


麗奈 「んーん、麗奈。」


久美子「麗奈……。」


麗奈 「そう。」


 高坂さんが、目を細めて小さく頷く。


麗奈 「久美子。」


 そう言って、ゆっくりと顔を近付けて来る。
142 :140/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:39:29.89 ID:j7V3WS/C0
久美子「麗奈。」


麗奈 「久美子。」


 更に近付けて来る。


久美子「れ……え?」


 この流れってまさか――
 唇が接触。


麗奈 「ん……。」


 あ、高坂さんの唇、柔らか、呼気が、顔近っ。


麗奈 「あ……。」


 上の唇が、濡れて、下の唇、挟まれ――


麗奈 「んあ……。」


 舌が、入って来る。唇、気持ちいい。
143 :141/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:39:59.92 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「ん……。ん……。あ……。」


 高坂さん、やばいよ、そんなに激しく、私……。
 腕が震える。


久美子(あ……。)


 体の力が抜ける。
 どん、と体に衝撃。
 暗い。


久美子「……。」


 数秒経ってから、石畳に倒れて天を仰いでいる事に気付いた。
 高坂さんが、私の顔を覗き込んで来る。


麗奈 「久美子、生きてる?」


久美子「あー、はい。なんとか……。」


麗奈 「ふふっ、行き成り刺激が強過ぎたかしらね。続きはまた今度ね。」


久美子「はい……。」


 ああ、いい所だったのに……。私の馬鹿!
144 :142/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:40:29.78 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「ねえ、起きれる?」


久美子「ん……。」


 体は正常に戻っていた。一人で起きられた。
 私が上半身を起こして高坂さんに目を遣ると、


麗奈 「じゃあ、遣りましょ。」


 ナイフを顔の高さまで持ち上げ、怪しい笑みを浮かべる。


久美子「あ……。」


 遂に切るんだ。


麗奈 「俯せになって。」


久美子「うん。」


 指示に従い、その場で俯せになる。石畳に向かって


久美子「これでいいのかな。」


 と言うと、
145 :143/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:41:00.02 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「ええ。いい子ね。」


 と返って来る。


麗奈 「じゃあ、いくわよ。」


 その言葉の直後に、うなじに、指で触られる様な感触が訪れる。


麗奈 「ここが骨だから……。」


 両手の指で、切る場所を探っているらしい。
 ぐりぐりと触られる。


麗奈 「ここら辺かな。」


 指の動きが止まる。
 そして、片方の手がうなじから離れたかと思ったら、その場所に、ちくりと冷たい感触。


麗奈 「久美子、今、ナイフの刃を当てたの、判る?」


久美子「うん。判るよ。」


麗奈 「どお? 心の準備は出来た?」
146 :144/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:41:29.82 ID:j7V3WS/C0
久美子「うん。大丈夫。高坂さんの為だったら、縦え死んでも文句は言わないよ。」


麗奈 「久美子。」


久美子「え?」


麗奈 「麗奈。」


久美子「……あ、御免。」


麗奈 「ふふっ。……じゃあ、今度こそいいかな。」


久美子「うん。いいよ。」


麗奈 「ねえ、最後に、麗奈って言って。」


久美子「うん、分かった。……麗奈、好きだよ。世界で一番。……切って!」


 ガリ、と音がした。
 しかし、押される感じはあれど、刃が入って来る感じは無い。


久美子・麗奈「……。」
147 :145/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:41:59.93 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「御免、骨に当たったみたい。もう一度いい?」


久美子「うん。何度でも切って。」


 拍子抜け。こんなのあり?
 そう思っている内に、ナイフの位置が若干動かされる。


麗奈 「じゃあ、刺すわよ。」


久美子「うん。」


 ずぶり、と刃が刺さった。
 今度こそ成功した。見なくても判る。


麗奈 「どお? 体動かないでしょ。」


久美子「うん、えーっとね、――」


麗奈 「え?」


久美子「……え?」


 腕は動くが脚は動かない。
148 :146/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:42:29.76 ID:j7V3WS/C0
久美子「あ、面白ーい。脚が無くなっちゃったみたい。全く感覚が無いよ。」


麗奈 「そ、それは脚の神経が切れたからよ。他も直ぐに切って上げるから。」


久美子「……うん。」


 今、高坂さんの声の様子がちょっと変だった気がする。


麗奈 「いくわよ。」


 ナイフが引き抜かれ、刺される。
 引き抜かれ、刺される。
 そうして、ぶすり、ぶすり、ぶすり、と刺されている内に、異変に気付いた。
 息が、出来ない。
          *
 高坂さんは私の体をごろりと転がしながら、首の周囲を手早く刺し続けた。二十秒程で一回転し、私は再び石畳と向かい合った。
 その状態でも何度かぐさりぐさりと刺したあと、私の頭は両手で掴まれた。
 ブチブチ、という音がして、石畳ではない、なにか柔らかい物に勢い良く対面した。それはとてもあたたかかった。そして、動いていた。


麗奈 「やった。……取れた。」


 私の頭が持ち上がる。私の顔が今まで密着していたのは、高坂さんの御中だった。
 その彼女は、石畳に腰を下ろした状態だった。
 高坂さんが、私の顔を覗き込んで、
149 :147/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:42:59.86 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「どお? 私の声、聴こえてる?」


 と問い掛けて来る。
 ばっちり聴こえている。笑みを浮かべてみせる。


麗奈 「あ、やった。意識があるのね。……やっぱり吸血鬼の体って最高ね。」


 私もそう思う。再び口角を上げてみせる。
 すると今度は、少し優しい顔付きになり、


麗奈 「どお? 久美子、生首になった気分は。楽しい?」


 と話し掛けて来る。
 楽しくはない。表情は変えなかった。


麗奈 「うん、でもね、いくら楽しくても、この状態ではさすがに長くは持たない筈だから、直ぐに戻しちゃうんだけどね。」


 ちょっと待った。楽しくはない。
 抗議の為に、顔を少し顰めてみせる。


麗奈 「ん? んーん、そんな顔をしても駄目よ。これは久美子の為なのよ。」


 ああ、駄目だ。全然通じてない。
 渋面を続けながら、口だけでも動かしてみる事にした。ゆっくり、
150 :148/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:43:29.95 ID:j7V3WS/C0
久美子(そ、う、じゃ、な、い。)


 と発音(?)する。
 すると、


麗奈 「おーよしよし、機嫌を直して。……ふふっ、丸で赤ちゃんみたい。」


 笑顔であやされる。
 えーん。どうしてこうなるのか。
 再び口を動かす。


久美子(れ、い、な。)


 私の声を聞いてよ。


久美子(れ! い! な!)


麗奈 「うーん、困ったわねー。機嫌が直らないわ。……おっぱいが欲しいの?」


 欲しい。そりゃ欲しいさ。
 高坂さんみたいに、などと贅沢は言わない。せめてCカップになりたい。
 私が口を動かすのをやめたからか、
151 :149/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:43:59.84 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「ん? おっぱいが欲しいんでちゅかー?」


 そう言いながら、私の顔を、ゆっくりと右の胸へと近付けていく。
 なんという事でしょう。唇が、乳頭に触れる。


麗奈 「ほら、よしよし。……機嫌直った?」


 直った。
 釈然とはしないが、それはそれ、これはこれ。
 高坂さんが、その美しい顔に慈しみの表情を浮かべながら、私に「授乳」をしているのだ。これで機嫌を直さなかったら、罰が当たる。
 ずっとこうしていたい。
 ずっと温もりを感じていたい。
 出来る事なら、高坂さんの子供として生まれ変わりたい。
 そんな私の気持ちを知ってか知らずでか、高坂さんが、


麗奈 「滝先生と結婚して赤ちゃんが産まれたら、こんな感じなのかな。」


 ぽつりと漏らす。


久美子(……滝先生?)


 頭は動かないので、目だけを目一杯見開き、高坂さんの顔を見詰める。
 程無く、高坂さんが私の視線に気付き、


麗奈 「あ、まだ言った事が無かったわね。……私さ、滝先生の事好きなの。……好きって言ってもライクじゃないよ。ラブの方ね。」


 仰天の告白をする。
152 :150/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:44:29.87 ID:j7V3WS/C0
久美子(な……。)


 目眩が始まった気がする。


久美子(なんであんな……、あんな奴のどこがいいんだ。)


 信じられない。あんな奴に惹かれているなんて。


久美子(確かに、ちょっと顔はいいけど、そんな簡単な事で好きにな――)


 突如、憎しみの感情が一気に沸き上がって来る。


久美子(あんの粘着悪魔め、私の高坂さんを誘惑したな!)


 そうでなければ、あんな男を好きになる筈が無い。
 外道! 畜生!


久美子(許せない。教師の癖に……。)


 そうだ、悪いのは全部滝先生だ。高坂さんは悪くない。
 きっと卑劣で邪悪な悪魔的姦計によって、高坂さんは正気を失っているだけなのだ。
 今度は焦燥感が込み上げて来る。
153 :151/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:44:59.91 ID:j7V3WS/C0
久美子(なんとかしなきゃ。)


 あの男の魔手から、私が救って上げなければ。


久美子(高坂さん!)


 目を上に向ける。


久美子(高坂さん目を覚まして!)


 駄目だった。ぼんやりと考え事でもしているみたいで、顔はこちらを向いてはいるが、視線がこちらに定まっていない。
 そうだ、さっきみたいに口を動かして語り掛けてみよう。目だけを動かすよりも増しな筈だ。


久美子(れ、い――)


麗奈 「あ。」


 私はたじろいだ。それは、私が想定していなかった事態だった。私の「い」の口の動きの所為で、私の唇が、高坂さんの乳頭を軽く撫でてしまったのだ。撫でた事に気付いた瞬間、私は少しぎょっとして、思わず口を動かすのをやめたので、唇は、乳頭に触れた状態で静止している。
 そして、この事態は高坂さんも想定していなかったらしい。丸で新しいおもちゃを与えられた子供の様に、爛々とした目で、視線をこちらに向けて来る。


麗奈 「ねえ、今の、ぞくっとした。もう一度出来る?」


 御安い御用である。
 唇を開けたり閉じたり、窄めたりして、乳頭を刺激する。
154 :152/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:45:29.82 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「あはは。そうそう、いい感じ。……ねえ、舌も使って。」


 使っていいんだ。
 願ったり叶ったりだ。遠慮無く、舌を突き出した。
 舌先が押していたのは、乳頭の外側の、緩やかな膨らみの部分だった。ここは、唇が届かなかった箇所だ。ぐるぐると円をえがく様に舌を動かして、丹念に舐め回す。


麗奈 「ふふっ、いい子。もっと激しく。」


 言われるままに、唇の動きも再開する。舌と唇の動きを気紛れに繰り出して、高坂さんの乳頭と乳輪を、精一杯翻弄する。


麗奈 「あーん、凄い遣る気。……久美子ちゃん、おっぱいしゅきでちゅかー?」


久美子(好きだよ。)


 恥ずかしいから言わないでよ。


麗奈 「んふ、そこそこ。」


久美子(ん? ここがいいの?)


麗奈 「そうそう、そこそこ。そこを優しく。舌で優しく攻めて。……ああん。」


 痺れる。高坂さんの色っぽい声に、堪らなく興奮する。
155 :153/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:45:59.97 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「久美子じょーず。……ねえ、その調子で下も気持ち良く出来る?」


 下?
 舌を、思いっ切り下に伸ばす。


麗奈 「ふふっ、そうじゃなくて……。」


 高坂さんが、ゆっくりと私の頭を移動させ、下に傾ける。
 下腹部の、更にその下が目に入る。大事な場所を隠す気が全く無いらしく、轢かれたカエル宜しく、脚が大きく開かれていた。詰まり、高坂さんは、丸出しの陰部を私に見せ付けたのだ。そうして、


麗奈 「こっちの事。」


 と言うと、私の頭の傾きを直す。二人の目が合う。


麗奈 「どお、出来る?」


 勿論だよ。微笑んでみせる。


麗奈 「じゃあ、いくわよ。気持ち良くして。」


 その台詞と同時に、私の頭がゆっくりと下ろされる。
 陰毛が眼前に迫る。舌を突き出した。
156 :154/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:46:30.72 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「あは♪」


 なにかに触れた。舌で押すと動く。
 ああ、これは小陰唇に違いない。舐め回す。


麗奈 「ああん、ちょっと待って、位置を調整するから。」


 そう言うと高坂さんは、頭を支えている手の場所を変えたり、上半身の傾きを少し試行錯誤した。そのあいだも私はせっせと舌を動かして、一番敏感な部分を探り続けた。


麗奈 「置いちゃおうか。」


 最終的に、私の首は切断面を接地する形で、石畳に置かれた。そして、高坂さんは下半身の位置を微調整すると、上半身を石畳に横たえた。


麗奈 「うん、いい感じ。」


 高坂さんはそう独り言ちると、自由になった両手で、上半身の愛撫を始めた。


麗奈 「あん。」


 負けていられない。私は、高坂さんの上半身を眺めながら、陰核を重点的に攻め始めた。


麗奈 「ああん、久美子、そこ気持ちいい……。」
157 :155/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:46:59.94 ID:j7V3WS/C0
久美子(ここ? ここなの?)


 舌に力が入る。


麗奈 「そお、そこお……。」


久美子(やった。私の舌でいっちゃえ。)


麗奈 「いい……。気持ちいい……。」


久美子(ほらほらあ♪)


麗奈 「ああん!」


久美子(ひひひ♪)


 高坂さんが、快楽の淵へと足を踏み入れてゆく。


麗奈 「あ……。ああ……。」


 その悦びの声が眷族の私を酔わせるのか、頭がぼんやりとしてくる。気持ちいい……。


麗奈 「んん……。」
158 :156/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:47:29.95 ID:j7V3WS/C0
久美子(ほら、ここがいいんでしょ? ……ほれほれ♪)


麗奈 「そんな……。」


久美子(私が、い、か、せ、て、上、げ、る♪)


麗奈 「んっ! ああ……。」


 高坂さんは今どんな表情をしているのだろう。顔は見えないけれど、自らの肉体をまさぐるその手付きと、色気を増していく嬌声からは、行為に没入して、どんどんと高まっている事が、明らかである様に思えた。


麗奈 「ああん……。もお駄目……。」


 私は、御主人様を悦ばせている。
 最高の気分だった。
 だのに――


麗奈 「あっ、滝せんせえ、そこ……。」


久美子(あ?)


 一気に目が覚めた。
 代わりに、怒りが沸いて来る。
159 :157/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:47:59.80 ID:j7V3WS/C0
久美子(あの野郎! ……殺す! 絶対殺す! ……あ、そうか。)


 単純な事に気付いた。


麗奈 「んっ。」


久美子(殺せばいいんだ。)


麗奈 「あん……。気持ち、いい……。」


 いくら相手が背の高い男の人と雖も、私は不死身の肉体を持つ吸血鬼なのだ。
 思わず、笑みがこぼれる。


久美子(絶対勝てる。……あは♪)


麗奈 「あ……あ……。」


 高坂さんにばれたら嫌われてしまうだろうから、こっそりと、上手くやらなければならない。
 しかしながら、高坂さんを惑わすあの下劣な存在を消し去れば、もう、この世界に邪魔をする者は誰も居ないのだ。私は、御主人様の愛を独占出来るのだ。なんと素晴らしい事だろう。


久美子(最高……。)


 再び、気分が良くなって来る。
160 :158/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:48:30.46 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「んっ……そこ凄い……。」


久美子(高坂さん、ずっと一緒だよ……。)


 私の目前には、あらまほしき未来が待っている。
 とてもよい気分だ。


久美子(ほら、高坂さん、気持ちいい?)


麗奈 「んあ……。」


久美子(高坂さん、高坂さんの……あ、「麗奈」だった。)


 急に思い出した。
 あはは、いけないいけない。「麗奈」って言わないと怒られちゃう。


麗奈 「ああん……。」


久美子(ほら、麗奈、ここがいいんでしょ? ……ほら!)


麗奈 「あん!」


久美子(あは。麗奈、麗奈の声凄く可愛いよ……。)
161 :159/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:48:59.86 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「あ、そこお……。」


 麗奈の敏感な場所を、攻め続ける。


久美子(私が、い、か、せ、て、上、げ、る。)


麗奈 「あ……、ああ……。」


久美子(ほら、ここ気持ちいいでしょ?)


麗奈 「ああん、駄目え……。」


 精一杯、舌を動かす。


久美子(ん?)


 その時、視界のふちが黒い事に気付いた。


麗奈 「そこ気持ちいい……。」


 真っ黒い範囲が、視野の中心に向かって、徐々に広がってゆく。
162 :160/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:49:30.76 ID:j7V3WS/C0
久美子(なんだこれ。)


 立ち暗みみたいだった。


麗奈 「あ……、あ……。」


 最後まで残っていた視界の中心からも、光が消える。完全な暗闇が訪れる。


久美子(あーあ、真っ暗だ。)


麗奈 「ああ……。」


 首を切り離した状態は長くは持たないと言っていた。そろそろタイムリミットなのかも知れない。
 酷い。これでは麗奈の痴態が拝めない。


麗奈 「いい……、気持ちいい……。」


久美子(んふ、よしよし♪)


 それでも、音は正常に聴こえる。麗奈の善がる声は、この世のどんな美声よりも美しい。
 舌も動く。
163 :161/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:50:00.03 ID:j7V3WS/C0
久美子(へへっ、いくまでやめないんだから。……それそれ♪)


 舌の動きを一気に強める。


麗奈 「ああん……。」


 今最も重要なのは、麗奈を絶頂まで導く事だった。舌が動く限り、動かし続けよう。
 縦えその所為で死ぬ事になっても、本望だ。愛する麗奈の為ならば、私はどうなったって構わない。


麗奈 「あ、あ……凄い……。」


久美子(ほおら、いっちゃえいっちゃえ♪)


麗奈 「ああ、いきそう。」


久美子(ん、いくの? 麗奈いっちゃうの?)


麗奈 「クリ気持ちいい、気持ちいい……、ああ。」


久美子(よしよし、いっちゃえー♪)


 ラストスパート。
164 :162/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:50:29.92 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「あ、あ……、もお駄目……、いく! いく! いく! あ!」


久美子(あ、いったあ♪)


 最後の仕上げだ。手抜かりが無い様に、丹念に刺激を続ける。
 私の舌は、その為にあるのだ。
 程無く、絶頂と同時に数秒止まっていた麗奈の呼吸が、


麗奈 「……はあ!」


 と勢い良く再開される。


久美子(ふふっ、気持ち良かったね♪)


 舌の動きは、やめない。最後まで、確りと、愛を込めて。


麗奈 「久美子……。」


 頭に、感触。


久美子(ん?)


 多分、麗奈が両手で、私の頭に触れたのだ。
165 :163/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:50:59.83 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「よしよし。」


 そのまま、優しく撫でて来る。


久美子(えへへ。)


 もう良さそうだ。舌の動きを弱める。
 刺激を弱めても、麗奈の撫で方は変わらない。
 という事は、もう刺激は必要無いらしい。完全にやめる。


麗奈 「偉いわ。」


久美子(ふふっ、麗奈の為なら当然だよ。)


 誇らしい。私は麗奈に素晴らしい行いをした。私達は特別な間柄になった。
 最高の気分だ。
 頭から、手が離れる。


麗奈 「よい……しょ、……っと。」


 多分、麗奈が起き上がった。
 間も無く、私の頭が両手で掴まれ、地面から持ち上げられる。


麗奈 「御褒美上げないとね。」
166 :164/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:51:29.86 ID:j7V3WS/C0
久美子(ん? 御褒美? やった♪)


 ……さっきみたいに変なのじゃないといいけど。


麗奈 「さあ、久美子、なにがいいかしら。」


久美子(えー?)


 困った。そんなの即答出来ない。
 でも、とってもいい気分だ。
 脳味噌が蕩ける……。


久美子(ああ、天国だ……。)


麗奈 「ん? 久美子。目を開けて。」


久美子(気持ちいい……。)


麗奈 「ねえ、久美子。……久美子!」


久美子(ん? うん、聴こえてる……。)


麗奈 「不味い……!」
167 :165/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:51:59.80 ID:j7V3WS/C0
 世界が揺れた気がした。
 そして、顔に違和感。


久美子(あ、なんかやってる。)


麗奈 「ここが……。」


久美子(麗奈はいい人だなあ……。)


 またなにかしてくれるんだ、私の為に。


麗奈 「早く……、早く付いてよ……。」


久美子(麗奈、愛してるよ……。)


麗奈 「早く早く早く!」


久美子(愛……。)


麗奈 「ああ、どうしよう……。」


久美子(愛して……。)
168 :166/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:52:29.93 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「御姉様、……御姉様あ!」


久美子(れ――)
          *
 暗い。


久美子(ん?)


 仰向けに寝ていた。
 ここどこだ? と顔を右に動かすと、隣にワンピース姿の高坂さんが寝ていた。


久美子(あ。)


 常軌を逸した行動の記憶が蘇る。
 直後に、自分も服を着ている事に気付いた。
 左に顔を向けると、高坂さんの荷物。
 私達は、レジャーシートの上に居た。良く見たら、二人分のスペースを作る為に、荷物は押し退けてあった。


久美子「ん……と。」


 上半身を起こす。
 ここは、神社の境内だった。


久美子「ああ……。」
169 :167/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:52:59.96 ID:j7V3WS/C0
 改めてがっかりした。この状況を見れば、嫌でも認めざるを得ない。あれは夢ではなかった。
 ……夢なら良かったのに。
 しょんぼりして荷物を眺めていると、ふと、はしの方に置いてあるナイフが目に留まった。刃が折り畳まれている。
 少し興味が涌いた。御尻を付けたまま躄ってレジャーシートの上を移動すると、座ったまま、ナイフを取り上げてみる。
 刃は、簡単に出せた。
 ぼんやりと眺める。
 あれが夢でないのだったら、刺しても痛みは殆ど無いし、数十秒で跡形も無く治る筈だった。しかし、若し私の体が吸血鬼の力を失っているとしたら……。


久美子「あーもう!」


 態と声を出しながら頭を振り、自らを奮起する。
 逡巡していても仕方が無い。目立たない場所を、少しだけ切ってみればいいのだ。
 自分の体を見る。切るとしたら、腕ではなく脚だろう。
 どこがいいだろう、と思いながら、じっと足を眺めていると、


あすか「お、目が覚めたね。」


 出し抜けに、声がした。あすか先輩の声だ。辺りを見回す。
 しかし、姿はどこにも無い。念の為に上半身を捻って真後ろも見るが、彼女はどこにも見当たらない。
 妙だ。立ち上がる。
 再び辺りを見回すが、居ない。
 回れ右して、後ろの風景にも目を凝らすが、居ない。
 どうなっているんだ? と怪訝に思っていると……


あすか「こっち。」
170 :168/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:53:30.73 ID:j7V3WS/C0
久美子(!)


 突然、背後から声が聴こえ、びくっとした。直ちに振り返る。
 あすか先輩が居た。


久美子「あ……なんですかそれ。」


 顔の横に、変な物体があった。


あすか「ん、これ? 優子ちゃんだよ。」


久美子「……ああ。」


 そう言われると、合点が行く。二メートル程先に突如として現れたあすか先輩が、なぜか同じ吹部の吉川先輩をおぶっていたのだった。ぱっと見謎だった物体は、吉川先輩の頭のてっぺんと、そこから突き出たリボンだった。


あすか「ん?」


久美子「え?」


 あすか先輩が、怪訝な顔をしていた。
 そのまま、
171 :169/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:53:59.86 ID:j7V3WS/C0
あすか「光ってる……。」


 と言いながら、不可思議な物でも見る様な表情で、私の顔をじっと見詰めながら、ゆっくりと歩いて来る。


久美子「……え? なんです――」


あすか「ちょっと待った。じっとしてて。」


久美子「……はい。」


 動くのを制止された。あすか先輩が、更に近付いて来る。
 私が顔を若干下に向けると、


あすか「黄前ちゃん、こっちを見るんだ。」


 と指示が来る。顔を上げると、


あすか「よしよし。そのままわたしの目を、じっと見て。」


 と、追加注文。
 そうして、手を伸ばせば届きそうな距離にまで近付いた時だった。


あすか「くいくいせーじん。」
172 :170/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:55:29.99 ID:j7V3WS/C0
久美子「……え?」


あすか「いや、それだけじゃないな。」


 なんと、まだ近付いて来る。
 さっきの悪夢が頭をよぎる。このまま無理矢理キスされるんじゃなかろうか。


あすか「文字か。……それにー……。」


久美子「いや、あすか先輩?」


 なに訳の分かんない事言ってんだこの人は。
 到頭、互いの距離が十センチメートルくらいになる。
 やばい。ほんとにキスされるんじゃ……。


あすか「これわたしの台詞? ……だな。……一七〇の、三四五。……三百四十五分の百七十か。……火曜。」


 誰か助けて。


あすか「……ん? 二千十八年六月五日? ……二十三時五十五分。……あ、目が疲れた。」


 と言って、顔を離す。
 良かった。唇は奪われずに済んだ。
 一体なんだったんだろう。
173 :171/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:57:29.88 ID:j7V3WS/C0
久美子「あの、なんなんですか?」


あすか「ん! ちょっと黙ってて。」


 きつい表情と口調だった。うう……。


あすか「えーと、二千十八で火曜だった訳で……、三百六十五は……、七が……、三百五十の……、三百六十四だから……、だと楽だったんだけど……、でも一多いから一つ後ろにずれて……、月曜。……あ、うるう年か。……じゃあ一致するか。」


 ほんとにこの人なに言ってんだろ。
 数秒のあいだ黙思していたあすか先輩が、顔をこちらに向ける。


あすか「ねえ黄前ちゃん。」


久美子「はい……。」


あすか「今日は西暦何年何月何日で何曜日かな?」


久美子「え? えーと、二千十五年六月五日、金曜日です。」


あすか「そーだよね。……やっぱそーだよね。」


 一人でなにかに納得している。
 こっちは意味分かんない事だらけだというのに!
174 :172/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/06(水) 22:33:00.19 ID:M8lWXEdT0
久美子「あ、あの、いーですか?」


あすか「ん、なに?」


久美子「なんでおんぶしてるんですか?」


あすか「これ? ……地面に寝かすのはちょっと気が引けたから、わたしがおぶってた。……黄前ちゃんが起きたんだから、代わりにそこに寝かせようか。」


久美子「あ、いや、そーじゃなくてですね……。」


あすか「ん?」


 あすか先輩は、けろりとした表情だった。
 質問の仕方を間違えた。
 この顔を見るに、私がなにを知りたいのかを知っている癖に、恍けて楽しんでいるのだ。この人は時々、そういう事をする。
 もう一度だ。


久美子「あの、吉川先輩はなんで眠ってるんですか?」


あすか「あ、これは眠ってるんじゃなくて、実は気絶してるんだけ――」


久美子「なんで気絶してるんですか?」


 私が語気を強めると、あすか先輩はにんまりと笑い、
175 :173/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/06(水) 22:41:00.67 ID:M8lWXEdT0
あすか「あれえ? 黄前ちゃんちょっと怖い。怒ってる?」


 と、心から楽しそうに言う。
 ああ、この人めんどくさい。


久美子「怒ってませんー。……で、なんで気絶してるんですか?」


あすか「うん、それはね……。」


 そこで、ふっと笑みが消える。


あすか「人間に戻された所為だよ。」


久美子「……え?」


あすか「人間に戻された所為。……吸血鬼から人間に戻されると、一時的に気を失うんだ。……そっちの麗奈ちゃんもね。」


久美子「……。」


 言葉が出ない。
 疑問はいくつも浮かんだが、先ずはこれだろう。


久美子「あの、あすか先輩、吸血鬼ハンターだったんですか?」
176 :174/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/06(水) 22:42:00.22 ID:M8lWXEdT0
あすか「わたし? わたしはハンターじゃないよ。……わたしの『友達が』吸血鬼ハンターなんだ。」


 それはそれで問題な様な。


久美子「それって言っていいんですか?」


あすか「それ? それってどれ?」


久美子「自分がハンターだって事、人に言っていいんですか?」


あすか「良くないねえ……。」


久美子「じゃあ――」


あすか「わたしの場合は特別。……吸血鬼と戦っている場面を目撃しちゃったから。しょうがない。……それで、下手に隠すより、正直に打ち明けて黙っていて貰った方が得策って思ったんじゃないかな。……ま、今のはわたしの推測だけど。」


久美子「そーなんですか……。」


あすか「そ。……だから、最初にわたしに近付いて来たのも、わたしを監視するのが目的だったんじゃないかな。」


久美子「監視……。」
177 :175/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/06(水) 22:42:29.68 ID:M8lWXEdT0
あすか「うん。……あとは、機関への勧誘かな。ハンターにならない? ってさそわれたから。……今では普通に友情が芽生えていると思うんだけどねー。」


 あすか先輩は事も無げに言う。
 色々あったらしい。しかし……


久美子「それ、私に言っていいんですか?」


あすか「ん、別にいーよ。どーせ黄前ちゃんの記憶……。あのさ、吸血鬼から人間に戻されるとそのあいだの記憶は全部消えるって麗奈ちゃんから聞いてる?」


久美子「あ、はい。聞きました。」


あすか「そう、なら話は早い。噛まれる直前の記憶も含めて綺麗さっぱり消えるから、なーんの問題も無いよ。……怖い?」


久美子「いや、別に怖くは……。」


あすか「どーして。人間に戻されちゃうんだよ。」


久美子「人間に戻っても不都合は無いんじゃないですか? 今までなにも困ってませんでしたし。」


あすか「うーん、さばさばしてるね。絆が途切れたからかな。」


久美子「……絆?」
178 :176/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/06(水) 22:43:00.62 ID:M8lWXEdT0
あすか「うん。噛んだ側と噛まれた側のあいだにだけ存在する、精神的な繋がりの事だよ。……黄前ちゃん、さっきまで麗奈ちゃんに絶対服従だったんじゃない?」


久美子「あ、はい。そんな感じでした。」


あすか「吸血鬼の能力の一つだよ。……強力な主従関係が強制的に生まれて、眷族は主人に逆らえないんだ。……どーだった? 楽しかった?」


久美子「最悪でした!」


あすか「あはは、面白いね。でも繋がっている時は楽しかったでしょ? ……幸せだったでしょ? ……気持ち良かったでしょ?」


久美子「……知りませんー。」


 とゆーか一刻も早く忘れたい。さっさと人間に戻して。


あすか「えー? 神聖な神社の境内でおしっこするの気持ち良くなかったのー?」


久美子(!)


あすか「神聖な神社の境内で裸を露出したりー、神聖な神社の境内で愛する麗奈ちゃんとあーんな事やこーんな事をするの気持ち良くなかったのー?」


久美子「……。」


 まさか高坂さんが洗い浚い喋ったのか。
 終わった。私の人生終わった。
179 :177/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/06(水) 22:43:30.14 ID:M8lWXEdT0
久美子「あの、あすか先輩……。」


あすか「ん、なに?」


久美子「殺して下さい。」


あすか「殺さないってば。……随分短絡的だね、黄前ちゃん。」


久美子「そ、……先輩は当事者じゃないからそーゆー事が言えるんです……。私、もー御嫁にいけません……。」


あすか「そっちじゃない。」


 先輩は、はっきりくっきり発音した。
 私が先輩の顔にまじまじと目を遣ると、先輩は、一呼吸置いてから口を開いた。


あすか「ねえ黄前ちゃん。……黄前ちゃんと麗奈ちゃんはね、わたし達が来た時には既に服を着ていたんだよ。……それにね、二人がなにをしていたかは、別に麗奈ちゃんの口から直接聞いた訳じゃないんだ。……わたしがなにを言いたいのか分かる?」


久美子「……いえ。」


 若干首を振る。


あすか「よし、いい事教えて上げる。……普通の人間が吸血鬼になった時にはね、先ず好きな人を噛む傾向があるんだ。理由はなんだと思う?」
180 :178/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/06(水) 22:44:00.38 ID:M8lWXEdT0
久美子「知りません……。」


 いいから先を言ってよ。


あすか「一つ目は、言うなれば親切心から。……筋力も持久力も遥かに向上するし、傷は数十秒で消えるし毒も効かないし病気にもならない。……なにより主人と精神的に繋がって気分がいい。……だから、この素晴らしい状態を是非ともあの人にも体験させて上げよう、と思う。」

あすか「で、二つ目は性的な欲望から。……眷族は主人に忠実って、自分も吸血鬼になって身を以て知っているからこそ、それを利用して思いを晴らそうとするんだ。……詰まりだね、噛まれた直後の眷族と、その主人が裸で居る事は別に珍しくないんだよ。勿論、そうじゃない事もあるけど、黄前ちゃんは裸になった。……でしょ?」


久美子「……あ。」


あすか「うん、気付いたね。……それにね、おしっこした跡があるからと言って、黄前ちゃんの物とは限らないじゃないか。……若しかしたら麗奈ちゃんのかも知れないし。……でしょ?」


 あすか先輩が、その美しい顔貌に、微笑を浮かべる。


久美子「ああ……。」


 やられた。まんまと口車に乗ってしまった。
 なんと狡賢い。


久美子「先輩、はめましたね。」


あすか「はまっちゃうのが悪い。面白いくらいに顔に出てたよ。……で、どんな感じだったの? 御姉さんに詳しく聴かせて?」
181 :179/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/06(水) 22:44:29.60 ID:M8lWXEdT0
久美子「……黙秘します。」


あすか「えー? けちけちしないで話してよ。わたしも色々教えて上げてるじゃない。」


久美子「……嫌です。」


あすか「……あっそ。じゃあいいや。麗奈ちゃんに訊くから。」


久美子「え? ……さっき、記憶は全部消えるって……。」


あすか「うん。思い出させる方法があるんだ。あとで見せて上げる。」


 酷い。そんなの反則だ。


久美子「見せてくれなくていいです……。」


あすか「ふっふっふー。そうはいかんざき。」


久美子「……。」


 最悪だ。この状況……とギャグ。
 なんとか出来ないのか。
 強制的に阻止する為には……。
182 :180/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/06(水) 22:45:00.55 ID:M8lWXEdT0
久美子(あ。)


 閃いた。遣らせない方法があった。
 思わず、笑みがこぼれる。


久美子「ねえ先輩。」


あすか「ん、どしたの?」


久美子「余計な事、しないでくれません?」


あすか「なんだよ急ににやにやして。気持ち悪いな。」


久美子「えー? だって、想像したら楽しくなって来ちゃってー♪」


あすか「あー、なんか良からぬ事を企んでるな。」


久美子「いえいえ、とってもいい事ですよ。」


あすか「ふーん。で、なに考えてるの?」


久美子「先輩、私に噛まれません?」
183 :181/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/06(水) 22:45:30.03 ID:M8lWXEdT0
あすか「噛まれる? なんでさ。」


久美子「だって、そうしたら私の命令には逆らえないでしょ?」


あすか「そうなると思う?」


久美子「あー駄目駄目。抵抗しても無駄ですよー。……背中に吉川先輩が居て、逃げる事も戦う事も出来ないじゃないですか。先輩無防備過ぎですよー♪」


 しかもこっちにはナイフまである。


あすか「無防備ねえ……。これ見て。」


久美子「ん? ……うあっ!」


 強烈な目眩。体が強張る。
 その場に、がくんと両膝と両手を突く。
 目前で石畳が揺れていた。両腕で体を支えて持ち堪え、なんとか倒れずに済んでいる。
 上半身から冷や汗が噴き出しているのを感じる。


久美子「はあ……、はあ……。」


 なにかとても嫌な物を見てしまった気がする。凄まじい嫌悪感。なんだ今のは。
 心臓が早鐘の様に鳴っている。
 頭がぐらぐらする。
 不安で堪らない。
184 :182/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/06(水) 22:45:59.28 ID:M8lWXEdT0
あすか「あーあ。」


久美子「はあ……、先輩……、今のは……。」


あすか「十字架だよ。人間上がりの半端な吸血鬼には良く効くんだ。真性の吸血鬼にはぜーんぜん効かないけど。」


久美子「……真性?」


あすか「生まれながらの吸血鬼って事。……面白いよね。唯のステンレスなのにこーんなに嫌がるんだから。」


 ちっとも面白くない。


久美子「先輩……、それ、仕舞って下さい。」


あすか「もー仕舞ってあるよん。だから、という訳じゃないけどもう立てる筈だよ。……どっち道十字架の効き目は長くは持たないんだ。多分刺激に慣れちゃうんだ。脳が。」


久美子「……脳?」


あすか「そう。十字架に特別な仕掛けは無いし、実験では印刷された十字架を見せた場合でも、本物の十字架と誤認させる事が出来た場合にのみ、効果があった。……詰まりだね、十字架じゃなくて、十字架を見る者の心理の方に問題があるって事。……仕組みに就いては、目下研究中。」

あすか「唯、人間上がりの吸血鬼が主人に捨てられた時の反応に良く似ているから、多分、同じ機序が関連している。それなら真性の吸血鬼に効かないのも説明が付くしね。……真性吸血鬼には主人が居ないから、そもそもその反応を起こすメカニズムが存在しない。だから効かない。最大の疑問は、その引き金がなぜ十字架なのか、という事だね。」
185 :183/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/06(水) 22:46:29.87 ID:M8lWXEdT0
 ようやく気分が改善する。立ち上がりながら訊く。


久美子「詳しいですね。それもハンターの友達に聞いたんですか?」


あすか「んーん、これは母親から。」


久美子「母親?」


あすか「うん、研究員だったんだよ。政府の極秘施設で来る日も来る日も実験してた。……と言っても、もー二十年以上前の話だけどね。」


久美子「……。」


 今日一番リアクションに困る話を聞いた気がする。


あすか「だから、わたしの知ってる情報はちょっと古いかも知れない。……まー大して進歩してるとは思えないけど。」


久美子「……それは、どーしてですか?」


あすか「ん、わたしの勘。」


久美子「勘ですか……。」
186 :184/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/06(水) 22:47:00.83 ID:M8lWXEdT0
あすか「うん。……ねえ黄前ちゃん、吸血鬼の力の源泉ってなんだと思う?」


久美子「……さあ?」


あすか「お、ある意味正解。」


久美子「え?」


あすか「不明なんだよ。全く解明出来てない。……体の外から謎のエネルギーを得て、体のどっかに謎のエネルギーを蓄積して、緊急時には謎のエネルギーで筋力を増大して、傷付いた時には謎のエネルギーで傷が消えるんだけど、体は普通の人間と全く変わり無いんだ。もう御手上げ状態。」

あすか「苦し紛れに呪いの力、『呪力』って呼んでる。……磁力じゃないよ。じゅ、りょ、く。……そんな掴み所の無い存在だから、ここ二十年あまりの科学技術の進歩程度で研究が一気に進んでるとは思えないんだよねー。……まあ、劇的に進んでる可能性も無くは無いけど。」

あすか「……因みにこのエネルギー、実は普通の人間の体の中にもあって、多分血液の中に最も多く含まれてる。……だから吸血鬼は人間の血液をおいしく感じるんだね。……因みにおいしく感じる理由もやっぱり不明。舌の構造も普通の人間と全く変わりが無い。」

あすか「……というか吸血鬼の体は多分普通の人間の体と全く同じだよ。……真性、人間上がりを問わずにね。だから人間と交わって子供を作る事が出来るし、人間と同じ物を食べる事が出来る。……フィクションだと血液しか摂取出来ない、なーんて設定も見掛けるけど、我々は、じゃなかった、我々の世界ではそんな事は無いね。」

あすか「……大体血液だけでは生きるのに必要なエネルギーを賄えないと思うんだけど、その辺はどーなってんだろうね。どっかから謎のエネルギーでも得ているのかな。……あとはニンニクが駄目とか、不老不死だとか、鏡に映らないだとか、日光を浴びると砂になるとかあるけど、そーゆー事も一切無いね。」

あすか「大体なんで砂になるんだろうね。……体を構成している物質が砂になるんだとしたら、人間の体とは組成が大きく異なっているという事になるけど、そこん所はどうなんだろ。……それとも体は人間と同じで、物理法則の方が我々の世界とは異なっているのかな。……まあフィクションだからいいのか。」

あすか「……脱線したね。なんの話してたっけ。呪力だっけ。……呪力という謎のエネルギーが吸血鬼の体の中にあって、人間の体の中にもあって、人間の体の中では多分血液に最も多く存在しているんだけど、実は動物の血液だとぜーんぜん駄目なんだよねーこれが。血を飲んでも全く呪力を補充出来ない。」

あすか「この辺は実際に吸血鬼の体で実験してるらしい。……但し血液以外からも微量の呪力を得ているらしくて、体内の呪力が枯渇した状態の吸血鬼に水と食事しか与えなかった場合でも、直に呪力は回復するんだ。回復量はあまり多くはないけどね。」
187 :185/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/06(水) 22:47:31.36 ID:M8lWXEdT0
あすか「……因みに水と食事を与えなかった場合でも呪力は回復する。体は人間と同じだから当然脱水症状で死に懸けになるけど。……この辺り人間だったら深刻な人権蹂躙だよね。……まあ吸血鬼は人間じゃないからオーケー、ってスタンスなんだろうけど。」

あすか「とにかく吸血鬼の周りに呪力が無い状態、というのを作り出せないんだよね、現在の科学技術では。……分厚い鉛の壁で囲ってみたり、魔法瓶みたいに周りを真空にしてみたりしても、監禁している吸血鬼の呪力の回復速度は全く変わらなかったらしい。」

あすか「……結構喋ったね。あー疲れた。……とにかく吸血鬼の研究に就いてはこんな感じだね。これでもまだ本の一部だけど。……ここまでで質問は? 良く分からなかった所とか。」


久美子「あの、良く分からなかった所だらけなんですけど……。」


あすか「じゃー却下。」


久美子「え。」


あすか「わたしも個人的に考えたい事とか遣りたい事があるからね。……特に麗奈ちゃんが意識を取り戻す前に済ませておきたい。」


久美子「あの、じゃあ一つだけいいですか?」


あすか「ん、なんだね?」


久美子「さっきからずっと気になってたんですけど……、あすか先輩って高坂さんと仲良かったでしたっけ? ……その、いつから『麗奈ちゃん』って……。」


あすか「うん、まあ色々あってね。」


久美子「色々ですか……。」
188 :186/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/06(水) 22:48:29.88 ID:M8lWXEdT0
あすか「うん。色々。……黄前ちゃんの事も名字じゃなくて名前で呼んで上げよーか? ね、久美子ちゃん。」


 そう言って微笑む。
 なんか違和感。


久美子「……名字でいいです。」


あすか「あら、つれないね。……所で黄前ちゃん、もう一度目を見せてくれないかな。」


久美子「え、さっきみたいにですか?」


あすか「うん。さっきみたいに。」


久美子「いいですけど……。」


あすか「よし。」


 あすか先輩はそう言うと、遠慮無くずいと迫って来る。
 再び、至近距離から覗き込むと、


あすか「えーと? そーか、違和感か。……で、一八六の三四五。三百四十五分の百八十六か。……ちょっと進んだな。……で、日付け、ん? 水曜になってる。六日、二十二時四十八分か。……次の日か。……うーん、ありがと。もういいや。」


 なにかを確認してから、顔を離す。
 私も緊張を解く。
189 :187/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/06(水) 22:48:59.81 ID:M8lWXEdT0
久美子「あの、これほんとになんなんですか?」


あすか「ん? なんなんだろうね。」


 あすか先輩は適当にそう言うと、微笑を浮かべ、


あすか「ねえ黄前ちゃん、ちょっと目を閉じてくれないかな。」


 と、次の注文を出して来る。


久美子「目ですか?」


あすか「うん。」


 閉じると――
          *
 少し体が揺れた気がした。
 目の前に、あすか先輩の姿。


あすか「やあ、気分は?」


久美子「え? いや、普通ですけど……。」


あすか「そう。なにかおかしな所とか無い?」
190 :188/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/06(水) 22:49:29.86 ID:M8lWXEdT0
久美子「おかしな所?」


あすか「そうそう。……特にわたしの姿を見てなにか思わない?」


 私服姿のあすか先輩。変な所は無い。


久美子「いえ……。」


あすか「そう。……これでも?」


 くるりと振り返って、背中を見せて来る。
 何の変哲も無い後ろ姿だ。


あすか「どお?」


久美子「いえ、特におかしい所は……。」


あすか「そっか。」


 こっちに向き直る。
 丸で試着室から出てきて感想を訊いているみたいだ。


久美子「似合ってますよ?」
191 :189/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/06(水) 22:49:59.76 ID:M8lWXEdT0
あすか「ふふっ、ちょろい。」


久美子「え?」


あすか「いや、なんでも無いよ。」


久美子「そーですか。」


 なんでも無いならいいんだ。


あすか「じゃあ黄前ちゃん、また目を見せて。」


 あすか先輩が迫って来る。


久美子「あ。」


 あれか。
 顔が眼前に近付く。


あすか「えーと? ……一八九。三百四十五分の百八十九か。……日付と時刻は……こっちもあんまり変わってないな。……あ、もういいや。」


 顔が離れてゆく。
 一息つく。
192 :190/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/06(水) 22:50:29.86 ID:M8lWXEdT0
あすか「所で黄前ちゃん、そのナイフなに?」


久美子「え、これですか?」


 右手を胸の高さまで持ち上げる。


あすか「うん。随分物騒な物持ってるね。」


久美子「あ、えーっと……、ちょっと足でも刺してみようかなー、と思いまして……。」


あすか「足? ……誰の足?」


久美子「私です。」


あすか「なんで。」


久美子「その……、腕より足の方がいーかなー、って。」


あすか「なにそれ意味分かんない。」


久美子「いや……、自分の体が吸血鬼かどーか確かめたくてですね……。」


あすか「ああ、そーゆー事か。……じゃあもう刺す必要は無くなったね。十字架がばっちり効いた。……普通の人間だったらああはならないよ。」
193 :191/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/06(水) 22:50:59.82 ID:M8lWXEdT0
久美子「そーですね……。」


 噛もうとした矢先に、護身用の十字架を見せられ、酷い苦痛を味わった。忌々しい。
 その先輩の体を繁々と見遣る。
 同性の私から見ても惚れ惚れする様な、実にいい体だ。


久美子(ん?)


 今ならいける様な。


久美子「ねえ先輩。」


あすか「ん?」


久美子「先輩って凄く美人ですよね。」


あすか「なんだい藪から棒に。」


久美子「おっぱい大きいですよね。」


あすか「うわ、それセクハラー。」


 その言葉に、思わず笑みがこぼれる。
194 :192/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/06(水) 22:51:29.91 ID:M8lWXEdT0
久美子「ねえ先輩♪」


 視線がこちらを向く。


久美子「やっぱり私の物になりません?」


あすか「……あっ。」


 右手が動く。


久美子「そこか!」


 腹に一撃。
 先輩の動きが止まる。


あすか「……あ……あ。」


 上半身を前のめりに丸め、立ったまま痛みに耐えている。普通の人間の体に、吸血鬼の拳はさぞかしきつかろう。
 しかし、猶も、右手をゆっくりと動かす。


久美子「動くな! ……動くと刺します。」


 完全に静止した。
195 :193/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/06(水) 22:51:59.84 ID:M8lWXEdT0
久美子「分かってますよ? 右のポケットに十字架があるんですよねー♪」


あすか「さあ? ……どうかな!」


 右手を素早く動かす。
 下腹部を一突き。
 確かな手応え。


あすか「あ……あ……黄前ちゃんあっ!」


 ナイフを引き抜く。


久美子「動くと刺す、って言いましたよね?」


あすか「う……うあ……。なんて事を……。」


久美子「だいじょーぶですよ。私が噛めば直ぐに治りますから。」


あすか「……いや、黄前ちゃん、……君は重大な勘違いをしている。」


久美子「はい?」
196 :194/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/06(水) 22:52:29.80 ID:M8lWXEdT0
あすか「よくも……、よくも……。くっ、くははははは。」


久美子「は?」


 なぜか笑い出す。どうしてこうなった?
 あすか先輩はそのまま、不気味な笑みを浮かべながら、背筋をぴんと伸ばす。


あすか「よくもわたしのお気に入りの服に孔を開けてくれたね。」


久美子「え? ……え?」


 いや、服より御中でしょ。


久美子「なんで先輩……、御中は……。」


あすか「御中? 御中がどうかした?」


 そう言って、Tシャツをめくる。


あすか「……なんとも無いよ?」


 確かに、傷一つ無い。
197 :195/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/06(水) 22:52:59.57 ID:M8lWXEdT0
久美子「あ……。」


 シャツの裾を戻す。


あすか「くふふっ。」


久美子「先輩、まさか……。」


あすか「ん? どーしたの?」


久美子「吸血鬼……。」


あすか「ふふっ。……あれー? いつからわたしが真性吸血鬼じゃなくて唯の人間だと錯覚してたー?」


久美子「最初からです……。」


あすか「きひひっ。……いい顔だ。……所で黄前ちゃん、覚悟は出来てる?」


久美子「……覚悟?」


あすか「そお。……たーっぷり御仕置きして上げる♪」


 はっとした。ナイフを突き付ける。
198 :196/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/06(水) 22:53:29.84 ID:M8lWXEdT0
久美子「来ないで下さい。」


あすか「んふふっ。……まーだ彼我の戦力差が分かってないよーだねー。……ナイフ如きがわたしに通用すると思ってる。……でも。」


 突如、金属音が鳴り響く。はっとして下を見た。


久美子「え?」


 ナイフの刃が無い。
 というか、刃の部分だけ石畳に落ちていた。


あすか「ひひひひひ。……刃の無いナイフでわたしと戦う?」


 いや、それは不味い。根拠は無いが、とても戦える相手ではない。
 一刻も早く逃げなければ。
 振り返る。


久美子「あっ!」


 突然、下半身が圧迫される。
 手を遣ると、なにかに触れる。


久美子「え? なんだこれ!」
199 :197/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/06(水) 22:53:59.87 ID:M8lWXEdT0
 しかし、手はなにかに触れるのに、なにも見えない。
 なにも見えないのに、両脚がなにかに締め付けられていて、全く動かない。


久美子「なにこれ! どーなってんの!」


 目に見えない「なにか」が、私の両脚を取り巻いている。


あすか「あはははは。落ち着きなよ黄前ちゃん。……ほら。」


 見えない「なにか」によって私の体が若干持ち上がり、体の向きが強制的に戻される。


あすか「やあ。」


 あすか先輩と、再び対面。


久美子「これ、あすか先輩が?」


あすか「これ? これってなに? ペットボトルの事?」


久美子「はい? ……あ。」


 ペットボトルが、ふわふわと空中を移動していた。
 そして、あすか先輩の目の前で止まる。
 先輩はそのペットボトルのキャップを左手で撮むと、嗜虐的な笑みを浮かべながら、ゆっくりと右手を近付ける。
200 :198/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/06(水) 22:54:29.88 ID:M8lWXEdT0
あすか「がしっ。」


 そうして、ボトルの下半分を、勢い良く鷲掴みにする。


あすか「これが黄前ちゃんの今の状態だよん♪」


 という事は、私の両脚を束縛しているのは、見えない巨大な手なのか。俄かには信じがたい。


あすか「どお? 真性吸血鬼って便利でしょ。……イメージするだけで人間を握り殺せるんだぜ? ひひひっ。」


 なんだと?
 やばい。殺されるかも知れない。


あすか「なんで人間上がりにはこの能力が無いんだろうねー。……がしっ。」


久美子(!)


 今度は、上半身だった。あすか先輩が左手でボトルの上半分を掴むと同時に、私の上半身も、「手」に握られたのだった。
 殺される! 逃げないと殺される!


久美子「く……あ……。」


 全力で抵抗を試みるが、「手」はひくりとも動かない。吸血鬼になって、私の力も増している筈なのに!
201 :199/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/06(水) 22:54:59.82 ID:M8lWXEdT0
あすか「あはは、無駄だよーん。」


 ふっと、下半身が「手」から解放される。
 良かった、先輩の右手もボトルから離れ――


あすか「がしっ。」


久美子(!)


 頭だった。先輩の右手も、親指を下にした状態で、キャップを握っていた。「手」が私の目に見えないから、頭を握られているのに、先輩の姿がはっきりと見える。でも、確かに私の頭は、「手」に握られていた。圧迫されているのを感じるし、なにより息が出来ない。
 あすか先輩と目が合う。
 彼女は、態と目が合うのを待っていたのかも知れない。先輩は目を細めると、ゆっくりと舌舐りをし、微苦笑を浮かべる。
 ……ああ、これは間違い無い。先輩は、私を肉体的、精神的に苛めて、楽しんでいる。真性の吸血鬼は、同時に真性のサディストだったのだ。
 その表情はおもむろに変化していき、実にうっとりと、物欲しげな顔付きで、私に悩ましい視線を向けて来る。体が小刻みに揺れ、呼吸も乱れている様だった。詰まり、端的に言って、興奮していた。性的快感が、彼女の思考を支配していた。丸で、先輩の心の声が聴こえて来るようだった。ぞくぞくする。我慢出来ない。滅茶苦茶に壊したい。
 胸の高さで保持していたペットボトルを、徐々に、顔の高さまで持ち上げてゆく。
 気持ちいい。これ以上は耐えられない。もういきそう。顔には、そう書いてあった。
 きっと、私をぶち殺した瞬間にオーガズムを迎えるのだ。
 終わった。これは絶対殺される。
 恍惚の表情が、最高潮を迎える。それまで小刻みに体を動かし、忙しなく呼吸していたのに、一転、胸式呼吸で、大きく息を吸う。


久美子(あ、やられる。)


 先輩が、キャップを捻る。


久美子(……。)
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