【リョナ注意】緑輝「歯形祭り。」葉月「はっ?」【響け!ユーフォニアム】

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2 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/05(火) 21:49:09.79 ID:8rkLg5Evo
もうなんか期待しちゃうだろこれ
3 :001/345 [saga sage]:2018/06/05(火) 22:02:01.29 ID:j7V3WS/C0
葉月 「……歯形?」


 やっぱりその発音は、葉月ちゃんにも「はがた」と聴こえた様だった。


久美子「ミドリちゃん、滑舌悪いよ。それ『あがた』じゃなくて『はがた』に聴こえる。」


緑輝 「いえ、『はがた』でいいんです。」


 ミドリちゃんは微笑みながらそう言うと、周りに人が居ないか確認する様に、首を動かす。
 なにをしているのか、と思いながら見ていると、直ぐ様、視線が戻ってくる。


緑輝 「ふふっ。実はですね……今日は、好きな人を噛んじゃっていいんです。……ほら、私も噛んで貰いました。」


 そう言いながら、ミドリちゃんが浴衣をめくる。肩の部分に、なにやら、黒っぽい線が二本あった。


葉月 「それって……。」


 私達は、さらけ出された部分をじっと見詰めた。


久美子「……あっ。」


葉月 「……あ。」


 歯の痕だった。
 確かにそれは、人間の歯形の様だった。
4 :002/345 [saga sage]:2018/06/05(火) 22:04:01.61 ID:j7V3WS/C0
葉月 「ねえ、これどーしたの?」


 葉月ちゃんが心配そうに訊くが、ミドリちゃんは至って楽しそうだった。


緑輝 「ふふふ、これですかあ? 吸血鬼の御姉様に噛んで貰いましたー。」


久美子・葉月「吸血鬼の御姉様?」


緑輝 「はい! ミドリ、吸血鬼になっちゃいましたー。……あはは♪」


 ミドリちゃんは、無邪気に笑う。
 私には、その、何時になく無邪気な笑顔が、却って事の深刻さを物語っている様に思えた。


緑輝 「という訳で、久美子ちゃん。」


 そう言って、ミドリちゃんが、私に抱き付く。


久美子「え、なに?」


 左肩に違和感。


緑輝 「いっただっきまー――」
5 :003/345 [saga sage]:2018/06/05(火) 22:05:01.27 ID:j7V3WS/C0
葉月 「うわ!」


 人影。
 急に、ミドリちゃんの小さな体が力を失い、倒れ掛かって来る。


久美子「おっと。」


 思わず抱き締めた。


葉月 「え?」


久美子「え? あ……。」


 ミドリちゃんの背後に立っていたのは、高坂さんだった。


麗奈 「久美子、大丈夫?」


久美子「うん……。」


葉月 「高坂さん?」


 その彼女は、私達の存在を無視するかの様に、なにかをもぞもぞと遣り始めた。珍しくポニーテールで、白いワンピースに黒いショルダーバッグという出で立ちだった。
 作業は数秒で終わったらしい。こちらに向き直り、手を伸ばしてくる。
6 :004/345 [saga sage]:2018/06/05(火) 22:05:51.27 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「さあ、その子を渡して。」


久美子「え? うん……。」


 言われるままミドリちゃんの体を高坂さんに預けると、なんと軽々と持ち上げてみせた。 ミドリちゃんの体は、ぐったりと動かない。
 高坂さんが体の向きを少し変える。


麗奈 「ふんっ、この泥棒猫。」


久美子「え?」


 次の瞬間、ミドリちゃんの体がふわりと浮き上がり――鈍い音と共に、蹴られて吹き飛んでいた。
 そのまま勢いに任せて地面を転がり、軈て止まる。


葉月 「み……緑っ!」


 地面に倒れているミドリちゃんに向かって、葉月ちゃんが駆け出す。


麗奈 「駄目っ!」


 高坂さんが、突如大声を上げた。私はびっくりして、思わず高坂さんの顔をじっと見詰める。


麗奈 「離れて!」


 高坂さんは、葉月ちゃんに向かって叫んでいる様だった。
7 :005/345 [saga sage]:2018/06/05(火) 22:06:30.93 ID:j7V3WS/C0
葉月 「緑、確りして!」


 しかし、高坂さんの言葉は葉月ちゃんの耳には届いていなかった。葉月ちゃんは、俯せに倒れているミドリちゃんの脇に寄り添ったまま、離れない。ミドリちゃんの身を案じていた。


久美子「高坂さん、どうしてあんな事を……。」


麗奈 「久美子もあの子の心配? ……平気、この程度では死なないわ。それより、今の内に逃げましょう。」


久美子「逃げる?」


麗奈 「ええ。……直ぐに『ちゆ』するわ。」


久美子「ちゆ?」


 私が聞き返すと、高坂さんは黙って首を動かした。それは、ミドリちゃん達の居る方を見る様に、促している動きだった。
 目を遣る。
 倒れているミドリちゃんと、その側にしゃがんで様子を見ている葉月ちゃん。


葉月 「あ!」


 突然、葉月ちゃんが声を上げた。
 そのまま見ていると、ミドリちゃんの腕が大きく動く。


麗奈 「……ほら。」
8 :006/345 [saga sage]:2018/06/05(火) 22:07:21.89 ID:j7V3WS/C0
緑輝 「ああん、酷いですう! こんな事するなんて……。」


 そう言いながら、ミドリちゃんが立ち上がる。


葉月 「良かったー。無事だったんだ。」


 葉月ちゃんも立ち上がる。


緑輝 「はい、ありがとうございます。葉月ちゃんはやっぱり優しいです。……大好き!」


 ミドリちゃんが、葉月ちゃんを抱き締める。


麗奈 「……さ、久美子、今の内。」


 高坂さんが、私の腕を掴む。


麗奈 「いきましょう。」


久美子「え、いくって――」


緑輝 「二人共、逃げるんですか?」


 その時、ミドリちゃんの冷たい声が辺りに響いた。
 ミドリちゃんに抱き締められたままの葉月ちゃんも、怪訝な表情でこちらを見ていた。
9 :007/345 [saga sage]:2018/06/05(火) 22:08:01.91 ID:j7V3WS/C0
葉月 「高坂さん、そのまま行っちゃうの? 緑にあんな事しといて。」


緑輝 「そーですう。」


 その言葉を聞いた高坂さんは、少し笑みを浮かべてから、振り向いて声を上げた。


麗奈 「あら、それはどっちの事かしら? ……首の神経を切断した事? ……それとも、貴方の背中を蹴り飛ばした事?」


緑輝 「両方ですう!」


 ミドリちゃんが、葉月ちゃんを抱き締めたまま怒る。可愛い。怒っても可愛い。


麗奈 「でも、貴方は久美子を噛もうとした。……でしょ?」


緑輝 「はい。……噛みたかったですう!」


 ミドリちゃんが悔しがる。可愛い。


麗奈 「ふふっ、そうね。……じゃあ、交換条件。その子は上げるわ。好きに噛んでいいわよ。でも、久美子は渡さない。」


久美子(?)


 「交換条件」とやらに私の名前が出てきた。一体なんの話をしているのか。
10 :008/345 [saga sage]:2018/06/05(火) 22:08:42.19 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「それで手を打ってくれない?」


緑輝 「うー……仕方ありませんね……。」


 勝手に話が進む。


緑輝 「じゃあ、葉月ちゃんから戴きますね。」


 ミドリちゃんが、抱き付いた状態のまま、右手で葉月ちゃんのタンクトップの肩の部分を、外側へと引っ張った。左の鎖骨が、完全に顕わになる。


葉月 「え、何?」


緑輝 「あー……。」


 ミドリちゃんが口を開けて、顔を葉月ちゃんの左肩へと近付ける。


麗奈 「さ、久美子。」


 その言葉と共に横から腕を引っ張られたけど、無視して二人の様子を見詰め続けた。ミドリちゃんの口が、葉月ちゃんの左肩に触れる。


葉月 「ちょっと、緑……。」


 それは、肩に口付けをされて恥ずかしがる、素朴な女の子の声だった。しかし――
11 :009/345 [saga sage]:2018/06/05(火) 22:09:23.33 ID:j7V3WS/C0
葉月 「……あっ! 痛っ! ちょっと、緑っ! やめてっ! 痛い! 痛いよ! ……こ、やめてってば!」


 葉月ちゃんの声が怒気を帯び、ミドリちゃんの頭を引き剥がしに掛かった。良く見えないけど、左手が使えないらしい。右手だけで、ミドリちゃんの顔をぐいぐいと押していた。
 それでも、ミドリちゃんの頭は、全く離れない。


葉月 「この……!」


 その時、すっと、ミドリちゃんの頭が、葉月ちゃんの左肩から離れた。
 葉月ちゃんの表情が緩む。
 次の瞬間、ミドリちゃんがその場にしゃがみ込んだ。


葉月 「え、なに、……うわ!」


 葉月ちゃんの体が、少し浮き上がる。
 しゃがみ込んだミドリちゃんが、葉月ちゃんの足首を掴んで、十センチメートル程持ち上げていたのだった。信じられない力だった。


葉月 「ちょっと、緑っ! 下ろ――」


 葉月ちゃんが、後ろにバランスを崩す。
 尻餅をつき、あっ! と声を上げる。
 透かさず、ミドリちゃんが上半身に馬乗りになる。
 右手で左手を押さえ、左手で右手を押さえる。
 勝負は決まった。一瞬の出来事だった。
12 :010/345 [saga sage]:2018/06/05(火) 22:09:56.49 ID:j7V3WS/C0
葉月 「み、緑……。」


緑輝 「ふふふ。大人しくしていて下さいね♪」


 ミドリちゃんはにっこりと笑うと、押さえていた左手を、自分の右脚の下へと押し入れてゆく。


葉月 「ちょ、ちょっと……なにするの……。」


 それは、不安と恐怖が入り雑じった様な声だった。
 葉月ちゃんがピンチだ。
 高坂さんに顔を向ける。


久美子「こ、高坂さん、葉月ちゃん――」


麗奈 「駄目。もう不意打ちも通じない。」


久美子「そんな……。」


緑輝 「さあ、葉月ちゃん、心の準備は出来ましたか?」


 再び二人の方へ目を遣ると、葉月ちゃんの右手も、既に左脚の下に敷かれている様だった。ミドリちゃんの左手が、自由になっている。


葉月 「あ……嫌……お願い、緑……。」
13 :011/345 [saga sage]:2018/06/05(火) 22:11:46.00 ID:j7V3WS/C0
緑輝 「だーめっ♪」


 再び、ミドリちゃんの牙が、葉月ちゃんの左肩へと食い込む。


葉月 「痛い! 緑! やめてえ!」


 葉月ちゃんの絶叫に、ミドリちゃんが顔を上げる。むっとした表情だった。


緑輝 「もー、静かにしていて下さい……。」


 ミドリちゃんの左手が、葉月ちゃんの口元に向かう。


葉月 「あ! く、久美子! こうふかはん!」


 何をされるか察した葉月ちゃんが声を上げるが、遅かった。口に手を宛がわれ、変な発音になる。


葉月 「ばぶべべえ。」


 更に、右手が追加される。


葉月 「ん! んー!」
14 :012/345 [saga sage]:2018/06/05(火) 22:12:14.96 ID:j7V3WS/C0
 ミドリちゃんが、少し、右手を離す。


葉月 「ん! ん!」


 それでも、声は出ない。


緑輝 「あは♪」


 口を押さえている手の位置が修正されたらしく、左手だけで完全に発声が封じられていた。
 そして右手が、再び葉月ちゃんのタンクトップをずらす。


緑輝 「葉月ちゃん大好きですよー。」


 なにかに陶酔したかの様な声と共に、ミドリちゃんの牙が、ゆっくりと葉月ちゃんの肩へと向かう。


麗奈 「さ、久美子。今度こそいくわよ。」


 腕を引っ張られる。


久美子「あ、うん。」


麗奈 「走って。」


 私は、高坂さんに先導されながら、全力で走った。
15 :013/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:20:33.57 ID:j7V3WS/C0
          *
 角を幾つか曲がる。
 そうしてゆき着いたのは、薄暗い神社の境内だった。そこで、前を走る高坂さんの速度が遅くなり、軈て立ち止まる。


麗奈 「この辺まで来れば平気なんじゃないかな。」


 高坂さんが私に振り返って、そう告げる。私はというと、全力で走った所為で呼吸が激しく、とても話す様な気分ではなかった。
 それ処か立っているのも辛い。思わず、石畳の上にへたり込んだ。


久美子「はあ、はあ。」


 呼吸を整えながら、高坂さんを見上げる。
 白いサンダル、白いワンピース、黒いショルダーバッグ。
 凛とした表情、立ち姿。
 荷物もあるというのに、高坂さんは、息一つ切れていない。
 ぱっと見、汗も掻いていない。
 思わず、笑みがこぼれる。
 それは、真っ白いワンピース姿で悠然と立っている高坂さんと自分を引き比べて、自嘲する気分になったからか。それとも、全力で走って精神が興奮しているからか。
 私の笑みに疑念を抱いたのか、高坂さんが少し首を傾げる。


麗奈 「久美子、平気?」


久美子「あ……、うん。」


 何とか声を出す。勿論、全然平気じゃない。


麗奈 「ふふっ。」
16 :014/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:21:56.51 ID:j7V3WS/C0
 高坂さんは少し微笑むと、ゆっくりと歩いて私の目の前まで来る。
 そして、おもむろに鞄からペットボトルを取り出し、しゃがむ。


麗奈 「先ず飲んで。」


久美子「あ、ありがと。」


 礼を言って受け取る。
 暗くて見にくいが……中身は水の様だった。
 キャップを捻ると、小気味良い音がする。はっとした。何と未開栓だった。
 顔を上げて、訊く。


久美子「いいの?」


 高坂さんは、黙って頷く。


久美子「じゃあ……。」


 更にキャップを捻って、飲める状態にする。
 そして、ペットボトルの口に唇を付け、傾ける。少しぬるい。
 しかし、ごくり、と一口飲んだ瞬間、渇いた喉が蘇る。
 おいしい。ゴク、ゴク、と飲み続ける。


麗奈 「久美子が無事で良かった。」


 その言葉を、飲みながら聞く。
17 :015/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:22:27.14 ID:j7V3WS/C0
久美子「ぷはあっ。はあ、はあ……うん、高坂さんの御蔭だよ。」


 飲み終わってから返答する。
 キャップを閉じ、


久美子「ありがと。」


 の言葉と共にペットボトルを返そうとすると、高坂さんは首を振り、


麗奈 「いいの。上げる。」


 と呟く。


久美子「え、でも……。」


 私が食い下がると、高坂さんは嫣然と微笑み、更にはっきりとした口調で言う。


麗奈 「上げる。」


 その笑顔に少しどきんとした私は、


久美子「そ、そう……。」


 と言って、ペットボトルを引っ込める。
18 :016/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:23:35.09 ID:j7V3WS/C0
久美子(なんか……。)


 施して貰ってばかりだ。少し申し訳無い気分になる。
 顔を上げて再び目を遣ると、現前の高坂さんは澄ました表情をしていた。
 なにやら居心地の悪さを感じた。なにか喋らなければ……
 と言っても、話題なんて、直ぐには思い浮かば――


久美子「あ! あれ、なんだったんだろうね。」


麗奈 「あれ?」


久美子「さっきの、ミドリちゃん。……どう考えてもおかしかった。吸血鬼になったとか言ってたし。」


 同意の言葉が欲しかった。しかし、


麗奈 「ああ、あれね。」


 と、素っ気無い返事。
 高坂さんは、あまり興味が無さそうだった。
 もう一度、口にする。


久美子「……え? 吸血鬼だよ?」


 すると、高坂さんは、なにか面白い事にでも気付いたみたいに、少し笑みを浮かべる。
 あれれ、なにかおかしい。
 私の認識と高坂さんの認識には、ずれがある様だった。
19 :017/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:24:11.23 ID:j7V3WS/C0
久美子「えーっと……。」


 おかしいと思わないの? と訊く前に、高坂さんが口を開く。


麗奈 「彼女はね、吸血鬼になったのよ。他の誰か……、誰か別の吸血鬼に噛まれてね。」


久美子「は? ……吸血鬼なんてこの世に――」


麗奈 「居るのよ。」


 私の発言を遮って、きっぱりと言う。


久美子「……まじ?」


 真面目な口調で訊くと、


麗奈 「大まじ。」


 真面目な口調で返ってくる。そして、一呼吸置いてから、


麗奈 「吸血鬼は実在するの。一般人のあいだには、直隠しに隠されているけどね。」


 衝撃の事実。
20 :018/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:24:40.91 ID:j7V3WS/C0
久美子「……まじ?」


麗奈 「だから、まじな話だってば。」


 高坂さんの語調が少しきつくなる。


麗奈 「吸血鬼は実在するし、政府は裏で吸血鬼を使って非人道的と言える様な事に手を染めているし、その為の吸血鬼ハンターも居るし、吸血鬼に噛まれたら、噛まれた人間も吸血鬼になるの。」


 少しうんざりとした顔で、捲し立てる。ちょっと怖い。
 怖ず怖ずと訊く。


久美子「えーと、……じゃあ、葉月ちゃんは……。」


麗奈 「今頃は、彼女も吸血鬼になっているかも知れないわね。」


 高坂さんの口調は、至って真剣だった。


久美子「嘘でしょ……。」


 溜息が出る様に、口から言葉が出る。


麗奈 「残念ながら、真実よ。」
21 :019/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:25:10.89 ID:j7V3WS/C0
 感情を交えずに告げる高坂さんの態度に、少し冷たさを感じた。
 私は、少し目を伏せながら、


久美子「そっか……。」


 と呟いた。
 葉月ちゃん、ミドリちゃん……。
 二人は高校に入ってから最初に出来た友達であり、同じ部活の同じパートで練習する、掛け替えの無い仲間だった。
 もし二人が居なくなったら、私は……――


麗奈 「だいじょーぶ?」


久美子「あ、うん。」


 はっとして、視線を上げる。
 気を落としていると思われたのか、高坂さんの顔は、私を心配する様な表情に変わっていた。
 そうだ久美子、あんたは一人じゃない。
 思い切って、訊く。


久美子「ねえ、二人はどうなるのかな。」


麗奈 「え? どうなるって?」


久美子「あ、その、えと、政府に連れていかれて……、実験とか、されちゃったりするのかな。」
22 :020/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:25:38.13 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「いや、多分それは無いわ。良くも悪くも、あの二人にそこまでの価値は無いわ。」


久美子「そっか。」


 それを聞いて、一安心。


麗奈 「うん。若しも市中で偶然に吸血鬼ハンターと出会った場合には、多分その場で処分されるでしょうね。」


久美子「処分!」


 私が大声を上げたので、高坂さんは少し驚いた表情になったけれど、直ぐに笑みを浮かべ、


麗奈 「あ、大丈夫よ。殺される訳じゃないわ。人間に戻されるだけ。」


久美子「え、戻れるの?」


麗奈 「ええ、戻れるらしいわ。但し、吸血鬼だった頃の記憶は全て失ってしまうらしいけど。」


久美子「そーなんだ。」


麗奈 「うん。」


久美子「そっか。じゃあ、早く二人を見付けにいかないとだね。」
23 :021/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:27:26.31 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「え、なんで?」


久美子「え? だって、戻して上げるんだったら早い方がいいでしょ? 戻すのが遅れれば遅れる程、消えちゃう記憶が多くなっちゃうんでしょ? そんなの、かわいそうじゃない。」


 私にはそれが当然に思えた。しかし――


麗奈 「いや、そうじゃなくて、久美子になにが出来るの? って事。」


久美子「……え?」


麗奈 「だって、見付けた所で吸血鬼と戦える訳でもないし、ハンターの連絡先を知っている訳でもないし。」


久美子「それは、そうだけど……。」


麗奈 「なにも出来ないのに、見付けてどうするの。噛まれにでもいくの? そんなの、私が許さないわ。」


 正論だった。


久美子「そうだけど……あ、高坂さんも知らないの?」


麗奈 「なにを。」


久美子「連絡先。」
24 :022/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:28:00.95 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「知らない。」


 高坂さんは、さらりと答えた。
 それは本当に知らずに言っているのか。それとも、私を巻き込まない為に嘘を言っているのか。
 ……しかし、高坂さんの顔は無表情だった。今の私には、その答えを伺い知る事は出来なかった。
 取り敢えず、素直に詫びを入れる事にした。


久美子「そっか、御免。……私、なにも考えずに話してた。」


麗奈 「ん、別にいいのよ。怒ってる訳じゃないから。」


久美子「うん……。」


 優しい。
 少し、ばつが悪い。


久美子(……。)


 それにしても、高坂さんはなんで吸血鬼に就いてこんなに詳しいのだろうか。
 一般人には秘匿されている筈なのに。
 そう思うと、またしても質問せずにはいられなくなってくる。


久美子「ねえ、高坂さんってどうしてそんなに吸血鬼に詳しいの?」


麗奈 「え?」
25 :023/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:28:30.81 ID:j7V3WS/C0
久美子「だって、一般人には隠されてるんでしょ? 私も今日まで全く知らなかったし……。」


麗奈 「……ん、それはね、……ある人に教えて貰ったの。」


久美子「ある人?」


麗奈 「うん。」


久美子「ある人って?」


麗奈 「それは言えない。」


久美子「なにそれ。」


 一気に、緊張が解けた。
 それでは、なにも答えていないのと同じだ。
 質問を替えよう。


久美子「え、えと、じゃあ、高坂さんって、実は政府の人なの?」


麗奈 「政府?」


久美子「うん。」
26 :024/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:29:00.88 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「そんな訳無いじゃない。唯の高校生よ。」


久美子「高校生と吸血鬼ハンターの二足の草鞋……とか。」


 と言うと、高坂さんは笑って、


麗奈 「無い無い。吸血鬼ハンターになるには、特別な資質が必要らしいから。」


 と答える。


久美子「え、でも、高坂さんにも資質があるんじゃないの? だって、さっき私を助けてくれた時のキックの威力、凄かったし。それに、だから、吸血鬼に就いても、その人から色々と教えて貰えたんじゃないの?」


 それ以外に考えられなかった。
 高坂さんに蹴られたミドリちゃんの体は、十メートルくらい先まで転がっていた気がする。
 はっきり言って、普通の人間の所業ではない。
 それに、ここまで走ったあとも、全く平気な顔をしていた。
 普通の人間ではない事だけは、確かだった。
 しかし、高坂さんは肯定も否定もしない。視線を下の方に遣って、なにか考えている様な表情だった。
 ……あ、そうか。ハンターである事が秘密だからか。


久美子「あ、大丈夫。高坂さんが吸血鬼ハンターだって、誰にも言わないから。」


 すると、


麗奈 「久美子。」


 高坂さんの目が、真っ直ぐにこちらを見る。
27 :025/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:29:30.91 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「ハンターだったら逃げてないわ。……あの時、不意打ちが決まったあと、自分の力であの子を人間に戻している筈だわ。」


久美子「あ……。」


 ……それもそうか。


久美子(……え、でも……)

久美子「あ、あの……、その人間に戻す作業って、一人で出来るの?」


麗奈 「出来る……らしい。」


 なにそれ。なんで断言しないのか。


久美子「じゃあ、ハンター見習い……みたいな……。」


麗奈 「ふふっ。久美子って可愛いわね。ほんとは薄々気付いてるんじゃないの?」


久美子「え、何を?」


麗奈 「ふふっ。……もー……。」


 高坂さんは髪を掻き上げると、笑顔でこちらを見詰めて来た。
28 :026/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:40:00.29 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「私が、……吸血鬼だって事。」


久美子「えっ。」


 予想外でした。


久美子「えと、じゃあ、さっき私を助けてくれたのは……。」


麗奈 「ふふふっ。」


 高坂さんの笑顔が眩しい。


久美子「もしかして……。」


 もう、嫌な予感しかしなかった。


麗奈 「私が、自分で噛みたかったから。」


 ゆっくりと言って、にっこりと微笑んだ。


久美子「そ、そう……。そうだったんだ……。」


麗奈 「うん!」
29 :027/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:42:00.38 ID:j7V3WS/C0
 無邪気で、元気な返事。
 こんなに楽しそうな高坂さんの顔を見たのは、初めてだった。


久美子「えと、じゃあ……ミドリちゃんみたいに、どこかに歯形が……。」


麗奈 「うん。ここ。」


 そう言うと高坂さんは、ショルダーバッグの肩に掛ける部分を、少しずらしてみせた。
 黒っぽい、歯形。ミドリちゃんの時と同じ。
 肩に掛ける部分に隠れていたので、今まで気付かなかった。


麗奈 「綺麗でしょ。」


 高坂さんは、なぜか誇らしげだった。


久美子「う、うん。……そうだね。」


 そうは思えなかったけど、取り敢えず肯定の返事をした。


麗奈 「ふふっ。久美子にも直ぐに付けて上げる。」


久美子「え……。」


 要らない。心の底から要らない。
30 :028/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:42:59.98 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「ねえ、もういいかな?」


久美子「あ、うん。」


 高坂さんが、鞄を元に戻す。
 迂闊だった。白ワンピには不釣り合いな、やけに大きな鞄だと思っていたら、傷が隠されていたとは。


久美子「あー……。」


 私は、高坂さんを刺激しない様に、ゆっくりと立ち上がった。


麗奈 「どうしたの? 久美子。」


 高坂さんが、その場にしゃがんだまま、にこやかな表情で見上げてくる。


久美子「あ、ちょっと、脚が痛くて。……あ、ずっと座ってたからだと思うんだけど……。」


 私は、左右の太股を手で触りながら、一歩、後しざった。


麗奈 「そう。平気?」


久美子「うん、平気平気。……動かしてれば治るよ。」


 左右を見回しながら、もう一歩後しざる。
 しかし、左を向いても暗闇。右を向いても暗闇。
 正面、高坂さんの後ろには、少し明るい、神社の本堂。
31 :029/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:43:30.22 ID:j7V3WS/C0
久美子「あ、ここ、誰も居ないね。」


麗奈 「うん、久美子と二人っ切りになりたかったから。」


久美子「そ、そっか……。」


 と言って、引き続き左右を見回しながら、更に後しざる。
 すると、高坂さんの表情が、少し陰る。


麗奈 「ねえ、久美子、若しかして私の事嫌い?」


久美子「え、嫌いじゃないよ! 全然嫌いじゃないよ!」


麗奈 「嫌いじゃないけど好きでもないとか……。」


久美子「ううん、好きだよ! とっても好きだよ!」


 と言って、脚を摩りながら、また一歩。


麗奈 「そっか、良かった……。」


 そこで、高坂さんは俯き、鞄の中に右手を入れる。
 なにかを捜している。
 また一歩。
32 :030/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:43:59.96 ID:j7V3WS/C0
久美子(なにを……。)


 高坂さんはなにを捜しているのか。


久美子(ケータイ? ……そうだケータイ!)


 はっとした。
 右手を動かす。
 しかし、感触が無い。


久美子(ん?)


 何で無いのか。
 視線は高坂さんから外さずに、更に左手も動かしてみる。
 服の上から、両手で、念入りにポケットの位置を探る。右手はペットボトルを持ったままだから、少し遣りにくい。


久美子(どこ?)


 あまり使わない、御尻のポケットにも手を伸ばしてみる。
 しかし、いくら触っても、ケータイが入っている感触が無い。


久美子(嘘でしょ?)


 ケータイが無い。
 これでは、いざと言う時に助けも呼べない。
 何と言う状況だ。
 と思った次の瞬間、高坂さんが、ちらりとこちらを見る。
 ああ、警戒されている。……静かに一歩。
33 :031/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:44:29.96 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「ん……。」


 目当ての物を見付けたのか、高坂さんが声を上げる。
 そして、鞄の中から、ゆっくりと、なにかを取り出す。
 そのまま、こちらを見遣り、怪しく微笑む。


久美子「あ、あはは……。」


 私も、ぎごちない笑みで応じる。
 高坂さんの右手にある物体は、少し離れたのと、暗い所為で良く見えない。
 でも、態々取り出したのだ。少し気になる。


久美子「それ……なに?」


麗奈 「ナイフ。使うと思って入れといた。」


久美子「そ、そう。」


 言われてから改めて見ると、それは折り畳み式のナイフに見える……様な気がする。


久美子「あ、ミドリちゃんの時か。さっき私を助けてくれた時に使ったんだね!」


 何でまた鞄から出したの? とは言わない。言ってはいけない。


麗奈 「うん。想定外だった。……本当は、あの場では使う積もりは無かったんだけどね。まあ、止むを得ず。」
34 :032/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:44:59.95 ID:j7V3WS/C0
 高坂さんは、ナイフを眺めながら言う。
 じゃあ、本当はなにに使う積もりだったの? とも言わない。絶対に言ってはいけない。
 ちらりと、足下に目を遣る。
 右手のペットボトルが目に入る。


久美子(あ……。)


 全く……。
 向こうは、右手にナイフ。こっちは、右手にペットボトル。
 どうしてこんな事になってしまったのか。
 と思いつつ、高坂さんに視線を戻す。
 双眸が、ナイフを眺めている。
 その高坂さんの頭が、静かに動く。


麗奈 「ねえ久美子。」


 と呟きながら、こっちを見上げてくる。


久美子「……はい……。」


麗奈 「私と遊ばない?」


久美子「あ……。」


 来た。
35 :033/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:45:30.21 ID:j7V3WS/C0
久美子「……う、うん。いいよ。……あ、じゃあ、ちょっとこれ、高坂さんが持っててよ。」


 私は、持っていたペットボトルを持ち直すと、高坂さんの方を向いた。


久美子「いくよ……。」


 彼女の胸に収まる様に、下手投げで、軽く……


久美子「はいっ。」


 投げる。
 ペットボトルは、ふわりと放物線を描き、高坂さんに――
 届くよりも早く、私は後ろを向いた。そのまま、全力で駆け出す。


久美子(誰か!)


 神社の石畳。


久美子(誰も居ないの?)


 境内に植わっている木。鳥居。
 駄目だ。辺りは薄暗いし、誰も居ない。
 後ろには、凶器を持った女の子が一人……。
36 :034/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:46:00.19 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「えいっ。」


 その瞬間、衝撃を感じ、体のバランスが崩れた。修正出来ない。
 前のめりに倒れた。


久美子「あぐっ。」


麗奈 「うっ。」


 続けて、背中に重い感触。体が圧迫される。
 ああ、高坂さんだ! もう追い付かれた!


麗奈 「あははははは! どこ行くの、久美子お?」


 直ぐ後ろ、詰まり私の真上から、女の子一人分の圧力と、嬉しそうな声が降り懸る。
 高坂さんが、私にタックルして動きをとめたのだった。そして、そのまま伸し掛かっている。


久美子「こ、高坂さん……。」


 御中を抱き締められている。二本の腕が、私の体と石畳とのあいだにあるのを感じる。
 そして、背中の重圧。一体何カップあるのか。


麗奈 「ねえー、なにして遊ぶ?」


 その声と共に少し圧迫感が薄れ、私の御中の下から、高坂さんの両腕が引き抜かれる。
 逃げ――
37 :035/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:46:31.37 ID:j7V3WS/C0
久美子「あっ」


 今度は、御尻に圧力。
 両手で押さえ付けられた感じだった。
 そして、腰に硬い感触が来て、その硬い感触と入れ替わりに、御尻にあった、手の感触が消える。


麗奈 「御医者さんごっこしよっか?」


 声が近い。振り向く。
 高坂さんの顔が、私の顔の直ぐ側にあった。彼女の髪の毛が、振り向いた私の目の前に、ゆらりと垂れ下がっていた。


久美子「……お、御医者さんごっこ? ……いいね。私、御医者さんやりたい。」


麗奈 「えー? 久美子は患者さん役。脚が痛いんでしょ?」


久美子(あ……。)


 しまった。墓穴を掘った。
 後ろから、コッ、と音がする。
 そして、腰の硬い感触が消え、その直後、どっ、と御尻に衝撃。


久美子(!)


 振り返る。高坂さんが、私の御尻の上に腰掛けていた。
38 :036/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:46:59.92 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「さあ、脚を診て上げましょうね。」


 と言いながら、高坂さんが動く。御尻の上で、御尻が動く。


久美子「え、いいよそんなの。」


 しかし、右の太股の裏に、くすぐったい感触。私の声は無視された様だ。


麗奈 「ふーむ、どれどれ?」


 体の陰になって見えないが、高坂さんが右手で触っているらしかった。感触が続く。


久美子「こ、高坂さん……くすぐったいよ……。」


麗奈 「成る程……。」


 私の言葉は、またもや無視された。


麗奈 「まあ、これは大変!」


 突然、高坂さんが、態とらしい声を上げる。


麗奈 「今直ぐ『しゅじゅちゅ』が必要だわっ♪」


 続けて、嬉しそうな声……って、手術?
39 :037/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:47:30.10 ID:j7V3WS/C0
久美子「え、そんな、いいよ。私、もう治ったから……。」


麗奈 「それでは、オペを始めます。……メス! ……はい先生、唯今……。」


 高坂さんが、鞄の中に手を入れる。
 私の言葉など完全に無視して、鞄の中から「メス」を捜しているらしい。やばいのではないか。
 顔を前に戻す。
 辺りには誰も居ない。
 自力で逃げるしかない。


久美子「く……か……。」


 しかし、何とか高坂さんの下から逃れようにも、御尻が重くて逃げられない。


久美子「高坂さん、御願いだからそこから降りて。」


 振り向いて懇願する。


麗奈 「ここから? ……駄目ー♪」


 右の太股の裏に、違和感。
 直後、激痛に変わる。


久美子「う……、高坂さん、なにを……あっ!」


 痛みで直感した。高坂さんがナイフかなにかを突き刺して、また引き抜いたのだ。
40 :038/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:48:00.25 ID:j7V3WS/C0
久美子「うう……。」


 思わず、下を向く。
 凄まじい痛み。


久美子「こ、高坂さん……なにしたの……。」


 言いながら、もう一度振り返る。


麗奈 「手術よ。見る?」


 そう言うと、高坂さんは立ち上がった。
 自分の二の腕越しに、右の太股が見える様になる。
 どくどくと、血があふれ出ていた。
 何という事を……――
 左の太股に、変な感覚。


久美子「えっ?」


 右に向いていた首を、反対側に動かす。
 高坂さんが、私の左の太股の、真横に座っていた。そして、短パンの裾を、まくり上げていた。
 顔の方に目を向けると、丁度、高坂さんもこちらを向く所だった。
 目が合うと、にっこりと笑い、


麗奈 「さあ久美子ちゃん、今度は左脚を診て上げましょうねー♪」


 と言いながら、右手のナイフを銜えようとする。
41 :039/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:48:30.03 ID:j7V3WS/C0
久美子「ちょっと、やめてよ。」


 私が咄嗟に制止の言葉を吐き出すと、少し動きをとめたが、


麗奈 「ふふっ、やめなーう。」


 ナイフを口に銜え、太股の裏を触る。


久美子「やめてってば!」


 その言葉と共に、左膝を勢い良く曲げる。
 手応えがあった。
 踵の部分が、高坂さんの左手に当たったらしい。
 と思った直後、左の足首を、右手で掴まれる。
 きつい。
 それだけではない。掴まれた左脚が、全く動かない。
 私が脚の力を入れてもひくりとも動かないのだ。何という膂力。
 これが吸血鬼の力……。
 掴んだ脚を見ていた高坂さんの顔が、ゆっくりとこちらを向く。


麗奈 「久美子。暴れひゃはめ。」


 と言い、ナイフを銜えたまま、優しげに微笑む。
 直後、左の太股に微かな感触。
 見ると、今まで私の短パンを押さえていた左手が、離れていた。
42 :040/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:48:59.95 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「よいひょ、よいひょ。」


 その声と共に、高坂さんが、蟹の様に横方に移動を始める。


麗奈 「よいひょ、よいひょ、よいひょ。」


 但し、その右手は、私の足首を掴んだままだった。
 今度はなにをする気なのか。


麗奈 「よいひょ、よいひょ、よいひょ……。」


 高坂さんは、私の足下へとゆき着くと、横歩きをやめ、


麗奈 「ふう!」


 ナイフを銜えたまま、一息つく。
 続いて、私の両足首を揃えて、地面に並べる。
 その足の上に、


麗奈 「よい……ひょ。」


 と言いながら、座る。
 重い。
 御尻で押さえ付けられた。もう、さっきみたいに脚を曲げる事は出来なくなった。
 そうした上で、高坂さんが両手を前に伸ばし、私の左太股を、再び「診察」する。
43 :041/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:49:29.95 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「ふむふむ。」


 右の時よりも念入りに、左の太股を、ぎゅう、ぎゅう、っと揉まれる。今度は両手で揉まれている。
 真後ろの高坂さんを見るのに、少し姿勢が辛い。
 右腕を体の正面に移動して、上半身を支える様にした。


久美子「御願い、もうやめて。」


麗奈 「ん?」


 高坂さんの手が止まる。
 そして、右手だけ口元に動く。
 銜えていたナイフを右手で持つと、柔和に微笑み、言葉を発した。


麗奈 「そうね。じゃあ診察はもう終わり。……久美子ちゃーん? 待ちに待った『しゅじゅちゅ』の時間ですよー?」


久美子「え、そんな、嫌だ、やめて!」


 私の声には構わず、高坂さんが、右手のナイフを握り直す。
 そのまま、左の太股の裏に、すっと近付ける。


久美子「御願い! 高坂さん!」


 高坂さんが、こちらに目を遣る。


麗奈 「ふふっ。駄目え♪」
44 :042/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:50:30.78 ID:j7V3WS/C0
 刺すのが、見えた。


久美子「痛い!」


 咄嗟に、左手を伸ばす。
 更なる痛み。
 そして、左手にも痛み。
 高坂さんが、妨害の為に伸ばした私の左手を、きつく握り締めていた。


久美子(ああ……。)


 私は理解した。咄嗟に伸ばした左手は、高坂さんの右手に当たったのだ。右手に当たって、握っているナイフが動き、傷口の神経を刺激したのだ。


麗奈 「久美子、邪魔しちゃ駄目よ。」


 高坂さんが冷たく言って、手元に視線を落とす。
 ナイフが――


久美子「痛い! 痛い! 痛い! 痛い!」


 ゾ、ゾ、ゾ、ゾ、という音と共に、焼ける様な感覚が、膕の方へと広がっていった。


久美子「うっ。」


 そして、ナイフを引き抜かれる痛み。
 掴まれていた私の左手が解放され、石畳の上にすとんと落ちる。
45 :043/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:51:01.34 ID:j7V3WS/C0
久美子「ううう……。」


 右脚より、遥かに痛みが激しい。
 それもその筈。左の太股の裏側が、ぱっくりと割れていた。蝉が羽化したあとの抜け殻の様に、脚に大きな切れ目が入っている。


麗奈 「よいしょ……。」


 高坂さんが、ゆっくりと立ち上がる。
 そして、こっちに向かって歩いてくる。
 じっと目で追う。
 すると、私の体の横を通り過ぎ、顔の横も通り過ぎる。そのまま顔の正面まで来ると、立ち止まって、颯と振り向く。
 白いワンピースが、ふわりと揺れる。
 その更に上、高坂さんの顔に目を向ける。
 冷やかな表情。
 しかし、私と目が合うと、顔が綻ぶ。
 そして、視線を合わせたままゆっくりと私の目の前にしゃがむと、ナイフの刃を、ぺろりと舐める。


麗奈 「ふふっ。……久美子の味がするわ。」


 その表情と台詞に、寒気がした。


麗奈 「ねえ、次はどこを切る?」


 ナイフの反対側も、同じ様に、ぺろりと舐める。
 そして、綻びた顔を、ゆっくりと私に近付ける。
46 :044/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:51:30.04 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「私の御人形さん。」


 違う。いつもの高坂さんではない。
 これが吸血鬼なのか。
 私は、両の太股がじんじんと痛む中、声を絞り出した。


久美子「ねえ、……どうしてこんな事するの?」


麗奈 「どうして?」


 高坂さんは、少し首を傾げる。


麗奈 「好きだから。」


 好きだから? 意外な答えが返ってきた。


久美子「……好きだと、こんな事するの?」


 高坂さんは、こくりと頷く。


麗奈 「私ほんとーはさー、前から思ってたの。久美子で遊んでみたいなって。」


久美子「……は?」
47 :045/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:51:59.88 ID:j7V3WS/C0
 今、「久美子で」って言った。
 この子は何を言っているのか。
 憤りを覚える。そして、一抹の悲しさも。友達になれるかも知れない、と思っていたのに。


久美子「酷いよ、私をなんだと思ってるの……。」


麗奈 「……あれ?」


 高坂さんが、いよいよ怪訝な顔になる。


麗奈 「分かんないかな? 私の愛が。」


久美子「……愛?」


 益々分かんない。


久美子「それは、どーゆー……。」


麗奈 「そうね……。」


 高坂さんは呟くと、私の顔から視線を逸らした。
 顔と目が、ゆっくりと右下を向く。
 私もそれを追って、顔を少し右に遣る。


久美子・麗奈「……。」
48 :046/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:52:29.99 ID:j7V3WS/C0
 なにかを考えている様な表情。
 ずっと見詰め続けていると、その顔が、おもむろに下を向く。
 そして、今度は左下へと動く。
 沈黙が長い。
 話の手掛かりでも捜しているのか。


久美子(……なにか喋ってよ……。)


 次の瞬間、思いが通じたのか、高坂さんが口を開く。


麗奈 「ねえ、久美子もさ……小さい時に遊ばなかった? 小さい子向けの人形で。」


久美子「……人形?」


麗奈 「うん。リカちゃん人形とか、シルバニアファミリーとか。」


久美子「ああ……。」


 遊んだ。


麗奈 「好きだったでしょ? 昔は。人形。」


 良く憶えていないが……、多分、好きだった。


久美子「うん、多分……。」
49 :047/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:53:00.01 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「じゃあさ、好きな物に就いては、苛めてみたいって思うわよね? だから久美子もさ、人形の服を脱がせて、手足を引っこ抜いたり、ナイフで切り刻んだりしたわよね?」


久美子「……は?」


 ……嘘でしょ?
 一瞬、呆気にとられる。


久美子「しないよ……。」


 若干震え声になる。


麗奈 「え? ……ほんとに?」


 小さく首肯する。


麗奈 「薄々いけない事だって知りつつ、隠れてこっそり遣らなかった?」


久美子「遣らないよ! 意味分かんない……。」


 思わず語気が荒くなるが、直ぐに尻窄まりになる。


麗奈 「……そっか。遣らないんだ。……じゃあ動物を解剖した事も無いのね?」


 戦慄を覚えた。
50 :048/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:53:30.39 ID:j7V3WS/C0
久美子「……解剖?」


麗奈 「うん。」


 訊いてはいけない気がした。しかし好奇心の方が勝ってしまった。


久美子「高坂さんはあるの? 解剖した事が。」


麗奈 「うん。小学校の時にはモルモットを解剖してみたわ。クラスで飼ってた奴。……そのあと、中学校の時には猫を。」


久美子「ねこぉ?」


 高坂さんは、黙って頷く。


麗奈 「近所の野良猫が子供を産んだの。それを見てたら、もう居ても立っても居られなくなって。」


 高坂さんの顔に笑みが浮かぶ。ちょっと待て。


久美子「……子猫を解剖したの?」


麗奈 「うん。とっても興奮したわ♪」


 酷い。酷過ぎる。
51 :049/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:54:00.20 ID:j7V3WS/C0
久美子「……高坂さんは、生き物をなんだと思ってるの? みんな、掛け替えの無い命なんだよ。」


麗奈 「だって、とっても可愛かったんだもん。」


久美子「可愛いのに殺すの? 解剖するの?」


麗奈 「可愛いから、解剖するの。可愛いから、愛しているからこそ、解剖してみたくなるの。」


久美子「その為に、高坂さんの満足の為に、掛け替えの無い命が失われるんだよ。」


麗奈 「それは仕方無い事だわ。ある意味窮極の選択ね。愛と死は私にとって永遠のテーマ。久美子の体もその為にあると言っても過言ではないのよ。」


久美子「いや、過言でしょ……。」


 私の体は、高坂さんの為にある訳じゃない。


麗奈 「久美子……。」


 高坂さんが、右手にナイフを持ったまま、私の頬に両手を伸ばしてくる。
 目の前で、ナイフの刃が、にぶく輝く。


麗奈 「久美子、私の愛を、受け入れて。」
52 :050/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:54:29.92 ID:j7V3WS/C0
久美子「……嫌だ。……そんな身勝手な、……一方通行な愛、……愛じゃない。」


麗奈 「……そうかしら?」


 高坂さんが、首を傾げる。
 私は、そんな高坂さんの顔を、精一杯睨み付ける。


麗奈 「ふふっ、じゃあ、久美子も私を愛せばいいわ。そうしたら一方通行じゃない。」


久美子「高坂さんを?」


麗奈 「うん。」


 変な考えが頭に浮かぶ。じゃあ解剖してもいいのか。


久美子「……ふっ。」


麗奈 「……なに?」


久美子「じゃあ高坂さん、解剖してもいいの?」


麗奈 「……え?」
53 :051/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:54:59.97 ID:j7V3WS/C0
久美子「だって、愛してたら解剖しちゃってもいいんでしょ? 仕方無いんでしょ?」


麗奈 「……久美子、私の事解剖したいの?」


久美子「うん、是非とも解剖したい!」


 我ながらおかしな事を言っていると思いつつ、急いで返事をする。


麗奈 「そう……。そうなんだ。」


 高坂さんはそう呟くと、ゆっくりと立ち上がる。
 その場で、回れ右。
 直ぐに、鞄を開く音がする。
 彼女の上半身に、目を遣る。
 またしても、鞄の中から、なにか捜している様だった。


麗奈 「ん……。」


 小さく漏らすのが聴こえた。
 そして、なにかを取り出す。
 取り出した物は、体の陰になって見えない。
 しかし、腕を動かすのに合わせて、ばさばさと音がする。
 見えた。
54 :052/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:55:30.04 ID:j7V3WS/C0
久美子(あ……。)


 直ぐに判った。
 それは、ピクニックなどで使う、レジャーシートだった。体の前で広げていたのだ。
 空中で、大きく広がる。
 それを高坂さんが、背中を丸めて、石畳の上に敷く。
 綺麗に広がった。
 一体なにを始める気なのか、と思いながら注視していると、肩から鞄を下ろし、レジャーシートの上に無造作に置く。
 続いて髪の毛を纏めているシュシュを外し、頭を軽く左右に振ると、シュシュも同じ様にシートの端に落とす。
 足に手が届くまで屈み、片足ずつサンダルを脱いでシートに上がると、


麗奈 「よっ。」


 という声と共に、両膝を突く。
 続いて、鞄の側面に手を遣る。
 外側にあるポケットに、手を入れている様だった。
 直ぐに出てきて、鞄の側に、なにかを置く。
 ケータイだった。


久美子(あ!)


 あれが使えれば、助けが呼べる。
 と思っている目の前で、また、鞄の中に手が突っ込まれる。
 なにかを捜す様な素振りは見せず、今回は、直ぐに手と布の様な物が出てきて、体の陰に隠れる。
 何を出したのか。タオル?
 疑問を抱きつつ見詰めていると、また鞄の中に手が突っ込まれ、やはり直ぐに出てくる。
 ペットボトルだった。
 ケータイの手前に、ペットボトルが置かれる。
 見覚えがあった。
55 :053/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:55:59.92 ID:j7V3WS/C0
久美子(あれって……。)


 多分、さっき投げ渡した奴だ。律儀にも鞄に入れてから追い掛けて来ていたらしい。
 間髪を容れずに、また、タオルの様な物がごそっと出てくる。
 そのまま、体の陰に消える。
 少し、間があく。
 体の陰で、なにかしているのか。
 そう思いながら見ていると、高坂さんの手が戻ってきて、またしてもタオルの様な物が出てくる。
 今度は、体の陰に隠れなかった。見える。レジャーシートの上に置かれたそれは、間違い無くタオルだった。タオル多くない?
 続けて、ハサミ……じゃない、ペンチ。直ぐに消える。


久美子(……え?)


 一体そのペンチで、なにをする気なのか。
 不安を感じていると、次は、服の様な物が出てくる。


久美子(服……着替え?)


 なんでそんな物まで……。
 直ぐ様、手が戻ってくる。今度は、鞄の中には入らない。
 口の部分を、大きく広げている。
 鞄の中を確認している様だった。


麗奈 「うん。」


 納得した様な声を上げて、鞄から手を離す。
 そして、
56 :054/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:56:29.95 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「よっ。」


 その声と共に、高坂さんが立ち上がる。
 シートの上の荷物が、見易くなった。
 大量のタオル。
 鞄。
 ペットボトルに、ケータイ。
 高坂さんの足は、立ち上がった時のまま動かない。
 足の向こう側に、ペンチ。
 タオルの上に、ナイフもあった。
 多分、さっき私を刺すのに使った奴だ。折り畳み式なのに刃を閉じてもいない。
 高坂さんは一体なにを――


久美子(!)


 突如、目の前になにかが現れ、はっとした。白い。
 見上げる。ワンピースが無かった。なんと下着姿だった。
 その高坂さんの体が、左に動く。
 白いショーツに、ブラ。ストラップレスタイプ。
 高坂さんがワンピースを脱いで、拾い上げようとしていた。


久美子「こ、高坂さん、それ、なにしてるの……。」


 足下に手を伸ばした状態で、高坂さんの動きが止まる。
 しかし、


麗奈 「……それ?」
57 :055/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:56:59.67 ID:j7V3WS/C0
 怪訝そうな顔と声だった。
 右腕を持ち上げ、高坂さんの体を指差し、


久美子「それ!」


 と叫び、右腕を石畳の上に戻す。
 高坂さんが、屈めていた背中を戻し、自分の体に目を遣る。
 そのまま、数秒固まる。
 軈て、不思議そうな表情で、こちらを向く。


麗奈 「なにしてるって、ブラしてるに決まってるじゃない。久美子もしてるでしょ?」


 そうじゃない!
 もう駄目だ。今のこの人にはなにを言っても通じない。
 足下に、視線を戻す。
 すると、丁度高坂さんの手が下りてきて、ワンピースを持ち上げる。
 そのまま、ぽい、とタオルの脇に投げ捨てる。
 打ち捨てられたワンピース。
 じっと見る。
 別に、汚れている風でもない。
 なぜ脱いだのか。
 と訝しみながら眺めていると、


久美子(ん?)


 ワンピースの上に、なにかが落ちた。
 白い、あれは、ブラだ。
 見上げる。
 上半身裸の高坂さんが、今度はなんとショーツに手を掛けていた。
 やばい。
58 :056/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:57:30.04 ID:j7V3WS/C0
久美子「こ、高坂さん。」


麗奈 「ん、なに?」


 と言いながら、高坂さんはショーツを下ろし始めた。
 陰毛。
 太股の表面を滑る、白い布。
 下腿に到達。
 左足が抜ける。
 右足も抜ける。
 ショーツが、ワンピースの上に投げ捨てられる。
 俄かには信じられない光景だった。
 野外で素っぽんぽんの美少女が、タオルの上のナイフを、ゆっくりと拾い上げる。
 そして、シートから下り、私の正面に位置すると、


麗奈 「……っと。」


 と発しながら、目の前に、膝を突いて座る。


麗奈 「さあ、久美子、どこがいい?」


久美子「……え?」


 高坂さんの顔を、見上げる。
59 :057/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:57:59.94 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「内臓? 骨? 筋肉? どこがいい?」


 高坂さんが、右手に持ったナイフを、自分の頬の側まで持ち上げ、微笑む。


久美子(あ……。)


 この子、また遣る気だ。
 殺される? 今度こそ殺される?


麗奈 「やっぱり最初は内臓かしらね。」


 内臓? なにすんの、嫌だ、やめて。
 しかし、声は出ない。現前を注視するので精一杯だった。
 高坂さんが、ナイフを持っていた右手を胸の高さまで下ろし、握り直す。
 そのまま、自分の御中の左側に持っていくと、なぜか動きをとめる。


久美子(……?)


 おかしい。これでは丸で、自分の御中に刺すみたいな恰好――
 突き立てた。


久美子(あっ。)
60 :058/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:58:30.26 ID:j7V3WS/C0
 ゆっくりと、無言で、自分の御中を真横に切り裂いてゆく。
 そして、ナイフを引き抜くと、直ぐに両手で傷口を開きながら、


麗奈 「どお? 久美子。……私の小腸、見える?」


 と訊いてくる。


久美子「……。」


 やばい。やばい物が見える。
 この子、完全に頭がおかしい。


久美子「こ、高坂さん、痛くないの?」


麗奈 「ん、痛み? ……大した事無いわ。……それより、触ってみない?」


久美子「……え?」


 しかし、私が問い質す前に、


麗奈 「あ、小腸も一緒に切れてる。……指も入るわね。」


 と言いながら、左手の中指の先っぽを、自分の小腸の切れた部分に突っ込む。
 それを踏まえた上で良く見ると、指を入れた部分以外にも、小腸が傷付いているのが判る。御中をナイフで切り裂いた時に、一緒に切れたのであろう。
61 :059/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:59:00.96 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「ほら、……久美子も入れてみない? ……ぬぽっ♪」


 変な台詞と共に、小腸の孔から指を引き抜く。


久美子「いや、私は……。」


麗奈 「ん? ほら、早くしないと、傷が治っちゃうわよ。」


久美子「え、治る?」


麗奈 「うん。……見えるでしょ? ……ここ。」


 そう言って、最前まで指を入れていた部分を、左手の中指で指し示す。
 見ると、その孔の部分は、切断面同士がくっついて、一本の線の様になっていた。
 他の部分は……と、その左右を見て、はっとした。さっき小腸にあった筈の傷が、どこにも見当たらない。


久美子「え?」


麗奈 「ん?」


 最後に残っていた線状の傷も、段々と見分けが付かなくなり……。
 程無く、どこに傷があったのか、判別出来なくなった。


久美子「なにこれ……。」
62 :060/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:59:30.15 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「え、なにが?」


久美子「傷が……、治っちゃったの?」


麗奈 「そうよ。吸血鬼は傷の治りが速いんだから。……ほら、早く触りなさいよ。」


久美子「いや、私は――」


麗奈 「遠慮しないで。」


 その声と共に私の右手を掴むと、そのまま持ち上げながら、自身も上半身を乗り出す。
 私の右手が、御中の裂け目に触れる。


麗奈 「久美子、指を伸ばして。」


久美子「え、こう?」


 と言いながら私がゆっくりと指を伸ばすと、


麗奈 「そう。」


 高坂さんは、自分の御中の切れ目の中へと、私の右手を入れ始めた。
 指先が、皮膚ではない「なにか」に触れる。
 そのまま、両手を使って、御中の内側へとぐいぐいと押し入れる。
 うわ、あったかい。
 そして、ぬるぬるする……。
 あっと言う間に、手首まで入った。
63 :061/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 22:59:59.93 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「ふふっ。……どう? 私の御中の中の触り心地は。……気持ちいい?」


 滅茶苦茶な事を訊いてくる。


久美子「う、うん。とっても気持ちいいよ。」


 高坂さんの呼吸に合わせて、御中が動いているのを感じる。
 やばい。この状況やばい。どうしたらいいんだ。


麗奈 「次はどうする? 引っ張り出して観察してみる?」


久美子「え、引っ張り出して?」


 と言って、御中の傷が小さくなっていることに気付いた。


久美子「……あ、あれ?」


麗奈 「ん、どしたの?」


久美子「御中の傷が小さくなってる様な……。」


麗奈 「そんなの当たり前じゃない。吸血鬼なんだから。」


久美子「あ、いや、そうじゃなくて……。」
64 :062/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:00:30.77 ID:j7V3WS/C0
 傷が小さくなってしまった所為で、右手が抜けない様な。


麗奈 「ん、なに? 遠慮無く言って。」


久美子「あの、手が抜けない様な……。」


麗奈 「ああ、平気よ。無理矢理引っ張れば抜けるわ。」


久美子「え、……無理矢理?」


麗奈 「ええ。」


 と言って、高坂さんは笑みを浮かべる。


麗奈 「遣って御覧なさい。」


久美子「あ、じゃあ……。」


 右手を、手前に引く。
 しかし、ちょっと進んで手の甲の部分に差し掛かると、直ぐ様つっかえてしまう。


久美子「あ、もう駄目だよ……。」
65 :063/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:00:59.94 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「だいじょぶよ。いけるわ。」


久美子「ええ……?」


 私が引っ張っている部分だけ、御中が歪に盛り上がっている。
 正直、これ以上は気が引ける。


久美子「いや、もう無理だよ……。」


麗奈 「あは、意気地無し。」


 高坂さんは楽しそうに言うと、私の右手首を左手で掴み、一気に引き抜いた。
 出てきた私の右手は、謎の液体に塗れていた。血ではない。
 高坂さんの御中の傷はというと、腕を引き抜いて障害が無くなった御蔭で、見る見る小さくなっていく。


久美子「あ、やっぱり凄いね。」


麗奈 「ん、なにが?」


久美子「傷が、どんどん治ってく。」


麗奈 「だから、吸血鬼なんだから当たり前じゃない。……久美子も吸血鬼になれば、こうなるわ。」
66 :064/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:01:30.26 ID:j7V3WS/C0
久美子「そうなんだ……。」


麗奈 「ええ。……直ぐに噛んで上げる。」


久美子「え、それは……。」


麗奈 「ふふっ。遠慮しなくていいのよ。」


 いや、これは遠慮ではないんだけど……。
 と思いながら御中に視線を戻すと、裂け目があった部分は、完全に元通りになっていた。もう、傷があった場所は、全く見分けが付かない。
 それだけに、まだ知らないなんらかの酷いデメリットがありそうで、怖い。
 そして、高坂さんはデメリットを知っていたとしても、私に教えてはくれないだろう。勧める立場なんだから、当然だ。
 しかし、高坂さんはそんな気持ちを知ってか知らずか、


麗奈 「さあ、どこでもいいわよ? ……久美子が『噛んで』って言ったら、どこだろうと噛んで上げる。」


 と迫ってくる。


久美子「そ、そんな、悪いよ。」


麗奈 「なに言ってんの、友達じゃない。久美子の為なら、喜んで一肌脱ぐわ。」


久美子「そ、そう……。」


 既に全裸の癖に、なにを脱ぐって言うんだ。
 ……ってゆーか私達って友達なの?
67 :065/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:02:00.00 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「……ねえ、どこを噛む?」


久美子「え、ちょ、ちょっと待ってよ。」


麗奈 「ん? 考え中?」


久美子「そうじゃなくて……。」


 高坂さんは執拗に勧めて来る。もう、どう足掻いても彼女の牙からは逃れられそうにない。
 恐る恐る、一番大事な事を訊く。


久美子「あ、あのさ……、高坂さんに噛まれたらさ……、私の脚の傷も……治るのかな?」


麗奈 「ああ。勿論治るわ。」


 福音だった。


久美子「そ、そっか。……じゃあさ、一応念の為訊くんだけど……、わ、私って、噛まれて吸血鬼になっても、また元の人間に戻れるんだよね?」


麗奈 「なに、そんな事気にしてたの? 別に一生吸血鬼のままでいいじゃない。」


 いや、良くないでしょ。
 でもチャンスだった。脚さえ治ってしまえば、走って逃げられるかも知れないのだ。
 正直な所、高坂さんの方が足は速い。でも、何と言っても相手は全裸。ひと気のある所まで近付いてしまえば、さすがに追っては来られまい。
 勝ち目の無い鬼ごっこなんかじゃない。
 意は決まった。
68 :066/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:02:29.96 ID:j7V3WS/C0
久美子「……いいよ。」


麗奈 「え?」


久美子「噛んで、いいよ……。」


麗奈 「だから、どこを噛んで欲しいのか、さっきから訊いてるじゃない。」


久美子「ど、どこでもいいよ。……腕でもいいのかな。」


麗奈 「多分、大丈夫だと思うけど……、ほんとにいいの?」


久美子「うん。いいよ……。」


麗奈 「あのさ、言い忘れてたけど、吸血鬼になった時の歯形は、吸血鬼でいる限り一生消えないのよ。どんな傷でも数十秒で治っちゃうのにね。……だから、歯形を付ける場所は、慎重に選んで。」


久美子「いいよ、腕で……う、腕がいいんだ。」


麗奈 「そう? ……じゃあ噛むけど。」


 と言うと、高坂さんは、


麗奈 「よっ。」


 という声と共に立ち上がる。
69 :067/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:02:59.97 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「ねえ、どっちの腕?」


久美子「え? 右、かな……。」


麗奈 「そう。」


 高坂さんは静かに言うと、私の御中の右側へと歩き、こちらを向いて立ち止まった。私はその様子を、首だけ振り返りながら目で追った。
 高坂さんがその場に、膝を突く。
 しかし……。


久美子(……?)


 なぜかそこから、動こうとしない。
 なにをしているのか。


麗奈 「うーん……。」


久美子「ん、どうしたの?」


麗奈 「ん? うん。……やっぱりね、私と同じ肩に付けて上げる。」


久美子「え?」


麗奈 「よっと。」
70 :068/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:03:29.79 ID:j7V3WS/C0
 高坂さんが立ち上がる。
 そのまま、左足が、私の体を跨ぐ。
 そして、私の体を跨いだ状態で、


麗奈 「っと。」


 と発しながら、石畳に膝を突く。
 透かさず、私の体に覆い被さる様にして、上半身を近付けて来る。
 高坂さんの胸が、背中に触れる。
 首を左に動かすと、高坂さんの左手が、私の顔の真横にあった。石畳に手を突いていた。そして、彼女の顔は、私の左肩の真上だった。
 目が合う。


麗奈 「ふふっ。」


久美子「あ……。」


麗奈 「じゃあ、久美子、いくわよ。」


 高坂さんの顔が、肩に近付く。
 息が、肩に当たる。


麗奈 「ねえ、ちょっと頭を下げて。」


久美子「え、こうかな。」


 言われた通りにする。
71 :069/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:04:00.28 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「うん、そう。じゃあ……。」


 噛まれた。


久美子「うっ! 痛っ! ちょっ、ちょっと、痛いよ!」


 高坂さんは、噛むのをやめてくれない。


久美子「あっ、やめてっ! 一旦やめてっ! ほ、ほんとに、ほんとに痛いから! 御願い、高坂さん!」


 次の瞬間、急に痛みが和らいだ。
 恐る恐る左上を向くと、高坂さんの顔が肩から離れていた。目が合う。


麗奈 「久美子、集中出来ないわ。」


久美子「あ、ごめん。あ、あのさ、でも、次からはもうちょっと、優しく噛んでくれないかな。」


麗奈 「ん、分かったわ。そうする。」


久美子「そう、良かった……。」


 高坂さんが、少し微笑む。
72 :070/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:04:29.93 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「さあ、顔を右に向けて。」


久美子「え、なんで?」


麗奈 「ん? その方が集中出来そうだから。」


久美子「そ、そう……。」


 言われた通り、顔を右に向けた。


久美子「これでいいの?」


麗奈 「うん。そしたら、頭を下げて。」


久美子「こお?」


 少し頭を下げる。


麗奈 「ううん、もっと。」


久美子「もっとって……。」


 更に頭を下げると、
73 :071/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:04:59.99 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「そのまま、下まで。」


 という指示が来たので、ゆっくりと、左の頬を石畳に付けた。少しひんやりする。


麗奈 「そう。いい子ね。」


 頭の側面を撫でられる様な感触。
 右耳の上辺りを――
 ぐいと押された。


久美子(!)


 こめかみの辺りが痛む。
 石畳に押さえ付けられて、そこに接する左のこめかみの辺りが強く痛む。その上、頭が全く動かせない。
 嫌な予感がする。


久美子「ちょっと……、高坂さん……。」


麗奈 「じゃあ、いくわよ。」


 上半身に、遠慮無く体重を掛けてくる。
 そして――
74 :072/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:05:30.48 ID:j7V3WS/C0
久美子「うっ……。」


 噛まれた。
 さっきよりは弱い気もするが……


久美子「や、やっぱり痛いよ……、高坂さん……。」


麗奈 「がーまーん。」


 高坂さんは、噛んだ状態のまま発声した。
 悟った。
 もう本当に我慢するしかないのだ。
 第一この状態では、なんの抵抗も出来ない。
 高坂さんの集中を乱さない様に、成る可く大人しくして、さっさと吸血鬼にして貰うのが、一番増しな選択肢だった。
 しかし、情けない。
 押さえ込まれて、じっと痛みに耐えている。
 その上、さっきは無理矢理、右手を御中に突っ込まされた。


久美子(……ん。)


 ふと、その右手が、顔の真ん前にある事に気付いた。
 少し動かしてみる。
 その表面は、ぬるぬるとした液体に塗れて、弱く光を反射していた。
 ああ、気持ちが悪い。
 この状況から逃げ果せたら、さっさと洗っ――
 突然、体の奥底から、快感が湧き上がる。
75 :073/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:06:00.95 ID:j7V3WS/C0
久美子(!)


 なんだ今のは。
 考える間も無く、今度は、体の感覚が薄れてゆく。
 私を苛んでいた体の痛みが、体の感覚と共に、じんわりと消えてゆく。


久美子(あ……。)


 気持ちいい……。
 自分の体が無くなっていくみたいだった。
 でも、目の前には自分の右手がある。
 試しに、意識して動かしてみた。
 しかし、なにも感じない。指は自分の意思で動かせるものの、触覚は完全に麻痺していた。
 私の体はどうなってしまったのか……。
 その時、再び快感が沸き上がる。


久美子(!)


 なにこれ。さっきより気持ちいい。
 なんで?
 心地好い……。
 ここどこ?
 私、どうなっちゃうの?
 高坂さん、好き……。
 なぜか、思考と感情が定まらない。
 頭がぼんやりしているみたいだった。
76 :074/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:06:29.95 ID:j7V3WS/C0
久美子(……あっ!)


 また来た。
 気持ちがいい。明らかに、さっきより気持ちがいい。
 快感がどんどん強くなっていた。
 脳が蕩ける……。
 私、死ぬの?
 嫌だ、死にたくない。
 高坂さん、欲しい。
 私の物に……


久美子(あっ!)


 来るのは何と無く分かっていた。さっきより更に快感が強い。
 その時、異変に気付いた。
 目の前の右手が、小刻みに揺れていた。
 目眩だった。少し気持ちが悪――


久美子「あっ。」


 気持ちいい。
 もう、どうなってもいい。
 高坂さんになら、殺されたって構わない。
 私を好きに――


久美子「あっ。」
77 :075/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:07:01.12 ID:j7V3WS/C0
 高坂さん!
 私の大事な人……。
 壊して! 私を滅茶苦茶にして!


久美子「あっ。」


 もう駄目!
 気持ち良過ぎて、頭がおかしくなる!


久美子「あっ。」


 壊れちゃう! 私、壊れちゃう!


久美子「あっ。」


 死んじゃう!


久美子「あっ。」


 死――


久美子「あっ……あっ……あっ……あっ……あっ。」
78 :076/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:07:29.89 ID:j7V3WS/C0
久美子(……。)


 体から、快感の余韻が引いてゆく。
 見覚えの無い光景。


久美子(……。)


 ここどこ……?
 目の前に、手があった。


久美子(なにがあったんだっけ……?)


 指を動かしてみると、弱い感覚があった。
 変な感じだ。動かし続ける。


久美子(私……。)


 その時、頭が冴えた。
 全てを思い出した。状況に合点が行った。
 急いで顔を上げながら、


久美子「高坂さん?」


 と声を出す。
79 :077/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:07:59.91 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「うん、なに?」


 彼女は直ぐ近くに居た。私の顔の、やや左前方にしゃがんでいた。全裸で。


久美子「あ……。」


 その姿を見て、なぜか心の底から安堵する。


久美子「良かった。側に居たんだね。」


麗奈 「うん。さあ、立って。」


 高坂さんが、中腰になる。
 直ぐに、私も立ち上が――
 太股に、変な感覚があった。


久美子「あっ……。」


 思い出した。傷があったんだった。
 見遣る。血塗れの太股が目に入る。しかし……。
 治っていた。脚の傷は、完全に治っている様だった。全く痛みが無い。
 試しに、手で触れてみる。血液は完全に凝固していて、太股の表面がごわごわになっていた。違和感の正体はそれだった。
 しかし、傷は跡形も無い。指で強く押してみても、なんの痛みも無い。
80 :078/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:08:29.84 ID:j7V3WS/C0
久美子「わーお。」


 笑みがこぼれる。


久美子「凄いね。ほんとに治っちゃった。」


麗奈 「ふふっ。じゃなければ刺さないわよ。あした学校だし。」


久美子「あ、そっか。」


 さすが高坂さん。


麗奈 「さあ、立って。」


 高坂さんが、手首を握って来る。


久美子「あ。」


麗奈 「それっ。」


 引っ張られながら、立ち上がる。
81 :079/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:09:00.16 ID:j7V3WS/C0
久美子「うわっと。」


 勢い余って、高坂さんの胸に顔から突っ込む。柔らかい。
 そそくさと顔を離す。


久美子「あ、ごめん。」


麗奈 「ううん、いいのよ。」


 一歩下がって顔を見ると、高坂さんは笑みを浮かべていた。


麗奈 「私こそ、強く引っ張り過ぎたわね。」


 そう言いながら、握っている手の方に目を遣る。
 私も目を向ける。握られている手首に、高坂さんの温もりを感じる。


麗奈 「じゃあ久美子、服を脱いで。」


久美子「え?」


 唐突だった。そして、高坂さんは真顔だった。
82 :080/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:09:29.90 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「ふーく。脱いで。」


久美子「え……、それは……。」


 抵抗がある。こんな所では脱げない。


麗奈 「脱がないの?」


久美子「えー? だって、人が来るかも知れないし……、それに、恥ずかしいよ……。」


 せめて、個室で二人っ切りなら……。


麗奈 「そう、脱がないの。」


 高坂さんの言い方が、急に冷たくなった。
 私の手首を握っている彼女の力が、強くなる。
 なんだろう。不安感が込み上げて来る。


麗奈 「久美子は悪い子ね。御主人様の言い付けが聞けないなんて。」


久美子「……え?」
83 :081/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:09:59.90 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「わ、る、い、子、だわ。……誰が久美子を吸血鬼にして上げたのかしら。……眷族の癖に主人の言う事を聞かないなんて、最低の吸血鬼ね。」


久美子「え、待って、高坂さん、私――」


麗奈 「言い訳無用! 最っ低の吸血鬼だわ。……もう吸血鬼ハンターにでもなんにでも捕まって、人間に戻されちゃえばいいわ。」


 目眩がしてきた。


久美子「に、人間、に……。」


麗奈 「そうよ。言う事を聞かない子なんて、要らないもの。」


 嫌だ。戻りたくない。折角高坂さんに吸血鬼にして貰ったのに、唯の人間になんか戻りたくない。
 一気に、目眩が激しくなる。
 体がふらふらする。気持ちが悪い。
 高坂さんに嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない。


久美子「あ、高坂さん、私――」


麗奈 「話し掛けないで。久美子の声は、二度と聞きたくないわ。」


 高坂さんは、ぴしゃりと言い放った。
 冷たい表情の高坂さんが、目の前で上下左右に揺れている。
 嘘……嘘だ……こんなの嘘だ……。
 息苦しい。吐き気がする。
84 :082/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:10:30.88 ID:j7V3WS/C0
久美子「う……あ……。」


 遂に立っていられなくなり、膝を突く。
 更に、右手も石畳に突く。高坂さんの陰部が目の前に来る。
 私は、情けを求める様に、捨てられた子犬の様に、高坂さんを見上げる。事ここに至っても、左の手首は、なぜか高坂さんに掴まれたままだった。
 目が合う。
 見下ろすそれは、冷然とした表情だった。
 崖っ縁だった。でもまだ終わりでは無い筈だ。


久美子「こ……、こうざかさん――」


麗奈 「話し掛けないでって言ったでしょ。」


 そう言うと、高坂さんは、地面に向かって叩き付ける様に、力を込めて手首を放した。


麗奈 「さよなら。」


 高坂さんが私に背を向け、ゆっくりと歩き始める。


久美子「あっ……あっ……。」


 待って、と言う事が出来ない。
 代わりに、口内に溜まっていた唾液が、唇の右端から垂れ落ちるのを感じた。
 高坂さんが、レジャーシートの前で立ち止まり、しゃがみ込む。


久美子「あ……う……。」
85 :083/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:10:59.69 ID:j7V3WS/C0
 声を掛けたいけど、話し掛けたら益々嫌われる。体だけが、前のめりになる。
 レジャーシートの上から、なにかを手に取るのが見えた。
 ショーツだった。そのまま立ち上がる。


久美子「あっ……あっ……。」


 服を着ようとしているのだ。本当にどこかへ行ってしまう。
 捨てられた。高坂さんに完全に捨てられた。


久美子「うっ……あっ……。」


 一気に涙があふれて来る。
 腕で体を支えていられなくなり、上半身が地面に崩れ落ちた。
 おでこの右側を、ごつりと石畳にぶつける。
 もうどうにもならない。


久美子「ううっ……うあ……ああ……。」


 力を入れても、なぜか手足が動かない。完全に硬直していた。


久美子「あっ……あ……。」


 最早、今の私にはとめようが無かった。涙も。高坂さんも。
 御負けに涎も。
86 :084/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:11:29.90 ID:j7V3WS/C0
久美子「あっ……うう……。」


 消えたい。この世から消えてしまいたい。


麗奈 「久美子。」


 高坂さんの声がした気がした。


久美子「うっ……あっ……。」


麗奈 「ねえ、久美子。」


 左肩がぐいと押され、体が仰向けになる。
 高坂さんだ。高坂さんが、目の前に居る。


久美子「あっ……あっ……。」


麗奈 「ねえ、だいじょーぶ?」


 相変わらず全裸の高坂さんが、私に優しい言葉を投げ掛けてくれる。


久美子「あっ……ああ……。」
87 :085/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:11:59.90 ID:j7V3WS/C0
 見捨てられなかった。私は高坂さんに、見捨てられなかった。


久美子「あ、あ、あ、あ、あ……!」


 これまで以上の勢いで、涙が噴き出してくる。


麗奈 「ふふっ、可愛い子ね。……私が久美子を見捨てる訳ないじゃない。」


久美子「あああ……。」


 何と慈悲深い。


麗奈 「ほら、泣くのをやめて。……一緒にいい事しましょう。」


久美子「うっ……うっ……。」


 「やめて」と言われても、涙は急には止まらない。


麗奈 「ふふっ。……よしよし。」


 高坂さんが、タオルで、私の顔を拭いてくれる。
88 :086/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:12:29.86 ID:j7V3WS/C0
久美子「うっ……うああ……。」


 その心遣いに、再び涙の勢いが増す。


麗奈 「いいのよ。久美子が落ち着くまで、ずっと側に居るから。」


久美子「ああ……。」


 全身の力が抜ける。
 唯、横隔膜のみが、痙攣する様に動き続けた。
          *
 涙も呼吸も、一分程で落ち着いた。
 はあ、と深く息を吐くと、私は、私の涙と、涎と、鼻水を拭いてくれていた高坂さんの顔に目を遣り、


久美子「ありがと、高坂さん。」


 と礼を言ってから起き上がった。


麗奈 「もう大丈夫?」


久美子「うん。」


麗奈 「一人で立てる?」
89 :087/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:13:00.00 ID:j7V3WS/C0
久美子「うん。」


 実践してみせる。
 すると、間髪を容れずに、高坂さんも立ち上がる。
 立ち上がった高坂さんと目が合い、思わず笑みがこぼれる。


久美子「ほらね?」


麗奈 「ふふっ。」


 高坂さんが、私の頭の左側面に手を伸ばし、


麗奈 「偉いわ。」


 と言いながら、私の髪の毛を撫でてくれる。
 手を引っ込めて、


麗奈 「じゃ、服も一人で脱げるわね?」


 と訊いてきたので、


久美子「勿論だよ!」


 と応じて、素早く服を脱ぎ始めた。
90 :088/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:13:30.25 ID:j7V3WS/C0
          *
 四十秒で脱衣した。脱いだ服は、高坂さんの指示に従って、レジャーシートの上に置かせて貰った。
 高坂さんに向き直り、


久美子「これでいいかな?」


 怖ず怖ずと訊く。


麗奈 「……。」


 しかし、高坂さんは返事をしてくれない。その顔を見ると、じっくりと、嘗め回す様に、私の体に視線を注いでいる様な仕種だった。


久美子「え?」


 急に、恥部を曝け出しているという意識が、込み上げてくる。


久美子「……ちょっと、恥ずかしいよ。」


 急いで体を縮めて、両手で、胸と股間を隠す。
 すると、高坂さんは笑みを浮かべて、こちらへと足を踏み出す。
 にこやかな表情で歩みながら、


麗奈 「なに言ってんの。久美子も私の体、ちらちら見てたでしょ。」


 と言う。
91 :089/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:14:00.21 ID:j7V3WS/C0
久美子「え?」


 高坂さんが、レジャーシートの前で立ち止まる。


久美子「そうだったかな……?」


 否定も肯定も出来ず、二の句が継げないでいる私の目の前で、高坂さんは、ナイフを拾い上げた。
 こっちを向いて、


麗奈 「さあ、さっきの続きをしましょ。……御出で。」


 とさそってくれるので、


久美子「あ、うん。」


 と返事をしてから、急いで高坂さんの側に向かって歩く。
 目の前で立ち止まると、次の指示が来る。


麗奈 「ふふっ、いい子ね。……じゃあ寝て。」


久美子「え?」
92 :090/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:14:29.89 ID:j7V3WS/C0
 まじな顔だった。
 私がおもむろに、自分がさっきまで倒れていた辺りに目を遣って、再び高坂さんの顔に目を戻すと、


麗奈 「うん。そこら辺でいいわ。」


 との言葉だったので、


久美子「そっか。」


 と呟いてから、その方向に少し歩いた。
 振り返って、訊く。


久美子「ここら辺でいいのかな。」


麗奈 「うん。」


 ゆっくりと腰を下ろして座ると、御尻がひんやりした。
 すると、高坂さんも私の側まで来て、腰を下ろす。但し、御尻は浮かせたままだった。
 その状態で、口を開く。


麗奈 「寝て。」


久美子「俯せで? それとも仰向けで?」
93 :091/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:14:59.81 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「仰向け。」


 その通りにする。今度は背中がひんやりする。
 ちょっと顔を持ち上げて、御主人様の表情を窺い、


久美子「ねえ、なにするの?」


 と訊くと、高坂さんは笑顔で、


麗奈 「『かいふく』しまーす♪」


 と返してくる。
 かいふく……回復?


久美子「え、回復って、私、別に、どこも悪くないよ?」


 勿論、高坂さんもどこも悪くない。
 すると、心底嬉しそうな顔で、


麗奈 「あらー? 久美子ちゃんはまたまた御主人様に口答えでちゅかー? いけない子でちゅねー。御仕置きが必要かなー?」


 と言いながら躙り寄って来るので、


久美子「あーん、御主人様あ。許してえ。」


 と、笑いながら、媚びる様に応じる。
94 :092/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:15:29.92 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「ふふふ。許す。」


 高坂さんはそう言うと、顔を引っ込めて後退する。
 あー楽しい。
 などと思っていると、御中に、ぐっと押される感覚。
 顔を上げて確認すると、高坂さんのナイフが、私の下腹部の左側に刺さっていた。


久美子「え?」


 驚いた。驚く程痛みが少ない事に、驚いた。ナイフで突き刺されたとは思えない程、弱い痛みだった。


久美子「それ、ほんとに刺さってるの?」


麗奈 「うん。」


久美子「変なの。全然痛くないや……。」


 すると、高坂さんは口角を上げて、


麗奈 「あれえ? 久美子ちゃんは痛い方が良かったあ?」


 と訊いてくる。
95 :093/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:15:59.89 ID:j7V3WS/C0
久美子「え、いや、そうじゃないけど……。なんか痛みが少な過ぎるってゆーか……。」


 私が素朴な意見を口にすると、高坂さんの顔が、少し真面目になる。


麗奈 「ああ、吸血鬼は傷が直ぐに治るからよ。……本来痛みってゆーのは生物にとっての危険信号。……でも、傷が直ぐに治る吸血鬼にとっては、痛みを感じる必要があんまり無いんでしょうね。……だから、人間の時程痛みを感じないのよ。」


久美子「そっか……。」


麗奈 「だから……。」


 高坂さんが、私の御中に視線を戻す。


麗奈 「こう、して――」


久美子「うわ。」


麗奈 「ん? ……ああ。腹筋が切れたからか。」


 と言いながら、傷口に左手の指先を捩じ込む。


久美子「……うん。」


 高坂さんの言う通りだった。ナイフで刺された下腹部を見る為に腹筋を使っていたのに、腹筋ごと切られて力が入らなくなってしまったので、上半身が若干動き、思わず声が出たのだった。
96 :094/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:16:29.94 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「でも、こうして御中を切り裂いてみても、」


 高坂さんが、ナイフを引き抜く。


麗奈 「全然痛くないでしょ?」


久美子「うん。」


 今度は、ナイフを持ったまま、右手の指先も傷口に押し込む。
 その間ずっと、少しぴりぴりする程度だった。


麗奈 「さあ、久美子。」


 高坂さんが、喜色を浮かべながら、左手をゆっくりと私の御中へと押し入れてゆく。


麗奈 「それえ。」


 そして、一気に、左手を手首まで突っ込む。
 下腹部が、若干圧迫される感じ。


麗奈 「あー、あったかーい。……気持ちいー。」


 と言ってから、私の御中の中で、手をもぞもぞと動かし始める。
97 :095/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:16:59.84 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「んー、これかな。」


 直ぐ様、左手が出てくる。
 但し、指がなにかを掴んでいた。


久美子「え、なにそれ……。」


麗奈 「これ? これは久美子の『だいもー』。」


久美子「だいもー?」


麗奈 「うん。実物は初めて見たでしょ。」


久美子「うん……。」


 ……いや、実物以外でも見た事は無いんですけどね。


麗奈 「どうする? 戻して欲しい? それとも捨てちゃう?」


久美子「え! いやいや、戻してよ。」


麗奈 「あはは! じゃあ戻して上げる。」
98 :096/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:17:30.28 ID:j7V3WS/C0
 高坂さんはそう言って、私の御中の中へと、左手を入れ直す。
 危ない危ない。さらっととんでもない事を言いますね、私の御主人様は。


麗奈 「ここら辺でいいかな。」


 高坂さんが、御中の中で手を止める。
 そして、広げていた切れ目から右手を離すと、腕を交差させて、私の胸へと向けてくる。


麗奈 「ちょっと置かせて。」


 すっと、私の平らかな胸の上に、ナイフが下ろされる。見た目より重く、冷たい。
 そうして、空いた右手も、御中に投入される。


麗奈 「あは♪」


 私の御中の中を、グチャグチャと音を立てて掻き回し始める。
 掻き回しながら、


麗奈 「ねえ、これ、あれに似てない?」


 と訊いてくる。


久美子「……あれ?」
99 :097/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:17:59.96 ID:j7V3WS/C0
 すると、手をとめ、私の方に脇見をして、


麗奈 「お客さーん? 痒い所ありませんかー?」


 と戯けた様に言う。


久美子「ふふっ、無いよ。」


 ここは美容院か。


麗奈 「ふふっ、宜しい。」


 高坂さんは満足そうに返事をすると、手元に視線を戻し、「作業」を再開する。
 程無く、


麗奈 「あ、……これが『しきゅー』ね。」


 と独り言つ。


久美子「これがしきゅー? ……あ、子宮か。」


 これは直ぐに判った。
100 :098/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:18:30.01 ID:j7V3WS/C0
麗奈 「そう。だからこの奥が……。」


 両手の動きが止まる。


麗奈 「ねえ、ここが『ぼーこー』かしら?」


 と言いながら、私の顔へ目を向ける。


久美子「……え?」


 上手く聴き取れなかった。適切な答えが返せない。
 高坂さんは、うっすらと笑みを浮かべる。


麗奈 「ぼーこー。」


 直ぐ様、嗜虐的な表情が再来する。


麗奈 「ほらほらあ♪」


 突然、尿意に襲われる。
 はっとした。
101 :099/345 ◆WJBKjMiKIY [saga sage]:2018/06/05(火) 23:18:59.83 ID:j7V3WS/C0
久美子「あ。」


 「ぼーこー」って、膀胱の事か。
 高坂さんが、白い歯を見せて、にんまりと笑う。


麗奈 「ねえ、そうなのお?」


久美子「え、その――」


麗奈 「ほらあ。」


 更に、尿意が強くなる。


久美子「あっ、ちょっと!」


 高坂さんが、私の膀胱を探り当てて、手で圧迫しているとしか考えられなかった。


麗奈 「ふふふっ。どうやら当たりみたいね。」


久美子「あ、あの、高坂さん。そこ押しちゃ駄目……。」


麗奈 「えー? どうして駄目なのお?」


 尿意が強くなってくる。
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