魔王「おまえは女だ」ふたなり勇者「認めねえ」

Tweet

140 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/17(金) 22:12:45.56 ID:RUdbUN5C0

勇者「その玉ぶっ壊す!!」

魔王「やめっやめろっ! 許してくれ! すまんローゼ!!」

勇者「待ちやがれ!!」

魔王「おまえの位置を特定する目的以外ではもう二度と使わんと誓おう!!」

勇者「本当だろうなあ!?!?」

魔王「本当だ!!」

勇者「もしまた覗き見しやがったら……」

勇者「魔王は人間の町でエロ本読んでるって吹聴しまくってやる!!」

魔王「勘弁してくれー!!」

魔王(言動のちぐはぐさが気になるな)

魔王(若さ故に自己を確立できておらぬのか、育った環境によりアイデンティティを歪めてしまったのか)

魔王(……その両方かもしれんな)
141 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/17(金) 22:13:22.49 ID:RUdbUN5C0
つづく
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/08/17(金) 22:22:14.91 ID:SIPtZ+GDO
乙乙
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/08/18(土) 03:38:51.15 ID:9gR4xLDT0
この板1番の楽しみよ
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/08/18(土) 07:32:08.06 ID:IIBvdm8R0
おつです
145 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/19(日) 23:11:03.86 ID:gdOkoWJw0

Episode 7


地の神殿

勇者「力任せに解く試練ばっかだなーここ」

勇者「後はこの岩を動かしてスイッチを押せばいいのか」

勇者「なあ魔王―、めんどくせえからやってくれよ」

魔王「あのな……」ゴロゴロ

勇者「よーし、次で最深部だな」

勇者「今までのパターンだと、もうそろそろ……」

シーン……

魔王「現れんな」

勇者「ついにこのオレに恐れをなしたか!」

魔王「何か策があるのかもしれん」
146 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/19(日) 23:11:57.32 ID:gdOkoWJw0

勇者「……マジで襲ってこねえな」

魔王「気配も感じぬ。本当に来てはおらぬのだろう」

ゴゴゴゴゴゴ

地の大精霊「我は地の大精霊。他の大精霊のように甘くはないぞ!」

地の大精霊「貴様の力、聢と見せてもらおう!」

魔王「今、『貴様』と言ったな?」

地の大精霊「そうだ」

勇者「『貴様等』じゃなくてか?」

地の大精霊「流石に魔王が仲間とは卑怯であろう」

勇者「まあ普通じゃねえな」
147 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/19(日) 23:12:30.09 ID:gdOkoWJw0

勇者「大飛沫《スプラッシュ》!」

地の大精霊「なかなかの威力だな!」

魔王「ほう、大精霊が纏っていた土を一気に流したか」

地の大精霊「だが――!」

勇者(流した土が泥になって足元に!?)

地の大精霊「これで自由には動けぬだろう!」

勇者「舐めんなよ! ……竜巻《トルネード》!」

勇者「これで足元は自由だぜ!」ダダッ
148 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/19(日) 23:14:24.48 ID:gdOkoWJw0

勇者(いくら土を自由に操れるとはいえ、本体に直接攻撃をぶち込めば勝機はある)

勇者(今オレに授けられている加護は風と水の1つ)

勇者(この2つの力を組み合わせる!)

勇者「……怒号の炎《アングリー・フレイム》!」

地の大精霊「愚かな! 炎は我を硬化させるだけだぞ! ……風と水だとぉ!?!?」

地の大精霊「ぐわあああああ!」

勇者「こんな単純な手に引っかかるなんてな!」

魔王「大精霊の加護による魔術は詠唱を必要としないことを利用して、偽りの術名を叫んだのか……」

地の大精霊「……卑怯だ」

地の大精霊「だが、その狡猾さも貴様の力の1つなのだろう」

地の大精霊「貴様の実力、確かめさせてもった。聖なる地の加護を授けよう」
149 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/19(日) 23:17:11.77 ID:gdOkoWJw0

魔王「さて、勇者ローゼよ。今日の昼飯なのだが……」

勇者「…………」

魔王「なんと、卵焼き5種類セットだ!」

勇者「おっしゃー!」

魔王「それぞれハーブの調合を変えてある」

魔王「そして、一番右端のは砂糖多めだ」

勇者「うんめええええ!!」

狼「♪」

魔王(これほど喜んでもらえるのなら、用意した甲斐があったな)

魔王(尤も、作ったのはメイドであって、俺はただ運んだだけなのだが)

勇者「ありがとな!!」

魔王「……ああ」
150 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/19(日) 23:18:10.43 ID:gdOkoWJw0

勇者「そういや、ごこたいしょう? だっけか? おまえにもあんな感じの部下いねーの?」

魔王「ああ、四天王がいるぞ」

勇者「ちゃんといたんだな」

魔王「ああ、ちゃんといる」

魔王「……いないとでも思っていたのか?」

勇者「ちょっとな」

魔王「…………」

魔王「本来、魔王直属の大将は9人だった」

勇者「分裂しちまった結果が現状なんだな」

魔王「そうだ」

魔王「9つの恵みを司る九大天王。彼等が9人揃ってこそ真の力を発揮できるというのに」

魔王「地、岩漿、火、雷霆、風、雪氷、水、波動、闇」

魔王「彼等は恵みを公正に分配し、平和を守るために……」

勇者「…………」zzz

魔王「寝るな」
151 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/19(日) 23:20:03.78 ID:gdOkoWJw0

勇者「それより気になってたんだけどよぉ、おまえって攫われたお姫様と関わったことあんのか?」

魔王「ああ、親しかったぞ」

勇者「おまえが和平に拘ってる理由、もしかしたらお姫様だったんじゃねえかと思ってさ」

魔王「その通りだ」

魔王「……美しい人だった。横顔が、おまえと少し似ていたな」

魔王「髪の色も同じ銀だった」

勇者「……へえ」

勇者「…………」

勇者「……好きだったのか?」

魔王「彼女は……俺が最も愛した人だった」

勇者「……ふーん」

勇者(暖かくて優しくて、でも寂しそうな表情だ)

勇者(まるで、オレがメリッサのことを思い出してる時のような……)

勇者(……………………)
152 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/19(日) 23:22:52.99 ID:gdOkoWJw0

近くの村

勇者「すんませーん、宿探してるんすけど」

親切そうな男「ああ、宿ならあっちだよ」

勇者「どうも」

勇者(綺麗な村だなー)

勇者(城下町からはだいぶ離れてるってのに、随分豊かそうだ)

勇者(宿は……あの建物っぽいな)

銀髪少女「あーーーーーーーーーーーーー!!!!」

勇者「うおっ」

銀髪少女「お姉ちゃん、私と髪の毛の色おんなじー! 目の色まで!!」

勇者(ガキの頃のオレそっくりだ。吃驚した……)

銀髪少女「嬉しいな! おんなじ色の人全然いないから」

勇者「まあ、わりと珍しいよな」
153 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/19(日) 23:24:02.04 ID:gdOkoWJw0

銀髪少女「お父さんとお母さんも、茶髪と金髪で、違う色だから寂しかったの」

勇者「そうか」

勇者(茶髪と金髪の夫婦……まあ、何処にでもいるよな)

銀髪少女「旅人さんでしょ! ねえねえ、うちに泊まってって!」

勇者「いや、オレそこの宿に泊まるから」

銀髪少女「えー、うちに来てよぉ!」

勇者「なんでだよ、嫌だっつの」

勇者(……誰かと親しくなるのは嫌だ。他人との関わりは必要最低限でいい)

勇者(失った時のあの思いは、もう味わいたくない)

勇者(アルセア……)

銀髪少女「お姉ちゃんなんで? なんでいやなのー?」

勇者「嫌なもんは嫌なんだよ!! あとオレはお姉ちゃんじゃねえ!!」

銀髪少女「…………」

銀髪少女「ふえええええええええん!!!!」
154 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/19(日) 23:25:55.76 ID:gdOkoWJw0

温和な女性「その子、1人っ子でいつも寂しがってるんだよ」

温和な女性「勇者様、どうか付き合っていただけないですかねえ」

勇者「え、えー……」

温和な女性「ああ、これをどうぞ。ビスケット、焼きすぎちゃったのよ」

銀髪少女「ありがとー!」

温和な女性「仲良くね」

勇者(断る隙がなかった……)

銀髪少女「…………」ジーーー

勇者「……わぁったよ、ったく……」

銀髪少女「わーい! 私、ピティロディア!」

勇者「名前がなげぇ」

銀髪少女「ロディアでいいよ!」

銀髪少女「お姉ちゃんの名前は?」

勇者「だからお姉ちゃんじゃねえって……ローゼだ」
155 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/19(日) 23:27:03.18 ID:gdOkoWJw0

銀髪少女「ここ! ここ私のおうち!」

勇者(へえ、水車付きか)

勇者(花壇、よく手入れされてんな)

勇者(アップルミント、ラベンダー、ラムズイヤー、ローズマリー……メリッサ)

勇者(シソ科が好きなのか?)

勇者(こんな花壇、昔、何処かで……)

勇者(……こっちのは何だ? 葉がラムズイヤーみてえな銀で、花が濃い桃色だ)

銀髪少女「あのねー、これ、ピティロディア! 私と同じ名前なの!」

勇者「……ふうん」

銀髪少女「お父さんお母さーん! お客さん連れてきたよー! 銀色の髪の毛なのー!」

母「あら、ロディアったら……!?」

父「銀って、珍しいね。……っ!」

勇者「あ…………」
156 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/19(日) 23:29:01.49 ID:gdOkoWJw0

勇者(親の顔なんて、とっくの昔に忘れたと思ってたのに)

母「ローゼ……? ローゼなの?」

父「本当に……ローゼなのか?」

勇者「…………」

銀髪少女「??」

母「ああ、ローゼ……」

勇者「っオレに触んな!!」パシッ

母「ローゼっ……」

勇者「なんで……なんでこんな所にいるんだよ」

父「……陛下の横暴な政治に耐えられなくて、亡命したんだよ」

父「もし、次の子も捨てるよう命じられたら……そう思うと、恐ろしくてたまらなくなった」

父「そして、国に従って君を捨ててしまった罪悪感からも……私達は逃げてしまった」

勇者「…………」

勇者「どうして、オレを捨てろって命じられた時点で国から逃げなかったんだよ!!」
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/08/19(日) 23:30:40.92 ID:jx41vGG50
昼ドラ並みドロドロしてきた…
158 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/19(日) 23:32:30.46 ID:gdOkoWJw0

父「……すまない。そのことは、ずっと後悔しているんだ」

勇者「てめえらなんて親じゃねえ!」

父「だが私達は君を探したんだ!」

父「国を出る直前、命がけでスラムに忍び込み、必死で……!」

父「……だが、私達が見つけられたのは、君が着ていた服だけだった」

父「てっきり、もう死んでいるものだと……」

勇者「嘘つけ!!」

母「……これが、その服よ」

勇者「っ…………」

勇者(……確かに、オレが着ていた物だ。小さくなって着られなくなったから、生活のために売ったんだ)

母「生きていてくれたのね……」

勇者「……こっちに来るな!」

勇者「オレは今更親子ごっこをするつもりなんてねえんだよ!!」ダッ

銀髪少女「あっ、待って! お姉ちゃん!!」
159 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/19(日) 23:33:04.03 ID:gdOkoWJw0

宿

勇者(ベッドやわらけえな)ボフッ

勇者(……逃げ出しちまった)

勇者(国も、国に逆らえなかった親のことも、何もかもを恨むことで今まで生きてこられたってのに)

勇者(あれじゃ、恨めなくなっちまうじゃねえか)

勇者「ちくしょう……ちくしょおおおおお!!!!」








160 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/19(日) 23:36:14.75 ID:gdOkoWJw0

――――――――

勇者「んーーーーーー!」

勇者「かあさまのたまごやき、トロトロでいちばんだいすき!」

母「あらあら、そんなに喜んでくれるなんて、作り甲斐があったわね」

母「もうちょっと大きくなったら、作り方を教えてあげるわね」

勇者「やったー!」

母「あなたはきっと良いお嫁さんになれるわね」

父「はは、そうとも限らないよ」

父「男として私の仕事を継ぐかもしれないからね」

母「そうね」

父「ローゼ。君は、男として生きることもできるし、女として生きることもできる」

父「普通の人よりも選択肢が多いんだ」

勇者「せんたくし?」

父「たくさんの道を選べるってことだ! 得したな!」

勇者「うん!」

父「ほら、たかいたかーい!」

勇者「あはははは!」

――――――――
161 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/19(日) 23:36:50.51 ID:gdOkoWJw0

勇者「……あれ」

勇者(少しだけ寝ちまってたのか)

勇者「父様、母様……」

コンコン

勇者「……誰だよ」ガチャ

銀髪少女「お姉ちゃん!」

勇者「なんでここの部屋だってわかったんだよ」

銀髪少女「女将さんに教えてもらったの」

勇者「……何の用だ」
162 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/19(日) 23:37:22.33 ID:gdOkoWJw0

銀髪少女「あのね、私ね、お姉ちゃんとほんとの姉妹だってわかって、すごく嬉しくてね……」

銀髪少女「……泣いてたの? 目、赤いよ?」

勇者「泣いてねえよ」

銀髪少女「……うちにね、晩ご飯食べに来てほしいの」

勇者「行かねえよ」

銀髪少女「お母さんね、お姉ちゃんが好きだった卵焼きとか、ハンバーグとか、作って待ってるって」

銀髪少女「絶対来てね!!」ダダッ

勇者「……行かねえっつってんのに」
163 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/19(日) 23:38:10.07 ID:gdOkoWJw0

勇者「……腹、減ったな」

狼「くぅーん」ギュルルルル

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

勇者「地震か!?」

勇者(いや、この感じは……)

地の将軍「ふはははは! この村、地に埋めてやろうぞ!」

勇者「くそっ、もうお休みモード入ってたってのによ!」ダッ



勇者(あちこち地面が割れてやがる)

勇者「おいてめえ!」

地の将軍「早かったな、勇者よ!」

勇者「てめえの狙いはオレの命だろ!? 無闇に村襲ってんじゃねえよ!」

地の将軍「貴様が大人しく首を差し出すと言うのなら、考えてやらんでもないぞ?」

勇者「チッ……ぜってえぶった切ってやる」

地の将軍「我は地の大将軍! 必ずや勇者を地の底へ葬ってみせよう!」
164 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/19(日) 23:38:58.98 ID:gdOkoWJw0

勇者「あれ……名前、名乗らねえのか?」

地の将軍「し、死にゆく者に名乗る名などないのでな!」

地の将軍「大地震《アースクエイク》!」

勇者「やらせねえよ!」

地の将軍「ほう、我が術を無効化するとは」

勇者「はっ、ここは神殿のある聖域なんだ。この土地は加護を受けたオレに味方するんだよ!」

地の将軍「ならば、これを見ても強気でいられるか?」

地の将軍「ゴーレム!」

ゴーレム「はっ」ゴゴゴ

銀髪少女「けほっ、けほっ……」

勇者「ロディア……!?」

地の将軍「我にはわかるぞ。この少女、おまえと極めてよく似た魔力をもっている」

地の将軍「血が繋がっているのであろう? 逆らえば、こやつの命はないぞ」

勇者「人質かよ……くそっ、反吐が出るぜ」

勇者(遠距離攻撃で地の将軍を……いや、だめだ。遠すぎる。空なんて飛びやがって)

勇者(ゴーレムに攻撃すれば、ロディアまで傷つけちまう)
165 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/19(日) 23:40:51.20 ID:gdOkoWJw0

銀髪少女「お姉ちゃーん!!」

勇者「っ……」

母「ロディア、ロディア!」

父「近づいては駄目だ! 危険すぎる!」

地の将軍「さあ、攻撃できるものならしてみるがいい!」

勇者「……オレが首を差し出したところで、この村が助かる保証なんて何処にもねえ」

勇者「なら、多少の犠牲には目を瞑った方が建設的だよなあ!」

地の将軍「ほう、できるのか?」

勇者「血が繋がってるだぁ!? 知ったことか! オレに家族なんていねえんだよ!!」

母「ローゼ……」

銀髪少女「……お姉ちゃん」ポロ

勇者「っ……」

地の将軍「今だ、カテギダ」

風の将軍「くくっ!」

ザンッ
166 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/19(日) 23:41:28.92 ID:gdOkoWJw0

勇者「あっ……」

母「嫌ああああああ!! ローゼ、ローゼ!!」

風の将軍「俺としたことが、急所は外したか」

地の将軍「だが、もう動けはしまい」

勇者「いってぇ……」

勇者「血……止まんね……」

狼「バウワウ!! バウウウ!」

勇者「馬鹿やろ、宿で待ってろよ、おまえ……」

風の将軍「策は見事に成功したな」

地の将軍「我の言った通りであろう」

地の将軍「試練を乗り越えた後であれば、疲労が回復していないだろうからな」

地の将軍「そして、宵は我等魔族が最も力を発揮できる時だ」

風の将軍「俺とエクヴォリが愚かだったな。昼間は眩しすぎる」
167 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/19(日) 23:42:37.86 ID:gdOkoWJw0

地の将軍「さて、どちらがとどめを刺してやろうか」

風の将軍「これはおまえの手柄だ」

地の将軍「では、遠慮はせぬぞ」

母「待ちなさい!」ザッ

母「この子は、殺させない」

勇者「かあ、さま」

地の将軍「愚かな人間が。その脆い体では盾になどならぬぞ」

父「…………」

父「どれだけ脆くても、ないよりはマシだろう」

勇者「とうさま……」

父「逃げろ、ローゼ」

勇者「そんな、嫌……だ……!」

狼「……」ズルズル

勇者「放せガリィ!」

地の将軍「……気が変わった」
168 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/19(日) 23:43:29.73 ID:gdOkoWJw0

地の将軍「先にこの小娘を殺してやろう」

銀髪少女「っ……」

地の将軍「勇者、貴様を殺すのは、貴様の絶望する顔を味わってからだ!」

勇者「やめろ!! ロディアに手を出すな!!」

銀髪少女「お母さん、お父さん……おねえ、ちゃん…………」

地の将軍「ははははは!」

勇者「やめろおおおおおおおお!!」



ザシュッ
169 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/19(日) 23:44:06.12 ID:gdOkoWJw0
tsuduku
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/08/20(月) 03:05:28.01 ID:W6mRcQxO0
乙乙
どうなる
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/08/20(月) 07:57:14.22 ID:QVD2KIya0
勇者捨てておいて今更虫がよすぎる展開で一気につまんなくなったな
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/08/20(月) 09:04:54.07 ID:dlDvZ/Ce0
>>171
虫が良すぎるは言い過ぎかも…実質前の国のお偉いさんのせいらしいし
そもそもお母さんやお父さんは仕方なく…って感じだからあまり責められないかと。
勇者からしたらふざけんなーって話だけどね。
こういう展開も普通にいいかと?
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/08/20(月) 23:55:57.96 ID:cL/2cY5BO
乙乙
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/08/21(火) 10:11:09.63 ID:OM4E90Yp0
>>172
国のお偉いさんに言われて仕方なく自分の子供捨てちゃうってまずいでしょ
175 : ◆O3m5I24fJo [sage]:2018/08/21(火) 11:43:02.38 ID:CTIvzf2M0
辛口レスも嬉しいです。ありがとうございます
ちょっとネタバレになっちゃうんですけども、親がどんな状況に追い込まれていたのかについて次回でゆっくり説明入ってるので、もうちょっとお待ちいただけたらなと
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/08/22(水) 00:25:49.43 ID:eR6eDalMo
暴君に逆らったら当然ペナルティあるだろうから、仕方なく捨てるのはまずいって言っちゃうのは短絡的すぎじゃ……
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/08/22(水) 08:04:04.29 ID:vITjTKHR0
それって子供より自分の安全を取ったってことじゃん
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/08/22(水) 08:38:00.61 ID:UgWU/I/po
具体的にどんなペナルティがあったのかわからないのにそう断定してしまうのは…
王様がプッツンだったなら、逆らったら即勇者が惨殺されてたとかありそうだし
179 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/24(金) 22:08:15.10 ID:kXhBNlpm0

Episode 8


地の将軍「がはっ……」

岩漿「はーあーい、お久しぶりねえ」

風の将軍「き、貴様……! おのれ!」

雪氷「後ろががら空きーぃ!」

風の将軍「な……んだと……!?」

勇者(女が……2人……?)

岩漿「お嬢ちゃん、はやく逃げなさい」

銀髪少女「は、はい!」

地の将軍「くっ……ゴーレム達よ!」

岩漿「無・駄・よ」

ジョグアアァァ ボコッボコッ

銀髪少女「み、みんなマグマになっちゃった……」
180 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/24(金) 22:08:44.19 ID:kXhBNlpm0

雪氷「あなたが勇者ローゼね! 私、雪氷の四天王、フリージア!」

岩漿「岩漿のルヴィニエよ」

村の男1「なんだなんだ、魔族が増えたぞ」

村の男2「うわ、水色っぽい子めっちゃかわいい」

村の男3「あのお色気お姉ちゃんもなかなか」

雪氷「人間のみっなっさーん! はじめまして〜!」

雪氷「今の魔王様は人間と仲良くしようと思ってるから、よろしくね〜!」

雪氷「ちなみに村を襲ってたのはぁ、魔王様のじゃなくて、もっと悪い奴の部下でーす!」
181 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/24(金) 22:11:07.92 ID:kXhBNlpm0

風の将軍「貴様等、もう勤務時間外ではないのか……!?」

雪氷「グラン君が残業代弾むって言ってくれたからぁ〜」

風の将軍「残業代だと……? 出るのか……!?」

雪氷「そっちは出ないんだ〜! ブラックだね! かわいそ〜!」

風の将軍「く、屈辱だ……! この小娘!」

雪氷「小娘じゃないもん! もう150歳だもん!」

雪氷「パパの戦友だからって、容赦はしないよー!」

地の将軍「撤退だカテギダ! 分が悪い!」

風の将軍「ちっ」

雪氷「なんだあ、つまんないのぉ」
182 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/24(金) 22:11:34.87 ID:kXhBNlpm0

勇者「…………」

雪氷「早く治療しなきゃね」

銀髪少女「お姉ちゃん!」

勇者(もう……意識が……)ガクッ








チュンチュン

勇者「う……」

雪氷「よかったあ! 目、覚めたんだね」

勇者「おまえは確か……えっと、フリーザ」

雪氷「フリージアだよ」
183 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/24(金) 22:13:44.00 ID:kXhBNlpm0

雪氷「傷は治したけど、貧血はどうにもできないからしばらく無理しちゃだめだよ〜」

母「ローゼ」ガバッ

勇者「うおっ」

母「ああ、よかった、よかった……」

勇者(母様の匂い……)

勇者「…………」

勇者(ここ、ロディアの家か)

母「ありがとうございます、フリージアさん」

雪氷「いえいえ〜。じゃ、私はこれで」

雪氷「寝てた時間分も残業代もらっちゃおーっと」

岩漿「ちゃっかりしてるわねえ」

母「ローゼ、ゆっくり休んでね。落ち着いたら、ゆっくり話をしましょう?」

勇者「……世話になったな」

母「ローゼ!」

父「まだ動いては」

勇者「うるせえ! 追いかけてくんな!」
184 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/24(金) 22:15:41.25 ID:kXhBNlpm0

銀髪少女「あ、お姉ちゃん!」タタタッ

銀髪少女「行っちゃうの? まだ寝てなきゃ駄目だよ?」

勇者「……見捨てようとして、悪かったな」

銀髪少女「お姉ちゃん!」

勇者「行くぞガリィ」

狼「…………」トボトボ
185 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/24(金) 22:16:55.29 ID:kXhBNlpm0

昼

勇者「……血が足りねえ」フラフラ

魔王「ローゼ」ヒュン

魔王「おまえの現在地を確かめてみれば、村から外れていたのでな」

魔王「こんな所で何をしている」

勇者「次の目的地に向かって進んでんだよ、何がおかしい」

魔王「ろくに回復もしていないのにか? ふらついているではないか」

勇者「うるせー」

魔王「……まさか、親とまともに話もせずに村を出たのではないだろうな?」

勇者「あ? 何か問題でもあんのかよ!」

魔王「何故そんなことをした」

勇者「てめえには関係ねえ」

魔王「……どう接すればいいのかわからず、逃げ出したのか」

勇者「……」

魔王「……来い」ガシッ モフッ

勇者「おい、何す」

狼「?」

ヒュンッ
186 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/24(金) 22:17:21.15 ID:kXhBNlpm0

狼「!」

勇者「ここ……さっきの村じゃねえか!」

魔王「もう1度親に会ってこい」

勇者「はーーーーーーーーーー!?」

勇者「てめえに口出しされる筋合いはねえ!」

魔王「和解しろとは言わん、親を許せと言うつもりもない」

魔王「だが、おまえの両親は、命を張っておまえを守ろうとしてくれたのだろう?」

魔王「部下から聞いたぞ」

勇者「……あんなの、自分の罪悪感から逃げたかっただけだろ」

魔王「そうとも限らぬ。少しでも話をして、分かり合うべきだ」

魔王「おまえだって、本当は親を信じたいのではないか?」

勇者「……オレぁなあ! おまえみたいな正論ぶつけてくる奴が大っ嫌いなんだよ!!」

ドカボキゴキャ

魔王「あだだだだだ!!」

勇者「オレをさっきの場所まで戻せ!!」

魔王「断る!!」
187 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/24(金) 22:19:04.04 ID:kXhBNlpm0

村の男1「なんだなんだ」

村の男2「あれ魔族じゃね?」

村の男3「勇者と揉み合ってんな」

魔王「落ち着け!」ムニッ

勇者「うおああああどこ触ってんだよ!!」ドガッ

魔王「わ、悪い! だがやはり落ち着け!!」

勇者「なんでおまえに口出されなきゃなんねえんだよ!!」

魔王「前にも言ったはずだ。おまえ達親子を引き裂く根本的な原因を作ったのは、俺の父だと!」

魔王「おまえが恨むべきなのは“魔王”だ! 両親でも、祖国でもない!」

勇者「だから親と仲良しごっこしてこいってかぁ!?」

魔王「このままでは一生後悔することになるぞ!」

魔王「見捨てられた悲しみ、絶望はそう簡単には癒えぬだろう」

魔王「両親を信じることも難しいであろう! しかし!」

勇者「黙れ黙れ黙れ! 良い子ちゃんのおまえにオレの気持ちなんてわかんねえよ!」
188 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/24(金) 22:19:50.32 ID:kXhBNlpm0

勇者「“魔王”がなんだ! “おまえ”は関係ねえ!」

魔王「俺はっ……父の罪を少しでも償いたいのだ!」

魔王「父が壊してしまった“縁”を、再び繋ぎたい!」

勇者「てめえの事情なんざ知るかあああああ!!」ドカッドカッ

魔王「うぐっ……ギブアップはせぬぞ……!」

魔王「おまえが家族と話をするまで、俺は何度でも蘇りおまえをここに連れ戻す!」

勇者「上等だあ! その度に殺してやるよ!」

村の男4「なんか知らないけど勇者が魔王いじめてんぞ」

村の男5「今の魔王って人間の味方なんだろ?」

村の幼女「まおうがんばえー!」

勇者「てめえらうるせえぞ!?」

魔王「おまえの両親は、本当におまえのことを愛している」

魔王「逃げるな」

勇者「……愛してるだあ? はっ」

勇者「愛してるなら、どうしてあの時は守ってくれなかったんだよ!!」

勇者「オレは、親は無条件で子供を守ってくれるもんだって……信じてたんたぜ」

魔王「その疑問は、直接親にぶつけるがいい」

魔王「当時の幼いおまえでは、理解できなかったこともたくさんあっただろう」

魔王「向き合うことから逃げるな」
189 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/24(金) 22:20:31.52 ID:kXhBNlpm0

勇者「…………嫌だ! てめえは黙ってオレの昼飯を用意すればいいんだよ!」

勇者「さっさと今日の昼飯を出せ!」

魔王「ないぞ」

勇者「は?」

魔王「おまえが親とちゃんと話をするまで、飯は用意せぬ」

勇者「なっ……卑怯だぞ!」

魔王「貴様に言われたくはない!!」

勇者「…………ちくしょう!!」

勇者「あっ……」クラリ

魔王「無理をするからだ。まったく」

銀髪少女「お姉ちゃーん! 戻ってきてくれたんだね!」

勇者「…………明日はぜってえ美味いもん持ってこいよ!」

魔王「今日は親が作る飯を味わってこい」

魔王(食に貪欲な奴でよかった)
190 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/24(金) 22:21:05.81 ID:kXhBNlpm0

村の女1「魔王様ってすっごい美形ね〜! 攫われたーい!」

魔王「あ」

魔王(急ぐあまりに、人間の姿に化けることを忘れていた……!)

魔王(やらかした……)

村の女2「ツノがある以外ほとんど人間ね」

村の女3「ね! 昨晩村を襲った魔族とは全然違う!」

魔王(敵意がないだけよかったな……フリージアは上手くやったようだ)

村の女4「勇者様より弱いみたいだし、猶更安心ね!」

魔王「…………」



勇者『……オレぁなあ! おまえみたいな正論ぶつけてくる奴が大っ嫌いなんだよ!!』



魔王(大っ嫌い、か……)チクッ

魔王(……帰ろう)
191 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/24(金) 22:22:30.10 ID:kXhBNlpm0

勇者「……なあ、ロディア。おまえって……1人っ子だったんだよな」

銀髪少女「うん……そうだよ」

ガチャ

銀髪少女「お姉ちゃん帰ってきたよ! 魔王様が連れてきてくれた!」

母「!」

勇者「…………」

父「ああ、よかった……。……こっちに、座ってくれるかい」

勇者「…………」

父「……大きくなったな」

母「お昼ご飯、用意するわね」

父「信じてはもらえないかもしれないが、私達は、君が生きていてくれて良かったと、本当に嬉しく思っているんだよ」

勇者「……なあ、オレがどんな地獄を生きる羽目になったか……おまえらは想像できるか?」

勇者「のうのうと幸せに暮らしやがって! ちくしょう!」

父「……すまない」

勇者「……国に従う以外に、どうしようもなかったのかよ」

父「何を言っても言い訳にしかならないが……当時のことを、話しておこうか」
192 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/24(金) 22:23:24.96 ID:kXhBNlpm0

――――――――

父「子供を捨てろだろ!?」

修道士「はい。新たな規定ができまして、あなたのお子さんはちょっと引っかかっちゃったんですよねえ」

修道士「奇形がある人間は全員貧民街送りです」

父「ふざけるな!」

母「どうしてそんな……!」

修道士「とはいえ、陛下は慈悲深い方ですので、1日だけお別れ期間を用意することが認められています」

修道士「ごゆっくり別れを済ませてくださいね」

父「正気かおまえは!」

修道士「私はマニュアル通りに申し上げているだけです」
193 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/24(金) 22:23:55.72 ID:kXhBNlpm0

修道士「逆らおうだなんて、思わないでくださいねえ」

修道士「国の決まりに逆らったらどうなるか、噂を聞いたことがないわけではないでしょう?」

父「…………」

修道士「不満そうですねえ。まあ当然ですよねえ。では、ちょっと同行願えます?」

父「何処へ向かうつもりだ」

修道士「行けばわかりますよ。あ、奥様もご一緒に」

勇者「とうさま、そのひとだあれ?」トテトテ

父「……ローゼ、メイドと一緒に遊んでいなさい」





父「……どんどんスラムに近づいているじゃないか」

母「酷いにおいね」

修道士「そろそろ見えてきますねえ。道の両脇、見てくださいねえ」

父「…………!」

母「うっ……」

修道士「この道の名物、晒し首の並木道ですよ〜」
194 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/24(金) 22:25:24.41 ID:kXhBNlpm0

修道士「スラム行きを拒絶した人と、その協力者や家族は酷い場合こうなっちゃうんですよねえ」

母「っ…………」

父「なんてものを見せるんだ!」

修道士「酷くない場合は、一族郎党全員仲良くスラム送り!」

修道士「うーん、こっちも充分酷いですよねえ」

修道士「あ、そうそう。お子さん、銀髪ですよね? いやあ、驚きました」

修道士「あなた方、ご先祖様に王族の方がおられるんじゃないですか?」

父「うっぷ……母方の祖先に、王族から嫁いできた人がいたはずだ」

母「私も、数代前に」

父「それがどうした」

修道士「隔世遺伝で、王族の血が濃く出てきちゃったんですね」

修道士「陛下は、他の何よりも身内に厳しいんです」

修道士「ちなみに、銀の髪をもって生まれてきた人は王族の中でも特別な存在でしてね、聖なる力の適性が強いんです」
195 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/24(金) 22:26:33.02 ID:kXhBNlpm0

修道士「その銀の髪をもった王族が、陛下の定義する『不完全な存在』だと陛下が知ったら……」

修道士「前例から判断すると、体の末端から少しずつ輪切りの刑にされる可能性が高い」

父「…………」

母「…………」

修道士「大人しく従った方が犠牲が少なくて済むんですよぉ」

修道士「私、こんな煽るような口調なので誤解されやすいんですけど、犠牲者は少しでも減らしたいんです。ほんとに」

修道士「あ、なんなら処刑場に見学にでも行きます? 逆らう気が失せますよ〜」

父「……気分が悪い。帰らせてもらう」

修道士「そうそう、スラムには善良な民もたくさん追放されてますから、案外お子さん生き延びられるかもしれませんよぉ」
196 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/24(金) 22:27:23.31 ID:kXhBNlpm0

夜中

父「親戚中に話をして、全員で夜逃げを……駄目だ、時間が足りない!」

母「…………」ガサゴソ

父「何してるんだ」

母「荷造りよ!」

母「ローゼを殺されるなんてたまったもんじゃないし、親戚に迷惑をかけるわけにもいかない」

母「これじゃ、国に従うしかないでしょう?」

母「だから、私もローゼと一緒にスラムに行くの」

父「モナルダ……」

母「大丈夫、スラムには、善良な人もたくさんいるのでしょう? きっと、住めば都よ」

父「お腹の子はどうするんだ」

母「向こうでだって産んでやるわよ」

父「……受け継いだ家と仕事より、子供が大事だな。私も行こう」

修道士「駄目ですよぉ」

父「いつからそこに!?」

修道士「すみません、こっそり監視してましたぁ」

母「どうして駄目なの」

修道士「自ら進んでスラムに行くんじゃあ、“罰”になりませんからねえ」
197 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/24(金) 22:28:06.21 ID:kXhBNlpm0

母「ならどうすればいいの!?」

修道士「どうしようもないですよ。はあ、これじゃ仕方ないですね」

修道士「気絶《フェイント》」

母「うっ」

父「何をする!!」

修道士「明日、お子さんのスラム行きが完了するまで、奥様には眠っていていただきましょう」

修道士「逆らえば……」

兵士達「「……」」ガシャガシャ

修道士「奥様と、お腹の中のお子さんの命はありません」

父「……ちくしょう!!」
198 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/24(金) 22:28:55.30 ID:kXhBNlpm0

翌日

勇者「かあさまは? かあさまはどこ?」

父「…………」

勇者「おでかけするの? ピクニック?」

父「……ああ、そうだよ」

勇者「おうまさんにのるんだね。かあさまは?」

父「……ちょっと用事があって、別のところにお出かけしてるんだ」

勇者「そっかぁ……」

修道士「お迎えに上がりましたあ」

不真面目な兵士1「我々は監視係です」

不真面目な兵士2「ほら、行きますよ」

勇者「?」
199 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/24(金) 22:29:23.57 ID:kXhBNlpm0

勇者「ねえねえ、どうしてへいしさんいっしょなの?」

不真面目な兵士1「悪い子は兵士に捕まっちゃう決まりだからね」

勇者「?? ローゼ、なにもわるいことしてない!」

不真面目な兵士2「生まれてきたことが罪なんだよ、ははは」

勇者「??」

不真面目な兵士1「はは、かわいー。わかんないよねえ。ふたなりってほんと? お股見せてよ」

修道士「あなた達は黙っていなさい」

不真面目な兵士達「「へーい」」

父「…………」

勇者「とうさま? とうさまどうしたの?」
200 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/24(金) 22:30:02.67 ID:kXhBNlpm0

父「ここからは、下を向いていなさい」

勇者「? はあい」

勇者「……なんだか、へんなにおい。このにおい、なあに?」

父(死臭だ、なんて……教えられるわけがない)

修道士「着きましたよぉ」

勇者「わあ! おおきなとびら!」

勇者「とうさま、あっちにはなにがあるの?」

父「…………」

修道士「入ったらもう二度と出られない、怖い地獄ですよ」

勇者「え?」

ギイィィィィィィィ

父「……すまない」

勇者「?」

不真面目な兵士1「はい、お馬さんから降りようね」

勇者「!? やだ!!」

不真面目な兵士2「よいしょっと」

勇者「はなしてぇー!」
201 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/24(金) 22:30:42.42 ID:kXhBNlpm0

勇者「とうさまー!!」

父「…………」

勇者「かあさま! かあさまどこにいるの!? たすけて!!」

不真面目な兵士1「かあさまは来ないよ。もう二度と会えないんだよ〜」

不真面目な兵士2「君はもう捨て子になっちゃったからね、ははは」

勇者「うそつきー!!!! やだあああああああ!!」

勇者「なんで!? なんでー!? とうさまどうしてたすけてくれないの!?」

不真面目な兵士1「男の子でも女の子でもない子は、おうちにいられない決まりがあるからだよー」ポイッ

勇者「ひゃっ! いたい!! ふええええええええ!!」

ギィィィィィィィィ

勇者「とうさま! とうさまああああ!!」

父「っ……」

バタン
202 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/24(金) 22:31:08.57 ID:kXhBNlpm0

父「…………」

修道士「お疲れさまでーす。もう帰っていいですよ」

父「……こんな国、いずれ滅びるぞ!」

修道士「……はあ。嫌な仕事だなあ」

修道士「国がこんなことやってばっかだから、兵士達の心も歪み切っちゃってるし」

修道士「この国の人間は信心深く、教会の人間の言うことは比較的よく聞き入れるからって、こんな仕事押し付けられちゃって」

修道士「はあ〜……」
203 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/24(金) 22:32:14.86 ID:kXhBNlpm0







母「ローゼ! ローゼを返して!!」ガリガリ

門番「奥さん、無理ですよ。この扉は開けられません」

母「私の子供を返してよ!!」ガリガリガリガリ

門番「爪ボロボロになってるじゃないですか! もうやめてください!」

母「嫌! 嫌ああああああ!!」

父「……冷えてきたな。帰ろう。お腹の子が心配だ」
204 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/24(金) 22:32:48.68 ID:kXhBNlpm0

数年後

父「…………」

母「…………」

父「……ははは。事業もガタガタで、どうしようもないな」

母「…………」

父「……この国から、逃げないか?」

母「……?」

父「あれから何年も経った。私達が姿を消しても、今更親戚が犠牲になることはない」

父「そして、我が子を……ローゼを、迎えに行くんだ」

母「……あの門は、開けられないでしょう?」

父「外側から回るんだ。一旦町を出て、森を抜けてスラムに侵入すれば、門番に気づかれることもない」

父「狩人ですら滅多に入らない、猛獣が棲み付いている危険な森だが……」

母「……あの子に会えるのなら、なんだってするわ」

――――――――
205 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/24(金) 22:33:29.04 ID:kXhBNlpm0

父「……すまなかった」

父「君を捨てずに逃げる手段があったのではないかと、今でもずっと自分を責めずにはいられない」

父「そして、スラムに行った時、もっとよく探していればと……」

勇者「はは、全身細かく輪切りか。そりゃ捨てる方選ぶよな……」

勇者「……死んだ方がマシだって思えるような地獄だったけど、良い人には拾ってもらえた」

勇者「だからこうして生きてる」

父「…………」

勇者「……母様がさ、お腹に赤ちゃんがいるって教えてくれた時のこと、オレ、しっかり覚えてるんだ」

勇者「占い師に見てもらったら、きっと男の子だと言われたって、嬉しそうに話してた」

勇者「でも、ここにはいないんだな」

父「……こっちへ」

裏庭

父「死産だった。これが、君の弟の墓だ」

勇者(タイム、ここに眠る……)

父「医者からは、精神的負担が原因だと告げられた」

勇者「……そうか」
206 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/24(金) 22:34:14.15 ID:kXhBNlpm0

勇者(わかっていたはずのことだ)

勇者(オレは確かに愛されていたし、親はオレのことを助けたくても助けられなかった)

勇者(助けられない、どうしようもない事情があった)

勇者(でも、捨てられたことがあんまりにも悲しくて、恨まずにはいられなかった)

勇者(愛されていたことを信じられなくなった)

母「ほら、できたわよ」

勇者(10年ぶりの、母様の卵焼き)

勇者(また、食べられるなんて)

勇者「…………」ジワ

勇者「うぅ……」
207 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/24(金) 22:34:54.10 ID:kXhBNlpm0

勇者「……オレは、親に捨てられたんじゃない」

勇者「ただ、社会に引き離されただけだ」

勇者「だから、父様と母様は自分を責めなくていい」

母「……ローゼ」ギュウ

父「これから、一緒に暮らそう」

勇者「できねえよ、それは」

父「どうして」

勇者「知ってるだろ? オレは勇者だって」

母「でも、魔王様は優しいのでしょう? あなたが旅をする必要なんて」

勇者「魔王の兄貴を倒さなきゃならねえんだよ」

母「……そう」
208 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/24(金) 22:35:20.22 ID:kXhBNlpm0

母「そうだ! 卵焼きの作り方、教えてあげる約束だったわね」

勇者「……旅が終わったらまた来るから、その時に教えてくれ」

母「わかったわ。絶対、絶対帰ってきてね!」

銀髪少女「お姉ちゃん、体が治るまではここにいてね!」

勇者「だから、お姉ちゃんじゃねえって。男でも女でもねえんだから」

銀髪少女「じゃあ、おにえちゃん!」

勇者「……好きに呼べ」







翌日

魔王「もう数日泊まればよかっただろうに」

勇者「ぬるま湯に浸かったら、戦いの世界に帰ってこられなくなっちまうだろ」

魔王「そうか」
209 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/24(金) 22:35:51.55 ID:kXhBNlpm0

勇者「嬉しそうな顔してんな」

魔王「嬉しいからな」

勇者「そんなにか?」

魔王「ああ」

勇者「他人のことでそこまで喜べるもんか?」

魔王「ああ」

勇者「ふーん」

魔王「時々、親に手紙でも送ってやれ」

勇者「気が向いたらな」

勇者「……おまえこそ、親孝行してんだろうな?」

魔王「俺にはもう、親はいない。だから、おまえが羨ましい」

勇者(地雷踏んだ……)
210 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/24(金) 22:36:19.81 ID:kXhBNlpm0

勇者「……そういや、礼を言いそびれてたな」

勇者「部下を寄越してくれてありがとな」

魔王「おまえが勇映の玉で姿を見ることを禁じたから、」

魔王「自動的におまえの危機を知らせてくれるよう、玉のプログラムを改造する必要があった」

魔王「苦労したんだぞ」

勇者「あっそ」

勇者(……こいつがいなかったら、オレは親と素直に話をすることもなかったんだな)

勇者(どうしてこいつは、こんなに良い奴なんだろう)

勇者(やっぱ、お姫様と関わった影響がでかいのかな)

勇者「…………」

魔王「どうした」

勇者「なんでもねえよ」

勇者(この気持ちは、一体なんなんだ)
211 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/24(金) 22:37:09.16 ID:kXhBNlpm0

情熱の町

勇者「なんかこの町、めっちゃ音楽流れてるし踊ってる奴がえらく多いな」

魔王「情熱の町と呼ばれているだけあるな」

眼鏡男「……ローゼちゃん?」

勇者「あ? 誰だてめえ。気持ちわりぃ呼び方してんじゃねえぞ」

眼鏡男「だ、だいぶ雰囲気が変わってるけど、確かにローゼちゃんだ!」

眼鏡男「勇者に選ばれたって、本当だったんだね!」

眼鏡男「僕だよ僕、小さい頃仲が良かったミステルだよ!」

勇者「……2個上の、よく一緒に遊んでた金持ち息子」

眼鏡男「そうそう! 君の力になりたくて、君を探してたんだ」

魔王「…………」

勇者「仲間ならいらねえぞ」

眼鏡男「そう言わずに! この町を案内するよ!」

勇者「……じゃあ、頼む」

眼鏡男「会えて嬉しいよ! 僕、ずっと君に会いたかったんだ」

勇者「そうか」

魔王(ローゼが心做しか嬉しそう……だと……?)

魔王(旧友との再会だ。祝うべきだというのに……モヤモヤしてしまうな)
212 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/24(金) 22:37:43.36 ID:kXhBNlpm0
つづく
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/08/24(金) 23:59:31.71 ID:2hFjmUhWo
見てるぞ
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/08/25(土) 00:59:46.89 ID:TJI+aR3mO
乙乙
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/08/25(土) 03:53:30.06 ID:1KrtC+H50
おつ!
モヤモヤいいねえ
216 : ◆O3m5I24fJo [sage]:2018/10/15(月) 20:13:25.11 ID:/5+sbpAu0
とりあえず生存報告だけ
鯖落ち中はすみませんふきのとうの小説版の書き溜めばかりやってました
ぼちぼちこっちの書き溜めもして、近い内に更新しようと思います
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/15(月) 20:32:29.81 ID:8Pvy0NyZo
待ってるで
218 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/10/24(水) 21:41:15.07 ID:zLYT6wB50

Episode 9


勇者「ちゃん付けはやめろよな。きめえ」

眼鏡男「ああ、わかったよ、ローゼ」

魔王「…………」

眼鏡男「ランチはそこの店で取ろうか」

勇者「昼飯はこいつの弁当食うことになってんだよ」

眼鏡男「ふうん?」

勇者「でもその店からすげえ良い匂いしてんな。夜はやってんのか?」

眼鏡男「うん。流石にランチメニューはやってないけど、ディナーもなかなかだよ」

勇者「じゃあ今晩行くかー」

勇者「おい魔王、メシ」

魔王「今日はロールキャベツだぞ」

眼鏡男「ま、魔王……?」

魔王「……マオだ」

眼鏡男「そっか。よろしくね、マオ君」ガシィィィィッ

魔王(握手が……痛い……!)ミチミチ

眼鏡男「じゃあ僕はそこの売店で何か買ってくるよ」
219 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/10/24(水) 21:42:01.91 ID:zLYT6wB50

勇者「ロールキャベツはやっぱ何よりも汁がうめえな」

魔王「汁……まあわからなくもないが」

眼鏡男「マオ君って何処の国の人? 名前の響き的には東の国の人かな」

眼鏡男「それにしては鼻が高いよね。この辺の国の人と変わらない顔立ちだ」

眼鏡男「でも雰囲気がちょおっと違うような気がするなあ」

魔王(……勘ぐられている。嫌な感じだ)

魔王「俺はお前達と同じペルレ系の人種だ」

眼鏡男「ふうん?」

魔王「……ただし混血だ。雰囲気の違いの原因はそれだろう」

眼鏡男「へえ? 育ったのは何処?」

魔王(下手に嘘を吐けばボロが出そうだな……だからといって正直に答えるわけにもいかぬ)

勇者「スラムでゴミ漁ってるところをオレが拾ってやったんだぜ」

眼鏡男「へーーーーー? じゃあローゼちゃんとはいつから一緒なの?」

勇者「ちゃん付けやめろっつったろぶっ殺すぞ」

眼鏡男「あはは、ごめんごめん」
220 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/10/24(水) 21:42:36.18 ID:zLYT6wB50

勇者「涼しい季節だってのに、妙に暑苦しいな……この町の雰囲気のせいか」

眼鏡男「じゃあ、あそこの屋台でソフトクリームでも買おうか」

眼鏡男「バニラ、イチゴ、チョコ、ヨモギ、ドクダミ、フキノトウのどれにする?」

勇者「じゃあフキノトウ」

魔王「奇妙なメニューだな……」

眼鏡男「後ろの3つは、しばらく前に来た旅人からレシピを教わったそうだよ」

魔王「ヨモギとドクダミのミックスを頂こうか」

眼鏡男「君も物好きだね」

店主「ミステル君は何にするんだい」

眼鏡男「隠しメニューのカレー味で」
221 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/10/24(水) 21:43:03.37 ID:zLYT6wB50

勇者「苦いけど意外とイケるなこれ」ペロペロ

眼鏡男「……」ジィィィィィ

魔王(やはりこやつ)

眼鏡男「ローゼ、僕のを味見してみない?」

勇者「嫌だっつの。見た目が汚すぎるだろそれ」

魔王(どう見てもとぐろを巻いた……)

眼鏡男「うんこみたいだけど味は良いから」

勇者「わかってて食ってんのかよ」

魔王「…………」

勇者「それよりお前の味見させろよ」ペロッ

魔王「っ」ビクッ

勇者「ヨモギはともかくドクダミはすげえ味だな」

魔王(ローゼの舐めた跡……間接キスをしろというのか……)

眼鏡男「……」

魔王(視線が痛い)
222 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/10/24(水) 21:45:29.91 ID:zLYT6wB50

眼鏡男「今日は僕の家に泊まっていってよ」

眼鏡男「一軒家を借りてるんだけど、1人で住むには広すぎてさ。部屋余ってるんだよ」

勇者「いや、それは断る」

眼鏡男「今丁度祭りの時期だから、宿は何処も埋まってると思うよ」

勇者「え……マジかよ」

勇者「くっそー、折角町に着いたってのに野宿かよ」

眼鏡男「いや、だから部屋貸すってば」

眼鏡男「ほら、路地裏見てみなよ。……町の外で野宿するより危険だよ」

勇者「うわ……」

魔王(浮浪者が多いな。宿を借りられなかったらしい旅人も多い)

勇者「仕方ねえな……」

眼鏡男「一旦僕の家に荷物を置いて、それからさっきの店に夕食を食べに行こうか」

眼鏡男「あ、マオ君も泊まってっていいよ。ローゼの仲間だからね」

魔王(今夜姿を消せば不思議に思われる。城には帰れなさそうだな)
223 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/10/24(水) 21:49:05.95 ID:zLYT6wB50

飲食店

眼鏡男「そうだ。明日、ちょっと時間をくれないかな」

眼鏡男「僕達の故郷のことで、大事な話があるんだ」

勇者「……聞くだけならいいけどよ」

眼鏡男「ありがとう」

勇者「おい魔……マオ、ガリィのメシ出してくれ」

魔王「ああ」

狼「♪」

魔王「嬉しそうに食べているところを見ると、こちらも嬉しくなるな」

魔王「ペットを可愛がる者の気持ちがよくわかる」

眼鏡男「……ところで、2人ってどんな関係なの? 恋人じゃないよね?」

勇者「冗談じゃねえ、オレは男だぞ」

魔王「…………」

眼鏡男「ああ、そっか。そうなんだね。へえ」
224 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/10/24(水) 21:49:40.85 ID:zLYT6wB50

勇者「オレもさ、お前に聞きたいことがあるんだ」

眼鏡男「何かな」

勇者「その……オレ、ガキの頃のこと、あんまり覚えてねえんだよ」

勇者「スラムに放り出されてからの出来事の印象が強すぎてさ」

勇者「お前はオレより年上だから、オレよりもオレのことを覚えてるんじゃねえかなって」

眼鏡男「ああ、よく覚えてるよ」

眼鏡男「なんせ、他のどんな子よりも綺麗だからね。忘れられない」

眼鏡男「ある日は女の子らしく振る舞って、かと思えば次の日には男の子の格好をしていたり」

眼鏡男「性別に囚われず、自由に生きていたよ」

魔王(……この者は俺と出会うよりずっと前のローゼを知っている。そう思うとどうしてもな……)
225 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/10/24(水) 21:50:06.95 ID:zLYT6wB50

眼鏡男「明るくて、この世の闇なんて知らないんじゃないかってくらい純真で」

眼鏡男「あと、僕のことが大好きで、よく後ろについて回ってたよ」

勇者「それは捏造だろ」

眼鏡男「あはは、バレちゃったか」

眼鏡男「でも仲が良かったのは本当だよ。これは覚えてるだろう?」

勇者「一応な」

魔王「…………」

眼鏡男「懐かしいな」

勇者「……オレがどんな子供だったのか、聞けてよかった」

勇者「この前親とは再会できたんだけど、他人から見てどうだったのかはわかんなかったからよ」

眼鏡男「ああ、良かったよ」
226 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/10/24(水) 21:51:30.04 ID:zLYT6wB50

眼鏡男「でも、今のローゼは、男としての性別を選んだんだね」

勇者「ああ」

勇者「オレのことを女として見たらぶっ殺すからな」

眼鏡男「わかったよ。正直ちょっと残念だけど、君の意思を尊重しよう」

勇者「まあ、ならいい」

魔王「…………」

魔王「ガリィ〜〜〜〜お前は良い子だな〜〜〜〜〜〜」モフモフ

狼「? ♪」ブンブン

魔王「おーよしよし!!」

勇者「どうしたんだお前」

魔王(心が落ち着かぬ! 落ち着かぬ!)
227 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/10/24(水) 21:52:28.81 ID:zLYT6wB50

ミステルの自宅

勇者「そういやお前親は? 何で1人暮らしなんだよ」

眼鏡男「まだあの国にいるよ」

眼鏡男「あんなに酷い国なのに、人口は維持できてるだろう?」

眼鏡男「他国に移住しようにも、厳しい制限があってね。なかなか出てこられないんだ」

眼鏡男「僕は、両親が高い出国税を捻出してくれたから国を出られたんだよ」

勇者「……」

眼鏡男「でも、両親をこのまま放っておくつもりはない」

眼鏡男「助けるんだ。絶対に」

眼鏡男「……今日は疲れたよね。もう寝る? それともお風呂を沸かそうか」

勇者「風呂」

眼鏡男「わかったよ。あ、部屋はそこだよ」

勇者「世話んなるな」
228 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/10/24(水) 21:53:12.06 ID:zLYT6wB50

眼鏡男「はあーローゼちゃん、元々綺麗だったけどあんなに美人になっちゃって」

眼鏡男「胸はないみたいだけれど」

魔王「サラシで潰しているだけだぞ」

眼鏡男「え、何で知ってるの」

魔王「いやその……共に旅をしているからそのくらいはな」

眼鏡男「ふうん? まあ付き合ってるわけじゃないんだよね」

魔王「……そうだ」

眼鏡男「ってことは溜まっているだろう?」

眼鏡男「そこに置いてるエロ本使っていいよ。今度処分する奴だから」

魔王「レイプ物は好かぬ」

眼鏡男「へえ。じゃあこっちは」

魔王「リョナ物は更に好かぬ」

眼鏡男「じゃあ何が好きなんだい」

魔王「甘々らぶらぶえっち物が……何を言わせるのだ」
229 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/10/24(水) 21:53:46.37 ID:zLYT6wB50

眼鏡男「好きな女の子が若い男を連れ添ってるなんて、気が気じゃないからね」

眼鏡男「僕の家で間違いでも起こされたら腹が立つし、こちらとしては君に出すもの出しておいてほしいんだよ」

魔王「べっ別にエロ本があろうとなかろうと、ローゼとそういった関係になることはあああありえぬ」

眼鏡男「確かにそんな度胸なさそうだよね君には」

魔王「……」イラッ

眼鏡男「ローゼちゃんが今みたいになったのは……スラムでの暮らしのせいだろうね」

眼鏡男「強姦なんて日常茶飯事な環境だったそうじゃないか。女としての自分を否定するようになってもおかしくない」

眼鏡男「嘆かわしいよね、本当に」

眼鏡男「……彼女がスラム送りにされたって聞いたあの日から、僕は祖国を憎まずにはいられなくなった」

眼鏡男「国王の首を刎ねることが僕の夢だよ」

魔王「っ……」

眼鏡男「君だって、スラムで暮らしていたのなら、あの男のことが憎くてたまらないだろう?」

眼鏡男「それとも、何か思うところでもあるのかい」

魔王「……いや」
230 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/10/24(水) 21:54:24.82 ID:zLYT6wB50

翌日

眼鏡男「悪いね、時間を取ってもらっちゃって。でも、とても大事な話なんだよ」

勇者「何処行くんだよ。おまえんちの地下の階段長すぎじゃね?」

魔王(明らかに家の敷地より外に出ているが……)

眼鏡男「ここだよ」

ギィィ……

学者風の男「へえ、本当に我等が勇者様を連れてくるなんてやるじゃないか」

筋肉男「しっかし、こんなに小さくて細っこいとはな」

格闘女「あんたみたいな大男よりずっと腕っぷしが利くって評判だけどねぇ」

魔王(狭い地下室に何人も……男が多いが、女もいるな)

眼鏡男「ようこそ、僕達の隠れ家へ」

眼鏡男「僕達はレジスタンス。祖国の平和を取り戻すために志を共にする、仲間だよ」
231 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/10/24(水) 21:55:21.59 ID:zLYT6wB50

勇者「…………」

眼鏡男「君には是非仲間になってほしいんだ」

勇者「あの国王に歯向かうつもりなのか?」

眼鏡男「そうだよ」

勇者「…………」

眼鏡男「あの国は内政だけじゃなく、外交も滅茶苦茶だ。その上、宗教の教義に反する行いもたくさんしている」

眼鏡男「こっちの国で後ろ盾を得ることは案外難しくなかった」

眼鏡男「足りないのは戦力だ。君が仲間になってくれさえすれば、僕達は確実に勝つことができるだろう」

勇者「いきなり言われてもな……」

眼鏡男「君が魔王討伐の旅をしていることは百も承知だよ」

眼鏡男「でも、今、魔王を倒す必要なんてあるのかな?」

眼鏡男「魔族は現在人間を襲ってこないのに、下手に刺激すればかえって人類を危険に晒すことになる」

眼鏡男「それなら、人間の暴君を討った方がずっと良い。そうは思わないかい?」

魔王(至極真っ当な意見だ。反人間派の魔族の存在を考慮していない点を除けばだが)

勇者「そりゃあな。でもオレは――」
232 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/10/24(水) 21:56:56.92 ID:zLYT6wB50

眼鏡男「僕は、君が素直に旅立ったことを不思議に思ってさえいるんだよ」

眼鏡男「上級魔族を容易く葬る力をもっている今の君なら、国王に復讐することだって簡単だったはずだ」

勇者「金をたんまり渡されたからな」

勇者「それに、気持ち良かったんだよ。オレを迫害した連中がオレに頭を下げるのがさ」

眼鏡男「完全に失脚させた方が、もっと気持ちが良いよ」

勇者「確かに国は憎い……けど、わざわざ徒党を組んで復讐するほどの執着もねえんだよ」

勇者「わりぃな。オレは自由に暮らせさえすればそれでいいんだ」

眼鏡男「自分さえ良ければいいのかい!?」

勇者「ああそうだよ、オレはそういう人間だ」

勇者「それに、他に大切な約束がある」

眼鏡男「……スラム生活で、すっかり心が歪んでしまったんだね。僕は悲しいよ」

眼鏡男「こうなったら奥の手だ」パチン

筋肉男「大人しくしてもらうぞ」グイッ

学者風の男「じっとしててね」ガチャン

魔王「!?」
233 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/10/24(水) 21:58:32.64 ID:zLYT6wB50

勇者「そいつに何をするつもりだ」

眼鏡男「動かないで」

学者風の男「魔術を込めた首輪をつけさせてもらった。スイッチを押せばこの男の首は……ボンッ」

眼鏡男「どうか、僕達に力を貸してほしい」

勇者「随分卑怯なやり方じゃねえか」

眼鏡男「どうしても僕達には君の力が必要なんだ。そして、僕には君が必要なんだよ」

眼鏡男「子供の頃からずっと君のことが好きだった。そんな優男やめて、僕の所に来てよ」

魔王「…………」

勇者「きめえ! そいつを木っ端微塵にしてえならしろよ! オレはもう行く!」

学者風の男「ええー……」

眼鏡男「仲間を……見捨てるのかい!?」

魔王(まあ俺は死なぬしな)

眼鏡男「そんな……君がそんな人間に育ってしまったなんて……」

勇者「てめえが好きなのはあくまでガキの頃のオレだろ。いつまでも幻想重ねられても困るっつうの」

眼鏡男「…………」
234 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/10/24(水) 21:58:59.97 ID:zLYT6wB50

学者風の男「す、スイッチを、お、お、押すぞ!」

勇者「だから、やりたきゃやれっての。……やった瞬間てめえら全員皆殺しだけどな」

学者風の男「ひっ!」

眼鏡男「……こんなローゼちゃんなら、いらない」

眼鏡男「綺麗で可愛いローゼちゃんでいてくれないのなら、いっそこの手で……!」

眼鏡男「この手で引き裂いてあげるよ!!」バッ

勇者「うおっ」

眼鏡男「本当はずっと、ずっとこうしたいと思っていたんだ」

眼鏡男「赤い血が白い肌を、銀の髪を染めていく様は、きっとさぞかし綺麗なのだろうね!」

勇者(こいつ、イカれてやがる……!)

勇者「キメえ! 放せ!!」

狼「ガルルルルル!!!!」

魔王「ローゼ!」ガッ

学者風の男「ぐえっ」フラツ

魔王「その手を放せ!」ゴッ

眼鏡男「うぐっ!」
235 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/10/24(水) 21:59:47.28 ID:zLYT6wB50

格闘女「ちょっとミステル、あんたちょっとおかしいわよ」グイ

格闘女「……でも、勇者に魔王討伐の旅を続けてもらうわけにはいかないのは事実ね」

格闘女「均衡を壊す要因だもの」

勇者「オレ、別に魔王を倒すために旅してるわけじゃねえぞ」

勇者「魔王の兄貴がわりぃ奴で」

格闘女「今魔族に剣を向ける必要なんてない!」

勇者「話を聞け!」

魔王「勇者が旅を続けなければ魔族はやがて人間を滅ぼすぞ」

筋肉男「貴様らは金が欲しいだけだろ!?」

魔王「……聞く耳は持っておらぬようだな」

格闘女「そっちこそ」
236 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/10/24(水) 22:00:14.64 ID:zLYT6wB50

眼鏡男「ローゼちゃん……僕のローゼちゃん……!」

勇者「うわっ……」

魔王「……逃げるぞ」

シュンッ

勇者「はーきもかった……」

魔王「全くだな」

勇者「その首輪外せよ」

魔王「そうだな」パキン

勇者「……昼飯食いてえ」

魔王「少し待っていろ。城に戻って持ってきてやる」
237 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/10/24(水) 22:01:15.93 ID:zLYT6wB50










魔王(あれ以来、世間の勇者に対する風当たりが妙に強くなった)

魔王(魔王討伐賛成派と反対派で分かれたのだ)

魔王(勇者の目的が魔王討伐でないことを知っている人間もいるが、数が少な過ぎる)

魔王(こうなった原因はレジスタンスの動きによるものだということは掴めたが、事態の収拾には至っていない)
238 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/10/24(水) 22:01:59.20 ID:zLYT6wB50

「抑止力として加護の力を携えた勇者様は必要よ!」

「いいや、人間が強い力をもてば魔族との戦争の引き金を引くことになる。勇者を狙って上級魔族が村を襲ったのがその証拠だ!」

「勇者を止めろ!」

「勇者様の邪魔をするな!」

「勇者に我等の税金をやれるものか!」

「何かあったら勇者を旅立たせた国に責任を取らせてやる!」




勇者「……くそっ!」

魔王「情報の回るスピードが妙だな。レジスタンスの情報網がそれだけ優れているということか……?」

魔王「あの時、レジスタンスの者達を説得しておくべきだったのだろうか」

勇者「あいつらのイカれた目つきは覚えてるだろ。どうせ何話しても無駄だっただろうな」

勇者「あのタイプの連中は考えが凝り固まってて、何言ったって聞きゃしねえよ」

魔王「そうかもしれないが……」

魔王(そういえば、後ろ盾がいると言っていたな。まさか……)
239 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/10/24(水) 22:02:34.47 ID:zLYT6wB50

勇者「あーほんっと腹立つ!」ガンガン

魔王「岩に当たるな。落ち着け」

勇者「どうしてもイライラが止まんねえんだよ!!」

魔王「……はあ」

魔王「レジスタンスについて今一度調べてみる必要がありそうだ」

勇者「オレもう関わりたくねえんだけど」

魔王「俺もだが、連中をどうにかしないことにはな」

魔王(特に、ミステルのローゼに対する執着は異常だ。再びローゼを襲おうとする可能性は否めない)

魔王(この手でローゼを守りたいと強く思った)

魔王(尤も、俺はローゼより遥かに弱いのだが)

勇者「八つ当たりせずにはいられねー!!」ゴッ ガラガラ

魔王(そういえば、ローゼのにおいがいつもと少し違う気がするな)

魔王「……!」
277.12 KB Speed:0.1   ↑ VIP Service SS速報R 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可):

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行


スポンサードリンク


Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2026/05/10 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)