魔王「おまえは女だ」ふたなり勇者「認めねえ」

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2 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/11(土) 22:40:10.63 ID:WmOmBhop0
※ふたなり×男、ふたなり逆アナル
攻守逆転有

分岐によっては、話の進行の都合上一瞬だけ同性愛要素有(その際直接的な性描写はないです)
3 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/11(土) 22:41:00.24 ID:WmOmBhop0

数時間後

魔王「ふはははは!」ヴゥン

魔王「5つの試練を乗り越えた真の勇者でなければ、魔王を滅ぼすことはできんのだ!」

勇者「それまで何度でも殺してやるよ」

魔王「ちょっと待」グシャア

勇者「はー、めんどくせ」
4 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/11(土) 22:41:33.04 ID:WmOmBhop0

更に数時間後

勇者(昼飯食お)

勇者(干し肉かってえなあ……)

魔王「ふはははは!」ヴゥン

魔王(食事中であれば隙ができるはず!)

魔王「少し話を」

勇者「大爆発《エクスプロージョン》」ボッ

魔王(ノーモーションで上級魔術を発動しただとぉぉぉ!?!?)

勇者「うわ、消し炭になっても少しずつ再生してやがる。きもっ……」
5 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/11(土) 22:42:08.25 ID:WmOmBhop0



狼「へっへっ」

勇者「ウサギ狩ってきたのか。えらいぞ」

狼「♪」

勇者「綺麗な湖だな。食事前に水浴びでもするか」

魔王(流石に丸裸の時なら即座に攻撃するなんてできんだろう)

魔王(最大防御魔術をかけて……よし)

魔王「ふはははは! 覚悟しろ勇者!」

勇者「懲りねえ奴だな」ゴッ

魔王「ぐふっ!」バシャッ

魔王(あれ? む、胸!? 女だったのか!?)

魔王(下は……)

魔王(ついてる……だと……?)

魔王(どっちだ!? どっちなんだ!?)

勇者「てめえは馬鹿か? それとも真性のマゾヒストか?」

勇者「よっぽど殺されるのが好きみてえだな」

魔王「ちょっと待て! 俺は戦いに来たわけではない!」
6 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/11(土) 22:42:34.36 ID:WmOmBhop0

勇者「そんな手に乗るかっつの」ガッ

魔王「いっつ! 待て! 頼むから待ってくれ!!」

勇者「魔王様がオレに一体どんな用があるんだよ」

魔王「それはだな……いやそれより……」

魔王「おまえ、よく見たら美少女だな」

勇者「やっぱブッ殺す!!」

魔王「ぐわあああ!!」
7 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/11(土) 22:43:02.37 ID:WmOmBhop0

30分後

勇者「やっぱ狩りたての肉はうめえな」

狼「♪」ガツガツ

魔王「はっ!」ガバッ

勇者「再生すんのはええな」

魔王「くくく。防御魔術をかけていたため損傷が少なかったからな」

勇者「じゃあ骨まで粉々に摩り下ろしてやるよ」

魔王「痛いのはもう嫌だ! 降参! 降参する!!」

勇者「いるんだよなあ、そうやって隙を窺う奴」

魔王「俺は和平を望んでいる! これは本気だ! だからおまえと仲良くなりたい!」

勇者「はあ?」

魔王「平和な世界に興味はないか?」

勇者「ねえな」

魔王「えっ」
8 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/11(土) 22:43:39.15 ID:WmOmBhop0

勇者「世界とかどうでもいい。オレはオレとこいつさえ生きていければそれでいい」ガシガシ

狼「♪」

魔王「こ、このままでは我が兄によって人間は滅ぼされてしまうのかもしれないのだぞ!?」

勇者「滅べばいいじゃん。人間なんて碌な生き物じゃねえし」

魔王「なっ、なんてことを」

勇者「つうかおまえ、兄貴より権力ねえのか」

魔王「くっ……。父上の意思で俺が魔王となったが、魔族の約半数は好戦的な兄を支持している」

魔王「俺は父から受け継いだ闇の力により老衰以外では死ぬことはないが、」

魔王「戦闘能力では兄に敵わない。だから勇者であるおまえの協力が必要なのだ!」

勇者「なんで弱いのにおまえが魔王に選ばれたんだよ。前の魔王が和平を望んでいたとは思えねえけど」

魔王「それは、俺が正妻の子だからだ」

勇者「ふうん」
9 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/11(土) 22:45:09.97 ID:WmOmBhop0

勇者「じゃあなんでおまえは和平を結びたがってんだ」

魔王「それは……」

魔王「……おまえばかり質問しているではないか。こちらからの問いにも答えてもらおう」

魔王「何故それほど人間を嫌っている?」

勇者「オレさあ、4歳の頃に親に捨てられちまったんだよね」

魔王「っ……」

勇者「見ただろ、俺の体。こんな体だから、国がオレの親に命令したんだよ。スラムに捨てろって」

勇者「それなのに、神託が降りた途端、国の連中オレに頭下げに来たんだぜ!」

勇者「『助けてください勇者様』ってよお! あー、あれは笑えた」

魔王「……」

勇者「人間のくだらない価値観のおかげでオレは散々な生活を強いられたんだ。憎んで当然だろ」

魔王「……それも、そうだな」
10 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/11(土) 22:45:43.55 ID:WmOmBhop0

勇者「わかっただろ? オレに協力を求めたって無駄だって」

魔王「4歳の頃に捨てられたのならば、どうやって生き延びた? 助けてくれた者はいただろう」

勇者「殺されちまったよ。社会の膿に。好き勝手に犯されてからな」

勇者「オレの仲間はこいつだけだ」

狼「わふ」

魔王(狼……魔狼との交雑種とは珍しいな)

勇者「綺麗事や正論はオレには通用しない。自分の城に帰るんだな」

魔王「……おまえが人間を憎んでしまうほど苦しんできたことはわかった」

魔王「だが、俺は諦めない。再び貴様の前に姿を現すぞ」

魔王「そういえば、まだ名を聞いていなかったな」
11 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/11(土) 22:46:09.62 ID:WmOmBhop0

勇者「男ならローゼライト。女ならローゼマリア。どっちでもねえから、ただのローゼだ」

魔王「そうか。俺の名はグラナティウスだ」

勇者「長くて覚えらんねーわ」

魔王「いずれ覚えてもらいたいものだな」

勇者「ああ、そうだ。ちょっと待てよ」

勇者「取り消せ。殺される直前に言ったことを」

魔王「?」
12 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/11(土) 22:46:49.69 ID:WmOmBhop0

勇者「オレのこと……美少女っつったろ。あれ、取り消せ」

魔王「何故だ」

勇者「オレァなあ! 女扱いされるのが何よりも大っ嫌ぇなんだよ!」

勇者「オレは男として生きるって決めてんだ」

魔王「…………」

勇者「取り消さねえと夜明けまで殺し続けるぞ」チャキ

魔王「……わかった。取り消す。おまえは男だな」

勇者「ふん」シャキン

魔王(男として生きるのならば、何故堂々とローゼライトと名乗らない?)

魔王(……追究しない方がよさそうだな)

勇者「……あれ? おまえの顔、どっかで……」

魔王「見覚えがあるのか?」

勇者「あー、昔新聞に載ってた絵に似てんだ。誰の絵だったのかは忘れちまったけどな」

魔王「そうか」

魔王「……また会おう」
13 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/11(土) 22:47:23.82 ID:WmOmBhop0
つづく
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/08/12(日) 01:45:38.35 ID:DuMkIS6So
おつ
きたい
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/08/12(日) 10:53:25.68 ID:qeQKz8ZmO
新作期待
16 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/12(日) 21:25:51.90 ID:c8RKnaIV0

Episode 2


勇者「ここが第一の試練、風の神殿か」

魔王「そのようだな」

勇者「なんでおまえがいるんだよ」

魔王「俺はおまえの協力がほしい。だから、先に俺がおまえに協力しようと思ってな」

勇者「恩を売るつもりか? おまえの助けなんて要らねえっつの」

勇者「大体わかってんのか? 俺が試練を乗り越えたらおまえを滅ぼす力を手に入れるんだぞ」

魔王「ああ。勇者のみが操ることのできる、聖なる光の術」

魔王「それはどんな強大な魔の力を打ち破ることができるそうだな」

魔王「その力があれば、我が兄を打ち破ることも可能となるだろう」

勇者「その前にてめえが地獄送りにされるとは考えねえのか?」

魔王「なんとしてもおまえを仲間にしてみせる」

勇者「しつけえ野郎だな」
17 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/12(日) 21:26:32.43 ID:c8RKnaIV0

勇者「なんだこの扉。開かねえ」

魔王「……ふむ。なるほど」

魔王「パズルのようなブロックが埋め込まれているだろう。これがカギだ」

勇者「解けってか? めんどくせえ。ぶっ飛ばす」

魔王「それでは試練にならんだろう」

魔王「知恵を使え知恵を」

勇者「うるせえ」

魔王「おまえは賢さを持ち合わせているはずだ。この程度、解けないはずはないと思うのだがな」

勇者「やりゃいいんだろやりゃあ」

魔王(意外と扱いやすいな)
18 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/12(日) 21:27:46.57 ID:c8RKnaIV0

勇者「しっかし魔物だらけだな」

魔王「おまえの行く先を阻むため、兄に差し向けられたのだろう」

魔王「近づいてこようとしないのは俺がいるためだ」

勇者「楽なのはいいけどよー、魔物とは戦い慣れときてえんだよな」

勇者「ちょっくら狩るか」シャキン

魔王「無闇に命を奪おうとするでない。襲いかかってきたならば切り伏せるのはやむを得んが」

魔王「彼等も人間や動物と同様、生きている」

勇者「ちっ」チャキ

魔王「意外と素直ではないか」

勇者「うるせえ」
19 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/12(日) 21:28:21.29 ID:c8RKnaIV0

風の将軍「我は五虎大将の1人、風の大将軍カテギダ!」

風の将軍「勇者よ! 光の力を得る前に朽ち果てるがよい!」

勇者「覚えにくい名前だな……あれもおまえの兄貴の部下か?」

魔王「ああ」

風の将軍「ぐ、グラナティウス!? 何故ここに!?!?」

勇者「呼び捨てにされてんぞおい」

魔王「……」

魔王「悪いことは言わん、この勇者は強い。俺でも敵わぬ。だから帰れ」

風の将軍「くっ、五虎大将が尻尾を巻いて逃げるわけにはいかぬ!」

風の将軍「大体、一応魔王ともあろう者が勇者と仲良く肩を並べているとはどういうことだ!」

勇者「仲良くねーよ。こいつがストーカーしてるだけだぜ」

魔王「ストーカーとは人聞きの悪い」

風の将軍「そうか……グラナティウスは男をストーキングする変態であったか」

魔王「違うわ!!!!」
20 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/12(日) 21:29:04.86 ID:c8RKnaIV0

風の将軍「我が風の刃の餌食としてくれる!」

魔王「勇者を傷つけるつもりならば、この俺が相手になってやろう!」

風の将軍「不死の力を手に入れたことを後悔するまで切り刻み続けてやろう!」

魔王「来い!」

勇者「っだーもう!! オレは他人に守られるなんて屈辱でしかねえんだよ!!」

勇者「2人まとめてぶっ飛ばしてやる!」

魔王「ちょ」

ゴオン!!

風の将軍「うぐっ……ガッ……」

勇者「おー、生きてるとは丈夫だな。流石魔族のお偉いさんだ」

魔王「くっ、痛い……俺まで攻撃することはないだろう!」

勇者「は? 勝手にしゃしゃり出てきたおまえが悪いんだろ」

風の将軍「おの……れ……」

勇者「帰ってご主人様に伝えな。オレを殺そうとしたって無駄だってな! はははは!」
21 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/12(日) 21:29:31.20 ID:c8RKnaIV0

神殿 最深部

風の大精霊「よくここまで辿り着きました、勇者よ」

風の大精霊「では、あなたの力を試させていただきましょう……と言いたいところですが」

風の大精霊「あなたの実力はもう充分見させてもらいました」

風の大精霊「聖なる光の力の欠片、風の加護を授けましょう」

勇者「どうも」






勇者「楽勝だったなー」

狼「へっへっ」

勇者「おーよしよし、昼飯にしような」

魔王「ここは見晴らしがいいな」

勇者「おい、その箱何だ」

魔王「お弁当だが」
22 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/12(日) 21:30:31.00 ID:c8RKnaIV0

カパッ

勇者「……!!」

勇者(豪華だな……)ジュル

魔王「……少し分けてやろうか?」

勇者「いいのか!?」

勇者「うわ、うめえ、うめえ」ガツガツ

勇者「ほら、おまえも食え」

狼「♪」

勇者「こんなに美味いものがこの世にあるのかよ……くそ……」

魔王(これほど感動されるとは……)

魔王「……今度からはお前の分も用意してやろうか?」

勇者「!!!!」

勇者「ガリィの分もな!!」

狼「わふ」

魔王「良かろう。爺やに頼んでおいてやる」
23 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/12(日) 21:30:58.48 ID:c8RKnaIV0

翌日

魔王「ふはははは勇者よ! お弁当を持ってきてやったぞ!」

勇者「うおっしゃあああああ!」

勇者「うんめー!」ガツガツ

魔王「ガリィには最高級のウルフフードだ」

勇者「なんだそれ」

魔王「魔王軍が開発した、狼の体に最も適した食べ物だ」

魔王「他のどのフードよりも栄養バランスが優れている」

狼「……」クンクン

狼「!!」ガツガツ

魔王「ふふふ。美味いだろう」

勇者「確かに美味いな」ポリ

魔王「人間が口にするでない」
24 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/12(日) 21:32:37.40 ID:c8RKnaIV0

魔王(くくく。勇者の胃袋を掴むことに成功したぞ)

魔王(食い物と引き換えに協力を……と言いたいところだが、あまり恩着せがましくするのは逆効果だな)

魔王「今までどんなものを食べてきたんだ」

勇者「食えるものならなんでも食った。まともな料理にありつけることは滅多になかったな」

勇者「でも、けっこう良い家に生まれたからよ、捨てられる前はそこそこ良い飯食ってたんだぜ」

勇者「味なんてもう忘れちまったけどな……いや、あれの味はまだ覚えてる」

勇者「へらべったくした卵をぐるぐる巻いたやつ」

魔王「卵焼きか」

勇者「甘くて、中にチーズが入っててとっろとろなんだ」

魔王「ふむ。今度メイドに頼んでみるとするか」

勇者「マジか!?」

魔王「嘘は吐かん」
25 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/12(日) 21:33:20.64 ID:c8RKnaIV0

勇者「……親切な野郎はぜってぇ何か目的があるんだ。腹の内ではよからぬことを考えてるに決まってる」

勇者「スラムじゃ、最も警戒するべき相手は親切な奴だった」

魔王「腹の内も何も、俺の目的は知っているだろう」

勇者「そういやそうだったな」ガツガツ

魔王「とはいえ、今すぐにおまえに協力を求めることはやめた」

魔王「今はただ、親交を深めたいと思っている」

勇者「これからもうめぇ飯食わせてくれるんなら、ちょっとくれえ協力してもいいぞ」

魔王「あ、あっさりだな……」

狼「♪」ブンブン ペロォ

魔王「おー、よしよし。くすぐったいぞ」

勇者「……珍しいな。ガリィがここまで懐くなんて」

勇者「人懐っこくはあるが、オレ以外の相手には、普段はここまでスキンシップしねえんだ」
26 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/12(日) 21:37:11.62 ID:c8RKnaIV0

魔王「おやつもあるぞ、犬用のだが」

狼「♪」ブンブン

魔王「くくく。喜んでもらえて嬉しいぞ」

勇者(こいつ……随分純粋な笑い方しやがるな)

勇者(こんな笑顔を見るのは一体何年振りだろうな)

勇者「オレはただ借りを作ったままにしたくねえだけだからな」

魔王「飛び切り美味いのを毎日持ってきてやる。その分働いてもらうからな!」
27 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/12(日) 21:37:41.54 ID:c8RKnaIV0

勇者(スラムでオレが散々見てきた、人間のきったねえ心)

勇者(あの魔王様からは、それを感じられなかった)

勇者(魔族ってのは皆ああなのか?)

勇者(それとも、あいつが特別なんだろうか)

勇者(……どうでもいい。美味い飯にありつけるなら、あいつがどんな魔族かなんて)





28 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/12(日) 21:38:11.18 ID:c8RKnaIV0

魔王「なあ、この国の王は、どんな男だ」

勇者「ろくでもねえ奴だよ」

勇者「プッツンな完璧主義者でよお、教会を利用して気に入らない人間をとことん排除しやがるんだ」

勇者「ちょっと道を踏み外しちまった奴とか、オレみたいな半端者とかをな」

魔王「……そうか」

勇者「若え頃は良い王様だったらしいけど、20年前にお姫様が魔王に攫われて以来豹変しちまったんだとよ」

魔王「…………」

勇者「オレに助けを請わざるを得なくなって、さぞ屈辱だったろうなあ!」

勇者「『姫と神器を取り戻せ』って、絞り出すような声で命令してきたんだぜ!」
29 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/12(日) 21:38:38.24 ID:c8RKnaIV0

勇者「どうせお姫様なんて、とっくの昔に死んじまってるんだろ」

魔王「……ああ」

勇者「神器ってのも、取り戻す義理なんてねえしなあ。まずどんな形かすら知らねえし」

勇者「この国ではさ、王位継承の儀式には三種の神器が必要なんだそうだ」

勇者「奪われたのはその内の1つ……なんて名前だったっけなあ。忘れちまった」

魔王「聖銀の鏡だ」

勇者「ああそうそう。そんな名前だったな」

勇者「てかおまえ、魔王になったのいつだよ」

魔王「1年前だ」

勇者「へえ、年はいくつだよ」

魔王「17だ」

勇者「わっけえなおい」

魔王「だから貫禄もなければ威厳もない。困ったものだな」

魔王「おまえこそいくつだ。俺よりいくつか下だろう」

勇者「14だよ」
30 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/12(日) 21:39:41.26 ID:c8RKnaIV0

勇者「じゃあおまえ、鏡持ってんのか?」

魔王「これだ」スッ

勇者「持ち歩いてんのかよ」

魔王「いざという時の切り札にするつもりだ」

勇者「すぐに返せばあの王様も少しは……いや、駄目だな」

勇者「お姫様が死んじまったって知ったらかえって逆上しかねねえ。下手に刺激しねえ方がいいな」

魔王「ああ。タイミングは重要だ」

狼「わふぅ」

魔王「よしよし。おまえも半魔で苦労したのだろうな」

勇者「え……こいつが半魔だってよくわかったな」

勇者「見た目は普通の狼とほぼ変わんねえし、魔の気だってうっすいのに」

魔王「くくく。俺は魔王だぞ。舐めてもらっては困る」
31 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/12(日) 21:40:11.43 ID:c8RKnaIV0

勇者「こいつ、半魔だからか群れからハブられちまったみたいでさ」

勇者「貧民街に辿り着いて、ゴミを漁ってたところを拾ったんだ」

勇者「なんかほっとけなかった。オレもおんなじ半端者だからだろうな」

魔王「…………」

勇者「おまえみてえな純粋な魔族にはわかんねえだろうけどさ、オレ達の気持ちなんて」

勇者(圧倒的に濃い魔の気。どう考えても純粋な魔族だ)

魔王「……なあ、もし、人間と魔族が争うことのない世界を実現できたら、おまえはどう生きる?」

勇者「想像つかねえや。てか、まず無理だろ」

勇者「人間の国っつったっていくつあると思ってんだよ」

勇者「それに、和解してえなら、おまえら魔族が人間から奪った土地を返さなきゃいけねえ」

勇者「そんなこと無理だろ」

魔王「そうだな……何処か、人間の所有していない土地に移り住むことができればいいのだが」
32 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/12(日) 21:40:37.69 ID:c8RKnaIV0

勇者「仮にそんな土地があっても、魔族の連中は納得するのか?」

魔王「難しいだろうな。尻尾を巻いて逃げるのかと非難されるだろう」

勇者「やっぱどう足掻いても無理なんだよ、わへーなんて」

魔王「おまえも、俺の夢を子供の幻想だと嗤うか?」

勇者「嗤いはしねえけどさ」

魔王「協力してくれるのだろう?」

勇者「食わせてもらった飯の分だけはな」

勇者「あーでも、和平の方法考えるとかはナシだぜ」

勇者「邪魔な奴を排除するだけな」

魔王「そうか」

勇者「世の中、綺麗な夢だけじゃどうにもできねえんだよ」

勇者「あー……世界はきったねえのに、空は綺麗だよなあ」
33 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/12(日) 21:41:51.25 ID:c8RKnaIV0

魔王「……すまない」

勇者「はあ? なんでいきなり謝るんだよ」

魔王「我が父がこの国から大切なものを奪わなければ、おまえが迫害されることはなかった」

勇者「おまえがやったわけじゃねえだろ」

魔王「魔王の座と共に、俺は歴代の魔王の罪も受け継いでいる」

魔王「本当に、すまない」

勇者「やめろ。余計惨めになるだけだ」

魔王「…………」

勇者「……っだーもう! 辛気くせえのは嫌いなんだよ!」

勇者「ほら! 休憩は終わりだ! 行くぞ!」

勇者「てかおまえの瞬間転移魔法使えば楽に旅できるじゃん」

魔王「アナログな移動も試練の一環だろう」

勇者「ほんと、真面目だよなあ、おまえ……」
34 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/12(日) 21:42:17.63 ID:c8RKnaIV0
つづく
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/08/12(日) 23:29:09.16 ID:gkp+w0wBO
乙乙
なんか面白い組み合わせだな
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/08/13(月) 05:28:21.69 ID:IJHrSMB20
面白い
37 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/13(月) 20:26:34.03 ID:jOQls5bO0

Episode 3


白壁の町

魔王「美しい町だな」

勇者「魔王が堂々と人間の町に入ってくんなよ」

魔王「上手く化けているだろう?」

勇者(紺色の髪が真っ黒になってるし、肌の色もこの辺の国の人間に合わせてんだな)

勇者「角どこにやったんだよ」

魔王「髪に変化させるくらい、造作もないことだ」ドヤ

勇者「あっそ」

マッサージ屋「そこの素敵なお兄さんたち〜! ちょっと寄っていかなーい?」

勇者「おまえ顔は良いよな」

魔王「くくく。人間から見ればかなりの美形の部類だろう」

勇者「魔族から見たらどうなんだよ」

魔王「……弱そうに見えると言われる」

勇者「魔族の感覚ってよくわかんねえな」
38 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/13(月) 20:27:00.12 ID:jOQls5bO0

マッサージ屋「こってるわね〜!」

魔王「ああ……うう……そこ……効くぅっ……!」

マッサージ屋「お兄さん、デスクワークばかりしてるでしょ〜」

魔王「職業柄、どうしてもな……あぐっ」

勇者(堪能してやがる……)

マッサージ屋2「あなたも、ストレス溜め込んでるんじゃない?」

勇者「いててて。あ、そこだそこ。そこをぐっぐっと」

勇者(なんでオレまでサービス受けてんだよ)

勇者(でも良いもんだな……こりがほぐれる……)

マッサージ屋3「わんちゃんもリンパのマッサージしましょうね〜」

狼「♪」
39 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/13(月) 20:29:16.02 ID:jOQls5bO0

マッサージ屋2「白銀の髪に、萌黄色の虹彩……あなた、新しく旅立ったっていう勇者様でしょ」

勇者「ああそうだよ。くうっ……」

マッサージ屋2「ということは、かなぁりお強いんでしょ?」

勇者「まあな。倒せなかった敵はいねえよ」

魔王「そやつに剣で敵う者はそういないだろうな。魔術の腕も立つ。うっ、くっ……」

マッサージ屋「あらあ、すごいのね。でも、暴力だけが力じゃあないのよ?」

マッサージ屋2「マッサージだって、『力』になるんだから♪」

マッサージ屋「こぉんなに気持ち良くされちゃったら、あたしに気を許したくなっちゃうでしょ?」

魔王「確かに……くうう……」

マッサージ屋「相手を気持ち良い気分にすることで、相手の心を開く『技術の力』」

マッサージ屋「これでお偉いさんにチップ弾んでもらったりできちゃうんだから、大したものでしょ?」
40 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/13(月) 20:29:42.31 ID:jOQls5bO0

マッサージ屋「夜には別のサービスだってしてるのよぉ♪」

魔王「べ、別のサービス?」

マッサージ屋「そう。もぉっと気持ちの良いコト。どう? また、夜にいらっしゃらない?」

魔王「えっ、あ、その、えっ」

勇者「ははっ顔真っ赤だぜ! 童貞かよ!」

魔王「ううううるさい!」

マッサージ屋「あらあらうふふ」
41 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/13(月) 20:30:15.85 ID:jOQls5bO0

魔王(恥をかいてしまった……体は楽になったが)

勇者「また行きてえな」

魔王「昼間にな」

魔王「……しかし、ヒントを得られた気がする」

勇者「へえ?」

魔王「人間であろうが魔族であろうが、己に快を与える相手には好意を覚える性質がある」

勇者「男娼でもやって人間の女たらしこむつもりか?」

魔王「違うわ!!」

魔王「サービス業を人間と魔族の橋渡しにはできないかと思ってな」

勇者「魔族の店ってだけで人間は近寄らねえし、その逆も然りだろ」

魔王「やはりそうか……」
42 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/13(月) 20:31:38.52 ID:jOQls5bO0

町人A「しかし、町長様も困ったものだな……」

町人B「ここまで税を上げられては、生活が成り立たない」

町人A「魔族が絡んでるって話、まさか本当じゃねえよなあ」

魔王「……気になるな」

勇者「マジで魔族が絡んでるなら勇者の仕事になっちまうなー」

魔王「詳しく話を聞かせてくれないか」

勇者「おい勝手に首突っ込んでんじゃねえよ」

町人A「美少年や美青年を買うのに夢中になりすぎて、金遣いが荒くなってるって噂が立ってるんだよ」

町人B「少し前までは、いたって真面目な女の人だったんだ」

町人A「いきなりどうしちまったんだろうなあ」

魔王「ふむ……。ローゼ、詳しく調べてみるぞ」

勇者「オレよりおまえの方が勇者業向いてそうだよな」
43 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/13(月) 20:32:04.58 ID:jOQls5bO0






魔王「ここが町長の館か」

勇者「おまえだけでやればいいんじゃ……」

勇者「いや、事件を解決した方が国から支給される金増えるし別にいいか」

魔王「魔族の気配はほぼ感じられない。だが、全く感じないわけでもない」

魔王「それに、この香の匂い……覚えがある」

勇者「え、お香の匂いなんてしねえけど」

魔王「俺は鼻が利くんだ」ドヤ

勇者「その顔むかつく」
44 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/13(月) 20:32:35.53 ID:jOQls5bO0

魔王「町長に直接会うのが早そうだな」

勇者「すんませーん、オレ勇者なんですけど、町長に面会願いまーす」

見張り1「現在、町長はあらゆる面会を謝絶している。お引き取り願おうか」

勇者「チッ、なら力づくで」

魔王「まあ待て。一旦退こう」

勇者「えー」







魔王「今無理に正面突破すれば警戒を強められるだろう」

魔王「策を練り、油断させた方がいい」

勇者「策って、具体的にどうすりゃ……あっ」
45 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/13(月) 20:34:04.81 ID:jOQls5bO0

勇者「サービス業者のふりでもするか」

魔王「くくく。俺も同じことを考えていた」

魔王「先程町長の男の好みを調べたが、おそらく俺もおまえも町長の対象内の顔をしている」

勇者「じゃあいかにも男娼っぽい格好を整えて出直すか」

魔王「ああ。見張りが交代する頃に再び向かおう」








勇者「おまえホストかよ」

魔王「おまえこそ」

勇者「真っ赤で派手だな」

魔王「真っ青なおまえも似たようなものだろう」


勇者「こんちはーっす」

魔王「夜はこんばんはだろう」

勇者「細かいことは気にすんなよ」

見張り2「何の用だ」
46 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/13(月) 20:34:34.99 ID:jOQls5bO0

勇者「町長さんに、ちょっとしたサービスを……と思いまして」

見張り2「しかし、アポもなしに訪問されてもな」

勇者「飛び切り美形の男が2人訪れたことだけでも、どうかお伝え願えませんかね」

魔王「『飛び切り美形』と自分で言える自信がすごいな」

勇者「おまえこそ昼間に自分のことかなりの美形っつってたろ」

魔王「細かいことは気にするでない」

見張り2「とりあえず、名前を教えてもらおうか」

勇者(いっけね、偽名考えてねえ)

魔王「ええと……」

勇者「こいつはグラ」

魔王「おい」

勇者「グラってんだ」

見張り2「おまえは」

勇者「……グリ」

魔王「それではまるでとんがり帽子のネズミの双子ではないか」
47 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/13(月) 20:35:03.11 ID:jOQls5bO0

勇者「いいだろ別に、丁度服もお互い青と赤だしよ。なんなら今度仲良くカステラでも焼いてやろうか」

魔王「ほう? 親交を深めるには良さそうだな。俺はホットケーキの方が好きだが」

勇者「それでもいいぜ、バター代おまえ持ちな」

魔王「そいつはしバっター」

見張り2「は?」

勇者「くだらない駄洒落はホットケー、キにすんな」

見張り2「帰れ」

勇者「えー、こんなに良い男を追い返したなんて、後から町長様にバレたらその方がまずくありませんかねー?」

見張り2「た、確かに」

勇者「町長様に良い夢見させて差し上げたいんですよぉ」

見張り2「いやちょっと待て、おまえ本当に男か? 顔立ちがどうも」

勇者「オレを女扱いする奴はぶっころ」

魔王「落ち着け、その表情の作り方はまるでゴロツキだ」ガシィ
48 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/13(月) 20:36:08.09 ID:jOQls5bO0

魔王「町長様は女顔の美少年も好んでいると聞いたのだが」

見張り2「うーん、仕方ないな」

見張り2「すんませーんせんぱーい、無駄に顔の良い漫才師のコンビが来てるんですけどー」

勇者「漫才師だってよ」

魔王「おまえのせいだぞ」

勇者「ノリノリだったくせに」

見張り2「入っていいぞ」
49 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/13(月) 20:36:46.87 ID:jOQls5bO0

勇者「奥に進めば進むほど甘ったるい匂いがきっつくなるな」

魔王「やはり、この匂いは……」

ガチャ

町長「いらっしゃあい、あなた達は、一体どうやってあたしを悦ばせてくれるのかしら?」

勇者(うわ、部屋中男だらけだ。死人みてえにぐったりしてやがる)

勇者「麗しい方だ。3Pはいかがでしょう」

魔王「誘い方が直接的過ぎるだろう」

勇者「じゃあどう言えばいいんだよ」

魔王「それはだな」

勇者「ああそっかおまえ『童貞』だもんな、3Pする度胸なんてねえよな」

勇者「でも『どうってい』うことはないぞ、すぐ慣れる」

魔王「そう言うおまえは余程経験豊富なのだろうな」

勇者「15までは童貞でも許されるんだよ」

町長「あはは、つまんない漫才はもういいわ。さ、早くイイコトを始めましょ」

魔王(格好がエロいな……)
50 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/13(月) 20:37:17.90 ID:jOQls5bO0

魔王「ふん、生憎貴様とイイコトをするつもりはない」

勇者「赤面しながら言っても説得力ねえぞ」

魔王「細かいことは気にするでない」

町長「本当はしたくてたまらないくせにぃ」ボイン

勇者「おまえの好みはお色気満載ボインボインか」

魔王「やめろ」

魔王「……正体を現すがいい、サキュバスよ」

町長「あら」

魔王「この香は、淫魔の力を高める効果のあるものだ」

魔王「憑依を維持するためにずっと焚き続けているのだろう」

町長「詳しいのね、淫魔のことに」

勇者「あれだろ、エロいこと調べてる内に知ったんだろ」

魔王「違うわ」
51 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/13(月) 20:37:54.65 ID:jOQls5bO0

町長「あたしを退治しに来たのかしら?」

魔王「大人しく魔族の国に帰るのであれば、命までは奪わぬ」

町長「残念だけど、あたし、人間の男の子が大好きなのよね」

スウゥ――

勇者(町長の体から抜けた!?)

サキュバス「でもあたし好みの男の子を毎晩探すのって大変だからぁ」

サキュバス「こうして権力のある女の体を奪ってコレクションを集めてたのよぉ」

サキュバス「折角作った楽園を壊させはしないわ!」

サキュバス「あなた達も骨抜きにしてあげる!」

魔王「来るぞ!」

勇者「ハッ、返り討ちにしてやるよ!」
52 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/13(月) 20:38:56.59 ID:jOQls5bO0

サキュバス「欲情《ラスト》!」

魔王「気をつけろ、あの球に当たると欲情が止まらなくなるぞ!」

勇者「心配ねえよ、おまえを盾にするからな!」

魔王「ちょ」

サキュバス「なんて奴なの!?」

勇者「風の刃《ブラストカッター》!」

サキュバス「きゃああ!」

勇者「地獄で好きなだけセックスしてろ!」

魔王「ちょっと待て! 止めは刺すな! 俺がそやつを封印する!」

勇者「うわ、なっさけねーポーズ」

魔王「おまえのせいだぞ」

魔王(息子が収まらん……)
53 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/13(月) 20:39:50.06 ID:jOQls5bO0

魔王「俺は殺生を好まない。よって、おまえを封印の刑に処す」

サキュバス「それは魔王だけが使うことのできる術のはず! まさか……!」

魔王「今更気がついたか」

サキュバス「嫌よ! あんな場所に行くなんて!」

魔王「今すぐ死ぬよりはマシであろう。……多分」

魔王「開け、門よ!」

ゴオオォォォォ……

サキュバス「嫌! いやあああああ!」

勇者「うわ、こっわ」

勇者(渦巻く闇の中にサキュバスは吸い込まれていった)
54 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/13(月) 20:41:30.32 ID:jOQls5bO0

勇者「おまえいつまで蹲ってんの?」

魔王「……一度熱を開放しなければ、この術は解けんのだ」

勇者「勃起しっ放しかよ、ご愁傷さま」

魔王「おのれ……」

勇者「トイレ行って抜いてこいよ」

魔王「自分でやっても駄目なのだ。この術にかかった以上は、女に相手をしてもらわねば……」

勇者「ええ……」

魔王(こやつに頼む……わけにもいかんしな……)

魔王(顔を直視できん。性欲が昂るあまりに、こやつが魅力的な女に見えて仕方がない)

魔王(顔だけは……顔だけは本当に良い女だ……顔だけは……)
55 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/13(月) 20:42:02.86 ID:jOQls5bO0

町長「うう……あれ、私は……」

勇者「今までの記憶あるか?」

町長「ああ、私はなんてことを……!」

勇者「まあもうサキュバスは退治したから大丈夫だ」

勇者「ところで、ローブねえか? 体すっぽり覆えるやつ」

町長「え、ええ」

勇者「ほら、これ着ろよ。これなら町中歩いても大丈夫だろ」

魔王「…………」

勇者「マッサージ屋の姉ちゃんにしてもらおう、な?」

魔王「………………」

勇者「ほら、肩貸してやるよ」

魔王「…………………………」
56 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/13(月) 20:42:39.60 ID:jOQls5bO0

1時間後

勇者「童貞卒業おめでとう!」

魔王「……とらんわ」

勇者「え?」

魔王「卒業なんぞしておらんわ!! 手でしてもらったからな!!」

勇者「なんでだよ、折角の機会だったのに」

魔王「万が一避妊に失敗して半魔を孕んだら、あの者の人生を壊すことになってしまうだろう」

勇者「どこまでも真面目だよなおまえ」

勇者「まあ悪いもんでもなかっただろ?」

魔王「その……まあ……なかなか良いものではあったが……」

魔王「うう…………」

勇者「何蹲ってんだよ、また勃ってきたか?」

魔王「このあまりにも激しく渦巻く羞恥心に動く気力を奪われてしまっている俺の気持ちがおまえにわかるものか」
57 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/13(月) 20:43:27.29 ID:jOQls5bO0

勇者「今回は悪かったよ。すまなかったな」

魔王「…………」

勇者「おまえ魔王ならさー、妾なんて作り放題で、高級遊女的なのも呼び放題じゃねえの」

魔王「立場上は可能だが……」

勇者「だが、なんだよ」

魔王「女を呼びたいなんて、そんな恥ずかしいこと、爺やに頼めるものか!」

勇者「純な奴……」

魔王「……はあ」

魔王「…………」ジィッ

勇者「なんだよ、オレの顔に何か付いてるか?」

魔王(サキュバスの術のせいとはいえ、こやつに欲情してしまうとは……)

魔王「……疲れた。帰って寝る」

勇者「おう。明日も飯頼むぞー」

魔王(……気まずい……)
58 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/13(月) 20:44:12.66 ID:jOQls5bO0
tsuduku
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/08/13(月) 21:43:00.10 ID:B9DQJ8zR0
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/08/14(火) 01:07:29.93 ID:5iUcE6OeO
乙乙
今回は二人して駄洒落好きかよww
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/08/14(火) 12:04:55.16 ID:Q1z63pS+0
おつ
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/08/14(火) 13:45:49.13 ID:Fk88nfcpO
あいかわらず世界観作るのうまいなあ。
63 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/14(火) 22:14:27.17 ID:xgVTOZ5+0

Episode 4


勇者「国境だ! このクソみてえな国ともおさらばだぜ! ヒャッハー!」

魔王「元気だな」

勇者「ははっそりゃあな」

魔王「……世界は広いな」

勇者「そういやおまえ、この頃すぐ城に帰っちまうじゃないか。忙しいのか?」

魔王「民が、和平賛成派と反対派で真っ二つに割れておってな」

魔王「内乱に発展しないよう抑えるのに必死なのだ」

勇者「へえ、そりゃご苦労なこった」

魔王「なあ、ローゼ」

魔王「おまえは、どれほど悩んでも答えが見つからず、闇を彷徨っている気分になることはないか?」

勇者「ねえな。色々割り切らなきゃ生きていけねえ環境で育っちまったからなあ」

魔王「……おまえは、強いな」
64 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/14(火) 22:15:20.13 ID:xgVTOZ5+0




数日後

水の神殿

勇者「ガリィ、おまえはここで待ってろ」

勇者「さっさと試練を片付けて戻ってきてやるからな」

魔王「俺も共に行こう」ヒュン

勇者「へえ、仕事は大丈夫なのか?」

魔王「一応な。それより、おまえが心配だ」

勇者「ご親切なこった」

勇者「そういやおまえ、ここしばらくオレと目を合わせようとしなくならなかったか?」

魔王「きっ、気のせいだ!」カアア
65 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/14(火) 22:16:28.70 ID:xgVTOZ5+0

魔王「美しいな。建築物と自然が融合し、清流が至る所に流れている」

勇者「これだけ綺麗な水なら名水として売れそうだな」

ジャバ ジャバ ジャバ

水の精霊1「そなたの実力、見せてもらう!」

水の精霊2「勇者に相応しい力の持ち主であることを我等に示せ!」

水の精霊3「しめせー!」

勇者「よーし一気に全員蒸発させてやる」ボォォォ

水の精霊1「待って待って降参します許して」

水の精霊3「ここの試練をクリアしたら、水を操る神聖な能力がもらえるよ! がんばってね!」

勇者「そりゃ便利そうだな」

勇者「オレ、元々水属性の術は使えっけど、それは自分の魔力や大気中のマナを一時的に水に変換するだけだ」

魔王「水そのものを操ることができれば便利だな」
66 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/14(火) 22:16:58.50 ID:xgVTOZ5+0

勇者「うわ、なんだこの部屋。水路が張り巡らされてやがる」

魔王「水が流れていない水路もあるな」

勇者「壁に絵が描かれてんな」

魔王「この部屋の図のようだな。特定の水路に色が付けられ、模様になっている」

魔王「この図と同じになるよう、水の進む方向を変えろということだろうな」

勇者「うわ、めんどくせ。こんなん解くことの一体何が勇者に必要なんだよ」

魔王「冷静に空間や状況を理解し、1つ1つ問題を解決していけるかどうかは、生きていく上で重要だぞ」

勇者「あっそ」
67 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/14(火) 22:18:00.99 ID:xgVTOZ5+0




魔王「よし、これでいいだろう」

キーンキンキン……

勇者「お、鍵が落ちてきた」

魔王「これで先に進めるな」

勇者「半分以上おまえが解いたわけだけどさ、いいのか? オレが自分でやらなくて」

魔王「仲間も勇者の力の内だからな」

魔王「歴代の勇者は仲間と協力して試練を突破している」

勇者「でも瞬間転移でズルするのは駄目なんだろ、おまえの基準わかんねーわ」

魔王「足りない能力があるのなら、仲間に補ってもらえばいい」

魔王「だが、体力だけは身に着けておいてもらわないといけないからな」

魔王「そして、旅の経験は貴重だ」

魔王「それに、おまえの能力が育つような教え方をしてやっただろう?」

勇者「おまえ家庭教師の才能ありそうだよな」
68 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/14(火) 22:18:29.91 ID:xgVTOZ5+0

勇者「ここが最深部か」

魔王「む、この気配……やはり来たか」

水の将軍「我は五虎大将の1人、水の大将軍エクヴォリ!」

勇者「ぜってぇ覚えらんねーわその名前」

勇者「魔族ってのは皆難しい名前なのか?」

水の将軍「貴様の頭が悪いだけであろう!」

勇者「あ゛ぁ゛ん?」

水の将軍「悔しければこの私を倒してみせるのだな!」

勇者「蒸発させてやんよ! 紅蓮の炎《ローリング・フレイム》!」

ボワアアア

勇者「口ほどにも……いや、周囲の水を盾にしたな!」

魔王「気をつけろ、奴は――」

水の将軍「気体・液体・個体、あらゆる形態の水を操ることができるのだ!」

勇者(水蒸気が槍の形に!?)

ヒュンッ

魔王「っローゼ!」ガバッ
69 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/14(火) 22:23:07.78 ID:xgVTOZ5+0

魔王「がはっ……」

勇者「お、おい!」

水の将軍「勇者よ、貴様の弱点は調査済みだ」

水の将軍「貴様は強いが故に慢心している。そして、魔族との実戦経験が極めて乏しい」

水の将軍「ついでに挑発に乗りやすい! 油断したな! ふはははは!」

勇者「ちっくしょう……」

水の将軍「まだまだ行くぞ! 水の矢《ウォーター・アロー》!」

勇者(あらゆる方向から――!)

魔王「伏せるぞ!」ザッ

勇者「いってぇ!」

魔王「うぐっ……」

勇者「休んでろよおまえ!」

魔王「俺はおまえを守るためにここにいるのだ!」

勇者「はあ!?」

魔王「俺は不死身だ。俺が盾になっている間に策を考えろ!」
70 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/14(火) 22:24:07.35 ID:xgVTOZ5+0

水の将軍「その弱き魔王もいつまでもつだろうな!」

勇者(敵は水蒸気だろうが氷だろうが自在に操ることができる)

勇者(だからどんな魔法を使っても……いや、それなら水でなくしちまえばいい)

勇者(雷で電気分解を……駄目だ! 下手すりゃオレ達も感電しちまう)

魔王「ぐっぐふっがああっ!! んぐっ……」

勇者(再生が追いつかなくなってきてやがる! 早くしねえと……!)

魔王「……守護壁《プロテクション・ウォー」

水の将軍「させぬ!」

ビュウンッ

魔王「ぐぅっ……!」

魔王「参ったな……防御の術を発動させるためのっ……集中もさせてくれぬか!」
71 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/14(火) 22:24:50.14 ID:xgVTOZ5+0

勇者「くそっ……オレは攻撃の術しか使えねえ」

魔王「今度、おまえに防御の術を教えてやる」ニッ

勇者「よく笑えるな、こんな状況で」

勇者「…………」



魔王『冷静に空間や状況を理解し、1つ1つ問題を解決していけるかどうかは、生きていく上で重要だぞ』



勇者(空間……辺りは水が豊富にある。完全に敵のフィールドだ)

勇者(いや、本当にそうか? ここは水の神殿。聖なる土地だ)



水の精霊3『ここの試練をクリアしたら、水を操る神聖な能力がもらえるよ! がんばってね!』



勇者「おい! 水の大精霊! 見てるんだろ!?」
72 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/14(火) 22:25:28.55 ID:xgVTOZ5+0

水の大精霊「そちらから我を呼び出すとはな」

勇者「水を操る能力、先に寄越せ!」

水の大精霊「……良かろう。どうせすぐに渡すつもりであったしな」

水の大精霊「その男を守ろうとする強き意思がひしひしと伝わってくるわ」

ポワ……

勇者「……よし!」

水の将軍「む……水が!?」

勇者「この空間に存在する水は全てオレのもんになったぜ!」

水の将軍「せこいぞ勇者!」

勇者「生憎、狡賢さならスラム1だったんでな!」

勇者「大好きな水に貫かれろ!」

水の将軍「そんな馬鹿なああああ!!」
73 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/14(火) 22:26:35.39 ID:xgVTOZ5+0

水の将軍「おのれ……おのれ!」

魔王「げほっ……おまえも封印してやろう」フラフラ

水の将軍「私に止めを刺さなかったことを後悔する日が必ず訪れるぞ……!」

魔王「門よ……開け!」




勇者「ガリィ!」

狼「バウワウ!」

勇者「良い子だったな〜!」

魔王「よし、昼飯にするか」

勇者(……こいつ、必死でオレを守ってくれた。ちょっとかっこよかったな)

勇者(なんて思っちまった。なんだか屈辱だ)

勇者(……むかむかする)
74 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/14(火) 22:27:20.86 ID:xgVTOZ5+0

神殿近くの村

勇者「今日はこの村に泊まるか」

狼「ワン!」

勇者「すんませーん、宿探してるんすけど」

香水屋「あら、綺麗な旅人さん! どうぞうちに泊まっていって!」

勇者「いやオレは」

香水屋「わたし、アルセア! あなたは?」

勇者「……ローゼ」

香水屋「名前も綺麗なのね!」

勇者「…………」

香水屋「こんなに綺麗なのに、男の子の格好をしてるなんてもったいないわ!」

香水屋「可愛くしてあげる!」

勇者「えっちょっおい、引っ張んなって!」

狼「♪」ダッダッ

勇者(この雰囲気、なんだか懐かしい。不思議と嫌じゃない)

勇者(ああ、そうだ。彼女と……メリッサと、似てるんだ)

勇者(姿形じゃなくて、この明るさと、強引さが)

勇者(嬉しいような、苦しいような……変な気分だな)
75 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/14(火) 22:28:41.97 ID:xgVTOZ5+0
続く
今回短かった分次回長いです
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/08/14(火) 23:21:16.89 ID:uNOnpxjgO
乙乙
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 01:00:01.45 ID:GsfgSmLx0
おつおつ
期待
78 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/15(水) 20:04:23.97 ID:78jcdTYX0

Episode 5


――――――――

ザアァァァァァァ……

女「どうしたんだい、おチビちゃん。こんな所に1人でいるなんて、危ないよ」

勇者「くにのひとのめいれいで、すてられちゃったの」

勇者「おとこでもおんなでもないこは、おうちにいられないんだって」

女「こんなに可愛い子を捨てるなんて、お国も馬鹿なことをするもんだねえ」

勇者「…………」

女「あたしの家においで」

女「おチビちゃん、おなまえは?」

勇者「おとこだったら、ローゼライト。おんなだったら、ローゼマリア」

勇者「どっちでもないから、ただのローゼ」

女「そっか。あたしはメリッサ。そこに生えてるハーブと同じ名前だよ」

――――――――
79 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/15(水) 20:06:46.49 ID:78jcdTYX0

勇者「……この家、甘い匂いがするな」

香水屋「わたし、手作りの香水を売って生活してるのよ」

勇者(すげえ数の瓶だな)

香水屋「これがユリで、あれはホオノキ。あれがヘリオトロープ。どれも素敵な香りよ」

香水屋「気になるのはあるかしら?」

勇者「香水に興味なんて……」

勇者「……あんたがつけてるのは、レモンみたいな匂いだな。けっこう甘いけど」

香水屋「そう! レモンみたいな香りの植物は色々あるけど、このレモンバームは甘みもある匂いなのよ」

香水屋「これはね、特に甘みが強く出るよう抽出方法を工夫してあるの」

勇者「へえ……」

香水屋「あなたの国では、メリッサって呼び方が一般的かしらね」

勇者「…………」
80 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/15(水) 20:07:44.43 ID:78jcdTYX0

香水屋「1瓶あげるわ!」

勇者「いや、わりぃよ。まず使わねえし」

香水屋「いいのよ! 出会えた記念にプレゼントしたいの!」

香水屋「これからお洒落に付き合ってもらうんだし」

勇者「…………」

香水屋「旅をしているなら、なかなかお風呂に入れなくて体のにおいが気になっちゃうこともあるでしょ?」

香水屋「ちゃんと香水つけなきゃ!」

勇者「わかったよ。……もらっとく」
81 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/15(水) 20:11:17.73 ID:78jcdTYX0

――――――――

勇者「このはっぱね、おうちのおにわにもはえてたよ」

勇者「いいにおいで、すき」

女「なんなら、うちの庭にも植えようか」

勇者「うん!」

女「さあ、早く行こう。びしょ濡れのままじゃ、風邪ひいちまうよ」

――――――――

香水屋「どうして胸を潰してるの?」

勇者「邪魔だからな」

香水屋「ちゃんとした下着、買わなきゃ駄目よ?」

勇者「うっせ」

香水屋「わたしのを貸してあげるわ。ほら、後ろ向いて」

勇者(何故こんなことに……)
82 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/15(水) 20:11:45.45 ID:78jcdTYX0

勇者「大体なあ! オレは男なんだぞ!」

香水屋「おっぱいあるのに?」ムニッ

勇者「ひゃひっ!」

勇者「ほら! ちんこだってついてんだぞ! パンツに女にはねえ膨らみあんだろ!」

香水屋「あら、でもそんなこと関係ないと思うなあ」

勇者(ええええええ……)

香水屋「それに、男の子だって別にいいわ。可愛くしたいもの!」

勇者(もう……もうどうにでもなれ……)
83 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/15(水) 20:12:16.52 ID:78jcdTYX0

勇者(ヒラヒラの可愛い服着せられちまった)

香水屋「三つ編み、解いてもいいかしら?」

勇者「好きにしろよ」

香水屋「三つ編みにすると、髪の毛にウェーブがかかって可愛いのよね」

勇者「オレは元々巻き毛気味だけどな」

香水屋「よーし、可愛くなった!」

勇者「……………………」

勇者(こんな格好を見たら、魔王の奴、なんて言ってくるかな)

勇者(って、何考えてんだよ、オレは)

勇者(そういやあいつ、オレのこと美少女とか言ってきやがったんだったな)

勇者(思い出したらイライラしてきちまった)
84 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/15(水) 20:12:55.08 ID:78jcdTYX0

香水屋「ねえ、どうして男の子みたいに振る舞ってるの?」

勇者「……昔さ、守りたい女がいたんだ。だから、立派な男になろうって、誓ったんだ」

――――――――

女「剣の稽古してるのかい? 精が出るねえ」

勇者「オレ、強い男になるんだ! そしたらメリッサを嫁にして、一生守ってやる!」

女「あはは! そりゃ頼もしいね!」

勇者「こんな町出てって、豊かな暮らしをさせてやるよ!」

女「楽しみにしてるよ、未来の旦那さま」

女「でもね、あんたはきっと、無理に男になんてなろうとしない方が――」

勇者「はっ! てやーっ!」

――――――――
85 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/15(水) 20:14:15.95 ID:78jcdTYX0

香水屋「こんなもんかしらね! 仕上げに香水を……甘めのをつけて、できあがり!」シュッ

勇者「…………」

香水屋「外に遊びに行きましょ!」

勇者「そっそれは流石に」

香水屋「ほら! 良い天気よ!」グイグイ

勇者「なあ、店はいいのか!?」

香水屋「いいの! 最近、お客さん、来てくれないから……」

勇者「?」

香水屋「でも大丈夫! 隣町に売りに行って、充分儲かってるから!」




勇者(落ち着かねえ……めっちゃヒラヒラする……脚もスース―するしよ……)

香水屋「この服屋さん、お気に入りなの。ほら見て見て! この服可愛いわ!」

勇者「おまえによく似合ってるよ。はあ……」
86 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/15(水) 20:15:27.61 ID:78jcdTYX0

村人1「おい、アルセアだぞ……」

村人2「普通に接しとけ」

勇者(なんか、村の連中がよそよそしいな)

香水屋「ここ、小さな村だけど、喫茶店があるのよ!」

勇者「地味だけど洒落てんな」

勇者(木の匂い。吊るされた花。素朴なインテリア。悪くねえ)

香水屋「わたし、カリン茶!」

勇者「……ローズティー」

香水屋「あとね、ケーキ2個!」

勇者「1人で2個も食うのか?」

香水屋「あなたの分よ! わたしの奢り!」

店員「カリン茶とローズティーがお1つずつ、ケーキがお2つですね」
87 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/15(水) 20:16:01.74 ID:78jcdTYX0

香水屋「ここに来るの、久しぶりだわ。1人じゃなかなか来る気になれなくて」

勇者「オレは喫茶店なんて生まれて初めてだよ」

香水屋「あら、そうなの?」

勇者「オレが住んでたところには、こんな店なかったからな」

香水屋「お茶、おいしいでしょ?」

勇者「まあ、そうだな」

香水屋「うふふ」

勇者「……なあ、なんでオレにこんな格好させたんだよ」

勇者「一緒に遊ぶお友達でも欲しかったのか?」

香水屋「それもあるけど、でもね……もっと大きい理由を聞いたら、あなたきっと怒っちゃうわ」

勇者「は?」

香水屋「お手洗い行ってくるね!」
88 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/15(水) 20:17:00.74 ID:78jcdTYX0

勇者「なんなんだよったく……」

村人3「アルセアの奴、魔族と取引してるってマジなのか?」ヒソヒソ

村人4「たらしこまれたって噂だぜ?」ヒソヒソ

村人5「親が死んで、寂しくてたまらなかったところをつけこまれたのね、きっと」

村人6「可哀想だけど、でも、ねえ……」

勇者(……なんだ、この噂)

勇者(オレは相手が悪人かどうかは雰囲気でわかる。あいつは魔族と取引するような奴じゃねえ)

勇者「チッ……」

村人5「あなた、この村には来たばかりでしょ?」

村人5「悪いことは言わないわ、あの子と付き合うのはやめなさい。危ないわ」

勇者「失せろメスブタ!」

村人5「きゃっ! 何よ、もう……」
89 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/15(水) 20:17:57.20 ID:78jcdTYX0

勇者(村の連中がよそよそしかったのは、この噂が原因か)

勇者(一体何処からあんな噂がわきやがったんだ)

香水屋「お待たせ!」

勇者「……おかえり」

香水屋「……」

香水屋「はやく食べきって、別のとこ行こっか!」




香水屋「あっちの丘は見晴らしが良くってね、あ、そっちからの眺めも良いの!」

勇者「…………」

香水屋「それから、ほらあそこ! あそこの料理屋さん、すっごくおいしいのよ!」
90 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/15(水) 20:21:16.20 ID:78jcdTYX0

村人6「なあ、あそこの銀髪の子、めっちゃ可愛くねえか?」

村人7「うっわ、やば……この世に舞い降りた天使様って感じだな」

村人6「1回でいいからヤラせてくんねえかな〜」

勇者「っ――」

香水屋「……どうしたの? 顔色、悪いわよ?」

勇者「気持ちわりぃ……」

香水屋「だ、大丈夫?」

勇者「男の視線……気持ちわりぃ……!」

村人6「ねえねえ君大丈夫? 肩貸そうか? なんならお姫様抱っこでも」

勇者「オレに近づくんじゃねえクソ短小チンコ野郎!!」

村人6「うわっなんだよ」

狼「ガルルルルルル……」

村人6「ひぃっ!」

香水屋「い、行こっかローゼ!」
91 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/15(水) 20:23:18.11 ID:78jcdTYX0

香水屋「ごめんね、無理矢理可愛い格好させちゃって」

勇者「…………」

香水屋「……男の人、苦手なの?」

勇者「あんな、ヤることしか考えてねえような連中、大っ嫌いだ」

――――――――

勇者「メリッサ! メリッサー! 肉が手に入ったんだぜ!」

勇者「スラムじゃ滅多に流通しないような良い肉が……メリッサ?」

女「くっ、うっ! 放せ!」

ゴロツキ1「今まで女だけで生きてきただけあって、随分良い物持ってるじゃねえか」

ゴロツキ2「全部俺達が頂いてくぜ」

ゴロツキ1「体の方もなかなかイイじゃねえか」

ゴロツキ3「楽しませてもらおうぜ」

勇者「!!」
92 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/15(水) 20:23:57.58 ID:78jcdTYX0

勇者「おまえら強盗か!? メリッサを放せ!」

ゴロツキ4「おっと、そういやガキを飼ってるんだったな」

女「その子に手を出すんじゃないよ!」

ゴロツキ1「出さねえよ、あんなガキ。おい、抑えとけ」

ゴロツキ4「へーい」

勇者「放せ! 放せよー!!」

ゴロツキ1「Cカップくらいか? お?」ムニムニ

女「くうっ……」

ゴロツキ2「尻も可愛い形してんなあ」

女「っ…………」
93 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/15(水) 20:24:32.35 ID:78jcdTYX0

女「あっああっうぐっああああ!」

ゴロツキ1「知ってるか? 首絞めながらヤルとすんげえ気持ち良いんだってよ」

女「はぐっ……っ……」

ゴロツキ2「まだ殺さねえでくだせえよ、皆で回したいっすからね」

勇者「放せ!! おまえら全員ぶっ殺してやる!!」

ゴロツキ4「黙れよ、うるせえぞ」

勇者「むぐっうううう!」

女「っ……っ……」

ゴロツキ1「締まりが良くなったな! ……うっ……ふう」

ゴロツキ1「よし、使っていいぞ」

ゴロツキ2「へへへ」

ゴロツキ3「上と下から咥えさせてやろうぜ」

ゴロツキ1「悔しいよなあ、ガキィ。こんな社会の膿みてえな連中に育ての親を犯されちまってよお」

勇者「……」キッ
94 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/15(水) 20:25:13.36 ID:78jcdTYX0

ゴロツキ1「女ってのはなあ、男に寄生しなきゃ生きていけねえ生き物なんだ」

ゴロツキ1「なのに、生意気にも女1人で暮らしてたからこんな目に遭うんだぜ」

勇者「女1人じゃない! オレがいる!」

ゴロツキ1「ガキなんて数える内にも入らねえよ! がははは!」

勇者「っ……」

ゴロツキ1「教えてやるよ。この町には法律も規律もねえ!」

ゴロツキ1「弱肉強食。それがこのスラム唯一のルールだ。がーははははははは!!」
95 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/15(水) 20:25:40.75 ID:78jcdTYX0

……………………
…………

勇者「メリッサ、メリッサ!」

女「良かった……生きてたんだね、あんた……」

勇者「血が……すぐ、すぐ医者を呼んできてやる!」

女「強く、生きるんだよ……何があっても、絶対に、生き残るんだ」

勇者「メリッサ!」

女「あんたと出会えて、あたし、生きてる証を……残せた……」

勇者「…………」

女「……ありがとう」

勇者「メリッサ……? メリッサ……嫌だ……そんな……」

勇者「あああああああああああああああああああああ!!!!」

――――――――
96 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/15(水) 20:26:15.06 ID:78jcdTYX0

香水屋「……男の人に、女の子として見られることが苦手なのね」

勇者「…………」

香水屋「……ごめんね」

勇者「…………」

香水屋「わたしは、ただ、あなたに……」

花屋「こんにちは、アルセアちゃん」

香水屋「ラーセアさん! こんにちは!」

花屋「ラベンダーの香り袋、1つお願いね。あれがあると、よく眠れるんだよ」

香水屋「はい、どうぞ」

花屋「あたしはね、村の連中がしてる噂なんて信じてないからね」

花屋「心配することはないよ、75日もすれば噂なんて消えちまうんだから! がんばるんだよ」

香水屋「……ありがとう、ラーセアさん」
97 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/15(水) 20:27:32.89 ID:78jcdTYX0

香水屋「……噂のこと、だけど……」

勇者「……なあ、水やりしなくていいのか?」

勇者「家の周りに生えてる草、大事な商売道具だろ」

香水屋「え、ええ。してくるわ」

勇者「手伝う」

香水屋「いいの、休んでて」

勇者「香水とケーキの礼、してえんだよ」

勇者(……不思議と、こいつのことは嫌いになってない)
98 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/15(水) 20:28:11.23 ID:78jcdTYX0



勇者(アルセアが魔族と取引してるなんて、あんなの絶対でたらめだ)

勇者(あんな、悪意の欠片も持ってねえような奴……)

勇者(……いや、騙されて協力させられている可能性もある)


   「それで……今日……」

   「そうか…………」


勇者(アルセアの部屋から、何か聞こえる。男の声だ)

香水屋「ああいけない、カーテン閉めなきゃ」

   「……もしかして、村の人達に俺の存在を知られたりは」

香水屋「大丈夫よ、デフィ!」

   「なら、いいんだが」
99 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/15(水) 20:29:28.45 ID:78jcdTYX0

香水屋「そのローゼって子とね、村にお出かけして、わたし、はしゃいじゃって……」

香水屋「はしゃぎすぎて、その子のこと、傷つけちゃった」

   「なら、明日は上手く仲良くできると良いな」

香水屋「ええ」

   「ああ、そうだ。これを」

香水屋「まあ、おいしそう! パウンドケーキね」

   「妹が、君の香水を大層気に入ってね。でも、君は俺と金銭のやり取りはしたくないんだろう?」

   「だから、礼にこれをと思って。妹と一緒に作ったんだ」

香水屋「嬉しいわ」

香水屋「……ねえ、今晩は、血、吸わなくていいの?」

   「……貧血になっていないか?」

香水屋「大丈夫よ」

   「じゃあ、少しだけ」

勇者(血……ヴァンパイアか!?)
100 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/15(水) 20:29:55.63 ID:78jcdTYX0

勇者(くっそ、アルセアをたぶらかしやがって!)

吸血鬼「今の魔王様は、親人間派なんだ。だから、いつかきっと、俺達が一緒になれる日が来る」

勇者「!」

香水屋「早くその日が来てほしいわ」

勇者「…………」

勇者(もし、こいつが本当に魔王の味方だったら……斬るわけにはいかねえな)

勇者(でも、アルセアを利用しているだけだったら……)

香水屋「もし、人間と魔族が仲良くできるようになったら……想像するだけでわくわくするわね」

勇者(アルセアの声……随分楽しそうだ。今は、邪魔しないでおこう)

香水屋「明日の晩も来てくれる?」

吸血鬼「ああ」
101 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2018/08/15(水) 20:30:40.03 ID:78jcdTYX0

翌朝

勇者(朝食……素朴だけど、美味い)

香水屋「これ、もらいもののパウンドケーキ。食べてみない?」

勇者「……」

勇者(……毒は入ってねえな。味も普通だ)

香水屋「……あのね、ローゼ」

香水屋「…………」

勇者「…………」

勇者「昨日さ、オレ、聞いちまったんだ。噂の内容」

香水屋「やっぱり、そうだよね」

勇者「おまえが魔族の男と話をしてるのもな」

香水屋「!」
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