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魔王「おまえは女だ」ふたなり勇者「認めねえ」
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388 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/01/03(木) 21:34:52.60 ID:GxLDwBO80
薬売り「ローズマリー――Rosmarinus(ロス・マリヌス)。海の滴」
薬売り「花言葉は『変わらぬ愛』そして『あなたは私を蘇らせる』。ロマンチックな名前だ」
薬売り「ちなみにバラや聖母マリアとは何も関係がない」
勇者「ふーん」
薬売り「結局……ってことは、性別に関して色々あったの?」
薬売り「つっても普通の女の子よりも水着がもっこりしてるのさっき見えちゃったんだけどね」
勇者「わかってんなら訊くなよ」
勇者「……どうせお前も好奇の目でオレを見てんだろ」
薬売り「そんなことないけど」
勇者「じゃあなんだ? 同情でもするつもりか? 冗談じゃねえ」
勇者「憐れまれるのも迫害されるのももう二度とごめんだ」
勇者「……こんな体じゃ、まともな人生送れねえことくらいわかってるけどよ」
薬売り「え、俺の妹両性具有だったけど普通に結婚して普通に幸せになってたよ」
勇者「は?」
389 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/01/03(木) 21:35:41.55 ID:GxLDwBO80
薬売り「しかもきょうだいの中で一番長生きした。毎日楽しそうだったな」
薬売り「もう五千年も前になるのか。懐かしいな……」
薬売り「この世界のことじゃないからあんまり参考にならないかもしれないけどさ」
勇者「……?」
薬売り嫁「エリウスさん、話についていけていらっしゃらないようですよ」
薬売り「あ、いっけね」
薬売り「まあとにかく、そんなに自分の体のことコンプレックスに思わなくていいんだよ」
勇者「…………」
薬売り「理解があって、傍にいてくれる相手がいるなら猶更だ」
390 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/01/03(木) 21:36:11.98 ID:GxLDwBO80
勇者「今夜はここで野宿か」
魔王「テントを張るぞ」
勇者「えらく準備が良いなお前」
薬売り嫁「エリウスさん、私達はあちらへ」
薬売り(何時間青姦することになるだろう)
魔王「なあ、ローゼ」
魔王「俺は、お前の体の性別がどうであれ、心の性別がどうであれ……」
勇者「……」zzz
魔王「あのな」
勇者(……そんな言葉、まともに聞けるかっつの)
勇者(こいつがオレのことを許してても、オレはまだ自分ことを許せてねえんだ)
勇者(そもそもこいつ攫われたお姫様のことを愛してるっつってたじゃねえか!)
勇者(どうせ、どうせオレなんて……)
魔王「寝るふりをするな。ほら、星が綺麗だぞ」
勇者「ん……」
391 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/01/03(木) 21:36:58.09 ID:GxLDwBO80
勇者「……ムラムラしてきた」
魔王「……俺もだ」
勇者「ヤるかあ、一晩中」
勇者(いつもより、少しだけ心が軽い)
魔王(それにしても、この地は淫の気に満ちているな)
魔王(淫魔が好む土地が各地に存在すると聞いたことがあるが、ここはその1つかもしれぬ)
――魔王様――
魔王(この声は……)
――聞こえる? 魔王様……――
魔王(何処かで聞いた声だ)
――ふふ。ふふふふふ!――
392 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/01/03(木) 21:37:52.88 ID:GxLDwBO80
つづく
393 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/01/05(土) 05:12:47.00 ID:+T0tRnwbO
おつ
世界線繋がっていたのか
あれ?でも魔王に関しては確かさくらんぼ騎士だったか勇者(5000年前)だったかが完全に封印したんじゃなかった?
別の魔族が魔王を名乗ってるとかそういうやつ?
394 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/01/05(土) 09:54:18.32 ID:T9/VeSFyo
この世界のことじゃないってエリウスが言ってるから繋がってないよ
395 :
◆O3m5I24fJo
[sage]:2019/03/04(月) 00:33:52.90 ID:KtP/2SVP0
更新滞っててすみません、更新の意思はあります
もう少々お待ちください
世界は前作とは別です(エリウス君夫婦は暇を持て余して異世界旅行してるだけ
396 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/03/04(月) 01:13:06.42 ID:fBG12OWzO
報告乙です
397 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/03/04(月) 06:07:26.34 ID:D9VX7CDVO
異世界旅行って半端なくパワーアップしてるやんか
398 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/03/07(木) 23:53:22.21 ID:apGiw0Rt0
Episode 16
魔王「……調べねばならないことができた」
勇者「なんだよそれ」
魔王「確証を得たら話そう。俺は城に戻る」
勇者「……そうか」
炎の神殿
勇者(あいつは神妙な顔をして家に帰った。それ以来姿を見せねえ)
勇者(よってオレは1人で炎の神殿を攻略しなければならない)
勇者(……心許ないって正直思っちまうけど、本当は魔王の力なんて借りずにこなさきゃいけねえんだもんな)
勇者(こんなことなら仲間を……いや、ガリィとあいつ以外の仲間がいたって煩わしいだけか)
399 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/03/07(木) 23:53:50.05 ID:apGiw0Rt0
勇者(モンスターはいるが、上級魔族の気配が全くねえ。不気味なくれえだ)
勇者(水の加護のおかげですいすい進むな。暑さも術で軽減できる)
勇者(……と思ったら謎解きだ)
勇者(ああーちくしょーこんなもん力でぶっ飛ばしてえー!!)
勇者(灯台が8つ並んでいる)
勇者(火を付けたら、たくさんあるブロックの内特定のものが連動して動く仕組みみてえだ)
勇者(んで、最終的にあそこにあるスイッチをブロックで押せと)
勇者(こういうのあいつ得意なのにな……なんとか自力でやるか)
一時間後
勇者(やっと解けた。疲れた……)
400 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/03/07(木) 23:55:28.11 ID:apGiw0Rt0
炎の大精霊「この我を打ち倒してみよ!」
勇者(めっちゃメラメラ燃えてやがる)
勇者(水の加護があるからって油断したら負けちまうな)
勇者「渦巻く波《ファーリング・ウェイブス》!」
炎の大精霊「この手程度の水では我を倒すことなど不可能!」
勇者「くそっ」
炎の大精霊「こちらからもいくぞ!」
勇者(でかいのが来る!)
勇者「大地の壁《アース・ウォール》!」
ピシピシ
勇者(嘘だろ……気を抜けば壁が破られる!)
401 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/03/07(木) 23:58:33.10 ID:apGiw0Rt0
勇者(火力が強すぎて水が大して効かねえ)
勇者(地属性の攻撃をしても強力すぎる炎に焼かれて威力が大幅に落ちるだろう。風は余計炎を大きくしかねない)
勇者(ちくしょう、どうすれば……)
勇者(炎の大精霊はパッと見た感じパワー型だからこっちもパワーで押せたらと思ったが、こっちの火力が足りなすぎる)
炎の大精霊「どうした。どうやら今度の勇者は知恵が足りぬようだな」
勇者(知恵……)
勇者(そういや、この部屋、妙に風通しがいいな。たくさんの穴から風が吹き込んでいる)
勇者(多分、精霊自身の力だけじゃなく、空気を使って炎を燃やしてるのかもしれねえな)
勇者(……よし)
勇者「四散する風《ディスパース》!」
ビュオオオオオオオオ!
402 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/03/07(木) 23:59:06.60 ID:apGiw0Rt0
炎の大精霊「ほう?」
勇者「てめえの周囲から可燃性ガスを取り除いた! 思った通り火力が弱まったな!」
勇者「いくぜ! 激流の滝《カタラクト》!」
ドオオオオオオオオオン!!
炎の大精霊「うぐあああああ!!」
勇者「うおう、小さくなったな」
炎の大精霊「げほっげほっ、まあ及第点といったところか」
炎の大精霊「もう少しじわじわ責めてほしかったのだが」
勇者「さてはお前マゾだろ」
炎の大精霊「汝に炎の加護を授けよう」
勇者(これで加護は4つ。残すは光の加護のみ……)
炎の大精霊「この力で敵をじわじわ嬲り殺しにするのだぞ」
勇者「神聖な大精霊様とは思えねえセリフだな」
403 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/03/07(木) 23:59:35.78 ID:apGiw0Rt0
炎の神殿前
勇者「……マジで魔族の妨害入らなかったな」
勇者(こんなにあっさり終わっていいのか……?)
狼「ワンワン!」
勇者「よしよしガリィ、しっかり獲物捕まえてくれていたんだな」
勇者「元々炎の魔術は使えっけど、せっかくだし炎の加護の力で調理してみるか」
ジュウゥゥゥゥゥ
勇者「おー、いつもより火の色が綺麗だ」
狼「へっへっへっへっ」
勇者「そろそろいいな。ほら、食え」
狼「♪」ガツガツガツ
勇者「うめー」
404 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/03/08(金) 00:00:19.86 ID:NEe1c2aZ0
魔王「おい、ローゼ!」
勇者「久しぶり……つっても数日ぶりか。お前も肉食うか?」
魔王「それよりこの新聞を見ろ!」
勇者「あ? ……!」
魔王「お前のいたスラムが国王によって焼かれることになった」
勇者「…………」
勇者(犯罪者の巣窟となり、城下町の住民の不安を煽っているため……か)
勇者(そうか、オレが旅立ったからあくどい連中を止められる奴がいなくなっちまったんだ)
勇者(しかも、城下町への抜け穴が多数作られ、実際に城下町に被害も出ている……と書かれてやがる)
405 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/03/08(金) 00:01:48.95 ID:NEe1c2aZ0
魔王「嫌なことが多かっただろうが、大切な者との思い出もあるだろう。止めたくはないか」
勇者(メリッサ……)
勇者「……国王の奴、自分勝手な理由で罪のない人間を大勢スラムに放り込んでおいて」
勇者「今度はそのスラムを潰すだと……?」
勇者「しかも、決行の日今日じゃねえか!」
魔王「すぐに向かうぞ」
勇者「ああ」
ヒュン
406 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/03/08(金) 00:02:16.65 ID:NEe1c2aZ0
城下町付近
魔王「城下町とスラムを直接繋ぐ道は細く、軍を率いて進むには適さない」
魔王「そのため、長らく閉ざされている平原側の門を使うらしい」
勇者「攻め入られる前に軍をぶっ潰してえところだが、ただ潰すだけじゃスラムの治安は悪いままだ」
勇者「どうにか交渉を持ちかけて約束取り決めさせねえと」
魔王「軍隊が見えてきたな。……先頭にいるのは国王か」
勇者「詳しくは知らねえけど、昔から自ら先陣を切ることで有名だったらしいな」
勇者「つっても、ここ数十年は城に引きこもってたはずだ。何考えてやがる……」
407 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/03/08(金) 00:03:04.53 ID:NEe1c2aZ0
勇者「王様自ら出向くなんていい度胸してるじゃねえか!」ザッ
国王「勇者ローゼ、何故ここにおるのだ。怖気づいて逃げ帰ってきたのか?」
勇者「てめえがスラムの人間を殲滅するって聞いて飛んできてやったんだよ!」
国王「ほう? ……そちらのローブの男は、もしや魔王ではあるまいな」
勇者「あ? だったらなんだよ」
国王「討伐対象と徒党を組んでいるという噂は真だったようだな」
国王「お前を勇者として送り出したのは間違いであった。愚か者め」
勇者「うるせえ! 大体なんで老いぼれたお前がわざわざ先頭に立ってんだよ!」
国王「国の平和を脅かす愚民共をこの手で征伐してやりたくなってな」
勇者「人間ぶった切って憂さ晴らししてえだけじゃねえのかよ」
勇者「スラムを焼いたら世界救ってやんねーからな!」
国王「ふん、お前のような堕ちた勇者に頼ろうとした我等が間違っていたようだ」
勇者「チッ……」
魔王「そう喧嘩腰になるな」
408 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/03/08(金) 00:03:35.65 ID:NEe1c2aZ0
魔王「…………」
大将「そこの男、フードを外せ」
魔王「……失礼をしたな」
大将「やはり魔ぞ…………っ!?」
国王「なっ……」
中将「あれではまるで……」
勇者「ん?」
勇者(老人共が魔王を見てざわついてやがる)
409 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/03/08(金) 00:06:25.01 ID:NEe1c2aZ0
国王「お前は……お前は、真に魔王か?」
魔王「ああ」
国王「……いつから魔王になった」
魔王「1年前だ」
国王「……齢はいくつだ」
魔王「……17だ」
国王「…………」
国王「おのれ……おのれ……!!」
勇者「お、おい、顔真っ青にしてブルブル震え出したぞ」
魔王「…………」
410 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/03/08(金) 00:08:35.41 ID:NEe1c2aZ0
大将「陛下……」
国王「…………」
国王「……シルヴィアはどうなった」
魔王「……7年前に亡くなった」
国王「…………」
魔王「彼女は病にかかり、命が尽きるのなら王家の墓に入りたいと呟いていた」
シュン
魔王「これは彼女の棺だ」
国王「お……お……」
大将「陛下、騙されてはなりませぬ! 魔族などを信じては」
ギィ……
魔王「……術で、生前の姿を保ってある」
国王「……これは、確かに我が娘だ」
勇者(こっからじゃ見えねえな)
411 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/03/08(金) 00:09:38.35 ID:NEe1c2aZ0
国王「躯となって帰ってくるなど……このようなことがあってたまるものか……」
国王「先代の魔王はどこにいる」
魔王「昨年、崩御した」
国王「…………」
国王「もう……あれほど憎んだ相手は……この世にはおらぬと……」
魔王「もう1つ、返さねばならないものがある」
勇者「お、おい、それ聖銀の鏡じゃねえか」
勇者「今返しちまっていいのかよ。スラムなんかのためじゃなくて、他に使いどころあんだろ」
魔王「……これでいい」
国王「…………」
国王「お前の目的はなんだ」
魔王「あなたに、元のような名君に戻ってほしい」
412 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/03/08(金) 00:10:05.86 ID:NEe1c2aZ0
魔王「彼女はずっと、良き王であるあなたのことを慕っていた」
魔王「今のあなたを見て、きっとあの世で涙を流しているだろう」
国王「…………」
魔王「罪もなくスラムに追いやられた民の解放と、スラムの治安の改善を頼みたい」
国王「……そうか、そうだな……」
大将「国王陛下」
国王「シルヴィア……私は……」
国王「…………」
413 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/03/08(金) 00:11:13.29 ID:NEe1c2aZ0
国王「……若き魔王よ。もう1つ、問いに答えよ」
国王「我が娘は……お前を愛していたか?」
魔王「……深く、愛してくれた」
国王「……そうか」
勇者(やべえ、話の流れが全然読めねえ)
勇者(なんでそんなこと聞いたんだ)
勇者(つか、両想いだったのかよ)
国王「……城に戻るぞ」
大将「……よろしいのですね」
国王「…………うむ」
414 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/03/08(金) 00:12:36.14 ID:NEe1c2aZ0
魔王「……ふう。なんとかなったな」
勇者「なあ……」
魔王「なんだ」
勇者「オレ要らなかったんじゃないか?」
魔王「俺一人では流石に心細いだろうが」
勇者「魔王様の台詞かよそれ」
魔王「それに俺は歴代最弱クラスの魔王だからな」
魔王「お前無しでは人間に攻撃され、最悪の場合封印の術をかけられていた可能性もある」
魔王「俺にはお前が必要だったのだ」
勇者「そ、そうかよ……」
勇者「…………」
勇者「……スラムのこと、ありがとな」
魔王「俺は俺のやりたいことをやっただけだ」
415 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/03/08(金) 00:13:08.36 ID:NEe1c2aZ0
勇者(そういや、なんで老人共はこいつの顔を見てざわざわしてたんだ?)
勇者(人間みてえな見た目だから……ってだけじゃなさそうだったが)
勇者「……あー!!」
魔王「なんだ」ビクッ
勇者「思い出した。お前に似てる昔新聞で見た絵、あれ若い頃の王様の版画だ」
勇者「だから若い頃の王様を知ってる老人達はお前を見てびっくりしてたんだな」
魔王「……そういうことになるな」
魔王「ところでローゼ、唐突ですまないのだが」
勇者「なんだよ」
416 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/03/08(金) 00:13:46.48 ID:NEe1c2aZ0
魔王「戦いが厳しくなる前に、はっきり気持ちを伝えておこうと思う」
魔王「俺は、お前が好きだ。だから……」
勇者「あ、うー……」
勇者「だ、大体お前、お姫様のこと好きだっただろ!」
勇者「さっきだってあんなに切なそうに喋ってたしよ!」
魔王「ちょ、ちょっと待て」
魔王「若かりし日の国王と俺が瓜二つであることには気づいておいてお前はまだ」
勇者「オレのことが好きだなんて絶対なんかの錯覚だっての!!」
魔王「いいか、シルヴィア姫は、俺の母だ!」
勇者「……は?」
魔王「俺が国王と似ているのは血が繋がっているためだ」
勇者「いやでもお前純魔族じゃん」
魔王「半魔や人間であっても、純魔族の生き血を啜ることで純魔族と同等の力を得ることができるのだ」
魔王「成功したらの話だがな。……俺は父の血を飲んだ」
勇者「…………」
417 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/03/08(金) 00:14:14.10 ID:NEe1c2aZ0
勇者「……お前が貧弱なのって」
魔王「半分が人間だったからだ」
勇者「…………」
魔王「幼い頃は、母から受け継いだ聖なる血と、父から受け継いだ闇の血が反発し合い、とても体が弱かった」
魔王「純魔族に近い体となった今でも、年齢的は魔族としては幼児同然だ」
魔王「もう100年もすれば違ってくるだろうが……まだ力が足りぬ。部下にも子供扱いされる始末だ」
勇者「…………」
魔王「話が反れたな。とにかく、俺はお前のことを愛している」
勇者「……お前の母ちゃんとオレって横顔が似てるんだろ!」
勇者「お前はオレに母ちゃんの面影重ねてるだけだって!」
魔王「似ても似つかぬわ!!」
勇者「似てるっつったのお前じゃねえか!」
魔王「ええい! 愛されることから逃げるな!!」
勇者「逃げてえよ!!」
418 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/03/08(金) 00:16:34.21 ID:NEe1c2aZ0
魔王「ローゼマリア!」ガシッ
勇者「っ……!」
魔王「……返事はすぐでなくていい」
魔王「ただ、俺はまだ未熟だ。どうか、俺の剣として共に戦うことは、今改めて誓ってくれぬか」
勇者「お前が欲しい剣って主にオレの股間の剣じゃねえの」
魔王「このタイミングでそのようなことを言うな」
勇者「……もらったメシの分と、オレの罪の分は、戦ってやるよ」
魔王「罪の分はいい。……抱いてくれるのなら」
勇者「……オレなんかの何処が良いんだよ」
魔王「お前は、俺にはない強さをもっている。単純な力の強さだけではない」
魔王「どのような環境でも生き抜く、生命としての強さだ」
魔王「激しく煌めく、光を受けた飛沫のような輝きを秘めたお前に、俺の心は惹かれてやまない」
勇者「…………」
勇者(…………ばかやろ)
勇者(いいや、バカはオレか……)
419 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/03/08(金) 00:17:08.81 ID:NEe1c2aZ0
tsuduku
420 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/03/08(金) 09:39:18.17 ID:58rFywFAo
otu
421 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2019/03/08(金) 14:35:07.64 ID:QwQDTne5O
kitai and hosyu
422 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/04/14(日) 21:26:42.53 ID:kx/kzcQp0
Episode 17
浜辺
薬売り「青い空。白い雲。美しい――――俺っ!」
薬売り嫁「こんな日は青姦が捗りますね♪」
薬売り「ちょっと待ってっユキっあっあっあっあっあっあーーーーーーーーー!!!!」
勇者「海ってこんなにでっけえんだなー」
魔王「見るのは初めてか?」
勇者「そうだな。絵では見たことあったけどよ」
魔王「……今日の水着、自分で選んだのか?」
勇者「いいや、店のねーちゃんだ」
魔王「似合ってるぞ」
勇者「そういうお前はパーカー羽織ってんだな」
魔王「……他人に晒せる胸じゃなくなってきたからな」
勇者「ビーチで晒せねえビーチクにしちまったな、なんつて」
魔王「…………」
423 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/04/14(日) 21:28:00.69 ID:kx/kzcQp0
勇者「お、あそこに店あんぞ」
魔王「いわゆる海の家とかいうものか。何か食うか?」
勇者「そうだな」
勇者「焼きそばうめー」
魔王「このお好み焼きというものもなかなか」
店員「お待たせしました焼き鳥30本です!」
勇者「うんめえええ!」
店長「いい食べっぷりだねー! 6本サービスするよ。串は36本じゃないとねえ」
勇者「さんきゅーな」
魔王「では焼いた豚の肉を18枚頼む」
店員「はーい」
店長「お客さん勇者様でしょ? これから光の神殿行くの?」
勇者「ああ」
店長「あそこはねえ……」
勇者「なんかやばいことでもあんのか?」
424 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/04/14(日) 21:29:03.53 ID:kx/kzcQp0
店長「わたしの若い頃にねえ、先代の勇者様が光の神殿に向かったんだけどねえ」
店長「戻っては来られたものの、目から光が消えていたんだよ」
店長「まるで、生気を失ったようにね」
勇者「へえ。そういや先代勇者の話、興味なかったから全然知らねえな」
勇者「どんな奴だったんだ?」
店長「いやあ、素晴らしいお方だったよ。正義の化身と呼ぶに相応しい勇者だった」
店長「人格者とはあのような人のことを言うのだろうね。優しさに溢れていて、出会った者すべてに勇気を与えてくださった」
勇者「オレとは正反対だな」
魔王「……」
425 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/04/14(日) 21:29:40.67 ID:kx/kzcQp0
勇者「光の神殿から帰ってきてからは何で目から光が消えてたんだよ」
店長「さあねえ……」
魔王「光の神殿の試練は、精神を試すものだと聞いている」
魔王「余程精神の負担のかかる試練だったのかもしれぬな」
店長「先代の勇者様の唯一の欠点は、優しすぎることだと言われていたが……」
店長「その優しさもすっかり失われていたそうだよ」
勇者「優しさかあ、失ったところでオレは大して変わんねえだろうな」
魔王「いや、俺は困る……」
勇者「んで、先代の勇者は結局どうなったんだ?」
店長「当時の魔王と戦って破れたものの、深手を負わせることはでき、一時的にだけれど平和が訪れたよ」
勇者「そっか」
426 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/04/14(日) 21:30:07.53 ID:kx/kzcQp0
店長「そうだ、これを持っていくといい」
勇者「宝石かこれ」
勇者(ふんわりした白さだ。丸く磨かれている)
店長「先代の勇者様が置いていったものだよ。内なる光の目覚めさせる効果があるとされる」
店長「『自分ではこの石を使いこなすことができなかった』……そう言い残していかれたよ」
勇者「へえ」
店長「無事に戻ってこられたら、またここに来ておくれよ。たっぷりサービスするからねえ」
勇者「ああ。じゃあまたなじーさん」
427 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/04/14(日) 21:31:02.79 ID:kx/kzcQp0
勇者「きれいだなーこの石」
魔王「水晶の一種のアゼツライトだな。お前の故郷近くの鉱山で多く産出される」
魔王「己の内なる光を目覚めさせる効果があるとされており、」
魔王「王家の人間の好んで身に着けるそうだ。俺の母も持っていた」
勇者「へえ」
勇者「……お前の家族の話、聞きてえな」
魔王「家族の話……か」
勇者「嫌だったらいいけど」
魔王「いや、構わぬ。語ろう」
428 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/04/14(日) 21:31:36.36 ID:kx/kzcQp0
魔王「父は元々人間への嫌がらせのつもりで、人間から王家の神器と母を奪った」
魔王「しかし父は母の美しさに心をすっかり奪われてしまい、」
魔王「それ以来、積極的に人間の国に攻め込むことはしなくなった」
魔王「腑抜けてしまったと家臣や国民に罵られても、全く意に介さないほどだった」
勇者「よっぽどだな」
魔王「やがて俺が生まれたが、母は心を弱らせたことで病に罹った」
魔王「父は、母を生き長らえさせるために母を魔族にしようとした」
魔王「だが、母は決して父の血を飲もうとはせず、人間のまま逝った」
魔王「彼女は俺のことは愛してくれたが、最期まで父のことは愛さなかった。まあ、当然だろうな」
魔王「母を失ったことで父も心を弱らせた。だが、死を望んでも、不死の力がある限り死ぬことは叶わない」
魔王「だから、俺に魔王としての力を受け継がせ、自ら死を選んだ」
429 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/04/14(日) 21:32:54.78 ID:kx/kzcQp0
勇者「な、なんかいい思い出ねえの……?」
魔王「そうだな……幼い頃、父からはよく頭を撫でられた」
魔王「その手の大きさに俺はいつも憧れていた」
魔王「いつか父のように偉大な魔族になることが夢だったな」
勇者「過去形なのかよ」
魔王「人間の血が混じった俺ではな……だが、父から教わった魔族の、魔王の誇りは今でも忘れてはいない」
勇者「ふうん」
魔王「母からは人間の民謡や物語を教わった」
魔王「魔族のものとは性質の異なる話から、よく似たものまで、様々だった」
魔王「俺は母の話を聞いて、いつか人間と友達になりたいと思った」
魔王「よく似た物語があるのなら、きっと心の在り方も似ていて、わかり合える日が来ると信じた」
魔王「それに、母も魔族と人間の争いがなくなることを望んでいた」
430 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/04/14(日) 21:33:25.20 ID:kx/kzcQp0
勇者「実際問題難しいだろうけどな」
魔王「……そうだな」
魔王「家族といえば……カルブンクルスも家族ではあるが、良い思い出はないな」
魔王「俺が後継者に選ばれたため、それまで次期魔王として育てられていたカルブンクルスは当然反発した」
魔王「そうでなくとも、人間との混血の異母弟の存在など目障りでしかなかっただろう。時折顔を合わせる度に俺は奴からいじめられていた」
勇者「んで部下も真っ二つに割れちまったんだな」
魔王「ああ」
勇者「でもお前、親からはしっかり愛されてたんだな」
魔王「だからこそ、俺は魔族と人間の両方を守りたい」
431 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/04/14(日) 21:33:54.94 ID:kx/kzcQp0
勇者「光の神殿ってのはあそこの島にたってる建物だろ?」
魔王「ああ」
魔王「勇者の覚醒を防ぐべく、魔族の多くの幹部があの神殿に侵入したが、」
魔王「誰一人として戻ってはこなかったと言われている」
勇者「は? こっわ」
魔王「しきたりで勇者本人しか入れぬことになっているため、今回ばかりは俺が同行することもできない」
魔王「……健闘を祈る」
勇者「マジかよ、まあ仕方ねえか」
魔王「…………」
勇者(めっちゃ心配そうな顔してやがんな)
勇者「……」バシャッ
魔王「つめたっ……いきなり何をする」
勇者「せっかく海に来たんだから海水浴しなきゃな!」
魔王「この! やり返してやる!」バシャバシャ
勇者「はははっ!」
432 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/04/14(日) 21:34:46.86 ID:kx/kzcQp0
勇者(夜まで遊んで、装備を整えて、宿に入った)
勇者(明日、オレはちゃんと試練をこなせるんだろうか)
勇者(……こなしてみせる)
勇者(ロディア達のためにも、贖罪のためにも……)
魔王「……なあ、ローゼ」
勇者「抱いてくれとか言うなよ。オレ疲れてんだ」
魔王「…………」
勇者「……上で腰振ってる分には構わねえけど」
魔王「……悪い」
魔王「俺は、お前という存在を、熱を、感じたい。確かめたい」
魔王「お前を失うのが、恐ろしくて……」
勇者「…………」
433 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/04/14(日) 21:35:22.36 ID:kx/kzcQp0
翌日
勇者「今までで一番厳かな神殿だな」
魔王「……本当に、気をつけろよ」
勇者「大丈夫だっての。そういやお前、調べ物はどうなったんだよ」
魔王「部下に調査を進めさせている。まだ不確定要素が多いため、下手なことは言えないが……」
魔王「もしかすると、朗報を持ってこられるかもしれぬ」
勇者「そうか。じゃあ期待しすぎねえ程度に期待しとく」
狼「くぅーん……」
勇者「良い子で待っててくれな、ガリィ」
434 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/04/14(日) 21:35:51.85 ID:kx/kzcQp0
光の神殿内部
勇者「何が光の神殿だよ、真っ暗じゃねえか」
勇者(不自然なほどに暗い。外から見た時は窓があったのに、全く光なんて差し込んでねえし、)
勇者(炎をつけても一寸先も見えやしねえ。静かで音もしない)
勇者「おい光の大精霊、いるんなら返事しろ」
勇者「……反応なしかよ、くそ」
魔物「ガルルルル……」
勇者「ま、魔物!?」
勇者(不気味だ。相変わらず真っ暗なのに、魔物の姿がぼんやりと見える)
勇者(目を閉じた時に瞼の裏に見えるような、不気味な色と模様だ)
魔物「ガウッ!」ダッ
勇者「失せろよ」ザシュ
魔物「ガフッ……」
魔物「…………」
魔物の子「クーン、クゥーン!」
勇者(子供……何処からわいてきやがった)
435 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/04/14(日) 21:36:19.68 ID:kx/kzcQp0
勇者「一緒に天国に送ってやるよ」ザンッ
魔物の子「キャイイッ――」
勇者「……はあ」
魔族の男「勇者だ! 勇者が来たぞ! ついに我等を滅ぼしに来たのだ!」
魔族の女「私達はただここに住んでひっそりと暮らしているだけなのに!」
勇者「はあ!? つうか何で神聖な神殿の中に魔族なんて……」
魔族の男「ここは俺が食い止める! お前は子供たちと一緒に逃げろ!」
勇者「意味わかんねー! お前等が何もしなけりゃオレは別に」
魔族の男「はああああー!!」
勇者「ちょっと待てっての」
魔族の男「うっ」バタリ
勇者「お、おい、軽く攻撃しただけだぞ。死ぬわけなんて……」
魔族の女「いやあああああ!」
魔族の女「よくも……よくも!」
勇者「なんなんだよ!」
436 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/04/14(日) 21:37:10.39 ID:kx/kzcQp0
魔族の女「……」
勇者(こいつも剣の柄頭で軽く打っただけで死にやがった)
勇者(……もしかして……加護の力の影響か……?)
魔族の子供1「うわあああああん! お父さん! お母さーん!!」
魔族の子供2「うええええええええええん!!」
勇者「うるせえな!!」
勇者(人間に家族を殺された魔族の子供は、成長すると人間を攻撃するようになる)
勇者(可哀想だが、こいつらもあの世送りだ)
437 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/04/14(日) 21:37:45.99 ID:kx/kzcQp0
勇者(後味わりいなクソ……)
ロー……ローゼ……ロー……ゼ……
勇者「っ!? この声……」
女「ローゼ!」
勇者「メリッ、サ……?」
勇者「嘘だろ、お前……死んだはずじゃ……埋葬だってオレが……」
勇者(ぼやけていた姿が、段々はっきりと見えてきた)
勇者(綺麗な、死ぬ前の、メリッサだ)
勇者「幻か……?」
女「あたしは確かに死んだよ。でも、ここが特別な場所だっていうのは知ってるだろう?」
女「幽霊ではあるかもしれないけど、幻じゃないよ」
勇者「本当に……」
女「大きくなったねえ、ローゼ。こんなに立派になるなんて」
勇者「メリッサ! メリッサ!!」
438 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/04/14(日) 21:38:20.95 ID:kx/kzcQp0
女「大変だっただろう? 一人で生きるのは」
勇者「全然平気だったぜ! それに、ガリィが傍にいてくれるからな」
女「強がらなくていいんだよ」ギュウ
勇者「っ……」
勇者「触れる……温かくはねえけど……」
女「ねえ、お願いがあるんだよ」
勇者「なんだ?」
女「あんたが持ってる勇者の加護の力、あたしにくれないかい?」
勇者「は?」
女「その力さえあれば、あたしは体を手に入れ、再び現世で生きることができるんだよ」
女「あんたとずっと一緒にいられるんだ」
勇者「そんなことできるわけねえだろ。これは、敵をぶっ倒すのに必要な力なんだ」
439 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/04/14(日) 21:38:54.35 ID:kx/kzcQp0
女「あんたなら、加護の力なんて無くたって戦えるさ」
女「それに、あんたは元々世界平和なんて考えちゃいなかったじゃないか」
女「無理に勇者の役目を背負わなくなっていいんだよ」
勇者「…………」
女「なんなら、あたしと一緒に世界の端っこまで逃げようか。大精霊様から、安全に暮らせる場所を教えてもらったんだ」
勇者「……それは無理だ。今のオレには戦う理由がある」
女「そっか……じゃあ、あたしを殺しておくれ」
勇者「は? 今、なんて……」
女「あたしを殺さなきゃ、あんたは先に進めない。ここはそういうシステムでできてる」
勇者「意味わかんねえよ!」
女「あたしの霊を壊すんだよ。そうすれば、あたしという存在は完全に消え去るけれど、その代わりあんたは先へ進める」
勇者「ふざけんな! 見殺しにするのだってつらかったのに、この手で直接殺すなんてできるわけねえだろ!」
女「あたしを蘇らせるか、殺すかの、2択だよ」
勇者(こんなの……こんなのどうしろってんだよ……!)
440 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/04/14(日) 21:39:59.95 ID:kx/kzcQp0
tsuduku
osokute gomenn nasai.....
441 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/04/14(日) 22:42:22.08 ID:XONf5OIco
>>440
お疲れ様。
気にすんな
442 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/04/14(日) 23:53:44.84 ID:G1B6MXI30
>>440
待ってました〜!
どうぞ、ゆっくりと続けてください
443 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/04/15(月) 00:08:20.71 ID:wOn12kwlo
おつ
まってた
444 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/04/15(月) 12:36:10.66 ID:lp3MZD4hO
乙乙
445 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/04/17(水) 23:34:42.22 ID:5RjIV0Mm0
Episode 18
女「ねえ、一緒に生きようよ。あたしと」
女「ずっとそうしたかったんだろう? あたしのこと、守りたかったんだろう?」
勇者「…………」
女「ローゼ……」ギュ
勇者「…………」
勇者「……死んだ奴は蘇らない。決して」
勇者「精霊の加護の力にもそういった性質はない。この力を身に纏っているからよくわかる」
勇者「こんなの、結局嘘っぱちだ」
女「そんなことないよ」
勇者「いいや。不可能だ」
勇者「……精神にクる試練って、このことだったんだな」
446 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/04/17(水) 23:35:39.57 ID:5RjIV0Mm0
女「あたしを斬れるかい?」
勇者「……とっくの昔にお別れした相手と、また別れるだけだ」シャキン
女「そうかい。じゃあ、これで本当にお別れだ」
勇者「っ……」
勇者「メリッサ……」
勇者(メリッサを殺さないと、オレは目的を果たすことはできない)
勇者(あいつとの約束を守れない)
勇者(やってやる。やってやるさ)
勇者(今、オレにとって一番大切なのは、メリッサじゃない。魔王との約束だ)
勇者「……うおおおおおおおおお!!」
ザンッ
447 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/04/17(水) 23:36:09.32 ID:5RjIV0Mm0
勇者「…………」
女「ロー……ゼ……」
女「……ろぉ…………」
女「――――」
勇者「っ…………」
勇者「あああああああああああああああああ!!!!」
勇者「メリッサ! メリッサー! オレは、オレは!!」ガタガタ
勇者(手が震えて、剣を握れない)
勇者(胃の辺りから体の芯を握り締められたような変な感覚が込み上げる)
勇者(メリッサは消え去った。オレは先へ進める)
勇者(これで正解だったのか?)
魔王「おい、大丈夫か?」
勇者「えっ……お前、何でいるんだよ。いつの間に……」
448 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/04/17(水) 23:36:43.14 ID:5RjIV0Mm0
魔王「魔族の俺が人間のしきたりを守るような道理なんぞないからな」
魔王「心配だから後を追ってきたのだ」
勇者「魔王、オレ、オレ…………」
魔王「……しかし、見損なったぞ。愛する恩人に刃を向けるとは」
勇者「なっ……」
勇者「でっでもっ、仕方ねえだろ! メリッサを殺さなきゃオレは光の加護を得られねえんだから!」
勇者「文句ならこのシステム作った奴に言えよ!」
魔王「彼女を斬らず、光の大精霊のもとへ殴り込みに行くくらい、お前ならできたはずだ」
勇者「え……」
魔王「大切なものを天秤にかけ、そのどちらかしか選ぶことができないようでは、勇者と呼ぶに相応しくないな」
449 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/04/17(水) 23:37:09.83 ID:5RjIV0Mm0
勇者「オレは……お前のために……」
魔王「俺を言い訳に使うな」
勇者「…………」
魔王「どうやら俺の見込み違いだったようだ」
勇者「お、お前そんなこと言う奴じゃなかっただろ!?」
魔王「何を勘違いしている。俺は、お前の力を必要としていただけだ」
魔王「だからお前に媚びを売り、お前が罪を犯したことを利用して罪悪感を植え付け、お前が俺の思うとおりに動くよう仕向けていた」
魔王「だが、お前のような人間が光の加護を得られるとは思えぬ」
魔王「世界のことは俺一人でどうにかする」
勇者「お、オレに抱かれてたがってたのも嘘だっていうのかよ!」
魔王「お前は勇者に相応しい人格の持ち主ではないということは、最初からわかっていたが……」
魔王「ここまで愚かとはな」
勇者「なっ……ど……して……」
450 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/04/17(水) 23:38:22.84 ID:5RjIV0Mm0
魔王「さらばだ」
勇者「ちょっと待てよ! 嫌だ!」
勇者「オレ……オレっ……お前のことっ……」
魔王「俺がお前を恨んでいないと思うか?」
勇者「っ……」
魔王「……」
ザシュ
勇者「うっ……づぅっ……!」
魔王「もう二度と俺の前に顔を見せるな」
勇者「まお……」バタリ
451 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/04/17(水) 23:38:56.51 ID:5RjIV0Mm0
勇者(血が止まらねえ)
勇者(オレは……死ぬのか……?)
店主「目が覚めたかい?」
勇者「あれ……オレは……」
店主「覚えていないのかい?」
店主「勇者様は無事試練を乗り越え、ここに戻ってきたものの、満身創痍でねえ」
店主「三日間眠り続けていたんだよ」
勇者「途中から記憶がねえ……」
452 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/04/17(水) 23:39:32.59 ID:5RjIV0Mm0
狼「くぅーん」
勇者「ガリィ……」ワサワサ
店主「勇者様が眠っている間にねえ、大変なことになったよ」
店主「魔族領で激しい内乱が起こったんだ」
店主「魔炎帝とかいう魔王の異母兄が、魔王の座を狙っているとかでねえ」
勇者「魔王が危ねえ……!」
勇者(でも、オレはもうあいつに……)
勇者(……そんなこと知るか。借りを作ったままなんて冗談じゃねえ)
勇者(タダ飯喰らいになるくらいなら、あいつにどんだけ疎まれようが、剣を向けられようが、戦ってやる)
453 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/04/17(水) 23:40:29.53 ID:5RjIV0Mm0
――――――――
――
魔王城
魔炎帝「今日こそ渡してもらうぞ。不死の力を!」
魔王「カルブンクルス……!」
勇者「おい魔王!」
魔王「ローゼ、何故来た!」
勇者「オレ、光の加護を手に入れたんだぜ!」
魔王「光の加護? 中途半端に陰りがあるではないか」
勇者「え……」
魔王「光の加護は、真に相応しい者でなければ使いこなすことはできぬ」
魔王「加護の力をあてにするのではなく、己の中の光を目覚めさせなければ――」
魔炎帝「お喋りはそこまでだ」
魔炎帝「紅蓮の炎《ローリング・フレイム》!」
勇者「させるか!」
勇者(水の壁に光の加護の力を付加して完全に遮断する!)
454 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/04/17(水) 23:41:17.51 ID:5RjIV0Mm0
勇者「お前がオレのことを捨てたってなあ! オレは約束を反故にはしたくねえんだよ!」
魔王「……まったく、お前という奴は……」
魔炎帝「残念だったな、炎はおとりだ」
勇者(こいつ、いつの間に背後に!)
魔炎帝「我に従え! 絶対服従《アブソリュート・オビディエンス》!」
魔王「ぐあっ……」
勇者「魔王!」
魔炎帝「……くくっ……ふはははは! これでついにグラナティウスは我が手に堕ちた!」
魔王「…………」
勇者「こんなの、オレの光の力で……!」
勇者「き、効かねえだと……!?」
勇者(オレの力が……不完全だから……?)
455 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/04/17(水) 23:42:05.81 ID:5RjIV0Mm0
魔王「ローゼ……お前は本当に、邪魔な奴だな」
ザシュッ
勇者「うっ……またお前に刺されるなんて……」
魔炎帝「其奴を殺さぬ限りこの術は解けぬぞ!」
勇者「……そうかよ……」
勇者「なあ、お前、この世界の平和を望んでたよな」
魔王「平和などくだらぬ。混沌こそ魔族の進化を生み出す。世にもたらされるべきは戦乱だ」
勇者「……きっと、本当のお前は、オレに斬ってもらうことを望むだろうな」
勇者「今度こそ、お前の命を奪うことになるけど……生まれ変わったら、その時はまた会おうな」
456 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/04/17(水) 23:42:33.78 ID:5RjIV0Mm0
魔王「――――」
勇者「……オレが本当の勇者だったら、世界もお前も、両方助けられたんだろうな」
勇者「ほんと、お前が言った通り……オレは、勇者に相応しくねえ」
魔炎帝「ふはははは! 本当に斬り殺すとはな!」
勇者「てめえのことは……ぜってえ許さねえ!」
魔炎帝「その傷で戦えるのか?」
勇者「……」
勇者(光の神殿で負った傷もまだ治ってねえ。さっき斬られた箇所からは血が流れ続けている)
勇者(だめだ、視界が……)グラリ
魔炎帝「できれば貴様のことは計画に利用したかったが、やむを得ぬ。ここで死んでもらおう」
勇者「……てめえなんかに……!」
457 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/04/17(水) 23:43:12.36 ID:5RjIV0Mm0
勇者(あー……負けちまった)
勇者(今度こそオレは死ぬんだろうな)
コロコロ……
勇者(石……海の家の店長からもらったやつ……)
勇者(己の内なる光を目覚めさせる力があるんだっけか……光ってなんだろうな)
勇者(光……眩しくて、暖かくて……)
勇者(力……太陽……魂……希望……)
勇者(光は、闇を照らしてくれるもの……)
勇者(オレにとっての光はメリッサで、メリッサが死んでからは……魔王が……)
勇者(その光を、オレは自ら掻き消した)
勇者「…………」
勇者(いいや、オレの心を照らしてくれる奴がいなくたって、オレは生きていけたはずだ)
勇者(つうか、まだ生きていてえな……)
勇者(何があっても、絶対に生き残る。メリッサが死んで以来のオレの信念)
勇者(……オレにとっての光は、他者ありきの光だけじゃねえ!)
勇者(どんなに辛くても、生きて、生きて、生き抜いて、生きていける世界にすること)
勇者(それがオレの光だ!)
458 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/04/17(水) 23:43:52.06 ID:5RjIV0Mm0
勇者(痛みが引くと同時に、視界が闇で包まれた)
勇者(……光が見える)
光の大精霊「よくぞ光を見つけ出したな」
勇者「……光の大精霊様か」
光の大精霊「どれほどの絶望に呑まれようとも、己の光を見つけ出すこと」
光の大精霊「それがこの光の試練だったのだ」
勇者「趣味わりぃよ」
光の大精霊「世界のために迷わず剣を振るうことができるのかも試していたからな」
光の大精霊「悪夢以上の悪夢ではあっただろう」
勇者「全部、幻だったんだな」
光の大精霊「うむ。汝は恩人の霊など斬ってはおらぬし、愛する者を殺してもおらぬ」
勇者「……はあ」
光の大精霊「この試練を乗り越えた歴代の勇者は、もっと勇者らしい答えを見つけておったが……」
光の大精霊「生存本能という答えもまたよかろう。そもそも汝に勇者らしさなど最初から期待しておらぬしな」
勇者「うるせえ」
459 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/04/17(水) 23:47:35.60 ID:5RjIV0Mm0
光の大精霊「先代の勇者は、敵に回った大切な者の幻を斬ることはできたものの、光を見つけ出すことはできなかった」
光の大精霊「よって、我は先代の勇者の心に残っていた僅かな光に見合う量の加護しか与えられなかった」
勇者「オレは今てめえをぶん殴りたくて仕方がねえ」
光の大精霊「殴りたければ殴ればよい。尤も、我に触れることは不可能だがな。存在している次元が異なる」
勇者「チッ」
光の大精霊「この神殿を出る前に、これを持ってゆけ」
勇者「なんだ? この宝石みてえなの」
光の大精霊「この神殿に侵入した、かつての魔族の幹部……九大天王だった者達が落としていったものだ」
光の大精霊「魔王に代々不死の力が受け継がれるのと同様、歴代の九大天王も特殊な力を受け継いでいた」
光の大精霊「時の流れと共に力の核のいくつかは行方知れずとなったが、その内の地、水、火はここにある」
光の大精霊「今代の魔王であれば、これらを上手く使うであろう」
460 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/04/17(水) 23:48:40.17 ID:5RjIV0Mm0
勇者「魔族の幹部……お前が殺ったのか?」
光の大精霊「我が直接手を下したのではない。この空間の性質によって奴等は命を落とした」
光の大精霊「勇者以外の者、それも悪しき心の持ち主がこの神殿に立ち入れば、この闇に呑まれ、正気を失い、自らを破滅させる」
勇者「怖っ……」
光の大精霊「さあ行け、勇者よ。汝の道が光と共にあらんことを」
外
勇者「あー……やっと終わった……」
魔王「ローゼ!」
勇者「魔王お前……本物だよな?」ペタペタ
魔王「どうした、俺の偽物でも現れたのか」
勇者「あったけえ……」ギュム
魔王「お、おい……恥ずかしいだろう……」
狼「へっへっ!」
勇者「魔王……ガリィ……」
勇者「うーっ……」
魔王「な、泣くほど辛かったのか? よかろう、俺の胸くらい貸してやる」
勇者「生きてる……あー……」
魔王「光も、優しさも、失ってはおらぬようだな」
勇者「オレ、お前のことぜってえ守るから」
魔王「そっ、そうか……」
461 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/04/17(水) 23:49:42.48 ID:5RjIV0Mm0
tsuduku
owarasetainoni owaranai
462 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/04/18(木) 00:43:27.47 ID:ebgr8lM0o
otu
ganbare
463 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/04/18(木) 12:31:28.34 ID:be4ATy4jO
otuotu
464 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/04/18(木) 23:14:30.20 ID:/u3lBT4jo
otu
465 :
◆O3m5I24fJo
[sage]:2019/06/01(土) 20:27:37.19 ID:wTgJiP0d0
gomenn nasai
ikitemasu tsudu kikaitemasu
gomenn nasai
466 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/06/01(土) 20:41:36.40 ID:ED2CmjAlo
daijoubu
matteru
467 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/06/01(土) 21:38:08.46 ID:7vSQEe7Eo
seizon houkoku
arigatai
jibun no pe-su de
468 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/06/02(日) 20:36:23.51 ID:ZP4fbI/A0
Episode 19
魔族の集落
魔王「……参ったな」
勇者「どうした」
魔王「先日、朗報を聞かせられるかもしれないと言っただろう」
勇者「ポシャッちまったのか?」
魔王「不可能だと決まったわけではない」
魔王「あるアイテムが必要だと判明したのだが、それらのいくつかが行方不明でな」
勇者「それってこれか?」
魔王「これは……九大天王の宝玉ではないか……何処で拾った」
勇者「この前光の神殿で大精霊にもらったんだよ。お前に渡すの忘れてた」
魔王「……そうか、なるほど……」
勇者「んで朗報の内容はなんだよ」
魔王「ああ、それはだな」
469 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/06/02(日) 20:37:19.15 ID:ZP4fbI/A0
魔王「結論から述べよう。魔族に帰る土地が見つかった」
勇者「え、マジで?」
魔王「この大地が巨大な一枚の板のようになっているのは知っているな」
勇者「昔本でちょっと読んだっきりだが、まあ一応」
魔王「そもそも、魔族はこの板の裏側、すなわち魔界に住んでいた」
魔王「しかし、未曽有の大災害が起き、魔界は生存に適さなくなってしまった」
勇者「んでこっちの世界に逃げ込んだと」
魔王「伝説では、魔界は地獄そのものと化したと伝えられていたのだが……」
魔王「現在では、自然の豊かな美しい土地となっていることがわかったのだ」
勇者「どうやって判明させたんだよ」
魔王「俺が使う封印の術があるだろう。あれは、魔界に対象者を送り込む術なのだが、」
魔王「先日温泉に行った際、以前封印したサキュバスが夢に現れた」
魔王「淫の気の強い土地であったため、遠く離れた場所からであっても俺の夢に潜り込みやすかったのだろう」
470 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/06/02(日) 20:38:12.21 ID:ZP4fbI/A0
――――――――
――
サキュバス『お久しぶりねえ、魔王様ぁ』
サキュバス『案外こっちは良い所だったわよぉ!』
サキュバス『欲を言えば、もっと良い男がたくさんいてくれたら嬉しいけどぉ……』
魔王『お前は……』
サキュバス『みんなこっちに帰ってくればいいんだわ! うふふふふ!』
――
――――――――
魔王「古い文献を調べ、魔王城の最深部に魔界への入り口があるのを確認し、」
魔王「先遣隊を送り込んだ」
魔王「正に、理想郷とも呼べるような大地が広がっていたそうだ」
勇者「ふうん、良かったじゃねえか」
魔王「しかし……」
471 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/06/02(日) 20:39:15.74 ID:ZP4fbI/A0
魔王「城にある魔界への道はあまりにも狭く、そして危険が多い」
魔王「未知の生物が棲みついている上に、地下深くほど物理法則がおかしくなっているそうだ」
魔王「よって、魔族や魔物を全て一瞬で移動させるための、巨大なゲートを開く必要があるのだが」
魔王「その術を使うには、魔王の力と九大天王の力の全てが揃っていなければならない」
勇者「それって五虎大将味方につけなきゃならねえんじゃねえの」
魔王「その問題はあるのだが、地、水、火の宝玉がこちらにあるのなら、その分は勝手に新たな九大天王を任命することができる」
魔王「尤も、適合者探しには時間がかかるだろうが」
勇者「へえ」
魔王「本来、九大天王の地位はこの宝玉と共に授けるものだったらしいからな」
勇者「らしいって」
魔王「何代も前の時代に、宝玉の奪い合いが発生したらそうでな」
魔王「それ以来、宝玉は当時の魔王の信頼を得ている者達によって隠され、代々秘密裏に継承されている」
魔王「問題は闇だな。闇の将軍スコティニヤは闇の宝玉を所持しており、」
魔王「他の五虎大将とは比べ物にならないほど強い」
472 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/06/02(日) 20:39:45.14 ID:ZP4fbI/A0
勇者「四天王達は宝玉持ってんのか?」
魔王「ああ。普段は何処かに隠しているがな」
魔王「四天王が五虎大将よりも強いと断言できる理由の一つでもある」
勇者「でも敵にも一人宝玉持ってるやついるんだろ」
魔王「スコティニヤは滅多に表には出てこぬ。光を苦手とする体質故にな」
魔王「そもそも、あやつは立ち位置が曖昧だ」
勇者「どういうことだよ」
魔王「一応カルブンクルス側についてはいるようだが、こちらに対抗する姿勢も見られぬのだ」
勇者「じゃあもしかしたら仲間にできるかもしれねえんだな」
魔王「だと良いのだがな」
勇者「ってことは、あとは風の宝玉か。行方がわかんねえのは」
勇者「……なあ」
魔王「なんだ」
473 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/06/02(日) 20:41:02.63 ID:ZP4fbI/A0
勇者「お前、魔界に帰るんならさ……その……」
勇者(オレに告ったこととか色々一体どうするつもりなんだよ)
魔王「…………」
魔王「そう不安そうな顔をするな」
魔王「今は険悪な人間の国々とも、距離を置くことで友好的な関係を築ける可能性がある」
魔王「だから、お前の故郷を初めとして、俺は多くの国と国交を結びたい」
魔王「つまり、頻繁にこちらに来る」
勇者(会えなくなるわけじゃねえのか)
魔王「人間には通い婚という風習もあるのだろう?」
勇者「そ、そもそもオレ達付き合ってすらねえだろ」
魔王「ほっとした顔をしたくせに」
勇者「うっせ」
474 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/06/02(日) 20:42:02.60 ID:ZP4fbI/A0
勇者「にしてもここ良い土地だな。あの氷娘の地元なんだろ」
魔王「ああ。水も緑も豊富だ。……ここもまた、数百年前に人間から奪った土地だが」
勇者「ここに築いた家も何もかも捨てて魔界に帰るんだよな。大丈夫か?」
魔王「慣れ親しんだ土地を手放すのだ。当然混乱は避けられないだろう」
魔王「だが、それをどうにかするのが俺の仕事だ」
勇者(……覚悟決めてんだな)
勇者「にしてもフリー……ええと……」
魔王「フリージアだ」
勇者「そうそう、あいつ遅くねえか。この後美味い飯食わしてくれる約束なんだろ」
雪氷「だぁかぁらあ、私に訊いても無駄なんだってばー!」
風の将軍「貴様なら風の宝玉の在り処をしっているだろう!?」
雪氷「死んであの世でパパに教えてもらってよ!!」
風の将軍「力づくでも吐いてもらうぞ!」
勇者「おいあれ」
魔王「カテギダだな……」
475 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/06/02(日) 20:42:46.04 ID:ZP4fbI/A0
雪氷「そんなしつこい性格だからママにフラれたんだよ!!」
風の将軍「そっそれは関係なかろう!!」
雪氷「あーわかった! ママそっくりの私にいやらしいことする気でしょ!!」
風の将軍「大事な親友の娘にそんなことできるか!!!!!」
雪氷「現在進行形で暴力は振るってるじゃない!」
風の将軍「それはお前が抵抗するからだろうが!!」
雪氷「あっかんべー!」
風の将軍「お前はこっちに来い! カルブンクルス様に仕えるのだ!」
雪氷「寝言は寝て言ってよね!」
勇者「あいつらって案外親しいのか?」
魔王「……色々と複雑でな」
魔王「フリージアの父とカテギダは親友であり、戦友だった」
魔王「女の取り合いをしてギクシャクした時期もあったそうだが、結局は和解し協力しあう仲に戻ったそうだ」
魔王「しかし……」
勇者「お前が後継者に選ばれたことで関係ぶっ壊れたとか?」
魔王「……まあ、そうだな」
476 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/06/02(日) 20:49:39.58 ID:ZP4fbI/A0
――――――――
――
風の将軍『何故だ! 何故グラナティウスなぞを選んだ!』
先代雪氷『カルブンクルス殿下が魔王となっては、再び人間と戦争となるだろう』
風の将軍『それの一体何が問題だというのだ』
先代雪氷『私は、気がついてしまった』
先代雪氷『……魔族も、人間も、同じだということに』
風の将軍『な、何を言い出すのだ! 人間なんぞ下等生物ではないか』
先代雪氷『最後の戦争の時、人間の村を襲い、皆殺しにするよう命じられたことがあっただろう』
風の将軍『……あの戦い以来、お前は腑抜けてしまったように感じていたが』
先代雪氷『殺せなかった』
先代雪氷『殺そうとした人間の中に、私の妻と、娘によく似た親子がいた』
先代雪氷『母の方は、娘だけは助けてほしいと』
先代雪氷『娘の方は、母だけは助けてほしいと、それぞれ、命乞いをしていた』
風の将軍『…………』
先代雪氷『私の妻子も、かつて勇者に殺されかけた際には同じことを言ったそうだ』
風の将軍『お、愚かな! 人間に己の家族を重ねるなど!』
477 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/06/02(日) 20:50:32.57 ID:ZP4fbI/A0
先代雪氷『グラナティウス殿下ならば、争いのない時代を作り上げるだろう』
風の将軍『だが……有力な魔族の多くはカルブンクルス様を支持している』
風の将軍『多くの敵を作ることになるぞ』
先代雪氷『どちらを支持しても、派閥争いを避けられないことは変わらぬ』
先代雪氷『そして私は、平和な未来がほしい』
先代雪氷『お前も、本当は争いに疲れているはずだ』
風の将軍『……』
先代雪氷『こっちに来ないか』
先代雪氷『私とお前が組めば、怖いもの無しだ』
風の将軍『……俺とお前が組んだところで、カルブンクルス様には敵わない』
風の将軍『仲良く殺されるのがオチだ……!』
先代雪氷『恐れるな! こちらにはルヴィニエだっている!』
先代雪氷『誰よりも魔王陛下に忠実なお前が、陛下に逆らうのか!?』
先代雪氷『グラナティウス殿下をお守りすることが、これからの我等の任務なのだぞ!』
風の将軍『……人間を娶って以来、陛下は変わってしまった』
風の将軍『おかしいのは陛下と、人間なんぞを魔王にしようとするお前達だ!』
先代雪氷『カテギダ!』
478 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/06/02(日) 20:51:13.24 ID:ZP4fbI/A0
風の将軍(カルブンクルス様は、次期魔王としてずっと努力なさってきた)
風の将軍(その努力を無駄にしてはならない)
風の将軍(我等九大天王は、カルブンクルス様の教育係として、ずっと殿下をお支えしてきたのだ)
風の将軍(今更グラナティウスを選ぶ方が魔王族への裏切りに等しいではないか)
風の将軍(たとえ争いが起きたとしても、それはやがて魔族の繁栄となる)
風の将軍(そもそも、今更人間と仲良しごっこなぞ実現できるはずがないのだ……!)
魔炎帝『……そうか。コルドスはこちらにはつかぬか』
魔炎帝『殺せ』
風の将軍『っ……』
魔炎帝『お前ならば奴の隙を突けるだろう』
魔炎帝『念のため宝玉を装備してゆけ。奴も宝玉持ちではあるのだろう?』
風の将軍『…………』
魔炎帝『どうした。相棒とはいえ憎き恋敵でもある男だろう』
風の将軍『……仰せのままに』
479 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/06/02(日) 20:52:16.05 ID:ZP4fbI/A0
風の将軍『!?』
風の将軍(隠していたはずの場所に風の宝玉がないだと……!?)
風の将軍(盗まれたか……いや、この場所を知っている可能性があるのは……)
先代雪氷『……カテギダ』
風の将軍『コルドス……!』
先代雪氷『九大天王が宝玉を使用するのは、同格以上の相手と戦う時のみ』
先代雪氷『やはり、私を殺すよう命じられたのだな』
風の将軍『……いいや、違うな』
風の将軍『俺は思い直したんだ。やはり、お前の存在がなければ俺は半人前だからな』
風の将軍『宝玉は、カルブンクルス派の連中から身を守るために持ち出そうとしただけだ』
風の将軍『特に、火を司るゼストスは、ほぼ確実にカルブンクルス様につくだろうからな』
風の将軍『俺はお前と手を組む。だから』
先代雪氷『悲しくなる嘘をついてくれるな』
風の将軍『……通じぬか』
480 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/06/02(日) 20:54:56.30 ID:ZP4fbI/A0
風の将軍『俺の宝玉を何処へやった』
先代雪氷『魔王陛下に忠実に従えない者に、宝玉を使う権利はない』
風の将軍『お前こそ……人間を皆殺しにできなかったというのに!』
風の将軍『命令を遂行できなかったお前こそ俺の宝玉を奪う権利などないだろう!』
先代雪氷『そこを突かれると、痛いな』
先代雪氷『……雨が降ってきたな。涙雨か』
先代雪氷『先程、妻が――プルウィアが亡くなった』
風の将軍『なっ……』
風の将軍『病で臥せっていたとはいえ、余命はまだ』
先代雪氷『カルブンクルス派の者の手によって、薬を毒とすり替えられていたようだ』
先代雪氷『それでもお前はまだ、カルブンクルス殿下に仕えるのか?』
風の将軍『っ…………』
481 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/06/02(日) 20:55:38.57 ID:ZP4fbI/A0
風の将軍『お前が……お前がカルブンクルス様を選んでいれば、彼女は死ななかった!』
風の将軍『プルウィアを殺したのはお前だ!』
風の将軍『命令通り――息の根を止めてやる!』
先代雪氷『俺を殺せば、風の宝玉の場所はわからずじまいだぞ』
風の将軍『ふん、後でゆっくり探してやる』
――
――――――――
風の将軍「大切なものを守るには、より強き者の側につくのが最善だ!」
風の将軍「お前だってこれ以上大切な相手を失いたくはないだろう!?」
雪氷「弱虫! 利用されてすりつぶされておしまいだって本当はわかってるくせに!」
風の将軍「少しでも大切な者と共にいられる時間を伸ばせるのならば、俺は利用される方を選ぶ!」
雪氷「それで手元に何が残ったの!?」
風の将軍「それはっ……」
雪氷「氷の鎖《アイスチェーン》!」
風の将軍「くっ!」
482 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/06/02(日) 20:56:22.62 ID:ZP4fbI/A0
雪氷の叔母「あーあ、カテギダ様ったら。お墓参りに来られたと思ったら、こんなことになるなんて」
勇者「墓参り? てかあんた誰だ」
雪氷の叔母「申し遅れました。私はフリージアの叔母ですの」
雪氷の叔母「カテギダ様は、亡くなった私の姉、つまりフリージアの母のお墓参りによくいらっしゃるのよ」
雪氷の叔母「彼は今でも姉のことが好きみたいで。一途な人よねえ」
魔王「あやつらの事情は把握していたが、そこまで想いが強いとは知らなかったな」
風の将軍「お前の父さえ道を誤らなければ!」
雪氷「おじちゃんさえこっちに来てくれていたらパパは死なずに済んだのに!」
風の将軍「っ」
雪氷「……なんて、今更言ったって、どうしようもない」
風の将軍「…………」
――――――――
――
483 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/06/02(日) 20:57:20.26 ID:ZP4fbI/A0
風の将軍『くっ……互角……ということは、貴様、宝玉を使ってはいないな』
先代雪氷『魔王陛下の命に背いてしまったあの日、私はもう二度と宝玉を使用しないと誓った』
先代雪氷『私にも、もうあれを使う資格なぞないからな』
風の将軍『……ふん、お前のその氷の如き無駄な生真面目さに、何度足を引っ張られただろうな』
風の将軍『だが、今回ばかりは俺がその足元を掬うことになりそうだ』
先代雪氷『お前をこの手で討ちたくはないが――やむをえん!』
雪氷『だめー!!』
先代雪氷『フリージア!? 何故ここに』
雪氷『パパの様子がおかしかったから、追いかけてきてやっと追いついたの』
雪氷『ねえ、よく話し合ってよ! パパとおじちゃんなら分かり合えるはずでしょ!?』
先代雪氷『いいからここから離れなさい!』
風の将軍『……風の刃《ウィンド・エッジ》!』
先代雪氷『ぐっ!』
雪氷『パパ!!』
484 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/06/02(日) 20:58:19.54 ID:ZP4fbI/A0
風の将軍『……勝負あったな』
雪氷『やめて!』
先代雪氷『フリー……ジア……にげ……』
風の将軍『そこをどけ』
先代雪氷『……』ギロ
風の将軍『……安心しろ。娘を巻き込む気はない――突風《ガスト》!』
雪氷『きゃあああ!』ビュオオオオ
風の将軍『離れた場所に飛ばした。……覚悟はいいな』
風の将軍『この手で……お前を……お前を……!』
風の将軍(数百年共に戦った親友を……俺は……)
風の将軍『う……くぅっ…………』
先代雪氷『…………』
風の将軍『……殺した、ことにしておいてやる。フリージアを連れて遠くへ身を隠せ』
風の将軍『このままでは、あの子も殺されてしまうだろう』
先代雪氷『お前……』
風の将軍『逃げ隠れることなど、お前の陛下への忠誠心が許しはしないだろうが……』
風の将軍『今、お前にとって何よりも大切なものは』
ザンッ
485 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/06/02(日) 20:58:48.77 ID:ZP4fbI/A0
先代雪氷『がはっ……』
風の将軍『コルドス……!?』
火の将軍「やはり詰めが甘いな、お前は」
風の将軍『……ゼストス……!』
雪氷『あいたたた……』
雪氷『数百メートルは飛ばされちゃった……。パパは……』
雪氷『……!!』
雪氷『パパ、パパ! 嘘でしょ、パパが……!』
雪氷『いやあああああああああああああああ!!』
雪氷『仇を……だめ、今の私じゃ、まだパパからもらった宝玉を使いこなせない』
雪氷『今は、逃げて、逃げて、強くなるんだ……!!』
486 :
◆O3m5I24fJo
[saga]:2019/06/02(日) 20:59:24.26 ID:ZP4fbI/A0
tsuduku
487 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/06/03(月) 00:40:37.57 ID:yZEYCS1ao
papa-!
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