肇「フォークソングライン(ピーターパンと敗残兵)」

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102 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/10/16(火) 19:29:33.12 ID:kQL/W8rg0
 風が邪な気持ちを剥ぎ取ってくれるそう思った。けど。けど肇のことは剥ぎ取ってくれない。
 肇が気持ちよさそうに喘いでいる。
「セックスしてー」
 青い。青い空に向かって叫んだ。
 自転車が惰性で前へ進んでいく。
 徐々に自転車はスピードを失くしていき、止まってしまった。
 周りは田んぼしかない。かなり昔に舗装されてから、治されていないガタガタの道。
 甘酸っぱい青春から遠い、泥臭さ。
 空では鳶が悠然と飛んでいる。
 友達が隣にやってきて、俺の頭を叩いた。
「アホだろ」
 友達の言葉の通り俺はアホだ。
 俺は俺に対して笑った。
 友達はため息を吐いてから「そーいえば、ジャッキーに彼女出来たらしいぞ」と話題を変えてくれた。
「マジで」
 新しい話題に俺は食いついた。
 俺たちは再び自転車を漕ぎ始めた。
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/10/16(火) 19:30:00.30 ID:kQL/W8rg0
「マジで、しかも花火大会後、ホテルから出てきたとこをムッシュ達に見られたらしいぜ」
「マジかよ」
 俺は笑った。
「けどいいなー」
「何がだよ」
「だってホテルから出てきたんだろ。ってことはセックスしたってことだろ」
 友達はまた俺の頭をはたいた。
「アホか。お前セックスにしか頭回んねーのかよ」
「うっせーな。てかオマエもセックスしたかねーのかよ」
 俺の言葉に友達は言葉をつまらせた。
「ほらなー」
 友達を俺は嘲笑った。
「うっせ。童貞が」
「オメーもだろ」
 俺たちは顔を見合わせ笑いあった。
 青々しい山々。雲ひとつない青い空。風に穂を揺らす田んぼ。
 変わらない光景。
 そして、いままで繰り広げたくだらないやりとり。
 これが俺の日常。
 肇がいなくてっも変わらない日常。
 ただ、肇がいないだけ。
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/10/16(火) 19:30:26.83 ID:kQL/W8rg0
 あの日からだいぶ月日は流れ去ってしまった。
 あの日から俺は変わったんだろうか。変われた気がしない…。
 それなのに手元にある陶芸雑誌に肇と一緒に俺が載っている。
 俺は肇との縁側での約束を守るべく、陶芸に没入し、約束ギリギリの年に俺は賞を穫れた。
 そして、授賞式当日。
 陶芸好き。陶芸を嗜んでいた。との理由から肇が授賞式に呼ばれたらしい。
 久しぶりに会った肇は上品な大人の女性になっていた。
 語彙が無いことが悔しいほど綺麗になっていた。
 あの痴態の数々の面影はどこにもなかった。
 授賞式は粛々と進み終わった。
 式後、俺は肇との一対一のインタビューが行われた。
 内容は、まぁ当たり障りのないありきたりの内容。ただ、異様に緊張したことしか覚えてないが…。
 それでも肇も俺も約束を守った。ただ違ったのは肇はアイドルを辞めてしまったという事。
 けどそれでも女優として残ってるからセーフだろう。
「改めて史上最年少受賞おめでとう」
 満面の笑みで、拍手を添えながら肇が言ってくれた。
「ありがとな」
「やっぱキミはすごいね」
「すごかねーよ」
 肇の言葉に俺は首を振った。
 俺の陶芸は、肇に対しての鬱屈した感情が言動になってしまってたんだから。
「ううん。私にはこんな煽情的な器を作ることは出来ない」
 肇の言葉には苦笑いすることしか出来ない。
「褒め言葉として受け止めとくよ」
「もー。私、褒めてるんだよ。それにおじいちゃんも物凄く褒めてたよ。キミはもう少し自分を誇っていいんだよ」
 肇は子供の頃のように、ぷくーと頬を膨らませた。
 はは、変わんねーな。俺は笑った。
「わるいな、こんな性分で。てか、肇ゴメンな」
 苦笑いしながら肇の左手薬指を見た。
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/10/16(火) 19:31:25.46 ID:kQL/W8rg0
 肇は高校卒業後、アイドル一本で行くのでなく、大学に進む選択をした。
 そして、大学の4年になると同時にアイドルの活動を一時止め、
 大学卒業と同時にアイドル引退宣言をし、女優に転身した。 
 そしてその1年半後結婚をした。
 結婚時には様々な憶測を呼んだが、アイドル時代に浮世話が一切なく
 女優転身後も浮いた話がなく、好意的に世間には受け止められた。
 けど俺は見てしまったし、動画も撮っていた。
 だけれどそれを公開することはしなかった。
 だって…。
 薬指には指輪が光輝いている。
「あぁ、そのことね」
 俺の視線に肇は分かってくれた。
「本当は出れたんだけどさ、肇との縁側の約束に意固地になって、欠席で返送しちゃって」
「縁側の約束って私がキミインタビューするって」
「そう、それ。なんか受賞するまで、肇に会わないって俺の勝手の俺自身への約束ってか縛りを…」
「なにそれ」
 肇は笑った。肇の笑い顔をみて心の荷物が降りた気がした。
「けどね、私悲しかったんだよ。皆が参加で返してくれたなか、キミだけが欠席だったんだから」
「わるいって」
「けど、許してあげる。キミは私との約束をしっかりと、守ってくれたんだから」
 肇は子供の頃と変わらない笑顔で言ってくれた。
 俺たちが笑い合ってると、コンコンと部屋にノックが響き渡った。
「失礼するよ」
 男を見るなり、いや。声を聞いた瞬間に、肇の顔は咲き誇るひまわりのように輝いた。
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/10/16(火) 19:31:55.70 ID:kQL/W8rg0
「紹介するね、この人が私の旦那さんのPさん」
 男が部屋に入って来るなり俺に紹介してきた。
「初めまして、ではないよな」
「ですね」
 Pと俺は顔を見合わせながら互いに苦笑いをした。
「あの〜すみませーん」
 Pの背後からひょっこりと女性が顔を出した。そして俺を見てきた。
「なんですか」
「あ、あの、新聞社さんとテレビ局の方がインタビューしたいと」
 おずおずと言ってきた。
「わかりました。肇悪いな。またどっかで機会が合ったらそこで話そう」
 うん。と肇は首を縦に振ってくれた。
「あとPさん」
「なんだ」
「肇をお願いします」
 頭を下げた。本当は頭を下げる義理も、お願いする義理もない。向こうも同じだ。ただこれは俺のエゴだ。
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/10/16(火) 19:32:31.85 ID:kQL/W8rg0
「あぁ、わかった」
 Pは何も察してるのか聞いてこない。ありがたい。
「肇またな」
「またね」
 肇は手を振ってくれた。薬指の指輪が光った。
 俺は女の人の後を着いて部屋を出た。そしてドアを閉める直前。
「肇を泣かしたた殴りに行きますから」
 Pに宣言した。
 俺の唐突な発言に肇は驚いている。けどPは全く驚く様子はないそれどころか
「それは無理なお願いだな」
 いけしゃーしゃーと言いやがった。この場で殴ったろっか。
 肇もPの言葉を聞いて、Pを睨みつけた。
 睨まれたPは方をすくめ
「涙は悲しさだけで、出来てるんじゃない」と言った。
 もう既に何度も肇のことを泣かしているのだろう。
 けどその零れ落ちた涙は悲しみで出来てはいない。そう思えた。
「なら沢山泣かせてあげてください」
「わかった」
 俺はPの言葉を聞いて部屋を後にした。
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/10/16(火) 19:32:59.05 ID:kQL/W8rg0
 


 


 さよなら俺の初恋。
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/10/16(火) 19:38:56.18 ID:kQL/W8rg0
以上で終わりっす

もし次があれば改行のを工夫します
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/18(木) 11:09:08.41 ID:xkvPsrLYo
ようこの量書いたなお疲れ
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