【艦これ】提督「この絶望的な海へと」【あんこ】

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206 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/19(月) 22:43:47.33 ID:IlQSc4Pb0

【ハズレ】



「女を、付けましょう」

提督「あん? 」

「彼女の動きと意志を見て決めてください。期限など長くはありませんが……ま、次の作戦が終わる頃には」

提督「承りました、と。……今更んなもんに惹かれる程初心だと思われているのか、俺は」



まさか女で籠絡してしまえばいいと判断されているわけではなかろうが。
だが、世界と思想の違う女が近くを這いずるのを高みから眺めているのも悪くは無い。

使えなければ嬲るもよし、襤褸布の様に使い捨ててしまうのも構わない。
或いは拾い上げて愛でてみるのも一興であってーーーー



提督「…………雲龍は、どうしようか」



また、ダイスの世話になってみるのも、また一興であろうか。
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/19(月) 22:47:32.81 ID:IlQSc4Pb0



………

……………



あきつ丸「暫く世話になるであります」

提督「はいはいどうぞお手柔らかに」

あきつ丸「ふむ…………」

提督「…………」

あきつ丸「…………」

提督「…………」

あきつ丸「…………」

提督「…………」

あきつ丸「…………」

提督「…………」

あきつ丸「…………あれは? 」

提督「気にするな。いつものことだからな」

あきつ丸「はぁ……? 」





雲龍「…………変なことしたら、殺す」

大和「…………うぅん、また余計な」

Graf「暴露ているじゃないか……やれやれ」



【また陽が昇る】



0.艦娘
1.急襲
2.建造
3.風俗
4.父親
5.艦娘
6.役人
7.艦娘
8.雲龍
9.艦娘



ゾロ目……陸軍(はぁとはぁと)
208 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/19(月) 22:51:56.53 ID:IlQSc4Pb0

提督「で、今度はどこだって? 」

大和「それがーーーー



執務中轟音響き見てみれば。
もうもうと立ち込める白煙の先には何か面白くないものが。

それが何であれ叩き潰し首元を締め付け生を後悔させてやらればならない。
こんなにもかったるい昼日中、あと少しで書類を片付けた昼寝でも決め込むか雲龍でも呼ぼうと思っていたのだが。



【割と遅かったね】



0.海軍改革派
1.深海
2.海軍保守派
3.深海
4.海軍保守派
5.海軍改革派
6.深海
7.深海
8.深海
9.深海



ゾロ目……殺る陸軍
209 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/11/19(月) 22:53:32.56 ID:mU5YRIm8o
一割くん久々やん()
210 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/19(月) 22:59:27.94 ID:IlQSc4Pb0

【内輪揉め、よくないもんね】



大和「ここまで砲弾が届いたのは届いたのですが……」

提督「よく分からんがあれだけだったな。その割に至近ではあったがクソったれ」



執務室が轟音と共に揺れた割にはその先が、無い。
この近くまで敵を近付けてしまったことに青くなった哨戒班が敵を素早く沈めたのだろうか。

短いスパンで大規模な戦闘を指揮してきた所為か何か物足りない。
もっと血湧き肉躍り内臓が吐き気に震える凄惨な戦闘でなくては。



比叡「ふぁ……寝ていい? 」

最上「ボクは何も言わないけ

金剛「ひーえーいー? 」

比叡「ヒッ」



雲龍「艦載機の情報だとまだいるけど……出る? 」

提督「まぁ、あれで終わりってことは、な。頼む」

雲龍「了解」

Graf「やれやれ、やっと祖国に帰る理由とタイミングができたな」



轟音が轟いた瞬間に艦載機を飛ばした雲龍によれば戦闘はまだ続いているらしい。
なるほど確かに耳を澄ませれば爆音が遠くで炸裂する特有の音は聞こえてくるが、しかし。



提督「敵もそろそろ破れかぶれになってきたな……そろそろシーレーンに行くか北方に出張るかそれとも、む? 」



久々にまた、着弾。だがこれも然程効果は無さそうだ。先程の砲弾よりも、まだ遠い。
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/19(月) 23:05:42.38 ID:IlQSc4Pb0

最上「ボクは出なくてもいいよね? 」

Prinz「私もパス、したいかな」



こちらから出たのは話も聞かず飛び出した大和に満面の笑顔で妹を引き摺っていった金剛。
それから艦載機を先行させている雲龍にgraf。

あきつ丸はいつの間にかどこへなりと去っている。
彼女がいなくなった辺りで陸軍や海軍のよく分からない派閥が急襲でも仕掛けてきたのかと思いはしたのだが。
それはまぁ期待外れ、もとい杞憂だったようである。



あきつ丸「失礼。どうしても手洗いに行きたくな……何か? 」

提督「ーーーー」

最上「提督が絶句するってさ……えぇ……」

Prinz「女の子としても不正解でしょそれ。陸軍なの? それともこの国? 」



結局、アホ面提げた陸軍女に硝煙の臭いでも嗅がせてやろうということで全員出撃させた。

結果としては然程どころか何らも面白みも無いものである。
破れかぶれだか最期の悪足掻き的吶喊だが何だか知らないがご苦労なことであった。

MVPなど決めるまでも無い程のそれは、一方的虐殺である。
212 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/19(月) 23:10:41.24 ID:IlQSc4Pb0



………

……………



提督「ご苦労。休め」

雲龍「ん……お風呂」

Graf「私は要らなかったな」

あきつ丸「何も文字通り引き摺らなくとも」

最上「それならあれみたいにしてほしかったかい? 」

金剛「へーい比叡? なんだか膝が真っ赤デース」

比叡「ヒッ……お姉さまが引っ張ったから擦り剥……いえいえいえいえなんでもありまっ

あきつ丸「」

大和「…………影が薄い」

Prinz「ここで影濃いとかより余程マシかと」



【それでも一応決めますけどね? 】



0.大和
1.比叡
2.雲龍
3.Graf
4.最上
5.Prinz
6.金剛
7.ドイツ組
8.あきつ丸
9.うんりう



ゾロ目……全員(はぁと)
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/19(月) 23:18:59.64 ID:IlQSc4Pb0

最上「ボクが殊勲ねぇ……いや結構嬉しいっちゃ嬉しいけど」



半日どころか数時間で終了した近海での戦闘から暫く。
網を抜けられた代わりに通常の何倍も無理をして敵を撃滅した哨戒班には労いだけを与えた。

感動と信頼を湛えた目を向けられたが知ったことか。
どうせならば自分たちを餌に強大な艦隊でも召喚してみせろ、とは言わない。

雲龍や大和、特に何故か内面を知られているGrafは別として俺は今のところ英雄的な好人物である。
あくまで、素に近い俺は子飼の彼女たちにしか知られてはならないのだ。



提督「寧ろお前の練度ならいつでもあり得た話だろうよ」

最上「そう? そうかも。だってボクは、横須賀の英雄サマの部下だもんね? 」

提督「ハンッ」



【戦果リザルト】



0.……建造、だろう?
1..……建造、だろう?
2.お前そのものを欲しい言われたら、どうする
3.欲しいものは無いか
4.欲しいものは無いか
5.……建造、だろう?
6.甘味でいいか?
7.甘味でいいか?
8.欲しいものは無いか
9.甘味でいいか?



ゾロ目……全部
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/19(月) 23:26:12.90 ID:IlQSc4Pb0

【訊いた方が早いよね】



提督「で、欲しいものはないか? 」

最上「欲しいもの? 」

提督「雲龍にはまぁ……忘れろ」

最上「はいはい、次」

提督「Grafにはあー……忘れろ」

最上「はいはい。……酷くない? 例の一つも出せないの? 」

提督「…………」



他人の出してやったコーヒーを美味そうに飲みやがる。
甘味が好きなのだから砂糖もたっぷりだろうと用意してやったのだがそれには全く手を付けていない。

俺もコーヒーはブラックというタイプなので必然、卓の砂糖は手付かずのままである。
これはこれでGrafに勧められたそれなりにいいものなのだが、無意味であった。



提督「すまんな。……で? 」

最上「よくそれでモテるよね……いや、そういうところが好かれてるのは分かるけどさ」



溜息一つ、角砂糖一つ。
俺の話は今まで使わなかった角砂糖が必要な程苦いのだろうか。
いや、どうでもいいのだが、何か気になる。
気になるということに対して気になり過ぎる所為で、
本当の好奇心など行方不明になる程には僅少な興味ではあるのだが。



最上「それならボクはーーーー



【一歩進んで】



0.提督、って言ったらどうする?
1.姉妹、かな
2.戦場、かな
3.平穏、かな
4.平穏、かな
5.姉妹、かな
6.戦場、かな
7.平穏、かな
8.姉妹、かな
9.戦場、かな



ゾロ目……全部
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/11/19(月) 23:29:59.21 ID:mU5YRIm8o
本日の一割(二回目)
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/19(月) 23:31:35.94 ID:IlQSc4Pb0

最上「提督、って言ったらどうする? 」

提督「ーーーー」



どうする? どうしたもこうしたも無い、拒否するだけだ。
そう答えてしまえば楽なのは分かっている。

これまでの俺ならば仮面をきつくして表情と声音だけは柔らかに応えていただろう。
けれど、その手はどうにも使いにくい。

雲龍と公然の仲になってしまっていることもあるし、
何より最上が何を考えているのかが読み切れない。
元々どこか遠くから俯瞰する様に喋る女ではあったのだ、彼女は。

カタログだけを見れば目の前にいる女は至極簡単な相手である。
最上型一番艦の最上改、航空巡洋艦の力を宿した元人間の憑座。

普段は屈託無く笑う冷静で時折見た目に年相応な姿も見せる少女。
元人間であることに何某かの想いを秘めた兵士かつ兵器かつ化け物である女。
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/19(月) 23:36:46.53 ID:IlQSc4Pb0

最上「これでもボクは提督に興味があってさ」

提督「…………」

最上「別に今すぐ抱いてくれとか雲龍さんと同じ扱いをしてくれとは言わないけど……ふふ」



クスクス、クスクスと。
彼女は何が楽しいのか喉の奥深くから心底に見える笑みを浮かべた。
そこには邪気など窺えず、けれど優しさや揶揄いなど見えずただ曖昧な最上そのものだけが見える。



最上「ボクが元人間だって話はしたよね? いや、それとも知ってて訊いたのかな、あの時」

提督「…………」



変わらずただ笑みを浮かべ、コーヒーを啜り、角砂糖を弄び。
切れ者などと言われようと、それは結局情報を論理的に並べ解釈する場面でこそ発揮される能力なのだ。

人間擬きの化け物が浮かべる笑みの意味など俺に分かるはずも、無い。
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/19(月) 23:44:07.38 ID:IlQSc4Pb0

最上「で、提督は知らないだろうけどボクさ、前の記憶があるんだ」

提督「! 」



前の記憶とは、つまり艦娘となる前、人間時代の記憶だろう。
フィフティフィフティとは言われつつもその実殆どの元人間が失ったはずの、過去。

最上は自らが後の己に託した情報でしか知り得ないはずのそれを知っているという。
記憶はただ記憶として、情報ではないそれは真に彼女を形作っている意志の武装だ。



最上「まぁ、最低な記憶ではあるんだけど……ふふ、提督? 」

提督「ッ…………な、んだ」



笑みは、微笑みへ。カップを置き掌で角砂糖を握り潰し。
邪気など無かったはずの笑みは一瞬で黒い嗤いへ。

これが、これこそが彼女の、本質なのだろう。



最上「…………あはっ」



【第一部完? 】



0.いつかあなたを、殺してあげる
1.君に取り入って抜け出したいんだ
2.いつかあなたに、救われたのさ
3.君に取り入って抜け出したいんだ
4.いつかあなたを、殺してあげる
5.いつかあなたに、救われたのさ
6.君に取り入って抜け出したいんだ
7.いつかあなたを、殺してあげる
8.君に取り入って抜け出したいんだ
9.いつかあなたに、救われたのさ



ゾロ目……異母妹
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/19(月) 23:47:43.49 ID:IlQSc4Pb0

最上「君に取り入って抜け出したいんだ、いつかさ」

提督「……あくまで艦娘であるのは仮の姿だと? 」

最上「当たり前だろう? 衣食住が保証されてお金が貰えておまけに可愛い女の子になれるときた。
あの最低な生活から抜け出せるんなら何だって捧げたさ」



それこそ、人を殺すことだってね。
彼女の、最上の黒い笑みは暗にそれを指している気がして。
その意志と生への志向に背筋が震え冷や汗が垂れた。

けれど、所詮その程度の戯言止まり。予想の範囲は超えてこない。
俺に取り入ることで次の幸せを得ようとするなど、寧ろ可愛い望みである。
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/19(月) 23:52:53.58 ID:IlQSc4Pb0

“ 建造 ”された艦娘や“ ドロップ ”された艦娘たちはそうでもないが、
元人間の艦娘には一定数最上の様なやつがいる。

その殆どは記憶ではなく、人間を止める前の日記や手紙といった情報によって志向を決める。
極貧生活から抜け出す為の手段であったり口減らしの為に売られたためであったり。
或いは人生に絶望しつつも自死する勇気すら無い最後の希望であったり。



最上「ボクは前の記憶を引き継いでいるのさ。その人間最後の瞬間記憶が無くなると思って願った、最後が」



ーーイイ男と結婚して金持ちになることだったんだ。



提督「…………ハンッ」



最後の一言と共に彼女が浮かべた笑みは、もう黒くは無い。
無邪気で、ただ幸せに憧れる少女のものだった。
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/19(月) 23:57:03.89 ID:IlQSc4Pb0



………

……………



提督「所詮はただ暗い経験をした程度の女か」

金剛「うん? 」

提督「いいや別に。……比叡はいいのか? 」

金剛「んふ、今はお部屋でお寝んねしてるデース」

提督「そうかいそりゃ残ね……お寝んね? 」

金剛「ん? 」

あきつ丸「はぁ……自分の部屋は金剛姉妹の隣なのでありますがそれはも

大和「結構ですよそんなの……あーあーきーきーたくありませーん」



【平和っていいなぁ】



0.Graf
1.どこぞが
2.建造
3.艦娘
4.父親
5.艦娘
6.役人
7.最上
8.雲龍
9.艦娘



ゾロ目……陸軍(はぁとはぁと)
222 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/20(火) 00:01:46.85 ID:le0rP4aP0

【そんなに高い割合でも無い筈】



提督「何故気付けば誰かを探しているのか」



自問には当然答えを返してくれる者などおらず。
そして自答など有りはしない。いや、無くてもいいと思っているのだ。



提督「これで俺が単に欠陥品だとか……ふん、幸せや嗜好を楽しめないなど未練が無くなるな、今すぐ」



腕のいい精神科医にそう言われれば本気で自死を選ぶだろう、俺というやつは。
それくらいには、何が楽しいのかも分からずいつも誰かを探している。



【そして今日も今日とて】



0.Prinz
1.雲龍
2.最上
3.雲龍・Graf・最上
4.大和
5.あきつ丸
6.Graf
7.金剛
8.比叡
9.雲龍・Graf・最上



ゾロ目……うんりう
223 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2018/11/20(火) 00:02:51.19 ID:le0rP4aP0

なるほど……なるほど
何にも進まないようでいてそれなりにフラグとコンマは消費してますね……

短いですが今日はこの辺で

ありがとうございました
224 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/11/20(火) 00:16:24.00 ID:d4OXl3M+o
おつおつ
このモガミンすき
雲龍とバトりそう
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/22(木) 21:16:02.11 ID:6NDxpT5vO

あきつ丸「は? 」

提督「お前に与えられた任務を吐け。下らん嘘もいいが我ながら嘘には敏感だぞ、俺は」



執務がひと段落した後、誰かを探して適当に会話でもしようと思っていたのだが、止めた。
時間が無い時間が無いと頻りに繰り返していた陸軍将校の顔が浮かんだ訳ではないが、しかし。

雲龍とこのままズルズルと身体の関係だけを深めていればいずれ破綻がやってくるだろう。
Grafがドイツへ帰るか否か、帰るとしてそのまま無条件で政府に丸投げしてしまえば後が怖い。
最上が俺に取り入ると宣言してからは宣言通り公私に渡って干渉してくるようになっている。

面倒な問題をこれ以上増やさないためにも、芽の段階で一つ潰してしまおうと思ったのだ。

226 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/22(木) 21:16:31.00 ID:6NDxpT5vO

提督「俺とお前はある意味で最も近い共犯者足り得る関係だ」

あきつ丸「自分にメリットが無い」

提督「あるさ。面倒な任務からすぐに解放してやる。
お前は逃げもせずぼんやりと過ごし俺が俺の目的を達成するまで生きていればいいんだ」

あきつ丸「それができるのならば協力するのも吝かではない、が」

提督「戯け。元よりお前にそれ以上の選択肢などありはしない」

あきつ丸「…………」

提督「…………」

227 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/22(木) 21:17:53.76 ID:6NDxpT5vO

我ながら頭が回るとは思うが、それはその程度のものだ。
有能であって無能ではない、本当にその程度。
類稀な才能を持った人間では決して有り得ない。

だから、己の意志と感情そのままに、直裁な質問を。



【意志とは何か】



0.吐く
1.吐く
2.取引
3.吐かない
4.吐かない
5.吐く
6.吐く
7.吐かない
8.(嘘を)吐く
9.吐かない



ゾロ目……将校殿に忠誠を
228 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/22(木) 21:20:41.10 ID:6NDxpT5vO

【素直って大事】



あきつ丸「…………ある将校殿がいましてな」

提督「あぁ」

あきつ丸「あの方は……いや、彼はかつて人倫に悖る屑だったのであります」

提督「あぁ」



言葉にしてみればそれは単純明快な話だった。
人格的にクズだった男が善人であることに目覚めたとかいう三文芝居。

野心と上昇の情熱を失った男が、初めて国の為に立ち上がった、というお話。
駆け上がるという目的においては絶対的正しいことしかしてこなかった男が、
ただその目的だけは正しく、それでいて間違った方法で。

229 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/22(木) 21:25:47.86 ID:6NDxpT5vO

あきつ丸「彼はその権力中枢に食い込んだ立場から知ってしまったのであります。
この国が、旧列強がどれほど悪どいことを為し続けているのかを」



語られるこの世界の真実になど興味は無い。
知っていて手札になるのならば覚えてもいよう、けれど俺が知りたいのはそんなことでは、ない。

俺は俺の、俺の周りの変化さえ見通せられればそれでいいのだ。
大局的な視野などとうに捨ててダイスに任せてさえもいるのだから。



提督「それで? その清く崇高な理念を持つ陸軍軍人は何が望みでお前を寄越したって? 」

あきつ丸「…………自分は、自分の任務はーーーー



【手段と目的の是非など問わず】



0.陸と海の橋渡し
1.ただ、真実のその先を
2.技術を奪う
3.陸と海の橋渡し
4.技術を奪う
5.ただ、真実のその先を
6.技術を奪う
7.ただ、真実のその先を
8.陸と海の橋渡し
9.陸と海の橋渡し



ゾロ目……提督殿を籠絡するため
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/11/22(木) 21:29:35.98 ID:kV1ZpQvHo
よいあきつ丸…か?
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/22(木) 21:33:03.28 ID:6NDxpT5vO

【技術って大事ですよね】



あきつ丸「自分の任務は海軍が持つ艦娘やそれに付随する技術を盗み取ることであります」

提督「ほう……? 」



確信めいた追求を深める俺への諦念か、それとも露悪と自己悲哀を纏った陶酔からくる自棄か。
或いはそういった弱い女を演じて取り入ろうと考えているのだろうか。

その判断はつきかねたけれど、あきつ丸は勝手に話を進めていく。俺は、ただ聞き続けている。



あきつ丸「世界で同時多発的に起こった“ 深海棲艦 ”の出現とその後各国が生み出した“ 艦娘 ”。
そのあり方など将校殿たちでさえ興味の無いことではある」

提督「所詮は造られた化け物であると? 」

あきつ丸「あぁ。しかも造られた理由は追い求められるのに今生きる自分たちにはクズゴミ程度の関心しか持ってはくださらない」



自嘲して、それから本心に見える笑みを。
本気でビジネスパートナーになろうと思ったわけではなく。
そもそも俺など信じてはいないがどうせ誰も信じることなどできないのだと。

彼女の顔はそう、語っていた。
露悪的に語られた彼女の任務と言い渡された命令と。

それをこの先、暴いて晒して、何かの道具にしてしまうのは、いいのかもしれない。
俺とて彼女やその生き方になど興味は毛程も、沸いているわけではなかったのではあるけれど。
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/22(木) 21:37:50.01 ID:6NDxpT5vO



………

……………



提督「あれが本心であるのかさえ怪しいところではあるが……む」

雲龍「何? 私以外の女の話? 」

提督「さてね。……善人であるとか悪人であるとか、どうでもいいなって」

雲龍「そうね。だってあなたは悪人だし、でも好きだし」

提督「…………」



あきつ丸はその任務を語らせたまま放置している。
それが真実であれ虚偽であれ、何か手を打つべきではあると思うけれど、それでも。

彼女の言っていたことが真実だとしてこちらが技術を隠す必要など、万に一つも無い。
俺自身職と地位を失い路頭に迷ったとしても殺されたとしても、然程の後悔すらきっと感じ取ることはできないのだから。



【つまらぬとしても愉快だとしても人生は先へ】



0.Graf
1.どこぞが
2.建造
3.艦娘
4.父親
5.艦娘
6.役人
7.最上
8.雲龍
9.艦娘



ゾロ目……陸軍(はぁとはぁと)
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/11/22(木) 21:39:58.33 ID:kV1ZpQvHo
本日の一割
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/22(木) 21:44:31.84 ID:6NDxpT5vO

身体を痛め付けていたときのこと、もとい全身に負荷を掛け精進を重ねていたときのことである。

息急き切ってトレーニングルームに駆け込んできたるは大和。
息をつく間も惜しいとばかりに、叫んだ。

心惑い、先行きも分からず頼りにしてくるその姿。
それは果たして俺がここに来てすぐ抱いた彼女への期待に、敵っていただろうか。

緊急事態だとしても栓無きことを今日も、思う。



大和「! ーーーー! …………! 」

提督「はいはい」



0.呉
1.帝都
2.呉
3.南方海域
4.南方海域
5.呉
6.帝都
7.南方海域
8.帝都
9.南方海域



ゾロ目……陸軍
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/22(木) 21:49:50.90 ID:6NDxpT5vO

【戦火は燃え続け】



大和「ルソンもパラワンもブルネイもベトナムも、敵方の総攻撃が鋭く次期に落ちると! 」

提督「間に合わんな、それは」



冷静に、あくまで冷静に。
既にそれを失った大和を眺めやり、ぼんやりと呟く。

彼女の言が間違っているとは思わない。だからそれはきっと正確な情報なのだろう。
だからこそ、パナイやマレーシア、シンガポールがまだ生きていると察することはできる。

それでも、その救援に間に合うのかどうか、怪しいところである。

236 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/22(木) 21:53:51.13 ID:6NDxpT5vO

着替えの時間すら惜しみトレーニングウェアに制服を纏い軍帽を被りながら考える。
何故敵の接近に気付かなかったのかなどどうでもよろしい。
先日こちらが撃滅したにも拘らず再度大攻勢を仕掛けられる敵の事情だって知らなくとも良い。

考えることに意味があるのは、こちらが今から打って出て勝てるのか、それだけだ。



提督「救援には誰を出した」

大和「まだ、誰も。急報から未だ三分も経っていません」

提督「そうか」



言われてみれば、確かに。
ここ横須賀の大権を握っているのは、俺だ。
そして彼女たちに全面的な指揮の才能を認められているのは、俺だ。

彼女たちが俺に無断で出撃することなど、確かに有り得ないことではある。
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/22(木) 21:58:47.67 ID:6NDxpT5vO

けれど、それではつまらないではないか。
それが成功すれば褒めてやってその思考を知ってみたいと思うだろう。
失敗すれば糾弾し、玩具やサンドバックにしてみるのもいいだろう。

そんなことはおくびにも出さないけれど、それでもやっぱり、つまらない。
別に命令違反や背任でだけは、裁かないというのに。



大和「南方に現れた敵方なのですが……その」

提督「あぁん? 遠慮など不要だ、言え」

大和「ん…………えっと」



大和が言い淀むなど、珍しい。
一刀両断一気呵成、何は無くとも己の意志と理想だけは持つ女。
そんな女が、まるで恐ろしい上官を前にしたかの様にまごつくなんて、本当に珍しいことである。

逆説的に、それこそが俺の興味を引いた。
大規模であるのならば素直に興奮して大和や雲龍を送り出すなりするだろう。
あまりにも小規模ならば南方の守りやこの国の衰えを嗤うだろう。

それだけで俺の興味が刺激それたのではない。
何某かが起こったときの、大和反応が俺を、笑わせてくれるのだ。
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/22(木) 22:07:42.60 ID:6NDxpT5vO

大和「…………」

提督「時間が無ぇんだろうが。さっさと言え、間抜け」

大和「…………」



切羽詰まり廊下を走る中でも彼女は息切れ一つしていない。
息急き切ってトレーニングルームまで来た割にすぐさま身体の代謝を励起して息を整えやがったのだ。

それなのに、彼女が言い淀むなんて、いよいよ俺の興味は最高潮。
この楽しきこと無き世を、疾走しなければならない程生きさせてくれるのならば、それでいい。

『おもしろき こともなく世を おもしろく』

いつかの偉人もそんなことを言っていたではないか。
下の句にも意味があって大層なことを言っていたような気もするがそこに興味は無い。

ただ、つまらないこの世を愉快なものに、それだけで十分なのだ、俺にとっては。



【正念場】



0.この国を破壊できるほどの
1.規模だけは、小さいのですけれど
2.分隊が横須賀へ
3.この国を破壊できるほどの
4.規模だけは、小さいのですけれど
5.分隊が横須賀へ
6.分隊が横須賀へ
7.規模だけは、小さいのですけれど
8.分隊が横須賀へ
9.この国を破壊できるほどの



ゾロ目……周辺国は平穏を取り戻しました(はぁと)
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2018/11/22(木) 22:08:22.39 ID:6NDxpT5vO

ちょっとタイムいただきます
大体たぶんきっと戻ってきますすみません
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/11/22(木) 22:10:54.61 ID:kV1ZpQvHo
たんおつ
提督楽しめそうね()
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/11/22(木) 22:15:19.93 ID:8deQX1XEO
たんおつ
コンマ神がビンビンでいらっしゃる、鎮めて差し上げろ
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/22(木) 22:30:37.35 ID:6NDxpT5vO

提督「いるかてめぇら!」

Graf「はいはい」

最上「何? 」

大和「総員装備を整え集まっています。他の皆はもうヘリに」



集まっていたのは空母、重巡、それから戦艦の代表者とも言える者たち。
他にも俺が目を掛けている軽巡やら駆逐やらの代表が集まっている。
彼女たちに指示を出せばすぐさま艦隊を組んで南方になり防衛になり行くのだろう。



提督「そりゃ重畳。……お前らを今から大尉にする。さっさと編成組んでヘリに乗っていけ」

大和「は? 」

提督「細かい指示や組み分けはヘリの中で出す。いいからさっさと乗り込め馬鹿ども」

大和「いや、あの、提督自ら出てくるのは危け

提督「うるせぇ張っ倒すぞ大飯食らいのホテル女」

大和「」

Graf「やれやれ……いや、そうくるとは思っていたがな」

最上「それでこそさ。ボクはどうせ提督が死ねばただのゴミに逆戻り。やってやるしかないんだ」
243 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/22(木) 22:37:14.73 ID:6NDxpT5vO

敵を倒すのならば、倒しきり平穏を取り戻すのならばここを置いて他には無い。
俺にとって何か明るい未来を見つける道は戦場以外には存在し得ない。それは素直な感想だ。

それならば、この国を取り巻く戦場を無にする可能性など失ってはならない。それが道理である。
けれど、この戦闘がただの戦闘であるなどあり得ない、許されない。

この国の存亡を賭けた史上最大とも言える大海戦。
大和たち俺の子飼も誰が沈み誰の身体が失われるかなど俺にも分からない。
もしかすれば大和たちどころかこの国そのものが消滅するかもしれない。

南方海域に散る味方が目算を誤った可能性も無いではないが、無視。
そんなことに希望を見出す程俺は甘くはないし、この国も馬鹿ではない。



提督「__参謀は待機。万が一俺たちが負けた場合すぐさま横須賀は放棄しろ! 以上」



指示を出し、走り出す。
この先に何があるのかなんて知ったことではないし、予想もできない。

けれど、この戦闘で、否、本気で生死を分ける戦場に何かを見つけられないのならば、その時は。



提督「抜け殻になって怠惰に生きて戯けて……それもまた、次の道だろうよ」
244 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/22(木) 22:44:54.31 ID:6NDxpT5vO

大和「配置につきました、提督!」

「順次、出せます! 数分以内に全機が! 」



大和が出した配置完了の声とほぼ同時に参謀からの報告。
俺も一機の軍用ヘリに乗り準備はとうに済んでいる。

いよいよ、最期だろうか、それとも望みを得るだろうか。
或いは、己の業を見つめ諦めざるを、得ないだろうか。



提督「よし、ではこのまま本土上空を通過し南ぽッ…………ーーーー



指示を出す刹那、無線を引ったくられる。
ぶん殴り奪い取り銃を向けようとその誰かを確認し、俺は



【旗】



0.Graf
1.雲龍
2.雲龍
3.最上
4.最上
5.Graf
6.雲龍
7.Graf
8.最上
9.あきつ丸



ゾロ目……従順な部下は深海棲艦じゃないと思った?
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/22(木) 22:52:50.14 ID:6NDxpT5vO

雲龍「んっ……ぁ、…………ゅるっ……、っ、あはっ」

提督「ーーーー」



殴り飛ばそうと上げた手は絡め取られ、押さえ付けられ。
睨みつけようと考えた思考すら巻き込んで捩じ伏せられ。
奪われたるは生命ではなく、唇だった。

一瞬の出来事ではあったけれど、貪る様に、何かを確かめるように。
吸い付かれるだけ吸い付かれて、こちらの意志など御構い無しに、ただ。

彼女は、雲龍は乗っている軍用機が別の筈だったのだけれど、何故。



雲龍「生きて帰ってきたら、いえ、生きて帰ってくるのは決定事項だけれど」



ーーあなたが私の提督で、よかった

ーーあなたが待っていてくれなくたって構わない

ーーあなたがいるなら私は勝手に帰ってくる

ーーあなたが私を壊して、生んだの

ーーあなたが殺せと命じれば、死ねと命じれば、私は

ーーあなたが、あなたが、あなたがあなたがあなたが、あなたが!



雲龍「死んで泣いてくれると分かっているのなら、死んでも見るのだけれどね? 」



ーーそれを見れないなら、意味なんて無いから、帰ってくる



雲龍「だって私の為に泣くあなたを見たいから。あなたの、下へ」



時間にすればきっと十数秒。
咄嗟に無線の所為にしてだんまりを誤魔化した。

混乱し、惑乱し、ただ勢いのままに放たれた言葉は、未だ俺の心を、掻き乱している。
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/22(木) 23:04:01.11 ID:6NDxpT5vO



………

……………




提督「…………」

大和『あと少しで会敵します! 』

最上『あ、ボクたちもだ』

Graf『あと少しで祖国へ帰れたものを……まったく恨むぞ? 』



数時間の移動などこの高揚と緊張と吐き気にかかれば一瞬で。
気付けばいつの間にか大和たちに細かい指示を与えていた。

この国最大級の火力を操る破壊の申し子、大和。
全ての能力を姉への想いと戦闘に振った、比叡。
俺のようなクズに心を売り慰めを望んだ、雲龍。
俺に対し興味も無く帰還を望む Graf Zeppelin。
自らの出自と葛藤を明かし媚態を見せた、最上。
ただ楽しいことを望む顔で戦う魔 Prinz Eugen。

それから度を越したサディストであり妹に歪んだ感情を向ける金剛と、
何か諦めきった姿と無力感に同調できそうなあきつ丸と。

彼女たち八隻は皆全て別班として行動させた。
俺の子飼たる彼女たちはその経験日数の差こそあれ、皆俺が認めた者たちなのだ。
彼女たちが力を越えて働き負けることはあっても、
その力が間違っていることなどあり得はしない。
247 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/22(木) 23:09:14.00 ID:6NDxpT5vO

“ 艦娘 ”とはつまり精神感応兵器に他ならない。

言葉やジェスチャによる指示を与えられるのは人間と同じではあるけれど。
ある閾値を越えれば指示どころか視界や判断さえ共有できる。

どんな理由であれ戦意に昂ぶった女たちの感情が俺の心を戦いへの破壊衝動に灼いていく。
波濤、快晴、どこからか漂う硝煙と肉の焼ける臭い。

殺せ、殺せ、殺し尽くせと叫ぶ俺の心と。
彼女たちが各々持つ勝利と生き残りへの葛藤と。

その全ての感情が俺を支配して、俺の曇った未来が彼女たちに流れ込んで行く。

愛だ崇拝だと、そんな名前など瑣末なことである。
要は、俺が認めたという、たったそれだけのことで彼女たちはその身を戦場に投じていくのだ。
自らの死など下らないことだと吐き捨てるような身軽さで。
248 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/22(木) 23:16:15.96 ID:6NDxpT5vO

大和がその血走った目から“ 霊気を宿した光 ”を放つ。

大和の感覚として、その近くに艦載機を放つ雲龍の感覚として。
それから周囲の海上を疾る大和に与えた班員の感情を受け取る大和感覚を通して、知覚する。

精神感応兵器たる彼女たちとのシンクロは、このままいけばやがて極限に達するだろう。

もしかすると彼女たちの死が俺への死とすらなるかもしれない。
痛みも、悲しみも、きっと本人にさえ分からぬ千々に乱れた感情すらも。

けれど、感情とはそういうものであって逆の歓喜さえ与えてくれるのだ。

大和が得るかもしれない答えも。
雲龍が願う俺との未来すらも。

彼女たちの高揚した感情に触れ、震える。
そして彼女たちが知覚する俺の感情への怖気にすら、熱が迸った。

愉快愉快愉快、愉悦もここまでくると痛みにさえなる。
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/22(木) 23:24:01.01 ID:6NDxpT5vO

提督「策は与えた、後顧の憂いなど有りはしない、感情と感覚さえ共有できる」



負けることなど、万に一つもあり得ない。

この国が、大和たちが負けないとう意味では決して無い。
彼女たちがこの絶望的戦闘から生き延びればそれで良い。
けれど仮令負けて沈んだとしてその痛苦を俺は知覚する。

共有した高揚感は絶望感にこそ最大限研ぎ澄まされるだろう。

だから、人生への刺激というのならいっそ一隻くらい沈んでしまえ。
そんな感情さえ湧いてきて、そして彼女たち全員に何某かの悪意と興味は伝わっただろう。

けれどその先、生きるか死ぬかなど、どうということもないのだから構うまい。



提督「さぁ見せてみろ! 俺が、俺がこの世に生きる愉しみを!
それが勝利の喜びであれ、愛する女であれ!或いは手痛い敗北であれ、俺は! 」



ーーその全てを、受け入れよう



【この先何があろうとも】



0.痛み分け
1.死ぬがよい
2.痛み分け
3.一隻
4.一隻
5.ふっつーに撤退
6.二隻
7.痛み分け
8.一隻
9.ふっつーに撤退



ゾロ目……完全勝利。この国は解放されました(はぁと)
250 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2018/11/22(木) 23:24:42.40 ID:6NDxpT5vO

……^ ^ ?

ありがとうございました!
251 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/11/22(木) 23:24:49.21 ID:+q8BgSClo
ヒエッ
252 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2018/11/22(木) 23:34:24.16 ID:ZSVBFpOF0
盛り上がってきた?
253 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/11/23(金) 00:06:34.74 ID:YPk7SGDJO
コンマ神「楽しんでいただけたかな?」
254 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/11/23(金) 00:07:02.89 ID:YPk7SGDJO
コンマ神「楽しんでいただけたかな?」
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/11/23(金) 00:08:17.02 ID:YPk7SGDJO
連投スマソ
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/11/23(金) 00:09:24.82 ID:aNCAWgseo
次回作にご期待展開…?

おつー
257 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/11/23(金) 18:56:08.60 ID:he5ZDMWho
緋蜂かな?
陰蜂かな?
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/11/23(金) 19:10:00.79 ID:OZnPoS4jo
いよいよもって死ぬがよい
そしてさようなら
259 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2018/11/23(金) 23:44:28.13 ID:5bW+Pp+00

時間無いのでさらっとリザルトだけ……
260 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/23(金) 23:44:57.38 ID:5bW+Pp+00

あれから一ヶ月。
この国近海どころか南方シーレーン付近にすら敵は殆ど現れていない。
あの大海戦の後に確認された敵性体はたった四隻がそれぞれ単艦で、というものに過ぎなかった。

燃やし、溶かし、灰に変え、八裂きにしつ沈め。
燃やされ、溶かされ、穿たれ、塵にされ沈んだ。

誰が誰であったのかも分からない程損壊した死体ばかり。
化け物体質の恩恵によって脳内麻薬すら無意識に操る艦娘ですらPTSDを患う程のそれは悪夢。

軍用ヘリによる高速輸送によって到達した大和たちもその例に漏れず悪鬼となった。
殺し、殺し、殺し、只管に殺し続けたあの一日。
261 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/23(金) 23:45:34.84 ID:5bW+Pp+00

二日目からも同輩の屍を越え魍魎と化した艦娘たちは戦い続けた。
この国を救う為に立ち上がった化け物たちは己の破壊衝動に負け羅刹に果てたのだ。

半減した彼女たちの中には帰還した際、血塗れで嗤っている者さえいた。
それから徐々に落ち着き自らを取り戻す者、耐え難い心的ストレスに落ちる者、人格がもう修復不可能なまでに破滅した者。

我らは、勝った。
多大なる犠牲の果てに。
そして、彼女たちは帰ってきた。
その人格を失い、ただカタログスペックのみは維持した“ 本人 ”のままに。
262 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/23(金) 23:46:36.33 ID:5bW+Pp+00

「何度でも言おう、それも高らかに誇り高く。
我々は、勝ったのだ。かつてどの国どこの誰をも成し遂げ得なかった、大勝利を遂げた」

提督「…………」

「貴様が生きているのさえ奇跡であると思う程の激戦によってではあるがな。我らは、勝ったのだぞ」



相も変わらず執務室では帝都からやってきた軍人が何事かほざいている。
そんなことは既に百も承知だと怒鳴ってやりたいのだがそんな気力も無い。

一ヶ月経ったとはいえ艦娘だけでなく多くの将兵が南の海に散っていった。
俺としてはそのような瑣末事に心を痛めるなど有り得ないのだが、しかし。

“ 良い上官 ”として慰撫に努め時に共に涙を流した俺がそんな本音を表に出すことは、できない。
嫌でもここは心痛甚だしいのだと疲労感を出しておかねば余計な仕事を増やすことになる。
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/23(金) 23:47:19.96 ID:5bW+Pp+00

「……まぁ、良い。貴様の部下たちは誠に悪鬼中の悪鬼といえる化け物揃いだった」

提督「残念ながら彼女たちはただの女でしたよ。化け物と言える程の何かは持ち得ていなかった」

「謙遜などするな。それこそ、彼女たちに申し訳なくなるだろう」

提督「…………そうでありましょうか」


謙遜、なんかではなく、本音である。それも心底からの。
化け物は化け物であってそれ以上にはなれないし、それ以下になる女を俺は歯牙に掛けない。

だから、内心ではこんなにもつまらない結果になったことを彼女たちに八つ当たりしたい気ですら、あるのに。

嗚呼、彼女たちは、あの戦いでーーーー



【戦果リザルト:大和】



0.カタワ
1.PTSD
2.轟沈
3.PTSD
4.轟沈
5.カタワ
6.生還
7.轟沈
8.轟沈
9.轟沈


ゾロ目……人間としての生活を

264 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/23(金) 23:52:05.48 ID:5bW+Pp+00

提督「大和は……まだ戦い足りないと申しておりましたがね」

「それはそれは……大和中の大和、誠我が国の誇りよな」



横須賀の、つまり俺の動かせる最大戦力たる大和は、見事に生還したのだ。
それも、たった一人で艦隊分以上の働きを成し遂げて。

PTSDを患ったり身体の一部を失うことも無く、穏やかな笑みと悲しみに満ちた表情で、ゆったりと。



提督「あの規模で次の望みが見つからないとは……あいつに望むのを止めるべきだろうか」

「あ? 」

提督「いえ、独り言です」



それから、あの常に寝ている様な姉キチ御召艦はーーーー



【戦果リザルト:比叡】



0.カタワ
1.PTSD
2.轟沈
3.生還
4.轟沈
5.轟沈
6.PTSD
7.轟沈
8.カタワ
9.轟沈



ゾロ目……人間としての生活を
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/11/23(金) 23:53:06.68 ID:aNCAWgseo
開幕一割…飛ばすねぇ
266 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/23(金) 23:56:09.45 ID:uMF10Dg30

「女として身体の一部を失うというのは……いや、軍人としては誉れであろうが」

提督「生きているだけで十分だと、比叡は言っておりました」



PTSDに苦しまされるよりは、きっと何倍もいい終わりだったのだろう。
その笑顔に陰が見え隠れしたとしても、ベストの終わりではなかったとしても。

彼女は、まだ終わっていない。



比叡といえば何は無くとも、姉である。
サディスト地味た新参ではあったが戦いに対しての姿勢は真面目なものでーーーー



【戦果リザルト:金剛】



0.生還
1.PTSD
2.PTSD
3.轟沈
4.轟沈
5.轟沈
6.カタワ
7.轟沈
8.轟沈
9.カタワ



ゾロ目……人間としての生活を
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/24(土) 00:01:54.87 ID:z/Ub4W4P0

「彼女らにまともな戸籍やバックボーンが無いとはいえ……どうにか報いたいものよ」

提督「そうですな」



金剛は、沈んだ。
それはもう、盛大に。

大和が蹂躙したその先すら臨み、掃討を繰り返す内の反撃。
味方の大部分を転回させたった一人、大部隊を地獄送りにするのと引き換えに。

きっと何か、彼女たちの心に刻まれたドラマもあったのだろう。
比叡は、悲愴感など微塵も見せない。

あれだけ慕った姉を喪い、己の身体を一部失ってなお、笑う。



「元人間であればまだ、その遺族もいるのだが……」

提督「その“ 遺族様 ”に金が渡ることを望む艦娘などおらぬでしょうよ」


そうだろう? 最上。お前なら、絶対に望まない筈だ。



【戦果リザルト:最上】



0.PTSD
1.カタワ
2.轟沈
3.PTSD
4.轟沈
5.轟沈
6.カタワ
7.轟沈
8.轟沈
9.生還



ゾロ目……人間としての生活を
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/24(土) 00:07:37.73 ID:isirCP4S0

「そうか……いや、そうであろうとは思うのだが」

提督「どうせならば仲の良かった同輩にでも還元してやればよろしいのです。
私としては、彼女らに何かしてやるよりはしめやかに、勝手に祈ってやることが一番、そう思いますが」



最上もまた、沈んだ。

元人間として、冷笑的な人格も見え隠れさせ始めていた矢先の悲劇。
彼女ならば喜劇だと笑って終わらせただろうか。

まさか、彼女が間抜けな僚友を庇い致命傷を受けたなど、戦闘前の俺は信じなかっただろうが。
何より、彼女本人すらそんなもの鼻で笑い飛ばしただろう。



「他国からの預かりものもまた面倒ではある。同じだけの“ ドロップ ”を揃えるのも今では儘ならぬ」

提督「そもそも敵性体が殆ど現れませんからな」



結局、Prinz Eugenにはまともな形で自らの“ お姉さま ”に会わせてやることができなかった。
本当に会いたかったのかどうかは、今もって分からないことではあるが。



【戦果リザルト:Prinz Eugen】



0.カタワ
1.PTSD
2.生還
3.カタワ
4.轟沈
5.轟沈
6.轟沈
7.轟沈
8.PTSD
9.轟沈



ゾロ目……人間としての生活を
269 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/24(土) 00:16:43.35 ID:LViNAHiL0

提督「沈んでしまったのならばそれで終わり、ただ傷痍の身となってしまった者に関しては」

「左様……こちらで世話をすることになろうな」

提督「ま、サイバネティクスも進化しております。その内義手や義足を付けて出撃できることにもなるでしょう」



自ら豪運を語るPrinzは、その発言通りに帰還してきた。
ただその身の一部を失い、笑みもまた暗いものにして。

ーー実力が足りなくて運だけだから、こうなったのよね。

力無く笑ったその顔を見れば、実力など関係無い戦いであったことは一目瞭然だった。
それでも、生き残った他の仲間を慰めるその姿に、前を向く信念を感じたのではあるけれど。



「それからな……陸軍のやつらも五月蝿い」

提督「あぁ……あきつ丸やまるゆも大勢出撃させましたからな」



横須賀や呉に残した艦娘もいたけれど、それは極々一部。
陸軍の艦娘については寧ろ、その殆どを出撃させた。

まぁ、俺の部下であるあきつ丸は政治的背景など関係無く出撃させたのだけれど。



【戦果リザルト:あきつ丸】



0.轟沈
1.PTSD
2.轟沈
3.生還
4.轟沈
5.カタワ
6.PTSD
7.轟沈
8.轟沈
9.カタワ



ゾロ目……人間としての生活を
270 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/24(土) 00:22:48.50 ID:LViNAHiL0

提督「とは言っても彼女ら本人は然程不満など申しておりませんが」

「そうか……ま、共に同じ釜の飯を食い戦い抜いた者たちよ。帝都に燻るクズどもとは違う、か」



お前もその一人だろうが、とは言わない。
言っても意味が無いし、何より人格的には俺より優れているのだろうから。

あきつ丸も確かそんなことを言っていた。



ーー尊敬できるのは提督殿でありますが、それは戦時だからこそであります。



平時には無用の長物、それが俺らしい。
我ながらそれを聞いたときには笑いを堪えられぬ程面白いと思ったものだ。

互いに手の内を見せ合いビジネスパートナー地味た関係だった女にそれを言われるとは。



提督「ビジネスパートナーといえば……いや、あいつはパートナーの部分だけは否定するだろうが」



あと少しで祖国に帰る筈だったGraf Zeppelin。
彼女に関しては運が無かった、そうとしか言いようが無かった。

諦めた様な顔で出撃した彼女も、また激戦に次ぐ激戦を戦い抜きーー



【戦果リザルト:Graf Zeppelin】



0.カタワ
1.PTSD
2.カタワ
3.PTSD
4.轟沈
5.轟沈
6.轟沈
7.生還
8.轟沈
9.轟沈



ゾロ目……人間としての生活を
271 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/11/24(土) 00:25:59.23 ID:Rcl591I30
PTSDだけは引かないあたりこの提督の艦娘らしいな
272 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/24(土) 00:29:15.44 ID:UCrbziB/0

戦い抜き、そして帰ってきたのだ。
空母でありながら撤退せず奮戦した挙句、本人すら失笑する名誉の負傷とやらを受けて。



提督「本人が希望すれば帰国させてしまうのも手でしょう。
あちらはこの国よりも人権には五月蝿いのです」

「あぁ。助力に感謝はしているが戦えぬ者を大勢養う余裕は無いのだしな」

提督「……ええ」



外国人に対して冷淡なのはどこも同じなのだろうか。

Grafに訊けばきっと一度は否定してみせ、更にきつい一言を返してくれるのだろう。
冷淡なのではない、そもそも気にすらしていないんだ、とかなんとか。



「…………そういえば、足りているか? 」

提督「は? 」

「女は、足りているか、と。貴様もこの一ヶ月働き詰めだっただろう」

提督「ーーーー」



やにわに、一言。
あくまで真面目な話なのだ、とその実下卑た顔で。

前言は撤回しなければならない。
この将校も人格など破綻している。俺と同列だ。さっさと消えてくれ。



【戦果リザルト:雲龍】



0.カタワ
1.PTSD
2.カタワ
3.生還
4.PTSD
5.轟沈
6.轟沈
7.轟沈
8.轟沈
9.轟沈



ゾロ目……人間としての生活を
273 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2018/11/24(土) 00:30:00.01 ID:g7Gr1nST0

???!!!?!?!?!??!???!?

ま、また来ます……少なくてすみません

ありがとうございました
274 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/11/24(土) 00:31:19.14 ID:36FDGop/0
これはメインヒロインの貫禄ですわ(白目)
275 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/11/24(土) 00:33:05.01 ID:fsOoJbBQ0
おつつ
 ここでゾロとかコンマ神マジエンターティナー
276 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2018/11/24(土) 00:33:09.35 ID:1fEYPCds0

【まとめ】



大和……生還
比叡……カタワ
金剛……轟沈
最上……轟沈
Prinz Eugen……カタワ
あきつ丸……カタワ
Graf Zeppelin……カタワ
雲龍……人間としての生活を
277 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/11/24(土) 00:36:17.14 ID:sPBozEM7o
大和「!!??!!!??wwww!??!!?」
正直一人勝ちしたと思ったぞ……コンマ神やりやがったな!
278 :以下、名無しに変わりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/11/24(土) 00:45:45.89 ID:kaVwu/JpO

やはりこのスレのコンマ神はおかしい(褒め言葉)
279 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/11/24(土) 00:55:53.99 ID:dTCdFJbIo
なんというか…
コンマ神ってやっぱエンターテイナーやわ
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/11/24(土) 14:49:25.87 ID:Y2dlwX2DO
くっそワロタwww
やっぱここの1はコンマ神に愛されておる……
281 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/11/24(土) 15:36:21.59 ID:e1udXUlmO
プリンちゃん…
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/11/24(土) 22:12:58.68 ID:CpEMYsiWO
大和さん!?
283 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/11/24(土) 22:14:56.63 ID:zElPuP59O
初期ではメインヒロインの風格を漂わせてた大和さん
どうしてこうなった
284 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/24(土) 23:34:18.65 ID:S9z9sjMs0

まぁ、この後はコンマも無いので……ゆっくり書き込んでいきます
よろしければどうぞ
285 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/24(土) 23:35:21.93 ID:S9z9sjMs0



………

……………



某日、横須賀にて。
集ったのは、同じ喜びと悲しみを背負った者たち。



大和「失われた全ての生命に、そして生きながらえた私たちの明日に」

比叡「明日に」

Prinz「明日に」

あきつ丸「明日に」

Graf「明日に」


私たちは、勝った。
あらゆる国が追い求める安寧を数多の犠牲の果てに、得たのだ。

五体満足でこの地に立てた者などそう多くはない。
私たち、つまり提督直属の部下の中では私と、それから雲龍さんの二名のみ。

それとて、八人、そう八人だ、八隻では決してない。
八人の中で六人が生き残り、無傷で生還した者が二人もいる。

しかもその一人は英雄の妻として、人間となれたのだ。
類稀な英雄とその妻と、万雷の喝采で認められこそすれ、誰一人反論など唱えようはずも無い。
仮令女の方が、化け物の最たる者だとしても。
286 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/24(土) 23:36:02.61 ID:S9z9sjMs0

Prinz「やーんなっちゃうなぁ……腕の傷口見る? 」

Graf「要らん。自分ので間に合っているからな」

比叡「足じゃないだけマシですって。この義足の使えないことなんの」

あきつ丸「ある意味では自分が一番マシではありますね。
まぁ片目を失うということが良きことであるのならば、でありますが」

大和「…………」

Graf「そんな顔をするのはやめておけ。
貴様は私たちには遠く及ばない戦姫であったのだ。寧ろ誇るべきだろう」

Prinz「そ、あの意味分かんない提督が撤退を命じても戦った私たちが悪いの」

あきつ丸「あれが撤退を命じるにも拘らず戦ったといえば聞こえはいいが……いや、馬鹿なことをしたものでありますね」

比叡「本当本当。あの損得と戦術の鬼の命令無視したんだもん」

大和「…………」
287 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/24(土) 23:38:58.89 ID:S9z9sjMs0

場所は提督の執務室。
あの激戦から二ヶ月と少し、漸く落ち着いた鎮守府で、祝勝会などではない、私たちだけの集まり。

初期から私たちの頭脳役だった最上、途中から加わったにも拘らずすぐさま溶け込み護国の鬼となり沈んだ金剛。
これは、彼女たちを弔う集いだ。
ただ、しめやかに穏やかに行われるそれは悲劇と記憶の、忘れられない空間だった。



Prinz「まぁ、でも……ねぇ? 」

Graf「私の名誉に掛けて誓うがな、雲龍は私たちすら及ばぬ境地にいたのだ」

Prinz「知ってるけど……でもさ」

比叡「…………」

あきつ丸「…………」

大和「心からの祝福とは参りませんが……それでも、提督は提督として十二分に働きました。
雲龍さんもその身に余る攻勢を耐え敵方に打撃を与えたのです」


Prinzの言いたいことは、分かる。分かり過ぎる、程に。
その本音を終ぞ見せなかったように思える彼と。
彼だけに執着しあれだけ望んだ勝利と戦果さえ度外視して戦った彼女。

彼らが幸せを謳歌することに何某か蟠りが残るのは、仕方がない。
ましてや最上と金剛という最も近い同輩を失い、多くの僚友さえ海の藻屑として捨てたのだ。

人によっては、幸せに笑うことさえ暫くは慎めと怒気を湛えるだろう。
288 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/24(土) 23:40:11.71 ID:S9z9sjMs0

提督「さて、俺のクズさを肴にでもしているのかな」

大和「て、提督っ」

Prinz「まっさか。我らが英雄様を謗ることなどありましょうや」

提督「言ってろ。……俺の兄貴と弟、ついでに妹が結婚相手を探しているが? 」

Graf「願い下げだな。貴様の血族など見なくてもうんざりする程だし

比叡「司令が義理の兄妹とかねぇ……本当願い下げ」

あきつ丸「自分は別にそれで……いや、分かっているでありますよ。
これがここの祝福であることなど」



入ってきたるは私たちの提督だ。
現世に舞い降りた軍神の名も高らかに、文字通り化け物地味た戦果を挙げた女を妻にした英雄。

護国の鬼神たる彼を崇め敬いこそすれ、瑕疵を論うことなど、あっては、ならない。
ならない筈では、あるのだけれど。
289 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/24(土) 23:42:10.10 ID:S9z9sjMs0

大和「…………結局横須賀からは離れられないそうですね」

提督「ん? まぁな。妻がいる身でまさか地中海や北方に出向くわけにもいくまい」



相変わらず外面だけはいいのだ、この男は。
表情だけを見たならば、それはまさに英傑の貌であって、爽やかながらも益荒男の気質を感じさせる偉丈夫だ。
この上妻を労わる夫の顔まで見せられたらば、なんと酷い仕打ちだろう。

この男が生きていれば当面この国に心配など欠片も要らない、そう思わせる勝者の余裕では、あるのだけれど。

私たちにだけは、分かってしまう。
その裏で、他者など笑って切り捨てる悪魔の顔が。



Prinz「ふん……今日はその奥様はいないようだけど? 」

提督「あぁ、あいつはもう自分一人だけの身ではなくなったからな。家に置いてきた」

Prinz「……は? 」

Graf「……お早いことで」

比叡「どーせ雲龍さんが“ 解体 ”されてから盛りまくったんでしょ……それにしても早過ぎるけど」

あきつ丸「四週間や五週間で分かることはあるらしいが……ま、祝いの言葉くらいは贈ってやるであります」

提督「どうもどうも。涙が出るね」

大和「…………二人に、傾けてあげてください」
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/24(土) 23:42:37.33 ID:S9z9sjMs0

強引に、終わらせよう。それが私にできる唯一のことだ。

最上が嘲笑すべき同輩の為に沈み。
金剛が身体を張って殿を務めあげ。
私以外の四人が身に一生消えない傷を負ったのだ。
ならば致し方あるまい。女として、否、“ 人間 ”として。


禍福を共有した女が一人、地位も男も子供も、女としてあらゆる幸せを得たのであるならば。
多少の妬っかみくらい、許してほしいものである。

けれど、仲間が仲間を貶す様な場面は見たくはない。
そうであるなら、強引に、強く強く、退けない程に幕引きを。

失った仲間の想い出でも、語っている方が、余程健全であろうから。
291 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/24(土) 23:45:44.78 ID:S9z9sjMs0

提督「俺たちの仲間である最上と金剛両名の明日に」

大和「! 」

提督「俺たちの中にあいつらは、生き続ける。俺たちが忘れない限り、俺たちが戦うことを止めない限り」

大和「ッ……明日に」

Prinz「ふん……明日に」

Graf「明日に」

比叡「明日に」

あきつ丸「明日に」



その顔が嘲笑に満ちていたのならば、殴り飛ばし下手をすれば殺していただろう。
けれど、その顔は、心から彼女たちの死を悼んでいるようで。

比叡もあきつ丸も、それにPrinzもGrafも、その顔に嘘を見出せなかったようで。
救われたのか、それともただ過去のものにされてしまったのか。
それは、永遠に分からないのだろうけれど、でも、よかったのだろう。

盃を交わし、呷り、また一献。
まず初めにPrinzが意識を失い、Grafが最後の矜持を守る為に自室へ消えて。
比叡はいつの間にか寝て、金剛との夢に還り。
あきつ丸は、きっともう横須賀へは帰らない次なる任務へと旅立ち、そして。
292 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/24(土) 23:46:23.17 ID:S9z9sjMs0

大和「これでもあなたには感謝しているのですよ、提督」

提督「そりゃありがたい。……ん」

大和「ありがとう。今生もう一人生まれるかも分からない妻子持ちの英傑に二人きりで酌をされるなんて光栄です」

提督「ほざけ。……俺は、お前にこそ惹かれていたのかもしれない」

大和「…………」



真っ直ぐ、射抜く様な鋭い鏃の如き眼光を向けられた。
今すぐ逸らしてしまいたい欲求に駆られ、抗う。

正直に言えばずっと苦手だったその曖昧で深過ぎる闇の様な眼光も。
気付けばどこか柔らかく暖かい灯火を僅かに宿していた。



大和「雲龍さんに、怒られますよ? 」

提督「構うものかよ。あれは、俺に惚れているからな」

大和「莫迦。女の嫉妬を甘く見過ぎ」

提督「そうかな? いや、お前を愛人にでもしようかと思っていたんだが」
293 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/24(土) 23:48:14.59 ID:S9z9sjMs0

それは冗談混じりの戯言なのか、それとも英雄色を好むという腐った格言の通りなのか。
興味を持ってはいけないのだろうけれど、悲しいことに少しだけ、ほんの少しだけ、希望が灯って、
そして自らフッと息を掛け、消した。



大和「あんまり幻滅させないでくださいな。……はい、最後の一杯にしておきなさい、旦那様」

提督「ーーーー」



暫時、瞠目して。それから獰猛な笑みを浮かべた彼。
彼は物分かりがいい、寧ろ良過ぎる。だから、これで終わりなのだ、私たちは。
この一瞬、少しだけ夫婦っぽいお遊びをして、終わり。これ以上は、進まない、踏み込ませない。
それが彼の為であり、私の最後の矜持だ。



提督「お前とは別の出会い方をすればよかったのかもな、大和」

大和「だとしてきっと雲龍さんと幸せになったでしょう、あなたならば」

提督「そうだといいな、うん」
294 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/24(土) 23:49:42.77 ID:S9z9sjMs0

今度は一度、瞑目して。
また私を射抜いて、そして笑って。



提督「大和」

大和「……はい」

提督「明日への希望は、見出せたか? 」

大和「そうであるとも言えず、そうではないとも、言えません」

提督「ほう? 」

大和「このままドイツやフランスの援軍として転戦するのもよし、
雲龍さんの様に慕うべき殿方に尽くすもよし、
或いは横須賀で後進を育成し来るべき戦いに備えるもよし」

提督「あぁ」

大和「私は……そのあらゆる未来への、布石となることに決めました」

提督「…………」

大和「私の幸せは、私だけが見通す未来のどこかにあるのです。
何か一つの目的を探すなんて、私には難し過ぎますから」

提督「…………大和、本当に

大和「言わないで。あなたに誘われたら、揺らいじゃうじゃないですか」
295 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/24(土) 23:51:37.89 ID:S9z9sjMs0

提督「…………」

大和「…………」

提督「…………ふ、そうだな、そうだろう、な」

大和「ええ、そうですとも」



言って、少しだけ後悔。駄目押しに頷いて、もう少し後悔。でも、それだってきっといつかの幸せなのだと信じていく。

私は、大和型戦艦一番艦大和の憑座たる艦娘大和であり、そして大和という名を得た、人間。

目の前で酔ったふりをする悪い男になんて嵌ってやるものですか。
寧ろ、私を一番にしなかったことを後悔させてやらなくては、なんて。

得られたかもしれない幸せに背を向けた、そんなありふれた女の、これは一夜の、ちょっとした記憶なのでした。
296 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/11/24(土) 23:52:14.06 ID:l33+gM4IO
(´;ω;`)ブワッ
297 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/24(土) 23:56:35.39 ID:S9z9sjMs0



………

……………





「おかえりなさい、あなた」

「あぁ、ただいま。……身体は? 」

「心配し過ぎ。まだまだ、あなたの執務くらい助けられたのに」



帰宅して、暖かい妻に迎えられて、ただその幸せを甘受して。
まぁ、これはこれで悪くはないと、思う。

俺は、決めたのだ。ダイスの力になど頼ることなく、何かを信じるのだと。
信じるのならば、ただ与えられる妄信的で絶対的だと信じることのできる愛に身を捧げるのだと。



「今日は飲んできただろうけれど……飲む? 」

「お前が酌をしてくれるのなら」

「ふふ……馬鹿ね、そんなのあなたから答えを言っているのと同じ。飲み足りないのね? 」

「あぁ」



彼女は、俺のしたいことやしてほしいことを不思議と見通してくれる。
敵の動きや部下としての感情など造作も無く把握できた俺ではあるけれど。
それだけは、彼女にはきっといつまでも敵わない。
298 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/25(日) 00:00:37.36 ID:rJawS7do0

「あ、そうそう……お口か胸くらいなら、いいけど? 」

「ばーか。そこまで猿じゃねぇよ。休んどけ」



別に彼女がまだそこまで腹を重荷にはしていないことなど分かっている。
艦娘ではなくなったとしても人一倍丈夫なのだ、我が妻は。

それは何度も何度も、寧ろ彼女から求めてきた幾夜で理解している。
それでも、この曖昧模糊としていながらも何かを掴めそうな幸せの為に、耐える。

彼女の肢体も、その愛しか含まれない無垢の献身も。
幾度も味わったからこそ今すぐにでも貪りたい気持ちはあるのだけれど、それでも。

耐えることが、彼女を想うことが己の幸せに繋がるのだと、信じている。
否、信じることにしたのだ、俺は。
299 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/25(日) 00:05:04.44 ID:rJawS7do0

「寧ろだな……おい」

「何? 」

「休暇を、取った。今度、温泉にでも行こう。悪いが親父や兄弟も呼んでいるが」

「……いいの? 」

「何が? 」

「私、これでも認知くらいで我慢しようと思っていたのだけれど」


言って、何かまた続けようとして、目を伏せて、顔を背けて。

嗚呼、これが、何か、幸せということなのだろうか。
誰かを信じて踏み出したのならば、踏み出した分だけ相手が歩み寄ってくれて。

その歩み寄りが幸せなのだと信じた相手の愛を包んでやって。
包んだ愛を感じてまた自分も言いようの無い暖かさに、酔って。



「泣くようなことじゃ……心外な」

「だって、あなたクズでしょう? 」

「違いないが……これでも変わろうとしているんだ、俺なりに」
300 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/25(日) 00:09:42.44 ID:rJawS7do0

大和との語らいは言うに及ばず。

PrinzやGrafといった俺に多少の反感を持っていた部下の心にも寄り添おうとしたつもりだ。
あきつ丸や比叡といった一歩引いた視点を持つ部下にも歩み寄ろうとしたつもりだ。

つもり、つもり、つもりだけ。
けれどそのつもりが、いつか積もって何かに変わると、信じて。

せめて、愛すると決めた女には信じてもらいたいし、否定されたくない。



「ま、それでもまだ信じるわけには、いかないけれど? 」

「お手上げだ、それじゃあ。何か? またダイヤの指輪でも贈ろうか? 」

「要らない。そんなものこれ一つで十分。……ね」

「ん? 」

「指輪がどうして高いか、知ってる? 」

「お前を大事だと、美しいと、愛すると信じた分の誠意」



馬鹿真面目に、割と本音で答えて、笑われた。
そんなに笑わなくたって、いいと思うのだが。

301 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/25(日) 00:13:30.36 ID:rJawS7do0

「これはね、あなたがあなたじゃなくなったとき、死んでしまったときの、保険なの。
自分がどうにかなったとき、残された妻を、子を、路頭に迷わせない為の、財貨」

「俺はまだまだ死ぬつもりじゃないが」

「それも知ってる。それにまだまだ死なせてあげるわけないじゃない。この子が生まれたら次の子もすぐ、ね? 」

「…………」

「あなたが呉れたこれは、私たちを想う心そのものなの。
それはいつか売れる財貨であって、そして唯一無二の決意表明。愛してくれる、証」

「…………」

「だから、二つ目なんて要らないわ。ただ、何度でも愛して、キスでも一差し、呉れればいい」

「…………」
302 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/25(日) 00:20:12.02 ID:rJawS7do0

自然と、手と手が絡み合う。
腰に回した手が暖かな肉を柔らかく掴む。

女としては高身長な彼女も、身体だけは鍛え抜いた俺からすれば然程高くない。
その身長差がいいの、なんて臆面もなくピロートークで言われたときには困ったものだけれど。

でも、確かにこれはいいのかもしれない、なんて。

妻と、子供と。
その二人を一人で包み込んで自分を安心させる為には、これが必要なのかもしれない。



「ふふ……ねぇ、覚えてる? 」

「朝になっても欲しがり続けたくせに鬱血痕が恥ずかしくて宅配便を受け取りにいかなかったこと? 」

「莫迦。……私があなたを殺そうとしたこと」



頤を指で上げて覗いた瞳、それが暗闇の猫の様に、細まる。
まるで見通せない深淵を覗く様に、逃がさないと叫ぶ様に。



「やめたわ、そんなの。殺してなんて、あげないから」

「それは嬉しいね」

「嬉しい? ご冗談を。……あなたが私とこの子以外を見たら、一生許さない」

「構わない。見る気も無い」

「どうだか。今夜あたり大和さんでも口説いてきたんじゃないの? 」

「ーーーー」
303 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/25(日) 00:26:06.33 ID:rJawS7do0

「…………そんなわけないだろう? 」

「ふふ……そうね、ええ、そうでしょうとも……んっ」



面倒なことを囀る唇は黙らせて。
そのまま絡み合うわけにはいかないけれど、どちらからともなく寝台に倒れて。

いや、彼女の身体を労ったつもりであって、下敷きなのは俺。
どちらからともなくというのはつまり、俺が倒れ込んだのか、彼女が押し倒したのかということ。



「っ……ん…………他の女の臭い」

「当然匂いくらいは……ッ」

「だーめ。それも、駄目、許さない。上書きしないと」

「……ッ」



吸われて、噛まれて、今度は労わる様に舐められて。
抱き締めた獣に貪られるのも、まぁ悪くはない。

正直なところ、まだ幸せなんてものを実感できているとは思えないけれど。
それでも、彼女が大切だというのは紛れも無い、事実だ。

俺がまだ本当に幸せではないのだと、それすら理解して黙って愛してくれて。
何もかも、他の女なんて瑣末なことどころか今までの鬱屈すら上書きしようとしてくれて。



「嗚呼……俺は、なんてッ……! 」

「仕合わせ、そうに決まっているわ」
304 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/25(日) 00:29:12.07 ID:rJawS7do0



「だって、私がこんなにも、仕合わせなんだもの、ね? 」



咲いた花に食われるなんて、なんて、何?

これが幸せだというのなら、甘んじて受け入れよう。

寧ろ、これを信じた自分が間違っているなど、認めない、認めたくはない。

俺が、俺自身がこれを、彼女を幸せそのものだと、しんじたのだから。



「あぁ……お前が幸せなら、救われるさ、何もかも」



いつか夢見た幸せを、きっといつか、本物に。
305 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/25(日) 00:29:39.84 ID:rJawS7do0








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