高垣楓「れんそうげえむ」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2018/12/10(月) 22:11:45.86 ID:ThdkkE4u0
デレマスのss。地の文アリです。
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2018/12/10(月) 22:14:57.74 ID:ThdkkE4u0
「すいませんプロデューサーさん、あれってどうなってますか?」

 午後二時。昼食の消化もいい具合に進み、睡魔が幅を利かせ始める時間帯。俺も例に漏れず重たくなる瞼と格闘しながら、それでも給料泥棒の悪名を冠したりしないように、必死に意識を繋げていた頃合いのこと。
 肘をちょんちょんとつついてきたちひろさんに問われたのは、この前請け負ったとあるお仕事についての話。

「今手を付けてるんで、今日のうちには完成させておきます」

 ちょうど佳境に入ったところだった。優先順位的にはそこまで重たいものではないので処理を先送りにしていたのだが、だからといっていつまでも見て見ぬふりをし続けるのは不可能。「今から急ぎで」みたいな忘れていた可能性すら疑わせる返事をしなくて済んだことにほっと一息つく。こればかりは、己の慧眼に感謝だ。
 目頭のあたりをぎゅっとつまんで、再び作業に戻る。少しでもぼーっとしていると、そのまま突っ伏してしまいそうだったから。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2018/12/10(月) 22:15:39.25 ID:ThdkkE4u0
「…………」
「……あの」
「なんでしょう?」
「その、脇に立たれると気になるって言いますか」
「なるほど。じゃあこちらに」
「正面は余計に驚きますね」
「ならこうしましょうか」
「……いや……はい。分かりました」

 脇に立つことをやんわりと禁じ、正面に居座ることに難色を示した結果、声の主は空いている椅子を持ってきて、俺の横に座ることで手打ちにしたらしい。抜け道を残した自分の瑕疵なので、とやかく言うのはナンセンスだろう。
 高垣楓という女性の人間性についてある程度理解しているはずなのに、うっかりしていた。楓さんはこういうことを平然としてくる人だ。

「プロデューサー」
「はい」
「あれについてなんですが」
「…………」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2018/12/10(月) 22:16:19.23 ID:ThdkkE4u0
 さあ、考える時間だ。議題は「あれとはなにか」。
 昨日、一昨日あたりの記憶を重点的に洗って、それでも引っかかるものがなかったのでここ一か月くらいの範囲を精査した結果、俺が導き出した答えは。

「………………………………すいません楓さん、なんの話か教えてもらっても?」
「いつか、ご飯をご一緒しようという話になったので」
「あ、ああ。あれですねあれ。もちろん考えてますよ」

 正直まるで思い当たる節はなかったが、彼女が言うのならそういうこともあったのだろう。そうに違いない。もしかしたら、アルコールが入っている時に適当な口約束を結んでいたのかも。
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2018/12/10(月) 22:29:55.20 ID:ThdkkE4u0
「良かった。今週末には予定がないので、それを伝えておきたかったんです」
「分かりました。セッティングしておきますね」
「…………」
「……あの、まだ何か?」

 どうにかやり過ごしたと思ったのに、これで終わりではないらしい。フラットな視線がこちらの顔に突き刺さってきて、目のやり場に困る。しかし相変わらず、どこを見てもとんでもない美人さんだ。絶世の美女という言葉は、この人の誕生を予期して作られたのではないかと考えてしまうくらいに。

「プロデューサーさんは、どれくらい私のことをご存知ですか?」
「……それなりに、程度かと」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2018/12/10(月) 22:42:00.60 ID:ThdkkE4u0

 顔、名前、公称プロフィールの諸々、あとはちょっとした趣味とか。これくらいはファンなら自ずと頭に入ることなので、そこと一線を画そうと思えば、自宅の住所を知っていることを挙げるだろうか。
 総評して、一般的なファンより多少詳しい、的な場所に落ち着くような気がする。

「それなりですか」
「ええ、それなりです」
「これは問題ですね」
「どのあたりがでしょうか」
「いえ、プロデューサーたるもの、担当アイドルに関する見識は誰よりも深い必要があるかと思いまして」
「なるほど」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2018/12/10(月) 22:51:58.67 ID:ThdkkE4u0
 言われてみれば、そうなのかもしれない。彼女の魅力を限度いっぱいまで引き出すことを考えた時、まず第一に、俺が売りだすべきストロングポイントを熟知していなければならない。
 まあ、俺が小賢しい手を講じるまでもなく、楓さんは勝手に一人で売れていってしまう気がしないでもないが。馬子にも衣裳なんて言うけれど、わざわざ白鳥にドレスを仕立てるのは下策に思える。楓さんの素のきらびやかさを思えばなおさら。

「なので、今後はもっと私への関心を深めるようにお願いしますね」
「善処します」
「絶対ですよ?」
「分かってますって」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2018/12/10(月) 22:52:45.63 ID:ThdkkE4u0
 詰め寄られて、少しのけ反る。あんまり近いものだから、色の違う両の瞳に吸い込まれてしまいそうで腰のあたりが落ち着かない。

「週末、楽しみにしてますから」

 そう言って、楓さんはようやくのこと俺のデスクから離れてくれた。ちひろさんの視線が気になるので、そちらを見ないようにして仕事を再開しないと。
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2018/12/10(月) 22:53:21.75 ID:ThdkkE4u0
「ワインも捨てがたいですが、やはり日本酒ですね」
 
 楚々とした所作でお猪口を傾けた後の一言。来店からそれなりの時間が経過したので、楓さんの頬はほんのり赤く色づいている。
 しかし、相変わらず何をやっても絵になる女性だ。時代が時代なら、この美貌だけで国の一つや二つ陥落させていたのではないか。前もってハニートラップである旨を告げても、その上で喜び勇んで引っかかる人間はそこそこの数に上るはず。
 俺だって、仕事で関係のある人でなければまず真っ先に美人局の可能性を疑った。実際、周りの客からはそう見えている可能性もある。
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2018/12/10(月) 22:53:48.09 ID:ThdkkE4u0
「一献いかがですか?」
「喜んで」

 ファンが見たら怒り狂う光景かもしれない。『高垣楓にお酌してもらう権利』なんて、どんな人生を歩めば手に入るのだろうか。
 事実、彼女と何度か食事をするたびに、運命の数奇さのようなものを感じずにはいられなかった。役得と断じてしまうのは簡単で、しかしその根っこは意外と深い。要は運が良かったのだ、俺は。
 そんなことを考えながら口の中に流し込んだ日本酒の味は良く分からなかった。思考が飽和して、味覚が職務放棄を始めたらしい。
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2018/12/10(月) 23:06:10.31 ID:ThdkkE4u0
「プロデューサー?」
「なんです?」
「心ここにあらずといった様子だったので。酔っちゃいましたか?」

 なぜか楓さんは唇の前で人差し指を交差させてばってんを作っている。「お酒はもうダメですか?」という意味だろうか。首をこてんと傾ける仕草が年不相応にかわいらしくて見惚れかけるが、また言葉を失ったら本格的に泥酔を疑われてしまう。それは芳しくない。人並みに欲があるので、もう少しこの時間を楽しんでいたい。

「すいません、仕事のこと考えてて」
「もう。めっ、ですよ」
「…………」
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2018/12/10(月) 23:07:11.23 ID:ThdkkE4u0
 先ほどの人差し指をとんとんと二回叩いた楓さん。気分としては、悪戯を叱られた子供のようだ。
 しかし、普段のミステリアスさが徐々に溶かされているからお酒というものは末恐ろしい。割と茶目っ気がある人なのは知っているが、こうも行動が変わるのだから。

「プロデューサー、あれ、頼んじゃいましょうか」
「……この間話していた銘柄?」
「そうです。さっきラベルを見かけて」

 店員さんに声をかけて、奥に見える日本酒をオーダーする。一連の段取りを流れでこなしていると、楓さんはやけに満足げに二度ほど頷いた。
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/12/10(月) 23:08:48.97 ID:ThdkkE4u0
「この感じです」
「と言うと?」
「詳細を話さずとも伝わる感覚とでも言いますか」

 指示語の内容を問わずとも理解できる状態を言うのだろうか。前後文脈から彼女の性格嗜好を考慮して、『あれ』にあたるものを特定する感じ。これはまた、なんともハイコンテクストな……。
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/12/10(月) 23:13:53.41 ID:ThdkkE4u0
「山と言ったら川。阿と言ったら吽。そんな風に、私を理解していただけたらなって」
「言葉を尽くすのはお嫌いですか?」
「そういうわけではないのですが。でも、こういうのもなかなか悪くないなんて最近は」
「なるほど」

 発展コミュニケーションだ。彼女への理解を深める一環として、いずれは通る道だったのかもしれない。
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/12/10(月) 23:14:24.70 ID:ThdkkE4u0
「なんだか、連想ゲームみたいだ」
「そうですか?……そうですね。それに近しいような気がします」

 最近の流れを汲みながらことあるごとに対象を変える指示語は、山と川の対応関係よりは、連想ゲームに当てはめた方がしっくりくる。プリセットをなぞるだけに留まらない以上、常にこちらの高い意識が求められるような。
 気を抜けないのは今に始まったことではないので、特段手間が増えるわけではないのが幸い。
 
「まあ、ひとまず今のところは、さっき頼んだ『あれ』で乾杯ということに」

 お猪口同士をくっつけ合わせると、ガラスが擦れるような、すごく涼やかな音がした。
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/12/10(月) 23:18:57.51 ID:ThdkkE4u0
 後日。定時過ぎの事務所にて。
 街の各所がだんだんと光を消していく中、俺は誠に悲しくも残業にいそしむ羽目になっていた。年が暮れようとしているこの時期は、業種を問わずに忙しさがピークを迎えていることだろう。うちの会社もその例には漏れなかったというだけの話。師走とはよく言ったものだ。確かにこの繁忙期なら、師匠だって走り出すかもしれない。
 ふと思い立ち、席を離れて窓の側に寄る。
 そこから見えるクリスマスを間近に控えた町はどこか浮足立っていて、毎年恒例の活発さを思い起こさせた。今年も事務所でクリスマスパーティをすることになるだろうから、ちびっ子連中へのプレゼントを考えておくべき頃合いかもしれない。
 そうすると、どうだろう。お菓子あたりが一番無難だろうか。各人の好みに合わせてカスタマイズできればなお良い。全部同じにしてしまうとやっつけ作業感が出て不興を買うかもしれないし。特に女の子はそういう部分に敏感だったりするから。
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/12/10(月) 23:19:27.93 ID:ThdkkE4u0
「わっ」
「……どうしました、もう夜ですよ?」
「わっ」
「楓さん、今日はもう帰ったものとばかり思っていたんですけど」
「わっ」
「……うわあ!」

 どうせなら最後まで何事もない様子を装ってみようかとも思ったが、徐々に彼女の表情が曇り始めたので急速方向転換を決めた。オーバー気味に驚くと、満足してくれたのか握られっぱなしだったスーツの袖が解放される。
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/12/10(月) 23:19:54.88 ID:ThdkkE4u0
「ここのところずっと眠そうだったので、もしかしたら今日も残業かと思いまして」
「顔に出てました?」
「ほら、くまが」

 両手の爪を見せるようにして楓さんは訴えかけてくる。これはもしかして、熊とかけていたり……?
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/12/10(月) 23:20:26.72 ID:ThdkkE4u0
「がおーっ」
「…………」
 
 予想は的中。なお、本当に熊がそう鳴くかは不明。ソプラノボイスで綺麗に囁かれても、可愛いなあと思うだけだ。
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/12/10(月) 23:20:55.44 ID:ThdkkE4u0
「忙しいのも今くらいですから。ここを乗り切れば年末休みがありますし、あと少しの辛抱です」
「ドリンクにばかり頼っていると、くまったことになっちゃいますよ?」

 熊の手は崩さないままに、彼女はそう続ける。気に入ったのだろうか、それ。
 しかしまあ、そう言われれば確かに、卓上には空き瓶が数本並べられているのだが。
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/12/10(月) 23:21:37.56 ID:ThdkkE4u0

「まだ若いので、なんとか」
「プロデューサーにはこれからもお世話になるんですから、将来も見据えて健康管理してもらわないと」
「そうですね。……響子に料理でも習おうかな」
「いっそ、誰かに管理を丸投げしてしまうというのはいかがでしょう?」
「残念ながら相手がいないので」
「そうですか、残念です」
「満面の笑みで言わないで欲しいなあ……。いや、恋人は一応いるので」
「…………どなたです?」
「ほら、仕事が恋人って良く言うじゃないですか」
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/12/10(月) 23:22:04.44 ID:ThdkkE4u0
 種明かしをすると、熊の手の攻勢が激しくなった。虚空をひっかくペースが上がっている。

「プロデューサーなんて、一生仕事と仲良くしていればいいんです」
「当分はそのつもりですね」
「…………それはそれで困ります」
「どっちですか」
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/12/10(月) 23:26:55.64 ID:ThdkkE4u0
 虎の尾ならぬ、熊の足でも踏んだらしい。仕事にやりがいは感じているし、しばらくのうちはこのままでも一向に構わないと思っているんだが。
 それともなんだ、プライベート一つ充実させられないような人間にまともなプロデュースが務まるわけもないだろうという迂遠なお達しなのか。
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/12/10(月) 23:27:36.22 ID:ThdkkE4u0
「どっちもですね」
「なるほど」

 これもまた連想ゲーム。両極端に振れるなということでどうか一つ。

「お仕事の具合はどんなものですか?」
「ぼちぼちですね。そろそろ帰ろうかと思っていたところに楓さんがいらっしゃったので、今日はこれで終わりにするつもりです」
「あら、ちょうどいいタイミングだったみたい」
「ちょうどいいと言いますと?」
「プロデューサー、甘いものはお好きでしたね?」
「……? ええ、かなり」
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/12/10(月) 23:28:02.95 ID:ThdkkE4u0
「それにしても、ケーキと日本酒の組み合わせなんて初めてですけど、意外に合うものなんですね」
「この前試してみたらなかなかのものだったので、いつかプロデューサーさんとご一緒にと思っていたんです」
「これからケーキの時期なんで、楽しみが増えて助かりました」

 仕事帰りに一杯ひっかけていく……というには、ご相伴にあずかっている相手が豪華すぎる気もする。
 しかしそろそろクリスマスだ。たまにこんなことがあっても罰はあたらないだろう。……問題は、そこら辺の居酒屋やバーではなく、俺の自宅でグラスを並べているという点なのだが。
 言い訳が許されるのなら、とにかく場所がなかった。さすがに事務所で酒盛りは論外だったし、楓さんが気を利かせて買ってきてくれたケーキを持ち込めそうな場所を知らない。
 そんなこんなで、事務所から少し離れた俺の家にお招きすることになった次第。どちらかというと彼女の意向が強かった気もするが。
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/12/10(月) 23:29:02.88 ID:ThdkkE4u0
「片付いたお部屋ですね」
「物欲がないので、自然に」

 どちらかといえば殺風景って感じだ。言葉を選んでくれたのかもしれない。
 
「そういえばこのお酒、この前の」
「ええ、美味しかったので奮発して。でも一人だとなかなか開ける機会がないので、楓さんに来ていただいて助かりました」

 購入したのはつい先日。年末で賞与も出るし、自分へのご褒美と思ってレジを通した。だが残念なことに貧乏性なので、栓を開ける踏ん切りがつかずにずるずる行くのは目に見えていた。そんな時に楓さんにやって来てもらえたのは、素直に都合がいいなと思う。きっと、今日が開栓のタイミングだったのだ。
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/12/10(月) 23:29:31.77 ID:ThdkkE4u0
「もうすっかり年の瀬ですね。びっくり」
「気づいたら来年になっていそうで怖いです、俺は。忙しいと、時間が分からなくなっちゃうんで」
「年越しはきちんとした場所で迎えてくださいね。デスクで、とかはダメですよ」
「肝に銘じておきます」

 アルコールのせいかおかげか、存外に舌が回る。楓さんが自宅にやって来ているという緊張を誤魔化すために言葉を並べ立てている感じもした。
 とにかく、せっかく来てもらったんだから退屈だけはさせないようにしないと。お酒は楽しく飲まないと意味がない。
 そう思っていた矢先。
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/12/10(月) 23:30:02.55 ID:ThdkkE4u0

「……ちょっと、酔ってきましたね」
「えっ、いや、まだ全然」
「酔って、酔ってきました……。すごくふらふらします」
「……あの、女優さんならもうちょっと上手く」
「こんな時、言葉以外で通じ合っている相手なら、どうしてくれるかしら……」
「…………」

 無言で水を差しだすと、首をふるふる横に振る無言の否定。どうやら選択を誤ったらしく、どうするかなあと一考ののちに、体を毛布でくるんでソファに寝かせることにした。
 これは意外にも好感触だったので、そのまま様子を見ることにする。
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