中野一花「うらはらちぇいす」

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59 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/09(水) 21:28:02.00 ID:3bKI/3gF0
 あいつはもう、キスがどうとかいったレベルではなかった。異常な暴走っぷりだったし。……かなり気持ちよかったのは認めるけど。
 だからといって、それを馬鹿正直に教えて誰が得をするのか。俺は言い損だし、一花は傷心が加速するだけでは……?
 なら、ここは優しい嘘で誤魔化すのが一番正しい選択なのではないかとさえ思う。拗らせるのは勘弁願いたい。

「似たようなもんだったよ」
「嘘だ」
「…………」
「あ、本当に嘘ついてたんだ」
「なぜここでひっかけを……」
「そっか。三玖は上手だったんだ」
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/09(水) 21:31:29.08 ID:3bKI/3gF0
 更に一花が小さくなった。自信とか尊厳とか、人が生き抜いていくうえで大切なものが根こそぎ破綻していっている感じだ。さっきまでとは別の意味で見ていられない。

「恥ずかし……」
「キスの巧拙とか人生においてそこまで重要じゃないだろ」
「でも、今後フータロー君はさ、私がみんなに対してお姉さんっぽい言動をするたび、『でもこいつはキス下手なんだな』って思うじゃない」
「それがなんなんだよ……」
「フータロー君が行き詰ったときに『困ったらお姉さんに相談するんだぞ』って言っても、『そんなこと言ってるけどこいつはキス下手なんだよな』って思うんでしょ」
「被害妄想すげーなお前」
「でも、心のどこかでちょっとは考えるじゃない。キス下手なのに強がってるんだなあって」
「それは悪いことなのか……?」
「悪いよ……居心地が」
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/09(水) 21:32:02.54 ID:3bKI/3gF0
 俺の評価なんかで何が変わるとも思えないが、一花的に俺に舐められっぱなしなのは癇に障るらしい。まったくもって謎な価値観だが、この落ち込みようを見ると、彼女にとってはものすごく大事なことなのだろう。

「三玖と私が話してるところを見たフータロー君は、これから絶対考えるようになるんだよ?『あ、上手い奴と下手な奴だ』って」
「お前の中で俺がどんな認識を受けてるのか分からなくなってきた」

 どんだけ根が深いんだこれ。正直ちょっと怖くなってきた。一花のキスに対する執着は異常だ。
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/09(水) 21:32:30.74 ID:3bKI/3gF0
「……フータロー君はさ、きっと上手なんだよね」
「え、そこに飛び火すんの?」
「三玖と上手なキスしたんでしょ? なら、私よりは絶対に上じゃない」
「……確かに歯は当たらないかもしれんが」
「ほら、そうやっていじめる。キスマウント取ってくる」
「なんだよそれ……」

 どんどん小さくなる一花がややむくれた。情けなさが憤りに変換されてきたようだ。おかげか八つ当たり期に入ってしまっている。
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/09(水) 21:33:43.75 ID:3bKI/3gF0
「……ねえ、フータロー君」
「なんだよ」
「一つお願い聞いて」
「それで解決するならこの際聞いてやるよ……」
「…………やり直し」
「は?」
「もう一回、やり直し、させて」
「いや、いやいやいや。それとこれとは話が違うだろ」
「本当にそれだけだから。私を助けると思って、どうかもう一回だけ」
「……それが上手くいけばさっきの面倒くさいいじけは終わるのか?」
「終わる。約束する」
「…………本当に一回だけか?」
「もちろん」
「………………金輪際こういうのはなしだからな」
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/09(水) 21:34:12.65 ID:3bKI/3gF0
 なんだか上手く流されてしまった気がするが、あんな面倒な状態の一花をこの先慰める手間を思えば、ちょっとちゅっとやって納得してもらった方が早いと自己完結してしまった。生憎というか幸運というか、同じ体のつくりをした連中で事前練習はばっちりなので、俺が上手いことリードしてやればすぐ終わる。俺もこんなことを考える人間になってしまったんだなぁと変わり果てた自分の姿に悲しくなるが、背に腹は代えられまい。
 一花と目線を合わせるべくソファに両膝をついて、はーっと大きく息を吐く、大義のために短期的な犠牲は止むを得ないのだと必死に自分を説得しながら。
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/09(水) 21:35:02.93 ID:3bKI/3gF0
「……とりあえず目を瞑れ」
「……ん」
「……高さの都合的に、ちょっと上向いて」
「……ん」
「……あとはもうちょい力抜け。またぶつかるぞ」
「……ん」

 いざ行程を口に出していくと、自分たちが今めちゃくちゃ恥ずかしいことをしているというのが分かってしまった。これまでは行為の中の流れで口づけるか、そうでなければ一方的に奪われるかの二択だったせいで、割と心に余裕がある状態、つまりは理性的な状態でこの状況を俯瞰してしまうと、これがなかなかにキツイ。過去俺はとんでもないことをしていたのだというのが分かってしまうのが、その思いに拍車をかける。
 
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/09(水) 21:35:58.25 ID:3bKI/3gF0
「……じゃあぼちぼち行くから覚悟決めとけよ」
「…………ん」

 さっき一度唇どうしがくっついているので、それに対しては抵抗感が少ない。守るものが少ないと、人は無敵になれるらしい。とにかくちゃちゃっとやって後は何事もなく帰ろう。それが俺のためだし、ゆくゆくはこいつらのためにもなると信じている。
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/09(水) 21:37:53.66 ID:3bKI/3gF0
 背に手を当てて、彼女の体をゆっくり引き寄せ、口づけた。その瞬間、一花が怯えるようにびくりと体を震わせたがそれは無視。いちいちそういうのに構っていては日が暮れてしまうというか、もう夜だから朝が来てしまう。
 先ほど感じた仄かに香るオレンジは時間経過のせいか消え去っていて、そこにあるのは素で少し甘い唾液の味だけ。このなんとも言えない風味をまた感じることになってしまったのは遺憾としか言えないが、今後のことを考えるなら仕方ない。
 一花は借りてきた猫のように大人しく、俺の舌の動きを緩慢になぞるだけだった。これではまるで俺が二乃に犯されたときの構図を逆転したようで、奇妙過ぎる因果に頭が痛くなってくる。
 というかこれ、一花は下手くそなままじゃないのかという疑問は、そっと胸にしまい込んだ。そんなことを言っていたらもう一回、あと一回と無限にだらだらループしていくのが丸わかりだし、俺が保たない。正直今もかなり恥ずかしいのにこれ以上なんて勘弁被る。
 自分が冷静であるからこそ、この行為の異常性は承知している。ここ最近色々あったせいで俺の中にある心理障壁がずいぶんしょぼくれたものになってしまった。人並みの貞操観念は持ち合わせていたはずだったのに。
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/09(水) 21:38:20.40 ID:3bKI/3gF0
 それなりの時間唇を触れさせ合って、それなりの量唾液の交換を終えたと判断したので、ゆっくりと彼女から離れる。伝う唾液の橋は見て見ぬふりをすることにした。

「お、終わり……?」
「終わり」

 なぜか目を瞑ったままで聞いてくる一花。どうも思考と行動がちぐはぐになっている感じがする。
 震える手で何度も口許をぺたぺた触っている様子は、なんだか小動物のようにも思えた。
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/10(木) 00:03:08.31 ID:odGkdFmYo
じらすねぇ!
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/10(木) 00:38:56.46 ID:Xx5qo0vS0
「こ、こんな感じなんだね」
「分かったら今度こそ服着てくれ」

 未だに下着のままなので、やっぱり目線を迷わせざるを得ない。もし着衣状態だったとしても、顔をじろじろ見ることが出来たかどうかは謎だけど。
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/10(木) 00:39:30.41 ID:Xx5qo0vS0
「なるほど……」
「なんだよ」

 俺の顔と自分の手許とを交互に見比べる一花の一言。一体何に納得したかは不明だし、これと言って聞き立てようとも思わなかった。
 というのも、こういう状態のままで拘泥していると碌な結末を迎えないのが火をみるより明らかだからだ。閉鎖環境は人を充分に狂わせ得る。早急に立ち去らないことには、まーた面倒なことが起きるに違いないのだ。
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/10(木) 00:40:14.23 ID:Xx5qo0vS0
「あの、フータロー君……」
「やめろ。それ以上言うな」
 
 もじもじと内腿を擦り合わせる涙目の一花。全身からはフェロモン的なものが漂っているし、次に口から放たれる言葉がどんな類のものかはやすやすと推測できた。
 こうなってしまうと、もう聞かないか言わせないか以外の対抗手段がない。耳を塞いでも骨振動で聞こえてしまうだろうから、ええいままよと片手で直接彼女の口を押さえにかかる。
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/10(木) 00:41:21.58 ID:Xx5qo0vS0
「私すっごいむらむら……」
「あーーーーー」

 カラオケボックスという防音環境を最大限に生かし、彼女の言葉を封殺。がっつり聞こえてしまった気もするが、封殺。
 ここには何もなかったし、俺は何も聞かなかった。それがなにより一番だ。そもそも……なんだ。俺自身、さっきので不覚にも盛り上がりかけているので、ここで下手に一押しされるとまずい。二の舞三の舞まで秒読みだ。
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/10(木) 00:41:51.42 ID:Xx5qo0vS0
「みんなと寝室同じだから最近はなかなか処理出来なくて」
「やめろ。お前の性事情を聞かせるな」
「ごめん、もう無理かも」
「……待て。お願いだから落ち着いてくれ」
「ひ、一人で何とかするから」

 明らかに自身の下部に伸びようとしている一花の手を、こちら側で強引に押さえる。何をおっぱじめる気かは知らないが、放置しておいて状況が好転するわけないだろうという自分の直感に従った形だ。
 さっきからずっと熟れた果実のような香りがするし、選択を一つ誤れば頓死する未来が見える。というか当の俺の頭がくらくらしてきている。
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/10(木) 00:42:24.30 ID:Xx5qo0vS0
「なんで止めるの?!」
「知るか。本当ならお前が自制するとこだぞ」
「ほ、ほんとにやめて。おかしくなっちゃう……」
「もうなってんだよ。気付いてくれよ……」
「お腹の中がむずむずするの……」

 きっとそれは胃とか腸とか、俺の体内にも備わっている内臓でないのだろうなとは思った。彼女の中で疼いているのはたぶん、生存ではなく繁殖の方に重きを置いた臓器。こっぱずかしいので名前は伏せる。
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/10(木) 00:43:09.76 ID:Xx5qo0vS0
「おい、おいおいおい」

 じりじりと俺が後退させられている。どこにそんな力を隠していたのか謎だが、火事場の馬鹿力と言われればそれまでだ。
 このままでは振りほどかれて即大惨事なので、腕力が分散しないようにやや密着して両腕を封じる。俺のしょぼくれた力ではこうでもしないと抑えきれない程になっている。
 近づくことではっきり分かる甘ったるい体臭を嗅がないように呼吸は出来るだけ口で、変な気分にならないように目は逸らしてを徹底し、なんとか絞り出した力で彼女の腕を止める。痣になっても困るので握力に気をつける手間を含めて、かなり神経を削る作業だ。
 で、詰めの甘さに定評のある俺は、ここでもまた寄せ方を間違っていたらしく。
 膝頭にやたらと熱い何かが触れていることに気付くまで、そこそこの時間を要してしまった。
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/10(木) 01:27:59.72 ID:odGkdFmYo
いいぞいいぞ
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/10(木) 01:50:16.31 ID:Xx5qo0vS0
「待て。その腰の動きを止めろ」
「ご、ごめ……もう、どうにもならなくて……」
「机の角じゃないんだぞ……」

 なおも一花の動きは止まってくれない。変に密着したせいで下半身がまるで動かないし、手でなんとかしようにもそれはもう文字通りの手一杯。俺が対策を練る間にも彼女の前後運動は激しさを増して、口許からは熱い吐息が漏れ出し、位置の都合で俺の頬を容赦なく撫でてくる。
 どこに意識を向けるべきか迷っている間に、一花の頭が俺の肩に収まった。声を堪えるようにシャツの襟を噛んで、時折呻きとも喘ぎとも取れる呼吸音だけが部屋に響いた。
 もうこうなってしまうと、一花の動きがどうこう言っていられる状態にはなかった。自分が何かしでかしそうになるのを堪えるのに精神力の大半を消費してしまい、一花の両の腕が俺の首から背にかけてを絡めとろうとするのに妨害も叶わない。と言うか、気づけば俺が彼女の上半身を引き寄せている。なんだこれ。いつの間にか一花は俺の首を吸っているし、俺は柔らかい感触に思考が飽和しているし、相変わらず小刻みな振動は続いているしで、もう何が何だか分からない。何なんだこれは。
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/10(木) 01:50:42.47 ID:Xx5qo0vS0
「ん……ぅ!」
「おい」
「…………ぁっ」
「…………」

 ようやく、振動は収まってくれたけれど。
 強烈な雌臭が、依然空間に漂ったままで。
 痕が残るレベルで強烈な吸引をしてきた一花の唇は、知らぬ間に俺の唇の真ん前にやって来ていて。
 そしてもう、俺の理性のタガもほとんど吹き飛んでいるせいで、抵抗らしい抵抗も出来ず。
 それで後は、まあ流されるままに口づけを受け入れる羽目になるわけだ。
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/10(木) 01:51:15.99 ID:Xx5qo0vS0
「…………んっ」
「…………む、ぅ……っ」

 息の吸い方を少しの間だけ忘れて、酸素の回っていない頭で彼女の攻勢に為されるがまま晒され続ける。薄い唇が俺の唇をなぞるたびに背中がぞくぞく震えて、もうまともな思考など帰ってきてはくれなかった。
 少なくとも、今度は歯が当たっていない。それだけは確かだった。
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/10(木) 01:52:01.09 ID:Xx5qo0vS0
 なんとか離れて、一度肺に新鮮な空気を送り込んだ。徐々に酸素が全身に循環して明瞭な思考が戻り始めるが、それを妨害する魔手が二つ。
 俺のへそあたりに伸びた二本の腕が、瞬く間にベルトを外し去った。三玖はもたついていた記憶があるからこれに関しては一花に軍配が上がるのだろうか。
 彼女は浅く荒い呼吸を繰り返しながら俺のズボン以下を引っ張って、既に限界まで怒張していた陰茎を引っ張り出す。その間俺はただその光景を見ているだけで、これといった抵抗をする気にはならなかった。
 なんというかもう、いいかなって。
 一度出さないと、二度と勃起が収まらないんじゃないかとさえ思うし。
 一花は後ろ手で器用にブラのホックを外して、そのたわわに実った果実を重力に任せた。そしてそのまま無造作に俺に近寄って、深い谷間に俺のブツを収める。
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/10(木) 01:52:33.70 ID:Xx5qo0vS0
「あっ、おい、それヤバ……」
「……こういうの、好きかなって」

 分厚い胸の肉越しに、両手でじんわりとした刺激が与えられる。正直なところもう少し強くないと理想の快楽には辿りつけそうにないが、それ以上に視覚的な破壊力が大きかった。
 上目遣いに俺を挟み込む一花の様子は、どこに眠っていたかも知らない俺の征服欲を瞬く間に満たしていく。性感以外の攻め手でダメージを負ってしまっている。
 先ほどまでずっとお預け状態だった下半身が、耐えかねてびくんと震える。
 次の瞬間には、大量の白濁液が、勢いよくあたりを汚し散らかしていた。
 備え付けのソファから自分の腹、一花の胸や顔にまで精子が飛び散って、もう収拾がつかなくなっている。
 現実を見て、頭が冷えかけるのも束の間。
 付着した精子を拭うように丁寧に舐めとっていく一花の姿なんて見せられたら、正気になど戻れるはずもなくて。
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/10(木) 01:53:06.16 ID:Xx5qo0vS0
 尿道に残った搾りかすを直接搾り取ろうとしてくる一花に対抗して、こちらの手を彼女の秘所まで伸ばす。ショーツ越しにも洪水が起きているのがはっきり分かって、たまらず指先で邪魔な布をずらし、直に花弁に触れた。
 「ひぅっ!」と反応する一花に構わずすっかり出来上がってしまったそこに中指を差し込んでかき回すと、面白いくらいに彼女の体が跳ね回る。特に役割のない親指で性器上端をなぞると、これまた分かりやすいほど大きな反応が拝めた。
 俺自身、射精したてで余裕がないので、手つきがかなり焦りを孕んだものになっているのが分かった。火傷しそうなくらいに熱くなっている内側を関節の運動でいじくりまわして、彼女の攻めを緩和しようと必死になっている。
 誰かさんが教えてくれた弱点はやっぱり一花にも有効で、そこに触れるたび、溢れる蜜の量と漏れる声の高さが変わる。もはやそこにいつもの落ち着きはなくて、彼女は今現在、快楽の奴隷になってしまっている。
 だけどそれは、一花に限った話ではなかった。
 俺が攻勢を強めるたび、まるで意趣返しのように彼女も巧みに舌を動かして、俺から一滴でも多く絞ろうとする。
 そのせいで、さっき出したばかりなのに、早くも俺は二射目の用意が着々と進んでいた。
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/10(木) 01:54:22.68 ID:Xx5qo0vS0
「も、もうちょいゆっくり……」

 俺の嘆願は、鈴口を強く吸うことで否定を示される。こうなればもう、みっともない我慢比べを始めるしかない。絶頂を迎えればこちらに干渉する余力も消え去るだろうから、手早く彼女にイってもらう。
 卑怯臭いがやむなしだと乳房の方も弄んで、膣にはさっきよりもずっと強い刺激を加える。指の本数を増やし、いじくるスピードを増し、その他にも出来るだけの小細工でもって、一気に攻め立てる。
 俺が策を弄するたびに、一花もやれるだけやり返してきた。今の体勢から届き得る性感帯は完全網羅される勢いで何かしらの被害を受けたし、吸い上げる圧はこのままじゃ鬱血するのではというところにまで達している。
 だがしかし、軍配が上がったのは、俺の方。
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/10(木) 01:55:00.46 ID:Xx5qo0vS0
「……えっち」
「お前もだろ……」

 くてっと俺に倒れ掛かってきた一花は息も絶え絶えに恨めしそうな視線を向けてくる。さすがに非童貞の俺と処女の一花とでは、一日の長がある分俺の方が有利だったらしい。
 彼女の体は今現在も小刻みに振動していて、一連の流れが相当に響いているのが分かった。

 ここで、俺の眠れる嗜虐心が、ゆっくりと心の奥から顔を覗かせてきた。
 この一花を更にいじったらどうなるのだろうか、と。
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/10(木) 01:55:32.25 ID:Xx5qo0vS0
「ちょっ、フータロー君?!」
「後学のために」
「なにそれぇ……!」

 片手で脇の下から背中にかけてをがっちりホールドし、既に液が滴りそうなほどびしょ濡れになっている園を、遠慮なく指先でかき回していく。
 最初こそ抗議の声をあげていた一花だったが、途中からそんな余力すらなくなったのか、俺の上半身に縋りつくようにして襲い来る快楽の波を耐えるだけになってしまった。
 何度も何度も身を震わせて、何度も何度も蜜を溢れさせる彼女の肉体は、手を加えるごとに感度が上がっていくようだった。肉ヒダは本人の意思に逆らうように俺の指を絡めとって離さず、その行為を奨励するかのように、潤滑油は止まることを知らない。
 やっていることは酷く動物的で野蛮なのに、そこからは生物本来の美しさのようなものを感じてしまって、俺もやめる踏ん切りがつかなくなっていた。元から知的好奇心が高い方だったというのもあって、この先の景色をどうにか拝みたくなってしまっている。
 だがそれも、流石に命の危険を感じてしまうと止まらざるを得ない。
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/10(木) 01:56:01.48 ID:Xx5qo0vS0
「…………フータロー君?」
「悪ノリが過ぎた」

 頸動脈のあたりを犬歯でなぞられ、ようやく忘我から帰ってくる。まさか本気なわけはないだろうが、俺としてもやり過ぎてしまった感は否めない。

「……えいっ」
「…………」

 首を甘噛みされる。そこはさっき吸われたところと被るから、本格的に変な痕が残っているかもしれない。鏡で確認しないことには分からないが。
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/10(木) 03:15:51.55 ID:Xx5qo0vS0
「本気で噛んじゃおっかな」
「ええ……」

 同一個所を今度は舌で舐められて、いつぶりかの脅しにあう。そんなこと有り得ないと分かっていても、さっきの自分の行為を省みれば完全にナシだとは言い切れず、体を強張らせることしか出来ない。
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/10(木) 03:16:30.80 ID:Xx5qo0vS0
「ねえ、フータロー君」
「なんだよ……」
「この状況をやり過ごすいい方法があるんだけど、知りたい?」
「…………悪い一花。俺今確かに思ったわ。こんなに余裕綽々な感じだけどそういやこの女キスすげー下手くそだったなーって」
「それはもう忘れて!」
「はいはい。……で、方法とやらは?」
「……いや、もうここまで来たら誠意を見せて最後までしてもらえたらなって」

 逆にここで解散する方が無理筋だろうという反論は喉の奥で押しとどめて、オーケーサインの代わりに彼女をソファに押し倒す。体液がそこら中に飛び散っているから、帰る前にちゃんと片していかなきゃいけないなこれ……。
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/10(木) 03:16:57.82 ID:Xx5qo0vS0
「腰浮かせてくれ」

 なんでかずっと履かせっぱなしだったショーツをするりと脱がせる。どう考えてもさっきまでしていたことの方がえげつないのに、妙にエロいことをしている気分になって、陰茎が一度大きく脈打った。

「行くぞ」
「ちょ、ちょっと待って。心の準備がまだ……」
「……じゃあほら、ちょっと体起こせ」
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/10(木) 03:17:26.82 ID:Xx5qo0vS0
 手を貸して対面する姿勢を作り、勢いでキスを交わす。どこかで口づけにはストレスの緩和作用がある的なことが言われていたから、これでいいだろう。
 彼女の体が弛緩しきった頃合いを見計らって、するすると挿入する。自分の避妊に対する意識が日に日に薄れていって恐ろしいが、いつか元の清く正しい俺が帰ってくると信じるしかない。明日の俺に任せよう、そういうのは。
 結局、何人たりとも性愛の前には無力。抗うだけ無駄なのだ。……体よく正当化しているだけだというのは俺も良く分かっているけれど、そう思うしかない。この後の関係がこじれると分かっていても、今ここで一花を抱かないのは、それはそれで男としての怠慢というか、なんというか。…………いや、マジで最低な言い訳に過ぎないとは分かっているんだけど。

 でも、でもなぁ……。
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/10(木) 03:17:56.31 ID:Xx5qo0vS0
「……っ、ん……!」

 こうやって、痛みなり快感なりと戦っている一花の姿を見て、しかもその感情を与えている大本が俺だと知っていて、どうにも悪い気はしないというか、満たされている気持ちになるというか。
 拙く絡む舌も、吸いつくような膣壁の感触も、全てが俺に向けられているものな以上、受け取らないわけにはいかないというか。

「これ、すご……」
「俺が保たないからもっと力抜いてくれ……」
「そ、そうはいっても、ちょっと、良すぎて……」
「言葉攻めもやめてくれ。こっちの余裕が消える」
「いや、でも、好きな男の子と生えっちしてるんだし」
「やめろやめろやめろ。そういうのは後で言え。こういうとこで女優発揮すんな」
「フータロー君の、いいとこ全部あたってて、おかしくなっちゃう……」
「…………」
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/10(木) 03:18:22.41 ID:Xx5qo0vS0
 ――今の沈黙の間に何が起こったかは秘すとして、今度は一花を寝そべらせ、俺が一方的に突く体位をとった。さすがにここまでくると一発では収まりそうもないので、枯れるまで付き合ってもらう。十代の性欲全ツッパだ。

「うわ、繋がってるとこ、泡立って……」
「だから言わないでくれ。耐久力が落ちるんだよ」
「でも、全部初めてで……」
「ほんと黙っててくれ。もう何もしゃべんな」
「…………好き」
「…………」
「…………好き」
「…………」
「…………大好き」
「…………………………………………」
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/10(木) 03:19:21.86 ID:Xx5qo0vS0
 ――――今のバカ長い沈黙の間に俺がどれだけ気持ちいい目にあったかは一生秘すとして、もうこうなったら俺が主導権を握ろうなんて浅はかだったのだと悟り、彼女に跨ってもらう体勢をとった。ここまで来てしまうとこれが一番いいんじゃないかと思う。

「これ、フータロー君のこと犯してるみたい……」
「お前さっきから楽しんでるよな? そうだよな?」
「だって、何か言うたびびくって動くから、おかしくって」
「俺をなんだと……」
「でも、好きなのは本当だからね」
「…………」
「ほら、またびくってした」
「おちょくりやがって……」
「でも、本当に好きだもん」
「俺の反応楽しんでるだけだろ」
「そういう単純なところも好き」
「言わせておけば……」
「追いつめられると赤くなるのも好き」
「…………」
「黙っちゃうのももちろん好きだよ」
「…………ごめん、これ以上は死ぬ。マジで勘弁してくれ」
「……なら、自分で黙らせればいいよ」
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/10(木) 03:19:48.38 ID:Xx5qo0vS0
 近づいてきた顔を引っ張り寄せて、素直に要求に従う。やっぱり彼女の舌技は妙に拙くて、だけど今はそれすら俺をおちょくるためのきっかけに思えてしまった。下半身からは規則的に快感が襲ってきて、今日何度目になるかも分からない射精まで秒読みだ。
 俺が達するちょっとだけ前に一花が限界を迎えたようで、その収縮運動に絞られる形で、俺の精が放たれる。脈打つ俺に合わせるみたいに彼女の膣も振動していて、比喩抜きに一滴残らず全て奪われた。
 そのままなのはちょっとだけ悔しくて、一花の余裕を崩さんと腰を振ると、甘ったるい喘ぎが場に満ちた。マイクでも近づけてやればもっと効き目があるかなと思ったが、それはさすがに尊厳に関わりそうなのでやめる。俺が常識派であることに感謝して、これから生活して欲しい。本当の常識派は未交際の女性と性交渉しないという真っ当な指摘は受け付けないように今後脳を改造しておこう。
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/10(木) 03:20:14.53 ID:Xx5qo0vS0
 それからはまあ、特に言うこともなかった。カラオケボックスの時間制限いっぱいまで持て余した若い肉体をぶつけ合って、日ごろのフラストレーションを解消していくだけ。
 一花の聞くに堪えないおちょくりをどうにか我慢しながら、快楽に身を任せ続けるだけ。
 割り切ってしまえば楽なもので、天上の快楽を享受する時間は意外に早く過ぎ去った。時間を告げる電話で一花が延長を要求しようとしたときは全力で受話器をひったくったが、それ以外は語ることもない。ただただ気持ちよかったし、ただただ満たされていた。後顧の憂いなどひとかけらもなかった。
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/10(木) 03:20:47.44 ID:Xx5qo0vS0
 …………だからこそ、夜風によって冷やされた頭が、とんでもない勢いで俺を叱責し始めるのだが。

「フータロー君、えっちするときキャラ変わるね」
「言わないでくれ……」

 横に並び歩く一花が、さっきまでの俺の絶倫っぷりをからかってくる。俺自身、あんな人格を普段はどこに眠らせているかが不思議でしょうがない。
 しかし、いよいよやっちまった感がやばい。五つ子のうち三人と肉体関係を結ぶとか、我ながらどういう了見だこれ。率にして60%。ぱっと見で分かる過半数、上から順に一、二、三と来て、もうどうするんだこれって感じ。
 この絶望感を毎度のこと味わっているが、行為のただなかにいる俺は快楽の追及者になってしまっているので、後悔しようにもしきれない。せめて一回で止まっておけよ頼むから。……まあ、一回も十回も、セックスしているという観点で見れば五十歩百歩だろうが。
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/10(木) 03:21:14.89 ID:Xx5qo0vS0
「でも、うん……うん。すごかったね」
「やめろ。蒸し返すな。あれは今日限りの夢だ」
「絶対今晩夢にみると思うな」
「申告するな」
「まだお腹の奥があったかいし」
「気のせいだ」

 確かに俺もまだ全身が熱いし、二乃とした時も、三玖とした時も、がっつり夢に出てきたけど。
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/10(木) 03:21:51.86 ID:Xx5qo0vS0
「……改めて言うけどさ、あれはほんとだからね」
「…………勘弁してくれ」
「む、女の子の告白をそんな風に扱うんだ。良いよ。君がそれなら、自爆覚悟で三玖に今日のこと教えるから。すっごく情熱的に求められたって」
「何一つ嘘がないから余計厄介だ。やめてくれ。……別に嫌なわけじゃないけど、とにかく今は勉強に集中する時期だろ、お前らは特に」
「恋愛してる場合じゃないと」
「そうだ」
「えっちはするのに?」
「揚げ足を取るな」
「……じゃあ、卒業した後はどうなるの?」
「……………………知るか、そんな先のこと」
「ふーん……………………」

 それっきりにやにや笑いながら黙ってしまった一花を家の途中まで送り届けて、帰宅した。デジャブを恐れてケータイは見なかったが、寝て起きても、特に大きな問題はなかった。…………また、夢に見てしまったことを除けば、だが。
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/10(木) 03:22:19.13 ID:Xx5qo0vS0
「上杉君、今日もお疲れのようですけど大丈夫ですか?」
「……体力不足だ」

 昼休み、再び五月に話しかけられた。俺は疲れ切った体をぐでっと机に投げ出して、出来る限りの消耗を抑えている。
 そりゃああれだけ動けば体にガタも来る。当たり前のことだ。

「一花も今日はいつも以上にお寝坊さんでしたし、やはりちゃんと休息をとるべきだと思いますよ?」

 そいつが疲れている原因はきっとお前が思っているものとは違うぞ……とは言えない。歯車が狂って、率が80%になってしまうかもしれないからだ。色気より食い気な五月に限って、そんなことはないと信じているけれど。
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/10(木) 03:22:46.61 ID:Xx5qo0vS0
「今度の休みは勉強ほどほどにして寝るよ。とにかく、そこまで気遣わなくて大丈夫だ」
「そうでしょうか。……あの、上杉君?」
「なんだよ」
「首のところに赤い痕が見えますが、まさか……」
「いや、違うぞ五月。一旦落ち着いてくれ」

 見える。80%が。八割が。五分の四が。それだけはさせまいと、俺は全力で頭を回転させて――
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/10(木) 03:23:20.47 ID:Xx5qo0vS0
「虫刺されですか? 最近多くなってきて嫌ですよね」
「五月」
「はい?」
「お前はどうかそのままでいてくれ」
「上杉君、昨日からちょっと変です」

 その声には答えず、俺は次の授業のテキストを取り出す。
 付き合いの中で初めて、こいつが馬鹿で良かったと心の底から思った瞬間だった。
 …………ようやく、俺の家庭教師生活の明日が見えてきたかもしれない。



103 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/10(木) 03:26:48.20 ID:Xx5qo0vS0
おしまい。もうすぐアニメでいてもたってもいられないのに、原作最新話で更に頭がおかしくなってしまった。
せっかくのメディアミックスだし、これを機に、もっとssだのイラストだのが増えたら楽しいなーって思います。
こんな終わりなので続きは未定。原作に動きがあれば上手いこと縒り合わせて書くかも分からんです。それでは。
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/10(木) 08:37:08.53 ID:T7L+dOUWo
おつおつ
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/10(木) 19:34:20.55 ID:A1cBgp9n0
面白かった
続き書いてくれると嬉しい
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/10(木) 20:46:55.85 ID:Q9b72ILqo
おっつ
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2021/05/26(水) 12:02:37.02 ID:8yXQS3JiO
中野二乃「こんすいれいぷ」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1543718702/
中野三玖「だっかんじぇらしー」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1544619044/
中野一花「うらはらちぇいす」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1546867467/
中野一花&二乃&三玖「そうだつさばいぶ」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1547984505/
中野四葉「まにまにりぽーと」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1548764087/
中野五月「あいまいでぃすたんす」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1550748399/
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2024/01/17(水) 19:53:12.25 ID:6uu0ngD80
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