中野一花&二乃&三玖「そうだつさばいぶ」

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138 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/24(木) 22:38:15.44 ID:l0nfYeuo0
「女優なんてやってんだから容姿には自信あるんじゃねえの、お前?」

 美少女を自称していたこともあったし、そこに関して異論をはさむ気もない。見てくれについて言うのであれば姉妹そろって高水準だ。で、俺のこの評価は誰もの共通認識と思って間違いない気がする。
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/24(木) 23:02:10.41 ID:l0nfYeuo0
「まあ、うん。ないわけではないんだけど」
「ならなぜ聞く」
「ないわけじゃないからこそ、なかなか靡いてくれないのを見てると不安になっちゃうの」
「はぁ」

 複雑な乙女心というやつらしい。まったくもって理解は不能だが、だからといって一笑に伏すべきでないというのも、俺はこれまでに学習してきた。しかし、かけてやる言葉が思い浮かぶというわけでもなく。
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/24(木) 23:02:39.38 ID:l0nfYeuo0
「そもそも色恋沙汰に興味のない俺に、そういうの期待すんのが間違ってるんだよ」
「色ごとにはお熱だったのに?」
「揚げ足とる専門家かお前は」

 比重の問題だ。性欲が云々の前に勉強を大切にしたいし、一度請け負ったことだからこいつらの卒業も叶えてやりたい。人間、特定の期間に出来ることは限定されていて、だから今そちらに労力を割くくらいならば、もっと学を深めたいというのが正直な思い。
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/24(木) 23:04:09.24 ID:l0nfYeuo0
「別にお前らのことが嫌いとかそういう話じゃない。ただ、今やるべきことはもっと他にあると思う。お前で言うなら仕事がそうかもしれないし、他の奴にしたって卒業だの進学だので山積みだ。その大事な時に、あっちこっちにエネルギー分散させるのは違うだろ」
「まあ、それは……うん」
「正論だろ?」
「正論……だけどね」

 だけど、なんだ。やっていることがやっていることだけに説得力がないと言われたら黙るしかないが。しかし、我が身を省みてばかりでは発言の一つも出来やしない。確かに正論は潔白な人間が述べるのが何よりだが、そんな人間が存在するかどうかがそもそも疑問。誰しも心のどこかに後ろめたさの一つや二つは持っているものだろう。
 そして、正論への対抗手段なんて、別視点の正論か屁理屈かくらいのものだ。それが今の彼女に用意できるかどうか。
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/24(木) 23:04:48.17 ID:l0nfYeuo0
「……でも、その、ね?」
「同意を促すな」
「いや、うん、分かってる。お仕事でもっと成功したいし、ここまで来たらちゃんと最後まで高校生もしたい。……けど」
「けど?」
「そっちに集中してる間にフータロー君が取られちゃったら、それこそ本末転倒というか……」
「…………」
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/24(木) 23:05:14.01 ID:l0nfYeuo0
 俺の立ち位置がどこに収まるかがそこまで重要な問題なのだろうか。たかが学生恋愛なのに。……まあ確かに、対抗相手が存在しているせいでレースそのものが加速している感は否めないが。
 でも、それは一種の集団幻想なのではないかと思いもする。行列の出来るラーメン屋に並んだり、過去一等を出した宝くじの販売所に訪れたりといった類の。そういう行為のどこに主体性が存在するかは、正直俺には分からなかった。
 競争率の高さがそのものの価値を決定づけるという考え方を理解することは出来ても、すんなり納得することは出来ない。それを認めてしまうと、自分の根幹を否定したような気分になる。
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/25(金) 00:23:51.02 ID:mlsm25gno
期待
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/25(金) 00:27:01.45 ID:EyPNpfKno
ああーーーはやく続きを・・・ つづき・・・
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/25(金) 04:26:14.14 ID:ApiYTzRMo
読みやすい
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/25(金) 07:12:37.27 ID:EAJaSNc40
掲示板の作法をさっぱり知らんので読みやすいって言ってもらえると助かります。
ここからラストまで投下。
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/25(金) 07:13:18.79 ID:EAJaSNc40
「お前の優先順位はどうなってるんだか、ひとまず教えてくれ」
「…………」

 二の腕を人差し指でちょんちょんと触られた。……えぇ?

「……マジで言ってんの?」
「マジで言ってるの……」
「おま、お前なぁ……」

 ここは正確には「お前らなぁ」だったかもしれない。彼女視点ではどちらでも構わないかもしれないが。
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/25(金) 07:13:46.83 ID:EAJaSNc40
「自分で言うのもあれだけど、絶対男の趣味悪いぞ」
「それは薄々勘づいてたよぉ……」

 勉強より仕事、仕事より俺ってか。なんだそれ。無茶苦茶だ。俺は最低限の好感度を担保しようとしたことはあっても、惚れられる程のことを為した覚えはないのに。
 振り返ってみても、好かれる要素がどこにあるかが分からない。これは二乃や三玖にも通じることだが、こいつらは男に対する免疫が低すぎるんじゃないのか。
 一花は机に突っ伏して、ぶつぶつ何かを語り始めた。……聞きたくねえなあ。
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/25(金) 07:14:14.56 ID:EAJaSNc40
「あんなにしつこく世話を焼こうとする人、初めてだったんだもん……」
「いや、それは言ったろ。借金があるからだって」
「どんなに言っても諦めようとしないし……」
「それも金のためだって」
「……そのくせ、自分は勝手にいなくなるしさ」
「いや、あれは、その。俺以外に適任者がたくさん」
「だと思うなら言ってくれればみんなちゃんと否定したのに。って言うか、この時点でもうお金のことどうでも良くなってるじゃん」
「…………」
「今だってほとんどボランティア状態だしさ……」
「後からもらうって言ったろ」
「今のフータロー君を見てると、それすら反故にしそうなんだもん……」
「うっ……」
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/25(金) 07:14:41.77 ID:EAJaSNc40
 確かになあなあで終わらせてしまいそうな気がする。俺らしくもなくかっこつけて。
 でも、言ってしまえばそれだけだ。俺は職務を全うしようと奔走し、紆余曲折の末に彼女たちがそれに応えようとしただけ。確かにただのビジネスパートナーというには密接に関わり過ぎてしまったが、俺は別に彼女たちにいいところを見せようと意図していない。それが、どうしてこうなった。

「顔あっつい……」
「どうせなら耳も隠しとけ」
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/25(金) 07:15:10.83 ID:EAJaSNc40
 ショートヘアのせいで真っ赤な耳が丸見えだ。彼女はそれについて失念していたようで、即座に両手で頭を覆い隠す。
 口に出す気はないが、俺、たぶんそれの万倍は恥ずかしいもの見てんだけど。本当に恥ずかしがるポイントがずれている。もしかして遺伝だったりするのだろうか。

「フータロー君に迷惑かけてるのは分かっても、さすがにこの気持ちを抑えつけとくのは無理だよ……」
「そこをなんとか出来るから人間がここまで繁栄してこれたんだろ」
「でも、好きなんだもん……」

 彼女の体がこちらにすり寄ってきて、腕と腕がぴたりと密着する。一花は基本薄着なので、体温の伝わりが早い。
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/25(金) 07:15:39.26 ID:EAJaSNc40
「ドキドキする……」
「なぜ口に出す……」

 黙ってればいいのに、そんなの。実際、俺は言ってないし。心臓が忙しなく動いていたからなんだと言うんだ。
 なおも一花は密着具合を高めてきて、男の硬くてごつごつした体ではどうやっても実現できない柔らかさを俺に与えてくる。もうちょっと骨ばってくれているくらいの方が、かえって俺には優しかったかもしれない。
 
「フータロー君さ」
「なんだよ」
「二乃とも、そういうこと、したの……?」
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/25(金) 07:16:07.84 ID:EAJaSNc40
 ここで聞くのかと頭が痛くなった。聞かれるのは覚悟していたけれど、上手い返しはまだ思いついていない。本当に、どうしたものか。
 正直、隠しようが無いとは思っている。どこかでばれるのは必定で、なら正直に話してしまう方が負う傷は少なくて済むのではないかと。なんなら、俺が三玖とあんなことをしていた原因がそもそも二乃にあるのだと。
 だけど、どうだろう。打ち明けたからと言って何かが変わる未来は見えない。ずっと行き止まりの前で立ち往生させられている気分になる。
 
「たとえばだぞ」

 だから、どうしても確かめたくなる。逃げ道を用意するために、彼女が何を地雷にしているかを確認したくなる。
 
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/25(金) 07:16:34.62 ID:EAJaSNc40
「たとえば、そうだって言ったらどうなるよ?」
「……どうにも」
「どうにもって?」
「だって私、二乃がフータロー君のこと好きなの知ってるし」

 それが日頃の態度で察したものか、それとも二乃自身が申告したかは判然としない。あいつの性格的に牽制目的で言いふらすのはありそうだとも思ったが、再三に渡って羞恥心のバグを見せられているので、変なところで恥ずかしがって言っていない可能性も大いに考えられる。
 だからここは「ああそう」と流した。そこまで大々的に話を広げるポイントではないように思ったし、こんな箇所で拘泥していたら、一向に会話が進まない気がしたから。
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/25(金) 07:17:02.74 ID:EAJaSNc40
「あの子、やるとなったら周り見えなくなっちゃうから。だから、そういうことをしていたとしても不思議ではないなって思っちゃう」
「まあ、そういう奴ではあるな……」
「って言うか、そんなことを聞くって時点で半分自白だよね」
「…………まあ、うん」

 黙っていても肯定に取られるのだから、いっそ自分の口で事実だと認めることに決めた。遅いか早いかの違いになるだけなのだから、さっさと諦めた方が良い。
 
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/25(金) 07:17:28.72 ID:EAJaSNc40
「今日が初めて……ではないんでしょ?」
「……おう」
「三玖とどっちが先?」
「……二乃だな」
「良いなぁ」
「何が」
「フータロー君の初めては二乃に捧げたわけでしょ。その特別感が羨ましいなあって」

 童貞をありがたがられる日が来ることを予期してはいなかった。別に大事に取ってきたわけでもないが、価値あるものだとは思っていなかったし。
 使いどころを考えるべき代物だったのかもしれないなあと考えつつ、視線を横の一花に送る。彼女は顔を俺の腕に埋めてしまって、だから表情を窺い知ることは叶わない。
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/25(金) 07:17:54.87 ID:EAJaSNc40
「私は処女を献上したのに、フータロー君はそうじゃないんだもん」
「…………」
「気まずそうにするってことは、三玖にも似たようなこと言われた?」
「見抜くな」
「やっぱ姉妹なんだね」

 あいつはもっと嫉妬の鬼みたいになっていたが、それは捨て置く。黙っていても支障がないことをわざわざ詳らかにする必要性が見えないからだ。
 
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/25(金) 07:18:27.68 ID:EAJaSNc40
「姉妹そろって変な男の子に引っかかっちゃった」
「おい」

 否定できないのが苦しい。俺がまともな人間ならこんな泥沼人間関係を構築することはなかったんだし。だが、その類の誹りをなんでもなく受け流すスキルは俺になく、自然、食って掛かる形になる。

「……まあ、それがフータロー君でよかったなあとは思うけどね」
「変な男の中でもマシな方だと?」
「うん。楽しい人だったから」
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/25(金) 07:19:01.70 ID:EAJaSNc40
 真摯とか、誠実とか、そういう美辞麗句からは遠い存在となってしまった俺をそれでもどうにか褒めるにあたって、彼女は『楽しい』なんて単語を引っ張り出してきた。もうちょっと他に言いようがあるだろとも思ったが、彼女の持つボキャブラリの中で最適に思えたのがそれなら否定は出来まい。どうやら俺は、楽しい人間らしいから。

「まあ、好きになっちゃったら全部が良く見えちゃうからどうしようもないね」
「ダメ男に引っかかる未来が見えまくるぞお前」

 俺自身、そのダメ男という分類にくくられるかもしれないけれど。でも一花からは『妻が内職で稼いだ金で博打を打つ男』に吸い寄せられそうな空気を感じる。少なくとも俺はそこまで堕ちるつもりはないから、ぎりぎり水際でセーフって感じか。
 俺がかなり失礼な所感を述べたせいか、一花が腕を引っ張る力が強まった。どんな言葉で非難されるか、今のうちからヒヤヒヤものだ。
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/25(金) 07:19:27.31 ID:EAJaSNc40
「…………フータロー君が今のうちに確保しておいてくれれば、そんな心配ないのにね」
「…………」

 「正気か?」と口にしそうになって、寸前でどうにか引っ込めた。なぜこんな情緒も風情もない場所でプロポーズ紛いのことを言われているんだ俺は。お願いだからもっと先を見据えてものを言ってくれ。お前、馬鹿は馬鹿でも成績を除けばそこそこクレバーに立ち回れる奴だったはずだろ。
 
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/25(金) 07:19:57.72 ID:EAJaSNc40
「……ちょっと考えたでしょ」
「何を」
「私をお嫁さんにした未来」
「考えてねえよ。なんでそうなる」
「……………………私は考えたことあるからじゃない?」
「自爆するくらいだったら最初から言うなよ……」
「ちゃんとお部屋は掃除するよ?」
「当たり前だそんなの」

 汚部屋の自覚があるならぜひとも自分でなんとかしてくれという話。それは人としての最低ラインだ。
 しかしまあ、とんでもない爆弾を落としてくれやがる。結婚を意識するのが交際すらしていない段階と言うのは、世間的にどう評価されるのだろうか。
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/25(金) 07:20:26.42 ID:EAJaSNc40
「ってかお前マジで顔熱いぞ。熱でもあるんじゃないか?」
「演技だもん」
「無茶を言うな」

 熱に浮かされた演技で本当に熱が出るなら、そりゃあ未来の大女優様になれるだろうが。でも、そんな強がりはあまりにも明け透けで。
 手も、腕も、さっきから微細に震え続けているのに、それを覆い隠す論拠にはなり得ない。
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/25(金) 07:20:55.15 ID:EAJaSNc40
「演技ってことにしないと、いくらなんでも重すぎるでしょ……」
「自覚があるなら自重しろ。俺はちょっとお前が怖いよ」
「……私を選ぶって約束してくれるなら、喜んでそうするけど」
「ほんとお前そういうところだぞ」

 紛うことなきヤンデレの素質。こいつの将来が心配で仕方ないぞ俺は。……そんなことを言うと、「なら――」と提案されるのが明白だから黙るけれども。
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/25(金) 07:21:20.24 ID:EAJaSNc40
「でも、好きなんだよ」
「聞いた」
「ここ最近、好きで好きでおかしくなりそうなの」
「抑えろ」
「それが無理だから、一昨日みたいになっちゃったの」
「えぇ……」

 強姦を最終手段にするのは、いかに顔の良い女と言えどレッドゾーンだ。手順を踏んでくれお願いだから。
 マジで体を許す敷居が低すぎる。自己肯定感でも高めてやればどうにかなったりしないだろうか。ではそれをどうやって向上させるかとなった時に、俺が彼女を選択するという身も蓋もない解答がやってくるわけなんだが。もちろんこれは邪道も邪道なので、選べるはずもない。
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/25(金) 07:22:47.50 ID:EAJaSNc40
「正直、今も……」
「お前もそのパターンかよ」

 うっかり口を滑らせてしまったのに気付いたのは、一花の唇が脇目も振らずに俺の唇を捉えた直後。妹二人の行動に思うところのありそうな姉貴は、半分暴走でもするみたいに、俺の体に食らいついてきた。
 一瞬、火傷を疑った。
 と言うのも、一花の口の中があまりにも熱すぎたから。舌も歯茎も燃えているのかと勘違いするレベルの熱を保有していて、触れる俺を全力で焼き焦がしてくる。
 ……というか、それよりも。
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/25(金) 07:23:14.04 ID:EAJaSNc40
「……んっ、んぅ」

 明らかに上手になっていらっしゃるのですが……。
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/25(金) 07:23:40.18 ID:EAJaSNc40
 ここで思い当たる。さっき俺は相手がいないと練習できない行為だと断言したが、恥を忍べば疑似的にそれに近い体験は可能だと。古来から言われている、サクランボのへたを口の中で結ぶとか。……そういや、弁当にそんなフルーツが入っていたような。
 しかし、この行為の魔力はいったいなんなのだろうか。さっさと引き剥がしたいのに、体がそれを許してくれなくなる。脳が神経を麻痺させて、肉体の抵抗を禁じてくる。
 システム、なのだろうか。人間が保有する動物的な側面としての。種を継がないことには始まらないというのが、二重螺旋に深く刻まれているのだろうか。
 だって、もうそれ以外では説明がつかない。俺は自分の置かれている立場を理解していて、取るべきではない行動を把握している。そして現状、一花の舌さばきに応えているのは、明確な最悪手だ。
 唾液を取り換えたところで状況は打破できない。舌の根をねぶったところで状況は好転しない。それを全て知ったうえで、俺は一花の誘いに乗っかっている。
 性欲の斯くも恐ろしき……とふざけたスタンスに立てば、なんとかなるだろうか。分からないけれど、もっと悪いことになりそうで、大人しく思考のペースダウンを決めた。
 こうなったら、どうせ最後までしないと収まりがつかない。そんな事実は、とっくに知っているんだから。
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/25(金) 07:24:16.68 ID:EAJaSNc40
 片手で一花を胸に抱き寄せ、もう片手はスカートにくぐらせた。そこいら一帯が蒸されたように水気を持っていて、こんなにしながら俺と話していたのかと半分呆れ、半分感じ入る。
 俺とて男だから、自分をそういう対象に見てくれる相手に何も感じないなんてことはない。ありがたくも思うし、ほんのちょっとだけ愛おしくも思う。相手が俺のそういう思いを望んでくれているのならなおさら。

 慣れた手つきでベルトを外して、閉所に苦しんでいたものを放り出す。今日だけで相当酷使しているのに、まだまだ折れることは知らないらしい。性豪もここまでくると称賛モノだ。
 
「…………っ」
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/25(金) 07:24:42.25 ID:EAJaSNc40
 一花が逆手でそこを掴んだ。思えばこれまでは一も二もなく挿入することばかりで、前戯は蔑ろにしていたっけ。
 上下に擦られて、腰が浮きかける。自分でしようと思ったらそりゃあ順手だから、これは未知の感覚だ。しかも力加減が絶妙なせいで、射精までの最短経路を辿りかけている。
 情けなく達してしまうのも癪だから一花の秘部をかき回すと、彼女もそれに応じて握力に意識を振った。これはもう無理だなと思いながら絶頂を迎える寸前、今まさに精子がせり上がってくる亀頭を彼女の口がぱっくりと咥えた。そのあまりに想定外な刺激に驚愕して、若干の嬌声を伴いながら射精。それらすべては一花の口に吸いこまれ、そしてそのまま彼女の喉が大きく動いた。
 
「おいし……」

 そんなわけはないと思う。生活習慣は終わっているし。だけど、くだらないことに拘っていられる余裕はなかった。
 一度吐精したというのにまだ硬さも大きさも衰えることなく、俺は彼女を欲していた。あの圧で、包みこんでもらわずにはいられなかった。
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/25(金) 07:25:11.95 ID:EAJaSNc40
「……掴まれ」

 他に人がいないのをいいことに、一花を長机に乗せた。高さの都合上、彼女がそこで開脚すれば、びっくりするくらいにぴったりと俺の体と接合されることになる。
 我ながら弩級の変態だと思うが、ここまで来たら止まれない。指二本で彼女の具合を整え終えて、息もつかせぬまま、いきり立ったソレを彼女に飲み込ませる。
 うねり、絡めとられる。
 スキーン腺液だかバルトリン腺液だかが潤滑油として欲される以上の量分泌されて、彼女の体外に漏れ出し、机に染みを作る。
 内臓としての精巧さが男のものとは段違いだから丁寧な扱いを心掛けなければとは思うけれど、思考で行動を制御できる段階は脱した。それゆえ、俺の体はもう快感を求めて荒々しく本能的に動くだけだ。
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/25(金) 07:25:38.45 ID:EAJaSNc40
「っ、フータローくん……」
「…………」
「どう、きもちいい……?」
「……………………」

 この状況におけるその類の確認は、殺し文句になると知ってくれ。そう窘めてやりたいところだったが、思いが声になることはなかった。彼女からそんなことを言える余力すら奪い取ってしまおうと、体が加速するだけだった。

「あっ、あっ……」
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/25(金) 07:26:35.12 ID:EAJaSNc40
 漏れ出す喘ぎは艶っぽく反響する。この姿を俺が独占できるという事実に脳みそのヒューズがトびかけるが、そこは溢れる情欲が俺をどうにかつなぎ留めてくれた。乱れる彼女の表情を、動きを、見逃してしまうのは人生における大いなる損失だと本能が訴えている。
 
「……………………ぁ!」

 彼女の両足が、何かに耐えかねるように大きく開いた。直後、強烈な締め付けでもって、俺が貯蔵する限りの精子が根こそぎ搾り取られる。一滴も残さないくらいの勢いならまだマシで、これは一匹も残さないレベルの勢い。腰が抜ける一歩手前の快感に全身をがんじがらめにされて、みっともなく身悶えする。
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/25(金) 07:27:43.80 ID:EAJaSNc40
 そんな俺を見て、一花は。

「…………おわり?」

 揺れる瞳は次なる快感を心待ちにしているようで、それを察してしまった俺のボルテージが、最大から更に加速した。

「んなわけ……」

 覆いかぶさって、出鱈目な調子で体を打ち付け合う。ここで壊してしまうくらいの勢いで、ここで不能になっても構わないくらいの動きで、彼女を俺の色で染め上げていく。
 直後、また絶頂。が、それを無視して体を動かす。ここまで来たら、限界の先くらい拝んでおかないと、損得の収支が合わなくなると思うのだ。
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/25(金) 07:28:17.78 ID:EAJaSNc40
「あのさ」
「なに、フータロー君?」
「今は誰も選ばないって約束したら、こういうの、終わりに出来るか?」

 汗やら何やらでべちゃべちゃになったお互いの体をティッシュで吹きつつ、切り出す。相変わらず、タイミングを間違っている気はするけれども。

「お前を選ぶわけじゃないけど、他の誰かに決めることもない。そう誓ったら、元通りの関係性に戻れるか?」
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/25(金) 07:28:45.46 ID:EAJaSNc40
 彼女の不安要素はそこだった。俺の帰属先がいったいどこになるのだと。だから、前もって自分はどこにも属さない旨を伝えておけば、なんとかなるかもしれないと思った。

「いつまで保留する気?」
「…………卒業までには、どうにか」
「どういう基準で決めるの?」
「成績順じゃねえかな」

 半分冗談で告げると、一花の顔が青ざめる。今以上に勉強する未来を想像したからかもしれない。
 もちろんそんな風な選出基準は設けないけれど、ひとまずそれで沈静化が図れるならありがたい。他の連中にもそう言って多少の安堵を与えれば、今より酷くなることはないだろう。……いや、選ぶ選ばないなんて言える立場なのかな俺……。
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/25(金) 07:29:16.16 ID:EAJaSNc40
「抜け駆けがないなら、お前は安心だろ」
「まあ、うん。そうかも」
「だったらそれで頼む。いつかちゃんとけじめはつけるから」

 ここまでして責任の所在を有耶無耶にするのは人間として終わっている。だから、どんな形であれ結末ははっきりさせるつもりだ。……刺されそうだな、いつか。

「……あの、フータロー君」
「なんだ」
「…………っ」
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/25(金) 07:29:45.00 ID:EAJaSNc40
 そこでまた、唐突に唇を塞がれる。交渉が一瞬で決裂したかと肩を落とす俺に、一花は一言。

「これは抜け駆けに入る……かな?」
「…………好きにしろ」

 やっぱりどこまで行っても詰めが甘い。だけどこれで、どうにか活路が見いだせた気がする。初期の目標を達成できるだけの道筋をなんとか作れた。
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/25(金) 07:30:15.94 ID:EAJaSNc40
「…………あぅ」
「ただし、一日一回までな」

 またまた迫ってきた一花を片手で制する。俺に欲されていたのは、この鋼の精神だった。
 家庭教師業務の明日は、俺が自分で作るのだ。


180 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/01/25(金) 07:33:59.38 ID:EAJaSNc40
おしまい。長々と申し訳ない。 
一レスあたりの適正文章量が分からないのとコピペの手間がかかるのとで、かなり雑に区切ってる感がどうにも。
自分の技量の及ぶ範囲での指摘とかは極力聞いて行きたいと思うので、何かあったらよろしくです。
やっぱり続きは未定ですが、どうせ書くと思います。だけど残り二人がどうデレるか一ミリもわかんねーや。
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/25(金) 08:08:50.56 ID:EyPNpfKno
乙 いいぞいいぞ 残りのふたりも期待してる
適正文章量っていうか読者にどう読ませたいかじゃないかねこういうの
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/25(金) 08:29:30.69 ID:JLc4fkxeo
おつおつ
次回も期待
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/25(金) 08:32:34.04 ID:Bm9PzZE5o

>>148とか可愛すぎて最高でした
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/25(金) 16:22:28.47 ID:BRMTt2JD0
乙、よかった
改行入れすぎるとエラーで正しく表示されないらしいし今くらいの量でいいんじゃない?
あんまり1レスごと小分けで投稿しても読みにくくなるし
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/27(日) 22:10:03.58 ID:Tyg1dfkCo
おっつ
図書室でやってるのか笑
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2021/05/26(水) 12:02:28.80 ID:8yXQS3JiO
中野二乃「こんすいれいぷ」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1543718702/
中野三玖「だっかんじぇらしー」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1544619044/
中野一花「うらはらちぇいす」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1546867467/
中野一花&二乃&三玖「そうだつさばいぶ」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1547984505/
中野四葉「まにまにりぽーと」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1548764087/
中野五月「あいまいでぃすたんす」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1550748399/
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2024/01/17(水) 19:53:26.21 ID:6uu0ngD80
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