中野四葉「まにまにりぽーと」

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83 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/02/01(金) 21:16:48.77 ID:X8w2p+8S0
「無理して苦いものに手をつけるくらいなら、好きな甘いものを食ってた方がよっぽど良いと思うが」
「それもそうでした」

 四葉は苦笑を挟んでから、シロップと生クリームで覆われたスイーツにフォークを伸ばした。案の定、分かりやすいくらい美味そうに食ってくれる。見ているだけでこちらも上機嫌になれそうだ。
 
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/02/01(金) 21:17:22.13 ID:X8w2p+8S0
「はい、上杉さん」
「…………なんだこれは」
「あーんですよ、あーん」
「要らねえよ。子供じゃねえんだし……」
「私が上杉さんに食べてもらいたいんですよー」

 口許に伸ばされた切れ端をどうにか押し返そうとするが、思った以上に本気らしい四葉の圧に観念して、そのまま押し負けることにした。途端に糖蜜の味が口の中をいっぱいに満たして、いかにも四葉が好みそうな味だなあと理解する。
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/02/01(金) 21:17:49.37 ID:X8w2p+8S0
「どうです、美味しい?」
「…………甘いな。甘い」

 今度は率直な感想を述べることが出来た。甘すぎるくらいに甘ったるくて、たった一口なのに胸焼けしてしまいそうだ。その原因が、果たして砂糖の甘さだけによるものなのかは定かではなかったけれど。
 だから、未だ口の中に残る甘味を追い出すために傍らのコーヒーを煽った。思惑通りに苦味が緩衝材の役割を担ってくれて、どうにか一息吐くことに成功する。
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/02/01(金) 21:18:32.25 ID:X8w2p+8S0
「それ食った後ならブラックもなんとかなるんじゃね?」
「……おお、確かに」

 革命にでも立ち会ったような顔で、カップを持った四葉が言う。それくらい、もっと前に自分で気づいていたっていいのに。

「やっぱり上杉さんは天才ですね」
「安っぽ過ぎだろ、お前の天才観」

 まあ、四葉が楽しそうなので、これで良いということにしようか。

87 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/02/01(金) 21:28:38.92 ID:vLV9/7Eso
四葉ちゃんかわいすぎでは?
かわいすぎでは???
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/02/01(金) 23:17:21.51 ID:+dPylDvo0
パンケーキ食べたくなってきた
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/02/02(土) 00:22:32.79 ID:Em1ig8ys0
四葉さいかわはあると思う

なのでお義姉さん、妹さんを僕に下さい
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2019/02/02(土) 08:32:32.98 ID:RTnPi3+fO
や四天使
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/02/02(土) 22:52:29.06 ID:iPDnomYs0
 スクリーンに映し出される映像を、じーっと眺めていた。
 ストーリーラインというか、物語のジャンルを大雑把に分類するのなら、所謂ラブコメってやつに該当するのだろう。
 余命幾ばくもない女の子がいて、その子を好いている男の子がいて、そこにある葛藤なりなんなりを描いた作品。原作の小説がずいぶん売れているらしく、タイトル自体は俺でも耳にしたことがあった。
 似たような題材を扱った作品はごまんとあるので一山いくらの出来だと勝手に思っていたが、なかなかどうして良く作られている。そのせいか、俺らしくもなく画面に見入っていた。
 ……が。
 物語がクライマックスを迎えるあたりから、横の客のすすり泣きがどうしても邪魔をして気もそぞろになってしまった。
 残念なことに、その横の客というのが俺のツレだという事実もあって、ついつい視線をそちらに向けざるを得なくなる。
 そこにはハンカチで顔を押さえる少女がいて、暗い館内でも分かるくらいに泣き腫らした目で、食い入るように物語の続きを追いかけていた。
 なんだか見てはいけないものを見た気分になって、悟られないようにそっと視線を逸らす。どうせ後から感想を聞かれるのだろうし、俺もちゃんと結末を目に焼き付けないと。
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/02/02(土) 22:53:12.06 ID:iPDnomYs0
「バイト先の店員さんに感謝です」
「悪いな、俺まで厄介になっちまって」
「いえいえ、元から二枚あったので、ちょうど良いタイミングでした」

 少し前に譲ってもらったのだという映画のチケットが役に立った。こいつは人好きのする奴だから、バイト先でも気に入られているのだろう。
 しかし、ペアチケットを渡すってのはつまりそういうことだから、その店員とやらにはいくらか同情してやらねばならないかもしれない。真意を汲んでもらえずかわいそうに。
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/02/02(土) 22:53:51.69 ID:iPDnomYs0
「面白かったですね」
「期待してたよりはな」

 見入ってしまったことをそのままに伝えるのはどうにも気恥ずかしく、だから迂遠な表現方法に頼ることになる。まるで成長が見られないが、もともと俺なんてこんなもんだ。
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/02/02(土) 22:54:28.93 ID:iPDnomYs0
「でも上杉さん、泣いてる女の子のことをじろじろ見るのはマナー違反ですよ」
「気になるもんは仕方ないだろ。あんだけぴーぴー泣いてんだから」
「なっ」

 ぴーぴーは余計だったらしい。四葉は何かを訴えたそうに唇をこっちに突き出しているのでおそらく今の間に減点がなされているのだろう。そういや聞いていなかったが、ポイントがゼロを下回った場合は何が起きるのだろうか。
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/02/02(土) 22:55:17.09 ID:iPDnomYs0
「別に減るもんでもないしいいだろ。お前らの泣き顔はもう飽きるほど見た」
「それ、なかなかの問題発言ですね」
「しゃーないだろ。お前ら気づいた時には泣いてんだし」

 そもそも俺が泣かせているわけでもないし。たまたま居合わせる状況が多いってだけで、そこに俺が関与してはいない。……ちょっと関わっているかもしれないけれど、関与していないということにする。
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/02/02(土) 22:55:44.87 ID:iPDnomYs0
「そこでさっとハンカチを手渡す心配りがあれば、上杉さんも一人前なんですけど」
「なんだ。その俺がまだ半人前みたいな言い方は」
「……人混みに巻き込まれたときにさりげなく手を貸してくれる優しさなんかがあれば、上杉さんも一人前なんですけど」
「それはもうさりげなくねえだろ」

 映画館の近くは今出てきた人間とこれから入っていく人間とで混雑していて、気を抜いたらはぐれてしまう可能性もあった。通信機器があるとはいえど、離れてしまうのが面倒だというのに違いはないから、出来ることなら傍にいた方が望ましいが。
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/02/02(土) 22:56:24.69 ID:iPDnomYs0
「……はぁ」
「幸せが逃げちゃいますよ」
「やって来たこともないからセーフだ。……ほら、袖でも握ってろ」
「……変化球」
「なんだその感想」

 そう言いながらも、ちゃっかり袖は掴まれてるし。

「これで一人前になれたか?」
「まだ四分の三ってところですかね」

 袖はお役御免で、何事もなく手を取られる。どうせ最後はこう収まるのだから最初からそうしておけよってことか。
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/02/02(土) 22:57:17.17 ID:iPDnomYs0
「五分の一人前の奴に言われてもって感じだ」

 向こうの三倍以上俺の完成度の方が高い。どんぐりの背比べ感もあるが、勝敗と優劣ははっきりさせておくに越したことはないだろう。

「私も、上杉さんが思ってるよりは成長してますよ?」

 で、今度は腕を持っていかれた。大分耐性をつけたつもりではいたものの、周囲の視線は相変わらず痛い。
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [ saga]:2019/02/02(土) 22:58:05.17 ID:iPDnomYs0
「どうだかな」
「どうでしょうね」

 意味もなく笑って、その場を後にする。
 彼女たちの成長なんてハナから知っていることではあったから、否定する気も起きやしなかった。


100 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/02/02(土) 23:34:59.14 ID:Hylro0EXo
>「私も、上杉さんが思ってるよりは成長してますよ?」

ああ〜
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/02/02(土) 23:42:08.82 ID:Nr4oQxY20
周囲の人たち爆発しろって思ってそう
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/02/03(日) 00:03:26.10 ID:Tq6o+ge60
>>46
ss読む前だったから大丈夫です
次巻発売したぐらいで読むわ
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/02/03(日) 16:24:59.80 ID:MuQXXs+F0
上杉さんを五等分しなければならない
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2019/02/03(日) 20:34:21.19 ID:d4aGa6jO0
二人がいちゃいちゃしてる……可愛い……
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2019/02/04(月) 00:29:06.62 ID:6RZD2uqW0
サイコホラーな五等分はNG

だが上杉は爆死しろ
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/04(月) 21:16:17.89 ID:5Sstbg/l0
ぼちぼち更新
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/04(月) 21:16:52.27 ID:5Sstbg/l0
 薄々感じていたことではあったが、日暮れまでの時間が短くなっている。途中密室に二時間幽閉されていたのだから当然それなりの時間経過はあって、茜色に馴染んできた東の空が、昼の終わりを告げていた。
 家庭教師をサボって四葉の付き添いをしてきたわけだが、なかなかどうして悪くない時間の使い方だったように思う。四葉には人を楽しませる才能があるのだろう。前まではそれが他人本位での行動だったから危うくも感じられたが、今は。
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/04(月) 21:17:22.47 ID:5Sstbg/l0
「四葉」
「なんでしょう?」
「もしかしてこれ、去年の反省会だったりするか?」
「へへ、バレちゃいましたね」

 いたずらっぽい笑みを浮かべて、四葉が顔を傾けた。夕陽を背にしているせいで、まるで後光が指しているようだ。
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/04(月) 21:17:55.10 ID:5Sstbg/l0
「相変わらず、なんでもお見通しです」
「俺でも分かるようにやってたろ」
「そこまで見透かしますか」

 四葉が、一本ずつ指を追って数を数えていく。それが片手で収まらなくなったところで、言葉が紡がれ始めた。
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/04(月) 21:18:47.65 ID:5Sstbg/l0
「あの雑貨屋は、たまたま見つけたお気に入りです」
「おう」
「あの喫茶店へは、自分へのご褒美でアルバイトの後に何度か通ってました」
「おう」
「あの映画は、前から気になってました」
「おう」
「全部、私の興味と好みが詰め込まれたものです」
「分かってる」
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/04(月) 21:27:34.64 ID:5Sstbg/l0
 主体性の一切が喪われたような行き場所の選定に、去年は大いに困惑したものだった。それを踏まえて、彼女なりに模索するものがあったらしい。

「他にも色々あったんですが、全部回るには一日ってすごく短くて」
「いいよ別に。お前が言いたいことはなんとなく察した」
「どうです、言った通り成長したでしょう?」
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/04(月) 21:29:22.76 ID:5Sstbg/l0
 胸を張る四葉。その仕草があんまり年不相応なもので、ついつい吹き出してしまった。

「あー、馬鹿にした!」

 「してないしてない」と手を振って否定した。微笑ましかっただけだ。
 この一年弱の間に、彼女は必死で自分らしさを探していたのだろう。姉妹の影を追うのではない、あくまで自分の内側だけで完結するものを。
 愚直だなぁと思う。まっすぐ過ぎて眩しくも思う。ただ、その前向きな姿勢が他ならぬ四葉らしさであるということを、本人だけが気づいていなさそうだというのがこの話のミソだ。
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/04(月) 21:29:50.67 ID:5Sstbg/l0
「俺の言ったこと気にしすぎだろ」
「私なりに思うところがあったんですよ」
「お前、そういうとこ変に真面目だよな」

 融通が利かないとでも言うか。実直さの弊害なのかもしれない。

「でも、おかげで色々見つかりましたよ」
「たとえば?」
「少ないお小遣いでどう工夫して楽しむかとか、短い時間でどれだけ多くのことが出来るかとか。……とにかく、色々です」
「すげえな、お前」
「へ?」
「いや、なんでもない」
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/04(月) 21:30:21.60 ID:5Sstbg/l0
 今日の頭に考えたことを思い出していた。なぜこいつが笑顔を絶やさずに生活できていられるかが謎だったが、そんなのはなんてことない、ただの発想の転換に過ぎなかったのだと理解する。
 与えられた環境に文句を言うのは簡単で、だけど打開するのは誰にでも出来ることじゃない。それをこいつは、その中でどれだけ自分が楽しめるかに主眼を据えて生きている。
 住めば都ではないが、住んだ場所を都に変える能力とでも言えばいいか。お気楽に見えて、こいつが一番真理に近いところに立っているような気がする。
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/04(月) 21:30:59.68 ID:5Sstbg/l0
「その前向きさは、俺も見習った方がいいなと思っただけだ」
「私みたいな上杉さんは、ちょっと気持ち悪いかもです」
「完全にトレースするわけねえだろ。コラ、俺にリボンつけようとすんな」
「今日はあの髪飾りがあるので」
「そうか。いやそうじゃねえ。なぜそのレベルで形から入ると思った」
「まあまあ」
「まあで済ますなよ……」
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/04(月) 21:31:28.78 ID:5Sstbg/l0
 要領を得ないやり取りをしばらく繰り返し、無駄に目立つリボンを互いに押し付けってから、それでも最後はなんとか四葉の頭部にそれを戻す。
 無駄にパワフルな彼女の気にあてられて、休憩のために街路樹に背中を預けた。こんな用途で設置されたものではないと分かっているが、今だけはどうか許してほしい。
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/04(月) 21:32:00.63 ID:5Sstbg/l0
「もしかしたら上杉さんに似合うかもしれないのに」
「似合ったとしても付けねえよ」
「そんなこと言わずに一度だけチャレンジしてみません?」
「お前がブラック飲むのとはわけが違うんだよ」

 沽券に関わる問題なので、そうやすやすと挑戦する気は起きない。写真でも撮られようものなら一生涯残る汚点になる。
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/04(月) 21:32:48.36 ID:5Sstbg/l0
「ぶー」
「拗ねるな。ダメなもんはダメだ」
「ぶーぶー」
「その異様な執着は一体どこから出てくるんだよ……」
「ただの好奇心ですが」
「えぇ……」

 どうせなら、もっとマシな理由の一つも考え出して欲しいところだ。それを聞いたおかげで、より一層つけてやらねえぞという気持ちは強固なものになったが。
 なおも多角的に攻めてくる四葉を適当にいなして、暮れなずむ夕日を眺める。結局丸一日遊んでしまったが、これは業務的にアリなんだろうか。
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/04(月) 21:33:37.73 ID:5Sstbg/l0
「上杉さん」
「なんだよ」
「楽しめました?」
「幸運にもな」

 彼女の足跡を辿るような一日だったが、いつかと違って名状しがたい違和のような何かは消え去っていた。自然に楽しめてしまった。……しまったというのも、なかなか言葉の綾感が染み出しているけれど。
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/04(月) 21:34:22.60 ID:5Sstbg/l0
「なら良かったです。上杉さん、最近ずっと忙しそうだったから」
「忙しいのは今に始まったことじゃねえんだけどな」

 四葉の額を軽く小突く。

「主に五人ほど、問題児の面倒を任されているおかげで」
「…………」
「後ろを探すな。間違いなくお前らのことを言ってる」
「やっぱりそうでした?」
「それ以外誰がいるんだっての」
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/04(月) 21:35:13.76 ID:5Sstbg/l0
 本当にもう、毎日がてんやわんやだ。自分の世話もしないといけないし、家族だっている。そんでもって、こいつらから目を離すわけにもいかない。
 いつの間にか五つ子の扱いが自分や家族と同列になってしまっていることにぎょっとするが、そこらへんに関してはいい加減に認めなくてはならないのかもしれなかった。気付けば、こいつらの存在なしに上杉風太郎は語れなくなっている。

「早えな、時間が過ぎるの」
「楽しい時間はあっという間ですから」
「……別に、今日だけに限った話じゃないんだけどな」
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/04(月) 21:35:41.36 ID:5Sstbg/l0
 聞かれないように極小の声で呟く。四葉理論で行くなら、俺はこの一年を楽しんで走ってきたことになるのだろうか。……途中途中に絶対人様には教えられないイベントが挟まっていて、それを楽しんでいたかと言われると正直返答に困ってしまうのだけれど。

「で、お前のプランに残弾はあるのか? ここまで来たらもうとことん付き合うけど」
「うーん……」
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/04(月) 21:36:15.20 ID:5Sstbg/l0
 眉間にしわを寄せて四葉が唸り始める。そこまでして考えなくてもいいのに……。

「……そういえば言われてません」
「何をだ」
「去年みたいに、『彼氏さんですか?』って」
「どこまで再現性高める気してんだお前」
「上杉さんが彼氏っぽく振舞ってくれないからー」
「言いがかりも甚だしいなおい……」

 謎の執念に尻込みする。そんな都合の良いことを言ってくれるエキストラが早々現れるはずもないのに、四葉は手を廂にして周囲をきょろきょろと観察しだした。
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/04(月) 21:36:44.21 ID:5Sstbg/l0
「狙い目はブティックですかね」
「狙うなそんなもん」
「とっておきの返しを考えてあるんですよ」
「備えるな。そんな憂いに」

 俺を何に巻き込むつもりなんだこの妖怪どデカリボンは。楽しかった一日の記憶にヒビでも入ったら最悪だろうに。
 確かに前は表情を変えるだけの微妙な間があったが、今回はその間をどうやって埋める気なのか。気にならないというわけでもないが、積極的に知りたいというほどでもない。俺が渦中に放り出されないのなら、知ってもよかったかもしれないが。
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/04(月) 21:37:20.81 ID:5Sstbg/l0
「近くにカップルへ無差別にインタビューを繰り返しているテレビカメラでもあれば……」
「やけに具体的で怖いからやめてくれ」

 俺も彼女に倣って周囲を見渡すも、それらしき影はない。どうやら杞憂。びっくりさせないでくれ頼むから。

「かくなる上は、近くの人にどうにかお願いして……」
「そこまでして披露したいのかよ」
「とっておきなんですもん」
「一生とっておけばいいのに……」
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/04(月) 21:38:05.26 ID:5Sstbg/l0
 お披露目の機会を得ないまま、納屋で埃をかぶって欲しい。使えるシーンがあまりに限定的すぎる対処法に、意味らしい意味なんてないのだから。

「取りあえず限界までカップルっぽくして可能性を高めましょう。まずはそれからです」
「どこらへんが『まず』なのかが理解できない」
「大丈夫! 天才の上杉さんならきっとすぐに分かってくれます!」
「悪い、言い方変えるわ。俺はきっと理解したくないんだ……」

 脳が絶妙に理解を拒むのが分かる。酷い茶番に付き合わされていると、体が拒絶の意を示している。
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/04(月) 21:38:39.61 ID:5Sstbg/l0
「私を助けると思って、どうか」
「何が助かるんだこれで……」
「うら若き乙女の純情です!」
「うら若き乙女は自分でその肩書を名乗らないからな」
「さあ、張り切っていきましょうね!」

 ここまで振り切れるといっそ清々しくも思った。四葉の腕に引っ張られるようにして、ずんずんと前に進んでいく。

128 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/04(月) 21:39:15.34 ID:5Sstbg/l0
今から続き書いてきます。上手く行けば深夜に更新するかも。
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/02/04(月) 21:40:19.56 ID:K/RpmK+qo
乙 やったぜ
四葉ちゃん尊みがふかい
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2019/02/04(月) 21:51:09.65 ID:yFDrg+Oj0
ダメだ続きが気になりすぎて全然作業に集中出来ない……四葉かんわいい……
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/02/05(火) 00:21:57.54 ID:Dj5efDad0
フータローの四葉リボンは原作でもやってたが似合わなすぎて笑っちゃう
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/02/05(火) 00:54:00.40 ID:FGLu1YPT0
キャンプファイヤーの時に5人全員が指を握りに行ってたし、フータローは全員を幸せにする義務がある
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/05(火) 20:47:00.13 ID:+EJgW/MP0
深夜(大嘘)
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/05(火) 20:47:36.04 ID:+EJgW/MP0
「そろそろ諦めたか?」
「いいえまだです。まだ可能性は残っています」

 人通りの多そうなところを選択して歩きながら、自分たちに話しかけてくれそうな人を探す四葉。何が原動力になっているのか、その頑なっぷりは尋常でないように思う。
 
「お披露目のタイミングは今じゃないってお告げだろ」
「それは、その、そうかもですけど……」
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/05(火) 20:48:02.58 ID:+EJgW/MP0
 四葉は何か言いたげに唇をもごもごさせる。ただ、無理なものは無理だ。現実はそう上手く出来たものではないから、欲しい時に欲しいものが手に入ったりはしない。

「退き時も重要だぞ。引っ込みがつかなくなってからだと遅いからな」
「うぅ……」

 肩を落として残念がっている。それほどまでに、俺に見せたいものだったのだろうか。

「仕方ねえな……」
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/05(火) 20:48:30.57 ID:+EJgW/MP0
 どうせこのままでは収拾がつかないのだ。なら、俺が一肌脱いだほうが早い。両損になるよりは、いくらかマシ。

「……あー」

 声色を調整する。形から入り過ぎだなーとも思うが、素面でやるのはちょっと厳しいのだ。

「…………そちらは彼氏さんですか?」
「……へ?」
「…………」
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/05(火) 20:49:06.74 ID:+EJgW/MP0
 当然の反応だ。我ながら意味の分からないことをしてしまった。もうちょっとまともな導入の一つや二つ、探せばあったに違いないのに。
 相変わらず、そのあたりで器用になれない。俺が俺たる所以が透けて見えるようだ。

「…………そちらは彼氏さんですか?」
「…………」

 今さっき言ったばかりの台詞を思い出している。人間にとって大切なものの一つは撤退のタイミングだと思っていて、だからこんな風に、一度踏み出してしまった足を戻せない。
 コストの回収に失敗した超音速旅客機の逸話を思い出す。せめて原価分でも回収したいという感情はきっと万人に共通のもので、しかもそれは、貧乏性の俺なんかには特に顕著なものとして現れる。
 だから早く、俺の意図を汲んでくれ……。
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/05(火) 20:49:50.79 ID:+EJgW/MP0
「………………そちらは――」
 
 投げやり気味に三度目を呟きかけて、そこでようやく四葉からの明確なリアクションがあった。どうやら、傷が浅いうちに救ってもらえるらしかった。
 ただでさえ腕が引っ付いているのを、今度は体の側面が一体化するレベルで密着する。無論、俺から動くはずもないので、これは全て四葉が主導の出来事だ。
 で、そこでどうやら、彼女が秘蔵していたとっておきがご開帳されるようで。
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/05(火) 20:50:42.51 ID:+EJgW/MP0
「…………彼氏さんにしたい人、かもしれません」

 伏し目がちに、俺にだけ聞こえるくらいの声量で、四葉は告げた。
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/05(火) 20:51:15.89 ID:+EJgW/MP0
「をゑ」
「ちょっと!」

 変な声が出てしまって、それを聞き咎めた四葉が俺の肩をがっくんがっくん前後左右、ひいては上下やら斜めやらの軌道を加えて揺らしまくる。もとから俺より力強い奴なので、抵抗することも出来ず乱気流に飲み込まれたみたいになっていた。
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/05(火) 20:51:48.10 ID:+EJgW/MP0
「私の純情になんてことを!」
「あばば」
「なんてことをー!」

 泡を吹いて気絶する寸前で、なんとか肉体が乱気流を抜けた。なおも視界のピントが定まらないのが恐ろしいが。
 四葉らしき輪郭の物体が、ずかずかこちらに詰め寄ってきているのは分かった。乙女の純情ってのは、俺が思うよりもなかなか重大なものらしい。
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/05(火) 20:52:19.66 ID:+EJgW/MP0
「もっと甘い反応をしてください!」
「甘いってなに」
「恥じらって!」
「……俺が頬染めながらそっぽ向くのはなんか違くないか?」
「ちょっとくらい動揺してくれてもいいじゃないですか……」
「動揺してるだろ」

 動いているし揺れている。しかも現在進行形で。三半規管の乱れからか未だに平衡感覚は定まらず、四葉の顔すら朧げにしか映っていない。
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/05(火) 20:52:48.37 ID:+EJgW/MP0
「物理的なお話ではなくて……」
「……いや、動揺してるだろ」

 予想していなかった言葉に、多少なりともダメージは負っていた。既に耐性をつけていたから多少胸がざわつく程度で済んでいるが、聞かされている時期が違えば、俺のリアクションが違うものになったのは疑いのない事実だ。
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/05(火) 20:53:27.36 ID:+EJgW/MP0
「……出来れば、その、前みたいに否定してくれると、会話はしやすいんだけど」

 三玖のコロッケと戦ったあの日を思い出す。これがまた単なるからかいならリボンを引っ張って終わりだから、扱いやすくて良い。
 四葉から時折感じていたつかみどころのなさが、ここでも発揮されることを祈っている。まるで女っ気のない俺をおちょくっているだけなのが一番望ましい。
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/05(火) 20:54:08.82 ID:+EJgW/MP0
「会話しやすいって?」
「ぎくしゃくするだろ、どうしても」
「私のこと、嫌いだったりしますか?」
「そういうわけじゃないけど、せっかくの人間関係がぎこちなくなるって言うか」
「嫌いではないんですね?」
「二度聞くことでもねえだろ……」
「かなり重要なので。……嫌いではないんですね?」
「まあ、そりゃな」

 嫌いな相手と一緒に休日は潰さないだろう。姉三人組とのとんでもない因縁ともあいまって、四葉と話す機会は増えていたし。
 そもそも初期から俺に協力的だったのはこいつだけなので、先生としての視点で、四葉が一番楽に扱える相手だった。……その分、誰より成績管理が厄介だという不要なおまけがついてきてはいたけれど。
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/05(火) 20:54:49.64 ID:+EJgW/MP0
「なら良かった。ねえ、上杉さん」
「おう?」
「さっきのあれ、もちろん嘘――」
「おう」
「…………わざと遮りましたね?」
「バレるか、やっぱり」
「はい。そのくらい、私だってお見通しなんです。――残念ながら、嘘……じゃないんです」
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/05(火) 20:55:36.59 ID:+EJgW/MP0
 これまた返答に困る。好意を持たれるのが嫌なことかと言えば決してそうではないが、なんせそれが原因で大変なことになっているわけだから。
 なので、ここで選択をミスすることは許されなかった。上手く立ち回って、諸問題を悪化させないようにする必要がある。

「そうか」
 
 なのに、やっぱり気の利いた言葉は口から出てくれなくて、逃げの姿勢が染み出したハリボテみたな笑みを顔に貼り付けることしか出来ない。真っ直ぐな思いをぶつけられると思考停止してしまうのは、前からずっと同じだった。
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/05(火) 20:56:25.11 ID:+EJgW/MP0
「今日一日一緒にいて、再確認出来ました。何より大事なのはどこにいるかじゃなくて、誰といるかだって。上杉さんの傍にいると毎日が賑やかで、あったかい気持ちになります」
「俺、そんな大層な人間じゃないぞ」
「知ってるので大丈夫です」

 それは果たして笑顔で言い切ることなのだろうか。自分が大人物でないのは言われずとも分かっているが、がっつり肯定されると、それはそれでなんとも言えない気分になる。
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/05(火) 20:57:04.25 ID:+EJgW/MP0
「姉三人と男の人の趣味が似通ってしまうのは流石に想定外でしたけど」
「ぶっ」
「人目を盗んで毎日のようにとっかえひっかえちゅっちゅしてる人を好きになるなんて、我ながらとんでもないことだなと思いますけど」
「…………え?」

 とんでもないワードが飛び出したのを聞いて茫然とする。……え?
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/05(火) 20:57:47.34 ID:+EJgW/MP0
「バレてないと思いました?」
「い、いつから……」
「少なくとも、最近ではないですね」
「……マジか」
「何やら事情がある様子だったので、聞いたりはしませんでしたが」
「……マジかー」
「申し開きがあるのなら、今ここで」
「いや、その、だな……」

 三件分の告白を保留している旨を四葉に伝える。もちろん、肉体関係については伏せた上でだ。結構な爆弾情報だが、彼女も大分知っているような口ぶりなので問題は小さいだろう。それよりも、一体いつ気付かれてしまったのだろうか……。
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/05(火) 20:58:34.06 ID:+EJgW/MP0
「ずいぶんと派手にたらしこみましたね」
「不可抗力だったんだよ……」

 少なくともきっかけはそうだった。その後は自分も結構ノリノリだったから、あまり人のせいにし過ぎることはできないけれど。
 
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/05(火) 20:59:39.61 ID:+EJgW/MP0
「で、優柔不断な上杉さんは誰にするか決めかねていると」
「うっ」
「誰が一番か品定め中だと」
「ううっ」
「今になってそこに私が混ざって来たから余計に困っていると」
「あんまりグサグサ刺さないでくれ……」
「……まあ、みんなの気持ちをなんとなく察した上で特攻しちゃった私も私かもですが」

 しかしやはり不服さがどこかに残るようで、四葉はじとっとした目で俺の視線を絡めとってくる。俺が今やっていることは最低の誹りを免れないだろうなというのは覚悟の上で、しかも四葉からすればその火の粉が彼女とその身内に降りかかっていると来たものだから、納得できないのも当たり前。
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/05(火) 21:00:15.99 ID:+EJgW/MP0
「上杉さんの取り合いで姉妹の仲が壊れるのは嫌ですし」
「それなんだよ……」
「でも、上杉さんを誰かに譲った場合、私はその様子を誰より近くで見せつけられ続けるわけで」
「そんなに性格悪い奴、お前らの中にいないだろ……」
「意識していなかったとしても、当然格差は出るじゃないですか。知らないアクセサリーをつけてたり、電話で長話をしてたり、最後には朝まで家に帰ってこなかったり。そこに悪意がないからこそ、私はきっとすごく後悔しちゃうと思います。『あの時もっと強引に詰めておけばよかったなあ』って」
「想像がエグいって。なんでそこまでリアルに思い描いてんだお前」
「私、意外と負けず嫌いみたいで」

 スポーツをやっている人間だから負けん気があるに越したことはないのだろうが、それにしたってもっと別のところで発揮してほしかった。よりにもよって、こんな場所でなくてもいいだろうに。
 前々から強まっている姉妹で仲良く過ごしてもらえれば、という俺の密かな祈りが、俺自身の存在によって脅かされかねないという強烈な皮肉。本当に、どうしてこうなってしまったのか。
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/05(火) 21:00:55.10 ID:+EJgW/MP0
「好きな人を誰かに奪われちゃうのは、耐えられないかもですね」
「……男を見る目が無さすぎるだろ、姉妹に共通して言えることだが」
「そこはほら、五つ子なので」
「似せんなそんなもん……」

 しゃがみこむ。情報過多で処理落ちしそうだ。この数か月、姉たちと積極的に近づき過ぎないように意識したせいで、今度は四葉を引っかけてしまった。そこに確かな思惑があったならいいが、こちらは完全に無意識。意図しないところで望外の結果が生まれても、俺はただ口をあんぐり開けて立ち尽くすことしかできない。
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/05(火) 21:02:02.93 ID:+EJgW/MP0
「……取りあえず、歩きながらお話しましょうか」

 忘れていたが、ここは一応往来だ。あまり長く留まり過ぎては道行く人の邪魔になる。
 そう考えて、四葉の提案に乗っかることにした。……今の発言を受けた後にこうやって腕を引かれるのは、明らかにさっきまでと違う意味が込められている気がする。



156 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/02/05(火) 21:18:21.53 ID:1b5Ixq6No
四葉ちゃん清涼感漂っててすごい
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2019/02/05(火) 21:18:53.04 ID:xUyr4RAb0
いいぞっ!
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/02/05(火) 22:44:32.19 ID:FGLu1YPT0
なるほど、二乃が悪いな!
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/02/06(水) 00:06:03.05 ID:JPcoYWOc0
四葉かわかわ
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2019/02/06(水) 01:00:09.00 ID:/wMUyKfh0
ほんへの四葉もこれくらいのことしてくれたらなぁ(最新話をみて心を痛めた人の感想)
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage ]:2019/02/06(水) 01:51:07.39 ID:nR9tPFXj0
四葉の闇は深い
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2019/02/06(水) 02:02:56.06 ID:k4AzNVyY0
ほんへ見て切なくなったので癒されにきました
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/06(水) 02:31:01.91 ID:fRM7kkD70
最新話は落として上げるフラグなのでセーフ。逆に勝ちなので無問題。無問題ったら無問題。
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/06(水) 02:31:28.31 ID:fRM7kkD70
 太陽がすっかりその姿を隠し、街の店々が照明を燦燦と輝かせる時間になって、その中をただ黙々と二人で歩いた。
 歩きながら話すと言った割にこの場に相応しい話題は提供されなくて、上を向いたり下を向いたり、とにかくそわそわしながらあっちこっちへ足を動かすだけ。体力の差があるせいか俺の体はもうずいぶんとくたびれてしまっていて、出来ることならどこかで休憩を挟みたい気分だった。

「上杉さん的には」
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/06(水) 02:31:56.49 ID:fRM7kkD70
 ようやく四葉の口が開かれて、破られた沈黙の欠片を集めるように、そちらにすっと耳を澄ます。暗がりの中では視力がまともな働きをせず、残った五感が鋭敏になっている感覚があった。

「今のところ、誰がリードしてる感じですか?」
「これまた答え辛いこと訊いてくんなお前」
「この際根掘り葉掘り言った方がいいかなと思って」
「……そういうのを考えなくていいように、最近忙しくしてたんだよ」
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/06(水) 02:32:32.17 ID:fRM7kkD70
 バイトのシフトを多めに入れて、今まで以上に勉強に打ち込んで。そうやって何か一つに集中している間だけは、彼女たちの顔を思い浮かべずにいることが出来たから。
 我ながら腐った根性をしているなと思うが、正直それ以外に方法がない。刻限までの時間をどうにかやり過ごさないことには、俺はまともに生活することも叶わないのだ。

「その場凌ぎでいずれ誰かを選ぶから保留なんて約束を取り付けたのはいいものの。……それはつまり、その」
「余りますね、たくさん」
「容赦ない表現使うな……」
「で、上杉さんの中の優しさが邪魔して、それを嫌がっていると」
「これを優しさって呼ぶかよ」
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/06(水) 02:33:01.21 ID:fRM7kkD70
 かなりクズな部分だと思う。要は、自分の決定で産まれる不幸を嫌っているだけなのだ。なんならこんな男から離れた方が最終的に幸せになれそうな気もする。……それにしたって彼女たちの男運を思えば、後が危ぶまれもするのだけれど。

「せっかくの機会だから忠告しとく。俺だけはやめといたほうがいいぞ」
「ここで素直に聞き入れたら絶対に後悔すると思うんですよ」
「全員に諦めてもらえるならそれが一番だろ」
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/06(水) 02:33:32.58 ID:fRM7kkD70
 間違いなく一生続く姉妹の関係を、俺みたいな部外者の存在で破滅させて良いわけがない。こんなのは、計算すればすぐ分かることだ。

「…………無理じゃないかなぁ」
「なんでだよ」
「たとえばですね」

 四葉の指が、俺の指一本一本をゆっくり絡めとっていく。一回り小さい手はしっとりとして柔らかくて、かさついている上にごつごつと硬い俺の手とは根本的に作りが違うのだろうなと思った。
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/06(水) 02:34:03.99 ID:fRM7kkD70
「こういうのを知っちゃうと、もう戻れないわけです」
「どうして今知ろうとした……」
「戻れなくしておこうと思いまして」
「確信犯かよ」

 覚悟の示し方があまりに男前すぎて憧れそうだ。やめてくれって全身が叫んでいるけど。

「感想とか、ないですか?」
「JKビジネスが成立する理由がなんとなく分かった」
「…………もっと、単純なので」
「……体温高いな、お前」
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/06(水) 02:34:30.58 ID:fRM7kkD70
 疑うまでもなく恥ずかしいことを言った。基礎代謝の違いだというのは分かっているのに、その温もりに何かしらの理由を見つけようとしている自分がいて本当に嫌だ。
 
「これが好きのパワーです」
「言ってて恥ずかしくないのかそれ?」
「正直失敗したのでこっち見ないでください」

 そう言われても、今見たものを忘れるのは難しい。まだ夕陽が残っていてくれたら、頬に差した朱も、照り返しだって勝手に納得することが出来たのに。
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/06(水) 02:35:06.16 ID:fRM7kkD70
「……と、そんな感じで、私はもはや引き返せないところにまでやってきてしまったわけです」
「袋小路だって分かってるのに入って来るなよ」
「顔が同じなので、運よく選ばれることがあるかもなーって」
「よしんばそうだったとして、お前はそれに納得できんのか……」
「しちゃいますね多分。思い出は後からでも積み上げられるので、上杉さんの確保の方が急務です」
「しちゃわないでくれ……。もっと悩めよ……」
「競争相手がいなければもっとゆっくりでも良かったんですが、恋愛は基本的にスピード勝負なので」

 先手有利の原則はゲームだけにして欲しいものだ。人と人との駆け引きにまでそれが持ち込まれたら、一体いつ気を抜けるタイミングが来るか分かったもんじゃない。
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/06(水) 02:35:34.85 ID:fRM7kkD70
「だから、私としてはもうなりふり構っている場合じゃなくて」
「構え。人として最低限の尊厳を見失うな」
「使えるものは、全部使うべきだと思うんです」
「なんだそれ……」
「最初にポイントの話をしましたよね」
「あったなそんなのも」
「内訳は省きますが、428ポイント達成です」
「どうなってんだ」
「でも、間の悪いことにギョウザ無料券は切らしていて」
「切れるもんじゃないだろそれは」
「…………だから、その、中野四葉一晩自由権で手を打ってもらえないかなと」
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/06(水) 02:36:10.63 ID:fRM7kkD70
 知らぬ間に、ネオンがけばけばしく光る謎のエリアにやって来ていた。近くの電飾看板にはここが休憩所である旨が記されていて、かねてから体を休めたかった俺としてはうってつけの場所に思える…………わけねえだろ。バカか。脳みそ溶けてんのか。

「落ち着け」
「作法は予習済みです」
「こんなところで俺の教えを活かすな。お願いだから正気を取り戻してくれ」
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/06(水) 02:36:40.23 ID:fRM7kkD70
 一日ほんわかとしたノリでいたのに、最後の最後でラのつくホテルに入ったら全部が全部瓦解する。それはいけない。
 四葉は話を聞ける奴だ。だから、なんとか説得して離脱しないと。

「初めては、どうしても上杉さんが良くて」
「聞いてもない情報を開示するな」
「今ならまだ、浮気扱いにはならないでしょう?」
 
 ただでさえ近かった距離が更に詰まる。傍から見れば、これは痴話喧嘩扱いを受けるのだろうか。
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/06(水) 02:37:17.44 ID:fRM7kkD70
「なら、今のうちに、それだけでも」
「勇み足で捨てるもんでもないだろ。大事にしまっとけばいいんだよ」
「…………あ、あの」

 四葉の目がキラキラと光っている。というのも、浮かぶ液体が周囲の光を弾いているからだった。

「女の子がこういうお願いをするのがどういう意味なのか考えてもらえたら、嬉しいなって」
「じょ、情に訴えかけられても……」

 固まっていると、四葉の頭がぽすんと俺の胸あたりに収まった。服を貫通するくらいに顔が熱を持っているのが分かって、言いようのない悶々とした感情が心の奥底に渦巻く。
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/06(水) 02:37:50.05 ID:fRM7kkD70
「好きな人に拒絶されるの、すごく、辛いです」
「目を、目を覚ませ。恋に恋してるだけだきっと」
「それならそれで構いません。だって今、こうしてるだけでとっても幸せなんです」

 四葉の腕が背中に回る。髪の毛からはお馴染みの甘い香りがして、必死に自制しないと今にも腰が砕けてしまいそうだった。

「口で答えるのが恥ずかしいなら、どうか、抱きしめ返して……」
「…………ッ」
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/06(水) 02:38:33.28 ID:fRM7kkD70
 反射的に動きかけた腕をどうにか意志の力で押さえる。ここの最適解は心を鬼にしてこのまま立ち尽くすことだ。四葉ならいずれ人間の出来た優しい男を引っかけられるだろうし、その頃にはきっと俺のことなんて忘れている。人間、道半ばで冷静な判断なんて下せないんだ。だから今の捨身の行動だって、一時的な感情の昂ぶりが引き起こした思いの揺らめきにすぎない。
 そう思えば、俺は心を鬼に出来る。今四葉を泣かせる役割を背負うことで、結果的に彼女をいい方向に導いてやれる。
 自分の中できっちり結論をつけて、大きく深呼吸をした。大丈夫。俺は冷静。
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/06(水) 02:39:00.35 ID:fRM7kkD70
「嬉しい、です……」
「……………………」

 冷静に、間違った。相変わらずに先のことを考えず、今この場で四葉の泣き顔を見たくないなんて思ってしまった。
 その結果、両の腕はぎこちなく、しかし確かに、彼女の背中を抱え込んでいて。

「上杉さん、大好き……」

 絶対にこんなのはおかしいのに、安心しきったような彼女の声音に、心の大切な部分を溶かされてしまった。
 本格的に本能に負け初めてるぞ、俺。
 
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/02/06(水) 03:16:55.80 ID:yymOnD/ao
やばい四葉ちゃんちょうかわいい
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/02/06(水) 08:22:11.17 ID:OD8LOgOro
ええぞええぞ
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2019/02/06(水) 11:45:03.85 ID:6jlFrW1GO
四葉と!
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2019/02/06(水) 13:26:50.42 ID:cXQn4QbE0
女を泣かせちゃダメだよね

そのためにも上杉さんを物理的に五等分しなきゃ
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