【モバマス】LiPPS「虹光の花束」

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923 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/09(火) 22:05:31.54 ID:K6AtmFbL0
P「......!!??」



声が、声が出なかった

歌おうとすると、首が鎖で縛られたように息が詰まった

あの子を死なせてしまったという罪悪感が、俺の喉を押さえつけていた



お前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺した
お前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺した
お前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺した
お前が殺した俺が殺したお前が殺した俺が殺したお前が殺したお前が殺した俺が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺した俺が殺した俺が殺した俺が殺した


P(あ、あああ、あああああ!!!!)

P「ァ...アア...アアアアアアアアアアア!!!!!」

『P君!?』
924 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/09(火) 22:06:01.51 ID:K6AtmFbL0

その日から、俺は全く歌うことができなくなった
925 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/09(火) 22:06:43.83 ID:K6AtmFbL0
歌を忘れた後、多くの人が俺を励ましに来てくれた
プロデューサーにおっちゃん、早苗さん
...それに、俺と同じくらい心に傷を負ったはずの青木さんも、何度も俺を励ましに来てくれた


でも結局、俺は歌手を辞め891プロも退社した

おっちゃんは頑張って引き留めてくれていたけど、自分の中にもう、歌う理由が見つからなくなっていたから...


それに俺は、プロデューサーにも迷惑をかけてしまった


プロデューサーは、俺の引退の責任を自ら取る形で891プロを退社したらしい
彼女があんなに誇りを持って務めていた仕事を、俺は奪ってしまったのだ


それ以来、顔を合わせていない
合わせる顔なんか、ない


もう俺に、あの人をプロデューサーと呼ぶ資格なんかないのだから
926 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/09(火) 22:07:17.28 ID:K6AtmFbL0
あの子を亡くした後の俺は、死人と何ら変わらなかった

美味いもんでも食えば元気が出ると言われたが、何を食っても味がしなかった

旅行でもすれば気が紛れると、色んな人が色んなとこに連れまわしてくれたが、何も感じなかった


どうやら俺は歌と一緒に味覚と、色んな事を楽しむ心まで失ってしまったらしい



住んでたマンションも引き払って、狭いアパートへと引っ越した

とにかく今までと同じ環境に居たくなかった。じゃないとあの子の事を思い出してしまうから

だが、環境を変えたところで過去は消えない

結局何も変わることはなく、毎晩悪夢ばかり見ていた
927 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/09(火) 22:07:50.01 ID:K6AtmFbL0
そんなある日だった

食料を買い足しにコンビニに行くと、ふとある週刊誌の見出しが目に入った


[108プロ、ついに倒産を発表]


P(108プロって、確かあの子の...倒産したのか)

正直、胸のすく思いだった

まだ新人だったあの子に枕を強要する事務所なんて、さっさと潰れてほしいと思っていた
この事務所のせいで、あの子はデビューしてすぐにあんなバッシングを受けて....









デビューして、すぐに?
928 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/09(火) 22:08:19.13 ID:K6AtmFbL0
P(待てよ...それっておかしくないか?)


頭をハンマーで殴られたような感覚だった

止まっていた思考が急に回転し始め、死んでいた心に火が灯る



P(あの子はまだFランクのド新人だったんだぞ?なのにどの雑誌も一様にあの子の枕営業を表紙にしていた)

P(そもそもあんなに同じ記事ばかり並ぶものか?いくらゴシップ雑誌だとしてもネタの内容も優先度も同じだなんて)

P(それに...デビューは成功だったとはいえ他のアイドルに比べて抜きんでて目立ってたわけじゃない。今時山のようにあるゴシップで、なんでたいした旨味のないネタをそこまで?)



頭の中でカチリと音が鳴る
手詰まりになっていたパズルのピースが見つかったような、そんな感覚がした



P「...調べてみるか」
929 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/09(火) 22:09:26.82 ID:K6AtmFbL0
高度情報化社会というのは便利だ。週刊誌のバックナンバーすら、電子書籍ですぐに購入出来るのだから

俺は当時の、あの子のバッシングをしていた雑誌を軒並み買いあさり...

そして、気づいた





P「なんだこれ...どれも出版社が違うのに、あの子の記事で使ってる写真が全部同じじゃないか!」


独占スクープやら新鮮なネタやらが好きな出版社が、手に入れた写真をライバル企業と共有して、みんな揃って同じような記事を作る。そんなの、絶対にありえない
2つ3つならまだしも、この時期に発売された芸能界を取り扱う雑誌は、軒並み同じ写真を使ってあの子の記事を描いている


こんなの偶然じゃない、つまり...






P「...あの二人に伝えなきゃ!」
930 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/09(火) 22:09:57.42 ID:K6AtmFbL0
==============居酒屋=====================


ベテトレ「久しぶりだなP、ちょっとは元気出たか?」

早苗「とりあえずビールとつまみ頼みましょ!」

P「いや、俺はいいです。どうせ味わかりませんし...」

早苗「じゃあ、あたしの酒を飲むのが話を聞く条件って事で!第一、折角居酒屋来て飲まないなんてお店に失礼でしょ!?」

P「えぇ...分かりましたよ」

ベテトレ「というか、ちひろは呼んでないのか?」

P「プ、...ちひろさんは、その...顔合わせ辛いっていうか...」

ベテトレ「そうか...まあいい、何かあれば私たちから伝えておこう。それで、話というのは?」

P「はい、実は..........」
931 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/09(火) 22:11:11.96 ID:K6AtmFbL0
P「....というわけなんです」


ベテトレ「これは...確かにどれも全く同じ写真だ。寸分も違いがない。2つ3つならまだしも、これだけの数は...」

早苗「流石に不自然よねぇ...」

P「あの子は、嵌められたんです。正体不明の誰かに。それに気づいてしまった以上、俺はもう止まれない。あの子の事件についてもう一度調べてみようと思うんです」

P「その為に、お二人の力も借りることになると思います」

ベテトレ「調べるったって、どうするんだ?出版社に潜り込むのか?」

早苗「いや.......あの子の記事を書いた雑誌が多すぎて、どこに潜り込めばいいか分からないわ。それにおそらく...」

P「はい...多分この事件の真犯人は、出版社じゃない」


ベテトレ「なに?」

早苗「考えてみて聖ちゃん。そもそもこれ、出版社からしたら手間のわりにメリットが薄すぎるわ。恐らく、いえ間違いなく裏に黒幕がいる。しかも、こんなに多くの出版社を動かせるほどのとんでもない力を持った奴がね」

ベテトレ「なるほど...しかし、それなら尚更どうやって探る?黒幕の手がかりはほとんどないんだぞ?」








P「...アイドル事務所を建てようと思います」

早苗&ベテトレ「「....なんだって(ですって)!?」」
932 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/09(火) 22:13:34.32 ID:K6AtmFbL0
P「あの子は死ぬ直後、『自分がアイドルになっちゃいけなかった』と言っていました。裏を返せば、アイドルになったからこそこんなことに巻き込まれたって事になります」
 
P「だとすれば、事件の真相はアイドル業界にあるはずです」

ベテトレ「だからって、別にイチから事務所を作ることはないんじゃないか?どこかの芸能事務所に入社すれば...」

P「いえ、それだと履歴書で俺の素性がばれてしまいます。もし入社しようとした先に黒幕がいたとしたら、あの子と関わりがあった俺を警戒するでしょう?」
 
P「これだけの出版社を動かせる力の持ち主だ。履歴を頑張って偽造したところでバレてしまうでしょう。今自ら懐に潜り込むのは、返り討ちに合う可能性が高い」
 
P「それに...入社できたとして、芸能界の深い所まで探れるほどの機会を得るまでに時間がかかり過ぎると思うんです。だから...」

早苗「そのすべてをパスするために、自ら事務所を立てて社長になるって事ね」


P「あと青木さん、事務所を立てたら一つ頼みたいことがあります」

ベテトレ「なんだ?」

P「ウチに入ってきたアイドルを指導してやってください。この作戦、事務所が業界の中で相応の地位を手に入れないと、黒幕の情報にはたどり着けないでしょう。その為には、所属しているアイドルのランクを上げることが必要不可欠ですから...」

ベテトレ「成程.....分かった、その時は必ず引き受けよう。」

P「ありがとうございます。では話が済んだので俺はこれで...お金置いてくんで、これで好きに飲んじゃってください」


テーブルに万札を3枚ほど置いて席を立つ


早苗「待ってP君、最後に一つだけ言わせて」

P「なんですか?」
933 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/09(火) 22:14:01.12 ID:K6AtmFbL0

早苗「私に、貴方を逮捕させないでね?」
934 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/09(火) 22:14:40.30 ID:K6AtmFbL0
ベテトレ「..........」

P「....失礼します」







分かった、とは言えなかった

俺自身、どうやっても思えなかったからだ




黒幕を目の前にした俺が、胸に灯った黒い炎を抑え切れるなんて.....
935 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/09(火) 22:15:44.67 ID:K6AtmFbL0
その後俺は、数か月かけて芸能事務所『811プロダクション』を立ち上げた

しかし、事務所を立てれたところでアイドルがいないんじゃお話しにならない。そもそも俺一人じゃ事務の仕事も手が回らなくなる


出来たばっかの芸能事務所じゃ、求人やスカウトも中々食いついてもらえない

それ以前に、芸能界の闇を探るにはそれ相応に実力のある子を見つけないといけない
 
トップとまではいわないが、Bランクくらいまでは行ってもらわないと業界の深い所には潜り込めない

だが、そんな逸材は早々見つからない....


開始早々詰まってしまって途方にくれいた時、ふとあの公園の事を思い出した

俺があの子と出会ったあの公園にいけば、もしかしたらまたあの子の様なアイドルの卵に会えるのではないだろうか?

そんな予感はしたものの、心の中でそんな次鵜の良い事ポンポン起きるはずないだろと毒づき
それでも、俺の足はあの公園へと向かって行った









そして、俺は出会った

停滞していた世界を加速させる、運命の歯車に
936 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/09(火) 22:16:14.33 ID:K6AtmFbL0
...あの子に背中を押された気がした

これが俺が進むべき道だと、背中を押し出された感覚だった

だからこそ、俺は躊躇わず目の前の運命に足を踏み出した
937 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/09(火) 22:16:51.78 ID:K6AtmFbL0
P「若いくせにこんな深夜に公園で寝るなんて、どんな不良かと思えば....なかなか別嬪じゃないか」

周子「んあ?お兄さん誰?」

P「ああ、失礼。俺はこういうもんでね。ほれ、名刺だ」

周子「ん...芸能事務所811プロダクション、社長兼プロデューサー P?」

P「そうだ、しかもその名刺、作ってから初めて渡した1枚だ。大事にしてくれよ」

周子「ふーん...それで?お兄さんはこんなかよわい女の子なしゅーこちゃんに何の用なの?」

P「そりゃもちろん、スカウトさ。しゅーこちゃんって言ったか?」
 






 


アイドル、やらないか?
938 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/09(火) 22:17:35.42 ID:K6AtmFbL0
〜〜〜〜現在〜〜〜〜〜


P「...というのが、俺の隠してた秘密だ」

『.........』

想像を絶するPさんの過去に、皆一様に黙り込んでしまう






P「俺は今まで、自分の目的の為にお前たちを利用していたんだ」


P「罪悪感はあった、だが真相を追うためならどんな犠牲をも払って見せると思っていた」
 
P「...だが、お前らと過ごしていくうちに...どんどんお前らが愛おしくなった...純粋にお前らのアイドルとしての輝きを、もっと見てみたいと願うようになった」
 
P「だからこそ、打ち明けるのが怖かったんだ...お前らと過ごせば過ごすほど、真相を明かして、お前らに拒絶されるのが怖くなっていった」

 
P「すまない...俺はプロデューサー失格の男だ。いくらでも罵ってくれて構わない...」
939 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/09(火) 22:18:50.92 ID:K6AtmFbL0
奏「いいえ、プロデューサーさん。貴方は紛れもなく、私達のプロデューサーよ」

P「えっ?」


周子「奏の言う通りだよ、だってPさんはちゃんとあたし達にアイドルの世界を教えてくれて、こんなに高いところまで引っ張ってくれたじゃん!」
  
周子「それが利用するって事なら、いくらでも利用してくれたっていいよ!」


美嘉「ていうか、水臭いよプロデューサー!そんな事件ずっと追ってたんならあたし達にも相談してよ!」
 
美嘉「あたし達の生きるアイドルの世界にそんな悪い奴がいるんなら、あたし達だって許せないし!」


フレデリカ「プロデューサー!悩むときは、一緒に悩もう?だってアタシ達、仲間だもんね♪」
     
フレデリカ「辛いときは、苦しいときは、あたし達皆で一緒に抱えよ?嬉しいとき、幸せなときは、皆で一緒に分かち合おう?その方がきっと素敵だよ!」


志希「あたし達皆どこかぶっ飛んでる人ばっかりだからさー、むしろ優等生なプロデューサーよりキミの方がずっと相性がいいんじゃないかにゃ〜?」
  
志希「それに...プロデューサーはあたしとパパを縛る鎖を解いてくれたじゃん。キミがなんて言おうと、あたしたちにとってキミは、あたし達家族の恩人なんだよ」


早苗「...本当に、良い仲間を持ったわね、P君」

ベテトレ「ああ、私の見立ては正解だった。やはり、彼女たちこそがお前の鎖を解くカギだったんだ」
    
ベテトレ「...そしてきっと、私の鎖もな」
940 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/09(火) 22:19:19.04 ID:K6AtmFbL0
奏「プロデューサーさん、私、今すっごく嬉しいの。貴方の本音を聞くことができて。貴方に信頼されているのが分かって、愛おしいとさえ言ってもらえて...本当に、嬉しいわ」
 
奏「プロデューサーさん、大丈夫。私達は何があっても、貴方の味方だから...」
 
奏「だから...謝るんじゃなくて、ね?もっと、温かい言葉をちょうだい?」







P「皆......」
941 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/09(火) 22:20:08.73 ID:K6AtmFbL0

ありがとう..............!
942 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/09(火) 22:20:44.11 ID:K6AtmFbL0
to be continued...
943 : ◆FuHrdA/9sY [saga sage]:2019/04/09(火) 22:25:24.47 ID:K6AtmFbL0
Chapter0終了したとところで、今回はここまで―
....というか、この話だけ見たら完全にスレタイ詐欺じゃないか(白目)



『少女』には誰か原作のアイドルの子を当てはめようとも思ったのですが、でも死ぬしなぁ.....と思ったので結局オリジナルのまま進行しました
でも不便だから名前くらい付けてあげてもよかったかもしれない


これでようやく物語の3分の2が終わり、遂に終盤へと移ります
もちろん残り60レスくらいで終わるわけがないので、次スレ建ててきます
944 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/09(火) 22:42:03.00 ID:K6AtmFbL0
【モバマス】LiPPS「虹光の花束」 2スレ目
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1554816955/

次スレ建てましたー
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