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【安価】奴隷を買って好きにいじれ(2)

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257 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/14(日) 20:05:53.44 ID:RCgdil64o
私怨を正当化する危険を説く
258 :オパビー [saga]:2019/04/14(日) 23:05:43.80 ID:v7VaaKlr0
私「………ルイ、分かってくれ。私はルイに殺しをしてほしく無いんだ。子供の、大事なルイにそんな事はさせない、させたくないんだ………ここからは私に任せ………ぐっ………」

 く………流石に活動限界だ…………
 パトリシアが駆け寄り私に肩を貸す。
 それと同時に、身代わりの魔法陣が粉々になり私の懐から落ちた。
 気休め程度だが、これが無ければ死んでたな。
 私はパトリシアに言い、龍人の近くに寄った。

黒龍人「はあっ、はあっ………ひぃっ…………」

 先ほどまでの威厳はどこへやら、龍人はガタガタと震えていた。
 先程の火柱がよっぽどこたえたようで、恐らく心を折られているだろう。
 私が話しかけようとしたときだった。

サンジェルマン「ユタ様!」

 安全を確かめていたのか、ようやくサンジェルマンが魔術師やら医師やら防衛庁やらを引き連れて庭に踏み込んできた。
 このままでは力のない龍人が人目に晒される事になる。
 そうなれば考えなければいけないのはこの龍人のこの後だ。
 このまま防衛庁に引き渡しても良いし、無理を言って引き取っても良い。
 危険な存在は然るべき所に預けるべきだが………
 そうなると当たり前だが、龍人が国家を揺るがす危険因子である雷刻のリカアルであるかどうかが明らかになる。
 その場合、すぐさま処刑だ。
 封印されていた雷刻のリカアルの完全消滅は国の総力を上げて進めていた計画だからな。
 十中八九雷刻のリカアルであるこの龍人。
 心はルイによって折られている。



 龍人をどうするか>>下(なお登場人物に話を聞いて助言を得ることも可能。ただし助言を得られるのは一回のみ)
259 :オパビー [saga]:2019/04/15(月) 06:15:55.16 ID:zKKcUwxP0
 複雑過ぎるのはダメか………
 6時間安価がないでな。 
 じゃあシンプルに聞くで。

 お前らこの龍人どうしたい。
 >>8:00まで
260 :オパビー [saga]:2019/04/15(月) 06:16:34.78 ID:zKKcUwxP0
 投票やで。
261 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/15(月) 06:38:50.45 ID:oIKMQX4DO
パトリシアから助言を得る
262 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2019/04/15(月) 07:19:28.97 ID:g9kkmuz8o
魔術的な契約で縛れないかね?
それともそういうのも万全なら解けちゃうくらい強いか?
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/15(月) 07:36:16.58 ID:7sUt5RnDo
無理に封印しても同じことだし、大人らしく相手がなぜ暴虐を働くか理由をちゃんと聞いてそれを解消して共存したい
根本的な性格の問題だったり、英国の存続とどうしても相容れないようなら
責任を持って処刑(そのことに関しては悼んでやる)
264 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/15(月) 07:54:35.96 ID:M2Ej6Qdg0
本好きだし、封印や無力化について本で知っていたりしないのかな?
可能ならそれを実行したい
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/15(月) 07:58:20.20 ID:0Js1pNxdo
貴重なでかい女子のキャラだしここで封印で退場はもったいないし、無力化も龍としてのキャラの良さ失う
契約とか無理でもルイに見張らせとけば暴れることもないだろうし、完全に心を折って飼いならそう
266 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/15(月) 08:01:40.23 ID:7UeDXgMb0
>>265
投票で他の案をボロクソにこきおろすお前の態度が気に入らないから、封印・無力化に1票
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/15(月) 08:02:07.76 ID:7sUt5RnDo
妥協案で、とりあえず共存を目指す
無理ならルイと一緒に預かり改心を待つ
それも無理なら無力化や封印
とかでどうや
パトリシアの意見もまだあるけど
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/15(月) 08:04:28.20 ID:7sUt5RnDo
うーんでもよく考えると人間の時代が続く間は封印させていただいて、人間の時代が終わってから龍として自由を謳歌してもらうのもありかもしれんな
269 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/15(月) 08:25:41.20 ID:7sUt5RnDo
否定する意図はなくて個人の希望。びっくりしたが言い方悪くて悪く捉えられてしまったかも…
ルイに対して従順なら、やっぱり根は強くて凶悪なままでいてほしい
270 :オパビー [saga]:2019/04/15(月) 08:26:15.55 ID:jyFAR2FS0
 参考として{}内はタイムアップ。
 「Aしてもし〜だったらB」という意見の場合Aを採用。


封印(無力化):・{・・}
契約(飼う):・・
共存:・{・}


 と言うわけで契約で縛るで。
 その前に、パトリシアに意見を聞くで。
271 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/15(月) 08:28:10.45 ID:njewBlvro
ああ投票だったのか
了解
272 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/15(月) 08:53:21.52 ID:yH43RP8+o
性格的には契約とかあまり考えなそうにも思えるが…
投票結果は決まってるしどう来るか見物だね
273 :オパビー [saga]:2019/04/15(月) 13:12:34.75 ID:Lp3cCVel0
私「パトリシア………」

 私はパトリシアに話しかけた。
 パトリシアがとても心配したような声で言う。

パトリシア「ユ、ユユユタ王子。あああまりしゃべらないでください………」

私「いや………意外と行ける」

 私は龍人を見た。

私「パトリシア、あの龍人………私は契約して縛りたいと思っているんだが………」

 パトリシアが驚いたような顔をした。

パトリシア「けけ契約と言うのは、魔術的な物、ですよね? なぜか、お聞きしても………?」

私「このまま封印しても、今回のようにまた封印を破って出てくるかも知れない。それに、伝説のようにドラゴンの姿のままだったならまだしも、人間の姿をして、しゃべる彼女を処刑することはしたくないんだ………」

 だからせめて、契約をして拘束させておきたい。
 そう、思ったのだ。

パトリシア「…………うーん………きき危険だとは思いますが、ユタ王子がそう言うなら、賛成です」

 パトリシアは一応私の意見に肯定するようだ。
 私がルイにも意見を聞いてみようと思ったとき、サンジェルマンがたどり着いてしまった。

サンジェルマン「ユタ様! おお、おいたわしい姿に………! 救護班! 急ぎなさい!」

 私は救護班に抱きかかえられ、担架に乗せられた。

私「サンジェルマン………あの龍人を、匿え………」

 私はサンジェルマンにだけ聞こえるように言った。
 サンジェルマンが顔を近づける。

サンジェルマン「匿う、でございますか?」

私「ああ。あれは、雷刻のリカアルだ」

 私がそう言うと、サンジェルマンは顔色を変えた。

私「防衛庁に引き渡しては、処刑される。今彼女には既に力は無い。そんな彼女を処刑したくは無いんだ。国の方針に逆らうことになるが、彼女は何とかして生き残したいんだ。適当な理由を付けて私の部屋に連れてきておいてくれ」

 サンジェルマンは眉を思いっきりよせ難しそうな顔をしたあと、頷いた。

サンジェルマン「はあ…………分かりました。では目を覚まさぬよう麻酔も打っておきますゆえ」

私「ああ、すまない」

 サンジェルマンが合図をすると同時に、私を乗せた担架は運ばれていった。

 〜〜〜
274 :オパビー [saga]:2019/04/15(月) 15:17:23.38 ID:6l6AOOmc0
 次の日。

私「すまないサンジェルマン」

サンジェルマン「いえいえ。では………本当に私は居なくても大丈夫という確証はあるのですか?」

私「ああ。大丈夫……………の筈だ」

サンジェルマン「心配なのでやっぱり居ます」

私「そうか」

 私はそう言ってベッドに横たわり寝ている龍人を見た。
 すやすやと安らかな寝息を立て、寝ている。

ルイ「ねえ、ほんとに大丈夫?」

 おとといより10周りほど大きくなり、大きい大型犬のサイズになったルイが不安そうな顔で聞く。

私「もう刃向かう気力も心も折られている筈だ。ルイのお陰でな」

ルイ「ごめんなさい………」

 まあこの状態にした事だけは良しとしよう。
 契約は受ける方の精神が弱い方が結びやすい。
 ルイが契約を結ぶにはあまりにも精神面が幼いため、契約主には私がなることにした。

私「………さて、始めるか」


 契約の形(入れ墨、首輪、etc)>>下1
 契約内容>>下2
275 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/15(月) 15:21:45.11 ID:oIKMQX4DO
心臓部に魔翌力で刻印
276 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/15(月) 16:26:34.39 ID:U0Kn/MlJo
正直両者が幸せになる道が思いつかない…
契約した後のリカアルが不服そうだったり辛そうだと心苦しくなりそう(まともに話してないのでどう反応するかわからないけど)

とりあえずユタかその血筋の許可がないと伝説の力を振るえないくらいにするしかないかな
277 :オパビー [saga]:2019/04/15(月) 16:48:40.68 ID:dqtgp+2h0
 私は契約の刻玉を箱から取り出した。
 片手では持ちづらいためサンジェルマンが手伝う。
 刻玉は怪しげな赤黒い光りを放ちながら微かに震えている。

ルイ「なんか、生きてるみたい………」

 ルイがその玉を見て不思議そうに言った。

私「生きてるんだ」

ルイ「え?」

私「契約の刻玉は長い年月をかけて圧縮されたグアウという生命体なんだ。膨大な魔力を含み、また精神に作用する魔法を多用するから契約の刻玉と呼ばれる………見過ぎると酔うぞ?」

ルイ「酔った…………」

 ルイがふらついた。
278 :オパビー [saga]:2019/04/15(月) 17:16:18.28 ID:dqtgp+2h0
私「サンジェルマン持っといてくれ」

 私は契約の刻玉をサンジェルマンに渡した。

私「失礼………」

 龍人の服を剥ぎ、胸を露出させる。
 だゆんっ、と包帯が巻かれた胸が露わになる。
 怪我の治療もサンジェルマンの手の物が行ったそうだ。
 私はなるべく見ないようにしながらサンジェルマンから刻玉を受け取る。
 そして契約の呪文と契約内容を詠唱する。
 私と、血筋の者が許可を出さなければ魔法を行使できない、制御の契約。
 龍化もだ。
 調べた所原理は分からないが、彼女はこちらの龍人の姿が本当の姿らしく、しかも魔力を少し使うだけでノーリスクで黒龍にもなれるらしい。
 詠唱を終えた私は、ゆっくりと刻玉を龍人の胸の真ん中に置いた。
 ゆっくりと刻玉が龍人の胸に沈んでいく。
 それと同時に複雑な紋章が胸に刻み込まれていく。

私「………………………」

 胸と心臓に刻印を施した。
 私は急いで龍人の胸をしまった。

ルイ「これで、安心なの?」

 私は頷く。

私「ああ、その筈だ。だが、また何かあったときは、ルイ。君の力を借りることになるかもしれないが、いいか?」

ルイ「…………………うん」

 神妙な表情で、ルイが頷いた。


 〜〜〜
279 :オパビー [saga]:2019/04/15(月) 17:21:03.36 ID:dqtgp+2h0
 なお、怪我が完治するまで結婚式は延期(また一週間)。
 一応歩けはするが左腕が肘の上から損失。
 歩くときも少しリズムが崩れ、背中に雷が走ったような火傷痕がある。
 顔の左が焼けただれているのにたいし、右半分は半分で雷模様がある状態。
 ボロッボロですわ。
 龍人の目が覚めるまで約三日。
 どうする(セックスは出来ない)>>下
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/15(月) 17:30:45.82 ID:GROorpbv0
大人しくルイとパトリシアに看病される
281 :オパビー [saga]:2019/04/15(月) 21:23:13.65 ID:zKKcUwxP0
私「イダダダダダ……………」

パトリシア「静かにしてください」

私「そうは言っても……………イデデデデ………」

 パトリシアは容赦なく私の包帯をはがしていく。

 龍人の契約を結んだ日の午後。
 私はベッドに横たわり、パトリシアとルイの看病を受けている。
 医者にやって貰うよりも、こっちの方が気が楽だ。

ルイ「はいお薬」

パトリシア「はい」

私「痛い痛い痛い」

 火傷に薬が凄く染みる。
 肌が裂けるような痛みだ。

パトリシア「……………はい。これで終わりです」

ルイ「また明日も包帯とっかえるからねー………って、あ! ズルい!」

 包帯を巻き終えたパトリシアが不意に私の頬にキスをした。
 ルイも反対からキスをする。

パトリシア「まま、またいつ無茶をするか分かりませんからね。おまじないです」

ルイ「そ、おまじない」

 ううむ、幸せだ………

私「>>下」
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/15(月) 21:31:20.39 ID:sVLh9iFXo
とはいってもな…パトリシアは無事だしルイに無駄な殺生もさせなかった…あれは必要な行為だったぞ
283 :オパビー [saga]:2019/04/15(月) 21:57:34.81 ID:zKKcUwxP0
私「無茶とは言ってもなぁ………パトリシアは無事だし、ルイに無駄な殺生もさせなかった………あれは必要な行為だったぞ?」

 私がそう言うと、急にパトリシアが涙を溢れさした。

パトリシア「ぐすっ、ひぐっ………」

私「お、おい………」

パトリシア「ぐすっ、そ、それでユユユタ王子が死んでしまったら…………悲しいんですから………ユタ王子。死なないでください………ぐすっ、貴方のような人を失っては、私は、後を追ってしまうかも、しししれません………っ、ぐすっ」

 ルイが気を利かしてパトリシアにハンカチを渡した。

私「すまない。だが、私にとってパトリシアもルイも、それと同じくらい大事なんだ。どうやっても、2人を失いたくない………パトリシアがそう言うなら、なるべく私も死なないようにするよ」

 パトリシアが鼻をかみながらコクコクと頷いた。
284 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/15(月) 22:23:37.56 ID:I7wlTRuU0
王子かっこいいよ...
せめて火傷跡とかなくなればいいんだけど
285 :オパビー [saga]:2019/04/15(月) 23:31:26.35 ID:zKKcUwxP0
私「………………ところでルイ」

 しばらくしてから、私はルイに聞いた。

ルイ「なあにユタ」

 昨日、自称『雷刻のリカアル』が言っていたあの事。
 ルイは『赫涙のナリクアグト』であると。
 誰もが知っている、あの伝説の龍の転生体であるという事。
 今のルイは、どう思っているのだろうか。

私「ルイ。ルイは、自分がナリクアグトであると一度でも自覚したことはあるか?」

 ルイはしばらく考えた。

ルイ「………あの、龍の人が言っていた事でしょ? 無いよ。私は私だもん」

 ……………こんな質問をした私がバカだった。
 ルイの言うとおり、ルイはルイだ。
 例え伝説の龍が転生していても、その身体にそぐわない力を持っていても、それがルイだ。
 だったら、転生の話はもうする必要が無いな。

私「ああ、そうだな。ルイは、ルイだ。私の大事なルイだ」

ルイ「うん!」

 目を瞑り、こくっと頷き、ぱあと微笑む。
 やっぱりルイは大きくなっても伝説級の可愛さだ〜♥

パトリシア「ところでユタ王子。ルイ様また少し大きくなったようですが…………大丈夫ですか………?」

 そう言えばすっかり忘れていたが、ルイはあの龍人と戦っている間にまた大きくなったのだったな。
 今回の事件で、ルイが急成長する事になる引き金はある程度分かった。
 一度目は恐怖、二度目は悲しみ、三度目は怒り、それぞれの負の感情が爆発した時だった。
 三度目の今回に関しては怒りというより憎悪などといった方が良いかもしれない。
 どちらにせよ、負の感情が爆発すればルイはまた大きくなるだろうな。

私「ああ、大丈夫だ。ルイが大きくなる原因は負の感情の爆発…………これからも今まで通り暮らしていれば、これ以上大きくなって暴れる事も無いだろう………」

ルイ「ふのかんじょう?」

私「ああ。悲しんだり、怒ったり、怖がったり、つまり笑ったり喜んだりするのとは逆の感情の事だ。今回、ルイはあの龍人に対して強い怒りを感じたんだろう? だから、また大きくなったんだ」

 ルイは、へーといったように頷いた。
286 :オパビー [saga]:2019/04/15(月) 23:48:48.88 ID:zKKcUwxP0
 ……………そう、今まで通り暮らしていれば。
 心配事が一つある。
 私が死んだ時だ。
 ルイは龍。
 少なく見積もっても100年以上は生きるだろう。
 それに対してハーフリングの私の寿命は80年………長くても100年だ。
 ルイよりも先に私が死んだとき、ルイは耐えられるだろうか?
 いや、流石に私が大往生で死ぬ頃はルイも精神が大人になっているだろう。

 ただし、大往生した時は。

 事故でも、暗殺でもいい。
 私が不意に死んだとき。
 ルイは悲しむだろうか?
 私が死んだという事実に、いなくなったと言うことに。
 ルイは怖がるだろうか?
 私はもういないという事に、永遠に会えなくなったと言うことに。
 ルイは怒るだろうか?
 私を殺した原因を恨み、それを排除しようと思うだろうか。

 最悪の事態を考えれば………………世界が焦炎に包まれる可能性も、十分にあり得る。
 ………それだけは、絶対にさせない。

私「>>下」
287 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/16(火) 06:07:52.81 ID:7RJvAvh6o
弱気な話になるが、今回のことがあってから不意に私が死んでしまったらということを考えるようになった
悲しむのは仕方ないけれど、良心は捨ててはいけない
私が助けたことについてリカアルはどう思っているのかわからないし恨まれる可能性すらある、でも自分の心の中の一線は絶対に超えてはいけない
288 :オパビー [saga]:2019/04/16(火) 08:21:45.07 ID:RipGst8Q0
私「……………弱気な話になるが、今回のことがあってから不意に私が死んでしまったらと言うことを考えるようになった」

 ルイがハッと息をのむ。

私「もし私が死んだら、ルイもパトリシアもとても悲しむだろう。しかし、ルイ。悲しむのは仕方が無いことだけれど、我を忘れてはいけない。私は、私が死んだあとルイが理性を失って暴走しないかが心配なんだ…………」

 私は残った右手でルイの頭を撫でる。

私「私が死んだ時………頼むから、哀しみの渦に飲み込まれないでくれ。例え私が誰かに殺されても、怒りと憎悪に溺れないでくれ………そう、約束出来るか?」

 ルイは頷いた。
 ルビー色のその瞳は、真っ直ぐに私を見据えていた。

私「………私が助けた彼女だが、彼女はそれについてどう思っているかは分からない。私は助けたつもりであっても、彼女から恨まれる可能性が高い。もしかしたらまた私が傷つくようなことになるかもしれない」

 パトリシアが言った。

パトリシア「そそそんなことはさせませんよ! もしユタ王子が傷つくようなことがあれば、私が………」

私「パトリシア………それでは駄目なんだ。ルイも聞いてくれ。例え彼女が私を傷つけても、手出しはするな。彼女に信頼して貰うにはそれしかないんだ。ルイも、心の中の一線は越えてはならない。決して、今回のように憎悪から痛めつけるようなことはしてはいけない………分かってくれるか?」

 私がそう論すると、パトリシアとルイは少し戸惑ったように頷いた。


 〜〜〜
289 :オパビー [saga]:2019/04/16(火) 08:26:35.09 ID:RipGst8Q0
 2日後。


 もうそろそろ起きる時間だな。
 サンジェルマンの話では大体72時間で起きると言っていたから、今日中には起きるはずだ。
 私は龍人………もうリカアルと言おう。
 リカアルが寝ているベッドのわきに腰掛けながら言った。
 この部屋には私とリカアルの二人きり。
 刻印があるから危険は無いはずだが………

リカアル「……………ぁ……………う?」

 リカアルのまぶたが少し震え、ゆっくりと開かれた。
 まだ状況を理解できていない様子で、ぽー、っと天井を見つめている。


 リカアルが起きた。どうする>>下
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/16(火) 08:46:04.06 ID:cOQoWHoH0
体調を聞いて話がすぐできるようなら
君を助けて私たちも安全でいるためにはこうするしかなかったと謝り契約について話す
291 :オパビー [saga]:2019/04/16(火) 10:43:50.96 ID:LxY7waWd0
私「………体調はどうだ?」

 私はそうリカアルに聞いたが、彼女はまるで聞こえなかったかのように無言のまま布団から手を出し、自分の前で何度か開いては閉じてを繰り返した。

 そして、口を開いた。


 ……………しまったっ!



 コンマ>>下
 01~50 阻止成功
 51~00 阻止失敗
292 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/16(火) 10:54:07.37 ID:bgDnXJwDO
はい
293 :オパビー [saga]:2019/04/16(火) 13:05:28.45 ID:YVuBrf830
 私は近くにあったタオルを取り上げ、リカアルの口に突っ込んだ。

リカアル「ん゛ーーーっ! ん゛んんんーーっ!」

 リカアルが暴れる。
 流石に私の力だけでは抑えつけるのは無理だ……………!

私「サンジェルマアアンッ!」

 直ぐにサンジェルマンが駆けつけてくる音がし、扉が開け放たれる。
 サンジェルマンは一瞬で状況を把握し、即興でリカアルにハンカチの口枷を噛ませた。

リカアル「んっ、んーーーっ! んぐっ、うーーっ!」

 サンジェルマンは暴れるリカアルを抑えつけ、また別のハンカチで手をベッドの柱に縛り付け、両足を縛った。
 リカアルはもがいていたが、しばらくして諦めたのか動きを止めた。

リカアル「フーッ、フーッ………!」

 リカアルは深い恨みを込めた目で私を睨んでいる。
 まごうことなき強者の目だ。
 私はサンジェルマンに言った。

私「舌を噛み切ろうとした………自分が置かれている状況を理解して直ぐに、自ら命を絶とうとしたんだ…………」

 サンジェルマンが唸った。

サンジェルマン「ううむ……………どうされますか?」

 契約の時に、自殺防止も契約すればこうはならなかった。
 重ね掛けをする事も出来るが、成功するかどうかは曖昧で、リスクがあまりにも高すぎる。
 失敗したら受ける側にかかっている契約が全て消えるのだ。
 本来ならリスクはそれだけだが、かかっている契約が契約だ。
 最悪ルイを同席させればなんとかなるかもしれない。
 話を本人に聞こうにも、今口枷を外せば舌を噛み切ってしまうだろう。

 どうする?>>下
294 :オパビー [saga]:2019/04/16(火) 14:15:33.88 ID:6IT9/Ylz0
 設定完全にミスった。
 やっぱり刻印重ね掛けでも元の刻印が消える事は無いで。
 重ね掛けするリスクは受けた側に精神的苦痛があるってことに変更するで。
295 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2019/04/16(火) 14:29:03.93 ID:t87Qv/xZo
(プライドに訴えよう)
まあ待て、私が死ねば契約も弱まろうしその時にまだ暴れ足りないなら暴れればよい
それともなにか、悠久を生きる龍ともあろうお方がちっぽけなハーフリングの短い一生も待てないと言うのか?
296 :オパビー [saga]:2019/04/16(火) 16:13:49.15 ID:LBsMn0+/0
 >>295
 暴れたら駄目なんだってば。
297 :オパビー [saga]:2019/04/16(火) 16:28:01.56 ID:LBsMn0+/0
 うーん………
 ちょっと、再安価でええか?
298 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2019/04/16(火) 17:02:37.84 ID:/4fxmiDKO
ちょっと難しいね
何が正解なのかわからんのもあるし、下手うってバッドエンドも嫌だしで書き込めないチキンな自分
安価下
299 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/16(火) 18:17:44.30 ID:AXNcf4RK0
とりあえずビビらせて落ち着かせる

手間はとらせない、いいか一度しか言わないから聞いてくれ
それでも暴れるつもりなら、あの赤龍を連れてきて永遠に苦しめてやるな
300 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/16(火) 18:48:07.84 ID:DTQ2Pbm+O
ビビらせるとか逆効果な気がするしそもそもキャラに合ってない気がするんだが……
危険なので放っておくことはできなかったが力を失った君を殺したくもないし処刑させたくもなかった、契約を結びはしたが君を守るためであり奴隷のように何かを強制させるつもりはない、信じられないかもしれないが落ち着いてまずは話を聞いてくれ
とかそのあたりが無難だったのでは
301 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/16(火) 18:56:05.91 ID:rwS7HuS7o
性格に合わないと言ったってなんとでも理由は付けられる
どうしても殺したくないけど、そのためには自分を捨てて脅迫するしか思いつかないのでそうしてしまうというのもそれはそれで人間らしくて好きよ
あとは契約の影響で性格荒くなったりするかも?よくわからんけど

正直人の姿をして会話もできて意思はあると言っても、人間と敵対する野生動物だしまともに話すのは無理ゲーではあると思う
それでも苦しみながらもユタやその周りの人にはそれなりの結論を出してほしい(折れたり諦めるにしても)
302 :オパビー [saga]:2019/04/16(火) 20:26:39.62 ID:4EQwdCo90
 頑張るで。
303 :オパビー [saga]:2019/04/16(火) 23:54:06.94 ID:4EQwdCo90
 私はなお睨みつけてくるリカアルを見た。
 …………脅すか…………
 正直、この方法だけは一番使いたく無かった。
 しょうがない…………
 私は心の中で一度ルイに謝り、口を開いた。

私「手間は取らせない。いいか、一度しか言わないから聞いてくれ。私は君を大衆の前で見せしめに処刑するつもりも奴隷として使うつもりもない。私がこう言っても暴れるつもりなら、あの赤龍を連れてきて永遠に苦しめてやるからな」

 …………よく聞き返せば少々支離滅裂な事を言っているな。
 殺すつもりは無いが言うことを聞かなければ拷問する、と。
 とにかく、こう言うのは言い慣れた事がないからな………ちゃんと脅せたかどうか………
 リカアルは変わらずに私を睨みつけているが、よく見ればしっかりと恐怖しているのが分かる。
 瞳には涙を浮かべ、縛られている手がガタガタと震えている。
 やはり、よっぽどルイの火柱がトラウマになったようだ。

私「……………大人しくしてくれるか?」

リカアル「ん、ぐっ……………」

 コクコクとリカアルが頷く。
 半ば力と恐怖で強制的に抑えつけるような形になってしまったが、これでもう暴れるような事は無いだろう。



 次どうする>>下
304 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/17(水) 03:59:27.36 ID:NtUO6Xdio
契約について話す(たぶん力使えないのはわかってるとは思うけど)
目的は同じ人間の姿をして話すこともできるから死なせたくない、ただその一心と言う
305 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/17(水) 07:50:38.47 ID:AiuuEMhlO
永遠に苦しめるとか言っておいて死なせたくないとか完全にヤバいやつやろ……
306 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/17(水) 09:06:32.96 ID:XpRB8nj3o
もともとルイを買ったときも良心による偽善があったし、こういう変に割り切れない面も持っているということなんだと思うことにする
307 :オパビー [saga]:2019/04/17(水) 10:42:55.96 ID:lzQ/37Tr0
私「ところで、契約についてだが………もう分かってはいるとは思うが、それは魔法を禁止する契約だ」

 リカアルが自分の胸を見下ろす。
 そして服の下ある紋章を見透かしたように、怨めしそうに睨んだ。

私「…………リカアル。難しいとは思うが、どうかそれが悪意からの束縛だとは思わないでほしい。さっきああは言ったが、同じ人の姿をして言葉を話すことも出来る君を、死なせたくない一心なんだ」

 これが偽善で、子供っぽい考え方であることは分かっている。
 我が儘であることも。
 私はしゃがみこんだ。

私「君を殺したくない。出来る範囲ではきちんと自由を与える。だから、言うことを聞いてくれ」

 リカアルは手を少し震えさせながら、私の目を見る。
 真意を伺っているのだろうか。
 しばらくして、彼女は観念したように頷いた。
308 :オパビー [saga]:2019/04/17(水) 11:43:25.80 ID:+F9+gnTl0
リカアル「んんん…………」

 リカアルが唇を動かし、口枷を外すように催促する。
 確かにこのままでは意思の疎通もままならないな。
 一応リカアルは先ほどおとなしくすると言ったが、このまま外しても良いものなのだろうか?
 もしかしたら舌を噛み切るかもしれない…………
 だが、はっきり言ってしまえば、リカアルが舌を噛み切ってもどうという事はない。
 リカアルが封印された当時ならまだそのまま命を絶つことも出来たかもしれないが、医学が発達した今では例え舌が喉に詰まったとしてもあまり命に別状はない。
 本格的な自殺防止用の口枷をはめても良いし、契約を更新してもいい。
 しかし、どちらにせよリカアルの信頼は得られないだろう。

 どうする>>下
309 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/17(水) 17:13:53.59 ID:XpRB8nj3o
すぐに話ができるとも思わないし、いつか復讐したいという気持ちでも構わない
私を信じて今は死なないでくれ
と言って外す
310 :オパビー [saga]:2019/04/18(木) 08:07:47.59 ID:fK3amLK10
 だから私は、彼女に信じて貰う事にした。
 もし、彼女が舌を噛み切ったら、それまで。
 これからは強制的に自殺防止用の口枷をつけて貰う。
 そうなったら意思の疎通も信頼もあったもんじゃない。
 そんなことにだけは、なってほしくない。

私「分かった」

 私はしゃがみこみ、リカアルの口枷の結び目に手をかける。
 サンジェルマンが驚いたように言う。

サンジェルマン「外しても、宜しいのですか………?」

 私は頷く。

私「ああ。すぐに話が出来るとも思わないし、いつか復讐したいという気持ちでも構わない」

 しゅる……………

 リカアルの口枷が外れた。

私「だから、私を信じて、今は死なないでくれ……………」

 最後に、リカアルの口に押し込まれていたハンカチを取った。

リカアル「…………………」

 リカアルは……………
 何もしなかった。
 舌を噛みちぎりも、なにもしようとはしなかった。
 彼女は何も話さず、ただ静かに私を睨んでいた。

 〜〜〜
311 :オパビー [saga]:2019/04/18(木) 08:24:25.48 ID:fK3amLK10
 私は無言のリカアルを連れ宮殿内を案内していた。

私「そしてここが浴槽だ。シャワーは捻って少し待てば湯が出る。好きなときに使えばいい」

リカアル「………………」

 彼女は常に不機嫌そうだった。
 まあこれだけ設備があるとは言え、宮殿からは出られないからな。
 龍人の翼は魔法の補助を受けなければ飛ぶことが出来ないため、契約の刻印がある今、彼女の翼はほとんど役に立たない。
 辛うじて浮くことは出来るらしいが、脱走には程遠い。
 彼女にかけている契約に含まれない制約は3つ。

 1:宮殿からは出ない。
 2:雷刻のリカアルであることは口外無用。
 3:人物に対しての傷害は禁止。

 この3つだけだ。
 あとは好きにしても良いし、自由に出来る。
 ただし、制約を破ればルイに焼かれると脅してあるため、とても窮屈そうだがな。

 宮殿内を紹介し切った私は、最後にリカアルをパトリシアとルイに会わせる事にした。
 リカアルにその旨を伝えると、彼女は明らかに顔を青ざめ、カチカチと歯を鳴らした。

私「ルイにはしっかり言ってあるから心配はしなくていい。それに、二人に会わせることは君がこの宮殿で暮らすためにも必要なステップなんだ。分かってくれ」

 私がそう言うと、リカアルはゆっくりと頷いた。

リカアル「………………」

 それでも、彼女は不安そうだった。

〜〜〜

 二人にどう説明する(二人は既にリカアルがいることを知ってるが、目が覚めたことは知らない)>>下
312 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/18(木) 09:56:57.59 ID:O3HJF5P3o
リカアルは気を使われたほうが傷つきそうな気もするな…

二人には制限はあり安全でも、無理に話したり世話を焼かずできるだけ自由にさせてやれ
制限を破ることはないと信じてるが、心配なら相談してほしい

リカアルにも、君は自由だ、恨んでいるのも仕方ないし無理に仲良くする必要もない、でもここで過ごすためには一緒に暮らすことに慣れなければならないと諭す
313 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/18(木) 12:16:18.14 ID:JhaKq7b5O
難しいな
そもそもリカアルがここで暮らしていきたいかも謎
生来的に暴れたい・戦いたいって感じから本人の矜持的に死なせるなりなんなりしてやってもいい気がする
314 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/18(木) 12:50:03.13 ID:s2+m8hVio
でもユタは生きてほしいと思っていて死ぬことを許してないからね
炎で苦しんでもいずれ[ピーーー]るならばと心が折れるかもしれんな
どうなるにしろ会話ができないことには何も分からんし放任は悪手かも、取っ掛かりがないとな
315 :オパビー [saga]:2019/04/18(木) 23:57:43.63 ID:Enf21wwz0
 私がノックをして部屋に入った瞬間、私の後ろにいるリカアルを見て二人が驚きの声を上げた。

ルイ「あっ……………!」

パトリシア「あ、起きたんですかっ!」

 そのリカアルはルイを見るなり、身体を強ばらせた。
 額には脂汗が浮かび、血の気が引いている。

ルイ「あっ、えっ…………………と……………」

 ルイが自分に恐怖心をむき出しにするリカアルに近づかないように、少し離れた場所からリカアルに頭を下げた。

ルイ「ご、ごめんなさい………」

 その戦っていた時の形相とは似ても似つかないルイの様子に、リカアルが目を見開く。
 そして身体の緊張を少しばかり解いた。

リカアル「…………………」

 しかしまだ恐怖心は拭いきれないようで、無意識なのかほんの少し私のシルエットに入った。
 私は二人にリカアルについて説明をする。

私「先日話した通り、リカアルにはこの宮殿で暮らして貰う。契約の刻印のおかげで今の彼女の力は普通の女性よりも無く、安全だ」

 ギリッ、とリカアルが歯ぎしりをする音が聞こえた。

私「………だが、無理に話したり世話を焼かずに、自由にさせてやってくれ。リカアルが制限を破ることはないと信じているが、心配だったら相談してくれ」

パトリシア「はい」

ルイ「わかった」

 私のその言葉にリカアルは複雑そうな顔をし、ルイとパトリシアはそれぞれ返事をした。
 私がリカアルに向くと、彼女はビクッと震えた。

私「リカアル、この宮殿内では、君は自由だ。君が私を恨んでいるのも仕方ないし無理に私とも彼女達とも仲良くする必要もない。しかしここで過ごすためには、一緒に暮らすことに慣れて欲しい」

 リカアルは私の言葉を聞き、室内を見回した。
 大方壁に所狭しと並んでいる本を目星していたのだろう。

私「本が読みたくなれば、読めばいい。ここに無い本があれば、出来るだけ取り寄せる。あと、食事や風呂などの分からないだいたいのことはメイドかサンジェルマンに言ってくれ」

 今この部屋にはいないが、この宮殿には3人のメイドとサンジェルマンがいる。
 全員私が小さい頃からの付き合いだ。

私「それと………大空に憧れたら、私に相談してくれ」

 私がそう言うと、リカアルが一瞬だけ、ほんのわずかに翼を広げかけたように見えた。
 しかし表情は変わっていない。
 気のせいだろうか?

私「いろいろと条件は付くが、その時は空中散歩の許可を出そう」

リカアル「…………………」

私「まあ、私とルイの監視下で、だが………そこは了承してくれ」

 リカアルは少し何かを考え込んでいるようだったが、はっと私が顔をのぞき込んでいるのに気づくと、無言のまま部屋を去ってしまった。
316 :オパビー [saga]:2019/04/19(金) 08:10:41.34 ID:sYTf7Vt30
 リカアルが部屋を出て行った後、パトリシアが私に聞いた。

パトリシア「本当に空中散歩を許可してもよろしかったのですか?」

私「ん? ああ。『雷刻のリカアル』という名は元より伝承にあるように体長が20メートルあった黒龍のことを指していた。それに、その姿が知れ渡っていたのは300年前だ。だから今のリカアルでは龍形態にせよ人形態にせよ、それが『雷刻のリカアル』であることは分からないさ」

 なるほど、といったようにパトリシアが頷いた。
 間を空けて、ルイがすすすと私に近寄る。

ルイ「……………私、凄く怖がられてるよね」

 先ほどのリカアルの態度の事だ。
 私は頷いた。
 恐らくリカアルにとってルイの炎は地獄の業火に等しい……というよりそのものだろう。
 …………いや待てよ。
 よく考えたら元々の恐怖心にさらに私が脅しまくったのが原因だな。
 ………いや、まあ、あれは必要な脅しだった。
 私はルイに悪いとは思いながらも自分のことを棚に上げ、ルイを励ますように言った。

私「怖がられてるのは仕方ないが、さっきも言ったとおり無理に仲良くする必要はない。だがなるべく怖がらせないでやってくれ。いいか?」

ルイ「…………うん」

 あのときのことを反省したように、ルイが頷いた。
317 :オパビー [saga]:2019/04/19(金) 08:31:46.86 ID:sYTf7Vt30
 〜その日の午後〜


 あとで元倉庫を新しく開けたリカアルの個室を覗いてみると、彼女は沢山の伝説に関する書物を引っ張り出し、読みあさっていた。
 今思えば、文字も読めるようだ。
 恐らく300年分の知識を保管でもしてるのだろう。
 今のところ、目立った心配事はなさそうだ。

 ………さて。
 結婚式まで、3日。
 そろそろ潮時だ。

 ルイとの婚約を王に報告する時だ。
 父上は確かに王としては最高だ。
 だが、父としては………人間個人としては最悪だ。
 国民は、その事を知らない。
 父は双子の兄である優秀な種族として生まれてきたトキを可愛がり、先祖帰りでハーフリングとして生まれてきた私を見捨てた。
 母は私も可愛がったが、父は私を失敗作として見ていた。
 父は私を歯牙にもかけていない。
 最近二度私が大怪我したときも、世間には私を心配してる風には言っていたが、ただの一度も見舞いには来なかった。
 ソラもヤミも、ラクレシアもその夫も、母上も見舞いに来たと言うのに、彼だけは来なかった。

 人生30年、ある意味、私は自由だった。
 次期王としての重みも、プライドも、必要無かった。
 ただひとつ、王が干渉してきたことと言えば、例の戦略結婚、パトリシアとの結婚だ。
 私とパトリシアが結婚する事により、王はパトリシアの国の王と仲良くなり、さらなる名声と評価を受ける。
 そのためだけの、手駒だった。
 まあ、パトリシアと出会えた事だけは感謝しているが。

 そんな王に例え火龍と結婚すると伝えても、なんの関心も持たずに承認印を押すだろう。
 どうせ王にとって私は他人。
 干渉したってしなくたって、変わらないのだ。

 私は自身の宮殿を外出し、サンジェルマンと共に王の宮殿に出向いた。
 入り口でサンジェルマンと別れ、様々な身体検査を受けた後、私は王の部屋の前に立った。
 重く荘厳な王のオーラが、厚い扉の向こうから漏れ出ている。
 もう顔を合わせるのも何年ぶりだろうか。
 私は、扉を叩いた。


 どう王に告白するか>>下
318 :オパビー [saga]:2019/04/19(金) 08:40:31.80 ID:sYTf7Vt30
 *あくまで報告。
319 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/19(金) 08:57:01.00 ID:T5JmGrEDO
私はルイとも結婚することにします
今まで私に無関心だったのに、今さら私のすることに干渉したりはしませんよね
勿論パトリシアも妻として大切にしますので父上の顔に泥を塗るつもりはありませんので、その点は心配しないでください
320 :オパビー [saga]:2019/04/19(金) 23:47:02.00 ID:ttE/UpBk0
 因みに今私の左腕は義手をはめている。
 正式な義手は完成に1ヶ月ほどかかるため、それまでの予備だ。
 腕を振るような動作をすればなんとなくそれっぽく動くが、感覚もない上、握るという単純な動作さえ出来ない。
 要は腕がない見た目だけをかろうじて取り繕う安物の義手だ。

私「私です」

 数年ぶりに、扉越しではあるが、私は父に確かに話しかけた。
 中から低い声が返事をする。

王「入れ」

 この声も、数年ぶりに聞いた。
 私が扉を開けると、そこには王がいた。
 しかし、王はただ鎮座しているだけなのに関わらず、執務室内は重力が二倍にも三倍にもなったような、気を抜けばそのまま押し潰されてしまうようなプレッシャーがあった。
 流石は国の王といった所か………
 王は椅子に背を預けながら言う。

王「で、何のようだ。ユタ」

 数年ぶりの再会を喜びもせず、久しぶりの一言も言わず、用を聞いてきた。
 この王は時間を取られるのを何よりも嫌うからな。
 私は単刀直入に言うべく、婚姻届を王の机の上に投げた。
321 :オパビー [saga]:2019/04/20(土) 06:04:47.00 ID:RU+faD3n0
 婚姻届には既に私とルイの名が書かれている。
 後は王の承認印だけ押されれば、そのまま婚姻が確約する。

私「私は三日後にパトリシア姫との結婚を控えていますが……いや、控えているからこそ、この事を父上に伝えに来ました。私はルイとも結婚することにします。今まで私に無関心だったのに、今更私のする事に反対はしませんよね。勿論異国の王の娘であるパトリシア姫も妻として大切に致します。なので、父上の顔に泥を塗るつもりはありませんので、その点はご心配なく」

 王は婚姻届を手にとり、目を通した。

王「側室ではなく、妻とな…………ルイと言うのは、ペットのドラゴンの事か?」

 私は頷いた。

私「ペット、というのは少々語弊がありますが、おっしゃるとおりレッドドラゴンのルイです」

 法によれば、結婚を望む物は例え相手がいかなる種族であれその婚姻を認めるという。
 百数十年前に制定された異種婚姻法だ。
 つまり、ルイと私でも何も問題は無い。
 王は言った。
322 :オパビー [saga]:2019/04/20(土) 06:16:46.86 ID:RU+faD3n0
王「ならぬ」

 ……………え?
 そう言って王は印を押すことを拒否し、私の方に婚姻届を突き返して来た。

私「なぜです? 法によれば王は明確な理由が無い限り押印を拒否する事は…………」

王「ユタよ」

 王が私の言葉を遮り、微笑む。

王「法が良しとしなくても、私が良しとすればそれは違法ではない。法が良しとしても、私が良しとしなければそれは違法だ。私は国王だぞ?」

 そんな…………
 むちゃくちゃな………!

王「お前がなんと言おうと、この結婚は認めぬ。他国の姫君と婚姻する直前にこんな事を言うなど………イメージダウンに繋がるだろう?」

 ただのイメージダウン。
 それだけのために、私は人生をねじ曲げられようとしている。
 王という、圧倒的な存在の前に。

王「事を荒げたく無ければ、このまま帰るんだな。それともなにか………言いたいことでも有りそうな顔だな…………?」

 くっふふふ、と王が笑う。
 私は怒りに手が震えた。
 こんな者が最高の王だと…………?
 私は殴りたい衝動を抑えつけた。


 どうする?>>下
323 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2019/04/20(土) 08:47:25.63 ID:sc0wJFxxo
ここで殴ってもいいことはないのでこの場は大人しくこらえる
なんとかして結婚を認めてもらう…あるいは出し抜く方法はないか考える
324 :オパビー [saga]:2019/04/21(日) 23:35:32.69 ID:HI2czbrC0
 すまん、今週はあんまり更新できないで。
 再開するまで、待っとくれ。
325 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/21(日) 23:36:05.28 ID:AHn0oaPoo
リアル大事に
報告おつー
326 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2019/04/22(月) 10:50:33.96 ID:KO3z5SNao
カラダニキヲツケテネ!
327 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/22(月) 18:55:03.54 ID:f8bOKlIHo
まあ長く続けてると状況も色々変わるしね
乙です
328 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/22(月) 18:56:19.51 ID:c5PY5Q8DO
リアル大事に
のんびり待ってます
329 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/22(月) 19:40:05.89 ID:1QrwxoVBo
待つ
330 :オパビー [saga]:2019/04/24(水) 01:37:51.67 ID:DnUjGz4s0
 まだ再開は出来ないやが、聞いておくで。
 ストーリーの矛盾点とか説明不足な(もしくは理解出来ない)点とかあったら指摘しておくれ。
 ユタ編長い上に安価っていう形式上行き当たりばったりだからどうしても……
 指摘されたら直すなり加筆するなりするで。
331 :オパビー [saga]:2019/04/26(金) 09:40:39.60 ID:yF0Cupv10
 再開するで。
332 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/26(金) 09:48:41.28 ID:P6n8bs2DO
待ってました
333 :オパビー [saga]:2019/04/26(金) 09:55:05.79 ID:yF0Cupv10
 ここで殴ってしまってはダメだ。
 王を傷つけたとなれば、最悪位を剥奪されてしまうだろう。
 それに、私の力では、王にふれることすら叶わない。
 どうにかして、認めてもらえないのだろうか……………
 もしくは、出し抜けないだろうか…………

王「ユタよ。別に結婚ばかりが愛の証明という事では無いではないか。お前とあの火龍との関係は知らないが、別に側室でも良かろう?」

 側室で妥協しないか、と言うことか……
 それも一つの選択肢としては良いかもしれないが、どちらにせよ、結婚は許してはくれない、と言うことか。

私「……………今日は帰らせていただきます」

 私がそう言うと、王は笑った。

王「私は曲げぬからな?」

 そう、あの王は絶対に曲げないだろう。
 「あの王」は。
 つまり………
 「あの王」で無ければ良いのだ。



 〜〜〜
334 :オパビー [saga]:2019/04/26(金) 09:56:02.37 ID:yF0Cupv10
 いやあ、待たせたで。
 すまんな。
335 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/26(金) 10:36:45.33 ID:SnCVmAP+o
おかえりー

お?「ルイ、焼き払え」くるか?()
336 :オパビー [saga]:2019/04/26(金) 10:36:47.58 ID:yF0Cupv10
 その夜。


パトリシア「本日はありがとうございました。また明日お会いしましょう」

ルイ「またねー!」

私「またな」

 馬車に揺られて、パトリシアが帰って行った。
 王の謁見から戻った後、私はいつも通りパトリシアとルイと触れ合った。
 リカアルは相変わらず自室に引きこもって顔を出さなかった。
 一応生存確認は取っているため、その点は心配ない。
 パトリシアが去った後、ルイが言った。

ルイ「今日はえっちしない?」

私「しないぞ。流石にあと数日は待ってくれ。傷が開く」

ルイ「ぷー………」

 ルイがふてくされたように頬を膨らました。
 勘弁してくれ。
 パトリシアとの約束もあるしな。
 結婚式の夜に3Pをするという約束が。
 パトリシアの初めてだと言うのに、なんたってそんなことになったんだろうか………

私「あとちょっとだからな。我慢してくれ」

ルイ「わかった………」

 ルイはしょんぼりとした。

ルイ「……………あと、結婚。残念だったね………」

 私はあの後、ルイとパトリシアに、私とルイが結婚出来ないと言うことを伝えた。
 パトリシアは怒り、ルイはうなだれた。
 ルイは今もまだ、その事が気になっているようだ。

私「…………結婚しなくても、ルイは私の大事なパートナーだ」

 私はそう言ってルイの頭を撫でた。
 こんなに固い鱗に覆われながらも、国一つ滅ぼす力を持ちながらも、ルイは繊細だった。
 ルイは私の言葉に頷き、私の方に口を突き出した。
 ……………ああ。
 いつまでも、大事にするさ。
 ルイと深く熱い口づけを交わしながら、私は今夜交われないことを残念に思った。

 ♈
337 :オパビー [saga]:2019/04/26(金) 10:39:36.90 ID:yF0Cupv10
 >>335
 ただいまー。
 行動を決めるのは安価やで。
 まあ割と勝手に動いちゃってるけど………
338 :オパビー [saga]:2019/04/26(金) 11:00:15.17 ID:yF0Cupv10
リカアル「おい」

 普通にルイを寝かしつけ、少し水を飲もうと思い台所に降りてきた時、突然リカアルが話しかけてきた。
 リカアルは今あの漆黒のビキニアーマーは着ておらず、寝やすいシルクの寝間着に身を包んでいた。
 腕を組み(胸をぎゅっと押しつぶし)壁に寄りかかりながら、彼女は口を開いた。

リカアル「……………貴様は、我のことをどう思うか? …………300年前の厄災を、見た目が女と言うだけで、国を裏切り匿った愚か者の考えを聞きたい」

 悠然と、初見の頃の威厳を取り戻した彼女は私にそう問いかけた。

私「>>下」
339 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/26(金) 11:33:09.41 ID:lRptv7dco
自分の目の前で人を死なせたくない一心で、君のことやその後など考えてなかった
その結果どう扱えばいいのかとても悩んで、君が素の性格に戻って会話できるのを待っていた
340 :オパビー [saga]:2019/04/26(金) 12:27:43.43 ID:yF0Cupv10
 私は、あの時の事を思い出しながら言った。

私「あの時の私は、自分の目の前で人を死なせたくない一心で、ルイを止めた。その後も、死なせたくないから匿った。君のことや、匿ったその後の事など、考えていなかった。その結果、どう扱えば良いかもとても悩んでいて………君が素の性格に戻って会話できるのを待っていた」

 リカアルは私がそう言うと、折れて一本になった角を弄りながら言った。

リカアル「そうか…………先に言っておくが、我が貴様と話そうと思ったのは謝られようとも謝ろうとも思ったからでは無いからの。ただ本を読むのがつまらなくなっただけだからの」

私「ああ。分かった」

 私も、彼女に謝られるつもりはない。
 私の義手は今は外している。
 リカアルは腕が無くなった空間を見た。
 そして、何かを思い出したようにブルッと震えた。

リカアル「あやつは………ナリクアグトは…………今はルイと言ったかのう。あやつは恐ろしいのう………」

 リカアルはため息をついて続ける。

リカアル「我が貴様に雷を落とした瞬間、あやつは………修羅と化した、のう」

 リカアルはカタカタと歯を鳴らす。
 トラウマが掘り返されたようだ。

リカアル「300年前の戦いは、もっと楽しかったのにのう。この前の戦いは、ただただ、怖かった、恐ろしかったのう………」

 リカアルはそう言って黙り込んだ。
 ぎゅっと自身を抱きしめ、震えている。
 楽しかった、か………
 それほどの、戦闘狂だったのだろうか。
 リカアルの性格に関する記述はない。
 どれを見ても、殺戮を好む、悪の龍として描かれているだけだ。
 それは、真実だったのだろうか?

 しばらく静かな時間が流れる。
 今度は私から話を振ってみよう。

私「>>下」
341 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/26(金) 12:52:32.04 ID:2Zu6hp720
300年前のルイやリカアルはどういう生活してたのか聞いてみる
342 :オパビー [saga]:2019/04/26(金) 13:32:57.81 ID:yF0Cupv10
私「リカアル」

 リカアルが落ち着いた頃、私はリカアルに話しかけた。
 彼女は顔を上げ、私を見た。

私「300年前、ルイや君がどんな生活をしていたか教えてくれないか?」

リカアル「生活? 妙な事を聞くのう」

私「ちょっと興味が出ただけだ」

 私がそう聞くと、彼女は少し考えるように首を傾げた。

リカアル「そうだのう………我の話は出来たとしても、奴の事は知らん。有名だからそこいらの書物にでも載ってるだろう」

 まあ、確かに赫涙のナリクアグト関する書籍は無限にある。
 そこにはもちろん戦歴や生活も書かれている。
 ……………書籍によれば、ナリクアグトは雄だったようだ。
 その話は置いといてだな………

私「知らない?」

リカアル「うむ。我と奴は決戦の時の一回しか会った事がなかったしの。ナリクアグトという名前も封印が解けてから知った」

私「えっ………」

 まさか、そこまで面識がなかったとは。
 リカアルはフム、と言った。

リカアル「我の生活で良ければ、書物に載っていない話を中心に話すが」

私「ああ、それでいい」

リカアル「うむ」

 リカアルはゆっくりと話し出した。
 300年前の、彼女の生活を。
343 :オパビー [saga]:2019/04/26(金) 15:26:28.83 ID:hqrjiwxV0
リカアル「………生活と言っても、野生動物のような事しかしておらんぞ? 本能の赴くままに食べ、寝、起きてはまた食べを繰り返していた。そして、気が向けば生物を殺めていた」

私「本能の赴くまま………?」

リカアル「うむ。こう流暢に話してはおるが、300年前に封印された時はまだ知性なんて物はなかったからの。人間で言えば、赤子であった」

 その情報には驚きだ。
 龍と言えば高い知能と強靭な身体を持っていることから生物最強と呼ばれているからな。

私「初耳だな…………てっきり、文献にあるとおりナリクアグトと同じく知性があったかと…………」

リカアル「いや、そんな物は無かった。我は自らが好まんとすること、快く思うことしかしなかった。そのひとつが、偶然殺戮だった訳だ」

 リカアルは天井を見た。
344 :オパビー [saga]:2019/04/27(土) 11:27:03.95 ID:/PKboogA0
リカアル「我には、親などいなかった。誰にも温められず、冷たく、孤独に、卵から生まれた。誰からも何も学ばず、自分勝手に、生きた。生まれて間もなき頃、我は寝床の周りをちょろちょろとせわしなく動いていた一匹の鼠を殺めた。あの時の感覚は今でも忘れぬ。我が爪が容易く毛皮を裂き、鮮血が飛び散り、鼠が断末魔を上げる………血塗れた毛の感触、赤い視界、内臓の香り、耳に残る最期の叫び声、喉を通る鉄の味。全てを新鮮に、面白く感じた。もっと遊びたい。もっともっと、この感触を楽しみたい………その時から我は、子供が玩具を弄ぶ感覚で、殺しを楽しむようになっていた」

 ぞくぞくっ、とリカアルが身体を震わす。
 つまり、生来から生物を殺める事に楽しみを見いだしていたのか。

リカアル「それから幾年か。沢山の生物を殺めた。ひときわ、二足で歩く、とりどりの皮を被った生物………人間を殺すときは特別楽しかった。様々な断末魔を上げ、時に我に立ち向かう。それがたまらなく楽しかった。だから、我は多くの人間を殺めたのだ」

 彼女は自分の手をわきわきと動かした。
 今は人間の物だが、一度魔力を注げば凶悪な物になるだろう。
 300年前の人々がリカアルに殺戮された事について………
 はっきりと言えば、今更怒りは沸いてこない。
 なんにせよ、300年前の事だ。

私「生まれて何年ぐらいの時にルイに封印されたんだ?」

リカアル「うむ。定かではないが、おおよそ十数年といったところだろう」

私「若いな………」

 実際は、龍が伝説に残るリカアル程度の大きさになるまでには100〜150年ほどかかるらしい。
 リカアルが言う通り十数年で成長したとなれば、文献に載っている『突然現れた黒龍』という描写も納得がいく。

リカアル「我からしてみれば、どんどん世界の方が小さくなったようだったぞ。面白かったのう。それに、何故だか知らぬが、成長と共に自分の手足のように雷も使えたしのう」

 魔法は元々龍の物、と言われるほどに、龍は魔力容量が多く、扱いも上手い。
 その中でもリカアルは魔法に突飛し、雷属性が得意だったのだろう。

リカアル「そして、ある時。突然、奴はやってきた」

 とても楽しそうに、リカアルは声を弾ませながら言った。

リカアル「ナリクアグト。あの時の奴との戦いは、本当に楽しかったのう」

 懐かしむように、リカアルはそう言った。
345 :オパビー [saga]:2019/04/29(月) 09:46:21.18 ID:YGmGcAle0
リカアル「我は奴と会うまではただ蹂躙する側だった………しかし! 奴との戦いは心躍った!」

 リカアルが声のトーンを上げる。

リカアル「力では我に及ばなかったが、奴には経験と技量があった! むしろ力では我が圧勝しておった。一撃一撃が致命傷の我と、洗礼された素早い動きを持ちなるべく攻撃を食らわぬ戦法を取った奴。その差は、互角では無かった。我にようやく小さな傷が付き、血が流れたころ、奴は満身創痍であった。目は片方がつぶれ、翼は裂け、ウロコの赤とも血の赤とも分からなくなっておった。そして、我がトドメを刺した瞬間だった。突然、身体が動かなくなりおった。意識が消える直前に、奴が微笑んだのが見えた。『勝った』と。奴は、初めから勝てないと分かっておったのだ。分かっておったからこそ、自己を犠牲にし、我を永遠の封印に封じ込めるという手段をとっておったのだった」

 興奮のしすぎで肩で息をしながら、リカアルが一杯水を飲み、続けた。

リカアル「封印されている間は、ずっと眠るような感覚があった。いや、どちらかと言えば、何も無かった。恐怖も、怒りも、起こらず、夢も見なかった。私の意識は、黒かった。しかし、永遠の時が流れたある日、突然視界が開けた。同時に、元々我には無かった知性が、知識が、流れ込んできた。割れるように痛い頭を抑えながら、我が目を開けると、そこには、一人の男が立っておった」

私「待った。300年の月日の間に蓄えたのではなく、その瞬間に一気にか?」

リカアル「うむ。一気にだ。その目の前の男は、我が目を覚ました瞬間から聞いてもおらんことをベラベラベラベラとしゃべりおった。我の封印を解いたのは自分だの、知性を与えたのは自分だの。えっらそうな態度であったのう」

 リカアルの封印を解いて知性を与えた?
 そんな大層な事を個人で出来る筈もない。
 リカアルの封印を解くだけならまだしも、本能のままに生きていた龍に知性を与えるなんて魔法や技術は、聞いたことがない。

私「その男が誰か、心当たりはあるか?」

 多分心当たり無いだろうが、念のために聞いておこう。
 そう、ほとんど情報は得られないだろうと聞いた質問に対して、リカアルは、なんとも意外な答えを返した。
 それは、私も知っている名だった。

リカアル「ああ。その男は自分のことを『マオウ』などと名乗っておったぞ?」
346 :オパビー [saga]:2019/04/29(月) 18:07:27.67 ID:YGmGcAle0
私「なっ………………!」

 マオウ。
 つまり魔王。
 まさか魔王がリカアルの封印を解き、知性を与えたのか………
 しかし何のために…………

リカアル「気づけば我は龍人と龍に自由に変身出来るようになっておった。その男はなんか『我の眷属になれ』だの『封印を解いた恩を返せ』だのうるさかったからのう。ぶっ飛ばしてやったわい」

私「ちょっ………!」

 なにやってんのリカアルゥゥ!?

リカアル「そんな奴に構うより、我はふつふつと沸き起こっておった感じたことのない新しき感情を理解するのに忙しかった。それは………怒りと言ったな。ナリクアグトに対する、怒りを感じておったのだ。だから我は、空に飛んだ。奴が何か言っておったが、その時我は既に奴の魔力を感知しておったから、気にしなかった。そして、数ヶ月探し回り、やっと見つけたのだ。ナリクアグトの転生体である、ルイを。ここから先は、貴様も知っておろう。傲り高ぶった我は、奴にたやすく負けた。まあある意味………面白い結果でもあったな…………」

 面白い結果か………
 彼女は悲しげに笑うと、また折れた角の根元を弄った。

私「…………………」

 まとめれば、彼女は魔王によって封印を解かれ、知性を与えられたらしい。
 ついでに、龍人の身体も。
 魔王は伝説の龍であるリカアルの封印を解き、自身の眷属にしようとしたらしいが、ぶっ飛ばされた。
 魔王ともあろう者がその事態を想定せずにみすみす逃がすような真似をするとは思えないが、リカアルの力が強かったのだろうか?
 どちらにせよ、リカアルが魔王側につかなくて良かった。
 魔王の眷属としてパワーアップしたリカアルと言うのは、考えただけでも恐ろしい………
 リカアルが角から手を離した。

リカアル「ふむ…………話す、と言うのはこうも面白い物なのだな。いくらか気が楽になったわい」

 リカアルはもう一度コップを手に取り、水を飲んだ。
 喉をならす度に、背に生えた翼がぴくっ、と動く。

リカアル「…………んくっ。ぷは……………ルイは未だに身体が拒絶するが………貴様、ユタと言ったな」

私「ああ」

リカアル「ユタ。どの道我は契約により貴様からは逃れられぬ。だからユタよ。貴様が貴様の言うエゴとやらに従うのなら、我を楽しませおくれ。我は退屈は好かぬ」

 気絶から目を覚ました時の彼女からは考えられないような期待に満ちた目で彼女はそう言った。
 この龍は、自らを柔軟に変えたのだ。
 封印される前自らが殺戮を楽しんでいたように、この宮殿内での生活を楽しむ為に。

私「>>下」
347 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/29(月) 18:50:07.93 ID:0kGSC1T7o
こうして君と話すことができてこちらもとても良かったと思っている
君に宮殿という世界は狭いだろうし、いつか君が外も出られるように手はずを整えたい
どうにせよいつまでも隠し通すことは難しいだろうし
348 :オパビー [saga]:2019/04/30(火) 00:06:32.55 ID:9Be4TCdE0
私「君の事はちゃんと尊重するよ。こうして君と話すことができて、こちらもとても良かったと思っている。君にとって宮殿という世界は狭すぎるだろうから、いつか君が外に出られるように手はずを整えたい。どちらにせよ、いつまでも君を、『雷刻のリカアル』を匿っている事を隠し通すのは不可能だろうしな」

リカアル「ああ。……………ありがとな」

 リカアルはそう言ってコップに残った水を飲み干した。
 いつか彼女の事は世間に晒される。
 隠し通せるとは絶対に思わない方がいい。
 それまでに彼女ともっと話すなどして信頼関係を深めるべきか。
 ともあれ………

 先に気にするべきは明日の事だ。
 明日、あと数年で国王に就任する、『次期国王』である兄が遠征から帰ってくる。
 左腕の事は色々言われるだろうな………
 便宜上は謎の放電事故で無くなった私の左腕。
 まだ義手は届いていないが、少しだけこの生活に慣れてきた。
 元気な所を見せればまあ大丈夫だろう。

 重要なのは………
 明日、腕以外の事について、兄のトキと何の話をするか?
 という事だ。

 どんな、もしくは何の話をするか? 何か要求をしても良いし、他の話をしてもいい >>下
349 :オパビー [saga]:2019/04/30(火) 12:23:33.85 ID:KHWMPBvw0
 ……………
350 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/30(火) 12:25:44.55 ID:Z5+spI2S0
自由安価は難しいときは本当に難しいです……
父にルイのことが認められなかったこと
351 :オパビー [saga]:2019/04/30(火) 12:27:05.05 ID:KHWMPBvw0
 もっと簡単になるよう勤めるで。
352 :オパビー [saga]:2019/04/30(火) 13:08:32.87 ID:9Be4TCdE0
 〜次の日〜

 朝起きた瞬間、ルイに唇を奪われた。

ルイ「んはっ。えへへ〜。今日のファーストキッスもーらいっ♥」

私「………ああ、おはよう。…………これ毎朝やるのか?」

 ルイはによによと頬をほころばせた。

ルイ「うん………♥」

 可愛いっ………!
 今すぐ押し倒したいが、我慢だ。
 ばっくり傷が開いて血だらけになってまで営みたくはない。
 私は不本意ながらルイを押しのけながら起き上がった。




 〜昼〜



トキ「お前は………本当に…………なんで危険な遠征に行っている俺より危険な目に合ってるんだ…………」

 トキが頭を痛そうに抑えた。

トキ「左腕は無くなって、右半身に雷模様の大火傷。なんで家にいながら………ううぅむ…………」

私「まあ、命はあるだけ運が良かったさ」

トキ「…………俺だってそんな怪我したこと無いのによぉ………」

 トキは時々ため息を挟みながら私に言う。
 相当酷い有り様だからな………

トキ「……………結婚を祝おうと思ったのに、怪我を見舞うことになるなんて………まずは、おめでとう。そしてどうしてそうなった………」

 トキは再び頭を抱えた。
353 :オパビー [saga]:2019/04/30(火) 14:39:41.63 ID:9Be4TCdE0
 〜〜〜

トキ「放電事故か……………」

 色々と話した後、トキが引っかかったように首を捻る。

私「どうした?」

トキ「………いや、何でもない」

 それほど重要な事でも無かったらしい。
 トキは捻ったクビを戻し、私に向き直った。

トキ「で、そっちから重要な話があるって言ってたが、なんだ?」

私「ああ、その話か」

 私は姿勢を正した。

私「実は昨日父上にルイとの結婚の許可を貰おうとしたんだが、拒否された。法律では私達の婚約は許可されて然るべき物の筈なのだが、王は王の権限で法を無視し婚約を許可しなかったのだ」

 私がそう言うと、トキは顔をしかめた。

トキ「婚約を許可されなかった、か。たしかにあの王なら自分のために法に反することもいとわないだろう。法に反したのが一般人なら即刻逮捕だが、それが王だ。王なら例えお前とルイの結婚を許可しなかろうが権限がk………ちょっと待てお前なんつった?」
354 :オパビー [saga]:2019/04/30(火) 15:00:38.61 ID:9Be4TCdE0
 トキが急に驚いたような声を上げた。

トキ「え、結婚? お前と、ルイが? ど、どういうことだ?! お前パトリシア姫と結婚するんだろっ?!」

 トキが困惑した様子で体を乗り出しながらそう言う。
 そう言えば、トキはまだこの事は知らなかったな。
 まあどの道いつかは話さなければいけなかった事だ。

私「>>下」
355 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/30(火) 15:12:39.47 ID:ype+BouMo
パトリシア姫とも結婚するんだ。もう二人には確認して許しを得ている
……トキも私達を祝福はしてくれないか…?
356 :オパビー [saga]:2019/04/30(火) 16:22:34.55 ID:9Be4TCdE0
私「パトリシア姫とも結婚するんだ。いろいろと経緯があったが、私とルイの関係はもう、パトリシア姫とも話し合って確認を取って許しを得ている。他にも、何人かはこの事を知っている。その………トキはどう思うかは分からないが、私達は本当に愛し合っているんだ……………トキも、私達を祝福してくれないのか………?」

 私がそう言うと、トキは開いていた口を閉じ、慌てて首を振った。

トキ「い、いやいや。そうは言わない! そうは言わないが………おまえ……………」

 その『おまえ………』には色々な感情が詰め込まれていた。
 呆れやら、何やらだ。

トキ「………ルイか……………王が許してくれない訳だ………私は祝福するが、結婚は難しいだろうな………」

 トキは顎を触った。
 そして神妙そうな顔をした。

トキ「……………それで…………ルイとの関係はどこまで進んでいるんだ?」

 おっとその質問か。
 ………難しいな。
 ここはあえて嘘をつくか、話を円滑に進めるために正直に話すか。

私「>>下」
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