【モバマス】LiPPS「虹光の花束」 2スレ目

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170 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/14(日) 21:58:20.53 ID:TfNz0bT70
ちとせ「.....ところで千夜ちゃん、ちょっとケーキとか買ってきてくれない?コンビニのでいいから」

千夜「構いませんが....急ですね」

ちとせ「なんか糖分が足りてなくって、私もう動けないの。.私が奢るから、はーちゃんとなーちゃんも好きなスイーツいっぱい買ってきなさい?」

颯「ほんと!?ありがとうちとせちゃん!」

凪「ちとせちゃんの奢り....つまりちーPayですね?」

ちとせ「そうそう!ほら、皆行ってらっしゃい。千夜ちゃんも好きなの買ってきていいから、二人の事お願いね?」

千夜「.....お嬢様が、そうおっしゃるのなら」

ちとせ「行ってらっしゃい、なるべくゆっくりね」

千夜「畏まりました......それでは」
171 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/14(日) 21:59:10.11 ID:TfNz0bT70
ちとせ「さて.....と」


ちとせ「社長に会ったんでしょ?大丈夫だった?」

P&奏「「.......!」」
172 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/14(日) 21:59:51.59 ID:TfNz0bT70
奏「貴方、もしかして」

ちとせ「私は、人の嘘がなんとなく分かるから。他の皆は....千夜ちゃんはいつも私と一緒にいるから、もしかしたら察しちゃってるかもしれないけど.....はーちゃんとなーちゃんは気づいてない」

P「キミは891プロの不正を知ってたのか....だったらなんで!」

ちとせ「私にも、どうしても負けられない理由があるから」

P「負けられない、理由?」
173 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/14(日) 22:00:35.82 ID:TfNz0bT70

ちとせ「私ね、もう長くないの」
174 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/14(日) 22:02:17.32 ID:TfNz0bT70
奏「長くない.....?」


ちとせ「後3年....いいえ、まともに体を動かせるのはあと1年あればいいほうって、そう言われた」

P「余命3年....だと?」

ちとせ「....これ、皆には秘密にしてるから、絶対言わないでね?特に今は、IGの決勝直前だし」

P「そんな....治療に専念すれば良くなったりしないのか?」

ちとせ「無理、まだ治療法が確立してない奇病なんだって。ずっと病院で寝たきりなのを受けいれれば、延命措置くらいはできるかもしれないけど」

P「そんな.......」
175 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/14(日) 22:04:36.50 ID:TfNz0bT70
ちとせ「だから私、どうしても残したいの。この世に『黒埼ちとせ』っていう女がいたことを。私が、最後まで私として生きたって言う証を」

ちとせ「.....あと、千夜ちゃんの事もあるしね」

奏「白雪さん?確かさっき主従がどうのって言ってたけど....」


ちとせ「そう、あの子はずっと私の僕として、私に尽くしてくれた.....でも、それだけなのよ。ずっと私に縛られて、それ以外の生き方を知らない....だから私が死ぬ前に、あの子には自分自身の生き方を見つけて欲しいの」

ちとせ「それに....はーとなーは、純粋にアイドルに夢を見て、ただひたすらにトップアイドルを目指して頑張ってきたの。そんな二人の夢を、私が壊すようなことは出来ない」

ちとせ「だって....3人とも同じ道をずっと一緒に歩いた仲間だもの。なにも残さず死ぬはずだった私の手を、ずっと掴んでいてくれた何よりも尊い仲間.....だから、私があの子達の幸せを願うのは、当然のことでしょう?」


奏「.....そうね。同じ立場だったら、私もそうするわ」

ちとせ「.......ねぇ」







棄権、しないの?
176 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/14(日) 22:06:46.83 ID:TfNz0bT70
P「....どういう事だ?」

ちとせ「別に、LiPPSと戦いたくないと思ってるわけじゃないの。でも、もし決勝のステージに立てば貴方たちはきっと酷い妨害を受けるわ。今日の覇王エンジェルズみたいに、大ケガを...最悪、命に関わるかもしれない」

ちとせ「それでも....決勝に挑む覚悟はあるの?」


奏「当然よ」

ちとせ「!!」

奏「私達の身を、純粋に心配してくれるのは有り難いわ。でも、あえて言わせてもらうわね.....余計なお世話よ。どんな逆境に苛まれようと、全力でアイドルを楽しむのが私達811プロの信念だから!」

奏「ねっ?プロデューサーさん?」

P「ああ!正直すげぇ怖いけどな....でも、絶対に立ち向かうと決めたからな!」


ちとせ「アイドルを、全力で楽しむ.....そっか、じゃあもう遠慮しないよ。言っとくけど、妨害とか抜きにしても勝つのは私達だから!」

ちとせ「だから....覚悟してなさい。決勝で、私達『Project,Queen』が、貴方たちを叩き潰すから!!」



奏&P「「望むところよ(だ)!!」」
177 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/14(日) 22:08:22.73 ID:TfNz0bT70
千夜「お嬢様、ただいま戻りました」

颯「ちとせちゃんの分も、一杯買ってきたよー!!」

凪「人の金だと思って、大量に買い過ぎました。でも、美味しければ大丈夫らしいので、おーるおっけーです」

ちとせ「おかえり皆。じゃあ、事務所に帰ってお茶でもしましょうか」

千夜「お話は、もう済んだので?」

ちとせ「うん、もう大丈夫。それじゃあ、さっさと帰りましょ?私もう糖分不足でヘロヘロー!」

ちとせ「というわけで二人とも、また決勝で会いましょうね」

奏「ええ、楽しみにしてるわ」



決勝の舞台で思い切りぶつかることを誓い合って、Project,Queenは去って行く

そして彼女達が見えなくなった頃、入れ替わるように811プロの仲間達が帰ってきた
178 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/14(日) 22:09:24.07 ID:TfNz0bT70
美嘉「二人とも、やっと見つけたよ!中々帰ってこないから心配したんだから!」

志希「随分長い事二人きりでいたみたいだけど.....ナニしてたのかにゃー?」

奏「さて、ナニかしらね?」

P「誤解を招くような発言はよせ....」

奏「もう、ノリが悪いわね」

フレデリカ「だめだよプロデューサー!芸能界を生き抜くには、ノリに乗れる力を見につけないと!」

P「いや、俺はもう芸能人じゃねえし.....」


周子「そう言えばさっき、青木さんと早苗さんから連絡があったよ。客席でライブ見てたけど事故の事調べようとしたら追い出されたから、先に事務所で待ってるって」

P「そうか....じゃあ、一旦事務所へ帰ろうか。色々と情報共有しといた方がいいだろうしな」

ちひろ「私は010プロに戻りますね。多分色々やらなきゃいけない事が山積みになってると思うので....」

美嘉「そっか。じゃあちひろさん、またね!」

ちひろ「ええ、皆も決勝に向けて頑張って!私も応援してるから!」
179 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/14(日) 22:10:27.17 ID:TfNz0bT70
その後、私達はプロデューサーさんの車に乗って811プロへと帰ってきて、早苗さんとトレーナーさんに今日あったことを説明した

そして、Project,Queenの事も.....



早苗「成程ね....やっぱり、あの事故には891プロが噛んでたか」

ベテトレ「あの子のプロデューサーが、何事もなかったかのように891プロに再就職していたのも、これで合点がいったな....あの男、プロデューサーの屑だな!」


美嘉「でも、Project,Queenの方はむしろ被害者だね....特に、リーダーのちとせちゃんは.....」

フレデリカ「後3年しか生きられないって.....折角、アイドルになれたのに!」

P「その上、891プロの実態を知ってしまって板挟みだ。仲間の為に負けられないからこそ、891プロの手で良いように転がされてる....」

周子「ほんっとに許せない!アイドルをまるでおもちゃみたいに扱って!」

志希「でも、だからって手を抜くわけにはいかないよね?」


奏「ええ、むしろ全力でぶつかって、お互い最高のステージを作り上げる事....それがProject,Queenに対する、最大限の礼儀よ」

奏「それに....私達が負ければ、芸能界は本当にあの男に支配されてしまうかもしれない。もしそんな事になれば、とてつもない数の人が苦しむことになる」
180 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/14(日) 22:11:40.77 ID:TfNz0bT70
P「だがあの人の事だ、必ず何かしらの妨害をしてくるだろう.....何とかならないもんか......」

周子「早苗さん...なんかこう、国家権力の力とかで何とかならない?891プロにガサ入れして摘発するとかさ」

早苗「私もそうしたいんだけど....きっと上に止められるでしょうね。061プロの社長の時もそう、891プロに少しでもつながりそうになると、いつもに圧力をかけられるわ....多分、警察の上層部に891プロと繋がってる奴がいる」

美嘉「そんな、警察にまで!?」

早苗「悲しいけど、このアイドル戦国時代と呼ばれるような世の中、割と良く聞く話なのよ....芸能事務所が賄賂を差し出す代わりに、不正を見逃してもらったり....そういう癒着の話は、そこまで珍しい話じゃない」

早苗「ホントは私も締め上げてやりたいんだけど....ごめんなさい、私の権限じゃ、そこまで無理な捜査はできないわ.....」


P「気に止まないでください片桐さん。それにそういう事情なら、あまり噛み付くと片桐さんの身が危ないかもしれない」

フレデリカ「アタシ達の為に早苗さんが傷つくなんて、絶対嫌だからね!」
181 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/14(日) 22:12:41.37 ID:TfNz0bT70
周子「でも、実際どうするの?このままじゃ戦いの舞台にすら上がれないかもよ?」

P「正直警察組織まで懐柔されてるとなると、あまりにも話がデカすぎる.....歯がゆいが、今は向こうの出方を伺うしかないな.....」

奏「....................」







あの男が、この期に及んで決勝当日まで何もしてこないはずがない


.....とてつもない悪寒がする

まるで、見えない刃を首筋に突き付けられているかのような..........
182 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/14(日) 22:14:49.91 ID:TfNz0bT70
〜〜〜某時刻、891プロ社長室〜〜〜

屋久井「それでは君たち、最後の仕事、よろしく頼むよ」


記者1「もちろんでさぁ、頂いた報酬の分はしっかり働かせていただきますよ」

記者2「それに、我々もあのプロダクションには一度煮え湯を飲まされているのでね....個人的な復讐もしたかったところです」

記者3「まあウチは、なんでもいいから叩ければそれでいいがな。やっぱり、いたいけな少女を陥れるのはたまんないからねぇ!」

記者1「相変わらずあんたは性癖歪んでんな....じゃあ、811プロ以外の事務所の方はあんたに任せるわ。好きなだけぶっ叩いてやれ」
183 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/14(日) 22:15:21.65 ID:TfNz0bT70
891「これで、芸能界のすべてを、この891プロが....私が!この手に握ることになる.....!」

891「P.....私が売り出してやった恩を忘れて好き勝手やって来たみたいだが....私を裏切ったらどうなるか、しかとその身に刻むがいい......」







クククク.......アーッハッハッハッハァ!




to be continued.....
184 : ◆FuHrdA/9sY [saga sage]:2019/04/14(日) 22:21:58.56 ID:TfNz0bT70
Chapter21が終了したところで、今回はここまでー。 このP完全にヒロインみたいな立ち回りしてんな

今回だけでこの物語で書きたかったシーンの半分以上を書きました。というか、この話とエンディングのワンシーンと事務員周子のネタをやりたいがためにわざわざイチからプロダクションを立てる設定にしたと言っても過言ではない

次回の更新ですが、明日から1週間クソ忙しくなりそうです....
一話くらいは隙見て更新できると思いますが、更新頻度が劇的に下がる事をご容赦ください
185 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/18(木) 21:18:09.17 ID:xdXSO0Np0
時間が開いてしまった今でも見てくださってる方がいるかは分かりませんが、Chapter22の投下開始していきます
186 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/18(木) 21:19:14.50 ID:xdXSO0Np0
歩んで、歩んで、歩み続けて、ついに頂上が目前に差し迫ったその時こそ、人は最後の振るいにかけられる


問われるのは、それまで歩んできた道のり


中途半端な覚悟で挑んできた者、苦難から目を背けてきた者、妥協に妥協を重ねてきた者、自分自身に嘘をつき続けてきた者.....

楽な道ばかりを選び、自らを誇る事が出来なくなった人間に、頂上は掴めない



だが、確かな信念の元、自分自身が正しいと思える道を選び歩み続けてきた者ならば

その歩んできた道での出会い全てが、旅の中で胸に積まれていった、『自分』を貫き通した証が


きっと、力尽きゆくその背中を支え、押しだしてくれるだろう




光差し込む終着点、何よりも誇り高い頂へと.......
187 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/18(木) 21:20:38.81 ID:xdXSO0Np0
本戦第一試合が終わった次の日、私達はいつもよりだいぶ早い時間に集合をかけられていた





周子「おはよー......あたしが最後?」

P「ああ、でも時間通りだから大丈夫だぞ周子」

周子「久々にこんな早起きしたよー....まあ、決勝直前だし仕方ないか。仕事もレッスンも詰まってるもんね」

志希「そうだねー....早起きも、致し方にゃいねー......」


美嘉「なんか志希ちゃんすっごい眠そう....てかもう半分以上寝てるけど、よくちゃんと事務所まで来れたね?」

ベテトレ「志希は寝坊かもしれないと思ったから、私が迎えに行って連れてきたんだよ。案の定爆睡していた.....」

志希「無理やり叩き起こされたから志希ちゃんまだ夢の中〜.....」

P「あー、もう話始めるぞ?まず最初に重要なお知らせがある」


P「IGの決勝、一週延期になった。だから今日からちょうど2週間後だな」

奏「やっぱり、あの事故のせい?」

P「ああ、あの後ステージとか機材の見直しで色々揉めたらしいからな。その対応に追われてるんだとか。まあ、逆に一週間で済ませられるんだから大したもんだがな」


P「んで、今日のスケジュールについてだが......」







その時、プロデューサーさんの携帯が....いや、それだけじゃない

事務所の固定電話まで、一斉にけたたましく鳴り出した
188 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/18(木) 21:21:16.48 ID:xdXSO0Np0
P「こんな時に.....周子と青木さん、向こうの電話の対応頼む」

周子「りょうかーい」

ベテトレ「分かった」



美嘉「朝から凄い電話だねー」

フレデリカ「きっと決勝進出したから、色んなところからオファーが来たんだよ♪」









P「.....はぁ!?キャンセルって、一体どういう事ですか!?」



『!?』
189 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/18(木) 21:23:20.56 ID:xdXSO0Np0
キャンセル、ですって?


一体、何が起こっているの....?


P「何で急にそんな事に!?......は?そんなの、事実無根ですって!!ちょっと!」ガチャッ

奏「プロデューサー、一体何があったの?キャンセルがどうのって聞いたけど....」

P「今日の24山テレビの仕事.......キャンセルになった」

美嘉「キャンセルって、いくらなんでも急過ぎじゃない!?」

P「今朝の週刊誌の内容を鑑みて見送ることにしたらしいが....二人とも、そっちの電話はどうだった?」

周子「こっちもキャンセルの電話だったよ。なんかスタッフが怪我で足りなくなったから、番組の収録そのものが中止になったみたい」

ベテトレ「こっちもだ.....このタイミングで、これだけ同時にキャンセルされるのは痛すぎるぞ....!」


トゥルルルルル!!!!!


P「はい.....えっ!?ちょっと待ってください、なんで急に!?」

P「クソッ、またかよ!」トゥルルルッルル!!!

周子「電話が切れた傍からまた...!」

ベテトレ「まさかこれ、全部キャンセルの電話じゃないだろうな....」

P「....どうやら、そのまさかかもしれません」
190 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/18(木) 21:24:28.25 ID:xdXSO0Np0
....プロデューサーさんの危惧は、当たっていた

その後数十分、事務所中の電話が鳴り続けた


番組そのものが中止になったり、何かの理由で役者が変更になったりと、原因は様々だったけど

そのコール全てが、既に入っていた仕事のキャンセルを告げる電話だった
191 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/18(木) 21:25:04.63 ID:xdXSO0Np0

Chapter22 「Still,Stand Up」
192 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/18(木) 21:27:46.30 ID:xdXSO0Np0
ベルの音が鳴りやんだ頃、真っ黒だったはずのホワイトボードは、僅かばかりのシミを残して漂白されてしまった.....



P「残ったのは、これだけか......」

奏「『正気のサタデーナイト』まで、特番に変えられてしまったのね.....」



真っ白になってしまったホワイトボードを、皆ただただ呆然と眺めていた


でもその視線は、大きな音を立てながら勢いよく開いた扉に奪われる



早苗「みんな!大丈夫!?」

P「片桐さん!急に来てどうしたんですか?」

早苗「さっきコンビニでこれ見つけて、いてもたってもいられなくって......」

フレデリカ「それって、雑誌?」
193 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/18(木) 21:29:28.50 ID:xdXSO0Np0
志希「.......こりゃ酷いね、見出しから色んなアイドルのゴシップがてんこ盛りだ。特に、あたし達はめちゃくちゃバッシングされてるみたい」

奏「見て、これとか酷いわよ!【速水奏は映画好きを自称しているが、その実態は意味の分からないB級映画ばかり好むクソ映画ハンターである】って、デタラメじゃない!ねえみんな!?」


『................................』


奏「なんでそこで黙るのよ!?」


周子「でも叩かれてるのはウチだけじゃない、010も....本当に色んな事務所が叩かれてる.......大きな事務所程特に酷いね」

周子「だけど、891プロを叩く記事は一つもない.....ていう事は」

P「iMB事件の時と同じ、891プロの常套手段って事か....あいつ、マジで芸能界を891プロ一強にするつもりなんだ」

早苗「それに、今回は出版社やテレビ局だけじゃないわ、警察にも圧力がかかってる」
194 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/18(木) 21:30:42.08 ID:xdXSO0Np0
ベテトレ「警察にも....?どういう事だ?」

早苗「そもそもあたし、今日は別に非番じゃなかったのよ。でも、制服も着ずにここへ来た....何でだと思う?」

美嘉「....もしかして!?」


早苗「昨日、自宅謹慎を言い渡されたわ。どういうわけか、潰れた美嘉ちゃんが前にいた事務所...061プロとの癒着を疑われてね」

早苗「多分、上に圧力をかけられたんだわ。私が891プロの事嗅ぎまわっていた事ばれたみたい。891プロとの密約で甘い汁を吸ってる上層部に、邪魔だと思われたんでしょうね」

P「あいつら、本当に片桐さんまで狙ってきやがった....!」


周子「でも、自宅謹慎ならお家にいないといけないんじゃないの?」

早苗「そこはほら、811プロはあたしの第2の実家だから!というわけで、暫くはここで皆のお手伝いするわよ。人手足りてないでしょう?」

P「そりゃ有り難い!もう今日は電話番だけで手が足りなくなるくらいでしたからね!」

ベテトレ「早苗が手伝ってくれるのはいいが、これからどうするんだ?状況は最悪に近いぞ」

フレデリカ「お仕事ほとんど無くなって、暇になっちゃったねー」





決勝の直前である今の時期の仕事は、宣伝としても経験を積む目的としても重要だったのに、こんな理不尽が許されていいの.....。?

一体、どうすれば............
195 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/18(木) 21:31:42.26 ID:xdXSO0Np0
P「.........なあみんな、こういう時こそ初心に帰ってみないか?」

周子「初心?」

P「ほら、向こうから仕事が入ってくる今と違ってまだ駆け出しだったころは、自分たちの魅力を伝えるのに必死で、我武者羅にアイドルの階段を駆け上がってただろ?もちろんその過程で壁にぶつかることもあったけど、皆で乗り越えてきたじゃないか。今回もそれと同じさ!」


P「仕事を奪われたのなら、また新しく掴み取ればいい。悪い噂を流されたのなら、そんな噂吹き飛ぶくらいの魅力を見せればいい。ファンを奪われたのなら、それ以上の人を新しく魅了すればいい!」

P「大事なのは、何度折られたって、何度崩れ落ちたって、それでも立ち上がって前を見据える事......だって、アイドルはいつだって前を向いて笑う仕事なんだからな!」


......!!!



P「それに、考えようによってはチャンスかもしれないぞ?決勝の為の練習に費やせる時間が増えたんだから!どうせなら、この妨害も利用してやろうぜ?」

P「どんな逆境だろうと楽しんで、ファンの為に最高のステージを作り上げる.....それでこそ、俺たち811プロだろ?だから.....どんなに不利な状況だって俺たちは降参しないって、叩きつけてやろう!」
196 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/18(木) 21:33:47.56 ID:xdXSO0Np0
プロデューサーさんの言葉で、全員の顔に気力が戻っていく


....やっぱり、プロデューサーさんはちゃんと、私達にとってただ一人のプロデューサーよ


目の前の壁に心を折られかけた時、理不尽な状況に恐怖したとき......そんな時にいつも、"いってらっしゃい"と背中を押してくれる人

たったそれだけで貴方は、私達の迷いも不安も、全部振り切ってくれる




男は船で、女は港と言うけれど.....私達はきっと逆

私達がアイドルとして未知の海へと漕ぎ出していけるのは、いつだって帰れる場所があるから..........



ねぇ、プロデューサーさん.....これからも貴方だけは、私達の帰れる場所でいてね?

貴方が私達を見守ってくれている....ただそれだけで私達は、どんな壁にも立ち向かえる!
197 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/18(木) 21:36:58.63 ID:xdXSO0Np0
改めて決勝の舞台に立つという決意を皆で固めた後、彼女達のレッスンは深夜まで続いた

だが、熱中するあまり時間を忘れて残ってレッスンをしていたので、先ほど流石に日付が変わるまでいるのはマズイと無理やり返した


あの子達、ホントに一度火が付くとすげぇなぁ....

志希とか周子とか、いつもは気分屋なのに、今日のレッスンは別人みたいな集中力だった....

そんな二人に影響されたのか、いつだって本気が信条の美嘉も、今日はいつもの本気"以上"に本気で自分を高めていった

フレデリカはこんな非常事態になっても決してぶれず、笑顔でアツくなり過ぎていくみんなを和ませ、それでいて真剣にレッスンに挑んでいた


そしてそんな個性の塊みたいな集団を、奏はリーダーとして確かにまとめ上げた

みんな後悔しないように、今自分ができる事を全力でやっているんだ......




なら、あの子達が頑張ってる分、俺もプロデューサーとして、自分が今できる事を精一杯やり遂げなきゃな
198 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/18(木) 21:38:08.72 ID:xdXSO0Np0
P「.....まあ、それにしてもこの量....仕分け大変だなぁ」


ファンからアイドルへの贈り物

それは手紙だったりお菓子などの差し入れだったりと様々だが、その全てをアイドル本人に渡す前に検品を行わなければいけない



中にはファンを装ってアイドルを傷つけるような手紙を出してきたり、嫌がらせの様なものが送られてきたり....酷いときには食べ物に毒が盛られてたりする事もあるらしい

だからいつも俺がこうやって中身を確かめて、安全を確認してから翌日本人に渡しているのだが......



P「これも891プロの妨害なんかねぇ.....」



何故か今日に限って届いた贈り物が多い......だが、その分やたら攻撃的な内容の物が多かった



P「仕事なんか本心なんか知らんが、よくもまぁこんなに非道いことが書けるもんだ....」



彼女たちに向けられた敵意を見る度に何とも言えない気持ちになるが.....それでも、少しでもあの子達の力になるために仕分けを続けていた
だが.....








???「おー、やっぱりまだ仕事してたんやね」

P「えっ....お前!?」
199 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/18(木) 21:38:58.92 ID:xdXSO0Np0
周子「Pさん、お勤めごくろうさま♪」

P「周子、なんで戻ってきた?帰ったんじゃなかったのか?」

周子「偶には事務員らしく、事務所の為に残業してやったた方がいい気がしてね.....それで、何してんの?」

P「いや、これは.....」


なんとか誤魔化そうとするが、周子はひょいっと身を乗り出して持っていた手紙を奪い取ってしまう


周子「.......なるほどねー、暇な奴もいるもんだ」

P「見ないほうがいい....まだ結構あるし、お前はさっさと帰って『やだよ』」

周子「皆いつも言ってるでしょ?あたし達を信じろってさ。そうやって辛い事一人で抱え込むの、Pさんの悪い癖だよ?」

周子「それに.....ほら!」



周子が手紙の入った段ボールから、次々と手紙を掴み取り、読み上げていく
200 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/18(木) 21:39:52.97 ID:xdXSO0Np0
『LiPPSを応援しています!頑張ってください!』

『必ず頂点を取ってくると約束したんだ、最後までお前の思うまま突き進みなさい。"私達"の希望よ』

『志希さん、フレデリカさん、俺たち二人は死ぬまで貴方たちの大ファンです!決勝も絶対応援しに行きます!!』

『周子、優勝したら一度実家に帰ってきなさい。優勝祝いに貴方の好きだった和菓子一杯用意して待ってるから、お友達も連れてきてね!』

『美嘉、私達ずっと、貴方を応援するよ。なんだかんだ言ってもやっぱり、貴方はいつまでも私達の憧れだったから....』

『奏さん、周子さん.....あのオーディションで貴方たちに出会えたおかげで、私達は純粋な思いでアイドルとしての夢を描けるようになりました。いつかまた貴方たちに会いに行けるアイドルになるから、それまで頂上で待っていてください!その時は....頂上をかけて戦いましょう。今度こそ必ず、私達が勝ちます!』


『あたし達に勝ったんだから、絶対優勝しなさいよ!トライアドプリムス全員でで応援するからね!』
201 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/18(木) 21:40:21.34 ID:xdXSO0Np0
読み上げられていくのは、理不尽な呪詛ではない


LiPPSが今まで積み重ねてきた、アイドルの道をずっと歩んできた証

彼女達から笑顔を貰った、数多の人達からの声援だった
202 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/18(木) 21:41:32.21 ID:xdXSO0Np0
周子「こんな風に、応援してくれるファンも沢山いるしね♪だから、大丈夫だよ」

周子「それにアイドルである前に811プロの看板事務員として、あたしだって事務所の皆を守りたいんだ、だからここは811プロのスタッフ二人で、一緒に頑張ろ?」

P「.....そうか、なら手伝ってくれるか?あんまりにも数が多くて参ってたんだよ」

周子「もちろん!でも、残業代はちゃんと出してよ?」

P「分かってるって。明日もあるしちゃっちゃと終わらせよう」

周子「りょーかい、じゃあ早速.......お!これなんかすっごく豪華じゃない?」

P「ホントだ、なんかお嬢様っぽいデザインの便箋だな」

周子「中身は.........えっ?」

P「どうした?」

周子「見て、これってもしかして......」

P「?...............これは!?」

周子「どうやらあの子、もの凄いお宝を送ってくれたみたいやね?」

P「ああ.......これならまだ、逆転の目はある!!」









反撃開始だ.......!
203 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/18(木) 21:43:10.89 ID:xdXSO0Np0
フンフンフフーン、フレデリカー♪

....あっ、ママ!えへへ、分かっちゃう?
そうなの、今すっごく楽しいんだ!
なんせアタシ達、遂に決勝まで来ちゃったからね!


....あー、うん。確かに辛い事もいっぱいあったよ。でも、フレちゃんは大丈夫!
だって、LiPPSはムテキのアイドルユニットだからねー♪

だってLiPPSって、アタシだけじゃなくて、志希ちゃんに、美嘉ちゃんに、周子ちゃんに、奏ちゃんがいて、プロデューサーがいて
そして、いつだってアタシ達の背中を支えてくれるファンがいるんだ!


だからどんなに辛い事があっても大丈夫!
みんなで笑顔で支え合って、乗り越えて、アタシ達を支えてくれた人達を、みーんな楽しませてみせるから!

もちろん、ママとパパもね♪
204 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/18(木) 21:44:21.85 ID:xdXSO0Np0
....ねぇ、ママ

アタシがアイドルとしてこんなに大きくなれたのは、ママがアタシをこんなに可愛く産んでくれて、パパがママとアタシを支え続けてくれて、二人がアタシを立派に育ててくれたから

そして、ママがアタシを立派に育てる事ができたのは、おじいちゃんとおばあちゃんがママを立派なパリジェンヌに育ててくれたからだよね?

もしも誰か一人がちょっとでも違ったら....きっと今のフレちゃんはいなかったと思うんだ



だからアタシ、おじいちゃんとおばあちゃんにも恩返しするよ!

二人の孫のフレちゃんは、二人のおかげでこんなに大きくなれましたーってね♪




大丈夫、きっと仲直りできるよ

ママだってほんとは、おじいちゃんの事大好きでしょ?なら、大丈夫だよ

おじいちゃんだってホントはママが大好きで、きっと今でもママに会いたいと思ってる




だから、見てて
アタシが日本にいるママと、パリにいるおじいちゃんを繋いで見せる

日本とフランス、二つの故郷の懸け橋になるから!



だからほら、泣かないで、ね?


うん、悲しい涙じゃないのは分かってるよ

でもね、どうせなら笑顔がいいな?




だって、ママの笑顔は、いつだってアタシを明るく照らしてくれる、アタシの太陽なんだから.....ね!
205 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/18(木) 21:45:26.46 ID:xdXSO0Np0
プロデューサーに家へ帰らされた後、あたしは決勝の対戦相手、黒埼ちとせちゃんの出ている番組をいくつか拝見してみた




....この子、やっぱりそうだ

余命3年、動けなくなるまで1年、まだ治療法の見つかってない奇病....

この子を蝕んでる病は、やっぱり.....



スマホにいつものコードを打ち込み、あの人にコールする

....出た、今日は早かったね



もしもしパパ、元気?

あたし?あたしはもう絶好調だよ!


....なんだ、それも知ってるの?
でも、安心して。今のあたしには、アタシを支えてくれる仲間がいっぱいいるからさ!








......そうだね、ちょっと前のあたしなら、"仲間"なんて言葉出てこなかったと思う

人のコミュティからぽつんと放り出されたって、つまはじきにされたって平気だよーって振る舞って、自分勝手に生きたと思う
206 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/18(木) 21:48:34.10 ID:xdXSO0Np0
でもねパパ、多分あたし、昔からずっと、今みたいに一緒に笑える仲間が欲しったんだと思う


あの時はパパがいたから、学校で一人でいたって大丈夫だった。でも、日本に帰ってきた後LiPPSの皆に会えなかったら.....


あたしは今日、ここでいつもの様にご飯を食べて、いつもの様にお風呂に入って、いつもの様にベッドで寝る.....

そんな"いつも"すら、出来なくなっていたかもしれない



でも、それって結局ifの話だよね?



確かにどこかの世界には、そんな"あたし"もいたかもしれない

もしかしたら、あの時パパについていかず、ママと過ごして、ママを最後まで看取ることが出来た"あたし"もいたのかもしれない

逆に、日本に帰らず今でも大学のラボで研究に明け暮れてた"あたし"もいるかもしれない

......ギフテッドじゃなくて、何の肩書もない、普通の"一ノ瀬志希"として生まれた、幸せなあたしもいるかもしれない


でも、今ここで生きてる"あたし"は、そうじゃない

そんなifに繋がる選択肢を選ばずに、今のあたしに繋がる選択をしてきたあたしなんだ


そしてそれは、決して他の"あたし"より不幸な"あたし"じゃない

だって、あたしはあたしなりに正しいと思う選択をし続けてここまで来たから、どれだけ辛い目に合ったとしても、それと同じくらい....ううん、それ以上の幸福を手に入れられた


だから、今ここに居る"あたし"は、決して失敗作なんかじゃないと思うんだ
207 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/18(木) 21:50:12.84 ID:xdXSO0Np0
ギフテッドとして生まれたからこそ、出来たことがあった。パパについていったからこそ、学べたことがあった。アイドルになったからこそ、出会えた人達がいた

そうやって沢山のものから選び取ってきた運命は、決して間違ったものじゃないと思うんだ


そして、あたしが道を間違えずに済んだのは....どんな道を選んだとしても、いつだってあたしを支えてくれた誰かがいたから

独りぼっちだと思っていた時すら、あたしは自分じゃない誰かと一緒に歩いていたんだ


パパに、ママに、811プロの皆....

思い返してみれば、あたしの人生、一人だったときなんて一度もなかったよ


.....そうだね

あたし変わったよ、変われたんだよ



アイドルになって、仲間と一緒に沢山の事を経験して.....やっと、変われた

ずっと自分でつまらないと思ってような自分自身から、ようやく変われたんだ.....!





だから、今度はあたしも、"誰か"の歩みを支える"誰か"になりたい
208 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/18(木) 21:51:26.73 ID:xdXSO0Np0
ねぇパパ、あたし約束通り頂点取ってくるからさ、ご褒美っていうか.......パパにお願いしたいことがあるの


あたしが大学に使ってた頃のデスク、その一番下の引き出し、実は二重底になってるの

そこに、隠してある。あたしの最後の研究成果



....そう、お母さんの命を奪った、あの病気の特効薬の研究


だけどその研究、まだ未完成なんだ。どうしても最後のピースが見つからなかった

でも。パパならきっと、あたしが見つけられなかった最後のピース、見つけられるから



......どうしてもその薬が必要な子がいるんだ、教えてあげたいんだ、未来を諦めなくたっていいって

だから、お願い。あたしの最後の研究、パパの手で完成させて








.....ありがとう
じゃあ、待っててね








パパとママの希望が、世界で一番輝く日を!
209 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/18(木) 21:52:43.19 ID:xdXSO0Np0
ただいまー!


あれ?莉嘉まだ起きてたの?


お姉ちゃんが心配で寝つけなかった....?いやいや、だからってこんな時間まで起きてたら体調崩すよ?

....でも、ありがと!莉嘉が応援してくれるならあたし、いつまでも本気で走り続けられるよ!




....うん、確かに今、芸能界は大変なことになってる

莉嘉の言う通り、アイドルの世界を荒らす悪い人がいるんだ

811プロだけじゃない、色んな事務所がその人の悪意にさらされて、色んな人が苦しんでるんだ


でもね莉嘉、あんたもアイドルになりたいんなら、これは覚えておいて


アイドルってね、どんな逆境でも前を向いて笑ってやるもんなの

どんな時にも自分を応援してくれる人がいる、だから、その人まで一緒に落ち込ませないようにいつだって笑顔を見せてあげなきゃいけないの
210 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/18(木) 21:54:34.88 ID:xdXSO0Np0
.....そうだね、061の頃のあたしを見てきた莉嘉は、それも分かるよね

確かにどうしても、耐えられないくらいに辛いときはある。そんな時は、思い出すの


いつだって自分は一人じゃない、頼れる仲間がいるんだって事



あたしからしたら莉嘉やママとパパ、それに811プロの皆

応援してくれるファンの皆に、ステージを作り上げてくれるスタッフさん達、あたし達が歌う曲を作ってくれる作曲家さん達....


どんな凄いアイドルでも自分一人でステージに立つなんて事絶対なくて、いつだって誰かに支えられてるんだ


だから.....本当に辛いときは、誰かに頼ればいいの。辛い事は、一緒に背負ってもらえばいい

その代わり、助けてもらった分、自分がやれることを精一杯やって、今度は自分が助けてくれた人を支えるの


どんな人でも、『自分一人でも大丈夫』って強がることは出来る

でも、本当に一人で生きようとする人は、いつか必ず心が折れちゃう

そうなったら、自分を今まで支えてきてくれた人まで悲しませちゃうでしょ?


......昔のあたしが、そうなっちゃったように





でもね莉嘉、あたしにとってそれはもう、"もしかしたらあったかもしれない"ってだけのものなの
211 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/18(木) 21:57:14.28 ID:xdXSO0Np0
あたし、最近やっと気づいたんだ


案外人生ってさ、敵が多いって思った時こそ、それ以上の味方が助けに来てくれるものなんだよ


だからあたしはいつだって、自分を助けてくれた人に、胸を張って"ありがとう"って言えるようにしたい


その為に、いつだって自分が一番だって誇れるように生きるの

妥協なんてナシ!応援してくれる人達に応えられる様に、いつだって本気で生きぬいてやるの!



だから、あたし達は諦めない




莉嘉、あたし達一足先に、てっぺん取ってくるよ


だから....いつか必ず、追いついてきなさいっ★








.....ずっと、待ってるから!
212 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/18(木) 21:58:01.77 ID:xdXSO0Np0
もしもし....うん、元気だよー

今?今ちょっと残業中ー..........ううん、あたしがやりたいからやってるの

Pさんほっとくとすぐ無理するからさー、そりゃ大家さんも心配するよねー






....."やりたいから"、か

実家でぬくぬくしてたあの頃のあたしじゃ、絶対言わなかっただろうねー
213 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/18(木) 21:59:27.78 ID:xdXSO0Np0
不思議だよね

つい1年くらい前まで流れに流されるまま無気力にフラフラしてたあたしが、今本気でトップアイドル目指してんの


そうそう!最初は実家にいた時と一緒で流れに流された感じで初めてさー、ぶっちゃけた話、給料と寝床に釣られて始めたんだよねー

そんな感じで中途半端な覚悟で始めちゃったからさー、そのせいで、大きな壁にぶち当たった時もあったよ


あの時はPさんにもLiPPSの皆にも迷惑かけちゃったなー.....




でもね、あたしその時初めて、本気で悔しくて泣いたんだ

そうだよ、あのしゅーこちゃんがだよ!?

何事も適当に、なあなあで生きてきたしゅーこちゃんが、"悔しいから"って大泣きしたんだ!




....うん、やっと見つけたんよ

あたしが、本気でやりたいこと


誰かに流されて決めたんじゃない、あたし自身の意思でこの道を選んだんだ
214 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/18(木) 22:01:00.65 ID:xdXSO0Np0
こういっちゃ怒るかもしれないけどさ.....あたし、家出してよかったよ


あたしずっと、ゆらゆら流された方が楽、楽して生きた方が得って、ずっとそう思って、自分の心に蓋してた

もしあの時も流れを受け入れて、半端な気持ちでお見合いして、適当な気持ちで家継いでたら.....

それはそれで普通に生きてたんだろうけど、きっと、最後まで心に疑問を持ちながら生きてたと思う



自分は、何の為に生きてるのか....って




だからあたし、家出できてよかった

あの時、流されずに『好きでもない人と結婚するなんてイヤ!』ってワガママが言えて、本当に良かった.....


もしかしたらお父さんも、あたしが自分の気持ちを吐き出せるように、わざと無理やり迫ったんかな?

...まあ、そうだとしても言わないだろうね、あの人頑固だから♪




.....うん、分かってるよ。さっき手紙見たし

必ず勝って、みんなと一緒に、お土産たっぷりもって行くよ

なんだかんだ京都は、あの家は、あたしの大事な故郷だからさ


だから、見てて









『本気』でトップアイドル目指す、あたし達の生き様を!
215 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/18(木) 22:01:57.30 ID:xdXSO0Np0
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ベッドに潜り、目を閉じて追想する

プロデューサーさんに連れだされたあの日から歩んできた、アイドルとしての道





多くの出会いがあった、多くの研鑽を積んだ、多くの世界を知った

多くの苦しみを知った、多くの涙を流した、多くの悪意に触れた.....




でも、多くの人の笑顔があった

プロデューサーさんに光る舞台に連れだされて、アイドルとして多くの経験をしたからこそ見れた、とても暖かくなる笑顔ばかりだった





そして、アイドルになれたからこそ、得られたものが山ほどある。811プロのみんなと一緒だったからこそ、断ち切る事が出来た鎖がある



そして....この道を選んだからこそ、手に入れることができた明日がある
216 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/18(木) 22:03:00.06 ID:xdXSO0Np0
もしあの時、プロデューサーさんに会わなかったら


例えばあの時、告白されなかったら?

例えば、心の淀みを洗い流そうと海に行った日が、一日ずれていたとしたら?

例えば、あの日の天気が雨だったとしたら?

そもそも、海で黄昏ずにさっさと家に帰っていたら?

プロデューサーさんと鉢合わせても、声をかけてもらえなかったら?


もしもプロデューサーさんが、プロデューサーにならなかったら?





そんなifの可能性も、きっとどこかにあったんだろう
217 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/18(木) 22:03:50.17 ID:xdXSO0Np0
でも、プロデューサーさんはそんな多くの可能性の中から、私を連れ出す運命を選び取ってくれた





だから私は、プロデューサーさんがもたらしてくれたその幸運に報いたい

彼に、『復讐』(おんがえし)をしてあげたい




自らに降り注いだ過酷な運命にあらがって、私達のプロデューサーになってくれた

そんな彼に、私があげられる精一杯の幸福を


その為に私は、私達は......










必ず、トップアイドルになる
218 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/18(木) 22:04:44.72 ID:xdXSO0Np0
なあ、『..........』

俺たち遂に、こんなところまで来ちゃったよ




....今でも思うんだ、お前が生きていたらって

もしかしたら今あの夢の舞台に立っているのは、お前だったんじゃないかって





でも、そういう未来だったらきっと、俺はあの子達のプロデューサーになれなかったんだろうな

今でもおっちゃんの悪事を知らず、歌手やってたのかもしれない
219 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/18(木) 22:05:54.22 ID:xdXSO0Np0
だからと言って、お前が死んでよかったなんて微塵も思わない

今だって出来ることなら、時を戻してやり直したい。あの子達に出会えなくなっても、お前を助けたい




でも、思うんだ

俺、あの子達のプロデューサーになれて良かったって

お前が死んでからも、諦めないでよかったって



失ったものをどれだけ嘆いたって、時間は戻らない

だからこそ、選択を間違えてしまった未来でも、それを間違いにしないために足掻かなきゃいけないんだと、あの子達のおかげで知ることができたから



.....いろんな偶然が重なって、俺は最後まで投げ出さずにここまで来れたけど

きっと、俺も、あの子達も、ほとんど奇跡みたいな確率だったんだろうな


奇跡的な確率でプロデューサーになろうと思った俺がいて、奇跡的にアイドルになりたいと思ったあの子達がいて

そんな俺たちが、天文学的な確率で出会えたからこそ、ここまで来れたんだろう


もし何かが少しでも違ったら、きっと、こんな今は訪れなかったと思うんだ
220 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/18(木) 22:06:50.34 ID:xdXSO0Np0
なあ、『.......』、あの子達のステージは、空の上でも見えるか?


俺たち、お前の残した夢を背負って、お前と一緒に夢の舞台に行ってくるからさ








だからお前も、あの子達と、自分自身の夢が花咲くところを、空の上から見守っていてくれ.........
221 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/18(木) 22:08:09.39 ID:xdXSO0Np0
その後、決勝までの間私達は『アイドル』に全力で励み続けた


決勝に向けてのレッスンはもちろん、テレビや雑誌の仕事だって完全に無くなったわけじゃない

私達を信頼して仕事を回して、応援してくれる人達だっていた。プロデューサーさんも朝から晩まで駆けまわって、新しい仕事を取ってきてくれた


トレーナーさんの指導もこれ以上ないってくらいに厳しかったけど、でもとてつもない情熱と期待を込めて私達の魅力を磨き上げてくれた


確かに、一時は理不尽な悪意の暴風に膝を折りかけたけど、どんなに辛い状況でも、諦めず支えてくれた早苗さんとトレーナーさん、プロデューサーさん。そしてずっと応援し続けてくれたファンの皆に、何度もお互いを高め合ったライバル達.....

沢山の人達がエールを送り続けてくれたから、どんな逆境に苛まれようと、何度だって私達は立ち上がることができた


今まで出会った沢山の人に支えられて立ち上がる

映画だったらベタすぎる王道展開だけど、だからこそこれ以上ないってくらい燃えるじゃない?


例えたった一人しかいないとしても、自分を応援してくれる人の気持ちに答えたい....きっとそれが、アイドルにとって最も大事な気持ち

たったそれだけで、私達は何処にだって咲き誇れるんだから!




その思いを胸に私達は走り続け、そして............
222 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/18(木) 22:09:33.91 ID:xdXSO0Np0
〜〜〜IG決勝当日、811プロ事務所〜〜〜



奏「おはようみんな、私が最後かしら?」

P「ああ、これで全員そろったな.......お前ら、準備はいいか?」


『もちろん!!』


P「良い返事だ!じゃあ、行くぞ!」





夢、欲望、思惑、因縁......

数え切れない人の感情に満ち溢れた舞台がどんなエンディングを迎えるかは、誰にも分らない

ただ一つ、確かなことは......
223 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/18(木) 22:10:05.39 ID:xdXSO0Np0


"私達"は今日、全員でトップアイドルになる!!!!!













to be continued........
224 : ◆FuHrdA/9sY [saga sage]:2019/04/18(木) 22:15:47.29 ID:xdXSO0Np0
Chapter22が終了したところで今回はここまで―

ついに最終決戦とエンディングを残すのみとなりましたが、やっぱりクソ忙しい時期なので、次回更新はまた時間が開きます。

少なくとも日曜、運が悪ければ来週いっぱいの間本編の更新は出来ません


代わりに、pixivの方で今まで投下した話を読みやすいようにぱぱっと加筆修正したものを少しずつ投稿していきますので、時間があればそちらの方で今までの話を振り返ってみてください
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/19(金) 13:22:30.03 ID:updgVSaDO


>1さん頑張ってねぇん

「気持ち悪い」
「地獄へ落ちろ」

ひでぇ……はいいけど、渋のbョらいおせーてやん
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/22(月) 14:30:35.74 ID:xmzBKhC30
>>225
1です、応援ありがとうございます!

渋版のアドレスは
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=11024492
です

次回更新ですが、現在諸事情によりPCが使えない状況となっています
ですが火曜日の夜にはなんとか次の話を上げられる目処が経ったので、もうしばらくお待ちください
227 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 21:51:14.43 ID:Nh7ciJkR0
ナターリアと呟くだけで大量のスネークに囲まれるようになるなんて誰が予想しただろうか

Chapter23、投下していきます
228 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 21:51:50.37 ID:Nh7ciJkR0

Chapter23「Last stage curtain call」
229 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 21:53:01.28 ID:Nh7ciJkR0
決勝当日

開演の2時間ほど前に、私達は控室に入る



裏口からドームの中に入る時にちらと見えた入り口には、既に終わりの見えない行列が出来ていた

それだけこの国において、『アイドル』という存在は人々の心を動かし、夢を託される存在なのだろう









.....そう、今私達はProject,Queenと共に、何万人という人々の夢を背負っている

それをしっかりと理解した上で、改めて決意を固める



どっちのファンとかは関係ない

ここまで私達を応援しに来てくれた全ての人達の為に、無様な姿は絶対に見せない


思う事は、色々ある

それでも、私達は揺らがない。余計な雑念なんか、いらない







今日やる事はただ一つ






アイドルとして全力でファンを楽しませて、アイドルである自分自身を楽しんで

世界で一番楽しいセカイを作り上げる事!!!
230 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 21:54:32.62 ID:Nh7ciJkR0
ステージが始まるまでの間、私達はその時間をフルに使い、本番に向けて何度も確認と調整を重ねた

特にミーティングは、残された時間の半分以上をかけて入念に行われた




本番の予定を一つ一つ確認するたびに、私達は噛み締める

このライブが、とても大きな危険を秘めている事


今、私達は、少し足を滑らせば即座に奈落に落ちる、細い綱の上を歩いているという事



そして、同時に理解する

それでも尚、勝機はあると........













最終調整の時間が終わり、ステージへ向かう


その途中、あの男に出会った

そしてその傍らには、もう一人......
231 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 21:56:50.90 ID:Nh7ciJkR0
屋久井「やあ君たち、本当に来てしまったんだね」

美嘉「当然だよ、来ない理由なんてないじゃん」

奏「むしろ、貴方たちにとっては好都合なんじゃない?自分にとって邪魔な人間を、纏めて始末できるんだから」

屋久井「いやまぁ、棄権するならそれはそれで楽だったのだがね。確かに君のその顔を見ると、この手でぐちゃぐちゃにしてやりたくなってきたよ」

P「隣の方は....ああ、891プロのプロデューサーですか。初めましてで、いいんだよな?」

891P「そのはずですが、なにか?」

P「....いえ、別に」
232 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 21:58:20.06 ID:Nh7ciJkR0
屋久井「ところで君たち、このままライブが始まればどうなるか、予想はついているのかね?」

フレデリカ「ファンの皆がハッピーになる!!」

屋久井「......本気で言っているのかい?まあいい、ならせいぜい頑張ることだね」

屋久井「だがP君、君は本当にいいのかな?このままこいつらをステージに上げれば、君はまた私に大切な人を奪われるんだぞ?」

P「...........」


屋久井「それに私のの隣にいるこの男は、君の愛しの女を枕に売り出した張本人だ。その上、自分はトップアイドルユニットのプロデューサーとして、のうのうと生きてる。憎くないかい?」

891P「ちょっと社長、これでも私、業界一クリーンなプロデューサーとして活動しているんですから、あんまり人聞きの悪いこと言わないでくださいよ〜」

891P「まぁ、全部事実ですけども」

P「......................」



屋久井「私と彼が憎いだろう?殺してやりたいだろう?いいんだぞ一発くらい殴ってみても、ん〜?」
233 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 21:59:09.30 ID:Nh7ciJkR0
煽るように下卑た笑みをプロデューサーさんの前に差し出しされる

その顔を見たプロデューサーさんから、一瞬だけ冷たい殺気が漏れた








......でも、すぐに心底興味なさげな顔になって、冷たい視線でその笑みを見つめる
234 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 22:00:37.94 ID:Nh7ciJkR0
P「どーでもいいんで、話が済んだんならさっさとどいてくれます?俺たちステージに行かなきゃならないんで」

屋久井「どうでもいい....だと?」

P「そりゃああんたにも、そっちのプロデューサーにも、色々思うところはありますがね。それは今、ステージに持ちこむもんじゃない」

P「それに.......今は本当に、あんた達に興味を向けてる余裕はないんですよ。なぁ、お前ら?」

周子「そうやねー、あたし達これから、あの『Project,Queen』と一緒にライブするんだもん。それ以外のこと考える余裕、ないかなー」

志希「あたし達別にキミたちと戦うわけじゃないしー、正直なところ、キミたちにはぜんぜん興味わかないんだよねー」

P「そっちのプロデューサーさんも、こんな所で油売らず、自分の担当の所に行ってあげた方がいいんじゃないですか?」


P「.........それとも、彼女たちの所へ向かえない事情がある、とか?」

891P「....................」





屋久井「フン、まあ精々、無様な姿を見せないように頑張ることだね」

P「ご期待に沿えるよう、頑張らせていただきますよ。それじゃあ、また.....」
235 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 22:03:02.76 ID:Nh7ciJkR0
ドス黒い悪意を振り払い、プロデューサーさんはステージの方向へ歩いていく

私達も、その後に続いていく



今私達に見えているものは、ただ一つだけ



私達を待っている人達がいる、あの煌く夢の舞台.....

ただそれだけしか、見えていない
236 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 22:03:47.96 ID:Nh7ciJkR0
891P「思ったより落ち着いてましたね。それとも、プレッシャーのかかりすぎで、頭がおかしくなったんですかね?」

屋久井「さあね......まあ、なんでもいいさ。それよりも891P君、手筈は整っているな?」

891P「勿論です、準備は滞りなく完了しています.......」

屋久井「そうか、ならそのままよろしく頼むよ」






屋久井「811プロ.....望み通りこのIGを、貴様らの墓場にしてやろう!!」
237 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 22:05:30.68 ID:Nh7ciJkR0
  〜〜〜〜 一方、客席では 〜〜〜〜


早苗「おー!こりゃいい席ねー!」

ベテトレ「Pが運営にかけ合わせて、一番高い席のチケットを取ってくれたからな」

早苗「数万円するんだっけ?やっぱIGの決勝ともなると、値段も跳ね上がるのねー」

ベテトレ「だがその分、一番アイドルに近づける場所でもある。LiPPSの集大成を見届けるのには、これ以上ないくらいに相応しい場所だろう」

早苗「でも、皆大丈夫かしら?きっと891プロの妨害があるでしょう?」

ベテトレ「大丈夫だ、あの子達を信じて、見届けてやれ。ファンである私達が曇っていては、彼女達が思いっきり輝けないだろう?」

早苗「......そうね!お姉さん精一杯応援するわ!こう見えても昔、応援団長だってやったんだから!」

早苗「って、そんなこと言ってたら早速コイントスが始まるわよ!第一審査は先攻の方がいいのよね?」

ベテトレ「.....ああ、そうだ」

早苗「よしっ!先攻出ろ先攻出ろー!」

ベテトレ「.....................」





ピンッ!カラカラカラカラン........

  デンッ!!
『Project,Queen』




早苗「って、あぁ!先攻、取られちゃった......」


ベテトレ「いや、これでいいんだ」

早苗「えっ?」

ベテトレ「第一審査で先攻を取られるのは想定済みだ。大丈夫、彼女たちならきっと、上手くやってくれるさ」
238 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 22:07:43.46 ID:Nh7ciJkR0
P「"予定通り"、第一審査は後攻になったな。お前ら、作戦は頭に入ってるか?」

美嘉「もちろん!この日の為に毎日練習してきたからね★」

フレデリカ「それより、もうすぐProject,Queenのステージが始まるよ!みんなで応援しよー♪」

周子「せやねー♪こんな大きなお祭りなんだから、あたし達だって楽しまないとね!」









〜〜〜♪〜〜〜〜♪〜〜♪〜〜〜♪〜〜〜

フレー!フレー!

ミンナガンバッテー!

チョットフレチャン、シキチャン!ソレイジョウハチカヅキスギダッテ!



P(やはり、第一審査はリーダーのちとせを前に出してきたか。それにしても凄い存在感だ....まるでファンタジーのような容姿もそうだが、何よりもこの歌声.....)

P(脳と心臓に直接突き刺さって、身体が甘く溶かされていくような感覚がする....何十年に一度出るか出ないかの歌姫だ。やっぱおっちゃん、見る目はあるんだなぁ)





だからこそ、彼女達の抱いた夢に敬意を払って、全力で相手してやらないとな!!
239 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 22:09:44.92 ID:Nh7ciJkR0
ちとせ「あー.....ちょっと疲れちゃったわ」

千夜「お疲れさまですお嬢様。次の出番までしばらくありますので、今のうちにお休みください」

颯「ちとせちゃん凄かったよー!流石あたし達のリーダーだね!」

凪「トップバッターだったのもあると思いますが、観客の皆さん完全にメロメロになってましたよ。まさにちとせ無双」

颯「千歳ちゃんが頑張ってくれた分、第2審査はあたし達が繋いであげるからね!」

ちとせ「ごめんね?私あまり体力がないから....」

千夜「仕方ありません、お嬢様のそれは生まれつきの物ですから。それでも全力でステージで歌うそのお姿は、本当に立派でしたよ。隣に立つ私も、心が跳び跳ねるように沸き立ちました」

ちとせ「そっか。千夜ちゃんが喜んでくれたなら、私も嬉しいな」

ちとせ「....ところで、プロデューサーは?」

颯「スタッフさんと次の審査の演出の事話しに行くって。もう!折角ちとせちゃんが頑張ったのに、肝心なときにいないんだから!」


ちとせ(.....やっぱり、仕掛けに行くのね)




私の魔法、どうか、役に立ちますように......
240 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 22:10:43.16 ID:Nh7ciJkR0
第一審査後攻、LiPPSの曲が始まる

先攻のProject,Queenの魅力的なパフォーマンスによって、大きなプレッシャーを押し付けられたはずだったが、彼女達は全く動じることなく自分たちの魅力を100%......

いや、それ以上の輝きを放っていた





だが、それでもまだ、足りない


トップバッターを取られたのもあるが、単純にProject,Queenのポテンシャルが非常に高く、彼女たちが遺していったハードルも、それ相応に高いものになってしまったのだ

流石に、891プロが事務所の総力を挙げて押し上げてきたユニット......『女王』の名を冠するに相応しい貫禄だ


その事実を、悔しくも歯を食いしばって受け止めるしかなかったその時、事件は起きた



LiPPSが歌う曲を流していた音響が、ピタリと止まったのだ

もちろん、891プロが仕組んだものだろう


ステージは一瞬、静寂に包まれる

俺は目の前で起こったその悪意ある現実に.......
241 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 22:11:18.42 ID:Nh7ciJkR0
P(......よしっ、計画通り!!)


心の中で小さくガッツポーズを決めた
242 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 22:12:09.31 ID:Nh7ciJkR0
おっちゃん、確かにちとせちゃんはこの世に二つとない才能を持った歌姫だ

だけどな.........




『歌姫』は、こっちにだって飛びっきりのがいるんだよ!!
243 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 22:13:03.00 ID:Nh7ciJkR0
もしLiPPSの中で、『一番』歌が上手いのは誰かと聞かれれば

全員が間違いなく、彼女を指名するだろう



811プロが証明する最高の化学式、『歌姫 一ノ瀬志希』を!
244 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 22:13:48.35 ID:Nh7ciJkR0
あたしとパパの一番の繋がりって言ったら、まあケミカルだね〜

パパの教えてくれる化学式が楽しくって、パパの期待に応えたくって、パパと一緒に研究したくって

その為に色んな化学式を弄り回して、色んな反応を起こしてきたんだから





じゃあ、ママとの一番の繋がりは?


ちょっと前まで、ママを見捨てて海の向こうへ渡ったあたしに、そんなものは残されてないと思ってた


だけど、アイドルとして生きて、ようやく気付いた

あたしにはちゃんと、ママから受け継いだ物があったことを
245 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 22:14:19.56 ID:Nh7ciJkR0
(ママ、今日もあれ歌って〜)

(あらあら、志希は本当にあの歌が好きね)

(うん!ママが好きな歌だから!それに、ママが歌ってるのが大好きだから、あたしも歌うのが好き!)

(まあ!志希にそう言ってもらえると嬉しいわ!ママも志希の歌、大好きよ)

(ホント!?じゃあ一緒に歌おう!)

(もちろん!じゃあいくわよ?)






まいにちまいにち僕らは鉄板の〜〜.............................♪
246 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 22:15:16.25 ID:Nh7ciJkR0
志希「〜〜〜♪〜〜〜〜♪〜〜♪〜〜♪〜〜〜〜♪〜〜〜〜♪」


スーツ姿の観客「すげぇ、すげえよおい....」

清楚な観客「こんな綺麗な歌声が、この世にあるなんて.....」

志希フレ親衛隊1「志希さんのアカペラ、まじ最高っス.....!」

志希フレ親衛隊2「天使か?ヤバイ惚れそう....いやもう惚れてたわ、デビューの時から惚れてたわ」







屋久井(アカペラアレンジ、だと!?)


屋久井(どういう事だ!?音響が落ちるのを読んでいたという事か?一体何故!?)

屋久井(マズイ......音源が無くなって静かになったことで、逆に歌声を際立たせるための演出に利用されてしまっている!
247 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 22:16:11.92 ID:Nh7ciJkR0
屋久井「891P君!すぐに音源を戻すんだ!」

891P「は、はい!かしこまりました!」


屋久井(急に音源が戻れば、その分バランスを崩すはず.....これで終わりだ)


891P君に指示を出した数秒後、唐突に音源が復活する

これで奴のアカペラも崩れ....ッ!?





『〜〜〜♪〜〜♪〜〜〜〜♪』






音源が復旧したその瞬間、奴の崩れるはずだったアカペラは、突如入り込んできた残りのアイドル達に巻きとられ、より強く、盛り上がる歌声へと変貌した

そして、自らの失策に気づく


音源を復旧させたその瞬間こそ、曲の最後の盛り上がり

大サビに突入した、まさにその瞬間だったという事を......
248 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 22:17:14.17 ID:Nh7ciJkR0
おっちゃん、最近ずっと会って無かったから、すっかり忘れちまったみたいだな

昔のあんた、何年も俺と一緒に仕事してた頃のあんたなら、すぐに気付けただろうに


P「よりにもよってこの俺に、『歌』で勝負を仕掛けるなんて.......」





そんなの、余りにも相手が悪すぎるだろ?
249 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 22:18:01.47 ID:Nh7ciJkR0
    第一審査 結果

LiPPS      777543票(累計777543票)     

Project,Queen  819225票(累計819225票)





P「まっ、かっこつけても逆転までは出来ねぇか」

周子「やっぱトップバッターの補正もあるだろうけど......それを差し引いても、本当に凄いパフォーマンスだったよ」

奏「でも、志希のおかげでしっかり食らいつくことができたわ。お手柄ね、志希」

志希「プロデューサーが音響がない時に映える歌い方を仕込んでくれたおかげだよ。でも、ちとせちゃんがあの手紙を送ってくれなかったら、やばかったかもねー」

P「ああ、本当にあの子には感謝しかねぇよ.....」
250 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 22:19:36.35 ID:Nh7ciJkR0
〜〜〜 2週間前、事務所 〜〜〜



P「みんな、この手紙を見てほしい」

フレデリカ「綺麗な手紙だねー!ファンレター?」

P「うーん....ファンレターというわけじゃないと思うが、まあ俺たちのことを応援してくれてるみたいだな」

美嘉「どういう事?」

P「とにかく中身を見てくれ、その方が早い」



プロデューサーさんが机に広げた手紙を、皆が一斉にのぞき込む



奏「.......これって!」

P「彼女もIGの決勝っていう最高のステージを、汚い手で汚されたくないんだろう。そりゃそうだ、あの子だって『アイドル』なんだから」

P「きっと彼女は、自分を取り巻く困難に葛藤し続けて、それでも自分の信念を貫いて、この手紙を俺たちに託してくれたんだろうな」

奏「だったら、私達はその想いに応えないといけないわね」

P「ああ、だから今日のレッスンからは、この手紙の内容を鑑みてメニューを組んでいく」



P「見てろよおっちゃん......あんたの腐った妨害を、煌く宝石に変えてやるよ」
251 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 22:21:45.55 ID:Nh7ciJkR0
周子「プレゼントの仕分け中にあの手紙を見つけた時はびっくりしたねー、決勝でこんな事されるよって、妨害の内容がズラーっと書かれてたんだもん」

奏「だからこそ私達は、その妨害を逆に利用できるように練習を重ねることができた.....彼女の決意を無駄にしないためにも、必ずLIVEを成功させるわよ」


美嘉「手紙によると、次はあたし達が先攻なんだよね?」

P「そうだ。おそらくリーダーのちとせの体力を回復させたいんだろう、残りの3人が前に出てくるはずだ。だが、リーダーが後ろに下がっているからと言って油断は出来ない。むしろちとせの頑張りに報いる為に全力で来るだろうな」

P「だが、この隙に勝負を仕掛けに行かなきゃ俺たちに勝機はないだろう。折角の先攻だ、一気にプレッシャーをかけに行くぞ!」


美嘉「次の審査は照明が落とされるんだっけ?なんか覇王エンジェルズの時に比べて、あたし達への妨害ちょっと甘くない?あの時は音響も照明も一斉に落ちたし、物理的に怪我までさせたのに」

P「向こうとしても、ProjectQueenの最後のステージが終わるまでは、審査が中止になるほど大きな事はしたくないんだろう。折角IGで優勝しても、審査が途中で終わったってミソが付けば、その後芸能界の覇権を取るのに支障が出るかもしれないからな」

P「だが、覇王エンジェルズはあれだけの妨害を食らっても動じない精神力があった。だからこそ、無理やりにも初手で一気に潰しにかかる必要があったんだろう。半面、俺たちにはそうしてこないって事は.......ムカつくことに、舐められてんだろうな」


奏「舐められてる.....ふーん」

周子「へぇ.....成程ねぇ。じゃあその油断に付け込ませてもらおうよ」

P「ああ、一発かまして、俺たちを舐めた事後悔させてやれ。その為にもお前ら、ちゃんと例の物は用意できてるか?」

奏「ええ、ちゃんと5人分用意してあるわよ」

志希「あたしも、頼まれてた物はばっちり作ってきたよー」

フレデリカ「"秘策"も、ばっちり用意してあるもんね!準備万端だよー♪」


P「OK!じゃあ次の審査も楽しんでこい!!」
252 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 22:22:58.84 ID:Nh7ciJkR0
第一審査では予定を狂わされたが、次はこうはいかない

偶然なのか狙ってやったのかはわからないが、確かにあのアカペラアレンジには驚かされた



だが、照明が落とされることの対策までは考えているか?

仮に考えていたとしても、さっきの様にプラスに変えることは出来ないだろう。精々損をできるだけ軽減させるのが関の山だ



なぜなら、誰からも姿見えなくなれば、アイドルはその価値を失くすから

アイドルの魅力は歌そのものではなく、"歌う姿"にこそ存在するからだ

必然、その姿が見えなくなれば、魅力は崩壊する



それに、人間は本能的に暗闇を恐れる物

明るいステージが突如闇に覆われたら、ステージに立つ本人も、観客達も、少なからず動揺し、会場は恐怖の渦で満たされるだろう

あいつらにその恐怖を覆すことなんぞ、出来やしない



891P(これで、終わりだ.....!)



奴等の絶望を目に浮かべながら、照明機器のコードを断つ

まるで、ギロチンを支える糸を切断する、処刑人のような感覚だった
253 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 22:23:27.76 ID:Nh7ciJkR0
だが、ただ一つだけ誤算があったとすれば

処刑台に捧げられていた首が、自分の物であったことだ
254 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 22:25:54.44 ID:Nh7ciJkR0
一瞬しか光ることのない花火が美しいのは、暗い夜に撃ち上げるから


周りに光がないからこそ、その一瞬の輝きが、より一層美しく映えるようになる

だから、今ここにある闇に包まれた世界こそ、私達の花火を撃ち上げるに相応しい舞台でしょう?



照明が落ちるのと同時に、私達は胸に潜ませた秘策を投げ上げる

投げ上げた物が最高点へと到達すると、それは鮮やかな色の煙を噴きだした





観客1「なんだ、あの鮮やかな色の煙は?」

観客2「綺麗.....それに、いい匂い.....」




流石に火薬を使うことは出来ないけれど、撃ちあがった志希特性の『香り付き煙玉』は、本物の花火より輝いて見えた


突然訪れた暗闇に動揺していた観客の目が、再び私達に集まる

そのチャンスを見逃さず、私達は二つ目の秘策、ペンライトを取り出した


虚空に向かって、光のサインを描く





姿が見えなくなって、不安に苛まれているファンの皆に証明するの

私達は、ここに居るって!!
255 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 22:26:34.08 ID:Nh7ciJkR0
891P(.....だが、足りないっ!!)





891P(確かに暗闇への対策はしてきたみたいだが、詰めが甘い!それじゃまだ足りないんだよ!)

891P(煙もペンライトも、誤魔化せるのは一瞬だけ!照明が戻らない以上、次第にまた"見えない事"の不安に取り込まれていく!少し驚かされたが、やはりここが奴等の最後......ッ!?)
256 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 22:27:50.08 ID:Nh7ciJkR0
二つの秘策をもってしても、この暗闇を完全に覆すことは出来ないでしょう

そんなの当然、分かってる



だからこそ、私達はもう一つ、絶対的な秘策を用意した

その秘策は、私たちでは.......いえ、きっとどんなに凄いアイドルだって実行できないでしょう









ただ一人、彼女を除いて





たとえ世界がどれ程の暗闇に覆われようとも、彼女のその笑顔は、『みんながハッピーでいられるように』と願う純粋な心は、揺らがない



いつだって太陽は、彼女の中にある!
257 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 22:28:48.14 ID:Nh7ciJkR0
どんなん時もアタシは、たくさんの太陽に照らされていた

ママやパパに、811プロのみんなに、ファンのみんな.....

アタシと出会ってくれた人達の笑顔が、アタシを照らし続けてくれた




だからアタシも、恩返ししよう!

みんなが照らしてくれて、ぐんぐん成長して、こんなに大きくなれたから

今度はアタシが、みんなを照らす太陽になるんだ!
258 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 22:29:31.93 ID:Nh7ciJkR0
フレデリカ「みんなー!大丈夫、アタシ達はここにいるよー♪」

フレデリカ「でもでも〜、こんなに真っ暗だとみんなげんなりしちゃうよね〜?そんな時は、隣の人と手を握ってみて!あったかくて、不安なんてぜーんぶ吹っ飛んじゃうよ!」

フレデリカ「みんなで手を繋いで、一緒に歌って踊ってはしゃいじゃおう♪きっと楽しいよ!」




彼女の声が、観客の心を照らしていく

照らされた心達が、手を取り合い繋がっていく




フレデリカ「じゃあいくよー?フンフンフフーン、フレデリカー!」

『フンフンフフーン、フレデリカー!!!』


何万人の人々の心が、今一つに繋がっていた





目に見えなくても、きっと彼らの瞳には映っているのだろう

太陽のように眩しい、フレデリカのとびきりの笑顔が!
259 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 22:30:22.70 ID:Nh7ciJkR0
颯「フンフンフフーン、フレデリカ―!」

凪「はーフン、洗脳フンされてフーンますねデリカ」

千夜「お前の方が重傷の様ですが」


颯「でも、これちょっとまずくない?観客の皆の心、大分持ってかれちゃってるよ?てか、はー達もなんだけどさ」

凪「照明のアクシデントと見せかけて、実は派手な演出を仕掛ける布石だったとは、人ができない事を平然とやってくれますね。そこに痺れたり憧れたりします」

ちとせ「..................」

千夜「仕方ありません。私達が全力で、あれより上の刺激を観客に与えてやるしかないでしょう。お嬢様の為にも、私達3人で.....」





ちとせ「いえ、私も前に出るわ」
260 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 22:31:16.62 ID:Nh7ciJkR0
千夜「お嬢様!?」

颯「ダメだよ!ちとせちゃんまだ第1審査の疲れが残ってるんでしょ?あんまり無理したら、また貧血で倒れちゃうよ!?」

ちとせ「それでも、やらなきゃいけないわ。LiPPSには、私達全員で立ち向かわなきゃ勝てない。一人も欠けることなく、全員でね」

ちとせ「それに....この最高の舞台で自分の限界を超えられなきゃ、トップアイドルになんてきっとなれないわ」



千夜「.....本気の様ですね、お嬢様」

ちとせ「ええ、だからみんな、お願い」

千夜「....それがお嬢様の望みならば、承ります」

颯「千夜ちゃん!?」







千夜「.......と、いつもの私なら、そう言うのでしょうね」
261 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 22:32:22.55 ID:Nh7ciJkR0
ちとせ「えっ?」


千夜「お嬢様、今回ばかりは非礼をお許しください。第2審査は、私とはーとなーがメインでやらせてもらいます。お嬢様は、なるべく体力を温存してください」

ちとせ「でも、手を抜いて勝てる相手じゃないわよ?」

千夜「手を抜くのではありません。勝つために全員が最善を尽くすのです。LiPPSに勝つために、最後の審査でお嬢様が全力を出せるよう、私達が支えるのですよ」

千夜「それに、もう私達はお嬢様に心配されなければならない程弱いアイドルではありません。どうか私達を、信頼していただけないでしょうか?」

颯「そうだよ!はー達だってやればできるんだから、もっとはー達を頼ってよ!」

凪「凪もはーちゃんと同じ気持ちです、双子ですので。シンクロ召喚ですね」

ちとせ「....分かった、みんなを信じるよ」

千夜「ありがとうございます、お嬢様」
262 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 22:36:00.52 ID:Nh7ciJkR0
ちとせ「それにしても、千夜ちゃんも変わったね。私の意見に反発するなんて、今まで無かったのに」

千夜「.....申し訳ありません」

ちとせ「違うよ千夜ちゃん、私今すっごく嬉しいの」

千夜「えっ?」


ちとせ「ちゃんと千夜ちゃんが、私以外の生きがいを見つけてくれたこと。アイドル、楽しいんでしょう?」

千夜「そんな、私はお嬢様の望みを叶えたいから........いえ、お嬢様のおっしゃる通りかもしれません

千夜「確かに今は、私自身がアイドルを楽しんでいるから、ここに立っている。そんな気がします」


ちとせ「そっか....ねぇ、千夜ちゃん。私今すっごく幸せなの。なんでか分かる?」

千夜「?.....一体、何故ですか?」

ちとせ「ずっと想い続けていた願いが、一つ叶ったからだよ」

ちとせ「だから、この審査が終わったら、幸せ次いでにもう一つみんなに話したいことがあるんだけど、いいかな?」
263 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 22:36:30.18 ID:Nh7ciJkR0
颯「いいよー!」凪「ペネ(良し)」千夜「もちろんです」
264 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 22:38:19.57 ID:Nh7ciJkR0
ちとせ「あら、みんな即答?」

颯「だって、ちとせちゃんが話したいことがあるなんて、すっごく珍しいじゃん!」

颯「それに.....なんかすっごく大事な話の様な気がするから、聞かないと後悔しそうだし」

千夜「何年も一緒にいるのですから、分かりますよ.........ですが、今は」

ちとせ「ええ、今はステージに立って、皆を魅了してくるのが先決ね。それじゃあ、行くわよ!」




私達『Project,Queen』全員で、会場の皆を虜にしてしまいましょう♪
265 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 22:42:21.56 ID:Nh7ciJkR0
    第二審査 結果

LiPPS      835678票(累計1613221票)     

Project,Queen  813443票(累計1632668票)




P「!?」


周子「よしっ!フレちゃんのおかげでリードを縮められたよ!この勢いで第3審査で.....」

P「いや、かなりマズイぞこれ.....」

周子「えっ?」

P「俺の見立てだと、この第2審査で逆転できる予想だった、いや、逆転できてないとダメなんだ!」

美嘉「逆転できないとダメ?」

P「第3審査のPrjectQueenは後攻.....大トリだ。当然、その分観客に与える印象は非常に強くなる。だからこそ、リーダーのちとせちゃんが体力を温存したこの第2審査でリードを取らなきゃいけなかったのに........」

志希「さっきの審査で前に出てた3人、すっごい集中力だったからねー」

フレデリカ「きっと、ちとせちゃんの為に、すっごく頑張ったんだろうねー♪」

P「そりゃあ、あの3人が全力を出してくることは想定していたが、それでも逆転できる予想だった。つまり、この土壇場であの子達はまた一つ進化したって事か!やっぱり、一筋縄じゃ行かねぇか」

P「厳しい状況になってしまったが、やるしかない。最後の秘策は残ってるし、どうにか先攻で一気に観客の心を持ってくしか......」
266 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 22:43:38.21 ID:Nh7ciJkR0
奏「待って!みんな、モニターを見て」

P「えっ?」





会場の巨大なモニターが、IG最後のコイントスを映し出す

そこに映し出されたコインは、『Project,Queen』の面を上にして止まっていた

それは同時に、私達『LiPPS』が後攻.....大トリを務める事になったことを告げる、福音でもあった
267 : ◆FuHrdA/9sY [saga]:2019/04/23(火) 22:44:15.03 ID:Nh7ciJkR0
P「俺たちが後攻だと!?大トリはProjectQueenになるよう細工がされてたんじゃ!?」

奏「理由は分からない.......でも、これだけは確かよ」





勝機はまだ、十二分に残ってる

きっとこれが、ハッピーエンドを掴むための、最後のチャンスよ!!






to be continued.........
268 : ◆FuHrdA/9sY [saga sage]:2019/04/23(火) 22:45:28.81 ID:Nh7ciJkR0
Chapter23終了したところで、今回はここまで―

次回、決着


更新は次の日曜以降になります
269 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/23(火) 23:41:10.29 ID:5x0YJ+TDO
うわーん、いいとこで終わらすない


とりあえず乙。そして由愛かわいいよ由愛
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