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【安価】ガイアメモリ犯罪に立ち向かえ【仮面ライダーW】
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2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/07/07(日) 21:30:01.70 ID:V+T4nCQT0
ぼうっとしていたせいで、気が付いたらハンドルを回しても何も出なくなっていた。下の玉受けは当然空。彼は舌打ちをすると、椅子から立ち上がった。
パチンコ屋を出ると、外はもう夜だった。とぼとぼ歩く彼の背中が、人気の無い通りに差し掛かった所で、不意に後ろから声がした。
「ねえねえ、お兄さん」
「あ…?」
振り返ると、如何にもヤンクめいた服装の若い男と女。男の方が、ニヤニヤしながら話しかけてくる。
「お兄さん、世の中が気に食わないって顔してるね」
「ンだと…?」
「ね、良いものあげる」
女の方が、ポケットの中から何やら四角い小箱のようなものを取り出し、彼に握らせた。
「これは…USBメモリ…?」
掌の上の、記憶媒体めいた箱には、甲殻類めいた意匠でアルファベットの『A』が書かれている。ボタンを押すと、唸るような声で『アノマロカリス』と音がした。
「これを使えば、君は人間を超えた存在になれる。それこそ…」
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/07/07(日) 21:30:50.22 ID:V+T4nCQT0
「…お前らか」
彼は、ぽつりと呟いた。
「え?」
「お前らが、この街をめちゃくちゃにした犯人か!!」
彼は叫ぶと、メモリを地面に叩きつけた。そして、男の胸ぐらを掴んだ。
「お前らが! この街を!」
「や、やべっ、こいつイかれてる」
「イかれてるだと? それはこっちの…」
「…仕方ない」
突然、男がニヤリと嗤った。上着の内ポケットに手を入れると、また別のメモリを取り出し、彼の目の前に掲げた。
触覚と顎を広げた、獰猛な雀蜂の頭部を象った『H』の文字。
『ホーネット』
「仕方ないから、正当防衛させてもらうね」
そう言うと男は、左手首にメモリを突き刺した。女も同じメモリを取り出し、手首に刺す。
メモリは体に吸い込まれ、二人の体は見る見る内に、蜂と人間を混ぜたような姿へと変貌していった。
「うわ、わっ…」
逃げ出す彼を、二体の蜂人間は飛んで追いかける。そう、文字通り『飛んで』だ。
忽ち彼は、路地の行き止まりに追い詰められた。
「じゃあ、死んでもらおう…」
「嫌だ、やめろ…やめろぉーっ!」
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/07/07(日) 21:31:19.72 ID:V+T4nCQT0
___これが彼の、ビギンズナイト。
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/07/07(日) 21:31:48.21 ID:V+T4nCQT0
↓1 主人公の名前
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/07/07(日) 21:36:57.18 ID:QO9M6ln+O
力野 徹(ちからの とおる)
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/07/07(日) 21:39:34.73 ID:V+T4nCQT0
「…?」
恐る恐る目を開けると、そこには徹に背を向けた、白いスーツ姿の人間が立っていた。その足元には、蜂人間たちがどちらも倒れている。
「あ、あんたは…」
「まだメモリブレイクに至っていません」
徹に背を向けたまま告げる、白スーツの人物。それはくるりと彼の方を向くと、何か二つの物体を投げて寄越した。
月明かりに照らされた顔は、意外にも若い女のそれだった。
「これは…」
「変身してください」
「はぁっ!? へ、変身って」
「ドライバーを腰に当てて」
「えっ? えっと…ドライバー…って、これか…?」
渡された片方の物体。赤と銀の機械を腰に当てると、黒いベルトが伸びて巻き付いた。
「ガイアメモリをドライバーに装填して」
「!」
渡されたもう一つの物体。今しがた見たものに比べると随分スマートな見た目をしているが、確かにそれは目の前で人間を怪物たらしめた、恐るべきメモリであった。
しかし、今は命の危機である。彼はメモリを掲げると、ボタンを押した。
↓1〜3でコンマ最大 徹が変身するメモリの名前
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/07/07(日) 21:45:24.74 ID:0ghhCWXXO
マリン
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/07/07(日) 21:55:43.93 ID:zn4rlL60O
ファンタジー
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/07/07(日) 21:56:57.45 ID:8/rTja3t0
ウォーク
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/07/07(日) 22:04:04.55 ID:V+T4nCQT0
『ファンタジー』
「ファンタジー…って、えっ?」
「急いだ方がよろしいかと」
女に急かされて、徹は慌ててドライバーにメモリを差し込んだ。見ると、地面に伸びていた蜂人間たちがもぞもぞと動き出している。
「メモリを右に傾けて」
言われるがまま、メモリを挿入したソケットを右に傾けた。
『ファンタジー!』
メモリの声。ドライバーの前に、万年筆と罫線を合わせたような『F』の文字が浮かび上がり…
『…うわっ、何だこれ!』
彼の姿は、お伽噺に出てくるような騎士の姿に変わっていたのであった。
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/07/07(日) 22:13:57.37 ID:V+T4nCQT0
「…テメェ…まさか、『仮面ライダー』だったなんて」
『仮面ライダー?』
立ち上がって毒づく蜂人間に、徹は思わず聞き返した。
仮面ライダーの噂は、彼も耳にしている。風都の危機に颯爽と現れ、人々を救うヒーロー。だが、所詮は風都限定の存在だと、全くアテにしていなかった。それが、まさか自分が…
「どうでもいい、死ねよぉ!」
『! おりゃあ!』
片方の攻撃を躱し、お返しに蹴りを叩き込む。怯んだ相手に代わって、もう片方の蜂人間が襲ってきた。
「でもあんた、成り立てじゃん。あたしたちとは年季が違うわよ!」
『ふっ、やっ…わっ!?』
棘の生えた腕が顔を掠める。
『そっ、そう言えばそうだよ! 俺、格闘技の心得とか何にもねえんだけど!?』
いつの間にか後ろに下がり、傍観を決め込んでいる白スーツの女に、徹は叫んだ。
「心配いりません」
女が、一歩前に踏み出す。
↓1
@貴方には素質があります(高適合度確定)
Aこちらも用意しました(武器供与)
B僭越ながら、私も手伝います(メモリポチー)
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2019/07/07(日) 22:17:01.23 ID:ioeI2rkp0
1
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/07/07(日) 22:28:59.42 ID:V+T4nCQT0
「貴方には素質があります」
『素質って…っ!?』
彼女の言葉に触発されるように、徹の体が突如、光に包まれた。
光が収まった時、彼の体は、騎士の甲冑の上から更に、純白のマントを纏っていた。それだけでなく
『力が、みなぎる…それに、戦い方が分かってきた気がする…!』
「はっ、ほざくんじゃないよ!」
殴りかかる蜂人間。が
「なっ!?」
その拳を軽く受け止めると、徹は右手を差し上げ、人差し指を突き出した。その手をくるくると動かし、空中に何かを描いていく。
「何を…」
『生憎、こちとら書くのが仕事なんでね!』
宙に描かれたのは、一本の長剣。完成した瞬間、何とそれは実体化し、徹の手に収まった。
更に彼はドライバーからメモリを抜き、腰のスロットに差し込んだ。
『ファンタジー! マキシマムドライブ』
『ファンタジー・イマジナリソード!!』
「っ…ぐあああっ!!?」
白い光を纏った剣に、蜂人間が斬り倒された。
「ひっ、た、助けて…うわああああっ!!」
『逃がすか!』
更に、飛んで逃げようとする片割れも斬り捨てる。
二体の蜂人間は地面に転がると、元の人間の姿に戻った。その体から、先程刺したガイアメモリが抜け落ち…砕け散った。
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/07/07(日) 22:30:40.38 ID:V+T4nCQT0
今日はここまで
最後に、このスレの注意事項をば
・安価は控えめ
・戦闘は自動
・エログロあり
・オリキャスは基本出てこない
・エターナる可能性
16 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/07(日) 22:42:46.77 ID:V+T4nCQT0
『仮面ライダーファンタジー』
『空想』の記憶を内包するガイアメモリで、フリーライターの力野徹が変身した姿。基本形態は西洋の騎士のような姿をしているが、変身者のイメージ次第で魔術師や、はたまた魔物のような姿にもなれる。
想像し描いたものを実体化するという、極めて汎用性の高い能力を持っているが、その出力は変身者の想像力に直結しているため、想像力豊かな人間でないとメモリの力を十分に引き出せない。
『仮面ライダーファンタジー アイデアル』
ファンタジーメモリとの適合率が一定の水準を超えた時になれる姿。外見上は西洋甲冑の上から白いマントを纏った姿となる。
『空想』を超越し『理想』を実現する力を持っており、変身者の想像力と表現力の許す限りの理想を具現化できる。早い話がチート。
ただし理想とは言ってもあくまで自分で使う力のことであり、具現化したものを自分で振るわなければ意味がない。例えば、『当たると死ぬ剣』を具現化することはできるが、それを当てるのは変身者の腕前次第。また、幹部ドーパントやCJXなどのような単純に格上の相手には効果も限定的。
17 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/07/07(日) 22:54:46.68 ID:+fMZeTreo
わくわく
18 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/08(月) 17:27:29.15 ID:n5WyQcGO0
「力野徹。28歳。職業はフリーター」
「フリーライターだっ!」
徹の住むぼろアパートの一室にて。ちゃぶ台の前に正座して、女はつらつらと言った。
「貴方の記事は、実際よく書けていました」
そう言うと女は、大判の封筒をちゃぶ台の上に置いた。ついさっき、編集長から突き返された、徹の書いた原稿である。
「最近、北風町で連続している怪奇現象を、風都で以前頻発していた事件と関連付け、同一のテロ集団によるものとした。そして、疑わしい組織として最近興った『母神教』を挙げた」
「…間違ってるかよ」
「大筋は間違いありません。ですが、結論が違う。背後に組織はあるかもしれませんが、これは単独犯による行為であり、使用されたのも爆弾や化学兵器などではなく」
「ガイアメモリ、か」
徹は、先程手渡された『ファンタジー』のメモリを手に取った。
女が頷く。
「貴方も目にしたでしょう。このメモリを使用した人間は、怪物へと変化する。これを『ドーパント』と呼びます」
「ドーパント…じゃあ、さっき俺がなったのも」
「本質的には同じです。ですが、ドライバーを介して使用しているため、メモリの副作用は限りなくゼロに近くなっています。実際、有害事象や凶暴性の発露も見られていない」
「副作用もあるのか…」
「ガイアメモリは、かつてとある組織が製造し、麻薬や覚醒剤のように秘密裏に売買していました。その組織は何年も前に壊滅し、残党も粗方殲滅されましたが、一部がこの町に流れ着いたと思われます」
「じゃあ、そいつらがメモリをばらまいて」
「そうなります」
19 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/08(月) 17:28:06.57 ID:n5WyQcGO0
「大変だ!」
徹は勢い込むと、愛用のノートパソコンを立ち上げた。
「今すぐ記事にしないと…町の人達に、本当のことを知らせないと」
「それは認めません」
女が、パソコンを無理やり閉じた。
「ガイアメモリの存在は、一般人には秘匿されています。…そもそも、貴方の書いた記事を却下するよう、圧力を掛けたのは私達です」
「何だと!?」
徹は立ち上がり、女の纏う白スーツの胸ぐらを掴んだ。
「何でそんなことを…」
「だから、ガイアメモリの存在は秘密事項だからです。何より」
女は、感情の籠もらない目で、じっと徹を見た。目だけではない。声も、口調も、あらゆる行いにおいて、女からは感情らしきものが感じられなかった。
「知らせてどうなりますか。無力な一般人に知らせた所で、いたずらに混乱を招くだけです」
「それでも、人には真実を知る権利が」
20 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/08(月) 17:28:34.31 ID:n5WyQcGO0
「___戯言を」
21 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/08(月) 17:29:14.62 ID:n5WyQcGO0
「!?」
突然、女がぞっとするほど冷たい声で言った。竦み上がる徹。しかし、次に口を開くときには、もう元の平坦な口調に戻っていた。
「貴方の書いた記事は、筋は良いですがあくまで結果論です。根本にあるのは、風都への怨恨、嫉妬、被害者意識に他ならない。現にこの街はガイアメモリに汚染されています。それは、ガイアメモリの誘惑に負けた人間が数多くいるということ。貴方の憎む風都と、何ら変わりは無い」
「…」
「貴方に限った話ではありませんが…人は見たいものだけを信じ、見たくないものに目を瞑る。自分にとって都合のいいことだけを真実と嘯き、人々に流布して省みない。ジャーナリストを名乗る人種は、すべからくそういうものと認識しています」
「ふ、ふざけやがって…」
「現に」
女は徹の手を軽く払いのけると、ちゃぶ台の上のメモリを取り上げた。
『ファンタジー』
「このメモリと貴方との適合率は、低く見積もって91%前後。真実真実と五月蝿い貴方を選んだのは『空想』『妄想』のメモリです」
「…っ」
思わず、徹は拳を振り上げた。…が、歯ぎしりしながらそれを下ろした。代わりに、唸るように問うた。
「…お前は…お前は、何者なんだよ…さっきから、何でもかんでも知ってる風に…」
↓1〜3でコンマ最大 女の名前と外見的特徴
22 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/07/08(月) 17:39:53.84 ID:z2jKqOP90
イズミ
黒髪ロングに喪服のようなドレスといった黒ずくめ
巨乳
23 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/07/08(月) 17:42:30.19 ID:NXtS882CO
一ノ瀬 神楽(いちのせ かぐら)
黒髪ロングポニテ 黄金眼 メガネ
ボンキュッボン 黒ワイシャツに白衣
24 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/08(月) 17:45:35.84 ID:n5WyQcGO0
(白スーツは固定です)
安価下
25 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/07/08(月) 17:58:18.37 ID:NXtS882CO
くそぉ!安価下
26 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/07/08(月) 18:10:29.15 ID:z2jKqOP90
>>22
再投稿
イズミ
黒髪ロングで切れ長の美人系の顔立ち
スーツの上からでもわかる巨乳
革手袋を着用している。
27 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/08(月) 18:12:35.57 ID:n5WyQcGO0
(あと一つ待ちます)
(私服あたりに採用するかもしれない)
28 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/07/08(月) 18:31:11.69 ID:UkGkekGkO
リンカ
白スーツに金のネクタイ
スレンダーな体型
パッと見は男性にも見える中性的な麗人
29 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/08(月) 18:36:44.25 ID:n5WyQcGO0
「私? …ああ」
女は、今更思い出したように頷いた。その場で立ち上がり、恭しく頭を下げる。
タイトな白スーツに金色のネクタイを締め、黒い髪を撫で付けたその姿は、整った顔をしているものの、ぱっと見ただけでは男か女か分からない中性的なものであった。辛うじて、声で女と分かる。
頭を上げると、彼女は自己紹介した。
「申し遅れました。私、財団Xから参りました。リンカと申します」
30 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/08(月) 18:37:36.61 ID:n5WyQcGO0
ひとまずここまで
31 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/08(月) 22:37:55.10 ID:n5WyQcGO0
「…」
朝起きてからというもの、アルバイトの間も食事の時も、ずっとリンカの言葉を頭の中で繰り返していた。
曰く、財団Xなる組織はガイアメモリの開発に関わったらしい。しかし、今の事態は彼らにとって不本意なもので、どうにかして解決したい。ところが、彼らがガイアメモリと関わっていると知られてはならない。そこで、代理人として徹に白羽の矢が立った。この北風町を愛し、街の平和を乱す輩に誰よりも怒りを燃やす者として。
「ンなこと言われてもなぁ…」
ぼやきながら過ごしていると、もう日が暮れてしまった。大役を任された所で、腹は減るし光熱費はかさむ。昨日のゴタゴタで、冷蔵庫の中身を補充するのを忘れてしまった。今夜は外食しよう…
『ばそ風北』と書かれた暖簾をくぐると、湯気の向こうから馴染みの店主が挨拶してきた。
「やあ、徹ちゃん。久し振りだね」
「ああ。…いつもの」
「あいよ」
席に座って、カウンター越しに厨房を伺うと、店主が蕎麦を茹でるのが見える。風都は大きななるとの載ったラーメンが有名だが、北風町は蕎麦が有名だ。細く漉いた白ネギと、おろし生姜が決まりのトッピングで、ピリッとした刺激に根強いファンが多い。徹の大好物でもある。
出来上がるのを待っていると、隣に一人の男が座ってきた。
「…蕎麦大盛り、全部載せ」
「あいよ」
随分な大盤振る舞いだ。横目でちらりと覗くと、汚れた作業着を着た、建設現場の作業員風の男であった。
力仕事だから、腹も減るのだろう。そう思って自分の分を待っていると、何やらカタカタと音が聞こえてきた。カウンターが小さく揺れているのが、徹にも伝わってくる。
見ると、例の作業員が、指先でコツコツとカウンターを叩いていた。
「…兄さん、嫌なことでもあったかい」
「…」
男は応えない。代わりに、カウンターを叩くのが指から拳に変わった。他の客や店主までもが、何事かと心配そうに視線を向ける。
やがて、男が立ち上がった。
「…遅えんだよ!」
「悪いねあんちゃん、もう少し待ってて」
32 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/08(月) 22:38:50.31 ID:n5WyQcGO0
「俺はァ…」
店主の言葉を遮り、男は唸ると
「…腹がァ! 減ってんだァ!!」
作業着のポケットから、悪魔の小匣を取り出した。
『アペタイト』
「!?」
驚いたのは徹である。昨日の今日で、いきなりガイアメモリに遭遇するとは。見慣れぬ機械にきょとんとする他の者たちを差し置いて、彼は立ち上がり、男の腕を掴んだ。
「やめろ、そいつを捨てろ!」
「食わせろォォォ…!!」
男は徹の腕を振り払うと、大きく口を開け、メモリの端子を舌に刺した。
「ウオォォぉぉ……」
忽ち男は、巨大な口に手足の生えたような怪物へと変化した。
「きゃああっ!!?」
「ば、化物だあっ!」
客たちは一斉に店の外へと飛び出し、店主もカウンターの裏側に引っ込んだ。
「と、徹ちゃん!」
カウンターから少しだけ顔を出して、店主が呼びかける。
「あんたも逃げないと」
「うがっ、はぐっ、んぐっ」
怪物は、客が逃げた後の席を回っては、放置された食べ残しを貪っている。
徹は、店主に言った。
「おっちゃん、そこに隠れてな」
「な、何を…」
徹は、鞄からドライバーとメモリを取り出した。
33 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/08(月) 22:39:34.47 ID:n5WyQcGO0
「…おい、化物!」
「…?」
振り返る、アペタイトのドーパント。どこにあるのか分からない目で徹の姿を認めると、吠えた。
「おまァえェ! お前から喰ってやるゥ!」
「やれるもんなら…」
ドライバーを装着する。
「…やってみな!」
『ファンタジー』
「変身!」
『ファンタジー!』
「!? お前ェ…仮面ライダー…!」
『呼びたいように呼べよ。俺は…』
宙に長剣を描き、掴む。
『お前を、倒すだけだ! たあっ!』
「ぐっ…」
唇を斬りつけられて、アペタイトドーパントは店の外へと飛び出した。
「邪ァ魔ァ! あぁぁっ!」
『何っ!?』
猛スピードで伸びてきた舌に、剣を絡め取られた。ドーパントは剣を引き寄せると、そのまま飲み込んでしまった。
『意地汚えな、おい!』
今度は槍を描き、構える。しかし、突き出した瞬間にこれも食べられてしまった。
「全部、全部喰っちまうぞォ!」
『キリが無い…だったら』
マントを翻すと、彼の姿は西洋の騎士から、フード付きのローブに身を包んだ、魔術師めいた姿へと変化した。
「姿を変えた所で、何もかも喰っちまえば良いんだよォ!」
『へえ…じゃあ、こいつも喰ってみるか?』
そう言うとファンタジーは、右手を頭上に掲げた。その手の先に、火が灯った。火は見る見る内に大きくなり、バスケットボール程の大きさになった。
『喰らえ、ファイアーボールだ!』
「喰うぞ、喰う…うぐぅゥっ!?」
火の玉を呑み込んだドーパントは、口を押さえて苦しげに呻き出した。その体が、じわじわと炎に包まれていく。
『おかわり自由! どんどん喰え!』
更に、次々と火の玉を投げ込むファンタジー。ドーパントの体は、燃え盛る炎に包まれた。
ファンタジーは、メモリをスロットに差し込んだ。
『ファンタジー! マキシマムドライブ』
『ファンタジー・ミスティークエンド!!』
ドーパントの周りを、4つの魔法陣が囲む。次の瞬間、それぞれの魔法陣から、炎、氷塊、雷、そして岩石が飛び出して、ドーパントを襲った。
「ぐわあぁぁっ!!?」
四大元素による一斉攻撃に、遂にドーパントが倒れた。その姿が元の人間に戻り…口から吐き出したメモリが、ばらばらに砕けた。
34 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/08(月) 22:41:19.88 ID:n5WyQcGO0
『これでよし…と?』
変身を解除しようとして、気付く。
「そ、そこを動くな!」
いつの間にか、彼の周りは数台のパトカーと警官たちによって包囲されていた。
「北風署・超常犯罪捜査課、臨時課長の植木だ! おとなしく投降しなさい、さもなくば…」
『…』
ファンタジーは何も言わず、両手を上に挙げた。そして
「そ、そうだ! そのままじっと」
つま先で、地面に円を描いた。
次の瞬間、彼の体は地面に吸い込まれるように消えていった。
35 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/08(月) 22:55:23.21 ID:n5WyQcGO0
…
「はぁ…」
溜め息を吐きながら、家のドアを開ける。
結局あの騒ぎで、晩飯を食べ損ねた。おまけにドーパントとの戦いで余計に体力を消耗してしまった。このままでは、腹が減って死にそうだ…
「ただいま…」
玄関を開けると、芳しい匂いが漂ってくる。ああ、空腹のあまり食べ物の幻覚まで出てきた。匂いだけでなく、ちゃぶ台の上にはご飯や味噌汁、更には唐揚げや海老フライの幻覚まで見える。ついでにエプロンを着た女の幻覚も…
「おかえりなさい」
「…っっっ!!??」
いや、幻覚じゃない。ちゃぶ台の上には確かに料理が並んでいるし、匂いも本物だ。そして、向こう側に座っているのは
「リンカ!? 昨日、帰ったんじゃ」
「荷物を取りに帰っていました。具体的には、ここで生活するための物資を」
白スーツの上からエプロンを着て、きちんと正座するリンカ。
「ここでって…う、嘘だろ? 何でお前がここに住む必要があるんだよ!?」
「貴方を全面的に支援すると申し上げた通りです。貴方の場合、金銭の供与だと、賭博や無駄な外食に消費されることは調査の結果分かっています。従って、現物給付の形で支援することにいたしました」
「げ、現物給付って、でも」
「ご心配なく」
相変わらず感情の無い声で、リンカは言った。
「貴方の生活の邪魔はいたしません。その上で貴方がドーパントとの戦いに専念できるよう、最大限のサポートをさせていただきます。…早速、夕食にしたいのですが、よろしいでしょうか」
「…」
反論しようとした瞬間、徹の腹が派手に鳴った。彼は黙って、ちゃぶ台の前に腰を下ろし、両掌を合わせた。
「…いただきます」
「はい、召し上がれ」
抑揚のない返事を聞き流すと、彼は熱々のご飯を口に入れたのであった。
36 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/08(月) 22:59:16.90 ID:n5WyQcGO0
『Kの覚醒/遅れてきたヒーロー』完
今夜はここまで
37 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/07/08(月) 23:02:41.52 ID:Fv+C7yta0
乙
38 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/08(月) 23:06:50.93 ID:n5WyQcGO0
『アペタイトドーパント』
『食欲』の記憶を内包するメモリで変身するドーパント。巨大な口に直接手足が生えているという、何とも頭の悪い外見をしている。巨大な口からは長い舌を伸ばし、何でも絡め取って食べてしまう。無機物でもお構いなしだが、炎や電気などは流石にダメージを受ける。
このメモリは一度使用すると、適合率や変身時いかんに関わらず、常に強い食欲に襲われるようになるという、たちの悪い代物。メモリの色は赤。大きく開けた唇と垂れた涎で『A』と書かれている。
39 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/09(火) 08:23:09.39 ID:jIWaQAeR0
薄暗い聖堂に、黄色いスーツを着た女が跪いている。彼女が向いている聖堂の上の方には、分厚い虹色のヴェールがかかっていて、その向こう側は窺い知れない。
「申し上げます。わたくしたちの育てたドーパントが、何者かに倒されました」
淡々と、女は続ける。
「その前にも、わたくしの配下の売人が2人、倒されています。街では、『仮面ライダー』が現れたとの噂も流れています」
”仮面ライダー…”
ヴェールの向こうから、エコーのかかったような女の声が聞こえてきた。
「はい。最近ようやく結成された、北風署の超常犯罪捜査課も、その存在の確保に乗り出しているようです」
”…”
ヴェールごしに聞こえてくる溜め息に、女は深々と頭を下げた。
「申し訳ありません、『お母様』」
”…気に病むことはありません”
「お母様…」
”あなたの子は母の子。子を守るのは、母の使命です。母が不甲斐ないばかりに、不要な心配をかけましたね”
「そんなこと」
”ですが、もう心配はいりませんよ。___ミヅキ”
「はぁ〜い」
気の抜けた返事と共に、ヴェールの向こうから一人の少女が姿を現した。白いロリータめいた服を着て、脱色したぼさぼさの髪をザンバラに伸ばしている。スーツの女が、密かに眉をひそめた。
”お話は先程の通りです。母の子たちを害するものを見つけ出し、懲らしめておしまいなさい”
「殺すの?」
”なりませんよ。仮面ライダーとて、母の子の一人…”
「お母様! なりません!」
”落ち着きなさい、愛しい娘。…捕らえて、母の前にお連れしなさい。母の愛を以て、生まれ変わらせて差し上げましょう”
40 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/09(火) 12:51:20.29 ID:jIWaQAeR0
「…うぅん」
カーテンの隙間から差し込む光に目を覚ますと、徹はベッドの上で伸びをした。
「…っ、あぁ…」
「おはようございます」
「うわぁっ!?」
ベッドの脇で直立不動のリンカが、徹に挨拶をした。
寝床は気にしなくて良いと言われたので、昨夜は彼女より先に寝た。起きたときにはこの有様なので、彼女がどこで寝ていたのか、徹には知りようがない。
「朝食の準備ができています」
「あ、ああ、どうも…」
目を擦りながら、徹はベッドから降りた。
「起きたは良いけど、今日はバイトも無いしな…」
「知っています」
コーヒーを啜りながらぼやく徹に、リンカはすげなく言う。
「ですから、調査には良い機会かと」
「だよなぁ…」
そもそも、週に3日はフリーにしてあるのは、本業の取材のためだ。今後はこの取材が、ガイアメモリ犯罪の調査に置き換わるということになるのだろう。
「そうは言っても、何から調べるかなぁ」
↓1 どうする?
@没にされた記事を読み返してみよう
A母神教について調べてみよう
B超常犯罪捜査課って何だ?
41 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage saga]:2019/07/09(火) 12:58:08.22 ID:poRP5fveO
3で
42 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2019/07/09(火) 12:58:39.59 ID:0zA+yrgF0
2
43 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/09(火) 13:27:27.32 ID:jIWaQAeR0
考えて、ふと昨日の警察官の言葉を思い出した。
「そう言えば昨日、警察が『超常犯罪捜査課』って言ってたな…あれは、何だったんだろう?」
「文字通り、超常現象を用いた犯罪に対処する部門、まあ、実質ガイアメモリ犯罪に対処するための警察の組織です」
「はあ? ガイアメモリの存在は秘密じゃないのかよ」
「一般人には、です。警察組織の一部にはガイアメモリの存在も認識されています」
「何じゃそりゃ…あ、でも、知ってるからって対処できるのかよ?」
この間の蜂人間や、大口の怪物を思い出す。あの腰の引けた警官に、あいつらと戦う力があるとは思えない。
「捜査の助けにはなるでしょう。ただ、最盛期と比べてガイアメモリ犯罪は大幅に減っていますので、その規模もかなり縮小されました。風都に設置されていた捜査本部も規模を縮小し、課長は現在育休中とのことです」
「いくきゅう…」
「以前は、その課長が仮面ライダーに変身し、ドーパントと戦っていました。ただし、その事実は他の警官には知らされていなかったようです」
「…」
徹は考えた。恐らく、超常犯罪捜査課なる組織は、戦力にはならないだろう。だが、調査力に関してはアテにしても良いかも知れない。この間の蜂人間がメモリをばら撒いているとしたら、その手の密売人が他にもいてもおかしくない。そいつらが徒党を組んでいるとしたら、徹一人(とリンカ)だけでは手が足りない。
徹は立ち上がった。
「取り敢えず…警察、行ってみるか」
44 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/09(火) 14:13:27.30 ID:jIWaQAeR0
応接間に入ってくるなり、その警察官は露骨に嫌そうな顔をした。
「あんた、どこの記者よ」
「フリーの記者をしています」
「はっ、フリーねえ…」
どかっとソファに腰を下ろすと、彼は投げつけるように名刺を渡した。名刺には、『北風署 超常犯罪捜査課 警部 植木忍助』と書かれている。徹も名刺を渡したが、ちらりと一瞥しただけでポケットに突っ込まれてしまった。
「で、あんたは?」
当然のように徹の隣に座るリンカに、植木は怪訝な目を向けた。
「フリーの記者Bです。お気になさらず」
「はぁ……で? 何が聞きたいの」
「ここ最近、北風町で連続している怪奇現象について、こちらで対応しているとお聞きしまして」
「対応なんて、そんな立派なもんじゃないよ」
植木は溜め息を吐いた。
「今抱えてるビル崩壊事件だって、手がかりの一つも掴めやしない。目撃者は『怪物がいた』って言うけど…」
「ほう、怪物が」
「…いや、おれも信じてなかったけどね。もう噂にもなっちゃってるし、この際だから言っちゃうけど…見たんだよ」
「見た?」
「怪物だよ。でっかい口のお化けが、通りで暴れてたんだ。おまけに、別の化物がやって来て、そいつをやっつけちまった」
「…」
徹は口を閉じた。後から来た方とは、もちろん徹の変身した仮面ライダーのことである。
「後から来た方には逃げられちまったが、口の方は捕まえた。だが、気を失ったきり全然目を覚まさない。証言も得られそうにない」
「ビル崩壊事件については、何か分かったことは?」
「あんたねえ、話聞いてた? 無いんだよ何も!」
植木はいらいらと机を叩いた。
「現場には化物がいました、だから何だよ! どっから来て、何がしたいのか、どうやってやっつけるのか…全然分からない! 署長からは、何遊んでんだって睨まれる始末だ」
「ですが、同様の事件は風都でも起きていたのでしょう? 風都署ではどうしていたんです?」
「風都とウチじゃ、上からの扱いが違うんだよ…」
悲しげに、彼は首を振った。
「知ってるか? 向こうの課長は、サッチョウから来たエリートだぜ? そのくらい上の気合入ってんだよ。それが、現場がお隣に来た途端だんまりだ。人は寄越さねえ、予算は渋る…」
「…」
嘆く植木に、徹は同情的な気持ちになった。何とか力になれないかと思った。
故に、彼は口を開いた。
「…私に、協力させてもらえませんか」
「はあ? フリーの記者に、何ができるってんだよ」
「私は…」
↓1
@超常現象についての情報を持っています
A仮面ライダーの知り合いです
B仮面ライダーです
45 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/07/09(火) 14:38:33.75 ID:Fr1qh+xGO
2
46 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/09(火) 14:59:05.14 ID:jIWaQAeR0
「私は…」
仮面ライダーだ、そう言おうとして、思いとどまる。まだだ。そこまで打ち明けるのは早すぎる。
「…昨日、警部が遭遇した怪人の片方…平たく言えば、仮面ライダーの知り合いです」
「はあぁ!?」
いよいよ植木の目つきが怪しくなった。徹は会話を打ち切られないよう、続けて言った。
「彼は用心深い性格で、私にも多くを語りませんが…それでも、この街を愛する存在であることに変わりありません。何より、昨日警部を驚かせてしまったことを、ひどく気にしていました」
「ちょっ、ちょっと待てよ!」
植木が止めに入る。
「そんな、あの、魔術師ヤロウと知り合いだなんて、そんな話信じられるわけないだろ!」
「そう思われるのも無理はありません。ですので、彼から伝え聞いた情報を…」
彼は慎重に、言葉を選びながら言った。
「吹流2丁目の路地で、二人の怪人と戦ったそうです。そこで怪人…ホーネットドーパントを倒し、メモリを破壊したと」
「!!」
植木の顔色が変わった。彼は数分の間、黙って徹を見ていたが、やがて震える声で言った。
「……ご、極秘情報だ。そいつらは」
「メモリの密売人、でしょう?」
「なんてこった…!」
植木は頭を抱え、天を仰いだ。
「ガイアメモリ、ドーパント…それだけじゃない、密売人の存在まで…もう、あんたに隠してもしょうがない」
彼は、視線を徹に戻した。その顔が、興奮気味に紅潮していた。
「…そうだ。二人はまだ警察病院に入院しているが、奴らから数本のメモリを回収した。だが、その扱い方が分からないんだ。解析しようにも、我々の知る科学からは外れているし、分解の仕方も分からない…」
「協力しましょう」
徹は、力強く言った。
「仮面ライダーは、強いですが孤独です。何より、ガイアメモリを街にばら撒く黒幕の存在がまだ見えていない。あなた方は、まだドーパントへの対処法を持っていませんが、優秀な刑事さんによる綿密な捜査が可能です。双方が協力し合えば、もう怖いものはない」
「し、しかし」
「私は、この街を愛しています。…警部もでしょう? ガイアメモリ犯罪の捜査が遅々として進まないことに、誰より不安と苛立ちを感じておられる」
「!」
「風都の陰で忘れられた、この北風町を愛する者同士…手を取り合う時です」
徹は、笑顔で頷いた。
47 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/09(火) 17:25:22.00 ID:jIWaQAeR0
「流石、ファンタジーメモリに選ばれただけのことはあります」
無感情でも分かるくらいに嫌味っぽく、リンカが言った。
「うるせえ。だが、得られたものはあっただろ」
「そうですね。ドーパントとの戦闘を引き受け、メモリブレイク後の犯罪者を引き渡すことを条件に、捜査情報の提供、資料の貸出を受けられるようになりました。何より」
「ああ」
テーブルの上に並べられた、3本のガイアメモリ。警察が密売人から押収した、売り物のメモリである。
ここは、北風署に近い喫茶店。寂れた店の、更に人気の少ない隅の席に、二人は陣取っていた。
「『アノマロカリス』『コックローチ』…これらは、需要が高かったためどの工場でも製造されていました。が」
3本目の、焦茶色のメモリ。跳躍するネコ科の肉食獣の姿は、アルファベットの『S』に見えなくもない。
「『サーバルキャット』のメモリは、そう出回っていないはずです。製造した工場も、限られているでしょう」
「製造元を叩けるわけだな」
徹は、メモリを封筒に入れて鞄に仕舞った。
「よし、このメモリはさっさと警察に返そう。こっちの手にある時に盗まれでもしたら、折角繋いだコネが台無しだ」
北風町の、とあるオフィスの男子トイレにて。小便器で用を足していたある会社員の男は、突然首筋に何か冷たいものが触れるのを感じた。
「だっ、誰だっ」
「おじさ〜ん…」
振り返って、ぎょっとする。
そこには、白いロリータドレスに身を包んだ、一人の少女が立っていた。
「…どこから入ってきた」
慌てて一物を仕舞い、チャックを締めながら男は問うた。少女は答えずに、聞き返した。
「もう、使わないの?」
「何を…っ!」
目元に隈の浮いた陰気な顔で、ニヤニヤと嗤う少女。男は、彼女の言葉の意味を察し、思わず叫んだ。
「も…もうたくさんだ! 私は、あの会社に復讐できれば良かったのに…それが、あんな取り返しのつかないことに…」
「え〜、勿体無い」
少女はずいと身を寄せると、慣れた手付きで彼のスーツの胸元をはだけた。
露わになった左の胸板には、四角い電子回路めいた文様が、くっきりと刻まれていた。
「ほら…コネクターも泣いてるよ。メモリが欲しい、欲しいよ〜って」
「ふざけるな!」
男は、少女を突き飛ばした。___突き飛ばそうとした。
「あははっ!」
少女はその場で跳躍すると、宙返りしてトイレの天井を蹴り、男に肩車するように着地した。そのまま両脚で彼の首を締め上げると、ドレスの胸元から一本のメモリを取り出した。
「これ…返すね。二度と、ゴミ箱に捨てたりしちゃダメだよ〜」
『アースクエイク』
「や、やめろ、怪物なんて、いやだ! …やめろぉぉぉっっ!!」
48 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/09(火) 19:32:57.09 ID:jIWaQAeR0
家に帰ろうとした時、徹の携帯が鳴った。
「もしもし?」
”力野さん、大変だ!”
「植木警部? どうかしましたか」
”北風駅前の、ビルが…”
「!!」
最後まで聞く前に、2人は見た。遥か向こうで、一棟のビルが、煙を上げて崩れ落ちていくのを。
「すぐ行き…行くよう、仮面ライダーに伝えます!」
”ああ。我々は町民の避難を指揮する”
電話を切ると、徹はドライバーとメモリを取り出した。
「しかし、遠いぞ…」
「問題ありません。貴方が想像すれば、移動手段も思いのままです」
「あ、そう言えばそうか。___変身!」ファンタジー!
『よし、だったら…』
ファンタジーは、路上に放置されていた自転車に跨ると、人差し指でハンドルをなぞった。
自転車が光に包まれ……やがて、白と銀の大型バイクへと変貌した。
『仮面ライダーなら、やっぱりバイクが無いとな! リンカ、先に家に帰っててくれ』
「はい」
『行ってくる!』
ファンタジーはアクセルを吹かし、バイクを走らせた。
49 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/09(火) 22:07:16.46 ID:jIWaQAeR0
「きゃあぁぁっ!」
「た、助けてくれえっ!」
「はい車は入って来ないで! 皆さん、こちらに避難してください!」
数台のパトカーが道路を封鎖し、ビルから避難してきた人々の逃げ道を確保している。パトカーの窓から身を乗り出し、崩れ行くビルを睨んでいた植木の前を、銀色の影が駆け抜けた。
「! 来たか、仮面ライダー…!」
影は猛スピードで道路を走り、逃げる人とは反対に、ビルの中へと突っ込んでいく。
「誰か入って行くぞ!」
「止めないと」
「待て!」
車を降りようとする他の警官を制し、植木は言った。
「心配ない。彼は、味方だ」
50 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/09(火) 22:07:44.71 ID:jIWaQAeR0
「あああっ! ああああっ!!」
瓦礫を蹴散らしビルの中を進むと、目当てのドーパントの姿が見えた。灰色の岩石のような姿をしたそのドーパントは、何やら喚きながら壁を殴り、破壊している。
「いやだあああっ! うわあああっっ!!」
『おい、ドーパント!』
ファンタジーの声に、ドーパントの動きがぴたりと止まった。虚ろな目が、乱入者の姿を捉える。
「か、仮面ライダー…」
『ビル崩壊事件の犯人は、お前か』
「お、おお……」
何かを堪えるように、身を捩りながら、ドーパントは唸った。
「おれはぁ…妹を、過労死させた…あの会社が、憎くて……」
『…そうか。もう良いぞ』
宙に鉄のハンマーを描き、両手で掴む。
『今、楽にしてやる。はあっ!』
「おおああああっっっ!!!」
突然、ドーパントが足元を強く蹴った。次の瞬間、ビルの床が大きく揺れ始めた。しかも、ただ揺れるだけでなく、足元がどろどろに融け出したのだ。
『なっ、何だこれ…』
「ああっ! 体があああっ!!」
『!』
咄嗟に倒れた棚の上に飛び乗った。そのままハンマーを振り上げ、ドーパントに飛びかかった。
『たあっ!』
「ぐうっ…」
硬いハンマーが頭を直撃し、ドーパントはその場にうずくまった。ファンタジーはすかさずメモリをスロットに差し込むと、ハンマーを振り上げた。
『ファンタジー! マキシマムドライブ』
51 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/09(火) 22:10:57.55 ID:jIWaQAeR0
『ファンタジー・ブレーンクラッ…』
言いかけた彼の頭を、何かが横から打ち据えた。
『ぐわあっ!?』
ぬかるんだ足元に沈みかけて、ファンタジーは慌てて机の上に飛び乗った。
視線を移すと、ドーパントの肩の上に、何かが乗っている。
「…あははっ」
『お前は…』
それは、ウサギと人間を混ぜたような姿をした怪物、ドーパントであった。
「見つけたよ、仮面ライダー」
『お前、こいつの仲間か』
ところが、乗られているドーパントの方は、寧ろ拒むように肩を揺すっていた。
「いやだ、いやだ、いやだああっ!」
「お母様には、捕まえて連れてこいって言われたけど〜…」
ウサギのドーパントは、値踏みするようにファンタジーを見た。
「もうちょっと遊びたいって言うか〜? ここで終わらせちゃ、勿体無いっていうか〜」
『ふざけるのもいい加減に…』
ハンマーを振り上げるファンタジー。ところが、ウサギのドーパントは軽く跳躍すると、ハンマーを蹴り飛ばしてしまった。
「…ね? もうちょっと強くなって、出直しておいでよ」
相方の肩に戻ると、ウサギは嗤った。それから融けつつある地面に着地すると、大きな相方の体を軽々と担ぎ上げてしまった。
「じゃ、よろしく。バイバイ、仮面ライダーさん」
次の瞬間、ウサギは跳躍し、窓を突き破って外へと逃げてしまった。
後に残されたファンタジーは、追いかけようとして、奥から聞こえてくる悲鳴に気付いた。
結局、事件の犯人は逃してしまった。不幸中の幸いは、彼の尽力で犠牲者を増やさずに済んだこと、その御蔭で、ドーパントは逃したものの植木警部はじめ、超常犯罪捜査課のスタッフの信頼を、ある程度は得ることができたことだった。
『Eの後悔/二輪車と口車』完
今夜はここまで
52 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/10(水) 10:22:38.23 ID:Tpb2dLyl0
「井野定、33歳。北風建設の事務員。10歳年下の妹、遊香は2年前にノース・テクニクスに就職したが、過重労働に耐えかね半年前に自殺した」
「ああ、ニュースで見たことあります。結局、会社が裁判で負けたんでしたっけ」
徹は写真を見ながら、以前取材した時のことを思い出していた。あの頃は、彼に限らず多くの記者が、問題となったノース・テクニクスや、その他の関連企業を取材していた。
「彼は多額の賠償金を得たはずだが、その金の行方は分かっていない。もしかしたら、ガイアメモリの購入資金に充てたのかも知れないな」
「妹を死に追いやった、ノース・テクニクスに復讐するために…」
植木は溜め息を吐いた。
「こいつが犯人なら、復讐はとうに済んだはずだ。ノース・テクニクスは、オフィスビルごと崩壊したし、社長はおろか平社員に至るまで、一人残らず死んだ。それなのにどうして、今更…」
徹は黙って考え込んだ。あのドーパントは、暴れながら嫌だ、嫌だと喚いていた。力を使うのは、不本意な様子であった。何より、ビル崩壊事件から同様の出来事は、今に至るまで起こっていなかった。復讐を終わらせた井野が、元の生活に戻ったのだと考えれば、まあ納得はできる。
「重要参考人であることには違いない。その、仮面ライダーから聞いた話によれば、な。今、部下を動かして確保に…」
その時、タイミング良く植木の携帯が鳴った。
「私だ。…なに、井野がいない?」
植木の顔が険しくなった。
「仕事にも来ていないのか。アパートには…」
ここで一旦耳を離し、徹に言う。
「悪い、今日のところはここまでにしてくれないか。また今度、連絡するから」
徹は頷くと、北風署を後にした。
53 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/10(水) 10:23:38.37 ID:Tpb2dLyl0
聖堂には、獣のような喘ぎ声が木霊していた。
「はあっ、あぁっ、あんっ」
「いやだ、いやだ、ああっ!」
長椅子に仰向け転がされた男に、その上に跨って腰を振る少女。少し離れてその様子を眺めながら、黄色いスーツの女は顔をしかめた。
「どうしてその男を連れてきたの、ミヅキ」
「だって〜」
腰を振りながら、ミヅキと呼ばれた少女は答える。
「こいつ、メモリ耐性なさ過ぎなんだもん。お母様に会わせないと、ちょっと面倒くさいかな〜って」
「…それは同意するわ。でも、貴女のその行いは何?」
少女が、ニヤリと嗤う。
「久し振りの男だもん。愉しまないと。…誰かさんのおかげで、フラストレーションも溜まってることだし〜?」
「貴様…」
女は唸ると、スーツの内ポケットから黄色と黒のメモリを取り出した。
「あはっ、やる気? 良いよ〜」
少女も、ピンク色のメモリを手に取る。
”お止めなさい!”
「!」
ヴェールの向こうから響いた声に、2人は慌ててメモリを仕舞った。女はその場に跪き、少女も男の上から降りた。
”母の子がいがみ合うことは許しませんよ”
「申し訳ありません」
真っ先に謝罪する、黄色スーツの女。ヴェールの向こうで、薄い人影が小さく動いた。
”…その子は、ミヅキが?”
「そうそう。メモリを刺した瞬間に暴走しちゃうから、ほっとけないかな〜って」
”そのようですね。母の子の危機を、よくぞ救ってくれました”
「あはっ」
「か、帰してくれ…もう、嫌だ…」
呻く男の首を掴むと、少女は長椅子に座らせた。ヴェールの向こうで、人影が言う。
”愛しい子。もう、心配はありません。子の苦しみは母の苦しみ。今、楽にしてあげましょう…”
するすると、ヴェールが開く。スーツの女は目を閉じ深々と頭を下げ、少女はにかっと口角を吊り上げた。
男は、目を見開いた。
「あ、ああ…ああああっっ…!」
54 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/10(水) 10:24:17.76 ID:Tpb2dLyl0
「『アースクエイク』のメモリで間違いないでしょう」
お茶を一口飲むと、リンカはそう断じた。
「『地震』か…だが、地面がどろどろに融けたのは? それも地震のせいか?」
「応用すれば、場所によっては可能です。特に現場付近は、地下水が流れていると聞きます」
「! 液状化現象か」
少し前に取材したことを思い出す。風都から出たゴミが、北風町付近の豊かな地下水を汚染しているという内容で記事を書いたことがある。結局これも、没にされてしまったが。
「だが…またあのウサギのドーパントが来たら、どうしよう」
どこか女性的なシルエットの、ウサギ人間。見た目に反して大柄なドーパントを軽々持ち上げる怪力で、その上高い跳躍力に強烈な蹴りを見舞ってきた。
「聞く限り、組織の幹部クラスのようですね。それはおいおい考えましょう。いざとなったら、私も足止めくらいはできます」
「大丈夫なのか…?」
「いずれにせよ」
空になった夕食の皿を重ねながら、リンカは言う。
「勝てる方から倒していくべきでしょう。特にアースクエイクドーパントは、何らかの組織と接触した可能性が高い以上、確保すれば今後の調査に役立ちます」
「そうだな」
徹は立ち上がった。今から出陣…というわけではなく、単に風呂を洗いに行くのだ。
リンカが風呂やトイレをどうしているのか、徹は全く把握していないが、取り敢えず手の届くところは綺麗にしておこうと、彼なりに気を遣っているのであった。
55 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/10(水) 15:18:57.39 ID:Tpb2dLyl0
朝。誰もいない墓地に、一人の会社員が座り込んでいた。
「遊香…待ってろよ」
呟くと、彼はやおら墓石の下の戸を開け、中から白い骨壷を取り上げた。それを抱え、いそいそと立ち去ろうとする背中に、後ろから声がした。
「遺骨を持って、どこへ行く気ですか」
「! 誰だ」
振り返ると、そこには白いスーツに金色のネクタイをした、痩せた女が立っていた。先に声を聞いたから女と分かっていたのであって、黒い髪を撫で付けた整った顔立ちは、男にも女にも見えた。
「名もなきフリー記者Bです。…単刀直入に言います。井野定、メモリを捨てなさい」
「お前…」
男…井野は、骨壷を強く抱き女を睨んだ。
「おれが…おれが戦えば…遊香が、帰ってくる…」
「帰ってくる? 貴方が何をしようと、死んだ者は帰ってきません」
「帰ってくるんだ! 『お母様』の力で…」
井野は骨壷をそっと足元に置くと、スーツのポケットから灰色のガイアメモリを取り出した。中央には、3本の地震計めいた波形が並んで『E』の文字を描いていた。
「お願いだ…もう、帰ってくれ。おれに、この力を使わせないでくれ…!」
「お断りします」
女は、何処からともなく黒の大型拳銃を抜き、銃口を向けた。
「! このぉ…!!」
56 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/10(水) 15:19:39.01 ID:Tpb2dLyl0
『アースクエイク』
「うおおおおっ!!!!」
足を上げ、地面を踏みならそうとする灰色のドーパント。そこへ、女が引き金を引いた。
「!?」
銃弾の代わりに太いワイヤーが発射され、ドーパントの体に刺さった。女が腕を振り上げると、その体が宙へと投げ出された。
「っ、このっ…」
引きちぎろうとワイヤーを掴む。
そこへ、銀色の影が飛来し、激しく衝突した。
「うぐあぁっ!?」
墓地の隣の空き地に落下したドーパント。少し遅れて、白と銀のバイクに跨った仮面ライダーが着地した。
『復讐は果たした。職場も失った。そんなお前が来るところは限られてる。…やっぱり、妹か』
「邪魔をっ! するなぁっ!」
地面を踏みつけようとするドーパント。ファンタジーは素早く宙に鞭を描くと、その足を絡め取った。
『地震は起こさせないぞ!』
そのまま空中へ跳ね上げると、ファンタジーは両腕を広げた。すると背中のマントが二つに分かれ、白い翼となった。
『空なら、地震は起こせないだろう。観念しろ!』
下から蹴りを連発し、地面に落とさないように攻撃を加える。
「ぐっ、うぐっ、がっ」
『このままメモリブレイクだ…』
ドライバーに手をやった次の瞬間
『…うわあっ!?』
その背中を、強烈な蹴りが直撃した。
地面に墜落するファンタジー。その胸の上に、新たな襲撃者が着地した。
『お前、あの時の』
「あははっ、来るに決まってんじゃ〜ん」
ウサギ人間はけらけら嗤うと、ぐいと相手の胸を踏みつけた。
『ぐっ…』
そこへ、アースクエイクドーパントも降りてきた。ウサギは彼を手招きすると、弾む声で言った。
「君の力で踏んづけたら、どうなっちゃうかな〜?」
「そ、そんなことをしたら死んでしまう」
「だ〜い丈夫。どうせお母様が、また産み直してくれるから…」
会話する2体のドーパント。ファンタジーはウサギの足を掴むが、びくともしない。
「ほら、やってみなって…ゔぇっ」
そこへ、小型のミサイルが飛来して、頭を直撃した。
「無駄話も大概に」
ミサイルの飛んできた方向には、銃を構えたリンカが立っていた。引き金を引くと、次々にミサイルが飛んでくる。
57 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/10(水) 15:36:12.43 ID:Tpb2dLyl0
「…ふんっ、可愛いオモチャ!」
ウサギはジャンプすると、ミサイルを片っ端から蹴り落としていく。
何も言わず、引き金を引き続けるリンカ。その額に、薄っすらと汗が浮かんだのをファンタジーは見た。
『…! 今なら』
上から敵がいなくなったファンタジーは、立ち上がると、再び鞭を手にした。
「! させん!」
地面を蹴る、アースクエイク。ファンタジーは飛び上がって振動を回避すると、鞭を振るった。
「うわっ…」
鞭が腕に絡みつくと、ファンタジーは振り上げ、そして振り下ろした。
「わあーっ!?」
「? …ひゃっ」
巨体がぶつかりそうになって、ウサギは慌ててその体を蹴り返した。ファンタジーは構わず、ハンマー投げのように、ドーパントのくっついた鞭を振り回す。
『うおりゃっ、当たれっ! たああっ!』
「…ば〜か」
『!?』
ウサギは両手を前に突き出すと…何と、飛んできたドーパントの体をピタリと掴み取ってしまった。
そのまま、ぐいと引っ張る。
『うわっ!?』
今度はファンタジーの体が引っ張られ、宙に舞った。そこへウサギがジャンプし、強烈な飛び蹴りを見舞った。
『ぐわぁぁぁっ!!』
「ああっ!」
珍しくリンカが叫んだ。ウサギ人間はつかつかと歩み寄ると、更に飛び蹴りを浴びせんと膝を曲げた。
「これで……っ!?」
ところが、その動きは途中で止まった。と思うや、突然、胸を押さえて苦しみだした。
「ぐっ…な、にを…」
くるりと後ろを振り返る。その背中には、鋭く巨大な棘が、深々と突き刺さっていた。
ウサギの顔が、怒りに歪む。
「あんの、ウジ虫ババア……!」
痛みに耐えながら地面を蹴ると、ウサギ人間はどこかへと飛び去ってしまった。
58 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/10(水) 15:55:43.56 ID:Tpb2dLyl0
『…はっ、今のうちに』
ファンタジーは鞭を手放すと、メモリをスロットに挿した。
『ファンタジー! マキシマムドライブ』
マントが翼となり、ファンタジーの体が宙へと舞い上がる。
『ファンタジー・エクスプロージョン!!』
そのまま空中で一回転し…地面に倒れているアースクエイクドーパントめがけて、ミサイルキックを放った。
「ぐわあぁぁぁっっ!!」
爆炎。ドーパントの体が崩れて、元の人間の姿に戻り、その左胸からメモリが吐き出され、そして砕けた。
「…」
骨壷を墓に戻すと、徹は黙って立ち上がった。後ろに控えていた植木が、静かに言う。
「井野の意識はまだ戻っていない。何故、今更妹の遺骨を持ち出そうとしたのか…そして今まで、どこに姿を隠していたのか…できるだけ早く、聞き出したいと思う」
「お願いします」
徹は頭を下げた。その耳元で、リンカは囁いた。
「あのドーパント…前に戦った時と、様子が違いました」
「ああ。前より、かなり落ち着いてる様子だった。それに、『お母様』って…」
「まあ、後のことは我々に任せてくれ。またよろしくと、仮面ライダーに伝えといてくれ」
59 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/10(水) 15:56:10.82 ID:Tpb2dLyl0
「はい。では」
パトカーに乗り込み、去っていく植木。リンカは、ぽつりと呟いた。
「ガイアメモリには、多かれ少なかれ毒性があります。耐性が低かったり、長く使い続けていると、いずれ体調や人格に変容を来します」
「らしいな」
「…ですので、ドーパントが徒党を組むことは、実は難しいことなのです。実現しようとするなら、少なくとも統率する者は、ドライバーなどで毒性を弱める必要があります」
「じゃあ、今の組織にも、そのドライバーとやらがあるんだろ」
「…」
リンカは黙ったまま、じっと空を見つめている。その口が、小さく動いた。
「何だって?」
「…予測できない。敵の目的が、見えない。いえ、定まった目的など、最初から無いのかも」
「だったら?」
彼女の目が、徹を真っ直ぐに捉えた。
「無軌道な力は…いずれ自壊します。しかし規模が大きすぎれば、周りへの影響も大きくなる。私達としても、できるだけ早く解決したい」
「…ああ、そうだな」
徹は、ふっと笑った。
「ま、何だ。あんたに言っても説得力無いかもだけどよ」
ぽんと、リンカの肩を叩く。
「…俺に、任せろ」
「…ええ。そうですね」
リンカが、頷いた。その、石膏像のような口元に、微かに笑みが浮かんだように、徹は錯覚した。
60 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/10(水) 15:58:39.83 ID:Tpb2dLyl0
『Eの後悔/墓場の凪』完
本編はここまで。次の進行について、一つだけ安価を
↓1〜3でコンマ最大 何から始める?
@『母神教』について調べる
A密売人狩り
Bその他、要記述
61 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/07/10(水) 16:26:43.24 ID:HHduF0mx0
1
62 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/07/10(水) 16:44:28.09 ID:CGxyrem6O
1
63 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage saga]:2019/07/10(水) 17:02:31.34 ID:zLgj6MhzO
おつおつ
この中だととりあえず1かな
64 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/10(水) 17:37:02.56 ID:Tpb2dLyl0
次回、なぞのそしきに切り込む
『アースクエイクドーパント』
『地震』の記憶を内包するメモリで、会社員の井野定が変身したドーパント。ひび割れた岩石めいた灰色の巨体で、足で地面を踏みつけることで強い振動を起こす。井野はほとんど使いこなせず、偶然液状化現象を引き起こした程度であったが、応用すれば地震だけでなく、振動を纏った強力な打撃攻撃も可能。また、空中に飛ばせば触れるものが無くなるため大方完封できるが、水中に投げ込むと津波を起こすため最悪手。
メモリは灰色。地震計の波形が3つ並んで、『E』の横棒を形成している。
『Xマグナム(仮称)』
財団Xのエージェント、リンカが所持する黒い射撃武器。財団B的にはトリガーマグナムのコンパチ品。
単体でもドーパントに対抗できる強力な弾を発射できるが、リンカは一緒に所持している『ワイヤー』『ミサイル』『フラッシュ』のギジメモリを駆使してドーパントを撹乱する。
65 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/11(木) 10:52:13.96 ID:6Z4mhvzg0
「私ども母神教は、母なる神の愛によって、この世に平和をもたらすことを目標に活動しております」
黒スーツに赤いネクタイを締めた壮年の男は、にこやかに説明した。
ここは、母神教の北風町本部。この日、徹とリンカは、入信を検討していると言ってこの場所に来たのであった。ちなみに、リンカはいつもの白スーツではなく、黒いタイトスカートにブラウスを身につけている。それでも、金のネクタイは健在であった。
「ここでは、兄弟たちが日々の行いを互いに称え合っています」
通された広間では、10人ほどの男女が円形に並んだ椅子に座って、話し合いの最中であった。
「私は今日、捨てられた犬を保護しました」
「ぼ、ぼくは倒れた自転車を立て直しました!」
「あたしは…」
目を細める徹に、相変わらず無表情のリンカ。男は誇らしげに頷いた。
「母の子として、素晴らしい行いです」
「! 長兄様、おはようございます!」
男女が一斉に立ち上がり、男に挨拶した。
「今日は、新しく母の愛に触れんとする兄弟が、こうして来てくれました」
「ようこそ、母神教へ!」
「あ、ああ、どうも…」
曖昧に会釈しながら、徹は男の方を見た。
「…えっと。静かな所で、詳しいお話を聞かせていただけないかな、と思いまして」
「ええ、もちろんです。こちらへどうぞ」
男は、笑顔で2人を先導した。
小さな応接室にて、向かい合って椅子に座ると、徹は早速質問した。
「純粋に気になっていたのですが…あなた方の信仰する『お母様』とは、一体どのような存在なのですか?」
徹はわざと、今まで男の出さなかった『お母様』という単語を用いた。
井野定やウサギ人間の言っていた存在。字面からして、この母神教と何らかの関わりはありそうだ。だが、まだそうと決まったわけではない。この組織には当然、超常犯罪捜査課の手も入っているが、今に至るまではっきりした証拠を挙げられていないのだ。
「母とは、神です」
男は一切突っ込むこと無く、当然のように答えた。
「母は全てを知り、全てを愛し、全てを護ってくださいます。世界が母の愛に包まれれば、この世から争いは消え、全てが等しく母の子として、互いに尊重しあい、愛し合う、そんな素晴らしい世界になるのです」
「はあ…」
男の勢いに圧倒されて、徹は引き気味に相槌を打った。一方のリンカは、いつもの無表情で男の顔をじっと見つめている。しかし、両手は机の下で、何やらもぞもぞと動かしていた。
「…そうだ。その、母とは…聖母マリア? それとも、摩耶夫人?」
「いいえ。母は、ただ万物の母として、この世に君臨しておられます。…お会いになりますか?」
「!? 会えるのですか」
「もちろん」
「それなら…」
会ってみたい。そう言おうとした徹の腕を、不意にリンカが掴んだ。
「いえ、結構です」
そのまま立ち上がると、足早に部屋の出口へ向かった。
「ちょっ、リンカ…」
「有意義な時間でした。ですがこれ以上は結構」
「そうですか」
男は、存外にあっさりと引き下がった。
「いつでも、またいらしてくださいね。私どもは」
66 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/11(木) 10:52:47.19 ID:6Z4mhvzg0
「…」
ところが、リンカは部屋から出ず、代わりに内側から扉の鍵を閉めた。そして、言った。
「財団のリストと照合しました。…元ミュージアム密売人、九頭英生。ここでガイアメモリの密売に関わっていましたか」
「!?」
ぎょっとする徹。しかし、驚いたのは男も同じであった。
「なっ…何者ですか、あなたは!?」
「名もなきフリー記者Bです。そして母神教は殲滅します」
何処からともなく拳銃を抜き、男に突きつける。
「きさまぁ…そうはさせません!」
男は、黒いガイアメモリを取り出した。そう、ガイアメモリである。
『マスカレイド』
メモリを首筋に刺すと、男の顔が黒と銀の仮面に覆われた。
「! 危ないっ!」
殴りかかってきた男に体当りすると、徹はドライバーを腰に装着した。
「こいつもドーパントだったか…変身!」ファンタジー!
『取り敢えず、倒す!』
「仮面ライダー…お前が…!」
ファンタジーは剣を構えると、マスカレイドドーパントとの戦闘を開始した。
「くはっ…」
『このままメモリブレイクだ…』
「待ってください」
力尽きたマスカレイドドーパントに必殺技を放とうとしたファンタジーを、リンカが止めた。
『何だ?』
「マスカレイドメモリには自爆装置が付いています。メモリブレイクすれば、変身者まで死亡します」
『何だって!? じゃあ』
「このまま捕らえましょう」
リンカは銀色のギジメモリを取り出すと、銃に装填した。
『ワイヤー』
引き金を引くと、銃口から太いワイヤーが飛び出し、ドーパントの体をぐるぐる巻きにした。
『よし、捕まえて警察に』
「…ふっ。この私が、死を恐れるとも?」
『何っ』
「!」
『フラッシュ』
リンカが、クリアカラーのメモリを銃に装填する前に、マスカレイドドーパントの体が爆ぜた。
67 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/11(木) 10:55:49.93 ID:6Z4mhvzg0
聖堂の床に、2人の女が倒れている。黄色スーツの女は全身痣だらけで、片腕が妙な方向に折れ曲がっている。白いロリータ衣装の少女は、背中に鋭い棘が突き刺さり、体のあちこちに刻まれた噛み跡から血が滲んでいた。
”…母は悲しいです”
「っ…申し、訳」
”もう良いです。あなたたちは、一度折檻しなければなりません”
「! …」
「許して、お母様…だって、こいつが」
”お黙りなさい!”
ヴェールが開き、人影が姿を現す。人影が手を上げると、2人の頭上にも巨大な手が出現した。
「…」
「嫌、許して、許して…」
諦めたように目を閉じる女。泣きながら懇願する少女。
人影が、手を振り下ろした。すると巨大な手が2人の上に落ち…
「ぐっ」
「いぎゃあぁああっぁぁぁっ!!!!」
2人の体を、ぐしゃぐしゃに押し潰した。
「母神教の本部に、ドーパントがいた?」
北風署にて。徹の言葉に、植木が身を乗り出した。
「はい。仮面ライダーが来てくれなければ、危ないところでした」
尤もらしく言う徹。リンカが引き継いで説明した。
「幹部がドーパントに変身しました。追い詰めましたが、自害されました」
「だが、母神教は前も捜査して、何も見つからなかったからな…」
「深入りする必要は無いと思います。ドーパントが他にもいるなら、警察の皆さんにも危険が及びますから」
「まぁ…できるだけ頑張ってみるよ。で? 君たちはこれから、どうするの」
「私たちは…」
↓1〜3でコンマ最大 これからどうする
@密売人について調べる
Aウサギのドーパントについて調べる
Bガイアメモリ製造工場について調べる
Cその他、要記述
68 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage saga]:2019/07/11(木) 11:28:46.77 ID:o+IO6VPEO
2
69 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/07/11(木) 13:12:20.99 ID:aFyal1jBO
2
70 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/11(木) 15:35:06.50 ID:6Z4mhvzg0
その日の夕方。2人は『ばそ風北』で蕎麦を啜っていた。
「しかし、いきなりウサギの方ですか。立ち向かう算段はおありで?」
「あんまり。だが、今の所残ってるドーパントって言ったら、あいつしかいないだろ。…」
徹は、かけ蕎麦を啜るリンカの横顔をちらりと見た。
「…何か」
「いや…あんたも、普通に飯食うんだなって」
「私”は”人間ですから」
涼しい顔で、汁を一口。
そこへ、カウンターの向こうから店主が口を挟んできた。
「にしても徹ちゃん、無事で良かったよ」
「?」
「ほら、こないだの怪物…あんた、いつの間にかいなくなっちゃうからさ」
「! あ、ああ。俺も隠れてたんだけど…ほら、おっちゃんも見てただろ。仮面ライダー」
「そうそう! いや〜危ないところだった。彼が来てくれなきゃ、もっと酷いことになってた」
会話しながら、徹はほっと胸を撫で下ろした。あの時は気にしていなかったが、今のところ自分が仮面ライダーであることは隠すことにしている。店主に知られたら、そこからまた多くの人々へ広がることは、想像に難くない。
「…で、ウサギのドーパントだけど」
レンゲでネギの切れ端を掬いながら、徹は話を元に戻した。
「母神教の一員であることは間違いないだろう。『お母様』とか言ってたし。それから、中身は女」
「本当に? メモリの力で、声や外見を女性的に見せているだけでは?」
「うっ…それを考えだしたら、もうきりがないだろ」
「そうですね、私もそう思います」
平然と言い、お茶を一口。徹は、ぽかんと彼女を見た。
「…あんた、冗談も言うんだな」
「時々は。…で、どうやって探しますか。母神教の線なら、警察も調べていると思われますが」
「そうだな。俺たちは、別の線から探すとしよう」
徹はそう言うと、ふっと遠くを見る目になった。
71 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/11(木) 20:33:42.26 ID:6Z4mhvzg0
「変な奴かい? …そう言えば」
「心当たりが?」
北風駅前の公園にて。徹とリンカは、一人のホームレスから話を聞いていた。
「誰も信じちゃくれないんだけどね。その、ビルが崩れた日。例のビルの壁を、誰か白い服の娘が駆け上ってくのを見たんだよ」
「!」
2人は顔を見合わせた。
駅前にはまだ立入禁止のテープが張られ、パトカーや工事車両が出入りしている。そんな中で、2人は改めて聞き込みに来た。井野定が再びドーパントとして暴れだしたのは、他でもない自身の務める会社のあるビルであった。つまり、仕事中の井野に接触して、メモリを使わせた者がいた筈なのだ。そしてそれは、あの時現場に現れた、ウサギのドーパントである可能性が高いと、2人は見ていた。
「それは、具体的にはどんな人でした」
「そうだなあ…遠かったし、速くてよく見えなかったけど…」
ホームレスの男は、髭の生えた顎を撫でながら言った。
「…でも、フリフリの派手な服だったよね。だから女の子って判ったわけだし。それに、若い娘だったかな。そんな感じ」
「なるほど…ありがとうございました」
男に一万円札を握らせると、2人は公園を立ち去った。
墓地の付近でも、似たような目撃証言を得られた。興味深いのは、以前からその女の存在は噂になっていたことで、しかもその内容というのが『白いゴスロリ衣装の少女が、夜な夜な公園の身障者用トイレで売春を行っている』というものであった。
「…」
「人がいる場所なら、この手の噂は、多かれ少なかれ存在するものです」
黙り込む徹に、リンカが急にそんなことを言うので、彼は驚いたように顔を上げた。
「…何だよ、慰めてるつもりか」
「揺らぐな、と言いたいのです」
リンカは、いつも通りの無表情で言う。
「貴方はこの街を愛している。街のために戦っている。…それで良いのです」
「…」
徹は、溜め息を吐いた。
「…ああ、そうだな。悪かった」
72 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/11(木) 20:34:12.67 ID:6Z4mhvzg0
「ふうぅ…っ、あぁっ…」
ヴェールの向こうで、一つの人影が横たわっている。その腹は大きく膨れ上がって、胸の辺りには別の人影が2つ、かじりついてもぞもぞと蠢いていた。
「あ、あっ…あああっっ!!」
悲鳴に近い叫び声と共に、人影の腰が大きく浮き上がった。それから少し遅れて、その脚の間から、更にもう一つの人影が、ずるりと転がり出てきた。
人影は床に落ちると、よろよろと立ち上がった。
「お、おお…『お母様』…」
「はぁっ…英生…」
『お母様』は、胸にくっついた人影を払いのけると、両腕を差し伸べた。
「よくぞまた、生まれてきてくれましたね…」
「貴女様が、再び産んでくださればこそ…私は、何度でも命を捧げます…」
「さあ、おいでなさい…お乳を飲みなさい…」
人影は『お母様』に縋り付くと、その胸に顔を埋め、貪るように乳を吸い始めた。
「お母様、あたしも…」
「お母様、お母様…」
除けられた2人がねだる。その声は、黄色スーツの女と、白いゴスロリの少女のそれであった。
73 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/11(木) 20:36:13.51 ID:6Z4mhvzg0
『怪しいR/母とは神なり』完
今日はここまで
74 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/11(木) 20:36:52.03 ID:6Z4mhvzg0
こんなドーパントとかガイアメモリどうでしょうとか、書いてくれたら採用するかもしれない
75 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/07/11(木) 22:16:01.73 ID:i+ki0BDH0
こんな感じ?
リインカーネーション(転生)ドーパント
人間一人に印をつける。ドーパント体が倒された時に印をつけた人間にメモリとメモリ使用者の意識が移動して乗っ取る
76 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/07/12(金) 07:47:13.48 ID:spmGpoev0
ガイアメモリ案 ファイナルメモリ
単独では使えないメモリで他のガイアメモリと合わせて使うことで性能を限界以上に引き出す力がある
限界以上の性能を引き出しているので並のガイアメモリや人間だと耐えきれずに肉体が崩壊する可能性が高い
77 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/12(金) 09:37:26.07 ID:ll1rXKFu0
ある日の夜。北風町運動公園の身障者用トイレと前に、徹はじっと立っていた。彼の他にも、3人の男がいて、そわそわと周囲を見回している。
そこへ、弾むような足音が聞こえてきた。
「!」
徹は足音の方へ顔を向けた。他の男たちも、期待に満ちた目を向ける。
「…あははっ」
電灯に照らされて姿を表したのは、白いロリータ服の少女。彼女はその場に集った4人の男たちをくるりと見回すと、明るい声で言った。
「じゃあ、誰から?」
「…」
顔を見合わせる男たち。徹は、一歩後ろへ下がった。
やがて、一人が手を挙げる。
「お、俺が」
「はぁ〜い」
少女はその手を取ると、スキップしながら身障者用トイレへと入っていった。数分後、シャッターの中から嬌声が漏れてきた。それを、徹は歯噛みしながら聞いていた。
夜が更けてきた頃、3人目の男がトイレから出てきた。後から出てきた少女は、徹の前に来て言った。
「お待たせ。始めよっか」
ところが、徹は動かず、少女に質問した。
「君…いつも、こんなことしてるの」
「う〜ん?」
少女が首を傾げる。徹は名刺を差し出すと、自己紹介した。
「俺、フリーライターをしてるんだ。未成年の夜遊びについて取材しててね。君、いくつ?」
「…」
少女は名刺をひったくると、見もせず放り捨てた。それから、ニヤニヤと徹を見た。
「さあね? 誕生日、忘れちゃった。早くエッチしよ」
「どうしてこんなことを。親は何してる? 学校は行かなくていいのかい?」
「うるさいな〜…」
相変わらずニヤニヤ笑いを浮かべながら、少女は徹の手を掴んで引っ張った。
「おじさんみたいな良い人気取り、もう飽きたんだよね〜。どうせ、あたしのこと助けたいとか言うんでしょ? だったら黙ってチンコ出してよ。それが一番の助けになるからさ」
「…」
徹は、遂に身障者用トイレに向かって、足を進めた。
78 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/12(金) 09:37:55.30 ID:ll1rXKFu0
蓋を閉じた便器に徹を座らせると、少女は彼のズボンと下着を下ろし、一物を掴んだ。
「…君、名前は?」
「ミヅキ」
短く答えてから、彼女は思い出したように言った。
「そうだ。お金は要らないから安心してね」
それから、徹のモノを口に咥えた。
「それじゃ、意味無くないかい?」
「んっ…お金には困ってないんだよね〜。ただエッチしたいだけ」
「どうして」
「ん、むっ…ねえ、フェラ中だからあんまり質問しないでくれない?」
「ごめん」
少し長い愛撫で、ようやく徹の準備が整った。少女は口を離すと、スカートに手を入れてピンク色のショーツを下ろした。そのショーツと言い、着ているゴスロリ衣装と言い、綺羅びやかではあるものの清潔感がない。フリルはところどころ脱落しているし、ボタンもいくつか欠けている。
そのまま膝の上に跨がろうとしてきたので、徹は慌てて制止した。財布からコンドームを取り出し、一物に被せる。
「付けなくていいのに」
「まあまあ」
少女は可笑しそうに喉を鳴らすと、徹の膝の上に乗った。スカートを大きくたくし上げると、上を向いた徹のモノに、自身の入り口を添わせた。
「じゃあ…挿れるね。んっ…」
腰を下ろす。小柄な体格に合わず、彼女の穴は徹をいとも容易く呑み込んだ。
彼の上で、少女ミヅキは腰を振り始めた。
「んっ、あっ、あぁっ…」
「…エッチ、好きなんだ」
「そう…っ、あたしね…異常性欲って言ってね」
激しく腰を上下させながら、ミヅキが言う。
「こうやってエッチするかオナニーしてないと、頭がおかしくなっちゃうの…あんっ…」
「それで、公園で」
「彼氏作っても、すぐ逃げられちゃうし…んっ、ここで男釣った方が、楽だし…」
「家族は何て言ってるの?」
「家族? そんなのいないよ。だいぶ前に捨てられた」
「『お母様』は?」
「お母様は、お母様だし…」
そこまで言って、突然少女の動きが止まった。ふわふわと浮いていた視線が、すっと彼の方へと向く。
「…あんた、誰」
徹は答えず、剥き出しの少女の太腿に手を置いた。そこには、黒い生体コネクターが刻まれていた。
「お洒落な刺青だね。誰に入れてもらったのかな。…九頭か」
「誰だっ!」
ミヅキは徹の上から飛び降りると、威嚇するように言った。
徹は衣服を直しながら立ち上がった。
「警察に自首しろ。今ならまだ、間に合う」
「うるさい!」
79 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/12(金) 09:38:23.93 ID:ll1rXKFu0
少女は喚きながら、トイレを飛び出した。次の瞬間
『フラッシュ』
「ぎゃあぁぁっ!!?」
凄まじい閃光が、公園を押し潰した。
トイレの出口には、片腕で目を覆い、もう片方の手で銃を構えたリンカが立っていた。
「こちらが外れだったので、加勢に来ました。…どうやら、当たりのようですね」
「あ゛ああっ! 目が、痛いっ…目がぁっ!」
のたうち回りながらもポケットから出したピンク色のガイアメモリを、すかさず徹がひったくった。
メモリには、2本の耳をぴんと立てたウサギの頭部が逆さまに描かれていた。
「『R』…『ラビット』のメモリですね」
ワイヤーのギジメモリを装填すると、リンカは銃口を向けた。ところが
「いや、だああっっ!!」
少女はその場で跳び上がると、リンカの銃に飛び蹴りを浴びせ、弾き飛ばしてしまった。
「ああっ!」
更に、宙に舞った銃をキャッチすると、目を閉じたまま滅茶苦茶に乱射しだした。
「危ない!」
四方八方へ飛ぶワイヤー。徹は駆け寄ると、リンカを押し倒した。そのすぐ上を、銀色のワイヤーが掠めた。
「ミヅキ…お遊びはここまでだ…!」ファンタジー!
徹は、仮面ライダーに変身した。ただし、いつもの騎士ではなく、今回は魔術師の姿だ。
「その声…まさかあんたが、仮面ライダー!?」
『黙ってて悪かったな。大人しく捕まってくれ!』
ファンタジーは宙に魔法陣を描いた。すると陣から数条の鎖が伸び、少女を襲った。
「嫌だっ!」
少女は、目を閉じているにも関わらず、正確に鎖を躱していく。
「ラビットメモリの影響で、聴覚が強化されている…」
『だったら、そんなの関係なくするだけだ!』
夥しい数の魔法陣が、少女を取り囲む。そこから一斉に、無数の鎖が飛び出した。
「あっ、あああっ…」
隙間なく飛んでくる鎖に、とうとう少女は拘束された。頭だけ残して簀巻きにされた少女に、仮面ライダーは歩み寄った。
『悪いが、警察に行ってもらうぞ…』
80 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/12(金) 09:38:53.03 ID:ll1rXKFu0
「…! 危ない!」
『!?』
咄嗟に飛び下がった、その足元に、数本の鋭い棘が突き刺さった。
『誰だっ!?』
「…全く、情けない」
ゆっくりと歩いてくる、新たな襲撃者。黄色と黒の縞模様を基調とする、どこか女性的なボディに、紫色の複眼。背中には虹色の翅をマントめいてなびかせ、細い腕は無数の鋭い棘に覆われている。
『ホーネット…いや、お前は…?』
「これでも、同じお母様の子ですから」
鎖巻きの少女を抱き上げると、翅を広げる。
「いなくなれば、お母様が悲しみます。では」
軽く会釈した次の瞬間、腕の棘が飛び出し、一斉に2人を襲った。
『!!』
瞬時に防壁を展開し、リンカを庇うファンタジー。その隙に、蜂女は空へ舞い上がり、明け方前の闇に姿を消してしまった。
「…クソっ、逃げられた」
変身を解除し、悪態をつく徹。リンカは起き上がると、言った。
「いえ、進捗は寧ろプラスです。新たな幹部の存在を知ることができましたし…」
ピンク色のメモリを掲げる。
『ラビット』
「…何より、ウサギ…ラビットドーパントを、無力化できました」
81 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/12(金) 09:42:14.42 ID:ll1rXKFu0
『怪しいR/寂しい兎』完
気が向いたらまだ続くかも知れない
82 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/12(金) 09:50:25.61 ID:ll1rXKFu0
『ラビットドーパント』
『兎』の記憶を内包するメモリで、少女ミヅキが変身したドーパント。白っぽい薄ピンクの体毛に覆われた体は、女性的なシルエットをしており、特に腰から脚にかけて肉付きが良い。その脚で高い跳躍から強力な蹴りを浴びせてくる他、長い耳は目が潰れていても周囲を正確に把握する程の聴力を持っている。ハイドープになるまで使い込んだミヅキは生身でも高い聴力や跳躍力を持ち、変身後はメモリの性能以上の筋力を発揮する。一方で、副作用として異常性欲になっている。そのため、夜の公園で男を誘っては、身障者用トイレで性行為に及んでいる。
『戦車』のメモリと二本挿ししても、別にベストマッチにはならない。……『龍』のメモリでも一緒だからな?
83 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/12(金) 16:24:56.38 ID:ll1rXKFu0
「はっ、はっ、はっ…」
夜の路地を、一人の男が走る。その後ろを、3人の若い男女が追いかけている。
「もう諦めろよ!」
「いい加減、楽になりましょ?」
「ふざけるなっ…はあっ…」
必死の逃走も虚しく、男はすぐに人気のない空き地に追いつめられた。
追手の一人が問いただす。
「てめえ、ブツを何処に隠した」
「さあね。それが分かるのは、僕だけだ」
「オレら舐めんのもいい加減にしろよ…?」ホーネット
残りの2人も、黄色いガイアメモリを取り出す。
「…」
固唾を呑む男の目の前で、3人は蜂人間へと姿を変える。
「こ、殺すなら殺せ! 僕は、死んでも言わないぞ!」
「じゃあ死ね!」
蜂人間たちが一斉に襲いかかる。彼らは棘だらけの腕で男を捕まえると、鋭い顎で肩や喉に噛み付いた。
「ぐっ、ぎっ…ぎゃああっっ!!」
空き地に、断末魔が木霊する。しかし、絶叫しながらも男は、後ろ手に何かを起動させた。
『リインカーネーション』
そして、それを密かに背中に刺し…そして、息絶えた。
84 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/12(金) 16:25:22.37 ID:ll1rXKFu0
「…おっ、今日は一人かい」
『ばそ風北』に入るなり、店主に声をかけられた。
「そうだけど…?」
「この前の彼女は一緒じゃないのかい? あの、宝塚みたいな」
「ん゛っ!?」
思いがけない発言に、徹は絶句した。店主はにやにやしながら言う。
「いや〜、ああいうクール系が好みだったなんてね。意外だけど、中々オツなもんじゃないか」
「いや…別に、彼女じゃないし」
カウンターの前に腰掛けながら、徹は首を振った。
「仕事仲間だよ」
「へぇ〜?」
にやにや顔のまま、徹に顔を近づける店主。徹はしっしっと手を振りながら、いつもの北風蕎麦を注文した。
蕎麦を湯がきながら、店主は思い出したように言った。
「そう言えば昨日、熊ちゃんが来たよ」
「熊ちゃんって…熊笹か? 久し振りにその名前を聞いたな」
熊笹修一郎。徹と同じフリーの記者をしていて、比較的危険な案件にも積極的に首を突っ込む、熱心な男であった。徹とは以前、同じ事件を取材したことから知り合いとなり、時々互いの仕事を手伝ったりしていた。
しかし、ここ数ヶ月はずっと音沙汰が無く、こうして蕎麦屋の店主に言われるまで、徹もその存在を忘れかけていた。
「あいつ、元気にしてたか?」
「元気は元気そうだったけど…」
葱を刻みながら、言葉を濁す。
「何かあったのか?」
「ちょっと、思い詰めてる風だったかな…徹ちゃんにも会いたがってたけど、今日は来てないって言ったら、じゃあ構わないって。かけ蕎麦だけ食べて、帰っちゃった」
「ふぅん…」
相槌を打ちながら徹は、後で電話してみようと思った。
一方その頃、リンカは風都にいた。と言うのも、財団Xの支部で調べ物をする必要があったからだ。携帯端末からアクセスできる情報には、限りがある。
調査内容は、ガイアメモリの製造ロット。ガイアメモリには多くの種類があり、それらを製造する工場も風都と中心に各地に散在している。製造数の少ないメモリは、一つの工場でしか造られていないことがあるため、回収したメモリから現在稼働している工場を割り出すことができるかも知れなかった。
「ホーネット…サーバルキャット…そして、ラビット…」
ミュージアムに投資していた財団Xは、当然全てのメモリの種類を把握している。それがどこで製造されているのかも。
絞り込みをかけて、最後に3つまで工場を絞れた。内、2つが風都。そして残りの1つが、北風町にある工場であった。
「…いや、3つとも稼働しているのかも」
リストを自分の端末にダウンロードすると、リンカは席を立った。別の席では、同じような白スーツの男が、電話で誰かと会話しているところであった。時計がどうとか言っている。それを無視すると、リンカは支社を後にした。
85 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/12(金) 16:41:29.95 ID:ll1rXKFu0
”おかけになった電話は、現在電源が入っていません。___”
「…」
徹は通話を切ると、溜め息を吐いた。夜のアルバイトの前後に何度も掛けてみたが、ずっとこの調子であった。思えば、彼もまた北風町で相次ぐ怪奇現象について調べたいと言っていた。何か、重大な事件に巻き込まれてなければいいが…
考えながら家路を歩いていると、突然、彼の後頭部に何かがぶつかった。
「痛っ…」
振り返ったが、誰もいない。石でも投げられたのかと目を凝らすが、通りに他に人はいないし、人の気配も無い。
気のせいだろうか。そう思い、再び歩き出した彼の肩を、何かが叩いた。
「っ、何なんだよ、もう!」
乱暴に肩を払う。と、手に何か硬いものが当たった。
「? …!」
目を凝らして、気付く。それは、緑色のガイアメモリであった。
「うわっ、ガイアメモリ!?」
反射的に弾き飛ばしてしまった。ところが、そのメモリは独りでに宙に浮かび上がると、何と一直線に、徹目掛けて飛んできた。
「うわあっ!?」
徹は、逃げるように走り出した。
メモリは、空を滑るように彼を追いかける。
「く、来るなっ、来るな…」
走りながら、周囲に人がいないことを確認すると、鞄からドライバーを取り出した。しかし変身しようとした時、向こう側から誰かが歩いてくるのに気付いた。
「! やべっ…」
咄嗟にドライバーを隠そうとする徹。しかし、相手が誰か気付いた瞬間、彼は叫んだ。
「り…リンカ!」
「おや、貴方でしたか。夕方のランニングですか」
「ちがっ、違うんだ。メモリが…」
「メモリが…!」
聞き返そうとして、リンカも徹の言わんとすることを察した。彼を道の端に押し退けると…その場で、大きくジャンプした。
着地した時、彼女の手には例の緑色のガイアメモリが握られていた。
「あ…ありがとう」
「これは…」
メモリには項垂れる人間の肩から上と、その後ろに取り憑く一つ目の幽霊が描かれている。ボタンを押すと『リインカーネーション』と声がした。
「『リインカーネーション』…!」
リンカの顔色が変わった。彼女はスーツの上着を脱ぐと、メモリを何重にも巻いて脇に抱えた。
「このメモリは既に起動しています。いいですか、絶対に端子に触れないでください」
「ふ、触れるとどうなるんだ」
「前の持ち主に、意識を乗っ取られます」
「何だって!?」
リンカは、珍しく焦ったような口調で言う。
「とにかく、家に戻りましょう。このメモリが、貴方のもとへ飛んできた理由も気になります」
薄暗い小部屋の床に、鎖で簀巻きにされた少女が転がされている。
「ね〜え〜、これ解いてよ〜」
少女の頼みを、黄色スーツの女は却下した。
「みすみすメモリを奪われるような出来損ないの生徒に、かける情けは無いわ」
86 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/12(金) 16:42:33.67 ID:ll1rXKFu0
「放せってんだよ!!」
少女が怒鳴った。
「助けに来たんじゃねえのかよ! メモリ取り返しに行くから、これを解けってんだよ!!」
「はっ、男と性交するか、自慰行為しか能のない癖に」
「だから何だよ。あたしはなあ、仮面ライダーとセックスしたんだぞ!?」
「だから、その仮面ライダーが誰なのかを教えなさいと言ってるの!」
女が、少女の頭を蹴った。
「知るかよ! 名乗りもしねえし、名刺も捨てたし」
「…」
女は舌打ちした。少女に背を向けると、さっさと部屋を出ていってしまった。
「おい…どこ行くんだよ…放せよ…」
ジャリジャリと鎖を鳴らしながら、少女は身悶えする。
「せめて手だけでも…メモリのせいで、マンコ弄ってないとダメなんだって、知ってんだろ! おい!」
のたうつ音が、部屋に虚しく響く。
「じゃあ、トイレ…トイレくらい良いだろ? 夕べから行ってないんだよ…お願い、行かせてよ! 漏れそうなんだよ! オシッコ! オシッコがもう、我慢できないんだって…おい! …ひっ、もう出る、あっ、トイレっ、オシッコっ、おしっ……あ、あっ…あぁぁ…」
87 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/12(金) 19:15:57.01 ID:ll1rXKFu0
「花のメモリが、どうしてそんなに危険なんだ?」
「花?」
ネクタイを緩めながら、リンカは首をひねった。
「だって、『リイン・カーネーション』だろ?」
「…ああ。いえ、カーネーションではなく『リ・インカーネーション』。『転生』です」
「転生…?」
「このメモリは」
丸めたスーツを慎重に広げると、中のメモリを両手で掴み、電灯の下に掲げた。
「戦闘能力を持ちません。代わりに、持ち主の記憶や意識を、メモリ内にバックアップします」
「そんなことができるのか」
目を丸くする徹。リンカは頷いた。
「このメモリは、持ち主が死亡するか、不可逆的に死に近い状態になった時に初めて起動します。持ち主の遺志に呼応して自律行動し、次の持ち主を探します」
「見つけたら、どうなる?」
「強制的に体内に挿入されると、前の持ち主の意識・記憶で次の持ち主…いえ、宿主と言ったほうが良いでしょう。宿主の脳内を上書きします」
「な、何て迷惑なメモリだ…」
リンカの手の中で、ビクビクと動くメモリ。その端子は、真っ直ぐに徹の方を向いている。
「ええ。貴方からしたら迷惑でしょうが…このメモリは、どうやら貴方が目当てのようです」
「!? そんなことされる覚えは無いぞ?」
「どうでしょうか。それを知るには、貴方が宿主になるしかないでしょう」
「じょっ、冗談じゃない!」
飛び上がる徹。すかさずリンカが、無表情に言う。
「冗談です」
「な、何だよ…」
88 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/12(金) 19:17:07.35 ID:ll1rXKFu0
「代わりに、こうしましょう」
リンカは徹のノートパソコンを立ち上げると、側面に指を沿わせた。そして、目当てのソケットを見つけると、リインカーネーションメモリをそこへ挿し込んだ。
「えっ、それで行けるのか?」
「ロイミュード…機械に近い存在が、ガイアメモリを使用した事象があります。折角USBメモリに準じた造形をしているのですから、活用してみるのも手でしょう」
言いながら、キーボードを何やら操作する。
と、画面に一つのウィンドウが現れた。それから遅れて、一人の人間の顔が映し出された。その顔に、徹が思わず声を上げた。
「く…熊笹!?」
”その声は…力野か!”
画面の中の男は、安堵したように口元を緩ませた。
”そうか、見つけてくれたか…”
「待て、熊笹。このメモリにお前がいるってことは、お前は…」
画面の中で、熊笹が頷いた。
”ああ。ここで僕と君が話してるということは、僕はもう死んだんだろう。一か八かでメモリを使ってみたが…”
「どうして! 何をやらかしたんだよ!」
画面に詰め寄る徹。リンカは何も言わず、静かに部屋の隅に引っ込んだ。
”順を追って話そう。僕は、この街で相次いでいる怪奇現象について調べていた___”
彼は、ドーパントなる怪人の存在、ガイアメモリと呼ばれる記憶媒体、それを扱う密売人について知り、遂にはガイアメモリを造る工場の位置を突き止めた。工場に忍び込み、証拠のメモリも入手した。しかし、それを密売人たちに見つかってしまい、追われる身となった。彼は逃亡を続けながら、メモリをケースに詰め、工場の位置を記した紙と一緒にある場所に隠した。その後、追いつめられた彼は、一緒に持ち出したリインカーネーションのメモリを使用し、直後に彼らに殺害された___
「熊笹、あんた…」
”今はまだ知られていないが、いずれ僕が、ガイアメモリとしてまだ生きていることがバレるかも知れない。そうなったら、メモリを持っている君に危害が及ぶだろう。…このメモリは、すぐに破壊してくれ”
「だが、そんなことをしたら」
”良いんだ”
熊笹は、微笑んだ。
”どうせ僕は、あの夜死んだんだ。これは僕からの、最期のメッセージだ”
それから彼は、盗んだメモリの隠し場所を口頭で説明した。それを徹が紙に記録したのを確かめると、言った。
”さあ、メモリを破壊してくれ。手遅れになる前に。そして…どうか、奴らを追い詰めてくれ。君まで危険に晒すのは忍びないが…”
「…安心してくれ、熊笹」
徹は立ち上がると、ドライバーとメモリを掲げた。
”! それは…”
「お前の遺志は、俺が継ぐ。俺が戦って、お前を手にかけた奴らを徹底的にぶっ潰してやる! だって…」ファンタジー!
『…俺は、仮面ライダーだ』
”! そうか…君が、仮面ライダー…”
『ああ。だから、安心して任せてくれ』ファンタジー! マキシマムドライブ
『…ファンタジー・イマジナリソード』
白い光を放つ剣が、パソコンごとメモリを両断する。画面の中で、熊笹は目を閉じ…消えた。
変身を解除すると、徹は切り裂かれたメモリの前にしゃがみ込んだ。
「熊笹…」
祈るように閉じた目の端を、涙が伝った。リンカはじっと黙ったまま、その隣に膝を突いた。
89 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/12(金) 19:19:56.77 ID:ll1rXKFu0
『Fを探せ/画面越しの朋友』完
今日はここまで
90 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/12(金) 19:36:49.76 ID:ll1rXKFu0
『リインカーネーションドーパント』
『転生』の記憶を内包するメモリを使用した、フリーライターの熊笹修一郎その人。ドーパントに分類してはいるものの、ドーパント体は存在せず、戦闘能力も皆無。
このガイアメモリは一度コネクターに挿入すると、使用者が死亡するか、それに近い状態になるまで排出されない。死亡するまでの使用者の記憶や意識をメモリ内に複製し、死後体内から排出されると、次の使用者を探して自分で飛び回る。次の使用者は、前の使用者がそうと決めておくか、漠然と『会いたい』と思った相手が選ばれる。次の使用者の体内に強制的に挿入されると、相手の脳内を前の使用者の情報で上書きし、文字通り『転生』させる。一連の工程は不可逆で、一度上書きされた相手の人格は消滅し、以後は前の使用者として生きていくことになる。また、転生先が死亡するとまたメモリが排出され、次の転生先を探して飛び回る。メモリブレイクされるまでは、理論上は永遠にこの工程が繰り返されることになる。
熊笹は密売人から逃げる途中、盗んだ中にあったこのメモリの字面だけを見て、自分の死後も役立つと信じて使用した。
メモリの色は緑。項垂れる人間の肩から上と、その肩をあすなろ抱きするように両腕を回す、一つ目の幽霊が描かれている。人間の頭部と肩の線、或いは幽霊の頭部と両腕が『R』の字になっている。
91 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/12(金) 19:39:43.25 ID:ll1rXKFu0
>>75
をアレンジして採用させていただきました。ありがとうございました。
それから
>>82
に補足
メモリの色はピンク。両耳をぴんと立てた兎の頭部が逆さまに描かれている。言うまでもなく、耳と頭部で『R』の字を形成している。また、ミヅキはメモリにラメやスパンコールを大量にくっつけてデコレーションしている。
92 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/07/12(金) 20:27:07.13 ID:KKCeNzA00
おつー
ガイアメモリ:ワイルド
「野生」「自然」の記憶を内包するメモリ
しかし、このメモリには隠された力がある
すなわち「ワイルドカード」に由来する「切り札」である
93 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/07/12(金) 20:44:39.94 ID:zrjvJvAlO
おつおつ なんか案だしたいけどカッコいいのが思いつかないの悔しい
94 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/07/12(金) 21:33:00.05 ID:5tO5a7P40
アイドルメモリ
スポットライトを浴びる横置きされたマイクで描かれた宝石で出来ているかのようなメモリ。
人間を虜にする能力を持ったドーパントにする。副作用で美形になるが、承認欲求に歯止めが利かなくなる。
95 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/07/12(金) 23:53:19.59 ID:349qYt5W0
セイバーメモリ
『剣』の記憶のメモリで、細長い曲刀(シャムシール的な)がSの字を描いている。次世代型メモリ
古今東西、実在するものも、架空の(例えばアーサー王のエクスカリバーや、ジェダイのライトセーバーなど)ものの記憶も有する
単独でドライバーを介して用いれば、剣の力を備えた仮面ライダーになるかもしれないが、
その記憶はファンタジーにとって剣のイメージを補強し、具体化や発展にも繋がるだろう。
メタくいうと、基本のファンタジー騎士形態を強化する中間フォーム用。ウィザードフレイムドラゴンあたりの枠
96 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/07/13(土) 00:00:21.21 ID:+X/7FrBao
ガイアメモリ一覧見たら結構あって面白い
97 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/07/13(土) 00:43:46.49 ID:fvnBbpSg0
シネマメモリ
『映画』の記憶を内包したメモリ。
映画のフィルムが『C』を描いたような印が描かれている。
自身の定めた空間を『スタジオ』と定義し、自身の思うがままに操ることができるメモリ。このメモリの影響下においては物理法則すら無視する。
しかし、適合率が高い人物や『スタジオ』の外に出てしまった物には干渉できない。
98 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/13(土) 09:44:15.59 ID:RHhQBJf20
周囲に人がいないことを確認すると、徹はそっと自販機の取り出し口に手を差し入れた。
「!」
内側に、何かがテープで貼り付けられている。剥がして手に取ると、それは小さな鍵であった。
熊笹からガイアメモリ製造工場について聞いた翌日、2人は彼の遺した言葉に従って、証拠品のメモリを回収に向かっていた。メモリの入ったケースと鍵は別々に隠されていて、たった今鍵を回収したところであった。
「北風町公民館裏の自販機…2台ある内、風都くんが描かれている方。これで鍵は手に入れた」
「ケースの方は…」
「産業廃棄物処理施設、そこに放置された、廃トラック…!」
鍵を上着の内ポケットに入れると、徹は早足に歩き出した。
風都との境界線とは逆方向に進んだ、山の中腹。そこには広い産業廃棄物の廃棄場があり、風都のみならず他の工業地域から大量のゴミが持ち込まれていた。『産廃反対』の看板が立ち並ぶ中、錆びついて打ち捨てられた軽トラックを発見した。鍵もかかっていないドアを開け、シートを引き剥がすと、空になったエンジンルームに、銀色のアタッシュケースがあるのを見つけた。
「これか…!」
取り上げ、車の外へ出す。B5サイズほどの小さなケースで、持ち上げると手にずっしりと来た。
「ここで開けましょう」
「ああ」
鍵を挿し込み、蓋を開ける。
中には、5本のガイアメモリと、1枚の紙切れが入っていた。徹は紙切れを、リンカはメモリを、それぞれ調べる。
「博物交易、第九貨物集積場の四番倉庫…の、地下…?」
「『サーバルキャット』『トライセラトップス』『オパビニア』『スリープ』…これは?」
リンカが取り上げたのは、メモリというよりは回路に端子が直接くっついた、部品のようなものであった。
「何だそりゃ?」
「メモリのプロトタイプのようです。ですが、何の…?」
回路上のスペースには、無数の節に分かれ、短い脚が何本も生えた節足動物のようなものが描かれている。どうやら、アルファベットの『I』と読ませるようだ。ボタンを押すと、従来のメモリ同様に声がした。
『アイソポッド』
「…『アイソポッド』?」
どんな意味なのか分からず、きょとんとリンカの方を見た。そして、ぎょっとした。
「馬鹿な…そんなことは、あり得ない…」
リンカは虚ろな顔で、早口に「嘘だ」「まさか」などと呟いていた。
「…り、リンカ?」
「まさか…リストに無い…このメモリは、完全に…」
それから、はっと徹の方を見る。
「…行きましょう」
「行くって、どこに」
「紙に書かれていた場所、ガイアメモリ製造工場。急ぎましょう、今すぐに!」
「ま、待てよ! 流石に体勢を整えてからでも」
「事情が変わりました。事態は、一刻の猶予も無い…!」
見たことのない彼女の剣幕に、徹は思わず頷いた。
「わ…分かった」
99 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/13(土) 09:44:58.71 ID:RHhQBJf20
徹が門の前にバイクを停めると、リンカはタンデムシートから飛び降りた。ヘルメットを外しながら、警備員の元へ駆け寄る。
「おい、待て!」
徹の制止を聞かず、リンカは警備員に詰め寄った。
「財団Xです。ここを通しなさい」
「財団…何だって? 許可証かアポはあるの?」
「ここがミュージアム傘下の施設であったことは分かっています。責任者を呼びなさい!」
「ちょっ、ちょっと待ってくれよ…」
警備員は困惑しながらも守衛所に引っ込むと、どこかへ電話を掛けた。
数分後、門が静かに開いた。
「あ、開いた…」
「行きましょう」
広い敷地を走りながら、徹は質問した。
「さっきの会話…『ミュージアム』って、何だよ?」
「数年前まで風都でガイアメモリを開発・製造していた組織です。今は壊滅し、幹部は全員死亡しています」
「それが、何でここで」
「それが知りたいのです」
足を止めず、リンカは言う。
「既に消滅したはずの組織に設備が、何故未だに稼働しているのか…生き残った下部構成員が、個人的な資金稼ぎに細々と動かしているだけかと思っていましたが…」
目の前に、『4』と書かれた建物が現れた。
「第四倉庫…!」
2人は、開け放たれた倉庫の中へ飛び込んだ。
広い倉庫の割に、置かれている荷物は少ない。地下へ向かう階段が無いか探していると、不意に後ろから声がした。
「やあ、お探しものかね」
「!」
振り返ると、作業着姿の男が一人、立っていた。
「この集積場の責任者の、真堂だ。君たちが慌ててこの倉庫に走って行ったと聞いたものだから、追いかけてきたよ」
「工場の作業員風情が、随分と出世したものですね」
リンカが、冷たい声で言い放った。それは、出会って間もない頃に、徹が一度だけ耳にした声色であった。
真堂は、平然と頷いた。
「ああ。こう見えても、一生懸命働いてきたものでね。上司がいなくなって、一時期は路頭に迷いかけていたが、今では新しい上司のもと、充実した日々を送っているよ」
「上司…母神教、『お母様』ですか」
「ほう、財団はそこまで把握しているか」
「真堂!」
徹が声を張り上げた。
「熊笹を殺したのは、お前だな!?」
「熊笹? ……ああ!」
真堂は突然、声を上げて笑いだした。
「ああ、なるほど! あの小魚に、仲間がいたか。…君、悪いことは言わないから、その女から離れたまえよ。雑魚記者の分際で財団Xに関わるんじゃない」
「貴様…」
ドライバーを手に取ろうとした徹を、リンカが止めた。
100 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/13(土) 09:45:56.50 ID:RHhQBJf20
「少し待ってください」
「でも」
「どのみち、すぐに使うことになります。…真堂。熊笹修一郎の遺したメモリを拝見しました。その上で、お訊きします。どうやって、造った? ……『新種の』メモリを!」
すると、真堂の顔が、待ってましたと言わんばかりに明るくなった。胸を叩き、誇らしげに言う。
「やはり、そこにあったか! …如何にも。ある時期から長い間凍結されてきた、新種メモリの開発を、我々は成し遂げた! 君たちが見たのはプロトタイプだが…」
作業着のポケットから、赤茶色のガイアメモリを取り出し、掲げる。
「!!」
『アイソポッド』
「…今では、こうして完成にこぎつけた。折角だから、ここでお披露目といこうか。もっとも、それは目撃者潰しでもあるがね!!」
メモリを後頚部に刺すと、彼の体は硬い殻に覆われた、ダンゴムシめいた姿へと変貌した。
「もう、使うからな! …変身!」ファンタジー!
徹はドライバーを装着し、仮面ライダーに変身した。
「おっと、雑魚記者の正体は、仮面ライダーだったか。折角だ、一石二鳥といこうじゃないか」
ドーパントが細く節くれだった手を叩くと、何処からともなく大勢の若者や男たちが現れた。
「さあ、『お母様』の愛を、彼らに知らしめてあげなさい」
「はい!」ホーネット
ホーネット マスカレイド マスカレイド ホーネット マスカレイド マスカレイド ホーネット…
たちまち倉庫の中は、大量のドーパントに埋め尽くされた。
「人命は考慮しなくても構いません」ミサイル
黒い銃を抜き、オリーブドラブのギジメモリを装填する。
「…殲滅します」
101 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/07/13(土) 10:08:35.64 ID:RHhQBJf20
『ファンタジー…ミスティークエンド!!』
「ぐわあぁぁっ!!」
魔法陣から放たれた炎や氷が、ドーパントの群れを襲うと、マスカレイドドーパントは爆散し、ホーネットドーパントは人間に戻った。
『これで…手下は片付けたぞ…!』
息も絶え絶えに、ファンタジーがアイソポッドドーパントに詰め寄る。ドーパントは牙の生えた円形の口を蠢かせながら、キシキシと嗤った。
「だが君、満身創痍じゃないか」
『っ…』
魔術師の姿をとったファンタジーだが、その衣服はあちこち破れて、下の装甲まで傷が入っていた。そしてその足元には、銃を握ったままのリンカが倒れていた。忍び寄ったマスカレイドドーパントに、後ろから殴られたのだ。
ファンタジーは騎士の姿に戻ると、剣を握った。
『だが…あと一人だ!』
斬りかかるファンタジー。ところが
『なっ…!?』
ドーパントの硬い外殻に、剣が弾かれてしまった。防御が薄そうな部分を狙って突きを繰り出すと、何と剣が折れてしまった。
「はっはっはっは…効かん!」
『ぐあっ!?』
細く硬い腕が、彼を殴り飛ばした。壁に打ち付けられながら、彼は宙にハンマーを描いた。
『これなら、どうだっ!』
マントを広げ、滑空しながらハンマーを振り下ろす。しかし、これも通じない。
「言っておくがね」
再度、振り下ろそうとしたハンマーを片手で止めると、アイソポッドドーパントは言った。
「私はまだ、実力の半分も出していないよ!」
『あ゛っ、がっ…』
ファンタジーの腹部に、拳が突き刺さる。彼はその場に崩れ落ちると…変身が解け、徹の姿に戻った。
「では、さらばだ。あの世で小魚同士、仲良く恨み給え。我々、捕食者を…!」
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