【安価】ガイアメモリ犯罪に立ち向かえ【仮面ライダーW】

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674 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2020/02/19(水) 22:20:32.45 ID:2o4IasSZ0



「…7歳までのことは、覚えてない」

 ゆっくりと、少女が立ち上がる。

「7歳からのあたしは、男の玩具。14歳までは、ものを考えられないお人形」

 ロストドライバーを、腰に装着する。

「…17歳までのあたしは、操り人形。偽物のママに愛されたくて、たくさん人を殺した…」

『ミヅキ…』

「罪なら…もう、数えたよ。あたしの罪…本当のママのこと、綺麗さっぱり忘れちゃったこと。人を傷付けながら、そのくせ愛をおねだりしてたこと。…」

 デュアルの方をじっと見つめて、続ける。

「…本当に愛する、愛してくれる人に、死ぬ時まで気付かなかったこと」

 よろよろと立ち上がるドーパントに、視線を戻す。

「誰も、許してくれないと思う。許してなんて言えない。でも……一度だけでいい。やり直せるのなら…!」

 彼女は、一角獣から受け取ったメモリを目の前に掲げた。
 ピンク色の筐体。描かれているのは、走る少女の横姿。翻ったスカートの裾が『A』の文字を描いている。

「あたしは、戦う!!」
675 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2020/02/19(水) 22:21:00.11 ID:2o4IasSZ0




『アリス』



676 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2020/02/19(水) 22:21:30.56 ID:2o4IasSZ0
「変…身!!」

 ミヅキの身体が、光りに包まれた。
677 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2020/02/19(水) 22:22:45.00 ID:2o4IasSZ0
今夜はここまで
678 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/02/19(水) 22:25:40.83 ID:phm1VaUq0
otu
679 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/02/19(水) 22:28:40.14 ID:pVgA3rBfO
よき……
680 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/03/13(金) 02:14:44.15 ID:Rg+9H8xvO
お忙しいのかしら
681 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2020/03/13(金) 22:00:38.59 ID:Mvxsle2p0



『アリス』



 無数のトランプカードが、旋風と共にミヅキの体を覆う。それはドレスめいた装甲へと変わり、やがて彼女は赤と白と黒の仮面ライダーとなった。

『…これが、新しいあたし』

「ミヅキちゃん…」

 リビドードーパントが、ゆらりとミヅキに…仮面ライダーアリスに、肉薄する。

『行くよ!!』

 胸の前で交差した両手に、2挺の拳銃が出現した。片方は紫で、片方は赤。紫の銃を向けると、無数の弾丸が放たれた。

『たあっ!』

「んあああっっ!!」

 撃たれながらも前進するドーパント。アリスも、引き金を引きながら走り出す。
 2つのキックが、交差した。

『はあっ! やあっ!』

「んんっ! あはぁっ!」

 しなやかで鋭い攻防。鞭のようにしなる連撃を掻い潜ると、アリスは胸元に赤い銃を向けた。

『これでっ…!』

「んはあぁぁああっっ!!」

 灼熱の弾丸が、ドーパントの身体を吹き飛ばす。
682 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2020/03/13(金) 22:01:30.26 ID:Mvxsle2p0
 アリスはドライバーからメモリを抜くと、赤い銃のスロットに装填した。



『アリス!』



 右の踵に赤い銃を。左の踵に紫の銃を。それぞれ装着する。



『マキシマムドライブ』



『はあぁぁぁぁ…』

 アリスは助走を付けると、空高く跳躍した。そして、左足を敵に向けて突き出した。

『アリス・イン……』

 無数の弾丸が、吹き飛ぶドーパントの身体を空中に縫い止める。
 アリスは空中で身体を捻りながら、右足を高く突き上げた。その、赤い銃口に、色とりどりの巨大な光弾が膨れ上がる。
 重力に任せて落下しながら、アリスはそれを、リビドードーパントに___

『…ワンダーランドっっ!!!』

 ___叩きつけた。

「んああああああっっっ!!!!」

 絶叫しながら光弾に灼かれるドーパント。その身体が、ピンク色の靄に包まれ…消えた。
683 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2020/03/13(金) 22:02:44.10 ID:Mvxsle2p0
『肥大するL/少女は戦う』完

今夜はここまで
684 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2020/03/13(金) 22:24:31.39 ID:Mvxsle2p0
『仮面ライダーアリス』

 『少女』の記憶を内包するガイアメモリで、兎ノ原美月が変身した姿。トランプと兎を混ぜた意匠の、ドレスめいた装甲と仮面を纏い、ラビットドーパント時代の足技と、性質の異なる二挺の拳銃『マッドハッター』『ハートクイーン』を使って戦う。
 ドミネーターに殺害されたミヅキであったが、その魂はラビットメモリと強く癒着しており、メモリブレイクと同時に彼女の自我は、メモリに書き込まれた兎の記憶に引き摺られて『地球の本棚』へ辿り着いた。そこで記憶を失って彷徨っていた彼女を見つけたのが、青年フィリップであった。同時期にメモコーンに授けられたラビットメモリの残骸から、彼は彼女の性質を見抜き、彼女の魂を身体へ返すことを考えた。
 彼は『不思議の国のアリス』を軸に、ラビットメモリから抽出した記憶、そして囚われた魂を新たな筐体に移し、次世代型メモリ『アリスメモリ』を完成させた。最後にサイクロンメモリを通してミヅキの自我を書き込まれたアリスメモリは、メモコーンによって身体だけの彼女の手に渡った。魂と自我が身体へ戻ったことでミヅキは生前の記憶をも取り戻し、完全な復活を遂げたのであった。
 必殺技は『アリス・イン・ワンダーランド』。銃を両足に装着し、マッドハッターから放たれる無数の弾丸で敵の身体を捕らえ、ハートクイーンの強烈な光弾を叩き込む。
 メモリの色はピンク。ワンピースを着た駆ける少女の横姿が描かれ、翻るスカートが『A』の文字を象っている。かつて悪魔と呼ばれた男が、誰かを救うために創った、最初で最後のメモリである。
685 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2020/03/22(日) 22:19:04.28 ID:OM4TliQx0
ガイキ&かなえルートと母神教&井野遊香ルート どっちから先に見たいですか?
例によって順番の問題なので最終的にはどっちも書きます
686 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/03/22(日) 22:31:31.60 ID:cwG22xI70
母神教&井野遊香ルートに一票
687 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/03/22(日) 22:57:46.20 ID:9dx+XscXO
わいも母神かなー
688 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2020/04/01(水) 20:45:28.71 ID:RnNhpvao0
『…』

 メモリをドライバーから抜くと、『アリス』の装甲が剥がれ落ちていく。中から現れた、一度失われた筈の少女を、彼もまた変身を解除しながら見つめた。

「仮面ライダー、さん…」

 ぽつり、ミヅキは呟いて…それから、気まずそうに微笑んだ。

「…えっと、名前、知らないや」

「徹。力野、徹だ」

「徹。…徹っ!!」

 叫びながら、彼女は徹の胸に飛び込んだ。

「徹…とおる…」

「ミヅキ…おかえり…!」

 固く抱き合い、涙を流す2人を、リンカは気まずそうに眺めていた。
689 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2020/04/01(水) 20:46:04.50 ID:RnNhpvao0



「母神教のボスは、こいつで間違いないんだな?」

 坂間が差し出した写真を見て、ミヅキはすぐに頷いた。

「幹部にも知らない奴がいる中で、お前は正体を見せられるほどに信頼されてた、ってわけか」

「…じゃないの」

 坂間は、机越しに彼女をジロリと睨んだ。
 ここは北風署の取調室。再会を果たした徹たちであったが、いつまでも喜んでいられない。彼女が正気を取り戻したことは、リビドードーパント・咲原ナギを通じてすぐに知れるだろう。今の内に、できる限りの情報をミヅキから得ておきたかった。

「お前の今までの罪を、立件しようと思えばできるんだぞ」

「なら、したら良いじゃん。あたしはもう、逃げないよ」

「おい、よさないか坂間」

 一触即発の空気に、植木が割り込んだ。

「今の所、得られるのは彼女の自供だけだ。物証は殆ど残っちゃいないだろう。それに、彼女はまだ17だ」

「…」
690 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2020/04/01(水) 20:47:35.12 ID:RnNhpvao0
 不服そうにミヅキを睨む坂間。ミヅキは、真っ直ぐに見つめ返して、言った。

「…あたしは、逃げない。裁きはちゃんと受ける。もし死刑になっても…仕方ない」

「兎ノ原さん…」

 植木は、呟くように言った。

「君に、どんな心境の変化があったのか分からない。我々としては、当然掌を返して君を信じるわけにはいかない。だから…そうだな。当面は、うちの留置室にいてもらう。ただ、怪しい行動をしなければ監視は順次減らしていくし、我々か力野さんたちが一緒なら、外を歩いても良い」

「…うん、分かった」

「最後に…」

 椅子から立ち上がりかけて、ふと植木は尋ねた。

「…力野さんが言うには一度死んだ君が、何故生き返ったのか…本当に、覚えていないんだね?」

「…」

 ミヅキは、小さく頷いた。

「死んだときのことは、大体覚えてる。でも、そこから先はよく覚えてない。白い空間にいて、誰かと話してて、気がついたら街中に立ってた」

「分かった。もういいよ」

 植木は溜息を吐くと、取調室を出た。その後ろを、憮然とした顔の坂間が、苛々と歩いた。
691 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2020/04/01(水) 21:03:48.18 ID:RnNhpvao0



「…クソッ、どいつもこいつも情に絆されて…」

 夜の住宅街を、坂間が歩いている。その手には、空の缶ビール。道すがらコンビニで買って、家まで待ちきれずに飲んだのだ。
 未成年だろうが、相手は重罪人だ。母神教の幹部としてガイアメモリを町にばら撒き、人を殺した。改心したなど、嘘に決まっている…

「…あ」

「…」

「…あのっ」

「何だよ…っ!」

 声荒く振り返って、彼はぎょっとした。
 白い街灯の下で、一人の女が立ち尽くしている。頼りない灯りに照らされた女は、薄いカーテンのようなものを身体に巻き付けただけの裸だった。

「ど、どうしたんだ!? 君、その格好は…」

「助けてっ…助けてください…」

「安心しなさい、私は警察官だ。すぐに君を保護し」

「警察っ!?」

 坂間の正体を知った瞬間、女は踵を返して駆け出した。しかし、坂間はその腕を掴んで離さない。

「待てっ、何の事情か知らないが、悪いようにはしない!」

「駄目っ、警察は、駄目…」

 抵抗する女。しかし、力の差がありすぎる。
 やがて彼女は諦めると、啜り泣きながらその場に座り込んだ。

「…何があったんだ。どうしても警察が嫌なら、どこか別の場所で話しても良い。…君は、一体何者なんだ…?」

 女が顔を上げる。涙に濡れたその顔に、彼は奇妙な既視感を覚えた。
 果たして彼女は、とんでもない答えを彼に投げて寄越した。

「井野…井野、遊香…」

「井野…? って、まさか」

 女…井野遊香は、震える声で言った。

「死んだと思ったのに、何で…生き返りたくなんて、なかった…!」
692 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2020/04/01(水) 21:04:29.54 ID:RnNhpvao0
今夜はここまで
693 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/21(木) 21:26:01.63 ID:KqMdvlE1O
まだか
694 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/07(金) 03:28:53.65 ID:QaSzvrwAO
保守
695 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/27(日) 15:26:35.73 ID:S0CzPl9FO
696 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2020/11/05(木) 20:38:32.63 ID:/oicLHpY0
「遊香はどこに行った!?」

 ナギの胸ぐらを掴んで井野は怒鳴った。

「さぁ〜? あたし、知らなぁ〜い」

「ふざけるな! やっと意識が戻ったと思ったら…おい、お母様!」

 祭壇に目を向ける。祭壇は分厚いヴェールで閉じられていて、その向こうで一人分の影が、微動だにせず立っているのが見える。

「何で遊香を逃したんだ! 何で、遊香は…」

「生き返っても、気持ちいいこと無いって思ったんじゃないのぉ?」

「そんなはずあるか! 遊香は、本当は死ぬ必要なんて無かったんだ。折角生き返れたのに…」

「…もう、良くない?」

 聖堂の隅に座っていたユウダイが、おもむろに口を開いた。

「遊香さんが必要なのは、お母様を生き返らせるためでしょ? もうお母様は帰ってきたんだから、後は自由にさせてあげたら」

「…っ」

 井野は歯軋りすると、冷淡な彼らに背を向けた。そして足音荒く、聖堂を後にした。

・・・

「多分、知ってると思います。わたし、仕事が辛くてビルから飛び降りて…一度、死にました」

「でも、気がついたら薄暗い部屋にいて…そこに、兄もいました。それに『お母様』も」

「最初は喜んだんですけど…すぐに、自分が生き返った理由を…そして、兄がしてきたことを知って…それで怖くなって、逃げてきました」

「それでも…あんなことをしたけど…でも、わたしの兄だから…家族だから…お願いです、どうか、警察だけは」

・・・

「実は、ちょっとだけ覚えていることがあるんだよね〜…」

 レモネードをストローでかき混ぜながら、ミヅキが口を開いた。

「覚えてるっていうか、思い出したっていうか…多分、『身体』の方が覚えてたんだと思うんだけど」

「どんなことを?」

 徹が尋ねた。
 ここは、北風駅前のカフェ。一度リンカと来たことのある店だ。今、奥のテーブル席にミヅキが、その向かいに徹とリンカが、隣り合って座っていた。

「変な、あったかい液体に浸かってたの。それで、頭の上で草の根みたいなのがうねうねしてた」

「あの時ガイキが、井野遊香に使用したメモリは『ヴォイニッチ』と言うものでした」

 リンカが口を挟む。

「刻まれた記憶は『ヴォイニッチ手稿』」

「あの、未解読の言語で書かれてるオカルト書か? どんな力があるんだ」

「分かりません。或いは、最初から意味など無いのかも」

「だけど、現にそれで成瀬とミヅキは生き返ったわけで」

「いえ。『意味のない』ことに意味がある。ということです」

「?」

 首をひねる徹に、リンカは言った。

「…以前、成瀬と共に『地球の本棚』に入った、そう言いましたね?」

「ああ」

「であるならば、成瀬…マザードーパントには、地球の記憶を改竄する能力がある可能性があります。最初から意味のないヴォイニッチ手稿の記憶を白紙のノート代わりにして、自身の都合の良い能力を書き加えたのかも」
697 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2020/11/05(木) 22:09:36.96 ID:/oicLHpY0
「え〜、じゃあ、いよいよメモリの能力はお母様しか知らないことに…」

 そこでミヅキは、ふと口をつぐんだ。窓の外をちらりと見て、呟く。

「何か、外がうるさくない…?」

 徹とリンカも、外を見て…弾かれたように立ち上がった。
 道路に、一人の警官が倒れていた。そこに、剣と斧を持ってゆっくりと迫るのは、青銅の騎士。

「ま…不味い! リンカ、悪いけど会計…」

「私も出ないと! ミヅキ、これで会計を」

「えっ? ちょ、待ってよ!」

 ミヅキに5千円札を押し付けると、リンカと徹は喫茶店を飛び出し、ドライバーを身に着けた。

「「変身!」」トゥルース! ファンタジー!

・・・

「遊香を! 遊香を出せぇっ!」

 倒れた警官に向かって、青銅の剣を振りかぶるネブラドーパント。そこへ、金色の大剣が飛来し、2者の間に刺さった。

『そこまでだ!』

「! 仮面ライダー…」

 憎々しげに唸るネブラ、井野。彼は警官から仮面ライダーに標的を変えると、剣と斧で斬りかかってきた。

「はあっ! せえっ!」

『くっ』

 地面から大剣を抜き、防御するデュアル。刃がぶつかると、奇妙な重圧が彼らを襲った。

”時間操作です。直接攻撃は、望ましくない”

『みたいだな。そらっ!』

 剣を乱暴に叩きつけると柄から手を離、マントを広げ後ろへと飛び下がった。そうして代わりにXマグナムを抜くと、次々に金色の光弾を撃ち込んだ。

「くそ! 小賢しい、このっ!」

 武器で光弾を撃ち落とすネブラ。

『いい加減、諦めたらどうだ! 母神教もお母様も、何度蘇ろうが、何度でも俺たちが倒す!』

「ふざけるな! 折角、遊香が帰ってきたのに…また、一緒に暮らせるのに…」

 言いかけたその言葉が、ふと止まった。
 仮面越しの彼の視線を追って、デュアルは慌てて銃撃を止めた。

『ミヅキ! 危ないから下がってろ!』

「…ミヅキ…何故、お前が」

「久し振り、井野さん」

 気まずそうに挨拶するミヅキ。デュアルは彼女を庇うように立つと、言った。

『ミヅキは、罪を償うと決めたんだ』

「…ふざけるな」

 震える声で、ネブラが呟く。

「ふざけるな…ふざけるな! 元はと言えば、お前が…お前が、おれの人生を! お前さえいなければ!!」

 叫びながら、彼は剣を振りかざして突進してきた。

『! …っく』

 両腕で斬撃を受け止めるデュアル。加速された刃が食い込み、思わず呻いた。
 ネブラは、怒りに任せて武器を振り回す。

「お前が! お前のせいで! お前のせいで、またメモリを使って…お、お前のせいで、おれは…」

 剣を振り下ろし、呟く。

「…お母様を、知ってしまった」

「井野さん…やり直そう。あたしにできたんだから、きっと」
698 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2020/11/05(木) 22:11:09.54 ID:/oicLHpY0
「…そうだ」

 不意に、ぞっとするほど冷たい声で、ネブラ…井野が、呟いた。

「そうだ…初めから…いなければ良かったんだ。お前も…遊香の会社も、仮面ライダーも、お母様も…」

『井野…』

「…この、世界も。おれと、遊香だけで良かったんだ…!」

『井野!?』

 哄笑しながら、両手を空に掲げる井野。その頭上に突如、巨大な青銅の円盤が出現した。

「かっはははははっ!! そうだ! この世界! 遊香以外の世界を、全て削り取ってしまえば…」

 円盤に、金色の線が走り…周囲に、無数の熱線を放ち始めた。

『やめろ!!』

「…この世には、おれと、遊香だけだ」

 デュアルは両手を掲げ、球形のバリアを張り巡らせる。間一髪で無差別殺戮光線を防ぐと、彼は叫んだ。

『ミヅキ! 周りの人を避難させるんだ! …それから、遊香って人は、絶対にこっちに連れてくるな!』

「わ、分かった!」

 バリアをすり抜け、ミヅキが叫びながら人々を誘導し始める。

”…ネブラメモリに、完全に理性を飲み込まれたようです”

『ああ…一刻も早く、俺たちでこいつを止めるぞ!』
699 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2020/11/05(木) 22:28:19.43 ID:/oicLHpY0
・・・

「…遊香さん、お茶でも」

「あ、ありがとうございます…」

 坂間から湯呑を受け取ると、遊香はおずおずと口を付けた。
 彼が遊香を拾ってから、もうすぐ1週間になる。独り身なのを良いことに自宅のアパートに匿ってしまったことを、彼は後悔していた。
 一刻も早く、植木警部や警察に引き渡すべきだ。しかし、それでは…

「…!」

 不意に彼の携帯電話が鳴った。画面には『植木警部』。痛む心臓を押さえながら、彼は電話を耳に当てた。

「はい?」

”駅前に、ドーパントだ。…井野だ”

「!! …す、すぐに」

 遊香をちらりと伺い、頷く。
 通話を切ると、遊香が静かに問うた。

「兄ですか」

「…はぁ」

「お願いです!」

 突然、遊香は坂間の腕を掴んだ。そうして、涙を流しながら訴えた。

「兄に会ったら…わたしは…遊香は、死んだと…また自殺したと…伝えてください」

「!!」

 彼女の意図を察した瞬間、彼は彼女の手を握り返した。

「…死んではいけない」

 彼女は、生きている。だが、兄への伝言を、彼女は真実にする気だ。すなわち

「お願い! 死なせて! わたしのせいで、兄は狂ってしまったの…だから」

「君は悪くない!」

 坂間は、泣き叫ぶ遊香を抱きしめた。

「お願い、行って! もう良いの…早く、兄を逮捕して!」

「駄目だ。君を一人にはしない…」

 坂間の携帯電話が、再び鳴る。それを止めようとした、その時
700 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2020/11/05(木) 22:28:46.86 ID:/oicLHpY0



「…みぃ〜つけ…たぁっ!」


701 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2020/11/05(木) 22:29:29.77 ID:/oicLHpY0
今夜はここまで

風都探偵の最新刊が出て、ようやくモチベが戻ってきました
カギカッコの使い分けとか結構忘れてるわ…
702 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/05(木) 23:38:57.69 ID:vyVHZ37pO
おかえり!しゅきいいいいい!(スクリーム感)
703 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2020/11/07(土) 15:11:51.19 ID:iwwEqEM40
忘れてた



『Nにさよならを/情に棹させば』完
704 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2020/11/07(土) 15:12:46.84 ID:iwwEqEM40
「咲原ナギ…お前のことは、聞いているぞ…」

 遊香を庇いながら、坂間が言う。咲原はニヤニヤ嗤いながら、彼ににじり寄る。

「あたしぃ…気付いちゃったのぉ…あなたたち2人で気持ちよくなっちゃうのも良いけどぉ…」

「! く、来るなっ」

「お肉と、お魚っていうか〜? 今は、お肉の気分って言うか…」

「ぐあっ!?」

「坂間さんっ!?」

 坂間を軽く蹴り飛ばし、遊香の腕を掴む。

「やっ」

「いらっしゃい。そしたら、みぃ〜んな、気持ちよくなれるわ!」

・・・

「逃げて! ここは危険なの!」

「ここは通行止めだ! …ええい、坂間は何をやってる!?」

 バリケードの前で車や通行人を追い返しながら、植木は毒づいた。その近くではミヅキが走り回って、人々を避難させている。逃げる人々に目を凝らしながら、その中に見知った顔がないか探していた。

「遊香…井野遊香さん…」

 ネブラドーパント…井野定は、彼女に会わない限り攻撃を止めないだろう。しかし、デュアル…徹は、彼女を会わせてはならないと言った。なら、そうするべきだ。自分にできることをしないと。本当は、自分も彼と一緒に戦いたいが…

「…?」

 人混みの中で、何かが目を引いた。遊香ではない。あれは…

「…!」

「…あっ、兎ノ原さん!?」

 『彼女』を見つけた瞬間、ミヅキは駆け出していた。
705 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2020/11/07(土) 15:13:15.08 ID:iwwEqEM40
・・・

「はははっ、ははははっ! 滅べ、滅びろ!」

『くっ、やめろっ、はあっ!』

 頭上の青銅板から、無数の熱線を放つネブラ。それが逃げる人々に当たらないよう、デュアルはバリアを出現させたり、剣で受け止めたりしている。時には間に合わず、身体で止めてもいる。

『はぁっ…はぁっ…』

「滅びろ、何もかも! 遊香以外は…」

 先程から攻撃が妨害されているにも関わらず、井野は動じない。或いは理性が崩壊して、奔走するデュアルの存在すら認識できていないのかも知れない。

”このままでは、保ちません”

『…』

”人手が必要です。ここは…”

『…駄目だ』

 徹は、唸るように言った。

『ミヅキを、また戦わせるわけにはいかない』

”…”

「死ね、死ね! 滅べ! こんな世界、遊香だけがいれば」



「そうそう! 妹ちゃんさえいれば!」



『!?』

 人々が逃げ去った駅前に、躍り出た人影。それを認めた瞬間、デュアルが叫んだ。

『咲原! あんた…っ、しかも』
706 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2020/11/07(土) 15:14:22.07 ID:iwwEqEM40
「離して…っ!」

 咲原は、もがく一人の女を引きずっていた。彼女の声を聞いた瞬間、ネブラの動きが止まった。

「…遊香? 遊香…そこにいるのか!」

 攻撃を止め、声の方へ歩き出す。

『よせ!』

「ええ、こっちよ! さあ2人で気持ちよくなって…そうしたら、あたしも…」

 ところが咲原の言葉は、一人の男の突進によって遮られた。男は遊香の手を取ると、自分の後ろ庇い、ネブラと咲原の前に立ちはだかった。

「遊香さん…逃げるんだ…」

「さ、坂間さん…」

『坂間刑事!? どうしてあなたが』

「そこをどけ!」

 ネブラが怒鳴った。

「遊香を寄越せ…遊香は、おれのものだ!」

「誰のものでもない!」

 坂間は、震える声で叫んだ。

「遊香さんは…遊香さんの命は…遊香さんだけのものだ! お前なんかが決めることじゃ」

「ふんっ!」

「ぐああぁっ!!?」

 青銅の腕で殴りつけると、坂間の身体が木っ端のように吹き飛び、電柱に激突した。

「坂間さん!?」

「遊香…」

 ネブラドーパント…井野が、妹のもとへと歩み寄る。

「さあ…こっちに来るんだ…また、一緒に暮らそう…」

「…お兄ちゃん」

「…おれたち、2人だけの世界で! さあ!」

「…ごめんなさい」

 遊香は、首を横に振った。ズボンのポケットに手を入れると、生成り色のガイアメモリを取り出した。



『ヴォイニッチ』



「わたしは…わたしの人生は…自分で決める…!」

『遊香さん! よせ…』

「…ああああああっっっ!!!」

 叫びながら遊香は、ヴォイニッチメモリを、胸元に突き立てた。
707 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2020/11/08(日) 19:29:57.99 ID:jyWBY75A0
 遊香の目から、光が消える。その頬を、夥しい未解読文字と不気味な絵が、猛スピードで流れていく。

「ゆ、遊香…」

 ネブラドーパントが、恐る恐る手を伸ばす。が

「うわっ!?」

「…」

 薄緑色の氷柱のようなものが地面から突き出し、その手を防いだ。
 遊香…ヴォイニッチドーパントが、呟いた。

「…星…が、わたしに…触れるな」

「遊香…遊香ぁっ!!」

 ネブラは突然叫ぶと、剣を振り上げた。斬りつける刃を、遊香は透明な刃で躱す。

「誰が! 誰が、お前を生き返らせてやったと!」

「…」

 頭上に、巨大な青銅の円盤が出現する。ネブラは…井野は…それを、妹に向けて、投げた。

「…お前さえ、いなければぁっ!!」

『井野…お前って奴はっ!!』

 デュアルが、大剣を掴んで飛び込み、円盤を受け止めた。

『いつも…何でもかんでも…他人のせいにして、被害者ヅラして…』

「おおお…おおおお…!」

『お前は、何も守れない、愛せない! 我が身が可愛いだけの…っ』

 そこまで言って、徹ははっと黙り込んだ。



 ___それは、自分も同じでは? 身の回りの悪い出来事…それを全て、風都のせいにして…



”…徹!?”

『! …ぐあっ!』

 青銅板が、デュアルの身体を弾き飛ばした。襲いかかる巨大な円盤を、遊香は未知のシダ植物を地面から生やして受け止める。

『く、そ…っ!』

・・・

「…違う」

 3者の戦闘を、遠くから眺めていたナギは、呟いた。

「違う…違う、違う、違う違う違う!! こんなの…全っ然、『気持ちよくない』っっっ!!」

 ピンクと虹色、2本のガイアメモリを振り上げ、一斉に起動する。

「エクスっっ!! …タシぃぃぃぃっっっ!!!!」



『リビドー』『エクスタシー』



「徹! …きゃあっ!?」

 戦場に駆け込んできたミヅキを襲ったのは…

「な…なに、これ…」

「はあんっ…み、みづき、ちゃあん…」

 そこにいたのは、ぶよぶよした巨大な肉塊であった。薄ピンク色の、ヌメヌメした球体は、下から生えた無数の触手をくねらせると、ゆっくりとミヅキの方を向いた。
 肉塊の前面…そこには、巨大な裂け目が縦に開いていた。無数に蠢く触手は、全て男性器の形をしていた。

「いっしょに…えくすたしいぃぃぃっっっ!!!」
708 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2020/11/08(日) 19:31:26.83 ID:jyWBY75A0
『ミヅキ…済まないっ!』

 倒れ伏すデュアルは、どうにか力を振り絞って、ロストドライバーとメモリを空へ投げた。どこからともなく駆けつけたメモコーンがそれを受け取ると、猛スピードでミヅキの元へと走った。

「! ありがとっ」

 ミヅキは、ドライバーを腰に装着した。

「…君を見てると、ちょっと前の自分を思い出すよ」アリス!

 『少女』のメモリを装填し、展開する。



『アリス!』



『だから…あたしが、楽にしてあげる!!』
709 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2020/11/15(日) 09:26:44.60 ID:XdpM2TrS0
・・・

「くそっ! くそおっ! 何で…」

「…」

『せえやっ!』

 青銅板をシダの葉で弾きながら、透明な刃で鎧を傷付けるヴォイニッチドーパント・井野遊香。妹に気を取られている間に、デュアルが後ろから斬りつける。
 向こうでは、巨大な生殖器の怪物と仮面ライダーアリス・ミヅキが戦っていた。

「ミヅキちゃん、ミヅキちゃんミヅキちゃああああんっ!!」

『たああああああっっ!!』

 打ちかかる触手を躱しながら、次々に弾丸を撃ち込む。

『メモコーン!』セイバー!

 メモコーンを変形させ、青いメモリを取り出す。アリスメモリから差し替えると、それは一角獣の頭部となった。
 アリスの手に、蒼と銀の長剣が現れる。それで、襲いかかる触手を斬り落とした。

『やあっ!』

「ぎいぃぃぃああぁぁっっ!!?」

 巨大な裂け目から泡立つ血を噴き、のたうつリビドードーパント。更に接近し、次々と斬りつけるアリス。

『井野…いい加減に、終わらせてやる…!』ファンタジー! マキシマムドライブ

 アリスも、メモリを銃に装填し、踵に装着した。

『アリス・イン…』アリス! マキシマムドライブ
710 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2020/11/15(日) 09:27:49.11 ID:XdpM2TrS0
 金と銀の矢が、ネブラドーパントに突き刺さる。
 色とりどりの光球が、リビドードーパントを呑み込んだ。



『デュアル・エクスプロージョン!!』

『ワンダーランド!!』



「ぐわあぁぁぁっっ!!」

「んあああぁぁ…っっ」

 崩れ落ちる、井野とナギ。その傍らで、各々のガイアメモリが砕け散る。
 倒れ伏す兄の元へ…ヴォイニッチドーパントが、ゆっくりと歩み寄った。

「ゆ…遊香…たすけ…」

「…」

 見下ろす虚ろな目に、一瞬だけ光が灯った。

「…お兄ちゃん」

 焼け焦げた地面に膝を突き、兄を抱き起こす。
 次の瞬間、2人を無数のシダ植物が覆った。

『何をする気だ!?』

 そこへ、気絶していた坂間が、目を覚まして駆け寄ってきた。

「やめろ、やめるんだ! …遊香さんっ!!」



「…一緒に、逝こう」



「遊香さあああぁぁんっっ!!!」

 2人の足元に、巨大な穴が開く。緑と赤の触手の蠢く穴の中へと、2人は消えた。
 穴が閉じる。何事も無かったかのように広がる、冷たいコンクリートを、坂間は叫びながら何度も拳で打った。
711 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2020/11/15(日) 09:29:16.07 ID:XdpM2TrS0
・・・

 一同が井野兄妹に気を取られている間に。倒れるナギの側へ、密かに近寄る者があった。

「…あった」

 彼は、ナギの傍らに転がる虹色のメモリを拾い上げると、怪しく微笑んだ。

「これで、やっとお母様の望む形になった…」

「…ふふ…気持ち、よかったぁ…っ」

 足元で、ナギが満足気に息を吐く。その身体が、たちまち白い灰となり…消えた。



『Nにさよならを/流されて永遠』完
712 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2020/11/15(日) 09:39:46.26 ID:XdpM2TrS0
『リビドードーパント』

『性欲』の記憶を内包するガイアメモリで、風俗嬢の咲原ナギが変身するドーパント。最初は全裸の女性を姿をしており、相手の性欲を増大させる霧を吹きかける程度の能力しか持たない。しかし、ドーパント態、人間態問わず性交を重ねることで性器が肥大していき、身体能力や霧の効果も増していく。しかしこのメモリが真に威力を発揮するのは、性欲を溜め込んだ時、つまり禁欲を続けた時で、溜め込まれた性欲によって身体能力が爆発的に向上する。
重度の快楽主義者であった咲原は、ガイキからこのメモリを渡されると、生来の欲望のまま能力を行使し強力な力を得た。しかし、異常性欲の彼女に禁欲など到底不可能であり、メモリの能力を極限まで引き出せるようになるのはエクスタシーメモリと併用してからになった。
メモリの色は臙脂(途中からピンクと間違えてたけどこっちが正しい)。♂と♀の記号を組み合わせて『L』と書かれている。



>>566をアレンジして採用させていただきました。ありがとうございました!
713 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2020/11/15(日) 09:57:49.08 ID:XdpM2TrS0
『リビドードーパント・エクスタシー』

リビドードーパントがエクスタシーメモリを追加で挿入した姿。肥大した性器は元のサイズに戻り、均整の取れた全裸の女の姿に戻っている。しかし、その頭に顔は無く、代わりに女性器が開いている。体格こそ下がったが身体能力は格段に上がっており、常に性欲を増大させる霧を全身から放っている。
エクスタシーメモリによる強い絶頂によってナギは全身の感覚神経が破壊されてしまい、快感を全く感じられなくなってしまった。それによってナギは常に禁欲を強いられている状態となり、遂にリビドーメモリの底力を引き出す結果となった。性欲が限界に達した彼女は巨大なビッグ・リビドーとなりミヅキに襲いかかるが、仮面ライダーとなった彼女に返り討ちに遭った。リビドーとエクスタシー、2本のメモリの限界出力に人間の体が耐え切れる筈もなく、メモリブレイクされた後はかつてのミヅキのように灰となって消えた。



『ラビットドーパント・エクスタシー』

ラビットドーパントがエクスタシーメモリを追加で挿入した姿。体毛は毒々しい紫になり、全身の筋肉量が増している。ハイドープであるミヅキの、ただでさえ高い身体能力が何倍にも向上し、人間どころか野生動物すら軽く凌駕する脚力や聴力を得た。その速度は、アクセルトライアルのマキシマムドライブを見てから全回避することさえ容易いレベル。
欠点は、『絶頂』のメモリと兎ノ原美月の相性が致命的に悪いこと。ドミネーターメモリの力で強制的に抜去され倒されてしまったが、そうでなくとも彼女はこの形態を長時間維持することはできなかった。適合率の低い上に、毒性があまりに高いエクスタシーメモリに蝕まれた彼女の身体は、ドミネーターのマキシマムドライブで完全に破壊され、徹の腕の中で灰となって消えた。
714 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2020/11/15(日) 10:22:05.40 ID:XdpM2TrS0
『ヴォイニッチドーパント』

『ヴォイニッチ手稿』の記憶を内包するガイアメモリで、井野遊香が変身するドーパント。姿形は人間態と変わりないが、全身を原本に記された未解読文字や不気味な挿絵が高速で流れるようになり、地球上に存在しないシダ植物や薄緑の透明な刃を繰り出して攻撃したりできる。
「言語としての体を成している」とされながらも、内容が未だに解読されていないヴォイニッチ手稿。その本当の意味は地球の本棚にすら記されておらず、無責任な解釈が何重にも書き重ねられた無意味な本となっている。地球の本棚に干渉できるマザードーパントはこれに目をつけ、自身が万が一死亡しても復活できるような保険とした。すなわち、描かれた挿絵を「植物と天体の力で復活する女性」と解釈し、メモリにその能力を付与することとした。これによってヴォイニッチドーパントとなった井野遊香は、クローバーメモリから植物の、ネブラメモリから天体の力を得、以てマザードーパント、成瀬ヨシノと、兎ノ原美月を復活させることに成功した。
もとよりヴォイニッチ手遞ソ縺ョ險俶?縺ォ諢丞袖縺ッ辟。縺上?∵勸騾の人髢薙?菴ソ逕ィ縺ィ使用と蜷梧凾縺ォ豬√@霎シ縺セ繧後k閹ィ螟ァ縺ェ『空白』縺ォ閼ウ縺瑚?舌∴蛻?l縺夂イセ逾槭′蟠ゥ螢翫☆繧九?ゆコ暮朱♀鬥吶′繝。繝「繝ェ縺ォ閠舌∴蛻?l縺溘?縺ッ縲∵ュサ莠。縺励※蜊雁ケエ邨後▲縺ヲ縺九i蠕ゥ豢サ縺励◆縺薙→縺ァ蝨ー逅??譛ャ譽壹↓險倥&繧後◆險俶?縺ォ遨コ逋ス縺悟ュ伜惠縺吶k縺九i縺ァ縺ゅk縲ゅ◎繧後〒繧ゅ?縺ソ蜃コ縺咏ゥコ逋ス縺ォ邊セ逾槭r陜輔∪繧後?√Γ繝「繝ェ菴ソ逕ィ縺碁聞蠑輔¥縺サ縺ゥ縺ォ蠖シ螂ウ縺ョ豁」豌励?失われていく。
メモリの色は生成り色。原本に記された文字のような線で『V』と書かれている。
715 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/16(月) 16:13:41.62 ID:VnpnKULj0
おお、なつい…
リビドーのLって使ったかどうかわからなかったから苦し紛れにS(セクシャルデザイア)にしたやつだ
716 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/19(木) 01:22:39.50 ID:WYYGCqTKO
メモリ募集まだ受け付けていたら…

シードメモリ

種子の記録が内包されたメモリ。植えついた者(物)から養分を吸い取り、発芽するという特殊なメモリである。
使用者の適合率が低ければ上記特徴から使用者から養分を吸い取り苗床にし、植物体ドーパントが生える。種を作り増やすために花の香りで人間や動物達を誘い捕まえ、花粉を植え付けたり精液を取り込む事で種を増やし、そのまま相手を新しい種の苗床にする。

また使用者の適合率が高いと種(メモリ)が使用者を有益と判断し、寄生ではなく共生を選んで使用者を植物体ドーパント(人型)にする。
オスであれば種付けおじさん、メスであれば種絞りおb…お姉さんの才能が開花したドーパントになり、種を増やそうとする。
このドーパントに犯されたモノも苗床になり大抵はその場に打ち捨てられるが、気に入られて永遠に種作りの道具として大切に拘束され犯され続けてしまう場合もある。


シードドーパント(人型)は種の硬い殻を装甲に体表面を覆うが、装甲含め全身が植物体故に熱に弱い。また種を遠くへ飛ばしたい習性からサイクロンメモリの少し強い攻撃を受けただけで簡単にふっ飛ぶ。冬越しの特性から冷気への耐性はあるが、発芽を遅らせたい本能から動きが鈍くなる。
水を多く吸い込み重みが増す事で火や風の耐性を一時的に持つことができる。更に未発達な根をムチのように伸ばして中距離攻撃、花粉や香りを飛ばして遠距離攻撃が可能。精子または卵子を種に作り変え、マシンガンのように連射も可能。花粉や香り対策が無ければそのままシードドーパントに組み付かれて種作りが始まるだろう。


なおこのメモリを栄養豊富な広大な畑に挿して普通の植物のように育て続けた結果、風都タワー並のとても大きな植物体ドーパントが生えて大惨事になった実験記録があるとかないとか。
なおこのメモリを煮て食べる事はできない。
717 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2020/11/26(木) 19:43:36.97 ID:p2vPpWcY0
「…」

 薄暗い部屋。ソファの上で、一人の男が横たわっている。

「…っ」

 死んだように眠っていたその身体が、びくっと震えると、すっくと起き上がった。彼は、不思議そうな顔で辺りを見回し…突然、弾かれたように立ち上がった。
 さっと、窓のない壁を順に見る。それから、天井の換気孔に目を向ける。あった。財団に入ったその日から、24時間365日、常に自分に向けられたスナイパーライフルの銃口。壁越しだが、向こうにも気配を感じる。合計4挺。いつもと同じ。
 携帯をポケットから出し、画面をみて思わず舌打ちした。

「…クソッ」

 眠ってしまった。2164時間ぶりに、168時間も。夥しい数の着信履歴の、一番上を押し、携帯を耳に当てる。

「…俺だ。悪い、ちょっと休んでた。そっちはどうだ。…そうか。先生が目を覚ましたか」

 通話しながら、辺りを見回す。子供たちの姿が無い。外出しているのか、それとも、眠りこけるガイキに愛想を尽かしたか…

・・・

「…いえ。『こちら』におります」

 看守は答えながら、そっと牢の中を伺った。
718 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2020/11/26(木) 19:56:34.26 ID:p2vPpWcY0
 看守は答えながら、そっと牢の中を伺った。
 不用心にも開け放たれた格子の向こうには、数日前に目を覚ました蜜屋志羽子。そして、速水かなえと小崎善貴。
 かなえが、ポケットから黄色と黒の縞模様のガイアメモリを取り出した。

「…塾の、先生の部屋の隠し金庫にありました」

「これで、また僕たちを導いてください!」

「ええ…」

 蜜屋は、ふと遠い目になると、ぽつりと言った。

「…本当に、良かった。素晴らしい生徒たち…私のやってきたことは、間違いじゃなかった…」



 ___この国の教育を変えたい。そう思って、北欧を訪れた私は、この国と何一つ変わらない現実…いじめ、非行、スクールカーストに絶望した。この国を出ればという幻想は、一瞬で打ち砕かれたわ。

 私は、4年間を予定していた留学を1ヶ月で中断した。そして、余った学費でガイアメモリを買った。超人の力を与えるメモリのことは、大学時代に聞いていたけれど、それに縋ることになるなんて思いもしなかった。
 でも、確かにメモリは、私に望む力を与えてくれた。私の前で、生徒たちは平等になった…



・・・

「蜜屋志羽子が愛巣会を設立したのは、今から17年前。当時はまだ、小さな私塾でした。生徒もほんの10名足らず」

「それが、急にあんなでっかくなったのか」

「興味深いことがあります」

 北風署の一室で、徹とリンカ、それに植木とミヅキが資料を囲んでいる。
 井野兄妹の一件が相当ショックだったのか、坂間は先日から有給を取って休んでしまった。

「ミュージアムの崩壊と、愛巣会が急激に規模を広げた時期が、殆ど一致します」

「つまり…どういうことだね?」

「もしかして…ガイアメモリの価格が暴落して、仕入れやすくなったとか?」

 リンカが頷いた。

「仮に、蜜屋の目的が生徒たちの支配だとして…クイーンビーメモリは、それだけでは洗脳能力は持ちません。せいぜい力による恐怖政治を敷くぐらいでしょう。しかし、相手が蜂系のドーパントなら話は変わる。いえ、蜜屋ほどの適合者なら、昆虫系全てでしょう」

「母神教の宗教法人登録が、その2年後だ。愛巣会はその直後に、更に規模を広げている」

「母神教が持ってる工場から、直接メモリを貰えるようになったからね〜…」

 ミヅキが、複雑そうな顔で言った。少し前までは、彼女自身がそちら側にいたからだ。

「ええ。ここで危惧すべきことは…蜜屋が、自身がやられた時のことを考えていないはずが無いということです」

「つまり、後任がいる?」

「もしくは、既に予備のメモリを造らせている」

「…」

 徹と植木は、互いに顔を見合わせた。ミヅキが、困惑気味に2人を交互に見る。
 やがて、ミヅキを除く3者が、一斉に立ち上がった。

「拘置所へ行かないと!」

「そうです。愛巣会の残党は、ゾーンメモリを所持しています。奇襲される前に、早く!」
719 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/26(金) 00:44:03.76 ID:Z7g6PV6EO
保守
720 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/13(火) 18:29:20.37 ID:Dn9jnVabO
公式からまた大変な発表がありましたがいかがお過ごしでしょうか
まさかのアニメ化ですよ
721 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2021/09/15(水) 18:01:46.87 ID:pW6GLibZ0
メンタルやって無職になったり短期間で2回引っ越す羽目になったり色々あったんだけど、一番の問題は引き出しの限界を悟ってしまったこと
この先考えてた展開、もう前にやったことの焼き直しに過ぎないと気付いてしまった
722 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2021/09/15(水) 18:14:22.99 ID:pW6GLibZ0
・・・

「愛巣会と母神教は、言わば人生の流れ…『お母様』の下に集った子供たちを、私たちが教育し社会に送り出す…難しいことは、こちらに任せてもらえれば良かったの。ガイアメモリさえ供給してくれるなら…」

「…」

 大真面目に聞く小崎。看守は、腕時計を気にしている。

「でも…『お母様』は、私を信用していなかった。ずっと側に潜んで…私を監視していた。私は、また裏切られた」

 蜜屋は、深い溜め息を吐いた。

「…裏切られてばかりの人生だったわ。同級生に裏切られ、教師に裏切られ、北欧の現実に裏切られ、『お母様』に裏切られ…でも」

 小崎と、速水。2人を見て、彼女は微笑んだ。

「…あなた達は、裏切らなかった。ここまで私についてきてくれた…だから、私は教師として、最後まであなた達を導くわ」

「はい!」

「さあ、速水さん。メモリを」

「…」

 ところが…かなえは、動かない。

「速水さん?」

「…お勉強が終わったら、人はどうなると思いますか?」

 女王蜂のメモリを、掲げる。



『クイーンビー』



「お父さんが亡くなって…真っ暗闇に閉じ籠もっていたわたしを、あなたは救ってくださいました。光の当たる場所で…わたしは、初めて人を好きになった。…恋をしました」

「素晴らしいことよ。貴女の人生が守られるよう、私はいつまでも」

「その人は、強い人が好きなんだそうです。だから、わたし、強くならないと」

「…ええ。貴女の恋が叶うよう、私はいつでも協力するわ」

「ありがとうございます」

 かなえは、頷いた。蜜屋も、頷いた。

「さあ、早くそのメモリを」

「速水さん、急ごう。そろそろ見張りが」

 蜜屋と小崎に促され、かなえはクイーンビーメモリを…
723 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/08/03(水) 04:28:07.30 ID:zingyufTO
風都探偵アニメ始まったっすね
また帰ってきてくれないかな
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