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【安価】ガイアメモリ犯罪に立ち向かえ【仮面ライダーW】
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352 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/09/02(月) 21:50:39.42 ID:3f2FwQtw0
バガボンド・ドーパント
『放浪者』の記憶を内包するガイアメモリで変身。
メモリの色はビリジアン(暗い青緑色)で、後姿の人物のまとっているマントが風にたなびいてVの字を作っている。
ドーパントは三度笠を被り、着流しの上にマントを纏い、下駄を履いている。肌は白く、顔は食いしばった骸骨を連想させる。また、腰に刀を差している。
メイン武器はこの刀で、直接切るほかに斬撃を飛ばしたりすることもできる。
また、体力を大幅に消耗するが高速移動もできる(単純な速度はアクセルトライアルと互角だがこちらの方が使い勝手が悪い)
更に「放浪者」という特性からか拘束・束縛を無効化できる(例えるならウィザードのバインドや鎧武のナギナタ無双スライサーのオレンジ型のエネルギーなど)
353 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/09/03(火) 15:36:39.29 ID:wo0bZCki0
ゾーメモリ
象ではなくゾー。ネパール等で飼われている牛とヤクの交配種の記憶を有している。
英語の綴りは様々だが、Z枠なので「ZO」でお願いします。
354 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/09/04(水) 08:19:42.48 ID:hyyD9Jm90
「J」……ジャスティスメモリ
『正義』の記憶を内包するメモリ。相性のいい人物は正義感の強い人物。言うならば王道の少年漫画の主人公のような人。
ドーパント体はご当地ヒーローのような姿だが使用者によって違う。
このメモリの恐るべきところはドライバーを利用しても防ぎきれない程の非常に強い毒性で、他者のために動く高潔な人物も己にとって不快な人物を正義のもとに排除する独裁者みたいまでに人格を変化させてしまう。
−−−−−勝ったほうが正義、勝てば官軍なのだから
355 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/09/04(水) 12:39:21.28 ID:UgfI2Gg9O
イールド・ドーパント(yield)
『対価交換』の記憶を宿すメモリで変身したドーパント。手が札束を横に並べている図でyの字になっている
対価を支払う事で自らの性能を引き上げる。特に高額な物を支払えば支払う程、腕力やスピードは格段に上がる
また、敢えてスペックをダウンさせる事で下げた分を他の能力に上乗せする事も可能。(スピードを落とした代わりにパワーを増やす等)
無限に成長を続けるという性質上、理論の上だけならばこのメモリを倒す事は不可能である
支払うものは何でもいいが、イールドという言葉の性質上、札束や金等の通貨類が好ましい
356 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/09/06(金) 14:04:49.39 ID:eq5+Bn1M0
ディテクティブ・ドーパント
『探偵』の記憶を内包するメモリ。ドーパント体は鳥打帽状の頭部に、レンズを嵌めたような巨大な目が特徴。
メモリには、パイプと紫煙でDの字が形作られている。
ホームズの意匠に引っ張られているものの、どちらかというと名探偵よりも現実的な探偵に寄っている。
主な能力は張り込みのための気配遮断、暗視や望遠・広域視野といった超視力、聞き込みの質問に答えさせるための簡易な催眠能力、推理・推論に関する知能向上。
戦闘に際しては、敵の行動を推理しての先読みで回避や行動潰しができることが強みであるが、ドーパントとしては中の下程度のパワーしかない。
しかし、パワーのある味方がいる場合、推理力から繰り出すサポートは強力だろう
ええ、ほんへに喧嘩売る単語チョイスです
357 :
◆iOyZuzKYAc
[sage]:2019/09/06(金) 15:35:22.93 ID:ROqWK1C30
W10周年めでてえ
358 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/06(金) 21:48:04.91 ID:DtuaOLmG0
「…」
公園の身障者用トイレの前で、徹は黙って立ち尽くしていた。
ここは、彼とミヅキが初めて会った場所。しかし今、閉じた扉の中からは、何の音も、誰の声も聞こえてこない。
「…駄目、だよな」
諦めて去ろうとしたその時、後ろから彼の肩を叩く者がいた。
「!」
「やっほ〜、仮面ライダーさん」
振り向くと、そこにいたのはミヅキ。彼女は軽く跳び上がると、彼の首にかじりついてキスをした。
「あたしに逢いに来たの。嬉しい!」
徹の手を引き、身障者用トイレに入ろうとする。しかし徹が動こうとしないので、怪訝な顔で振り返った。
「どうしたの? エッチしようよ」
「いや、ちょっと待ってくれ。その前に…」
彼は、ちらりと周囲を窺った。既に夜も深い時間だが、いつの間にか数人の男たちが集まっていて、ただならぬ表情で徹の方を睨んでいた。
「…場所を変えようか。目立つし、何だか雨も降りそうだ」
果たして、コンビニで買った惣菜を手に、煙草臭いラブホテルの一室に転がり込む頃には、外では土砂降りの雨が降っていた。
「仮面ライダーって、意外と庶民的なんだね〜」
コンビニのレジで温めて、既に冷め始めたスパゲティを啜りながら、ミヅキが言った。
「普段は売れないフリー記者なんだよ。前に名刺渡したろ」
「あはっ、捨てちゃった」
「ああ、ちらりとも見ないでな」
359 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/06(金) 21:48:40.49 ID:DtuaOLmG0
徹は唐揚げを一個、口に入れた。咀嚼し、飲み込んで、それから口を開いた。
「…お母様の正体は、最初から知ってたのか」
「正体? …変身する前の姿なら、あたしはちょいちょい見てたけど。クズのおじさんもね」
「それが誰かまでは、知らなかったのか?」
「別に。お母様はお母様でしょ」
プラスチックの皿に付いたソースを舐めるミヅキ。徹は少し考えて、また尋ねた。
「皆が皆、あの姿を見てるわけじゃないのか」
「うーん、あの蜂ババアの前で変身を解いてるところは、見たことないかな」
「! そうなのか」
それが本当なら、蜜屋は自身の根城の奥に、他ならぬ自分の親玉がいたことを知らなかったことになる。思えば、お母様の直属となったユウダイも、元はと言えば蜜屋に洗脳された生徒の一員であった。友長真澄と名乗っていたあの時、自分は蜜屋のやり方に疑問を抱いていると言っていたことからも、お母様は蜜屋を快く思っていない、或いは、既に敵対してしまっているのかも知れない。
「ね、一緒に食べようよ」
差し出されたロールケーキを頬張りながら、徹はぼんやりと次の質問を考えていた。
しかし、思考は下半身に伝わる生温かい感触に遮られた。
「! ミヅキ…」
「んっ、む…」
いつの間にか彼女は、ベッドに腰掛ける徹の膝の間に座り込んで、彼の一物をズボンのファスナーから取り出して口に入れていた。
「…察してるかも知れないが、俺はリンカと同居してるんだぞ」
「ちゅ、れ…んむっ…」
「あまり大きな声では言えないが、寝たこともある」
「…ん、くっ、っぷぁ…ん…」
「だから、あんたとは…あ゛痛っ!?」
勃ちかけの陰茎に歯を立てられて、徹は悲鳴を上げた。
360 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/06(金) 21:49:26.38 ID:DtuaOLmG0
「…うるさいな〜。フェラ中に話しかけないでって、前にも言ったでしょ」
不機嫌そうに言うミヅキ。徹はイチモツに傷が付いていないか確認しながら、諭すように言う。
「だから、こういうことは良くないって言いたいんだよ」
「何がいけないの? あたし、雑草以外の男とは皆エッチしたよ? あなたが、あの金ピカネクタイと寝たから、何?」
「…俺は、リンカが好きだ」
「…」
ミヅキは、呆然と彼を見た。ぽつりと、その唇から言葉が零れた。
「…あたしじゃ、ダメ?」
「あんたのことは大事に思ってる。助けたいとも思ってる。だけど…女としてとか、セックスしたいとか、そういう意味じゃない」
「じゃあどういう意味なの!」
突然、彼女が声を張り上げた。
「好きなら、エッチするでしょ! そうじゃない関係があるの? そんなの…あたし、知らない!」
「!」
徹ははっとなった。
幼い頃から母子家庭で育った彼女が、最初に出会った男は、女を性欲の捌け口としか考えない男だった。そこから孤児院、何処とも知れない路上、そして母神教で、彼女は人の温もりを知ることができただろうか。カラダを代償にしない関係を、一度でも築けたことがあっただろうか。
「誰も…あたし『だけ』を、愛してくれない…お母様だって…」
「…」
何と声をかけていいか分からず、黙り込む徹。ミヅキは立ち上がると、部屋の隅へと歩いて、そのまま座り込んでしまった。
361 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/06(金) 21:49:54.79 ID:DtuaOLmG0
「…!」
のしかかる体の重みで目が覚めた。
「愛してよっ…ねえっ…エッチしてよ…っ!」
暗がりの中で、彼に跨って激しく腰を振る少女。
彼は思わず、痩せこけたその体を強く抱き締めた。
「ミヅキ…ミヅキっ…!」
「あんっ…好きだから…好きって、言ってよぉ…」
「ミヅキ…俺は…」
言いかけたその時、突然、ベッドの隅に転がった彼の携帯電話が鳴った。
「えっ…」
「! …」
徹は一瞬躊躇って、恐る恐る携帯を手に取った。画面には、リンカの名が表示されている。
徹は、ミヅキの方をちらりと見た。
「…聞かせちゃおうよ。あたしたちが、愛し合うところ!」
彼女は悪戯っぽく言うと、彼の手から携帯を取り上げ、通話をタップした。
362 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/06(金) 21:50:24.25 ID:DtuaOLmG0
ところが、聞こえてきたのはリンカの声ではなかった。
”…ごきげんよう、仮面ライダー”
「なっ!?」
「ウジ虫ババア…何で」
スピーカーから聞こえてきたのは、愛巣会で聞いた、蜜屋志羽子のそれであった。
”どこで遊んでいるのかしら? あなたのとこの娘、寂しそうにしてたわよ”
「! おい! リンカをどうした!?」
徹は電話をひったくると、画面に向かって叫んだ。
”円城寺さんは…今、私たちが預かってるわ”
「どこだ!」
”前に来たでしょう? 真堂の、ガイアメモリ製造工場…早くしないと、この娘がどうなるかしらね”
「貴様…」
徹はベッドから飛び降りると、玄関に向かって突進した。そして、料金を入れないと出られないことを思い出して、地団駄を踏みながら部屋を見回した。
「窓を蹴破るか…」
そんなことを呟いた瞬間、ミヅキが無言で立ち上がり、そして跳躍した。
「…はああぁっ!!」
ハイドープの人間離れした脚力が、鉄の扉を襖か何かのようにぶち破る。着地したミヅキは、彼の顔を見ないで言った。
「行けば」
「ミヅキ…」
「勝手にしろっ!!」
「…っ」
徹は歯噛みすると、部屋を飛び出して行った。
後に残されたミヅキは、崩れるようにその場に座り込むと、声を上げて泣き出した。泣きながら、ポケットの中から何かを取り出した。
「ひぐっ…もういい…もういいもんっ…」
七色に光るそれは、禁断の力。
「全部…全部、ぶっ壊してやるっ!!」
363 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/06(金) 23:01:30.89 ID:DtuaOLmG0
土砂降りの雨を裂いて、銀色のバイクが走る。貨物集積所のゲートを突破し、四番倉庫へと向かう。
開け放たれたシャッターをくぐると、そこには真堂が、物憂げな顔で立ってた。
「…来たか、仮面ライダー」
彼は沈んだ声で言うと、赤褐色のガイアメモリを取り出した。
「君みたいな、分かりやすい敵だけならどんなに良かったことか…!」アイソポッド
「リンカを…リンカを返せ!!」ファンタジー! セイバー!
『おおおおおおっっ!!』
「ふぅんっ!」
剣と硬質な腕がぶつかり合う。
「姿を変えようと、君の剣で私を傷付けることはできんよ!」
『おおらぁっ! たあぁっ!』
ファンタジーは構わず、剣を振るって何度も斬りつける。斬りつけ、叩きつけ、突きつける。
とうとう、アイソポッドドーパントが苛々と唸った。
「しつこいね、君も!」
彼は後ろへ下がると、やおら雄叫びを上げた。
次の瞬間、その体が何倍にも膨れ上がり、ダイオウグソクムシめいた巨大な怪物へと変化した。
「大人しく、捕食者に喰われたまえよ!!」
『…待っていたぞ』クエスト!
「何…?」
メモリを換装し、魔術師の姿となったファンタジー。その頭上に、巨大な魔法陣が浮かび上がった。
彼は右手を硬く握り、肘を曲げると…
『…おりゃああぁぁぁぁっっっ!!!!』
頭上の魔法陣目掛けて、思い切り拳を突き上げた。
すると、巨大な怪物の足元から、更に巨大な拳が出現してドーパントの体を下から殴りつけ、ひっくり返してしまった。
「うわああぁぁっ!!?」
仰向けにひっくり返り、短い手足をばたつかせるドーパント。
『その体じゃ、簡単には戻れないだろ。そして…』セイバー!
『…硬い殻に覆われてるのは、背中側。つまり、腹の方が弱点だ!』セイバー! マキシマムドライブ
白いマントが翼のようにひらめき、騎士の体が宙へと浮かび上がる。
空中で、彼は白と蒼に輝く剣を振り上げた。
『セイバー…ジャスティスラッシュ!!』
「ぎゃあああぁっっっ!!」
輝く剣閃が、無防備なドーパントの腹を縦に切り裂く。断末魔と共に、怪物の体が爆ぜた。
「く、そ…こんな、ところで…は」
燻る炎の中で、真堂が藻掻く。その後ろ首からメモリが抜け落ち、砕け散った。
364 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/06(金) 23:02:07.32 ID:DtuaOLmG0
『…リンカを、探さないと』
リンカが囚われている工場を目指して、倉庫の奥へ進もうとするファンタジー。ところが
「…ははっ」
突然、荒れ果てた倉庫の中に、不敵な笑いがこだました。
『誰だっ!?』
「コータがやられたか。そりゃご苦労」
奥から悠々と歩いてきたのは、白い詰襟服の、大柄な男。その隣には、蜜屋も控えている。
『蜜屋! リンカを出せ!』
「少しは落ち着きなさいな。慌てたら、ケアレスミスが増えるわ」
「そうそう、先生もそう言ってることだしよ」
男は、ニヤニヤ嗤いながら一歩前へ出てきた。
「…もうちょっと、遊ぼうぜ」
その手に、深緑色のガイアメモリ。そして…
『メモリ、と…ドライバー!?』
ロストドライバーを腰に装着し、メモリを目の前に掲げる。筐体には、角張った刃のような字で『D』と書かれている。
ガイアウィスパーが、メモリの名を告げる。
『ドミネーター』
「生物種としての、格の違いを見せてやる。……変身」
365 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/06(金) 23:04:37.67 ID:DtuaOLmG0
『Dの闖入/ひび割れた愛』完
今夜はここまで
366 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/07(土) 19:35:31.05 ID:DHKSSogP0
『ドミネーター』
ベルトを中心に、装甲が男の体を覆っていく。見る見る内に彼の体は、陸軍兵めいた深緑色のスーツに黒い防弾ジャケット、そしてガスマスクめいた複眼マスクに包まれた。その右手には、灰色の無骨なグローブが嵌っている。
『じゃ、楽しもうぜ…っ!』
『くっ!?』
目にも留まらぬスピードで、ドミネーターが肉薄する。突き出された正拳を剣で受けると、凄まじい衝撃がファンタジーの両腕を襲った。
『はっ、おらっ! どうしたァっ!』
『ぐっ…ふっ、うぅっ!』
素早いキックとパンチの連撃を、間一髪で躱す。洗練された敵の動きからは、豊富な戦闘経験が伺われた。
『せぇやっ!』
『! たあっ!』
回し蹴りを屈んで躱すと、すかさず剣を斬り上げた。
切っ先が、仮面の鼻先を掠った。
『はっはっはぁっ! 良いじゃねえか! 人間らしく足掻けよ!』
ドミネーターは一切怯まず、更に一歩踏み出し、拳を突き出した。
『ぐ、あっ!?』
止めきれず、拳が鎧の腹部にめり込んだ。一撃で、硬い装甲に亀裂が走った。
更に、前蹴りが膝を砕く。
『があぁっ!』
膝を突いたファンタジー。そこへドミネーターが、片足を大きく振り上げた。
『…ぬんっ!』
『!』
どうにか脇に転がり、落雷の如き踵落としを避ける。彼のすぐ隣で、コンクリートの床が大きくひび割れた。
367 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/07(土) 19:36:09.69 ID:DHKSSogP0
その足に向かって、剣を突き出した。
『このっ…!』
『セコいことすんじゃねえ!』
『あぁっ!』
切っ先を蹴られ、剣が遠くへ飛んでいく。更に続くキックを両腕で受け止めると、転がって距離を取った。
立ち上がり、拳を構える。剣を拾いに行く暇はない。
『はぁっ…はぁっ…』
『そうだ。最後まで足掻け。そして…格の違いを思い知れ!』
拳が交差する。アッパーカットが空を切ると、カウンターのボディブローが突き刺さった。バックステップで衝撃を逃し、顔面へ手を伸ばす。それさえ軽くいなすと、逆のその手を掴まれた。
『おら…よォっ!』
『がはっ…!』
引き寄せ、腹に重い一撃。思わずうずくまったその顎に、爪先蹴りが炸裂した。
『ぐっ、ああぁぁぁっ!!?』
ファンタジーの体が天井近くまで吹き飛び…そして、床に墜落した。
『っ…く、そ…』
『ま、こんなもんだな』
仰向けに倒れるファンタジー。ドミネーターは、ドライバーからメモリを抜くと、腰のスロットに装填した。
『ドミネーター! マキシマムドライブ』
悠々と歩み寄る、その右足から、緑色のスパークが飛び散った。光と熱を放つその足を、大きく振り上げると…
『…あばよ』
『ぎゃああぁぁぁぁっっっ!!』
重い、あまりにも重いストンプが、彼の胸を踏み砕いた。装甲が爆ぜ、仮面が砕け、変身が解除される。
「…が、っ」
力尽きた徹。男も変身を解除すると、蜜屋のもとへと戻って行った。そのまま彼女と何か言葉を交わしているが、徹の耳には届かない。
「…!」
動けない彼の視界に、白いスーツが入ってきた。
「…」
「り、んか…」
攫われたはずのリンカが、無表情に彼を見下ろしている。幸い、傷は無さそうだ。かすれた声で、徹が訴える。
「にげろ…りん、か…にげ…」
「…」
彼女は何も言わず、彼の脇に屈み込むと…
368 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/07(土) 19:36:39.32 ID:DHKSSogP0
……彼の腰から、ドライバーとメモリを外した。
369 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/07(土) 19:37:17.19 ID:DHKSSogP0
「…え?」
「ご苦労さまでした、力野徹」
彼女はいつもの無感情な声で言うと、ドライバーとメモリを手に男の方へ歩み寄った。
「! だめ、だ…そっちは…」
しかしリンカは構わず、奪ったそれらのガジェットを、男に差し出した。
「『ガイキ』。事前の計画通り、ファンタジーメモリとロストドライバーを回収しました」
「おう、ご苦労」
ガイキと呼ばれた男は、興味無さそうに応えた。
リンカが、徹の方に向かって言う。
「財団Xによる、ガイアメモリ計画へのご協力、ありがとうございました。お陰様で、メモリ新造への道筋が立ちましたので、貴方との協力はここまでになります」
「ど…どういう…ことだ…」
「ミュージアムが崩壊し、T2計画も頓挫し、ガイアメモリ計画は長らく凍結となっていました。最初私たちは、破棄された計画の残滓が他の計画を邪魔することを危惧して、対象の組織を殲滅することを目的に動いていました。しかし、メモリの新造が可能となれば話は別です。組織の主導権を財団が奪還し、再び計画を始動することにしました」
「! じゃあ…あんたたち、これから」
リンカは目を細めた。
「…無軌道な暴力は殲滅します。メモリの力は、正しく理性的に用いられます。ご安心ください」
「待て…よ…!」
少しずつ、体力が戻ってきた。どうにか体を起こすと、徹は叫んだ。
「正しい、使い方なんてあるかよ…ガイアメモリは、この町からなくす…じゃないと」
「貸与していた、ドライバーとメモリは返却していただきます。命までは奪いません。貴方は…全て忘れて、明日から元の生活に戻りなさい」
「ふざけるな!! それで良いのかよ、あんたは…」
「帰って!」
370 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/07(土) 19:37:47.06 ID:DHKSSogP0
「!?」
突然、リンカが声を張り上げた。はっとその顔を見ると、彼女の目元が小さく震えていた。
その少し後ろでは、ガイキと蜜屋が、じっと2人のやり取りを眺めていた。ガイキの手には、深緑色のメモリ。『良いならいつでも殺すぞ?』と言わんばかりに、とんとんとメモリを指で叩く。
「お願いだから…」
「リンカ…」
震える手を床に突き、力を振り絞って立ち上がる。そして、リンカに何か言葉をかけようとした時
彼の隣を、何かが猛スピードで駆け抜けた。
「!」
ピンク色の風が、リンカに向かって突進する。そして、絶叫しながら懇親の飛び蹴りを見舞った。
「貴女は…っ!」トゥルース
咄嗟に変身し、防御したリンカの腕に蹴りが突き刺さる。声を上げる間も無く、彼女の体は後ろの壁まで吹き飛ばされていった。
突然の闖入者は、徹を庇うように立ちはだかると、怒りに燃えた声で怒鳴った。
「…殺す。殺す、殺す、殺す殺す殺すっっっ!!!」
「ミヅキ…?」
ミヅキは、綺羅びやかなピンク色のメモリを掲げた。
「よくも…よくもあたしから、彼を奪っといて…ゴミクズみたいに、捨てたな! てめえらは殺す! ぐっちゃぐちゃにして殺す!!」
『ラビット』
しかし彼女は、それをコネクタに挿さず、更にもう一本のメモリを掲げた。
それを見た蜜屋とガイキの顔に、初めて動揺が浮かんだ。
「!? それは」
「おいおい、いつの間に完成してたのかよ…?」
七色の、サイケデリックな光を放つガイアメモリ。徹やガイキの所持する、仮面ライダーのメモリと同じ形状をしたそれには、もつれ合う2人の人間が『X』の字を形作っていた。
ミヅキが、徹を振り返った。
「ちょっと待っててね。こいつら殺して、それから一緒に帰ろ」
「待て、止めろ…」
ミヅキが、2本目のメモリのスイッチを押した。
371 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/07(土) 19:39:21.89 ID:DHKSSogP0
『エクスタシー』
372 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/07(土) 19:40:07.44 ID:DHKSSogP0
「っ…」
ミヅキの体が、一瞬、強張る。それでも彼女は両手でスカートの裾を掴むと、顔の高さまで大きく捲り上げた。
彼女の腿には、ラビットメモリのコネクタがある。しかし今、何も無かった方の腿にも、黒い生体コネクタが刻まれていた。
「はぁっ…はぁっ…っ」
スカートの裾を咥え、2本のメモリを振りかざす。
「エクス…タシィィィィッッッ!!」
『ラビット』『エクスタシー』
「っ、あっ…あ。ああっ…ああああああっっ!!」
メモリを挿した瞬間、その体がガクガクと震えだした。丸見えの白いショーツに、染みが広がり、震える太腿の間をびちゃびちゃと音を立てて滴り落ちた。
「ああっ、うっ、くあっ、あぁんっ…ああああっ…」
失禁しながら痙攣するミヅキ。その体を、ピンクと紫の光が包み…やがて、毒々しい紫の、兎の怪人へと姿を変えた。
「はぁ…っ…うああああああっっっ!!!!」
金切り声を上げたその瞬間、ラビットドーパントの姿が消えた。
「!? …ぐわっ!」
瞬きする間も無く、ガイキと蜜屋の体が吹き飛んだ。
ラビットは、壁際にうずくまるトゥルースドーパントに狙いを定めると、超高速で突進し、飛び蹴りを浴びせた。
「く、うぅっ…!」
「死ね! 死ね! 殺す!」
かざした杖が、蹴り折られる。ラビットドーパントは執拗に、何度も蹴り続ける。
「お前だけは…絶対殺す…!」
遂に倒れ伏したトゥルースドーパント。ラビットは空高く跳び上がると、トドメの一撃を見舞わんと、足を振り下ろし…
「…ぐっ…!」
しかし、それが敵の背中に突き刺さる前に、空中で飛び蹴りが彼女を襲った。
373 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/07(土) 22:40:00.37 ID:DHKSSogP0
『コータめ、余計なことしやがって』
ラビットの前に着地したドミネーターが、舌打ちする。ラビットはすぐに立ち上がると、ドミネーターにキックを放った。
「殺す! お前も殺す! みんな殺す!!」
『おう、やってみろ!』
「止めろミヅキ! もう、止めてくれ…」
しかし、2人は戦いを止めない。目にも留まらぬ速さで飛来するキックを、ドミネーターは正確に防いでいく。
『甘い!』
ハイキックを片手で捕らえると、その足をぐいと捻った。ところがラビットドーパントはその場で跳躍すると、体ごと回転させ、その上自由な足でドミネーターの側頭部に回し蹴りを叩き込んだ。
『うぐっ…やるじゃねえか…!』
首をゴキゴキと鳴らし、拳を構え直す。
『どらぁっ!』
「ああああっ!」
ドミネーターが正拳を、ラビットが飛び蹴りを、それぞれ打ち込む。拳と足がぶつかり合い、火花が散った。
『らあっ! でえやっ!』
ボディブロー、アッパー、フック。今度はドミネーターの連撃がラビットを追い詰める。
「くっ、うっ、ああっ!」
突然、ラビットがその場に膝を突いた。
『はっ…楽しかったぜ…』
片足を大きく振り上げ、彼女の頭を踏み砕かんとする。が
「…っっっ!!」
『ぐぇっ!?』
374 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/07(土) 22:40:28.65 ID:DHKSSogP0
無防備な腹に、ミサイルの如き頭突きが深々と突き刺さった。
「はぁっ…殺す…殺すぅっ!!」
倒れたドミネーターの胸を、強く踏みつける。トドメとばかりに、片足を振り上げたその時
「…ぐっ!?」
突然、彼女が胸を押さえて固まった。
見ると、その胸には巨大な棘が刺さっていた。
「何を遊んでいるの」
歩み寄ってきたのは、女王蜂。毒針の飛び出た右腕を、顔の前に掲げている。
「本当に。あなたは、最期まで出来の悪い生徒だったわね」
「ぐっ…あっ、があぁっ…」
悶え苦しむラビットドーパント。
拘束を脱したドミネーターが、舌打ちしながらメモリをドライバーから抜いた。
『けっ、ままならねえや』
メモリを、今度は右手のグローブにあるスロットに挿し、左の掌で叩く。
『ドミネーター! マキシマムドライブ』
右の掌を、苦しむラビットドーパントに向ける。すると、彼女の太腿から七色のメモリが抜け、彼の手に飛んでいった。
「! あぁっ…」
兎の体から紫色が抜け落ち、元の薄桃色に戻っていく。
ドミネーターが右手でメモリを握りしめると、メモリからスパークが弾けて、彼の手に吸い込まれていった。
『…ほう、まだ立つか。良いじゃねえか』
彼は、ゆっくりと彼女の方へ歩み寄った。
「! 止めろ…止めろ! もう…」
叫ぶ徹。
ドミネーターが、メモリを握った手を、腰溜めに構える。そして
『…でえぇやあぁぁっっっ!!!』
375 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/07(土) 22:40:54.92 ID:DHKSSogP0
「ぎゃああぁぁあぁああぁっっっ……!!」
至近距離のパンチが、彼女の胸を貫いた。薄桃色の体が、何度も爆ぜた。毛が抜け、皮が剥がれ、耳が弾け飛んだ。
そして……そこにいたのは、血塗れで横たわる、小さな少女であった。
「ミヅキ…ミヅキ…?」
足を引きずって、徹が彼女の元へ駆け寄る。
「ミヅキ! おいミヅキ!!」
動かない彼女を、どうにか抱き起こす。
ミヅキが、薄く目を開けた。
「…仮面、ライダー…さん」
「ミヅキ、しっかりしろ! ミヅキ…」
彼女は、虚ろな目で彼の姿を認めると、血と一緒に言葉を零した。
「…あたしがいなくなったら…寂しい?」
「寂しいに決まってるだろ! だから死ぬな、しっかりしろ…っ!」
ミヅキは、弱々しく微笑んだ。
「そう。……よかっ、た…」
その、口元から。目元から。力が抜け…
「ミヅキ…ミヅキ! おい! ミヅキ…!!」
徹は、彼女の体を抱き上げると、よろよろと倉庫の出口を目指した。
「帰ろう…もう、休もう…」
ガイキは鼻を鳴らすと、蜜屋の肩を掴んで奥へと引っ込んでいった。リンカは、蹴られた腹を押さえながら、無表情に逃げていく2人を見つめていた。
376 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/07(土) 22:42:07.26 ID:DHKSSogP0
「帰るぞ…一緒に…もう、これ以上…」
徹の腕の中で、ミヅキの体がどんどん軽くなっていく。
さらさらと音を立てて、彼女の体が崩れていく。___彼の腕から、落ちていく。
「嫌だ…ミヅキ…ああ…」
土砂降りの集積所。傷だらけの彼の腕に遺されたのは、ピンク色のガイアメモリだけだった。
「ああ…あぁ……ああああああああ…!!!」
殴りつけるような雨の中、ボロボロのメモリを胸に抱いて、徹は吠えるように泣き叫んだ。
377 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/07(土) 22:43:44.86 ID:DHKSSogP0
『Dの闖入/砕けた命』完
今夜はここまで
378 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/09/07(土) 22:49:17.43 ID:4R8vdsKUO
乙
これミヅキはガチの退場なのかお母様に産み直してもらうのか
と言うか仮面ライダーじゃなくなった徹はこの先生きのこれるのか
379 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/07(土) 23:00:18.32 ID:DHKSSogP0
『仮面ライダードミネーター』
『支配者』の記憶を内包するガイアメモリで、財団Xのエージェント・ガイキが変身した姿。深緑色の軍服めいたスーツに、黒い防弾ジャケットとブーツ、灰色のグローブを身に着けており、ガスマスクめいた複眼マスクの上から臙脂色のベレー帽を被っている。
エターナルメモリのように、他のガイアメモリを支配する能力を持っているが、変身態でその力が常に発揮されているわけではなく、マキシマムドライブの時にのみ行使することができる。しかし、能力を使わずとも純粋な身体強化だけで並大抵のドーパントを圧倒することができ、特に戦闘狂のガイキは強化された肉体による格闘戦の方を好む。
必殺技は、極限まで強化された脚力によるストンプ攻撃『ドミネーター・インフリンジ』と、相手のメモリを強制的に抜去し、メモリの力を吸収する『パーフェクト・ドミネーション』。後者は、吸収した力を相手に叩き込む二段攻撃も可能。但し、自分より適合率の高い相手からはメモリを奪うことができず、そもそもガイキ自身がこの技をあまり好まない。ミヅキに対して使用した時には、殆ど癒着と言っていいレベルで適合していたラビットメモリは奪えず、使ったばかりのエクスタシーメモリだけを奪う結果となった。
メモリの色は深緑。刃のような字で『D』と書かれている。
380 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/09/07(土) 23:00:32.76 ID:Aq/xQ2zY0
乙
ミヅキの退場悲しい…
これ途中の選択肢で先生の方を選んでいたら立場が逆になったのかな?
381 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/09/07(土) 23:13:26.93 ID:+5XkFa9jO
おおう……退場なのかどうなるのか
この状況からどうやって逆転できるのか
382 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/09/08(日) 08:05:04.74 ID:FXClcXRCO
空気読まずにチートをぶん投げる
ゼニス・ドーパント
『頂点』の記憶を宿したガイアメモリで変身したドーパント
巨大な剣を携え、背にはマントをはためかせたヒロイックな容姿だが、色はベタ塗りの様な黒一色
他のメモリを使用すると、変身後は異形となる事が珍しいドーパント態においては逆に異質な勇ましい姿となっている
このメモリの何よりも特異な点は、『自分よりも格下のメモリからの干渉を受けない』事
A〜Zのメモリ。即ちゼニスメモリ以外で変身したドーパント等の特殊な力はこのメモリには通用しない
メモリの能力頼みのドーパントや仮面ライダー等はそれだけで殺されたも同前であり、成す術なく薙ぎ倒される
本体の出力自体も他のメモリとは桁違いのパワーであり、ただ剣を奮うだけでも凄まじい驚異と成りうるだろう
正しく、ドーパントの頂点。並みの相手では足元にすら届かない天上のメモリ
まともに対抗できるのはメモリの中でも最高ランクのゴールドメモリの数々
もしくはこのメモリに左右されない力を持つ、ある『J』の記憶が宿ったメモリ。あるいは頂点に挑もうとする勇者……
メモリの色は金をも塗り潰すという意味で漆黒。下の道から伸びる階段。そしてその上に更に続く道で『Z』になっている
奇しくもこのメモリを超えうる力を持つと推測されるメモリの色も、また同じく黒である
イメージはラスボス手前の準ボスか最強フォームのサンドバッグ
正直盛りすぎた感が否めないのでもし使用される際に適宜デチューンしてくださるとありがたいです
383 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/09/08(日) 09:02:11.89 ID:FHqBvjsC0
思いついちゃたので投稿
ゼノ(XENO)メモリ
『異端』の記憶を宿したガイアメモリで、単独ではなく別のガイアメモリと組み合わせて使うのが前提のメモリ
このメモリの特徴的なのは単純に他のメモリを強化するのではなく、メモリに本来想定されていない『異端』な力を使用可能にさせるという点。
例えば『熱さ』を内包するヒートメモリと同時に使用すると、『零度以下』の『熱さ』……つまり冷気の力も使用させられる。(ある意味拡大解釈に近いかも?)
当然、本来想定されていない力を引き出すので同時使用したメモリには相当負荷をかけるため1回で壊れる可能性も高く、下手をしたらメモリの毒素で使用者が廃人になる可能性もある。
384 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/08(日) 09:29:03.34 ID:KKcmRQqT0
『エクスタシーメモリ』
『絶頂』の記憶を内包する、母神教によって造られた新造の次世代型ガイアメモリ。エクストリームに継ぐ、第二の『X』のメモリ。
単独で使用すると、たった1回で脳を完全に破壊し、廃人となってしまうほどの快感を与える。そのため、エクスタシードーパントというものは存在しない。しかし、一部のメモリと組み合わせて使うことで、能力を大幅に向上させることができる。特に、死ぬまで発情期の続く『ラビット』や、性欲の対象となりやすい『アイドル』、そのまま『ラースト(性欲)』などとの相性が良い。
しかし、それすらも副産物でしかなく、母神教の首魁がこのメモリを造らせた目的は、もっと別にあるようだ。
メモリの色はサイケデリックな虹色。絡み合って身悶えする男女が『X』の字を形作っている。
ちなみに、エクスタシーの綴りは本来"ecstasy"であるが、このメモリでは"Xtasy"となっている。
385 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/09/08(日) 09:42:07.64 ID:P2OWLt9FO
ハーピィレディだ(遊戯王並感)
386 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/09/08(日) 20:12:20.26 ID:v0wRr0ZC0
悲しきエクストリーム枠かぁ……
387 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/11(水) 22:06:14.88 ID:LapuAGZv0
気が付くと彼は、警察に保護されて病院にいた。
「…」
「力野さん…何があったか、そろそろ教えてくれないか」
呆然とベッドに横たわる徹に、植木が話しかけた。
「…」
「なあ…それにリンカさんは、どうしたんだ?」
「! …」
徹が、虚ろな目で植木を見た。それから、ぽつりと言った。
「…不器用な奴」
「はぁ?」
「あんな顔するくらいなら…最初から、裏切らなきゃ良いのに…それか、さっさと俺のことなんて、捨てちまえば良かったんだ…」
「…まさか、彼女が裏切ったのか」
「…」
徹は何も言わず、頭まで布団を被ってうずくまってしまった。
388 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/11(水) 22:06:50.87 ID:LapuAGZv0
一体、どれほどの時間こうしていただろう。枕元に忍び寄る足音に、徹は目を覚ました。
傷の痛みに耐えながら、枕元の電灯を点ける。
「…!」
「こんばんは、仮面ライダーさん」
そこに立っていたのは、友長真澄…もとい、成瀬ヨシノ。即ち、母神教の首魁、『お母様』その人であった。
「何で、あんたがここに」
「愛しい子の、お顔を見に」
「…」
徹は体を起こし、ベッドの縁に座った。
「…今のあんたは? 『友長真澄』か? それとも『お母様』か?」
「その二つに、違いはありません。揺らぐことも」
「じゃあ、今も変わらず『お母様』なんだな? …」
年を押した上で、徹は尋ねた。
「…蜜屋を見張ってたな。部下なのに、信用してなかったのか」
「子を心配するのは、母の常です」
そう言うと成瀬は、徹の手を掴んで立たせた。
その背中から、白い光が溢れ出す。
「おい…何をする気だ」
「帰りましょう、愛しい子。…母は今、深い悲しみを感じています」
「ミヅキが、死んだからか」
「…」
光が、成瀬と徹を包み込む。
389 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/11(水) 22:07:17.90 ID:LapuAGZv0
やがて2人は、真っ白な空間に佇んでいた。
「ここは…」
「母の、記憶の世界です」
成瀬がそう言うと、どこからともなく無数の本棚が出現し、2人を取り囲んだ。
「! まさか、ここは」
「母は、全ての母ですから…全て、知っているのですよ」
本棚がするするとスライドし、遠ざかっていく。その中で、一つの本棚が2人の前に移動してきた
。大きな本棚には、たった一冊だけ本が置かれていた。
「もちろん、あなたのことも」
「これは…」
手に取ると、革張りの表紙には『力野徹』と書かれていた。
ぱらぱらと捲ると、そこに記されていたのは、彼が今まで歩んできた人生。あるページで、紙を捲る手が止まった。
「…」
炎上する高層ビル。溶解するコンクリート。誰かに引きずられながら伸ばした手の先で…両親が、マグマの下に消えた。
「…風都…超常犯罪…」
仮面ライダーは、彼を、彼の両親を、救ってはくれなかった。当時高校生だった彼は、その時から明確に、風都を憎むようになったのだ。
「…」
本を閉じ、棚に戻す。
いつの間にか白い空間は消え、徹と成瀬は、薄暗い祭壇の前に立っていた。
「…ここが、母神教の本拠地か」
「ようこそ、母の家へ」
成瀬は、両腕を広げて歓迎のジェスチャーをしてみせた。
徹は動かず、また質問した。
「何故、俺をここに連れてきた?」
「病院で寝ているより、ここで待っていれば、あなたの求めるものが来てくれるのでは?」
「!!」
390 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/11(水) 22:09:07.58 ID:LapuAGZv0
徹は、はっとなった。
財団Xが、ガイアメモリの新造能力を求めているとしたら、邪魔な仮面ライダーを排除した後に来るのは、その能力を持つ『お母様』の所に違いなかった。
徹が何か言いかけたその時、成瀬が突然、自分の着ているシャツのボタンを外し始めた。
「!? 何を」
シャツの前をはだけると、黒いブラジャーのフロントホックを外した。細い体に不釣り合いなほどに豊満な乳房が露わになり、徹は思わず目を逸しかけた。
しかし、逸らせなかったのは、大きく膨らんだ胸の谷間に、黒い生体コネクターがくっきりと刻まれていたからだった。
成瀬が、両手を胸元にあてがった。
「っ、く…ぅぅっ…!」
徹は最初、メモリを挿すところを見せるのかと思った。しかし、実際はその逆であった。
歯を食いしばる成瀬。そのコネクタから、金色のメモリがゆっくりと顔を出した。
「!」
「くっ…ああぁっ…!」
苦しげな声を上げながら、メモリを引き抜くと、成瀬はそれを徹に差し出した。
「これは…」
金色の筐体。リンカのそれと同じ、ゴールドメモリである。そこに描かれているのは、1人の赤子の絵であった。
「…いや、これは」
391 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/11(水) 22:09:40.86 ID:LapuAGZv0
よく見ると、その赤子は2本の腕に抱かれている。両腕に抱いた赤子を、母親の視点から見た絵なのだと、徹は察した。そして、赤子を抱く2本の腕は、『M』の字に組まれていた。
「母神教の首魁が所持するメモリ、その名称は『マザー』です」
「電話でも聞いたが、まんまだな」
ソファに深々と沈みながら、ガイキが欠伸混じりに返した。
「ミュージアム最初期に造られたにも関わらず、現在に至るまで放置されてきたゴールドメモリです。人間の遺伝子を体内に取り込むことで、胎内でクローンを育成し、出産するなどの能力を持ちます」
「うわキモ。…そいつが何で、地球の本棚にアクセスする権限を持ってやがる?」
「神話の神々にも、母親は存在します。特に、ギリシャ神話の主神ゼウスの母は、地母神ガイアです」
「クレイドールエクストリームがヒトと地球を繋ぐ巫女なら、マザードーパントは地球そのものってわけか。……こじつけにも程があるぜ」
「無論、ただの使用者がその領域に到達することは不可能です。成瀬ヨシノとマザーメモリの適合率は、99.9%以上……或いは、100%かも知れません。抜去はほぼ不可能でしょう。メモリブレイクは、成瀬の死を意味します」
「しねえしねえ。要は生かしたまま、言うこと聞かせりゃ良いんだろ?」
ガイキが言ったその時、1人の少年が割り込んできた。
「ガイキさん、準備ができました」
「あいよ」
彼はソファから立ち上がると、リンカの肩を叩いた。
「おら、行くぞ」
「…はい」
リンカは、小さく頷いた。
部屋を出て、少年に続いて廊下を進むと、正方形の広い部屋に出た。白いリノリウムの床には、囲碁や将棋の盤面めいて、黒い線が等間隔に引かれている。
392 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/11(水) 22:10:36.12 ID:LapuAGZv0
よく見ると、その赤子は2本の腕に抱かれている。両腕に抱いた赤子を、母親の視点から見た絵なのだと、徹は察した。そして、赤子を抱く2本の腕は、『M』の字に組まれていた。
「母神教の首魁が所持するメモリ、その名称は『マザー』です」
「電話でも聞いたが、まんまだな」
ソファに深々と沈みながら、ガイキが欠伸混じりに返した。
「ミュージアム最初期に造られたにも関わらず、現在に至るまで放置されてきたゴールドメモリです。人間の遺伝子を体内に取り込むことで、胎内でクローンを育成し、出産するなどの能力を持ちます」
「うわキモ。…そいつが何で、地球の本棚にアクセスする権限を持ってやがる?」
「神話の神々にも、母親は存在します。特に、ギリシャ神話の主神ゼウスの母は、地母神ガイアです」
「クレイドールエクストリームがヒトと地球を繋ぐ巫女なら、マザードーパントは地球そのものってわけか。……こじつけにも程があるぜ」
「無論、ただの使用者がその領域に到達することは不可能です。成瀬ヨシノとマザーメモリの適合率は、99.9%以上……或いは、100%かも知れません。抜去はほぼ不可能でしょう。メモリブレイクは、成瀬の死を意味します」
「しねえしねえ。要は生かしたまま、言うこと聞かせりゃ良いんだろ?」
ガイキが言ったその時、1人の少年が割り込んできた。
「ガイキさん、準備ができました」
「あいよ」
彼はソファから立ち上がると、リンカの肩を叩いた。
「おら、行くぞ」
「…はい」
リンカは、小さく頷いた。
部屋を出て、少年に続いて廊下を進むと、正方形の広い部屋に出た。白いリノリウムの床には、囲碁や将棋の盤面めいて、黒い線が等間隔に引かれている。
393 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/11(水) 22:11:03.89 ID:LapuAGZv0
その部屋の中心に立つと、少年は一本のガイアメモリを取り出した。
『ゾーン』
少年の体が、小さな黒いピラミッドめいた形状になり、宙へと浮かび上がる。
次の瞬間、白い床からホログラムのように、建物や道路の小さな映像が現れた。それはよく見ると、北風町の全体図を精巧に投影したものであった。
「…俺は止めねえぜ」
突然、ガイキが口を開いた。
「何がですか」
「とぼけるなよ。…未練たっぷりなんだろ? あいつに」
「…」
リンカは、何も言わない。
彼らの足元で、ある一件の建物が点滅し始めた。それは、母神教の本部であった。
「では、転送します…!」
頭上で、黒いピラミッドが宣言した。
と、瞬く間に2人の体が、点滅する建物の映像に吸い込まれて、消えた。
394 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/11(水) 22:11:34.07 ID:LapuAGZv0
今夜はここまで
395 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/13(金) 23:25:06.34 ID:tz1p4c9m0
ゆるくない募
>>351
みたいなオーパーツ系のメモリ
今週末は更新できなそう
396 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/09/13(金) 23:52:58.94 ID:wzflFxp50
ストーンヘンジ・ドーパント
「ストーンヘンジ」の記憶を持つメモリの力で変身するドーパント
身体は直立巨石に手足が生えているだけなので一見弱そうに見える
ストーンヘンジの成り立ちには諸説あるが、古代の天文観測所という見解を強く発揮しており、空の見えるところで夜には星座の力を借りる強力な力を持つ
例えば射手座が出ているときにはボウガンの様な強力な射撃部気がしようで着たり、蛇つかい座が出ているときにはエナジーの蛇を扱ったりすることもできる。
なら、昼に戦えばいいのかというとそんな単純な話でなく、太陽礼拝の意味もあったという話による記憶から太陽の力を一部使うことが出来たりもする。
ゾディアーツではない。
397 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/09/14(土) 00:14:37.90 ID:pCR8YhLB0
お疲れやで……
ピラー・ドーパント
『柱』、なかでも錆びない鉄柱のオーパーツとして知られる『アショカ・ピラー』の記憶を内包するメモリの力で変身する。
黒鉄色のメモリで、パルテノン神殿のような柱の意匠がPの字を描いている。
ドーパント体も黒鉄の、胴体にあたる一本と、両腕の位置に浮翌遊する二本の合計三本の鉄柱になる。
ドーパント状態で胴体部は地面に刺さり全く移動することはできないが、折れず、錆びず、敵からの干渉をほとんど受けない
両腕の二本の鉄柱は、蛇神ヴァースキを貫いているとする伝説にちなんで、槍やパイルのように射出でき、固定砲台として機能する。
398 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/09/14(土) 10:18:55.53 ID:sBDxg8KaO
ヴィマーナ・ドーパント
神々の持つ空飛ぶ戦車『ヴィマーナ』の記憶を内包したドーパント
戦車、車、飛行機、宮殿等の諸説あるが、このメモリでは主に空中戦車としての面が強い
ドーパント体は非常に巨体であり、数十人乗り込んでもまだ余裕がある程頑強。そしてどれだけ無理な旋回をしても振り落とされない
火炎と水流を放射する攻撃を得意とし、上空からの空爆だけで甚大な被害を巻き起こす
メモリの色は火を表すオレンジ。戦闘機が空気をかき分け、そのかき分けた衝撃がVの字となっている
399 :
◆iOyZuzKYAc
:2019/09/14(土) 17:18:24.22 ID:HlPuoY2x0
ネブラを採用するにあたって、相方が欲しいんだ
ネタバレすると、変身者は若い女
現時点ではヴォイニッチが浮かんでる
400 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/09/14(土) 18:15:22.24 ID:4mU/SF5YO
ヴォイニッチで良いと思うけど・・・案を置く
モナリザ・ドーパント
「モナリザ」の記憶で変身するドーパント
見た目は長髪の聖母の様な女性で杖を所持している
モナリザ・・・ガレリオのモナリザには不思議な点がある。それは恐竜らしきものが描かれているということだ。あの時代にどのようにして恐竜を知ることが出来たのか・・・謎に包まれている
その為かこのドーパントも恐竜態に変身することが出来る
401 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/09/15(日) 02:33:58.35 ID:9WYe3VJVO
ゆるくなくモチーフ指定したらめっちゃ集まってて草
402 :
◆iOyZuzKYAc
[sage]:2019/09/15(日) 08:12:38.93 ID:XQ6LdapB0
(PC無いから更新できないけど、集まったアイデアを見ると書くのが楽しみになる)
(ストーリー展開まで安価したスレを今まで散々エタらせてきたけど、このくらいの安価でも自分の思いもよらない展開に繋がって楽しい)
403 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/09/15(日) 16:20:15.14 ID:SiWZ6axDO
そういや今までどれだけ採用されたんだっけ
もう7〜8くらい採用されてる?
404 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/09/15(日) 17:11:36.97 ID:kQId8ESUO
>>403
カートゥーン
ファンタジー
アイドル
オーケストラ(提案時バンド)
クエスト
リインカーネーション
セイバー
トゥルース、ティーチャー
ワイルド
名前募集のもの含めてこれくらい採用されてるかな。漏れてたら失敬
405 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/17(火) 20:23:41.61 ID:ZkCaa3cg0
次の瞬間、2人は薄暗い聖堂の真ん中に立っていた。祭壇のあるべき部屋の前方には、分厚い虹色のヴェールがかかっている。そこから、一つの人影が透けて見えた。
”待っていましたよ、子どもたち”
「財団Xです。アポイントも取らずに申し訳ありません。私たちは、貴女がたと取引を」
「よお、お母様とやら!」
ガイキが、大声で割り込んだ。
「俺たちに従え。さもなきゃ殺す」
”…”
あまりに乱暴な言い方に、ヴェールの向こうの人影は絶句し、リンカは溜め息を吐いた。
”…母は、あなた方を愛したい”
「好きにしろよ。だが、俺たちの言うことには従ってもらう」
「現時点で、私たちの利害は衝突しないと考えています。どうでしょうか。…貴女が、ガイアメモリをこの町に広げる理由を、聞かせていただけますか」
リンカの問いかけに、人影がゆらりと動いた。
”母は、全てを愛しています。全ての母であるが故に。ですが…”
「何か問題が?」
”子は多く、母は独り。全てを愛しても、それは伝わり難い…現にミヅキは、誰よりも愛を求めていたのに、母はそれに応えられなかった…”
「挙げ句、仮面ライダーとやらに寝取られちまったな。ははっ!」
”まさか。兄妹が睦み合うことを嫌う母がいましょうか”
「…」
ガイキは、うんざりした顔でリンカを見た。
「…それで? 結論は」
”ガイアメモリは、母の知恵。一度でも触れたものは皆、母の腕の中。腕の中で……一つになる”
「なるほど、そりゃあ良い」
ようやくガイキが頷いた。
「目指すところは大体一緒だな。よし、交渉成立……っぐ!?」
「っ!」
手を叩こうとしたその時、彼が呻き声を上げた。一拍遅れて、リンカがその場に膝を突いた。
406 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/17(火) 20:24:09.19 ID:ZkCaa3cg0
「もちろん、君たち2人も一緒だよ」
「こ、の、野郎…」
振り返ると、そこにはシロツメクサの冠を被った、天使のような少年が立っていた。その手には、四つ葉のクローバーを模した重いメイス。
「『お母様』は必要だが、テメエはぶっ殺す…」ドミネーター!
「…やむを得ません」トゥルース
”ユウダイ。程々に、ですよ”
「はい、お母様」
ヴェールが開き、中からマリア像めいた白い女のドーパントが姿を現した。ドミネーターとトゥルースドーパントは、拳や杖を構えてそれらと向き合った。
『…ケッ』
「っ…」
肩で息しながら、舌打ちするドミネーター。その隣でトゥルースドーパントも、深呼吸を繰り返す。
”気負うことはありません、我が子たち。母に委ねなさい”
ゆっくりと祭壇を降り、2人に歩み寄るマザードーパント。彼女は2人を交互に見て、それから何か言おうとして……おもむろに、後ろを振り返った。
「!」
「! お前は…!」
そこには、右手の毒針を構え、今まさに主の背中に突き立てんとしていた、クイーンビードーパントがいた。
”母に、その毒を向けますか”
「…」
奇襲を見破られ、狼狽する女王蜂。いきり立つクローバードーパントを制すると、マザードーパントは、一言、呼びかけた。
”…『蜜屋先生』”
「!! その声、まさかあなたは」
白い光が、マザードーパントの体を包む。光が収まった時、そこに立っていたのは、ブラウスに白衣を纏った、自身の塾の専従医であった。
「友長…先生……ああ…」
女王蜂は呆然と呻くと…突然、ヒステリックな声で叫んだ。
「あああっ! あと少し、もう少しだったのに!! 誰も、誰にも私は…」
叫びながら、腕を振り上げ、そして突き出した。
「やめろ、このっ…!」
クローバーが駆け出すが、ドミネーターに阻まれる。
”…っ”
407 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/17(火) 20:24:51.50 ID:ZkCaa3cg0
「はぁっ…はぁっ…」
女の胸に、猛毒の針が深々と突き刺さる。
女王蜂が腕を引くと、女が崩れ落ちた。
「お母様!!」
”案ずることは…あなたが、求めるなら…母、は…”
「…マザードーパントを確保しました」
倒れた女を、変身を解除したリンカが拘束した。ドミネーターもクローバーに致命のストンプを見舞い、意識を奪う。
「よし、撤収だ」
メモリを抜きながら、ガイキが宣言した。
「…ええ」
3人と1人で、聖堂の出口に向かった、その時。
408 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/17(火) 20:25:18.11 ID:ZkCaa3cg0
「…熊笹が、死んだ」
「!?」
リンカが息を呑んだ。
「朝塚芳花も死んだ。顔も知らないドーパントを、何人も殺した」
たどたどしい足音。ガイキが、ニヤリと嗤った。
「へぇ、まだ来やがるか」
「ミヅキが…死んだ…!」
聖堂に現れた、もう一つの影。汗の滲んだ病衣を着て、全身に包帯やガーゼを当てた、傷だらけの男。
「俺は!」
男が…力野徹が、叫んだ。そして、右手を振りかざした。
「お前らを止める! 命に代えても!!」
その手に握られているものを見て、リンカが叫んだ。
「駄目!! それだけは」
409 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/17(火) 20:26:06.07 ID:ZkCaa3cg0
病衣の前を開ける。青紫の痣が広がる胸の真ん中には、黒いコネクターが刻まれていた。
そして、右手に掴んだ最後の武器。装飾は剥がれ、筐体にはヒビが入った、ボロボロのメモリ。蝋燭の光に照らされて、鈍いピンクの光を放っている。
「済まない、ミヅキ。もう少しだけ…身勝手な大人に、付き合ってくれ」
410 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/17(火) 20:26:32.06 ID:ZkCaa3cg0
『ラビット』
411 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/17(火) 20:27:34.83 ID:ZkCaa3cg0
『逆襲のF/命に代えても』完
今夜はここまで
412 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/09/17(火) 21:39:48.61 ID:lxzUokIeO
乙、これはミヅキ正ヒロインですわ
ウサギでファンタジーというと、最強フォームは不思議の国のアリスフォーム?
413 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/09/18(水) 18:59:03.36 ID:o4xRgd6ZO
ところでマスカレイドとか見るに同じメモリなら誰が変身しても見た目は同じになるっぽい?
なら徹は腰から尻にかけて肉付きがいい女性的な見た目のバニーおっさんに……?
414 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/19(木) 20:57:10.63 ID:4l4UuHBQ0
「うおおおおおおっ!!」
「やめて!!」
駆け寄ろうとしたリンカの前に、銀色の影が立ちはだかった。
「メモコーン…!?」
徹の胸に、ピンク色のガイアメモリが突き立てられた。その体が、黒い霧に覆われていく。
「っ、おおおっ…ああっ、くああああっっっ!!!」
絶叫する徹。傷だらけの体が、黒い外骨格に覆われる。禍々しい外殻は、更に鮮紅色の体毛に覆われ、辛うじて歪んだ獣の形へ変わっていく。
やがて、彼は赤と黒の、兎の魔物となった。
「はぁっ…はぁっ…おおおおおっっ!!」
徹が…ラビットドーパントが、駆け出した。
「! 来い」ドミネーター
『おらあっ!』
「らあぁぁぁっ!!」
飛び回し蹴りを腕で受けると、ドミネーターが拳で応戦した。更に、メモコーンが鋭い角で、ドミネーターの動きを妨害する。
「そんな…あのメモリを使って、それでも戦うというの…?」
二人の戦いに取り残されたリンカが、呆然と呟いた。
「あれは…兎ノ原美月の内臓を、そのまま移植するようなものなのに」
415 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/19(木) 20:57:42.75 ID:4l4UuHBQ0
「はああっ!」
『ふんっ!』
方やキック、方やパンチで、互いを傷付け合うドミネーターとラビットドーパント。力量は明らかにドミネーターが上。しかし、メモコーンの補助で互角に渡り合っている。
ところが、そのメモコーンが、おもむろにラビットを離れた。
「っく、邪魔を…!」
彼が突撃したのは、クイーンビードーパント。いつの間にラビットの背後の周り、毒針を撃ち込まんとしていた。
しかし、その隙をドミネーターは見逃さない。
『貰ったぁ!』
「ぐっ、はっ…」
腹部にワンツーパンチを叩き込まれ、膝を突くラビット。
ドミネーターが、メモリを右手のグローブに装填する。
『悪いが、今はお仕事中なんだよ。さっさと片付けさせてもらう』ドミネーター! マキシマムドライブ
「っ、ぐ、ああっ、あああぁっ…」
悶え苦しむラビットドーパント。その胸からピンクのメモリが引き抜かれ、ドミネーターの右手へと飛んでいく。
それを握りしめると、メモリから緑のスパークを吸収しながら、拳を振りかざす。
『作り主に楯突くんじゃ……ねぇっっっ!!!』
「メモコーン!!?」
突進してくるメモコーンに、渾身の一撃を見舞う。スパークを纏った拳が頭を直撃し、メモコーンが粉々に砕け散った。
416 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/19(木) 20:58:13.62 ID:4l4UuHBQ0
そして…
「あ…あっ、ぁ…」
ドミネーターの手の中で、メモリが砕け、床へと落ちていく。
ラビットドーパントの外装が崩れ、消滅していく。
「…」
冷たい床に、徹が倒れ伏した。
「…」
『…ま、計画に影響は無え。帰るぞ、リンカ、先生』
倒れて動かない徹を捨てて、出口へと向かうドミネーター。ところが
「…」
『…何のつもりだ』
今度は、リンカ。去ろうとする彼の前に、立ちはだかる。
「彼が、最後まで命を賭けるのならば…私はもはや、それを踏みにじることはできません」
『へえ』
やっぱりな、そう言わんばかりにドミネーターが鼻を鳴らす。
『一応、お作法として言っておくぜ。……財団を、裏切る気か』
「これは、裏切りではありません」
『ほう?』
リンカはスーツの懐に手を入れると、何かをドミネーターの足元に投げつけた。
それは、『辞表』と書かれた白い封筒であった。
「何故なら、私は今この時を以て、財団Xを退職するからです。そう…」
黄金のメモリと、ガイアドライバーを掲げ、毅然と宣言する。
417 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/19(木) 20:59:55.73 ID:4l4UuHBQ0
「…寿退社です」トゥルース
418 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/19(木) 21:00:29.24 ID:4l4UuHBQ0
今夜はここまで
419 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/19(木) 21:13:30.07 ID:4l4UuHBQ0
正ヒロインはあくまでリンカです(断固たる意思)
420 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/20(金) 23:00:16.41 ID:ZetHopgw0
『おらおらぁっ! どうしたぁっ!』
「く、あっ…!」
壁に叩きつけられ、崩れ落ちるトゥルースドーパント。拳を突き出したドミネーターの足元には、無数の羽が突き刺さったクイーンビーが倒れている。
ドミネーターと交戦するより先に、彼女は迅速にクイーンビーを無力化した。この女王蜂の不意打ちを、間近に何度も見てきたからだ。
果たして、それ自体は成功したものの、その程度でドミネーターの優位が揺らぐことなど無かった。
『足掻けよ、人間!』
髪を掴んで立たせると、腹に膝を打ち込む。前のめりになったその首を掴むと、ぐいと吊り上げた。
「ぐっ、くぅっ…」
『コトブキ退社だか何だか知らねえが、宣ったからにはやってみせろよ』
「っ…く…」
ぎりぎりと首を締め上げるドミネーター。その腕を掴む彼女の手から、力が抜けていく。
『…何だよ、呆気ねえ』
ドミネーターが舌打ちする。彼は片手を拳に固めると、言った。
『兄弟たちによろしくな。…あばよ』
421 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/20(金) 23:02:40.11 ID:ZetHopgw0
「…」
爆音。打撃音。怒声。
「…」
崩れる音。砕ける音。倒れる音。
「…っ」
違う。
「…こんな」
こんなものは、求めてない。
「俺が…」
夢見たのは。願ったのは。
「俺たち、が…」
妄想か? 空想なのか?
_____違う!
「…守る、この、町を……っ!」
この想いは。この、願いは。
「……真実だっ!!」
422 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/20(金) 23:10:56.70 ID:ZetHopgw0
『!?』
「…!」
突然、トゥルースドーパントの体が金色に光った。ドミネーターが咄嗟に手を離すと、彼女の体は眩い光を放ちながら、倒れ伏す徹の元へ、ゆっくりと滑っていった。
「はぁっ…くっ、はあっ…!」
「徹…」
金色のガイアメモリが独りでに抜け、彼女の手に戻った。
徹はよろよろと立ち上がると、彼女に向かって手を差し伸べた。
「リンカ…」
「…ええ」
リンカは頷くと、懐からロストドライバーと、ファンタジーメモリを取り出し、その手に握らせた。
次の瞬間
「っ!」
「!!」
二人の手の中で、ドライバーが金と銀の閃光を放った。それだけではない。リンカの腰に巻かれたガイアドライバーまでもが、金と銀に輝き始めた。
そして、光が収まった時…
「これは…」
「メモリのスロットが…増えた?」
空白だったドライバーの左側に、新たなスロットが追加されていた。しかも、リンカのガイアドライバーもまた、それと同じものに姿を変えていた。
リンカの左手に握られたガイアメモリの外装が、融けるように剥がれ落ちた。その中から現れたのは、同じ黄金の、真実のメモリ。___仮面ライダーの、メモリ。
423 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/20(金) 23:11:41.31 ID:ZetHopgw0
「…リンカ」
徹は、リンカの目を真っ直ぐに見た。
「俺の空想に…俺の、夢に。……付き合ってくれるか」
「もちろんです」
リンカは、頷いた。ぎこちなく笑んだその頬を、一筋の涙が伝った。
「貴方の願い。いえ、私たちの願い。夢から、真実にしましょう」
徹はドライバーを装着すると、リンカの左側に立った。そして、それぞれのメモリを掲げた。
『トゥルース』『ファンタジー』
「「変身!!」」
424 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/21(土) 00:17:18.72 ID:KwtiTXI/0
リンカが、ドライバーの右のスロットに、金のメモリを装填した。挿し込まれたメモリはデータの光となって消え、徹の装着するドライバーの右側に出現した。
それを掌で押し込むと、徹は銀のメモリを左のスロットに装填した。そして、2本のスロットを、両手で左右に展開した。
『トゥルース』『ファンタジー』
徹の体が、黒い外骨格に覆われていく。それは、騎士の鎧の下に秘められた、禍々しい魔物の姿であった。
しかし、それが動き出すより先に、黄金の鳥のような獣が飛来し、その翼で後ろから彼を包み込んだ。翼は鎧となり、仮面となった。また、徹の体からも銀色の光が浮かび上がり、噛み合うように彼の装甲を形成した。
『…』
金と銀の騎士。彼は、ゆっくりと顔を上げると……ふと、自分の右側に目を遣った。
『…リンカ? あれ? リンカ、どこ行った?』
”ここです”
『えっ!? いや、ここって』
”貴方の中です。…どうやら、私たちは2人で、1人の仮面ライダーを形成しているようです”
『ふ、2人で…? そんなのアリかよ!?』
”こうして有るのだからアリです。そんなことより、今は”
『!』
はっと、前に目を向ける。
腕組しながら律儀に待っていたと思しきドミネーターは、やれやれと言った様子で腕を解いた。
『…終わったか?』
『ああ。…今度こそ、お前を倒す!!』
『上等だ。…おらあっ!』
ドミネーターが突進し、正拳突きを見舞う。ところが
『っ、硬ぇっ…』
『くっ…効かねえっ!』
その腕を掴み、引き寄せてから顔面を殴りつけた。
『ぐわああぁっ!?』
一撃で吹き飛ばされ、壁に激突するドミネーター。
ファンタジーは追撃せず、破壊されたメモコーンに片手をかざした。
すると、ばらばらになったメモコーンの破片と、砕け散ったラビットメモリが一所に集まり、元通りの一角獣の形に戻った。
更に、もう片方の手をかざすと、金と銀の大剣が出現した。
『メモコーン!』
復活したメモコーンが、彼の手元までジャンプした。それをキャッチすると、頭部から青いメモリを取り出した。
メモリを大剣の鍔に挿し込み、変形させる。
『セイバー! マキシマムドライブ』
高く掲げた剣から、黄金の光刃が伸びた。そして、それを…真っ直ぐに、振り下ろした。
『セイバー…トゥルーカリバー!!』
『ぐわぁぁぁぁぁっっっ!!?』
聖堂の天井ごと、刃がドミネーターを切り裂く。
叫び声とともにドミネーターの体が爆炎に包まれ…そして、クイーンビー諸共mどこへともなく消えた。
425 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/21(土) 00:18:09.34 ID:KwtiTXI/0
『逆襲のF/夢を真実に』完
今夜はここまで
426 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/21(土) 00:36:44.54 ID:KwtiTXI/0
『ラビットドーパント・ヴォーパル』
ミヅキの遺したラビットメモリで、力野徹が変身した姿。外観はファンタジーの素体から、鮮紅色の毛が生え、頭部には鋭い耳が伸びている。元のラビットドーパント同様、蹴り技を主体とした戦闘を行うが、徹の戦闘経験のため拳も使うことがある。
このラビットメモリは、ミヅキが長期間に渡って頻回に使用したものであり、もはや彼女の体の一部と言って良いほどに適合していた。このメモリを彼女以外の人間が使うことは、彼女の臓器を特別な処置なしにそのまま移植するようなものであり、普通ならば挿入した瞬間に凄まじい拒絶反応で死に至る。ガイアドライバーで毒性を軽減し、体の外ぎりぎりに留めていたリンカでさえ、人格に変調を来し、体調を崩すことになった。
それでも徹がこのメモリを使用して生存し、あまつさえ戦闘を行うことができたのは、彼の体に残ったファンタジーメモリの因子が彼を守ったこと、そしてラビットメモリに遺されたミヅキの最期の意思が、彼の体を受け入れたからであった。
しかし、それでも急ごしらえの戦闘態であることには変わりなく、熟練の戦士であるドミネーターの前では無力であった。パーフェクト・ドミネーションによってメモリを強制的に抜去され、メモリブレイクされることとなった。
427 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/21(土) 09:19:57.36 ID:KwtiTXI/0
というわけで、
>>288
の正解は『ダブルドライバー化してリンカと融合』でした
高適合ファンタジーの理想を現実にする力が久々に活かされた形になる
428 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage saga]:2019/09/22(日) 15:53:05.78 ID:aYypJTI+O
マニュアルドーパント
manualメモリで変身するドーパント。
物の正しい扱い方を発見して教える能力を持ち、本来なら非戦闘型で見た目も白衣にだて眼鏡、そしてマスカレイドそっくりである。物にはガイアメモリも該当しており、新参者だろうと半ば発狂してようとすぐに力の扱い方を伝授させることが可能。何を優先させて教え込むかも決められる。
ギジメモリ、ドライバー等も扱い方を即時発見して使いこなせる。暗証番号等でロックされた道具に関してはさすがに時間かかる。また、地球の本棚等の自分の手に余るものに対しても扱い方を理解でき、実践はできずとも他人に教えることができる。
このmanualメモリ自体も最初は変身用ではなく、ガイアメモリ製造を効率良くする為の中継装置だった
■戦術例
ドーパントに触れて能力や身体の扱い方を即座に教え、戦わせる。初陣マスカレイドでもアクロバティックな動きが可能になり、集団戦術で撹乱などの高度な戦術を叩き込ませることも可能。
マニュアルドーパント自体に戦闘向けな特殊能力はないが、体術や武器の心得、サバイバル術等を自分に教え込むことでマニュアル通りにこなせる。更に変身解除しても知識と経験は残るので、毒素に汚染されるリスクを減らせることも可能。また、元々非戦闘用なので肉体よりも精神へ毒素が回りやすいが、脳の扱い方つまり考え方を調べてしまえば解決できてしまう。なおメモリブレイクされても教え込んだ知識と経験は消えない
429 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/22(日) 20:24:24.11 ID:Hx5VlaEO0
「この度は、大変ご迷惑をおかけしました」
徹と植木の前で、リンカは深々と頭を下げた。
「そんな顔するなよ。あんただって、やりたくてやってたわけじゃないんだろ?」
「ですが、貴方にあそこまでの無理を強いる結果となったのは事実です」
「ちょっ、ちょっと待ってくれ」
植木が口を挟んだ。
「私にはまだ、事態がよく呑み込めてないんだ。…リンカさんが、一度は力野さんを裏切った。でも戻ってきた、そういうことで良いのか?」
「やや語弊があります。元々私は、彼を一方的に利用し、役割を終えた後は切り捨てる予定でいました。しかし、彼と行動を共にする内に、私の心境が変化しました」
「まあ、色々あったんですよ。色々」
強引に徹が纏めようとするので、植木は「ううむ」と唸った。
「とにかく…今は、信用して良いのか?」
「はい」
リンカが頷く。
「…そうか。それなら良い」
植木は、ソファから立ち上がった。そうして、応接室を出ようとした。
「どちらへ?」
「あっ、伝えてなかったかな。…力野さんが病院から消えた頃に、井野が目を覚ましたんだ」
「!!」
徹とリンカは思わず立ち上がった。
井野定は、元は普通の会社員であった。しかし、就職したばかりの妹が過重労働に耐えかねて自殺したことで、彼女を死に追いやった会社に復讐すべくガイアメモリに手を出し、大惨劇を引き起こした。その過程で彼は、母神教の中枢に触れたらしい。今まで捕らえてきた犯罪者の中でも、特に重要な人物であった。
「彼は、今どこに」
「まだ集中治療室だ。どうする? もう彼はメモリを持っていないが、付いてくるか?」
「…行きましょう」
リンカが言う。徹も頷いた。
430 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/22(日) 20:24:51.78 ID:Hx5VlaEO0
警察病院の集中治療室には、物々しい警備体制が敷かれていた。井野を始め、ガイアメモリ犯罪者たちが数人入院しているのもあるが、一番の原因は最奥の個室に寝かされた、1人の新患にある。
母神教本部にて、クイーンビードーパントの毒針を受け、瀕死のマザードーパント・成瀬ヨシノ。ガイキを撃退した2人は、共に倒されたクローバードーパント・朝塚ユウダイと一緒に、彼女もこの病院に連れてきたのであった。
しかし、徹たちの今の目的は彼女ではない。スタッフステーション近くのベッドに近寄ると、先に来て待っていた坂間が植木に敬礼した。
「…やあ」
「…」
数本の点滴に繋がれた井野は、ベッドの上で体を起こしたまま、険しい顔で自分の手元を見つめていた。
「井野定さん、ですね?」
徹が、声をかけた。
「…ああ」
掠れた声で、井野は肯定した。
「貴方は…母神教の本部で、その教祖と会いましたね」
「…」
彼は、肯定も否定もせず、逆に聞き返した。
「…おれは、死刑になるのか」
「…」
徹は、植木の方をちらりと見た。植木は、硬い声で答えた。
「…それは、我々が決めることじゃない。然るべき裁判で決めることだ」
「…」
井野は、再び口を閉ざしてしまった。
3人は顔を見合わせると、その場を離れ、成瀬の方へ向かうことにした。
「今となっては、彼の証言はさほど重要ではありません」
一番奥の個室に向かいながら、リンカが小声で言った。
「私たちは既に、『お母様』の正体、およびその能力について把握しています。何より、この先にその『お母様』自身を確保しています」
「だけど、それはあくまでカタログスペックの話だろ?」
徹が反論した。
「そいつを友長、じゃない成瀬が、どんな風に使うのかは知っておきたい。それこそ、どうやって相手の心を捉えるのかとか、どうやって自分を『お母様』と呼ばせるまでに洗脳するのか、とか」
「…」
考え込むリンカ。植木は、ふと立ち止まって口を開いた。
「…どうする。ある程度分かるまでは、接触は控えておくか?」
431 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/22(日) 20:26:09.66 ID:Hx5VlaEO0
「…確かに。今のところは、念の為そうしておきましょう」
リンカは頷いた。
___その夜。固く閉ざされた、集中治療室の個室にて。
ベッドに横たわる女に縋り付いて、一人の男がむせび泣いていた。
「ああ、おいたわしやお母様…まさか真堂さんを救出している間に、このようなことになっていようとは…」
『お母様』は、何も言わない。
「蜜屋は裏切り、真堂さんとユウダイ君は倒され、ミヅキは…あの娘は…あぁ…」
無機質な心電図の音が、すすり泣く声を無神経に切り刻む。
閉じた扉の外では、見張りの警官が死んだように眠りこけていた。警官だけではない。医者も看護師も、誰もが深く眠り込んで、少しも男の存在に気付かない。
「これも、我らにとって乗り越えるべき、試練なのでしょうか、お母様…」
その時、部屋の扉を叩く音がした。
「! 誰です」
振り返り、鍵を外して細く扉を開ける。
向こうに立っていたのは、病衣を着た一人の男。
「貴方は…」
「井野と言う者だ。……あんたには、『アースクエイク』と言ったほうが通じるか?」
「! ああ、思い出しました。ミヅキが連れて来た」
男は、井野を部屋に招き入れた。
「仮面ライダーの憂き目に遭いながら、よくぞ戻られました」
「おれには、もうお母様しかない。復讐も、会社も、全て失った…だからせめて、妹だけでも」
「ですが…お母様は今、このような有様で」
「…っ」
突然、ベッドの上の女が、小さく身じろぎした。
「! お母様」
「定…あなたの…妹の、お骨を…」
「生き返らせてくれるのか!?」
「あなたの…妹なら…母、の、娘…」
「頼む!」
井野は、ベッドの前に平伏した。
「遊香を取り戻せるなら…おれは何だってする! だから」
「…井野さん」
男が、その隣に膝を突いた。
「貴方の想いは、しかと聞き届けました。妹さんを取り戻した暁には…共に、お母様の愛を守り抜きましょう」
そう言うと彼は、井野に一本のガイアメモリを差し出した。
緑青色のメモリには、円形に歪んだ線で『N』と書かれていた。
「真堂さんが、命懸けで持って帰ってきたものの一つです。…きっと、貴方なら使いこなせるでしょう」
432 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/22(日) 20:27:51.10 ID:Hx5VlaEO0
井野は頷くと、メモリを掲げ…自らの左胸に、突き立てた。
『ネブラ』
433 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/22(日) 20:28:26.36 ID:Hx5VlaEO0
今夜はここまで
やっぱ皆さん、ミヅキには復活してほしい感じです?
434 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/09/22(日) 20:35:31.47 ID:UcBzZ7Da0
乙
個人的にはWヒロインでリンカと取り合って欲しいという思いはある
435 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/09/22(日) 21:49:07.28 ID:h5DOwP5BO
クール系とビッチ系で凸凹Wヒロインやってほしいなあ
436 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/09/22(日) 22:14:31.25 ID:osh2geEc0
でも、なんかただけろっと復活しちゃうのも、あの最期を湿気らせるような
一波乱か二波乱あるか、または制限付きとか、何かはあってほしい
437 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/23(月) 15:27:13.62 ID:DDkFWd8A0
『ばそ風北』の暖簾をくぐると、店主が目ざとく見つけて、声をかけてきた。
「いらっしゃい、徹ちゃんにリンカちゃん。久し振り…」
言いかけて、ふと気付く。
「…あれ? リンカちゃん、雰囲気変わったね。それに、いつものスーツじゃないし」
「そうですね」
リンカは頷いた。
確かに、財団Xを抜けてから、彼女はトレードマークの白スーツを遂に脱いだ。
↓1〜3でコンマ最大 リンカの私服
438 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/09/23(月) 15:31:04.58 ID:VvbAv5Bwo
「りんか」と達筆な毛質書体で書かれたブカブカのクソダサTシャツにショートパンツ
439 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/09/23(月) 15:34:34.47 ID:n+0oK37M0
ブカブカジャージにチノパン
440 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/09/23(月) 15:37:21.69 ID:v5QES/ISo
こういうのと
https://apple-believer.com/mysterious-cat-t-shirt/
ジャージとスウェット
441 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/09/23(月) 15:38:55.24 ID:Nmv1RSQkO
どうあってもクソダサや色物にしたいすぎる……
442 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/23(月) 15:48:35.66 ID:DDkFWd8A0
玄さん路線で行くのか(困惑)
443 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/09/23(月) 16:02:39.20 ID:LX/074rz0
上下統一していないから更に酷い可能性(せめてジャージセットかスウェットセット……)
これの隣を歩くって何の罰ゲーム?
444 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/09/23(月) 16:20:28.56 ID:h+dgq5apO
>>1
公認正ヒロインなのに玄さん路線を走るのか(困惑)
加頭は元よりガイキは熟女フェチだし財団メンバーはどっかおかしすぎる…
445 :
意地でも金ネクタイだけは差し込むつもりだったけど流石に諦めた
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/23(月) 16:29:11.35 ID:DDkFWd8A0
「にしても…こういうのが趣味だったなんて」
「?」
きょとんとするリンカ。
濃紺のTシャツには、無数の星々や銀河、そして手前で目を見開き、何かの啓蒙を得たような猫がでかでかとプリントされている。その上から灰色のジャージを羽織り、下も同色のスウェットという、非常にラフな格好をしていた。
「流石に、この装いにネクタイは合わないかと」
「いや、そういう問題じゃなくて…ま、良いや。おっちゃん、北風蕎麦二つね」
「あいよ」
蕎麦を待ちながら、2人はファンタジーの新たな姿について話し合った。
「ドライバーが、全く別物になったんだよな」
テーブルの上に、2本挿しとなった新たなドライバーを置く。リンカも今、同じ物を所持している。彼女はそれに加えて、所持していたトゥルースメモリの形まで変わってしまった。
「風都の仮面ライダーが、これと同一のものを使用します」
「えぇ…」
徹は思わず、不満げな声を出した。彼は風都が嫌いだし、それに付随して向こうの仮面ライダーに対しても良い印象を持っていない。それが、同じものを使う羽目になったこと、何より、彼自身がこの形を、リンカと2人で力を合わせて戦うという、このドライバーを求めたことが、彼にとっては認めがたい事実であった。
「どのみちドライバーもメモリも、元は一つの組織が作ったものです。重複は避けられません。ただ、個人的に一つ、解決しておきたい問題が」
「何だ?」
「名称です。これまでは、貴方の使用するファンタジーメモリに準じて、仮面ライダーファンタジーと呼称していました。ですが、ここに私のトゥルースメモリが加わるとなると話は別です」
「『仮面ライダートゥルーファンタジー』…何だか分かんねえけど、どっかから怒られそうな名前だな」
「ここで一つ、新たな名称を考えるのはどうでしょう」
「そうだな…」
徹は、考え込んだ。
↓1〜3で
>>1
が気に入ったやつ 新たな仮面ライダーの名称
446 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/09/23(月) 16:35:06.04 ID:gttkaaGu0
イカロス
447 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/09/23(月) 16:37:21.50 ID:Nmv1RSQkO
仮面ライダーデュアル(仮面ライダーデュアル トゥルースファンタジー)
448 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/09/23(月) 16:52:10.17 ID:PpeV36IH0
仮面ライダーフュージョン
449 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/23(月) 17:13:04.18 ID:DDkFWd8A0
「…『デュアル』」
「二重、二通り…そういった意味ですね。良いと思います」
「よし、仮面ライダーデュアル。それで決まりだな」
「はい、お蕎麦2人前」
「! どうも」
慌ててドライバーを引っ込めると、テーブルの上に二杯の蕎麦が並んだ。
2人は手を合わせると、蕎麦を食べ始めた。
450 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/23(月) 17:13:37.06 ID:DDkFWd8A0
今日はここまで
何故トゥルーファンタジーじゃ駄目なのかと言うと、今後トゥルーファンタジー以外の組み合わせも出てくるかもしれないからですね
451 :
◆iOyZuzKYAc
[saga]:2019/09/23(月) 17:34:58.20 ID:DDkFWd8A0
『仮面ライダーデュアル トゥルーファンタジー』
ファンタジーメモリの能力に、徹とリンカの強い想いが作用することで、彼のロストドライバーとリンカのガイアドライバーは、ダブルドライバーへと姿を変えた。また、それに合わせてリンカのトゥルースメモリも次世代型へと進化した。
ソウルサイドにリンカのトゥルースメモリを、ボディサイドに徹のファンタジーメモリを装填し、ドライバーを展開することで変身する、新たな戦士。ファンタジーの魔物めいた素体の上からトゥルースドーパントを模した金色の鳥が覆いかぶさり、装甲となる。黄金の重厚な甲冑に、宝石の装飾が付いた綺羅びやかな外見で、ファンタジーの翼にもなる白いマントは健在。
『空想』の力に『真実』が加わることで、『空想を真実にする』というファンタジーの能力が更に強化されている。念じるだけで破壊された物を修復したり、自在に武器を具現化したりと、その力は変幻自在。また、2本のガイアメモリに2人分の力が合わさることで、単純な出力もファンタジー単体のほぼ2倍にまで向上している。
専用武器『イデアカリバー』は金色の刃の大剣で、鍔にメモリスロットがある。ここにファンタジーメモリやセイバー、クエストなどを挿し込むことで必殺技を発動する。
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