【安価】ガイアメモリ犯罪に立ち向かえ【仮面ライダーW】

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369 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/07(土) 19:37:17.19 ID:DHKSSogP0
「…え?」

「ご苦労さまでした、力野徹」

 彼女はいつもの無感情な声で言うと、ドライバーとメモリを手に男の方へ歩み寄った。

「! だめ、だ…そっちは…」

 しかしリンカは構わず、奪ったそれらのガジェットを、男に差し出した。

「『ガイキ』。事前の計画通り、ファンタジーメモリとロストドライバーを回収しました」

「おう、ご苦労」

 ガイキと呼ばれた男は、興味無さそうに応えた。
 リンカが、徹の方に向かって言う。

「財団Xによる、ガイアメモリ計画へのご協力、ありがとうございました。お陰様で、メモリ新造への道筋が立ちましたので、貴方との協力はここまでになります」

「ど…どういう…ことだ…」

「ミュージアムが崩壊し、T2計画も頓挫し、ガイアメモリ計画は長らく凍結となっていました。最初私たちは、破棄された計画の残滓が他の計画を邪魔することを危惧して、対象の組織を殲滅することを目的に動いていました。しかし、メモリの新造が可能となれば話は別です。組織の主導権を財団が奪還し、再び計画を始動することにしました」

「! じゃあ…あんたたち、これから」

 リンカは目を細めた。

「…無軌道な暴力は殲滅します。メモリの力は、正しく理性的に用いられます。ご安心ください」

「待て…よ…!」

 少しずつ、体力が戻ってきた。どうにか体を起こすと、徹は叫んだ。

「正しい、使い方なんてあるかよ…ガイアメモリは、この町からなくす…じゃないと」

「貸与していた、ドライバーとメモリは返却していただきます。命までは奪いません。貴方は…全て忘れて、明日から元の生活に戻りなさい」

「ふざけるな!! それで良いのかよ、あんたは…」

「帰って!」
370 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/07(土) 19:37:47.06 ID:DHKSSogP0
「!?」

 突然、リンカが声を張り上げた。はっとその顔を見ると、彼女の目元が小さく震えていた。
 その少し後ろでは、ガイキと蜜屋が、じっと2人のやり取りを眺めていた。ガイキの手には、深緑色のメモリ。『良いならいつでも殺すぞ?』と言わんばかりに、とんとんとメモリを指で叩く。

「お願いだから…」

「リンカ…」

 震える手を床に突き、力を振り絞って立ち上がる。そして、リンカに何か言葉をかけようとした時

 彼の隣を、何かが猛スピードで駆け抜けた。

「!」

 ピンク色の風が、リンカに向かって突進する。そして、絶叫しながら懇親の飛び蹴りを見舞った。

「貴女は…っ!」トゥルース

 咄嗟に変身し、防御したリンカの腕に蹴りが突き刺さる。声を上げる間も無く、彼女の体は後ろの壁まで吹き飛ばされていった。
 突然の闖入者は、徹を庇うように立ちはだかると、怒りに燃えた声で怒鳴った。

「…殺す。殺す、殺す、殺す殺す殺すっっっ!!!」

「ミヅキ…?」

 ミヅキは、綺羅びやかなピンク色のメモリを掲げた。

「よくも…よくもあたしから、彼を奪っといて…ゴミクズみたいに、捨てたな! てめえらは殺す! ぐっちゃぐちゃにして殺す!!」

『ラビット』

 しかし彼女は、それをコネクタに挿さず、更にもう一本のメモリを掲げた。
 それを見た蜜屋とガイキの顔に、初めて動揺が浮かんだ。

「!? それは」

「おいおい、いつの間に完成してたのかよ…?」

 七色の、サイケデリックな光を放つガイアメモリ。徹やガイキの所持する、仮面ライダーのメモリと同じ形状をしたそれには、もつれ合う2人の人間が『X』の字を形作っていた。
 ミヅキが、徹を振り返った。

「ちょっと待っててね。こいつら殺して、それから一緒に帰ろ」

「待て、止めろ…」

 ミヅキが、2本目のメモリのスイッチを押した。
371 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/07(土) 19:39:21.89 ID:DHKSSogP0



『エクスタシー』


372 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/07(土) 19:40:07.44 ID:DHKSSogP0
「っ…」

 ミヅキの体が、一瞬、強張る。それでも彼女は両手でスカートの裾を掴むと、顔の高さまで大きく捲り上げた。
 彼女の腿には、ラビットメモリのコネクタがある。しかし今、何も無かった方の腿にも、黒い生体コネクタが刻まれていた。

「はぁっ…はぁっ…っ」

 スカートの裾を咥え、2本のメモリを振りかざす。

「エクス…タシィィィィッッッ!!」

『ラビット』『エクスタシー』

「っ、あっ…あ。ああっ…ああああああっっ!!」

 メモリを挿した瞬間、その体がガクガクと震えだした。丸見えの白いショーツに、染みが広がり、震える太腿の間をびちゃびちゃと音を立てて滴り落ちた。

「ああっ、うっ、くあっ、あぁんっ…ああああっ…」

 失禁しながら痙攣するミヅキ。その体を、ピンクと紫の光が包み…やがて、毒々しい紫の、兎の怪人へと姿を変えた。

「はぁ…っ…うああああああっっっ!!!!」

 金切り声を上げたその瞬間、ラビットドーパントの姿が消えた。

「!? …ぐわっ!」

 瞬きする間も無く、ガイキと蜜屋の体が吹き飛んだ。
 ラビットは、壁際にうずくまるトゥルースドーパントに狙いを定めると、超高速で突進し、飛び蹴りを浴びせた。

「く、うぅっ…!」

「死ね! 死ね! 殺す!」

 かざした杖が、蹴り折られる。ラビットドーパントは執拗に、何度も蹴り続ける。

「お前だけは…絶対殺す…!」

 遂に倒れ伏したトゥルースドーパント。ラビットは空高く跳び上がると、トドメの一撃を見舞わんと、足を振り下ろし…

「…ぐっ…!」

 しかし、それが敵の背中に突き刺さる前に、空中で飛び蹴りが彼女を襲った。
373 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/07(土) 22:40:00.37 ID:DHKSSogP0
『コータめ、余計なことしやがって』

 ラビットの前に着地したドミネーターが、舌打ちする。ラビットはすぐに立ち上がると、ドミネーターにキックを放った。

「殺す! お前も殺す! みんな殺す!!」

『おう、やってみろ!』

「止めろミヅキ! もう、止めてくれ…」

 しかし、2人は戦いを止めない。目にも留まらぬ速さで飛来するキックを、ドミネーターは正確に防いでいく。

『甘い!』

 ハイキックを片手で捕らえると、その足をぐいと捻った。ところがラビットドーパントはその場で跳躍すると、体ごと回転させ、その上自由な足でドミネーターの側頭部に回し蹴りを叩き込んだ。

『うぐっ…やるじゃねえか…!』

 首をゴキゴキと鳴らし、拳を構え直す。

『どらぁっ!』

「ああああっ!」

 ドミネーターが正拳を、ラビットが飛び蹴りを、それぞれ打ち込む。拳と足がぶつかり合い、火花が散った。

『らあっ! でえやっ!』

 ボディブロー、アッパー、フック。今度はドミネーターの連撃がラビットを追い詰める。

「くっ、うっ、ああっ!」

 突然、ラビットがその場に膝を突いた。

『はっ…楽しかったぜ…』

 片足を大きく振り上げ、彼女の頭を踏み砕かんとする。が

「…っっっ!!」

『ぐぇっ!?』
374 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/07(土) 22:40:28.65 ID:DHKSSogP0
 無防備な腹に、ミサイルの如き頭突きが深々と突き刺さった。

「はぁっ…殺す…殺すぅっ!!」

 倒れたドミネーターの胸を、強く踏みつける。トドメとばかりに、片足を振り上げたその時

「…ぐっ!?」

 突然、彼女が胸を押さえて固まった。
 見ると、その胸には巨大な棘が刺さっていた。

「何を遊んでいるの」

 歩み寄ってきたのは、女王蜂。毒針の飛び出た右腕を、顔の前に掲げている。

「本当に。あなたは、最期まで出来の悪い生徒だったわね」

「ぐっ…あっ、があぁっ…」

 悶え苦しむラビットドーパント。
 拘束を脱したドミネーターが、舌打ちしながらメモリをドライバーから抜いた。

『けっ、ままならねえや』

 メモリを、今度は右手のグローブにあるスロットに挿し、左の掌で叩く。

『ドミネーター! マキシマムドライブ』

 右の掌を、苦しむラビットドーパントに向ける。すると、彼女の太腿から七色のメモリが抜け、彼の手に飛んでいった。

「! あぁっ…」

 兎の体から紫色が抜け落ち、元の薄桃色に戻っていく。
 ドミネーターが右手でメモリを握りしめると、メモリからスパークが弾けて、彼の手に吸い込まれていった。

『…ほう、まだ立つか。良いじゃねえか』

 彼は、ゆっくりと彼女の方へ歩み寄った。

「! 止めろ…止めろ! もう…」

 叫ぶ徹。
 ドミネーターが、メモリを握った手を、腰溜めに構える。そして

『…でえぇやあぁぁっっっ!!!』
375 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/07(土) 22:40:54.92 ID:DHKSSogP0
「ぎゃああぁぁあぁああぁっっっ……!!」

 至近距離のパンチが、彼女の胸を貫いた。薄桃色の体が、何度も爆ぜた。毛が抜け、皮が剥がれ、耳が弾け飛んだ。
 そして……そこにいたのは、血塗れで横たわる、小さな少女であった。

「ミヅキ…ミヅキ…?」

 足を引きずって、徹が彼女の元へ駆け寄る。

「ミヅキ! おいミヅキ!!」

 動かない彼女を、どうにか抱き起こす。
 ミヅキが、薄く目を開けた。

「…仮面、ライダー…さん」

「ミヅキ、しっかりしろ! ミヅキ…」

 彼女は、虚ろな目で彼の姿を認めると、血と一緒に言葉を零した。

「…あたしがいなくなったら…寂しい?」

「寂しいに決まってるだろ! だから死ぬな、しっかりしろ…っ!」

 ミヅキは、弱々しく微笑んだ。

「そう。……よかっ、た…」

 その、口元から。目元から。力が抜け…

「ミヅキ…ミヅキ! おい! ミヅキ…!!」

 徹は、彼女の体を抱き上げると、よろよろと倉庫の出口を目指した。

「帰ろう…もう、休もう…」

 ガイキは鼻を鳴らすと、蜜屋の肩を掴んで奥へと引っ込んでいった。リンカは、蹴られた腹を押さえながら、無表情に逃げていく2人を見つめていた。
376 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/07(土) 22:42:07.26 ID:DHKSSogP0
「帰るぞ…一緒に…もう、これ以上…」



 徹の腕の中で、ミヅキの体がどんどん軽くなっていく。

 さらさらと音を立てて、彼女の体が崩れていく。___彼の腕から、落ちていく。



「嫌だ…ミヅキ…ああ…」



 土砂降りの集積所。傷だらけの彼の腕に遺されたのは、ピンク色のガイアメモリだけだった。



「ああ…あぁ……ああああああああ…!!!」



 殴りつけるような雨の中、ボロボロのメモリを胸に抱いて、徹は吠えるように泣き叫んだ。
377 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/07(土) 22:43:44.86 ID:DHKSSogP0
『Dの闖入/砕けた命』完

今夜はここまで
378 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/07(土) 22:49:17.43 ID:4R8vdsKUO

これミヅキはガチの退場なのかお母様に産み直してもらうのか
と言うか仮面ライダーじゃなくなった徹はこの先生きのこれるのか
379 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/07(土) 23:00:18.32 ID:DHKSSogP0
『仮面ライダードミネーター』

 『支配者』の記憶を内包するガイアメモリで、財団Xのエージェント・ガイキが変身した姿。深緑色の軍服めいたスーツに、黒い防弾ジャケットとブーツ、灰色のグローブを身に着けており、ガスマスクめいた複眼マスクの上から臙脂色のベレー帽を被っている。
 エターナルメモリのように、他のガイアメモリを支配する能力を持っているが、変身態でその力が常に発揮されているわけではなく、マキシマムドライブの時にのみ行使することができる。しかし、能力を使わずとも純粋な身体強化だけで並大抵のドーパントを圧倒することができ、特に戦闘狂のガイキは強化された肉体による格闘戦の方を好む。
 必殺技は、極限まで強化された脚力によるストンプ攻撃『ドミネーター・インフリンジ』と、相手のメモリを強制的に抜去し、メモリの力を吸収する『パーフェクト・ドミネーション』。後者は、吸収した力を相手に叩き込む二段攻撃も可能。但し、自分より適合率の高い相手からはメモリを奪うことができず、そもそもガイキ自身がこの技をあまり好まない。ミヅキに対して使用した時には、殆ど癒着と言っていいレベルで適合していたラビットメモリは奪えず、使ったばかりのエクスタシーメモリだけを奪う結果となった。
 メモリの色は深緑。刃のような字で『D』と書かれている。
380 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/07(土) 23:00:32.76 ID:Aq/xQ2zY0

ミヅキの退場悲しい…
これ途中の選択肢で先生の方を選んでいたら立場が逆になったのかな?
381 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/07(土) 23:13:26.93 ID:+5XkFa9jO
おおう……退場なのかどうなるのか
この状況からどうやって逆転できるのか
382 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/08(日) 08:05:04.74 ID:FXClcXRCO
空気読まずにチートをぶん投げる
ゼニス・ドーパント

『頂点』の記憶を宿したガイアメモリで変身したドーパント
巨大な剣を携え、背にはマントをはためかせたヒロイックな容姿だが、色はベタ塗りの様な黒一色
他のメモリを使用すると、変身後は異形となる事が珍しいドーパント態においては逆に異質な勇ましい姿となっている

このメモリの何よりも特異な点は、『自分よりも格下のメモリからの干渉を受けない』事
A〜Zのメモリ。即ちゼニスメモリ以外で変身したドーパント等の特殊な力はこのメモリには通用しない
メモリの能力頼みのドーパントや仮面ライダー等はそれだけで殺されたも同前であり、成す術なく薙ぎ倒される
本体の出力自体も他のメモリとは桁違いのパワーであり、ただ剣を奮うだけでも凄まじい驚異と成りうるだろう
正しく、ドーパントの頂点。並みの相手では足元にすら届かない天上のメモリ

まともに対抗できるのはメモリの中でも最高ランクのゴールドメモリの数々
もしくはこのメモリに左右されない力を持つ、ある『J』の記憶が宿ったメモリ。あるいは頂点に挑もうとする勇者……
メモリの色は金をも塗り潰すという意味で漆黒。下の道から伸びる階段。そしてその上に更に続く道で『Z』になっている

奇しくもこのメモリを超えうる力を持つと推測されるメモリの色も、また同じく黒である


イメージはラスボス手前の準ボスか最強フォームのサンドバッグ
正直盛りすぎた感が否めないのでもし使用される際に適宜デチューンしてくださるとありがたいです
383 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/08(日) 09:02:11.89 ID:FHqBvjsC0
思いついちゃたので投稿

ゼノ(XENO)メモリ

『異端』の記憶を宿したガイアメモリで、単独ではなく別のガイアメモリと組み合わせて使うのが前提のメモリ
このメモリの特徴的なのは単純に他のメモリを強化するのではなく、メモリに本来想定されていない『異端』な力を使用可能にさせるという点。
例えば『熱さ』を内包するヒートメモリと同時に使用すると、『零度以下』の『熱さ』……つまり冷気の力も使用させられる。(ある意味拡大解釈に近いかも?)
当然、本来想定されていない力を引き出すので同時使用したメモリには相当負荷をかけるため1回で壊れる可能性も高く、下手をしたらメモリの毒素で使用者が廃人になる可能性もある。
384 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/08(日) 09:29:03.34 ID:KKcmRQqT0
『エクスタシーメモリ』

 『絶頂』の記憶を内包する、母神教によって造られた新造の次世代型ガイアメモリ。エクストリームに継ぐ、第二の『X』のメモリ。
 単独で使用すると、たった1回で脳を完全に破壊し、廃人となってしまうほどの快感を与える。そのため、エクスタシードーパントというものは存在しない。しかし、一部のメモリと組み合わせて使うことで、能力を大幅に向上させることができる。特に、死ぬまで発情期の続く『ラビット』や、性欲の対象となりやすい『アイドル』、そのまま『ラースト(性欲)』などとの相性が良い。
 しかし、それすらも副産物でしかなく、母神教の首魁がこのメモリを造らせた目的は、もっと別にあるようだ。
 メモリの色はサイケデリックな虹色。絡み合って身悶えする男女が『X』の字を形作っている。



 ちなみに、エクスタシーの綴りは本来"ecstasy"であるが、このメモリでは"Xtasy"となっている。
385 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/08(日) 09:42:07.64 ID:P2OWLt9FO
ハーピィレディだ(遊戯王並感)
386 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/08(日) 20:12:20.26 ID:v0wRr0ZC0
悲しきエクストリーム枠かぁ……
387 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/11(水) 22:06:14.88 ID:LapuAGZv0
 気が付くと彼は、警察に保護されて病院にいた。

「…」

「力野さん…何があったか、そろそろ教えてくれないか」

 呆然とベッドに横たわる徹に、植木が話しかけた。

「…」

「なあ…それにリンカさんは、どうしたんだ?」

「! …」

 徹が、虚ろな目で植木を見た。それから、ぽつりと言った。

「…不器用な奴」

「はぁ?」

「あんな顔するくらいなら…最初から、裏切らなきゃ良いのに…それか、さっさと俺のことなんて、捨てちまえば良かったんだ…」

「…まさか、彼女が裏切ったのか」

「…」

 徹は何も言わず、頭まで布団を被ってうずくまってしまった。
388 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/11(水) 22:06:50.87 ID:LapuAGZv0



 一体、どれほどの時間こうしていただろう。枕元に忍び寄る足音に、徹は目を覚ました。
 傷の痛みに耐えながら、枕元の電灯を点ける。

「…!」

「こんばんは、仮面ライダーさん」

 そこに立っていたのは、友長真澄…もとい、成瀬ヨシノ。即ち、母神教の首魁、『お母様』その人であった。

「何で、あんたがここに」

「愛しい子の、お顔を見に」

「…」

 徹は体を起こし、ベッドの縁に座った。

「…今のあんたは? 『友長真澄』か? それとも『お母様』か?」

「その二つに、違いはありません。揺らぐことも」

「じゃあ、今も変わらず『お母様』なんだな? …」

 年を押した上で、徹は尋ねた。

「…蜜屋を見張ってたな。部下なのに、信用してなかったのか」

「子を心配するのは、母の常です」

 そう言うと成瀬は、徹の手を掴んで立たせた。
 その背中から、白い光が溢れ出す。

「おい…何をする気だ」

「帰りましょう、愛しい子。…母は今、深い悲しみを感じています」

「ミヅキが、死んだからか」

「…」

 光が、成瀬と徹を包み込む。
389 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/11(水) 22:07:17.90 ID:LapuAGZv0
 やがて2人は、真っ白な空間に佇んでいた。

「ここは…」

「母の、記憶の世界です」

 成瀬がそう言うと、どこからともなく無数の本棚が出現し、2人を取り囲んだ。

「! まさか、ここは」

「母は、全ての母ですから…全て、知っているのですよ」

 本棚がするするとスライドし、遠ざかっていく。その中で、一つの本棚が2人の前に移動してきた
。大きな本棚には、たった一冊だけ本が置かれていた。

「もちろん、あなたのことも」

「これは…」

 手に取ると、革張りの表紙には『力野徹』と書かれていた。
 ぱらぱらと捲ると、そこに記されていたのは、彼が今まで歩んできた人生。あるページで、紙を捲る手が止まった。

「…」

 炎上する高層ビル。溶解するコンクリート。誰かに引きずられながら伸ばした手の先で…両親が、マグマの下に消えた。

「…風都…超常犯罪…」

 仮面ライダーは、彼を、彼の両親を、救ってはくれなかった。当時高校生だった彼は、その時から明確に、風都を憎むようになったのだ。

「…」

 本を閉じ、棚に戻す。
 いつの間にか白い空間は消え、徹と成瀬は、薄暗い祭壇の前に立っていた。

「…ここが、母神教の本拠地か」

「ようこそ、母の家へ」

 成瀬は、両腕を広げて歓迎のジェスチャーをしてみせた。
 徹は動かず、また質問した。

「何故、俺をここに連れてきた?」

「病院で寝ているより、ここで待っていれば、あなたの求めるものが来てくれるのでは?」

「!!」
390 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/11(水) 22:09:07.58 ID:LapuAGZv0
 徹は、はっとなった。
 財団Xが、ガイアメモリの新造能力を求めているとしたら、邪魔な仮面ライダーを排除した後に来るのは、その能力を持つ『お母様』の所に違いなかった。
 徹が何か言いかけたその時、成瀬が突然、自分の着ているシャツのボタンを外し始めた。

「!? 何を」

 シャツの前をはだけると、黒いブラジャーのフロントホックを外した。細い体に不釣り合いなほどに豊満な乳房が露わになり、徹は思わず目を逸しかけた。
 しかし、逸らせなかったのは、大きく膨らんだ胸の谷間に、黒い生体コネクターがくっきりと刻まれていたからだった。
 成瀬が、両手を胸元にあてがった。

「っ、く…ぅぅっ…!」

 徹は最初、メモリを挿すところを見せるのかと思った。しかし、実際はその逆であった。
 歯を食いしばる成瀬。そのコネクタから、金色のメモリがゆっくりと顔を出した。

「!」

「くっ…ああぁっ…!」

 苦しげな声を上げながら、メモリを引き抜くと、成瀬はそれを徹に差し出した。

「これは…」

 金色の筐体。リンカのそれと同じ、ゴールドメモリである。そこに描かれているのは、1人の赤子の絵であった。

「…いや、これは」
391 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/11(水) 22:09:40.86 ID:LapuAGZv0
 よく見ると、その赤子は2本の腕に抱かれている。両腕に抱いた赤子を、母親の視点から見た絵なのだと、徹は察した。そして、赤子を抱く2本の腕は、『M』の字に組まれていた。



「母神教の首魁が所持するメモリ、その名称は『マザー』です」

「電話でも聞いたが、まんまだな」

 ソファに深々と沈みながら、ガイキが欠伸混じりに返した。

「ミュージアム最初期に造られたにも関わらず、現在に至るまで放置されてきたゴールドメモリです。人間の遺伝子を体内に取り込むことで、胎内でクローンを育成し、出産するなどの能力を持ちます」

「うわキモ。…そいつが何で、地球の本棚にアクセスする権限を持ってやがる?」

「神話の神々にも、母親は存在します。特に、ギリシャ神話の主神ゼウスの母は、地母神ガイアです」

「クレイドールエクストリームがヒトと地球を繋ぐ巫女なら、マザードーパントは地球そのものってわけか。……こじつけにも程があるぜ」

「無論、ただの使用者がその領域に到達することは不可能です。成瀬ヨシノとマザーメモリの適合率は、99.9%以上……或いは、100%かも知れません。抜去はほぼ不可能でしょう。メモリブレイクは、成瀬の死を意味します」

「しねえしねえ。要は生かしたまま、言うこと聞かせりゃ良いんだろ?」

 ガイキが言ったその時、1人の少年が割り込んできた。

「ガイキさん、準備ができました」

「あいよ」

 彼はソファから立ち上がると、リンカの肩を叩いた。

「おら、行くぞ」

「…はい」

 リンカは、小さく頷いた。
 部屋を出て、少年に続いて廊下を進むと、正方形の広い部屋に出た。白いリノリウムの床には、囲碁や将棋の盤面めいて、黒い線が等間隔に引かれている。
392 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/11(水) 22:10:36.12 ID:LapuAGZv0
 よく見ると、その赤子は2本の腕に抱かれている。両腕に抱いた赤子を、母親の視点から見た絵なのだと、徹は察した。そして、赤子を抱く2本の腕は、『M』の字に組まれていた。



「母神教の首魁が所持するメモリ、その名称は『マザー』です」

「電話でも聞いたが、まんまだな」

 ソファに深々と沈みながら、ガイキが欠伸混じりに返した。

「ミュージアム最初期に造られたにも関わらず、現在に至るまで放置されてきたゴールドメモリです。人間の遺伝子を体内に取り込むことで、胎内でクローンを育成し、出産するなどの能力を持ちます」

「うわキモ。…そいつが何で、地球の本棚にアクセスする権限を持ってやがる?」

「神話の神々にも、母親は存在します。特に、ギリシャ神話の主神ゼウスの母は、地母神ガイアです」

「クレイドールエクストリームがヒトと地球を繋ぐ巫女なら、マザードーパントは地球そのものってわけか。……こじつけにも程があるぜ」

「無論、ただの使用者がその領域に到達することは不可能です。成瀬ヨシノとマザーメモリの適合率は、99.9%以上……或いは、100%かも知れません。抜去はほぼ不可能でしょう。メモリブレイクは、成瀬の死を意味します」

「しねえしねえ。要は生かしたまま、言うこと聞かせりゃ良いんだろ?」

 ガイキが言ったその時、1人の少年が割り込んできた。

「ガイキさん、準備ができました」

「あいよ」

 彼はソファから立ち上がると、リンカの肩を叩いた。

「おら、行くぞ」

「…はい」

 リンカは、小さく頷いた。
 部屋を出て、少年に続いて廊下を進むと、正方形の広い部屋に出た。白いリノリウムの床には、囲碁や将棋の盤面めいて、黒い線が等間隔に引かれている。
393 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/11(水) 22:11:03.89 ID:LapuAGZv0
 その部屋の中心に立つと、少年は一本のガイアメモリを取り出した。

『ゾーン』

 少年の体が、小さな黒いピラミッドめいた形状になり、宙へと浮かび上がる。
 次の瞬間、白い床からホログラムのように、建物や道路の小さな映像が現れた。それはよく見ると、北風町の全体図を精巧に投影したものであった。

「…俺は止めねえぜ」

 突然、ガイキが口を開いた。

「何がですか」

「とぼけるなよ。…未練たっぷりなんだろ? あいつに」

「…」

 リンカは、何も言わない。
 彼らの足元で、ある一件の建物が点滅し始めた。それは、母神教の本部であった。

「では、転送します…!」

 頭上で、黒いピラミッドが宣言した。
 と、瞬く間に2人の体が、点滅する建物の映像に吸い込まれて、消えた。
394 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/11(水) 22:11:34.07 ID:LapuAGZv0
今夜はここまで
395 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/13(金) 23:25:06.34 ID:tz1p4c9m0
ゆるくない募

>>351みたいなオーパーツ系のメモリ

今週末は更新できなそう
396 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/13(金) 23:52:58.94 ID:wzflFxp50
ストーンヘンジ・ドーパント

「ストーンヘンジ」の記憶を持つメモリの力で変身するドーパント
身体は直立巨石に手足が生えているだけなので一見弱そうに見える
ストーンヘンジの成り立ちには諸説あるが、古代の天文観測所という見解を強く発揮しており、空の見えるところで夜には星座の力を借りる強力な力を持つ
例えば射手座が出ているときにはボウガンの様な強力な射撃部気がしようで着たり、蛇つかい座が出ているときにはエナジーの蛇を扱ったりすることもできる。
なら、昼に戦えばいいのかというとそんな単純な話でなく、太陽礼拝の意味もあったという話による記憶から太陽の力を一部使うことが出来たりもする。

ゾディアーツではない。
397 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/14(土) 00:14:37.90 ID:pCR8YhLB0
お疲れやで……

ピラー・ドーパント
『柱』、なかでも錆びない鉄柱のオーパーツとして知られる『アショカ・ピラー』の記憶を内包するメモリの力で変身する。
黒鉄色のメモリで、パルテノン神殿のような柱の意匠がPの字を描いている。
ドーパント体も黒鉄の、胴体にあたる一本と、両腕の位置に浮翌遊する二本の合計三本の鉄柱になる。
ドーパント状態で胴体部は地面に刺さり全く移動することはできないが、折れず、錆びず、敵からの干渉をほとんど受けない
両腕の二本の鉄柱は、蛇神ヴァースキを貫いているとする伝説にちなんで、槍やパイルのように射出でき、固定砲台として機能する。
398 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/14(土) 10:18:55.53 ID:sBDxg8KaO
ヴィマーナ・ドーパント


神々の持つ空飛ぶ戦車『ヴィマーナ』の記憶を内包したドーパント
戦車、車、飛行機、宮殿等の諸説あるが、このメモリでは主に空中戦車としての面が強い
ドーパント体は非常に巨体であり、数十人乗り込んでもまだ余裕がある程頑強。そしてどれだけ無理な旋回をしても振り落とされない
火炎と水流を放射する攻撃を得意とし、上空からの空爆だけで甚大な被害を巻き起こす
メモリの色は火を表すオレンジ。戦闘機が空気をかき分け、そのかき分けた衝撃がVの字となっている
399 : ◆iOyZuzKYAc :2019/09/14(土) 17:18:24.22 ID:HlPuoY2x0
ネブラを採用するにあたって、相方が欲しいんだ
ネタバレすると、変身者は若い女

現時点ではヴォイニッチが浮かんでる
400 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/14(土) 18:15:22.24 ID:4mU/SF5YO
ヴォイニッチで良いと思うけど・・・案を置く

モナリザ・ドーパント

「モナリザ」の記憶で変身するドーパント
見た目は長髪の聖母の様な女性で杖を所持している
モナリザ・・・ガレリオのモナリザには不思議な点がある。それは恐竜らしきものが描かれているということだ。あの時代にどのようにして恐竜を知ることが出来たのか・・・謎に包まれている
その為かこのドーパントも恐竜態に変身することが出来る
401 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/15(日) 02:33:58.35 ID:9WYe3VJVO
ゆるくなくモチーフ指定したらめっちゃ集まってて草
402 : ◆iOyZuzKYAc [sage]:2019/09/15(日) 08:12:38.93 ID:XQ6LdapB0
(PC無いから更新できないけど、集まったアイデアを見ると書くのが楽しみになる)

(ストーリー展開まで安価したスレを今まで散々エタらせてきたけど、このくらいの安価でも自分の思いもよらない展開に繋がって楽しい)
403 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/15(日) 16:20:15.14 ID:SiWZ6axDO
そういや今までどれだけ採用されたんだっけ
もう7〜8くらい採用されてる?
404 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/15(日) 17:11:36.97 ID:kQId8ESUO
>>403
カートゥーン
ファンタジー
アイドル
オーケストラ(提案時バンド)
クエスト
リインカーネーション
セイバー
トゥルース、ティーチャー
ワイルド

名前募集のもの含めてこれくらい採用されてるかな。漏れてたら失敬
405 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/17(火) 20:23:41.61 ID:ZkCaa3cg0
 次の瞬間、2人は薄暗い聖堂の真ん中に立っていた。祭壇のあるべき部屋の前方には、分厚い虹色のヴェールがかかっている。そこから、一つの人影が透けて見えた。

”待っていましたよ、子どもたち”

「財団Xです。アポイントも取らずに申し訳ありません。私たちは、貴女がたと取引を」

「よお、お母様とやら!」

 ガイキが、大声で割り込んだ。

「俺たちに従え。さもなきゃ殺す」

”…”

 あまりに乱暴な言い方に、ヴェールの向こうの人影は絶句し、リンカは溜め息を吐いた。

”…母は、あなた方を愛したい”

「好きにしろよ。だが、俺たちの言うことには従ってもらう」

「現時点で、私たちの利害は衝突しないと考えています。どうでしょうか。…貴女が、ガイアメモリをこの町に広げる理由を、聞かせていただけますか」

 リンカの問いかけに、人影がゆらりと動いた。

”母は、全てを愛しています。全ての母であるが故に。ですが…”

「何か問題が?」

”子は多く、母は独り。全てを愛しても、それは伝わり難い…現にミヅキは、誰よりも愛を求めていたのに、母はそれに応えられなかった…”

「挙げ句、仮面ライダーとやらに寝取られちまったな。ははっ!」

”まさか。兄妹が睦み合うことを嫌う母がいましょうか”

「…」

 ガイキは、うんざりした顔でリンカを見た。

「…それで? 結論は」

”ガイアメモリは、母の知恵。一度でも触れたものは皆、母の腕の中。腕の中で……一つになる”

「なるほど、そりゃあ良い」

 ようやくガイキが頷いた。

「目指すところは大体一緒だな。よし、交渉成立……っぐ!?」

「っ!」

 手を叩こうとしたその時、彼が呻き声を上げた。一拍遅れて、リンカがその場に膝を突いた。
406 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/17(火) 20:24:09.19 ID:ZkCaa3cg0
「もちろん、君たち2人も一緒だよ」

「こ、の、野郎…」

 振り返ると、そこにはシロツメクサの冠を被った、天使のような少年が立っていた。その手には、四つ葉のクローバーを模した重いメイス。

「『お母様』は必要だが、テメエはぶっ殺す…」ドミネーター!

「…やむを得ません」トゥルース

”ユウダイ。程々に、ですよ”

「はい、お母様」

 ヴェールが開き、中からマリア像めいた白い女のドーパントが姿を現した。ドミネーターとトゥルースドーパントは、拳や杖を構えてそれらと向き合った。



『…ケッ』

「っ…」

 肩で息しながら、舌打ちするドミネーター。その隣でトゥルースドーパントも、深呼吸を繰り返す。

”気負うことはありません、我が子たち。母に委ねなさい”

 ゆっくりと祭壇を降り、2人に歩み寄るマザードーパント。彼女は2人を交互に見て、それから何か言おうとして……おもむろに、後ろを振り返った。

「!」

「! お前は…!」

 そこには、右手の毒針を構え、今まさに主の背中に突き立てんとしていた、クイーンビードーパントがいた。

”母に、その毒を向けますか”

「…」

 奇襲を見破られ、狼狽する女王蜂。いきり立つクローバードーパントを制すると、マザードーパントは、一言、呼びかけた。

”…『蜜屋先生』”

「!! その声、まさかあなたは」

 白い光が、マザードーパントの体を包む。光が収まった時、そこに立っていたのは、ブラウスに白衣を纏った、自身の塾の専従医であった。

「友長…先生……ああ…」

 女王蜂は呆然と呻くと…突然、ヒステリックな声で叫んだ。

「あああっ! あと少し、もう少しだったのに!! 誰も、誰にも私は…」

 叫びながら、腕を振り上げ、そして突き出した。

「やめろ、このっ…!」

 クローバーが駆け出すが、ドミネーターに阻まれる。

”…っ”
407 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/17(火) 20:24:51.50 ID:ZkCaa3cg0
「はぁっ…はぁっ…」

 女の胸に、猛毒の針が深々と突き刺さる。
 女王蜂が腕を引くと、女が崩れ落ちた。

「お母様!!」

”案ずることは…あなたが、求めるなら…母、は…”

「…マザードーパントを確保しました」

 倒れた女を、変身を解除したリンカが拘束した。ドミネーターもクローバーに致命のストンプを見舞い、意識を奪う。

「よし、撤収だ」

 メモリを抜きながら、ガイキが宣言した。

「…ええ」

 3人と1人で、聖堂の出口に向かった、その時。
408 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/17(火) 20:25:18.11 ID:ZkCaa3cg0



「…熊笹が、死んだ」



「!?」

 リンカが息を呑んだ。



「朝塚芳花も死んだ。顔も知らないドーパントを、何人も殺した」



 たどたどしい足音。ガイキが、ニヤリと嗤った。

「へぇ、まだ来やがるか」



「ミヅキが…死んだ…!」



 聖堂に現れた、もう一つの影。汗の滲んだ病衣を着て、全身に包帯やガーゼを当てた、傷だらけの男。

「俺は!」

 男が…力野徹が、叫んだ。そして、右手を振りかざした。

「お前らを止める! 命に代えても!!」

 その手に握られているものを見て、リンカが叫んだ。

「駄目!! それだけは」
409 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/17(火) 20:26:06.07 ID:ZkCaa3cg0
 病衣の前を開ける。青紫の痣が広がる胸の真ん中には、黒いコネクターが刻まれていた。
 そして、右手に掴んだ最後の武器。装飾は剥がれ、筐体にはヒビが入った、ボロボロのメモリ。蝋燭の光に照らされて、鈍いピンクの光を放っている。

「済まない、ミヅキ。もう少しだけ…身勝手な大人に、付き合ってくれ」
410 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/17(火) 20:26:32.06 ID:ZkCaa3cg0



『ラビット』


411 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/17(火) 20:27:34.83 ID:ZkCaa3cg0
『逆襲のF/命に代えても』完

今夜はここまで
412 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/17(火) 21:39:48.61 ID:lxzUokIeO
乙、これはミヅキ正ヒロインですわ
ウサギでファンタジーというと、最強フォームは不思議の国のアリスフォーム?
413 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/18(水) 18:59:03.36 ID:o4xRgd6ZO
ところでマスカレイドとか見るに同じメモリなら誰が変身しても見た目は同じになるっぽい?
なら徹は腰から尻にかけて肉付きがいい女性的な見た目のバニーおっさんに……?
414 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/19(木) 20:57:10.63 ID:4l4UuHBQ0
「うおおおおおおっ!!」

「やめて!!」

 駆け寄ろうとしたリンカの前に、銀色の影が立ちはだかった。

「メモコーン…!?」

 徹の胸に、ピンク色のガイアメモリが突き立てられた。その体が、黒い霧に覆われていく。

「っ、おおおっ…ああっ、くああああっっっ!!!」

 絶叫する徹。傷だらけの体が、黒い外骨格に覆われる。禍々しい外殻は、更に鮮紅色の体毛に覆われ、辛うじて歪んだ獣の形へ変わっていく。
 やがて、彼は赤と黒の、兎の魔物となった。

「はぁっ…はぁっ…おおおおおっっ!!」

 徹が…ラビットドーパントが、駆け出した。

「! 来い」ドミネーター

『おらあっ!』

「らあぁぁぁっ!!」

 飛び回し蹴りを腕で受けると、ドミネーターが拳で応戦した。更に、メモコーンが鋭い角で、ドミネーターの動きを妨害する。

「そんな…あのメモリを使って、それでも戦うというの…?」

 二人の戦いに取り残されたリンカが、呆然と呟いた。

「あれは…兎ノ原美月の内臓を、そのまま移植するようなものなのに」
415 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/19(木) 20:57:42.75 ID:4l4UuHBQ0
「はああっ!」

『ふんっ!』

 方やキック、方やパンチで、互いを傷付け合うドミネーターとラビットドーパント。力量は明らかにドミネーターが上。しかし、メモコーンの補助で互角に渡り合っている。
 ところが、そのメモコーンが、おもむろにラビットを離れた。

「っく、邪魔を…!」

 彼が突撃したのは、クイーンビードーパント。いつの間にラビットの背後の周り、毒針を撃ち込まんとしていた。
 しかし、その隙をドミネーターは見逃さない。

『貰ったぁ!』

「ぐっ、はっ…」

 腹部にワンツーパンチを叩き込まれ、膝を突くラビット。
 ドミネーターが、メモリを右手のグローブに装填する。

『悪いが、今はお仕事中なんだよ。さっさと片付けさせてもらう』ドミネーター! マキシマムドライブ

「っ、ぐ、ああっ、あああぁっ…」

 悶え苦しむラビットドーパント。その胸からピンクのメモリが引き抜かれ、ドミネーターの右手へと飛んでいく。
 それを握りしめると、メモリから緑のスパークを吸収しながら、拳を振りかざす。

『作り主に楯突くんじゃ……ねぇっっっ!!!』

「メモコーン!!?」

 突進してくるメモコーンに、渾身の一撃を見舞う。スパークを纏った拳が頭を直撃し、メモコーンが粉々に砕け散った。
416 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/19(木) 20:58:13.62 ID:4l4UuHBQ0
 そして…

「あ…あっ、ぁ…」

 ドミネーターの手の中で、メモリが砕け、床へと落ちていく。
 ラビットドーパントの外装が崩れ、消滅していく。

「…」

 冷たい床に、徹が倒れ伏した。

「…」

『…ま、計画に影響は無え。帰るぞ、リンカ、先生』

 倒れて動かない徹を捨てて、出口へと向かうドミネーター。ところが



「…」



『…何のつもりだ』

 今度は、リンカ。去ろうとする彼の前に、立ちはだかる。

「彼が、最後まで命を賭けるのならば…私はもはや、それを踏みにじることはできません」

『へえ』

 やっぱりな、そう言わんばかりにドミネーターが鼻を鳴らす。

『一応、お作法として言っておくぜ。……財団を、裏切る気か』

「これは、裏切りではありません」

『ほう?』

 リンカはスーツの懐に手を入れると、何かをドミネーターの足元に投げつけた。
 それは、『辞表』と書かれた白い封筒であった。

「何故なら、私は今この時を以て、財団Xを退職するからです。そう…」

 黄金のメモリと、ガイアドライバーを掲げ、毅然と宣言する。
417 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/19(木) 20:59:55.73 ID:4l4UuHBQ0



「…寿退社です」トゥルース


418 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/19(木) 21:00:29.24 ID:4l4UuHBQ0
今夜はここまで
419 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/19(木) 21:13:30.07 ID:4l4UuHBQ0
正ヒロインはあくまでリンカです(断固たる意思)
420 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/20(金) 23:00:16.41 ID:ZetHopgw0



『おらおらぁっ! どうしたぁっ!』

「く、あっ…!」

 壁に叩きつけられ、崩れ落ちるトゥルースドーパント。拳を突き出したドミネーターの足元には、無数の羽が突き刺さったクイーンビーが倒れている。
 ドミネーターと交戦するより先に、彼女は迅速にクイーンビーを無力化した。この女王蜂の不意打ちを、間近に何度も見てきたからだ。
 果たして、それ自体は成功したものの、その程度でドミネーターの優位が揺らぐことなど無かった。

『足掻けよ、人間!』

 髪を掴んで立たせると、腹に膝を打ち込む。前のめりになったその首を掴むと、ぐいと吊り上げた。

「ぐっ、くぅっ…」

『コトブキ退社だか何だか知らねえが、宣ったからにはやってみせろよ』

「っ…く…」

 ぎりぎりと首を締め上げるドミネーター。その腕を掴む彼女の手から、力が抜けていく。

『…何だよ、呆気ねえ』

 ドミネーターが舌打ちする。彼は片手を拳に固めると、言った。

『兄弟たちによろしくな。…あばよ』
421 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/20(金) 23:02:40.11 ID:ZetHopgw0



「…」



 爆音。打撃音。怒声。



「…」



 崩れる音。砕ける音。倒れる音。



「…っ」



 違う。



「…こんな」



 こんなものは、求めてない。



「俺が…」



 夢見たのは。願ったのは。



「俺たち、が…」



 妄想か? 空想なのか?

 _____違う!



「…守る、この、町を……っ!」



 この想いは。この、願いは。



「……真実だっ!!」
422 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/20(金) 23:10:56.70 ID:ZetHopgw0
『!?』

「…!」

 突然、トゥルースドーパントの体が金色に光った。ドミネーターが咄嗟に手を離すと、彼女の体は眩い光を放ちながら、倒れ伏す徹の元へ、ゆっくりと滑っていった。

「はぁっ…くっ、はあっ…!」

「徹…」

 金色のガイアメモリが独りでに抜け、彼女の手に戻った。
 徹はよろよろと立ち上がると、彼女に向かって手を差し伸べた。

「リンカ…」

「…ええ」

 リンカは頷くと、懐からロストドライバーと、ファンタジーメモリを取り出し、その手に握らせた。
 次の瞬間

「っ!」

「!!」

 二人の手の中で、ドライバーが金と銀の閃光を放った。それだけではない。リンカの腰に巻かれたガイアドライバーまでもが、金と銀に輝き始めた。
 そして、光が収まった時…

「これは…」

「メモリのスロットが…増えた?」

 空白だったドライバーの左側に、新たなスロットが追加されていた。しかも、リンカのガイアドライバーもまた、それと同じものに姿を変えていた。
 リンカの左手に握られたガイアメモリの外装が、融けるように剥がれ落ちた。その中から現れたのは、同じ黄金の、真実のメモリ。___仮面ライダーの、メモリ。
423 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/20(金) 23:11:41.31 ID:ZetHopgw0
「…リンカ」

 徹は、リンカの目を真っ直ぐに見た。

「俺の空想に…俺の、夢に。……付き合ってくれるか」

「もちろんです」

 リンカは、頷いた。ぎこちなく笑んだその頬を、一筋の涙が伝った。

「貴方の願い。いえ、私たちの願い。夢から、真実にしましょう」

 徹はドライバーを装着すると、リンカの左側に立った。そして、それぞれのメモリを掲げた。



『トゥルース』『ファンタジー』



「「変身!!」」



424 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/21(土) 00:17:18.72 ID:KwtiTXI/0
 リンカが、ドライバーの右のスロットに、金のメモリを装填した。挿し込まれたメモリはデータの光となって消え、徹の装着するドライバーの右側に出現した。
 それを掌で押し込むと、徹は銀のメモリを左のスロットに装填した。そして、2本のスロットを、両手で左右に展開した。

『トゥルース』『ファンタジー』

 徹の体が、黒い外骨格に覆われていく。それは、騎士の鎧の下に秘められた、禍々しい魔物の姿であった。
 しかし、それが動き出すより先に、黄金の鳥のような獣が飛来し、その翼で後ろから彼を包み込んだ。翼は鎧となり、仮面となった。また、徹の体からも銀色の光が浮かび上がり、噛み合うように彼の装甲を形成した。

『…』

 金と銀の騎士。彼は、ゆっくりと顔を上げると……ふと、自分の右側に目を遣った。

『…リンカ? あれ? リンカ、どこ行った?』

”ここです”

『えっ!? いや、ここって』

”貴方の中です。…どうやら、私たちは2人で、1人の仮面ライダーを形成しているようです”

『ふ、2人で…? そんなのアリかよ!?』

”こうして有るのだからアリです。そんなことより、今は”

『!』

 はっと、前に目を向ける。
 腕組しながら律儀に待っていたと思しきドミネーターは、やれやれと言った様子で腕を解いた。

『…終わったか?』

『ああ。…今度こそ、お前を倒す!!』

『上等だ。…おらあっ!』

 ドミネーターが突進し、正拳突きを見舞う。ところが

『っ、硬ぇっ…』

『くっ…効かねえっ!』

 その腕を掴み、引き寄せてから顔面を殴りつけた。

『ぐわああぁっ!?』

 一撃で吹き飛ばされ、壁に激突するドミネーター。
 ファンタジーは追撃せず、破壊されたメモコーンに片手をかざした。
 すると、ばらばらになったメモコーンの破片と、砕け散ったラビットメモリが一所に集まり、元通りの一角獣の形に戻った。
 更に、もう片方の手をかざすと、金と銀の大剣が出現した。

『メモコーン!』

 復活したメモコーンが、彼の手元までジャンプした。それをキャッチすると、頭部から青いメモリを取り出した。
 メモリを大剣の鍔に挿し込み、変形させる。

『セイバー! マキシマムドライブ』

 高く掲げた剣から、黄金の光刃が伸びた。そして、それを…真っ直ぐに、振り下ろした。

『セイバー…トゥルーカリバー!!』

『ぐわぁぁぁぁぁっっっ!!?』

 聖堂の天井ごと、刃がドミネーターを切り裂く。
 叫び声とともにドミネーターの体が爆炎に包まれ…そして、クイーンビー諸共mどこへともなく消えた。
425 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/21(土) 00:18:09.34 ID:KwtiTXI/0
『逆襲のF/夢を真実に』完

今夜はここまで
426 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/21(土) 00:36:44.54 ID:KwtiTXI/0
『ラビットドーパント・ヴォーパル』

 ミヅキの遺したラビットメモリで、力野徹が変身した姿。外観はファンタジーの素体から、鮮紅色の毛が生え、頭部には鋭い耳が伸びている。元のラビットドーパント同様、蹴り技を主体とした戦闘を行うが、徹の戦闘経験のため拳も使うことがある。
 このラビットメモリは、ミヅキが長期間に渡って頻回に使用したものであり、もはや彼女の体の一部と言って良いほどに適合していた。このメモリを彼女以外の人間が使うことは、彼女の臓器を特別な処置なしにそのまま移植するようなものであり、普通ならば挿入した瞬間に凄まじい拒絶反応で死に至る。ガイアドライバーで毒性を軽減し、体の外ぎりぎりに留めていたリンカでさえ、人格に変調を来し、体調を崩すことになった。
 それでも徹がこのメモリを使用して生存し、あまつさえ戦闘を行うことができたのは、彼の体に残ったファンタジーメモリの因子が彼を守ったこと、そしてラビットメモリに遺されたミヅキの最期の意思が、彼の体を受け入れたからであった。
 しかし、それでも急ごしらえの戦闘態であることには変わりなく、熟練の戦士であるドミネーターの前では無力であった。パーフェクト・ドミネーションによってメモリを強制的に抜去され、メモリブレイクされることとなった。
427 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/21(土) 09:19:57.36 ID:KwtiTXI/0
というわけで、>>288の正解は『ダブルドライバー化してリンカと融合』でした
高適合ファンタジーの理想を現実にする力が久々に活かされた形になる
428 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2019/09/22(日) 15:53:05.78 ID:aYypJTI+O
マニュアルドーパント


manualメモリで変身するドーパント。
物の正しい扱い方を発見して教える能力を持ち、本来なら非戦闘型で見た目も白衣にだて眼鏡、そしてマスカレイドそっくりである。物にはガイアメモリも該当しており、新参者だろうと半ば発狂してようとすぐに力の扱い方を伝授させることが可能。何を優先させて教え込むかも決められる。
ギジメモリ、ドライバー等も扱い方を即時発見して使いこなせる。暗証番号等でロックされた道具に関してはさすがに時間かかる。また、地球の本棚等の自分の手に余るものに対しても扱い方を理解でき、実践はできずとも他人に教えることができる。

このmanualメモリ自体も最初は変身用ではなく、ガイアメモリ製造を効率良くする為の中継装置だった



■戦術例
 ドーパントに触れて能力や身体の扱い方を即座に教え、戦わせる。初陣マスカレイドでもアクロバティックな動きが可能になり、集団戦術で撹乱などの高度な戦術を叩き込ませることも可能。
 マニュアルドーパント自体に戦闘向けな特殊能力はないが、体術や武器の心得、サバイバル術等を自分に教え込むことでマニュアル通りにこなせる。更に変身解除しても知識と経験は残るので、毒素に汚染されるリスクを減らせることも可能。また、元々非戦闘用なので肉体よりも精神へ毒素が回りやすいが、脳の扱い方つまり考え方を調べてしまえば解決できてしまう。なおメモリブレイクされても教え込んだ知識と経験は消えない
429 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/22(日) 20:24:24.11 ID:Hx5VlaEO0
「この度は、大変ご迷惑をおかけしました」

 徹と植木の前で、リンカは深々と頭を下げた。

「そんな顔するなよ。あんただって、やりたくてやってたわけじゃないんだろ?」

「ですが、貴方にあそこまでの無理を強いる結果となったのは事実です」

「ちょっ、ちょっと待ってくれ」

 植木が口を挟んだ。

「私にはまだ、事態がよく呑み込めてないんだ。…リンカさんが、一度は力野さんを裏切った。でも戻ってきた、そういうことで良いのか?」

「やや語弊があります。元々私は、彼を一方的に利用し、役割を終えた後は切り捨てる予定でいました。しかし、彼と行動を共にする内に、私の心境が変化しました」

「まあ、色々あったんですよ。色々」

 強引に徹が纏めようとするので、植木は「ううむ」と唸った。

「とにかく…今は、信用して良いのか?」

「はい」

 リンカが頷く。

「…そうか。それなら良い」

 植木は、ソファから立ち上がった。そうして、応接室を出ようとした。

「どちらへ?」

「あっ、伝えてなかったかな。…力野さんが病院から消えた頃に、井野が目を覚ましたんだ」

「!!」

 徹とリンカは思わず立ち上がった。
 井野定は、元は普通の会社員であった。しかし、就職したばかりの妹が過重労働に耐えかねて自殺したことで、彼女を死に追いやった会社に復讐すべくガイアメモリに手を出し、大惨劇を引き起こした。その過程で彼は、母神教の中枢に触れたらしい。今まで捕らえてきた犯罪者の中でも、特に重要な人物であった。

「彼は、今どこに」

「まだ集中治療室だ。どうする? もう彼はメモリを持っていないが、付いてくるか?」

「…行きましょう」

 リンカが言う。徹も頷いた。
430 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/22(日) 20:24:51.78 ID:Hx5VlaEO0



 警察病院の集中治療室には、物々しい警備体制が敷かれていた。井野を始め、ガイアメモリ犯罪者たちが数人入院しているのもあるが、一番の原因は最奥の個室に寝かされた、1人の新患にある。
 母神教本部にて、クイーンビードーパントの毒針を受け、瀕死のマザードーパント・成瀬ヨシノ。ガイキを撃退した2人は、共に倒されたクローバードーパント・朝塚ユウダイと一緒に、彼女もこの病院に連れてきたのであった。
 しかし、徹たちの今の目的は彼女ではない。スタッフステーション近くのベッドに近寄ると、先に来て待っていた坂間が植木に敬礼した。

「…やあ」

「…」

 数本の点滴に繋がれた井野は、ベッドの上で体を起こしたまま、険しい顔で自分の手元を見つめていた。

「井野定さん、ですね?」

 徹が、声をかけた。

「…ああ」

 掠れた声で、井野は肯定した。

「貴方は…母神教の本部で、その教祖と会いましたね」

「…」

 彼は、肯定も否定もせず、逆に聞き返した。

「…おれは、死刑になるのか」

「…」

 徹は、植木の方をちらりと見た。植木は、硬い声で答えた。

「…それは、我々が決めることじゃない。然るべき裁判で決めることだ」

「…」

 井野は、再び口を閉ざしてしまった。
 3人は顔を見合わせると、その場を離れ、成瀬の方へ向かうことにした。

「今となっては、彼の証言はさほど重要ではありません」

 一番奥の個室に向かいながら、リンカが小声で言った。

「私たちは既に、『お母様』の正体、およびその能力について把握しています。何より、この先にその『お母様』自身を確保しています」

「だけど、それはあくまでカタログスペックの話だろ?」

 徹が反論した。

「そいつを友長、じゃない成瀬が、どんな風に使うのかは知っておきたい。それこそ、どうやって相手の心を捉えるのかとか、どうやって自分を『お母様』と呼ばせるまでに洗脳するのか、とか」

「…」

 考え込むリンカ。植木は、ふと立ち止まって口を開いた。

「…どうする。ある程度分かるまでは、接触は控えておくか?」
431 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/22(日) 20:26:09.66 ID:Hx5VlaEO0
「…確かに。今のところは、念の為そうしておきましょう」

 リンカは頷いた。



 ___その夜。固く閉ざされた、集中治療室の個室にて。
 ベッドに横たわる女に縋り付いて、一人の男がむせび泣いていた。

「ああ、おいたわしやお母様…まさか真堂さんを救出している間に、このようなことになっていようとは…」

 『お母様』は、何も言わない。

「蜜屋は裏切り、真堂さんとユウダイ君は倒され、ミヅキは…あの娘は…あぁ…」

 無機質な心電図の音が、すすり泣く声を無神経に切り刻む。
 閉じた扉の外では、見張りの警官が死んだように眠りこけていた。警官だけではない。医者も看護師も、誰もが深く眠り込んで、少しも男の存在に気付かない。

「これも、我らにとって乗り越えるべき、試練なのでしょうか、お母様…」

 その時、部屋の扉を叩く音がした。

「! 誰です」

 振り返り、鍵を外して細く扉を開ける。
 向こうに立っていたのは、病衣を着た一人の男。

「貴方は…」

「井野と言う者だ。……あんたには、『アースクエイク』と言ったほうが通じるか?」

「! ああ、思い出しました。ミヅキが連れて来た」

 男は、井野を部屋に招き入れた。

「仮面ライダーの憂き目に遭いながら、よくぞ戻られました」

「おれには、もうお母様しかない。復讐も、会社も、全て失った…だからせめて、妹だけでも」

「ですが…お母様は今、このような有様で」

「…っ」

 突然、ベッドの上の女が、小さく身じろぎした。

「! お母様」

「定…あなたの…妹の、お骨を…」

「生き返らせてくれるのか!?」

「あなたの…妹なら…母、の、娘…」

「頼む!」

 井野は、ベッドの前に平伏した。

「遊香を取り戻せるなら…おれは何だってする! だから」

「…井野さん」

 男が、その隣に膝を突いた。

「貴方の想いは、しかと聞き届けました。妹さんを取り戻した暁には…共に、お母様の愛を守り抜きましょう」

 そう言うと彼は、井野に一本のガイアメモリを差し出した。
 緑青色のメモリには、円形に歪んだ線で『N』と書かれていた。

「真堂さんが、命懸けで持って帰ってきたものの一つです。…きっと、貴方なら使いこなせるでしょう」
432 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/22(日) 20:27:51.10 ID:Hx5VlaEO0
 井野は頷くと、メモリを掲げ…自らの左胸に、突き立てた。



『ネブラ』


433 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/22(日) 20:28:26.36 ID:Hx5VlaEO0
今夜はここまで

やっぱ皆さん、ミヅキには復活してほしい感じです?
434 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/22(日) 20:35:31.47 ID:UcBzZ7Da0


個人的にはWヒロインでリンカと取り合って欲しいという思いはある
435 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/22(日) 21:49:07.28 ID:h5DOwP5BO
クール系とビッチ系で凸凹Wヒロインやってほしいなあ
436 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/22(日) 22:14:31.25 ID:osh2geEc0
でも、なんかただけろっと復活しちゃうのも、あの最期を湿気らせるような
一波乱か二波乱あるか、または制限付きとか、何かはあってほしい
437 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/23(月) 15:27:13.62 ID:DDkFWd8A0
 『ばそ風北』の暖簾をくぐると、店主が目ざとく見つけて、声をかけてきた。

「いらっしゃい、徹ちゃんにリンカちゃん。久し振り…」

 言いかけて、ふと気付く。

「…あれ? リンカちゃん、雰囲気変わったね。それに、いつものスーツじゃないし」

「そうですね」

 リンカは頷いた。
 確かに、財団Xを抜けてから、彼女はトレードマークの白スーツを遂に脱いだ。



↓1〜3でコンマ最大 リンカの私服
438 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/23(月) 15:31:04.58 ID:VvbAv5Bwo
「りんか」と達筆な毛質書体で書かれたブカブカのクソダサTシャツにショートパンツ
439 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/23(月) 15:34:34.47 ID:n+0oK37M0
ブカブカジャージにチノパン
440 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/23(月) 15:37:21.69 ID:v5QES/ISo
こういうのと
https://apple-believer.com/mysterious-cat-t-shirt/
ジャージとスウェット
441 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/23(月) 15:38:55.24 ID:Nmv1RSQkO
どうあってもクソダサや色物にしたいすぎる……
442 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/23(月) 15:48:35.66 ID:DDkFWd8A0
玄さん路線で行くのか(困惑)
443 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/23(月) 16:02:39.20 ID:LX/074rz0
上下統一していないから更に酷い可能性(せめてジャージセットかスウェットセット……)
これの隣を歩くって何の罰ゲーム?
444 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/23(月) 16:20:28.56 ID:h+dgq5apO
>>1公認正ヒロインなのに玄さん路線を走るのか(困惑)
加頭は元よりガイキは熟女フェチだし財団メンバーはどっかおかしすぎる…
445 :意地でも金ネクタイだけは差し込むつもりだったけど流石に諦めた  ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/23(月) 16:29:11.35 ID:DDkFWd8A0
「にしても…こういうのが趣味だったなんて」

「?」

 きょとんとするリンカ。
 濃紺のTシャツには、無数の星々や銀河、そして手前で目を見開き、何かの啓蒙を得たような猫がでかでかとプリントされている。その上から灰色のジャージを羽織り、下も同色のスウェットという、非常にラフな格好をしていた。

「流石に、この装いにネクタイは合わないかと」

「いや、そういう問題じゃなくて…ま、良いや。おっちゃん、北風蕎麦二つね」

「あいよ」



 蕎麦を待ちながら、2人はファンタジーの新たな姿について話し合った。

「ドライバーが、全く別物になったんだよな」

 テーブルの上に、2本挿しとなった新たなドライバーを置く。リンカも今、同じ物を所持している。彼女はそれに加えて、所持していたトゥルースメモリの形まで変わってしまった。

「風都の仮面ライダーが、これと同一のものを使用します」

「えぇ…」

 徹は思わず、不満げな声を出した。彼は風都が嫌いだし、それに付随して向こうの仮面ライダーに対しても良い印象を持っていない。それが、同じものを使う羽目になったこと、何より、彼自身がこの形を、リンカと2人で力を合わせて戦うという、このドライバーを求めたことが、彼にとっては認めがたい事実であった。

「どのみちドライバーもメモリも、元は一つの組織が作ったものです。重複は避けられません。ただ、個人的に一つ、解決しておきたい問題が」

「何だ?」

「名称です。これまでは、貴方の使用するファンタジーメモリに準じて、仮面ライダーファンタジーと呼称していました。ですが、ここに私のトゥルースメモリが加わるとなると話は別です」

「『仮面ライダートゥルーファンタジー』…何だか分かんねえけど、どっかから怒られそうな名前だな」

「ここで一つ、新たな名称を考えるのはどうでしょう」

「そうだな…」

 徹は、考え込んだ。



↓1〜3で>>1が気に入ったやつ 新たな仮面ライダーの名称
446 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/23(月) 16:35:06.04 ID:gttkaaGu0
イカロス
447 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/23(月) 16:37:21.50 ID:Nmv1RSQkO
仮面ライダーデュアル(仮面ライダーデュアル トゥルースファンタジー)
448 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/23(月) 16:52:10.17 ID:PpeV36IH0
仮面ライダーフュージョン
449 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/23(月) 17:13:04.18 ID:DDkFWd8A0
「…『デュアル』」

「二重、二通り…そういった意味ですね。良いと思います」

「よし、仮面ライダーデュアル。それで決まりだな」

「はい、お蕎麦2人前」

「! どうも」

 慌ててドライバーを引っ込めると、テーブルの上に二杯の蕎麦が並んだ。
 2人は手を合わせると、蕎麦を食べ始めた。
450 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/23(月) 17:13:37.06 ID:DDkFWd8A0
今日はここまで

何故トゥルーファンタジーじゃ駄目なのかと言うと、今後トゥルーファンタジー以外の組み合わせも出てくるかもしれないからですね
451 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/23(月) 17:34:58.20 ID:DDkFWd8A0
『仮面ライダーデュアル トゥルーファンタジー』

 ファンタジーメモリの能力に、徹とリンカの強い想いが作用することで、彼のロストドライバーとリンカのガイアドライバーは、ダブルドライバーへと姿を変えた。また、それに合わせてリンカのトゥルースメモリも次世代型へと進化した。
 ソウルサイドにリンカのトゥルースメモリを、ボディサイドに徹のファンタジーメモリを装填し、ドライバーを展開することで変身する、新たな戦士。ファンタジーの魔物めいた素体の上からトゥルースドーパントを模した金色の鳥が覆いかぶさり、装甲となる。黄金の重厚な甲冑に、宝石の装飾が付いた綺羅びやかな外見で、ファンタジーの翼にもなる白いマントは健在。
 『空想』の力に『真実』が加わることで、『空想を真実にする』というファンタジーの能力が更に強化されている。念じるだけで破壊された物を修復したり、自在に武器を具現化したりと、その力は変幻自在。また、2本のガイアメモリに2人分の力が合わさることで、単純な出力もファンタジー単体のほぼ2倍にまで向上している。
 専用武器『イデアカリバー』は金色の刃の大剣で、鍔にメモリスロットがある。ここにファンタジーメモリやセイバー、クエストなどを挿し込むことで必殺技を発動する。
452 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/24(火) 00:30:06.50 ID:Z26lYzr2o


今全部読んだけどこんな面白いSSあったなら早く知りたかった
453 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/24(火) 12:22:36.65 ID:SSSgc/ULO

じゃあミズキとエッチして生まれるラビットファンタジーやリンカとミズキのレズセで出来るラビットトゥルースもあるんです?
454 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/24(火) 22:55:26.71 ID:Rd6Dw0BU0
イレイサードーパント

消すことに特化したドーパントであり、当該ドーパントの攻撃を受け続けると消しゴムで消すように受けた箇所が少しずつ消えてしまう。内部粛清用に開発された真っ白なEraserメモリで変身する。また、力を調節すれば相手の声帯のみや五感のみを消すこと、更には飛んでくるエネルギー体ですら消すことが可能。身体が白いゴム状でできており、ある程度は物理攻撃を吸収できる。

デメリットとして力を酷使すると身体から消しカスが発生して小さくなってしまう。消せる範囲が狭まり、そのままメモリブレイクされると変身者も小さくなってしまう。が、酷い場合は身体のあちこちが消えて出血、更に酷い場合は即死する。
アップグレードしてデリートドーパントになれるとの噂もあるが、果たして……
455 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/25(水) 11:07:45.66 ID:jAWDUQXE0
ホルスタインドーパント


「Holstein(乳牛)」の記憶を内包するメモリで変身する。巨乳でミルクが吹き出る。一見ギャグキャラに見えるが、突進の直撃でビル1棟を簡単に崩せる破壊力もある。

ホルスタインドーパントのミルクには微弱な幼児退行効果と、高濃度な栄養素と中毒性があり、これ無しでは生きていけなくなる人間どころか他ドーパントもいる程。逆にこれだけで生きていけるとも言える

効率よく噴乳するために過食と男性とのセックスからの妊娠がほぼ日常化しており、ホルスタインドーパントから積極的に行う。

女性が変身すれば変身解除しても巨乳化&ミルクが出るようになる。
456 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/25(水) 12:46:03.51 ID:+VlKks72o
『ナイトドーパント』

騎士の甲冑を纏った人型の蝙蝠の様なドーパント。
使用するメモリが『Knight(騎士)』と『Night(夜)』の二種類の異なる記憶を内包する特殊なメモリ(類例:親子丼ドーパント)。メモリの色は紺色。

『Knight』の高度な剣術及び騎乗術、防御力の高さと『Night』に含まれる『バット』の超音波『ヴァンパイア』の吸血や飛行能力等複数の能力を持つ

強力なメモリだが精神汚染の影響が強く『Knight』による正々堂々とした騎士道精神『Night』による卑怯で陰鬱な非道さを同時に反映される為、精神が耐えられず廃人になる事が多く、耐えられても二重人格になる等人格が破綻する
457 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/26(木) 15:32:16.27 ID:WFm+5eyi0
誤解しないで欲しいけど、リンカの玄さん路線は別に嫌というわけじゃないんだ
彼女は『真面目だけどどこかズレてる人』だから、そのズレがファッションセンスに現れてるという意味では当てはまる
ちなみに彼女は『非人間でありたいただの人間』でもある



(ガイキはそもそも人間じゃ)ないです
458 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/26(木) 20:45:09.72 ID:kX3/gByT0



「…」

 裸の胸板に頬を寄せたまま、蜜屋は黙りこくっている。

「先生でも取り乱すことがあるんだな」

 いつものような軽い口振りで、ガイキが投げかけた。蜜屋は、彼の胸に彫られた奇妙な刺青を指でなぞると、ぽつりと言った。

「…私は、良い先生になりたいの」

「ああ、知ってるよ」

「誰も虐げない、虐げられない、平和な教室…そのためには、教師が強くないといけないわ」

「そうだな」

 無関心そうに相槌を打つガイキ。蜜屋は、そんな彼の態度を気にも留めない。

「…あの娘が気がかり?」

「どいつが?」

「あの、リンカさん」

「まさか」

 彼は鼻で笑った。

「奴は半人前だよ。財団みたいなお硬い所にいるより、惚れた男のとこにいた方が、もっと伸び伸びやれるだろうさ。ま、そういう意味じゃこれからに期待はしてる」

「敵になったのに?」

「敵だから、だろうが」

 シーツの中に、手を差し入れる。蜜屋が、不機嫌そうに息を吐く。

「弱者を一方的に殺して、何になる? 弱い人間が、足掻きに足掻いて俺たちと殴り合うから楽しいんだ。…最終的に、殴り殺しちまってもな」

「弱い人間、ねぇ。それは私も入っていて?」

「どうだろうな。一つ言っておくと、蜂野郎の知り合いはいたが、あんたほどじゃ無かったぜ」

 ガイキは、喉の奥でくっくっと嗤った。
459 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/27(金) 00:22:40.69 ID:rGwfioHm0
ソウルドーパント


soul(魂)の記憶を内包したメモリで変身するが、その姿と強さは変身者それぞれ。攻撃的だが防御面に劣る者、傷を癒す事に特化した者、常に燃えるが自分を見失わない者、知識と念動力に優れた者等様々である。

正確には使用者の魂となる本心を怪物として曝け出させるメモリで、心の内にストレスを溜め込む者や闇を抱える者である程、化け物として強大な力を得る。

適合率が高ければ、内心異性だったり向上心が高い場合は本当に異性へ変身できたり自分を前向きに変えるなどの素敵要素もある。


使用し続けると反動で本心を自力で表に出せなくなるデメリットがある。この点はスパイにとってはありがたい恩恵になるかもしれない。
また、人によっては体が本心についていけずに疲弊からの幽体離脱することもある。そして一部のソウルドーパントはアップグレードすればウルトラが付くドーパントになれると夢見ている
460 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/28(土) 18:34:38.82 ID:Kg0WR2II0



「井野がいなくなっただと!?」

 電話口で、植木が怒鳴った。

「坂間たちは何をしてたんだ! 他のスタッフもいただろう?」

 語気を荒げる植木の側で、徹とリンカは静かに、受話器から漏れ聞こえる声に耳を澄ましていた。

”それが、いつの間にか全員が眠っていて…”

「眠っていただと?」

”翌朝、医師の一人が目を覚ました頃には、既に井野のベッドは空で、代わりに一人の看護師が眠っていました。その場にいたほぼ全員が目を覚ましましたが、その看護師はまだ起きません”

「植木さん、ちょっと失礼」

 リンカは受話器を取り上げると、早口に言った。

「もしもし、円城寺です。その看護師には誰も近づけないでください。詳しいことは後ほど説明します。その際に、そちらの詳細もお聞かせ願います」

 一方的に告げると、受話器を植木に返し、徹に向かって言った。

「急ぎましょう。その看護師に、何らかの手が加えられた可能性があります」



 バイクから降り、警察病院の入り口まで走りながら、リンカが徹に尋ねた。

「熊笹修一郎が遺したメモリを覚えていますか」

「ああ。アイソポッドとかいう新しいメモリの試作品だろ?」

「いえ、今回は同封されていた別のメモリです」

「えっと…トリケラトプスとか…」

「『スリープ』というメモリがありました。それ自体は新しいものではありませんが、あの工場で量産できることに変わりありません」

「それが使われたかもしれないんだな」

 集中治療室の入り口に、坂間が立っていた。彼は2人の姿を認めると、悔しげに言った。

「私たちがいながら、みすみす逃してしまった…」

「件の看護師は」

「…井野がいたベッドだ」

 2人は坂間を置いて、集中治療室に入っていった。
461 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/28(土) 18:35:06.35 ID:Kg0WR2II0
 警官の捌けた集中治療室。井野の眠っていたベッドには、確かに一人の若い看護師が横たわって、寝息を立てていた。

「この看護師とスリープメモリの適合率に依りますが、おそらく徹と私なら影響を受けることは無いでしょう」

 恐る恐る歩み寄ると、徹は全身が重くなるような感覚を覚えた。

「だ、大丈夫なのか…?」

「このメモリは、使用した瞬間が最も危険です。ですが使用者以外は、遅かれ早かれ抵抗力を得て影響を脱することができます」

 言いながらリンカは、看護師の肩を掴んでぐいとひっくり返した。

「! ありました」

 露わになった彼女のうなじには、黒い生体コネクターが刻まれていた。

「おそらく、面会客を装いここまで案内させておいて、後ろからメモリを挿入したのでしょう」

 そう言って、ドライバーとトゥルースメモリを取り出す。

「どうするんだ?」

「当然、メモリブレイクです」トゥルース!

「大丈夫なのか…?」ファンタジー!

「「変身!」」

 徹の体が黒い外骨格に覆われる。リンカの体が金色の鳥の姿に変わると、徹の外骨格を更に包み込み、金色の装甲となった。これこそが仮面ライダーデュアル・トゥルーファンタジーである。

”ここは、こうしましょう”

 デュアルはドライバーからトゥルースメモリを抜くと、腰のスロットに挿した。

『トゥルース! マキシマムドライブ』

 両手をコネクターにかざし、力を込める。すると、コネクターからゆっくりと、灰色のメモリが抜けてきた。

『その力は…力? とにかく偽りだ…!』

 その手に収まった、灰色のガイアメモリ。渦巻く羊の角を組み合わせたような字で『S』と書かれている。強く握りしめると、それは簡単に砕け散った。

「…っ」

 看護師が、目を覚ました。

『! 大丈夫ですか』

「…」

 彼女は、数度瞬きすると、ふと眉をひそめた。

『? 何か…』

「う、後ろに」

『!』

 はっと振り返る。そこには、ナイフを振りかぶったマスカレイドドーパントいた。
462 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/28(土) 18:37:14.92 ID:Kg0WR2II0
「! …死になさい!」

 臆さず、刃を振り下ろすマスカレイド。が

「…くっ!?」

『…たあっ!』

「ぐわあぁっっ!!?」

 デュアルの装甲には傷一つ付かず、逆に彼の放ったパンチで壁まで吹き飛ばされてしまった。

「九頭さん!」

 そこへ駆け寄ってきたのは

「…仮面、ライダー」

『あんた…』

 憔悴した顔で立っていたのは、井野定。脇には、白い骨壷を抱えている。

『何で…何でそこまでして、妹にこだわるんだ!? これ以上、罪を重ねて…』

「うるさい! 復讐に手を伸ばしたばかりに、おれはもう贖いきれない罪を犯した。もう、帰るとこなんてないんだ…だったらせめて、妹だけでも!」

『妹さんは、それを望むのか!? 血に塗れた手で生き返って、喜ぶとでも思うのか』

「それを決めるのは、遊香だ…!」

「い、井野、さん…」

 よろよろと歩み寄ってきたマスカレイドドーパントに骨壷を預けると…彼は、懐から緑青色のガイアメモリを取り出した。

『! それは』
463 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/28(土) 19:15:32.39 ID:Kg0WR2II0



『ネブラ』



「…最初から、このメモリに出会えていれば。不要な殺人なんて、しなくてよかったんだ…」

 それから彼は、突然吼えた。シャツの前を引き裂き、左胸のコネクターに、メモリを突き立てた。
 彼の体が、青銅の重厚な鎧に覆われていく。全体的に丸みを帯びたその鎧には、無数の金の鋲が打たれており、兜には円が、肩には三日月が、そして両腕には弧を描いた線が、それぞれ金で彫り込まれていた。
 右手に斧を、左手に短剣を握ると、井野は…ネブラドーパントは、言った。

「これ以上…おれに、人を傷付けさせないでくれ…!」
464 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/28(土) 19:16:57.38 ID:Kg0WR2II0
『Nは帰れない/眠れる病院』完

今夜はここまで

にしても警察病院襲撃され過ぎな?
465 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/29(日) 16:29:55.18 ID:5Da7Mps90
『…!』

「やあっ!」

 斧を左手で止めると、右手に金色の大剣、イデアカリバーを出現させる。

『もう、止めるんだ!』

 下から斬り上げた剣を、左の短剣で受け流す。そのまま斧を振り下ろした。

「止められるか! もう、止まれない…」

 大剣で、大振りの一撃を受け止める。
 と、突然、彼の腕に走る、金色の線が光り始めた。そして次の瞬間

『…っ、あぁっ!?』

 いきなりネブラドーパントの腕が、目にも留まらぬ速さで閃き、数十発に及ぶ斬撃をデュアルの体に見舞ったのだ。
 幸い、装甲の傷は軽微。しかし、衝撃が大きい。

『くっ…一体、何が』

”ネブラ…このガイアメモリが有する記憶は、『ネブラディスク』でしょう”

『ネブラディスクって、オーパーツの?』

”ええ。青銅と金で造られた円盤です。その用途は、太陽暦と太陰暦の同期という説が有力です”

『えっと、つまり?』

”2つの異なる時間流の同期、すなわち時間操作がドーパントの能力であると推測します”

『…よし、大体分かった!』

「余所見するな!」

 振り下ろした斧を、片手で掴んだ。更に剣を握った左手も掴むと、そのまま鎧の胸を蹴りつけた。

「ぐぅっ…」

『要は動けなくすりゃ良いんだろ。いくら速くても、動けなきゃ意味がない!』
466 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/29(日) 16:30:24.44 ID:5Da7Mps90
 両腕を掴んだまま、繰り返し蹴りを叩き込む。攻撃を続けながら、ふとリンカがこぼした。

”…何かおかしい”

『うん?』

”周囲の動きが、やけに早いような”

『? …!!』

 彼女の言う意味に気付いた瞬間、デュアルは金色に光るネブラドーパントの腕を離した。途端に体が軽くなった。いつの間にか彼の体には、重力めいた反発力が働いていたのだ。
 そして、彼がネブラドーパントに釘付けになっている間に、マスカレイドドーパントが骨壷を持って、最奥の個室に向かって突進していた。

『止めろ!』

 追いかけるデュアル。しかし、その足にネブラドーパントがタックルし、動きを封じる。その腕のラインが光り、彼の動きが更に鈍くなっていく。今なら分かる。これは、先程の時間操作の逆で、デュアルに流れる時間を遅くしているのだ。

「ここは、譲れません!」

 マスカレイドとは言え、ドーパントはドーパントである。人間離れした脚力で駆け抜け、あっという間に個室の扉に辿り着き、中へと押し入った。

「お母様!」

「…」

 白いベッドの上で、『お母様』がゆっくりと目を開けた。

『! 成瀬…』

「お母様、こちらを…」

 成瀬の体が、白いマリア像めいた姿に変わる。マスカレイドが布団を剥ぎ取ると、その腹には大きな裂け目が開いていた。
 そこに、骨壷を押し込んだ。

「井野さん!」

「ああ!」

 ネブラドーパントが、デュアルの足を離した。そして今度は自分の時間を加速させると、マザードーパントの元へ駆け寄った。

「頼むぞ、お母様…」

 光る腕で、彼女の腹に触れた。
467 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/29(日) 16:30:51.30 ID:5Da7Mps90
 すると、見る見る内にその腹が、大きく膨れ上がってきた。

『くっ…もう、止められないのか…』

「邪魔はさせませんよ!」

 マスカレイドが立ちはだかる。

”マザードーパントには、僅かな遺伝子から人間のクローンを造る能力があります”

『それで妹のクローンを…』

「お母様の中で育まれるのは、クローンなどではありません。死した子どもたちが、還ってくるのです!」

『そんなことが有るものか! お前たちは間違ってる…!』

 大剣を振り上げ、マスカレイドに斬りつけた。
 そうこうしている間にも、マザードーパントの腹では『何か』が成長を続けていく。

『邪魔だ、このっ…』

 マスカレイドドーパントを蹴り倒し、剣を叩きつけようとする。ところが、その動きが途中で止まった。

「はっ…はぁっ…」

 振り返ると、そこにはシロツメクサの少年が立っていて、無数の蔓を伸ばしていた。

『ユウダイ君…いつの間に』

「僕は、運が良いんだ…」

 クローバーの茎で、デュアルの両腕を締め付けながら、クローバードーパントが呟いた。

「この前受けた攻撃も、本当に危ない所は外れた。そして、またこうやって、お母様のために戦える…」

『それまでに、自分がどんな目に遭ったか覚えてないのか!?』

「覚えてるさ」

 彼は、憎々しげに唸った。

「僕は、惨めな人間だった。全部、あの女…蜜屋のせいだ…!」

 メイスを構え、デュアルに打ち掛かる。

『! せぇやっ!』

 それを足で打ち返すと、両腕に力を込め、蔦を引きちぎった。

「なっ」

『それだけじゃない…お前は、もっと大事なことを忘れてるんだ!』

 剣を振るい、打ち合う。突き出したメイスを払い、腹に深く斬りつけた。

「くぁっ…!」

 追いすがってくるマスカレイドドーパントをいなし、マザードーパントとネブラドーパントの元へ歩み寄る。
468 : ◆iOyZuzKYAc [saga]:2019/09/29(日) 16:32:03.79 ID:5Da7Mps90
『井野!』

「もう遅い…!」

 ネブラドーパントは、マザーの腹から手を離した。既に、その腹は、妊婦のそれよりも大きく膨れ上がっており、中で何かが蠢いているように揺れていた。

「定…さぁ…」

「すまない、お母様…必ず、すぐに取り戻す!」

 そう言うと彼は、両手で短剣を握ると…



 ___マザードーパントの腹に、深々と突き刺した。



『!!? 何をする!?』

「あっ、あ゛っ、ああぁぁっ…」

 青銅の剣が、白い腹を縦に切り裂く。夥しい血が噴き出し、部屋を赤く染める。
 駆け出したデュアルの足を、マスカレイドドーパントが掴んだ。

「私だって辛い! だが、今のお母様には、子供一人産み落とす力さえ残されていないのです…!」

『だからって、何でこんなことを!』

「これが! お母様の、愛なのです!」

 血塗れの腹に両手を突っ込むネブラドーパント。ずるりと音を立てて引き出されたその手には…

「…」

「遊香…」

 一人の女が、抱かれていた。

「井野さん、引き上げるよ!」

『待てっ!』

「行かせません!」

 裸の女を腕に抱き、両腕を金に光らせるネブラドーパント。そこへ、クローバードーパントが合流した。
 マスカレイドドーパントは一人、デュアルの背中にしがみつく。

「井野さん、ユウダイ君…私は、これまでです」

「おじさん…ありがとう」

「九頭さん、必ずお母様は、生き返らせる!」

 3人の姿が、一瞬にして消えた。時間操作で、どこかへと走り去ったのだろう。
 マスカレイドドーパントは、震える声で宣言した。

「もう、お母様はいない…これが私の、最期の親孝行です…!」

『…お断りします』

「えっ?」

 戸惑うマスカレイドドーパント。と、突然その体から、黒と白のガイアメモリが抜け、デュアルの手に収まった。
 九頭は、へなへなとその場に膝を突いた。

『…っと、リンカ、いきなり体動かすからびっくりしたぞ』

”失礼しました。ですがこれで、自爆は封じました”

『ああ。…九頭英生。色々思うところが有るだろうが…』

 マスカレイドメモリを、粉々に握り潰す。

『…お前は、ここまでだ。おとなしく、お縄につけ』

 九頭は、その場に泣き崩れた。
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