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【鯖鱒wiki】どうやら坂松市で聖杯戦争が行われる様です【AA不使用】2
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589 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/07/17(金) 23:01:16.17 ID:0htsvtl90
二つの戦闘が行われている中、ここでも一つの戦闘が起こる
いや……これはもう戦いですら無い。ルシフェルは一方的に蹂躙されるだけ
「不純物を取り除き、純粋な魔力を抽出する。そうして得た無色の魔力を放っている……」
「……これが、エーデルワイスの魔術!」
手に振るう斧で魔力を弾き返す。が、それは天に座すシュヴァルツには届かない
桁も次元もまるで違う相手。それは風車に木の棒で挑むが如き徒労は精神も削り取っていく
「何も話さない。か……貴様にとって、我々は塵芥にすら劣る存在なのだろう」
「だから……だからこそ、私は、貴様らエーデルワイスを許さない!許してなるものか……ッ!」
ズタズタの姿になりながらも、斧を握りしめる手は強く、瞳は燃える
それでもシュヴァルツの光は尚も強く。天使の如く輝く羽が、ルシフェルに殺到する
「……言葉すら無いか。貴様にとっては、我々も犠牲の一つでしかないんだろう」
「その果てに手に入れる愛に、どれだけの価値があると言うんだ──!!」
その問いに答えは無い。あまりにも圧倒的な力の差にひれ伏す間も無く突き刺した
590 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/07/17(金) 23:08:38.61 ID:0htsvtl90
「………………無様、だなぁ」
「あれだけ、啖呵を切ったのに……ドミトリイ様に、申し訳無い……」
「メリッサも……ごめ、ん……」
意識も朦朧としながらも、辛うじて命だけは手放さずにすんだのは幸運か
しかし、今も戦っているであろう二人の仲間に対する、自分の不甲斐なさ
異物である自らの血を、受け入れてくれたガイスロギヴァテスへの無念が燻る
何も出来ずに蹂躙される。その弱さが憎らしい
「く、う、ぅ……!」
歯噛みするルシフェルを余所に、シュヴァルツは光を束に、編んでいく
槍の様に纏められた光は、ルシフェルに狙いを定め矛先を向ける。その引導を渡さんと切先は煌めき
「させるかーーーっ!!!」
「なっ……!?」
突如、帆船の強烈なラムアタックが激突する
さしもの翔んでいたシュヴァルツもこの勢いには耐えきれず、たまらずその身を地に落とす
ルシフェルには見覚えがあった。その帆船の持ち主である英霊は、かつて自分が殺そうとしたエーデルワイスの……
「良かった。まだ死んでない……!セイバー、後はお願い!」
「わかった。ここは僕に任せてくれ!」
591 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/07/17(金) 23:17:26.19 ID:0htsvtl90
「……何故、だ」
「私は、貴様らを許さない……例え、命を救われたとしてもだ!」
「なのに、何故私を助けた……エーデルワイスの小娘!」
怒気を含んだ声で、目の前の少女に問いかける
自分が殺したい程憎んだ相手に命を救われる。身を焼く屈辱に苛まれる
けれども、少女……アーディーの顔はどこか晴れやかで。まるで何かが吹っ切れた様な顔つきで宣言した
「……正直、どうしてそっちが私を殺そうとするのかはわからないよ」
「けど、これだけは断言出来る!誰かを傷つけてまで好きな人と結ばれても駄目だって!」
「天使だって、そんな風に好かれても嫌だって言うはずだよ……当主様!」
啖呵を切ったその後ろ姿は、小柄なのにやけに広く見えた
天使、ひいては当主への反逆。エーデルワイスの性質を考えれば、決してあり得ない出来事
「……自分が何を言ってるのか、わかっているんだな?」
「勿論!何回だって言ってみせるよ」
「犠牲の出してまで天使を呼んだって、きっと来るはずないんだ!」
シュヴァルツは絶体に許さない。英霊が味方にいるとはいえ、半端な覚悟では発言すら出来やしない
それでも、彼女は言ったのだ。“天使はそんな事を望んではいない”と
592 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/07/17(金) 23:20:10.24 ID:0htsvtl90
「……ふ、ざ、けるな…………」
「お前ごときが、我が天使探索の歴史を踏みにじるつもりか……!」
地の底を這いずる様な怨嗟の声が響く。地獄の淵から鳴らすかのように
天にて俯瞰していたシュヴァルツは、今や地に伏せていた
「当主様、聞いてください!私は」
「黙れ!その背信は万死に値する、命を以て礎となるがいい。失敗作が!」
「……そうか。貴様の性根は、あの時から……」
「マスター!幾ら多数を犠牲にしたとはいえ、あれだけの魔力を持てるかは疑問だった」
「恐らくは奴の魔術によるものだろう。ヴィオレの魔力と融合し、一体化している!」
セイバーの言葉に頷くアーディー。そこに怯えは無く。ただ使命だけが
「……助けられる?」
「一つだけ方法がある。……しかし、僕だけでは少し難しい」
「わかった!手伝うよ、セイバー!」
「……私も、協力しよう」
「えっ……!?」
「驚く程でも無いだろう?奴は私の、仇でもある……!」
驚嘆の声を挙げる二人。それもそのはずだ。ルシフェルは幾度と無く、命を狙ってきた……
「行くぞ……先程の言葉に、偽りは無いな?」
「……何度でも言うって言ったでしょ!」
並び立つアーディーとルシフェル。殺し、殺されるだけの関係が、少しだけ変化する
ここでも一つ、奇妙な共同戦線が組まれたのだった
593 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/07/17(金) 23:21:55.99 ID:0htsvtl90
【本日これだけ。すまない……本当にすまない……】
594 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2020/07/17(金) 23:25:40.11 ID:WgxYPWPZO
乙
595 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2020/07/18(土) 19:18:42.41 ID:7QxAtw9+o
乙です
投下遅めなのは気にならない(早いと追いつけないので)
息抜きのサーヴァント作成とかも含めて全体的に遅いけど、詰まってる感じではなくて順調なペースだとは思いますよ
596 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/07/24(金) 23:45:00.00 ID:GX2zTo7+0
【ひっそり更新】
【本当はもうちょい書き貯める予定でしたが、キリよさげなので先に】
597 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/07/24(金) 23:45:42.68 ID:GX2zTo7+0
天を我が物顔で支配していた瞬間とは違い、地に落ちたシュヴァルツはやけに饒舌だ
恐らくはアーディー……支配していた筈の人間に反旗を翻された事。怒りが誇りを凌駕したのだろう
その顔は遠巻きに見ても怒りに満ちていて。此方を殺す事に全力を注いでいた
「……それで、どうやって助けるの!?」
「話は後だ!来るぞ、二人とも!」
絨毯爆撃もかくやの魔力の波が三人を襲う。人間の二人はともかく英霊相手には分が悪い
特に、セイバーの所有する対魔力は魔術師殺しとすら呼べるスキル。驚異であると判断したのだろう
「だからってこれは……!くっ!」
「貴様、もしやその身に禍門の呪いを……!」
「ああもう!同級生の癖に手加減とかしてくれないんだからーーーっ!」
セイバーとルシフェルが切り払い、遮二無二に突き進む
時折アーディーは倒れそうになるものの、その手をルシフェルが引き、戻す
「っとと!ありがと……!」
「けど、どうして……?アンタにとって、私は」
「……それは」
彼女にしては珍しく口ごもり、目を反らす。傍目に見てもその顔は複雑そうで
聞いたアーディーは申し訳なさそうに、謝るしか無かったのだった
「……ゴメン」
「いや、いい……。……行くぞ!」
598 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/07/24(金) 23:46:46.76 ID:GX2zTo7+0
「……くっ!」
「フラァアアアあアア!ンンンンン!!」
フランシーヌが相手の時は“やや優勢”だった。しかし相手が変わると途端に“互角”になる
クリスティーナとデカルト。二人の実力はほぼ拮抗していると言ってもいい
宝具を開帳してもなお、師であるデカルトには及ばない。寧ろ、その差を埋めているだけでも上等だろう
「流石だ……剣の達人とは聞いていたが……」
「狂化を受け入れても剣筋が鈍らないとは、正気であればどれ程……っ!」
「お父様に近付くなぁあああ!!」
だが、クリスティーナの敵は一人ではない。横入りしてきた剣をいなし、距離を離す
「お前のせいでお父様は……お父様は」
「フラン、そいつのせい!フラン、離れ離れになった!全部、全部、全部!」
「……それは」
師匠から突きつけられる言葉は、それだけで彼女の心を抉りとる
何も間違った事はない。死の原因が誰にあると言われれば、間違いなく自分であろうから
「……だが、私は逃げるつもりはない」
「貴方との出会いを否定したくない。それが、私のエゴだとしても!」
それでも、彼女は折れない。どこまでも自分の為に剣を執る
自分の生き様に、間違いなんて無い。そう断言して、二人と切り結ぶ
彼女の生き方……誰よりも自由に、誰よりも破天荒に突き進んだその道を示すかの様に
599 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/07/24(金) 23:47:53.69 ID:GX2zTo7+0
「……凄え」
セイバー達とシュヴァルツの攻防を、影に隠れて観察する者が一人
青年、鹿黒はひっそりと。ヴィオレの感覚だけを頼りにここまで辿り着いたのだった
「こんな、バケモノ達と争うかもしれなかったのか……」
光の暴威を裂き行く剣。絶対的な波にすら立ち向かうその姿に、否が応でも目が奪われる
「それなのに、俺は……ヴィオレ、俺は……」
自分は何も出来ない。英霊との契約も、ああして身一つで戦う力すら持っていない
何も出来ない自分が悔しい。少しも力になれないもどかしさが苦しい程にのしかかる
「どうすれば、いいかな、ヴィオレ……」
問いかけた先にいるのは愛するものではなく。それを取り込んだ悪魔の姿が
神々しく嫌悪感すら覚えるその清廉な姿。自然と震えがカタカタと隆起する
怯えている……その事実が、如実に自分に突きつけられていた
「くそ……クソっ、ちくしょう……!」
「何か、何か出来る事は無いのか……!」
600 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/07/24(金) 23:48:51.83 ID:GX2zTo7+0
「……私は、天使に全てを奪われた」
「私が物心ついた時には、既に我が家は全てが失くなっていた」
「……え?」
「昔話だ。……少し、付き合ってくれ」
魔術の海を掻い潜りながら、ルシフェルは話す
突然の言葉に驚きを隠せない。……が、不思議と聞き流そうとは思えなかった
「人生の全てを復讐に捧げた。如何なる犠牲を払ってでも、奴を滅ぼすと誓ったのだ」
「その過程で、名を失い、兄妹を失い、私の夢も失った……」
「……本当は、戦いなんてしたくはなかった。斧よりもペンを持ち、研究していたかった!」
「我が真名は……“エーデルワイス”。かつて同門だった一族の末裔なんだ……よっ!」
「………………っ!」
叫びと共に、一際大きく斧を振るって魔力の渦を断ち切る
怒りを向けても戻れない。やるせなさと憤怒に満ちた一撃は、一際大きな穴を穿つ
……
◆地獄の炎
後天的に与えられた火の魔術属性の行使。
エーデルワイス家から追放された一族の復讐の炎の具現であり、本来は持たない魔術属性の使用は彼女自身をも焼く。
火と風の二重属性を扱うことで魔術の幅と破壊力が増し、彼女は『天使に恋した一族』を無に帰す劫火となる。
「……その言葉で、確信したよ」
「やっぱり……この家は間違ってる。この場で元に戻さなきゃダメなんだ!」
走る。当主にむけて、全力疾走で駆け抜ける
その隣にはセイバーが。既に活路を見出だしたのか、その顔には余裕すら浮かんでいた
601 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/07/24(金) 23:51:01.80 ID:GX2zTo7+0
「……セイバー!お願い!」
「承知した。……彼女に、伝えておいてくれ」
正面に、自らの担う聖剣を構える
絶世の名剣、デュランダル。王勇を示す輝剣、ジョワユースと同等の製法で鍛え上げられた王家の宝剣
かの円卓の騎士も所有していたとされるその剣は、眩いばかりの光を放って
「自分らしく生きる事。もう君は、天使に呪われる事は無いだろう」
「……僕にも、生きたい道があった。それはもう叶わないけれど」
「せめて、応援だけはさせてほしい……君の航路に光あれと!」
その刀身に鋒は無い。その理由は、奇しくも……
「“無益な殺戮を防ぐ為、天使にて折られたこの剣。今こそがその妄念を断つ時である!”」
「“汝がマスター、アーディー・エーデルワイスが令呪を以て命ずる!”」
「“この家を、エーデルワイスを!その聖剣で正して!セイバーっ!”」
「“輝け、無峰の宝剣よ。此処にその名を示し、正道へと導いてくれ───っ!”」
「「“剣先無き慈悲の剣(カーテナ)ーーー!!!”」」
振り下ろされた剣に峰は無い。はずなのに、シュヴァルツはその軌跡に呑まれる様に
慈悲の剣が、偽りの天使を両断する。その責務を果たすかの様に……
602 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/07/24(金) 23:51:37.61 ID:GX2zTo7+0
【本日ここまで】
【次回はクリスティーナVSデカルトの決着をメインにする予定】
603 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2020/07/25(土) 00:37:25.69 ID:1cYQ5Ph4O
乙
604 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[age]:2020/07/30(木) 21:12:29.56 ID:aQwp8CCiO
前回大反響を呼んだ
戦争略奪ゲーム「RUST」実況再び。
加藤純一(うんこちゃん) Youtubelive
Steam/オープンワールドMMOFPS
『RUST』シーズン4 Part3
『RUSTにて敵の拠点を潰す。』
(20:42〜放送開始)
://youtube.com/watch?v=QP57i_z-GKA
605 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/02(日) 20:27:40.92 ID:Jz4NUtEI0
【それでは再開……】
606 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/02(日) 20:29:14.49 ID:Jz4NUtEI0
「…………ガ」
慈悲の斬撃が身体を裂く。凄烈な様で柔らかな一撃は、真っ二つにその身を別つ
痛みはなく、流血もない。セイバーの持つ無峰の聖剣は、寸分も違わずヴィオレとシュヴァルツを分離してみせた
飛び散る血飛沫は透明で。キラキラと空に、花弁のように反射する
それは、あの時の。そうだ、あれは確かに──
「いた、んだ……」
「いたんだ。確かにそこにいたんだ!話したんだ。一言でも、いや、もっと少ないかもしれないけれど……」
「それでも、オレは確かに会ったんだ。貴女に、天使に───!」
「気持ちがわからねえとは言わねえ。けれどよお、手前の恋なら手前で叶えるべきだろう」
「子孫共々巻き込むのはダメだろ?そんな情けねえ男に、天使なんか振り向かねえよ!ひゃっひゃひゃひゃ!」
「……クソッタレ。テメェかよ」
「よう。泣きっ面見に来たぜ。……あばよ」
招福の声は届いたのか、倒れ伏す男は苦々しげに顔を歪め
しかし、それもほんの数秒。瞬きの間に、その姿は虚空へと消え去っていた
「……終わった、のか」
「ああ。ま、片思いの末路なんか面白くも何ともねえよ。……お疲れだったな。ルシフェル」
607 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/02(日) 20:30:32.37 ID:Jz4NUtEI0
「ヴィオレーーーっ!!」
「!?君は……」
「きゅ!きゅい!」
シュヴァルツとヴィオレが分離した瞬間、木陰から青年が走り寄る
当然出てきた青年に面食らいながらも、青年はヴィオレを抱き撫でる
「生きてた……!ごめん、ごめん……!」
「きゅう……きゅ!」
「もしかして、貴方がこの子の飼い主さん?」
駆け寄ってきた青年にアーディーは訪ねる
青年、鹿黒は若干不機嫌そうになりながらも、素直に答えた
「そう、だけど」
「お願い……!バーサーカーを止めて!センパイが、今戦ってるの……!」
「な、そんな事出来る訳ないだろ!」
「お願い!センパイのバーサーカー達が精一杯戦ってくれたから助けられたんだよ!」
「けど私じゃどうする事も出来ないんだ、もう貴方にしか頼めないんだ!」
「……あいつが…………?」
「え、知ってるの?」
林道が紹介した青年の顔が脳裏によぎる
彼の言葉や表情を思い出す。そこに嘘や偽りがあっただろうか
「……ヴィオレを、助けようとしたんだな」
「どうしようか?……どうしたほうがいい?」
608 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/02(日) 20:32:07.24 ID:Jz4NUtEI0
「きゅ!きゅきゅい!」
「……でも、それだと俺達は」
「きゅい!きゅーいっ!」
悩む鹿黒を後押しする様に鳴くヴィオレ
それを聞き覚悟を決めたのか、鹿黒の目からは強い意思が
「……わかったよ。それが本当に正しいかはわからないけど」
「アイツが助けるって言ったんだ。俺も少しはやれる……はずだから」
「きゅーっ!」
鹿黒の言葉に合わせて、ひときわ高く鳴くヴィオレ。そのちいさな身体から、赤い魔力の奔流が迸る。
光は天に伸び、そのまま遥か遠くに……
「センパイ、本当に色々な人を動かしてるんだな……意識してるかわからないけどさ」
「でも、だからこそ。私は、センパイが……」
「…………大好き。なんだ、えへへ」
その呟きは風に消える。隔離された世界に届けと願うように
609 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/02(日) 20:33:16.00 ID:Jz4NUtEI0
「くっ……!」
「フラン、殺した!フラン、奪った!」
「お父様……よくも、お父様を……っ!」
「クリスティーナ……」
一陣の風が世界に吹く。師弟と娘は剣を重ね、周囲に火花を散らしていく
貴方の目の前で奮戦するも、その力は徐々に圧されているようにみえた
宝具を開帳しても尚、その実力は拮抗する。理由の大きな要因は、デカルトの固有結界だろう
「……私まで否定するのですか。貴方は!」
「ファァアァアア!!ラァアアン!」
「貴方との語らい全てが私の道となった!私は無駄にしたくない!」
「フランフランフランフラン!!」
「目を覚まさせてやる……!デカルト!」
「フラーーーン!!!」
叫び、ぶつかる。意志はクリスティーナに部があるが、力は狂化故かデカルトが勝る
そして敵は一人ではない。拮抗した所にフランシーヌが割り込み、趨勢を相手に傾ける
「お父様を悲しませる奴は許さない……例え、愛弟子だろうと!」
「フゥゥウウウ……ラァアアアア!!」
フランシーヌに圧され、体勢を僅かに崩す
その隙にを突きデカルトは剣をクリスティーナの身体に斬りかかる
610 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/02(日) 20:34:46.01 ID:Jz4NUtEI0
「───“令呪を全て以て命ずる”」
「“ランサーよ。限界を超えた出力で宝具を開帳する事を命じ……”」
「“ルネ・デカルト。及びフランシーヌ人形のみを狙い、穿て!”」
そこを、赤熱の横槍が通過する。デカルトとフランシーヌの身体を突き破りながら
611 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/02(日) 20:36:03.21 ID:Jz4NUtEI0
「……これで良かったのか?ランサー」
「上等よ。あのムカつく女王様に一泡吹かせられ、あの爺を吹っ飛ばせる。最高じゃない」
「だが、フランシーヌ人形を構成している肉体の大半は貴様の身体だ」
「人形を吹き飛ばすとは、即ち……」
「それ以上言うんじゃないわよ。ドミトリイ」
言葉通り、ランサーの身体は光の粒子となってほどけていく
元々身体を大半を奪い取られていた上に、限界以上に魔力を引き出し、その肉体を自ら粉々に砕いたのだから
「これはアタシがやりたかった事。それ聞いてアンタ否定しなかったじゃない」
「聖杯戦争から敗退しろって言うようなモノなのによ?普通なら断るでしょう」
「…………それは」
サングラスの中の瞳が揺れる。戸惑う様に目を反らし……ランサーに向き直る
「少しくらい、外れてみてもいいと思ってな」
「ハッ、あのガキが気に入らないのもそれが理由なんでしょ?」
「……まあ、な」
「ま、案外楽しかったわよ。結果はともかく、好きに暴れられたしね……」
それだけで。言い残しは終わりとばかりに音もなく光は霧散する
残されたドミトリイはどう言い訳しようか。と苦笑し、サングラスをポケットにしまった
612 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/02(日) 20:37:11.42 ID:Jz4NUtEI0
「あ、ああ。あああ……!」
「師匠……師匠!目を開けてください!」
倒れ伏すデカルトをお越し揺さぶる
クリスティーナの目の前には、腹から空いた穴に焦げた異臭を放つ老人の姿が
フランシーヌは既に、その身を四散させ木っ端微塵に散らばっていた
「嘘だ。私は貴方と決着をつけたかった。なのに……ランサー!」
「もう止めよう、クリスティーナ……多分、それよりも師匠さんの方を……」
「ふざけるな!これではもう……いや、私が倒すつもりではあったが!」
「これでは、悔やむに悔やみきれない……!」
ポタポタと、握った掌に涙が落ちる。その理由は師を狂気から救えなかった事だろうか?
いや、そんな殊勝な理由では無いだろう。自らの道を歩けなかった。それが堪らなく悔しいのだろう
「……ああ、それでこそ君だ。誰よりも自由に、誰よりも学を探求した女よ」
「な……その、声は」
「……目が覚めたよ。クリスティーナ。私の教えた最高の弟子よ」
「我が師、デカルト……!」
613 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/02(日) 20:39:12.26 ID:Jz4NUtEI0
心優しい、暖かな光のような声
デカルトの表情は、苦痛に歪みつつも晴れやかに。まるで憑き物が堕ちた様に澄んでいた
「な、大丈夫……なんですか。もうその傷じゃ」
「フランシーヌさ。フランシーヌが私に、少しだけ話す時間をくれた……この場は私の心に近い場所だからね」
言われて気付く。世界に張り巡らされた歯車は落ち、数式は透き通り消えていく
残されたものは仄かな光……漠然と、それでいて確固たる意志だけが空に灯されていた
「さて……君に講義はもう要らないだろう。まずは礼を。ありがとう」
「そそそ、そんな!私は一介の弟子として当然の事をしたまでで!」
「倒す気だったって言ってたじゃないか……」
「ああ、それと。私が君を恨んでいたというのは嘘ではない」
「…………っ」
そう呟く言葉に身体を固めるクリスティーナ
しかし、それを見たデカルトはふっと微笑みながら訂正を
「しかし、それは本当に……狂気に犯されねば発露し得ない程の、微かな感情だ」
「私は君に、ある種の敬意を抱いている。国に反発されようと、君に心配されようと、渡航の時期を早めたのも……」
「全ては君の為。私の全てを、君に教えたくなったからさ」
「そう、だったのですか……」
614 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/02(日) 20:39:40.11 ID:Jz4NUtEI0
「……行きなさい。クリスティーナ」
「君に必要なのは言葉ではないだろう?何をすべきかは、既に理解しているはずだ」
「進め!自らを征し世界を股に駆けたバロックの女王よ。その道に満足がある事を!」
「ささやかながら応援しよう。……さらば!」
デカルトからの激励が世界を、心を震わす
哲学を極めた賢人からのエールは、世界そのものからの祝福に等しい
クリスティーナ、そして貴方もその言葉を噛み締める。
「あの……ありがとう、ございました」
「……はい、それでは行きます。……師よ」
「……さようなら。やっと、言えましたね……」
世界が解れて、光の先に消えていく
二人は共に、世界が崩れるまでのその様を目に焼き付けていた
615 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/02(日) 20:42:09.92 ID:Jz4NUtEI0
【本日はここまで】
【次回は禍門VSアサシンを描写する予定です】
616 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2020/08/02(日) 21:03:58.80 ID:hyjvKXFNO
乙
617 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2020/08/02(日) 22:01:11.11 ID:qPDIYUlg0
乙
師弟の決着がランサーのものになるのは予想外だった、gj
618 :
◆6QF2c0WenUEY
[sage]:2020/08/11(火) 22:12:43.61 ID:RQSi7VJ40
【しばらく、こちらで反応しなくて申し訳ございません】
【お盆休み中には更新するつもりです。それまでもう少しだけ……必ず……!】
619 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/14(金) 22:30:07.96 ID:pniPS3Bg0
【なんとかお盆中には間に合った。明日夜7時に更新します】
620 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/15(土) 19:06:06.01 ID:nJa2KyxX0
【それでは更新】
【安価がないのでゆっくり進めていきます…】
621 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/15(土) 19:06:52.40 ID:nJa2KyxX0
「フッ!ハッ!でぇやぁあ!!」
「どうした!?狙いが逸れているぞ!」
「ムチャ言うんじゃねー!相手が小さ過ぎるんだよ!」
「キャスター。何とか出来ないのか?」
「ちょっとどうにも出来ない!ボクの魔術ってそういうの専門外だから!」
ひらりひらりと暖簾に腕押し。アーチャーの重厚な拳や蹴りは、風船の様にすり抜ける
嘲笑う様に周りを飛び回るアサシンは、小刻みにアーチャーを切りつけるが無傷のようで
「やりにくいわ。カツンカツンって、まるで鉄を突っついているみたい」
「そりゃそうだろ!オメーみたいなチャチな鎌で殺られる程、オレは雑魚じゃねーっての!」
「……言うまでもないけど、あいつボクじゃどうやっても勝てないんだよね」
「そうだろうな。あれは神代の守護兵器。お前が壊せたらどうしようかと思ってたぞ」
マリアの言葉に複雑そうな顔を浮かべる。その顔を見てか見ずか、前に躍り出る
「……では、キャスター。私はマスターを狩りにいくとしようか」
「はいはーい。……って、ならボクはどうすればいいの!?」
「私の補佐に回ってくれ。何、禍門の集も理解してくれるさ」
「本当かなぁ……」
困惑しつつも、死徒へと走りよるマリア
ため息をつくキャスターの前で、此方での死闘も佳境へと差し掛かろうとしていた
622 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/15(土) 19:07:47.33 ID:nJa2KyxX0
「……お父さん」
「何だ、アキラ!俺も今は手が……」
「アーチャーの、宝具の使用許可を。あれならば、アサシンを一撃で」
「駄目だ、規模が大き過ぎる!ここで宝具を開帳してしまえば街にも被害が起きる!」
「け、けど。アサシンの宝具の方が、被害が大きくなる……と、思う、デス」
憂午とアキラの譲らぬ意見は平行線を辿るだけ
未だ明確な着地点の見えない議論は、戦闘にも現れていた
「クソーっ!チクショーっ!せめて槍か犬がいてくれりゃあなあああ!!」
「犬?槍?物騒なお仲間がいるのね。機械人形さんには」
「オレは機械なんかじゃねーヨ!こう見えてもなぁぁーっ!」
アサシンからの煽りを受けて、アーチャーの拳が激しく唸る
だが、その結果は先程と同じ。ふわりと軽く舞い上がり、難なくその手を回避する
「だぁあああ!!何なんだよテメェ!」
「さっきからひょいひょい逃げ回ってよぉ!勝つ気あんのかテメェらはよぉ!ええ!?」
「もちろんよ。私達は動かなくてもいいの」
「だって、勝手に進んでくれるもの。焦る必要なんてないんだから」
623 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/15(土) 19:08:48.49 ID:nJa2KyxX0
「……ガ、ぐ、おぉおお……!」
「苦しいならもう止めておけ。今なら痛みだけは与えないと約束するぞ」
「何故……何故、何故!俺は、ただ……」
「生きたいだけ。なんて言える訳ないだろう」
「それだけで無数の人間に害を為す、お前は害獣と同じだ」
「違、違……俺は」
「同じだ……よ!」
心臓喰らいとマリアが交錯する
醜悪な肉の鞭と化した肉体にも怯まず。マリアの腕は無慈悲に貫く
幾ら吸血鬼と言えども、本来ならば貫いた腕もただでは済まない……
「そこでボクの出番ってワケ!エンチャントは得意中の得意だもんねー!」
マリアの両腕には風が渦巻き、手甲の様に形を為す
下級の宝具にも等しい威力。キャスターの施したエンチャントは、死徒の肉塊すらも穿つ
◆エンチャント:EX
概念付与。本来は作家や脚本家たちの所有するスキル、
……であるが、最古の語り部にして神官たるキャスターが
紡ぐ言葉はそれ自体が比べ物にならないほどの魔力を帯びている。
キャスターの場合、自然事象を宝具に変化させ強力な機能を追加する。
624 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/15(土) 19:09:55.10 ID:nJa2KyxX0
「……ゲホッ!ガッ!」
「わー。メリッサちゃん、大丈夫ー?」
「そんな、訳……ぐうぅ……!」
所変わって禍門邸。そこには横たわる少女と、それを遠巻きに眺める少女が
アサシンの影響下にあるメリッサを残った千呼が看病していた
と言っても、相手は英霊。何が起きるかわからない為、結界越しに話しかける程度だが
「ねえねえ、メリッサちゃんってさ、兄弟とかいるの?」
「今、そんな事を話してる余裕が……!」
「わくわく、わくわく」
此方の具合は完全に無視。千呼はキラキラと目を輝かせて答えを待つ
……感情を出したからか、少しだけ熱が引いた気がする。拒絶した所でまた来るのだろう
そう考えたら今話した方がいい。諦めた様に口を開く
「……兄と姉が一人。弟が一人、妹が二人」
「わ!びっくりする程いっぱいだ!でも魔術師の家で兄弟が多くていいの?」
「魔術師になるのは一人だけだ。他の兄弟は傭兵としての道を歩くはず」
「ほへー凄ーい」 「……聞いてたのか?」
あんまりにも呑気な返答。緊張感の欠片もない
思わず身構えたメリッサも毒気を抜かれて呆気にとられる
「でもいいなー。仲いいんでしょ?」
「……仲が悪いのか?そうは見えないが」
「うーん。悪いって言うか、何て言えばいいんだろう」
「アキラちゃん、私に心を開いてくれないって言うのかな。なんか壁があるみたい」
ぽつりと呟く千呼の顔は、普段の底抜けの明るさではなく姉としての表情を映す
妹は好きだ。だけど、その妹は自分の事をどう感じているのかがわからない……
625 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/15(土) 19:10:57.58 ID:nJa2KyxX0
「……殴り合う、しかない」
「え?殴るの?アキラちゃんを?」
メリッサからの突飛な提案に、目を白黒させる
対して提案した本人は、千呼のその態度に怪訝な顔を浮かべて
「おかしい?互いの本音をぶつけ合うには最も有効な手段だと思うけど」
「私も弟相手によくやる。特にニンジンを誰が食べるか決める時には」
「ニンジン……嫌いなの?」
拳を固めて天を睨む。その仕草は勇ましいが、言ってる事は何とも可愛らしい
そのギャップに千呼も脱力したのか、あははと笑いながら手を叩いた
「うん……ありがと!今度、アキラちゃんとしっかり話し合おっかな」
「メリッサちゃんも、早く良くなってね!」
「……どうすれば?」
話して満足したのか、アキラとどう向き合うか決めたのか
パタパタと嬉しげに去っていく千呼をメリッサはただ見ている事しか出来ず
「……ふぅ。面倒な奴だった」
「けど、身体が軽くなった?……まさか」
目を閉じ、身体の力を抜いていく。
すぐに闇が包み込み、意識は遠くに消えていくのだった
626 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/15(土) 19:11:42.04 ID:nJa2KyxX0
マスター同士の激戦の横で、徐々に状況は動いていく
心臓喰らいが追い込まれる裏、令呪の力も切れてきたのか回避しきれず掠めてくる
補助に回ろうにも、二騎の英霊がそれを許す筈もなく。アサシンは今、窮地に立たされていた
「……ねえ。貴方達はどうして死んだの?」
「ああ?そんなの聞いてどうすんだ。弱点でも突こうってか!?」
「答える必要は無い……よねっ!」
ふいに、アサシンから唐突に問い掛けられる
勿論二騎は聞く耳を持たず、熾烈な攻撃の手を緩めない
「どうして戦うの?死ねば楽になるのに、死ねば何も考えなくてもいいのに」
「また後悔するだけなのに、辛い思いをするだけなのに、戦う必要があるのかしら?」
それでも、話は勝手に進めていく。ひらり、ひらりといなす様に
まるで答えを掴ませないかのように、アサシンの言葉はふわふわと
「だーーーウッゼェ!何で戦うのかだとぉ?」
「んなもん、オレがくたばってから後悔する事が出来たからに決まってんだろうがぁーー!」
だが、アーチャーが言葉をを打ち貫く。豪放な声が響き、伸ばした腕は遂に少女を掌握する
掌の中に囚われたアサシンは、尚も動じた様子は無く。平然と兵器の瞳を直視していた
627 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/15(土) 19:12:40.95 ID:nJa2KyxX0
───“勝手に産みやがったのに、その癖勝手に殺すだと?”
───“舐めてんじゃねえぞ。人類を!”
「……何も、残せなかった」
脳裏に過るのは、怒りに燃えた人間だった頃
──“皮は青銅に、血潮は灼熱に。許容量を超えるならば、その都度肉体の拡張を”
──“魂は不要である。人格は不要である。ただ兵器として最善であればよい”
「……何も、残せなかった」
脳裏に過るのは、神に肉体を奪われた頃
──“くぅ、くぅ……あら?貴方は?私のお友達になってくれるの?”
──“貴方は頑張りやさんですね。よしよし。アメは……食べられない?”
──“では……よしよし。ふふふ。また肩に伸せて、日向ぼっこをしましょう”
「……何も、残せなかった……!」
脳裏に過るのは、ある女性と暮らしてきた頃
憤怒に、絶望に満ちていた記憶でなく。穏やかな日向の様に安らぎに満ちた平穏な頃
だが……それも、残せなかった。残したかった姫すらも、最古の略奪船によって奪われた
628 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/15(土) 19:14:22.74 ID:nJa2KyxX0
──“クソっ、何だあのデカブツは!?”
──“あんな奴ヘラクレスさえいれば……おい船を壊すつもりか!?距離を取れ!”
──“ハッ、ケツ捲って逃げるつもりか?情けねえ。ヘラクレスがいなきゃ何も倒せねえか!”
──“黙ってろ!ええいアスクレピオス、奴に弱点はないのか弱点は!”
──“何だ、患者か?……おい、僕を医療行為以外で呼ぶなとあれ”
──“ならさっさと答えろ!一番人間の身体に詳しいのはお前だ。なんでもいいから何か弱点を思いつけ!”
──“……なんだ、青銅人か。機械の身体に興味はないな。しかも神の血が流れている”
──“なら、それを抜けば機能を停止するかもしれませんね。それなら私でも出来そうです”
──“ほう?可愛い可愛いメディア。君があの超巨大怪人を、私の為に潰してくれるんだね?”
──“は、はい!……そーれ。眠くなーれ、眠くなーれ……”
629 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/15(土) 19:15:12.79 ID:nJa2KyxX0
「……今思い出してもムカつくぜ。あのクソ野郎共にも復讐してえけど」
「けれどよお!それよりもムカつくのはよお!守れなかったオレ自身なんだよ!!」
業火の如く。叫ぶ声は地の底から吹き出す溶岩すら凌駕する熱量を持って
「眠らされたのも許す。弱点をブチ抜いたのも構わねえ。けど、けれど……」
「あの姫様を奪った事だけは!絶対に許さねえええええええ!!!!!」
アーチャーの燻る怒りは、遂に臨界点を迎る
身体は真紅に燃え盛り、熱は離れている憂午やアキラの肌すらも焼いていて
「だから……オレは聖杯を獲る!誰を蹴落とそうが、誰をブチ殺そうが!」
「あの姫様を救う為に……オレは戦う!死んでも死にきれねえんだからなあぁあああ!!!」
掌から炎が……否、神の血潮が吹き上がる
超高温の紅蓮がアサシンを包み込む。その矮躯は容易く灰となって消えていく……
「……“神の血潮を焚きつけろ(イーコール・タロス)”」
「マジムカつくゼ。神の力を使っちまうとはな」
630 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/15(土) 19:15:51.75 ID:nJa2KyxX0
【本日はここまで】
【VSアサシンは、もうちょっとだけ続くんじゃ】
631 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2020/08/15(土) 19:16:01.41 ID:hSy4i4V4O
乙
632 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2020/08/15(土) 23:10:44.41 ID:y3O6OSas0
乙
633 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2020/08/17(月) 02:46:34.97 ID:TNuzPQVI0
乙
634 :
◆6QF2c0WenUEY
[sage]:2020/08/23(日) 22:49:11.14 ID:zz6QB8os0
【すみません。今日はお休み…】
【三日以内、三日以内には絶対にまとめます……!】
635 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/25(火) 22:04:59.21 ID:ykIm7mR10
【それでは、再開していきます……】
636 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/25(火) 22:07:41.37 ID:ykIm7mR10
パチパチ、パチパチと空気が焼ける音が響く
アーチャーの周囲は瞬時に焦げ付き、踏み締める大地は赤熱して溶けかける
マスターであるアキラですらも、咄嗟に魔術による耐熱を施さねば危険だっただろう
「これで終わりだ。諦めろ、心臓喰らい」
「あ、あぁ……あさ、シン」
そして、アサシンが消滅した事により完全に無防備となった心臓喰らい
最早、誰もその足を阻む者はいない。一歩一歩を慎重に踏み込んでいく……
「……悪く思ってくれ。人を害する死徒を滅ぼすのが私の仕事だからな」
『ええ、思う存分悪く思うわ。貴女のせいで、マスターが死んじゃうもの』
「……何?」
「この声は……!っ、『下がれ』!」
間一髪。いち早く反応した憂午の声が、マリアを強引に後退させた
先程までマリアがいた場所に突き刺さるのは、歪んだ形状の鎌の尖端……
「うぇ!?どういう事!?ちゃんと燃え尽きたはずじゃ……!?」
「んなバカな……!オレの手の中で、確かに潰したはずだろうが!」
誰もがその場を注視する。そこに立っていた者は、気配を遮断する事もなく存在していた
「……こんばんは。ついさっきぶりね」
637 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/25(火) 22:08:25.25 ID:ykIm7mR10
ぺこり。と首を傾げる少女。その姿はとても愛らしくて
だが、どこか歪な印象を受ける。マリアはその少女の名を口にした
「アサシン……!」
「ふふ、どうしたのかしら?さっきまでここにいたじゃない」
アサシン。その身は握り潰され、超高温により灰となった少女がそこにいた
今、目の前でくすくすと愛らしく笑う姿と先程までの無惨な姿が重ならない
まるで何も無かったかの様に平然としている……
「成る程……“早すぎた埋葬”か」
「死亡誤認、仮死蘇生。それに関連した逸話を持つ英霊なら消滅しても復活出来るか……」
淡々と仮説を述べるマリア。それが正しいかを示すように、くすくすと笑う声が響く
◆早過ぎた埋葬:A
死亡したと誤認され、生きながら墓に埋められたことから。
死亡しても一度だけ、任意のタイミングでリレイズできる。
死亡した時点で一旦マスターとのパスは断たれ、アサシンは消滅したと偽装される。
但し火葬された場合、このスキルは発動できない。
「アーチャー!ちゃんと燃やしてよお!」
「だああ!あれ厳密には炎じゃねーんだよ!」
「ええいうるさい!来るぞ!」
ぎゃいぎゃいと騒ぐ視界の隅。舞い戻った少女は的確に首を狙い釜を振るう
その見た目とは裏腹に、俊敏な動きで的確にそれを回避する二騎
しかし、何故か先程の戦闘よりも力が発揮出来ていない
まるで土の中にいるかの様に、その動きは鈍重に、緩慢になっている
638 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/25(火) 22:09:25.10 ID:ykIm7mR10
「ぐっ……!なんじゃこりゃあ!?」
「身体が重い〜〜〜!!」
「これ、は。お父さ、ん……?」
「重圧……?……!そうか、まさか、奴は!」
明らかに動きが鈍い二騎に疑問を抱く
アキラからの問いに何かを悟ったのか。憂午は悔しげに口を噛んだ
そしてアサシンは得意気に、嗜虐的に唇をつり上げて微笑んで……
「そうよ。私は“蘇った死者”。そして“生者を食らう吸血鬼”」
「なら、貴方達は?……決まってるじゃない。私に殺される、“哀れな被害者”でしょう?」
『霧夜の殺人』、というスキルが存在する
殺人鬼……命を奪う者という大前提。被害者の先に傷をつけられる加害者に与えられた特権
蘇った死者は、夜毎に人間を襲い、喰らう……。その法則は英霊といえど、否
英霊だからこそ、より鮮明に影響を受ける……
「……アサシンも、動きが、鋭く」
「それだけではない。アーチャーもキャスターも徐々に押され始めている……!」
639 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/25(火) 22:10:26.00 ID:ykIm7mR10
……食人鬼に喰われるのは、必然的に弱い者
その絶対のルールは、例え神話の兵器であれ、巫女であれ従わねばならないもの
兵器で怪異は吹き飛ばせず、巫女の祈りは届かない。悪夢が此処に顕現していた
「クソッ!こんな奴にオレが負ける訳が……!」
「負けるわよ?貴方達は被害者。それは絶対に覆す事の出来ない真実」
「蘇った私に蹂躙される、可哀想にね。哀れに食い散らかされるの。当然ね」
アーチャーはアサシンの機敏な動きに翻弄され続ける。その度に身に付く傷は増えていって
幸い、キャスターは狙われていない。ちまちまと回復の魔術をかけて補佐しているが……
アサシンの猛攻は激しい。一時の気休めにしかなっていないのが現状だ
「うげぇ。冥界に帰ってくれないかナー」
「言ってる場合か馬鹿!何とかしろ!」
「何とかってどうするのさ!ボクのエンチャントは市街地では不向きなんだよう!」
マリアも心臓喰らいに近付き、先んじて始末を狙うものの、それすらアサシンに阻まれる
まるで身体を分かつかの様に。ひらひらと舞っては斬りかかり足を止めさせて
「う〜ん、う〜ん、う〜〜〜ん……」
「……あ!もしかしたら何とかなるかも!」
640 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/25(火) 22:11:53.83 ID:ykIm7mR10
場違いな程に軽い、明るい声
怪訝そうな顔をする禍門の親子。マリアは頭を掴みながら、再度確認する
「……本当か?」
「うん。多分。きっと……」
「そのきっとはなんだ。ふざけるのは止めろ」
「いやイケるんだって!ただ、ちょっと……」
「ちょっと?」
「うーん……アーチャー。一度死んでくれる?」
「は?」
もごもごと口ごもるキャスターから、突然投げられたのは意味不明な内容だった
意味も理由もわからない問いかけ。必然、その視線は冷ややかなもので
「そんな目で見るのは止めてよ!ボクは真面目な話をしてるんだから!」
「いや意味わかんねーし。なんて?」
「だーかーらーいっぺん死んでみる?って……あ痛い痛い痛い!?」
「……いい加減その内容を話せ。さもなくば令呪で自害させるぞ」
「そこまで!?……わかったよ、もう!」
持てるありったけの魔力をかき集めて、周囲に撒き散らす
狙いも何もない雑な攻撃。アサシンもこれには一時的に引く他は無く
その隙に禍門の陣営は集合する。キャスターの考案した一発逆転の策を確認するべく……
641 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/25(火) 22:12:19.57 ID:ykIm7mR10
「……ね?これなら何とかなりそうでしょ?」
「確かに、キャスターの推測が、正しければ」
「アサシンを何とかする事が出来る……か」
「だけどよぉ、リスクがデカ過ぎんだろ!下手すりゃここで全滅すんぞ!」
「エーデルワイスやバーサーカー。我々に味方する陣営はいるにはいるが……」
「彼等はまだ子供だ!彼等に責務を押し付ける事は出来ない!」
「……だよねえ」
語気を荒げる憂午に、知っていたと言いたげに肩を竦める
どうやら、禍門はキャスターの出した案を否定的に見ている
言葉には出さないが、却下だと言いたげに顔をしかめる憂午……だったのだが
「なら。私が、令呪を使います」
「最悪でも、復帰は出来る。アサシンを倒す事は可能……デス」
アーチャーのマスター、アキラが強く発言した
切り札である令呪を使用すると。かつての大人しい姿からは想像出来ない程ハッキリと
「アキラ。お前……」
「アーチャーも、それでいいデス」
「それでいいなんて一言も言ってねーだ……」
「アーチャー」「ハイ」
「……えーと、やっちゃっていいんだね?」
「ああ。禍門からの了承も得た、私の魔力もくれてやる」
「……“汝がマスター、マリアが令呪を以て命ずる”」
「“宝具を必ず成功させろ……いいな!”」「オッケー!任っかせといて!」
642 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/25(火) 22:13:22.94 ID:ykIm7mR10
「……さて、それでは皆様お立ち会い!」
喧騒が引く頃合い。キャスターが跳ねる様に前に躍り出る
その手には円盤の様な……何らかの文字の刻まれた、白く滑らかな石の盤
「“此より語るは女神の賛歌。天に座したる優雅な女王よ、ボクの祈りを聞き届けたまえ!”」
「“戦の理すらもねじ曲げ、過去も未来も思うがまま!貴女の力を今ここに!”」
「“行くぞっ!『雪花石の奉納円環(ニン・メ・シャルラ)』!廻れ廻れ廻れ廻れーっ!”」
勢いよく、威勢よく。キャスターは円環を回し始める
グルグルグルグル、目にも止まらぬ速さで流転する石盤を、必死に制御していた
その度に火花が散り、石からは今にも壊れそうな、悲痛な悲鳴が聴こえていて……
「……ここだっ!とぉおぅっ!!」
しかし、それにも終わりが訪れる
キャスターが強引に円転を止め、石盤からは魔力が拡散していった
643 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/25(火) 22:14:23.94 ID:ykIm7mR10
「ぐわぁああーーーっ!!」
「アーチャー!?」
「……あら?」
結果が訪れたのは突然だった。先程まで何ともなかったアーチャーが倒れ伏す
急に起こったその現象に最も驚いていたのは、禍門のマスターであるアキラ……ではなく
「……やってくれたわね」
「アサシ、ン。何が、何が……」
「“蘇生されたという事実が無くなった”わ
「……やった!成功した!」
「全く、冷や冷やさせてくれる。……だが、これで貴様はただのアサシンだ」
「人間を襲う殺人鬼でも、蘇生した吸血鬼でも無い。これでお前を畏れる理由は無くなった」
……キャスターの宝具の真価は『結果の改編』
因果率すらも操りかねない程の強力な力を秘めるが、その使用条件も並みではない
キャスター自身の過去には干渉出来ない。結果を変えたとしても無意味になる場合もある
そして、変えられるかはやってみないとわからない……
「今回はドンピシャだったってワケ!……令呪が無かったら危なかったけどね」
『キャスターの宝具を開示します』
◆『雪花石の奉納円環(ニン・メ・シャルラ)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人
キャスターの生涯が刻まれたアラバスター製の円盤。
世界で初めて一人称で書かれた物語でもある。自動で情報を記す日記宝具。
その真価は既に起こって出来事をキャスター自らが書き直すことによって初めて発揮される
『因果の改竄』――即ち、過去の確変に他ならない。戦争の結果でさえ容易く改竄する
この宝具により、キャスターはアッカドの帝王ナラム・シンに九度の勝利を齎した。
故に使用回数は九度が限界であり、またキャスター自身が関わった事象の改竄は不可能である。
644 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/25(火) 22:15:06.70 ID:ykIm7mR10
「……さて、こいつは燃やせばいいんだな?」
「ああ。ゾンビは焼却と相場は決まっている」
「後始末は俺がする!やれ、アーチャー!」
「おっしゃあ!メッチャメラメラだ!食らえやオラァ!」
全身の神の血(イーコール)を燃焼させ、赤熱する肉体で周囲を破壊する
アーチャーの触れた、踏んだ、掴んだモノには炎に包まれ、たちまち周囲は火の海に
……本来、英霊にただの炎は恐れるに足らない。しかし、これは神の血から産まれた炎
「アサシン……!令、令呪を以て」
「駄目ね、逃げられないわ。例え、ここで逃げても勝てないもの」
何の表情も無く答えるアサシン。既に戦闘意思を失ったのか、鎌はとうに消え去っていて
「……ねえ、お願いがあるの」
「我々が聞くと思うか?」
けんもほろろに突っぱねられる。しかし、それすらも意に介さずに話し続け
「私達はここで終わり。認めるわ」
「だから、せめて。最期くらいはそっとしておいてくれないかしら」
「嘘つけ!逃げるつもりだろ!」
「そうね。そうかも。そうしようかしら?」
「うわー多分逃げる気だ……」
645 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/25(火) 22:16:24.77 ID:ykIm7mR10
「……はあ。仕方ない」
「マリアさん!?見逃すのですか!?」
全員からの否定を遮り、マリアのみがアサシンの言葉へ頷いた
……頭を抱えながら、心底嫌そうに
「そうじゃない。……おい、心臓喰らい」
「お前が何を目的に人を殺してたかなんて知らない。だが……」
「信じてやるよ。せめていい最期になる事を」
「ぐ、ぬぬ……ここで死徒を見逃す等……」
「そうだそうだ!ここでブチ殺してや……」
「お父さん、アーチャー……帰ろう」「な!?」
「貴女は、許してくれるの?」
「許す、とか。許さない、とか。私はよくわからないデス。けど」
「きっと、先輩だったら。許す……から」
たどたどしく。それでも確かにアキラは許すと断言した
思い浮かべた人物は、きっと許すと確信していたから
「ありがとう。それでは、いい夜を」
ぺこりと一礼。上げた顔には満面の笑みを
心臓喰らいを抱き抱え、炎の中へと消えていく
646 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/25(火) 22:18:09.25 ID:ykIm7mR10
「……あぁ。アサシン」
「俺は、俺は……死ぬ、のか」
心臓喰らいはアサシンの腕の中で問い掛ける
既に意識は朦朧としているのだろう。ボコボコと肉は痙攣し、人のカタチすら保てていない
「そうね、死ぬわ。良かったわね」
「良く、ない……!俺は、俺は……っ」
「……マスター、貴方は最初から死んでいたの。死徒になったその時から」
ゆっくりと、まるで子供をあやすかの様に心臓喰らいに語りかけるアサシン
その言葉に何か感じるモノがあったのか。その顔は血を、肉を喰らう怪物のものではなく……
「……アサシン。聞いていいか?」
「アサシンの宝具なら、町一つを簡単に蝕む事が出来ていただろう」
「それなのに、最期まで……最期すらもそうしなかった。それは何故だ?」
かつて、心臓喰らいと恐れられた男はそう呟く
アサシンは一瞬だけキョトンとして。クスクスと微笑みながらこう答えた
「だって……無差別に人を殺したら」
「貴方は、本当に怪物になっちゃうじゃない」
それだけ。たったそれだけの理由だと話して。二人は炎の中に消えていく。
アサシンの後ろ姿は煙の中に。崩れ落ちる瓦礫の下にと潰れていった
647 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/25(火) 22:18:43.26 ID:ykIm7mR10
【本日はここまで……】
648 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2020/08/25(火) 22:40:52.35 ID:MmDG5b5pO
乙
649 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/28(金) 22:11:01.88 ID:YvED4fJF0
【それでは更新します……】
【目標としては、土日で一区切りつけて九月上旬には完結を目指す所存です】
【ちょっとだけコンマ判定や安価あるかも。お気楽にどうぞ】
650 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/28(金) 22:12:44.02 ID:YvED4fJF0
「……確かに、アサシンは既に消失している」
「それと同時に、マスターである死徒の死亡も確認済みだとも」
二つの激戦から一夜明け、教会の元には四人のマスターと関係者が集っていた
アーディー。アキラ。マリア……そして、貴方とガイスロギヴァテスのドミトリイ、憂午
彼等に現状を伝えたのは監督役のロベルト。
彼の手にある霊気盤は、霊子の反応から消滅したのかがわかるらしい
「どうやら、アサシンは約束を守った様だな」
「そだねーボクは疑ってたんだけど」
「これで、四騎だよな。ライダー、アサシン、ランサーに……」
「私ではないバーサーカー。半分は脱落したという認識で構わないな?」
クリスティーナの毅然とした発言に遅れて頷く貴方
昨夜のデカルトとの死闘が尾を引いていないかと心配していたが……杞憂だった様だ
「さて、此より戦争に戻る訳だが……私から提案がある」
651 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/28(金) 22:13:20.09 ID:YvED4fJF0
「……提案?ロベルトさんが?」
「エーデルワイスの関係者である者が、何故」
「そうとも。君達四人のマスターへ、私からも提議させて貰おう」
監督役からの発言に、明らかに怪訝そうな表情を浮かべるマスター達
冷ややかな視線も意に返さず。つらつらとロベルトは提言した
「既に、この町には数多くの暴虐が翻された」
「ライダーのマスター、アサシン。彼等の残した爪痕は深いものと思われる」
「うぐっ」
新重の起こした騒動が頭を過る。本人にはしっかりと反省する様に叩き込まれたそうだが……
「そこで私はこう考える。これ以上の戦闘は無意味であり、無駄であると」
「つまり、我々に令呪を以て自害を強要させろと?それこそ真に無駄な事」
否定を吐き捨て、軽蔑するクリスティーナ
他の英霊はともかく、彼女にとって令呪程度は何の足枷にもならないだろう
彼女からのにべもない返答にロベルトは、その言葉は予想していた。と言いたげに顔を歪めた
「……そうではない。私の真意は」
「『正当なる決闘によって、聖杯の所有権を決めるべき』だと言う事だよ」
652 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/28(金) 22:13:59.99 ID:YvED4fJF0
「決闘?」
「それは……私達四陣営で、一騎討ちを行え。という事ですか?」
「いかにも。町に被害を一切出さず、我々の内で雌雄を決する。理想的な提案では?」
……確かに、市街地の戦闘はどれ程気を払っても被害は起きる
元より、貴方は町を脅かす危険と戦う為に聖杯戦争に身を投じたのだ
「ハイハイハイ!異議あり異議あり!それだとボク達が圧倒的に不利じゃんか!」
「正直、私はこいつを自害させね聖杯を譲ってもいいんだが」「何でボクが!?」
「それに、僕とバーサーカーは既に令呪を二画使っている。このままではアーチャーの勝ちが決まった様なものだ」
ぴょこぴょこと跳ねるキャスター、静かに手を上げたセイバーから抗議の声が上がる
二人の言い分は尤もだ。この提案は最善かもしれないが、明らかに公平性を欠いているもの
「あ?ならオレが優勝って事か!?これで聖杯はオレのモンだよな!な!」
「……実際、勝てるのか?バーサーカー」
「……三人でかかれば、あるいはと言った所か」
もう聖杯を取った気でいるのか、アーチャーは一人で盛り上がる
冷静に戦力を分析するクリスティーナだが、仮に三騎が結託すれば当然激しく抵抗するだろう
しかも、これは仮の構想。実際に戦うのは自分ただ一人……
653 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/28(金) 22:15:04.80 ID:YvED4fJF0
「………………むぅ」
「マスター。言うならビシッと決めるんだ」
「わ、わかってるよぉ……!もう!」
ぐいっとセイバーに後押しされ、皆の前に出るアーディー
意を決したその表情は毅然と。三陣営に対して宣言した
「え、えっと……あの!エーデルワイスは!その決闘をお受けします!」
「ですが!天使を信奉する我が身としては一方的な蹂躙は許しがたい!」
「故に……えっと、センパイ……じゃない!バーサーカーのマスター!」「お、おう」
「私と……同盟を組んで……ください!」
「なっ!?」
差し出された手を凝視する。小さく震えながらも、確かに貴方に向けられた手を
「……いいのか?俺達で」
「言ってやるな。……マスターの気持ちを察してくれ」
「私は特に言う事は無い。セイバーは戦力として申し分の無い英霊だ。ふふふ……」
「笑わないでってば……もう」
……なら、その手を払う理由はない。不安を振り切る様に力強く。頷いて彼女の手を取った
「……ああ!宜しくな、アーディー!」
「あっ……は、はいぃ……」
654 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/28(金) 22:16:46.35 ID:YvED4fJF0
「…………先、輩。その、私、も」
「あーーーっ!!ズルイズルイズルイ!ボクも同盟やるー!」
「まあ、私も彼に借りがある。どうだろうか、バーサーカーのマスター君」
キャスターからのタックルに吹き飛ばされ、頭を強かに打ち付ける
起き上がった時に見た光景は、ギリギリと首を締め付けられて、腕をブンブン振り回す彼女の姿だった
「え、まあ俺はいいっすけど……アーチャーはいいんすか?」
「はー???オレもいいんですが?寧ろ丁度いいハンデだオラァ!」
「ふむ……では、禍門のマスターよ。問題は無いかな?」
「アーチャーに対する、セイバー、キャスターにバーサーカー」
「彼等との決闘を執り行う事。ここに了承するかね?」
「あ、私、は」
「いいだろう!古来より坂松の土地を任された者として、外様の者には負けん!」
「こんな雑魚共、束になっても怖かねえ!倒せるモンなら倒してみやがれ!」
「……………………はい」
モゴモゴと口ごもるアキラ。何か言おうとしたのだろうか?
しかし、結局は二人の圧に押し負けたのか決闘を受諾したのだった
「後は、日程を決めねばなるまい。日付は……」
12345:今日の夜だよ
67890:明日の夜だよ
↓1
655 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2020/08/28(金) 22:28:55.45 ID:zWjcIoico
遅れました
656 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/28(金) 22:34:05.88 ID:YvED4fJF0
5:今日の夜
「……じゃあ、決闘は今夜か」
「よーし!ボク達で聖杯ゲットしちゃおう!」
六人で膝を合わせて会議を始める。議題は打倒アーチャーだ
ちなみに、場所はアーディーの家のリビング。それなりの広さに六人はやっぱり多かった
「まず、確認すべきは仮想敵であるアーチャーの情報だろう」
「奴の宝具、真名……わかるモノは多ければ多い程有益になる」
毎度の様にクリスティーナが切り出し始める。議論が好きなのか、その口調は心なしか弾んでいる
「そう言えば、センパイ達はアーチャーと戦った事は」
「無いな……だから、実際に戦った、共闘した二人の話が聞きたいんだ」
セイバーとキャスターは、実際にアーチャーの戦闘を見た事がある
時間の無い今、頼れるのは二人の情報だけだ
「……セイバー、どう?」
「詳しくはわからないかもしれない。何せ、奴は手を抜いていた印象があった」
「頭脳労働はお前の担当だ。頑張れ頑張れ」
「もっと頑張ってほしいかなー!!」
【どのくらい情報あるの?】
123:ちょっとよくわからないですね
456:多少は
789:核心に迫るレベル
↓1、2
657 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2020/08/28(金) 22:35:05.88 ID:/suVtEmV0
あ
658 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2020/08/28(金) 22:35:21.99 ID:zWjcIoico
そりゃ
659 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/28(金) 22:47:48.08 ID:YvED4fJF0
8、9:勝ちの目が見えてきた
「……奴は、恐らく真の姿を隠している」
「どういう事だ? 変身とか、巨大化とかするのか」
貴方の頭にパッと思い浮かんだイメージを口に出す
子供の頃見た番組で、ヒーローは変身や巨大化するのはよく見た記憶が残っていた
「そうだ。……知っていたのか?」
「いや、適当に言っただけ……」
「僕の戦ったアーチャーは、もっと巨大な姿をしていた。本来の体積はあっちなのだろう」
「巨大化……つまり、巨人かそれに類する存在という事になるな」
「あ、巨人で思い出したんだけどさ。アイツの身体って鉄みたいでしょ?」
「そうだね……てっきり、鎧でも装着していたのかと思ってたんだけど」
「それがさー。アーチャーの身体は青銅で出来てるんだ」
……青銅の肉体を持つ巨人。それだけでもかなり真名に近づけそうだが
「……イーコール」
「イコール?マリアさん、どうかしました?」
「いー、こー、る。だ。アーチャーが炎を放つ時に叫んでいた言葉」
「掛け声……じゃないよな」
「知っているか、マスター。イーコールとは神の血潮を意味する単語」
「そして、今まで出てきた情報から、奴の真名は判明できる」
「私達の突破口もな……!」
クリスティーナの発言に周りがどよめく
アーチャーの真名、そしてその突破口とは何の事なのだろうか?
思考を巡らせる。まずはアーチャーの真名からだ
【アーチャーの真名は?】
↓1〜3の中で正解があれば。無くてもそのまま進行します
660 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2020/08/28(金) 22:58:04.61 ID:dy6oFHqVo
クレータ島の守護者 タロス
661 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2020/08/28(金) 23:02:34.88 ID:LJDd9uSK0
タロス
662 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/28(金) 23:13:47.33 ID:YvED4fJF0
アーチャー:タロス 正解
「……タロスか!」
「そっか、クレタ島の守護神……!」
ギリシャ神話にて登場する青銅の巨人。王妃を守護する為にその身を捧げた防衛兵器
千の槍、猟犬と共に王妃を狙う者を阻んでいたが、最期にはアルゴノーツ……に付いてきた魔女によって破壊された
「確か、踵の詮を抜かれた事で死んだんだ。もしかして……!」
「そうだ。アキレウスへのアキレス腱の様に、肉体に弱点があると見た!」
三騎の英霊を以てしても届かない強大な相手
暗中模索の真っ只中で、確かな一筋の光明が差し込んだ
「だが、それには奴に本気を……巨大化させねばならないぞ?」
「そこまで追い込むのは厳しいねー。あ、ボクは眠りの魔術は使えないから!」
だが、当のキャスター陣営からは否定的な声が挙がる
神話での死因である魔女、メディアの役割を彼女に任せるのは厳しそうだ
意気消沈するって貴方とアーディー。……対称的に、セイバーは妙案ありげに頷いていた
「……僕に、少しだけ考えがある」
「サーヴァントは引き続き僕と打ち合わせを行おう。マスター達は……」
「……休息を取ってほしい。恐らく、明日が正念場だろうからね」
「3P!3Pだね!?」「違うからっ!」
……とにかく。作戦はセイバーが主導して考えるらしい
マスターであるマリア、アーディー。貴方は体を休める為に各々休憩を取るのだった
663 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/28(金) 23:14:48.83 ID:YvED4fJF0
【本日ここまで。次回はVSアーチャー】
【明日は早めの時間から、ぶっ通しでやる予定。安価は無いのでごゆっくりどうぞ……】
664 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2020/08/28(金) 23:19:20.52 ID:zD5QcTkfO
乙
665 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/29(土) 19:45:12.69 ID:Axl0VCFd0
【(普段より)早い時間更新になってすまない……】
【8時からゆっくり更新していきます】
666 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/29(土) 20:02:33.95 ID:Axl0VCFd0
「……アキラちゃん」
「…………………………。」
「アーキーラちゃん!」
「……っ。お、お姉、ちゃん?」
約束の刻限まで後僅か。アーチャーのマスターである彼女は静かに時を過ごす
集中からか、姉の声は届かず。無線イヤホンを引っこ抜いてようやくその存在に気がついた
「あ、この曲私も好きー。アキラちゃんもこういうの聴くんだね!」
「……余計な、お世話、デス。返して」
流れていたのは巷で流行りのアイドルソング
彼女達と近しい年齢の少女達の、華やかな歌声が耳に心地いい
意外と好きなんだ。と妹の好みに驚きつつも、イヤホンは片耳から外さなかった
「瞑想ってやつ?集中して勝つぞーって気合い入れてた?」
「……邪魔。しないで、下さい。姉さんには、関係ない……!」
キッと睨まれながらも、その顔は飄々とした態度を崩さずケラケラと笑う千呼
「でも懐かしいね。昔は二人で歌とか歌ったのに」「…………っ」
667 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/29(土) 20:05:54.19 ID:Axl0VCFd0
「……どうして、姉さん、ばっかり」
「?」
千呼の言葉に反応したのか、アキラは辛そうに吐き捨てる
「私、だって……歌い、たかった」
「姉さんみたいに、キラキラしたかった……!」
「アキラちゃん?」
「なのに、私、は。後継者だから、って。魔術ばかり、呪術の事ばかり」
「どうして、私、が……私だけ、が……」
「歌っちゃ、ダメ、なんですか……」
吐き出す言葉は絞り出す様に。途切れ途切れになりながらも、確かに疑問をぶつけてくる
……どうして歌ってはいけないのか。と
「……そんな事、無いよ」
「………………あるん、デス。私は、禍門の魔術師だから」
「だから、庶務くんにも言えないの?」
「……っ!先輩は関係ないじゃないですか!」
「あはは。ごめんね!でも今はハッキリと言えたじゃん」「それは、姉さんが!」
「だから、きっと大丈夫だよ」
「勝っても、負けても!きっとアキラちゃんは大丈夫!」
「全部が終わったら、一緒に歌お!ね!」
「……行って、きます」
「見てて、姉さん。私は、勝ちたい」
「マリアさんにも、アーディーちゃんにも……先輩にだって」
刻限は来た。妹は戦場に向かい、姉は窓から来訪者を覗き込む
禍門邸の敷地内。三騎の英霊は既に臨戦態勢を整えていた
668 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/29(土) 20:08:27.35 ID:Axl0VCFd0
「……ふぅ。よし!」
「マスターは何もしないだろう。必要ないぞ」
「気分の問題だから!」
夜が始まり、気持ちも昂る
今回の聖杯戦争で最大規模の戦闘が、今まさに起動せんと肌に伝わる
「……アキラ!何をしていた!?」
「少し、集中を。……先輩」
「私は御三家として、そして、後輩として、貴方に勝ちたい……いや」
「絶対に、勝つ。……デス」
「俺もだ、アキラ。……必ず、倒すからな」
短い言葉を交わし合う。それだけで全て伝わると確信した二人は背を向け、元の位置に戻る
勝っても負けても恨みっこ無し。正々堂々と、貴方/アキラを倒すと宣言して
「……では、やるぞ。アキラ!アーチャー!」
「応よッ!くたばりやがれーーーっ!!」
669 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/29(土) 20:11:08.13 ID:Axl0VCFd0
青銅の巨人が吠え猛る。同時に三騎へと容赦の無い攻撃が落とされる
降り注ぐは熱と瓦礫。先日の戦闘で破壊された家屋の一部を禍門が預かっていたのだ
「ちょ、私達まで潰す気!?」
「こんなのアリなの〜〜〜!?」
「とにかくここは一度下がろう!アーディー、マリアさん!」
あまりの情け容赦の無さに、後方にて指揮を執るはずだったマスターも危険に晒される
一時的に、戦線から遠ざかる。その間、英霊達はセイバーを筆頭として立ち向かっていた
「……こうなる事は予想していた。この戦闘は、僕達の力で勝つしかない!」
「だがどうする?奴の耐久は堅牢だ。私の剣はおろか、貴様の砲弾やキャスターの魔術ですら傷がつくかどうか」
「だから弱点をつこうって話だったでしょ?」
「勿論だとも。ここは……僕が攻める!」
身を乗り出したセイバーが、慈悲の剣を手に巨人へと肉薄する
それを撃墜せんと、一際大きなスクラップを放り投げる。……寸前、砲撃が鉄塊を破壊した
670 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/29(土) 20:13:14.85 ID:Axl0VCFd0
「ハッ!馬鹿の一つ覚えみてーに砲撃か!」
「んな事しても無駄なんだよ!イーコールの流れるオレに、炎なんざ……」
アーチャーの口上の途中で鳴り響く衝撃音。嫌な音を立てながらも、その正体を殴り壊した
「あぁ!?……船じゃねえか!てめえ、どういう了見だオイ!」
「当然、策の一つだとも……つかぬ事を聴くが、アーチャー」
「流石のアルゴノーツも、爆薬をありったけ仕込んで特攻なんてしないよな?」
再度。いや、それ以上の激しい爆音。殴り壊した船から閃光が迸り、先程以上の爆発が起きる
炎は恐くない、痛くもない。だが……肉体に走る衝撃は、青銅の肉体に罅を入れる事に成功した
「ぐぅおおおっ!?何だ、爆弾か!?」
「……“まさか!壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)”か!」
「その通り。……正直、船に火をつけるなんて頭がおかしくなったのかと思ったが」
「“太陽を落とした女”の考えた策だ!思う存分使わせてもらうぞ!」
……かつて、無敵の艦隊を打ち破った奇策
俗に『火船戦術』と呼ばれるそれは、常識破りで破天荒な船長の気性をよく表していた
当然、セイバーの持つ艦船は彼の指揮下にあるのでこの戦術を執るのは不可能だが……
671 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/29(土) 20:17:59.52 ID:Axl0VCFd0
「……“壊れた幻想”により、擬似的に再現したという訳か」
「確か、宝具に秘められた魔力を、暴発させる荒業、デス」
「そうだ。だが絶大な威力と引き換えに宝具を失う覚悟を伴う……!」
通常、宝具とはその英霊の象徴である代物
セイバーは『艦隊』という性質から、一つ二つを失っても替えが効かない訳ではないが……
「……どうだ、アーチャー!これが僕の覚悟!」
「貴様も意地を見せてみろ!それともこのまま船の藻屑に消えてみるか!」
「上等だオラァアアア!……おい、マスター」
挑発に乗るかの様に激怒する。寸前、アキラに声を掛けて
「ちっとデカくなる。……構わねえだろ?」
「……はい。勝って、くれれば」
その答えに満足したのか。アーチャーの肉体に魔力が満ちる
まるで映画か特撮の様。みるみる内に、その姿は摩天楼の様に聳え立った
『アーチャーのスキルを開示します』
◆巨大化:A
自身の身体を巨大化させる能力。
接近戦や数の多い敵と戦う時に効果的。
672 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/29(土) 20:19:31.31 ID:Axl0VCFd0
「……ここまでは、セイバーの策通りだ」
「後はボク達の出番ってワケだね!」
巨大な拳が大地を穿つ。一撃一撃の重さは、紛れもなく最高、最大の攻撃
セイバーは艦隊に飛び移り、時に砲撃を、時に船を突撃させて何とか均衡に持ち込んでいる
「今の内に、私が奴の足元に潜り込む!では、エンチャントをかけてくれ」
「ラジャー!」
キャスターが言葉を紡いでいく。神代の魔術がクリスティーナに力を与える
彼女が行ったのは禍門邸に吹き荒れる『突風』のエンチャント。戦場で起きた現象すらも利用して、光輝く剣を掲げる
「……行くぞ!ここに、終止符を打つ!」
疾風の様に駆けて、アーチャーに向かう
クリスティーナの敏捷は、特筆する程のものではない
だが、エンチャントにより大きく上昇している今の速度は目にも止まらない。直ぐに足元へと辿り着き、剣を振り上げた
「これで終わりだ……アーチャー!」
673 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/29(土) 20:21:30.19 ID:Axl0VCFd0
「『制止しろ』」「止まって……!」
「………………な……!」
クリスティーナの動きが止まる。いや、辛うじて動けてはいるが、明らかにおかしい
……事実として、何も間違った事はしていない。アーチャーの真名がタロスと判断した事も、足の詮を狙うという戦略も
「これ、は……!まさ、か……!」
「そうとも。“呪術”さ。英霊には効果が薄いかもしれないが……」
「二人、なら。あるいは。……通った」
しかし、それでも失策を挙げるとするならば
禍門の家の魔術師は言葉を操る呪術師であった事。マスター以外にも、補助する人物を失念していた事
……そして
「無論、懸念はあった。これがセイバーであれば対魔力で弾かれていただろう」
「当然キャスターにも意味はない。魔術師の英霊に魔術で挑む等、愚かの極みだろう」
顔色一つ変えずに憂午が語る。彼等の犯した、最も致命的なミスの内容を
「だが、『バーサーカーなら話は別だ』」
「対魔力を持たない。魔術の心得もない。それを覆しうる能力も持ち得ない」
「バーサーカー。『お前はこの場で最も攻撃してはならなかった』のだからな……」
「……アーチャー!標的を、セイバーから、バーサーカーに!」
「オオオオオオオオオ!!ブッ潰れろやああああああああ!!」
地に釘付けられたクリスティーナに、鉄の拳が墜ちてくる
大地すら叩き割らんとする一撃。並の英霊でなくとも消滅は免れない破格の質量
セイバーも砲撃を繰り出し、キャスターも魔術で押し留めんとしているが……
刻一刻と、死が近づいていた
674 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/29(土) 20:24:43.68 ID:Axl0VCFd0
「───! “令呪を以て命ず!”」
「“絶対に耐えてくれ!バーサーカーッ!”」
貴方の最後の令呪が光る。莫大な魔力がクリスティーナを包み込み、肉体へと染み渡る
瞬間、剣と拳が激突する。衝撃で大地は割れ、近くにいたセイバーの艦隊も一部吹き飛ぶ
だが……クリスティーナは無事だ。いや、“今は”
「な、この……!クソアマがァアアア!!」
「負けるものか……この一瞬!マスターに託された力に掛けて!」
「あわわわわ、どうしようどうしよう……!?」
「……セイバー!バーサーカーの代わりに、アーチャーを倒して!」
「了解した!全速、バーサーカーが折れる前にカタをつける!」
艦隊が高速で前進する。拮抗しているこの瞬間に全てがかかっているのだから
航路は開けた。邪魔をする巨人は既に手一杯の様で。デタラメに瓦礫を放り投げる事が精一杯の抵抗だった
「これで決める!砲撃、用意───!」
足の詮に向けて、ありったけの砲弾を叩き込む
一撃、二撃、三撃。壊れるまで何度も、何度も繰り返し
そして有に数十発は越えた頃、その時は訪れた
675 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/29(土) 20:25:27.00 ID:Axl0VCFd0
「ぐっ……がァアアアああアア!!!」
パキン。とガラスが割れる様な音が鳴り響く
足には無数の罅が入り、凹みの数がその衝撃を物語る
そして、砕けた破片は塵と消え、足からは煌々とした液体が漏れだしていた
「……アー、チャー」
「クソ……三対一とか卑怯じゃね?」
「それを了承したのは貴様だろうに……」
クリスティーナが呆れながら声を挙げる。その身はボロボロになりながらも何とか無事で
しかし、タロスは既にグズグズに崩れそうで。辛うじて現界を保てているのも、単に単独行動のお陰であった
「けど、チクショウ。マジでダメだコレ。何か変な呪い掛けやがったなあの魔女」
「……ごめん、なさい。私が、未熟だったから」
「そう言うなよ。お前ってさ、なんとなくあの姫様に似てんだよ」
「顔や仕草は全然似てねえのにな。……これ、やるよ」
そう言って差し出したのは小さな破片。タロスの体表と同じ色の、ブロンズの御守り
「ホントはよ、エウロペにやりたかったんだ。けどその前に死んじまったから」
「……持っててくれよ。何か役に立つかもな」
言い残し、アーチャーは霧散する。霊基の限界が訪れたその身は、数秒には消え去るだろう
───“タロス。貴方はよく頑張りました”
───“本当に、私の自慢の友人です。いい子、いい子……”
ふと、可憐な女性の声が聞こえた気がした
その言葉は、果たして一時の胡蝶の夢だったのか。それとも、もしかすると……
676 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/29(土) 20:26:02.90 ID:Axl0VCFd0
「……今しがた、禍門の脱落を確認した」
「残る陣営は三。だが……これ以上の戦闘は必要あるまい」
闇の中から突如現れる第三者。その言葉は淡々と事実を伝えるに留めている
しかし、その中に知り得なかった事実がある。その真意を問う為に、貴方は第三者に質問した
「これ以上の戦闘は必要ないって……どういう事ですか。ロベルトさん」
「簡単な事だ。既に少聖杯は降臨している以上は戦闘の意味がない」
「…………?」
理屈がよくわからない。少聖杯とは何の事なのだろうか?そして何故戦闘の意味が無いのか?
「あー、ここらの理由はセンパイにはわからないと思うよ。ロベルトさん」
「ならば着いてくるが良い。……そこで、全てを話すとしよう」
闇に溶けていく監督役。その姿を追うように、アーディー、マリアもついていった
「……よくわからないが、聖杯はあるのだな?」
「では行こう、マスター!栄光の未来はすぐそこにある!」
「いやどこかもわからないだろ……」
とにかく、付いていかねば話にならない
クリスティーナと貴方は、同じようにロベルトの背中を追っていった
677 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/29(土) 20:29:22.25 ID:Axl0VCFd0
【本日はここまで】
678 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2020/08/29(土) 21:08:13.66 ID:pajfBAey0
乙です
679 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2020/08/29(土) 21:42:58.36 ID:+2bIJ+xdO
乙
680 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2020/08/29(土) 21:55:03.47 ID:28oJkQFB0
乙です
681 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/30(日) 00:21:54.13 ID:Bj3byN/+0
「……聖杯とは、独立した機構ではない」
「大きく分けて二つ。英霊の魂が座に戻る際に動力を溜め込む器、実際に力を行使する器」
夜も更けてきた町の中を、複数の人間が進んでいく
普段ならばまだ寝つかぬ頃合いだが、今夜はやけに静まり返っていた
「エーデルワイスの家は、遥か遠くの錬金術の家とコネクションがあったと言う」
「そのせいかは知らないが、当主シュヴァルツは天使の聖杯を起動する術式を模倣した」
「これこそが、君達が今まで戦争を繰り広げた意味であり意義。……質問はあるかな?」
「特に無い。とっととその聖杯とやらを拝ませて貰おうか」
「……あの、失礼かも、しれないんですが」
「構わないだろう。俺も御三家の一人、聖杯を確認する事に異存があるか?」
おずおずと問いかけるアキラに、サングラスを外しながら答えるドミトリイ
確かに、敗北したと言えど御三家である以上は聖杯に立ち合うのは義務なのかもしれない
「ここだ。この地下道を通った先、聖杯は安置されている」
682 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/30(日) 00:22:58.38 ID:Bj3byN/+0
「……これ、どこまで続くの?」
「さあ……」
薄暗い地下道を黙々と下っていく。広い事には広いが、それ故に距離感覚を惑わせる
「そろそろ着くはずだ。そこで知るだろう」
「この聖杯戦争の、本当の目的を……」
「……?それ、さっき話してませんでしたっけ」
貴方の疑問に答えぬまま、暗い道をゆっくりと歩んでいく
再度言おうか。と思ったものの、思考をかつての道程に馳せてみる事にした
それは、数々の奇跡と苦難を辿った証明
無数の人間が果たせなかった望みの残骸。一縷の希望を託した一歩
本来ならば参加する資格も、願いも無い貴方
歩む足は不思議と軽く。心は寧ろ鼓動を増す
自分一人では為しえなかった、まさしく奇跡
バーサーカー、クリスティーナ。バロックの女王。最も自由な女王
彼女への感謝は尽きる事はない。彼女は、自分の
「……ついた。ここが、こここそが、我が悲願の到着点……!」
683 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/30(日) 00:23:51.84 ID:Bj3byN/+0
「……地下に、空洞?」
「そもそも、ここってどこなの?」
「立地的には、高校の地下……デス」
「こんな所に地下空洞……?俺の資料には無かったはずだ」
「ふむ、秘匿されていた区画と言う訳か。聖杯を隠すにはお誂え向きだな」
マスターの反応はどれもまちまち。感心する者や困惑する者、人それぞれに様々な顔を見せる
……だが、彼等のサーヴァントは違っていた
「……マスター、下がれ。ここは」
「うげえ……何か嫌な感じがすると思ったら!」
「セイバー?どうかしたの?」
「何だ急に。異様に面妖な空気は感じないが」
剣呑な雰囲気のサーヴァントに、二人も怪訝な顔をする
それを意に返さず、ロベルトは空洞の中心部に進んでいき……何かを照らす
照らし出された地面には、『貴方も見た事の無い』模様が描かれていた
「……これは、“英霊の召喚陣”!?何で!?」
一際大きく困惑したのは、アーディーだった
英霊の召喚する際、特殊な陣を描く必要があるとは知っていたが……
それでも、ここまでの規模のものは異常であると。素人の貴方ですら理解できた
「ふ、フフフハハハハハ!!何故かだと?」
「当然!……『天使様と結ばれる為』に決まっているだろうがァ───ッ!!」
684 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/30(日) 00:24:51.86 ID:Bj3byN/+0
「……は」
「貴様……やはり、未だエーデルワイスと繋がっていたか!」
「違う……違う!本当に、ロベルトさんは私達と手を切ったはずなんだ!」
疑いを否定するかの様に、困惑しながらも発言する
それを嗤いながらロベルトは謳う。高らかに、愛おしげに
「そうとも。あの家はダメだ、天使がこの世に存在すると頑なに盲信している愚か者」
「矛盾しているぞ。天使と結ばれる為にこんなものを用意したんじゃ無かったのか?」
「知った口を聞くなッ!吸血鬼風情が!」
「私は“この世にはいない”と言ったんだッ!ならば天使様はどこにいらっしゃるのか?」
「───そう。“あの世”だ。ならば答えは既に得たり!」
「悪徳を為し!裁きの時を迎え!───天使様と結ばれる」
「何とロマンティック……古今東西のラブストーリーであろうとも霞んでしまうこの純愛!」
「完璧だ……完全無欠の我が恋よ、今こそ成就する時である!」
「何言ってんの?この人」
「黙ってて!……英霊なんて呼べる訳ない!無駄なんだ!」
「……若いな、アーディー。こんな言葉を聞いた事がないかな?」
「───愛は、必ず勝つ」
685 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/30(日) 00:26:48.36 ID:Bj3byN/+0
ロベルトの言葉は、まるで要領を得なかった
だが、それでも、ハッキリと言えるのは……
「……マスター、逃げろ!今からサーヴァントが召喚される!」
「何故だ……何故!聖杯戦争は終盤のはずだ!英霊を召喚する余地などありはしない!」
「あるとも。現にそこの……バーサーカーのマスターよ」
「君の存在こそが何よりの証拠だ。土壇場で新たな英霊を喚び、契約した者がいる!」
「………………!」
貴方は偶発的にクリスティーナを召喚し、契約を結んだ
その理由は、今までは新重の描いた召喚陣が原因だろうと考えていたのに……!
「まさか、聖杯から直接召喚したのか!?」
「……そうか。不思議ではあった。詠唱も無く、触媒も無いのに何故私が喚ばれたのかが!」
「聖杯の真上で、召喚を望んだ、から……?」
「素質の全く無いセンパイに、聖杯が勝手に英霊をあてがったって事……?」
「何でもいい。何でもいいさ!積年の恋を結ぶ英霊よ。抑止の輪より顕現せよ!」
最後の叫びに呼応して、一際強く召喚陣が光り輝く
そして、光の中から現れたのは……
686 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/30(日) 00:28:16.69 ID:Bj3byN/+0
「───嗚呼、よくぞ降臨なさいました」
「堕天使。世界の破壊者。奈落の魔王!」
「五体の英霊が死する時、福音と共に表れた貴方こそ……」
「我が恋を幸福なものにするに相応しい!」
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/〃戦滅ヽ/// X: :/.:./亡戦 :: : ./: : :/
/i{.戦怨凶.\/ム : : :./怨争殺.!: : : i: : /
/∧殺恨争 .〉, ∧/恨邪凶亡. : : :/: :/
///〉,滅 ..イ//.〕Y:.^:,、殺怨 .:: 〉 /: :/. /:.∨
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「───“アバドン”よ!」
687 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2020/08/30(日) 00:29:40.81 ID:Bj3byN/+0
【ゲリラ更新はここまで。明日になったからセーフ!】
【明日はラスボス戦をお送りしたいと思います。長かった本編もあと少し……それでは】
688 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2020/08/30(日) 01:04:13.17 ID:UotGeAezO
乙
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