【あんこ】あなたは淫魔に襲われました【ファンタジー】

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610 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/25(火) 20:28:43.40 ID:j/4dA9bfo
そら屈するでしょうな
611 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/25(火) 21:33:00.77 ID:tRbfDWjxo
乙乙
しゃーない
612 : ◆cKDALETpQ6 [saga ]:2020/09/06(日) 01:56:09.58 ID:+H/ml04vO

明日とか明後日とかなんなのか……
613 : ◆cKDALETpQ6 [saga ]:2020/09/06(日) 01:56:36.19 ID:+H/ml04vO








………

……………

…………………



614 : ◆cKDALETpQ6 [saga]:2020/09/06(日) 01:57:03.06 ID:+H/ml04vO

【下一桁:4……屈する】



使い魔「はいはーい、アホのご主人様たちー? 質問タイムですよー」

淫魔「ん……中々、上手くできたものじゃない? 」

「あれでその子は感覚どころか未知の痛みさえ覚えるっていうんだから……おっそろしいなお前ら」

なんのことは無い、所詮はただの幻覚である。

髪を振り乱して泣き叫び、鼻水や唾を涙とともに撒き散らしながら慈悲を乞うて。

やっとの思いで掴み取ったと信じている情景は、リアルに過ぎるだけの紛い物だった。

とはいえ、使い魔が操って見せた術式は恐ろしく高度で人が得る実感としての機能はほぼ全て果たしていたと思われる。

淫魔とともに身体をまさぐり合いながら眺めていたものの、

挿入間近というところでは固唾を飲んで見守ってしまったのも致し方無い筈。

あれが自分の体験であったのなら、その幻術に抗えたかどうか彼にも自信は無かった。

それ程までに、ラフィーネが受けた精神的なダメージは大きい。

彼女は今、極度の緊張と恐怖から解放された反動で失禁しながら気絶している。
615 : ◆cKDALETpQ6 [saga]:2020/09/06(日) 01:58:23.56 ID:+H/ml04vO

使い魔「っても普通オークってあんな素直に“ 待て ”なんてできませんしー。
顔はこの前の豚さんに似せたつもりでしたけどあんまり似てなかったですよね? 」

ケロり、と先程まで演技が含まれているとはいえいたいけな少女を痛ぶっていたとはとても思えない。

金糸の筋を一房摘んでクルクルと弄ぶ使い魔が妙なところで謙遜する。

その実、単なる二重人格を化け物という免罪符で誤魔化した真なる化生ではあるのだが。

淫魔「別にこの前のアレに似せろとは言ってないし。
私はあの言葉を喋らない邪悪、っていうのは中々良かったと思うわ」

使い魔「うーん……珍しくお褒めいただいて嬉しくなくはないですけどー。
やっぱりオークさんをアホのぼんくら設定にし過ぎちゃいましたよね。
もう少し喋ったり色々してくれないと単独での言葉責めができない! 」

淫魔「言葉の部分はあなたが請け負っていたわけだし……ま、確かにそれは由々しき反省材料ね」

使い魔「ですよー」

「なんだこいつら……」

少し虐め過ぎただとか必要以上に演技が過剰だっただとか、

或いは彼を巻き込んで逸物を露出させるなと言いたい。

反省とはそういうものだと思う、たぶん。
616 : ◆cKDALETpQ6 [saga ]:2020/09/06(日) 01:58:59.75 ID:+H/ml04vO

使い魔「ま、取り敢えず目的は達成できそーですし次回に活かすってことで」

「活かす場が無いことを願ってるよ。……どうする? 」

淫魔「冷水でも掛けてあげればいいのじゃなくて? 丁度床の汚れも流せるし」

それが使い魔よりも歳若く見える少女への仕打ちか、とは言わない。

ラフィーネの意志がどうであれ、子爵の目的が彼の利益になることであれ、

まだ理由が分からない状況では敵として判断せざるを得ない。

さすがにそこで甘えたことを口にする程、

追放された身としても一線級の冒険者を自負している身としても耄碌してはいない。

「そこは汚したやつが責任持ってベッドに誘導してやるべきだろう」

使い魔「うぇー……」

さりとて、人として冷淡になり切ってしまう程自分を捨てたくもないのだけれど。
617 : ◆cKDALETpQ6 [saga]:2020/09/06(日) 02:01:01.19 ID:+H/ml04vO

淫魔「術でなんとかしなさいな。……ねぇ」

「ん? 」

顎に手を当てた姿のまま使い魔がラフィーネの身体を清めているのを眺めつつ、

淫魔が何事か訊きたそうな表情を見せる。

淫魔「あなたの年齢とその子の見た目年齢的に話したことがあるかどうかは怪しいけれど、
ギリギリ追放時点で生まれてはいそうじゃない」

「まぁ……そうかもな」

さして、意味のあることとは思えない。

けれど、彼女をまともに起こしてやるまでやることがあるわけでも無く。

ぼんやりと頭の歯車を遊ばせたまま曖昧に答えた。

そもそもの話、彼女に見覚えは無くとも家名を聞けば分かることは増える。

追放された身といえど、立ち上がり言葉を解す年齢になるかならないか分からぬうちに政治など叩き込まれているのだから。

必然、多少時代が動いたとはいえ基盤となる知識も判断力も然程劣るとは思えない。

それを敢えてしないのは、結局彼にやる気が無いだけなのだ。

それを伝えてしまう程、彼も馬鹿ではない。
618 : ◆cKDALETpQ6 [saga]:2020/09/06(日) 02:01:30.41 ID:+H/ml04vO

淫魔「話だけ聞かされて面白いくらい崇拝してそうじゃない? 」

「……王都に戻る気は無いんだが」

淫魔「ここまでして話も聞く予定なのに? 」

「あくまで、聞くだけだ。その方が逃げる方策も立てやすい」

方向性が定まれば、子爵を始めとしてまともに表で生きる人間に捕捉されることはあるまい。

「ま、崇められることそのものに価値があるとは思えないが価値はあるかもな。
その方が有利な立場でものを訊ける」

淫魔「そう、ね」

釈然としないような顔をされても彼にはどうしようもない。

漸く宮廷への蟠りを自覚し受け入れたばかりなのだ、彼は。

今すぐにその根本を解決せよなどと言われて快く頷ける程人間ができてはいない。

大人になれ、と言われてしまえば論理的な反論材料は何も、無いのだけれど。

「さて、眠り姫を起こして差し上げようか」

淫魔「……ええ」
619 : ◆cKDALETpQ6 [saga]:2020/09/06(日) 02:01:58.54 ID:+H/ml04vO









………

……………

…………………




620 : ◆cKDALETpQ6 [saga]:2020/09/06(日) 02:04:58.54 ID:+H/ml04vO

ラフィ-ネ「ーー……と、いったところでしょうか。
これ以上は内臓を焼かれようが化け物の慰み者にされようが吐くものがございません」

淫魔「へぇ……どうするの? 」

「どうする、とは」

ラフィ-ネ「どうもこう

淫魔「“ だ・ま・れ ”」

カチリと、音を立てて石化した少女が崩れ落ちる、否、馬鹿げた怪音を立ててぶっ倒れる。

それは、決して人間が立てて良い音なんかではなくて。

彼女の、本気が見える。

一言、挟む余地さえ与えない、それは彼女と彼の、二人だけの決定野。使い魔さえ、無駄な言葉は挟まない。

「…………」

淫魔「どれに付くのかどれを攻撃するのか全て壊すのか。
逃げようはあるけれど正直に言えば私に賛成はできない」

真っ直ぐに、どこまでも見通す真っ直ぐさで射抜かれる。

実のところ、そんな穢れを知らぬ瞳が彼には少し重荷で、眩し過ぎる。

「…………」

淫魔「あなたにも分かっている筈。あなたに流れる血は人間社会においてある種、化け物以上の力を持つ」

「…………」

淫魔「大陸最古の王国が一つにして現王が年老いてなお広大な版図を築く勢力。
名目上は各貴族の所領を纏めた領邦国家だったものを再編して百余年、
多少の紛争と領土減少を抱えているとはいえその力はおいそれとは削れない」

「…………」

淫魔「あなたの血を、あなたの身柄を、あなたを幽閉して存在を得るだけで、
その人物ないし勢力は大陸最高の王国に喧嘩を売る権利と、
与すれば利になると判断した勢力を取り込む莫大な富に匹敵する発言権を得る」

「…………」

本当に、腹が立つ程それは真実で。

この情勢は病を得た元親友を恨んでしまいそうな程には、忌々しい変化だった。
621 : ◆cKDALETpQ6 [saga]:2020/09/06(日) 02:05:54.89 ID:+H/ml04vO

「……それは前から同じだったさ」

使い魔「っても王太子が奇病に墜つ、なんて秘中の秘でしょーし?
ご主人様の存在なんて殆どの人が知らなかったと思いますけどねー」

「……」

使い魔「のたれ死んだと思われているというのもわたしにはおかしく感じますよ。
普通偉い人とか家族がいなくなったら気になるものじゃありません? 」

「……前半は兎も角、お前変なところで純粋だな」

使い魔「んふ、褒めても愛液くらいしか出ませんよ? 」

「褒めてない貶してるんだ。出さなくていい」

淫魔「んん……」

使い魔「しっつれーしましたー」

淫魔「……即位しろとは言わないし、そうなれば私はきっと正妻になれないでしょう。
けれどね、逃げる前に、逃げない選択をしなさい。
有象無象の間抜けから逃げる前に、自分の生い立ちに区切りを付けるべきよ」

「……………………」
622 : ◆cKDALETpQ6 [saga]:2020/09/06(日) 02:06:21.02 ID:+H/ml04vO

凛、と。

その瞬間の彼女は筆舌に尽くし難かった。

自分が愛する男に、その男の望まないことをさせる顔。

けれど、彼女自身はその望みに一切の妥協を許さない、貌。

それは、淫靡さなど欠片も無い、しかしこの世で最も尊い表情の一つである。

そんな顔をできる人間が果たして世界の古今東西にどれだけ存在しただろう。

淫魔「あなたに負の感情が沸き起こるなら私で解消してもいい。
けれど、私があなたに負の感情を得るようなことはしないで」

「……それは俺にとって

淫魔「私にとって、都合が良いのよ。あなたにとっても都合が良いのはただの偶然」
623 : ◆cKDALETpQ6 [saga]:2020/09/06(日) 02:07:07.41 ID:+H/ml04vO


「…………」

使い魔「まぁ、これで選択肢は大体三つくらいに絞られましたねー。多少の誤差はあるとして。ね? 」

「…………」

淫魔「続けてどうぞ? 」

使い魔「一つ、このままラフィーネさん達と同行し即位する、ないし権力の移譲を行う」

淫魔「ん」

使い魔「一つ、王太子派と接触し積極的に王太子殿下の治療を行い予定通り即位していただく」

「……ん」

使い魔「一つ、死ぬ」

淫魔「んっふふ」

「笑い事じゃねぇんだぞ。……本当、笑ってる場合じゃねぇよ」

淫魔「ふふ……もう一つ毛色の違うやつがあるわ」

使い魔「? このまま行けるところまで逃亡生活続けますか? 」

淫魔「それはこの人がしたいことでしょう?
そうではなくていっそ大袈裟に喧伝して新しい国をつくってしまえばいい。
鼎立だか分裂だか群雄割拠だかは分からないけれど取り敢えず現時点の意味で生命を狙われることは無くなる。……それに」

「……お前は正妃になれるな、それなりの可能性で」

使い魔「なる、ほど? 」
624 : ◆cKDALETpQ6 [saga]:2020/09/06(日) 02:10:52.14 ID:+H/ml04vO

「問題は俺にそんな能力もやる気も無いところだな」

淫魔「私たちって相互回復相互強化のサイクル持ってるわけだけれど」

「だとして理念の無い国に未来は無いだろうよ」

淫魔「あら、平和な新王国でヤり続けて淫らに蕩尽し続けるという崇高な理念が」

「ばーか」

使い魔「なんなら、個人の武勇で他を圧倒する人物でもいいと思いますけどねー。
ご主人様の代で一度焦土にして、神話の世界を再度現出させたって構わないでしょー? 」

「構うってーの。そういうやつは、もう生まれないと相場が決まっている」

淫魔「どこの相場なんだか」

「黙ってろよ。知識で俺を押さえ付けるな、俺が負けるんだから」

淫魔「んふ、そうでもないけれど……そうね、そういうことにしておいてもらう」

「…………」

使い魔「まぁ……やり過ぎると他の同族も出てくるかもですしねー、マスターの」

「そりゃあ笑えない話だ」

淫魔「現時点の各勢力が目指すところのあなたの処遇が既に笑えないけれど、そうね」

戯言は飛ぶように、譫言は蔓延し、しかれども真実は全く見えない。

実に、愉快で最高で、素晴らしい時間だといえよう。
625 : ◆cKDALETpQ6 [saga]:2020/09/06(日) 02:11:19.98 ID:+H/ml04vO

王太子派は直系に近いとはいえ正統の後継者を差し置いて長らく出奔していた者の即位は望まない。

長く平民に混ざって生活していた分若干の違和感は否めないが血統とはそういったものである。

不便なようでいてその実、それは臣民にとってそう悪いものでもない。

建前上高貴な血筋に当たる者はそれだけの責任を負う。

運が悪ければ稀代の悪領主もいようが普通ならばそういった者は自然に排除されていく。

元が領邦国家だったものを再編した王国は強制的な国王一極集中により悪人には容赦が無いし、

反対に領主側も王国中枢に嫌な隙は見せたくない。

強権的な国王の宮廷に阿ることを選んだ人間の子孫たちは欲をかいて些末な利益など欲しない。

また、そもそも自らが戴く男の即位に不要な混乱と不安材料など用意したくあるまい。

ラフィーネは明言しなかったが良くて一生幽閉が前提の確保、

彼が首領であるのならば確実に消す方を選ぶだろう。
626 : ◆cKDALETpQ6 [saga]:2020/09/06(日) 02:18:06.79 ID:/ocPDD3w0

旧王弟派、つまり今は亡き彼の父親を信奉する集団は厄介なことに、

王太子廃嫡と存命中で最も近縁である元王弟嫡子の擁立を目指しているのだという。

ラフィーネの声に一番熱が籠っていたことから考えても無駄に士気は高いらしい。

年若い彼女や周辺が青い理想に燃えているだけならばまだ良し、

最悪の場合は子爵を筆頭とする現実を見なければならない世代が利益ではなく理想に殉じていたとき。

彼を王族として傀儡や操り人形にしたいのならば付け入る隙や代替策は出せれど、

彼そのものを王位に就かせたいのなら彼が逃げることは許されまい。

その場合でも彼の父親の子であることが重要であったりするのならまだ良いが、

王太子を真に敵として認識しているとすれば王国そのものが瓦解の危険性を孕む。
627 : ◆cKDALETpQ6 [saga]:2020/09/06(日) 02:18:34.54 ID:/ocPDD3w0

最後に妹公爵派。

真偽の程は定かではないがラフィーネの言によれば最も過激にして悪辣、

正統後継者たる彼の抹殺を目論む存在らしい。

彼にとってはどんなことをされようが切っても切り離せない相手、

あまり友好的な関係ではなかったものの彼女がそこまでして彼を殺す程憎んでいるとは思えない。

勿論、彼が死ねば王族としては王太子の次席となるのだから、

王太子の即位後権力をより強化するにせよ自らが就こうと考えているにせよ、

少しでも懸念材料を消しておくというのは間違いでもないのだけれど。

或いは、彼の追放理由や放逐そのものの隠蔽が目的だろうか。

現時点で得られる情報源が旧王弟派のラフィーネのみである以上、

妹と取り巻きの動きは留意するに留めるのが賢い選択だとも思う。
628 : ◆cKDALETpQ6 [saga]:2020/09/06(日) 02:20:09.23 ID:/ocPDD3w0

使い魔「それともどうします? もうちょっと“ お話 ”します? 本音の奥底まで覗き見ます? 」

「あん? 」

使い魔「譫妄状態にして訊き出したいこと訊き出そうと思えばできますよー?
その後暫く虚ろになるんでその辺に捨てるか介護する余裕があるならですけど」

世界のどこかには言葉や思考の真偽を読み取ることのできる怪物がいるらしいがまさに、といったところである。

その怪物に入り込まれると暫くの間、最悪の場合は一生を“ フヌケ ”になって過ごすハメになるらしいがそんなところまで同じ。

真実がどうであれその確認にフヌケなど抱えるリスクなど許容できない巨大さだった。

「どう考えても却下だ却下」

使い魔「あとは感度上昇とか? 神経に直接熱湯流し込むようなものですし好みじゃないですけど」

淫魔「ただ快感覚えたいならそれでいいものね。やっぱり快感は愛の付随物でないと」

「お前は余計な茶々を入れるな話が拗れる。 ……甘いことを言うつもりは無いができれば他人だとしてもなるべく人死には出したくない」

それは偽らざる、彼が追放された後に培った信念である。

殺すべきは殺して、滅すべきは滅して、それでもなお生かすべきは生かさねばなるまい。

現実を見るというのは、悪鬼羅刹になるということではないのだ。
629 : ◆cKDALETpQ6 [saga]:2020/09/06(日) 02:21:55.13 ID:/ocPDD3w0

使い魔「またまたー。どうせご主人様なんてソ・レで女の子何人もぶっ壊してるんでしょー? 」

ソレ、と言いつつ他人様の股間を指差す馬鹿。

言うかもしれないとは思っていたがさすがに安直に過ぎる。

持つ者がそれを使うとは限らない、剣そのものに善悪など無いのだとお伝えするべきか。

「誓って言うけどな、そんなことは一度も無い。なんなら本気でヤったことも一度も無いが」

淫魔「はぁ? 」

「なんだよ」

淫魔「あなたねぇ……あれで、本気じゃ、ないと、言うわけ? 私にくらい本気でやりなさいよ」

「嫌なんだよ。お前は種族の所為か丈夫なのかもしれないけど踏み込み過ぎて痛がられたりするの」

使い魔「だいじょーぶだいじょーぶ。マスターは痛みも快感になりますから」

淫魔「そうね。……まぁ、それは置いておいて、本気でそろそろ決めないといけないわよ」

「…………はぁ」
630 : ◆cKDALETpQ6 [saga]:2020/09/06(日) 02:22:21.31 ID:/ocPDD3w0

仮に逃亡を止めて他の選択肢を取るにしても当面は同じことだろう。

ラフィーネを上手く誤魔化して子爵辺りと共に王都へ行かねばならない。

また、その際は例えば王太子の病を治癒するつもりであったとして、

目先の利益や利害で目標を変えることも視野に入れておかなければいけない。

結局、最終的な目的は彼と彼女らが安穏として生活できるという部分に尽きるのだから。

その為には、不確定要素が多い妹や王太子側の余計な信奉者に姿を見せたくないところだが。

使い魔「てーかあれですよね。仮に即位したらジャンジャン側室増やしましょーねー」

淫魔「待って……? そもそも即位の正当性を担保するのが血筋なのだからやっぱり私は正妃になれないのでは? 」

「……あたまがずつうでいたい」
631 : ◆cKDALETpQ6 [saga]:2020/09/06(日) 02:24:45.96 ID:/ocPDD3w0

使い魔「いっそマジにセカイセーフクすべきでは? 」

「ちょっとなにいってるかわからない」

淫魔「いえ、寧ろ私以外全て滅すべきよ」

「なんなのそれ」

いっそ、賽でも投げてどうにかしたい。

とうに、彼女たちの為に持つ匙は投げ捨てているのだから。



【やれやれやっちゃえいけーいけー】



1.取り敢えず王都
2.愛の逃避行()
3.取り敢えず王都
4.愛の逃避行()
5.取り敢えず王都
6.取り敢えず王都
7.愛の逃避行()
8.取り敢えず王都
9.愛の逃避行()
0.取り敢えずこの子貰っていきますね
ゾロ目.どきどきしすたーちゃれんじ

632 : ◆cKDALETpQ6 [saga]:2020/09/06(日) 02:25:33.61 ID:/ocPDD3w0

なんだか失踪していましたねぇ……
本当に申し訳ございません

取り敢えず今日は分かりませんがまだ消えてないです、たぶん
よければ次回もどうぞ
ありがとうございました
633 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/06(日) 03:46:26.85 ID:/7yaZ3yEo
おつおつー
634 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/06(日) 09:28:55.51 ID:6tT/cVd0o

ちょっと時空が飛んだだけだからへーきへーき
635 : ◆cKDALETpQ6 [saga sage]:2020/09/07(月) 11:43:38.97 ID:oAt/P08r0

少しだけ投げていきます
636 : ◆cKDALETpQ6 [saga sage]:2020/09/07(月) 11:44:19.06 ID:oAt/P08r0

【下一桁:6……取り敢えず王都】




「そんなにも、言うのなら」

淫魔「ん」

「王都に、行こうか」

使い魔「いざ行かん麗しの都、ってところですかー? 」

「『死と嘆きと風の都』、ってところだな、うん」

荒廃しているわけでは決してない、人死ばかりがあるでもない、嘆きに溢れているわけでもない。

けれど、そこは魔都といえよう風吹く辺獄である。

王都に棲まうのは殆どが善良な臣民と少しの悪党ではあるのだけれど、

中枢に巣食う獣染みた罪人たちが食い物にすべき踏み台を常に探している場所である。

勿論そこにあるのが悪意や害意、憎悪や嫉妬だけというわけでもないのだが。
637 : ◆cKDALETpQ6 [saga sage]:2020/09/07(月) 11:44:48.33 ID:oAt/P08r0

淫魔「それで? 」

「うん? 」

淫魔「私は、対価に何を支払えばいいのかしら」

「対価? 」

淫魔「言い訳は流儀じゃない。私自身の望みとあなたへの願望を剥き出しに、
けれどそれは度し難い驕慢と自惚れの恫喝だわ」

「……そうだな」

何も分かっちゃいない。しかし、そういう返答をするのだと信じたからこそのこれは彼自身の傲慢と決断。

怯懦には嘲笑と憐憫を、命乞いには剣先と一瞬の侮蔑を。

素直に真っ直ぐと、欲望通りに生きると決めたのだ。

だから、愛には愛を。その驚嘆すべき情動には常に敬意と信頼を。

愛を試すな、などという古の神こそが人を試す悪辣な悪魔である。

愛は、試すことで更に深く嵌まり込むものでなければならない。
638 : ◆cKDALETpQ6 [saga sage]:2020/09/07(月) 11:45:16.88 ID:oAt/P08r0

既にして人の世から一度見放された彼にとって、永久より顕れし淫魔に活された彼にとって。

金言なんてものは些末なこと、彼女こそが正義と悪を掌る万象。

平易に言えば、凡ゆる物事の尺度が彼女に他ならない。

反対に全ての事象が彼という図面に照らし合わされるのだから彼女の唯一掲げる題目が彼。

だから、お互いがお互いに傲慢であると思うのならばそれは両者が両者を想うが故の愛情である。

相克し絡み合う二人の蛇が、彼らであるのだから。

「っあはは……」

笑みが、溢れる。自然に、自分でも驚く程、それはきっと明るい笑みだっただろう。

これならば後悔することは無いだろうという確信めいた決意が溢れ出る。
639 : ◆cKDALETpQ6 [saga sage]:2020/09/07(月) 11:46:46.23 ID:oAt/P08r0

「共にあってくれればいい。あとは何も要らん」

淫魔「……そ」

目を伏せ、頷き、口の端を僅かに笑みの形に変えて。

それで、お仕舞いだった。

それでいい、彼女も同じ意志を持っているのだという共有の確認が、強いて言えば必要な対価。

「まぁ、選択肢を選びに行くための選択だが……それこそ、どうする? 」

淫魔「うん? 」

使い魔「疎外感パネェっすねー。……何がです? 」

「普通に着いてくるか? それとも身を隠して着いてくるか? 」

淫魔「……む」
640 : ◆cKDALETpQ6 [saga sage]:2020/09/07(月) 11:47:23.57 ID:oAt/P08r0

一度は心を圧し折って知っていることを吐き出させたとはいえ、

ラフィーネという少女の全てを信頼するには到底足りないし、

彼女の従っていた子爵を筆頭とする人間たちだって信の置ける相手ではない。

それならば、彼女を適当に誤魔化して彼だけが伴われるように思わせた方が楽な場面も多いだろう。

反面、彼女たちが魔術をもって隠密のように付き従うというのなら、

それが暴露たときないし明かさなくてはならなくなったときが面倒になる可能性もある。

或いは、王太子を患わせる程の術者が相手になるかもしれないのだ。

そんな相手ならば、淫魔とその使い魔といえど正体をひた隠しにはできないだろう。

無駄な動きで嫌な敵に隙を見せるのは得策ではない。
641 : ◆cKDALETpQ6 [saga sage]:2020/09/07(月) 11:48:16.99 ID:oAt/P08r0

「ま、この子の誤魔化しようくらいは幾らでもあるが……」

淫魔「……そうね」

使い魔「てーか石化させたまま放置とかサイテーですよねー。
こんな話聞かせられないからいいんですけど」

その辺りのことは許してほしい。

「…………あー」

今の今まで脳裡のどこにも欠片さえ残っていなかったのは秘密だが。



【悪人ムーブ継続中】



1.隠す
2.隠さない
3.隠す
4.隠す
5.隠さない
6.隠す
7.隠さない
8.隠す
9.隠さない
0.いっそ婚約者として紹介する
ゾロ目.少女に秘密を共有させるってのは中々……
642 : ◆cKDALETpQ6 [saga sage]:2020/09/07(月) 11:49:07.39 ID:oAt/P08r0

えぇ……
643 : ◆cKDALETpQ6 [saga sage]:2020/09/07(月) 11:49:42.11 ID:oAt/P08r0

取り敢えずたぶん明日の夜になるかと思います
また、よろしくお願い致します
644 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/07(月) 11:56:11.77 ID:yNSn5ToLo
ラフィーネちゃんストレスでハゲそう
645 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/07(月) 11:56:57.53 ID:f/shgcD7o
本日の1割
646 : ◆cKDALETpQ6 [saga sage]:2020/09/11(金) 14:56:54.94 ID:76Ed7ixj0










………

……………

…………………


647 : ◆cKDALETpQ6 [saga sage]:2020/09/11(金) 14:57:21.03 ID:76Ed7ixj0

【ゾロ目……少女に秘密を共有させるってのは中々……】



ラフィ-ネ「」

「ほら見ろ固まってるじゃねぇか」

淫魔「あらぁ〜……」

使い魔「失敗しましたかねぇ。色々喋ってもらったんでお返しにおしえて差し上げたんですけどー」

生命と貞潔の次くらいには大切な情報を泣く泣く売り渡した見返りが、

敬愛すべきと信じる真なる男が堕落した様を伝えられるのはお返しなどという穏当なものではないと思う。

石化の術を解かれたそのすぐ後に再度石化されたような反応も致し方無い。

ラフィ-ネ「」

それはある意味、オークの暴虐に晒される危機よりも衝撃的であろう。

しかも自らに迫る危険が去ったと思えば、それの首謀者と彼は一蓮托生の関係で。

なんなら、この場においてこの状況では彼こそ悪人の親玉である。
648 : ◆cKDALETpQ6 [saga sage]:2020/09/11(金) 14:57:55.72 ID:76Ed7ixj0

とはいえ何も無計画に面白がって彼らの関係を明かしてみたわけではない。

確かにラフィーネという真面目そうな少女に、

それも主君と仰ぐ男の為という大義を抱えた少女に、

自分の受けた屈辱が実体を持たない悪辣な幻影の代物であって、

しかもそれを仕組ませたのが不承不承だとしても不埒な関係に陥った尊い血筋の男である、

そう暴露し秘密として胸に秘めさせるのは中々の愉悦ではないか、

そんな提案に乗せられてしまったのは事実なのではあるけれど。

淫魔「そもそもの話あのときあなたが私を受け入れなければこの子はこんな顔をしなくて済んだわね」

「何を今更……生まれたことまで後悔させる気か? 」

こういうのを溢れたミルクを嘆いても仕方が無い、というのだったか。

いや、何か違う気がしないでもないがどうでもいいことである。
649 : ◆cKDALETpQ6 [saga sage]:2020/09/11(金) 14:58:30.70 ID:76Ed7ixj0

ラフィーネに彼女たち二人の大まかな素性や彼と共に旅を続けていた理由を話してしまう、

というのは確かにリスクの大きい行動ではあるだろう。

王国貴族の中には過半ではないとはいえ龍人や豚人といった亜人に類する家系も無くはない。

また、吸血鬼や妖精族等の化け物から血を分けた者も存在する。

それでも、度を越した融和共存主義者でもなければ人族以外の存在に嫌悪感や忌避感を抱くことは少なくない。

彼女本人が淫魔ではない、と主張するのは兎も角として、

彼ら人間から見れば人類を超越した権能を持つ化生であり、

創生の後に原始の男を誑かしたと伝えられる女の末裔だというのはどうやら真実で。

詳しく伝えてはいないにせよニュアンスとしてでも伝わってしまうのは本来ならば避けるべきだろう。
650 : ◆cKDALETpQ6 [saga sage]:2020/09/11(金) 14:59:04.49 ID:76Ed7ixj0

けれど、一個人としてそれなりに腕の立つと自負する彼とて何の後ろ盾も持たない一人の人間である。

子爵やラフィーネが悪意を持っていた場合のことを考えて、

牽制や示威の意味を込めた手札として彼女たちの存在を使うのは決して間違いではない筈だ。

或いは真に彼らが王国と彼のことを一心に想って行動していたとして、

伝説上の英雄が如き戦術兵器染みた存在が使いやすい手駒としてあると伝えるのも悪くない。

つまり、警戒や嫌悪を湧き上がらせる可能性があるにせよ、

彼の立場と現時点での自由を制限させないための盾である。

仮にラフィーネが暴露すとしても子爵とその他中枢の幾人か程度で収まると見越してのこと。

まさか宮廷に乗り込んで追放されたと思われていた元王弟嫡男が、

自らの意志で魔性の女二人とともに生きたいと望んでいる、

なんて頭の出来を心配される妄言を吐こうとは思うまい。
651 : ◆cKDALETpQ6 [saga sage]:2020/09/11(金) 14:59:32.40 ID:76Ed7ixj0

使い魔「マスターたちの話聞いてたら話進みませんねー。……ラフィーネちゃん? 」

ラフィ-ネ「は、はひぃ? 」

「思いっきり怖がられてるじゃねぇか」

淫魔「随分と嫌われたものね」

使い魔「半分くらいあなたたちの所為だと思いますけどー? 」

「いや、自分の意志で始めて勝手に楽しんでいたのはお前だから」

淫魔「そうよね。さすがにそこまで私も非道は働けないわ」

「嘘吐け」

使い魔「嘘ですねー」

淫魔「はいはい。……えぇと、ごめんなさいね」

ラフィ-ネ「い、いえ……」
652 : ◆cKDALETpQ6 [saga sage]:2020/09/11(金) 15:00:22.45 ID:76Ed7ixj0

淫魔「できれば私とこれの素性とかは隠しておいてほしいの。
勿論この男に害を為すようなことは無いし、でき得る範囲ならあなたたちに協力してもいい」

ラフィ-ネ「は、はぁ……」

淫魔「かなり強いっていうのだけ伝えてくれればなお嬉しいわ」

意図を図りかねる、といった困惑の表情をする侯爵家令嬢。

それとも、その対価に何を呉れるのか、といったところだろうか。

ラフィーネにとってこの場で殺されないのは兎も角の僥倖として、

彼らの秘密を守る義理など微塵も無いのだ、本来ならば。

それは全くもって正しい感想で、彼が同じ立場ならばきっと似たような顔をするだろう。

使い魔「まぁ、どちらにせよラフィーネちゃんのお胎にはちょちょっとアレなことしてますのでー。
余計なことすると自動でソレな感じになりますー」

ラフィ-ネ「」

「もうちょっとソフトにやれねぇのかお前……」

勿論、嘘である。

どうせ石化させていたのだからやろうと思えばできないこともなかったが、人間としての最後の抵抗だった。

それに加えて、王都中に触れ回られたとして国中の誰もが顔を知る人間などいない。

寧ろ彼にとっては逃亡の良い理由になる。
653 : ◆cKDALETpQ6 [saga sage]:2020/09/11(金) 15:00:49.36 ID:76Ed7ixj0

使い魔「やー……こうね? わたしって加減の分からない女の子でして? 」

「可愛く見せようとするな。……まぁ、信頼はしなくていいよ。それがお互いのためだとも思う」

ラフィ-ネ「……殿下」

暗に、こちらもお前を信用はしていない、と伝える。

冷たいようではあるが、その方が彼女も自分なりに状況を落とし込んで納得はできないまでも理解はし易い筈。
654 : ◆cKDALETpQ6 [saga sage]:2020/09/11(金) 15:01:20.20 ID:76Ed7ixj0

淫魔「ま、ということでじゃあ行きましょうか」

使い魔「ですねー。あのおじさんたち探せばいいんですよね? 」

「そうだな」

ラフィ-ネ「……はぁ」

道中どんなことがあるかなんて分からないけれど。

取り敢えず、一番の不幸者が自分ではないのは、確かな気がした。



【王都までトラブルとかなんかその辺は? 】



1.平穏
2.やっぱ素性
3.やっぱ素性
4.平穏
5.平穏
6.平穏
7.平穏
8.平穏
9.やっぱ素性
0.モンスターor盗賊
ゾロ目.おや?
655 : ◆cKDALETpQ6 [saga sage]:2020/09/11(金) 15:02:06.87 ID:76Ed7ixj0

どうも忙しくてすみません
たぶんまたそのうちきっと来ます

暇なときにでも覗いてみてください
ありがとうございました
656 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/11(金) 18:59:17.95 ID:PYIiYyRb0
更新待ってました
乙です
657 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 23:10:06.60 ID:+cmcwHano
保守
658 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/03(土) 16:22:26.80 ID:EJ6e6LGFo
待ってる
659 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2021/12/14(火) 19:43:27.20 ID:e4P/ESDWO
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