【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【二十三輪目】

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102 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/09(水) 23:26:24.42 ID:KtpwlApHo

舌は忍ばせずに、唇だけで

口の中で少しだけ溶けた飴を、樹へと移していく

みんなよりも長くキスをしてしまうと、何かありそうですぐに離れる

天乃「ん……っ」

樹「っふ」

渡しきれず、

天乃と樹の唇の間に残ってしまっていた飴混じりの唾液が糸を引いて

披露宴に似付かわしくなく、艶めかしさが演出されてしまう

樹「は……ふ……」

垂れてきたそれを、樹は仕方がなく指で絡めとると

ただの布巾ではべたつくと判断したのか

ただそうしたかったのか、

その指を天乃の唇に押し込む

天乃「んっ」

樹「されるだけじゃないですよっ」

急にされたキス

されると解っていても、

飴の口移しとは思っていなかった樹は頬を染めつつ、攻めの姿勢を見せた
103 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/09(水) 23:30:50.31 ID:KtpwlApHo

では途中ですがここまでとさせていただきます
明日はできれば通常時間から
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/09(水) 23:43:46.06 ID:0OYw4VgMO

なんて微笑ましい樹ちゃんとのイチャつき…
そしてやっぱり反撃されるところが実に久遠さんらしいな
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/10(木) 04:06:50.48 ID:aZIOVNeTO

カウンターをかえされることに定評のある久遠さん
106 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/10(木) 23:11:28.38 ID:b/sNJkYWo

遅くなりましたが少しだけ
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/10(木) 23:17:51.54 ID:NcRrhoDvO
やったぜ
108 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/11(金) 00:13:16.07 ID:vYsB+5i4o

天乃「ん……」

樹「っぁ……んっ」

樹の差し込んできた指を天乃はそのまま唇で包み込む

樹が強く引き抜こうとしても、怪我をしないように優しく

けれど、引っ張る気が起きないように甘く噛みながら

指の腹の部分を、舌先でちろりと舐める

天乃「っふ……ん……」

鼻ではなく、口の端から息を吐く

樹の顔が真っ赤になっているのが見えて、

それでも天乃は唇をもにゅもにゅと動かして、弄ぶ

樹「っ……」

天乃「っは……ふ」

拘束のようなそれを離してあげると、

今度こそ、本当にそれらしい糸が伝う

さっと手を引いた樹の瞳は潤んでいて、

天乃は、やはり笑みを浮かべた
109 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/11(金) 00:30:03.13 ID:vYsB+5i4o

天乃「甘いわね……ふふふっ」

樹「あ、甘いって――」

天乃「どっちの話かしらねぇ?」

指が甘いのか、詰めが甘いのか、

どちらも甘いのは樹なのだけれど。

にこやかな天乃を、樹は直視できない。

攻めをそのまま絡めとられて、

してやったりという嬉しそうな笑顔

負けてしまった悔しさ

それを大きく上回る心。

だからきっと、目を合わせてなんてしまったら――

天乃「俯いたら、私と見つめ合うことになるわよ」

樹「っ!」

天乃「ふふっ」

下から伺うように顔を覗かせた天乃は、しかし屈んだりなどはしていない。

天乃の誇らしげな笑みに、樹はお手上げとばかりに苦笑いを浮かべた
110 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/11(金) 00:44:17.14 ID:vYsB+5i4o

すぐ隣を歩いていると、いつも見えるのは天乃の頭だ

下を向かないと顔は見れない。

少し離れてくれないと目を合わせることが出来ない。

だからと、高校生の時に天乃が言ったことがある。

【天乃「そんなに俯いてばかりいたら私と目が合っちゃうわよ? そんなに見たいの?」】

――なんて。

にんまりと笑っていたので、

冗談半分だったのだろうと、樹は今でも思っている。

でも、確かに……悩む必要はなかった。

前を向けば追いかける背中が見えて、

下を向けば、寄り添い微笑んでくれる笑顔が見られて

大変な勉強も、頑張っているアルバイトも

そのためならと思えばいつだって幸せだった

樹「狡い、ですよ」

天乃「そうかしら……そう? だったら、小さい身体も誇れるわね」

樹は天乃の体を抱きしめる

互いにドレスで多少の窮屈な感覚はあったけれど、

天乃は優しく笑みを浮かべて、それを受け入れた
111 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/11(金) 00:45:51.57 ID:vYsB+5i4o

では途中ですがここまでとさせていただきます
明日はすみませんが所用のためお休みとさせていただきます

明後日は可能であれば少し早い時間から
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/11(金) 02:10:21.31 ID:kXJ7rHBuO

あいかわらず誘い受け全開の久遠さん
結婚式の夜がとんでもないことになりそう
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/11(金) 06:06:17.91 ID:nPYp+WiNO

久遠さんの高校時代も幸せそうだなぁ
114 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/12(土) 20:21:26.59 ID:sop8EWKlo

遅くなりましたが、少しだけ
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/12(土) 20:23:33.59 ID:mQH/Az+kO
よしきた
116 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/12(土) 21:34:27.29 ID:sop8EWKlo

園子「凄いことになってるんよ〜」

天乃「そうかしら?」

園子「あとで痛い目を見るね」

天乃「……やっぱり?」

結婚式でキスをしていなかった分、

悪戯と言う形で清算していこうとも思っていたのだが、

もちろん、それで解決などするわけもなく。

それを見ていた園子の笑み交じりの呟きに、

天乃も困ったように笑う

天乃「家に帰ったら大変よね……絶対に」

園子「私とも、してくれる?」

天乃「そんな窺わなくても、園子一人除け者にしたりなんてしないわよ」
117 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/12(土) 22:06:04.66 ID:sop8EWKlo

園子「そっかぁ〜」

満足そうに頷く園子は、

若紫色のドレスのスカートの部分を摘まんでひらひらと振る

照れ隠しのつもりなのだろう

やや俯き気味な園子の頬がちょっぴり赤らんでいるのが見えた

園子「悪戯なしにして欲しいなぁ」

天乃「面と向かって言われると、ちょっと対応に困っちゃうのだけど……そうね」

園子もからかってみると可愛らしい反応を見せてくれる

もちろん、からかうことをしなくても園子は可愛らしいのだけれど

せっかくの披露宴なのだ、飾っていない可愛らしさを引き出したいと思うものなのだ

けれど、悪戯せずにして欲しいと本人から願われると

流石の天乃も、その手を引かざるを得ない

天乃「良いわ。驚かしはなしにしましょ」
118 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/12(土) 23:15:49.33 ID:sop8EWKlo

園子「でも、その言葉で安心できないのが……お姉様なんよ」

天乃「あら、心外だわ」

園子「隙をついてやろうって、虎視眈々と狙ってる」

天乃「今は大丈夫よ」

園子の悪戯心が垣間見える声色に対して、

天乃は穏やかに答える。

園子がすぐに信じないのは、天乃の日頃の行いだ

別に怒るようなことはしていないので

嫌われたり、どうなりなことはないし

むしろ、なにをしてくれるのかと期待するまであるのだけれど。

天乃「今回は、園子と私の記念だもの、貴女を困らせたりしないわ」
119 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/12(土) 23:47:46.83 ID:sop8EWKlo

園子「そう言って不意を突いてくるのに……今日だけは信じるんよ」

天乃「ありがと」

園子「笑っても誤魔化されないよ」

園子はそう言いつつ、天乃からケーキへと視線を移す

キスをされるとしても、ケーキを食べさせる段階になってからになる

ナイフを誤って落としてしまったりしないように気遣ってくれるので

その部分も大丈夫だろう。

園子のケーキは、

園子が今もなお自室で使っているサンチョというキャラクターの抱き枕の形を模したロールケーキだ

紫色の部分にはブルーベリー、口の部分などにはベリーなどを用いて着色されており

園子から見ても、その完成度は高く見える

園子「ちょっと、切るのがもったいないんよ〜」

天乃「そうねぇ、可愛いもの」

園子「お姉様……天乃さん、お願いがあるんだけど……」
120 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/13(日) 00:08:51.81 ID:0loehisvo

園子はどうしても見下ろすことになってしまうのを残念に思いつつ、

天乃へと向けて、瞳を潤ませてみる。

天乃にも夏凜にも東郷にも風にも樹にも沙織にも友奈にも通じない。

通じると言えば、デート中に絡んでくる異性くらいだ

けれど、天乃達は可愛いと言ってくれるので、良く使う手だ

園子「サンチョのケーキで記念撮影したいんよ」

持ち上げる素振りを見せる園子は、

どこか昔を思わせる幼さが感じられて、

天乃は困ったように笑みを浮かべる

天乃「ケーキで? 重いわよ?」

園子「このくらいなら大丈夫」

勇者としてのお役目が終わって以降、

夏凜に付き合ってのランニングを除けば、

園子はごく普通の女の子としての生活をしてきた。

それゆえに、筋力的にはそこまでしっかりとしていない。

それでも、普通の同年代に比べれば、体つきはしっかりとしているけれど。

天乃「分かった。でも気を付けてね」

園子「大丈夫なんよ〜」
121 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/13(日) 00:13:38.88 ID:0loehisvo

では途中ですがここまでとさせていただきます
明日はできればお昼ごろから
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/13(日) 00:25:47.51 ID:aTxKhuBDO

乙女モード全開のそのっちって中々貴重でかわいいなぁ
123 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/13(日) 15:55:51.89 ID:0loehisvo

遅くなりましたが、少しずつ
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/13(日) 16:35:16.85 ID:5HHIGz3QO
来てたか
125 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/13(日) 17:06:21.13 ID:0loehisvo

ケーキの置かれている平皿を引いた園子は、

その重さを感じて眉を顰めると

両手で少しずつ引っ張って、中央からずらしていく

こうしてみると、ロールケーキで良かったと天乃は思って

天乃「係の人の手を借りなくていいの?」

園子「二人の作業なんよ」

天乃「だったら、少し待って」

園子の手を止めさせて、

ケーキと一緒に引っ張られてしまうテーブルクロスを逆側に引っ張る

滑り止めが加わった分、園子は難しい顔をしたけれど

天乃が逆に引っ張るのと同時に平皿を引けば、少しは簡単になる

園子「天乃さんっ」

天乃「落とさないようにね」

端からはみ出た平皿の下に手を添えて、

少しずつ持ち上げていく園子を手伝って、天乃も平皿を持ち上げる

テーブルクロスは少し不格好になってしまったけれど

そこは、樹と東郷が補ってくれた
126 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/13(日) 17:31:47.51 ID:0loehisvo

園子「結局助けられちゃったんよ〜」

天乃「ふふっ、やっぱり二人じゃ少し無理があったわね」

左右から手助けしてくれた二人は、

テーブルクロスを整えるだけで、さっと身を引いた。

元々準備されていた時よりも綺麗に見えるテーブルクロス

丁寧な東郷もそうだが、

介護も含めての仕事を行うために樹がしっかりと身に着けたおかげだろう。

樹が微笑んだ「二人だけじゃないよ」は、まさにその通りだ

天乃「ケーキカットは完璧にこなしましょ」

園子「ううん、それだけじゃない」

園子は首を振って、天乃に笑みを浮かべる

ちょっとだけ悪だくみしているのが透けて見える

園子「ほんの数分間だけの、私達の披露宴を完璧にするんよ」

その数分以外はみんなでの披露宴

でもこのわずかな時間だけは二人だけのもの。

そう思ったって良いよね。と、園子は心の中で思うと

天乃は察したように頷いて「そうね」と、答えた
127 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/13(日) 18:40:32.06 ID:0loehisvo

目線こっちにくださ〜い。と楽しそうな声に従って、

サンチョケーキの目を向けてあげると「二人も」と笑い交じりに声が続く。

ケーキと一緒に一、二分撮影を行って、

もう一度テーブルの上に戻す。

二人とは言え、

手で支えていたのは少し疲れたのだろう

手首を軽く振って、一息つく

園子「縦? 横?」

天乃「そうねぇ……普通ならお腹の辺りから半分よね」

ズバッと……と

ナイフを持たずにやるように見せた天乃は、

ナイフの持ち手を軽く撫でる

天乃「斜めからがいい?」

園子「その手に従うんよ」
128 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/13(日) 20:05:24.27 ID:0loehisvo

ナイフに触れる天乃の手に手を重ねるようにした園子のささやき

天乃は小さく笑うと頷いてナイフを握る

その手から滑るように動いた園子の手は、

ナイフの持ち手、余りのある部分を掴む

柄の代わりになっているフラワーリングが、少しこそばゆい

天乃「もう片方の手は使わないの?」

園子「動かしにくくなっちゃうから」

天乃「……そっか」

園子の指先だけしか触れないナイフ

それが少しさびしいと

天乃は園子がしない分を自分のもう一方の手で補う

園子「天乃さん?」

天乃「二人三脚は――息を合わせれば簡単よ」

園子「そうだねぇ」

そう言われると困っちゃうなぁ。と

園子は天乃の手に、もう一方の手を重ねた
129 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/13(日) 20:45:19.47 ID:0loehisvo

園子「サンチョぉ……」

天乃「ふふふっ」

切ると決めたのに

ケーキだと分かっているのに

自分たちで決めたデザインなのに

今にも泣きそうな声でサンチョケーキにナイフを入れて行った園子に、

天乃は思わず笑ってしまう。

今日家に帰ったら

きっと真っ先にベッドの上にある枕を抱きしめに行くだろう

天乃「デザイン、やっぱり別のにしたほうが良かったかしらね」

園子「キャラ弁で鍛えたから大丈夫」

天乃「なるほど……」

星乃達のお弁当用に作っていたお弁当

それと似たものを自分にも作ってと園子はお願いしていたのだ

天乃「そういうことね」
130 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/13(日) 20:59:48.98 ID:0loehisvo

サンチョケーキほど立派なものだったとは思えないけれど、

園子が練習になったならなったのだろうと

天乃は一先ず頷く

天乃「園子はどっちがいい? 食べるか、食べさせるか」

園子「選んで良いの?」

天乃「もちろ――」

園子「じゃぁ、あ〜んっ!」

それはもう、普段のんびりとしている園子とは思えないほどに素早かった。

天乃と一緒ににっぎていたナイフから手を離した瞬間、

ケーキの横に置かれていた、スプーンを手に取る

持ち手はやっぱり、サンチョモチーフ

だからか、それをぎゅっと握りしめている園子は成人しているようには見えない

天乃「かわいい」

園子「っ……私が、食べさせるんよ」

天乃「お願いします」
131 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/13(日) 21:12:39.76 ID:0loehisvo

天乃は素で口にしてしまったのだけれど

だからこそ、園子は顔を赤くしてしまって

子供っぽかっただろうかと。

それを誤魔化すような勢いのある「食べさせたい」という言葉

天乃はそれに笑顔で答えて待つ。

目を閉じ少しだけ口を開いて、数秒。

雑音と言ってしまうのは聊か心苦しいものだけれど

二人の空間には不要な音に満ちている会場の中

それらのいっさいが抜けて行って、園子の息遣いだけを感じ取る

天乃「緊張してる?」

園子「し、してないんよ」

天乃「そっか」

園子の心臓が跳ねたような気がする

心音までは聞こえないけれど、そんな気がして――

唇の先に柔らかい……液体のようで液体には満たない感触が触れた
132 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/13(日) 21:32:02.46 ID:0loehisvo

甘さの強いクリーム

焼きたての食パンのようにふんわりとしているスポンジ

甘さを引き立てさせたり、抑えたり

一番忙しそうなブルーベリーの僅かな酸味を感じる

天乃「ん……美味しい」

噛まなくても、クリームは舌に融けていく

クリームとベリーソースが唾液と染みたスポンジ

天乃「食べたい?」

園子「っ」

天乃は必ず見上げる姿勢になることを考慮の上で、

園子に視線を向け、わざとらしく……自分の唇に人差し指を触れさせる

園子「え、と……」

天乃「あぁ、駄目ね」

悪戯はなしだったわねと、あとから思い出したように笑った天乃は、

唇からを指を離し、手で口元を覆って――飲み込む

園子「あぁ……うん、そう、なんよ」

選択肢に何があったのか察していた園子としては、

ちょっぴり、残念で

天乃「スプーン、貸して」

勿体ないことをしたかなと、園子はスプーンを手渡す
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/13(日) 22:04:46.57 ID:+8blyC/MO
うむ
134 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/13(日) 22:16:32.20 ID:0loehisvo

スプーンを受け取った天乃は、

手慣れた手つきでケーキをすくうと園子へと差し向ける

天乃「あ〜ん」

園子「あ、あ〜ん……」

悪戯に一歩足を踏み入れた分のリードがあるからか、

園子の頬が赤らんでいるのが見える。

口をついた「かわいい」が一番効いていると思うと

やっぱり、可愛らしいと思ってしまう。

ひとすくいのケーキを、園子の小さな口の中に納める

ゆっくり閉じる唇

何度も重ねたことのある、柔らかさを良く知っている唇

引き抜いたスプーンは艶やかで、

天乃はすぐに引き出せる言葉を、飲み込む

悪戯禁止……だから「間接キスだね」なんて

今更、ドキドキともしにくい言葉は使わない。

ただ園子の頬に触れる

見上げてしまうのはやはり武器だと言えるだろう

天乃「して――いい?」

悪戯なしに、正直に……答えは下りていく瞼。
135 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/13(日) 22:36:31.72 ID:0loehisvo

その仕草はとても自然だっただろう。

見ている人が慣れていると……感じるくらいに。

園子の身体は背の低い天乃を少しでも支えるように

腰の辺りから斜めに抱き上げるようにしていて

天乃はそれを信じて出来る限りの背伸びで、唇を重ねる

それでも園子の頭がやや下がっているのは、

少しでも自分から近づきたいという心の表れ。

天乃「っふ……」

園子「っ……」

離れる前に、瞼を上げる。

園子の瞳と天乃の瞳は互いの中に自分を見て、

そうして離れて、天乃が半歩下がる

暫く言葉はなくて、唇の潤いにキスを想わされてか、

園子は手の甲で口元を隠すと、撮影の音から顔を背けてしまう

天乃「……やりすぎちゃった、かしらね」
136 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/13(日) 22:48:26.43 ID:0loehisvo

結婚式で行うような、

誓いを立てる接吻とは違った感情の含まれていたキス

だから園子も羞恥心には抗えない。

いや、素直な感情が表に出てしまっているから、見られたくなかったのだろう。

化粧をしていない顔はあまり見せたがらないものだ

天乃「園子、ありがとね」

甘かった。

そんな、からかうつもりのない言葉も今の園子には大きいだろうと

天乃は横を通る間際に、その一言だけで留める。

当然、どちらも天乃の正直な気持ちだ。

東郷「久遠先輩は、容赦がないですね」

天乃「ふふ……悪戯心はなかったのよ」

最後の一人、東郷はじっと天乃を見定めて

その奥で揺れる、かつては親友であり今は家族の一人である園子を望む。

笑う天乃は少し困り顔で、

どうにも止められなかったと言った様子

けれど東郷は「私は全部受け止める所存ですよ」と、手を広げる

東郷「時間をすべて使えるのが、大取りの特権です」

天乃「熱心に主張したのはだからなのね」

天乃がそう言うと、東郷はくすりと笑みを浮かべた
137 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/13(日) 22:49:48.66 ID:0loehisvo

では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


交流、最後
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/13(日) 23:01:39.76 ID:+1X2JLkuO

ついにラストの東郷さんか…
くあゆシリーズではある意味一番イメージ変わったよな
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/14(月) 03:43:04.89 ID:Ga0rQriWO

まさかの東郷さんが大トリ
140 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/15(火) 21:30:34.22 ID:4YEHaGuro

昨日は出来ませんでしたが、本日は少しだけ
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/15(火) 21:38:52.97 ID:3v9ogef8O
やったぜ
142 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/15(火) 21:55:52.23 ID:4YEHaGuro

天乃「それにしても凄い作りよね、このケーキ」

東郷「色々考えた結果、やっぱりこの形が落ち着くかと……」

天乃「落ち着く?」

形が二段のケーキにするにはそれなりに丁度良くて、

かつ、思い出になりそうとのことで、その形にデザインされた。

食用ではなく、イミテーションケーキとしての制作も予定されたが、

やはり、ケーキカットしてそれをそのまま――というのが良い。という話で

ちゃんと食べられるものになっている。

東郷曰く、航空母艦のなんとかかんとか。

元々は潜水母艦だった――という話のやつだ

天乃「東郷から見ても文句はなし?」

東郷「他に比べれば、隆起点も少なめとはいえ、簡単ではないので……作って頂けただけ感謝です」

見せて貰ったデザインと比べると、

柱のみの部分が埋められていたりと

やや手が加えられているが、そこは重量的な問題なのだろう

甲板と言っていた部分は、

ケーキカットを考慮してチョコレートなどのプレートではなく、スポンジになっているように見える
143 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/15(火) 22:18:17.49 ID:4YEHaGuro

天乃「思ったのだけど、航空とか潜水とか色々あるけど船が二つに――」

東郷「それはそれです」

航空母艦だろうが潜水母艦だろうが、

二つに切られてしまったらどうなるのか……は同じ結末なのだけれど

東郷としては、そこは一考の余地もないらしい。

天乃は少し考えて、笑みを浮かべる

天乃「そうね」

東郷「久遠先輩――いえ、天乃さん。ようやくですね」

天乃「長く待たせちゃったわね」

東郷「いえ、待たせたのは私達です」

いつだってできた

いつでも良かった

けれど、みんなが大人になるまではと時間をかけて今になった。

付き合いを始めてから約8年

全てが終わってから7年

一人一人が、1年ずつ時間を貰ったと思えば、ちょうどいいのかもしれない。

東郷はそう考えて

東郷「一人ずつで考えれば、約1年半の交際での結婚ですし……程よいかと」
144 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/15(火) 22:30:16.69 ID:4YEHaGuro

天乃「なるほどねぇ」

そう考えれば、確かに交際の始まりから結婚までの期間的に言えば、

遅くもないし早くもない

丁度いい期間なのかもしれない。

実際には、みんなで住んでいるし、約8年間なのだけれど。

天乃「東郷もだいぶ落ち着いてくれたし……」

東郷「あれは重要だったからですよ。そうしなければいけない。そうしないと――だったから」

東郷は約8年前のことを思い返して、

少し寂し気に、目を細めながら静かな笑みを浮かべる

東郷は天乃の体の問題が無くなってからというもの

積極性は控えめになっていった。

もちろん、その感覚の恋しさや自分以外の相手がいることもあって

普通の人に比べれば欲求は多かったかもしれないが、

それでも、全盛期よりは控えめになっていった。

東郷「ですが――今夜は、久しぶりに興起しても良いかもしれません。いえ、しているかもしれません」

天乃「それはちょっと」

東郷「責任は、取ってくれると信じています」
145 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/15(火) 22:36:59.29 ID:4YEHaGuro

にっこりと微笑む東郷は、

やはり、以前に比べればとても大人びている。

可愛らしさよりも優美さが勝っていて、

それに触れたことがなければ、息を飲んでしまうほどに。

しかし、その中にも学生だった東郷の雰囲気はまだ残っているように思う

そうしてくれると信じている、期待

それを感じるからだ。

天乃「そう言われると弱っちゃうのだけど……」

東郷「大丈夫ですよ。明日はお休みです」

天乃「そうなのだけど、でも、待って……それはここで言うべきではないわ」

押し倒そうとでもしているかのように

ぐいっと距離を縮めてきた東郷から、天乃は思わず足を下げてしまう。

最近の東郷なら大丈夫

けれど、今ばかりは少し心配で

それを察しているのだろう、東郷は「大丈夫です」と先手を打って

東郷「本番は夜――ですから」

天乃は、普段は控えているだけなのだろうかと困ったように笑った
146 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/15(火) 22:58:16.62 ID:4YEHaGuro

東郷「手、握っていいですか?」

天乃「え、ええ……」

ナイフではなく天乃の手を握りたいと言った東郷は、

天乃がナイフを持った手にそのまま手を重ねて

申し訳程度に添えられたもう一方の左手が、ナイフに触れる

東郷「やっぱり、お綺麗です……」

天乃「ふふふっ、ありがとう。東郷だって綺麗だわ」

入場前にも話したこと

それをまた、感慨深そうに零した東郷は、

企みの感じない笑みを零して、白い肌を僅かに赤らめる

東郷「私にも、して貰えますか?」

天乃「驚きたい? 驚きたくない?」

東郷「胸に優しいものが良いです」

天乃「難しいけど、善処してあげる」

東郷の自分を見ないお願いに、

天乃は寄り添いながら、囁くように答えて……ケーキへとナイフを降ろしていく

東郷も、綺麗だけれどまだまだ可愛らしい。

そう思って、天乃は気付かれないように笑みを浮かべた
147 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/15(火) 23:00:33.83 ID:4YEHaGuro

では短いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/15(火) 23:08:40.15 ID:IUhUbzZsO

もしかして結婚式の後に夜のパート(意味深)とかあるのだろうか
東郷さんとかやる気満々なだけに期待してしまうな
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/16(水) 02:04:28.85 ID:8bCsKC6HO

東郷さんが楽しそうでなにより
150 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/16(水) 21:51:34.48 ID:YNGPeqm/o

遅くなりましたが、少しだけ
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/16(水) 21:56:47.14 ID:CQSOmCxPO
あいよー
152 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/16(水) 22:42:05.10 ID:YNGPeqm/o

ナイフを引き戻す力には少しばかり東郷の抵抗感が加わる

邪魔をしようとしているというより無意識なその力は

天乃の力を感じてか、すぐに抜けていく

天乃「緊張しているのね」

東郷「……そうですね」

天乃「期待してるって、言っても良かったのに」

東郷の手が離れるのを感じた天乃は、

ナイフをテーブルの上に戻して東郷の体に触れる

まだケーキは口にしていない。

なら大丈夫、接吻は行わない。

そう思っていた東郷は驚いて、僅かに後退りしてしまう

東郷「せんぱっ」

天乃「もちろん、まだしないけどね」

東郷「っ……」

天乃「それともケーキなんて関係なく、キスがしたいのかしら」
153 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/16(水) 23:38:15.98 ID:YNGPeqm/o

東郷「……意地悪、ですね」

天乃「いつもの私でしょう?」

東郷「それはそうなのですが……」

分かっていながら、分かっていないふりをする

それを使ってからかって、

求めても求めなくても

分かってくれているから、愛してくれる

東郷「胸に優しくしてください」

天乃「そのくらいの包容力はあるでしょ?」

触れるのはさすがにないと思ったのか、

天乃は東郷の胸元を指さすだけで、何もしない

浮かべる笑みはいつものいたずらっ子

東郷「そんな包容力は詰まってませんっ」

天乃「私には、詰まってるんだけど……」

東郷「もう……先輩ってば」
154 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/17(木) 00:10:22.56 ID:V5SiqgpSo

天乃さんと呼ぶより、言いやすい先輩

学校を卒業していなくても、しても

結婚しようとしまいと、

天乃はずっと先輩で、東郷はずっと後輩で

頑張って下の名前で呼ぼうとして

夏凜や風の「天乃」に憧れて

けれど、どうしても呼ぶことが出来ない

天乃「東郷――」

東郷「美森です。天乃さん、私は美森です。久遠美森です」

天乃「そうね。美森」

天乃は、まるで初めからそう呼んでいたかのように

慣れた様子で、東郷の名前を呼ぶ。

その表情は嬉しそうで、優しくて

東郷「あの……」

天乃「食べたい? 食べさせたい?」

天乃が基本的に「東郷」と呼ぶ理由

それを改めて口にされてはと思ったのか

天乃はスプーンを手に笑みを浮かべて、東郷の言葉を遮った
155 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/17(木) 00:11:12.45 ID:V5SiqgpSo

では短いですがここまでとさせていただきます
明日は恐らくお休みになるかと思います

明後日は可能であれば通常時間から
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/17(木) 06:11:47.42 ID:Ndor2Lx6O

綺麗な東郷さんととーごーせんせーとの落差が凄いなw
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/17(木) 07:37:49.73 ID:Hxpsl9TjO

先輩呼びもこれはこれでいじらしいな
158 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/18(金) 21:12:06.55 ID:e7CVvo0Do

では少しだけ
159 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/18(金) 21:17:20.17 ID:e7CVvo0Do

自分が天乃を「天乃さん」と呼べないように、

天乃も「美森」と呼びづらいのではと思ってみたものの

まったくの勘違いだった。

天乃はいつだって「美森」と呼ぶことが出来て

けれど、東郷が「久遠さん」や「久遠先輩」と呼ぶから、

それでも構わないのだと……示してくれていて、寄り添っていた

東郷「……食べさせたいです」

天乃「じゃぁ、はい」

東郷「………」

天乃は自分が先に手にしていたにも関わらず、

全く不満のない様子で、ケーキをすくうためのスプーンを手渡した。

ケーキと違って、スプーンは特に手をくわえていない普通のものだ。

というのも、予定としては零戦と呼ばれるかつての戦いに使用されていた戦闘機だったが、

一般の人の知識ではうん十うん式爆撃機だの戦闘機だの攻撃機だのも曖昧だろうし、

その中からさらに個別の名称を持ち出したところで分かるはずもなく。

そのため、

ケーキのデザインを航空母艦、龍鳳にするだけに終わったのだ。
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/18(金) 21:17:34.36 ID:s42V2gyCO
よっしゃ
161 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/18(金) 21:46:01.70 ID:e7CVvo0Do

ケーキを前に、天乃を隣に。

東郷はどうしても緊張してしまいながら、

跡が残ってしまうくらいに握りしめてしまっている東郷は、

食べさせるとは言ってもと困った様子で、手を止めてしまう

東郷「少しだけで良い……ですよね?」

天乃「ん〜――」

天乃は少し考える素振りを見せる

けれど、鷲尾須美としての付き合いを含めれば、

約10年と言っても良いほどの付き合い

それでなくても敏感な東郷は目を細めて

東郷「悪戯なこと言っても、本気にしますからね」

天乃「あら……」

とんでも無いことを言われる前に先手を打つ。

驚いたような顔を見せた天乃だが、

選択肢を潰しきれたわけではないのは、東郷でも分かってしまう

天乃「私はただ、貴女の気持ちの分を食べさせて欲しかったのだけど――多すぎるわね」

残念だわ。なんて

困った顔をする天乃は、本気に見えた
162 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/18(金) 22:22:55.68 ID:e7CVvo0Do

東郷「……多すぎますね」

気持ちの分を食べさせるとなったら、

残念ながら、この空母ケーキでは物足りない。

良くある数段積み重ねたウェディングケーキであれば、

ギリギリ足りるかもしれない

東郷「なので、少しだけにはなりますが一口で食べられる分にします」

天乃「一口分だけ?」

東郷「天乃せ……さんには、いつだって綺麗でいて欲しいと思うので」

天乃「ふふっ」

先輩と言おうとして、堪えて

そうして天乃さんと言った東郷は、

本当に天乃の小さな口でも一口で食べられる分をスプーンですくうと

天乃の方に差し向けて

東郷「では」

天乃「ん……」

東郷「ぁ……あ〜ん」

ただ目を閉じた天乃に対して、

東郷は周りの視線にちょっぴり恥じらいを見せながら、

二人きりや、みんながいるときには良くやるそれで、天乃に食べさせた
163 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/18(金) 23:49:45.51 ID:e7CVvo0Do

本当にたった一口で食べきれる分のケーキは、

すんなりと天乃の口の中に納まる

普通のケーキを食べる一口分のようなそれは、

あっさりと口の中に消えてしまう

ケーキを食べさせ合う、ファーストバイト

その想いを伝えると考えるとやや心許ないかもしれないけれど、

それでいいと東郷はスプーンをテーブルの上に置こうとして

天乃がその手を掴む

天乃「貴女がまだよ」

東郷「えぅ、あ……」

天乃「ふふっ、同じスプーンは駄目かしら」

いつも……ではないにしても、

食べさせあいもしている東郷としては吝かではない

東郷「天乃さんが良いのでしたら……」

天乃「いつものことでしょ?」

東郷「そう、なんですが……あんまり、言われてしまうと困ります」

天乃と東郷のやり取りを見守る友人や肉親

その視線から逃れるように左手で影を作った東郷は、

しかし、赤らんだ耳元がはっきりと見えていた。
164 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/18(金) 23:53:08.13 ID:e7CVvo0Do

では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/18(金) 23:59:45.30 ID:+TCNlBQgO

東郷さんも恥じらいがあるとやっぱり可愛くなるなぁ
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/19(土) 02:44:17.10 ID:bcFPb2v+O

かわいい
167 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/19(土) 21:17:46.64 ID:787yLgaEo

では少しだけ
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/19(土) 21:44:59.84 ID:jNew4cLWO
きてたか
169 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/19(土) 21:52:11.04 ID:787yLgaEo

東郷がすくってくれたのと同じくらいの量を、スプーンですくう

この場ではやっぱり少し物足りなさがあるが、

食べさせあうのはちょうどいい感じかもしれない

天乃「ぁ〜ん、して」

東郷「……いざやるとなると、恥ずかしいですね」

天乃「喫茶店でだって、したことあるじゃない」

東郷「ありましたけど」

高校生時代の話だ。

共学に進んだ天乃達

男子にも積極的に絡んでいく天乃や友奈

控えめな東郷達

それはもう、みんな揃いも揃って人気だった。

当然のように言い寄る男子はいたし、

下駄箱にラブレターなんて古式ゆかしい手法が使われることもあった。

それがどれほどあったのか覚えがないが

天乃達の中の誰かが「もういっそ、公にいちゃつけばいいんじゃないかな〜」と

趣味8割の気分で言い出したので、決行したのだ

東郷「それとこれとは話が――」

天乃「一緒よ。あの時も今も、私のことだけを見ていてくれればいいんだから」
170 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/19(土) 22:42:34.00 ID:787yLgaEo

東郷「先輩……」

天乃「先輩って呼ばれると、本当にあの日の再現になるわね」

東郷「っ」

天乃「はい」

天乃は容赦なく東郷へと攻めて、

東郷の準備が整わないうちにケーキを乗せたスプーンを差し出す。

周りのみんなからの視線が集まってきていて

東郷の窺うような視線が天乃へと向かう

けれど天乃は笑みを浮かべているだけで、

スプーンを差し向ける手は東郷の口元へと近づいていく

東郷「ぁ……」

天乃「あ〜ん」

東郷「あ……あ〜……ん……」

きゅっと目を瞑った東郷は、

意を決したように口を開けて差し出されたスプーンに食いつく

かつんっと小さな音がスプーンから伝わって

唇がクリームを完全に舐めるように滑り、艶々としたスプーンが残る
171 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/19(土) 23:25:21.17 ID:787yLgaEo

すぐに離れた東郷は動く口元を手で覆い隠しながら、

カメラのシャッター音から顔を背けるものの、

それでは良い写真が撮れないと、

こっち向いてという声が多くかけられる

天乃「大丈夫?」

東郷「大丈夫……です」

天乃「とてもそうは見えないのだけれど……」

白い肌はもう真っ赤で、

視線が欲しいと求められていても答える余裕もない

羞恥心に負けている東郷は

しかし、天乃にとってはとても愛らしいもので

悪戯なしとは言うけれど、

東郷達が常日頃言うように

これは【誘い受け】なのだろうと思って、東郷の頬に触れる

天乃「だから言ったじゃない――私だけを見てって」

東郷「っ……んっ」

優しく、唇を重ねる

驚きと、戸惑いと

揺れる東郷の瞳が瞼に覆われていくのを見守って、

天乃はみんなよりも少しだけ長くキスをする
172 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/19(土) 23:26:20.76 ID:787yLgaEo
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日はできれば通常時間から
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/19(土) 23:32:43.94 ID:bHr40soNO

久遠さんが誘い受けを極めた結果、あの東郷さんがタジタジに…
その分夜の時間がえらいことになりそうだけども
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/20(日) 00:10:16.65 ID:ws8freybO

あの久遠さんがつよくなってる!?
175 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/20(日) 21:10:22.83 ID:70mqTrdNo
では少しだけ
176 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/20(日) 21:30:40.36 ID:70mqTrdNo

天乃「っふ……」

東郷「ぁ……」

離れていく天乃を追いかけるように、

東郷は瞼を開いて、その瞳に天乃を捉える

少し、キスが長かったのかもしれない

東郷の手は天乃の頬へと延びて、もう少し先を求めてしまう

天乃「東郷」

東郷「美森です……天乃さん」

天乃「……美森」

手のひらの温かみを頬に感じる天乃は

しかし、それを払わないまま、東郷へと声をかける

東郷は自分の状況を分かっているだろう

分かっていても、もう少しだけ。と、思っている

いつもよりもずっとずっと甘いキス

それはとても心地よくて、解けていくようで

天乃「落ち着いて」

東郷「落ち着いています、冷静です」
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/20(日) 21:32:03.65 ID:CtaJ9SEuO
きてたー
178 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/20(日) 22:11:45.22 ID:70mqTrdNo

天乃「流石に必要以上には……ね?」

一回は、みんな―参列者ではなく夏凜達―も許してくれる

けれど二回目はいけない

それをやってしまったら無法地帯に陥る

かつて鈍いと言われた天乃でも

約8年間、7人との付き合いを続けてきたら

何が調和を崩壊させ、自分の明日が危ぶまれるのかはそれなりに分かっているつもりだ

だから――駄目だ。

東郷「私には、必要なんです」

天乃「それはそうなんだろうけど」

東郷には必要だが、

みんなにだって必要なこと。

なので

天乃「また後で、ね?」

少し未来の自分に丸投げする

どうなるかは体が覚えているのだが、仕方がない。
179 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/20(日) 22:27:47.57 ID:70mqTrdNo

東郷「先輩……」

天乃「いい?」

東郷「それなら」

頬に触れていた感触が離れていくのを感じて、

天乃は一先ず安堵のため息を零す。

頑張れ数時間後の自分。と、

自分が通って来た道半ばからの視線に天乃は眉を顰める。

天乃「ねぇ、美森」

東郷「はい」

天乃「私は別に、強制する気はないわ」

東郷「えっと……」

天乃「鷲尾でも東郷でも久遠でも。貴女が須美であり美森であることには変わりがないんだもの」

他の人が聞けば困るとは思うけれど

それらの人に教えるような目的でもないのであれば、好きに呼んでも問題はないだろう

少なくとも、二人の時にそんな気遣いは不要だ

天乃「貴女にとっての私を、好きに呼んで頂戴」

それが先輩なら先輩で良い

久遠なら久遠でもかまわない

もちろん、下の名前で呼んでくれるのならそれも良い。

ただ、無理はさせたくないと天乃は思って、東郷へと笑みを浮かべた
180 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/20(日) 22:28:42.88 ID:70mqTrdNo

では途中ですがここまでとさせていただきます
明日は場合によってはお休みをいただく可能性があります

明後日は、可能な限り早い時間から
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/20(日) 22:52:53.01 ID:vnwP0nQqO

ここに来るまでみんなとのバランス取るのは大変だっただろうなぁ
特に性欲の発散とか…
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/21(月) 03:00:22.52 ID:tw375kkbO

東郷さん欲求爆発しかけてる
183 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/22(火) 20:47:12.82 ID:erUTdUhoo
では少しだけ
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/22(火) 21:06:09.41 ID:m1fXO6+NO
よしきた
185 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/22(火) 21:12:22.86 ID:erUTdUhoo

披露宴がただのいちゃつきの場になりつつある中、

飽きもせずに見守ってくれるみんなと

もんもんとしてしまっている夏凜達

広がりつつある温度差を仕切りなおすようにお色直しが行われた。

天乃、東郷、園子、樹がウェディングドレスからタキシードに

夏凜、友奈、風、沙織がタキシードからウェディングドレスへ

女性だったのが男性、男性だったのが女性に切り替わると

それはまた大きく印象が変わってくる

ただ、

タキシードに切り替えた4人のうち2人ほど、

着付け役が男性らしく胸元を控えめにすることを諦めざるを得なかったが

どうにか形にはなった。

樹「まさか、男装用に強く絞めたら出てきちゃうとは思いませんでした」

天乃「子供産んでるからね……何度も」

園子「それを除いても絞めきれなかった人もいるんよ〜」

東郷「やめてそのっち」

樹「それはそれで男装らしくて良いんじゃないでしょうか?」
186 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/22(火) 21:59:37.44 ID:erUTdUhoo

相も変わらず……と言ってしまうと、

樹には可哀想だが、

大きくなったと言っても本当に微量で、ストン……としている。

樹自身はもう、

それを特別コンプレックスに思うことはなくなったが、

やはり、天乃達と並んでしまうと小さく見えてしまう。

園子「髪型が同じでも、衣装が違うと全然違うもののように見えるんよ」

天乃「そう?」

新しいタキシード組も比較的髪が長い

みんなポニーテールで纏めているのは

天乃といえば、その髪型だったからだ。

今の天乃は家の中ではとてもラフだ

下はパンツ系で、上はTシャツ

冬場はもう少し厚着をするが、ほとんどが袖の長短くらいの違い。

そしてオプションでエプロンをつけているくらいで

子供達に猫じゃらしに飛びつく猫のように引っ張られることもあるからと

髪を降ろしているのが普段の天乃だ
187 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/22(火) 22:32:49.77 ID:erUTdUhoo

樹「えっと……美森、さん。も、天乃、さんも格好いいですよ。とっても似合ってます」

天乃「先輩でもいいのよ?」

樹「っ」

タキシードを着てにっこりと微笑む天乃は、

流麗というべきか、とても様になって見える。

胸の主張が激しいので、異性とは到底勘違い出来ないが

それでも、恋をしてしまった樹としてはドキリとしてしまうもので。

園子「わっしーは普段スカート系が多いけどパンツも似合うね〜」

東郷「それはそのっちも同じでしょう?」

園子「私はよくよく履いてるから。それ以上に履いてる天さんはむしろだからこそ様になってる」

天乃「褒めても出せるものなんてないわよ?」

樹「やっぱり佇まいが違いますね。私も、後一年で同じようになれると思います?」

東郷「樹ちゃんには樹ちゃんの良さがある。可愛いは正義だって、風先輩も言ってるでしょ?」

樹「お姉ちゃんを参考にするのは、ちょっと間違ってる気がするんですが」

樹が困ったように言うと、

そのずっと後ろの方、

廊下を埋め尽くすような影が近づいてきて

風「なぁにか……嫌な話が聞こえた気がするんだけど?」

樹「気のせいじゃないかな」

沙織「意外に辛辣だよね。樹ちゃんって」
188 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/22(火) 23:26:22.02 ID:erUTdUhoo

天乃「似合ってるわよ、夏凜」

夏凜「お世辞はいいから……別に」

天乃「本心なんだけど」

東郷「友奈ちゃんも素敵よ」

友奈「えへへ……ありがとっ。東郷さんも格好いいよ」

照れくさそうに顔を背ける、ウェディングドレスの夏凜と

嬉しそうに満面の笑みを浮かべる友奈

その対照的にも見える可愛らしさには、園子も沙織も思わず笑ってしまって

夏凜の「笑うな」という照れ混じりにそれは増長する

天乃「沙織も、流石だわ。私なんて比にならないわね」

沙織「あたしは背が高いだけだよ」

樹「胸も大きいですし、お姉ちゃんくらいに」

風「そのくせ、あたしよりも背が高いからね。やっぱり、モデルになったら?」

沙織「私の身体は売り物にはしないよ〜。天乃さんのものだからね」

ふふんっと胸を張って見せた沙織の視線を感じて、

天乃は笑みを返す

天乃「ありがと、大切にするわ」

園子「天さんはアイドルになれるよね? スカウトされたことあるし」

天乃「小学生アイドルの話でしょう? 鼻で笑ってスカウトの人の顔をひきつらせたから無理だわ」

夏凜達とではなく、娘である星乃達と一緒に買い物をしているときの話だ

妹さんたちとおつかいなのかと言われた時点であれだったが、

小学生のアイドルユニットに加えたいという話だったので、鼻で笑って身分証を提示したのだ。

東郷がそうだったように、胸の大きさで判断するわけにはいかないのは分かるが、

せめて中学生に思って欲しかったと、天乃は今でも思っている。

天乃「それに、私だってみんなのものだもの。この身体を売るつもりはないわ」
189 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/22(火) 23:36:39.25 ID:erUTdUhoo

では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


みんなで交流で最後
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/22(火) 23:53:36.30 ID:Pu9JnvJxO

久遠さん実年齢に反して見た目が全体的にエロさを感じさせるなぁ

それにしても三周目は泣いても笑ってもこれでラストか…
次の四周目があるのかずっと気になってるけどまずはきっちり最後を見届けたいな
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/23(水) 03:43:34.67 ID:z/92Pv1UO

とうとう集大成か
192 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/23(水) 22:27:54.17 ID:OJcz1fPPo

すみませんが本日は所用のためお休みとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/23(水) 22:37:40.69 ID:X/tiOf4CO
乙ですー
194 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/24(木) 23:15:45.82 ID:cLOIf6uNo

遅くなりましたが、少しだけ
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/24(木) 23:28:02.69 ID:eIlwjoYFO
よっしゃ
196 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/25(金) 00:11:33.53 ID:aqSWokNWo

風「別にアイドルだってモデルだって体売ってるわけじゃ無いんだけどね」

東郷「ある意味ではそうとも言えるかもしれませんが」

園子「本当の意味で体を売った経験もある私達としては、人目に晒すくらいどうってことないんよ〜」

天乃「命も、懸けたものね」

今となっては、過去の話。

最後の最後まで死にかけたのが天乃だからか、

友奈達はそれを軽く言うのはまだ不満なようで、笑い事ではないと首を振られてしまう

友奈「命を賭けるくらいなら、天乃さんにはアイドルやって貰いたいです」

沙織「あたしマネージャーやっても良いかなぁ?」

夏凜「事務所はいる必要あるんじゃないの?」

そういう仕事のことなんて詳しいことは知らないけれど、

そうされてしまうくらいなら、アイドルでもモデルにでもなって、

いなくなることなんて、一切考えられない状況になってしまう方が良いと

みんなが思っている
197 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/25(金) 00:53:05.95 ID:aqSWokNWo

天乃「止めてよ、私……小学生でデビューなんてしたくないわ」

天乃の本来の年齢を考えれば

今からというのは、やや難しいのかもしれない。

しかし、それを隠して

中学生―小学生―でも通せなくもない状態で成長が止まってしまった天乃が

それで押し通したとしても、

その年齢での子持ちは、アウトである。

もちろん、子供がいようがいまいが天乃はそんな詐称などする気もないけれど

天乃「ほら、みんなもう待っているんだから」

夏凜「それもそうね」

東郷「友奈ちゃん」

友奈「え、本当にするの?」

東郷「賑やかしよ。賑やかし」

困り顔の友奈ではあったけれど

東郷が両手を広げると、友奈は「せっかくだからね」と、苦笑して体を委ねる

東郷はとても手慣れた様子で、友奈の体を抱き上げた
198 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/25(金) 01:22:06.61 ID:aqSWokNWo

風「……やる?」

樹「お姉ちゃんは、妹にお姫様抱っこされて嬉しいの?」

風「棘が痛い」

樹「痛いのは視線だよ〜」

そう言った樹は少し照れくさそうに笑うと、

でも、私も力はあるんだよ。と、自慢気な表情を見せる。

介護は力仕事というわけではないものの、

力はあるだけあったほうが良い。

とりわけ、夏凜達に付き添って人並み以上に体力もついている樹は、

太っているわけでもないたった2歳上の姉を抱き上げるくらいは問題なく出来る

ゆえに当然ながら、天乃のことも簡単にお姫様抱っこ出来てしまう。

樹「サプライズ、やってみたい?」

風「言うようになったじゃないの……ほんと」

樹「お姉ちゃんの妹で、歌野さん達の弟子で天乃さんのお嫁さんだもん。強くもなるよ」

にっこりと浮かべる樹の笑みがとても強かに感じられて

風は逆にしておけばよかった。と、零す。

風「良いわ樹、やってみなさい」

せっかくの披露宴なのだから、少しは面白みある演出があっても良いと、風は樹に委ねた
199 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/09/25(金) 01:24:25.08 ID:aqSWokNWo

では途中ですがここまでとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/25(金) 02:40:07.95 ID:boYNESODO

みんなほんとに楽しそうで和む
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/09/25(金) 06:07:40.44 ID:pgVPFM+fO

幸せいっぱいな空間で素敵な披露宴だな
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