相葉夕美「It's In The Rain」ショタ

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/09/14(月) 23:15:47.99 ID:lAVfNT1f0
デレマスSS
Pドルものではなく、ショタドルものです
地の文
エロはたぶん40くらいからはじまる予定


エロへ飛ぶ人向けテキトー概要
夏休みを兼ねた休暇で祖父母が暮らす田舎へ夕美が帰省する
そこで従兄弟のボクと再開する
翌日、ボクと川へ一緒に遊びに行き、帰り際に夕立に降られ、一緒にお風呂へ入る
そして・・・
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/09/14(月) 23:16:56.27 ID:lAVfNT1f0
「んんっ。ついたー」
キャリーバッグを列車から降ろした夕美は、列車に揺られ、固くなった背筋を伸ばしながら空を見上げた。夏の空の青は深く、湧き上がる雲の白がよく映えている。柔らかな温かい風が吹き、白い小花が乱れ咲く、空の青より少し深い、瑠璃色をしたワンピースの裾を揺らす。夕美は手を空にかざし「よしっ」と呟き、ホームを後にした。
駅舎はプレハブ小屋を思わせ、駅員はおらず、回収ボックッスに切符を入れ、外へ出る。気持ちばかりの猫額のようなロータリー。車、タクシー、バスは一台も止まっていない。
「かわってないなー」
苦笑気味に夕美はこぼした。けど、口元には微かな笑みがうっすらと浮かんでいる。笑みを浮かべたまま夕美は歩き始めた。
駅の近くは、家は群れをなしていたが、少し離れるとまばらで、たわわに穂を実らせた稲が隙間を埋め、その先に緑生い茂る稜線。時折吹く風が遠くから蝉時雨を運び、稲穂を揺らしさざめかせる。
夕美は風音に耳を傾かせ、どこか懐かしむように道を進むと、目的地である黒い屋根瓦が特徴的な家が見えてくる。屋根瓦は日差しを照り返し、輝いている。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/09/14(月) 23:17:26.00 ID:lAVfNT1f0
その家の二階窓からから外を眺める、高学年くらいの少年の姿。少年はそわそわと落ち着きがなく、しきりにあたりを見回し、誰かを探している。
夕美が家に着く直前、夕美の姿を確認した少年は慌てた様子で身を隠すように部屋に身体を引っ込め、窓から覗くように夕美を見る。夕美はその少年の存在に気がついていない。
夕美は家に着くと口元に笑みをしたため「たっだいまー」と呼び鈴を鳴らすことなく、引き戸の玄関を開けた。玄関に鍵はかかっていない。
玄関にキャリーバックを置き、パンプスを脱いでいると、奥から「よーけ来たな、夕美ちゃん」と優しい女性声がした。夕美が振り返ると老女の姿が。夕美は廊下に上がると「おばーちゃん」と老女にハグをする。
「夕美ちゃん、いらっしゃい」
老女の後ろから女性が声をかけてきた。
「あっ、オバちゃん。ひさしぶり」
老女にハグしたままオバに笑みを見せる。
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/09/14(月) 23:17:54.67 ID:lAVfNT1f0
「ひさしぶり」オバも夕美釣られるように笑みを見せたが、ため息をつき「もー、空港まで迎えに行ってあげたのに」
「えへへ、ごめん。ちょっと空港から電車に乗って来たかったの」
夕美はあっけらかんと笑いい、他の二人も釣られ笑う。玄関が一気に華やぐ。その様子を、外を眺めていた少年が階段上から気付かれぬよう、聞き耳をたてている。
その事に気づいていない夕美はあたりをキョロキョロ見ながら「ところでボクくんは?」と少年の名前を出した。
オバ、少年の母親はため息交じりに「いるわよ。なにしてるのかしら」と階段を見ながら声をかける。「ボクー。ゆーみちゃん来たわよー」
階段上に居たボクはどきりとする。けど息を整えるだけで、降りようとはしない。
「なにしてるのかしら?」オバは首をかしげ「ボクー、ゆーみちゃんが来たわよー。降りてきなさーい」
母親からの呼びかけにわざと間を置き、少し面倒臭そうな態度を作り、階段を降りていく。
「やっと降りてきた。もー、夕美ちゃん待たせて」
やっと降りてきたボクに母親はため息をもらした。
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/09/14(月) 23:18:25.76 ID:lAVfNT1f0
「あはは、大丈夫だよ。私も今ついたところだから」夕美は笑い、ボクの顔をまじまじと見て「久しぶりだね」
柔らかに笑う。久々に会う夕美は昔から綺麗だったが、アイドルになり一層垢抜け、その笑みはテレビや雑誌などで見せる切り取られた笑みとは違い、無作為で、春の日差しのように柔らかく暖かい。綺麗になった夕美を前にボクは言葉を失い固まってしまった。
「あれ・・・?私のこと。わすれちゃった」
反応がないボクに夕美は戸惑う。
違う。と否定、叫びたいが声がでない。恥ずかしく、夕美を直視できずに視線を泳がしてしまう。
「夕美ちゃんがきれいになりすぎちゃって戸惑ってるのよ」
母親がため息と笑いを交えるように言った。ボクは母親を慌て、何いってんの。と睨むと、母親はニンマリと笑みを口元にしたため「だって一週間前から、何時にゆーねーが来るの。来るの。ってもう忘れるはずのないくらい、ひつこく何度も聞いてきたのよ」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/09/14(月) 23:18:52.74 ID:lAVfNT1f0
「おかーさん」
夕美にホントのことを暴露されボクは声を上げ、あーもう。ゆーねーにゆーねーが来ること楽しみにしてたのバレちゃったじゃん。と恥ずかしくなり、ほんのりと顔を赤く染め俯いた。
頬をかすかに赤らめ、うつむき恥ずかしがるボクを見て、ふふっ。と夕美は口の端をかすかに上げ「私もボクくんに会うの、すっごく楽しみだったよ」
夕美の言葉にボクは恥ずかしがりながらも顔を上げた。
大輪のひまわりのように咲きほこる夕美の笑顔。ボクはドキッ。と、ときめき、丁シャツの胸元をくしゃりと握り、言葉を失う。
「夕美ちゃんも遠くからご苦労さま。ひとまず荷物部屋に持ってくね」
生暖かい目でボクを見ていた母親が、夕美のキャリーバックを持っていこうとする。
「私が持ってきますから」
夕美がキャリーバッグを持とうとすると、小さい手が先にキャリーバッグを奪い去る。
「あっ」
「ボクが持ってく」
キャリーバックを奪ったボクは抱えるようにキャリーバックを持ち、階段を登っていく。夕美は小さい背中に向かって微笑んだ。
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/09/14(月) 23:19:33.78 ID:lAVfNT1f0
「運んでくれてありがと」
部屋に荷物を運ぶと夕美はボクにお礼を言った。部屋はベッドと机と椅子があるだけで他になにもなく殺風景。夕美はベッドに腰掛ける。ボクは別に。とぶっきらぼうに返事を返す。
「もー、昔ははゆーねー、ゆーねーって私のあとを追いかけてきたのに、クールでかっこよくなっちゃて。このー」
「ゆーねー子供扱いやめて」
「えー、私から見たらボクくんは子供だよ」
ボクを正面から抱きしめ、夕美は髪をわしゃわしゃとなでる。
「ちょっ。ゆーねー」
力強く引き寄せられる。ボクは必死に抜け出そうとするが、抜け出せない。花畑にいるようなふんわりと優しい芳香。少しかたく、柔らかい不思議な感触がボクを包み込んでくる。優しい芳香と柔らかな感触に包まれるうちに、下半身。ボクのがムズムズしてくる。
なんで。徐々に硬くなっていくボクのに、ボクは恥ずかしくなる。
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/09/14(月) 23:20:08.24 ID:lAVfNT1f0
「ゆーねー」
ボクは微かに顔を上げ夕美を見る。眩しい夕美の笑顔。ボクは思わず芳香な柔らかな感触に顔を埋めた。
あっ・・・。
その瞬間芳香な柔らかな感触の正体がわかった。
ゆーねーのおっぱい。
芳香な柔らかな正体が分かると、余計にボクのがムズムズして、硬くなっていく。夕美はボクの変化に気がついていない。夕美は加減することなくボクをくしゃくしゃと撫でる。
「ゆーねーやめて」
硬くなっていくボクのが恥ずかしく、夕美を弾き飛ばすようにベッドへ押し倒した。
「きゃっ」可愛らしい悲鳴をあげたが「やったなー」笑いボクを見上げた。
見下ろしてくるボクは、まだ幼さが残りながらも、微かに凛々しさや逞しさを感じる。しばらく会わなかったボクの成長に口元を緩めた。
「力強くてゆーねーびっくりしちゃった。それに、ゆーねーが知らない所でボクも大人になってるんだね」
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/09/14(月) 23:20:54.41 ID:lAVfNT1f0
腕の下で笑う夕美は、ボクが持つ言葉では形容できないくらい綺麗になっていた。けど些細な仕草は昔と変わらない。ボクの知ってるゆーねー。でも、ボクは思わずつばを飲み込み、艶やかに光る桜桃色の唇。唇に触れてみたい。心臓の鼓動が速くなる。
ゆっくりと夕美の唇が近づいてくる。
「あんた何してるの。子供じゃないんだから。夕美ちゃんに迷惑かけない」
声がしたほうを向くと母親の姿。ボクは慌てて夕美の上から退いた。
「違うって」
「はいはい」声を荒げたボクを無視し「おばあちゃんが夕美ちゃんとお話したいって。降りてこれる?」
「はい」夕美は起き上がり言う。
「お茶とお菓子用意しとくね」
母親は部屋を後にする。手持ち無沙汰になってしまったボクは、バツが悪そうな渋い表情を浮かべ「ボクもう子供じゃないから」と言い部屋から出ていった。
部屋に一人残された夕美は、見下ろしてくる少し大人になったボクの顔を思い出し、頬を緩めた。
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/09/14(月) 23:21:33.92 ID:lAVfNT1f0
部屋に戻り、暇を持て余したボクはベッドに転がり、ゲームを始めた。楽しいのに楽しくない。だって。画面から視線をそらし、部屋壁見る。
夕美のデビューCDの特典ポスター。今ではネットオークションで高額で取引されている。
せっかく本人が居るのに。
ボクはゲームを手に持ったまま、部屋を出た。
階段を降り、居間へ行くと、夕美が楽しそうに祖母と母親にアイドルの話をしている。ボクは少し不貞腐れ、何も言わず、夕美の横に座る。
隣に座ったボクに夕美は微笑む。母親と祖母は生温かい目でボクを見る。
ボクは微かに頬を膨らませゲームをしながら、夕美の話に耳を傾けた。
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/09/14(月) 23:22:24.36 ID:lAVfNT1f0
窓の外が橙に染まり始めた頃。母親は台所へ向かい、夕食の支度を始める。三人。実質二人に減ったのに会話は途切れることなく続く。その間ずっとボクはゲームをしつつ会話に耳を傾け続けながら、途切れない会話に半ば感心する。しばらくして夕食をできたのか「ボクー、出来たから取りに来て」と台所から声がする。夕美が「私も手伝う」と立ち上がったが「ボクがやるからゆーねーは座ってて」と言い、台所へ向かった。
母親が腕によりをかけた田舎料理が飯代を彩るとほぼ同時に、地域の寄り合いに出席していた祖父が帰ってきた。祖父は帰ってきた孫娘に一瞬で頬を緩める。
五人揃っていただきます。と言い食べ始めた。父親は急な出張により居ない。会えなくて悔しがっていたと母親が夕美に伝えた。
田舎料理に舌鼓をうちながら、夕美は自身の近況を祖父に話した。
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/09/14(月) 23:23:12.62 ID:lAVfNT1f0
食べ終え、お腹が一杯になり、ボクは欠伸が溢れる。
「ねむそーだね」
「眠くない」
夕美の問いかけにボクは強がる。
「夕美ちゃん、お風呂の準備できたから最初に入ってもらっていいかしら」
お風呂場から戻ってきた母親が夕美に声をかけた。夕美は「あっ、はい」と返事して立ち上がる。直ぐにお風呂の支度に二階に上がらず、ボクを見る。ボクはなんだろうと欠伸を漏らしながら首をかしげると「ねぇ、ボクくん。久しぶりにゆーねーと一緒に入らない?」と聞いてくる。
夕美の一言でボクの目は一瞬にして冴える。
「はっ、はいらねーし。こ、子供じゃないんだから」
慌てた言葉はどもり、語気が強まる。
「えーいいじゃん」
「ゆーねーが良くってもボクが良くない」
「そーお?」
「だから一人で入って」
ボクは夕美の背中を押し、お風呂に入るよう促した。夕美は渋々お風呂の準備に向かった。
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/09/14(月) 23:23:47.89 ID:lAVfNT1f0
夕美がお風呂に入っている合間、ボクはテレビをつけ、音楽バラエティーを見ていた。一組目の出番の出番終わり、二組目。舞台袖から登場したアイドルユニットにボクは現実との齟齬を感じ、お風呂場の方を見てから、もう一度テレビを見る。アインフェリアの一員として純白の制服に身を包んだ夕美の姿。純白の制服姿は凛々しく、かっこいい。ボクは液晶の向こうの夕美に釘付けになる。
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/09/14(月) 23:24:46.99 ID:lAVfNT1f0
瞬く間に夕美の出番は終わってしまった。
舞台袖に夕美が下がっていく。液晶の向こうに夕美の姿が消えると同時に、お風呂から夕美が居間へ戻ってくる。純白の制服ではなく、丁シャツに短パンというラフな出で立ちで、スラリと伸びる四肢とふくよかな胸が強調される。白い肌は微かに上気し、髪は艷やかに光り、桜桃の唇も心なしかふっくらとしている。純白の制服を纏った時とは違う、大人の色香にボクは目が釘付けになる。視線に気がついた夕美は、にんまりと口元に笑みを浮かべ「どうしたの」と声をかけてきた。首元は緩く、谷間が見える。
ボクは慌て、首を横に振り「なんでも」と言って居間から逃げ出した。
部屋に戻り、お風呂の支度をする。階段を降りると、居間からはにぎやかな声が聞こえる。ボクはちょっと聞き耳を立ててから、お風呂へ向かった。
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/09/14(月) 23:25:49.18 ID:lAVfNT1f0
体を洗い、湯船に身体を沈める。ぽかぽかと温かい。気持ちいい。湯船に浸かりながら、液晶の向こうの純白の制服を纏った夕美と、丁シャツに短パンと云うラフな出で立ちの夕美を思い返した。どっちが本当のゆーねーなんだんだろう。違う両方ゆーねー。ボクが知らないゆーねー。ボクが知ってるゆーねー。ボクは沢山のゆーねーを知りたい。ボクは頭まで湯船に使った。
ボクは体を沈めながらあることに気がついた。
ゆーねーが入ったお風呂。
純白の制服ではなく、丁シャツに短パンというラフな出で立ち。スラリと伸びる四肢。白い肌は微かに上気し、髪は艷やかに光り、ふっくらとした桜桃の唇。そして、ふくよかな胸。芳香で柔らかかった。
ムズムズしてくる。
ボクは忘れようと顔を湯船につけた。湯船は暖かく、忘れるどころか鮮明に思い出させる。それに輪をかけるように、この前友達と見た、エッチなサイト裸の女性の写真。写真の女性も夕美と同じくらいふくよかな胸。夕美と女性の写真が重なり、痛いくらいに硬くなる。
ボクは膝を抱え、萎れるのを必死に待った。
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/09/14(月) 23:27:53.38 ID:lAVfNT1f0
ようやく治まり、お風呂から出られた。いつもより長風呂になってしまい、少し頭がぼーっとする。ボクが居間へ行くと夕美を囲んで楽しそうに話をしている。無意識にボクは夕美の横に座った。
体がぽかぽかして、頭がぼーっとする。瞼も重たい。
ボクはうつらうつらと船を漕ぎ始め、夕美にもたれかかる。優しい香りがボクを包む。ボクは夢の世界へ堕ちていく。
もたれかかり寝息をたてるボクに、夕美は口元を微かに緩めた。
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/09/14(月) 23:28:40.89 ID:lAVfNT1f0
蝉の鳴き声とまとわりつく汗でボクは目を覚ました。
眠たい眼をこすり、大きな欠伸を何度もこぼしながら階段を降り、居間へ行くと、いつもいるはずの祖母の姿がなく、夕美の姿。夕美は誰かと楽しそうに電話している。あれっ、ゆーねー?なんでゆーねーがいるの。ボクは眼をこすりながら、昨日夕美が来たことを思い出した。
「ボクくんおはよう」
夕美はにこやかに笑い、ボクに手をふる。ボクは無意識に手を振り返し、無意識に夕美の隣に座る。夕美は横目でボクを見る。
「うん、そうだよー」楽しそうに笑い、夕美は電話の向こうの誰かに相槌をうつ。隣にいるのに疎外感をボクは感じ、唇を微かに尖らせながらも、夕美の相槌に耳を傾ける。
夕美は楽しそうに話していると、突如ボクを抱き寄せた。なに!?ボクが慌てていると、構えたスマホの画面に鷺沢文香の姿。自撮りに慣れていないのか画面が細かく動き「あれ、これで平気ですか」戸惑っている。
「うん、平気だよ」
夕美の一言に、画面向こうの文香は胸をなでおろし「どうにもまだ不慣れなもので」はにかむ。
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/09/14(月) 23:29:22.87 ID:lAVfNT1f0
はにかむ文香にボクはドキリとする。
「ふみふみ?えっうそ。えっ、本物!?」
目を擦り、瞬かせ、画面向こうの人物にボクは驚愕する。
「はい、ふみふみこと鷺沢文香です。初めましてボクくん」
「はっ、はじめまして」
微笑む文香にボクは思わずお辞儀する。
「あれ、なんでボクの名前?」名前を知っていた文香に疑問符が浮かぶ。
「それはですね」文香はボクを抱き寄せる夕美を一瞥してから「夕美さ・・・
夕美から何度もお話を聞いて。先程も、ボクくんのことを楽しそうに話されてましたよ」文香はくすりと笑う。
「そうなんだ」なんだかくすぐったい。ボクは少し恥ずかしながら夕美を見る。夕美はにこりと大輪のひまわりを思わせる笑みを咲かす。ドキッとボはときめき、恥ずかしくなる。
「ふふっ、夕美のお話の通りかわいらしいですね」
目尻を微かに下げ、口元を手で隠し、しとやかに文香は微笑んだ。しとやかな仕草にまたボクはドキッとする。文香にかわいいと言われても嫌な気はしない。
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/09/14(月) 23:30:26.06 ID:lAVfNT1f0
「もう少しお話していたいところなのですが、これからレッスンですので」
「そっか、もうそんな時間か。文香、レッスン頑張って」
「はい。夕美もお休みを楽しんでください。それと」
文香がボクをまっすぐと見てくる。ボクは少し身構える。
「ボクくんもまたね。バイバイ」
ふふっと文香はしとやかに笑い、手を小さくふる。
無意識にボクも手をふり返す。画面が暗くなり、通話終了の文字。文香の姿はもうない。アイドル、ふみふみとお話したなんて夢見たい。
夢?ボクは夕美を見る。
「今のふみふみ本物?偽物のどっきりとか」
ボクは狐につままれたのかように唖然としている。
「偽物って」唖然としているボクの言葉に夕美は笑いをこぼし「正真正銘、本物の文香。ふみふみだよ」
「えっ、なんで」
「なんでって。もー、ゆーねーもアイドルなんだよ」
夕美がアイドル、ふみふみと知り合いであることに、ボクは不思議がる。夕美は苦笑いをこぼした。
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/09/14(月) 23:31:06.33 ID:lAVfNT1f0
昨夜見た音楽バラエティーが蘇る。アイドル鷺沢文香と一緒のステージに立っていたゆーねー、相葉夕美。何度テレビや雑誌などで夕美を見た。部屋にもポスターを飾っている。けどどこかふわふわして、実感が湧かなかった。でも、アイドルの文香と親しげに電話する夕美。本当にアイドルなんだ。とボクは夕美であること再認識した。
「ところでボクくん」
「なっ、なに」
「ボクくんの好きな子・・・って、違う。好きなアイドルって誰?」
「えっ」夕美の質問にボクは上ずった声を出し「その〜」目を泳がす「だれ・・・って、それは」目の前にゆーねー。好きなアイドルを前に言葉に詰まる。
「おっ、もしかしてさっきの嬉しそうな反応からして文香?」
「ちっ、違うって」
「あやしー」
「だから違うって」
「ますます怪しい。ゆーねーにこそっと教えてよ。オバちゃん達には言わないから。ねっ」
夕美はウィンクし、上目遣いでボクを見てくる。かわいい。ボクは夕美の仕草にキュンとする。
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/09/14(月) 23:32:00.42 ID:lAVfNT1f0
「おっ、教えない。ゆーねーには教えない」
「え〜。いいじゃん」露骨に拒絶され夕美は不満そうな顔をしてから、何か思いついたのか口元にうっすらと悪巧みの笑みを浮かべ「ゆーねーに教えてくれたらサイン貰ってきてあげるよ」
サインと言う言葉に心がぐらつく。けど、今この瞬間、一緒にいれること自体が幸せ。軽口すら言い合える。サインなんて目じゃない。
「別にサインなんかいらない」
「え〜、なんで」
「だって」好きな子とはいま一緒にいるから。まっすぐと夕美を見てから視線をそらし「ところで、かーちゃんとばーちゃんは」話もそらした。
「あっ、そらした。まぁ、ボクくんも思春期だから恥ずかしいか。おばあちゃんとオバちゃんなら急な寄り合いで夜まで帰ってこれないって」
「そうなんだ」
「だからなんと!ゆーねーがお昼ごはんを作ります。ボクくんは何を食べたいかな?ゆーねーに言ってみ」
「えっ・・・」急に何食べたいかふられボクは少し戸惑い、考え「オムライス」と言ってから子供っぽかったと後悔した。
夕美は口元に笑みを浮かべている。
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/09/14(月) 23:33:06.55 ID:lAVfNT1f0
「だって・・・」
「だって?」
「この前ツイステに上げてた響子ちゃんとのオムライスが美味しそうだったんだもん」
まくしたてるようにボクは言う。
「ほほう。もしかしてボクくんが好きな子は響子ちゃん。正解?」
「違う」間髪入れず否定する。
「そんなに否定するってますます怪しい」
「だから違うって。ボクが好きなのはゆー・・・」
ゆーねー。と思わず言いそうになり、ボクは慌てて口を隠した。夕美をじとりと目でボクを見てくる。ゆーねーにバレちゃった、かも・・・。夕美は一人うなずき、納得し言う。
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/09/14(月) 23:33:35.23 ID:lAVfNT1f0
「ボクくんが好きな子は・・・もしかして唯ちゃん?いや、柚ちゃん?それとも有香ちゃん。はっ!もしかして雪乃さん。大人の女性が好きなの」
目を輝かせ、一人盛り上がりながらボクを見てくる。
見当違い名前ばかりで、ばれていないことが嬉しいはずなのに、夕美自信の名前が出てこないことが逆に悔しくなり、落胆のため息をこぼした。
「あれ?その反応は違うのか。ボクくんの好きな子はひとまず置いといて、ゆーねーのオムライスを食べる条件が一つあります」
「条件?」ボクは首をかしげた。
「そっ、条件。それは夏休みの宿題をすること」
「えー」
「ぶーたれない。しっかりと宿題はしなくちゃ」
「はーい」ため息を漏らしながら言う。
「素直でよろしい。さっ、お部屋へゴー!」
夕美はボクの背中を押す。
「ちょっ、ゆーねー」
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/09/14(月) 23:34:05.85 ID:lAVfNT1f0
「ボクくんが好きな子は・・・もしかして唯ちゃん?いや、柚ちゃん?それとも有香ちゃん。はっ!もしかして雪乃さん。大人の女性が好きなの」
目を輝かせ、一人盛り上がりながらボクを見てくる。
見当違い名前ばかりで、ばれていないことが嬉しいはずなのに、夕美自信の名前が出てこないことが逆に悔しくなり、落胆のため息をこぼした。
「あれ?その反応は違うのか。ボクくんの好きな子はひとまず置いといて、ゆーねーのオムライスを食べる条件が一つあります」
「条件?」ボクは首をかしげた。
「そっ、条件。それは夏休みの宿題をすること」
「えー」
「ぶーたれない。しっかりと宿題はしなくちゃ」
「はーい」ため息を漏らしながら言う。
「素直でよろしい。さっ、お部屋へゴー!」
夕美はボクの背中を押す。
「ちょっ、ゆーねー」
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/09/14(月) 23:34:33.55 ID:lAVfNT1f0
背中を押され、逃げることが出来ず、階段を登り、部屋の前まで来てしまった。後はドアを開けるだけ。ドアノブに手をかけた瞬間。壁に貼ってある夕美のポスター。机の上に置いてあるグッズの数々を思い出した。
「ゆーねーちょっと部屋の前で待ってて」
慌てながら言い、自分だけ部屋の中へ入ろうとする。
「もしかして・・・お部屋汚いの?」
「ちがっ・・・」否定しようとしたが、ポスターやグッズを片付けることには変わりない「うん、ちょっとお片付けしたいからゆーねー待ってて」
ボクは一人部屋へ入ろうとする。
「そっかー。なら二人で一緒にお片付けしたほうが速く終わるね」
ニコリと笑い有も一緒に部屋に入ってくる。ボクは頭を抱えた。
部屋に入り夕美は中を見渡した。しっかりと整理整頓されていて綺麗。なんでウソついたんだろう。ともう一度部屋を見渡すと、壁に貼ってあるポスターに気がついた。
初めてCDを出した時の予約特典のポスター。
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/09/14(月) 23:35:12.39 ID:lAVfNT1f0
「ゆー、ゆー、ゆー、ゆー・・・ねー・・・」自分のポスターを眺めながら、ボクが言いそうになった続きの言葉の続きを紡ぐ。「もしかしてボクくんの好きな子って私だったの!?」
予想していなかった人物に夕美は驚きの声を上げた。
夕美に好きな人がバレてしまい、気持ちが悪がれないかボクは心配になる。
「そっかー、ふふっ」嬉しそうに夕美は笑い「ボクくんの好きな子は私か」
まんざらではなさそうに言い、部屋の中をもう一度夕美は見回す。本棚には自分が載った雑誌の数々。それにCD。机にはグッズの数々。生写真もある。
夕美にバレてしまいボクはため息を零した。
「ため息こぼすと幸せ逃げちゃうからだーめっ」
柔らかな感触がボクの唇にふれる。夕美がボクの唇を人差し指で押さえ笑っている。ボクは顔を真っ赤に染めた。
「宿題やろっか」
夕美の言葉にボク頷き、宿題と向き合った。
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/09/14(月) 23:36:09.34 ID:lAVfNT1f0
夕美にわからないところを聞きながら、区切りのいいとこまで宿題を終わらせる。何時もより集中でき、宿題も片付いた。
「終わったー」
最後の問題を書き終えると同時にボクは机に突っ伏し、時計を見た。まだ二つの針は頂点を指していない。
夕美は、ふふっ。と笑みをこぼし「おつかれ」優しくボクの頭をなでる。
頭を撫でられるのは恥ずかしい。けどゆーねーに撫でられるのは悪い気はしない。ボクは少し恥ずかしながらも撫でてもらう。
「頑張った子にはご褒美上げなきゃね」
「ご褒美?」
「そっ、ご褒美。ペン借りるね」
夕美はペン立てにある太い黒マジックをとる。なにするんだろう。とボクは夕美の行動を目で追う。夕美は鼻歌交じりに壁に貼ってあるポスターの前へ行き、ペンのキャップを外した。
「ゆーねー、まって!なにするの」
「なにっ?て、私のファンの子にサインしてあげるの」
慣れた手付きでポスターにサインをする。そしてサインの横に口づけする。ポスターに夕美のサイン、キスマークが刻まれる。
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/09/14(月) 23:36:47.63 ID:lAVfNT1f0
「世界で一つだけだよ」
キスマークを刻んだ唇は踊るように言葉を紡ぎ、艶笑をしたため、ボクを誘惑してくる。ボクは顔を赤く染める。
「ふふっ、かわいい」扇情的な瞳でボクを見つめ、優しく頬を撫でる。
大人の女性。初めて見る、夕美の新しい一面、仕草にどうすれば良いのかたわからず、ボクは俯いてしまう。ぐぅ〜。っと、ボクのお腹がボクの心情をお構いなしに音を立てる。
「ぷっ、あはは」夕美はお腹の音に笑う。その笑顔は妖艶でも、扇情的でもなくボクの知っている夕美。夕美は目尻浮かんだ涙を拭い「ご飯にしよっか」
ボクは無言で頷き、一緒に台所へ向かう。

台所に立った夕美の後ろ姿は少し不思議な感覚。ボクは慣れた手付きで料理する、夕美の姿をぼんやりと眺めていた。最初手伝うと言ったけど、やんわりと断られた。料理するアイドル。それも皆が憧れるアイドルの姿にボクは少しばかりの優越感に口元を緩めた。
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/09/14(月) 23:37:25.51 ID:lAVfNT1f0
夕美は二人分のオムライスを完成させる。居間の食台へ持っていき、顔を見合わせ、二人揃っていただきます。と言って食べ始める。
たまごにスプーンをいれると、ふわっとたまごが崩れ、中からケチャップライスが姿を見せる。洋食レストランのオムライスみたい。ボクは心をときめかせ、スプーンで掬い、口に運ぶ。
夕美はボクの様子を少し不安げにジッと見る。
口の中へたまごがふわっと、とろける。美味しい。ボクは感想を言うことを忘れ、勢いよくオムライスを食べる。
その姿を見て夕美は微笑んだ。

名残惜しみながら、最後の一口を口にボクは運ぶ。しっかりと味わってから「おいしかった」と言う。
「お粗末さまでした」
夕美もオムライスを食べ終わる。ボクは自分と夕美の器を重ね、流し場へ持っていこうとすると、夕美が声をかける。
「私やるよ」
「いい、ボクがするから」
「そっか、ありがと」
ふふっと夕美は笑った。
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/09/14(月) 23:37:56.81 ID:lAVfNT1f0
洗い物を終え、ボクの部屋に戻る。好きなアイドルがバレ、もう隠さなくて良くなったボクは、他のグッズにもサイン頂戴とおねだりをした。
夕美はくすりと笑い「いいよ」と快くサインしてくれる。
サインしてもらったばかりのグッズをボクが抱きしめていると「おーい、ぼーくー」窓の外から声がする。ボクは窓から身を乗り出し下を見ると、自転車に乗った友人の姿。
「ユウジン、なーにー?どーしたのー」ボクは声をはる。
「たっつん達と海いかねー」
海と言う言葉にボクはピクリとし、夕美を見る。
「私のこと気にしないで、海行ってきなよ」
夕美はにこりと笑い言う。ボクは頷いた。
「きょーはパス」
ボクの言葉に夕美は戸惑う。
「えー、なんでぇ。ゆうちゃん達も一緒だぞ」
クラスの女の子の名前。ボクの心はグラっとが傾く。ボクは首を横に振り、ちらりと夕美を見る「でもいいやー。親戚来てるしー」
「そっかー。わかった。また今度なー」
「おーう」
友人に手を振る、友も手を振り、自転車に乗って去っていく。
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/09/14(月) 23:38:37.97 ID:lAVfNT1f0
「行かなくてよかったの?」
振り返ると夕美が聞いてきた。
「うん」ボクは頷く「だって皆とはまだ夏休み中沢山遊べる。けど、ゆーねーは明日には帰っちゃう。ボクはゆーねーと一緒にいたい」
帰っちゃう。明日にはゆーねーとバイバイするんだ。その言葉にボクは悲しくなり、丁シャツの裾を握りしめた。芳香で柔らかな感触がボクを包み込む。ゆーねーのおっぱい。夕美がボクを抱きしめている。
「ゆっ、ゆーねー!?」
「ゆーねー、ちょっと嬉しくなっちゃた」ふふっ。嬉しそうに笑ってから、ボクの頭をわしゃわしゃと撫でる。
「ちょっ、ゆーねー、やめっ」
「えー、どうしようかなー」
夕美はボクを抱きしめたまま「私達もどこか行く?」
ボクは夕美の胸に顔を埋めたまま、頷く。
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/09/14(月) 23:39:15.35 ID:lAVfNT1f0
「それならどこ行こっか?」ボクを抱きしめたまま考え、友人の言葉を思い出し「海とか」
海。夕美の言葉にボクはぴくりとする。もし海に行くなら・・・。ボクはビキニ姿の夕美と遊ぶ姿を思い浮かべる。ビキニ姿のゆーねーは砂浜の誰よりも綺麗で視線を集めるだろう。ナンパされたらどうしよう。いや、ボクが追い払う。でも、友人達も海に行くって言ってた。ここの辺で遊べる海岸は一つしか無い。ゆーねーは優しいから、みんなと出会ったらゆーねーのことだから一緒に遊ぶ。そしたら、ゆーねーと遊ぶ時間が少なくなる。イヤだな。
「海はいいや」
言葉にすると自身の狭量な考えが嫌になる。でも・・・。
「そっかー」
夕美は残念そうに言い、ボクを開放する。夕美は少し寂しそう。ボクはどこかゆーねーと遊べる処がないかと思い返す。海・・・。水・・・。かわ・・・。
「かわ!ボク川行きたい」
「川?」
「うん。近くに泳げるところがある」
「へー。そんなとこあったんだ。お家からどれくらい?」
「えっと・・・歩いて30分くらいかな」
「30分か・・・」夕美は少し考えてから「ならそこに行こっか」
「うん」
ボクは満面の笑みで応えた。
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/09/14(月) 23:39:56.38 ID:lAVfNT1f0
ボクは白い丁シャツと赤い半ズボンに着替え、首元にタオルを引っ掛け、玄関で夕美が降りてくるのを待っていた。着替え終えた夕美が階段から降りてくる。黒い丁シャツ、デニムパンツにベースボールキャップを被り、ボディバッグを前にかけている。
「ゆーねー、水着は?」
夕美はふふっと笑い「ナ・イ・ショ。ところでボクくんの方は?」
「ボク?ボクはコレが水着」
赤い半ズボンを指差した。半ズボンで有り水着。
「そうなんだ。スゴいね」夕美はボクをまっすぐと見て「行こっか」
夕美が手を差し伸べてくる。ボクは夕美の手をとる。夕美の手は思ったより小さくて、温かい。ボクは手のひらの中にある温もりを逃さないように少し強く握りしめた。
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/09/14(月) 23:40:41.88 ID:lAVfNT1f0
夏の日差しは眩しく、ガードレールを挟み、道横を流れる川の水面に反射し、田圃の頭を垂れる稲の緑と遠くの山稜の緑を更に映えさせる。暖かな風に稲は揺れ、ささめき、蝉の声と川のせせらぎと混じり合う。夕美は目を細め、引っ張る背中を見る。小さい背中。でも昔よりずっと大きい。今は小さい背中でも、いつの日にか少し見上げる日がくるんだよね。少し先の未来を思い描いた。
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/09/14(月) 23:41:16.26 ID:lAVfNT1f0
しばらく歩くと道が大きく曲がり、川と正反対の方へ伸びる。夕美は川を見る。川は大きな石がいくつも転がり、降りる方法もない。
夕美を引っ張る小さな背中は、川と反対へ伸びる道を進む。
少し歩くと川音は聞こえなくなる。ガードレールの一部が途切れている。小さな背中は途切れたガードレールの合間から伸びる、木々に覆われた道を進む。道は舗装されておらず、藪が生い茂り、足元が少し不安定。蝉時雨が頭上から降り注ぐ。夕美は転けないように慎重に歩く。
また少し進むと道が二股に別れている。小さな背中は迷うことなく左の道へ進む。曲がる瞬間、木製の看板らしきものが目についた。けれど看板は文字がかすれ読み取ることが出来なかった。
藪を漕ぎ進むと蝉時雨に混じり、せせらぎが微かに聞こえてくる。
せせらぎに注意し進むと、木々が途切れ、空間が広がる。川岸は少し広く白い石が敷き詰められている。
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/09/14(月) 23:41:46.96 ID:lAVfNT1f0
夕美は辺りを見渡す。人の姿はどこにもない。夕美とボク、二人だけ。穴場スポット。こんな場所あったんだ。何度も帰省したのに知らない景色に夕美は驚く。驚いている夕美にボクはニヤリと笑みをこぼし、手を離し、体を伸ばすと、丁シャツと靴を脱ぎ捨て、川へ走っていく。
川の中ほどまで泳ぎ「ゆーねー」と手を降る。
ボクはツバを飲み込み、夕美の水着姿に期待する。夕美はボディバッグを置くと川へ、そのままボクの方へ来る。
えっ。
服は着たまま。ボクは動揺を隠せない。夕美は服を着ている事を気にすることなく、川に入ってくる。
川の水は夏でも冷たく、ひんやりとしている。
「気持ちいい」
夕美は口元を緩める。
「ゆーねー、水着は?」
隣へきた夕美にボクは思わず問いかけていた。
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/09/14(月) 23:42:15.86 ID:lAVfNT1f0
「水着?もー、水着なんか持ってきてるわけないじゃん」あっけらかんと笑い「あっ、もしかして・・・ゆーねーの水着姿期待してた」
ニンマリと笑い、図星をついてくる。ボクは思わず顔をそらした。
「残念でした。海や川で遊ぶ予定無かったからね」ニンマリとした笑みを浮かべたまま言い「そっかー。ボクくんはゆーねーの水着姿見たかったんだ」
取り繕う事はもうできない。ボクは素直に頷いた。
「ならさ、来年は・・・海、行こっか」
微笑み夕美は小指を差し出してくる。
「約束だよ」
「うん、約束」
鬼が笑おうが関係ない。ボクを夕美の小指に小指を絡め、来年の約束をした。
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