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【安価でのわゆ】久遠陽乃は勇者である【1頁目】

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2 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/02(金) 23:43:17.54 ID:ApSu2/+I0
立て乙
3 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/03(土) 00:27:25.23 ID:QbAWLxztO

√2015年07月30日 夜 学校


とても大きな地震が各地を揺るがした。

それはまるで今までの日常と交代したかのように、断続的に続く。

友人の一人は「揺れて怖かったね〜」と、にこやかに言う。

知人の一人は「世界の終わりかもね」と、冗談めかして言う。

日本にとって、地震はある意味では死よりも近しい存在であると誰かが言っていた。

だからというわけではないけれど【どうせ大丈夫だろう】という考えが、

子供達にはあったのかもしれない

けれど、陽乃はどうしても不安だった。

確かに、まだ小学生の私でさえ数回経験するほどに日本には地震が多い

でも、いつものように治まってくれる。とてもそうは思えなかった

陽乃「……星が、見える」

「陽乃ちゃん?」

陽乃「見えない? 沢山の星が、少しずつ少しずつ」

「え〜?」

避難所になっている学校の校庭、

暇を持て余している子供たちがまばらにいる中で、隣にいたクラスメイトの子が首をかしげる
4 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/03(土) 00:54:47.81 ID:QbAWLxztO

「星なんて、全然見えないよ?」

陽乃「そう?」

「気のせいじゃないの?」

陽乃「そう……なのかな」

陽乃はそれを完全に否定せずに、目を細める

見えないというのだから見えていないのだろう

少しずつ大きくなっているようにも見える、無数の星が。

久遠家は、古くからの巫女の家系であり、

とりわけ、陽乃には幼少期からみんなには感じ取ることのできない何かを感じ取れる力があった。

幽霊が見えるとか超能力が使えるなんていうものではなく、

ある種の直感めいたものだ

その予感は、よくよく当たる

良いことも悪いことも当たってしまうので、

今はそれを口にするべきではないのではないかと、陽乃は眉を顰めた
5 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/03(土) 01:15:27.56 ID:QbAWLxztO

陽乃「……」

何かが来る。

それは、ただの予感だ。

空に見える星々が、少しずつ近づいてきているように見えるのも、錯覚なはずだ

そうでなければいけない

そうでなければ――と、陽乃が考えを改めようとしたときだった。

陽乃「っ…・…」

「陽乃ちゃん?」

陽乃「……大丈夫」

陽乃……と、どこからともなく呼ばれた気がして辺りを見渡す。

母親の声ではなかったけれど、

不確かではあるけれど

聞き覚えがあるようにも思える――声。

「……あっ、流れ星」

陽乃「え?」

陽乃には相も変わらず見えている星が輝く空を指さして、校庭に出ていた子供たちが騒がしくなる。

星のなかった空に、現れた星

だからこそ流れ星だと評したのだろう。

嫌な予感が強くなる。


1、校舎の中に戻るように呼び掛ける
2、クラスメイトにみんなを屋内に避難させるよう言って、声のする方に向かう
3、大人を探して、校舎に戻るようお願いする
4、声のする方に向かう


↓2
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/03(土) 01:21:29.32 ID:3bPvRyQPO
この時間は下1で良いのでは?
ksk
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/03(土) 01:40:28.74 ID:ELf5e12nO
2
8 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/03(土) 01:48:02.95 ID:QbAWLxztO

では本日はここまでとさせていただきます
明日はできれば早い時間から
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/03(土) 01:54:03.94 ID:ELf5e12nO

なんかわすゆ時代の二次創作って見たことないからドキドキしてきた
どうしてもバッドエンドに寄りがちだよね
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/03(土) 06:20:38.36 ID:tAU9iYopO

ついに始まった謎の多い陽乃さん編
世界は救えなくともせめて全員生存は目指したいところだな

あと上でも言われてたけど時間帯によっては下1~2を変えた方がいいかも
11 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/03(土) 17:25:40.98 ID:GYQ2bJfeo

では少しずつ
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/03(土) 17:33:48.10 ID:oB/qENMbO
やったぜ
13 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/03(土) 17:51:02.44 ID:GYQ2bJfeo

陽乃「お願い……今外に出ている人みんなを校舎に戻して」

「陽乃ちゃん?」

陽乃「お願い……嫌な予感がする」

「嫌な予感って」

クラスメイトは半信半疑な様子で陽乃を見る。

小学生である陽乃の級友の男子生徒にも、時々意味深なことを言う子がいる

それはアニメか漫画かそれ以外の何かに影響されていて

その言葉通りに何かが起こるわけでもない。

陽乃「私はいかないといけないところがあるから、代わりにお願い」

「そう言われても……」

流れ星の賑わいは広がっていっていて

陽乃のお願いに反して、

校舎の中に戻るどころか校舎から出てくる人がだんだんと増えていく
14 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/03(土) 18:07:21.27 ID:GYQ2bJfeo

陽乃「お願いみんなを校舎に避難させてっ」

隣にいる少女だけでなく、

周りにいるクラスメイト達に聞こえるように声を上げる

陽乃一人で奔走しても、きっと間に合わない

急がないといけないといけないのに、嫌な予感がする

ただそれだけしか言えないのが辛い

陽乃は歯を食いしばって、激しく高鳴る胸に手をあてがう

みんな流れ星に夢中で、

陽乃が不安を感じているのを覆い隠してしまうかのように、

笑い声まで聞こえてくる

「陽乃ちゃん、大丈夫?」

陽乃「危ないの……本当に危ないんだよ……」
15 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/03(土) 18:14:47.22 ID:GYQ2bJfeo

↓1コンマ判定 一桁

0 00 失敗
1〜5 成功
6〜9 ぞろ目 大成功
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/03(土) 18:17:10.60 ID:oB/qENMbO
17 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/03(土) 18:46:59.59 ID:GYQ2bJfeo

「大丈夫だよ〜陽乃ちゃん。すぐに地震も治まるって」

陽乃「そういうわけじゃ――」

否定しようとした瞬間――大きく地面が揺れた。

校舎に出ていた子供たちの悲鳴が上がる。

「きゃぁっ」

立っていられないほどの揺れは、今までで一番大きかったかもしれない。

陽乃はその場に膝をついていつでも走り出せるようにと身構える

陽乃「だめ……」

十数秒も続いた揺れが収まるのと同時に、

陽乃は空を見上げると、強く歯噛みする

――間に合わなかった。

信じて貰えるほどの説得力を持たせられなかったのがいけない。

クラスメイトではなく、大人に言えば変わっただろうか

初めから自分で走り回れば変わっただろうか

陽乃「逃げてーっ!」

陽乃は次第に近づきつつある星々から周りへと目を向けて、叫ぶ
18 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/03(土) 19:08:06.18 ID:GYQ2bJfeo

「は、陽乃ちゃん……っ」

陽乃「早く立ってっ!」

隣で尻もちをついてしまっていたクラスメイトに手を差し出して、引っ張り立たせる

地震が起きたばかりで、狼狽えてしまっているみんなは、

陽乃の懸命な叫びにはっとして周りを見たが、そうではない

もう遅い、もう間に合わない

何かが来る

陽乃「校舎の中に走って……絶対に振り返らずに」

「でも、陽乃ちゃん……っ」

陽乃「良いから、早く!」

地震で倒れこんでしまった人たちの瞳には、きっとそれが見えたのだ

そして、気付いたのだ

空に見えていた流れ星が、決して星などではなかったことに

願えば叶えてくれるかもしれないなんてロマンチックなものではないことに

「ごめんなさいっ」

陽乃「急いでッ!」

――やがて、それらは降る
19 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/03(土) 19:24:05.70 ID:GYQ2bJfeo

星のように輝いて見えた体は人など押しつぶせてしまうほどに巨大で、

不気味なほどに白々としている

やや球体めいた体つきにはクラゲの足のようなものが垂れ下がっていて、

白さを際立たせる悍ましい口のような器官が、真っ逆さまに落ちてくる

陽乃「止まっていたらやられるっ!」

その場から急いで駆け出すのとほぼ同時に

真上からではなく横からその【何か】が突撃していく

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!!」

陽乃「だめっ」

あれだけ、にぎやかだった夜のグラウンドを突き抜ける悲鳴

爆発したかのような轟音を立てて、校舎から煙と破片が飛び散る

陽乃「お姉さんも早――」

「たすけ――ぇ゛」

降り注ぐ【何か】に腰を抜かしてしまっていた女性の体の上半分が、かすめた何かに持っていかれる
20 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/03(土) 19:36:44.81 ID:GYQ2bJfeo

下半分は、映画で鮫に喰われたそれのように血を噴き出すなんてことはなかった

ただただ、そこにはもう動かすべき存在がいないことを表すように力なく崩れて

次第に、血が広がっていく

陽乃「なん、で……」

そして、まるで公園に投げられたパン屑に集まる鳩のように

そこには【何か】が集まって……食い散らかす

陽乃「っ……やめて、やめてよ……なんで……っ」

『くふふっ』

陽乃「っ」

笑い声が聞こえる

どこかから、この状況を楽しむかのような声が

『宴じゃ宴、余興の始まりじゃぞ、主様や』

陽乃「誰……誰なの……」

『足を止めたら――喰われるぞ?』

陽乃「!」

慌てて横に飛ぶと【何か】がその場所に突っ込み、

その爆風にも似た突風に陽乃の体が少しだけ飛ばされる
21 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/03(土) 19:53:25.46 ID:GYQ2bJfeo

陽乃「はっ……はぁっ……はっ」

響いていた悲鳴はいつの間にか止み、

広い校庭に生きている人間は陽乃だけになっていた

少なくとも一クラス分の子供達がいたはずなのに――もういない。

逃げ切れた人はいただろうか

どこかの建物に逃げ込んで、助かった人はいただろうか。

陽乃「みんな……っ」

陽乃の隣にいた子は、きっと体育館に逃げ込んだだろう

間に合っていれば、きっと

その体育館には大量の【何か】が群がり、

押しつぶせるはずの脆い建物の周りを漂って、

時折体をぶつけて揺らし、中から聞こえる悲鳴を楽しむようにゆらゆらと蠢く

『救いたいかや?』

陽乃「……出来るの?」

『妾ならば。妾を主様が扱えるのならば』


1、助けて貰う
2、断る

↓2
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/03(土) 20:01:03.61 ID:ELf5e12nO
1
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/03(土) 20:05:36.90 ID:E1v/HvWn0
1
24 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/03(土) 20:38:50.34 ID:GYQ2bJfeo

その声の主が誰なのか陽乃は分からない。

もしかしたら悪魔囁きかもしれない。

この事態がそもそもその声の主によって引き起こされた可能性だってないわけではない

そう疑ってしまうほどに、怪しくて

けれど

今、この状況を打開できるのなら――と陽乃は思った。

鬼が出るか蛇が出るか。だとしても

陽乃「お願い……力を貸して」

『よいのかや? その判断で良いのかや?』

怪しく、惑わすようにそれは声を聞かせてくる

頭の中を震わせるような、少し気味悪くさえ感じるような声色

なにより――愉しんでいる声を。

陽乃「助けられるのなら、助けたいから」

『くふふっ、せからしい小娘じゃ。良いのう、良いのう……どれ、死ぬ出ないぞ』
25 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/03(土) 20:46:23.05 ID:GYQ2bJfeo

その女性らしき声が唐突に掻き消えて、

陽乃は空気が変わったのを感じ取って、体を強張らせた。

蠢いていた【何か】もそれに気付いたのか動きを止めて陽乃へと向く

陽乃「っ……」

ぞわぞわと総毛立つような不快感

良くないものを口にしてしまった時のように

内側から遡ってくる嘔吐感に似た気持ちの悪さ

『主様の願いを、叶えてやろう』

陽乃「ぇ……」

その声の主は、大きな狐の姿をしていた。

半透明に透けてはいるが、黄金職の毛並みがきらきらとしていて、

逆立つ尾は、九つ

ゆえに与えられた名は――九尾。

『呆けていては、喰い殺されるぞ?』

陽乃「っ!」
26 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/03(土) 21:01:19.02 ID:GYQ2bJfeo

動きを止めていた【何か】は陽乃を危険と判断したのか

複数の【何か】は一か所に集まりだして、その形をより大きく変えていく

それは変異ではなく進化

人よりもはるかに秀でた体躯をもつ【何か】が

人間である陽乃を自分以上の化け物だとでも感じたかのような急成長

陽乃「あれは……」

『主様や、人を救いたくば――受けるしかないぞ?』

集合した【何か】は体表面を刺々しく変質させていて

丸々としていた部分はどこにもなく、弓のように形を変えている

九尾はそれが何をしてくるのかを察しているようにほくそ笑む

陽乃「……後ろは」

学校の周辺には、住宅地

陽乃が躱せば、その後ろが吹き飛ぶのだろう

陽乃「本当に、貴女の力を使えば守れるんだよね?」

『主様が扱えるのならば』
27 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/03(土) 21:11:34.69 ID:GYQ2bJfeo

襲来した【何か】が進化していったのとは逆に、

一見、陽乃の身体には何の変りもない

小学校に通うのにも良く使う、動きやすい普段着

けれど九尾が出現する直前に感じた不快感は体に纏わりつくようにして今も残っている

九尾の力はきっとそれだろうと陽乃は判断する

人を惑わし、壊し殺すことを愉しむ妖狐

その力は幻惑か

あるいは――

陽乃「!」

考えもまとまらないうちに【何か】は光を放つ

矢とも形容されるそれは陽乃めがけてまっすぐ突っ込む

ただ人ならば、触れることもままならない

掠めるだけでも肉が飛ぶ

そんな人智を超えた【何か】の力を、陽乃は左手の甲ではじく

弾かれた矢はグラウンドの中央にまで逸れて突き刺さり、爆発する
28 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/03(土) 21:32:40.43 ID:GYQ2bJfeo

陽乃「えっ」

『呆けておる余裕があるのかや?』

陽乃「っ!」

矢のような形状をしている【何か】は次の矢を打ち出すべく動き出している

自分の不可解な力に驚く余裕も、喜ぶような余裕もない

陽乃は意を決して駆け出す。

陽乃の手には投げるような武器はなく、体一つ

倒すためには肉薄しなければならない

じりじりと動く弓のような形をした【何か】は矢を備えて――射出する

近づいた分、斜めに打ち出された矢を真っ直ぐ駆け抜けて過ごし、

背中にぶつかる暴風を追い風として

目の前にまで迫ったところで左半身を前に、体にブレーキをかける

グラウンドの細かい砂利に滑る足をつま先で何とか保ち――

陽乃「ふっ」

急制動の勢いを乗せた蹴りで【何か】を撃ち抜く
29 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/03(土) 21:42:37.54 ID:GYQ2bJfeo

あまりの勢いに一回転しかけた陽乃は、

下部の消し飛んだ【何か】がそのまま崩壊していくのを見送る

陽乃「ふぅ」

急な体の動きにも、息が上がっていない。

ただ身体が強化されただけではないだろう

陽乃「ねぇ――」

九尾の狐がいたところには、もう何もない

あちこちには、喰い殺された人がいた証が散らばっていて

住宅街の至る所から、火の手が上がっているのが見える

陽乃「もう……いない?」

学校とその付近に降り注いだ【何か】は

陽乃をただ殺すだけに集合してくれたのが幸いし、掃討することが出来た

その後も陽乃は、体育館からは絶対に出ないようにと言い残して

自分ならば戦うことが出来るからと、街へと駆けだした。
30 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/03(土) 22:22:05.45 ID:GYQ2bJfeo

県内に降り注いだ【何か】はもうおらず、

空に見えていた星も今はその景色が嘘であったかのように真っ黒になるころ、

陽乃は人のいない公園のベンチで休んでいた。

陽乃「帰らないと……」

陽乃が住んでいるのは、

島国である日本の中のさらに島国ともいる四国

その北西に位置している愛媛県

代々受け継がれてきた久遠家の神社は、瀬戸内海に面している伊予市にある

陽乃の体が強化されていると言っても、走り回れば流石に疲弊する

陽乃「……」

学校で姿を見せて以降、九尾の狐は声すら聞かせてはくれない

力を与えている間は姿を見せられないのかと陽乃は思ったが、

一番最初の時点でそんなことはなかったので、そんなはずはない

ただ、姿を見せる必要がないだけだろう

『主様』

陽乃「へぇっ!? な、なに?」

『このまま、学校とやらに戻るのかや?』
31 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/03(土) 22:31:53.16 ID:GYQ2bJfeo

学校には、かなりの被害が出ている

人命的な意味でも、建物の意味でも

今頃、周囲のより多くの人たちが避難所として利用するために集まってきていることだろう

降り注いできた【何か】は今はいないので、一先ずそれで問題ないだろうし、

陽乃が今すぐ戻らなければならないということもない。

陽乃「私のお母さんが、巫女をしているの」

『ほう?』

陽乃「お母さんはね、巫女だからって神社に残っていて……」

『主様が行くか迷い、被害がないとみて避けた道の先にある所かや?』

陽乃「見てたの?」

『うむ……少し違いはあるがのう』

九尾の狐は姿を見せず、声だけを聞かせる

他の人に声が聞こえていなければ、

独り言を言っているように見えるのかと、陽乃は少し、困った顔を浮かべて

『主様、神社に行くのかや?』


1、学校に行く
2、神社に行く
3、もうしばらくここにいる

↓2
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/03(土) 22:33:47.80 ID:E1v/HvWn0
ksk
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/03(土) 22:35:10.45 ID:oB/qENMbO
2
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/03(土) 22:37:34.32 ID:ELf5e12nO
1
35 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/03(土) 22:47:19.82 ID:GYQ2bJfeo

ではここまでとさせていただきます
明日もできればお昼ごろから

もう少しだけ7/30
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/03(土) 23:04:25.75 ID:oB/qENMbO

ついこの間まで優しい世界の話がずっと続いてたせいか久しぶりに緊張感溢れる展開のギャップが凄いなぁ
そして尖ってたころの九尾も初期の不気味さが懐かしく感じたわ
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/04(日) 00:31:55.11 ID:KA4Lnrg3O

ここから天乃の記録に残ってたみたいにダウナーになってくのかそれとも別の時間軸になるのか
38 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 13:21:10.07 ID:6v3Hokh5o

では少しずつ
39 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 13:28:39.34 ID:6v3Hokh5o

陽乃「神社に行く」

『良いのかや?』

陽乃「もう、あの怪物はいないし……学校は大丈夫だよね?」

『一先ず治まったと考えても良かろうな。無論、絶対にとは言えぬがのう』

陽乃「……」

くつくつと喉を震わせるような笑い声を九尾の狐は漏らす。

沢山の人が亡くなった。

少なくとも学校の校庭に出ていた人の大半が喰い殺されてしまったことだろう

悲劇ではなく、惨劇

悲しいという言葉ですら侮辱にも取られてしまう現実味のないあまりにも乖離した光景が

頭の中にこびりついて離れない。

けれどそれがかえって、陽乃を冷静にさせている。

戦うことのできる自分が伏しては被害が広がる恐れもあったからかもしれないけれど

悲しみに暮れるようなことはなかったのは、

突如現れ、暴虐の限りを尽くさんとした【何か】に対しての怒りと焦りが湧いていたからだ。

戦いがひと段落ついた今でも、

喪われてしまった――と、空虚な感覚が残るばかりで、悲しさは薄い。

とはいえ、おかしく笑われるのは気持ちの良いことではない
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/04(日) 13:32:16.16 ID:Qz5gU/88O
久々に昼きたー
41 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 13:45:40.44 ID:6v3Hokh5o

陽乃はどこにいるのかも分からない九尾に向けて、眉を顰める。

陽乃「あまり笑わないで」

『人ならざるものである妾に、有象無象の死を憂えることを望むのは聊か過ぎたことであろう』

聞く耳を持たない訳じゃない。

だが、あまりにも理念も思想も感性も違えている。

人が路上に転がる虫の死を悲しむことがないように、

九尾の狐は、どれだけの人が死のうと関係はないのだろう。

それに異を唱えるのは傲慢と言われるかもしれない。

陽乃「ごめんなさい」

『くふふふふっ、よいよい。今日の妾は気分が良いからのう。気にはせぬ』

鈴のように響く声で笑う九尾の狐

彼女は伝承上の妖狐であり、現実には存在していないはずの生き物だ。

それが、ほんの少しだけとはいえ姿を見せ、

今もなお声を聞かせている

夢だと思いたいけれど、まぎれもなく現実

陽乃は【何か】もその類の存在なのではないかと、考えてベンチから離れる
42 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 13:58:00.41 ID:6v3Hokh5o

陽乃「ねぇ、貴女はずっと私と一緒に居たの?」

『妾は久遠の巫女に憑きしもののひと柱よ。主様のみならず、常に妾は共におるぞ』

陽乃「九尾……さん。で良いんだよね?」

『妾が九尾の狐であるのかどうかという問いならば、然り。呼び名ならば好きにするがよい』

不敬でなければ気にはせぬ。と。

九尾の狐は笑いながらに付け加える

人とは違う感性を持っている九尾の不敬に当たる境界線はどこにあるのか

それを見つけられそうになかった陽乃は、九尾を呼ぶのを諦める

陽乃「貴女は神様の遣い? それとも、悪い妖怪?」

『妾が悪しきものならば、善きものであると嘯くやもしれぬ』

そう言った九尾はくつくつと笑って、

『妾が善きものならば、善きものであると主様を安心させようとするであろう』

九尾の狐は、日本においては玉藻の前としても伝わっていたりする他に

悪しきものとされていることもあれば、神獣として崇められていることもあり、

本当の九尾の狐というものが曖昧になって伝わってきてしまっている。

悪しきものであれば、陽乃は悪魔との契約をしたことになるし

もしも神獣であるならば、陽乃は神々と契りを結んだことになる。

陽乃「分かった。なら、善い人だって信じてる」

『良いのかや?』

陽乃「良くても悪くても、貴女は死ぬしかなかった私達を助ける力を貸してくれたから」

たとえ腹の底で悪意を煮詰めているのだとしても

陽乃には、それを探り当てるほどの疑り深さが欠けていた。
43 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 14:26:09.31 ID:6v3Hokh5o

陽乃「あれ……?」

公園から歩いて十数分

神社へと続く路地には何台もの車が停まっていた。

車一台分の道。

大型車なら通れないような細い道すらも埋めてしまうような乱暴な車の停め方

電柱などにぶつかった事故らしいダメージも見当たらないので、

意図的にそうされていると考えるべきだろう。

参拝するにしては――乱暴だった。

陽乃「あんなことがあった後だから、急いでいたのかな?」

『ふむ……』

人々にとってはあまりにも理不尽に多くの命が奪われた

老若男女、善悪問わずそれが取るに足らない一単位として奪われた。

そんなことがあったのだ、

近くの神社に駆け込み神々に何故と問うことも決して錯乱とは言い難い。
44 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 14:45:37.41 ID:6v3Hokh5o

凄惨な災害の後だから、仕方がないと陽乃も思う。

今陽乃が冷静でいられるのだって、

自分に戦う力があるからであり、

それゆえに、決して心折れるわけにはいかないと思っているからだ。

そうでなければ自分が死ぬ。

それはまだいい。

自分の無力さで奪われるのだから、抗い敵わなかった結果だ。

だが、自分が奮い立てば守れたはずの命を奪われるのだけは認められなかった。

信憑性のない言葉で促すのではなく、

自ら動いていれば救えたかもしれない多くの命が目の前で奪われた。

断末魔の叫びが今も耳に残っている。

救いを求め、伸ばされた手がボトリ……と、落ちるのを見た。

死んだばかりの――生々しい血肉のにおいが、まだ鼻をつく。

そんなのは嫌だ。それはもう嫌だ。

だから、陽乃は今もまだ立っている。

陽乃「こんな停め方されちゃうと、通れないのに……」
45 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 14:57:37.08 ID:6v3Hokh5o

道を遮断するかのように止められている車の周りを軽く歩いて、

坂道になっている側にあるガードレールを軽く触る

足を踏み外せば下水に真っ逆さまだが、何とかなる……と陽乃は思って

その反対側、塀になっている部分をよじ登る

『何をしておる』

陽乃「向こう側に行きたいの」

『そんなもの、その邪魔なものを壊せばよかろう。主様に与えた力を使えば優に破壊できよう』

陽乃「嫌だよそんなの。この力は守るためのものだよ。傷つけるためになんて」

『それは人間ではあるまい』

陽乃「壊された人が、傷つくの」

『そういうものかのう』

理解出来ないといった様子の九尾の狐の吐息に、

陽乃は小さく笑って、車を越えた先の道に飛び降りる
46 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 15:04:15.61 ID:6v3Hokh5o

↓1コンマ判定 一桁

奇数 選択なし
偶数 選択あり
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/04(日) 15:17:58.13 ID:Qz5gU/88O
48 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 15:44:32.31 ID:6v3Hokh5o

『……なれば、学ぶがよい』

陽乃「え?」

九尾は含みのある言葉を言い残して何も話さなくなった。

元々姿を見せてはくれないので、

そこにいるのかいないのかもわからなかったが、

声が聞こえなくなると本当に消えてしまったかのように思えるが

九尾から力を借りて以降、

色濃く感じる淀んだ雰囲気は陽乃の傍に漂っている

陽乃「学ぶって、なにを?」

しかし聞いても九尾は何も言わない。

陽乃は不思議に思いつつ、

ただ意味深に言ってみただけなのかもしれないと、考えて。

歩きなれた神社までの道を進んでいく

そして――

陽乃「あの、みなさんどうし――」

陽乃が壊さなかった車の持ち主によって、捕まった
49 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 16:07:58.35 ID:6v3Hokh5o

「……戻って、来てしまったのね」

陽乃「お母さん、なに? なんなの? 私達、どこに……」

逃げられないようにだろう

両手足を拘束された陽乃は、車の荷台へと押し込まれた。

そこには陽乃の両親もいて、

ほかの車には久遠家の親族が乗せられているらしく、

久遠家に関与しているみんながどこかへ連行されているのだという。

愁いを帯びた表情を見せる母親は、

巫女の装束に身を包んでいて

「貴女には、学校にいて欲しかった」

陽乃「何か知ってるの?」

「何が起きたのかは知らない。けれど、なにが起きるのかは、知っているの」

母親は揺れる車の荷台でなんとか体を起こして、

陽乃の方に目を向ける

「陽乃ちゃんが昔に読んじゃった本を覚えてる?」

陽乃「おばあさまが凄く怒っていた本?」
50 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 16:34:14.95 ID:6v3Hokh5o

母親は軽く頷くと、車が停まる

「怒ったのは、貴女が【人身御供】という言葉に興味を持ってしまったから」

陽乃「ひとみ、ごくう?」

「久遠家の先祖は神降ろしにおける、依り代の役割を担っていたの。その話に、触れそうだったのよ」

母親はむしろ止めずに聞かせてしまうべきだったかもしれない

そう、後悔したように首を横に振る

知らせていれば、母親がなぜこんな時に神社に残る必要があったのか

その話もできただろうし、陽乃に戻ることを躊躇わせることだってできたかもしれないからだ。

「依り代は、言い換えれば生贄のようなもので、私達は……捧げられる」

陽乃「さ、捧げられるって……」

「あと少し……あとほんの少しだけ貴女が寄り道をしていてくれたら」

母親は今さら言っても仕方がないことを呟き、

そうして、諦めたように目を閉じる

陽乃「お母さん、私……私ね。戦えるんだよ……降って来た化け物と。だからっ」

「陽乃ちゃん……それは、本当なの?」

陽乃「本当っ、本当だよっ、だからお話してやめて貰おうよっ、お願いっ」
51 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 16:40:38.19 ID:6v3Hokh5o

「ううん、それは駄目なの。どう話しても無駄よ」

陽乃「そんなことっ」

「根強い信仰心は、こうした時に牙を剥く。それこそが救いであると、疑いの欠片もない」

母親は囁くように零して、

しかし、陽乃のことを見て申し訳なさそうに笑みを浮かべた

「でも、貴女が神様に見初められたのなら……失うわけにはいかない」

陽乃「お母さん……」

「何とかするから、大丈夫」

心配しないでね。と、母は笑う。

陽乃が転んで怪我をしたときに「痛くない、痛くない」と

頭を撫でてくれていた時のように。

気持ちを和らげようとしてくれているその優しさに、

陽乃はどうしようもなく心がざわつくのを感じた

「お母さんに、任せて」

陽乃「っ……」

力を入れても、手を縛る紐はまるで緩む様子がない

九尾の力も使えないただ人では、大人のきつい拘束はどうにもできなかった
52 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 17:02:52.21 ID:6v3Hokh5o

陽乃達を乗せた車は、

法定速度も守らず、人がいなければ信号で止まることさえもせずにひたすらに突っ走った。

そうして久遠家の神社から約2時間ほどかけて辿り着いたのは、

愛媛県にやや隣接している香川県から

さらに、瀬戸大橋と呼ばれる大きな橋を越えた先にある岡山県

放り投げられるようにして降ろされた陽乃達の目に映ったのは、

酷く崩壊している街並み

人がいるような気配は殆どなく、

あちこちで火災も起きているというのに――消防のサイレンも聞こえないような状態だった。

そして、そんなゴーストタウンと化した街には【何か】が代わりに漂っている。

陽乃達を放り出すや否や、

お役目なのだと告げた人たちは拘束も解くことなく大橋の方へとまた逃げ帰っていく

泣き叫ぶ陽乃と同年代の子供達

せめて、子供だけは助けようと必死にもがく大人たち

叫び声に気付いたのかにおいに気付いたのか

漂う【何か】が次から次へと向かってくるのが見えて、絶叫がより大きくなっていった
53 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 17:31:46.57 ID:6v3Hokh5o

陽乃「お願い……力を、力を貸して……」

「ごめんね、貴女に辛い思いをさせてしまう」

陽乃「お母さんっ」

母親は陽乃の後ろに這って回ると、

陽乃の手首を結ぶ紐に噛みついて湿らせ

首だけで左右に引っ張って解こうとする

陽乃「お願い、お願いだから……っ」

九尾からの返答はない

傍に居るはずなのに、

まるで自分には関係ないことであるかのように、沈黙している

「手を、動かして」

陽乃「っ……」

言われるままに、手を動かして少しだけ緩んだのを感じて強引に動かす

ぬるりとした感覚に手首が滑って、ささくれ立っていた紐を無理矢理にすり抜ける

指の関節から嫌な音がしたが、関係なかった

陽乃「九尾ーっ!」

そして――叫ぶ。
54 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 17:38:33.77 ID:6v3Hokh5o

纏わりつくような不気味な感覚がまたふつふつと沸き立っていくそぶりを見せたが、

しかし、それはまたなりを潜めて

『よいのかや?』

陽乃「何がっ」

『妾の力はきゃつらの好物。ゆえに、使えば――狙われるぞ?』

ようやく反応を返した九尾は、

相変わらず状況を愉しんでいるような声色で問う

陽乃はだから無反応だったのか。と、はっとした。

陽乃が力を使えば走行中の車からだって脱出はできただろう

しかし学校でそうだったように

化け物たちは白い球体上の体を寄せ集めて進化し、

より凶悪な化け物となって姿を見せることだろう。

陽乃ならそれもなんとかできるかもしれないが、みんなを護れるという保証はない


1、力を使って戦う
2、力を使わずに、拘束を解いて逃げる


↓2
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/04(日) 17:41:59.39 ID:Qz5gU/88O
1
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/04(日) 17:45:57.58 ID:BmGFQASo0
1
57 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 18:13:28.09 ID:6v3Hokh5o

陽乃「それでも私は戦うっ!」

『ほう』

陽乃「戦っても戦わなくても奪われるなら――戦わない理由なんてないっ」

化け物がまとまって強大になってくれるなら、

戦う相手が一つになって寧ろいい。

もしかしたら守れないかもしれないが、

ここで戦わない選択をしたら、結果は変わらない。

だったら、少しでも救えるように戦うべきだと陽乃は思って

陽乃「お願い九尾、私に力を貸して」

『……良かろう。主様の望むままに』

体中に満ちていく不快感

今にも突撃しようとしていた化け物たちが動きを止める

足を拘束していた紐を片手で引きちぎって、立ち上がる

「陽乃ちゃん……」

陽乃「大丈夫だよ。お母さん。私、戦えるから。頑張れるから」
58 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 18:28:45.20 ID:6v3Hokh5o

不安がないと言えば嘘になる

怖くないと言えば嘘になる

けれど、今ここで膝を折ったら奪われたくない大切なものを奪われてしまう

だから、抗う

陽乃「おか――っ!」

突撃してきた化け物を反射的に殴り飛ばして、破壊する

陽乃以外のみんなはまだ拘束された状態で、とても逃げられるような状態ではない

拘束を解こうにも、

化け物が突撃してくるため一人を解放するのにも時間がかかる

その間にもほかの人が襲われることになるだろう

陽乃「お母さん……」

今傍に居るのは母親一人、父親は少し離れた場所だ

『呆けておる場合かや?』

陽乃「っ!」
59 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 18:54:18.63 ID:6v3Hokh5o

九尾の声にはっとして、慌てて突撃を回避する

蠢いている化け物は、今のところ7匹ほどだ

時間をかければかけるほど集まってくることだろう

陽乃「はっ……はぁ……」

どきどきと、異常なほどに心臓が脈打つ

まだ動き出してもいないのに、もう持久走を二周分行ったかのような疲労感がのしかかる

陽乃「大丈夫、私は……戦えるん、だからっ」

拳を握る

抗えるは己の身一つ

陽乃「はぁーっ」

深く息を吐いて、身構える

周りを漂う化け物一匹一匹に気を張り巡らせて、警戒する

ゾクゾクと体の内側で沸騰しようとしている不快感を、飲み込む

陽乃「まだ、戦える」


参考MAP:
https://i.imgur.com/OxMHybw.png
60 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 19:03:03.34 ID:6v3Hokh5o

↓1コンマ判定 一桁

0 00 失敗
1〜5 通常ダメージ
6〜9 成功
ぞろ目 大成功

※敵→陽乃
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/04(日) 19:04:19.68 ID:BmGFQASo0
62 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 19:07:07.18 ID:6v3Hokh5o

↓1コンマ判定 一桁

0 00 失敗
1〜5 通常ダメージ
6〜9 回避
ぞろ目 大成功

※陽乃→敵
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/04(日) 19:09:33.29 ID:BmGFQASo0
64 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 19:41:03.59 ID:6v3Hokh5o

化け物の攻撃は、とても単調なものだった。

方向だけは当然ながら上も左右も自由自在だが、

集合体にさえならなければ――行ってくるのは突撃ただ一つ

陽乃「!」

周囲に気を配り、動きを見せた化け物へとすぐに向き直って、

人がいない方向を背にして、横っ飛びに回避する

陽乃「っはっ」

化け物攻撃は早いだけのタックルだ。

当たれば即死しかねない――アクセル全開の車のような危険度だが、

陽乃とて、常人ではない。

当たっても耐えられることは耐えられるし、その速さには対応できる

しかし問題は攻撃する場合だ

陽乃は武術を多少嗜んでいるが、本腰を入れているわけではない

ただ、好きだからと触れた程度の力

それでは――弾丸には届かない
65 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 20:17:10.29 ID:6v3Hokh5o

振りぬいた拳は空を切る

恐れてはいない

食い千切られる覚悟で握った拳だ

けれど、それでは届かなかった

愛媛に現れていた個体よりも、

少しばかリ知恵のついている個体なのか、

陽乃の拳を避けて背後に突っ込んでいったのだ

陽乃「避けられたっ!」

振り返ろうとした陽乃めがけて、また別の個体が突撃する

それを回避した先で、また別の個体が突撃してくる

次から次へと、

突撃してくる化け物を避けている間に、

別の市街を襲っていた個体が陽乃のもとへと集まっていく

『主様』

陽乃「分かってるよっ!」
66 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 20:23:36.89 ID:6v3Hokh5o

力が足りない

手が足りない

みんなを護りたいという傲慢さを叶えるには――陽乃は弱すぎる

「うわぁぁぁぁぁぁぁっ」

陽乃「っ!」

「こっちに来ないでーっ!」

陽乃「やめっ……」

一人、また一人

陽乃の相手をしない個体が、陽乃の見知った人々の命を奪い去っていく

押しつぶされ、砕けていく骨の音

食い千切られ、崩れ落ちる肉の音

その家族の絶叫があたりに響き渡って――また、消えて

陽乃「なんでっ、なんでなんでなんでッ!」

『主様』

陽乃「私はここにいるのにっ! 貴方達の好物はここにあるのにっ! 殺すなら私を殺してよッ!」
67 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 20:36:26.77 ID:6v3Hokh5o

『騒々しいぞ小娘』

陽乃「っ」

急激に全身に絡みついてきた不快感と

腹の底から湧き上がってきた形容しがたいそれに、

陽乃は叫ぶことすらできなくなって崩れ落ちる

陽乃「あ……あ゛……」

ポタポタと、赤色の液体が口元から滴り落ちて

鉄臭さが鼻をつき、味覚を汚染していく

身体が砕けてしまうのではないかと思うほどの疲労感

陽乃「な……ぇ……?」

『代償もなしに、妾の力が扱えると思うておったのかや?』

陽乃「っ……」

『全てを救おうなど、出来ぬと知れ』

陽乃「それ……でもっ!」

立とうとした膝が震えて崩れる。

どれだけ強い意思があろうと、成し遂げられないことがあるのだと言うかのように、動きが鈍い
68 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 20:38:11.58 ID:6v3Hokh5o

↓1コンマ判定 一桁

0 00 最悪
1〜4 悪い
5〜9 普通
ぞろ目 最良
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/04(日) 20:40:13.29 ID:BMtjKoJTO
たのむ
70 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 20:52:11.21 ID:6v3Hokh5o

「陽乃ちゃん……駄目よ」

陽乃「駄目じゃ、無いもんっ」

「お願い、貴女だけでも……」

陽乃の傍にいた母親は、まだ無事だった。

その分、

陽乃から離れていた親戚が次から次へと標的となって、

陽乃と同年代だった男の子も女の子も

その兄姉弟妹も喰われてしまっている

陽乃「嫌だ……絶対に嫌だっ!」

けれど、まだ生きている人はいる

みんなを救うためには、陽乃が戦って敵をすべて倒すしかない

しかしすでに戦い続けてきたその体

疲労はピークに達していて、九尾の力を身に纏う影響もで始めている

ふらつく体では、もはや母を抱えては逃げ切ることさえままならないだろう。
71 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 21:10:07.96 ID:6v3Hokh5o

『初めてにしては、主様はようやっておる』

陽乃「まだ終わってないっ!」

『まだなじみの薄いその体で無理をすれば、主様が滅びるぞ』

陽乃「それでも私は……っ」

戦えるのは陽乃一人なのだ

我が身可愛さにここで逃げたら、諦めたら――

陽乃「後悔なんてしたくないっ!」

『明日死するものが今死するだけのこと。それを守り己が死ぬ意味などあるのかや?』

陽乃「いつ死ぬか分からないなら、守る意味はあるよ」

崩れそうになりながら、立ち上がる

震える体を、歯を食いしばって耐え抜いて

吐きかけた血反吐を、まだ体を動かせと飲み下して

「無理をしてはだめっ貴女は……貴女達は人類の希望なのよ。こんな場所で失われては」

陽乃「私をぉぉぉぉぉぉぉ――見ろぉぉぉぉぉッ!」
72 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 21:11:35.01 ID:6v3Hokh5o
↓1コンマ判定 一桁

 0 00 失敗
 1〜4 回避
 5〜9 成功
ぞろ目 大成功

※陽乃→敵
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/04(日) 21:14:55.33 ID:TEvGSoc5O
はい
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/04(日) 21:15:20.94 ID:F6SU3HuEO
頼む!
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/04(日) 21:19:16.33 ID:k9rvx/EEO
ここでまさかのゾロ目
76 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 21:25:49.59 ID:6v3Hokh5o

今の自分に出来るのは殴ることと蹴ることのみ

ただ全力で、全開で

で、あるのならば。

アスファルトを打ち砕くほどに力強く――踏み抜く

陽乃「退いて死ぬくらいなら」

人智を超えた化け物の身体

体躯に見合わぬ非常識な速度

普通では届かない

頑張っただけでは届かない

だから。

陽乃「死ぬ気でぇぇぇぇぇ――」

踏み抜いた地面を抉るように蹴飛ばして、地を駆ける

滑空しているような浮遊感

瞬く間に近づく化け物の身体

自分の体が砕けてしまうかのような勢いをそのままに

陽乃「届かせてみせるッ!」

漂う化け物の体を、撃ち貫いた
77 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 21:38:54.46 ID:6v3Hokh5o

勢いは化け物を貫いても止まることなく、

陽乃の体は周りを吹き飛ばす突風を巻き起こしながらコンビニに突っ込む

ガラスの破片が体を切り裂く

衝突した棚の硬さにぶつかった場所が鈍い痛みを持ち始める

陽乃「はっ……ぁ……」

血が絶え間なく流れ続ける

身体の中から上り詰めてきた吐き気に、吐血する

頭が重く、体がふらついて眩暈がする

陽乃「げほっ……はっ……」

『お主』

陽乃「なせばなるんだよ……全部が全部は無理でも。大抵、何とかなるんだよ」

崩れ落ちるようにコンビニから這い出てきた陽乃は、

それでも、まだ化け物はいるのだろうと立ち上がる

陽乃「守るんだ……私が、私が……戦える、私が……っ」

体中に痛々しい傷跡を残し、

失血死していてもおかしくないほどに真っ赤に染まった少女の姿を、

化け物から逃げ伸びた人々の多くが、目にしたという。

親戚のほとんどを失い、父親を失い、生き残った子供たちはPTSDを発症してしまうなど

決して被害は少なくはなかったが、それでも――陽乃は母親を救うことが出来た
78 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 22:11:26.86 ID:6v3Hokh5o

2015年07月30日

その日、世界は化け物たちに蹂躙され奪われてしまった。

多くの命と居場所を失い、

ごく限られた場所に、人々は逃げ伸びた。

陽乃達のいる四国を除けば、

長野などのごく一部の地域のみだという

陽乃の母親曰く、八百万の神々が力を貸し与え、

人々を護る聖域を作り、見初められた者を守護者として守っているらしい。

目に見えていない場所の真偽は不明だが、

少なくとも、四国には陽乃以外にも何人かの神々に見初められた少女がおり、

それらを、政府の任命によって表に出てきた【大社】と呼ばれる組織は、勇者と呼んだ。

陽乃の母親は、勇者と呼ぶことには不服だったそうだが、

しかし、プロパガンダ的な意味合いを除いたとしても、勇者と呼ぶべきであるとされたようだった。
79 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 22:26:28.42 ID:6v3Hokh5o

その大社によって、

勇者とされる子供達には招集がかけられることとなった。

香川県にある丸亀城を本陣として、

そこを改築して居を構え、勇者の鍛錬を含めた育成施設にする算段だという話だ。

陽乃の母親は

傍に置いておいた方が子供としては精神面に優しいのではと訴えたが

やはり、それも却下された。

組織の統治下にない強力な力があるのは危険だからだろう。と、

九尾はつまらなそうに鼻を鳴らしていた。

陽乃は多くを失う結果にはなったが、

それでも、本当に守りたかったものは守ることが出来た。

しかし、悔いはある

まだまだ弱くて役に立たないと苛立ちがある。

陽乃「私、もっと頑張るから。もっともっと、頑張って……今度は誰も死なないように、頑張るよ」

だから、陽乃は立ち止まろうとは思えなかった。

たとえ、化け物と戦い血に塗れボロボロになって――それでも立ち上がる姿が【バケモノ】と言われていようと。
80 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 22:27:38.73 ID:6v3Hokh5o
分岐点。

1、四国に残留
2、長野に向かう

↓2
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/04(日) 22:32:06.07 ID:W1/ckQ9YO
1
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/04(日) 22:33:02.36 ID:BmGFQASo0
1
83 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 22:36:09.05 ID:6v3Hokh5o
では本日はここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/04(日) 22:42:53.60 ID:BmGFQASo0

陽乃さんのお母さん救えるとは思わなかったから驚いた…
それに陽乃さんも今までの心を病んでるイメージが覆りそうで予測がつかないな
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/04(日) 22:50:03.22 ID:F6SU3HuEO

陽乃ちゃん(小6?)が初っぱな命削っててヤバい…これは天乃の御先祖様ですわ
長野行かないってことは歌野は…
86 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/05(月) 19:29:54.58 ID:iWUi+OC9o

では、少しだけ
87 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/05(月) 19:59:57.04 ID:iWUi+OC9o

√2018/07/30 丸亀城


陽乃「……」

陽乃は丸亀城の天守屋根上に登って、街を見下ろす。

事件から3年経った今も四国内部に留まる陽乃は、

長野にも四国と同様の状態にある場所があると聞いたときに、

今ならまだ大社の指揮下に入ることなく

混乱に乗じて長野の方に逃げ出せるのではないかという話もあったが、

それを却下して、四国残留を選んだ

その一番の理由は、やはり母がまだ生きているからだろう。

陽乃「長野に行くべきだったと思う?」

『バーテックスとやらと戦うのならば、行くべきであったろうな』

陽乃「でも私がいないと、お母さんが……」

『そうじゃのぅ。主様が勇者などという低俗なものを享受し、大社なぞに与しているからこそ無事と言えよう』

陽乃の母親は巫女としての素質を認められており、

大社預かりのみとなっている

それは、陽乃が大社に訴え出たからこそのものであり

そうしなければ、母親はあの人々に恨まれ――殺されていたかもしれない。
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/05(月) 20:13:30.63 ID:vX5B1NeJ0
来てたか
89 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/05(月) 20:20:47.12 ID:iWUi+OC9o

久遠家は、人身御供――人柱として捧げられなければならなかった。

そういった話がこの四国には蔓延しており、

あの神社の巫女が生き延びたせいで、

事態は一向に収拾が付かないとさえ言われ始めている。

陽乃やその母親が人身御供として捧げられたとしても

バーテックスが退いてくれる保証なんて微塵もないのにだ。

インターネットでは、燃えていく家を【お焚き上げ】とさえ言われる始末

もちろん、みんながみんなそう言った人々ではないのだけれど、

そんなことを真に受け、陽乃の実家を放火するくらいには余裕がない。

陽乃「私はここから――」

「わーかーばー、ちゃん」

陽乃のシリアスな思考を強制的に断ち切る声が陽乃のずっと下、

石垣のところにいる乃木若葉へと声をかける上里ひなたの姿があった。

乃木若葉は陽乃と同じ勇者で、上里ひなたは若葉の一番の親友でありその巫女だ
90 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/05(月) 20:39:22.06 ID:iWUi+OC9o

陽乃「あの二人、仲が良いわよね」

『羨望かや?』

陽乃「ん〜……少しだけ。でも、ああいうのがすぐそばにあると、頑張ろうって気になれる」

『いざとなれば切り捨てるべき有象無象のひと欠片でしかなかろう』

陽乃「ううん違う。大切なのよ。あれは。あれは、私達が決して失ってはいけない温もりなんだ」

人と人とが繋がる温もり。

仮初とはいえ、平穏であるからこそ、まだ見ることのできるその光景は、

かつて奪われてしまった世界に溢れていたものだ。

だからこそ、その姿をまだ見ることが出来ることを陽乃は良いことだと思っているし、

それらを守らなければならないと、より強く思う。

『妾は、郡千景とやらに賛同させて貰おう』

陽乃「郡さんも間違ってはない。こんな非常時に悠長だって意見も分かる」

陽乃だって、今こうしている瞬間にも長野ではたった一人の勇者がみんなを護っているのだから。と、

焦りと不安は胸にある。

陽乃「でも、刀だって鞘がなければ脆い鉄でしかないもの。乃木さんには上里さんとの時間が必要だわ」
91 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/05(月) 20:59:07.67 ID:iWUi+OC9o

『それのみで脆いのならば、折ってしまえと言っておる』

陽乃「貴女って人は……」

『神樹とやらの贄にでもしてやった方が、人類のためであろう』

陽乃「神樹様だけ残っても意味がないわ。それを護る人がいないと」

流石に虫けらなんて言わないものの、

3年経った今も、九尾は相も変わらず人を人として見ていない。

若葉達勇者や巫女も平等に考えているので寧ろ清々しささえあった。

とはいえ、九尾が害をなすようなことは今のところないので

今言って聞かなくても、いつか聞いてくれたらいいと陽乃は思っている。

『慣れ合うなど馬鹿馬鹿しい。かつてのように裏切られるとは思わぬのかや?』

陽乃……やめて」

『封をしたところで過去も人も変わらぬ。認めよ主様、人とは救い難い愚物であると』


1、やめてッ!
2、そんなことない……人は、ちゃんと分り合えるはずよ
3、認めてどうしろって言うのよっ
4、無視して降りる


↓2
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/05(月) 21:01:25.42 ID:vX5B1NeJ0
2
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/05(月) 21:03:06.30 ID:8TP+1cSXO
1
94 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/05(月) 21:41:01.68 ID:iWUi+OC9o

陽乃「やめてッ!」

『相も変わらず好まぬか』

陽乃「みんなを一緒にしないで……あんな人たちと、一緒にしないでっ」

『ふむ……それほど病むのなら、一思いに処分でもしてしまえばよいものを』

九尾はそれだけを言い残すと

空気に交じる不快感を薄れさせて、陽乃の中に潜っていってしまう。

3年前のあの日、陽乃達を贄と差し出した人々は今もこの神樹様に守られた世界のどこかで生きている。

そして、そんな人々から久遠家の情報は伝わって家が無くなるまでに至った。

九尾から見れば、その人たちも若葉達も変わらない人間という一つの種族でしかないのだろうが

陽乃は一緒くたに考えるつもりはないし

守る価値の有無など、考えたくなかった

考えてしまったら拳を握れなくなる気がして――

ひなた「誰かそこにいるのですか?」

陽乃「っ」

若葉「さっきの声は……久遠。久遠だろう?」
95 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/05(月) 22:17:59.49 ID:iWUi+OC9o

九尾へと怒鳴ったのが災いして、

下にいたひなたと若葉の声が陽乃のもとへと飛んでくる。

声を聞かせてしまった以上、居留守をする意味がないので顔を覗かせると

手を振るひなたと、

少し心配そうに眉を顰める若葉が見えた

若葉「そんなところにいないで、降りてきたらどうで……どうだ?」

陽乃「畏まらないでって言ってるのに」

若葉は陽乃の一つ下のため、

敬おうという気持ちも理解できるのだが、

久遠先輩というのを止めさせた結果、久遠さんになり、

3年間かけてようやく【久遠】になった。

出来れば下の名前で呼んで貰いたいと陽乃は思っているのだが、

それにはまだまだ程遠いようだ

若葉「やっぱり、学校も統一されて正式に先輩なはずなのに、先輩もさんもダメとは無理があります」

陽乃「私なんかに畏まってはいけないって言ってるの。貴女だって知らないわけではないでしょう?」

若葉「知っては、いますが」

陽乃「私と貴女達は対等でなければいけないの。私が上に立つわけにはいかないの。理解して」
96 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/05(月) 22:47:05.66 ID:iWUi+OC9o

若葉「では、久遠……さんも私を下の名前で呼んでいただきたい」

ひなた「久遠さんが下の名前で呼んでしまったら、一方的になっちゃいますよ」

若葉「それは……」

陽乃は先輩のため、若葉を下の名前で呼んでも普通だと言える

だが、その陽乃が若葉達に敬意を表して乃木さん、上里さんと呼ぶことで

若葉達なら抑え込めるという安堵が生まれ

久遠陽乃という【異物】の虞を中和させている

ひなた「残念ながら、久遠さんの力は大社ではまるで解析できていません」

そう言ったひなたは眉を顰めると、目線をかすかに下げて

ひなた「久遠さんに協力しているという九尾様がお答えして下されば変わるのですが」

陽乃「絶対に嫌らしいから、ごめんなさい」

ひなた「仕方がありませんね。やっぱり、ここは若葉ちゃんが頑張るしかありませんよ」

若葉「そう言われてもなぁ……」



1、ねぇ上里さん。長野の方に応援を出したりはしないの?
2、今そんなでは、後々大変だわ
3、乃木さん、少し手合せお願いできる?
4、乃木さんのこと頼むわね。上里さん


↓2
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/05(月) 22:49:30.82 ID:AyZeDbwaO
1
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/05(月) 22:54:12.09 ID:vX5B1NeJ0
1
99 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/05(月) 23:01:28.41 ID:iWUi+OC9o

では本日はここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/05(月) 23:18:51.84 ID:vX5B1NeJ0

今作の陽乃さんは早速闇こそ抱えているものの人格破綻まではしていないのが救いだな
ところで今回の九尾はほとんどテレパシーで会話してるけどあまり実体化したりしないのだろうか
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/06(火) 05:47:32.25 ID:hPwIvlMsO

九尾の声は幻聴説…いやアカンな闇深過ぎる
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