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【安価でのわゆ】久遠陽乃は勇者である【1頁目】
- 378 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/18(日) 22:20:28.20 ID:duK7FkfzO
- 乙
九尾はなんだ?陽乃が思い通りにいかないからか?
- 379 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/18(日) 22:22:56.28 ID:duK7FkfzO
- >>377
現状は選択肢というより判定だからなぁ…運が悪すぎる
積極的に交流して説得するしかなさそう
- 380 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/18(日) 22:53:36.33 ID:MO0baI5NO
- 乙
九尾は守護霊みたいなもんだから今の状況に思うところあるのはわかるわ
- 381 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/19(月) 20:54:10.88 ID:T40QFiLqo
-
では少しだけ
- 382 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/19(月) 20:55:47.27 ID:aAnHD/E1O
- いえす
- 383 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/19(月) 20:57:02.83 ID:T40QFiLqo
-
√ 2018年 8月1日目 朝:某所
陽乃が拘束されてから、月が替わった八月
一週間ほど経過してもなお、陽乃は病院に拘束されていた。
朝、目を覚ますと天井が見える
閉め切ったカーテンの外側から人工的な光が入ってくるのを感じるだけ。
陽乃の力を危険視している大社による指示で行われている拘束衣は一切緩ませることを許されていない。
腕はお腹の辺りで重ねるように止められていて、足は閉じたままだ
そんな自由のない陽乃には娯楽でさえも与えられていなかった。
病室への来客は、日に数回
世話の為に数人の看護師が恐る恐るといった様子で訪れる程度
大社から派遣されてくるお目付け役のような人も来ることはなかった。
それはおそらく、九尾が看護師を脅したからだ。
居たら居たで、嫌悪感を帯びた視線を常に向けられることになるので
ただでさえ心を病みかねない今の状態の陽乃には、それは逆にありがたささえあった。
陽乃「………」
起きてから、眠るまでの時間は陽乃にとっての空白だ
看護師が来ても、口をきいてもらえない。
そもそも声をかけると、怯えてしまう。
起きてしまうとしばらくは眠れる気もしないので、退屈で仕方がない
もしかしたら発狂しても許されるのでは? と、陽乃は考えてしまう。
- 384 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/19(月) 21:11:02.21 ID:T40QFiLqo
-
『主様が望んだことであろう?』
陽乃「……こんなこと、望んだ覚えはないけれど」
『人間の一人でも絞め殺し、不敬を働くならば同様に処すとでも言えば改善もされるであろうに』
陽乃「こんな状況に追い込まれた原因の9割は貴女でしょう?」
『くふふふっ、妾の尾は九つじゃからのう』
陽乃「笑い事ではないのだけど」
九尾のからかう声に、陽乃は目を閉じる。
九尾の力がなければ陽乃も母親も、バーテックスの餌になるだけだった
九尾には、命の恩人として感謝をしなければならない
それを考えれば、陽乃は自分の意思がどうであれ九尾の命令を聞く義務があるとも言える。
気に喰わないという人々を殺すことを制止せず、
邪魔する勇者達を殺害し、大社の人たちを処分し、自由になっていくことを目指すべきかもしれない。
陽乃「私のこと、怒ってる?」
『不甲斐ない主であると思うておるぞ』
陽乃「貴女にとって、私って甘すぎる人間だものね」
『恨み憎まれ蔑まれ殺意を向けられ、己の親類縁者を殺められてなお、裁かぬ愚か者よ。甘いという言葉など、とうに過ぎたものであろう』
九尾の声は単調ではあるが、陽乃のことを不満に思っていることだけは分かる
九尾の思想と陽乃の思想は真逆と言っても良い
ただ、陽乃はそっち側に堕ちることはいつでもできる
陽乃は母がいるからこそ道を踏み外すことを拒んでおり、
それさえ割り切ってしまえば、陽乃はどこまでも染まっていくことが出来てしまう
いや、染まっていってしまうだろう
- 385 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/19(月) 21:26:50.79 ID:T40QFiLqo
-
陽乃「貴女って、私がここにいても自由に出入りできる……のよね?」
『うむ』
陽乃「だったら、みんなの状況も知ってる?」
『興味はない』
九尾はそう吐き捨てたものの、情報はしっかりと持っている。
隠す必要はないらしく、若葉達の状況について話してくれた。
若葉、球子、杏は怪我がなかったので普段通りだが、
友奈は元々検査入院だったこともあり早々に退院
陽乃によってダメージを追った右腕も問題なく動かせているそうだ。
千景に関しても友奈から数日遅れて退院し、今はもう問題はないらしい。
一時的に残っていた腹部の殴打痕もすっかりなくなったという話である
陽乃「つまり、貴女の力に勇者を殺すだけの力はないのね?」
『殺めるだけなら力はあるがのう……確実に命を奪うというのであれば妾では不足であろうな』
陽乃「でも殺すことは出来ちゃうのね」
『無論であろう』
九尾の力の効力だけで勇者は殺すことは出来ないことに陽乃はひとまず安堵するが
それは効力で殺せないだけのこと。
看護師に行ったように、抵抗できない力で絞め殺すことは可能だ。
- 386 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/19(月) 21:38:19.41 ID:T40QFiLqo
-
『小娘共は自由になっておるが主様はそうせぬ……』
陽乃「仕方がないでしょう……危険なんだもの」
陽乃自身も、九尾の力は危険だと思っている。
そしてそれ以上に大社が危険視しているためこんなことになった。
その大部分は陽乃が言ったように九尾の力のせいなのだが、
九尾は人間の弱さゆえの隔離だと考えているらしい
陽乃の待遇には不満なようで
陽乃が嫌がる人でなければ、どれだけの人が犠牲になっていただろうか。
『主様が望むならば、ここから出してやることも可能じゃぞ?』
陽乃「出すって……どうせ無許可でしょう?」
『いかにも。しかし、ここで無為に過ごすほど、人間に猶予はなかろう』
いつ来るか分からないバーテックス
長野の勇者が頑張ってくれているから問題ないという話ではあるが、
それだっていつまで持つか分からない
なにより、それなのにこんな状態に甘んじているのは良くないと……陽乃だって思う。
思うが……
1、いいわ。出して
2、駄目よやっぱり。余計に怖がらせたくないわ
3、人を傷つけない方法で出してくれるなら
↓2
- 387 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/19(月) 21:40:08.04 ID:aAnHD/E1O
- 3
- 388 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/19(月) 21:44:20.19 ID:TcszZ4ZP0
- 3
- 389 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/19(月) 22:33:14.89 ID:T40QFiLqo
-
陽乃「……人を傷つけない方法で出してくれるなら」
『くふふふ……妾を何と心得る』
陽乃「少なくとも、人の命を考えてくれる人だとは思ってない」
陽乃ははっきりと言い切る
九尾はカーテンに影を映して見せると
大きな口元に前足を宛がって、響く声で笑う
響くと言っても聞こえるのは陽乃だけで、外に聞こえる心配はない
『然り。妾が下賤な者共の命など思惟する理由などなかろう』
九尾はそう言うと、
口先を陽乃の身体に伸ばす仕草を見せる
たったそれだけで――鎖が砕けた
『しかし主様はそれを望まず、されど自由を欲するのであろう?』
九尾のくつくつとした笑い声が聞こえる
それはこれからを思い、愉しんでいるようにも感じた。
『……よかろう』
陽乃「誰も殺さずに出してくれるの?」
『妾ならば容易。されど、主様には苦難の道となろうぞ』
なにせ、陽乃はここから脱走することになるのだ。
出さねば殺すと脅せば状況も変わるが、ただの脱走ならば大社は躍起になって対処してくるかもしれない。
『くふふっ、成し遂げてみせよ。愚鈍なる我が主様よ』
- 390 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/19(月) 22:35:34.48 ID:T40QFiLqo
- では途中ですがここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 391 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/19(月) 23:01:58.99 ID:aAnHD/E1O
- 乙
脱走と聞くと一作目でよくやってたのを思い出すな
最もこちらは命懸けになりそうだけども…
- 392 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/20(火) 08:06:07.26 ID:wZXoeQ4aO
- 乙
脱走するからか九尾少し機嫌良くなってる?
- 393 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/20(火) 22:06:46.62 ID:uCLADGd9o
-
遅くなりましたが、少しだけ
- 394 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/20(火) 22:07:13.30 ID:VL8E1XYgO
- あいよー
- 395 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/20(火) 22:39:27.04 ID:uCLADGd9o
-
『動くでないぞ主様』
そう言った九尾の影が陽乃の体を覆う。
陽乃の体を覆っていた拘束衣が一瞬にして消え去って、
肌着一枚になった陽乃はむしろ、拘束感が無いことに違和感を覚えながら体を起こす
陽乃「なんだか、変な感覚」
『人間にしては長き時を囚われておったからのう』
喉を鳴らす九尾は、影のままカーテンを払い除ける
部屋には普通の病室などにあるような棚などはなく、
監視するためと思われる機械が、天井に取り付けられているのが見えた
カーテンが締まっていても、横になっている陽乃の顔が見えるような位置だ。
陽乃「あのカメラ、大丈夫なの?」
『あれがいかなるものであろうと人間の目に映るものなれば、妾の術中には変わらぬ』
陽乃「……そう」
『問題があるかや?』
陽乃「幻術? 幻惑? の力はいいのだけど、私……この格好ででなくちゃいけないの?」
- 396 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/20(火) 23:22:25.21 ID:uCLADGd9o
-
陽乃の私物ではない、病院側が用意したであろう質素な肌着
陽乃が身に纏っているのはそれだけでジャージも靴も靴下もない。
九尾の幻を見せる力がどこまで効力を発揮するのか分からないが、
たとえそれが万物におけるすべての自称を騙せるのだとしても、
殆ど裸に近い姿で外に出ていく勇気は、陽乃にはない。
もちろん、状況が状況なだけに
我儘を言ってられないとは思うのだけれど。
『問題なかろう?』
陽乃「人は色々あるのよ……」
『人間とて獣……動物であろう。羞恥心などと不必要なもの捨ててしまえばよかろう』
九尾が呆れたように溜息をつくと、カーテンが靡いた。
すると、陽乃の体は白い着物に包まれて
心なしか、ちゃんとした温もりを感じる
『これでよかろう』
陽乃「……ちゃんと服着ているのよね? 私も幻を見せられているわけじゃないのよね?」
『くふふふ、気にしなければよい』
- 397 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/21(水) 00:14:46.97 ID:nkYjHLfFo
-
愉快そうに笑った九尾だが、ただの冗談だったらしい。
九尾の前足が陽乃の頭を抑え込むと
九尾の力が外側から陽乃の体を包み込んで、
陽乃がいつも見ていた、看護師の恰好へと変わった
『力を衣服と変えた。案ずるな、妾の皮を被っていると言えば分かるであろう? 裸体ではない』
陽乃「……なるほど」
先ほどの着物よりもしっかりとした衣服の温もり
九尾の皮ということは、狐の毛皮のようなもののはずだが、
触れてみても、看護師の服装以上の感覚は感じられない。
とはいえ、力は力だ
陽乃「結局、力で誤魔化すしかないのね」
『仕方があるまい。ほかになかろう』
カーテンを引きちぎって代用するのもあれなので、
そこはもう、九尾の毛皮という力に満ちていそうなもので我慢するべきだ
『それはここを出るのに適した服装じゃ。耐えよ』
陽乃「……そう。なら仕方がないかしら」
ネックストラップと、その先についている社員証というべきか
写真つきのネームプレートまでもがしっかりと触れられ、感じられるのに顔を顰めながら頷く
陽乃「人を傷つけないって貴女の言葉を信じて、従っておくわ」
- 398 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/21(水) 00:18:25.65 ID:nkYjHLfFo
-
↓1コンマ判定 一桁
奇数 接触
※そのほか、なし
- 399 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/21(水) 00:33:06.06 ID:kmtuEEhhO
- ふんぬっ
- 400 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/21(水) 00:44:55.93 ID:nkYjHLfFo
-
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 401 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/21(水) 01:34:33.96 ID:kmtuEEhhO
- 乙
流石に終わってたか九尾の毛皮の衣服…戦衣の基礎かな?
- 402 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/21(水) 05:35:20.91 ID:A+V+oM4EO
- 乙
接触しなかったのは良かったのか悪かったのか
- 403 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/21(水) 08:04:29.89 ID:8mV2FyURO
- 乙
後はどこまで誤魔化しが効くかだな
看護師服は病院までかもだが
- 404 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/21(水) 20:28:56.19 ID:nkYjHLfFo
-
では少しだけ
- 405 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/21(水) 20:37:40.45 ID:yESLdBI9O
- よしきた
- 406 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/21(水) 20:55:15.44 ID:nkYjHLfFo
-
陽乃「……凄い」
病室から、病院の外に出るまで
陽乃は何度か声をかけられることがあったものの
誰も、拘束されているはずの久遠陽乃だとは思わなかった。
むしろ、
同僚の一人として気さくに声をかけられるくらいだった。
『くふふっ、無論じゃ』
心なしか弾んだように感じる九尾の声
自分の力が認められるということは嬉しいのだろうか
陽乃「私、この格好のままで良いの?」
『ふむ……』
院内やその付近であれば看護師の衣装でも問題はないけれど、
ある程度離れてしまったら違和感が出てきてしまう。
それを心配する陽乃に、九尾は絡みつくように影を伸ばす。
一瞬、視界が真っ暗になったかと思えば、陽乃が普段着ていた私服に切り替わっていた。
陽乃「何でもありなのね」
『妾が知るものにしか変化はさせられぬ。万能ではない』
陽乃「貴女が知るものだけでも十分何でもありだわ」
実際にはどんな格好なのか……というのは抜きにしてしまえば、
本当に万能な力だと陽乃は思った
- 407 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/21(水) 21:31:48.40 ID:nkYjHLfFo
-
陽乃が隔離されていた施設は、町はずれの病院だった。
三年前の惨劇によって人口が大幅に減少することになったが、病院に余裕はない。
というのも、多くの人々が発症した【天空恐怖症候群】があるからだ。
天空恐怖症候群は精神的な病である。
症状としては、
一つ、外出を嫌うようになる
一つ、襲来時のフラッシュバックなどによる精神汚染と日常生活への影響が出る
一つ、幻覚などの症状が頻発に見られるようになり、薬を手放せなくなる
一つ、自我が崩壊し、発狂にまで至る
といったものがあり症状別4段階に定められていて、
陽乃の病室から離れるにつれて軽い症状の人が入院していたようで
ベッドに空きがあるようには感じられなかった。
そんな精神病院と呼ばれてしまうような病院の周囲の住宅には、人の気配がほとんど感じられない。
庭先の雑草が伸び切っていたり、崩れてしまった建物もある。
人の出入りがあると感じられるのは見る限りで数軒
陽乃「……この辺りも、だいぶ」
『人間の気配がまばらじゃな』
- 408 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/21(水) 21:51:08.81 ID:nkYjHLfFo
-
全員が死んでしまったとは考えたくない。
しかしながら大半が亡くなってしまっただろうし、
それと同じくらいの人々が心に傷を負ってしまったのだ
かつても、歩いていれば多くの人とすれ違うなんて言う人口密度は感じられなかったが、
それでも、人の気配があった。
時折聞こえる犬の声、車の音、子供たちの元気な声
確かな日常がそこにあったのだ
陽乃「………」
『主様の責ではあるまい』
陽乃「でも、私が守らなければならないことだわ。これ以上酷くならないように、これ以上戻れなくなってしまわないように」
『主様を悪としている人間じゃぞ』
陽乃「それでもよ……私は助けたいと思ったから力を借りたんだもの。たとえ、それが悪魔の力であっても……」
助けた人々から迫害されるのだとしても、
自ら選んで掴んだのだから、自分は自分の目的を見失わずにいられればいいのだ
その果てが理不尽な結末だろうと。
――本当に?
陽乃「っ」
『主様、寄宿舎に戻るつもりかや?』
- 409 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/21(水) 22:11:37.26 ID:nkYjHLfFo
-
総毛立つような悪寒を感じたのと同時に九尾の声が聞こえる
聞こえるのは陽乃にのみなのではたから見れば独りぼっちだが、
陽乃の身体から延びる影は体以上に大きく広がり、
近くの木陰に重なっている部分からは、狐のような顔が陽乃を覗いている
そう言った感覚に鋭敏な人がいたら、悲鳴を上げて逃げ出すことだろう。
『主様は正式な退院ではなかろう? 少々厄介なことになると思うがのう』
陽乃「そう……よね」
何も考えていなかったとはいえず、頷く。
足を止めた陽乃は近くの車止め用のポールに腰かけた。
陽乃の生活に必要な数々の私物はすべて寄宿舎の自室である
端末は取り上げられているので、無し。
当然所持金もない。
陽乃「私一文無しなのよね」
『そこらの人間に取り入ってしまえばよい。妾ならば容易じゃぞ』
陽乃「でしょうね……」
九尾の力はついさっきから十分に分からされている
そのうえで、九尾の狐の伝承を考えれば、言葉に偽りがないのは明白だった
1、友達の家に行くわ
2、それが出来るなら、寄宿舎に行くくらいは余裕でしょう?
3、このまま、四国から出たいって言ったら、どうする?
4、取り入るってどうするつもり?
↓2
- 410 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/21(水) 22:13:43.08 ID:yESLdBI9O
- 1
- 411 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/21(水) 22:14:08.37 ID:r8gL4IbP0
- 4
- 412 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/21(水) 22:27:46.61 ID:nkYjHLfFo
-
では少し早いですがここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 413 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/21(水) 22:39:06.07 ID:yESLdBI9O
- 乙
九尾も物騒なことさえしなければ世話焼きな良い奴なんだけどなぁ
あと友達ってもしやさおりんのご先祖…?
- 414 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/22(木) 07:59:57.36 ID:U/j/ghEAO
- 乙
何気に九尾は陽乃さんとしか会話できないのか
- 415 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/22(木) 21:59:27.85 ID:OppCUMBno
-
では少しだけ
- 416 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/22(木) 22:02:23.25 ID:PpZ3nN4kO
- かもん
- 417 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/22(木) 22:17:45.28 ID:OppCUMBno
-
陽乃「取り入るって、どうするつもりなの?」
『魅了してしまえばよい。妾の力ならばそれも容易にこなせようぞ』
陽乃「魅了って……つまり、洗脳みたいなことをするってこと?」
『人間を蠱惑することが、主様にとって洗脳というのであればそうであろうな』
九尾の伝承は、そのほとんどが魅力的な女性として知られており、
その魅力ゆえに国を滅ぼすこともあったとさえされている。
九尾にとって、それは力の一端でしかない。
人間を魅了すること、それは九尾の誤認させる力―幻術―の一端でしかなく、
洗脳かどうかなど、彼女には関係ないらしい。
陽乃「……私を、その誰かの子供にしたりもできるの?」
『実の娘というのは状況によって無理があろうが……遠縁の娘としてなら無論じゃ』
陽乃「でも、貴女としては子供なんて不自由だと思うのでしょう?」
『異論があるかや? 子は親という厄介な存在がおるではないか。解放されて早々に己に枷をつける必要張るまい』
陽乃「それは」
九尾の言いたいことも、陽乃は分かる
けれど、と……陽乃は顔を顰めた
陽乃「それってつまり、誰かの恋人とかそういう存在に成り代わるってことでしょ? 無理だわ」
- 418 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/22(木) 22:58:20.69 ID:OppCUMBno
-
陽乃は首を振って、九尾の影から目を背ける。
三年前、まだ平和だったころの陽乃には異性同性関係なしに友人がいた。
しかし、あくまで友人であって恋人ではない。
何より、まだ高校生にも至っていない陽乃には、大人の女性という立ち位置は聊か無理があるだろう。
陽乃自身もそう思っているからか、困った顔で息を吐いた
陽乃「百歩譲って、娘という立場ならどうにかなると思うわ」
『娘ならば何の心配もいらぬ』
九尾ははっきりと言い切る
『妾の力ならば、容易じゃぞ』
陽乃「それは分かっているんだけどそもそも、誰かの子供なんて……」
九尾の力ならば絶対になり切れるという信頼はある
ただ、陽乃が鳴りきる誰かの保護者は亡くなったか、天空恐怖症候群によってどうにもならなくなってしまったか
とにかく、悲しい過去を持っているということになることだろう
そして、そのことに同情されることだろう
陽乃はそれが受け入れられなかった
- 419 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/22(木) 23:21:50.19 ID:OppCUMBno
-
『ふむ……ならば主様は妾の連れ子とするのも一つじゃな』
陽乃「貴女に人の心がわかるの?」
『うむ。人間の雄の心を奪うなど容易いことよ』
九尾はくすくすと笑う
とても楽し気なのに、底知れない不安を感じる声
九尾に騙されてしまった人がどうなってしまうのか……
陽乃は最悪の想像をしかけて、息を吐く
陽乃「その人、どうなっちゃうの?」
『仮初とはいえ妾の旦那様となるお方じゃ。少しは妾に付き合ってもらわねばならぬからのう?』
笑み交じりの少し高い声で答えた九尾は喉を鳴らして、
尻尾の影がゆらゆらと揺れる
それと同時に風が吹いて、木々がざわめいた
『死なせはせぬが……どうにかなるであろうな』
死ぬかもしれないが死なせはしない
陽乃との口約束にも満たない言葉を、九尾は守るつもりのようだ
- 420 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/22(木) 23:47:39.57 ID:OppCUMBno
-
陽乃「あの子の家なら……」
『主様を知る人間に会うのは危険じゃろうて』
陽乃「ん………」
『その娘が絶対に裏切らぬ人間であるならばよいがのう? そんな人間などおらぬ』
九尾は断言する
心なしか影の口元が唸るように動いたように見えた
陽乃「あの子は優しい子よ。私の一番、近くにいたの」
『それが娘の本性かや? 今と過去とは違えておろう?』
陽乃「ええ」
三年前と、今は違う。
なにより、三年間一度も連絡を取っていないのだ
過去の関係をすべて放棄していなかったとしても、
彼女だって子供だから周りの言葉に逆らえるだけの力は持っていないはずで
裏切られないという保証はない
圧力によって屈してしまったことを裏切りというのは――理不尽だろうか。
陽乃「どうしたものかしら……」
1、九尾の連れ子設定
2、誰かの子供になりきる
3、恋愛げぇむ
4、友人に会いに行く
5、寄宿舎へ
6、四国を出る
7、ホームレス
↓1
- 421 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/22(木) 23:51:10.07 ID:xeHnNUY+O
- 4
- 422 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/23(金) 00:00:59.56 ID:u0h5r4HJo
-
↓1コンマ判定 一桁
0 00 最悪
1〜3 悪い
4〜5 普通
7〜9 良い
ぞろ目 最良
- 423 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/23(金) 00:01:37.63 ID:GeE5gbsiO
- こい
- 424 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/23(金) 00:03:08.18 ID:u0h5r4HJo
- ではここまでとさせていただきます
明日は可能であれば少し早い時間から
- 425 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/23(金) 00:11:52.50 ID:GeE5gbsiO
- 乙
うーむとことん引きが悪い…
もし追い返されるようなら九尾の連れ子作戦もありだが…
- 426 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/23(金) 00:22:00.83 ID:UrJr2G1OO
- 乙
まあ3年会ってなかった子が突然来ても困るよね……
- 427 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/23(金) 18:49:54.69 ID:5zfZ4fLFo
-
では少しだけ
- 428 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/23(金) 18:51:59.29 ID:5zfZ4fLFo
-
陽乃がかつて住んでいた伊予市
比較的人通りの多かった通りも閑散としていて、
どこかから人の叫び声が聞こえるとまた別の悲鳴が響いて来る
三年前の恐怖の伝播
元に戻れるという保証はなく、
外の世界に蔓延っているバーテックスを殲滅でもしない限り、
鬱屈とした死の空気は晴れないのだろうと陽乃は市内を歩きながら思う。
陽乃「あっ」
様子を確認しながら歩いていた陽乃は店の一つの前で足を止める。
立ち寄ったことのない個人商店はシャッターが下りており、
営業はしていないようだが、そのシャッターに描かれた落書きに陽乃は足を止めざるを得なかった。
陽乃「……私の家、無くなっちゃたせいかしらね」
シャッターには生き延びた久遠家、おそらくは陽乃に向けての憎しみが言葉にされている。
なにも無関係のところにこんなことしなくてもと思うが
陽乃の実家や神社が放火されたことを考えれば、それがただの暴徒化しているよりはましなのかもしれない。
彼らは【久遠家の責任】というものを信じてしまっている。
人身御供など聞いたこともないだろうに、そうであったのだと断言している。
陽乃「クシナダヒメになった気分だわ……家には白羽の矢じゃなくて白煙が上がったけど」
- 429 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/23(金) 19:13:24.42 ID:5zfZ4fLFo
-
嘲笑めいた笑みを零した陽乃は、シャッターの文字を軽く撫でて首を振る
陽乃の影におさまっていた九尾はシャッターに映りこむと、その瞳を陽乃へと向けた
『それでも、主様は守らねばというのかや?』
陽乃「私が守るのは私自身の心よ」
人を救う価値がないなどと切り捨ててしまったら、
心までもが彼らの言うような化け物になってしまうかもしれない
陽乃「なんて……ただ、私は人でありたいだけだわ」
『人間ならば恨み、憎み、怒り、己を虐げる者共に相応の報復を与えるものじゃろう』
だが、陽乃はそうしない。
それを是とする九尾を止めさえしている
『主様は化け物じゃろう。あ奴らの語る理不尽ではなく、ただ人になり得ない存在じゃ』
陽乃「……愚かだって思うんでしょう?」
『愚問であろう』
陽乃「貴女も災難ね。そんな人……そんな化け物に憑いてしまったんだから」
『久遠の人間がここまで愚者に育つとは、妾も思わなんだ』
くつくつと笑った九尾は影を翻す
『主様が手を出さぬから助長する。下手に伸びてからでは草の根を狩るのも難しかろうに』
陽乃「だとしても、踏み外したくはないの」
九尾の不満げに零れた吐息を感じたが、陽乃は気にせずにその場からは離れてまた歩く
友人の家に辿り着くまで数人見かけたが、誰一人として陽乃に気付くことはなかった。
- 430 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/23(金) 19:33:27.32 ID:5zfZ4fLFo
-
陽乃の友人の家は幸い崩れたりしておらず、人が住んでいる気配が感じられる。
インターホンに手を伸ばした陽乃は、押すか迷って息を吐く
音信不通になって、三年
それは陽乃が自分の意思で交流を断ったのではなく
大社による言動の制限によって生じた弊害として、旧知の仲であっても断たざるを得なくなっただけだ。
だが、それでも相手から見れば一方的だっただろう。
陽乃「ねぇ、私は久遠陽乃として見られるのよね?」
『主様がそれを望んだのであろう?』
陽乃「そうだけど」
『妾はすべきではないと忠告し、主様はされど会うと決めた。なれば何を恐れる。己が望んだならばゆくがよい』
それの結果がいかなるものであろうと、
自らが選び進むと決めた道すがら、翻すなどという行いを九尾は是としない。
分かっている。
陽乃は自分でも、そんな中途半端なことはしたくないと思っているけれど
彼女は一番の友人だった。
多くの人々が自分を誹謗中傷する中で、しかし彼女はそうではないと心のどこかで思っている。
だから――。
陽乃「はぁ……」
勇者らしからず、緊張に高鳴ってしまう胸に手をあてがって深呼吸
そうして、インターホンを押した
- 431 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/23(金) 19:55:36.50 ID:5zfZ4fLFo
-
数秒もまたせずに、インターホンから元気な声が聞こえてくる
何度も何度も聞いた声
陽乃の家で、彼女の家で、
インターホン越しに、電話越しに……繰り返し聞いて馴染んだ間接的な声色
誰が来たのかちゃんと確認しないのは相変わらずで、
在宅を知らせるためだけの応答をした彼女の部屋を駆ける音が玄関口へと近づいて
「はーい!」
勢いよく玄関の扉が開いた。
「どち……あっ」
陽乃「……久しぶり、ね」
「………」
緊張からか声が上ずってしまったものの、
陽乃の友人は、しばらく呆然としてそれを聞き逃したのか
はっとして辺りを見渡すと、扉を盾にするようにして――
「帰って!」
強く拒絶を叫んだ
- 432 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/23(金) 20:01:40.41 ID:c1E5OH4UO
- つらい…
- 433 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/23(金) 20:44:55.08 ID:5zfZ4fLFo
-
「あの日、助けて貰えたのはすごく感謝してる……でも、もう二度と会いに来ないで」
陽乃「待っ」
扉は固く締められて、続けざまに鍵が締まる音が響く
鍵だけでなくドアチェーンまで使ったのだろう
金属の音が聞こえた
陽乃「待って……」
『ふむ……』
陽乃「ダメッ!」
自分自身の影が、
陽の光もなく不自然に彼女の家の方に伸びていくのが見えて、
陽乃は叫んで制止する
影は止まって、狐の口に似た先端が開くように揺れた
『躊躇う必要はなかろう。勇者とやらとは違って主様の力にはならぬ』
陽乃「それでも……っ」
友人に、待ってと伸ばせなかった手を固く握りしめて
陽乃は首を振る
九尾は殺すつもりなのだ
1、ごめんなさい
2、無事、なのね……元気でやっているのね?
3、一つだけ聞かせて、拒絶は貴女の意思だって、思っていいの?
4、何も言わずに立ち去る
↓2
- 434 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/23(金) 20:48:38.53 ID:3Od0l6D40
- 4
- 435 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/23(金) 20:49:17.15 ID:c1E5OH4UO
- 3
- 436 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/23(金) 21:40:16.65 ID:5zfZ4fLFo
-
陽乃は少し考えて、インターホンをもう一度押す
出てくれなければそれで終わり
普段は数秒も待たせないインターホンは、
一分以上、沈黙して
諦めて立ち去ろうとしたところで「待って」と声が聞こえた
『……なに?』
陽乃「一つだけ聞かせて欲しいの」
そうだと言われるのが怖い
けれどこのまま曖昧にしていたって、きっとそうなのだろうと心は勝手に疑う。
だからはっきりさせようと、陽乃は意を決して
陽乃「拒絶は……貴女の意思だって、思っていいの?」
『………』
陽乃「お願い……それだけ、聞かせて貰えればすぐに居なくなるから」
同情を求めてしまっているような声
歯を食いしばっても
違うと言って欲しいと願う心は出てきてしまう
けれど――。
『そうだよ。私が、陽乃ちゃんに会いたくない』
- 437 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/23(金) 22:05:04.83 ID:5zfZ4fLFo
-
『陽乃ちゃんと会ってるのが知られたら、もうここにいられなくなっちゃうから』
陽乃「……そっか」
小学校時代は、学校が惨劇の場となったこと、
精神病を患ってしまった教師や生徒が多数出てしまったことで
暫く休校していたという話を聞いている。
そこから今まで
友人に何があったの分からないけれど、
きっと、陽乃のことで色々とあったのだろう
その他大勢が知らなくてもクラスメイトは知っていた
その子供達から親が話を聞いていたかもしれない
そして、それらから……彼女は「あの娘を知っているだろう?」となったかもしれない
陽乃「そうだったんだね」
だとしたら、仕方がない
だったら、どうにもならない
陽乃となんて関わり合いになりたくないだろうと……
陽乃「うん……分かった」
『その……感謝は、してるから』
陽乃「いいよ。出来ることをしただけだから……ただ、それだけだから」
陽乃はそう言って、笑おうとして
上手く、笑えそうもなくて――
インターホンの画面には映らないように顔を隠しながら、足早に立ち去った
- 438 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/23(金) 22:30:20.58 ID:5zfZ4fLFo
-
『良いのかや?』
陽乃「仕方がないでしょ……私と関わってたら巻き込まれちゃうんだから」
友人の家からしばらく歩いて、よく遊んでいた公園のベンチに腰掛ける
時間はまだお昼ごろだが
公園には人の姿はまるで見られず、
あまり、遊ばれているような雰囲気は感じられなかった
陽乃「私と一緒に居るだけで、あの子の家族を不幸にしてしまうなんて、私が嫌だもの」
『気に病む必要はなかろう。恩が有りながら仇と返す愚物なれば、使い捨ててしまえばよい』
陽乃「九――」
『異を唱えるならば処分してしまえばよい。問題が生じるというならば妾が腹に入れてやろう』
陽乃「貴女……」
『無論、妾は戯れておるわけではないぞ』
利用できないならば処分してしまえばいい
利用できるなら利用して処分してしまえばいい
九尾はそれを明言して……反り立つ尻尾の影をくるりと丸める
『あやつは生かしておく価値があるかや? 主様』
陽乃「私の友達なの」
『今もかや? 切って捨てられた、今でもかや?』
- 439 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/23(金) 23:01:39.71 ID:5zfZ4fLFo
-
わざとらしい言葉遣いで問いかけてきた九尾は、
ベンチに座ったまま、何も言わず首を振る陽乃を見つめて、目を細める
影が不自然に伸びて陽乃の隣に人の形を作ると
それは次第に物質化して、完全に人間……
陽のも知っている、上里ひなたの形をとった
ひなた「そしたら、どうしますか?」
陽乃「……上里さんもできるのね」
ひなた「久遠さんの状況は……控えめに言っても悪いです」
一つ、帰れる場所がない
一つ、所持金も所持品もない
一つ、認識を誤魔化さなければ捕らえられてしまうかもしれない
九尾は指を立てながらそう話して
困りましたね。と、ため息をついた
ひなた「数人、殺してもかまいませんか?」
陽乃「上里さんの声でやめて……」
ひなた「運が良ければ一人で済みますよ? お金を持っていそうな人を――」
陽乃「駄目だって言っているでしょう」
1、寄宿舎に帰るわ
2、もう、ここを出ていく
3、貴女の娘になるわ
4、しばらく一人にして
5、大丈夫だと思っていたけれど……やっぱり、辛いわね
↓2
- 440 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/23(金) 23:05:43.01 ID:3Od0l6D40
- 1
- 441 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/23(金) 23:06:10.57 ID:T+csMsRmO
- 1
- 442 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/23(金) 23:21:39.10 ID:5zfZ4fLFo
-
√ 2018年 8月1日目 昼:
01〜10 ひなた
21〜30 友奈
40〜50 千景
61〜70 若葉
81〜90 球子
コンマ判定 ↓1
- 443 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/23(金) 23:22:33.47 ID:JmJwWUNUO
- あ
- 444 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/23(金) 23:30:46.75 ID:5zfZ4fLFo
-
ではここまでとさせていただきます
明日も可能であれば少し早い時間から
- 445 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/23(金) 23:41:49.34 ID:BfbU9vEnO
- 乙
帰宅したとたんにまたもや千景と遭遇か…
お互いに真逆の闇を抱えているからかやたらと縁があるな
- 446 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/24(土) 05:38:03.11 ID:vEHw73cGO
- 乙
まだまだ序盤なのに怒涛の鬱展開の数々だな…
- 447 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/24(土) 11:22:17.62 ID:lKIiv3knO
- 乙
まああのまま話さない方が気まずいからこれからのこと考えると早く会えて良かったかも
- 448 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/24(土) 17:02:44.57 ID:xtj8VY0so
- では少しずつ
- 449 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/24(土) 17:03:53.57 ID:xtj8VY0so
-
せめて家が無事ならば家に帰ることも出来るが、
無事ではない陽乃は、寄宿舎に戻るしかなかった。
九尾は途中までひなたの姿でついてきていたが、
勇者に遭遇するのを警戒してか、人目がなくなったあたりで影と消えて
寄宿舎と学校となっている丸亀城の中間に近い道で、彼女と出会ってしまった。
陽乃「ぁっ……」
千景「?」
声に気付いて足を止めた千景だったが、
陽乃を見ても嫌悪感を感じさせるような表情を浮かべていない。
千景「なにか?」
陽乃「えっと……」
千景「体のことなら、もう平気よ」
千景は怒っていないどころか
普段、陽乃に向けているような嫌な感情さえも向けてはこない
あの模擬戦によって変わったのかもしれないが
陽乃はそう思えなくて、もしかして。と、影に視線を落とす。
『うむ。久遠陽乃としてでは問題があろう。あやつには別の人間に見えておる』
千景「どうしたの……? 伊予島さん」
陽乃「えっ」
千景「土居さんなら、見ていないけれど……」
- 450 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/24(土) 17:28:12.19 ID:HopcWwKvO
- 誰が最初に幻術と気付くかな
- 451 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/24(土) 17:29:23.31 ID:xtj8VY0so
-
千景の目には陽乃が伊予島杏に見えているらしい。
なぜ杏なのかと陽乃は困惑したけれど、友奈を選ばなかったのは正解だろう。
千景は勇者の中で一番友奈と親しくしている。
親しくしている……というよりもさせて貰っているように思えるのだが、
どちらにしても、ちょっとした違和感を疑問に思うかもしれない。
その点、杏たちならば誤魔化しやすいし、気にすることも少ないはずだ
陽乃「あぁ、その……怪我は本当に大丈夫?」
千景「……平気よ。もう痛みもない」
陽乃でなくても千景はやや冷ややかな反応をする。
それなりに明るく接するのは友奈だけで
杏が気遣っていても、あまり良い反応を見せてはくれない
陽乃「久遠さんは――」
千景「知らないわ……あんな人」
千景は久遠という言葉だけで顔を顰めると、
吐き捨てるように呟いて、首を振った。
模擬戦は合意の上で行ったものだったし、陽乃自身は何があったのか記憶にないけれど
話を聞いただけでも、語られる以上に何か良くないことがあったことだけは分かっている
- 452 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/24(土) 17:51:31.72 ID:xtj8VY0so
-
陽乃「なにが、あったのかな……」
千景「また……その話……?」
陽乃「えっ、ぁっ……その……」
千景は陽乃―彼女にとっては杏―に目を向けると、
その奥を見透かそうとしているかのようにも感じる尖った瞳を細めて、
少しだけ、嫌悪感を見せた。
千景「貴女は……ずっと彼女を気にかけているわね」
陽乃「それは……」
千景「けれどそんなこと関係なく……彼女は殺そうとするわ……」
千景の表情に影が差す
噛みしめていると分かる唇が固く結ばれて、
拳が戦慄くのが見えた
千景「あの人は高嶋さんを傷つけた……ッ!」
陽乃「っ」
千景「貴女だって……殺される……すり寄ろうだなんて無駄よ……」
声を張り上げてしまったことにはっとして、
またいつものような声色で忠告を口にする
杏を気にしているというよりも、
陽乃を畏れている彼女の言葉には、怒りが滲んでいるように感じた
1、陽乃に戻して貰う
2、郡さんは、久遠さんを殺したいと思ってる?
3、千景さんは、久遠さんを殺したいと思ってる?
4、久遠さんだって苦しんでいると思います……多くの人を護ったのに、ただ恨まれるだけで
5、もし、傷つけたのが久遠さんの意思ではなかったら?
↓2
- 453 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/24(土) 17:53:28.48 ID:Re3Mwq1s0
- 1
- 454 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/24(土) 17:54:18.85 ID:z/kQdCq1O
- 5
- 455 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/24(土) 18:23:45.43 ID:xtj8VY0so
-
陽乃「もし……」
聞いて良いのだろうか?
今の自分の言葉は、すべてが伊予島杏の言葉となってしまう。
彼女の知らない場所で、
彼女の姿で、彼女の声が……言葉を紡ぐ。
なのに……けれど。
でなければ、陽乃は知ることが難しいだろうから。
心の中で、杏に詫びながら陽乃は杏の姿で千景を見る
陽乃「もし、傷つけたのが久遠さんの意思ではなかったら?」
千景「乃木さんも言っていたわ。彼女は彼女ではなかったって……」
陽乃「………」
千景「高嶋さんはそれを信じるって言った」
千景は、自分もそうしてくれるような
少しだけ、寄り添うような雰囲気を感じさせながらも……鼻で笑う
千景「ありえないわ」
陽乃「っ……」
千景「彼女の意思かどうかなんて……そんなことはどうだっていい」
千景は杏から目を逸らし、
怒りに震える拳をゆっくりと開く
千景「あの人は私達を殺そうとした……それに変わりなんてないでしょう……」
- 456 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/24(土) 18:40:49.23 ID:xtj8VY0so
-
千景「伊予島さん、貴女は……例えば、土居さんが目の前で殺されかけても彼女を擁護するの……?」
陽乃「そんなこと……っ」
千景「あり得ない。だなんて……言わせないわ」
千景は否定の言葉さえ言わせない
陽乃には近づこうとしない千景の足が動く
一歩一歩、杏に見える陽乃のもとへと近づいて
千景「あの人は上里さんさえ殺すと言っていたらしいわ……一般人である彼女でさえ、あの人は殺す気だった……」
陽乃「なっ」
千景「そんな人が、五人の内三人を殺そうとした人が……残り二人だけは見逃すとでも……?」
威圧するように千景は言う
久遠陽乃は確実に殺すのだと
若葉も、湯女も、千景も、ひなたも
そして、残される二人、杏と球子でさえも
彼女はそう断言する
そうではない可能性を――一切、考えてはくれない
千景「媚び諂って……すり寄って……命乞いでもしたら……見逃して貰えるとでも思っているの……?」
陽乃「そんなことっ」
千景「無駄よ……だとしたら、高嶋さんが被害に遭うことはなかった」
- 457 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/24(土) 18:52:45.09 ID:xtj8VY0so
-
千景「三年前……死ねばよかったのに……」
陽乃「そんなっ……こと……っ」
生きたくて、死にたくなくて
大切な人を護りたくて……一生懸命に頑張った。
それは多くの人に恨まれるほどのことだったのだろうか
それは、死ねばよかったのにと言われるほどの悪い行いだったのだろうか
理不尽だ……あまりにも。
確証もなく身勝手に人柱とされただけでなく
死に物狂いで生き残り、人々を救ったことが呪われるようなことだと……
――なれば。
陽乃「っ」
首を振る
それは答えてはならない言葉
九尾のそれとは違う
憎悪に満ち満ちた、決して触れてはいけない闇
千景「分かったら、あんな人なんて関わらない方が良い」
陽乃「……」
千景「別に……私はどうでもいいけど……高嶋さんが悲しむと思うから……」
- 458 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/24(土) 19:28:32.99 ID:xtj8VY0so
-
千景が踵を返すと、
九尾の影が千景のもとへと素早く伸び――
千景「ふぐっ」
何もない、平坦な場所で千景が転ぶ
数秒動かなかった千景は顔を上げて
陽乃―杏―の姿を思い出して振り返り、逃げるように走っていく
『……殺めるなと、主様が言わねば刈り取るものを』
陽乃「ごめんなさい……」
『妾が、排除してやっても良いのじゃぞ』
九尾の声は今までになく優しかった。
しかしながらその言葉は厳しく、重い
陽乃はそれに何も言わず、
千景の姿が見えないことを確認して、また寄宿舎の方へと向かって歩く
陽乃「貴女、皆殺しにする気だったのね」
『くふふふっ、無論。本気であれば生きてはおらぬがのう』
陽乃「……脅しにしても、そこまでしたらどうなるか考えなかったの?」
『どうなれど、阻むものなり得るならば――消せばよいだけであろう』
九尾の声は仄かに笑みを含んで、少しだけ響いて感じた
- 459 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/24(土) 19:30:40.10 ID:xtj8VY0so
-
01〜10 ひなた
21〜30 友奈
61〜70 若葉
81〜90 杏
↓1のコンマ
※それ以外は通常
- 460 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/24(土) 19:33:06.10 ID:Re3Mwq1s0
- あ
- 461 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/24(土) 20:30:28.66 ID:xtj8VY0so
-
陽乃が部屋に帰ると、
元々散らかっていなかった部屋は誰かの手が入ったかのように、保たれていた。
掃除がされ、
カーテンが開けられて……窓が開いていて
陽乃「……馬鹿なことをする人がいるものね」
『伊予島杏。であろうな』
陽乃「どうして?」
『郡千景曰く、娘はお主を気遣っている。なれば、この場を保つのも不思議ではあるまいよ』
陽乃「……なるほど」
確かにそう言われれば、そうかもしれない
陽乃と杏は殆ど関わり合いになった覚えはないけれど
彼女はとても優しい人だ
勇者でなくてもよい、温もりのある心を持っている
陽乃「さて……」
その優しさには悪いが、
ここから出ていかなければならない
その準備をしようかというところで、
九尾のせいで伸びる影に別の誰かの影が触れた
ひなた「杏さん……?」
陽乃「上里さん……」
- 462 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/24(土) 20:41:55.98 ID:xtj8VY0so
-
扉は締まっていたはずだが、
音もなく開かれたのか、音に気付かなかったのか
恐らくは後者だろうと陽乃は自分の無防備さに眉を顰めてひなたへと顔を向ける
九尾の幻覚を見せる力は、
今もなお、伊予島杏と認識させているらしい
ひなた「どうして……こちらに?」
陽乃「上里さんこそ、どうして……」
ひなた「上里……?」
陽乃「あっ、あはは……久遠さんのこと考えてたのでつい」
ひなたは不思議そうに首をかしげたが、
深く掘り下げるつもりはないようで
そうだったんですね。と、笑みを浮かべて部屋を見渡す
みんなと一緒に居る場面が限りなく少ないせいで、
普段、杏がひなたをどう呼んでいるのかも分からず、誤魔化すしかなかった。
上里さんに疑問を抱いたのなら「ひなたさん」だろうか。
- 463 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/24(土) 20:59:00.39 ID:xtj8VY0so
-
見たところ、ひなたには体のどこかを庇うような様子もないので、
殺そうとしただけで全く手は出さなかったのだろう。
その心を読んでか、
九尾もそれには『然り』と息を漏らした。
陽乃が予め止めなければ殺されていたので
とめておいて良かったと、改めて思う。
ひなた「この部屋を見て、どう思いましたか?」
陽乃「え?」
ひなた「若葉ちゃんの部屋も似たようなものですが、もう少し……生活感が感じられるんです」
もしかしたら私のせいかもしれませんけど。と、
ひなたは笑いながら呟いて、
陽乃の部屋の、8割が何もない棚を一瞥する
ひなた「その点、久遠さんは私物をほとんど持っていません。一番初め、読書や映画が好きだと言っていたのに」
陽乃「それは……」
街には行けず、誰かに代理を頼めるわけもない。
通販なんてもってのほかで
そうなってくると、陽乃には私物らしい私物を入手することなんて難しい話だった
ひなた「瀬戸大橋を護った勇者である彼女が、疎まれ、憎まれ、呪われ、蔑まれ……趣味に触れることさえできない部屋にいたんですよ」
陽乃「………」
ひなた「酷い、話ですよね」
1、陽乃の姿に戻して貰う
2、ひなたさんも、久遠さんに殺されかけたんですよね?
3、久遠さんはどうなるんでしょうか?
4、噂……どうにか払拭することは出来ないのでしょうか?
↓2
- 464 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/24(土) 21:00:55.58 ID:60UsvB4WO
- 4
- 465 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/24(土) 21:02:04.99 ID:Re3Mwq1s0
- 1
- 466 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/24(土) 21:05:08.83 ID:xtj8VY0so
-
では少し中断いたします
再開は22時頃を予定しています
- 467 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/24(土) 21:13:24.47 ID:60UsvB4WO
- 一旦乙
ひなたや杏は優しいな…そして千景との溝の深さが辛い
- 468 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/24(土) 21:57:19.15 ID:xtj8VY0so
-
ではもう少しだけ
- 469 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/24(土) 22:10:51.15 ID:xtj8VY0so
-
陽乃「まず……上里さん、ごめんなさい」
ひなた「はい?」
一言先に謝った陽乃は、ふっと……息を吐いて
自分の影を見下ろして、頷く
九尾はそれだけで察したのだろう
影が揺らめいて、口が開いた
『よいのかや?』
陽乃「…………」
ひなたには聞こえない九尾の声
唐突な謝罪に困惑するひなたの前で陽乃が頷くと、
九尾の、幻覚を見せる力が解かれていく
ひなた「なっ……」
陽乃「……ごめんなさい。私なのよ」
ひなた「どうや……って……いえ、それは、想像が……」
驚愕に後退りしていくひなたは、
背後の壁に背中をぶつけて、下を向いてしまう
ひなた「千景さん達にも施した……幻を見せる力ですね?」
陽乃「そう……幻覚を見せるの。幻惑、誤認させるって言ってもいいかもしれない」
- 470 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/24(土) 22:29:24.77 ID:xtj8VY0so
-
ひなた「ここには、荷物を取りに?」
陽乃「まぁね……行くところがなかった。というのもあるけれど」
陽乃は薄く笑って、ひなたから目を背ける
唯一頼れそうだった友人には
二度と会いに来ないでと突き放されてしまったし、
自宅は三年前の火事で焼け落ちているのでどうしようもない。
自宅にバーテックスが落ちてきたことによって帰る場所を失った人々のいる仮設住宅もあるにはあるが、
陽乃はきっと……そんな場所に行ったら襲われることになる。
ひなた「まるで気付きませんでした」
陽乃「ほんと、驚きよね」
若葉の姿で現れたり、ひなたの姿で現れたり、
陽乃を杏に見せたり、一般人に見せかけたり
千景や友奈を重傷に勘違いさせたり
言ってしまえば何でもありだ
陽乃「……ごめんなさいね。貴女の話、私が聞いて」
ひなた「あっ……あぁ、えぇ……まぁ……ふふっ、他人に話すのは良くても本人に聞かれていたとなると……」
恥ずかしいものですね。と、
ひなたは照れくさそうに笑って見せてくれる
陽乃は勇者を殺そうとした悪魔のような人で
ひなたのことですら手にかけようとした、許しがたい人のはずなのに
- 471 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/24(土) 23:20:26.81 ID:xtj8VY0so
-
ひなた「久遠さん、せっかくですからここでお伝えしておきたい話があります」
ひなたは柔らか威空気を引き締めるように声色を少しだけ変えて
陽乃のことをまっすぐ見つめた
恐怖か、緊張か
唇はきゅっと結ばれている
ひなた「大社は、久遠さんの勇者としての権利を剥奪することを検討しています」
陽乃「なるほどね」
ひなた「あまり、恩恵はなかったと思いますが」
陽乃「……まぁ」
母親を匿ってくれている。という部分だけはかなりの恩恵を得られていると言っても良いけれど、
それ以外の点においては、何の恩恵も得られてはいなかった
寧ろ、縛りがきつくさえ感じられて、窮屈だ
陽乃「それ、乃木さんには?」
ひなた「いえ……若葉ちゃんは、久遠さんのことを本当に勇者だと慕っていますから」
陽乃「そう、言われてもね……」
ひなた「いかなる理由があったとしても、あの日……瀬戸大橋の手前でバーテックスに立ちはだかっていた姿は勇者だったと思います」
ひなたはそう言うと、ふっと息を吐いて
ひなた「民衆の声が……あまりにも大きいんです。貴女を差し出せと」
1、だったら、差し出してしまえば良いと思うわ
2、大社はどうするって?
3、ほんと、嫌われちゃってるわね
4、ねぇ……追放したことに出来ないかしら?
↓2
- 472 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/24(土) 23:22:05.85 ID:Re3Mwq1s0
- ksk
- 473 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/24(土) 23:28:10.16 ID:Bl/9HPULO
- 3
- 474 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/24(土) 23:28:49.32 ID:dU/gQsgfO
- 4
- 475 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/24(土) 23:38:22.58 ID:xtj8VY0so
- ではここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから
- 476 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/24(土) 23:46:49.69 ID:fWhVmChzO
- 乙
戦いで大きな被害が出たからならまだしも戦う前から四面楚歌状態だな…
- 477 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/25(日) 00:19:06.29 ID:U4U4YGP0O
- 乙
救いがない…
- 478 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/25(日) 13:37:11.88 ID:Jsf9kLfNo
-
では少しずつ
- 479 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/25(日) 13:38:22.68 ID:Jsf9kLfNo
-
陽乃「ほんと……嫌われちゃってるわね」
ひなた「街の人達に関しては嫌われているというより……期待されているというのが正しいかもしれません」
人々は陽乃を人身御供として差し出すことで、
救われるかもしれないという話に希望を抱いている
そして、本来の役目を逃げ出したという罪の烙印を押されてしまった陽乃は、
まだ子供である若葉たちに重責を担わせるくらいよりも、
供物として差し出すことへの罪悪感が薄いのかもしれない。
それらが集うことで……より、声が大きくなっていく
ひなた「久遠さんを供物とすることは、勇者が戦う以上の希望なんです」
陽乃「私が死ぬことで治まるなんて……」
『ふむ……ないとは言えぬぞ』
陽乃「え?」
ひなた「?」
『久遠家は人身御供で捧げられる家系であるが、それを除いても神々に仕え平安を守る巫女でもある』
陽乃「そんな話……」
『主様の神社では、年に一度行われている特別な祭事を知っておろう?』
九尾はひなたには聞こえない状態のまま、
とても重要なことを、軽く話す
陽乃「えぇと……大体三月ごろにやるやつ?」
『うむ。それが名残として残っておった調和の祭事じゃ』
旧暦で2月、新暦で言えば大体2〜4月の初午の日に行う祭事
陽乃も巫女として手伝うことのあったそれは確かに、主祭神の一人である平穏を護った神の御姿を借りている
『久遠とはそもそも、その平安が永遠に続くようにと授けられた名じゃぞ』
- 480 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/25(日) 13:46:12.15 ID:WdqbfS1rO
- きてたか
- 481 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/25(日) 14:04:12.78 ID:Jsf9kLfNo
-
ひなた「あの、久遠さん……?」
陽乃「あぁ、ごめんなさい」
ひなたには九尾の声が聞こえていないので
陽乃が一人で俯いて独り言ちているようにしか見えない
九尾だって、ひなたにも声を聞かせることは可能なのに、
それを不要として聞かせないのだから、困ったものである
ひなた「九尾さん……と、お話を?」
陽乃「ええ」
ひなた「本当に、特別なんですね……」
陽乃「あら、代わってくれる?」
陽乃の特別は、残念ながら人々から忌避されるようなものであり、
陽の個人としては、
誰かが代わりになってくれるのであれば、なって貰っても良いと思う
もちろん、自分たちの命の保証がされることが前提ではあるが。
ひなた「いえ……私にはとても……」
- 482 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/25(日) 14:13:35.70 ID:Jsf9kLfNo
-
人々を四国へと連れ帰って来た勇者、乃木若葉
その巫女として付き添って来た上里ひなた
ひなたは、見初められた巫女の中でも適性が随一であるとされていて
大社からの信頼も厚い
大社からも、他の巫女からも頼りにされているのだ
しかし……ひなたは浮かない表情で首を振る
ひなた「巫女としての適性が最も高いのは、おそらく久遠さんだと私は思っています」
陽乃「そうかしら? 無垢じゃないわよ。私」
ひなた「そもそも、精霊とされている九尾の狐は神獣の一種であるともされていて、神に等しい位の高さを持っているんです」
陽乃「そうなの?」
『くふふふっ、さてのぅ?』
知ってはいるが、あえて訊ねた陽乃に九尾は嘯く
声色は柔らかいので、ひなたの誉め言葉に少し喜んでいるのかもしれないと、
陽乃は眉を顰めた。
ひなたは、九尾に聞いたその言葉が自分に向けられたと考えてか、頷いた。
ひなた「はい……ですので、私が仮に九尾さんのお声を聞くとなると神託という形になって、抽象的な何かを見せられることになるだけだと思います」
陽乃「普通に会話することは出来ない……?」
ひなた「恐らくですが」
『ふむ……』
- 483 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/25(日) 14:30:22.06 ID:Jsf9kLfNo
-
九尾は悩ましげな声を漏らして、ひなたの方へと影を伸ばしていく
殺意も敵意も感じられず、
むしろ、ひなたの言葉に喜んでいたので、害はないだろうと見過ごすと
不意に、ひなたが悲鳴を上げた
ひなた「なっ、なっ……きゃっ……」
陽乃「何してるの?」
『くふふっ、いやなに……少し試しただけのこと』
九尾がくつくつと笑って影を引っ込めていくと
顔を赤くしているひなたは体を抱きしめるようにして、
壁に沿ってズルズルと、座り込んでしまった
ひなた「い……今のは……」
陽乃「九尾が上里さんに近づいたの。大丈夫?」
ひなた「はい……ただ、その、ぞわぞわっとして……腰が抜けてしまって」
『主様のように、あやつに取り入ることは妾には出来ぬ』
陽乃「それって声を聞かせることも?」
『それは可能じゃぞ。妾が人の形を取り人間の領域に降りてやればよいだけじゃからのう』
それとは違って。と、九尾は続ける
『主様は己の体を依り代とした神降ろしを行っておるのじゃが……あやつにもその器はある。しかし、妾を降ろせば器が砕ける』
陽乃「つまり、代わりには出来ないって言いたいのね」
『うむ。妾とは合わぬ』
1、だったら、人の姿で出てきてあげてくれない?
2、でも、上里さんに器があるってことは神様を降ろせるのよね?
3、あんまり変なことしないであげて
4、それで……上里さん。急で悪いのだけど。私、ここを出ていくことにするわ
↓2
- 484 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/25(日) 14:33:03.99 ID:rE7Y+k9xO
- 1
- 485 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/25(日) 15:16:00.93 ID:WdqbfS1rO
- 1
- 486 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/25(日) 16:09:57.07 ID:Jsf9kLfNo
-
陽乃「だったら、人の姿で出てきてあげてくれない?」
『必要があるかや?』
陽乃「その方が話がスムーズに進むでしょう?」
『ふむ……』
九尾は少し不満そうな吐息を漏らしたが、
ひなたの方へと顔の部分を向けると、
公園でしていたように、
ベッドに腰かける形で影を人の姿へと作り替えて――
千景「これで、良いかしら?」
陽乃「っ……」
ひなた「どうしてわざわざ……千景さんの姿を」
千景の姿を取って見せた九尾は、
陽乃を一瞥すると、鼻で笑って両手を上げて見せる
千景「私は嫌だって……言ったけれど、彼女がどうしてもって言うから」
陽乃「嫌がらせってわけね」
千景「そう思うなら……勝手にどうぞ」
- 487 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/25(日) 16:24:39.02 ID:Jsf9kLfNo
-
千景が陽乃の部屋にいるのは異様としか言えない。
もちろん、実際には九尾であって彼女ではないのだけれど
雰囲気は、彼女そのものだ
その千景はベッドの上に座ったまま、陽乃ではなくひなたを見る
千景「私と話したいなんて……上里さんは……変な人ね」
ひなた「申し訳ありません……」
陽乃「上里さん……?」
怯えたように声を絞り出すひなたは体を震わせていて
目を見開いて、ゆっくりと頭を下げていく
陽乃にとって今の九尾はいつもと変わりない
ただ少しばかり不機嫌なだけの様子だが、ひなたにはそう感じられていないのだろう。
だんだんと呼吸が荒くなって――唐突に千景が笑い声を零した。
千景「ふふっ、ごめんなさい」
ひなた「っ……」
千景「別に、貴女を取って食おうとか思っていないから安心して」
笑みを浮かべた千景は、
陽乃のことを見ると、肩をすくめて見せて、その姿をまた別の勇者
ひなたが最も身近に感じられる乃木若葉へと切り替える
若葉「すまない。少し試してみたくなってな……怖がらせるつもりはなかったんだ」
- 488 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/25(日) 16:56:26.10 ID:Jsf9kLfNo
-
ひなた「若葉……ちゃ……」
若葉「ひなたは確かに巫女の適正とやらが高く感じられる。だが、それはあくまで……素質があるというだけだ」
陽乃「えっと……つまり何が言いたいの?」
若葉「あまり無理をさせるな。という事だ」
自分が無理をさせたことは棚の上にあげ、
額に汗を浮かべて、
肩での呼吸にまで動揺してしまっているひなたをベッドの上に寝かせた若葉―九尾―は、
その横に腰かけて、ひなたの汗を拭う
若葉「生れ落ちてから神々と共に在った久遠さんとひなたでは、強度に天と地の差がある。と言えば分かるだろうか?」
陽乃「ええ、それなら……分かるわ」
若葉「器はあるが脆すぎる。久遠さんに行ったように力を纏わせたりしたら、ものの数分で精神が崩壊する」
ひなた「っ……はぁ……神託を受けた疲労感の、比では……ありませんでした……」
若葉「そうだろうな。ひなたに与えたのは神託ではなく祟りに近い物だったからな」
陽乃「え……九尾っ!」
祟り。
それは人間が成し得るものではなく、
超自然的な何等かによって引き起こされる、呪い以上に危険なものだ
それをしたとあってはさすがに咎めるべきだと声を上げた陽乃を制するように、若葉の姿をした九尾は息をつく
若葉「ひなたは私を神の御使い足る神獣であると評した。なら、私が害する理由はない」
陽乃「でも、祟りなんて」
若葉「近い物だと言っただろう? 毒にも薬にもなり得る神に近しい私の加護だよ」
九尾は若葉の体で、若葉の声でそう優しく声をかけると
ひなたの前髪を軽く払って、額に口付けをする
若葉「私を神獣と呼んだこと。殺めてやると言った私に臆せず歩み寄るその愚かさへの褒美だ」
- 489 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/25(日) 17:44:30.84 ID:Jsf9kLfNo
-
若葉……九尾の口づけを受けたひなたはゆっくりと瞼を閉じて、眠ってしまった
吐息は聞こえるので、別に亡くなったわけではない
若葉「全く……人間というものは愚かだな」
陽乃「上里さんは大丈夫なのね?」
若葉「私の加護の重さに耐えられず眠っただけですよ。じきに目を覚まします」
陽乃「上里さんが気に入ったの?」
若葉「久遠さんさえ言わない神獣と言った娘ですよ? そのうえ、殺意を向けた私に歩み寄ろうとしたんだ。褒美の一つもくれてやるさ」
そう言って笑った若葉は隣で眠るひなたを一瞥すると、
もう一度若葉らしい笑みを浮かべて見せて、小さく息を吐いた
褒美とは言うが、気に入っているようだ
若葉「ただ人で唯一守ってやるというだけですよ」
陽乃「私の部屋で寝ていたら不信じゃない?」
若葉「どうせ伊予島しか来ないですよ。勇者の中でも貴女は近づいてはいけない人ですから」
若葉は困り顔で零し、
ひなたを起こさないようにとベッドから立ち上がる
若葉「さて、これからどうする? まさかこのままここに居座るわけにもいかないだろう?」
1、焼け落ちた自宅
2、焼け落ちた神社
3、国外
4、公園
5、いいえ……姿を変え続けて潜伏するわ
↓2
- 490 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/25(日) 17:58:33.79 ID:0LiFRTWj0
- 5
- 491 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/25(日) 18:00:38.33 ID:WdqbfS1rO
- 2
- 492 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/25(日) 18:27:55.56 ID:Jsf9kLfNo
-
陽乃「神社に行きましょ」
若葉「久遠家の神社か? あそこで暮らすつもりか?」
陽乃「敬語を使わないの?」
若葉「ひなたは寝ているんだ。もういいだろう」
九尾はそう吐き捨てると、
一応はひなたを一瞥してから、ため息をつく
若葉「久遠さんがそうしたいというのなら、構わないが……有様に嘆かないことだ」
陽乃は自宅や神社が放火され、
焼け落ちたという話を聞いただけで
その現場を見たわけでも、
そのあとの惨状を目にしたわけでもない。
九尾はそれを思ってか、困ったように首を振る
若葉「一応、姿は変えておく」
陽乃「もし、私だってバレたら?」
若葉「死人が増える」
陽乃「……分かったわ。宜しく」
陽乃が陽乃だと知られた場合、
九尾は陽乃に手を出そうとする人々を容赦なく殺すだろう
そうならないようにと、陽乃は九尾へと声をかけた
- 493 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/25(日) 18:35:58.59 ID:Jsf9kLfNo
-
↓1コンマ判定 一桁
0 00 最悪
1〜3 良い
4〜6 悪い
7〜9 普通
ぞろ目 最良
- 494 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/25(日) 18:44:59.32 ID:rE7Y+k9xO
- ふみゅ
- 495 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/25(日) 19:01:56.88 ID:lZXNrZw40
- なんか判定だといっつも1〜3ばかり出るイメージ
- 496 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/25(日) 19:18:33.79 ID:Jsf9kLfNo
-
√ 2018年 8月1日目 夕:神社(壊)
久遠家が管理していた神社は、それなりに規模の大きいものになっている。
本殿を除いて社が九つあり、
それぞれに祭神が祀られている
いや――祀られていた。
陽乃「……酷い有様だわ」
神社は本殿のみならず、目に見える全てが焼け落ちていた
それが延焼してしまったのか
狙ってそうされたのかは考えるまでもないだろう。
『主様、九美社に向かってくれるかや?』
陽乃「いいけれど……」
参拝順路に従って、
しかし、見るも無残な状態に顔を顰めながら、
本殿の裏……正しくは南に存在していた九美社に向かう。
赤と白を基調とした木造の社は、見る影もない
陽乃「……駄目ね」
『ふむ……見るまでもなかったが、やはりすべて落ちておるのう』
- 497 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/25(日) 19:53:02.46 ID:Jsf9kLfNo
-
陽乃「ただ、それなりに片付けがされてるわ」
『ほう?』
陽乃「放火されて、焼け落ちて……ボロボロだけど、そのまま放置されたわけじゃないみたい」
『盗人がいたようじゃがのう?』
陽乃「それとは別」
九尾は分かっているだろうけれど、陽乃はあえて否定する
九美社から離れ、ほかの社や本殿も見て回ったが、
九尾が言うように盗みに入られた形跡がある。
明らかに焼失ではなく、消失しているものが複数あったし、
酷いものは何かでたたき割られていたから、確実だろう
陽乃「一応、雨風はしのげそうね」
『本気でここに住むつもりかや?』
陽乃「他に行けそうなところないでしょ?」
ここから近い実家に帰ることも考えたが、
そこはむしろ、周囲の目がある可能性が高い
見つかった場合にその人が殺されることを考えると
雨風がしのげる本殿に隠れ住むのがベストだろう
- 498 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/25(日) 20:37:33.10 ID:Jsf9kLfNo
-
『外に出てしまうのも手ではあるじゃろう』
陽乃「そんなことしたらお母さんがどうなるか分からないじゃない」
『乃木と上里に言うてみたらどうじゃ』
陽乃「その二人なら……」
助けてと言えば、二人なら助けてくれるかもしれない
たとえ陽乃が勇者の権利を剥奪されたとしても
母親を匿うことに協力してくれるかもしれない
ただ、母親はそれを望まないだろう
陽乃の母は、あくまで巫女として大社に属しているだけだ。
それがなければ、匿われるなんて拒否することだろうし
陽乃の代わりに、人身御供として喜んで捧げられるはず。
陽乃「はぁ……」
『主様の母親は、本来ならば死していた人間じゃぞ』
陽乃「だとしても、助けられたじゃない」
『そうじゃ。主様は不要な人間を助け、己に枷をしておる。無駄で愚かで阿呆じゃのう』
- 499 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/25(日) 21:34:08.96 ID:Jsf9kLfNo
-
喉を鳴らして笑った九尾は、
焼け残っている本殿の一部分
そのさらに片隅で座り込んでいる陽乃の隣に人型を作りだす
友奈「こんな場所で隠れていなくちゃいけないなんて……おかしいです!」
陽乃「こんな場所でも、私の大切な場所なんだけどね」
友奈「あ……ごめんなさい。でも、雨しか防げませんよ」
扉なんてない
鍵なんてない
屋根となれる程度のものがあるくらいで、
強風なら、容赦なく雨が吹き込んでくるだろう
友奈「帰ってきて貰えませんか? あのことなら……全然、問題ありませんからっ」
陽乃「それをやったのは貴女でしょ」
まったく。と、
陽乃は呆れてため息をつく
友奈の姿をしているが九尾は九尾だし
例の件を行ったのは、その九尾だ
- 500 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/25(日) 22:08:42.27 ID:Jsf9kLfNo
-
球子「仕方がないだろー……ああでもしなきゃ、久遠陽乃の力は示せない」
陽乃「本気を出さなかったくせに」
球子「そもそも、勇者自体が本気を出していないからな」
そう言った九尾は、
先刻言っただろう? と、球子の声で笑う
球子「久遠さんがしてるのは神降ろし。完全に同じことは出来ないにしても、勇者はみんな神降ろしに類似した現象を引き起こす器がある」
陽乃「それって……ほんと?」
球子「もちろん、久遠さんのように常時行うなんて出来ないだろうけどなー一時的にならできるはずだぞ」
球子の姿で
球子らしい仕草をして見せるものの
浮かべている笑みには、九尾の怪しさが感じられた
球子「タマだってきっと凄いことが出来るぞ。まぁ、その反動で大変な事になるだろうけどな」
陽乃「私よりも酷いことになりそうっていうのだけは分かる」
巫女の中で最も適性があるひなたでさえ、
神降ろしすることで、壊れてしまうと九尾は言った。
神の力を借り受ける勇者であれば、ひなたよりも耐えることは出来るかもしれないが
やはり、その影響は大きいだろう
- 501 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/25(日) 22:31:37.54 ID:Jsf9kLfNo
-
神社に逃げてから、九尾と二人きり
今までよりも話をしてくれるので
思っていたよりは寂しさを感じないけれど
部屋とさえ言えないありさまには、さすがに心が疲弊する
友人に拒絶され、千景に死ねと言われて、
唯一休むことの出来ていた部屋にはもう戻ることは出来なくなって
布団いちまいさえない焼け落ちた本殿で、寝泊まり
わびしいどころの話ではない。
だからこそ、九尾は寄り添ってくれているのかもしれないが。
千景「久遠さんは現状、敵しかいないと言っても良いわ」
陽乃「最低でも半分は貴女のせいだけど」
千景「本当にこのまま逃げ隠れし続けるだけでいいの?」
陽乃「言っておくけれど反旗を翻すなんて、私はしないからね」
1、郡さんの姿は止めてくれない?
2、ねぇ、勇者が使える神降ろしって具体的にはどんなものなの?
3、そう言えば……最初に貴女、私に憑いているひと柱って言ってなかった?
4、それで? 貴女はほかに何ができるって思っているの?
5、例の……貴女の子供になる作戦はまだ有効?
↓2
- 502 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/25(日) 22:33:59.67 ID:LoFi6g95O
- 4
- 503 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/25(日) 22:34:05.15 ID:S94B52LYO
- 3
- 504 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/25(日) 22:34:44.35 ID:0LiFRTWj0
- 5
- 505 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/25(日) 22:43:21.59 ID:Jsf9kLfNo
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 506 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/25(日) 22:54:39.93 ID:0xQdSVugO
- 乙
あの九尾から信頼を勝ち取るとはひなた流石だな
あと若葉たちに色々化けてる九尾だけど前まであった自前の人間体は今回無いっぽい?
- 507 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/25(日) 23:05:54.63 ID:rE7Y+k9xO
- 乙
ひなたは好かれる子なんだな
これで何か変わるんだろうか
- 508 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/26(月) 20:09:59.56 ID:80k7U8hDo
- では、少しだけ
- 509 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/26(月) 20:10:46.51 ID:80k7U8hDo
-
陽乃「ところで……さっきの話で思い出したんだけど」
千景「なに?」
陽乃「………」
千景と身を寄せ合っているという違和感に陽乃は眉を顰めて
これは九尾なのだと頭を振って、目を瞑る
千景の顔、千景の身体、千景の声
だが……九尾だ
陽乃「貴女、最初に私に憑いているひと柱って言っていなかった?」
千景「あぁ……言ったわね」
陽乃「あれってどういうこと? まさか……」
千景「そうね。せっかくここにいるんだから説明したほうが良いかもしれないわね」
千景はそう言うと、陽乃の方に目を向ける
表情があまりにもにこやかで気味悪くさえ感じてしまうが、
それは千景に対して失礼だろう
千景「九尾の狐はこの神社で言う九美社を主として存在している。つまり、貴女が本来降ろす神は私とは別にいる」
陽乃「ん……と? もしかして主祭神として崇めていた神様……?」
千景「そう。上里さんが神様に愛されていたように、貴女もまたここの神々に愛されているから力を借りられるのよ」
九尾は困り顔で「けれど」と呟く
千景「厄介なことにこの有様よ」
陽乃「火事で焼け落ちたのが問題なの?」
千景「人間だって、自分の家が焼かれたら怒るでしょう?」
陽乃「あ……」
貴女には縁のないことだったわね。と、
九尾は嫌味たらしくぼやいて、ため息をつく
千景「そのうえ、帰る場所がなくなる。そうなったらどうすると思う? ねぇ? 久遠さん」
- 510 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/26(月) 20:28:36.58 ID:80k7U8hDo
-
久遠家が奉っていた神々は、
神社への放火によって居場所を奪われている
それに憤りを覚え、愛している……らしい陽乃がこんな状況に陥っている
さて、神々はどうなっているだろうか?
九尾は悍ましささえ感じさせるような表情を見せると
ニヤリと口元を歪ませる
それは人の作り出される口の大きさを超えているようにさえ、見えてしまう。
千景「貴女に憑いている神で最も厄介なのは、伊邪那美命でしょうね」
陽乃「イザナミ様……」
千景「かの神は愛と誓約に重きを置き死を誘うのよ……分かるでしょう? 貴女の境遇は、彼女にとって人間を滅ぼすに値する裏切りの中にある」
陽乃「それって、貴女よりも不味いの?」
千景「ふふふっ、私も九尾として死を与える性質はあるけれどかの神は私のそれなんて足元にも及ばないわ」
九尾はそれが軽いことのように言うが、
九尾が足元にも及ばない死の性質を持っているとなると、
勇者でさえ……神々でさえ、その力の影響を受ける可能性が高い
そして、その神が人々に怒りを覚えている
陽乃「その神様が、貴女のように私の主導権を奪う可能性は?」
千景「さぁ? 私の預かり知らないことよ。言っておくけれど、いくら貴女でもかの神を扱うのは命を削るわ」
陽乃「九尾の力でも血反吐を吐くんだけど……」
千景「そう言えばそうだったわね……残念ながら、貴女の神は器を壊しやすいみたいね」
- 511 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/26(月) 20:33:19.12 ID:nP2k+Ag4O
- 死神の話題久しぶりだな
- 512 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/26(月) 20:45:00.20 ID:80k7U8hDo
-
それでも九尾はまだましな方らしい。
というのも九尾の場合、
死に至らしめる毒素を持っているから血反吐を吐くことになっているだけで、
かの神……伊邪那美命のように死に関する【祟り】を持っているわけではないからだ。
千景「大地母神でもあるかの神は、しかしながら地の神ではなく天の神よ」
陽乃「天の神……って、神樹様と正反対だわ」
千景「そうね。乃木さんの刀、生大刀の主である大国主神の上の上……元をたどった先にいる神は貴女も知っているでしょう?」
陽乃「それって、イザナギ様のことよね?」
千景「そう。その神が裏切りの果てに作りたもうた子供の子が大国主神」
ここぞとばかりに、罵って見せた九尾は、
それを悪びれもせずに、鼻で笑う
流石にいかがなものかと陽乃は思ったのだが、
九尾は人間ではなく、信仰心もないからどうでもいいのだろう
千景「そんな存在とその賛同者たちが護るこの国は、伊邪那美命にとって守る価値なんて存在しえないと言っていい」
陽乃「………」
千景「端的に言えば凄く相性が悪い。神樹様とそれに属している勇者達みんなと、貴女はね」
九尾は色々と詳しく
言い換えればまどろっこしく話してくれているが
つまるところ【しびれを切らしてこの国を滅ぼすこともあります】というわけである。
- 513 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/26(月) 21:02:29.44 ID:80k7U8hDo
-
千景「今はまだ、貴女が滑稽にも人を殺めることを良しとしないからなりを潜めているけれど、危ないわね」
陽乃「危ないって、止めてよ……私の手で人を殺させる気?」
千景「久遠さん、一番の友人に裏切られたでしょう?」
陽乃「あれはっ」
千景「そういうのを、かの神は大いに嫌うのよ」
千景はお手上げとばかりに、手を上げて首を振る
お茶らけて見せてはいるが、その言葉は本気だ。
伊邪那美命は代々見守り続けてきた久遠の子である陽乃のことを愛している
その愛娘が人々に裏切られ続けているのだから救いようがないだろう。
千景「最初に契りを結んだのが私で良かったわね……久遠さん」
陽乃「ちょ……っと……」
九尾はニヤリと笑いながら陽乃に覆いかぶさるように動き、
陽乃の身体に手を這わせる
千景「かの神にとって契りは絶対。私がただの社の主でありながらかの神々よりも表に出られているのはそのおかげなのよ」
千景の声が耳元から聞こえる
千景の体は真実を暴けば九尾のはずだが、
人肌に等しい温もりがあって、本当に千景のような錯覚を覚える
千景「貴女もまた神々に愛されている。そして、その神のひと柱は貴女の境遇を憂い、世界に憤りを覚えていることを忘れないで頂戴」
陽乃「わかっ……た、から、離れて……」
千景「人間は密着することを最も記憶する事柄としているでしょう? 思い出……だったかしら?」
陽乃「違うからっ、その知識は間違ってるからっ!」
千景の体を突き飛ばしてしまうようで気が引けてしまっていた陽乃を一瞥すると、
千景―九尾―は「そうなのね」と呟いてあっさりと離れた。
- 514 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/26(月) 21:16:39.24 ID:80k7U8hDo
-
敵対したあげく、死ねばよかったのにとまで言われた相手と抱き合うなど
思い出どころか、トラウマになりかねない。
もちろん、抱き合うとまでは行かなくても
このくらい会話が長続きさせられるまでになれれば良いとは……思うけれど。
それはきっと、バーテックスを倒すよりも難しいことだろう
千景「何でもいいけれど、ちゃんと覚えておいて。貴女が本気ならかの神は喜んでその力を貴女に貸し与えるわ」
しかしそれは当然ながら諸刃の剣
陽乃の体を酷く蝕んで、
最悪の場合……いや、最終的に死に至らしめることになる
九尾の力とはまるで違う、祟りを起因とした死の力だ
陽乃「分かった、覚えておくから。二度とさっきみたいなことしないで」
千景「私の身体じゃ不満なの……? 上里さんのようにメリハリのある体が良ければ、そうできるけれど?」
陽乃「他人の身体でそういうことしないでって言ってるの。頭おかしくなるから」
じっとりとした視線をぶつけながら、
自分の身体を撫でまわしている九尾に言い捨てて、目を背ける
千景の顔で、千景の声で
彼女がやりそうもないことをやってこられると対応に困る
それが長引けば長引くほど本来の千景との接し方が分からなくなってしまうし、
彼女の突き放すような物言いに心が痛むことになってしまう
千景「そう……まぁ、人肌恋しければ要望に応えてあげるわ。貴女の質問にも、可能な限りその誰かで答えてあげる」
陽乃「お気遣いありがとうね」
その九尾の言葉が本当に本当なのかは定かではないけれど、
そうして接してくれるというのは、孤独にならなければならない陽乃にとっては辛くて
けれど、少しはありがたいことだった。
- 515 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/26(月) 21:36:00.32 ID:80k7U8hDo
- √ 2018年 8月1日目 夜:神社(壊)
01〜10 若い人
61〜70 若葉 ひなた
ぞろ目 特殊
↓1のコンマ
※それ以外は通常
- 516 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/26(月) 21:38:18.13 ID:+PwChMn+0
- あ
- 517 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/26(月) 21:53:21.16 ID:80k7U8hDo
-
√ 2018年 8月1日目 夜:神社(壊)
陽乃「あぁもう……っ」
ひなた「どうかしたんですか?」
陽乃「蚊も蛾も蟻も蠅もたっくさんいるんだけど……」
ひなた「それはそうですよ。ここ、放置されて三年経っているんですよ? 彼らにとっては良い住処になっています」
ひなた……の姿になっている九尾は、
陽乃と違って虫など無関係のように楽しげに笑う
本当のひなたがどうなのかは分からないが、
少なくともカブトムシの雌に似ている、触覚の生えた黒いやつ
それの死骸を指でつついて転がすことはないだろう
ひなた「私としては、餌が豊富でありがたいんですけどね」
陽乃「ちょ、ちょっと上里さんの顔でそれ食べようとしないで!」
ひなた「それなりに美味しいですよ?」
陽乃「やめてっ!」
平気な顔で虫を摘まんで口に運ぼうとするひなた―九尾―の手を掴んで止めて
逆の手で掴んで虫を向けてくる九尾の手を、おもいっきり弾く
虫が完全に駄目というわけではないが
流石に、食べられるほど平気なわけではない
- 518 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/26(月) 22:19:52.99 ID:80k7U8hDo
-
ひなた「困りましたね……虫が苦手ですとここでは寝られませんよ?」
陽乃「苦手じゃないけど寝てるときに服の中に入られたりしたりしたら嫌でしょ?」
ひなた「ん〜……私は別に気にしないですね。体中這い回られるのには慣れていますし」
陽乃「えぇ……」
にこやかな笑みを浮かべるひなたから目を逸らして、
少し離れた先、屋根が崩れたところから差し込んでくる月の光を見上げる
九尾のようにとはいかなくても
慣れていかなければいけないのだろうと陽乃はため息をつく
ひなた「出来ることもありませんし、眠ってしまったらどうですか?」
陽乃「寝てるときのことで悩んでいるんだけど……」
ひなた「ふふふっ、そうでしたね。私は眠る必要がないので見張りをしておきますよ」
陽乃「上里さんの姿で?」
ひなた「そこはもちろん。私の本来の姿でですよ」
普段は影に潜んでいる九尾は、
周りに人もいないからか、ひなたの姿でグッと体を伸ばす
陽乃は神社に来る途中に自販機で買ったペットボトルの水を一口飲んで
膝を抱え込んでいく
陽乃「お腹空いた」
ひなた「食べます?」
陽乃「虫は嫌」
目も向けずに断って、持ち出した財布の中を見る
一応、勇者として扱われるにあたって多少の報奨金が与えられるので
それなりにお金はあるのだが、むやみやたらと使い潰していいものでもない
- 519 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/26(月) 22:22:12.64 ID:80k7U8hDo
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 520 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/26(月) 22:28:00.52 ID:4qWZ7VZwO
- 乙
かなり重要な情報が聞けた代わりに神社跡地でサバイバルする羽目になるとは…
とはいえ今までよりは少し空気が軽くなった気がするな
- 521 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/26(月) 22:48:29.88 ID:eHQe3gk/O
- 乙
イザナミは酒呑童子クラス(それ以上)の切り札だな
それはそうと若葉の前でひなたが虫を食べるドッキリやらせてみたい
- 522 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/27(火) 04:46:21.12 ID:ZvzYgCmLO
- 乙
ホームレス中学生はるのん
この先どうなってしまうのか
- 523 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/27(火) 21:57:57.85 ID:DqR51ZzWo
- では少しだけ
- 524 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/27(火) 21:58:25.41 ID:DqR51ZzWo
-
ひなた「食事にくらいお金は使ったほうが良いと思いますよ? 私はともかく久遠さんは人間ですし」
陽乃「そうは言うけれど……」
ひなた「三年間、勇者として囲われる条件としてお金頂いていますし、多少は問題ないでしょう?」
陽乃「これから増えることないのに?」
ひなた「あぁ……」
そんなことまるで考えていませんでしたと言うような声を上げた九尾は、
面倒くさそうに顔を顰めると、
その表情のままに「人間って面倒くさいですね」と、ひなたの声で悪態をつく
陽乃「そう、面倒なの」
ひなた「では、久遠さんはお仕事をなされてみては?」
陽乃「未成年なうえに住所不定なんだけど……」
ひなた「住所はここではだめなのですか?」
陽乃「駄目に決まってるでしょう。こんな……ボロボロな場所」
必要以上に調査されるとは限らないけれど
念のため、実家や神社の住所は使わない方が良いだろう
陽乃「それに、一番の問題は連絡手段を持っていないことよ」
ひなた「スマホですか……ん〜……盗ってきましょうか?」
陽乃「駄目に決まってるでしょう……もう」
何回同じことを言わせるのかと
陽乃は九尾を一瞥して、ため息をついた
- 525 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/27(火) 21:59:53.89 ID:7uIob1JqO
- よっしゃ
- 526 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/27(火) 22:35:57.06 ID:DqR51ZzWo
-
ひなた「では、正式に入手してしまうのはどうでしょう?」
陽乃「正式にねぇ……スマホを契約するためには家が必要よ。身分証明だって」
ひなた「身分なら私がどうにかできますよ」
陽乃「家は?」
ひなた「身分がどうにかできれば、借りることくらい出来るのではありませんか?」
九尾は簡単に言うが、簡単な話ではない
身分をどうにかできるのであれば、連帯保証人としての立場は九尾が補えるだろう
しかし、それに際して最も重要ともいえる収入証明が出来ない
もしかしたら、九尾の力でそれさえもどうにかできるかもしれないが。
陽乃「手続きの全てをどうにかできちゃうの?」
ひなた「そうですねぇ……契約に関してどれだけの情報が必要なのか私にも分からないので何とも」
そう言った九尾は、しかし、含みのある笑みを浮かべている
そこには自負が感じられて、月明かりを受けてもいない瞳が怪しく輝くのが見えた。
九尾はどうにかできる自信がるのだ
どう化かしてやろうかと、状況を愉しんでいるのだ
ひなた「久遠さんが望むのでしたら、全力でお手伝いいたしますけど……どういたしますか?」
陽乃「どうするって言ったって……」
- 527 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/27(火) 23:19:12.84 ID:DqR51ZzWo
-
かなり問題はあるが、
九尾の力でそのほとんどをどうにかして、
ちゃんとしたところに住むことが出来るのなら、それはそれでいいのかもしれないと陽乃は思う。
無残に破壊された社、目に見える埃
雨風を吹き込ませてしまう崩れた屋根
至る所に散らばっている昆虫の死骸
気を抜けば、腕や足を這おうとする不快感
自分で選んで飛び出してきてしまったが、
今のこの状態をずっと続けていくことは精神的な負担が大きい
今はまだ耐えられることも
いつかは耐えられなくなってしまうかもしれない
そうなったとき、この状況を作らせた世界を憎まずにいられるのだろうか?
ひなた「私はちゃんと、苦難の道になると言いましたよ」
陽乃「言ってたわね……ちゃんと」
九尾の力で不正をするか
自分の選んだ道ゆえ、我慢するか
陽乃は悩ましさを誤魔化すように九尾を横目に見る
九尾は視線に気づいて、笑みを浮かべた。
1、考えとく
2、取り合えず、ご飯買いましょ
3、明日にでも、その手続きやってみましょう
4、いいわよ。このままで
↓1
- 528 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/27(火) 23:25:36.02 ID:ByNaO/0J0
- 1
- 529 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/27(火) 23:34:59.60 ID:DqR51ZzWo
- ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 530 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/27(火) 23:44:55.95 ID:flMM5QVYO
- 乙
シリアス展開的な意味での過酷さ加えて生活的な意味でも過酷になっていくな
それにしても陽乃さんが消えて大社は今頃どうなってるんだろうか
- 531 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/28(水) 04:18:02.09 ID:V4nmVd5fO
- 乙
はるのん家出編なんかおもしろいな
大赦もそうだけど勇者たちもどんな感じになってるか気になる
- 532 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/28(水) 20:09:06.24 ID:v2gK1Eobo
- では少しだけ
- 533 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/28(水) 20:10:12.53 ID:v2gK1Eobo
-
陽乃「考えておく」
ひなた「早いうちに決めたほうが良いですよ。私の力だって、万能ではありませんから」
陽乃「何言ってるのよ」
すれ違う人、関わる人みんなに陽乃であることを気付かせない
九尾の話からある程度の書類等も誤魔化せるとするなら、
九尾の力は誤認させるという部分に置いて
万能としか言いようがないほどの影響力を持っている
謙遜できる代物ではない……が、九尾扮するひなたは苦笑する
ひなた「私が近くにいるならともかく、離れると力が弱まってしまうのでちょっとした違和感で気付かれてしまうんですよ」
陽乃「例えば?」
ひなた「私が近くにいられた場合、本来いないはずの久遠さんに食事を与えていると認識できます」
けれど。と、九尾はなぜだかとても嬉しそうに微笑む
ひなた「離れていると、ベッドにぶちまけていることに気づきます」
陽乃「貴女がいればそれに気付かないことに驚きなんだけど」
ひなた「私は基本的に、相手にとって違和感がないように見えるようにしているだけなんですよ」
陽乃「乃木さん達に化けていたのは?」
ひなた「そこは私のお遊びですよ」
やっぱり、何でもありなのだと陽乃は困ったように笑って
今のひなたの姿はさっきの話の影響なのだろうかと、目を瞑る
土や草のにおい、虫が集まるような鼻を付くにおい
それを弾くように、ふんわりと感じるひなたのにおい
これも、九尾による偽りだろうか
- 534 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/28(水) 20:15:53.07 ID:xWz/4ktnO
- 来てたか
- 535 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/28(水) 20:26:57.81 ID:v2gK1Eobo
-
陽乃「じゃぁ、今頃病院は大騒ぎなのね」
ひなた「でしょうねぇ……最も、あの人達の心が【余計なことをしませんように】と強く祈っているなら明日の朝までは大丈夫ですよ」
陽乃「明日の朝……あぁ、入浴の時間ね」
ひなた「そうです。久遠さんに最も触れる瞬間ですから、私がいなければそこまで誤魔化しきることは不可能です」
居れば誤魔化せるのね。と、言いたくなったけれど、堪える
影となった状態で看護師の首を締めあげて、
伸びてきた手がそれに触れることが出来ないという異様な光景を目にしていた陽乃は
触覚を偽ることくらい朝飯前なんだろうと適当に割り切った
陽乃「上里さんから報告が上がるかしら?」
ひなた「その心配はないかと」
陽乃「?」
九尾は月明かりを望むように顔を上げると、
目を細め、ゆっくりと閉じて笑みを浮かべる
何かを受信したかのような雰囲気に、陽乃は眉を顰めた
陽乃「どうして言い切れるの?」
ひなた「私は上里ひなたですよ? 完全一致ではないにしてもその思考と行動方針の大部分は真似られていると思います」
その頭で考えれば。と、九尾は言う
ひなた「話すとしても一番信頼できる若葉ちゃんにだけ。でしょうね。少なくとも大社には黙秘しますよ」
- 536 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/28(水) 20:44:59.68 ID:v2gK1Eobo
-
大社に、陽乃が来たことを正直に話したところで何の利益もない
なぜ逃がしたのか、なぜすぐに連絡しなかったのか
勇者達は何をしていたのか……等々
ひなたが責められることになるのが目に見えている
それだけ陽乃のことを危険視しているというのは分かるし、
陽乃に協力的であると困るから、そういう素振りを見せたら罰せられるという印象を強める必要もあることだろう
しかし、それらは裏目に出る
千景は「だから――」と、零すだろうけれど
陽乃を想ってくれている伊予島杏や、まだ諦めていない高嶋友奈は大社のやり口に不満を抱くかもしれない
陽乃の逃走に憤りを覚えはするが、杏が陽乃側なことで分からなくもないとしてくれるであろう土居球子もきっと同じ
そこに、若葉まで加わるとなれば……大変な事になる。
ひなたとしては、その方向になるのは避けたいはずだ
ひなた「大社は久遠さんがいなくなったことで血眼で探し始めるはずです。私がいる以上、気付かれることはあり得ませんが万が一もあります」
陽乃「……分かってるけど」
ひなた「人々を騙し続けることが苦しいなら、いっそのこと結界の外に出ていくのも一つの手ですよ」
陽乃「それは……」
ひなた「お母様のことを思う気持ちも分かりますが……逃げ出した以上はそんな生易しさは捨てるべきでしょう」
大社は危険極まりない陽乃を連れ戻すためならば、
母親を、陽乃から見た人質として扱う可能性がある。
もちろん、表立ってそんな動きはしないはずだがそれらしい動きは見せてくるはずだ
ひなた「私は言いましたよ。人間の一人でも殺してしまうべきだと……それを拒んだのは久遠さんです」
陽乃「上里さんの声で言わないで」
ひなた「少なくとも私は味方ですよ。若葉ちゃんだって……だから、大丈夫です。貴女は独りではありません」
九尾は――
ひなたは……陽乃に寄り添うようにしていた体を傾けて、
膝を抱えていた陽乃の身体を抱きしめるように腕を回す。
陽乃「だから、他人でやらないでって言ってるのに……」
ひなた「ふふっ……千景さんはあれですけど、私は大丈夫ですよ」
九尾はそう言って、離れようとはしなかった
- 537 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/28(水) 20:49:10.40 ID:v2gK1Eobo
-
↓1コンマ判定 所持金
コンマ一桁目×万円(9x xの部分)
コンマ二桁目×千円(x9 xの部分)
※ぞろ目なら倍
- 538 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/28(水) 20:50:20.48 ID:DDUtj8Ry0
- あ
- 539 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/28(水) 20:54:52.78 ID:v2gK1Eobo
-
1日のまとめ
・ 乃木若葉 : 交流無()
・上里ひなた : 交流有(九尾)
・ 高嶋友奈 : 交流無()
・ 土居球子 : 交流無()
・ 伊予島杏 : 交流無(部屋整理)
・ 郡千景 : 交流無(陽乃の意思だとしても)
・ 九尾 : 交流有(逃走、非殺傷、姿を見せる、神々、考えておく)
√ 2018/08/1 まとめ
乃木若葉との絆 56→56(普通)
上里ひなたとの絆 55→56(普通)
高嶋友奈との絆 49→49(普通)
土居球子との絆 38→38(悪い)
伊予島杏との絆 43→43(普通)
郡千景との絆 21→21(険悪)
九尾との絆 59→61(普通)
所持金:4万8千円
- 540 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/28(水) 20:55:59.17 ID:v2gK1Eobo
- 訂正
所持金:4万8千円 → 8万4千円
- 541 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/28(水) 21:03:45.34 ID:v2gK1Eobo
-
√ 2018年 8月2日目 朝:神社(壊)
05〜14 大社
25〜34 若葉
53〜62 誰か
89〜98 ひなた
ぞろ目 特殊
↓1のコンマ
※それ以外は通常
- 542 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/28(水) 21:05:35.20 ID:rzxjJbigO
- あ
- 543 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/28(水) 22:00:59.58 ID:v2gK1Eobo
-
√ 2018年 8月2日目 朝:神社(壊)
朝は思っていた以上に不快感の募る目覚めだった
不思議にも羽虫の音は聞こえなかったが、
服の中に入り込んだ虫の感触に発狂しかけの絶叫をあげて飛び起きた
数匹の虫が手と足とでぐちゃりと潰れたが、
それにはもう、叫ぶよりも呆然とする一方で……
シャツの裾からポトリと落ちた六本足の虫からは、目を背けた
陽乃「あぁ……もう……」
杏「久遠さん、大丈夫ですか?」
陽乃「朝から不快感で最悪だけど……今日は伊予島さんなの?」
杏「久遠さんは平坦より起伏のある体の方が好みだと思ったので」
陽乃「あれは郡さんだったからダメだったの。いや、郡さん以外でもお断りだわ」
溜息をつきながら首を振る
夏の暑さに汗ばんだ前髪が額に張り付く感覚に不快感は増すばかりで
手で払って、申し訳程度に水気を払った
陽乃「誰か来たりした?」
杏「誰も来ていませんよ。平和なものです」
- 544 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/28(水) 22:15:39.84 ID:v2gK1Eobo
-
杏「夜も静かでしたし、まだここに探しに来た様子はありません」
陽乃「そう……」
杏「周囲の建物から様子を窺う視線も感じないので、普通の人間にはまだ連絡していないようです」
陽乃「まだというより、しないでしょうね」
杏「やっぱり、そう思います?」
九尾扮する杏は怪訝そうな表情で頷く
九尾も一般人に久遠陽乃が逃亡したことを周知する気はないだろうと考えていた。
民衆の全てではないが、それなりの規模の人々が陽乃を人身御供とすることに希望を抱いている。
その陽乃が街のどこかにいるとなれば大騒ぎになるだろう
それを除いても、久遠陽乃は化け物だという噂も流れているので、
そんな人物を取り逃がしたとなれば、大社が終わるかもしれない
九尾は、くすくすと笑う
杏「いっそのこと、私達が周知して転覆を謀るのはどうでしょう?」
陽乃「なにその、滅亡しそうな選択」
なしなし。と、陽乃は軽く払って外に出る
夏場のイヤになるほど晴れ渡っている空を見上げる
神樹様の結界の中のため、真実ではないらしいが
見る限りでは、本物と変わりのない空をしている
雲一つない晴天なのは神樹様の計らいなのか、偶然か。
- 545 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/28(水) 22:29:08.22 ID:v2gK1Eobo
-
風通しのいい廃屋と化した本殿
夏の夜から朝にかけて過ごすには具合は非常に悪い。
そのせいで汗ばんだ体には、
僅かな動きにも反応して、肌着が密着する
どうせ自分だとバレないのなら全部脱ぎ散らかしてしまおうかだなんて考えが浮かぶほどだ
陽乃「ねぇ、九尾……伊予島さん」
杏「何でしょう?」
陽乃「私、まだ大丈夫かしら」
杏「大丈夫、とは?」
もじもじとして、気まずそうに顔を背ける陽乃を見つめる杏……九尾は、
眉を顰めて、首を傾げた
杏「なんの話ですか?」
陽乃「だ、だから……その、私、臭ってない?」
陽乃は実質、二日間入浴をしていない
それに加えて、この季節
肌のべたつく不快感からダメだろうな。とは思いつつ聞いてみると
九尾は「あぁ」と得心が言ったように頷く
杏「まだ獣臭くないので平気では?」
陽乃「人間基準で!」
杏「えぇ……っと、そう、ですね……」
言葉にはせず、濁すような呟きを漏らしながら目を逸らす
駄目な事だけは、分かった
- 546 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/28(水) 22:45:49.78 ID:v2gK1Eobo
-
陽乃「着替えれば何とかなるかな」
杏「お洋服だけでも清潔にしておくのは良い選択だと思います」
陽乃「ありがと……」
とぼとぼと本殿に引き返した陽乃を見送った九尾は、
さて……と、息を吐く。
今のところ、陽乃側で大社の動きは感じられないが
丸亀城の方では動きがあったことだろう。
上里ひなたに大社が接触したことで、
連鎖的に勇者達へと伝わっていくことになる
一般の人間を派遣できない【化け物】である以上、構成は二人、三人での班を作っての捜索
上里ひなたにも殺害を予告してきた人物が捜索対象であるため、
ひなたは大社預かりとなって一時的に大社の施設預かりとなるそうだ
これは恐らく、陽乃を巫女と認めている乃木若葉への牽制となることだろう
杏「……私達が見つかることはあり得ないけれど」
相手が望む姿を見せるというやり方では、
久遠陽乃という存在を望んで捜索に当たってくる以上、勇者に看破される
常に固定化した別の人間に見えるようにしておくべきだろう
陽乃「お待たせ……あぅ」
杏「まずはご飯ですか? それともお風呂? それとも私ですか?」
1、お風呂!
2、食事!
3、街を散策
4、身分詐称で家を借りる
5、焼け落ちた家に行く
6、貴女って言ったら何してくれるのよ
↓2
- 547 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/28(水) 22:47:08.74 ID:Phy5yTCCO
- 1かなぁ
- 548 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/28(水) 22:48:40.59 ID:lSuGkje9O
- 1
- 549 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/28(水) 22:55:58.88 ID:v2gK1Eobo
-
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 550 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/28(水) 23:06:33.51 ID:lSuGkje9O
- 乙
そりゃさすがに夏場の野宿は虫だらけで大変だよな…
あと陽乃さんのお風呂シーンにちょっと期待
- 551 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/28(水) 23:56:29.97 ID:Phy5yTCCO
- 乙
羽虫がいない?九尾が食ったな?
- 552 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/29(木) 01:24:59.79 ID:aMLxdNtUO
- 乙
夏はほんとにすごしにくいと思う
キャンプ趣味だけど虫が嫌で冬にしかしない
- 553 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2020/10/29(木) 03:08:55.71 ID:45a8K+n+0
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- 554 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/29(木) 08:07:41.53 ID:0m0n1wcbO
- 乙
ひなたと勇者(千景以外)は味方してくれるならどこかで話をしておきたいな
ただ千景に関しては現状だとすぐモメそうだけど…
- 555 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/29(木) 20:12:33.67 ID:FMAABe/eo
- では少しだけ
- 556 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/29(木) 20:13:17.06 ID:FMAABe/eo
-
陽乃「お風呂!」
杏「そんなに気にする事ですか?」
陽乃「九尾の力で誤魔化せるとしても、私が無理なの……」
体が汚れていれば汚れているほど、虫が群がってくるという話を聞いた覚えがある
それの真偽などどうでもいいし、実験する気もない
ただただ、体の不潔感が精神を蝕んで病むことだけは避けたいと陽乃は思う
こういう時、男の子だったら多少は我慢できるのだろうか? なんて思ったが、
自分はそうではないので、考えるだけ無駄だ
杏「確かに、伊予島杏に言わせればちょっと距離を取りたいかもしれないです」
陽乃「悲しくなるから止めて」
昨日だって、友人の家、丸亀城、神社とすべてではないけれど歩き回っていた
それに加えて野宿
陽乃だって、そんな状態の人とは可能なら距離を取るだろう。
陽乃「……吐きそう」
杏「だから、食事をとらなかったんですね」
陽乃「ん……」
正直に空腹を訴えるお腹を擦って、
飲んだらお腹を壊すであろう水場から目を背ける
120円ほど使うことになるけれど、しかたがない
- 557 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/29(木) 20:25:33.87 ID:FMAABe/eo
-
陽乃は、神社から徒歩30分ほどの距離にある日帰り入浴の可能な温泉施設に来ていた。
陽乃の実家と神社があった伊予市は愛媛県の中で中予地方に属しており、
都市としては松山の方が当然上なのだが、伊予市にも一応温泉施設が存在している
陽乃「着いた……」
杏「お疲れ様です」
神社から歩き続けてきた陽乃は、
帰りも同じなのだろうかと気が狂いそうにもなったが、
日が暮れてから移動するなどしたらどうにかなるのではないかと、考えを改めて、施設案内を見る
陽乃「よしっ」
杏「日帰り、ですか?」
陽乃「これなら300円で良いのよ。これを毎日って考えると月に約1万円かかるけど」
杏「だとしたら回数券を買いますか? 12日で約2千5百円なので、お得ですよ」
陽乃「そもそも毎日じゃなく、隔日で……」
杏「あぁ、当然ですけど私を勘定に加えないでくださいね? 私は不衛生になりようもない体なので」
手をパタパタと振って意思を見せる杏……九尾を一瞥して、
陽乃は少し考えて頷く
九尾は偽る同行の前に、霊体のため汚れの心配がないそうだ
それはとても羨ましいのだが……そうなるわけにはいかない
そもそも、九尾は陽乃の影に隠れて入り込むことが出来るので支払いの必要がない
- 558 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/29(木) 20:32:02.61 ID:60oerjCnO
- お風呂もご飯も一苦労だな…
- 559 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/29(木) 20:36:48.59 ID:FMAABe/eo
-
陽乃「ん〜……」
さっさと決めて入浴してしまいたいが、
回数券を購入するかどうかはかなり重要なことだ
回数券を買ってすぐに利用したい。というのは聊か気が引けるけれど
それくらいに切羽詰まっているし、子供だからどうにか通せるだろう
陽乃「九――あれ」
顔を上げると、傍に居たはずの九尾は隣におらず
施設の中を覗いているのが見えて、近づく
陽乃「どうしたの?」
杏「ここって、宿泊施設も兼ねているんですよね?」
陽乃「ええ」
杏「だったら、宿泊している人間に偽ってしまうのはどうでしょう?」
3年前は、旅行者やビジネスマンの宿泊施設として存在していたが、
それらが断たれた現在では四国内向けに開放された施設となり、
ここに限らず、そう言った施設は以前よりも低価格での宿泊が可能になっている
主な利用者は気分転換などで別の地区に来るような人たち
そう言ったものでないと呼び込めない等の諸問題があるのだろうけれど、陽乃達には関係ない
陽乃「でも……」
杏「人間を殺めるわけでもありませんし、姿を借りて入浴するだけですよ。良いじゃないですか」
お金、無いんですよね? と、九尾は笑みを浮かべる
- 560 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/29(木) 20:52:07.71 ID:FMAABe/eo
-
確かにお金はないし
九尾の提案に乗ってしまえば、お金をかけずに利用することが出来る
入浴する際はまた別の姿を取ってしまえば、中にまで調べに来ることはないはずなので
同一人物との遭遇は限りなく最小限にできるはずである
しかし、これは理不尽から逃げるための幻惑ではなく、
私的利用のための幻惑だ
これを許可してしまったらあれも良いかこれも良いかと、不正に対して緩んでしまう気がする
とはいえ……背に腹は代えられないし
お腹と背中がくっつきそうな状況では、あんまり長考したくない
正直に言って、九尾の発言は魅力しかない。
陽乃「そんなことしたら……」
杏「たくさんの命を救って、なのに罵倒され、蔑まれ……少し利用するくらい罰も当たりませんよ」
耳元の九尾……杏のささやきに陽乃はぐっと唇を噛む
そう言われてしまうと、まぁ確かに。と頷きたくもなる
300円くらい払わなくたっていいじゃないかと。
杏「誰も傷つきませんよ。人間達も、久遠さんも。みんなが幸せになれます」
陽乃「あぁもぅ……っ!」
1、お願い
2、駄目、普通にお金払う(-300)
3、駄目よ。回数券買うわ(-2500)
4、一日だけ宿泊(-4000)
↓2
- 561 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/29(木) 20:53:47.01 ID:60oerjCnO
- 2
- 562 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/29(木) 20:58:27.66 ID:E/eRkSzU0
- 2
- 563 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2020/10/29(木) 21:32:47.29 ID:45a8K+n+0
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- 564 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/29(木) 21:33:21.51 ID:FMAABe/eo
-
陽乃「駄目、普通にお金を払うわ」
杏「良いんですか?」
陽乃「伊予島さんだって、不正は好まないでしょう?」
杏「確かに、もうそれ以外にない……そうしなければ命が危ないという状況でもない限りしたくありません」
そう答えた九尾は、ふっと息を吐いて陽乃を見る
杏「それでも、まずは誠心誠意お願いして……ですね」
陽乃「でしょう?」
お金には限りがあるけれど、
まだ、使ったらなくなってしまうほどでもない
このまま一生この生活を続けるとは限らない
だったら、可能な限り真っ当に生きていくべきだ
姿を偽らなければいけないというのはあるけれど
それは仕方がないことだ
杏「分かりました。久遠さんはほんと、馬鹿ですね」
陽乃「はいはい」
九尾は貶しつつ、笑みを浮かべて一礼すると
瞬く間に影の中に溶け込んで消えていった
- 565 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/29(木) 22:25:05.88 ID:FMAABe/eo
-
先払いの入浴料金を支払い、
バスタオルの貸し出しで追加で100円を支払う
脱衣所は意外と狭いけれど、棚上の窓を通して入ってくる光で明るく
何より、虫がいないというのが心地いい
陽乃「……寝れる」
ひなた「駄目ですよ。寝たりしたら」
陽乃「出てこないんじゃなかったの?」
ひなた「まぁまぁ、良いじゃないですか」
笑ってごまかした九尾は、
陽乃の隣にある空いている棚を開けて、着ていた衣類を畳んで入れていく
朝というのもあってか、脱衣所には他の人の姿は見えない
よくよく見てみると、
脱衣所の棚の鍵は陽乃達の使っている棚を除いて全て差さっている
どうせ貸し切りみたいなものだし、と
特に隠すことなくさっさと扉を開けると、湿気の強い空気が脱衣所へと流れ込む
浴室の床は御影石張りで、壁は少しばかりの石板が埋め込まれていて若干の高級感を感じる
が、陽乃は一瞥するのみで真っ直ぐシャワーのもとに向かう
ひなた「あら……良いんですか?」
陽乃「まずは髪を洗って顔も体も全部綺麗にするの」
ひなた「かけ湯……は後ですか」
- 566 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/29(木) 23:04:56.98 ID:FMAABe/eo
-
入る前に見えた注意書きを思い出して首をかしげる九尾をよそに、
さっさとシャワーの蛇口緩める
水、ぬるま湯、お湯……と
寄宿舎のシャワーよりもあっという間に変わっていく
陽乃「はぁ……」
ひなた「んっ……落ち着きますね」
陽乃「このまましばらくシャワーを浴びていたい気分だわ」
雨のように降りしきるシャワーのお湯を浴びながら、
俯き、目を閉じ、流れ落ちていく滴の音を聞く
陽乃「余韻に浸るのh湯船に浸かってからにしましょ」
ひなた「そうですねぇ」
ぼさぼさで、脂っぽさを感じる髪がお湯で異臭を放つが
暫くお湯で流し、
柑橘系の少し甘さの感じる備え付けのシャンプーを使って髪を洗う
やりすぎは良くないが、
2回洗って一度髪を触って、確かめる
陽乃「……痛みそう」
ひなた「宿泊セットを持ち出すべきでしたね」
陽乃「荷物多くても困るから良いのよ」
洗えるだけましだと割り切って、
ボディーソープを手に取って、体に塗るようにして洗う
少しだけ爪を立てて、可能な限り丁寧に――
ひなた「えいっ」
陽乃「ゃっ!」
ひなた「後ろは私が洗ってあげますよ」
なぜだか機嫌のいい九尾は、手伝ってくれた
- 567 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/29(木) 23:13:15.21 ID:FMAABe/eo
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日はできれば少し早い時間から
- 568 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/29(木) 23:31:29.56 ID:60oerjCnO
- 乙
できる時に身も心もリフレッシュしておくのは大事だな
にしても九尾はひなたの姿によく化けるけどが気に入ってるのだろうか
- 569 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/29(木) 23:54:39.84 ID:nuqOTH2qO
- 乙
九尾は神獣扱いしてくれるひなたのこと気に入ってるぞ
- 570 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/30(金) 02:53:32.55 ID:EufNcA5RO
- 乙
お風呂一つでこんな苦労するなんてな
- 571 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/30(金) 19:59:30.51 ID:nddHewtzo
-
では少しだけ
- 572 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/30(金) 20:00:02.98 ID:nddHewtzo
-
ボディソープのボトルキャップを外した九尾は、
それを陽乃の身体へと垂らしていく
陽乃「ひぁっ……!」
ひなた「任せてください」
陽乃「なっにを……」
九尾の……今はひなたの細い指先が、陽乃の背中に触れる
爪を立てるようにしている指は、
陽乃の肌を掻き毟るようにしつつ
押し切らない力加減で泡ごと汚れをかすめ取っていく
陽乃「んっ……」
九尾は、唐突さを除けば、優しい手つきで陽乃の体を洗っていく
首の裏は抑えず揉むようにしつつ、引き戻すときだけは指を立てて
そこから肩へと指を立てたまま掻いて、肩もみをする要領で鎖骨の辺りに向かう。
ひなた「スポンジ……でしたっけ? あれを買いませんか?」
陽乃「無駄遣いはしたくないのだけど」
ひなた「あったほうが、体を綺麗にできると思いますよ」
寄宿舎時代はそうしていたからこその提案だろう
提案した九尾は、無理にとは言いませんけどね、と
陽乃から手を離してボトルを手に取る
- 573 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/30(金) 20:06:16.94 ID:Il3C1WJIO
- よっしゃ
- 574 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/30(金) 20:11:23.45 ID:nddHewtzo
-
ひなた「……私が洗っていいなら、無くても良いかもしれませんが」
陽乃「あな――ゃんっ」
腕に触れていた九尾の手は、
事故ではなく意図的に前へと動いて、乳房に触れる
陽乃の悲鳴をものともせず、
ひなたの手は陽乃のそこまで大きくはない膨らみを揉むようにして洗う
陽乃「ちょ、ちょっと……っ」
ひなた「隅々まで洗ってあげます」
陽乃「前は良い、前は自分で……下も自分でやるからぁっ!」
では仕方がない。
そう言った感じで陽乃の下腹部に下りて行った手首をつかみ、
引き留めて叫ぶ
少し後ろに下がってしまったからか、ひなたの胸の柔らかさが背中に触れたが
本人ではないからか、それに対する反応は一切ない
ひなた「そう、恥ずかしがらなくても良いじゃありませんか」
陽乃「良いわけないでしょ……もうっ!」
振り払われた九尾はちょっぴり残念そうだったが、
両手を上げて「分かりました」と、引き下がった
- 575 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/30(金) 20:25:56.42 ID:nddHewtzo
-
九尾の助力も得て綺麗に汚れを落とし、
九尾の指示もあってかけ湯をしてから
お湯がたっぷりと注がれているお風呂に入る
ジェットバスや露天、サウナなどいくつかの種類があるようだけれど
何はともあれ、まずはゆっくりと浸かりたかった
陽乃「んっ……っ、はぁ……」
湯船の中から肩の上にまでゆっくりと腕を上げて、
ぐぐっと体を伸ばす
拘束衣と鎖でがちがちに固められて一週間、座り込む形での野宿
そうして疲れ切った体が解されていくのを感じて、沈み込むような感覚に目を瞑る
ただのお湯ではなく、温泉であることを強調するかのようにほんのりと感じる硫黄のにおい
一人きり……九尾扮するひなたも含めれば二人で貸し切りの状態は、
ただでさえ安らげる空間を、より居心地のいい空間に昇華させてくれる
陽乃「ふぅ……」
ひなた「若葉ちゃんも良い顔しますけど、久遠さんも可愛らしい顔をするんですね」
陽乃「お風呂で気を遣うなんて、イヤだわ」
ひなた「それには一理ありますね……せっかくの入浴ですから、体だけでなく心も癒されたいです」
思った以上に人間らしいことを言う九尾に目を向ける
- 576 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/30(金) 20:38:06.81 ID:nddHewtzo
-
陽乃「どうしたの急に人みたいなこと言っちゃって」
ひなた「今は【私】ですから。相応のことも言いますよ」
陽乃「そう……」
ひなた「寝苦しそうでしたからね。今ならあのぶくぶくしているところでも寝られるのでは?」
ぶくぶくしているところというのは、ジェットバスのことだろう
下や両側面に吹き出し口がある浅めのところに横になるものだ
場所によっては縦型のもあるという話だが、ここにあるのは横になるタイプ
陽乃「3つあるみたいだし、九尾もどう?」
ひなた「お付き合いしますよ」
通常の湯船から上がり、横に併設されていたジェットバスに横になる
ぶくぶくというよりはぼこぼこと言った感覚の勢いは、
腰や肩などに程よい刺激を与えてくれる
横からの流れもあって、どこか包み込まれているような感じがして
騒がしさはあるけれど、寝られるかもしれないと陽乃は目を瞑る
ひなた「ふふふっ……位置調節すると、胸が揺れますね」
陽乃「喧嘩のセールスはお断りよ。疲れたくないわ」
ひなた「違います。ほら、見てください。球子さんに見せたら面白い反応が――」
陽乃「上里さんは間違いなくそんなこと言わない」
- 577 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/30(金) 20:51:33.02 ID:nddHewtzo
-
九尾の売り言葉には淡々と返して、ひらひらと手を振る
戻した手が緩やかな胸元に触れるのは多分仕方がないことだろう。
同年代である千景が慎ましやかで、年下のひなたと杏は大きい
全くないわけではないので、絶望することはないけれどもう少し大きくなれたのだろうか。なんて思うこともある
しかし、近接戦闘を主とする陽乃は、
寧ろスレンダーであるべきではないだろうかとも考えている
そうつまり、別に胸なんて大きくなくても良いのである
ひなた「久遠さんも、十分魅力的な体つきだと思いますよ」
陽乃「それはどうも」
ひなた「張り合いがないですね……」
陽乃「休ませて頂戴」
ひなた「だから胸も出っ張りが――」
陽乃「このっ」
ジェットバスから勢いよく体を起こすと、
横になっている九尾はひなたの瞳で陽乃を見る
ひなた「ふふふっ」
にっこりと笑うひなた
九尾だと解っていても、ひなたの声と笑顔で存在していることに変わりはない
- 578 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/30(金) 21:09:06.09 ID:nddHewtzo
-
髪からポタポタと滴る音、温かい空気の中
肌を撫でて行く滴
内側に籠る熱が対消滅していくのを感じて、
陽乃は九尾を叩いてやろうかとした手を湯の中に下ろす
陽乃「サウナ行きましょう、サウナ」
ひなた「そういうところ。私好きですよ」
陽乃「上里さんの顔じゃなかったらグーだったからね」
ひなた「殴ってもいいんですよ? 友に牙を立てることも時には必要です」
ひなたらしい笑みは変わらずに、瞳だけが赤色に染まる
九尾は人間が人間に対して、
好意よりも悪意を抱くことが出来る生き物であると認識している
そして陽乃はそれを好まず、しかしながら周囲は無関係に陽乃に憎悪する。
ゆえに、陽乃には友であれ牙を立てる悪意ではない覚悟を持っていて欲しいのかもしれない。
陽乃はそれを何となく察しながら、
それでも目を背けて「行きましょう」と促す
ひなた「そうですね」
九尾はそれに文句も言わずに、薄く笑みを浮かべて陽乃に並んでサウナへと向かう
- 579 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/30(金) 21:24:54.09 ID:nddHewtzo
-
ひなた「これは……体力を浪費するのでは?」
陽乃「休憩室でも休むから良いの」
300円のもとを取ってやるとでも言うかのように陽乃は答える
体を綺麗にできただけで、十分元は取れている
とはいえ、追加で100円支払ったわけで。
もう少しばかり休憩室で休んでも罰は当たらないだろうと思う。
逃亡生活は、まだまだ先が長い。
表立って母親を人質として扱うことはないと思うけれど、
それを仄めかす何かは間違いなくあるはずだ
そうなる前に、少しでも休んでおきたい
疲弊した心ではきっと、それを許すことなんて出来ないだろうから。
ひなた「出たらもう一度シャワーを浴びたいですね」
陽乃「そうねぇ」
ひなた「こういう場で裸になれるのなら、外でも裸で良いのでは?」
陽乃「無理に決まってるでしょ。外は男の人もいるんだし」
ひなた「服を着ているように見せてあげますけど」
陽乃「でも裸なんでしょ?」
ひなた「まぁ」
陽乃「無理」
考えるまでもない。
九尾はそれで平気なのかもしれないけれど、陽乃には無理な話だ
- 580 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/30(金) 21:43:32.45 ID:nddHewtzo
-
√ 2018年 8月2日目 昼:温泉施設
入浴を済ませるころには人入りも増え始めてきた昼頃
陽乃は8畳ほどの休憩室で体を休めていた
陽乃「っ……」
昨夜から何も食べず、
水を飲んでいるだけのお腹は空腹を訴えるあまりに痛みさえ感じる。
出来得る限りへこませてみてはいるものの、
小さな音は鳴ってしまう
ひなた「お昼、食べたほうが良いのでは?」
陽乃「でも」
ひなた「死にますよ?」
陽乃「ん……」
調理をしたり、
何か保存できる場所があるなら多少安く済ませられるが、
今の陽乃にはそんな設備も施設もない
陽乃「コンビニでおにぎり一つくらい、買うべきよね」
ひなた「ここの食事処は利用されないのですか?」
陽乃「高い」
ひなた「あぁ……なるほど」
1、家に近いコンビニに寄る
2、神社に近いコンビニに寄る
3、ここで少し眠っておく
4、九尾と話す
↓2
- 581 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/30(金) 21:45:19.06 ID:Il3C1WJIO
- 2
- 582 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/30(金) 21:48:29.50 ID:5Kvaq4JS0
- 1
- 583 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/30(金) 22:04:37.54 ID:nddHewtzo
-
↓1コンマ判定 一桁
奇数:友奈・球子
- 584 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/30(金) 22:08:53.31 ID:Il3C1WJIO
- あ
- 585 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/30(金) 22:27:35.77 ID:nddHewtzo
- √ 2018年 8月2日目 昼:コンビニ
ひなた「あれ? 神社はこっちでは?」
陽乃「真っ直ぐ帰ったってしょうがないでしょ」
ひなた「あそこにコンビニ……? が、ありますよ?」
陽乃「こっちのコンビニに好きなおにぎりが売ってるの」
ひなた「なるほど」
陽乃の実家と、神社はそれなりに近い位置関係にあるが、
それでも数店舗あるコンビニはどちらかに近い方向にそれぞれ違うお店がある
神社に近い方が悪いとは言わないが、
貴重なお金を使って、おにぎりを買うのだから
贅沢はしないにせよ好きなものが買いたい
その考えが、裏目に出たのだろうか
友奈「まぁまぁ」
球子「だってさぁ……」
友奈「くお……きっと、何か事情があったんだよ」
目的のコンビニには、友奈と球子
勇者のペアがいた
- 586 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/30(金) 22:34:15.57 ID:nddHewtzo
-
では、途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば少し早い時間から
- 587 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/30(金) 22:41:14.47 ID:Il3C1WJIO
- 乙
わりと早い段階で高嶋さんたちとばったり遭遇するとは…
陽乃さんの今の惨状見たらどう思うだろうか
- 588 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/31(土) 00:20:23.50 ID:xoYMtydbO
- 乙
ばったり会っちゃったな笑
- 589 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/31(土) 06:36:21.88 ID:PSQH9gMuO
- 乙
子孫はけしからんスタイルしてたけど陽乃さんはそれほど巨乳願望はなかったのは意外
スリーサイズが地味に気になる
- 590 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/31(土) 12:01:56.83 ID:CaXy9e32O
- 緩やかな胸元で絶望的に無いわけではなくスレンダーであるべき(スレンダーではない?)ってことは陽乃さんのお胸は75〜80くらいじゃないか?
運動系でウエストは引き締まって65〜
ヒップは不明
それで身長160cm…普通に良い体してそう
- 591 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/31(土) 20:14:03.12 ID:2v/xSSz2o
-
では少しだけ
- 592 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/31(土) 20:15:04.23 ID:2v/xSSz2o
-
陽乃「えっ……」
二人の声が聞こえて、思わず棚の影に身を引っ込める
九尾はいつの間にか姿はなく、陽乃から延びる影の中にそれらしい形が見えた
陽乃「ちょ、ちょっと」
『妾がおらぬ方が良かろう』
陽乃「別の人の姿で出てきていたらいいじゃない」
『ふむ……』
一見、久遠陽乃としての姿ではないとしても
一人でここにいるというのが、聊か不安になる
ついでに、お腹も鳴る
友奈「どこ行っちゃったのかな、久遠さん」
球子「家なんて住めるような状態じゃなかったからなぁ」
友奈「そうだね……」
球子「……あれは、ちょっと、なぁ」
声が消え入る
陽乃はそうっと棚の横側から顔を覗かせて、二人を確認する
- 593 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/31(土) 20:15:41.31 ID:26Fbr5PNO
- かもーん
- 594 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/31(土) 20:39:30.05 ID:2v/xSSz2o
-
二人はおにぎりやお弁当、サンドイッチが陳列されている棚の前で話をしている。
陽乃を探すために伊予市にまで出てきて、お昼を食べようという感じだろうか
どうせなら飲食店にでも入って貰いたかったが、
近くにあったからコンビニを選んだ……のだろうか。
陽乃「コンビニを変えた方が良いかしら」
『状況を鑑みるに、どこかに乃木若葉らもおるじゃろう。変えるだけ無駄じゃな』
陽乃「そうよねぇ……」
分かり切っていたことだが、若葉達もいるはずだ
二人の話から察するに見てきたのは家の方だ
であれば、若葉達は神社の方を見に行ったかもしれない
友奈と球子が偶然出会ったのではなく、チームとして行動しているなら
若葉、杏、千景がまた別のチームとして行動していると考えるのが妥当だろうか。
一人は残ってひなたの護衛というのもあり得るけれど
少なくとも、千景が一人にはならないだろう
陽乃「どうする……」
1、ここから逃げる
2、あえて話かける
3、盗み聞き
↓2
- 595 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/31(土) 20:41:01.28 ID:JKGJiCrF0
- 1
- 596 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/31(土) 20:48:36.48 ID:RdiEPzT00
- 2
- 597 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/31(土) 20:55:12.98 ID:xoYMtydbO
- 2
- 598 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/31(土) 21:45:08.79 ID:2v/xSSz2o
-
陽乃「……ちょっと、行ってみるわ」
『あまり妾の力を過信する出ないぞ』
陽乃「はいはい」
過信はせずとも、信頼しても良いのが九尾の力だ
軽く答えて体を前に出す
すぐ横のドリンクコーナーに陽乃の姿が映ったが、
見えたのは、陽乃ではない別の少女
どこかで見たかと思い返して――
温泉施設のところで横を通った少女だと気づく
陽乃「あんな一瞬で……」
『姿かたちならば、絵画を見れば十分じゃ』
自慢気な九尾の声を聞き流し、
友奈達のもとへと近づく
陽乃「あの……」
友奈「えっ?」
球子「ん?」
陽乃「さっき、久遠さんがどうとか、言っていませんでしたか?」
- 599 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/31(土) 22:25:15.87 ID:2v/xSSz2o
-
友奈「久遠さんを知ってるの?」
陽乃「えっと……小学校の頃ですけど」
球子「最近、見たりは?」
陽乃「いえ、それは」
最近見たも何も、本人なのだが、
友奈と球子には違和感なく別人に見えているようで
特に気にする様子はなかった
陽乃「それより、久遠さんがどうかしたんですか? その、色々悪い噂も流れてて……あの日以降、学校からいなくなってて」
友奈「だ、大丈夫だよ!」
球子「ゆ――」
友奈「久遠さんは善い人だよ。悪い噂で聞くような人じゃないよっ」
友奈は、焦った笑顔で首を振ると
陽乃の噂を否定して、別人に見えている陽乃の手に触れる
陽乃にしようとして、けれどできなかった距離感だ
友奈「でも、悪い噂ばっかりで、嫌な思いしちゃってるかもしれなくて……」
陽乃「そう、ですか」
- 600 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/31(土) 23:00:09.86 ID:2v/xSSz2o
-
友奈は、陽乃のことを思って悲しそうな顔をしている
もの言いたげな雰囲気の球子も、
家を見てきたからか、困った様子で
球子「久遠さんの家は、知ってるか?」
陽乃「あぁ……知ってます。盛り上がってた、ので」
実際に現場を見たわけではなく聞いただけ
けれど、見せて貰ったインターネットの情報は、
とても、盛り上がっていた
お焚き上げだとさえ、言われていた
久遠の血筋を人身御供としての人類の救済
その可能性に懸けている人々の暴走
陽乃「………」
生きていることを、人々は望んでいない
死んでくれることを、人々は望んでいる
友奈「ねぇっ!」
陽乃「なっ、なに……?」
ぐっと手を引かれて、思わず声が上ずる
友奈「久遠さんと仲良かったなら……久遠さんが行きそうなところとか分からないかな!」
1、分からないです
2、えぇっと……一番仲が良かったお友達、かな?
3、どうしてですか?
4、神社、でしょうか?
5、貴女達、なんなんですか?
↓2
- 601 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/31(土) 23:03:47.84 ID:xoYMtydbO
- 4
- 602 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/31(土) 23:04:46.72 ID:wmKEQir5O
- 4
- 603 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/31(土) 23:14:55.93 ID:2v/xSSz2o
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから
- 604 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/31(土) 23:33:28.91 ID:wmKEQir5O
- 乙
高嶋さんたち勇者全員来てるとなるとどのみち誤魔化しきれないだろうしな
バレたら連れ戻されるのだろうか
- 605 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/01(日) 00:51:59.92 ID:ML7VXKj8O
- 乙
まあ和解はしておきたいしなあ
- 606 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/01(日) 13:25:03.72 ID:byIQBCBZo
-
では少しずつ
- 607 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/01(日) 13:25:33.37 ID:byIQBCBZo
-
陽乃「そうですねぇ……久遠さんが行くとしたら神社でしょうか?」
球子「神社ぁ?」
怪訝そうな顔つきをする球子だが、
友奈は笑顔のまま「神社って久遠さんのところの?」と、聞いて来る
陽乃「多分、ですけど」
陽の本人が言っているので、間違いないことだし
実際に陽乃は神社で野宿をしていた
聡い人なら、直近で誰かがいたことに気付くことだろう
『良いのか主様』
陽乃「ん……」
良いか悪いかで言えば、あまり良くない
神社は雨風をそれなりに凌げる無料の拠点としては悪くないけれど
考えようによっては、居心地は悪い
替えがきかないわけではない
一歩寄り添って様子を見るための餌としては……良いと言える
- 608 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/01(日) 13:38:21.00 ID:byIQBCBZo
-
陽乃「神社にはいかれたんですか?」
球子「あー……ほかの友達が、な」
勇者とは言えないのだろう
友達と言った球子は自分の発言に眉を顰める
球子にとって、杏は親友に値する
しかし、若葉や千景はどうだろうか。
若葉は言えるかもしれないけれど、
千景は……仲間であっても友人ではなさそうに感じる
友奈「私達、久遠さんに会いたいの……」
陽乃「……どうして、ですか?」
友奈「それは……」
友奈の表情が曇る
決して、明るい理由での捜索ではなく、
そこに後ろめたさがあるからこその表情。
嘘をつくことが苦手……というより、
直球的な友奈に偽れというのは、酷だろう。
友奈「えっと」
球子「本当に噂通りの奴なのか知りたいんだ」
- 609 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/01(日) 13:46:08.90 ID:byIQBCBZo
-
友奈の言葉に被せるように言った球子は
その表情に偽りを感じなかった。
裏に色々と考えはあるのかもしれないが、
陽乃が本当にその噂通りの存在であるのかどうかを知りたいのも、本心だと言える
陽乃「でも、久遠さんって大社のところにいるのでは?」
球子「それはだなぁ……えーっと、あれだ。言われてる通りの奴なら逃げてるかもしれないだろ?」
友奈「タマちゃん!?」
陽乃「あははっ」
この二人を組ませたのは誰なのか
陽乃は考えて乃木さんだったら、ちょっと失敗だったんじゃないかと思わず苦笑する
もちろん、
千景と友奈を組ませると、千景が友奈を護るためと張り切ってしまうので不可
千景と球子を組ませると、うまくいかなそうで不可
となれば、消去法的にこうなるのだろうけれど
陽乃「そういうこと、あまり大きな声で言わない方が良いですよ」
球子「お、ぉう……」
陽乃「ですが、もし本当にどこかにいるとしても……居場所があるだなんて思いますか?」
- 610 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/01(日) 14:08:20.50 ID:EsnDrDBIO
- きてたか
- 611 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/01(日) 14:51:09.87 ID:byIQBCBZo
-
陽乃「家も神社も人が住めるような状態ではなくて、あんな噂のせいで頼れる人なんていないのに」
友奈「………」
球子「だから……えっと」
陽乃「?」
何か言おうとして、陽乃を見て球子は言い淀む
もしかしたらと、陽乃は即興で名前を組み立てる
陽乃「あぁ、私は【はる】だよ。久遠さんの陽で、高橋陽」
適当に、小学生の頃よくよく聞いた苗字と、自分の名前の一つを使って偽名を作る
陽という漢字が、久遠陽乃と同じだったから仲良くなった。なんて、
繋がりも付与した誰かさんの名前
友奈「私は友奈! 高嶋友奈。高は――」
陽乃「うん、高いに嶋だよね? 友奈は友の奈」
学校に似た名前がいたんだ。と嘘をつき、
後から球子の名前を聞く
球子「えっと、陽の言う通りだ。だから私達が探してるんだよ」
陽乃「久遠さんのお友達なんですか?」
友奈「そうなれたらいいなって、思ってるんだ」
- 612 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/01(日) 15:45:56.13 ID:byIQBCBZo
-
友奈は、少し残念そうに笑う
友達になりたくてもなることが出来ないことを悲観しているのかもしれない
陽乃は千景との確執、民衆の憎悪
大社からの偏見
それらによって、他人を寄せ付けまいとしていた。
友奈がいくら寄り添おうとしたところで
それがまた引き剥がされないという保証はない
裏切られないという保証はない
友奈がどれだけ、自分の心を語っても
陽乃にとってそれは結局【他人の言葉】でしかないからだ
信じて欲しいと。それを望むこと自体が傲慢である
そう言えてしまうほど、久遠陽乃は世界に裏切られている
友奈「だからってわけじゃないけど……良かったら少し久遠さんのお話聞かせてくれないかな?」
球子「友奈……それは」
友奈「探すのも大事だけど、話を聞くのも大事だと思う」
久遠陽乃が大社の下にないことを言ってしまっているようなものなのだけれど
友奈達は気付いていないようだ
1、それはちょっと
2、いいですけど……お二人にだけですよ?
3、ところで、上里さんはどちらに?
4、大社は、久遠さんを探し出してどうするつもりなんですか?
↓2
- 613 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/01(日) 15:51:10.15 ID:pNWEMRyP0
- 4
- 614 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/01(日) 15:53:23.73 ID:EsnDrDBIO
- 2
- 615 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/01(日) 16:50:49.20 ID:byIQBCBZo
-
陽乃「ん……」
『主様』
陽乃「………」
九尾の問に応えられるわけもなく、自分の影を見下ろす
影の中の瞳は陽乃をじっと見つめると
暫くして闇の中に消えていく
陽乃がそうするのなら……と、判断したのだろう
陽乃「良いですけど……お二人にだけですよ?」
球子「そ」
友奈「うんっ、分かった!」
球子「ちょ、友奈!」
友奈「はるちゃんがそうして欲しいっていうんだから、そうしようよ」
ね? と問いかけてくる友奈に球子はたじろぐ
明るく、まっすぐ
球子も似た性格ではあるけれど、そこにはない純粋さもあって
球子はグッと歯噛みして、頷いた
球子「若……友達にも言ったらダメか?」
陽乃「そこは、お二人の良心にお任せします」
ニコッと笑った陽乃は、
そこでなんですけど……と、続ける
陽乃「お話しする代わりに、お昼……食べさせてくれませんか?」
『主様、まさか……っ』
九尾の唖然とした声に、陽乃は苦笑いで誤魔化した。
- 616 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/01(日) 17:21:06.87 ID:byIQBCBZo
-
二人と一匹……三人にどう思われようと
今は九尾以外は陽乃だと認識していないので、
節約できるのなら節約しようという中々な強かさのある強請りを友奈は快諾し、
陽乃の勧めでコンビニから、手打ちうどんの店に移動した。
奢りだから高いお店。などということはさすがにせず
地域的には人気があるというくらいの、ごく普通のお店だ
友奈「わぁ……こんなお店があったんだね〜」
陽乃「角っこに隠れているので、知らないとスルーしちゃうんですね」
木目調のシックな雰囲気のあるテーブルと椅子が並ぶ店内
椅子の上には申し訳程度の座布団が敷かれていて、テーブルの下に荷物置き
自分で取ってという感じのサイドメニューの小鉢の入った棚
3年前と変わらない様子ではあるけれど……店員は、若い。
陽乃「………」
陽乃が最後に行ったときは、まだおばあさんが注文を受けたりしていて
子供が来ると、サービスだよ。と、好みの天ぷらをつけてくれたりしていたのが、懐かしい
球子「どうしたー?」
陽乃「あ、いえ……私、釜玉で」
友奈「じゃぁ、私は肉ぶっかけ!」
球子「はぁ、じゃ、タマも釜玉で! タマだけに」
- 617 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/01(日) 18:10:51.51 ID:byIQBCBZo
-
注文したうどんが来るまでの間に、
友奈と球子の二人に話してしまおうかと、陽乃は周りに人がいないのを確認する
他に人がいると、久遠という言葉を出しただけで、大変な事になるかもしれないからだ
ならお店に来るなという話だが、
それはそれ、これはこれ。
昨夜からの空腹には勝てないのである。
陽乃「これから、話すけど……これだけは約束して欲しい」
友奈「うん、分かった」
球子「あぁもう……聞く前に頷いてどうするんだ」
友奈「だって――」
陽乃「変なお願いじゃないよ。ただ、あの人の名前は一切出さないこと。これを約束して」
友奈「っ……」
陽乃「理由は、わかってくれるよね?」
元気よく答えてくれた友奈は、
その理由を分かるからこそ、表情を曇らせる
久遠陽乃という名前は、毒薬だ
人を狂わせてしまう、巻き込んでしまう言うべきではない名だ
かつて、映画にもなった魔法世界の有名作に出てきた登場人物のような扱いだが、
それも、やむなしである
1、あの人は、小学校時代は明るい人でしたよ。昼休みに男子に交じってることもあるくらい
2、映画の話題とか、本のお話すっごく好きですよ。図書館で良く本を借りてました
3、元々、あの人を嫌ってる人は少なくありませんでした
4、優しい人ですよ。あの日だって……一生懸命に守ってくれたんです
↓2
- 618 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/01(日) 18:21:29.97 ID:vYH9zTIc0
- 2
- 619 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/01(日) 18:23:06.08 ID:1tpuB8DOO
- 3
- 620 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/01(日) 18:57:41.47 ID:byIQBCBZo
-
陽乃「元々、あの人を嫌っている人は少なくなかったんだ」
球子「性格悪かったとかか?」
友奈「タマちゃんっ」
球子「冗談だって」
球子に目を向けた友奈は怒っているようには見えないものの不満が感じられて
陽乃は「まぁまぁ」と宥めて苦笑する
初めから嫌われていたというなら、
本人の問題を考えるのが普通だろうとは陽乃も思うからだ。
とはいえ、性格の良し悪しはともかく
自分の問題だったとは、思う
陽乃「あの人、みんなに優しくしようって感じで……それが、人によってはうざかったみたい」
分かりやすく言うなら、【いい子ちゃんぶっている】だろうか。
陽乃の分け隔てのない接し方は、教師からの印象は良かったし、
友人だって多かった
けれども、だからこそ気に入らないという人は出てくる
- 621 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/01(日) 19:31:28.83 ID:byIQBCBZo
-
陽乃「あの人は、気にしなかったけど……ううん、気にならないふりしてたけど。それを分かってた」
友奈「虐め、とか」
陽乃「まさか。表立ってそんなことしたところで跳ね返るだけだからね」
あったのは、陰口をたたかれること
手洗い場などで、ぼそりと
体育の時に少し危ないプレーをされること
虐めとはされない程度の、絶妙な事をしてきていた
陽乃「だから、かな……今の世論もそこまで堪えてないんじゃないかな」
球子「でも、凄いことになってるのに」
陽乃「それでも、だよ」
もっとも、一番の友人だった人に拒絶されたときは
流石に呆然自失としてしまいそうになったけれど
陽乃「あの人は多分もう、誰かのためなんて考えはしないかもしれない」
友奈「そう、かな?」
陽乃「うん。だって、どれだけ寄り添ったって背中から刺されるかもしれない。首を絞められてしまうかもしれない。そんな状態なんだよ?」
誰かのために頑張ったところで報われるとは思えない。
誰かを信じたところで傷つくことが目に見えている
だから――
陽乃「高嶋さんと土居さん。そのお友達。みんなが仲良くしようとしてもあの人は受け入れたりしないと思う」
- 622 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/01(日) 19:49:49.45 ID:byIQBCBZo
-
言い過ぎ、かもしれない。
けれどそれでもと来てくれなければ……信じることは出来ない
いや、そう来てくれたとしても、陽乃は仲良くできないと思っている
何せ、陽乃は神さえも殺せる可能性を秘めているのだから
大社も民衆も、
久遠陽乃という人物を肯定してくれることはないだろう。
陽乃はそう、割り切っている
今はまだ、表に大きく出てきていないから問題ないかもしれないが、
いずれ、勇者の存在は大きくアピールしていくことになる
そうなったとき、
件の化け物と仲良くしているとなったらどうなるか。
信用は……落ちていく
陽乃「二人が何なのかは、詳しく聞かないよ。けれど、あの人には近づかない方が良いと思う」
球子「そんな話聞かされて――」
陽乃「だからこそだよ。悪名高いあの人が本当は良い人。だから何? その噂に巻き込まれて、二人まで悪く見られるよ」
友奈「そんな……」
陽乃「放っておいた方が良い」
- 623 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/01(日) 20:18:05.64 ID:byIQBCBZo
-
友奈と球子は気付いていないけれど、これは陽乃本人からの拒絶だ
球子は少しばかり粗雑で、けれど気遣ってくれている
友奈は優しく感じるけれど、何か別の何かもあるような……そんな感じではあるが
やはり、気にしてくれていて。
だからこそ、陽乃は拒む
その優しさは、自分に向けるべきではないと。
友奈「でも……だったらそれこそ私達だけでもちゃんと仲良くなりたい」
友奈は神妙な面持ちでそう切り出すと、
満面にはなりきれない笑みを浮かべて
友奈「だって、く……あ、陽……先輩は優しい人だって思う」
陽乃「優しい……?」
友奈に優しさなんて見せただろうか
みんなに優しくしようという人だったと語りはしたが、
そう思えるほど語ってはいない
友奈「いつも、先輩はみんなが悪い空気にならないようにって、気を使ってくれてたんだ」
球子「友奈っ!」
友奈「えっ、あっ……」
球子の声に友奈ははっとして口を塞ぐ
陽乃の学生時代を知らないのに先輩と言い、気を使ってくれたとみてきたかのように言う
それは、友奈が陽乃と今なお関わりがあると言っているような話だ
- 624 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/01(日) 20:43:23.62 ID:byIQBCBZo
-
陽乃「……二人は」
「お待たせしました」
陽乃達と同年代位の若い少女が、
三人分の注文をお盆に乗せて運んできた事で
陽乃の言葉は遮られた
二人は大社の人なの? なんて、分かり切ったことを聞こうとしたけれど
聞いたって、特に意味はない
友奈と球子は
それはもう誤魔化せないと答えてくれるかもしれないが。
陽乃「ここのうどんも美味しいよ。食べよっか」
友奈「そ、そうだねっ」
球子「お、おうっ」
ぎこちない雰囲気
けれど、一口食べれば、友奈は「ほんとにおいしい」ととても嬉しそうで
球子はあそこの店も良いけどここも……と呟く
陽乃はそんな二人を見て、
気付かれないように小さく笑みを浮かべ、隠すようにうどんを口に運んだ
- 625 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/01(日) 21:08:20.58 ID:byIQBCBZo
-
食べ終えるころには、話はいったんお流れとなっていたけれど、
友奈と球子はさすがに忘れなかったらしい
運ばれてくる前のちょっとした気まずさを感じる
本当は聞くまでもないけれど、
この、赤の他人の状態で深く入り込んでは
この体の本当の持ち主が厄介ごとに巻き込まれてしまう可能性がある
会計を終えて店を出て、二人に振り返る
陽乃「ご馳走様でした」
友奈「へっ?」
陽乃「……奢って頂いたので、追及はしません」
ただ。と、続ける
陽乃「これ以降、出来るだけ私には関わらないでくださいね」
間違えても、
久遠陽乃の件で話した間柄であることは触れないようにと、念押しする
そうしておけば、本人が関わる可能性は減らせるはずだ
友奈「うん、分かった」
残念だけどね。と、友奈は笑う
1、本当にお願いね。本人に迷惑をかけるのは忍びないから
2、また……いつか。平和になったら
3、久遠さんをお願いしますね。きっと、あの人は押しに弱いですから
4、大社に、久遠さんのお母さんがいるはずなので、きっと大丈夫ですよ
↓2
- 626 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/01(日) 21:13:01.90 ID:vYH9zTIc0
- 2
- 627 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/01(日) 21:19:19.29 ID:pNWEMRyP0
- 3
- 628 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/01(日) 21:55:52.40 ID:byIQBCBZo
-
陽乃は少しだけ考える
このまま別れても問題はないけれど
それでいいのだろうかと。
友奈と球子、勇者達がどう頼まれて陽乃を探しているのかは不明だが、
決して明るい理由ではないことだけは分かっている
しかしながら、友奈は表情を曇らせた。
頼まれているからやっているだけで、決して、それに賛同できているわけではない
思うところがあって
しかしそれを口には出来ていない
いや、もしかしたら仲間内では話し合っているかもしれない
千景はだとしても……陽乃を敵視する
けれど、友奈と球子、杏と若葉
そして、最後に出会ったひなたは、きっと。
陽乃「久遠さんをお願いしますね。きっと、あの人は押しに弱いですから」
友奈「う、うん……任せて!」
友奈は驚きつつも、
嬉しそうに、笑顔でそう答えた
- 629 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/01(日) 22:14:26.03 ID:byIQBCBZo
-
友奈達と別れ、しばらく歩いた街角で足を止める
九尾は影の中に混じったまま、姿を見せていない
陽乃「もう出てきても良いんじゃない?」
『愚か者め』
陽乃「だって、高嶋さん……辛そうだったんだもの」
『良いではないか。苦しませてやれ』
陽乃「良いわけないでしょう、もう」
とはいえ、流石に話し過ぎてしまっただろうか。
お願いします。押しに弱いよ。なんて言えば、友奈は全力で寄ってくる
それは、自分が今まで望まなかった結果になるというのに
九尾の愚か者という言葉は、正しい。
陽乃はそう思って笑う
『主様、神社に戻るのかや?』
陽乃「どう、しましょ」
神社に行くんじゃないかって言ってしまったのだ
必ず、あの二人はそこに行くだろう
1、神社に行く
2、あえて寄宿舎
3、四国を出ていく
4、別の棲家を探す
↓2
- 630 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/01(日) 22:15:35.55 ID:pNWEMRyP0
- ksk
- 631 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/01(日) 22:16:11.17 ID:bd2OQKgRO
- 1
- 632 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/01(日) 22:19:11.60 ID:byIQBCBZo
-
ではここまでとさせていただきます
明日は、出来れば通常時間から
接触判定無:確定
- 633 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/01(日) 22:24:59.05 ID:gAcwz0bDO
- 乙
あれだけ痛めつけられてなお諦めない高嶋さん本当に勇者だな
一方遭遇したのが若葉か杏だったら見破れてたのだろうか
- 634 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/02(月) 03:28:12.98 ID:ZQOGYanbO
- 乙
次はわかばたちか
- 635 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/02(月) 21:18:13.77 ID:az6eszZao
-
では少しだけ
- 636 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/02(月) 21:18:59.95 ID:az6eszZao
-
陽乃は結局、神社へと戻ることにした
あの話の後だ
少なくとも友奈と球子は待ち構えていることだろう
それでも、陽乃は神社への砂利道を歩く
かつて、塞ぐほどに停まっていた車を想起させる狭い道
側面の塀に映った影が、狐の形へと変質する
『主様、おるぞ』
陽乃「高嶋さんと土居さん?」
『いいや……全員じゃな』
陽乃「全員……?」
みんなが探しに出ていることは想定内
友奈と球子で組み、ほかに人がいなかったことから
若葉、千景、杏の三人で別行動中という憶測
きっと、それは正解だったはずだ
友奈達に【神社に行くかもしれない】という情報を与えた結果、そこで集合となったのだろうか
いや、友奈と球子の性格からして
あの話は心のうちに止められる……と、思いたい
もちろん、話しても構いはしないが。
- 637 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/02(月) 21:30:07.58 ID:az6eszZao
-
陽乃「様子は、分かる?」
『ふむ……少し時間があれば確認もできるが』
陽乃「向こうにあなた一人で行くってことでしょ?」
『そうじゃな。さすがに、あの場にいる面々を知るくらいしかできぬ』
くつくつと喉を鳴らした九尾だが
そこに誰がいるのか、察知できるだけで能力的には十分だ
『乃木若葉は、上里ひなたから主様に付いて任されておる。下手な手は打たぬと思うが……』
陽乃「郡さん。でしょう?」
『うむ』
一番の問題は、やはり千景だ
彼女だけは説得どうこうといった状態にないのは、
逃げ出した昨日、杏の姿で出会った時にそこら辺は諦めている
それくらいに、彼女との溝の深さは絶望的だった。
陽乃「全員って言うことは郡さんもいるんでしょ?」
『然り』
陽乃「ん〜……」
- 638 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/02(月) 21:34:38.02 ID:yYerSggUO
- 仲直りはしたいけどなぁ…
- 639 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/02(月) 21:49:17.31 ID:az6eszZao
-
友奈と球子の見であれば、久遠陽乃として出ていくのもやぶさかではなかった
しかし、千景がいるとなると話は別だ
陽乃としては、ここで間で争う気は毛頭ないのだけれど
そうは問屋が卸さない。だろう。
友奈達が乗り気でなくとも、千景は全力で乗ってくる。
手段は問わない、久遠陽乃を連れ戻してくること。
最悪の場合、戦闘も許可する。となっている可能性は十分ある
現に、球子と友奈は大きめの鞄やリュックが身近に見えた
千景だったら、明らかだっただろう。
『主様の蒔いた種じゃぞ』
陽乃「郡さんとの関係悪化は貴女にも責任があるってば」
『ふむ……じゃから殺せと』
陽乃「それこそ取り返しが――」
『失せれば、取り返すものもあるまいて』
陽乃「またそういうこと言う……」
究極的に
いや、単純に自分のことだけを考えるのであれば
邪魔だてする……生きにくくしてくる余計なものは排除するのが合理的である
それらのせいでこんな状況に陥っているのだからなおさら
――だから
陽乃「っ……」
首を振る
塀の方に下がって足元を見つめ、深呼吸
いっそここで全員――なんていうのはあり得ない。
1、偽っていく
2、陽乃の姿で出ていく
3、別の場所に行く
↓2
- 640 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/02(月) 21:53:11.32 ID:yYerSggUO
- 2
- 641 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/02(月) 21:54:52.21 ID:6L1UU5Ie0
- 2
- 642 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/02(月) 22:57:14.58 ID:az6eszZao
-
陽乃「……九尾」
『主様』
陽乃「言いたいことは分かるけど、お願い」
『どうなっても知らぬぞ……主様』
今の千景の前に自分の姿で出ていくのは自殺行為と言える
しかし、ここで出ていかなければ、もう大社に横やりを入れられない状況での対面は無理かもしれない
余計な尾鰭が付く前に収拾をつけるのが難しくなるかもしれない
だから、ここは勝負に出る
『言うておくが、主様が危うければ妾は容赦せぬぞ』
陽乃「ええ……」
そんな状況に追い込まれてしまったら、
きっと、そんな悠長なことは言っていられない
陽乃は意を決して、足を進める
陽乃「……郡さんのことは、乃木さんが止めてくれる」
『そうできるとよいがのう』
陽乃「大丈夫……たぶん」
若葉の実力は認めている
だが、問題は本気になった千景だ
それも含めて大丈夫だと、陽乃は信じて神社へと向かった
- 643 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/02(月) 23:32:03.29 ID:az6eszZao
-
神社へと向かうと、
九尾が言っていた通り5人が揃っていた
友奈、球子、千景、杏、若葉
全員がバラバラになることはなく、
揃って、本殿のところにいる
陽乃「……高嶋さんが話したわけではないだろうし……」
『主様がいた痕跡を見つけたようじゃな』
陽乃「あぁ、やっぱり?」
完全に綺麗にしたわけではないが、
それでも、3年間の積み重ねがあった汚れに、一日の野宿は色濃く残る
陽乃「次は、もっといい場所を見つけなきゃ」
『そうじゃのう』
陽乃「さて……」
なにに対しての同意なのか
陽乃はあえて考えずに、5人の下に向かって
陽乃「どう? 私の新しいおうちなんだけど、素敵でしょ?」
笑い交じりに、声をかけた
- 644 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/03(火) 00:23:16.68 ID:OvXKiYJUo
-
若葉「なっ……」
友奈「ぐんちゃん待ってっ!」
千景「……いくら高嶋さんでも、待つ気はないわ」
友奈が掴んだ手を振り解いて、
千景だけが、陽乃に向けて武器を手に取る
突っ込んでいかないのは、模擬戦での出来事があるからだろう
あれだけ一方的にやられる結果に終われば、
無計画に陽乃に手を出そうとは思わない
もちろん、無防備でいようとも思えないのだろうが。
千景「よく、顔を出せたわね……」
陽乃「私、住む場所がないから」
友奈「ぐんちゃん!」
友奈が間に割って入っても
ひりつく空気が和らぐ気配はない
杏「久遠さん……私達は戦いに来たんじゃありません」
陽乃「ん、武装してるように見える?」
杏「そう……ですね」
両手を広げて見せた陽乃だったが、
元々が近接戦闘なのもあって、千景は警戒を解く様子はない
杏は少し困った表情で考えて、また口を開く
杏「大社から久遠さんを連れてくるように頼まれています」
- 645 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/03(火) 00:24:34.52 ID:OvXKiYJUo
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日はできれば少し早い時間から
- 646 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/03(火) 00:30:53.74 ID:kdNrIAijO
- 乙
千景が高嶋さんの呼び掛けに応じないとか余程陽乃さんのこと恨んでるんだな…
攻略どころか仲直りすらできるビジョンが見えないのが辛い
- 647 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/03(火) 07:44:09.81 ID:TYwbO/5SO
- 乙
大社は連れ戻して何する気なんだろうな
- 648 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/03(火) 16:34:45.45 ID:Fu0l+lymo
-
遅くなりましたが、少しずつ
- 649 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/03(火) 16:35:21.33 ID:Fu0l+lymo
-
何となく――というより
そうだろうと思っていた陽乃は苦笑する
陽乃「やっぱり?」
若葉「大社は久遠さんを連れ戻し、管理下に置こうとしている」
陽乃「そうなるでしょうね」
勇者を害し、看護師を殺しかけ、
あまつさえ、逃げられない監禁場所からの逃走劇
管理すべきと思うのは当然だろう
千景「……戦闘許可も出ているわ」
陽乃「貴女を見ればわかる」
千景「投降するなら、怪我をしなくて済む」
球子「止めといた方が良いんじゃないか?」
千景「……なに?」
友奈「ぐんちゃん……やめよう?」
球子を睨みつけた千景を、友奈が制止する
模擬戦で敗北したのだから、ここで武力行使したところで勝てないだろう
そう思われていると感じたであろう千景の苛立ちに、
球子は目を伏せて、陽乃を見る
球子「どうせ本気になったら、タマ達を全滅させられるんだろ?」
- 650 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/03(火) 16:54:39.74 ID:Fu0l+lymo
-
陽乃「一人二人なら可能かもしれない。けれど、それは乃木さんがいない前提での話になるわね」
若葉「……冗談は止めてくれ」
陽乃「実際、貴女は止めてくれたでしょう?」
若葉「あれは運が良かっただけだ」
陽乃が……嫌、九尾が本気だったなら
若葉は自分はここにいられなかったと思っている
それは若葉だけでなく千景や友奈も同じで
もしもその結果だったなら、球子や杏もいなかったことだろう
若葉「まず……一つ確認したい」
陽乃「なに?」
若葉「貴女は本当に久遠さんで良いのだろうか?」
九尾が偽っているのではないか
それを確認したいのだろう
だが、言葉で言って信じるだろうか
若葉や友奈、杏は信じるだろう
球子も渋々頷くだろう
しかし、千景は――
『やはり殺――』
陽乃「止めてってば」
1、私は陽乃本人よ。証拠はないけれど
2、九尾お願い。出てきて
3、どうやったって証明は出来ないわ。ごめんなさい
4、逆に聞くけど、どうしたら信じてくれる?
↓2
- 651 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/03(火) 17:03:56.21 ID:1LY2Pv4F0
- 1
- 652 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/03(火) 17:05:20.09 ID:DWvS+1ItO
- 2
- 653 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/03(火) 17:13:40.47 ID:JMSnbL//O
- また体を乗っ取るのは勘弁…
- 654 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/03(火) 17:29:47.55 ID:Fu0l+lymo
-
陽乃「九尾お願い、出てきて」
『またか』
陽乃「お願い……大事なことなの」
陽乃がそうお願いすると、
九尾は悪態をつきながらも、陽乃の隣に影を伸ばす
それはゆっくりと人の形を作り始めて
そうして――上里ひなたが姿を見せた
若葉「なっ……なん……」
ひなた「まったく、若葉ちゃんったら疑り深いんですから」
杏「嘘……」
球子「見た目も声も瓜二つだぞ?」
驚きに戸惑う勇者の面々をよそに、
九尾であるひなたは陽乃を一瞥して、肩をすくめる
ひなた「私が、九尾だったんです」
陽乃「ちょっ」
若葉「う、嘘だ……っ!」
ひなた「ふふふっ、もちろん嘘ですよ」
九尾はそう言うと、ひなたの姿を崩し――かつて見た、九つの尾を持つ狐へと姿を変えた
- 655 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/03(火) 19:04:38.97 ID:Fu0l+lymo
-
杏「こ、れが……」
九尾「いかにも……これこそが妾の姿」
九尾はそう言いながら九つの尾を動かして、地面を叩く
砂埃が巻き上がって、わずかに地鳴りのような音が響き始める
若葉達は呆然として
千景だけが敵意をむき出しにして九尾へと大鎌を向けていた
九尾「ふむ……」
陽乃「九尾、駄目よ」
九尾「少し、牽制するだけじゃ」
陽乃「九――」
陽乃が止めるよりも早く、九尾は尻尾を駆使して砂嵐を巻き起こす
陽乃を含め、全員が視界を奪われたのはほんの数秒だったが、
それが晴れるころには、もう。九尾の業は終えていた
陽乃「え……」
友奈「あ、あれ……?」
陽乃の隣に九尾はおらず、代わりに友奈がいる
それだけなら高嶋友奈に化けたと考えられるが、
問題は、若葉達の側にも友奈がいることだった
- 656 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/03(火) 19:54:55.71 ID:Fu0l+lymo
-
千景「高嶋さん……?」
千景はすぐ隣にいる友奈を見て、声をかける
千景の隣にいる友奈は驚いた表情で千景を見ると、
もう一度陽乃の隣にいる自分を見て、目を見開く
友奈「ぐ、ぐんちゃん落ち着いて! 私はここにいたよ!」
友奈「ち、違うよぐんちゃん! 煙がバーッてきて、気付いたらこっちに……」
千景「ま、待って……そんな」
千景の隣と、陽乃の隣
両方の友奈が同時に言葉を発して千景を止める
どちらかは本当に九尾だ
警戒していなければ一方的に嬲り殺される可能性もある
しかし、どちらが本物で偽物なのか
それを見分けるのは簡単ではない
陽乃「ちょっと……冗談でしょ……」
千景に攻撃させないという意味では、きっと完璧だ
しかし、神経を逆なでしてしまったような気もすると、陽乃は思わず声を漏らした
- 657 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/03(火) 21:31:01.65 ID:Fu0l+lymo
-
友奈「く、久遠さんは分かる……?」
陽乃「え……」
陽乃はすぐ隣の友奈に問われ、眉を顰める
千景の隣にいる友奈もはっとして
陽乃の方を見つめる
陽乃「えっと……」
二人の友奈に対し、球子や杏が質問をするが
両者ともに、正解を言い当てている
それを耳に通しながら、陽乃は隣の友奈を見つめる
分かるか分からないかで言えば、分かる
はっきり言ってしまえば、茶番だ
九尾も友奈も動いていない
陽乃の隣にいる友奈こそが、九尾だ
だが、それを正直に言っていいのだろうか?
言ってしまったら、千景と対等に話せなくなってしまうのではないだろうか?
1、さぁ? 分からないわ
2、こっちにいるのが本物よ
3、そっちが本物よ
4、まずは武装解除してくれない?
↓2
- 658 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/03(火) 21:39:15.56 ID:1LY2Pv4F0
- 4
- 659 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/03(火) 21:42:23.44 ID:IY8hhWceO
- 4
- 660 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/03(火) 22:12:06.40 ID:Fu0l+lymo
-
陽乃「まずは武装解除してくれない?」
千景「何を……いうかと思えば」
千景は武装解除する気がないのか、
友奈達よりも一歩だけ前に進んで武器を構える
それでも、二人の友奈両方に目を向けて、警戒は怠らない
若葉「郡さん、今は従っておくべきだ!」
千景「何を言っているのか分からないわ」
友奈「お願いぐんちゃん! 久遠さんと話をさせて!」
陽乃「は?」
自分の隣の友奈……つまり九尾がそう叫んだことに、
陽乃は思わず顔を顰め、すぐに誤魔化す
向こうの友奈はこっちの友奈が偽物であると分かっているはずなので
茶番どころではないだろう
千景「っ」
友奈「お願い、ぐんちゃん」
千景「高嶋さん……」
二人の友奈にとめられて、それでも千景は大鎌を手にする
だが、その腕を杏と球子、そして若葉が止める
杏「今はどうか治めてください……九尾さんが本気なら私達を殺せてしまうなら。一人警戒していてもダメです」
球子「そうだぞ。タマ達みんなで力を合わせなきゃどのみち全滅だ」
若葉「今は、頼む」
- 661 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/03(火) 22:25:42.45 ID:Fu0l+lymo
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から
- 662 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/03(火) 22:38:52.70 ID:IY8hhWceO
- 乙
いまこそ若葉たちの団結力が試される時だな
そして九尾の行動が吉と出るか凶と出るか
- 663 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 23:13:18.21 ID:khqRdZUb0
- 今後は暴走しないという保証を示せれば良いけどなぁ
そもそも暴走の原因はどこにあるんだっけ
- 664 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/04(水) 23:45:44.25 ID:SvcpwaURo
-
すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から
- 665 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/04(水) 23:49:33.87 ID:HjoBkhE0O
- 乙ですー
休載は久々かな?
- 666 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/05(木) 02:23:10.60 ID:AH4R+0ojo
- 乙乙
まあゆっくり休んでやー
- 667 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/05(木) 21:04:11.64 ID:+AIoWnCbo
-
では少しだけ
- 668 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/05(木) 21:04:43.93 ID:+AIoWnCbo
-
千景「何を悠長なことを言っているの……?」
若葉「気持ちは分かりますが、落ち着いて欲しい」
千景「分かる……? 貴方が……?」
陽乃へのいら立ちの一部を若葉へと向かたかのように冷ややかな声が若葉へとぶつけられる
しかし、若葉はその差し込むような雰囲気に物怖じすることなく、
ふっ……と、息を吐いて千景をまっすぐ見る
若葉「私だって、ひなたを殺されかけた」
千景「………」
若葉「そして、今、その件によってひなたは大社に連れて行かれている」
若葉はそう言うと千景の武器を押さえる手を離し、腰元にある刀の柄へと伸ばす。
指の一つ一つに力が込められて、握りこまれる
若葉は凛とした佇まいはそのままに、瞳だけに強く闘志を宿していく
若葉「……分かって欲しい」
球子「そうだぞ。下手なことして久遠さんが抵抗したらどうする? 守れる自信があるのか?」
杏「久遠さんが憎しみだけで対抗できる相手かどうか、郡さんが一番よく分かっているはずです」
- 669 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/05(木) 21:08:02.48 ID:gsPJ4q9rO
- よしきた
- 670 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/05(木) 21:45:36.30 ID:+AIoWnCbo
-
若葉達の説得を受けて、
千景は傍らにいる友奈を見て、陽乃の隣にいる友奈を見る
千景にとって、高嶋友奈こそが今この場で最も優先的に守るべき人だ。
九尾はその友奈に姿を替え、どちらにいるのか分からないようにしている
もし万が一、陽乃側にいるのが友奈であるなら、
陽乃はいつでも友奈を害せる
千景が勇者の力でどれだけ頑張ろうと、僅かな瞬間を与えてしまう
それだけで、陽乃は友奈を殺すことが出来るかもしれない
もし、千景の隣にいるのが九尾ならば、彼女は情け容赦なく首を刎ねるだろう
まずは武器を手にしている千景
そうして、若葉、球子、杏……最後に友奈
いや、彼女の性格が悪いのであれば身動きできない千景に対して、友奈の死を見せつけることだろう
千景はそこまでを考えて、考えて
ギリッ……と歯ぎしりを響かせて、大鎌の切っ先で地面を抉る
千景「……高嶋さんを傷つけたら、殺すわ」
陽乃「私はそんな気ないのだけど……」
友奈「大丈夫だよ。ぐんちゃん……久遠さんは、大丈夫」
陽乃の隣にいる友奈は白々しいことを言って、
心配そうに陽乃を一瞥し、千景を見つめる
- 671 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/05(木) 22:13:52.65 ID:+AIoWnCbo
-
陽乃「とにかく私は戦う気はないわ。もちろん……死ぬつもりもないから、来るなら抵抗するけれど」
向こうが殺しに来るのなら、流石に九尾に待ったはかけられない
もちろん、殺しことはないようにと務めるけれど
それがどこまで通用するのかは分からない。
陽乃が千景の隣にいる本物の友奈に目を向けると、彼女は意を決したように頷く
陽乃「郡さんもその状態だからどっちが本物の友奈か話すのは後で良いかしら」
若葉「私は構わない」
陽乃「えぇと……それで何の話だったかしら」
杏「久遠さんが本物かどうか。という話ですね」
陽乃「あぁ……本物。だけど信じられる?」
千景「無理ね……貴女も含めて偽物の可能性が高い」
陽乃「でしょうね」
千景のさっぱりとした断言に、陽乃は苦笑する
言われるまでもなく、そうだろう
ひなた本人に見間違える化け方が出来て
友奈が二人いてどちらが本物なのか見分けがつかなくなっている
もちろん、後者に関しては友奈の協力あって成り立っているのだが。
陽乃「それで……連れ戻しに来たんだっけ……」
1、悪いけれどそれは無理ね
2、今まで通り寄宿舎で過ごしていいなら良いわ。そうじゃなければ、お断り
3、……戻らないと上里さんが戻らないんでしょう? なら良いわ。戻ってあげる
↓2
- 672 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/05(木) 22:20:18.92 ID:Aj7c+KRQ0
- 2
- 673 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/05(木) 22:23:01.98 ID:gsPJ4q9rO
- 2
- 674 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/05(木) 22:37:43.12 ID:+AIoWnCbo
-
では短いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 675 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/05(木) 22:45:42.00 ID:gsPJ4q9rO
- 乙
戻ってくるのは同じでも監禁か寄宿舎生活ならできれば後者がいいけど…
それにしても千景の殺意が高過ぎてどうしたらいいのか
- 676 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/06(金) 01:51:10.25 ID:NcKU0/wcO
- 乙
千景と仲直りしたいなあ
- 677 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/06(金) 22:49:32.12 ID:41C1j8zUo
-
遅くなりましたが少しだけ
- 678 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/06(金) 22:53:57.25 ID:OlvYWh2XO
- やったぜ
- 679 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/06(金) 23:42:15.16 ID:41C1j8zUo
-
陽乃「そうねぇ……」
勇者達はともかく、
大社は気絶させてでも連れ戻してきて欲しいと思っていることだろう。
そうしなければ、街中に爆弾が仕込まれているようなもの……だろうか。
陽乃は少しだけ考えて
それは言い過ぎかもしれないと、苦笑する
陽乃「今まで通り寄宿舎で過ごしていいなら良いわ。そうじゃなければ、お断り」
今までも不自由は多かった。
けれど、お風呂に入れるのが良い
ご飯だって普通に食べられる。
千景「あな――」
若葉「分かりました。交渉します」
何かを言いかけた千景を制して、
若葉が答える
交渉しなければ、その希望が叶わない
そう言った若葉に、陽乃の隣にいる友奈が目を細める
陽乃「仕方がないわ」
- 680 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/07(土) 00:36:02.07 ID:UOdowrQAo
-
大社としては、陽乃を管理下に置いておきたいはずだ
何かやらかさないように、
勇者達を傷つけないように
ちゃんと管理しておきたいだろうし、
陽乃の力を解析したいと思っていることだろう。
寄宿舎に戻せば、陽乃はまた勇者達に危害を加える可能性がある。
陽乃がそんなことをしないと言って、信じるだろうか
答えは否だ。
しかし、陽乃が寄宿舎に戻ることを拒めば、
脅威は街の中へと消えることになる
大社は必ず、陽乃が戻ることを許可してくれる
けれど……絶対にいい顔しないだろう
杏「交渉するにあたって、久遠さんにはもう一日だけ街にいて頂く方が良いですね」
陽乃「戻ったらだめなの?」
若葉「大社の方に連れて行って良ければ」
陽乃「あー……」
- 681 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/07(土) 01:18:24.40 ID:UOdowrQAo
-
陽乃の要望通りに寄宿舎に戻してしまうと、
連れ戻してきたにも関わらず
大社から勇者への信頼に影響がある。
特に、一番友好的である若葉とひなたに迷惑がかかることになる。
今までの関係と同様にそこまでの関係でなかったならそれでよかったけれど
九尾も気に入っているひなたに迷惑をかけてしまうと、
九尾は恐らく……止まってはくれない
そうなったら、終わりだ。
隣にいる友奈の方に目を向けてみると
拳を握りしめているのが見えた。
九尾は九尾でも、今は友奈である以上……感情の出し方は友奈のようだ
友奈「久遠さん」
陽乃「分かってる……上里さんが大変だものね」
赤い瞳の友奈
その目が細まっていくのを一瞥し、陽乃は頷く
陽乃「それで? 私はまたここにいたらいいのかしら?」
杏「いえ……久遠さんさえよければですけど……私の家に来ませんか?」
- 682 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/07(土) 01:20:03.11 ID:UOdowrQAo
-
では短いですがここまでとさせていただきます
明日は可能であれば早い時間から
- 683 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/07(土) 01:22:37.04 ID:KOKrT+ROO
- 乙
まさかのお泊まり
- 684 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/07(土) 02:02:20.59 ID:lkRl4jTko
- 乙
これからは千景攻略が鍵になりそう
- 685 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2020/11/07(土) 02:41:52.23 ID:0Z6ZEXQt0
- VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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- 686 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/07(土) 05:34:34.03 ID:b8LPK0ODO
- 乙
そういえばここまで杏本人とはあまり交流してなかったから丁度いいかも
- 687 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/07(土) 09:56:14.80 ID:F3lw1VXs0
- タマともそこそこ交流できそう
- 688 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/07(土) 19:24:40.89 ID:UOdowrQAo
-
では少しだけ
- 689 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/07(土) 19:30:32.10 ID:rmvWWRq7O
- おk
- 690 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/07(土) 19:40:11.10 ID:UOdowrQAo
-
陽乃「伊予島さんの……?」
杏「はい」
陽乃「大丈夫、なの?」
陽乃の噂はこの四国全土に広まっている
全人口ではないかもしれないが、
老若男女問わず、多くの人がが知っていることだ
それは、杏の両親であっても例外ではない。
いくら杏からの紹介とは言え、周囲の人々から嫌われている人間を連れ込むのは良く思わないはずだ
陽乃「私のこと、知っているんでしょう?」
杏「知っています」
陽乃「だったら――」
杏「大丈夫です。あの日、久遠さんを見たのは私だけではありません」
陽乃「………」
杏はもう一度大丈夫です。というと、
久遠さんさえよければですから。と、続ける
- 691 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/07(土) 20:04:43.46 ID:UOdowrQAo
-
友奈「久遠さんをここにもう一日いさせるのは、不安です」
陽乃の隣にいる友奈はそう言うと、陽乃へと目を向ける
心配している瞳
ここよりは、杏のところに厄介になったほうが良いという考えを感じる
この友奈からしてみれば、伊予島毛にどんな災難が降りかかろうとも、
陽乃が無事ならそれでいいのだ
球子「でも杏はどうするんだ?」
杏「わたしも久遠さんと家に残るつもりだよ」
球子「だったらタマも残るぞ!」
若葉「土居さん!」
球子「杏一人残していけっていうのか?」
杏「タマっち先輩……」
球子「杏が残るならタマも残る」
陽乃「そこは伊予島さん次第になるわね」
杏「……久遠さんは、私と一緒に来てくれるんですか?」
1、ええ、その方が良いわ
2、一緒に野宿しましょ
3、悪いけれど……やめておくわ
↓2
- 692 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/07(土) 20:10:49.73 ID:MRt0j+hJO
- 1
- 693 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/07(土) 20:11:27.79 ID:Aqw+yUZP0
- 1
- 694 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/07(土) 20:28:08.70 ID:UOdowrQAo
-
↓1コンマ判定
1,3,9 杏
- 695 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/07(土) 20:29:24.60 ID:MRt0j+hJO
- あ
- 696 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/07(土) 21:19:35.33 ID:UOdowrQAo
-
陽乃「ええ、その方が良いわ」
杏「良かった……」
安堵したように零した杏は、
ほっと胸を撫で下ろすと、球子へと目を向ける
球子の視線を感じて笑うと
僅かに視線を逸らし、目を閉じて……開く
杏「タマっち先輩と私と久遠さんの三人で外泊許可をください」
若葉「分かった」
友奈「大社が認めてくれるかな……」
若葉「事後承諾で押し通す。久遠さんを寄宿舎に連れ込むよりはマシだろう」
やや強硬手段だが、
陽乃が条件を飲まなければ戻らないと言っている以上
そうするのが最善だった。
なんなら寄宿舎に連れ帰っても良かったのか。とでも言えば良いと、若葉は答える
陽乃「上里さんを連れて行かれて、気が立ってるわね」
友奈「……大丈夫。ひなちゃんは問題ないよ。私が付いてる」
陽乃にしか聞こえないように傍らの友奈は囁く
- 697 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/07(土) 21:41:29.31 ID:UOdowrQAo
-
千景「……私」
友奈「ぐんちゃんは私達一緒に戻ろう?」
千景の隣にいる、本物の友奈の言葉に千景は眉を顰める
本物か偽物か。
まだわかっていない千景の敵意を感じても友奈は笑みを浮かべる
弾かれる可能性を考えながら、それでも手を差し伸べた
友奈「あんちゃん達を信じよう。久遠さんを……信じよう?」
千景「……高嶋さん」
若葉「私と友奈、郡さんは戻る。土居と伊予島は久遠さんと……」
陽乃「?」
若葉「お願いしますよ。久遠さん」
問題を起こさないでくださいと言いたげな視線を受けて、
陽乃は肩をすくめて笑って見せる
専守防衛
陽乃はそれを主に置いているつもりではある。
九尾も、害があると判断さえしなければ、
人間自体を有象無象として関わることさえしない。
陽乃「大丈夫よ。大丈夫」
球子は不安だが、杏がいれば問題はない
あるとすれば……杏の両親とその周囲だ
- 698 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/07(土) 21:59:52.68 ID:UOdowrQAo
-
若葉「それで、どちらが本物の友奈なんです?」
友奈「どちらも何も、最初から動いてないですよ」
陽乃の隣の友奈、九尾はその姿を消し去って、答えとする。
千景はそれを見送ってから大鎌を畳み、収納すると
陽乃を睨んで……目を背ける
千景「せいぜい……大人しくしておくことね」
陽乃「この神社で寝泊まりしなくていいなら、蝶が止まれるくらい大人しくなれるわ」
『虫が入り込むではないかや?』
陽乃「うるさいやめて、あれトラウマになりそうなんだから」
千景「……何言っているの?」
陽乃「こっちの話。とにかく承知したわ。伊予島さんの厚意、仇で返さないと誓うわ」
そう千景に微笑んでみたものの、
千景はそれを全く信じていないようで、目もくれない
そんな千景を見て、友奈は困ったように肩をすくめて陽乃に笑みを見せる
友奈「あんちゃん、タマちゃん。宜しくね」
球子「あぁ、任せとけ」
友奈の突き出した拳に、球子もこつんっとぶつけて頷く
そうして杏、球子、陽乃を残し、
若葉、千景、友奈は神社を後にした
- 699 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/07(土) 22:15:13.32 ID:UOdowrQAo
-
√ 2018年 8月2日目 夕:
0 00 最悪
1〜3 良い
4〜6 普通
7〜9 悪い
ぞろ目 最良
↓1
- 700 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/07(土) 22:17:34.91 ID:Aqw+yUZP0
- あ
- 701 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/07(土) 22:58:35.04 ID:UOdowrQAo
-
√ 2018年 8月2日目 夕: 伊予島家
杏と球子と共に杏の実家へと向かった陽乃は、
親友に忌避されたと言うこともあって、
いくら杏の両親でも……と、あまり期待はしていなかった
杏が言うから受け入れてはくれるが、嫌悪感を感じるだろうと。
しかし、それが杞憂であるかのように、伊予島夫妻は迎え入れてくれた
「いらっしゃい、話は聞いているわ。久遠……陽乃さんね?」
陽乃「は、はい……すみませんが――」
「大丈夫。そんなに気にしなくていいの」
杏「久遠さん、大丈夫ですよ」
陽乃「でも……」
「まず上がりなさい。込み入った話はそれからでもできる」
渋る陽乃に杏の父はそう声をかけて、招く
球子「お邪魔しまーす!」
杏「あっ、タマっち先輩手を洗ってください!」
上がっていく二人
残った陽乃を杏の母親は見つめて、微笑む
「あの人、表情はあれだけど……貴女のこと嫌っているとかではないから安心して良いからね」
陽乃「あ……はい。ありがとうございます」
靴を脱いで、
片足跳んでいる球子の分も一緒に揃えて上がると、
杏の母親は「しっかりしているのね」と、笑みを見せた
- 702 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/07(土) 23:02:28.82 ID:UOdowrQAo
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから
- 703 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/07(土) 23:18:48.29 ID:MRt0j+hJO
- 乙
散々酷い仕打ち受けてきた分、杏の周りが暖かい…
そしてやっと運も向いてきていい感じだな
- 704 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/07(土) 23:32:22.26 ID:lkRl4jTko
- 乙
杏は陽乃さんのこと結構好意的に見ているけど、タマは未知数だよな
ちょっと心配
- 705 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/08(日) 02:31:55.81 ID:/bBqSP3WO
- 乙
判定はご両親の受け入れ度だったのかな
なんにせよよかった
- 706 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/08(日) 17:13:01.71 ID:FmzRiwS4o
-
では少しずつ
- 707 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/11/08(日) 17:28:10.67 ID:5zS6Mu/nO
- 来てたか
- 708 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/08(日) 18:14:05.54 ID:FmzRiwS4o
-
リビングへと上がると杏の父、杏、球子がすでにいて、
予め連絡を貰っていたからか、お菓子と飲み物が用意されていた
杏「久遠さん、どうぞ」
球子「まだ手を洗ってないだろーっ」
杏「久遠さんはちゃんと洗ってから来るから良いの」
球子「あんずーっ」
茶番……ではないだろう。
杏と球子の関係が垣間見えるのを横目に、
陽乃は手洗い場へと向かって、手を洗う
『ふむ……入浴しておいて良かったのう』
陽乃「ほんと……あんな状態で人様の家に上がるなんて出来ないわ」
リビングへと戻って、球子の隣に座る
杏の隣は、球子が許さない
「改めて、いらっしゃい。久遠陽乃さん。土居球子さん」
陽乃「今日はすみません、急に」
「良いのよ。驚きはしたけれど……友達が家に来るなんて、初めてで、嬉しい限りだわ」
杏「お母さんっ」
球子「寄宿舎では、いっつも仲良くさせて貰ってる……ます」
球子のちょっぴり詰まった物言いに、
杏の母親はにこやかに笑って「ありがとう」と答えた
- 709 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/08(日) 18:30:00.01 ID:FmzRiwS4o
-
杏は小学生の頃病弱で一度、原級留置となっている
そのため、1年、2年と仲良くなった友人達からは一つ遅れ、
年下のクラスメイトと同じ学年となってしまった。
それがきっかけで、だんだんと疎遠になり、独りになることが増えた。
杏はそう言った経験もあって、家に友人を呼んだことはないのだ。
いや、呼べなかったのだ。
陽乃「私は……その、とてもと言うほどではありませんが、良くして頂いています」
杏「……あ、えっと、久遠さんはね。伊予市の方なんだって」
「知っているよ。話も噂も、色々と耳にするからね」
杏「お父さん、久遠さんは――」
「分かっている。見ればわかる……噂ほどの極悪人なら、こんな顔つきはしていない」
陽乃を見つめ、
そう言い切った杏の父は、自分の前に置かれているティーカップに口をつけたが、
杏の母親はそれを一瞥して「何言ってるんだか」と苦笑する
「あなたの人相判断なんて、映画で見たマフィアが参考じゃないの」
「ぶふっ」
球子「うわっ」
「も、申し訳ない――お前が余計なことを言うから」
「あなたが下手なこと言うからでしょ。もう、球子さん大丈夫?」
球子「あ、はい……大丈夫です」
杏「顔にかかってるよ、タマっち先輩」
- 710 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/08(日) 18:52:23.25 ID:FmzRiwS4o
-
伊予島家は、父も母も、杏自身も
みんながみんな、優しく仲の良い……温かい家庭だったのだろう
陽乃の家だって、悪くなかった
仲が良くて、温かくて
神社の神主や巫女というのもあって、週末に家族でお出かけ……なんていうのは滅多になかったけれど
それでも、仲は良かった。
陽乃「………」
『主様』
陽乃「……大丈夫」
杏の家族に魅せられたからと言って
自分のそれを奪った人たちを殺そうとは思わない
死んでも良いとは思うけれど、殺す気はない。
動悸が強くなるのを感じて深呼吸をすると、球子が気付く
球子「なんだ?」
陽乃「大したことじゃないわ」
杏「具合が悪いなら、休まれますか?」
「もしあれなら、夕飯の時間になったら起こすから休んでいて良いのよ?」
1、休む
2、休まない
↓2
- 711 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/08(日) 18:57:03.80 ID:uEukC087O
- 1
- 712 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/08(日) 18:59:06.37 ID:AzX5E85g0
- 1
- 713 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/08(日) 19:42:21.94 ID:FmzRiwS4o
-
陽乃「そう……ですね、休ませてください」
「布団は――」
杏「大丈夫、私のベッドを使って貰う」
「そう? なら、杏と球子さんの分も用意してあるからね」
球子「タマのベッドは?」
杏「タマっち先輩は私とお布団」
球子「……抱き枕付き?」
杏「何言ってるのタマっち先輩」
球子は杏を抱き枕にするつもりなのだろう
困った様子の杏に「抱き枕」と言ってぎゅっと抱き着く
陽乃「邪魔ものが行くお部屋はどこかしら?」
杏「タマっち先輩離れてっ」
球子「ベッドはあげても杏はあげないからなっ」
陽乃「ええ、肝に銘じておくわ」
杏「タマっち先輩っ」
杏に押し離されて、球子はようやく離れたものの
その目は陽乃を見ている
九尾の幻惑の力を見せられて、
いつすり替えられるかもわからず……警戒しているのだろう
- 714 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/08(日) 19:55:25.21 ID:FmzRiwS4o
-
案内された杏の部屋は、綺麗にされてはいたが……8割が本だった
本棚はみっちりと本が納められ机の上も、本の山だ
球子「寄宿舎以上だな」
杏「あはは……だ、大丈夫。寝る場所はあるから」
『寄宿舎は寝台の上にも書物があったぞ』
陽乃「貴女ね……」
九尾がどこまで侵入しているのか気になるものの、
聞いたら何が出てくるかは分からない
杏の招きに応じて、ベッドを借りる
杏「熱とかはありませんか?」
陽乃「大丈夫」
球子「あんな場所で寝るからだぞ。横にすらならなかっただろ」
陽乃「分かるの?」
球子「どう寝たのかくらい分かる。虫よけも何もない。本物のサバイバル。タマでもやらない」
陽乃「虫が服の中を這いずってる感触はトラウマになるわ」
杏「えぇ……」
球子「そこでタマを見るなっ! 流石にタマも引く!」
- 715 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/08(日) 20:24:41.60 ID:FmzRiwS4o
-
陽乃「あら、もしあれなら一緒にガチバルやろうと思ったのに」
球子「ガチバル?」
杏「タマっち先輩……?」
陽乃「二日間食事と風呂無し、廃墟で座って寝るの」
球子「良いな――ってぇなるか!」
球子は声を張り上げてベッドを叩く
大声を出さないでと諫める杏をよそに、
陽乃は薄い掛布団を引き上げて体を覆う
ぼふんっと空気の抜けたベッドは、埃を感じない
杏「でも、久遠さん全然いい匂いですよ」
球子「確かに臭くないな」
陽乃「ちょ……嗅がないで! 朝温泉入ってきたのよ」
布団をめくろうとする球子を押し返して、布団を死守する
昨日の朝まではベッドの上だったが、拘束具の有無でまるで感触が違うし
杏のベッドは、
寄宿舎で使っているものよりも、陽乃が家で使っていた物よりも、良質に感じる
陽乃「……良いご両親ね」
杏「はい……でもきっと、久遠さんがいなければ今はもういなかったと思います」
- 716 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/08(日) 20:41:04.27 ID:FmzRiwS4o
-
陽乃「買い被り過ぎだわ」
杏「いえ……だって、久遠さんはあの当時からバーテックスと戦っていたじゃないですか」
車で逃げる道中、飛来する白い化け物に突っ込んでいく人を杏は見ている
両親だって……避難所に現れた化け物を片っ端から殴り飛ばしていく人を見た。
襲い来る異形――バッテックスを打倒していく少女
車を吹き飛ばし、建物を崩壊させ、人間を喰らいつくす化け物に対抗し得る
それは確かに、言いようによっては化け物だったかもしれないけれど、
間違いなく……勇者だった
杏「久遠さんは多くの命を救いました。誰が何と言おうと……久遠さんを恩人だと思っている人はいます」
球子「杏……」
杏「今生きている人々には希望がありません。だから、あんな酷い噂であろうと希望と掲げて縋ってしまうんです」
陽乃「なら、どうすると?」
杏「私達が勇者として、希望になればいいんです。いつか襲撃があっても、確実に勝利して、守り抜くんです」
勇者がいれば、大丈夫だと
いつか、失ったあの日を取り戻すことが出来るのだと
そう思わせられるような活躍をして見せるべきだと……杏は言う
杏「そのために、力を貸して貰えませんか? 私達と……仲良くなっては貰えませんか?」
1、私と仲良くなると死ぬわよ
2、考えさせて
3、気持ちは嬉しいけれど……問題が解決するまでは駄目よ。大社が煩いわ
4、その言葉は重いわよ。責任とらないからね?
↓2
- 717 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/08(日) 20:44:28.74 ID:7XZXt0BS0
- 4
- 718 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/08(日) 20:47:38.38 ID:zulLhKmiO
- 4
- 719 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/08(日) 21:31:38.43 ID:FmzRiwS4o
-
陽乃「言っておくけれど……その言葉は重いわよ。責任とらないからね?」
杏「……承知の上です」
球子「杏、本気か?」
杏「うん。私は久遠さんの力になりたい」
足手纏いなのは分かっている
力不足なのも分かっている
けれど、杏は陽乃を一人にはしたくないと思う
誰も寄り添ってくれない英雄の物語など、杏は好みではない
たとえその英雄が望んでいるのだとしてもだ
陽乃「噂を知っているのに?」
杏「関係ありません」
陽乃「周りの人から、色々言われるのよ?」
杏「周りから浮くのは慣れています」
球子「待て杏」
一人先行していく杏の肩を叩いて、球子が止める
- 720 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/08(日) 22:33:59.27 ID:FmzRiwS4o
-
杏「タマっち先輩」
球子「杏が本気なのは分かった……正直、そんな無理はして欲しくない」
でも、と球子は言う
球子「どう言ったって無理そうだからタマも一緒だ」
陽乃「本気なの?」
球子「本気だ。悪いか?」
グッと距離を詰めてきた球子は、
ベッドに横になっている陽乃の目線に合うよう屈んで、杏の肩を掴む
杏がどうしてもと言うのなら付き合う
そして、杏を護る
球子「杏がこんな様子なんだ。久遠さんだって断り切れないだろ?」
陽乃「………」
球子「だから、タマもだ。どうせ友奈も若葉もだろうし……仕方がない。付き合ってやる」
杏「そんな嫌々は駄目だよタマっち先輩」
球子「……杏が杏だって証拠も、久遠さんが久遠さんだって証拠もないんだ。仕方がないだろ」
九尾の力ゆえに信用は出来ない
自作自演の可能性だってある
それでも、杏が杏だと信じて球子は言う
球子「でも、杏が偽物だったとしたら……久遠さんは一人が寂しいから誘ってることになる。だったら付き合うしかない」
だろ? と、球子は苦笑した
- 721 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/08(日) 22:36:58.53 ID:FmzRiwS4o
- では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 722 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/08(日) 22:50:34.38 ID:9m1bzpwbO
- 乙
両親が救われたのもあってか杏の陽乃さんへの思い入れが若葉たち以上だな
今回は杏が陽乃さんのヒロイン候補になりそう
- 723 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/09(月) 00:28:20.63 ID:Z/Wlh1zaO
- 乙
頼れる仲間みたいなのが増えるのは嬉しいな
- 724 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2020/11/09(月) 00:34:55.67 ID:dtltR1cR0
- 伊豫稲荷の話はデータ2の頃から出てたけど、
伊予市の名前が出たのは初めてか?
- 725 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/09(月) 22:30:25.26 ID:L8DQrONTo
-
すみませんが本日は所用のためお休みとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から
- 726 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/09(月) 22:32:36.45 ID:Utrm9dO0O
- 乙です
- 727 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/10(火) 22:31:07.06 ID:i20nADzlO
- 今日も休載?
- 728 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/11(水) 00:43:18.06 ID:FHIW4ULNo
-
遅くなりましたが、少しだけ
時間も時間のため、安価は無しです
- 729 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/11(水) 00:58:11.13 ID:FHIW4ULNo
-
陽乃「……何よ。それ」
もちろん、今ここにいる杏は本物だ。
九尾の作り出した……あるいは、九尾が化けた偽物などではない。
しかし、球子はそれを知らない
そして――きっと、昼間に陽乃が友人として接触したことがきっかけで
杏の今の押しの強さに抗えないとみているのだろう
陽乃「私は別に……」
『寂しいのかや?』
陽乃「そうじゃない」
球子「違うのか?」
陽乃「貴女には言っていないわ」
九尾に言ったのよと取り繕うが、球子は訝しそうな表情を見せる
杏「久遠さんには、聞こえるんですか?」
陽乃「信じるの?」
杏「ひなたさんから話は聞いてますし、神社でも見せて頂いたので」
陽乃「……なるほど」
ひなたがどこまで話しているのかは知らないが、
九尾が陽乃のみに言葉を聞かせるというのを、信じるつもりのようだ
普通なら、独り言を言う変な人となりそうなものだが。
- 730 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/11(水) 01:42:29.29 ID:FHIW4ULNo
-
杏「そのひなたさんですが――」
陽乃「大社の施設なんでしょう?」
杏「はい。ただ……問題は大社がひなたさんを久遠さん寄りの人だって考えていることです」
球子「杏……?」
杏「タマっち先輩もひなたさんと若葉さんが久遠さん寄りの人だっていうのは分かってるよね?」
球子「ん〜……まぁ、何となくは」
あやふやな答えを返す球子に苦笑いを浮かべた杏は、
陽乃の方へと向き直って、真剣な表情を見せる
杏「前回……若葉さんは久遠さんを倒しましたが、本当に斬ったわけではありません」
友奈や千景が大怪我とまではいかなかったにせよ
治療が必要な状態にされたことには変わりがない
それにもかかわらず、陽乃はほぼ無傷だった。
それはもちろん、九尾の力があってこそなのだが
大社はそう考えずに、若葉が仲間よりも陽乃を優先したと考えている
そう考えていない人もいるが、そうではないか……という疑いがかかっていることが重要なのだ
杏「大社は若葉さんの抑止力として、あえてひなたさんを組織下に置いておくつもりの可能性があります」
- 731 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/11(水) 02:02:04.01 ID:FHIW4ULNo
-
それは言い換えれば、
陽乃を寄宿舎に戻す代わりに、ひなたが大社預かりになる可能性があるということだ
それも、非常に高く。
巫女としての能力が高いがゆえに、害されるわけにはいかないと言う建前で。
それに対して抗議することは出来る
使える文句もいくつか考えられるが、果たして……それが通じるかどうか。
陽乃「やっぱり私、逃げたほうが良いかしら」
杏「今更どうにもなりませんよ」
球子「若葉が直訴に行ったんだ。ここから逃げるってなったら余計ややこしくなるだろ」
陽乃「そう、よね……」
自分の境遇を優先するのは、人として必然と言えなくもない
しかし、今の酷い環境の中で良くしてくれた人を道連れにするのは少し違う。と、思わなくもない
陽乃がそう思い悩むような少女だからこそ、九尾は悪態をつく
『……気にすることはなかろう』
陽乃「まぁ」
心配をすべきはひなたよりも大社だ
ひなたに何かがあれば、この妖狐が影を伸ばすだろう
そうなった場合は、あまり考えるべきではない
- 732 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/11(水) 02:02:57.46 ID:FHIW4ULNo
-
では短いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 733 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/11(水) 02:04:26.85 ID:uHn1gfZfO
- 乙
なんか申し訳ないな
- 734 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/11(水) 06:48:06.04 ID:hPmlZVy9O
- 乙
事実上ひなたが人質にされるわけか…
助けたら助けたでもっと拗れそうだしどうしたものか
- 735 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2020/11/11(水) 14:16:44.13 ID:jm95pkoQ0
- VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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- 736 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/11(水) 22:04:38.00 ID:FHIW4ULNo
-
遅くなりましたが、少しだけ
- 737 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/11(水) 22:13:51.79 ID:6KmQdN4qO
- よしきた
- 738 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/11(水) 22:54:10.37 ID:FHIW4ULNo
-
杏「久遠さんはやっぱり、優しい人ですね」
陽乃「上里さんが相手だからよ……みんなのことを考えられるわけじゃないわ」
杏「それが普通だと思いますよ」
誰も彼もに手を差し伸べ気を回せるのは、普通とは言えない
自分の友人知人にそうできるのが……良い所だろう
人々に嫌われ、大社に敵視されながら、
勇者とも敵対に近い関係にあってなお、ひなたのことを考えられるのなら
それは優しいと言えると、杏は思う
杏「ひなたさんなら大丈夫です。巫女の適正があるある以上、どうにかできるとは思えませんから」
陽乃「そうなんだけどね」
ひなたは若葉の傍に居たいだろうし、若葉はひなたが傍に居てくれた方が良いだろう
ひなたが大社預かりになったからといって若葉が千景のようにならないとは思うけれど。
千景はきっと……貴女のせいよ。とでもいうはずだが、
それに関してはひなたがどうなっていようが変わらないので、関係はない
- 739 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/11(水) 23:24:28.88 ID:FHIW4ULNo
-
陽乃「……乃木さんの説得次第、かしら」
球子「でも、あの大社が説得を受け付けるか?」
杏「ひなたさん連れて行くの……一方的だったからね」
事情の説明はしてくれたものの、だから連れて行く。という一点張りで
一緒に行動したほうが安全だと言う若葉の言葉は受け入れて貰うことが出来なかった。
だからこそ、
若葉は事後承諾で杏たちの外泊を押し切ってやろうと言うのだが。
ひなたを取られて腑抜けるのではなく
やり返してやろうと言うのは……少し、感心する
杏「久遠さん、眠くありませんか?」
陽乃「まさか、今までのが寝物語だったわけじゃないでしょう?」
杏「そうですね」
小さく笑った杏は、少し休んでください。と、球子を引っ張る
- 740 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/11(水) 23:44:21.10 ID:FHIW4ULNo
-
球子「あんずっ……久遠さんを一人にしたら――」
杏「そんなこと言ったら、私達寝れなくなっちゃうよ」
球子「……交代で見張るか?」
陽乃「私の寝込みを襲おうとしたら、殺されちゃうわよ」
茶化すように言う陽乃だが、それは冗談ではない
陽乃は眠っている間に起きていることを制止することは出来ないため
寝込みを襲おうとした何者かがいた場合、
九尾がそれをどうにかしてしまうのを止めることが出来ない
陽乃「絶対、やったらだめだからね」
球子「そう言われると――」
杏「駄目だよタマっち先輩」
球子「分かってるって」
冗談だってといった球子は、後で少し……とちょっぴり思ったものの、
しかし、神社でのことを思えばやはり委縮せざるを得ない
球子「まぁ、ゆっくり休むんだぞ」
陽乃「ええ……二人もね」
陽乃は頷いて微笑み、目を閉じる
質の良いベッドに、陽乃は緩やかに眠りへと誘われるのを感じた
- 741 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/11(水) 23:56:11.48 ID:FHIW4ULNo
-
√ 2018年 8月2日目 夜:伊予島家
01〜10 九尾
30〜39 友奈
51〜60 杏
61〜70 若葉
86〜95 球子
↓1のコンマ
※それ以外は通常
- 742 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/11(水) 23:56:56.58 ID:C+JPwFzB0
- あ
- 743 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/11(水) 23:58:12.74 ID:FHIW4ULNo
-
では短いですがここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 744 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/12(木) 00:10:30.74 ID:hnZLLAMaO
- 乙
タマっち先輩は九尾の力を見てるのと杏の心配で警戒心がちょっと強めだな…千景と違って話せば分かってくれそうだけど
一方で積極的に味方する杏のターン継続か
- 745 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/12(木) 07:47:50.21 ID:h1ghYy600
- 乙
心を開ける人間が必要な状況だから助かるな
- 746 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/12(木) 21:33:58.82 ID:TU5bEY/+o
-
では少しだけ
- 747 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/12(木) 21:39:25.66 ID:wTVojQppO
- かもーん
- 748 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/12(木) 22:07:59.95 ID:TU5bEY/+o
-
√ 2018年 8月2日目 夜:伊予島家
夕食と入浴を終えて、
寝間着がないと言うことで……陽乃は杏の母の寝間着の予備を借りることとなった。
球子は杏の予備を借りた。
杏「久遠さん、ゆっくり休んで良いんですよ?」
陽乃「無理言っているんだから、少しくらいはね」
食事後の洗い物、風呂の準備
それを陽乃は自主的に手伝っていて、
母親も杏もそんなことしなくても良いのにと、ちょっぴり申し訳なかった
陽乃は杏の友人で、客で、そして何よりも勇者である。
一宿一飯の恩義という言葉はあるものの、
そうしなければならないと言うものではない。
杏「ほんと、噂と違いすぎていて困っちゃいます」
陽乃「噂だと、私は傍若無人……暴虐無人の方が良いかしら? そんな人なのかしら」
杏「殆どそんなものです」
陽乃「伊予島さんがそうして欲しいならするけれど」
陽乃が茶化すように言うと、
杏はお願いですから止めてくださいね。と、苦笑する
- 749 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/12(木) 22:42:46.03 ID:TU5bEY/+o
-
杏「久遠さんって、読書もお好きでしたよね」
陽乃「ええ、だから正直……伊予島さんの部屋は私にとって魅力的だわ」
至る所に文庫本が置かれている部屋
ちらりと見て覚えのあるタイトルも散見されるが、
そうではないものも多い。
文庫本の総量としては、杏の方が上のようにも思えた
陽乃「私が読書好きだなんて、誇張も良い所ね」
杏「いえ、そんな……」
陽乃「小学生の頃、色々あったんでしょう? 今は大丈夫なんだったかしら」
杏「勇者の力を授かってからは体調を崩すことも無くなって、落ち着いています」
陽乃「勇者の力……ね。貴方は私と伊予島さん達の力の違いをどう見てる?」
杏「どう……と言われても困りますけど」
そうですね。と、杏は呟く
杏「少なくとも同質ではないと思います」
- 750 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/12(木) 23:09:07.57 ID:TU5bEY/+o
-
細かく言うのならば、
勇者達が神樹様から供給される力を利用しているのに対し、
陽乃は、九尾もそうだが神樹様を一切介さずに力を利用している
そのため、大社が解析することは出来ないし
それを実現させるためには
陽乃に力を貸している九尾の全面的な協力が必要になってくる
勇者の力が水であるのなら、
陽乃の力は油だと言っても良いのかもしれない
杏「神様の性質自体が違う……大社の考えや噂の言葉を借りるのであれば、天の神と地の神。それくらいの違いはあると思います」
陽乃「そう」
『妥当な理解であろうな』
九尾や陽乃の協力がなければ、そこまでが限界だろう
陽乃の力が九尾以外にもあるとか
陽乃の力が人体にも悪影響を及ぼしたり、本当に神様も殺せるというところにまで到達はしない
- 751 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/12(木) 23:32:23.27 ID:TU5bEY/+o
-
陽乃「そう言う、神様が云々って小説はあったりする?」
杏「えっと……そう言うのは、無いですね」
陽乃「そう……」
陽乃の神社が無事ならば、多少の文献が残されていたはずだが、
残念なが焼失している
一般の神社やお寺、資料館にも神様に関するものはあるが、
陽乃……久遠家のことに関しての物は存在していないだろう
せめて神様を扱った物語が読めれば……と思ったけれど、今は難しい
杏「あの、久遠さん」
陽乃「なに?」
杏「タマっち先輩、悪気はないんです。ただ、私のことを心配してくれているだけで」
陽乃「大丈夫よ。そのくらい分かってる」
球子の反応くらいで敵対しているだなんて思うつもりはない
陽乃「せめて、郡さんくらい敵意むき出しじゃないと」
杏「冗談になりませんよ」
陽乃「ふふっ、ごめんなさい」
1、どうしたらいいのかしらね、ほんと
2、ありがとうね。助かるわ
3、本当に大丈夫? 怖くないの?
4、バーテックスが来る頃には、長野……どうなっちゃうのかしらね
↓1
- 752 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/12(木) 23:34:24.09 ID:smuW1OoqO
- 4
- 753 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/12(木) 23:40:24.52 ID:TU5bEY/+o
-
では短いですがここまでとさせていただきます
明日は恐らくお休みをいただくことになると思います
再開は明後日、可能であれば早い時間から
- 754 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/12(木) 23:45:32.89 ID:smuW1OoqO
- 乙
そういえば四国での初戦闘は一ヶ月後だったっけ
うたのん達と接触できる機会あるかな
- 755 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/13(金) 00:48:27.31 ID:8/0AduRrO
- 乙
さすがに長野までは手回らないかもねえ
今自分のことすら精一杯だし
- 756 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/14(土) 21:17:00.24 ID:84spaLMfo
- 遅くなりましたが、少しだけ
- 757 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/14(土) 21:17:30.08 ID:84spaLMfo
-
陽乃「バーテックスが来る頃には、長野……どうなっちゃうのかしらね」
杏「長野……白鳥さんの件ですよね」
陽乃「ええ……」
現状では定期連絡も行えており、
向こうでの戦闘は行われているものの、問題はないという話だ
だが、それがいつまで持つのか。
長野はここと違って、たった一人の勇者が守っている
物量作戦で押し込まれる可能性はあるし、
一日ではなく、連日の襲撃で疲弊させることも可能だ
今日は無事でも、明日は?
明日は無事でも、来週、来月……
長野が無事であると言う保証はない
杏「久遠さんは長野の方に行きたいと?」
陽乃「ここで時間を潰しているくらいなら、行くべきとは思うわ」
- 758 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2020/11/14(土) 21:18:15.87 ID:boY+Hn+t0
- なるべく諦めないし
- 759 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/14(土) 22:08:17.64 ID:84spaLMfo
-
杏「ですが、戦装束がまだ万全ではありませんし……四国の守りを無くすわけにはいきません」
陽乃「それは分かってるけれど、じゃぁ……長野は捨て駒なの?」
杏「………」
杏も陽乃も、
長野が大局的に考えれば、必要な犠牲として考えられているとみている。
勇者の力があるとはいえ、
ここおから長野までの道のりは決して楽ではない
救出に行くのは簡単ではなく、
行けたとして、救出できるとは限らない
ましてや、長野の勇者だけならば可能性もあるが……一般の人たちは連れ帰ることは不可能といっても良い
そうなったら、長野の勇者は出てくることを望まないかもしれない
陽乃「必要な犠牲があるって考えには一理ある。けれど、それを認めるかどうかはまた別の話だわ」
杏「久遠さんは、関係ない県の人たちも救いたいと?」
陽乃「仮に……仮によ?」
陽乃はあえてそう前置きして、咳払いする
この言葉で勘違いされては困るからだ
陽乃「仮にも勇者であるのなら、そこに生存者がいると知りながらただ手を拱いているだけなんて……許せると思う?」
- 760 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/14(土) 22:25:33.91 ID:84spaLMfo
-
杏「それは……」
それは、きっと勇者と呼ばれるもの考えなのだろう
しかしながら、もし……それを成し遂げられるのだとすれば
それはもはや勇者などではなく。
陽乃「思う?」
杏「あ……い、いえ。思いません」
勇者ならば捨て置けない
なんとしてでも救おうとするだろう。
だが、陽乃はそれを成し遂げたとて……認められるだろうか?
いや、陽乃はそもそも誰かに認められたいなどと思っているのだろうか
ただ単純に、そうあるべきではない。と、思っているだけなのではないかと、杏は思う
だとしたら、やはり陽乃は……ただただ、優しい人でしかない
それ以上に、優しすぎる人でしかない
杏「あの……久遠さん」
陽乃「なに?」
杏「もし、長野に行けるのなら行きたいって思いますか?」
- 761 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/14(土) 22:55:13.65 ID:84spaLMfo
-
陽乃「あら。良い回答したら長野旅行プレゼントして貰えるの?」
杏「そういうわけではないですけど……」
陽乃「ふふふっ、冗談よ」
長野に行けるのなら長野に行きたいのか
救えるのなら救いたいのか。と、、杏は聞きたいのだろうと陽乃は苦笑する
濁したわけではないが
ついさっきはちゃんと答えなかったからだろう
陽乃は、自分が生き残ることを主としているけれど
だからといって、周りを見捨てられるわけではない。
長野に行くことが出来て、
そこで戦っている勇者を救えるのならば……と、考えないことはない。
陽乃「大社に、伝える?」
杏「伝えたところで、久遠さんのことは良く考えて貰えないと思います」
陽乃「そうよねぇ……」
1、バーテックス、叩きのめしたいかな?
2、行けるのなら行きたいわ。ここにいたって、ね?
3、勘違いされると困るのだけど……私、別に人助けしたいわけじゃないからね?
↓2
- 762 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/14(土) 22:56:48.30 ID:eApRcRd40
- 2
- 763 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/14(土) 22:57:06.06 ID:Bg+aW/L00
- 2
- 764 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/14(土) 23:09:17.38 ID:84spaLMfo
-
では短いですがここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから
- 765 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/14(土) 23:35:17.50 ID:Mzmr8n5XO
- 乙
うたのん達だけを助けるならまだしも諏訪の人達全員となるとなぁ…
- 766 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/15(日) 03:17:58.34 ID:9fEMO8NxO
- 乙
陽乃長野へ行くのか
- 767 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/15(日) 19:31:34.06 ID:Isg1Is6Go
- 遅くなりましたが、少しだけ
- 768 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/15(日) 19:32:01.45 ID:Isg1Is6Go
-
陽乃「行けるのなら行きたいわ。ここにいたって……ねぇ?」
杏「それは、そうかもしれません」
長野までの道のりは決して楽なものではない
辿り着いたとしても、そこでの生活は辛く苦しいものであることだろう
しかし、それがどのようなものであろうと、
ここで民衆に恨まれ、憎まれ、疎まれ
大社から敵視され、勇者と一触即発の状態でいるよりは
陽乃のことを知る人のいないであろう長野にいる方が、ずっといいはずだ
杏「久遠さん、長野に行かれるんですか?」
陽乃「ちょっと、考えたけど……」
陽乃はそう言って、苦笑する
陽乃「そうしたら、私絶対に見つからないじゃない? 大変な事になるわよね?」
杏「なりますね……でも、大社なら困らせても良かったと思います」
自分たちが困ることも分かってはいる
しかし、それを望むのならそうしてくれても良かったと……杏は思う
- 769 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/15(日) 19:34:41.30 ID:I7yD0N6kO
- きてたか
- 770 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/15(日) 20:28:38.36 ID:Isg1Is6Go
-
杏「捜索は大変になると思いますけど、仕方がありません」
陽乃「捜索だけじゃないでしょ……乃木さん達が手引きしたのかもしれないって話にまでなると思うわ」
杏「ひなたさんは大社預かり、若葉さんがリーダーから外されて拘束……でしょうか?」
それでも軽い方だろうか
最悪、指名手配されていたっておかしくはない。
もちろん、指名手配された場合、
陽乃が街に解き放たれたと言うことになるので、
民衆は激高するか血眼で陽乃を探し出そうとするか。
とにかく、良いことにはならない
杏「でも、久遠さんは自分のためを考えたほうが良かったと思います……」
陽乃「そう?」
杏「寄宿舎に戻る許可が出されたとしても、以前よりも厳しい監視が付くと思います」
勇者が行うのか
巫女が行うのか
もっと別の誰かが行うのかは分からないが
少なくとも、一人でいさせては貰えなくなるだろう
- 771 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/15(日) 21:11:31.46 ID:Isg1Is6Go
-
陽乃「私って、考えてみれば劇物指定の――」
杏「そんなことないです」
陽乃「そんなことあるでしょう? 私や貴女が思いたくないとしても」
少なくとも大社や、民意ではそうなっている
それは陽乃や杏がどう言おうと関係ない
杏の両親は快く迎え入れてくれているが、
その近隣の人々が快く思ってくれているとは限らない
杏「久遠さん、長野遠征、提案してみますか?」
陽乃「どうせ却下されるわ」
杏「それはあくまで、全員で良くという話だと思います」
杏はそう言うと、少しだけ考えて……眉を顰める
杏「久遠さん一人……あるいは二人、三人なら許可されるかもしれません」
陽乃「でもねぇ……」
杏「不安ですか?」
陽乃「長野に行くこと自体は問題ないけれど……」
陽乃は、母親の保護を頼んでいる
陽乃が遠征に行ったことで
母親の安全が保障されなくなる可能性が0とは言えない
- 772 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/15(日) 21:22:14.85 ID:Isg1Is6Go
-
陽乃「私、母がいるのよ……神社で想像はつくだろうけど……」
杏「巫女……ですか?」
杏の窺うような声に、陽乃は頷く
陽乃の母は巫女として大赦に与している
だとしても、久遠の人間であることに変わりはなく、
大社内でその名は伏せられて入るものの、
いつ、なにがあるのかは分かったものではない
杏「お母さんが心配で、ここを離れられないんですか?」
陽乃「ええ、そうなるわね」
杏「……大社が、いえ、大社は信じられない。ですよね」
大社に全幅の信頼を置くことができるのであれば、
何の躊躇もいらないだろうが、そうではない
大社もそれを抑止力としたいはず
であれば、下手なことをしないという信頼は置いても良いかもしれないけれど。
杏「でも、久遠さんの力は証明できていますよね?」
陽乃「乃木さん達には悪いことをしたと思ってるわ」
杏「でも、そのおかげで勇者でさえ止められない可能性が出てきました……それが自分たちに向くことを、大社は恐れているはずです」
- 773 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/15(日) 21:42:43.09 ID:Isg1Is6Go
-
陽乃の力が、かなり危険なものであることが証明された以上、
大社は陽乃の機嫌を大きく損ねるようなことは絶対に出来ないはず。と、杏は思う
それをしてしまったら、世界が崩壊する可能性さえあるからだ
杏「きっと、お母さんは大丈夫ですよ」
陽乃「……だと、良いけれど」
杏「人は、信じられませんか?」
陽乃「そんなこと……」
杏「助けても、助けても……悪魔だなんだって、石を投げられる。そんな相手を信じるなんて、神様でもしたくないと思います」
寧ろ神様だからこそ、
そんな人間は救うどころか、神罰を与えて処刑するのではないだろうか
そうしない陽乃は、神ではない
もちろん、悪魔でもない
杏「これから、頑張りますね」
陽乃「伊予島さん……」
杏「いつか、久遠さんに信頼して貰えるように……なんて」
口にしていたら怪しいですね。と、
杏は照れくさそうに笑みを浮かべた
- 774 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/15(日) 22:16:05.12 ID:Isg1Is6Go
-
√ 2018年 8月3日目 朝:伊予島家
03〜12 杏
37〜46 球子
51〜60 若葉
89〜97 友奈
↓1のコンマ
※それ以外は通常
- 775 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/15(日) 22:18:04.26 ID:K4CToh2JO
- あ
- 776 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/15(日) 22:21:27.54 ID:Isg1Is6Go
-
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
一日纏めは明日
- 777 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/15(日) 22:31:49.31 ID:K4CToh2JO
- 乙
今回の杏は陽乃さんにとってありがたい救世主だなぁ
そして二人の急接近でタマっち先輩との三角関係になるのだろうか
- 778 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/16(月) 02:00:06.95 ID:x2G0Ed4Mo
- 乙
タマっち先輩と絡みたかったな
- 779 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/16(月) 11:55:09.75 ID:Sb/+c5m+O
- 乙
ただただお母さんが心配だなあ
- 780 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/16(月) 21:46:20.60 ID:SjMINkM0o
-
遅くなりましたが、少しだけ
- 781 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/16(月) 21:47:40.86 ID:ByrYW4OJO
- よっしゃ
- 782 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/16(月) 22:00:18.53 ID:SjMINkM0o
- √ 2018年 8月3日目 朝:伊予島家
朝目を覚ますと、ちゃんとした天井が見える
カーテンに遮られた穏やかな陽射しが感じられて、
体を包む布団は柔らかで、
背中と腰を支えるベッドは程よい反発がある
陽乃「……朝、だわ」
朝なのはもちろん、家の中
ちゃんとした寝床
昨日が最悪だったが、それ以前もしばらくはまったく良い目覚めではなかったため、
陽乃は二度寝でもしてしまおうかと、目を瞑る
もちろん、自分の家でも部屋でもないため
流石に、本当に二度寝をするつもりはないが。
陽乃「ん……」
頭だけを傾けて、横を見る
床には杏と球子が並んで寝ていて、
まだ、静かに寝息を立てていた
- 783 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/16(月) 22:30:21.86 ID:SjMINkM0o
-
陽乃「監視はどうしたのかしらね……」
二人とも、しっかりと眠っている
寝たふりをしているのでなければ、
陽乃が起きても起きないという状況は非常にまずい
陽乃が本当に監視しなければいけない存在だった場合、逃亡されかねない
陽乃「貴女、何かした?」
『いいや、妾は何もしておらぬ』
陽乃「それでこの状況なの?」
『うむ』
陽乃「………」
勇者としての危機感が足りないのか
陽乃のことを信頼してくれているのか
後者ならばいいのかもしれないが
そうではないのだとしたら、聊か問題があるだろう
『何じゃ、小娘どもが戦力的に不安かや?』
陽乃「そんなことはないけど……信頼されているのかなって思っただけよ」
- 784 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/16(月) 22:58:34.26 ID:SjMINkM0o
-
陽乃「私が敵だったら、寝首をかくところだわ」
『ほう?』
陽乃「本当にはやらないわよ」
静かに仲良く寝ている球子と杏
平和を感じられるその光景を、陽乃は壊したいとは思わない
むしろ、守ってあげたいと思う
陽乃「私は別に、蚊帳の外だって良いのよ……」
もう、交わりたいとは思わない
誰かと親密になって、
その相手に裏切られるのなんてお断りだ
その人に、奇異の目を向けられるのなんて嫌だ
その人が、自分のせいで巻き込まれるのが嫌だ
だから……自分は一線の外でもいいと陽乃は思う
陽乃「だからって、犠牲になる気はないけど……」
『抜かせ』
陽乃「………」
九尾の鋭い一言に、陽乃は黙って目を瞑る
陽乃が本当にどう考えているかなど、九尾にはお見通しなのだ
1、ねぇ、貴女の力なら長野に行ける?
2、貴女、勇者のこと嫌い?
3、上里さんはどう?
↓1
- 785 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/16(月) 22:59:44.99 ID:ks7CJDOX0
- 1
- 786 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/16(月) 23:06:50.92 ID:SjMINkM0o
-
では短いですがここまでとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から
- 787 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/16(月) 23:26:21.24 ID:x2G0Ed4Mo
- あれ、一日まとめは?
なんにせよ乙
- 788 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/16(月) 23:44:41.22 ID:IK8b6REyO
- 乙
陽乃さんもすっかりトラウマだらけだな…
せめて杏とだけでも信頼できるようになるといいな
- 789 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/16(月) 23:47:21.27 ID:0lyLzTU8O
- 乙
1日まとめ忘れてるな時間も遅いしお疲れそう
- 790 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/17(火) 02:14:25.64 ID:b6OfV644O
- 乙
こっちでのこといろいろ解決しないまま長野に行くのも怖いな
- 791 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/18(水) 22:16:11.26 ID:hac6mYwzo
- 昨日できなかったので、本日は少しだけ
- 792 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/18(水) 22:18:38.70 ID:VLf3ufUSO
- やったぜ
後一日のまとめも
- 793 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/18(水) 22:43:51.18 ID:hac6mYwzo
- 1日のまとめ
・ 乃木若葉 : 交流有(再会、九尾、寄宿舎になら、杏の家)
・上里ひなた : 交流無()
・ 高嶋友奈 : 交流有(再会、九尾、寄宿舎になら、杏の家)
・ 土居球子 : 交流有(再会、九尾、寄宿舎になら、杏の家、休む)
・ 伊予島杏 : 交流有(再会、九尾、寄宿舎になら、杏の家、休む、長野)
・ 郡千景 : 交流有(再会、九尾、寄宿舎になら、杏の家)
・ 九尾 : 交流有(姿を晒す)
√ 2018/08/2 まとめ
乃木若葉との絆 56→58(普通)
上里ひなたとの絆 56→56(普通)
高嶋友奈との絆 49→51(普通)
土居球子との絆 38→40(普通)
伊予島杏との絆 43→46(普通)
郡千景との絆 21→21(険悪)
九尾との絆 61→61(普通)
- 794 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/18(水) 23:38:04.77 ID:hac6mYwzo
-
陽乃「ねぇ、貴女の力なら長野に行ける?」
『敵が現れた場合には主様が戦う必要はあるが、可か不可で言えば可じゃな』
陽乃「瞬間移動とか出来ない?」
『阿呆か主様は』
陽乃「無理なのねやっぱり」
『当たり前じゃろう』
九尾は当たり前のことを問う陽乃に呆れたように零す
もちろん、陽乃も九尾がそんな特殊な力を持っているとは思っていない
ただ、九尾の力だけで四国から長野までの距離を踏破できるのかが気になったのだ
九尾の力は強い
本気であれば若葉達勇者を一蹴できるだけの力を持っている
しかしその分陽乃への影響は大きく、
長く力を使えば使うほど、陽乃は体を蝕まれていくことになる
- 795 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/19(木) 00:25:41.05 ID:hasPON74o
-
それを避けるためには、道中で一時的にでも力を解除するか
敵が出てくるまでは、本当に生身でいる必要がある
後者ならばともかく前者である場合、陽乃は酷く疲弊することになるだろう
陽乃「無事に辿り着ける?」
『ふむ……戦闘での消費がない前提になるであろうな』
無論、道中に一度も先頭をしないと言うのは不可能である可能性が高く、
その場合は戦闘の規模も影響するだろうが
単独で行く場合、命の保証は出来ないと考えておくべきだと、九尾は思っている
特に、陽乃の場合は。
『……一人で行くならば、死ぬと思うておく方が良かろう』
陽乃「あら、私がそんなに弱いって言いたいの?」
『主様は弱い人間じゃろう。己に仇なす有象無象すら切り捨てられぬのじゃからな』
陽乃「………」
『救いを求めている人間がいたとして、主馬は放っておけぬであろう?』
たとえ、そこがバーテックスに塗れていようと
生きている人間がいるのだとしたら
陽乃は素通りできないと、九尾は見ている
それが出来ないのであれば、諏訪まで一度も戦わないと言うのは不可能だろうし
無事に……というのも諸刃の剣である陽乃の場合は厳しい
- 796 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/19(木) 00:31:25.91 ID:hasPON74o
-
陽乃「……そう」
『ゆくつもりかや?』
陽乃「さぁ?」
無事に辿り着ける保障があるならばともかく、
そうではないのだとしたら、陽乃は行かないべきだ
しかし、昨夜杏に言ったように、
陽乃はここにいるよりも、諏訪に行ったほうが精神的には楽だと言うのがある
大社だって、唯一の砦の中に猛毒があるよりは
外の世界に出ていってくれた方が、言葉にはしないだろうけれど嬉しいだろう
それによって、諏訪が延命出来たり
もう一人の優秀な勇者と巫女が救われるのなら、なおさら。
千景だって、きっと喜ぶだろう
そして、どうか野垂れ死んでくれと願うことだろう
陽乃「……私、ここに居ない方が良いのは事実なのよね」
『うむ……そうであろうな』
- 797 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/19(木) 00:48:44.66 ID:hasPON74o
-
杏や若葉達といった
陽乃に好意的な人間も皆無ではないけれど、
しかしながら、望まれていないと言うのが、民意というものになってしまうだろう
その悪いイメージを払しょくしたいのであれば、
それもやはり昨日話したように、何らかの功績を立てるべきで
諏訪の勇者と巫女を含めた人々を救出してくるというのは、
これ以上ないほどに素晴らしいものであると言える
しかし……それが一人で可能かというと、微妙だった。
もちろん、
陽乃が往復することで―力の影響で―死にかけるというのを考慮しなければ、
どうにかできる可能性はあるが。
陽乃「……貴女は、私が行くって言ったら反対する?」
『ここで朽ちるよりは、善き選択であろう』
陽乃「そう……」
行くと言う選択も、悪くはないかもしれない
陽乃はそう考えながら……ベッドの横
並んで眠る二人を見つめる
陽乃が諏訪に向かうと言った時、勇者達はどんな反応を見せるのだろうか
- 798 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/19(木) 00:49:32.31 ID:hasPON74o
-
では短いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 799 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/19(木) 01:03:19.72 ID:FtvS/FdHO
- 乙
一人で難しいなら何人かついてきてくれないかなあ
厳しいか
- 800 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/19(木) 06:06:16.73 ID:i1TW69BaO
- 乙
とにもかくにも一旦若葉たちと相談してみたいな
あと他の子は絆が改善したのに千景だけ一切動かないとは…
- 801 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/19(木) 09:55:49.03 ID:7mJ+MJxj0
- 憎悪というものはその人の価値観がひっくり返るような相当大きな出来事がないと晴れないものだ
- 802 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/20(金) 22:34:32.73 ID:QyGYdGcEO
- 今日もお休みだろうか…
急に休載率が高くなってきて少し心配だな
- 803 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/20(金) 23:33:26.45 ID:G0MRFEzTo
-
遅くなりましたが、少しだけ
- 804 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/20(金) 23:36:09.21 ID:xWokTVZgO
- かもーん
- 805 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/20(金) 23:43:37.49 ID:G0MRFEzTo
-
陽乃「貴女はどこまでもついてきてくれるのよね?」
『そういう契りであろう』
陽乃「……貴女が言うと、ちょっと怪しい」
陽乃はそう言って笑うと
ゆっくりと瞼が上がっていく杏へと目を向けて、軽く手を振る
寝ぼけているであろう杏の目は陽乃へと向かわず
少し時間が経ってからようやく
杏の目が閉じるかどうかの迷いから解放されて、陽乃を見つける
陽乃「……おはよう。体は大丈夫?」
杏「久遠さん……?」
陽乃「ええ、状況……分かってるかしら?」
杏「ぁ……はい……」
まだ覚醒しきっていなかった杏は、ようやく頭が働き始めたのだろう
陽乃から目を背けると
すぐ隣でまだ眠っている球子を見る
杏「おはようございます、久遠さん」
陽乃「ええ、おはよう」
- 806 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/20(金) 23:57:23.32 ID:G0MRFEzTo
-
杏「久遠さんは、朝早いんですね……」
陽乃「早くはないわ……昔に比べたら全然遅い」
杏「そうなんですか?」
陽乃「昔はあと2、3時間前に起きてた」
陽乃は神社の娘として、
ある程度の手伝いもやっていたため、
早ければ4時ごろには起きていた
今は6時頃が基本なので
陽乃個人としては、ずいぶん怠惰になったものだと……
少しだけ思うところがある。
杏「……出ていかなかったんですね」
陽乃「あら、どうして?」
杏「昨日、あんな話をした後だったので、もしかしたら……なんて」
陽乃が長野に向かってこっそりとここを出ていくのではないか。と
杏は少しだけ考えていたのだ
杏やその周囲の人が優しかろうと、
それ以外の人々がそうではないのなら、やはり……陽乃が出ていく理由になるからだ
- 807 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/21(土) 00:09:38.11 ID:I3EJprACo
-
陽乃「そんなことして……メリットがないわ」
まだ杏たちに見つかっていない状態ならばいざ知らず
今はもう、杏たちに発見され、
杏の願いを聞いて、伊予島家にまで来てしまっている
若葉達にも交渉を持ちかけているし、
この状況で逃げ出したとなれば、
今はまだ悪くない関係ですら、悪化させることになってしまう
運良く長野の人々を助けられたとしても、
陽乃には戻ってくる場所なんてなくなってしまうことだろう
陽乃「行くとしても、話がついてからになると思うわ」
杏「やっぱり……行かれるんですか?」
陽乃「どうかしらね……」
杏「あの……もし、行かれるのなら……」
杏はそう言って
少し躊躇いがちに……続きを口にする
杏「私も一緒に連れて行ってもらえませんか?」
1、駄目よ。遊びじゃないの
2、貴女……戦えないでしょう?
3、あら……命を張って私の味方だって証明でもしたいの?
4、まだ行くか決めたわけでもないんだから、早計だわ
↓1
- 808 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/21(土) 00:13:33.33 ID:ohJqSh/gO
- 3
- 809 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/21(土) 00:17:14.07 ID:I3EJprACo
-
では短いですがここまでとさせていただきます。
明日は可能であれば通常時間から
- 810 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/21(土) 00:27:39.30 ID:ohJqSh/gO
- 乙
なんという杏の押しの強さよ
この杏なら陽乃さんの心の支えになってくれるかも
- 811 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/21(土) 01:15:25.06 ID:XZm1iBHHo
- 乙
杏が2週目の樹ちゃんっぽくなってきてる感
- 812 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/21(土) 04:44:47.04 ID:JcxiC6i+0
- 乙
ついて来てくれるならこの上なく心強いなあ
- 813 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2020/11/21(土) 19:33:40.33 ID:n/4yFK0x0
- 2人とも理想のために自己犠牲しちゃう気がするので、ストッパーが1人欲しい
- 814 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/21(土) 22:58:50.70 ID:I3EJprACo
- 遅くなりましたが、少しだけ
- 815 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/21(土) 23:02:14.77 ID:I3EJprACo
-
陽乃「あら……命を張って私の味方だって証明でもしたいの?」
杏「いえっ、そんな……そんなつもりは……」
陽乃「……そうだろうと、そうでなかろうと……私は、貴女を護ってあげることなんて出来ないわ」
一緒に連れて行って欲しいと言う気持ちは嬉しい
ありがたいって思う
もちろん、陽乃は守らないと言いながらも守るだろう
守れないと言いながら、可能な限り守ろうとするだろう
けれど、陽乃は杏を絶対に守ってあげられるなんて自負はない
陽乃「最初の襲来とは、わけが違うのよ」
杏「それは分かっています……でも、だったら、久遠さんだって同じはずです」
陽乃の実力はまだまだ未知数で
杏は、自分が想像しているよりもずっと強い力だと考えている
けれど、だとしても
敵が無数にいるであろう外の世界は、陽乃であっても決して楽ではないはずで。
杏は、そんな場所に一人で行かせたくないのだ
- 816 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/21(土) 23:02:15.05 ID:A8xUmzA7O
- おk
- 817 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/21(土) 23:13:31.99 ID:I3EJprACo
-
杏「命を張って味方だって証明したいだなんて思ってはいません」
けれど、戦いは命懸けなのは間違いではないし、
そう考えれば、命懸けで味方だと証明したいと言うのも間違いではないのかもしれないと思う
しかし、杏にはそんな思惑はない
杏「久遠さんの力になりたいんです」
陽乃「伊予島さん……」
杏「それが結果的に弾除けでしかないというのなら……久遠さんの言ってることが正しいかもしれません」
でも。と、杏は首を振る
杏「私は久遠さんに、味方だと思って貰うためにこの命を捨てる気はありません」
それは、悪手だ
間違っても取ってはならない手段の一つ
禁忌だと言っても良い
そうなれば、球子は激怒するだろう
そうなれば、千景は「やっぱり」と口にする。
自分の死が、陽乃の孤立を加速させると分かり切っている以上
杏は、絶対にそうならないようにしなければならない
杏「私は……久遠さんにいなくなってほしくないんです」
- 818 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/21(土) 23:21:43.82 ID:I3EJprACo
-
杏「久遠さんが長野にたどり着く可能性を高めたい。そして、こっちに戻ってこられる可能性を高めたいんです」
陽乃「本気?」
杏「……はい」
陽乃が単独で長野にたどり着けたとしても、
勇者と巫女以外は置き去りにしてくるなんて非道な真似はまず不可能だと杏は見ている
どれだけ悪い噂が流れていようと、
口では厳しいことを言ったりしているとしても
陽乃は、目の前にある命から目を背けられる人間ではないと思っているからだ
であれば、陽乃は無理してでも全員を連れ帰ろうとするだろう
死ぬ気はない
生きていたいと言いつつも、
誰かを護るために命を投げ出せてしまうであろう陽乃を、
杏は、たった一人で行かせたくはないと思っているし、
今は非力な勇者でしかないとしても、
陽乃が生還する可能性をわずかにでも高められるのであれば
杏は同行したいと思っている
杏「一人でなんて……無茶はしないでください」
- 819 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/21(土) 23:30:05.25 ID:I3EJprACo
-
杏「今まではともかく……今は、力になってくれる勇者がいるって、少しだけでも思ってください」
信じて欲しいとは言わない
頼りにしてくれとも……言いたいけれど言えない
しかし、それでも
陽乃と同じような志を持っている勇者がいる
陽乃とは違うとしても、
命を救いたいと思っている人はいるのだと……思って欲しい
陽乃から見れば
それらは頼りなく、足手纏いでしかないのかもしれないが
だとしても……少なからず力になれるはずなのだ
杏「交渉、してみませんか?」
陽乃「交渉って……大社に? 無理よ。許可されるはずがないわ」
杏「全員は不可能でも、半分……久遠さんを含めて3人程度なら、許可が出るかもしれません」
陽乃「私は大社にとっての忌み子のようなものなのよ? あり得ないわ」
大社のみんなとは言わずとも、
一部は【陽乃が勇者を殺して帰ってくる】と思うかもしれない
そう思わずとも、一人でも死なせたりすれば……そうだったのだと思われてしまう
陽乃「……無理よ。危険すぎる。私一人で行く方がマシだわ」
- 820 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/21(土) 23:31:11.10 ID:I3EJprACo
-
では短いですがここまでとさせていただきます
明日は可能であれば少し早い時間から
- 821 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/21(土) 23:37:09.37 ID:A8xUmzA7O
- 乙
これ杏たちと合流前に長野に行ってたら陽乃さんが大変なことになってたんだろうなぁ…
- 822 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/21(土) 23:39:13.81 ID:l+wEeJVpO
- 乙
二人も抜けて四国が大丈夫なんだろうか
- 823 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2020/11/22(日) 17:39:24.78 ID:zkM+ifLn0
- 大社視点だと、長野を切捨てて天乃も巻き添えにするべきで
同行を許可するとは思えんよな
- 824 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/22(日) 21:13:32.20 ID:s8BTUBtSo
-
遅くなりましたが、少しだけ
- 825 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/22(日) 21:13:55.61 ID:qf6xsdLxO
- よしきた
- 826 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/22(日) 21:20:17.22 ID:s8BTUBtSo
-
杏「ですが……」
陽乃「そもそも、言った通り私は忌み子みたいなものなのよ? 他の勇者を同行させるとは思えないわ」
杏「監視目的という可能性は?」
陽乃「街中への捜索とかならともかく、四国外へ出ていく私を監視させるメリットがないでしょう?」
外に敵がおらず、
安全かつ確実に陽乃を追跡出るならばいざ知らず、
貴重な人員が消耗するかもしれない監視任務になど、つかせるとは思えない
陽乃「私が行くと言うのなら、勝手に行けと言われるかもしれないけれど……伊予島さん達は止められるはずよ」
杏「……やっぱり、そうなってしまうのでしょうか」
陽乃「十中八九」
杏「あの……」
陽乃「言っておくけれど……こっそりついて行くのは無しよ」
杏「ですよね……すみません」
- 827 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/22(日) 22:17:21.04 ID:s8BTUBtSo
-
陽乃「私のことを考えてくれているのは良いのだけど……命を捨てる真似は許容できないわね」
許可を得ていない、強引な手法ということは
陽乃と杏の二人きりになる可能性もあると言うことだ
なぜなら、球子は確実に止めるからだ
であれば、命を捨てるに等しい
陽乃「……大社は長野を切り捨てるつもりなのかもしれないわ」
杏「久遠さんっ!」
陽乃「あら……貴女は言わないでくれるでしょう?」
杏「それはそうですが……あまり言わない方が良いと思います」
その可能性は十分に考えられることだけれど
しかし、だからといってそれを口にしてしまうのは問題がある
大社からの不評を買うのは
陽乃にとってはもはや些細なことかもしれないが、
より面倒なことにならないためにも、避けるべきだと杏は思う
杏「……それが、事実だとしてもです」
陽乃「……そうね」
- 828 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/22(日) 22:37:58.71 ID:s8BTUBtSo
-
√ 2018年 8月3日目 昼:伊予島家
03〜12 球子
37〜46 若葉
51〜60 友奈
89〜97 杏
↓1のコンマ
※それ以外は通常
- 829 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/22(日) 22:41:56.58 ID:/w/dVnGyO
- あ
- 830 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/22(日) 23:14:20.61 ID:s8BTUBtSo
- √ 2018年 8月3日目 昼:伊予島家
陽乃は、一先ず伊予島家に泊めて貰うと言うことになっているが、
一泊だけになるとは……限らない
というのも、
陽乃が出した要求である、寄宿舎に戻れるなら。という条件を飲むかどうかの答えが出るまでは下手に移動は出来ないからだ
球子は街に出るくらいなら良いんじゃないかと言うけれど、そんなわけもなく
暇を持て余していたところに、一本の電話がかかってきた
伊予島家のものではなく、杏のスマホへの着信
送信元は、高嶋さん。と表示されていた
杏「……友奈さん?」
杏は相手が友奈であるかを確認すると、
スピーカーにしても問題ないかを確認してから、陽乃達にも聞こえるように切り替える
友奈『みんな、まだアンちゃんのおうちにいるの?』
球子「いるぞ〜」
友奈『そっか、良かった……久遠さんは大丈夫ですか?』
陽乃「九尾が返事しているとは、考えないわけ?」
友奈『あははっ……電話じゃ確かめることはできませんし』
なにより。と、友奈は笑いながら言う
友奈『信じたいって……思っていたらいけませんか?』
- 831 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/22(日) 23:17:09.22 ID:s8BTUBtSo
-
では短いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば少し早い時間から
- 832 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/22(日) 23:36:45.89 ID:qf6xsdLxO
- 乙
杏と同じく陽乃さんの味方してくれる高嶋さん
それを殴り飛ばした九尾は一度ごめんなさいしないとだな
- 833 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/23(月) 00:52:42.12 ID:ukMSKmnQO
- 乙
長野行き誰がついてくるのかもドキドキするな
- 834 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/23(月) 20:39:31.86 ID:ltr8F7yDo
-
遅くなりましたが、少しだけ
- 835 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/23(月) 21:01:26.03 ID:ltr8F7yDo
-
陽乃「あら……優しい心構えね」
友奈『その方が良いと思いませんか?』
陽乃「私は、思わないわ」
杏「久遠さん……」
信じるか疑うか
相手の真偽がどちらにも考えられるならば
陽乃は友奈とは正反対に信じないと即答する
信じたところで……
あるいは、一度は信じあえたとしても
結局裏切られて培った分の傷を負わされるのであれば、
そもそも信じないのが一番だと陽乃は苦笑する
その経験があるからこそ、
陽乃はそもそも信じたくないと言う
- 836 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/23(月) 21:07:28.61 ID:QTUdcHCuO
- 陽乃さん…
- 837 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/23(月) 22:02:52.61 ID:ltr8F7yDo
-
友奈『……そうですか』
残念そうに零した友奈は、
少しばかり沈黙して……ふと、ため息をついたのがスマホから聞こえてくる
いつも明るく気遣いの出来る友奈でも、
陽乃の拒絶にはため息も零れてしまうのだろう
球子「友奈ー疲れてるのか?」
友奈『ううん、大丈夫だよタマちゃん……私より、若葉ちゃんかな』
杏「若葉さん……やっぱり、説得は……」
友奈『うん……上手くいっていないみたいなんだよね』
陽乃の条件は、今までのように寄宿舎で暮らさせて貰うと言うものだ
一言で言えるものだし、
以前と変わらないという点ではとても簡単な話に聞こえるが、
大社からしてみれば、
貴重な戦力を殺しかけた危険人物を
再度、貴重な戦力である勇者達のそばに置くと言うことになる
それは、
とても簡単だがとても許容できることではない
しかしながら、拒めば陽乃は消えていなくなるかもしれない
それを悩みに悩んでいる
そして悩み続ける間、ひなたは大社の下にいなければならない
- 838 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/23(月) 22:45:16.82 ID:ltr8F7yDo
-
友奈『若葉ちゃんがお願いしてるんだけど……勇者が殺される可能性があるっていう話でね』
杏「若葉さんは殺すはずがないって言っているんですか?」
陽乃「そんなこと言って、誰が信じてくれるのよ」
球子「だな。タマ達がどう言ったって大社が信じるわけがない」
友奈『タマちゃんの言ってる通りみたいなんだよね……』
杏「大社は逆に要求してきているんじゃないですか?」
友奈『………』
杏の言葉に、友奈は黙り込む。
事実だ。
大社は陽乃の要求を呑むことなく、
別の案を提示している
もちろん、若葉がそれを呑まないからこそ、
大社もどうにもできていない
友奈『大社からは、久遠さんを病院に戻さなければひなちゃんを戻せないって言われているみたいなんだよね』
杏「えっ……」
友奈『久遠さん……かなり、難しいです』
陽乃「それはそうでしょう。当然だわ」
1、乃木さんに代わって貰えない?
2、いいわ。戻ってあげる
3、じゃぁ、長野に行かせて貰えるか聞いてくれない?
4、嫌よ。私は寄宿舎に戻れないならお断りよ
5、上里さんには九尾の加護があるって伝えてあげて。私は……止めないわ
↓2
- 839 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/23(月) 22:46:48.26 ID:QTUdcHCuO
- 1
- 840 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/23(月) 22:47:29.36 ID:LgjLkupL0
- 1
- 841 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/23(月) 22:48:45.69 ID:ltr8F7yDo
-
では短いですがここまでとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から
- 842 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/23(月) 22:49:47.24 ID:D6qKv/K2O
- 3
- 843 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/23(月) 23:05:10.27 ID:QTUdcHCuO
- 乙
ひなたを人質に取るとか大社とことん悪手だなぁ
板挟みの若葉のことも心配だ…
- 844 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/24(火) 08:03:24.72 ID:bNf8ZgLVO
- 乙
九尾がキレそう
- 845 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/25(水) 22:08:45.42 ID:10g8lOd2o
-
遅くなりましたが、少しだけ
- 846 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/25(水) 22:18:34.74 ID:3Fl3Y+iLO
- やったぜ
- 847 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/25(水) 23:08:22.44 ID:10g8lOd2o
-
陽乃「ねぇ、高嶋さん」
友奈『はい?』
陽乃「そこに、乃木さんはいる? 変わって貰いたいんだけど」
友奈『若葉ちゃんは……あ、ちょっと待っててください』
ベッドが軋む音が聞こえて、
強引に足を突っ込まれた靴の底が擦れる音と共に、扉が開く音が響き、
軽い足音が続いて……扉が叩かれるのが聞こえた
友奈『若葉ちゃーん!』
球子「……寝て……は、ないか?」
陽「同じ部屋にいないなら別にいいのだけど……」
友奈『久遠さんがお話したいって』
若葉『何!?』
電話の奥で誰かが倒れる音がして
一目散に駆け込み、扉が開いて……
若葉『今、繋がっているのか?』
陽乃「乃木さん、お疲れ様」
若葉『久遠さん……』
陽乃「話は聞いているわ」
- 848 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/25(水) 23:40:49.64 ID:10g8lOd2o
-
若葉『友奈……』
友奈『ごめんね……でも、言うべきだと思って』
若葉『……久遠さん、話を聞いているならそういうことだ』
陽乃「上里さんを大社預かりにしておくのは、聊か問題が大きいわね……」
ひなたは巫女としての能力が非常に高い
陽乃を戻そうとしない若葉への当てつけなどではなく、
単純に、
危険人物の隣に、力のない重要人物を置いておくわけにはいかないというものだろう
ただ、それは九尾が気に入らない。
上里ひなたは、若葉の幼馴染であるのと同時に
九尾の寵愛を受ける人物でもある
ゆえに、問題がある
陽乃「ただ、それをどうにかするためには私は寄宿舎に戻して貰えない」
若葉『そのようだ……』
- 849 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/25(水) 23:48:59.02 ID:10g8lOd2o
-
陽乃「乃木さん、別案は出しているの?」
若葉『私や友奈が必ず傍にいて目を光らせておく……とは言ったが、無駄だった』
陽乃「病院に連れ戻す以外は認められないと」
若葉『大社は久遠さんの力を完全に畏怖している……あぁ、友奈。あとで電話は返す。部屋に戻ってくれ』
友奈『え、でも……』
若葉『二人で話したいんだ』
友奈『……うん。分かった』
友奈の返事が返ると、足音が聞こえてドアの締まる音が二回
1つは友奈で1つは若葉だろう
若葉『そっちの二人も頼む』
球子「何言ってるんだ若葉! そん――」
杏「良いから行くよ。タマっち先輩」
球子「こらあんず! 放っ……」
杏に引き摺られるようにして球子がいなくなり、
部屋の中に残された陽乃はスマホのスピーカーを解除すると、
耳元にまでもっていく
陽乃「内緒話なんて……物騒ね」
- 850 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/26(木) 00:09:32.01 ID:E9Erd7oRo
-
若葉『何も物騒な話じゃないんだ……ただ、聞かれると困る』
陽乃「……というと?」
若葉『久遠さん、九尾の力の一端を私たちに見せてくれただろう?』
陽乃「ええ」
若葉『その情報……私達は大社に伝えないようにしておこうと思ったんだが……』
陽乃「郡さんが伝えたんでしょう? 隠しておく義理がないもの」
若葉『……っ』
陽乃「想定の範囲内というか……仕方がないことだわ」
若葉達に力を見せた時点で、
陽乃は九尾の持っているその力が大社に伝わることも覚悟していたし
九尾だって、
大社にその情報が向かうことも分かっていて、応じたのだ
陽乃「……そのせいで、大社がより警戒を強めたってわけね」
若葉『ああ、十中八九それが歯止めになった』
陽乃「郡さんを責める必要はないわよ? 勇者としての義務を果たしただけだわ」
若葉『そうか……すまない』
陽乃「貴女が謝る必要はないのだけど……」
若葉『それで……これはひなたからなんだが』
若葉はそう言うと、
気を引き締めるように……ため息をつく
若葉『私には構わず、久遠さんを寄宿舎に戻して欲しい。だそうだ』
- 851 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/26(木) 00:14:51.51 ID:E9Erd7oRo
-
では短いですがここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 852 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/26(木) 00:21:35.66 ID:2bInUH4hO
- 乙
勇者部の時と違って千景に嫌われすぎてみんなで一致団結ができないのは辛いな…
- 853 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/26(木) 00:24:40.09 ID:ECNRIAQ4O
- 乙
まあ嫌われるのもしょうがないよなあんなことあった後だし……
- 854 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/26(木) 00:44:32.85 ID:k+IJy6Kp0
- まあ原作からして大団円ってわけでもないからなぁ
- 855 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/26(木) 01:59:06.43 ID:Dd/GDsME0
- こうなってくるといよいよ長野向かうよりほかないのかなあ
不安だし杏だけでも付いてきてほしい
- 856 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/27(金) 22:54:03.64 ID:J6Dnwb/ro
-
遅くなりましたが、少しだけ
- 857 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/27(金) 22:59:20.41 ID:V7OSEtgHo
- はいよー
- 858 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/27(金) 22:59:26.29 ID:+SeUFUbiO
- かもーん
- 859 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/28(土) 00:14:30.88 ID:3qCvChvqo
-
陽乃「上里さん……」
若葉『ひなたはそういうやつなんだ』
自己犠牲すればいいと考えているわけではないが、
しかし、それで陽乃のことを救い、
それが若葉の為になるのであれば……ひなたは大社預かりになることを受け入れる
たとえその結果みんなに会えなくなるのだとしてもだ
陽乃「悪いけれど、それは駄目だわ」
若葉『……いいのか?』
陽乃「ええ、それでいいわ」
若葉も、酷く疲れが感じられる
陽乃のこと、ひなたのこと、千景のこと、大社のこと
考えるべきことが多くて、手いっぱいなのだろう
ひなたを若葉から奪うのは得策ではない
もちろん、九尾からしてもダメだ
- 860 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/28(土) 02:13:15.79 ID:3qCvChvqo
-
若葉『しかし……ならどうする』
陽乃「そうねぇ……」
若葉は、陽乃に敬語を使うことも忘れるほど、悩んでいる
陽乃としては別にそれでもいいので、
それについてとやかく言うつもりはないが
それほどに追い詰められているというのは……無視できない
陽乃「結論、私と上里さんを一緒には出来ないということね」
若葉『端的に言ってしまえばそうなる』
陽乃「………」
陽乃が寄宿舎に戻るのなら、ひなたは解放されない
陽乃の行方がつかめない状態でも、ひなたは解放されない
陽乃が大社預かりでなければ、ひなたは解放されない
若葉を従える目的と、優秀な巫女を守る目的
大社は、ひなたを護るという名目で行動しているが……結局
両方満たせる良い判断だ。と、言うべきだろうか
- 861 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/28(土) 02:55:42.28 ID:3qCvChvqo
-
もちろん、それは褒めているのではなく皮肉だ
大社が実際に若葉を押さえるのは二の次と考えて
本当にひなたの保護だけが目的であったのだとしても……皮肉だ。
さて……どうしたらいいのだろうか
陽乃が大社預かりに戻るのが、大社にとってのベスト
だが、陽乃にとってはそれは最悪の一手
あんな息苦しい生活はお断りだ
だから……ひなたを諦めるか
ひなたを返さなければ、神樹様を枯らせるとでも脅すか
それとも……
考えれば、手はある
しかし、
ひなたを返して貰った上で陽乃が望んだ生活をするための手は
大社を今まで以上に脅す必要がある
それは、あまりいい方法とは言えない
- 862 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/28(土) 02:58:00.00 ID:3qCvChvqo
-
では短いですがここまでとさせていただきます
明日は可能であれば少し早い時間から
- 863 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/28(土) 06:09:10.08 ID:tzt6cJ6RO
- 乙
そのまま長野に行ってもひなたは捕らわれの身のままなのか…
これは困ったな
- 864 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/28(土) 11:36:52.51 ID:EPm+s89Z0
- 乙
所在不明だと困るってことだから大社に長野行きますって伝えれば大丈夫なんじゃね
- 865 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/28(土) 23:40:41.58 ID:3qCvChvqo
- すみませんが本日はお休みとさせていただきます。
明日は、出来る限りお昼ごろから
- 866 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/28(土) 23:48:29.16 ID:vFJU+aB2O
- 連絡乙です
多忙なのかここのところ急に投稿ペースが落ちてきて心配だけど楽しみに待ってます
- 867 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/29(日) 01:52:44.75 ID:CTtl/PXdO
- 乙
いま話が動き始めて面白いところになって来たので毎回楽しみに待ってます
- 868 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/29(日) 20:55:47.68 ID:EvNFADcEo
-
遅くなってしまいましたが、少しずつ
- 869 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/29(日) 20:58:17.11 ID:i+mjZ4k5O
- おっしゃ
- 870 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/29(日) 21:15:40.23 ID:EvNFADcEo
-
若葉『私は……可能なら避けたいが、ひなたを大社預かりにして久遠さんを呼び戻そうと考えていた』
ひなたもそれを望んでいるし、
最善の策ではないにしても、妥協案の一つとして絶対に選べないものでもないと考えていたからだ
しかし、それを強行するのは陽乃の望むところではない可能性も考慮して躊躇っていた若葉は
それを完全に却下された今、打つ手はないと言っても良い
もちろん、反旗を翻してやろうか。という脅しも使えなくはないが
若葉達に使えるものではない。
若葉『だから……久遠さん、寄宿舎かひなた。どちらかを諦めて貰うことは出来ないだろうか……』
たとえ寄宿舎でなくとも、
最低限の自由は保障して貰うつもりだと、若葉は苦しそうに言う。
若葉だって、みんなでまた寄宿舎に……と、考えていただろうから。
1、そうねぇ……なら、寄宿舎を諦めるわ
2、上里さんが、望んでるなら
3、ねぇ……私、長野に行っても良いかしら?
↓2
- 871 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/29(日) 21:23:15.59 ID:i+mjZ4k5O
- 2
- 872 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/29(日) 21:25:10.44 ID:WbJSUYW60
- 3
- 873 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/29(日) 22:09:38.56 ID:EvNFADcEo
-
陽乃は少し考えてから……口を開く
陽乃「ねぇ……私、長野に行っても良いかしら?」
若葉『なにっ!?』
陽乃「っ……長野よ。長野……白鳥さんのいるところ」
若葉『そ、それは分かっているっ!』
急激に近く、大きくなった若葉の声から逃れるように、陽乃はスマホを離す。
突拍子もないことを言ったつもりはないけれど、
若葉にとっては想定外だったのかもしれないと……息をつく
陽乃「だめ?」
若葉『それは、単独で……という話か?』
陽乃「人員を他にも出して貰えるのならそれが一番だとは思うけれど、難しいんじゃない?」
若葉『正直、それに関しては久遠さんを寄宿舎に戻す以上に難色を示すと思う』
若葉はそう言って、ただし。と付け加えた
若葉『久遠さん単独でという話でなら……大社は要求を呑んでくれる可能性がある』
- 874 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/29(日) 23:08:32.78 ID:EvNFADcEo
-
陽乃「そうなの?」
若葉『これは邪推というか……内密の話でお願いしたいのだが……』
若葉はそう前置きして
若葉『大社は、久遠さんを長野に派遣することで体のいい厄介払いが出来ると考えるかもしれない』
陽乃「それはまた……」
状況から察するに、
悪く言えば長野は捨て駒であり、
ここ、四国本陣の準備が整うまでの必要な犠牲と考えられていると考えられる。
もしそうであるならば、
そこに陽乃が向かうことで時間稼ぎが延長できるし
道中で終わり辿り着けなかったとしても、敵の数を大幅に減らし
今後の負担を軽くしてくれる上に……勇者や神樹様の脅威の一つが消えることになるからだ。
若葉『反対に、同行者が容認されない理由は言わずもがなだろう』
陽乃「まぁねぇ……最悪、私が殺す可能性もあるものね」
若葉『私達はそんなことしないと確信しているが、大社は信じないだろうからな……』
- 875 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/29(日) 23:13:15.63 ID:EvNFADcEo
-
若葉の残念そうな声が尻すぼみ気味に消えていき、
溜息が零れたのが電話口から聞こえてくる
やはり、若葉もつかれているのだろう
若葉『長野への遠征、本気か?』
陽乃「ええ」
若葉『………』
電話は繋がっているものの、
向こうからの音が聞こえなくなる
考えに考えているであろう若葉は、しばらくしてから「久遠さん」と呼びかけてきた
陽乃「なに?」
若葉『大社に長野遠征を要望として出すのは構わない』
陽乃「何か条件があるの?」
若葉『単独でしか許可が出なかった場合……行くのは諦めて貰えないだろうか?』
- 876 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/29(日) 23:20:54.23 ID:EvNFADcEo
-
今でも十分に陽乃の状況が詰んでいるのは若葉も知っているだろう
その苦肉の策として長野に行きたいと言っていることも
若葉は理解しているだろう。
けれど、それでも若葉は単独で長野に行くことは認めたくなかった。
若葉『久遠さんの力は信頼している……だが、それでも絶対ではない』
若葉や、友奈
他の勇者メンバーが単独で行くのに比べたら、その生存率ははるかに高いはずだ
しかし、だとしても確実という保証がない。
遠征中に連絡が取れるとは限らないし、もしものことがあったら目も当てられない。
若葉『私は、久遠さんにいなくなってほしくないんだ』
陽乃「そんな――」
若葉『畏怖すべき力であるとしても、貴女の力は起死回生の一手だ。誰かが死ぬ戦いも、貴女がいれば死なずに終えられるかもしれないんだ』
陽乃「過大評価だわ」
若葉『いいや……貴女は誰かが死ぬなんて見過ごせない。だから絶対に、助けるはずだ』
なんという信頼なのかと、陽乃は眉をひそめた
1、良いわ。じゃぁ、単独許可だったら諦める
2、ごめんなさい。単独でも行かせて貰うわ。貴女の評価を信じるのなら。分かるでしょう?
↓2
- 877 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/29(日) 23:23:38.05 ID:WbJSUYW60
- 1
- 878 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/29(日) 23:23:43.23 ID:CTtl/PXdO
- 1
- 879 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/29(日) 23:24:59.01 ID:i+mjZ4k5O
- 1
- 880 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/29(日) 23:28:22.20 ID:EvNFADcEo
-
ではここまでとさせていただきます。
明日もできれば通常時間から
- 881 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/29(日) 23:40:30.41 ID:i+mjZ4k5O
- 乙
流石に単独で遠征は多分ゲームオーバーフラグだろうしなぁ
でも残るなら少しでも待遇改善してほしいけど…
- 882 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/30(月) 00:43:25.90 ID:7aAg6JtUO
- 乙
とりあえず単独での長野行きは無しか
話がどう転がるかドキドキするなあ
- 883 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/30(月) 22:13:40.55 ID:ASGCEm9Io
-
では少しだけ
- 884 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/30(月) 22:14:27.32 ID:Kxdc7uNlO
- いえす
- 885 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/30(月) 22:39:22.27 ID:ASGCEm9Io
-
陽乃「良いわ。じゃぁ、単独許可だったら諦める」
若葉『すまない』
陽乃「仕方がないわ。私だって無謀だと思うし」
陽乃だって、自分の力を過信したいとは思わない。
今の自分の状況を変えたいとは思うけれど、
わざわざ死にに行くつもりはない。
もちろん、それ以外に道がないというのなら、行くしかないけれど。
陽乃「でも、だからと言って上里さんを向こうに置いておくわけにはいかないわ」
若葉『なら、大社の下に戻るのか?』
若葉は自分自身に問いかけるような小さい声で呟くと、
陽乃が何かを言うよりも前に、口を開く
若葉『それもダメだ。何されるか分かったものじゃない』
陽乃「あれもダメこれもダメ……私達、ダメな事しかないわね」
若葉『せめて大社からの扱いが私たちと同等ならよかったんだが……』
- 886 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/30(月) 23:21:01.97 ID:ASGCEm9Io
-
陽乃「もしもそうだったなら……郡さんのことを除けばすべて解決かしら」
若葉『……そう、だな……』
若葉は、無理矢理に暫定的なリーダーという役目を押し付けられて、
問題を抱えている陽乃と、陽乃を敵視している千景やほかの勇者達とを取り持たなければならない。
そしてそれは、さらに大社や民衆に対してもだ。
今は陽乃を連れ戻せという大社に対し、
陽乃の要求通りに、寄宿舎に戻す程度で収めて貰えないかを交渉している。
その結果、若葉の大切な人が奪われた状態にある
若葉は軽はずみなことを言ってしまったのではないかと申し訳なさそうに零したが、
そう言いたくなるのも無理はないだろうと陽乃は笑う。
陽乃「ほんと、私が勇者じゃなかったら良かったのにね」
若葉『いや、それは困る……問題は多いかもしれないが、それを補って余りある力を持っている』
若葉は陽乃の力を、九死に一生を得るための切り札のようなものだと考えている。
さっきも言った、起死回生の一手。
陽乃に気にするなとは言えないけれど、
民衆や大社の声に惑わされて欲しくないと、若葉は思っていた。
若葉「それに、たとえ九尾の力がなかったとしても……貴女は勇者になっていたはずだ」
- 887 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/30(月) 23:54:49.07 ID:ASGCEm9Io
-
陽乃が正式な勇者であったなら、
大社から疎まれることも、民衆から恨まれることもなく、
普通に、若葉達と同じ勇者として敬われる立場にあったことだろう。
そうだったなら……と、若葉と陽乃は互いに考えて、
しかし、そうではないのだからと首を振る
陽乃「私の価値は、この力だけではないって言いたいんだって思っておいてあげる」
若葉『ああ……それで頼む』
少なくとも、見分けがつかないほど完璧に見た目を変えることができ、
勇者やバーテックスに対しての決定打を持っている
陽乃のそんな力は魅力的なものだ。
しかし、陽乃が本当に勇者足る理由とされるのは……これだけ恨まれ憎まれていても命を救ってしまうところにある。
それは、もしかしたらいいことではないのかもしれないが……勇者としては重要な芯の部分。
若葉『伊予島達は……大丈夫だったか?』
陽乃「ええ、伊予島さん達も、ご両親もとてもよくしてくれたわ」
若葉『それは良かった』
安心したように言う若葉は、もう分かっているかもしれないが。と、続けて
若葉『申し訳ないが……今はまだ寄宿舎に戻ることは出来ないから、伊予島に伝えて貰えるだろうか?』
宿泊は延長できるか
延長できないならば、どこか宿に泊めて貰うことは出来るか。
その話が両親へと伝わると――二つ返事で宿泊延長が決まった。
- 888 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/11/30(月) 23:55:55.24 ID:ASGCEm9Io
-
√ 2018年 8月3日目 夕:伊予島家
03〜12 杏
37〜46 球子
51〜60 両親
89〜97 九尾
↓1のコンマ
※それ以外は通常
- 889 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/11/30(月) 23:57:47.81 ID:Kxdc7uNlO
- あ
- 890 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/01(火) 00:02:27.66 ID:lrILdukio
-
では短いですがここまでとさせていただきます。
明日もできれば通常時間から
- 891 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/01(火) 00:05:59.16 ID:iRf81friO
- 乙
とりあえず今は杏の家に居候しながら大社の返事待ちでいいのかな
- 892 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/01(火) 00:12:17.98 ID:56jD/K2dO
- 乙
伊予島家でもう一泊か、杏とご両親には頭上がらないな
あと今回の若葉は色々な案件抱えてて原作以上にストレス溜めてそう
- 893 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/01(火) 01:58:43.30 ID:B/rvIHZ30
- 乙
九尾の変身能力でなんとかごまかしつつ誰か長野に連れて行けないかな?
- 894 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/02(水) 22:03:44.20 ID:37blT9qio
-
昨日は出来なかったので、今日は少しだけ
- 895 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/02(水) 22:08:28.68 ID:wMtY3ADWO
- やったぜ
- 896 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/02(水) 22:11:02.55 ID:37blT9qio
- √ 2018年 8月3日目 夕:伊予島家
陽乃「すみません、昨日だけでなく今日も……」
「あらあら、良いのよ……いつもは夫と二人だけだから、にぎやかで楽しいわ」
陽乃「賑やかなのは、土居さんのおかげですよ」
陽乃、杏、球子
陽乃は本来、アウトドア派でもあるのだが、
今ではすっかりインドアな人間となっており、
どちらかと言えば静かな方だ
それは元からインドア派になるしかなかった杏も同じで、
その二人を引っ張るようにして明るいのが、球子だった。
「それにしても、陽乃ちゃんって、お料理が上手なのねぇ」
陽乃「小学校の頃は手伝いで良く作っていたので……和食、ばっかりですけど」
こんな世界になってからは、食堂を利用するのも気まずく、
自炊が基本の生活になっているため、洋食や中華もそれなりに作れるようにはなっている。
「でも、無理せず休んでいて良いのよ?」
陽乃「こんなに良くして頂いているのに、何もしないのは……なんだか、居心地が悪いので」
- 897 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/02(水) 22:28:27.01 ID:37blT9qio
-
「ふふっ……本当、立派なのねぇ」
陽乃「私の友人は、損な性格だって言いますけど……」
友人以上の繋がりである九尾のことだが、
精霊だというわけにもいかないので、友人として扱う
陽乃にしか聞こえない九尾の声は『誰が友人なのかや?』と、
嘲笑するように笑っているが、無視する
陽乃「あ、これ……揚げますか?」
「待って待って、揚げ物は私がやるから大丈夫よ。万が一のこともあるから、ね」
陽乃「そうですね……なら、洗い物やっておきます」
「ありがとう」
陽乃「……いえ、こちらこそ。ありがとうございます」
こんな関係を、彼女にも期待していたのだろうか。
期待してしまっていたから……拒絶されたのがあんなにも辛かったのだろうか。
- 898 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/02(水) 23:01:43.53 ID:37blT9qio
-
料理で手伝えることが減って来た陽乃は、
一旦、キッチンから離れてリビングの方へと向かう
平日の今日、杏の父は仕事でいないので
今の家にいるのは杏の母親と、陽乃と杏と球子の4人だけだ
九尾も含めれば、5人だろうか。
杏「久遠さん、お料理も好きだったんですか?」
陽乃「ん〜ん。出来たってだけ」
球子「ほらっ、だから言ったろ〜? タマの方が絶対に好きだって」
杏「タマっち先輩が好きなのはキャンプ料理でしょ。普通の料理じゃないよね」
球子「キャンプで作るのも普通の料理だぞ〜……」
ムッとする球子と、楽しげに笑っている杏
二人を一瞥して、陽乃は二人から少し離れた場所で、溜息をつく
これからどうなるのか……まだ、先のことは分からない
- 899 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/02(水) 23:29:25.06 ID:37blT9qio
-
陽乃は、若葉と話した内容のほとんどを二人に伝えている
千景が大社に陽乃のことを話した件については避けたが、
それ以外のことは二人にも共有したのだ。
特に、陽乃が長野に行くことを打診したうえで、
許可が単独だったら諦めるが、単独でなければ長野に行くということも。
話を聞いていた杏が、
単独ならば諦めてくれることに安堵していたが、
球子は、単独だろうとそうでなかろうと、
無謀だと……乗り気ではない様子だった。
もちろん、長野にいる勇者を救出するということに関しては、球子もすべきだと思ってはいるけれど
しかし、だとしても危険が過ぎる
陽乃「………」
若葉や杏たちの考えている通り、
やはり、ほかの勇者を引き連れての許可は難しいだろう。
1、九尾と話す
2、土居さん、伊予島さん……鍛練、する?
3、もしダメだったら……どうしようかしらね
4、ねぇ、スマホ借りられる?
5、イベント判定
↓2
- 900 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/02(水) 23:32:17.01 ID:wMtY3ADWO
- 5
- 901 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/02(水) 23:34:54.72 ID:y60T4eJy0
- 3
- 902 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/02(水) 23:45:34.81 ID:37blT9qio
-
ではここまでとさせていただきます
明日も可能な限り、通常時間から
- 903 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/02(水) 23:56:51.65 ID:wMtY3ADWO
- 乙
今回のタマは杏が陽乃さんを凄く気にかけてる分冷静というかブレーキ役みたいな感じだな
- 904 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/03(木) 04:17:11.64 ID:fmqywzAV0
- 乙
でも長野の二人救出出来たらリターンもデカいよなあ
こっから先まあまあジリ貧なだけに
- 905 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/03(木) 21:48:55.63 ID:pi9HN7gIo
-
では少しだけ
- 906 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/03(木) 22:03:12.79 ID:b1ollLGsO
- 来てたか
- 907 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/03(木) 22:40:00.11 ID:pi9HN7gIo
-
陽乃「もしダメだったら……どうしようかしらね」
球子「病院には戻りたくないんだろ?」
陽乃「可能な限りね」
球子「だったら……」
球子は神妙な面持ちで呟くと、
深く考え込むように俯いて……杏へと目を向ける
球子「……どうするんだ?」
杏「タマっち先輩……」
今それを考えようって話なんだよ。と
少しばかり呆れたような笑みを浮かべた杏は小さく息をつく
病院には戻さない
そのうえで、ひなたを大社から取り戻す
杏「もしあれなら……ずっとこの家にいても良いのでは?」
球子「杏っ!」
杏「だって、それが出来たら一番いいって思わない?」
- 908 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/03(木) 23:11:12.58 ID:pi9HN7gIo
-
この家なら、陽乃を悪く扱い人はいない。
陽乃を悪く言うこともなく、
人様の家という点で陽乃は居心地悪く感じてしまうかもしれないが、
監視され続けるような、嫌な思いをすることはきっとなくて
だから……と、杏は思う
杏「お父さんもお母さんも、久遠さんのこと大切にしてくれますよ」
陽乃「それは分かってるけれど……」
それはさすがに迷惑も過ぎる話だ
陽乃としては、この家の居心地は良い
かつてのようにはいかないし、
他人の家なので居住まいをどうしても正してしまう
杏「お母さんたちなら、喜んで――」
陽乃「……だとしてもよ。伊予島さん」
それでも十分にありがたい話だが、
しかし、陽乃は抱えている問題が大きすぎる
ほんの数日間ならともかく、
これから先、長く陽乃を家に置いておくというのは、伊予島家には荷が重い。
それが大社からの命令であるならば従うほかないが、
そうではないなら避けるべきであろう
陽乃「私のいた場所が……どうなったかは、貴女も見て来たでしょう?」
- 909 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/03(木) 23:56:47.85 ID:pi9HN7gIo
-
あれがもう遠い過去の話であるならば、
陽乃も、もうきっと大丈夫だろう。なんて、
一応は警戒しながらも、伊予島家が問題なく、
大社を黙らせられるのであればお世話になっていたかもしれない。
しかし……その火はまだ燻っている。
それが、この家にまで降りかからないとは限らない
球子「久遠さんは、ここがあの神社みたいになるって思ってるのか?」
杏「タマっち先輩?」
陽乃「ならないとは限らない」
球子「なるとも限らないだろ」
陽乃「なる可能性がある……そのリスクが――」
球子「だったら護ればいいだろ……」
球子は素っ気なく、口を挟む
向ける目は睨んでいるようで、怒っているようで。
球子「それくらい、あんたなら護れるだろ?」
杏「タマっち先輩……そんな言い方……」
杏の宥めるような声にも、
球子は少しばかりむくれた様子で、そっぽを向いた
- 910 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/03(木) 23:58:05.46 ID:pi9HN7gIo
-
では短いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 911 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/04(金) 00:11:31.56 ID:GFMD8LDhO
- 乙
伊予島夫妻は陽乃さんの第二の両親になるかもだし絶対に護らないとだな
- 912 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/04(金) 01:40:56.58 ID:OWjrOFce0
- 乙
タマっちご機嫌斜めじゃん
- 913 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/05(土) 00:30:44.56 ID:o9AnNan0o
-
遅くなりましたが、本日はおやすみとさせていただきます。
その分、明日は可能であればお昼ごろから
- 914 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/05(土) 00:32:17.41 ID:pImESYcDO
- 乙です
お昼再開に期待
- 915 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/05(土) 16:27:38.95 ID:o9AnNan0o
-
遅くなりましたが、少しずつ
- 916 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/05(土) 16:30:17.76 ID:oWn0LDNoO
- よっしゃ
- 917 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/05(土) 17:03:35.74 ID:o9AnNan0o
-
陽乃「良いのよ、伊予島さん」
杏「ですが……」
目を合わせてくれない球子は、
ソファに浅く腰掛けていて、ふんぞり返っているようにさえ見える
球子は、千景ほどに嫌っているわけではないけれど
陽乃のことを良く思っているわけでもなく、どちらかと言えば嫌ってさえいる
ただ、杏が協力をするというから、敵意をむき出しにしたりはしないだけで。
陽乃「土居さんは、私が気に入らないのね」
球子「……気に入らないに決まってるだろ」
陽乃「やっぱり、例の噂があるから?」
球子「………」
球子は答えない
答えることなく陽乃を人睨みして、テーブルの上のお菓子を摘まむ
抓まれたお菓子は、小さく軋んで……砕け散る
球子「噂なんて、タマはどうだっていい」
陽乃「なら、どうして?」
球子「護れるくせに、護れないっていうところが嫌いなんだ」
- 918 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/05(土) 18:08:35.47 ID:o9AnNan0o
-
球子「本当は護れるんだろ? この家も、杏の両親も、杏も……みんな」
鍛練で手合せをしている球子は、
友奈や千景が決して弱い勇者ではないことを知っている。
だから、その二人をうち倒した陽乃なら、
簡単に守り通して見せるだろうと球子は思っている。
球子「護れるなら護れるって言えばいいじゃないか……」
なのに、本人はそんな自信がないようにふるまっているし、
あくまで、陽乃は自分以外の人を護る気がないようなそぶりを見せている
それは、杏がついて行くと言ってもだ
球子「それで、協力して貰えばいいじゃんか」
陽乃「………」
球子「噂がなんだよ……それでも協力するって杏が言ってるんだぞっ」
球子は苛立たしそうに、お菓子で汚れた手で拳を固く作り出すと
何かを言いたそうに唇を歪ませて、杏を一瞥する
球子「だったら……ちょっとくらい、信じたって良いんじゃないのかっ?」
- 919 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/05(土) 19:27:09.41 ID:o9AnNan0o
-
球子「タマを信じなくても良いから、杏くらいは」
杏「何言ってるのっ?」
球子「……護れるんだろ? 久遠さんなら」
陽乃「保障はできない」
大社がどれだけ警戒していようが
民衆から忌み嫌われていようが、
球子や若葉達に信頼されていようが、
陽乃は、その力を絶対だとは考えない
陽乃「……護れるだなんて、思えないのよ」
杏「でも、久遠さんは護ってくれたじゃないですか」
陽乃「護れただけよ。護れるわけじゃないわ」
それは球子に睨まれたとしても、譲れない。
自分の力を過信するには――陽乃は多くのものを失い過ぎたのだ
1、悪いけれど、伊予島さんは貴女が護って頂戴
2、私だけじゃないわ。貴方の力でだって、護れるとは限らないの。己惚れるべきではないわ
3、別に、信じたって良いけど……
4、信じられない私に任せて平気なのかしら
↓2
- 920 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/05(土) 19:30:25.50 ID:5eFvKd/2O
- 3
- 921 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/05(土) 19:31:45.23 ID:VyPt+dEl0
- 3
- 922 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/05(土) 21:30:42.22 ID:FHDRTidBO
- ?
- 923 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/05(土) 21:32:12.04 ID:o9AnNan0o
-
陽乃「別に信じたって良いけど……」
杏「ほ、本当ですかっ?」
陽乃「けれど信じるのと護るのとでは、話は別よ」
陽乃の今の噂や状況を踏まえてなお、
協力的な杏たちのことを信じることはやぶさかでもない
もちろん、全幅の信頼を置くことまでは出来ないけれど
ただ、護ることは約束できない
それだけは、約束したくはない
陽乃「貴女達が私に協力的だってことは信じてもいいわ。でもね、護るだなんて約束はしない」
球子「そんなに自信がないのか?」
陽乃「ええ、そうよ」
護ってあげられる自信はない
みっともない自衛だと嘲笑されても良い
陽乃は笑われようとも、
絶対に助けてあげるなんて約束をする気は、微塵もなかった
- 924 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/05(土) 22:20:23.56 ID:o9AnNan0o
-
陽乃「もちろん、私の力が及ぶ範囲でなら護ってあげることもあるけれど、絶対だなんて言わないわ」
バーテックスと戦う勇者の一人として、
他の勇者と協力することはあるし、
ないとは思うけれど、一般人が巻き込まれていたならば、
陽乃はどうしようもなく助けてしまうことだろう
けれど、護り切るだなんて約束は出来ない。
陽乃「自分の身は自分で守って頂戴」
球子「……護れなかったら責められるってことか?」
陽乃「護れたって責められるけどね」
杏「タマっち先輩いい加減落ち着いてよっ」
球子「っ……」
杏「久遠さんは護りたくても護れなかったことを心配してるの……どれだけ力があっても、無理なことはあるって」
杏は、自分の力にだけは自信を持つべきだと思う
いや、陽乃には信じていて欲しい。
しかし、杏自身がその自分の力が絶対であることを信じられてはいない
だから、それを押し付けることはできなかった
杏「……でも、久遠さん。久遠さんは勇者の中でおそらく一番強力な力を持っていることだけは、忘れないでください」
その陽乃が、倒せないバーテックスがいたとしたら、
それはもう、人類の敗北を意味すると、杏は考えていた。
- 925 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/05(土) 22:42:57.18 ID:o9AnNan0o
-
陽乃「私が一番だなんて……」
杏「友奈さん達を負かしたんです……そう思うべきですよ」
杏はその戦いを見ていないので、
実際にどのようなやり取りがあったのかは分からないが、
結果から見れば、
陽乃が友奈と千景を叩きのめすほどの力を持っており、
若葉は運が良かっただけだと否定していたが、
若葉はそれを切り伏せられるほどの力を持っている。
しかし、九尾の人を模倣出来る力が真価を発揮したら、勝ち目はないだろう。
若葉に……上里ひなたの姿で近づけばいいだけなのだから。
もちろん、
陽乃がそんなことをするなどとは、思っていないが。
バーテックス相手でも、
瀬戸大橋の前でたった一人で防衛していたということを加味するならば、
一番は陽乃だろう。
それに関しては、球子も認めるしかない。
陽乃「私よりも若葉の方が強いわよ。じゃなかったら、あなた達がここにいないもの」
杏「怖いこと言わないでください……」
- 926 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/06(日) 00:05:21.64 ID:bH8wkLY0o
-
事実、九尾が排除していた可能性もあるので、冗談だとは言えないが、
それを言っても仕方がないことだろうと、陽乃は飲み込む。
実際に若葉は九尾を止めてくれた。
たとえ、あの時の九尾がまだ本気ではなかったとしても
若葉だって、本気ではなかったはずだ
若葉にとって、あの時戦っていたのは久遠陽乃で、
きっと、殺すつもりで戦うことはできなかっただろうから。
陽乃「大丈夫よ、乃木さんがいるならね」
球子「なんだ、若葉のことは信頼してるんだな」
陽乃「一応、彼女はリーダーだもの」
球子「ならタマがリーダーだったら信じたのか?」
陽乃「私のことを、止めてくれたならだけど」
球子「一度くらい――」
杏「ダメだよタマっち先輩、危ないから」
球子「……分かってるよ」
杏に止められて、球子は戦うことを断念する
戦えたとしても、若葉が戦った時と同じような状況でないのなら、
判断基準には出来ない
- 927 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/06(日) 00:14:43.87 ID:bH8wkLY0o
-
√ 2018年 8月3日目 夜:伊予島家
03〜12 九尾
37〜46 大社
51〜60 両親
89〜97 杏
↓1のコンマ
※それ以外は通常
- 928 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/06(日) 00:16:02.03 ID:jxmPU7XrO
- あ
- 929 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/06(日) 00:19:23.06 ID:bH8wkLY0o
-
では短いですがここまでとさせていただきます
明日も可能であれば、お昼ごろから
- 930 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/06(日) 00:29:47.17 ID:jxmPU7XrO
- 乙
タマが陽乃さんに対していまいち素っ気なかったのは千景とは違う理由とはいえ普通に嫌ってたからなのはちょっとショックだったなぁ
そしてこれを聞いて九尾は何を思うのだろうか…
- 931 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/06(日) 02:46:29.28 ID:5hb60hfQO
- 乙
まあこれに関しては煮えきらない陽乃さんも悪い気がする
- 932 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/06(日) 23:00:48.86 ID:bhyPNQn8O
- 今日は休載かな?
- 933 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/07(月) 21:50:12.05 ID:bpJwDYqWo
- 昨日できなかったので、本日は少しだけ
- 934 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/07(月) 21:51:17.46 ID:SQJHh8CdO
- おk
- 935 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/07(月) 22:38:45.04 ID:bpJwDYqWo
- √ 2018年 8月3日目 夜:伊予島家
『あの小娘は殺めても良いのではないかや?』
陽乃「誰のこと? まさか、土居さんとは言わないでしょうね」
『言うとも』
くつくつと喉を鳴らすように笑った九尾は、
不意に息を引き込むような音を立てて陽乃から伸びる影が揺らめく
九尾は冗談めかした声色だが、本気だろう
『あの娘は伊予島杏が主様について行くと言って聞かぬことに、不満を抱いている』
陽乃「……盗み聞きしたのね」
『無論、ただの嫉妬ではあるまいよ。それにて、主様が守護することを約束出来ぬことに……であろう』
陽乃「それは、だって……出来ない約束なんて……」
『であろうとも、主様に付き従おうという愚か者がおる。それが己が思う者であるならば、癪にも触る』
陽乃「………」
『己が救うと決めた娘よ。あやつも』
陽乃「貴女、いったいどこまで……」
九尾は、陽乃の影に潜んでいるように見せてはいるが、
別に離れることが出来ないわけではない
陽乃と会話をしていない時、
九尾はいつも、どこかへと足を運んでいるのかもしれない
- 936 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/07(月) 22:53:14.07 ID:bpJwDYqWo
-
『あやつが護ると誓おうとも、主様には恩が有ると返されるのはさぞ憎かろう』
九尾はネガティブな話をしているとは思えないほど明るい声でそれを語る
九尾が本当に見聞きした情報を話しているとは限らない
騙っているだけである可能性もないとは言えない
九尾は影となっていて、その表情は読めない
もっとも見せていたとして、察せられるかは微妙だが。
陽乃「土居さんは嫉妬しているようなものなのね……貴女の言葉が本当なら」
『くふふっ、であろうな』
陽乃「なら、私が伊予島さんを絶対に守るって約束したら、蟠りはどうにかなるのかしら」
『主様の力まで疑ってはおらぬじゃろう』
陽乃「……なら、私が単独でなら長野にいかないって言ったのは、良かったのね」
陽乃が単独であろうと行く気であったならば、杏は無謀な旅に付き合ってくれていただろう。
それは球子の望まない流れだろうし、
きっと……最悪の結果になっていたはずだ。
- 937 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/07(月) 23:21:38.39 ID:bpJwDYqWo
-
『なんじゃ主様、行かぬのかや?』
陽乃「行かない予定よ……流石に無謀だもの」
不可能ではないが、
可能と言えるかは微妙なところの一人旅
杏がついてきてくれたところで、
それが可能と言えるまでに引き上がるかと言われればそうでもないので、
単身ではしないのがベストと言える。
それはそれで、ここでどうするべきかという問題が生じるのだけれど。
1つ、一人で長野に行く
これは、今のところは断念する予定
1つ、このまま伊予島家に住まわせて貰う。
これは大社が確実に難色を示すだろうが……ごり押すことは可能だろうか。
杏の両親ということもあって、杏が取り入られるのを懸念して阻止される可能性はある。
1つ、四国内での逃走劇
これも……面倒なことにしかならないので、避けるべきだろう
1、ねぇ、あなたならどうする?
2、上里さん……大丈夫かしら
3、ねぇ、あなたってどこまで盗み聞きしてるの?
4、土居さんと仲良くなれるかしら?
5、貴女……この家と、伊予島さんのご両親を護り切れる自信はある?
↓2
- 938 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/07(月) 23:26:01.79 ID:xzY/63woO
- 1
- 939 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/07(月) 23:26:24.32 ID:wEWI4YYQ0
- 5
- 940 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/07(月) 23:28:28.63 ID:LubHFLw90
- 2
- 941 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/07(月) 23:33:31.63 ID:bpJwDYqWo
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 942 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/07(月) 23:49:00.98 ID:xzY/63woO
- 乙
これ長野に単独で行ってたら本当にバッドエンドだったかもな…
しばらく伊予島家に居候となると杏も残ってくれると嬉しいけどどうなるんだろうか
- 943 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/07(月) 23:52:59.85 ID:XbZBEUTb0
- 乙
マジでどうしたらいいんだろな
- 944 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/12/08(火) 23:04:18.66 ID:sIyCTTM1O
- お休みかな…?
最近火曜の休載率が高めな気がする
- 945 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/09(水) 23:41:45.91 ID:Tvh2/btTo
- 遅くなりましたが、昨日できなかったので少しだけ
安価出す手前まで
- 946 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/09(水) 23:42:59.79 ID:gMpGj5zSO
- やったぜ
- 947 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/10(木) 00:18:20.04 ID:684tF05Co
-
陽乃「ねぇ、一つ確認したいことがあるのだけど」
真剣な声色でそう切り出した陽乃を見つめるようにしていた影が、
ゆらりと揺らめいて瞳を閉じる動きを見せる
陽乃「貴女……この家と、伊予島さんのご両親を護り切れる自信はある?」
『ほう?』
陽乃「どうなの?」
『妾が守護する理由がなかろう』
陽乃「自信がないから?」
『くははははは! 妾にそれが有用だとでも思うとるのかや?』
陽乃の挑発めいた言葉は、九尾には意味をなさない
むしろ、笑えてさえ来てしまうのだろう
高笑いした九尾は特別怒った様子もない
『主様が守護すればよい』
陽乃「そうできない時もあるでしょう?」
『ふむ……なるほど』
多少の興味も湧いていないような声
考える素振りを装った呟きを残した九尾は、ふっと息を引く
『伊予島杏の肉親二人の守護など、妾の尾が例え一つであっても容易であろう』
- 948 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/10(木) 01:09:07.03 ID:684tF05Co
-
陽乃「絶対に?」
『無論じゃ。下賤な人間共の悪意なぞ、妾にとっては赤子のようなものよ』
陽乃「……本気で、言ってるのね」
『いかにも』
笑み交じりに答える九尾は、
影の尻尾を揺らして見せて、口を大きく開く
声のない笑みを浮かべているのだろう。
それは少しばかり、不気味に見えた
だが、九尾はそう言う存在なのだ。
人々の信仰を戴く神に近き獣であれば、
人に偽り、人を騙り、歪ませ崩壊させようと画策する悪意でもある。
ゆえに、人々の憎悪など、悪意など
九尾にとっては取るに足らない些細な現象に過ぎない。
それを阻むのも、叶えるのも、容易
『もっとも、妾に委ねるならば心するがよい』
陽乃「……ダメとは言わせてくれないのね」
『もちろんだとも』
九尾はそう言って、影を揺らす
『害をなすならば殺す。勇者ならば利用価値もあるが、単なる人間風情にそれはなかろう』
- 949 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/10(木) 02:05:24.83 ID:684tF05Co
-
九尾は千景たちでさえ、害になるなら殺してしまえと言うような存在である。
勇者である千景たちを殺そうとするにも拘らず、ただの害意ある人々を生かしておくわけがない
陽乃を憎悪する人間を生かしているのは、
あくまで、それ以上の害になっていないからだ
しかし、それが目の前に現れたのならばその命を見逃してやる道理はないし、
目の前に現れるだけでなく障害となるのであれば排除する。
それに、迷いはない
『主様が伊予島杏の肉親を妾に守護せよというのであれば、排斥のみならず排除することを許容すべきじゃ』
自分の力……と言っても、九尾の力を借りた状態も含めるのだろうが
それで守り切る自信がなく、
九尾自身にまで助力を願うのであれば、多少の死人は諦めるしかない
陽乃「私に頑張れって?」
『うむ』
陽乃「そう……」
守れるように頑張れと
諦められるように頑張れと
いずれにせよ、頑張れと……陽乃は眉を顰めて、首を振る
陽乃「……私がそんな約束できないって、知ってるくせに」
『それを知っていようが、妾には関係のないことであろう』
九尾は素っ気なく、答えた
- 950 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/10(木) 02:07:38.02 ID:684tF05Co
- では短いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 951 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2020/12/10(木) 03:04:49.30 ID:E1CyioeL0
- VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
- 952 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/10(木) 06:14:50.38 ID:nQewVOYQO
- 乙
護れるかどうかは陽乃さんの頑張り次第か…
どのみち穏便にはいかなさそうだけど
- 953 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/10(木) 12:28:37.45 ID:YFfwGQbqO
- 乙
陽乃さんただでさえメンタル不安定なのにここに来て死人出したらもう立ち直れないのでは…
- 954 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/10(木) 22:33:24.72 ID:684tF05Co
-
遅くなりましたが、少しだけ
- 955 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/10(木) 22:35:10.56 ID:0ecX+7u/O
- かもーん
- 956 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/10(木) 23:22:08.79 ID:684tF05Co
-
陽乃「貴女を頼るなら、諦めなくちゃいけないのね?」
『うむ……無論、人間が手を出さぬというのであれば、妾が排除することもなかろう』
専守防衛と言えばいいのか、
九尾は、向こうから来ないのであれば手を出さないつもりのようだ
もちろん、九尾ならば手を出してきたとしても命を奪うことなく無力化するのは可能だろう
しかし、それはそれこれはこれというものなのか……
殺す以外の選択肢を取るつもりは毛頭ないらしい
『主様が人間に手を出せぬよう働きかければよい』
陽乃「それこそ無謀な話じゃないの」
『なせばなるであろう?』
陽乃「無理なこともあるの……特に、今の私では火に油を注ぐだけよ」
『乃木若葉に代行を頼めばよかろう。あ奴の言葉ならば、大社はともかく民衆ならば聞くやもしれぬ』
陽乃「……だと良いのだけど」
『じゃが、今の勇者はただの言の葉でしかなかろう』
勇者としての実績不足
バーテックスに対抗している姿を目撃した人々もいるだろうけれど
それだけでは、まだ足りない
1、あとどれくらいで襲撃があるとか分かるの?
2、ねぇ、貴女の力でどうにかできない?
3、イザナミ様の力を使えば、長野にたどり着ける?
4、良いわ……害意があるなら最悪死なせてもいい。でも、警告をしてあげて
↓2
- 957 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/10(木) 23:25:09.35 ID:sdloFNMK0
- 3
- 958 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/10(木) 23:26:18.25 ID:0ecX+7u/O
- 1
- 959 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/10(木) 23:30:58.24 ID:684tF05Co
-
↓1コンマ判定 一桁
00 長野の最後なら
0〜4 不可
5〜9 大雑把
ぞろ目 確定
- 960 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/10(木) 23:32:48.13 ID:28L9SgC+O
- あ
- 961 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/11(金) 00:14:58.55 ID:eMRC/dQeo
-
陽乃「ねぇ、九尾はあとどれくらいで襲撃があるかどうか分かったりするの?」
『妾は預言者ではないぞ』
喉を鳴らす九尾は呆れたように呟いて、否定する。
『そのようなもの、妾にはわからぬ』
陽乃「……そう」
落胆はしない
九尾とはいえ、万能な妖怪ではないのは分かっている
ただ、もしかしたらと思っただけで。
陽乃「やっぱり、神託がこない限りどうしようもないのね……」
『大社とやらが神樹による神託にすべてを委ねておるからのう』
バーテックスと戦うための準備は当然行うだろうけれど、
神樹様が神託をくれない限り、
大社も勇者も、外部に対しては最小限の行動しかしないはずだ。
少なくとも、長野には……
『そんなに、長野の勇者が気がかりかや?』
- 962 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/11(金) 00:20:23.22 ID:eMRC/dQeo
-
『会ったこともなく、話したこともなかろう?』
陽乃「ええ、まぁ……」
長野の勇者との連絡はすべて暫定リーダーである若葉が行っており、
陽乃はあくまで、若葉から聞かされた情報しか知らない。
向こうには勇者が一人しかいないこと
巫女でさえも、一人しかいないこと。
勇者は白鳥歌野と言う名前であること
日々、戦いに明け暮れて……摩耗していること。
『それを救う義理があると?』
陽乃「ずっと戦っているなら、乃木さん達よりも戦闘面で役立つと思わない?」
『ふむ……』
陽乃「きっとバーテックス戦で活躍してくれるはずだし、私が楽になる。生き残れる確率も上がるわ」
それに、外部からくる勇者ならば、
ここに渦巻いている偏見の影響も受けないかもしれない
陽乃「魅力的でしょう?」
- 963 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/11(金) 00:27:33.27 ID:eMRC/dQeo
-
所謂、ハイリスクハイリターンだと陽乃は嘯く
生存率を上げたいというのは本音ではあるけれど
ただ、一番は違う。
黙って見殺しにするのが嫌なだけだ
手を尽くしてなお救えなかったのならばいざ知らず
それさえもせずに……というのは、受け入れがたい。
『妾と化かし合いをする意味もあるまいに』
九尾はその心の内を察してか
嘯いたことなど気にも留めずに、楽し気な笑い声を零す。
影はゆっくりと立体的になって……人の形を作り上げる
ひなた「では、手を打ってみますか?」
陽乃「……あるの?」
ひなた「大社が、巫女が受け取る神託によって行動するのであれば……神託を与えれば良いんですよ」
陽乃「貴女の力で、化かすつもり?」
ひなた「そうです。巫女に偽りの神託を授け、長野へと向かわせるんです」
九尾の惑わしの力を使って、神託を与える
もしもそれが可能なら、大社でさえ……操れることになるが。
ひなた「言っておきますが、幻を見せるくらい私なら造作もありませんよ?」
- 964 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/11(金) 00:28:01.62 ID:eMRC/dQeo
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 965 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/11(金) 00:37:32.31 ID:VV0ohEHRO
- 乙
九尾、まさか神託の偽装ができるとは…
あとは他の勇者たちをどれだけ連れていけるかだな
- 966 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/11(金) 00:37:57.16 ID:kCe5BYhnO
- 乙
そんな裏技が……
- 967 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/12(土) 23:44:13.84 ID:QxH5+6dVo
-
昨日もできなかったので、少しだけ。
- 968 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/12(土) 23:46:12.89 ID:Ffy33K3+O
- あいあいさ
- 969 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/12(土) 23:54:45.47 ID:QxH5+6dVo
-
陽乃「そんなことして平気なの……?」
ひなた「騙すこと自体は平気ですよ。何の問題もありません」
陽乃「バレたりは?」
ひなた「永久的にその幻を見せるならともかく一時的に認識させ、それを記憶させるというのは容易です」
幻覚を見せ続けるのは労力がいるが、
幻覚を見た。という記憶を残すこと自体は、九尾の力に限ることではない
それに関しては、幻覚を見せられるであろう巫女側の問題になる
ひなた「神託を受ける巫女が、それを神託であると認識さえしてしまえば問題はありませんよ」
陽乃「貴女……今までそんなことしてないわよね?」
陽乃がそう言うと、
九尾が扮しているひなたは眉を吊り上げて、苦笑する
ひなた「そんな無意味なことをする理由はありませんよ」
陽乃「それもそうよね……」
ひなた「勇者である白鳥さんを仲間に引き入れるのは、リスクもありますがリターンも大きいと判断しました」
だから、特別ですよ。と、
九尾はまるで本当にひなたであるかのような笑みを浮かべて見せる
- 970 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/13(日) 00:12:51.46 ID:9c6fHk2do
-
ひなた「しかし、久遠さんも認識している通り単独ではリスクの方が大きいです……」
陽乃「どうにもならないかしら?」
ひなた「以前も言いましたが可か不可で言えば可ですよ? それこそ……伊邪那美の力を用いてしまえば……」
たとえ、、周囲をバーテックスで埋め尽くされようとも
敵からの攻撃においては無傷で切り抜けられるだろうと九尾は話す。
陽乃は伊邪那美の力を使ったことはないけれど、
それは九尾よりも強力で、危険であることだけは先日聞いている
ひなた「ただし……それではリスクが大きすぎます」
陽乃「……それは駄目ね。最終手段だわ」
ひなた「最終手段だわ。ではありませんよ……無しです。高確率で死にますよ」
長野にいけるか否かで言えば可だが、
やはり、身体的負担を考えれば九尾以上に重く、死ぬ確率が高くなるだけだ
ひなた「ですので、偽の神託を出しましょう。勇者を連れ出せるように」
陽乃「それをして、こっちはどうなるの?」
ひなた「四国ですか? 連れ出す人数にもよりますけど、襲撃があった場合に結界が壊されれば全滅するかもしれません」
陽乃「……なら」
ひなた「少数精鋭。久遠さんを含めて3人か4人で行くという形にしたらどうでしょう?」
- 971 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/13(日) 00:44:52.19 ID:9c6fHk2do
-
ひなた「戦力分散的に考えて、若葉ちゃんはこっちに残すことになりますけど」
陽乃「そうなると……郡さんも連れていけないでしょう?」
陽乃との関係の良さを考えると、千景は無理だ。
杏は自分が行きたいというはずなので、それについて来る形で球子もいる。
3人なら、陽乃・杏・球子になるだろう。
4人ならば、追加で友奈になる。
陽乃「乃木さんと郡さん二人きりにはできないし……郡さんを置いて高嶋さんを連れ出せないわよね……」
そんなことをしたら、千景の怒りはもうどうにもならないところにまで到達するかもしれないし、
最悪、一人四国を抜け出して追いかけてくるだろう
それを考えると、陽乃を含めて3人がベストだろうか
襲撃が確実に起きないと分かっていれば、全員を連れていくこともできるけれど。
陽乃「私と、伊予島さんと土居さん……貴女の見立てで行けると思う?」
ひなた「正直、難しいと思いますよ。杏さん次第かと……彼女が本当に戦えるのかどうか。そこですね」
戦闘のスタイルで言えば、
バリバリの前衛である陽乃、遠距離であろう球子と杏という形になっている。
陽乃が最前線で敵を引きつけた上で杏が各個撃破し、球子は杏を護りつつ……臨機応変に撃破するという流れになる。
杏が上手く戦えないという状態では、球子と陽乃の負担が大きい
陽乃ならどうにかなるだろうけれど
流石に、杏を庇いながらでは……球子は物量に押しつぶされる可能性がある
- 972 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/13(日) 00:45:28.93 ID:9c6fHk2do
-
では、短いですがここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから
- 973 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/13(日) 00:49:10.94 ID:nuXYxdGEO
- 乙
まあ勇者たちの精神面でも四国側の防衛の観点からいっても3:3が一番かなあとは思う
- 974 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/13(日) 00:59:56.88 ID:0NfKGdT1O
- 乙
そもそも行動時期が原作よりも早いから陽乃さん含めて変身すらしてないけどどうするんだろう
あと死神の力ってこの時から九尾が止めるほど強いのか…
- 975 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/13(日) 01:42:36.32 ID:cK8j+mezO
- 乙
>>974
>>510見る限りでは酒呑童子クラスでは?
- 976 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/13(日) 18:05:58.78 ID:9c6fHk2do
-
では遅くなりましたが、少しだけ
- 977 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/13(日) 18:38:23.46 ID:0f6+JqwtO
- 来てたか
- 978 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/13(日) 18:38:36.80 ID:9c6fHk2do
-
陽乃「本当に勇者として戦えるのか確かめた方が良いのかしら……」
ひなた「そうですね。それが一番かと……」
ただ一つ問題が。と、九尾は困ったように眉を顰める
ひなた「彼女たちの為に作られている戦装束が完成していないんですよ」
陽乃「……それって重要なの?」
ひなた「そうですねぇ……」
神樹様の力の借り受けて大社が生み出そうとしている戦装束は、
生身では人間の身体能力を多少強化した程度に過ぎない勇者の体を、
より格段に能力向上させられる……予定である。
当然ながら、力の系統が不鮮明であるというのを理由に陽乃の分は製造されていないが、
それがあるのとないのとでは大きな差がある。という話である
ひなた「つまり、煮えたぎる鍋に素手で触れるか耐熱手袋を使うか程度の違いかと」
陽乃「重要なのね……いつごろ完成しそうなの?」
ひなた「さて……どうでしょうね。あと一ヶ月……二ヶ月もしかしたら半月でいけるかもしれません」
私には知る由もないことですよ。と、
九尾はひなたの顔で笑う
- 979 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/13(日) 20:06:10.84 ID:9c6fHk2do
-
陽乃「それがない場合、伊予島さん達って……」
ひなた「さて、どうでしょうね。そこは分かりかねます」
陽乃「そこも、でしょう?」
九尾の嘯くような声色に陽乃は怪訝な表情を浮かべつつ、追及はしない。
九尾のことだから、
杏たちが本当に戦力にならないのかどうか
その程度の調査はしていてもおかしくはないはずだけれど。
陽乃「……でも、そうなってくると神託での強制派遣って危険じゃない?」
ひなた「そう……ですね。最悪長野には久遠さんお一人での到着もあり得ます」
陽乃「ダメじゃない……それ」
ひなた「久遠さんがお守りするか、お二人には強くなって頂くか……せめて装束の完成を待つか」
陽乃「………」
装束が完成していないとなると、
十中八九、今回の許可は下りないだろう
そのうえで偽の神託を出し……強制派遣をするかどうか。
1、神託、出して貰える?
2、とりあえずそれは候補に入れておくってことで
3、神託は無しよ。危ないわ
↓2
- 980 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/13(日) 20:10:09.09 ID:lCTIRYCuO
- 3
- 981 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/13(日) 20:11:12.50 ID:FZmFM5eS0
- 2
- 982 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/13(日) 20:38:18.53 ID:9c6fHk2do
-
陽乃「とりあえずそれは候補に入れておくってことで良い?」
ひなた「そうですか」
陽乃「不満そうね」
ひなた「そう見えます? 確かに、少しだけ不満はありますが」
陽乃「……なに?」
ひなた「別に、余計な人間のこと考えなくていいのでは? と、思っているだけです」
ひなた……九尾は、冷めた瞳で陽乃を一瞥すると
扉の方へと目を向ける
ひなた「久遠さんは自分の命のことだけを考えていればいいんですよ」
陽乃「良くないわ」
ひなた「いいえ。道半ばで力尽きるような二人の勇者を代償に優秀な一人の勇者を連れ出せるなら十分だと考えるべきですよ」
陽乃「九尾……」
ひなた「私は真剣に言っているんですよ? からかっているつもりは微塵も――」
陽乃「そういう考え、嫌いだわ」
ひなた「……そうですか」
落胆したように肩を落とし、ひなたはそのまま影の中に溶けていく
相変わらず、九尾は陽乃とひなた以外は特別、庇護下に置くつもりはないらしい
- 983 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/13(日) 20:55:32.14 ID:9c6fHk2do
-
1日のまとめ
・ 乃木若葉 : 交流有(長野、単独断念)
・上里ひなた : 交流無()
・ 高嶋友奈 : 交流有(電話、若葉に変更)
・ 土居球子 : 交流有(不許可の場合、信じてもいい)
・ 伊予島杏 : 交流有(味方の証明、不許可の場合、信じてもいい)
・ 郡千景 : 交流無()
・ 九尾 : 交流有(長野にいけるか、伊予島家の守護、襲撃の予兆、偽の神託)
√ 2018/08/03 まとめ
乃木若葉との絆 58→62(普通)
上里ひなたとの絆 56→56(普通)
高嶋友奈との絆 51→52(普通)
土居球子との絆 40→43(普通)
伊予島杏との絆 46→50(普通)
郡千景との絆 21→21(険悪)
九尾との絆 61→63(普通)
- 984 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/13(日) 21:05:46.64 ID:9c6fHk2do
-
↓1コンマ判定 一桁
0 連行
1〜6 不許可
7〜9 単独許可
偶数ぞろ目 遠征許可
↓2コンマ判定 一桁
1,3,9 で周辺住民
- 985 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/13(日) 21:09:03.31 ID:FZmFM5eS0
- あ
- 986 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/13(日) 21:11:09.42 ID:whcQo6J5O
- あ
- 987 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/13(日) 21:32:44.37 ID:9c6fHk2do
-
√ 2018年 8月4日目 朝:伊予島家
03〜12 大社
37〜46 若葉
51〜60 球子
89〜97 杏
↓1のコンマ
※それ以外は通常
※若葉の場合、一桁奇数で訪問
- 988 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/13(日) 21:35:02.67 ID:whcQo6J5O
- あ
- 989 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/13(日) 22:23:27.65 ID:9c6fHk2do
- √ 2018年 8月4日目 朝:伊予島家
伊予島家にお世話になって二日目
杏のもとに若葉からの連絡が入り、
長野への遠征は許可が下りなかった旨が伝わってきた
単独だろうと、誰かを連れてでも許可が下りなかったため、
若葉はいったん、陽乃を大社預かりではなく寄宿舎で預かることにするつもりだという。
陽乃に害されることを警戒してひなたは大社預かりになるそうだが、
若葉もひなたも、それについては合意の上だ。
陽乃「……困るわ」
球子「どっちかが大社管理になる必要があるなら仕方がないんじゃないか?」
杏「久遠さんに害意がないことを伝えられば良いんだけど……」
球子「それができれば苦労しないんだろ?」
球子は顔をしかめながらも、
一応、考えてはくれているようで、気難し気な唸り声を零す。
球子「ひとまず、どっちかにするしかないと思うぞ」
- 990 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/13(日) 22:58:28.82 ID:9c6fHk2do
-
杏「ひなたさんか久遠さんを大社預かり……」
陽乃「余計な禍根を残さないためには、私が大社の方に行くべきなのよね」
球子「郡さんのことがあるからなぁ」
千景は特別ひなたを気にしているわけではないけれど、
それを理由に陽乃に突っかかってくる可能性がある。
なので、陽乃が言うようにひなたを大社に残さずに
陽乃が大社のところに戻るべきだ
しかし、それは陽乃自身が好んでいないし、
だからこそ、若葉とひなたは自分からひなたを大社預かりにすることを選ぼうとしている
杏「久遠さんが協力的だと分かれば……ううん、それでも難しいかな」
球子「脱走があるけどなー」
杏「あぁ……」
陽乃「仕方がないじゃない……色々あったのよ」
1、大社預かりの間にあったことを話す
2、九尾の力を解析させれば、どうにかなるかしら
3、ねぇ、勇者としての鍛練をしましょう?
4、ねぇ、電話借りても良い?
↓2
- 991 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/13(日) 23:00:22.51 ID:nuXYxdGEO
- 1
- 992 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/13(日) 23:06:48.69 ID:FZmFM5eS0
- 2
- 993 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/13(日) 23:08:13.77 ID:SFYN3gGwO
- 1
- 994 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/13(日) 23:22:23.18 ID:9c6fHk2do
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 995 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/13(日) 23:32:09.84 ID:SFYN3gGwO
- 乙
杏たちの戦装束が出来てないとなると偽神託しても同行させるのは厳しいか…
若葉には悪いけど場合によっては単独で行かざる負えないかもな
- 996 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/14(月) 00:46:46.85 ID:hQ4VJZeRO
- 乙
一緒に行けるように修行開始なのかな?
頑張れ!
- 997 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/12/14(月) 23:20:44.81 ID:5H54QUdoo
- すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日はできれば通常時間から
- 998 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/14(月) 23:26:51.71 ID:XKd++os2O
- 乙ですー
そろそろ次スレだね
- 999 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/15(火) 09:13:21.50 ID:jsl3rjZKO
- そうだね
- 1000 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/15(火) 09:13:55.02 ID:vKsd//dlO
- あ
- 1001 :1001 :Over 1000 Thread
- ´⌒(⌒(⌒`⌒,⌒ヽ
(()@(ヽノ(@)ノ(ノヽ)
(o)ゝノ`ー'ゝーヽ-' /8)
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