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【安価でのわゆ】久遠陽乃は勇者である【1頁目】
- 53 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 17:31:46.57 ID:6v3Hokh5o
-
陽乃「お願い……力を、力を貸して……」
「ごめんね、貴女に辛い思いをさせてしまう」
陽乃「お母さんっ」
母親は陽乃の後ろに這って回ると、
陽乃の手首を結ぶ紐に噛みついて湿らせ
首だけで左右に引っ張って解こうとする
陽乃「お願い、お願いだから……っ」
九尾からの返答はない
傍に居るはずなのに、
まるで自分には関係ないことであるかのように、沈黙している
「手を、動かして」
陽乃「っ……」
言われるままに、手を動かして少しだけ緩んだのを感じて強引に動かす
ぬるりとした感覚に手首が滑って、ささくれ立っていた紐を無理矢理にすり抜ける
指の関節から嫌な音がしたが、関係なかった
陽乃「九尾ーっ!」
そして――叫ぶ。
- 54 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 17:38:33.77 ID:6v3Hokh5o
-
纏わりつくような不気味な感覚がまたふつふつと沸き立っていくそぶりを見せたが、
しかし、それはまたなりを潜めて
『よいのかや?』
陽乃「何がっ」
『妾の力はきゃつらの好物。ゆえに、使えば――狙われるぞ?』
ようやく反応を返した九尾は、
相変わらず状況を愉しんでいるような声色で問う
陽乃はだから無反応だったのか。と、はっとした。
陽乃が力を使えば走行中の車からだって脱出はできただろう
しかし学校でそうだったように
化け物たちは白い球体上の体を寄せ集めて進化し、
より凶悪な化け物となって姿を見せることだろう。
陽乃ならそれもなんとかできるかもしれないが、みんなを護れるという保証はない
1、力を使って戦う
2、力を使わずに、拘束を解いて逃げる
↓2
- 55 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/04(日) 17:41:59.39 ID:Qz5gU/88O
- 1
- 56 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/04(日) 17:45:57.58 ID:BmGFQASo0
- 1
- 57 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 18:13:28.09 ID:6v3Hokh5o
-
陽乃「それでも私は戦うっ!」
『ほう』
陽乃「戦っても戦わなくても奪われるなら――戦わない理由なんてないっ」
化け物がまとまって強大になってくれるなら、
戦う相手が一つになって寧ろいい。
もしかしたら守れないかもしれないが、
ここで戦わない選択をしたら、結果は変わらない。
だったら、少しでも救えるように戦うべきだと陽乃は思って
陽乃「お願い九尾、私に力を貸して」
『……良かろう。主様の望むままに』
体中に満ちていく不快感
今にも突撃しようとしていた化け物たちが動きを止める
足を拘束していた紐を片手で引きちぎって、立ち上がる
「陽乃ちゃん……」
陽乃「大丈夫だよ。お母さん。私、戦えるから。頑張れるから」
- 58 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 18:28:45.20 ID:6v3Hokh5o
-
不安がないと言えば嘘になる
怖くないと言えば嘘になる
けれど、今ここで膝を折ったら奪われたくない大切なものを奪われてしまう
だから、抗う
陽乃「おか――っ!」
突撃してきた化け物を反射的に殴り飛ばして、破壊する
陽乃以外のみんなはまだ拘束された状態で、とても逃げられるような状態ではない
拘束を解こうにも、
化け物が突撃してくるため一人を解放するのにも時間がかかる
その間にもほかの人が襲われることになるだろう
陽乃「お母さん……」
今傍に居るのは母親一人、父親は少し離れた場所だ
『呆けておる場合かや?』
陽乃「っ!」
- 59 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 18:54:18.63 ID:6v3Hokh5o
-
九尾の声にはっとして、慌てて突撃を回避する
蠢いている化け物は、今のところ7匹ほどだ
時間をかければかけるほど集まってくることだろう
陽乃「はっ……はぁ……」
どきどきと、異常なほどに心臓が脈打つ
まだ動き出してもいないのに、もう持久走を二周分行ったかのような疲労感がのしかかる
陽乃「大丈夫、私は……戦えるん、だからっ」
拳を握る
抗えるは己の身一つ
陽乃「はぁーっ」
深く息を吐いて、身構える
周りを漂う化け物一匹一匹に気を張り巡らせて、警戒する
ゾクゾクと体の内側で沸騰しようとしている不快感を、飲み込む
陽乃「まだ、戦える」
参考MAP:
https://i.imgur.com/OxMHybw.png
- 60 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 19:03:03.34 ID:6v3Hokh5o
-
↓1コンマ判定 一桁
0 00 失敗
1〜5 通常ダメージ
6〜9 成功
ぞろ目 大成功
※敵→陽乃
- 61 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/04(日) 19:04:19.68 ID:BmGFQASo0
- あ
- 62 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 19:07:07.18 ID:6v3Hokh5o
-
↓1コンマ判定 一桁
0 00 失敗
1〜5 通常ダメージ
6〜9 回避
ぞろ目 大成功
※陽乃→敵
- 63 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/04(日) 19:09:33.29 ID:BmGFQASo0
- あ
- 64 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 19:41:03.59 ID:6v3Hokh5o
-
化け物の攻撃は、とても単調なものだった。
方向だけは当然ながら上も左右も自由自在だが、
集合体にさえならなければ――行ってくるのは突撃ただ一つ
陽乃「!」
周囲に気を配り、動きを見せた化け物へとすぐに向き直って、
人がいない方向を背にして、横っ飛びに回避する
陽乃「っはっ」
化け物攻撃は早いだけのタックルだ。
当たれば即死しかねない――アクセル全開の車のような危険度だが、
陽乃とて、常人ではない。
当たっても耐えられることは耐えられるし、その速さには対応できる
しかし問題は攻撃する場合だ
陽乃は武術を多少嗜んでいるが、本腰を入れているわけではない
ただ、好きだからと触れた程度の力
それでは――弾丸には届かない
- 65 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 20:17:10.29 ID:6v3Hokh5o
-
振りぬいた拳は空を切る
恐れてはいない
食い千切られる覚悟で握った拳だ
けれど、それでは届かなかった
愛媛に現れていた個体よりも、
少しばかリ知恵のついている個体なのか、
陽乃の拳を避けて背後に突っ込んでいったのだ
陽乃「避けられたっ!」
振り返ろうとした陽乃めがけて、また別の個体が突撃する
それを回避した先で、また別の個体が突撃してくる
次から次へと、
突撃してくる化け物を避けている間に、
別の市街を襲っていた個体が陽乃のもとへと集まっていく
『主様』
陽乃「分かってるよっ!」
- 66 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 20:23:36.89 ID:6v3Hokh5o
-
力が足りない
手が足りない
みんなを護りたいという傲慢さを叶えるには――陽乃は弱すぎる
「うわぁぁぁぁぁぁぁっ」
陽乃「っ!」
「こっちに来ないでーっ!」
陽乃「やめっ……」
一人、また一人
陽乃の相手をしない個体が、陽乃の見知った人々の命を奪い去っていく
押しつぶされ、砕けていく骨の音
食い千切られ、崩れ落ちる肉の音
その家族の絶叫があたりに響き渡って――また、消えて
陽乃「なんでっ、なんでなんでなんでッ!」
『主様』
陽乃「私はここにいるのにっ! 貴方達の好物はここにあるのにっ! 殺すなら私を殺してよッ!」
- 67 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 20:36:26.77 ID:6v3Hokh5o
-
『騒々しいぞ小娘』
陽乃「っ」
急激に全身に絡みついてきた不快感と
腹の底から湧き上がってきた形容しがたいそれに、
陽乃は叫ぶことすらできなくなって崩れ落ちる
陽乃「あ……あ゛……」
ポタポタと、赤色の液体が口元から滴り落ちて
鉄臭さが鼻をつき、味覚を汚染していく
身体が砕けてしまうのではないかと思うほどの疲労感
陽乃「な……ぇ……?」
『代償もなしに、妾の力が扱えると思うておったのかや?』
陽乃「っ……」
『全てを救おうなど、出来ぬと知れ』
陽乃「それ……でもっ!」
立とうとした膝が震えて崩れる。
どれだけ強い意思があろうと、成し遂げられないことがあるのだと言うかのように、動きが鈍い
- 68 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 20:38:11.58 ID:6v3Hokh5o
-
↓1コンマ判定 一桁
0 00 最悪
1〜4 悪い
5〜9 普通
ぞろ目 最良
- 69 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/04(日) 20:40:13.29 ID:BMtjKoJTO
- たのむ
- 70 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 20:52:11.21 ID:6v3Hokh5o
-
「陽乃ちゃん……駄目よ」
陽乃「駄目じゃ、無いもんっ」
「お願い、貴女だけでも……」
陽乃の傍にいた母親は、まだ無事だった。
その分、
陽乃から離れていた親戚が次から次へと標的となって、
陽乃と同年代だった男の子も女の子も
その兄姉弟妹も喰われてしまっている
陽乃「嫌だ……絶対に嫌だっ!」
けれど、まだ生きている人はいる
みんなを救うためには、陽乃が戦って敵をすべて倒すしかない
しかしすでに戦い続けてきたその体
疲労はピークに達していて、九尾の力を身に纏う影響もで始めている
ふらつく体では、もはや母を抱えては逃げ切ることさえままならないだろう。
- 71 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 21:10:07.96 ID:6v3Hokh5o
-
『初めてにしては、主様はようやっておる』
陽乃「まだ終わってないっ!」
『まだなじみの薄いその体で無理をすれば、主様が滅びるぞ』
陽乃「それでも私は……っ」
戦えるのは陽乃一人なのだ
我が身可愛さにここで逃げたら、諦めたら――
陽乃「後悔なんてしたくないっ!」
『明日死するものが今死するだけのこと。それを守り己が死ぬ意味などあるのかや?』
陽乃「いつ死ぬか分からないなら、守る意味はあるよ」
崩れそうになりながら、立ち上がる
震える体を、歯を食いしばって耐え抜いて
吐きかけた血反吐を、まだ体を動かせと飲み下して
「無理をしてはだめっ貴女は……貴女達は人類の希望なのよ。こんな場所で失われては」
陽乃「私をぉぉぉぉぉぉぉ――見ろぉぉぉぉぉッ!」
- 72 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 21:11:35.01 ID:6v3Hokh5o
- ↓1コンマ判定 一桁
0 00 失敗
1〜4 回避
5〜9 成功
ぞろ目 大成功
※陽乃→敵
- 73 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/04(日) 21:14:55.33 ID:TEvGSoc5O
- はい
- 74 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/04(日) 21:15:20.94 ID:F6SU3HuEO
- 頼む!
- 75 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/04(日) 21:19:16.33 ID:k9rvx/EEO
- ここでまさかのゾロ目
- 76 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 21:25:49.59 ID:6v3Hokh5o
-
今の自分に出来るのは殴ることと蹴ることのみ
ただ全力で、全開で
で、あるのならば。
アスファルトを打ち砕くほどに力強く――踏み抜く
陽乃「退いて死ぬくらいなら」
人智を超えた化け物の身体
体躯に見合わぬ非常識な速度
普通では届かない
頑張っただけでは届かない
だから。
陽乃「死ぬ気でぇぇぇぇぇ――」
踏み抜いた地面を抉るように蹴飛ばして、地を駆ける
滑空しているような浮遊感
瞬く間に近づく化け物の身体
自分の体が砕けてしまうかのような勢いをそのままに
陽乃「届かせてみせるッ!」
漂う化け物の体を、撃ち貫いた
- 77 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 21:38:54.46 ID:6v3Hokh5o
-
勢いは化け物を貫いても止まることなく、
陽乃の体は周りを吹き飛ばす突風を巻き起こしながらコンビニに突っ込む
ガラスの破片が体を切り裂く
衝突した棚の硬さにぶつかった場所が鈍い痛みを持ち始める
陽乃「はっ……ぁ……」
血が絶え間なく流れ続ける
身体の中から上り詰めてきた吐き気に、吐血する
頭が重く、体がふらついて眩暈がする
陽乃「げほっ……はっ……」
『お主』
陽乃「なせばなるんだよ……全部が全部は無理でも。大抵、何とかなるんだよ」
崩れ落ちるようにコンビニから這い出てきた陽乃は、
それでも、まだ化け物はいるのだろうと立ち上がる
陽乃「守るんだ……私が、私が……戦える、私が……っ」
体中に痛々しい傷跡を残し、
失血死していてもおかしくないほどに真っ赤に染まった少女の姿を、
化け物から逃げ伸びた人々の多くが、目にしたという。
親戚のほとんどを失い、父親を失い、生き残った子供たちはPTSDを発症してしまうなど
決して被害は少なくはなかったが、それでも――陽乃は母親を救うことが出来た
- 78 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 22:11:26.86 ID:6v3Hokh5o
-
2015年07月30日
その日、世界は化け物たちに蹂躙され奪われてしまった。
多くの命と居場所を失い、
ごく限られた場所に、人々は逃げ伸びた。
陽乃達のいる四国を除けば、
長野などのごく一部の地域のみだという
陽乃の母親曰く、八百万の神々が力を貸し与え、
人々を護る聖域を作り、見初められた者を守護者として守っているらしい。
目に見えていない場所の真偽は不明だが、
少なくとも、四国には陽乃以外にも何人かの神々に見初められた少女がおり、
それらを、政府の任命によって表に出てきた【大社】と呼ばれる組織は、勇者と呼んだ。
陽乃の母親は、勇者と呼ぶことには不服だったそうだが、
しかし、プロパガンダ的な意味合いを除いたとしても、勇者と呼ぶべきであるとされたようだった。
- 79 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 22:26:28.42 ID:6v3Hokh5o
-
その大社によって、
勇者とされる子供達には招集がかけられることとなった。
香川県にある丸亀城を本陣として、
そこを改築して居を構え、勇者の鍛錬を含めた育成施設にする算段だという話だ。
陽乃の母親は
傍に置いておいた方が子供としては精神面に優しいのではと訴えたが
やはり、それも却下された。
組織の統治下にない強力な力があるのは危険だからだろう。と、
九尾はつまらなそうに鼻を鳴らしていた。
陽乃は多くを失う結果にはなったが、
それでも、本当に守りたかったものは守ることが出来た。
しかし、悔いはある
まだまだ弱くて役に立たないと苛立ちがある。
陽乃「私、もっと頑張るから。もっともっと、頑張って……今度は誰も死なないように、頑張るよ」
だから、陽乃は立ち止まろうとは思えなかった。
たとえ、化け物と戦い血に塗れボロボロになって――それでも立ち上がる姿が【バケモノ】と言われていようと。
- 80 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 22:27:38.73 ID:6v3Hokh5o
- 分岐点。
1、四国に残留
2、長野に向かう
↓2
- 81 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/04(日) 22:32:06.07 ID:W1/ckQ9YO
- 1
- 82 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/04(日) 22:33:02.36 ID:BmGFQASo0
- 1
- 83 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/04(日) 22:36:09.05 ID:6v3Hokh5o
- では本日はここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 84 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/04(日) 22:42:53.60 ID:BmGFQASo0
- 乙
陽乃さんのお母さん救えるとは思わなかったから驚いた…
それに陽乃さんも今までの心を病んでるイメージが覆りそうで予測がつかないな
- 85 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/04(日) 22:50:03.22 ID:F6SU3HuEO
- 乙
陽乃ちゃん(小6?)が初っぱな命削っててヤバい…これは天乃の御先祖様ですわ
長野行かないってことは歌野は…
- 86 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/05(月) 19:29:54.58 ID:iWUi+OC9o
-
では、少しだけ
- 87 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/05(月) 19:59:57.04 ID:iWUi+OC9o
-
√2018/07/30 丸亀城
陽乃「……」
陽乃は丸亀城の天守屋根上に登って、街を見下ろす。
事件から3年経った今も四国内部に留まる陽乃は、
長野にも四国と同様の状態にある場所があると聞いたときに、
今ならまだ大社の指揮下に入ることなく
混乱に乗じて長野の方に逃げ出せるのではないかという話もあったが、
それを却下して、四国残留を選んだ
その一番の理由は、やはり母がまだ生きているからだろう。
陽乃「長野に行くべきだったと思う?」
『バーテックスとやらと戦うのならば、行くべきであったろうな』
陽乃「でも私がいないと、お母さんが……」
『そうじゃのぅ。主様が勇者などという低俗なものを享受し、大社なぞに与しているからこそ無事と言えよう』
陽乃の母親は巫女としての素質を認められており、
大社預かりのみとなっている
それは、陽乃が大社に訴え出たからこそのものであり
そうしなければ、母親はあの人々に恨まれ――殺されていたかもしれない。
- 88 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/05(月) 20:13:30.63 ID:vX5B1NeJ0
- 来てたか
- 89 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/05(月) 20:20:47.12 ID:iWUi+OC9o
-
久遠家は、人身御供――人柱として捧げられなければならなかった。
そういった話がこの四国には蔓延しており、
あの神社の巫女が生き延びたせいで、
事態は一向に収拾が付かないとさえ言われ始めている。
陽乃やその母親が人身御供として捧げられたとしても
バーテックスが退いてくれる保証なんて微塵もないのにだ。
インターネットでは、燃えていく家を【お焚き上げ】とさえ言われる始末
もちろん、みんながみんなそう言った人々ではないのだけれど、
そんなことを真に受け、陽乃の実家を放火するくらいには余裕がない。
陽乃「私はここから――」
「わーかーばー、ちゃん」
陽乃のシリアスな思考を強制的に断ち切る声が陽乃のずっと下、
石垣のところにいる乃木若葉へと声をかける上里ひなたの姿があった。
乃木若葉は陽乃と同じ勇者で、上里ひなたは若葉の一番の親友でありその巫女だ
- 90 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/05(月) 20:39:22.06 ID:iWUi+OC9o
-
陽乃「あの二人、仲が良いわよね」
『羨望かや?』
陽乃「ん〜……少しだけ。でも、ああいうのがすぐそばにあると、頑張ろうって気になれる」
『いざとなれば切り捨てるべき有象無象のひと欠片でしかなかろう』
陽乃「ううん違う。大切なのよ。あれは。あれは、私達が決して失ってはいけない温もりなんだ」
人と人とが繋がる温もり。
仮初とはいえ、平穏であるからこそ、まだ見ることのできるその光景は、
かつて奪われてしまった世界に溢れていたものだ。
だからこそ、その姿をまだ見ることが出来ることを陽乃は良いことだと思っているし、
それらを守らなければならないと、より強く思う。
『妾は、郡千景とやらに賛同させて貰おう』
陽乃「郡さんも間違ってはない。こんな非常時に悠長だって意見も分かる」
陽乃だって、今こうしている瞬間にも長野ではたった一人の勇者がみんなを護っているのだから。と、
焦りと不安は胸にある。
陽乃「でも、刀だって鞘がなければ脆い鉄でしかないもの。乃木さんには上里さんとの時間が必要だわ」
- 91 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/05(月) 20:59:07.67 ID:iWUi+OC9o
-
『それのみで脆いのならば、折ってしまえと言っておる』
陽乃「貴女って人は……」
『神樹とやらの贄にでもしてやった方が、人類のためであろう』
陽乃「神樹様だけ残っても意味がないわ。それを護る人がいないと」
流石に虫けらなんて言わないものの、
3年経った今も、九尾は相も変わらず人を人として見ていない。
若葉達勇者や巫女も平等に考えているので寧ろ清々しささえあった。
とはいえ、九尾が害をなすようなことは今のところないので
今言って聞かなくても、いつか聞いてくれたらいいと陽乃は思っている。
『慣れ合うなど馬鹿馬鹿しい。かつてのように裏切られるとは思わぬのかや?』
陽乃……やめて」
『封をしたところで過去も人も変わらぬ。認めよ主様、人とは救い難い愚物であると』
1、やめてッ!
2、そんなことない……人は、ちゃんと分り合えるはずよ
3、認めてどうしろって言うのよっ
4、無視して降りる
↓2
- 92 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/05(月) 21:01:25.42 ID:vX5B1NeJ0
- 2
- 93 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/05(月) 21:03:06.30 ID:8TP+1cSXO
- 1
- 94 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/05(月) 21:41:01.68 ID:iWUi+OC9o
-
陽乃「やめてッ!」
『相も変わらず好まぬか』
陽乃「みんなを一緒にしないで……あんな人たちと、一緒にしないでっ」
『ふむ……それほど病むのなら、一思いに処分でもしてしまえばよいものを』
九尾はそれだけを言い残すと
空気に交じる不快感を薄れさせて、陽乃の中に潜っていってしまう。
3年前のあの日、陽乃達を贄と差し出した人々は今もこの神樹様に守られた世界のどこかで生きている。
そして、そんな人々から久遠家の情報は伝わって家が無くなるまでに至った。
九尾から見れば、その人たちも若葉達も変わらない人間という一つの種族でしかないのだろうが
陽乃は一緒くたに考えるつもりはないし
守る価値の有無など、考えたくなかった
考えてしまったら拳を握れなくなる気がして――
ひなた「誰かそこにいるのですか?」
陽乃「っ」
若葉「さっきの声は……久遠。久遠だろう?」
- 95 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/05(月) 22:17:59.49 ID:iWUi+OC9o
-
九尾へと怒鳴ったのが災いして、
下にいたひなたと若葉の声が陽乃のもとへと飛んでくる。
声を聞かせてしまった以上、居留守をする意味がないので顔を覗かせると
手を振るひなたと、
少し心配そうに眉を顰める若葉が見えた
若葉「そんなところにいないで、降りてきたらどうで……どうだ?」
陽乃「畏まらないでって言ってるのに」
若葉は陽乃の一つ下のため、
敬おうという気持ちも理解できるのだが、
久遠先輩というのを止めさせた結果、久遠さんになり、
3年間かけてようやく【久遠】になった。
出来れば下の名前で呼んで貰いたいと陽乃は思っているのだが、
それにはまだまだ程遠いようだ
若葉「やっぱり、学校も統一されて正式に先輩なはずなのに、先輩もさんもダメとは無理があります」
陽乃「私なんかに畏まってはいけないって言ってるの。貴女だって知らないわけではないでしょう?」
若葉「知っては、いますが」
陽乃「私と貴女達は対等でなければいけないの。私が上に立つわけにはいかないの。理解して」
- 96 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/05(月) 22:47:05.66 ID:iWUi+OC9o
-
若葉「では、久遠……さんも私を下の名前で呼んでいただきたい」
ひなた「久遠さんが下の名前で呼んでしまったら、一方的になっちゃいますよ」
若葉「それは……」
陽乃は先輩のため、若葉を下の名前で呼んでも普通だと言える
だが、その陽乃が若葉達に敬意を表して乃木さん、上里さんと呼ぶことで
若葉達なら抑え込めるという安堵が生まれ
久遠陽乃という【異物】の虞を中和させている
ひなた「残念ながら、久遠さんの力は大社ではまるで解析できていません」
そう言ったひなたは眉を顰めると、目線をかすかに下げて
ひなた「久遠さんに協力しているという九尾様がお答えして下されば変わるのですが」
陽乃「絶対に嫌らしいから、ごめんなさい」
ひなた「仕方がありませんね。やっぱり、ここは若葉ちゃんが頑張るしかありませんよ」
若葉「そう言われてもなぁ……」
1、ねぇ上里さん。長野の方に応援を出したりはしないの?
2、今そんなでは、後々大変だわ
3、乃木さん、少し手合せお願いできる?
4、乃木さんのこと頼むわね。上里さん
↓2
- 97 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/05(月) 22:49:30.82 ID:AyZeDbwaO
- 1
- 98 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/05(月) 22:54:12.09 ID:vX5B1NeJ0
- 1
- 99 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/05(月) 23:01:28.41 ID:iWUi+OC9o
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 100 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/05(月) 23:18:51.84 ID:vX5B1NeJ0
- 乙
今作の陽乃さんは早速闇こそ抱えているものの人格破綻まではしていないのが救いだな
ところで今回の九尾はほとんどテレパシーで会話してるけどあまり実体化したりしないのだろうか
- 101 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/06(火) 05:47:32.25 ID:hPwIvlMsO
- 乙
九尾の声は幻聴説…いやアカンな闇深過ぎる
- 102 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/06(火) 19:50:54.46 ID:nUMAqqqRo
-
では少しだけ
- 103 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/06(火) 20:00:41.06 ID:nUMAqqqRo
-
陽乃「ねぇ上里さん。長野の方に応援を出したりはしないの?」
ひなた「そうですねぇ……今のところそういった話は出ていません」
若葉「現状は問題ないと定時連絡でも言われていますが、やはり……不安ですか?」
陽乃「片や一人、片や五人。不安がなくても最善を尽くすのなら――」
ひなた「いけません!」
ひなたは陽乃の言葉を先読みして、声を上げる。
ひなた「お気持ちは分かりますが、あまりそのようなことを言われては」
陽乃「上里さんが耳を塞いでくれていてもダメ?」
ひなた「駄目です」
申し訳ありませんがと付け加えたひなたは、若葉を一瞥すると息を吐く。
若葉が刀を抜くことが出来るとはもちろん思っていないのだが
四国における暫定的なリーダーを委ねられている若葉は、陽乃を律する義務がある。
それゆえに、陽乃がもし神樹様や大社を批判するようなことがあれば罰しなければならない。
- 104 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/06(火) 20:17:57.40 ID:nUMAqqqRo
-
勇者とは八百万の神々――今は、土地神と統一されている神々から力を授かり、
バーテックスに対抗し得る者達のことであり、
巫女とは、その土地神の声を聞く者のことである。
声と言っても九尾の狐のようにはっきりとした声ではなく、
何らかの象徴や暗示と言った抽象的な形――母親曰く神託を受けるのだという。
それに対して、
陽乃は土地神から力を借り受けているというわけではない上に
その協力神―とされている九尾―が大社に非協力的なため警戒されており
一時は陽乃を勇者とするのは問題があるとされたが
なまじ力の存在だけは証明できてしまったため、勇者として管理されることになった結果
陽乃の言動はやや制限されているような状態になってしまっている
陽乃「私が諏訪に行くって言ったら……」
ひなた「大騒ぎになりますね……こっそり抜け出したりなんてしたらパニック間違いなしです」
若葉「それは、もしかしなくても私の責任か?」
ひなた「ん〜……十中八九咎められるのは若葉ちゃんですね」
- 105 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/06(火) 20:33:08.80 ID:I90o20iKO
- 陽乃さん中々ややこしい立場なんだな…
- 106 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/06(火) 20:40:32.36 ID:nUMAqqqRo
-
若葉「私に久遠さんを止めろだなんて元々無謀だろう」
陽乃「乃木さんの居合を見切れるほどの実力はないのだけど」
若葉「何を言いますか。来ると分かっていればいともたやすく躱せるでしょう」
陽乃「対応出来ないわけじゃないのに、謙遜してくれちゃうんだから」
陽乃はいやいやと否定する若葉に苦笑する。
実際の話、陽乃は若葉よりも背が低く
居合を極めんとしている若葉の瞬発力には劣っている
しかし近距離戦闘が主体の陽乃は必然的に
確実に間合いを詰め、一撃を入れるための反応速度を備えていて、
若葉も十分に体つきはいいが、近接を主体として鍛えている陽乃には残念ながら劣るところもある。
そんな互いに拮抗していると言ってもいい状態だからこそ、若葉を暫定リーダーとして
陽乃を抑え込む役割が与えられているわけだが。
若葉「間違っても、こっそり抜け出すなんてやめてくださいよ」
陽乃「前向きに考えておくわね」
陽乃がそう言って笑うと、
若葉はあまり信じていないといった様子で、笑った
- 107 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/06(火) 20:58:07.72 ID:nUMAqqqRo
-
ひなた「神樹様からのお声もありませんから、まだまだ大丈夫ですよ」
若葉「久遠さんは片や一人と言われましたが、白鳥は私達六人に引けを取らないと思っています」
若葉は陽乃の五人を覆すかのように六人を強調して
若葉「色々と柵はありますが、久遠さんも私達と同じ学校の先輩で仲間ですよ」
陽乃「それこそ問題発言になっちゃうわよ。私と仲良くし過ぎたら罰則を受けちゃうんだから」
ひなた「親交を深める分には問題ありませんよ」
陽乃の困った表情にひなたはそう答える。
陽乃が他の勇者たちと仲良くなること自体、大社は問題ないと思っている。
むしろ、それを好ましく思っている節さえあるのだ。
そんなことは関係なしに、仲良くなって貰いたいとひなたは思う。
ひなた「久遠さん、もしよろしければお昼をご一緒しませんか?」
若葉「ひなた」
ひなた「久遠さんの一人でいるべきという主張も一理ありますが、やはり……」
- 108 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/06(火) 21:24:15.45 ID:nUMAqqqRo
-
陽乃は悪しき存在であるという情報をみんながみんな鵜呑みにしているわけではないけれど
とりわけ、郡千景は陽乃を良く思っていない。
巫女であるひなたを含めた七人の中でも、最もインターネットに通じているのが千景だ
出会った当初は陽乃がそうだと知らなくても、
少し時間があれば目にしてしまうその情報を知ってしまった千景が、
貴女が死ねば助かるんじゃないの? と言ってしまったことがある。
その時に陽乃は「冗談でも言われたくない」とやや空気をひりつかせたのだ。
陽乃「私がいると、高嶋さんまで気を使っちゃうでしょう?」
若葉「それは……気にしないように私が」
陽乃「………」
その日以降、二人の関係は芳しくない
千景と一番親しいように感じられる高嶋友奈が取り持とうと努力しているが――無駄に終わっていて
そこにいることを問題とはしていないけれど
陽乃がいるとどうしても空気が悪くなりがちだ
もっとも、いてもいなくても変わらないのかもしれないが。
1、悪いけれど、遠慮しておくわ
2、ありがとう、その気持ちだけ戴くわ
3、私よりも正式な勇者を優先すべきだわ
4、分かったわ。同席させて
↓2
- 109 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/06(火) 21:28:36.67 ID:bySs8KbPO
- 4
- 110 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/06(火) 21:33:10.52 ID:qhyd5XNi0
- 3
- 111 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/06(火) 21:49:58.12 ID:nUMAqqqRo
-
陽乃「ううん、やっぱり良くない」
若葉「久遠さんっ」
陽乃「私よりも正式な勇者を優先すべきだわ」
若葉「貴女も正式な勇者であるはずだ!」
陽乃「ありがとう」
若葉「くっ……」
陽乃の笑みに、しかし若葉は歯を食いしばる
ありがとうと言われても何かが成せているわけではない。
三年前、最初の襲撃を受けた島根から四国への帰路
聖域の門番であるかの如く瀬戸大橋の入り口に立っていたのが他でもなく陽乃だった。
酷く傷つき、今にも崩れ落ちてバラバラになってしまうのではないかと思うほどに覚束ない様子で
それでも、バーテックスを穿つ姿は見る人が見れば化け物だったかもしれない。
だがそれでも、若葉には勇者に思えた。
若葉「誰が何と言おうと、貴女は勇者だ久遠さん」
ひなた「若葉ちゃん……」
若葉「行こう。ひなた」
申し訳なさそうに一礼をして去っていく二人に、陽乃は笑顔で手を振って見送る
- 112 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/06(火) 22:17:39.43 ID:nUMAqqqRo
-
陽乃「ままならないものね」
『煩わしいと思うのならば排除すればよい』
陽乃「駄目よ。貴女、そう言って前に郡さんを殺そうとしたでしょう」
『主様の目的に小娘は不要であろう。なれば生かす意味も無し』
陽乃「郡さんがいたほうが私の負担が軽くなる。より多くの目標を達成できるわ」
九尾は不要と思えば処分してしまえが前提で
陽乃が止めなければ、今話していた若葉とひなただって殺してしまいかねない。
特に、陽乃を阻む役目を担っている若葉のことは寝首を掻くこともあり得る。
そしてそのためならば、無害と言えるひなたでさえも手にかけることを厭わない。
陽乃「とにかく、乃木さん達に手を出さないで頂戴。私がやったことにされるんだから」
『その程度の謀、主様が問われぬようになど容易く――』
陽乃「駄目って言ったら駄目なの。私は誰も死なせたくない」
『障害なぞ、排除してしまえばよいものを。難儀なものよ』
陽乃「一番簡単な手段ばかり講じていたら、通じなくなった時に積んでしまうでしょう?」
『ふむ……納得しておこう』
- 113 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/06(火) 22:25:42.63 ID:nUMAqqqRo
-
九尾の狐が表に干渉している不快感が薄れて陽乃は深々と息を吐く
陽乃は九尾の力を借りているが、
それに完全な適応をしているわけではない。
戦っていない時はただの不快感といった程度で済むが、
その力を全身へと巡らせ、行使するとなると多大な負荷がかかる
時間をかけ過ぎれば反動で陽乃の体が傷ついてしまう
陽乃「ほんと……ままならないものね」
大社からは危険物扱い
勇者の仲間内では腫れもの扱い
護るべき人々からは化け物扱い
それらのために頑張れば頑張るほど、体が蝕まれていく。
長野の勇者である白鳥歌野が孤軍奮闘するのではなく、
自分こそが孤独な勇者であるべきだったのだと、陽乃は思った。
- 114 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/06(火) 22:29:06.07 ID:nUMAqqqRo
-
√ 2018/07/30 昼 (丸亀城)
01〜10 杏
31〜40 若葉
51〜60 球子
81〜90 友奈
↓1のコンマ
※それ以外は通常
- 115 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/06(火) 22:31:55.34 ID:qhyd5XNi0
- あ
- 116 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/06(火) 22:38:29.10 ID:nUMAqqqRo
-
では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 117 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/06(火) 22:50:56.08 ID:MzthJUzdO
- 乙
様々なところから邪魔者扱いな上に迂闊に動くと九尾が勝手なことしかねないから身動きも取りづらい…中々辛い状況だなぁ
あとのわゆ編に入ってから投稿量が増えてきて嬉しい
- 118 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/06(火) 22:56:38.32 ID:zXSBQRaSO
- 乙
多いし早いな前は今頃開始だったはず…
この千景に前の周の千景を見せた反応をみたい
- 119 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/07(水) 01:48:01.07 ID:gpejg5A6O
- 乙
境遇がハードモードで時代もハードモードだな
- 120 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/07(水) 19:58:52.09 ID:zUEGVc1vo
-
では少しだけ
- 121 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/07(水) 19:59:46.05 ID:0U59RMbCO
- かもーん
- 122 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/07(水) 20:01:26.87 ID:zUEGVc1vo
- √ 2018/07/30 昼 (丸亀城)
陽乃はみんなが集まっている食堂には向かわなかった。
若葉達と話したその足のまま日陰になっている石垣を探して腰かけると
朝のうちに用意しておいたおにぎりを鞄から取り出して、一口かじる
世界が奪われてしまう以前の陽乃には、到底考えられない食事だった。
以前の陽乃には、必ず傍に人がいた。
慕ってくれる人、ただ仲良くなった人
陽乃はすべての人に愛されていたとは思っていないし
嫌っている人もいるだろうことは自覚していたが、それでも愛してくれた人がいたと思っている。
それが今は、欠片もない。
殆どの人が奪われた。
あの日、陽乃の願いは聞き届けられることなく即座に避難させられなかった結果だ
護れた子もいる
けれど、ほとんどすべてを失って――
陽乃「……あっ」
無意識に力が入って、握りつぶしたおにぎりが崩れて地面に落ちる
どれだけ時間が経とうと、あの日の後悔は消えてはくれない
- 123 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/07(水) 20:14:09.89 ID:zUEGVc1vo
-
後悔を思い起こしてしまったからか、嫌悪感がふつふつと湧いて来る
やり場のない怒りを受けてしまったおにぎりのせめてもの抵抗力が
手のひらにベタベタと張り付いているのがまた不快感を生む。
とはいえ、それで発狂するほど子供でもなくなった陽乃は、
過去よりも今、落としたご飯のことを考える。
食べ物を粗末にすることは以前はもちろん今も許されたことではないと眉を顰めつつ
しかし拾って食べるわけにもいかず、溜息を零して気分を仕切りなおして――
若葉「こんなところにいたんですね」
声をかけられて顔を上げると、食堂で使われているトレイを持っている若葉が立っていた。
陽乃もさすがに困惑して呆然としてしまう。
若葉「なにか?」
陽乃「食堂から持ち出したらいけないんじゃなかったの?」
若葉「特別にお願いしました」
苦笑いして答えた若葉は、そのまま陽乃のそばに来ると、
隣に失礼します。と、一応は一声かけてから石垣に座る。
- 124 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/07(水) 20:27:04.31 ID:zUEGVc1vo
-
陽乃「何を考えているの? 正式な勇者を優先してって言ったでしょう?」
若葉「ええ、正式な勇者を優先しているつもりです」
陽乃「貴女の個人的な判断ではなく大社が定めた勇者を優先するべきだって言ったのよ」
陽乃も勇者として定められているが、
それは特例であって正式とは言い難いものになっている。
ゆえに、正式な勇者とは乃木若葉、高嶋友奈、伊予島杏、土居球子、郡千景の5名となる
しかし若葉は自分がそう思うからと陽乃を含めて、あろうことか抜け出してきたらしい。
陽乃は内側に感じる嫌悪感をどうにか飲み込む
陽乃「リーダー失格だと言われたらどうするの?」
若葉「久遠さんと郡さんを仲違いさせたまま、何も成せていない以上失格というのは妥当ですよ」
若葉は小さく笑って、膝上に置いたトレイを持ち上げる
二枚重ねだったのか、膝上には別のトレイが残った
若葉「久遠さん、こっちをどうぞ」
陽乃「え……」
若葉「久遠さんの分も、持ってきたんです」
- 125 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/07(水) 20:41:07.73 ID:zUEGVc1vo
-
若葉は自分の膝上のトレイが落ちないように気を付けながら、
陽乃の膝に持ち上げた方のトレイを乗せる。
トレイの上にはうどんの入っている小鉢が二杯あって、お箸も二膳用意されていて
一人分を手に取った若葉は自分の膝上のトレイに乗せる
若葉「余計でしたか?」
陽乃「余計では、ないのだけど……私が用意しているとは思わなかったの?」
若葉「その時は、自分で食べようかと」
陽乃「そう」
若葉は愛想笑いに似た笑みをずっと浮かべている
余計なことをしてしまったと思っているのなら、
初めから言ったとおりにみんなの方に行けばよかったのにと、陽乃は顔を顰める
若葉「久遠さんうどんはお嫌いでしたか?」
陽乃「ごめんなさい、有難いのだけど……やっぱり気になっちゃって」
若葉「向こうなら大丈夫ですよ。郡さんには少し異を唱えられるかもしれませんが、これも長の務めです」
- 126 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/07(水) 20:52:11.90 ID:zUEGVc1vo
-
若葉「私は、久遠さんの味方になりたいと思っています」
陽乃「味方……?」
若葉「長野への応援を切り出したのは、ここに居辛いからではないですか?」
陽乃「どうしてそう思うのかしら」
若葉「客観性を捨てたとしても大社や勇者、人々からの扱いを見聞きしていればそう感じますよ」
陽乃は非常に肩身の狭い思いをしている
それがたとえ理由あってのことだとしても
息苦しさを覚えるには十分で、
解放されたいと思うには事足りていて
どちらにせよ辛いのならば、他者を救済できる方に進みたいと思うものだろう。
若葉「人手不足な長野への応援、手持ち無沙汰な私達にとっては確かに合理的な提案だと私も思います」
陽乃「貴女そんなこと言ったら」
若葉「仲間の助言を聞かずして何が長か。たとえ私に上の組織があろうと貴女の長は私に他ならないでしょう」
だからこそ発言を阻ませたりはしないし絶ったりはしないと若葉は明言する
1、どうしたの? 急にリーダーらしいこと言っちゃって
2、上里さんに怒られちゃうからそういうのは駄目よ
3、それで? 貴女の推察が正しいとしてどう味方してくれるのかしら
4、そうね。正直、私はここに残るべきじゃなかったって思ってる
↓2
- 127 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/07(水) 20:54:19.86 ID:kVHnIm2t0
- 2
- 128 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/07(水) 20:57:14.16 ID:qXi2iyx6O
- 2
- 129 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/07(水) 21:29:10.73 ID:zUEGVc1vo
-
陽乃「上里さんに怒られちゃうからそういうのは駄目よ」
若葉「ひなたなら私の判断を後押ししてくれると思います」
陽乃「貴女は私の抑止力なのよ? それが、自ら私に肩入れするだなんて大社が黙っていないわ」
若葉「だとしても、貴女を独りにして良い理由にはならない」
陽乃「……」
若葉はひなたの名前を出してなお、陽乃のことを諦めようとしない。
暫定とはいえ、
リーダーという役目を与えられた責任を感じているのだとしたら立派だと、陽乃は思う。
けれど、本当にそれだけなのか。
これだけの決意があるのなら
ひなたが自分の後押ししてくれると信じているのなら
ひなたがお昼を一緒にどうかと誘った少し前の時間
今と同じくらいに踏み込もうとしても良かったのではないかと、陽乃は目を細めて
陽乃「私が何か企んでるかもしれないって、探りを入れてるんじゃないの?」
若葉「そんなつもりなんて毛頭ありませんよ」
- 130 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/07(水) 21:49:09.10 ID:zUEGVc1vo
-
若葉「助けに行きたくても白鳥を助けにはいけない。だから、せめてこの手の届く貴女だけは取りこぼしたくないんだ」
陽乃「なに、それ……」
若葉「私を拒まないで欲しい。独りにならないで欲しい」
若葉は希うように陽乃を見る。
食事よりも、陽乃のことを優先しようとしてくれているのを表すかのように
持ってきたうどんには一度も手を付けていない
陽乃は別に拒んではいない。
ただ、自分よりも優先すべき人達を優先して欲しいと思っているだけで
陽乃「貴女自分が何を言っているか本当に分かってるの?」
若葉「分かっている!」
陽乃「っ」
若葉「貴女が望むなら、私は貴女がここを出ていく協力をしたっていい」
若葉は膝上のトレイを落としかねない勢いで声を上げて
若葉「郡さんには友奈がいる。だから貴女には私……それでは駄目か?」
陽乃へと、手を差し出した
- 131 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/07(水) 21:57:37.32 ID:zUEGVc1vo
-
↓1コンマ判定 一桁
奇数 成功
偶数 失敗
ぞろ目 成功
- 132 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/07(水) 21:58:10.00 ID:qXi2iyx6O
- あ
- 133 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/07(水) 22:15:18.21 ID:zUEGVc1vo
-
陽乃「その申し出はありがたいのだけど……」
若葉「私では不服なのか?」
陽乃「問題はあるけれど乃木さんに不服はないわ」
そう答えた陽乃は自分の胸元を撫で下ろす。
ほんの少しだけ、嫌悪感が薄れたような気がした。
確証はないが、違和感がある。
もしもこれで違うのなら赤っ恥だが……それだけで済む。
陽乃「貴女、乃木さんじゃないでしょう?」
若葉「何をっ」
陽乃「乃木さんは真面目な人よ。私がお願いしたことを受けてなお、舞い戻るなんて出来ない」
若葉「どうしても――」
陽乃「それに……さっきからずっと貴女の力を使っているときと同じ感覚があるのよ。九尾」
若葉「………」
若葉は陽乃をじっと見つめて、そしておもむろにふっと笑うと
ずっと触らなかった端を手に取って、小鉢の中へと先を突っ込む
若葉「乱れのある今なら御しやすいと思ったが、なかなかどうして……難しいものだな」
- 134 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/07(水) 22:53:01.82 ID:zUEGVc1vo
-
陽乃「本物の乃木さんは?」
若葉「無論、上里ひなたと共に食堂にいる。これは妾の力によるまやかしだ」
陽乃「危害は加えていないのね?」
若葉「そういう契りがある」
うどんを箸で持ち上げた若葉はそれをまじまじと見つめて、ぽちゃんっと小鉢の中に落とす。
跳ねた汁がトレイに飛び散って僅かに若葉の服を汚すが、
そんなことはまるで気にせずに、苦笑する。
若葉の姿をしてはいるが、まるで若葉ではない
陽乃「どうしてこんなこと」
若葉「主様は妾にも真に心を開かぬ。であるならば、聞く者を用意せねばなるまいよ」
陽乃「だからって乃木さんの姿を借りるなんて――」
若葉「元より気など許せぬ者共の真偽不明瞭に今更思うことなどあるまい」
陽乃「………」
若葉「しかし案ずるな。妾は可能な限りに小娘を模倣したゆえ言葉の全てが偽りにはならぬ」
若葉に扮したままの九尾は、喉を鳴らす笑いを零す
それはもう、若葉の声ではなく九尾の声だった。
若葉「小娘の口から聞いてはおらぬだけのこと、心を覗き見たとでも笑えばよい」
1、二度とこんなことしないで
2、どうしてこんな嫌がらせするのよ
3、貴女、もしかしていつもこんなことしてるの?
4、だったら乃木さんである貴女が答えて。私がここにいて良いと思ってる?
↓2
- 135 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/07(水) 22:56:35.13 ID:jFWiay41O
- 4
- 136 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/07(水) 23:00:56.70 ID:kVHnIm2t0
- 4
- 137 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/07(水) 23:01:34.51 ID:2+kHYT0cO
- 4
- 138 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/07(水) 23:02:08.73 ID:zUEGVc1vo
-
ではここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 139 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/07(水) 23:12:33.92 ID:jFWiay41O
- 乙
コンマは九尾を見破れるか否かの判定だったのか…
でも確かに若葉が妙にイケメンだと思ったらよくよく見たらバレる前から違和感があったな
- 140 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/07(水) 23:19:40.94 ID:2+kHYT0cO
- 乙
後期の若葉はともかく前期の若葉にこの対応は無理でしょ
- 141 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 02:26:23.65 ID:yW+rMRKkO
- 乙
やだ陽乃さん鋭い
- 142 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/08(木) 21:32:04.60 ID:OWfdUIpSo
-
では少しだけ
- 143 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 21:33:05.65 ID:UEQErAyxO
- やったぜ
- 144 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/08(木) 22:04:46.69 ID:OWfdUIpSo
-
本当に若葉の見た目だけでなく思考も可能な限りに模倣しているのだろうかと、
陽乃は若葉に扮したままの九尾を見つめる
九尾の狐は、控えめに言っても性格が悪い。
今の陽乃が思い描く人間というものと比較してもだ。
だから陽乃をからかっている可能性も捨てきれない。
しかし――
陽乃「だったら乃木さんである貴女が答えて。私がここにいて良いと思ってる?」
若葉「無論ですよ久遠さん。私にとって貴女は勇者だ。蔑まれてなお護ることを放棄しない清さは私の中に羨望の念を絶やさない」
若葉――九尾は自分の胸元に手をあてがう。
そこに宿る想いに触れているかのように愁いを帯びた笑みを浮かべる九尾の瞳は陽乃を見てはいなかった。
九尾は陽乃の内心の葛藤を知っている。
だが、若葉はそれを知る由もない。
その情報の差を維持したままの九尾は陽乃へと目を向けて
若葉「みなの前を歩めるであろう勇者然としたその強かさを持つ貴女こそ、リーダーになって欲しいと思っているくらいだ」
陽乃「私が強かだなんて、馬鹿にしてるの?」
若葉「私は心折れていると思います。ひなたが支えてくれることで立ち直れるかもしれませんが、もしも孤独なら耐えられないと思いますよ」
- 145 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/08(木) 22:25:38.22 ID:OWfdUIpSo
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若葉「私は久遠さんの心を知らない」
もしかしたら陰で悲しんでいるのかもしれないと若葉は首を振ると
それでも。と、上乗せして
若葉「こんな人々なんて守る価値などないと口にしないのは立派だと思います」
陽乃「……だから、私はここにいたほうが良いと?」
若葉「私はここにいて欲しいと思っていますが、それと同時にここから解放されて欲しいとも思っている。というのが正直な答えです」
若葉はそういうと、ようやく陽乃へと目を向けた。
その瞳には罪悪感と心苦しさが滲んでいて
陽乃と目が合えば、申し訳ないと言うかのように逸らしてしまう
若葉「人々が抱く過った敵愾心に、これ以上傷ついて欲しくない」
陽乃「……」
若葉「大社から貴女の素行に問題ないかという窺いが来るたび、街の人からあの娘は。という不安が聞こえるたび強く思う」
陽乃「貴女、どこまで――」
若葉「リーダーですから」
若葉は自嘲気味に鼻で笑って
若葉「だから、可能なら貴女に協力したいと思う。私だけでも貴女の味方でありたいと……思う」
- 146 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/08(木) 23:00:39.33 ID:OWfdUIpSo
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若葉「郡さん達を説得できたとしても大社は貴女のその力に畏怖の念を抱き続ける」
陽乃「でしょうね……」
若葉「だから、ここにいて欲しいがいて欲しくない……答えに、なっていませんね」
若葉はそう、困ったように笑う。
若葉と言ってもこれまでの語りはすべて九尾によるもので、本当の乃木若葉の言葉ではない。
しかしながら、そのすべてではないにせよ若葉が心のうちに抱いている言葉も少なからずあることだろう
若葉は陽乃を勇者と言った。
陽乃が孤立していることを望ましく思っていないのも事実
人々や大社からの陽乃に対する不信感をリーダーとして強く感じているであろう若葉が、
陽乃をどうにかして救いたいと思ってくれている可能性も0ではない。
若葉「主様の親類縁者が贄とされたこと、それをした人間が世界に蔓延した憎悪の念の元凶であることも小娘は知らぬ」
陽乃「それを知ったら幻滅するかしら?」
若葉「知ればなおのこと憐れむであろうな。もちろん、だとしても害することを良しとはせぬであろうが」
陽乃「解放されて欲しい?」
若葉「命を賭けて守っても報われないだなんて、あんまりだろう?」
- 147 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/08(木) 23:42:48.79 ID:OWfdUIpSo
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陽乃「乃木さんなのか貴女なのかどちらかにして貰えないかしら」
若葉「くふふっ……たとえ戦いの果てに尽きたとしても残る者共が価値無き命であれば徒死に同じよ」
若葉の顔で、若葉が浮かべないような笑みを浮かべる
命を賭けても報われないなんてあんまりだろう。とは、若葉の言葉だと陽乃は苦笑する。
九尾はそんなこと言わない。
陽乃「貴女にとっては、この世界に生きている人なんて護る価値無いんでしょうね」
若葉「いかにも。妾にとっては有象無象よ。護るのは主様であって妾ではない」
くつくつと笑う若葉は、
すっかり伸びたうどんの入った小鉢をトレイごと脇に避ける
若葉「手は貸す。しかし、妾は主様の望み以上に価値無き者共を救うことなどあり得ぬとゆめゆめ忘れぬでないぞ」
陽乃「あら……そういう助言をしてくれる優しさはあるのね」
若葉「難癖をつけられても困るからのう」
若葉はそういうと、体をだんだんと透過させて
若葉「主様がここを離れることも留まることも止めはせぬよ」
そう言い残して九尾が消え、残された二人分の伸び切ったうどん
陽乃はどうしたものかと、ため息をついた
- 148 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/08(木) 23:46:29.31 ID:OWfdUIpSo
- √ 2018/07/30 夕 (丸亀城)
01〜10 ひなた
21〜30 友奈
61〜70 若葉
81〜90 球子
↓1のコンマ
※それ以外は通常
- 149 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 23:48:52.18 ID:Utlp9ylmO
- あ
- 150 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/10/08(木) 23:54:52.11 ID:OWfdUIpSo
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日は恐らくお休みをいただくかと思います
再開は明後日、可能であればお昼ごろから
- 151 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/09(金) 00:08:16.70 ID:VRxJWttUO
- 乙
早くみんなと仲良くなって陽乃に癒しを与えないとだな
あと時代が違うのもあるけど九尾の雰囲気今までとだいぶ変わってるなぁ
- 152 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/10/09(金) 00:16:14.02 ID:/v/7XwtcO
- 乙
九尾にこんな特技があったなんて……
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