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【安価でのわゆ】久遠陽乃は勇者である【2頁目】
- 502 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/15(月) 21:15:02.90 ID:K2SsYy4jo
-
陽乃「私……ただ、死にたくないだけだったのに……」
目の前で奪われていく命
その一つでも救うためにと、力を得た
それをもってしても、護れた親類は母親のみ
その死に物狂いの生還が、人々の憎悪の対象になっている
ならば、死ねばよかったと?
あぁ、死ねばよかったのだ。
みんながみんな、それを声高に叫んでいた
陽乃「死にたく、無いのに……」
『なにゆえ、主様が行った』
陽乃「貴女だったら、皆殺しにしていたでしょう?」
『奇妙なこと言うものじゃのう。アレらに、生かす意味があったのかや?』
陽乃「……だって、あんな人たちにだって、大切な人が」
『いるから……なぁに?』
陽乃「え……」
九尾の声が、急激に女性めいた高いものに変質する
狐の形をしていた影が歪んで、どろどろとした汚泥のように立体感を持ち始めて
それはやがて、一人の女性の姿へと変わる
- 503 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/15(月) 21:31:10.03 ID:K2SsYy4jo
-
「そんなもの……殺してしまえば良いと思いますよ」
陽乃「九……尾……?」
九尾は、様々な姿を模すことのできる幻術を得意とする妖狐だ。
もちろん、女性の姿にだって切り替わることができる
だが、纏う雰囲気が異常だ
九尾とはまるで違う、憎悪に塗れている力
「もし仮に、貴女が言うようにそれらに大切な人がいたとしましょう」
陽乃「……っ」
「それらも含めて、殺してしまえばいいんです」
女性は、容姿に見合わず高い声で言う
子供のように甲高い、頭に響く声
けれど言葉は……純粋に殺意に満ちている
「みんな、殺してしまいましょう」
陽乃「やめて……」
「私を辱めた男の子供達が、私の子供をまた辱めたのだから」
陽乃「やめ――……ぁっ……」
立ち上がろうと床に手を突いた瞬間、視界が揺れる
下を向くと、血が滴る
九尾の力なんて比較にならないほどの、体への負担
陽乃「ぁ……ぅ……ごぷっ……」
身体の中身が捻り潰されるような痛み
それだけでなく、血が溢れ出ていく
「貴女 "私達の子" なのね」
陽乃「私……たち?」
「私とあの人の子だからそんなに苦しいのでしょうね。でも、大丈夫。貴女が死ぬ前に、この国の人間を皆殺しにするくらいは容易いですから」
- 504 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/15(月) 21:46:11.63 ID:K2SsYy4jo
-
酷く冷たい手が、陽乃の頬を撫でる
九尾が先日話してくれた、九尾ではない力
彼女をもってして、最も厄介だと言わざるを得ない存在
――伊邪那美命
陽乃「わた……し……」
九尾は言った
貴女が滑稽にも人を殺めることを良しとしないからなりを潜めている。と
だが陽乃は今日、人を殺してしまった
九尾の力によるものでもなく、自分の力で。
多くの人に裏切られ、石を投げられ、憎悪の対象とされていた
彼女が表に出てくる理由としては十分すぎると言っても良い
「貴女は私の子。可愛い子。お願いを聞いてあげても良い」
だから。と、人の形をした憎悪は笑う
「人間なんて、殺してしまいましょう。貴女を傷つける人間も、それらの世界も。全部殺してしまいましょう」
それが、救い
それが、施し
「貴女はゆっくり、眠りなさい。私の可愛い子」
1、だめ……
2、殺してほしくない人もいるの
3、だったら……力を貸して……遠くに行く、ための力
4、私、死にたくないの
↓2
- 505 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/15(月) 21:47:58.99 ID:8hbJOjJHO
- 2
- 506 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/15(月) 21:48:32.16 ID:9NAOKT0K0
- 1
- 507 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/15(月) 22:09:29.54 ID:7eeVrDswO
- マジで誰か助けて
- 508 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/15(月) 22:09:36.57 ID:K2SsYy4jo
-
陽乃「だめ……」
「どうして? 生かしておく必要があるの?」
心まで凍り付きそうな、冷めきった手
瞳には感情が感じられず、声も冷たい
「貴女を傷つける人間を守ってあげる意味があるの?」
陽乃「それは……」
杏の両親みたいな人もいる
けれど、ほとんどの人がそうではない
この神は、そんな違いなど考慮せずに皆殺しにするはずだ
陽乃「だめ」
「貴女を辱める人間なんて、生きていても仕方がないでしょう?」
陽乃「でも……私は殺したくない……」
「理解が出来ない」
かの神は、呟くように繰り返す
憎悪が影のように揺れて……陽乃の身体へと負荷が重くのしかかる
眩暈がする
口の中も気持ちが悪い
鼻血も出ているのか、血のにおいしかしない
- 509 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/15(月) 22:34:24.58 ID:K2SsYy4jo
-
人を一人殺した
九尾に操られたわけでもない
自分の意思で、正当防衛の一つとして過剰に打撃を加えたことで死に至らしめた
それは、かれらが陽乃を敵視して向かって来たからだ
杏の両親の提案を受けてボランティアに参加しようとした
けれど
化け物だと言われ、石を投げられ、殺意を持ってぶつかられた。
だから
殺すことになった。
「貴女をずっと見てきたけれど……人間なんて生きているだけ無駄だとしか思えない」
陽乃「………」
「この先の未来で貴女を傷つける人間を生かしておく理由なんてある?」
陽乃「でも……ぅ……げほっ……」
「殺してしまいましょう?」
陽乃「だめ……」
瞼が重い
全身が気怠くて、動かなくなっていく
口元から血が滴り、床に倒れこんでしまう
- 510 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/15(月) 23:01:22.14 ID:K2SsYy4jo
-
止めるものがいなければ、伊邪那美命は殺しに行ってしまう
けれど、その制御をするだけの余力が陽乃にはなかった
人を殺してしまったこと
初めての神の顕現
その心身の負荷は耐えきれるようなものではなくて
陽乃「ぁ……ぅ……」
陽乃の体中から流れ出ていく血が溜まりとなって
凄惨な事件現場が出来上がっていく
陽乃「ぁぇ……」
「貴女の半分があの人だから、そんなにも愛してしまうの?」
もうあがりさえしない手を伸ばす陽乃を見下ろす神様は、
陽乃の震えるだけの手を優しく包んで、頬を撫でる
「不要な人間なんて愛したって傷つくだけなのに」
とても
とても悲しそうな声だった
やがて、陽乃の意識は薄れ――消えていく
霞んだ視界に見える女性は、
その瞼が閉じる瞬間までは、そこにいてくれた
- 511 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/15(月) 23:09:48.98 ID:K2SsYy4jo
-
√ 2018年 8月7日目 夜:
08〜17 若葉
34〜43 友奈
67〜76 九尾
↓1のコンマ
※ぞろ目 悪(場所移動)
- 512 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/15(月) 23:10:45.58 ID:8hbJOjJHO
- あ
- 513 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/15(月) 23:16:07.79 ID:K2SsYy4jo
-
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 514 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/15(月) 23:21:11.90 ID:8hbJOjJHO
- 乙
流れ的にゲームオーバーかと思ったらまだ続くみたいだけどこの状況どうするんだろう…
あと九尾が最早悪霊と化してて辛い
- 515 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/15(月) 23:31:12.43 ID:jR2Qo/2IO
- 乙
陽乃さんが死ぬまでBADENDにはならないでしょ
あと殺そうとしてるのは九尾じゃなくてイザナミ様では?
- 516 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/16(火) 00:06:27.67 ID:LSRW9k5fO
- 乙
まだまだ踏ん張れるぞ
陽乃の底力を信じろ
まあとりあえず杏か球子メンタルケアしにきて(他力本願)
- 517 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/16(火) 20:28:38.28 ID:hcbXZnOQo
- では少しだけ
- 518 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/16(火) 20:29:07.27 ID:hcbXZnOQo
-
√ 2018年 8月7日目 夜: 丸亀城(寄宿舎)
陽乃「ぅ……」
ゆっくりと目を覚ますと、
鈍い頭の痛みがじわじわと広がっていき、思わず呻いてしまう
口の中にはまだ血の味とにおいが残っていて
喉の渇きを潤そうとする唾液に交じって流れ込んでくる
陽乃「ぁ」
体を起こすだけの力が入らない
頭以外の全てが自分のものではないかのように微動だにしてくれない
声も出ず、かろうじて出来る呼吸と瞬きだけが今の陽乃の力だった
頭も動かせないので、見えるのは天井くらい
空気にも血のにおいが混じってしまっているけれど、居場所くらいはぼんやりとした頭でも分かる
失神する直前にいた、丸亀城の寄宿舎
それも、自分に与えられた部屋だ
陽乃「………」
不可解なのは、姿勢ただしくベッドの上で横になっていること
気を失ったのはベッド脇の床
自分が吐き、滴らせた血だまりの中に倒れこんだはず
なのに、気が付けばベッドの上
誰かが助け起こしてくれたと見て間違いない
問題は、誰が。という点だろう
- 519 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/16(火) 20:50:29.16 ID:hcbXZnOQo
-
杏や球子である可能性は万に一つもない
二人には行先を告げていないし、まさかこんな場所に戻ってくるだなんて予想はしないだろうから。
せいぜい、久遠家の家だった場所や神社が候補に挙がるくらいだ
自分からこんな危険な場所に乗り込むなんて考えない……だろうか?
諏訪遠征よりも危険ではない
それなら、可能性の一つとして考えるのも無理はない
陽乃「っ」
だが、だとしたらこの場にいないのがおかしい
どちらか一方が偶然その可能性を見出して様子を見に来たとして、
残ったもう一方を呼ばないわけがない
事情聴取を受けるということになっていたとしても
杏か球子のどちらかは必ずこの部屋に残るだろうし
どうしてもと言うのなら、友奈か若葉のどちらかに見ていて貰えるようにお願いするはずだ
陽乃「ぁぅぁ……ぁ……」
声を出そうとすると、喉が焼けるように痛む
伊邪那美命……九尾よりもはるかに強力な、本当の神を呼び起こした代償
ほんの数分の会話だけでこれだけ影響が出るのだから
長時間の戦闘など行おうものなら、途中で力尽きるのが関の山だろう
もしくは、九尾のように慣れれば少しは耐えられるようになるのかもしれない
耐えられたとして、その力を使う影響が恐ろしいけれど。
- 520 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/16(火) 20:56:25.98 ID:u4BkQIP6O
- ダメージは受けたままか…
- 521 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/16(火) 21:02:35.95 ID:hcbXZnOQo
-
陽乃「ん……」
杏や球子と同じように、若葉や友奈が見つけてくれていたとしたら
誰かがいてくれるだろうし、
もしも千景が見つけていたなら、
首から上が床に転がっているだけで、ベッドの上には置いてくれていないはずだ
床に転がる自分の体を見せるなんて猟奇的発想があるなら別だけれど。
そもそも、そこまで来たら陽乃はさすがに死んでいる
病院ではなく寄宿舎の自室と言うことから、大社でもない。
つまり、元から考えるまでもなく助け起こしてくれた人物は一人しかいないのだ
今は目を覚ましたことも呼び出すことも自力では難しいが。
陽乃「ぅ……ぃ……ぅ……げほっ……げほっぁっ……ぅぶっ……ぉぇえ゛……」
どうにか呼ぼうとして、喉奥を掠めた空気に咳き込む
渇いた喉がそれ傷つけられて、血が滲んで詰まり、吐血して……そのまま嘔吐する
痛めた喉を通っていく胃酸の刺激に胸やけがして、胸の奥の痒みが生まれて不快感に満ちる
陽乃「ぃぅ……」
死ぬ。
このまま死んでしまうのではないかとさえ思うほどの辛さ
それでもいい
見つけた人に、なんて惨めな姿だと嘲笑されるような死に様でも
この苦しみから解放して貰えるのならそれでもいいかもしれないとさえ、少し思う
血と胃液の混じり合った異臭のする布団
こんな状況では普通、眠れるはずもないのに眠れそうなのは神社での野宿のたまものだろうか。
それとも、それほど憔悴しきっているか。
1、無理に動く
2、無理に声を出す
3、眠る
↓2
※1〜3 判定有
- 522 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/16(火) 21:05:40.28 ID:pPLYJs5S0
- 3
- 523 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/16(火) 21:06:15.27 ID:u4BkQIP6O
- 3
- 524 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/16(火) 21:19:07.42 ID:hcbXZnOQo
-
01〜10 杏
11〜20 球子
21〜30 伊邪那美命
31〜40 過去
41〜50 九尾
51〜60 友奈
61〜70 若葉
71〜80 大社
81〜90 九尾
91〜00 千景
↓1のコンマ
- 525 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/16(火) 21:22:43.87 ID:Z3ZK3xwQO
- あ
- 526 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/16(火) 22:02:14.98 ID:hcbXZnOQo
-
陽乃「ぅ……っ……」
眠るというよりは、意識の消失に近い眠気
だんだんと瞼が降りていく中に
ふと、どこからともなく人型の何かが映りこむ
九尾「主様、眠るのかや?」
陽乃「ぁ……っ」
九尾「ふむ……」
気を失う前に聞いた女性の声とは違って
良く聞いた声
これは、九尾の声だ
九尾「妾と違って、かの神は容赦がないのう」
頬に、大きな手が触れる
優しい手だ
冷たくない、人肌の温かみを感じる手
九尾「しばし休むとよい」
陽乃「っ……」
九尾の指が口元を拭う
鼻の部分にもその細長い指先が走って
血の味とにおいが消えていく
- 527 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/16(火) 22:43:41.41 ID:hcbXZnOQo
-
九尾の手は、
顔から首、胸、腹部……と、ゆっくり下へと下がっていく
九尾「……」
九尾の手が触れた部分は、どうしてだか感覚が戻ってくる
鋭い痛みの後に、鈍い痛み
そうして、痛みがそのまま消える
九尾「祟りが深いのう……」
陽乃「ゅ……うび……」
九尾「かの神は可能な限り呼ぶでないぞ」
陽乃「っ……ぅ、ん……」
九尾「もっとも……」
そう、もっとも
かの神、伊邪那美命は陽乃の許可もなく
なにより、九尾が前面に出ていたのもお構いなしに塗りつぶす形で表へと表れた
それだけ力が強いということになる
分かっていたことだが、余りにも凶悪だ
一番の問題は " かの神は陽乃の生死に興味がない " ことだ
そしてもう一つ
九尾程度ではまるで防波堤になっていなかったこと
神と妖
当然なのかもしれないが、力量差は圧倒的だ
- 528 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/16(火) 23:25:40.73 ID:hcbXZnOQo
-
九尾「こんなものかのう」
陽乃の全身を通して撫でた九尾は、静かに手を引く
苦しそうなうめき声を漏らすばかりだった陽乃は、穏やかに寝息を立てている
身体の外側に問題はない
だが、中身がズタボロだ
無理矢理に何かをねじ込んだかのように歪になってしまっている
痛みを含めた感覚を失うのも無理はない
それを、九尾の力でただ誤魔化し補っているだけ。
九尾の力だけではここまでだろうか。
九尾も容赦なく人間を殺す
だがそれは、陽乃の害になる人間に限定される
そして、陽乃が望まない場合は特例を除いて手を引く
しかし、かの神は違う
陽乃の害になろうとなるまいと、今の限られた世界の人間すべてを滅ぼす
そして、陽乃が望まなくともそれを決行する
しかし、陽乃が力尽きたことで今回ばかりは運よく事なきを得た
かの神が満足に人を殺めるには、陽乃はまだ人間味が濃いのだろう
九尾「主も神の端くれならば、主様の体くらい癒してみよ」
九尾は静かに告げて、目を閉じる
陽乃は神に愛されている
だから、生命力を高める神もいるのだ
生まれる前から、神聖なものに触れてきたからこその寵愛
だがそれは間違いなく、呪いだ
- 529 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/16(火) 23:33:59.36 ID:hcbXZnOQo
-
1日のまとめ
・ 乃木若葉 : 交流無()
・上里ひなた : 交流無()
・ 高嶋友奈 : 交流無()
・ 土居球子 : 交流有(余計なことしないで、活動、大人を殴る、陽乃の行き先)
・ 伊予島杏 : 交流有(失う覚悟、余計なことしないで、活動、大人を殴る、陽乃の行き先)
・ 郡千景 : 交流無()
・ 九尾 : 交流有(眠る)
√ 2018/08/07 まとめ
乃木若葉との絆 62→62(普通)
上里ひなたとの絆 56→56(普通)
高嶋友奈との絆 52→52(普通)
土居球子との絆 51→53(普通) ※
伊予島杏との絆 58→60(普通) ※
郡千景との絆 21→21(険悪)
九尾との絆 63→63(普通)
※陽乃の評価・殺人を目撃
- 530 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/16(火) 23:37:04.02 ID:hcbXZnOQo
-
√ 2018年 8月8日目 朝:丸亀城(寄宿舎)
01〜10 九尾
21〜30 友奈
41〜50 若葉
81〜90 大社
↓1のコンマ
※それ以外は通常
※ぞろ目特殊
- 531 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/16(火) 23:40:47.51 ID:puei3vJoO
- あ
- 532 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/16(火) 23:44:00.83 ID:hcbXZnOQo
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 533 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/16(火) 23:58:37.19 ID:QNMt/gJVO
- 乙
あの九尾すらどうにもならないとはとんでもない神様を覚醒させてしまったか…
それと何気に人間体の九尾久しぶりに出てきたけどこちらの方がやっぱり馴染みがあるな
- 534 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/17(水) 01:33:58.83 ID:tLGsWPbaO
- 乙
ここにきて話がどう転ぶかわからなくなってきたな
- 535 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/17(水) 20:08:35.76 ID:8J6MLlino
- では少しだけ
- 536 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/17(水) 20:11:58.05 ID:8J6MLlino
- √ 2018年 8月8日目 朝:丸亀城(寄宿舎)
陽乃「っ……」
目を覚ますと、伊予島家の戻っているなんてことも
ここ数日がただの夢で、まだ病院に監禁されているわけでもない景色が見える
約三年間過ごしてきた丸亀城に隣接して用意された寄宿舎の自室
陽乃「あれ……」
頭が動かせる
体も起こせるし、手足の感覚もしっかりとしている
吐き捨てた血に塗れているはずの布団も綺麗に真っ白で、
赤黒く汚れているはずの床まで綺麗になっている
陽乃「夢……じゃ、無いわよね?」
気を失うまでの出来事の記憶ははっきりとしている
九尾が悪戯したわけではないのなら、あれは現実に起こったことのはずだ
九尾を押しのけ、陽乃を瞬く間に衰弱させてしまうほどの力を持つ、伊邪那美命
あの感覚は忘れらない
あの感覚が、まやかしであるはずがない
陽乃「はぁ……」
どっちにしろだ。と、陽乃は溜息をつく
人を殺したことも、
その現場と誹謗中傷を杏たちに知られてしまった現実は変わらない
- 537 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/17(水) 20:11:59.55 ID:W4oF1bDPO
- かもーん
- 538 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/17(水) 20:27:43.32 ID:8J6MLlino
-
陽乃が出来ることは限られている
まず、勇者や大社に見つかるわけにはいかない
杏や球子ならどうにかなるかもしれないが
若葉や友奈は危害を加えなくとも、大社に引き渡そうとするはずだ
千景にいたっては殺しに来てもおかしくない
大社に引き渡されたら最後
死ぬまで監禁か、モルモットか、処刑か
少なくとも良い結果は得られない
しかも、そのいずれにせよ、
人間は滅ぶべきだというかの神は陽乃の障害を消し去り、人類を滅亡させる可能性が非常に高い
それだけは避けなければならない
――いいや、避ける必要があるのだろうか?
こんな世界なんて、いっそ滅んでしまったらどうだろうか
陽乃「………」
なんて、考えてしまう
幸いにも、力を使い果たして死に至る結果が目に見えているため、
誰もいなくなった世界に独りぼっちなんてことにはならない
陽乃「幸い……? 幸い、幸い……何を馬鹿な……」
1、諏訪遠征に向かう
2、九尾を呼ぶ
3、伊邪那美命を呼ぶ
4、街に出る
↓2
- 539 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/17(水) 20:30:11.71 ID:W4oF1bDPO
- 1
- 540 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/17(水) 20:35:17.40 ID:Bp7HrvT00
- 1
- 541 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/17(水) 20:56:37.43 ID:8J6MLlino
-
こうなったら、仕方がない
勇者達の装束のアップデートは確認できていないけれど
諏訪の遠征に出てしまうべきだろう
いつまでも寄宿舎には居られない
もちろん、大社の目がある四国にだっていられない
久遠陽乃が本当に人殺しであるという話は、大社に関わらず民衆に広がっていく
今でも酷い噂は出回っているけれど
確たる証拠のあるそれは、信憑性のある噂……つまりは真実として知られることになる
そうなっていく以上
陽乃は寄宿舎の外だって自由にはいられない
だから、遠征に行く
人殺しである陽乃を大社が諏訪遠征のメンバーとして考えるとはとても思えないし
そうでなくとも、
行方不明である危険人物を野放しにしたまま、捨て駒として想定されている諏訪遠征に人員を割くはずがないからだ
杏と球子には悪いが
二人を待っている余裕は陽乃には残されていないのだ
- 542 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/17(水) 21:28:23.81 ID:8J6MLlino
-
陽乃「遠征に行くわ」
『主様、よいのか?』
陽乃「神託を出したとして……最短でも1日をこっちで生きていかないといけない」
そのたった一日を無事過ごせるとは限らない
神託があっても、久遠陽乃と言う危険分子を放置するわけがないので
場合によってはだとしても放置するという決定が下されるだろう
そうなれば、本当に救いようがない
そんな判断は聞きたくもない
『単独で、良いのかや?』
陽乃「私が死ぬって?」
『痛みはなくとも、先の祟りの残滓はいまだに抜けきっておらぬ。無理をすれば死ぬぞ』
陽乃「こっちにいたら殺されるわよ」
それも、人間に。
可能性は低いが、無いとは言い切れない。
『神託も無しに、往くのじゃな?』
陽乃「ん……」
神託がなければ勇者は動けない
杏と球子は抜け出すかもしれないが、
二人が今から行く壁のところにいなければ連れてはいけない
そうなれば、一人だ。
1、神託を出す
2、神託を出さない
↓2
※出す場合、遠征実行判定
※出さない場合、合流判定
- 543 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/17(水) 21:33:34.71 ID:Bp7HrvT00
- 1
- 544 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/17(水) 21:36:26.84 ID:h6umhvitO
- 1
- 545 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/17(水) 22:05:05.62 ID:8J6MLlino
-
陽乃「ん……分かったわ。神託を出しましょ」
『よいのか?』
陽乃「もう……そうやって悩ませるの止めて」
『くははっ良いではないかよいではないか』
心から楽しんでいるかのような声
上機嫌な明るさに陽乃は眉を顰めて首を振る
溜息をついて、ベッドに座る
足元の影は狐の形をしたままだ
『神託を出すのは良いが、全員出せとは言わぬほうが良かろう』
陽乃「そうね。全員出せって言うと……私のせいで却下されるかもしれない」
『ならば人数は指定せぬほうが良かろうな……ふむ。神託らしく、あやふやに兆しを示そう』
陽乃「調整、どこまでできるの?」
『夢に干渉する程度じゃ。無だろうと有だろうと自由じゃぞ』
陽乃「なるほど……内容は任せるわ。諏訪の遠征に出られるようにして頂戴」
『うむ』
影が崩れて消える
神託を出した当日に即行動に移ってくれればいいのだが
きっと、そう簡単にはいかないだろうから
陽乃「最大、1日ね」
待てるのは、明日の朝までだ
- 546 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/17(水) 22:21:33.83 ID:8J6MLlino
-
陽乃「はぁ……」
『何じゃ主様』
陽乃「っ……まだいたの?」
『妾は常におるぞ』
陽乃「神託は出してくれた?」
『うむ。兆しを与えるくらいこの場からでも容易じゃ』
なにしろ、寵愛を授けた上里ひなたが向こうにいる
ひなたを中継地点として力を拡散させれば、
向こう一帯に神託を感知させるくらい容易いのだという
陽乃「上里さんに影響はないのよね?」
『通常に人間よりは感度が上がる程度じゃ。問題はなかろう』
陽乃「そう……神託が伝わったかどうかもすぐに分かる?」
『無論』
陽乃「なら、どうなったか結果をすぐに教えて貰っていい? 決行でも却下でも保留でも」
『良かろう』
決行なら良し
保留なら、明日の朝以降になる場合は無視
却下だったら……
それはその時だ
- 547 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/17(水) 22:26:18.43 ID:8J6MLlino
-
↓1コンマ判定 一桁
0 00 陽乃が見つかる
1、7、4 決行
3、6、2 保留
5、9、8 却下
※保留の場合、二桁目の日数分保留
※結構の場合、二桁目偶数で即日 奇数で2日以上先
- 548 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/17(水) 22:28:51.56 ID:Bp7HrvT00
- あ
- 549 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/17(水) 22:42:23.64 ID:8J6MLlino
-
√ 2018年 8月8日目 昼:丸亀城(寄宿舎)
01〜10 千景
21〜30 友奈
41〜50 若葉
81〜90 大社
↓1のコンマ
※遭遇判定
※それ以外は通常
- 550 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/17(水) 22:42:38.58 ID:tLGsWPbaO
- あ
- 551 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/17(水) 22:46:28.38 ID:8J6MLlino
- では本日はここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
大社は諏訪遠征を保留しています(5日後までに決定)
- 552 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/17(水) 22:52:20.88 ID:H5MkI+e/O
- 乙
現状だと四国にはもう居場所がないし諏訪に関してもあまりモタモタしてる余裕もないしで早めに行きたいけど…
杏たちは今頃どんな反応してるのか気になるな
- 553 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/18(木) 00:18:10.33 ID:XTEi82qoO
- 乙
もう保留の結果待たずに行くかもしれないだけど杏たちついてきてくれるかなあ
- 554 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/18(木) 19:57:28.88 ID:QoCov0zMo
-
では少しだけ
- 555 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/18(木) 19:58:11.22 ID:QoCov0zMo
-
√ 2018年 8月8日目 昼:丸亀城(寄宿舎)
お昼にもなれば、流石に神託が下ったことは大社に広がり、
それについての会議も執り行われることになる
幸いにも、巫女の中でも特に秀でているのがひなたと言うこともあって
一般の巫女には伝わらないような内容も、ひなたにだけは伝わってきたりもする
そのせいで力を通して九尾に伝わり、九尾から陽乃へと筒抜けになっていたりもするのだが。
陽乃と九尾を除けば、ひなたを含めても誰も知らないのだからどうしようもないのだろうけれど。
その結果、遠征の有無は5日後まで答えの先延ばしが行われると、陽乃へと伝えられた。
陽乃「……は?」
『5日後までには答えを出すそうじゃ』
陽乃「それは聞いたわ。どうして?」
『ふむ……』
1つ、諏訪は元々時間稼ぎとして考えられていたこと
1つ、諏訪まで行くには、勇者の経験が浅すぎること
1つ、諏訪襲撃後に、四国が襲撃を受けた場合に防衛出来ない可能性があること
1つ、久遠陽乃という危険人物が国内に留まっていること
理由としてはこんなものだと九尾は並び立てて、一息つく
言われれば確かにと納得する話ではある。
即時棄却とならず、保留となったのがむしろ運が良かったとさえ言える状況だ
『主様、言わずとも承知と思うが……人間どもは見捨てるつもりじゃぞ』
陽乃「ええ、分かってるわ……」
- 556 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/18(木) 20:09:53.24 ID:QoCov0zMo
-
大々的に神託が降りた以上、まったく聞く耳を持たないというのは
巫女はもちろん、神々に対しても非常に無礼なふるまいである
大社という組織が、それを進んで行うとは思えない
熟考したという体裁を整え、やはり状況的に送ることは出来ない。という判断になるだろう
もちろん、その逆に "ご神託なのだから遂行すべき" ということにならないとも限らない。
しかし、それでも今日明日に答えが出るはずがない
最低でも2日3日はかかるだろうし、5日後までと言うのならそれだけの時間を浪費する。
『小娘共を呼ぶのかや?』
陽乃「連絡手段がないし……」
それに、呼んだところで犠牲者を増やすだけになるかもしれない
あの二人は勇者だ
今は脆くても、いずれまともに戦えるようになる
その頃には、久遠陽のなんて化け物も討てるだけの力が備わっているかもしれない
なにより、この諏訪遠征は陽乃の我儘に様なものでしかなく、
本当に必要な行為ではないのだから。
ここで無理して死ぬのは、ただの犬死でしかない
なにより――
陽乃「私、あの二人の目の前で人を殺したのよ? そんな私が、付いてきてなんて言えるわけないじゃない」
『死して然るべき有象無象を殺めたところで、問題などあるまい』
陽乃「あなた達基準では。でしょう……私達は違うの」
- 557 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/18(木) 20:21:14.37 ID:QoCov0zMo
-
陽乃「それに、あなたの言う有象無象にとって、死ぬべき存在は私よ」
自分を名指しして、胸元に手をあてがう
人を一人殺したのに
多くの人にそれを見られ、より一層責め立てられる側に立たされたというのに
杏と球子
陽乃の友人だと言い張る二人の勇者の目の前でそれを行ってしまったというのに
心臓の音はまるで高鳴ったりしない
緊張も恐怖もなく平穏無事、まるで些末なことを語っているかのよう
でも少しだけ、痛みを感じる
陽乃「そんな私が、あの二人と一緒にいるのを見られるわけにはいかない」
『殺せばよい』
陽乃「馬鹿言わないで」
『不服なのじゃろう?』
陽乃「望んでたことだもの」
『妾に主様の戯言が通じるとでも』
陽乃「だとしてもよ」
俯く視線の先には狐を模した影が見える
そこに、九尾がいるのだ
陽乃「私の望んでた結果であることに違いない」
『抜かしおる』
陽乃「もう、裏切られるのも……手を伸ばされるのも嫌だから」
- 558 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/18(木) 20:36:17.05 ID:QoCov0zMo
-
あの二人は、本当に善良なのだろう
民衆曰く化け物である陽乃を友人とまでいうのだから。
裏に何かを秘めているのでなければ、馬鹿なだけだと思いたくなるほどに優しいのだ。
だが、その二人は人々の声を聞いた
陽乃に対して何を思い、抱き、行動しようとしたのかを知った
それに対しての陽乃の態度を目の当たりにし、果てには人を殺す瞬間までもをその目に焼き付けた
勇者が守るべき一般の人間を、陽乃は殺したのだ
杏と球子が勇者であることは、あの場の人々の誰もが知っている
その二人と陽乃が、今後行動を共にしていることを知られれば、
杏の家は多大な被害を被ることになるだろうし、もしかしたら球子の家だって被害を受けるかもしれない
今は勇敢に立ち向かい、蹴り飛ばされた勇者だと言われる程度かもしれないが
知られた後はもう、化け物の仲間に成り下がる
そうなったら取り返しはつかない
陽乃「独りが良いって、初めから言ってたことじゃない」
『よいのか?』
陽乃「いいの。これで」
『一人で往くのかや?』
陽乃「そうね……向こうで合流しなかったら。一人になる」
1、遠征に行く
2、明日の朝、出発 ※9日目朝
3、1日待つ ※9日目昼
↓2
※1 合流判定1回
※2 合流判定3回 + 大社(千景・若葉・友奈)遭遇判定
※3 合流判定4回 + 大社(千景・若葉・友奈)遭遇判定
※大社遭遇の場合、判定により戦闘
- 559 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/18(木) 20:38:20.15 ID:JDCxj5WHO
- 2
- 560 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/18(木) 20:41:52.64 ID:gPjknOjEO
- 2
- 561 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/18(木) 21:07:00.31 ID:QoCov0zMo
-
陽乃「出発は明日の朝にするわ」
『見つかるやもしれぬが』
陽乃「まさか……こんな場所で待ちぼうけるつもりなんて毛頭ない」
寄宿舎は真っ先に大社が詰めかけてきてもおかしくない場所だ
昨日の今日でまだ人が来ていないこと自体奇跡だと言える
そんな場所に、いつまでもいられない
神社……は、もう無理だ
一度、あの場所が潜伏地だと晒してしまったのだから
捜索となればすぐに人が来る
瀬戸大橋の方、壁のところで待機が妥当だろう
陽乃「また野宿になるかもしれないけど……廃屋くらいはあるはずだし」
廃屋だろうと、あの神社よりはマシだ
『見つかれば厄介なことになるぞ』
陽乃「ええ」
『くふふふっそうか……ならば妾は何も言わぬ』
好きにするがいい。と、
九尾は喉を鳴らしながら笑った
- 562 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/18(木) 21:27:19.78 ID:QoCov0zMo
-
陽乃「………」
杏と球子は陽乃が遠征に行こうとしているのは知っている
陽乃がたとえ一人であろうと
遠征に向かう意思があるということも
ただ、杏には最低でも三日後と言ってある
そのまま考えているなら、
杏たちが向こうに行くのは明後日
特に約束の場所を決めたわけでもないし、
時間だって決めてもいない
合流する可能性は限りなく低いと言っていいだろう
いや、しない方が良い
したところで、二人が以前のように協力関係にあるとは限らないのだから。
場合によっては、その場で戦いになることもある。
陽乃「っ……」
いずれにしても、ハイリスクだ
最悪の展開でさえなければ……どうにかなるが。
陽乃「来ないで、くれると良いのだけど」
- 563 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/18(木) 21:39:03.05 ID:QoCov0zMo
-
15〜24 大社
58〜67 若葉
83〜92 友奈
↓1のコンマ
※ぞろ目 千景
※それ以外は通常
- 564 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/18(木) 21:41:23.59 ID:M2X/2sudO
- あ
- 565 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/18(木) 22:00:30.83 ID:QoCov0zMo
-
外を駆ける足音が聞こえた。
まだここにいても問題が無かったころに何度も聞いた音
鍛練に努めているそれは、若葉の――
陽乃「あ……」
違う。
足音は間違いなく若葉のものだ
しかし、それはいつも聞いていた走り込みではなく
もっと、慌ただしい
その音は陽乃のいる部屋の前で途絶えると、
ドアノブが音を立てる
ドアの鍵をかけているおかげで、一度で入ってくることはなかったが、
しかし、若葉はなぜか合鍵を使って容易く侵入してきた
若葉「っ……」
陽乃「久しぶりね」
窓から逃げ出すことも考えたが、
そうしたとして、千景たちに見つかる可能性がないとは言えない
だったら、まだ話し合う余地のある若葉と対峙したほうが楽だと考えたのだ
- 566 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/18(木) 22:10:25.06 ID:QoCov0zMo
-
若葉「ここに、いたのか」
陽乃「いると思ったから来たんでしょう?」
若葉「半信半疑だった」
昨日、なぜだか背筋が凍る思いをした寄宿舎
ドアの前にまで来て一度は開けようかと思ったが、開けられずにいたが
今日は開けるしかなかった
若葉「……指示が来たんだ。久遠陽乃を見つけろ。と」
声を絞り出して、
血が滲みそうなほど強く拳を握る
陽乃「それで?」
若葉「それで、だと……?」
陽乃「ええ。どんな話が来たかってことくらい、分かってるわ」
若葉「くっ……っ……なぜだ! なぜなんだッ!」
陽乃「………」
若葉「なにがあったんだ! どうして……人を殺したんだ」
陽乃「大社? それとも土居さん達?」
若葉「そんなことどうだって――」
陽乃「土居さん達でしょ……じゃないと、疑いから入らないのがおかしいもの」
若葉「茶化さないでくれ!」
- 567 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/18(木) 22:54:12.45 ID:QoCov0zMo
-
若葉は、勇者としての装束をすでに着込んでいる
青を基調としていて、清楚さを感じさせる装束
左の腰に鞘を構え、まだ納めたままの刀の柄をゆっくり握る
若葉「頼む……怪我をさせたくない」
陽乃「良いの? 人を殺した私に手加減なんて」
若葉「迫害を受けた件は聞いた」
若葉は、大社から陽乃捜索の命令を受けた
しかも、生死を問わないというのだから相当な何かがあったのは明白
すぐに杏と球子に連絡を取って何があったのかを聞いたのだ
若葉「最悪の場合、伊予島の両親まで被害に遭いそうだったのも聞いた。だとしても……殺す必要なんて」
相手が武器になるものを持っているのも聞いている
しかし、それでも聞かずにはいられなかった
若葉「頼む……本気になりたくない」
陽乃「……馬鹿な人」
1、窓から逃げる
2、生かしておく価値がなかった。それだけよ
3、武器が有効だなんて、思われたら面倒だもの
4、だって、私は化け物だもの
5、いいわ。その装束の性能、テストしましょう
↓2
- 568 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/18(木) 22:55:15.50 ID:M2X/2sudO
- 1
- 569 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/18(木) 22:57:07.57 ID:9bPO1skl0
- 3
- 570 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/18(木) 23:01:10.06 ID:QoCov0zMo
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 571 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/18(木) 23:11:43.25 ID:M2X/2sudO
- 乙
若葉の装束の初登場がこんな形になるとは…
立場上見逃す訳にはいかないし辛いだろうなぁ
- 572 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/19(金) 00:26:43.53 ID:RM8QrF/kO
- 乙
マジでどうなってしまうのか……
- 573 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/19(金) 20:55:16.28 ID:6J3Qg0q7o
-
では少しだけ
- 574 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/19(金) 20:55:48.66 ID:6J3Qg0q7o
-
陽乃「武器が有効だなんて、思われたら面倒だもの」
若葉「武器なんて、久遠さんには何の意味もないじゃないか」
陽乃「そうね」
若葉「私たちの……いや、神々の力を宿したものでなければ、久遠さんには傷一つつけられない。だろう?」
陽乃「そうよ。化け物らしく、私の体は丈夫だわ」
簡単にに血反吐を吐くし
昨日なんて、途中で失神したうえに今朝までまともに話すことさえできない状態だったけれど。
それはあくまで、自滅
自分よりも一回り大きい大人から暴力を振るわれたところで
今の陽乃には、痛くもかゆくもない
陽乃「でも、武器の一つが通用しなければ二つになるし、刀が駄目なら銃にもなるでしょ?」
若葉「だからって……」
陽乃「抵抗する意思がある限り終わらない。だから、その心を折る必要があった」
自分達では不可能なのだと
自分達ではただ殺されるだけなのだと
そう思わせてしまうのが武器が通用しないと思わせるうえで一番、手っ取り早い
陽乃「相手が武器を持って私が怖気づいたら、みんなが武器を手にするからそれは出来ない」
若葉「だろう、な」
陽乃「武器を持った人をただ打倒しても、武器の数や種類が変わるだけ」
若葉「………」
陽乃「だから……私言ったのよ? それを手にしたら手加減は出来ないって、殺すって」
でも、彼は退かなかった
蛮勇にも挑み、そうして陽乃が討った
陽乃「もう、笑うしかなかった」
- 575 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/19(金) 21:03:23.81 ID:P62HRT/7O
- 陽乃さん…
- 576 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/19(金) 21:03:30.39 ID:6J3Qg0q7o
-
陽乃「私の武器はこの拳1つ。分かるでしょう? この手で、人を1人殺したのよ」
若葉「っ……でも、殺す気はなかったんだろう? 事故だったんだろう?」
陽乃「殺せるだけの力を自覚しておきながら、手を抜かなかったんだもの。それはもう、故意だわ」
若葉は目を見開き、
嘲笑交じりに自分の右手で拳を作って見せる陽乃から足元へと視線を下げる
怒りか、悲しみか
若葉に握られる刀がその体の震えによって微かな音を立てる
それはそうだろう
他人がどう言おうと、勇者だと思っていた人が人を1人殺したのだから失望もする
陽乃「人質を持ち出されても面倒だもの。あの瞬間は殺すしかなかったのよ」
若葉「人質は、有効だからか?」
陽乃「まさか」
若葉「土居や伊予島だけでなく、あの場には伊予島の両親がいた……それを見過ごせる人じゃないはずだ」
陽乃「関係ない。赤の他人だし」
若葉「久遠さん!」
陽乃が何を思い、そうしたのか
分かっているのは本人とその身に宿している九尾くらいだろう
しかし、それがどんなものであれ、いかなる理由であれ
陽乃が人を殺したという事実に変わりはなく、それを多くの人に目撃されてしまったことも変わらない
そこから派生した久遠陽乃を討てという命令もまた、どうにもならない
若葉「頼む……大人しく私と一緒に来てくれ」
- 577 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/19(金) 21:19:22.04 ID:6J3Qg0q7o
-
陽乃「そんな、今から戦います。みたいな状態で何言ってるのよ」
若葉「念のためだ」
陽乃「私が大人しく付いてきてくれるって、思ってる?」
若葉「思ってないから、お願いしてるんだ」
若葉は歯を噛みしめるように、首を振る
陽乃は自由奔放とは少し違うが、大社が関わることに置いて素直に従ってくれるとは思えない
しかし
若葉「ここで従って貰えないと、困るんだ」
陽乃「勇者の肩書に傷がつくから?」
若葉「それはもうついてる……二人が久遠さんを止められなかったからな」
陽乃「……そう。申し訳ないことをしちゃったかな」
若葉「従って貰えなければ、戦う必要がある」
陽乃「なるほど」
千景とは出会って即戦闘になると考えていた陽乃だが
若葉とも戦闘は避けられないような雰囲気だ
諏訪遠征に行くには、ここで大赦に拘束されるわけにはいかない
まず間違いなく断罪されるだろうし監禁されるだろうし
以前とは比べものにならないほどに厳重な拘束をされることになるだろう
若葉「従ってくれ」
陽乃「私を殺せたら、英雄だって称賛して貰えるのに」
若葉「そんなもの……そんなものに何の意味もない!」
陽乃「ごもっとも」
1、悪いけれど、諏訪に旅行する予定があるから……逃げるわ
2、どうしてもと言うなら、力づくでかかってきなさい
3、不意打ち
4、代わりに、諏訪遠征に行ってくれるなら考えてあげる
↓2
- 578 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/19(金) 21:21:46.67 ID:P62HRT/7O
- 1
- 579 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/19(金) 21:24:48.43 ID:a5XBiBmH0
- 1
- 580 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/19(金) 22:05:08.40 ID:6J3Qg0q7o
-
陽乃「でも悪いけれど、諏訪に旅行する予定があるから……逃げるわ」
若葉「諏訪……? 諏訪って、まさか諏訪か? 白鳥のいる長野か?」
陽乃「そうよ」
若葉「っ……だめだ」
陽乃「それはそうよね」
陽乃が諏訪遠征にいけば今回の件が落ち着く……わけがない
陽乃が四国から出ようと、
そのあとに戻ってきたら意味がない
大社でしっかりと管理されなければならないし
大々的に捕らえたことを示さなければならないかもしれない
そうしなければならないくらいには、陽乃の存在の影響は大きかった
若葉「白鳥が心配なのはわかる。だが……」
陽乃「別に心配なんてしてないわよ。ただ、ここに居たって良いことないから出ていきたいだけ」
若葉「嘘は良い。助けに行こうとしているんだろう?」
陽乃「そうしたら自由にして貰えるって思ってたんだけど……まぁ、もう無理だと思うし」
- 581 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/19(金) 22:18:41.86 ID:6J3Qg0q7o
-
最初こそ、
長野の勇者を救い出してここにまで連れてきたら戦力になるだとか、
大社からの評価も手のひら返しになるだとか
そんな打算的な考えを持っていたけれど
今となってはもう、どうあっても好転する気がしなかった
陽乃は人を殺した
その事実が揺るぐことも拭われることもない
何か善行を成したところで
あの娘は人を殺したと、化け物なのだと
そう言われてしまうだけな気がしてならない
少なくとも、勇者と組ませることはないはずだ
陽乃「だから、ほんとうに……もう、助けるだとかは考えてないから」
若葉「……っ」
陽乃は困ったように笑って、手をひらひらと振る
見逃せば、陽乃は出ていくだろう
そうして、諏訪へと向かう
居場所がないと陽乃は言った
もう、取り返しのつかないことをしてしまったのだから
それは "かもしれない" の域を超えている
- 582 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/19(金) 22:40:05.30 ID:6J3Qg0q7o
-
陽乃は否定しているが、
陽乃が向こうの戦力に加わる恩恵は計り知れない
それこそ、
もし仮に今月中に諏訪がバーテックスに突破されることが未来的に決定していたとしても
陽乃がそこに割り込むことで、今月どころか来年以降も健在でいられる可能性が出てくるくらいには。
そもそも、一人で守っている状態から
2人で守るという形に変わるだけで、十分力強いことだろう
白鳥歌野と諏訪そして久遠陽乃
そのすべてにとって、
今ここで見逃すことこそが正しい選択のように思える
いいや、きっと正しい
壁の外は危険だ
そこで陽乃が殺されてしまう可能性はある
けれど、今ここで拘束したって、
大社に捕らわれて処刑されたり、飼い殺しにされたりするだけだ
- 583 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/19(金) 22:50:53.99 ID:6J3Qg0q7o
-
若葉「……くそっ」
陽乃「どうする?」
若葉は考え込んで、
そうして、舌打ちをするように顔をしかめる
若葉「……この部屋を荒らしていいか?」
陽乃「どうして?」
若葉「ただ一刀、ここで久遠さんに向けさせて貰う……逃げるついでに躱してくれ」
陽乃「簡単に言っちゃって……」
若葉「何を言うかと思えば……簡単だろう。適当なところで追いかけるのは辞めるが、今日か明日中には出て行ってくれ」
若葉は軽く笑って申し訳なさそうに首を振ると
居合の一刀を放つべく、身構えていく
陽乃「手間をかけてごめんなさい」
若葉「……こうならないように手を打ちたかった……すまないッ!」
若葉は護るためにと鍛えたその最速の一刀を全力で振り抜く
その切っ先は決して陽乃に触れることのない距離
けれども、勇者としての力強い斬撃は、
壁を傷つけ、布団を切り裂き、陽乃のもとへと風を叩きつける
それに押し込まれるように、陽乃は自分から窓へとぶつかって――外へと逃げる
二階からの転落も、常人離れした体には痛みもない
若葉「待てッ!」
陽乃「なにこれ……バカみたいっ」
けれど、
こうしなければいけないのだと陽乃は笑って、若葉から逃げた
- 584 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/19(金) 22:59:45.77 ID:6J3Qg0q7o
- √ 2018年 8月8日目 夕:
↓1コンマ判定
01〜10 87〜96 ぞろ目 遭遇
23〜32 千景
45〜54 大社
- 585 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/19(金) 23:01:57.93 ID:a5XBiBmH0
- あ
- 586 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/19(金) 23:06:59.61 ID:6J3Qg0q7o
-
ではここまでとさせて頂きます
明日もできれば少し早い時間から
- 587 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/19(金) 23:14:04.61 ID:P62HRT/7O
- 乙
諏訪を救ったところで犯罪者扱いのままならどうすればいいんだろう…
あと大社や千景とは別の判定の遭遇って誰が来るのか
- 588 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/20(土) 02:09:57.47 ID:4ujeuV3ZO
- 乙
最近コンマすかりまくりだったから遭遇だけでもありがたいわ
- 589 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/20(土) 20:59:44.21 ID:H62J04Zco
- では少しだけ
- 590 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/20(土) 21:00:48.18 ID:H62J04Zco
- √ 2018年 8月8日目 夕:
陽乃「はぁ……もう……」
大橋の傍にある、道の駅
芝生広場を通って展望台の方へと登った陽乃は、ようやく一息つく
若葉は本当に途中から姿が見えなくなった
病み上がりな陽乃の足の速さは、
無意識にセーブしてしまっていることもあって
若葉なら追い越したうえでゴールテープを張っておくことができるくらいに遅い
それでも追い抜くどころか後ろからいなくなっていたのだから、
若葉が自分から撒かれてくれた以外にあり得ない。
陽乃「……ん」
陽乃は、自分の体調面を考慮しなければ、
死ぬまで誰かに見つかることはない
というのも、常に九尾の力を借りて姿を誤魔化しておけば、
誰一人として、それを見破ることは出来ないからだ
もっとも、それを24時間続けようものなら数日で体調を崩すだろうし
そのまま回復できずに死に至るだろう。
もちろん、そんなことは出来ない為
必然的に人気のない場所に身を顰めるしかない
そういうのもあって、
立ち入り規制が行われている瀬戸大橋付近は陽乃にとってはこれ以上ないほどに好条件だった
――の、だが。
陽乃「っ!」
展望台までの階段をすっ飛ばして飛び込んでくる人影
まだ本調子には感じられない体は鈍く、それを躱しきれずに押し倒される
その力は常人離れしたもので……
目を向ければ、見知った顔に怒りが滲んでいる
球子「杏の読み通りだな」
闖入者は勇者の一人である、土居球子だった
- 591 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/20(土) 21:17:16.90 ID:H62J04Zco
-
陽乃「っ……痛い……」
球子「放したら、逃げるだろ」
陽乃「簡単に押し倒される程度の私が、逃げ切れるわけないじゃない」
球子「……だとしても、ダメだ」
球子は少し迷う素振りを見せたけれど、
首を横に振って、力を緩めない。
陽乃「見張ってたの?」
球子「まぁ、そうだな……諏訪に行くにはここを通るしかないだろ?」
陽乃「明日かもしれないし、一週間、一ヶ月もっと先かもしれないのに?」
球子「いや、あんなことがあったし……ここに居る理由が無くなったらすぐにでも行くと思った」
って、杏が言ったんだ。と、球子は困ったように言う
その読みが当たったのに、
球子は喜ぶどころか、不満気だった
球子「一人で行くつもりだったろ」
陽乃「私は別に、二人がいなくてもいいし」
球子「タマの体当たりも躱せないような状態でか?」
陽乃「色々あったのよ……仕方がないじゃない」
球子「仕方がないから死にに行くのかッ!?」
陽乃「ぃっ……痛いっ……」
押さえつける力がより強くなって、
陽乃は思わず呻いて、顔をしかめる
そろそろ、九尾が出てきてもおかしくない
- 592 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/20(土) 22:16:53.84 ID:H62J04Zco
-
球子「ふざけんなッ!」
陽乃「………」
球子「勝手に消えて、勝手に死ぬつもりだったのかッ!?」
球子は本気で怒っている
陽乃のためか、杏のためか、自分自身のためか
怒りながら、悲しそうな瞳をしていた
球子「生きたいんじゃなかったのかよ……」
陽乃「死ぬつもりなんてないけど」
球子「でも死んだって良いって思ってるだろっ」
陽乃「その時はその時って思ってるだけ」
球子「っ……そうなったら、あんずはどうなる。母親だって、大社にいるんだろ?」
杏のことを出されても、陽乃は大して響かない
けれど、母親が出された瞬間に
陽乃は苦虫を噛み潰したような顔をして、球子を睨む
だが、すぐに顔を背けた
1、そんなに熱くならないでよ
2、人を殺した娘なんて、死んで貰った方が良いに決まってるわ
3、だから、なに? 大社に従ってこのまま私を捕まえるの?
4、どうだっていいじゃない。あなた達なんて赤の他人なんだから
↓2
- 593 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/20(土) 22:18:12.93 ID:MPCf7yOn0
- 2
- 594 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/20(土) 22:18:17.99 ID:4ujeuV3ZO
- 3
- 595 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/20(土) 22:19:36.63 ID:0GZh8e3xO
- 1
- 596 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/20(土) 22:51:19.96 ID:H62J04Zco
-
陽乃「だから、なに? 大社に従ってこのまま私を捕まえるの?」
球子「……知ってるのか」
陽乃「昨日は寄宿舎に戻ってたのよ」
球子「はぁ!?」
陽乃「で、さっき乃木さんに見つかって逃げてきたの」
球子「寄宿舎に戻るなんて、おま……マジかよ……」
球子はそんなバカなと呟く
灯台下暗しと言う言葉もあるが、
まさか実際にそんなことをするとは思わないだろう
唖然としながらも、力は抜けない
球子「あんずも聞いたらびっくりするだろうな」
陽乃「で……どうするの?」
両手を押さえる球子の手
腰周りを圧迫する球子のお尻
頑張れば足で球子を蹴ることができるが、
勇者としての力を行使している今、大して力の入っていない蹴りではびくともしない
陽乃「捕まえる? それとも、首を絞めて殺す?」
球子「捕まえるって言ったら?」
陽乃「乃木さんから逃げたのに、貴女に良いよ。なんて言うとでも思ってる?」
球子「そりゃそうだ」
- 597 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/20(土) 23:41:24.23 ID:H62J04Zco
-
球子「行くんだろ? 諏訪」
陽乃「ええ」
球子「だったら、予定通りタマとあんずも連れてけ」
陽乃「死ぬ気?」
球子「あんずが言ったんだ」
止める方法があったはずだと
あの悲劇は止められたのだと
陽乃に対する人々の態度を目の当たりにしておきながら
それがただの人間だからと、躊躇してさえいなければ
こんなことにはならずに済んだはずなのだと。
そして――
球子「……分からなくなったんだ。あんなのを守るのが勇者の役目なのかって」
陽乃「そんなこと言って、勇者の力没収されても知らないわよ?」
球子「勝手に喧嘩売って、ダメだと分かったら勇者に投げて、それでもだめだからって勇者を野次って……原因作ったくせに、勝手だろ?」
呆れた。とでも言うかのように笑う球子は、
それでも、陽乃を手放そうとしない
球子「連れていくって約束するなら、解放する」
陽乃「断ったら?」
球子「このまま簀巻きにして連れていく」
1、良いわ。来たければ来なさい
2、なにそれ。どっちにしろじゃない
3、死んでも責任は取らないわ
4、悪いけど――使えない人を連れていく気はないの
↓2
- 598 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/20(土) 23:45:44.94 ID:MPCf7yOn0
- 3
- 599 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/20(土) 23:47:22.27 ID:0GZh8e3xO
- 1
- 600 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/20(土) 23:52:55.74 ID:H62J04Zco
-
ではここまでとさせていただきます
明日はできればお昼ごろから
- 601 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 00:03:38.48 ID:0pXau1WgO
- 乙
タマっち先輩ほんといい人や…
最初は嫌ってたのにいつの間にやら前作までの夏凜みたいな立ち位置になってきた気がする
- 602 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 00:25:09.73 ID:yEi0MtLhO
- 乙
何はともあれついてきてくれるのは心強いな
- 603 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 00:46:44.32 ID:vC19mVtw0
- 乙
合流して3人で出て行くってのはもう解決として
なんとか次の日までに少しでも体調戻したいな
- 604 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 15:12:29.49 ID:da4fqDl/o
- では少しずつ
- 605 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 15:14:34.53 ID:da4fqDl/o
-
陽乃「良いわ。来たければ来なさい」
球子「そう言って、夜中にこっそり出て行ったりとかするんだろ?」
陽乃「しないわよ……ここまで来たらもう、する意味もない」
諏訪遠征に行くことを伝えていた以上、
2人は陽乃が数日以上ここに姿を見せず、
四国内のどこにも見当たらないとなったらいよいよ、外へと出ていくだろう。
たとえ陽乃が本当に出ていったという確固たる証拠がなかったとしてもだ
無駄死にさせないという陽乃の目的は、
陽乃が遠征に行くという話を2人が知った時点で潰えている
陽乃「心配なら、首輪でも手錠でも足枷でも自由にどうぞ」
球子「そんなことするかっての」
陽乃「予定は明日の朝」
球子「早いな」
陽乃「私の現状を考えれば、むしろ遅いと思うけど」
球子「見つかったら何されるか分からないからな……確かに遅いかもしれない」
陽乃「ただ、言っておくけど――」
球子「分かってる。タマ達を守る気はないんだろ? 分かってる……分かったさ。もう」
- 606 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 15:15:44.76 ID:7D9/5LRhO
- おk
- 607 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 15:36:33.69 ID:da4fqDl/o
-
球子はようやく陽乃を押さえる力を抜くと、
気まずそうに顔をしかめて、首を横に振る
陽乃が守るのは無理だと言いたくなる気持ちを身をもって知った。
友達だなんだと言っておきながら、
あの場で庇うことすらできなかった
それは違う、間違っていると
そう叫ぶことさえもできなかった。
球子「そっちに比べれば軽いことかもしれないけどさ……分かったんだ。軽々しく言いたくないっていうのが」
陽乃「そう……」
球子「守ってやりたかったんだ」
陽乃「あそこで庇ってどうするのよ。貴女達まで付け狙われることになるのよ?」
球子「一緒に諏訪に逃げようって話した後にそんなこと聞くなよな」
球子は笑う
もう今更だ
それを聞かれるのも、それを言うのも
球子「でも今度こそ……何があっても、私が守ってやる」
陽乃「またそうやって、軽々しく言うのね」
球子「そんなつもりはないぞ。ほんとに、今度こそ絶対だ」
とても優しい表情を見せる球子
罪悪感と後悔が入り混じったその視線から、陽乃は顔を背けた
- 608 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 15:49:22.62 ID:da4fqDl/o
-
球子「あんずの家に行くぞ」
陽乃「馬鹿言わないで」
球子「心配すんな。許可は取ってる」
陽乃「そういう問題じゃ――」
球子「分かるだろ? もう一回、会えるなら会いたいって言われてるんだ」
陽乃の手を取って、立ち上がらせる
押さえつけるほどの力ではないが、
放すまいとしている力強さが伝わる
陽乃「正気とは思えないんだけど」
球子「あの連中よりはずっと正気だろ。どう考えても」
陽乃「あの連中なんて言わない方が良いんじゃない?」
球子「あの化け物って言ったり、役立たずって言ってくる相手でもか?」
気にしてられないだろ?
なんて、球子は茶化すように言うと、少し考えて。
球子「変装できるか?」
1、無理よ
2、まぁ、なんとか
3、だから、行かないってば
↓2
- 609 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 15:52:37.90 ID:7D9/5LRhO
- 2
- 610 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 15:53:46.84 ID:zTXokEB5O
- 2
- 611 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 16:53:26.61 ID:da4fqDl/o
-
陽乃「まぁ、なんとか」
球子「無理なら無理って言ってくれていいからな」
陽乃「無理じゃない」
無茶とは言えてしまうかもしれないが
今の身体でも、少しの間姿かたちを誤魔化す程度なら何の問題もない
陽乃「最悪、血反吐はいても助けてくれるんでしょ?」
球子「ふざけんなっ」
陽乃「っ……痛いってば……」
球子「吐くのか? それだけぼろぼろなのか?」
強く手を握られた陽乃の小さなうめき声
本当に痛がっている
球子「あ、悪い……」
陽乃「色々あってそこまで万全じゃないのよ」
球子「……そっか」
球子は陽乃を一瞥すると
ポケットを弄って、スマホを取り出す
球子「じゃぁ、迎え呼ぶか」
陽乃「本気で言ってるの?」
球子「必要なら呼んでくれって言われてるからな。必要だろ?」
陽乃「どうなっても知らないから」
球子「分かってるよ」
- 612 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 17:09:57.06 ID:da4fqDl/o
-
球子はささっと連絡を取って迎えを呼ぶ
呼んだのは杏の両親だ
車で迎えに来てくれるとのことなので、時間近くになったら
立ち入りが許されているギリギリのところで合流する予定だそうだ
細やかな段取りを話す球子を横目に、
陽乃は大橋の方へと目を向ける
陽乃「……怪我は?」
球子「怪我?」
陽乃「貴女が伊予島さん庇ったから、めり込んだでしょ」
球子「あ〜……めっちゃ痛かった」
陽乃「痣でも残った?」
球子「痣は出来てないけど触ると痛いな……ちょっとだけど」
陽乃「貴女が割り込むからいけないのよ」
あんずを蹴るふりではなかった
確実に蹴り飛ばすつもりだった
でも、つま先がめり込んだ球子と違って、
足の甲の部分で蹴るというよりもすくい投げるようにするつもりだったのだ
それを球子が割り込んだばっかりに
腹部へと足がめり込む見事な一撃となったのだから、仕方がない
- 613 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 17:22:44.16 ID:da4fqDl/o
-
陽乃「そんな調子で、明日から平気なの?」
球子「平気だよ。血反吐吐くほどじゃないし」
陽乃「そう……」
球子「………」
陽乃「なに?」
ただ独り言ちただけなのに、視線を感じた陽乃は顔を顰める
球子はそれでも陽乃を見たままで、
数回瞬きすると、なぜだか笑った
陽乃「なんなの?」
球子「心配した?」
陽乃「穴開けられたいの?」
球子「今のタマの防御力を舐めて貰っちゃ困るなっ!」
陽乃「私の本気も知らないくせに調子に乗らないで」
球子の本気も知らないけれど
あの憎悪に満ちた神の力は、おそらくだが球子たちの扱う神々の力さえも食い破って抉るに違いない
九尾の話が全て事実なら。だが。
陽乃「血の海になるんだから」
球子「ならないから安心しとけって」
陽乃「はぁ……そう思うならそれでいいわよ。別に」
誰の血で染まるか。と言うのを加味しなければ、
間違いないのは、事実だった
- 614 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 17:24:39.02 ID:da4fqDl/o
- √ 2018年 8月8日目 夜:伊予島家
01〜10 大社
21〜30 若葉・友奈
41〜50 杏
81〜90 伊予島両親
↓1のコンマ
※ぞろ目で付近の住民 奇数悪
※それ以外は通常
- 615 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 17:26:33.69 ID:cPMtSqR4O
- あ
- 616 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 18:11:35.51 ID:da4fqDl/o
- √ 2018年 8月8日目 夜:伊予島家
あんなことになるとは思わなかった。なんて言い訳のような言葉もなく
軽率なことをしてしまったと
もう少し思慮深く行動を起こすべきだったと
ただ真っ直ぐに、杏の両親は謝罪を口にした。
陽乃がいることが知られないようにと気を付けながら、
もう一度、家へとあげてくれた
陽乃「むしろ、巻き込まれた側なのに」
自業自得とは言ったが
陽乃がこの家に来ることさえなければ、そんな行動を起こすことだってなかった
初めから、ここに来さえしなければ。
諏訪でもそうなるのではないだろうか
陽乃が来たせいで均衡が崩れ
何か取り返しのつかないことになるのではないか
そんな不安が胸を過る
陽乃「……はぁ」
諏訪の守りが強固になることで
今度は四国が攻められるようになる可能性もある
そうなったら、いるはずなのにいない2人が欠けた3人で乗り越えなけばならない
諏訪と四国で3人ずつと考えれば、ちょうどいいかもしれないが
- 617 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 18:37:59.39 ID:da4fqDl/o
-
陽乃が諏訪に行くことについては、若葉が知っている
陽乃が諏訪に行くと言って姿をくらましたのなら、
同じように姿が見えなくなった二人も諏訪にいったのではと推測してくれるかもしれない
けれど、最悪の場合
そう、万が一死人が出た事も考えて
2人にも事前に伝えておいて貰う方が良いだろうか。
伝えた相手―おそらくは若葉―に止められる可能性があるが、
それでも2人は行くと言って聞かないはずだ
陽乃「……っ」
首を振る
そんなのはまるで、信じているみたいで不愉快だ
陽乃「んっ」
血を吐きそうになったりはしないが、
まだ少し体が重い感じがする
明日の朝に出発するのだから
もう寝てしまうのも、一つの選択だろう
1、もう休む
2、九尾
3、球子・杏
4、伊予島両親
5、イベント判定
↓2
- 618 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 18:45:15.17 ID:OBv7ZIQPO
- 3
- 619 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 18:47:40.19 ID:Frfjoky90
- 4
- 620 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 19:24:09.43 ID:da4fqDl/o
-
陽乃「……明日の朝には、出ていきます」
「部屋から出るのは難しいと思うけれど、ほとぼりが冷めるまでここに居てくれてもいいのよ?」
「そのほとぼりが冷めるまでどれくらいかかるか分からないだろう」
「そうは言うけれど……」
陽乃「大丈夫ですよ。私にも、やらないといけないことがあるので」
四国には居られないから向こうに行く。
本心ではそうだけれど、
正直に言っても、杏の両親はこの家を居場所だと言ってくれるだろうから、言わずにおく
2人は気にしない
けれど、陽乃を部屋に軟禁状態にしておいたからと言って安全なわけじゃない
足音1つでもバレるときはバレてしまう
お風呂の回数、お手洗いの回数
足音、漏れてくる声
そこから推測されて、押し入られたりなんだり。
伊予島家が被害に遭わないとは限らない
「……今回は、本当に申し訳ないことをしてしまったわ」
陽乃「いえ、分かっていたことなので」
「分かっていたとしても、傷口を広げるような結果になってしまったことは非常に申し訳ない」
謝って済むことではないと前置きしつつも、
2人はまた、頭を下げた
- 621 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 19:47:29.77 ID:da4fqDl/o
-
陽乃「その……」
「あぁ、娘から話は聞いているよ」
母親の方は何を言うのかを察して顔を伏せるように目を背けてしまったが、
父親の方は穏やかな表情で頷く
「諏訪の方に行くという話だろう?」
陽乃「ええ、まぁその……」
「無理を言った。と、2人から聞かされたんだ」
陽乃がお願いしたわけでも、
無理強いしてきたわけでもなく、
寧ろついて来なくていいと言われていた事も両親は聞いている
諏訪への遠征
それが、かつての旅行のようなモノではなく
命懸けの作戦であることも聞いている
「もちろん、私達からも考え直すようには言ったよ。だけど、それでも行くと2人は言っていてね」
2人が二度と会えなくなるかもしれないのに
父親は困ったものだと言いたげに笑みを浮かべて、
すぐに、また普段の表情へと戻る
- 622 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 19:58:57.24 ID:da4fqDl/o
-
「遠征に必要な食品等は、私たちの方で用意させて貰ったよ」
陽乃「そんな」
「大事な事なんだろう?」
諏訪に行くのも、そのための準備も
しなければならないことだから、
出来る限りの支援はしてあげたいと、父親は言う
陽乃「………」
2人が諏訪遠征に行きたいと言い出したのは、
言ってしまえば陽乃が行くといったからだ
陽乃がそう言いだしさえしなければ、
球子と杏が諏訪に行くだなんて言わなかっただろう。
陽乃は別れを惜しむ母親と、
比べて普段通りな父親の両方に目を向ける
守れるだなんて約束はできない
本当に死なせるかもしれない
そうなれば、そうしたいと言い出した原因である陽乃のせいではないだろうか。
1、すみません。私のせいで
2、約束はできませんが、可能な限り無事に送り返します
3、支援だけで十分です。ありがとうございます
4、どうなっても、私は責任とれません
↓2
- 623 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 20:04:28.76 ID:Frfjoky90
- 1
- 624 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 20:09:00.26 ID:OBv7ZIQPO
- 1
- 625 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 20:56:15.50 ID:da4fqDl/o
-
陽乃「すみません、私のせいで」
「いや、それを言うなら私たちのせいでもあるだろう?」
陽乃「いえ……諏訪遠征は昨日の件がなくても元々計画していたので」
その時点ですでに、2人はついてくる気だった
昨日の件があって断固とした意志になったのだとしても、
無かったとしても、2人は同じくらいに強情だったと思う。
それはやっぱり、陽乃のせいだ
陽乃「私が諏訪に行くことを教えなければ良かったんです」
「それは、ダメだと思うわ」
「2人が知らなければ君一人だった。と言うことなら、それこそ許しがたいことだと思うよ」
母親も、父親も
2人そろって厳しい表情を見せる
「娘を贔屓するわけではないが、杏一人とっても君に恩を感じているんだ。なのに、人知れず出ていくのは恐ろしい」
三年前に救われたっきりで
それ以降、顔を合わせるどころか名前も聞かない
そんな疎遠な状態であったならいざ知らず
同じ寄宿舎で生活し、顔を合わせたりしていたのなら、
やっぱり、何も言わずに姿を消して欲しくはないはずだ
「なにより、たとえ君が何も言わずに諏訪へと旅立つのだとしても、きっと誰かが気付いていただろう」
- 626 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 21:19:40.70 ID:da4fqDl/o
-
「なんと言えば良いか……」
父親は困った様子で母親を見る。
代弁してくれること期待するその視線に、
母親は小さく笑って、ため息をついた
「久遠さん……ううん、陽乃ちゃん。そんなに、全部を自分で背負おうとしなくてもいいの」
陽乃「私は、別に……」
「陽乃ちゃんは、いつも自分が責任を負う前提で考えているんじゃない?」
諏訪遠征に2人が参加すること
昨日のボランティア活動のこと
両親がちゃんと知っているのはそのくらいしかないけれど、
でも、そのたった二つだけでも強く感じる
常に、その責任を考えている。
何かがあったとき、それが自分の手に負えることなのかどうか
真っ先にそれを考えて
過去の経験からだろう……難しいと判断している
「陽乃ちゃん一人で手に負えないのは当たり前のことなの。だって、ほら、貴女の手はまだこんなに小さいんだもの」
陽乃「……」
一回りほど大きな杏の母親の手が、陽乃の手を包む
勇者とは呼ばれず、化け物だと呼ばれ
ただただ責任だけを追及され続けている目の前の少女は、ただただ、少女なのだ。
「信じられる人を見つけて、頼って、一緒に一つずつ成し遂げていけばいいの」
陽乃「っ……」
「あんなことがあった後で信用がないのは分かるけど。でも、まずは……危険な旅に同行したいって2人を信じてあげて。ね?」
- 627 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 22:41:41.89 ID:da4fqDl/o
-
陽乃の手を包んでいた母親の手が、今度は陽乃の頬へと触れる
本当の娘のように
強い愛情を感じるその優しい手つきに、
陽乃はゆっくり、目を閉じる
「ちゃんと、帰ってきてね」
陽乃「……厄介ごとに巻き込んだ張本人ですよ」
「巻き込んだんじゃない。自分から首を突っ込んだの。何かがあったとしてもそれは、陽乃ちゃんのせいじゃない」
絶対に大丈夫と言う保証はなく、寧ろリスクの高い行いだった
それを両親から誘い、
陽乃は自分には責任が取れないと念押ししていた
なのに、
何かがあったら自分のせいだなんて考えてしまっている
「だから」
これを言ってもいいのかと、母親は少し迷う
その迷いを感じ取ったのか、
控えていた父親が、陽乃をまっすぐ見つめた
「まだ数日の付き合いだ。信頼を置くことも難しいかもしれない。それでも、キミさえよければ……ここを帰る家と思って欲しい」
陽乃「……私はお二人の子供でもないのに」
「そんなこと、気にしなくてもいい」
杏の両親はあんなことがあってもまだ、陽乃を信じてくれている
受け入れてくれている
頼って欲しいと、迎え入れてくれている
陽乃は唇を噛んで……首を振る
それでも、両親の優しさは揺らがない
「今は助け合って生きていかなければいけない時だ。キミにしかできないことがあるように、私たちにしかできないこともある」
それだけだよ。と
父親は限りなく優しい声で、言った
- 628 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 22:44:01.44 ID:da4fqDl/o
-
√ 2018年 8月9日目 朝:
01〜10 若葉
23〜32 千景
67〜75 大社
ぞろ目 特殊
※そのほか通常
↓1
- 629 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 22:47:23.82 ID:3kSRXyo0O
- あ
- 630 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 22:51:06.09 ID:da4fqDl/o
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
1日のまとめは明日
9日目朝は遠征出発で固定
- 631 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 23:02:58.94 ID:Ed7N8PzoO
- 乙
伊予島家が奇跡的に無事だったおかげでほんの少しだけ希望が見えてきたのは大きいな
そしていよいよ出発だけど遠征ってどんな感じに進めてくのか気になる
- 632 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 00:09:49.79 ID:jzgy1I5TO
- 乙
最後の最後に大社とか千景の追撃きたらヤバいなって思ってたけど何もなくてよかった
- 633 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/22(月) 19:54:34.26 ID:N25V4BBPo
- では少しだけ
- 634 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/22(月) 19:55:07.15 ID:N25V4BBPo
-
√ 2018年 8月9日目 朝:瀬戸大橋
まだ人々が寝静まっているであろう早朝、
点々と雲は見えるものの
幸いと言うべきか、十分に晴れていると言える空模様を眺める
大社を警戒したが、姿は見えない。
若葉達勇者もこの場所にはいないようだ。
球子「流石に、寝てるんじゃないか?」
陽乃「乃木さんは起きてるわ。上里さんも」
杏「分かるんですか?」
陽乃「私じゃなくて、九尾がね」
九尾は、陽乃を除けばもっとも強い繋がりとして上里ひなたを選んでいる。
ひなたが何か行動を起こせば伝わるし、何かひなたに伝わってきたらそれもまた九尾へと筒抜けになる
スマホを後ろから覗き見している。と言うと非常に犯罪的なものだが、
実際にそんな状態だ。
今、ひなたはもうすでに起きている。
久遠陽乃捜索の助力と言う建前で若葉と連絡を取り合える状態にある為、
若葉からそのことの報告は受けている
受けた上で、隠している。
九尾曰く、
例の神託が陽乃による何らかの介入があった可能性も考えているというのだから、手強い。
- 635 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/22(月) 20:03:30.63 ID:N25V4BBPo
-
球子「で、予定ではどのくらいで着くんだ?」
杏「真っ直ぐ突っ切るにしても生存者を探したりしていくなら、最低でも5日くらいかな」
陽乃「人手が足りないわ。生存者がいても置いていくしかない」
球子「出来もしないこと言うなよな」
陽乃「別に、貴女がいなくたって――」
杏「ま、まぁまぁ! そこまでにしようよっ! タマっち先輩も挑発しないで」
球子「挑発って言うか、事実だろ。生存者がいたらどうするんだよ。本当に置いていけるのか?」
球子は真剣な表情で陽乃を見上げる。
生存者を置いて行かなければならない本当の理由は、陽乃が戻れないからだ。
正式な遠征であれば、生存者救助のための一時撤退だとでも言えるだろう。
だが、今回は正式ではないし陽乃は追われている身だ
そんな状態で戻るのは突っ切るよりもリスクがある。
球子「その置いていった人を、また自分が殺したって背負うんだろ?」
陽乃「見殺しにしたって意味では事実だと思うけど」
球子が言っていることはもっともだ
陽乃は偶然見つけた生存者を放置して平然としていられるほど冷徹な人格をしていない
寧ろ、それを気に病んでいくタイプだ
身体はどうとでもなったとしても、心が持たない
出来るなら、見つけた生存者は保護して助けたい。
けれど、出来ない
たとえば岡山で生存者を見つけたら、諏訪まで連れていくのか。
そんなことをしたらどれだけの時間がかかるか。
- 636 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/22(月) 20:10:42.17 ID:N25V4BBPo
-
球子「別に、夏休みの間にたどり着くとか戻るとか考えなくていいんだから、どうしたいか考えればいいんじゃないか?」
陽乃「足手纏いを増やすのが嫌なのよ。それで死ぬのは私かもしれないんだから」
杏「……なら、行きは生存者を探さずにただ全速力で突っ切って2日。帰りに捜索はどうですか?」
陽乃「場合によっては諏訪からの連れ出しがあるんだから却下。行きも帰りも捜索しない」
球子「本気か?」
陽乃「嫌なら一人で探せばいいんじゃない?」
球子「それで大丈夫なのか? 自分は」
陽乃「………」
自分は。と、訊ねてくる球子を睨む。
いるかも分からない生存者を気にしているようで、
今気にしているのは陽乃のことかのような口ぶりだ
まるで、勇者らしくもない。
陽乃が受けている被害を目の当たりにして、迷ってしまったからだろうか。
陽乃「そもそも、勇者の力を使えば早ければ1日で到達だって可能なはずだけど」
球子「死ぬ気かよ。タマ達が平気でもそっちが辛いだろ」
杏「極力接敵を避け、適度に休憩を挟みつつ、一直線で確実に辿り着くことを目的とするならやっぱり2日くらいかかると思います」
- 637 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/22(月) 20:24:02.41 ID:N25V4BBPo
-
球子「道中のバーテックス全部潰していく方が休憩が増えるって考えれば、最低3日、最大は……7日か?」
陽乃「そんなことしたら私、途中で力尽きると思うけど」
主に自滅で。
そんな陽乃を一瞥し、杏が小さく手を上げる
杏「では、仕方が無いので捜索は諦めて諏訪に直行。夜の休憩を挟んで2日目の到着を目標に行きましょう」
勇者としては生存者を探したい気持ちがある。
だが、自分たちの身の安全も保障しきれていない状態で
今もなお隠れ潜むことが出来ている生存者を無理矢理に連れ出すメリットが見当たらない
外の世界で隠れて生きていけているなら、
もうしばらく、それを維持して貰っておくのがベストな選択だ。
杏「久遠さんの力は強い分、負担が大きい……ですよね?」
陽乃「ええ」
球子「なら普通の白餅と戦うならタマと杏だけ。やばいのが出てきたら頼む」
陽乃「油断は――」
杏「してません。だからこその温存です」
球子「肝心な時に血反吐吐かれたら困るんだ」
球子の呟きには、一理ある。
白餅……おそらく、白くて丸い体を持つバーテックスのことだろう。
あれの次、進化体とされているモノが出てきた時に陽乃がもう戦えませんは言えない。
球子「なんか、車とかで移動できたらいいのになぁ」
杏「免許は仕方ないにしても鍵もガソリンも何もないだろうし、無理だよ」
道だってきっと、荒れ果てている
陽乃「車……あ……道中を2人に任せられるなら……」
球子「ん?」
移動は陽乃……九尾に任せてしまえばいい。
以前、乗せて諏訪まで行くことができると言っていたし、
その際は戦闘の懸念があると言う話だったはず。
それを球子と杏……遠・中距離専門の2人に委ねてしまえば、
移動しながらでも十分に対応できるのではないだろうか。
陽乃「足は、九尾がいるわ」
- 638 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/22(月) 20:38:59.16 ID:N25V4BBPo
-
九尾の足なら、人間どころか勇者にだって負けない速さで駆け抜けていくことが可能なはず。
そのうえで、敵との遭遇したとしても立ち止まらずに遠・中距離の攻撃で対応していくことができるなら、
2日も掛からず、1日どころか半日で踏破することだって可能かもしれない。
もちろん、道中で対応しきれない数のバーテックスに囲まれたりしたら大変な事になるが、
その時は止まって対応したらいい。
その頻度と、疲労度合いによっては2日かけたって何の問題もない。
杏「九尾さんを呼んでる間、久遠さんは大丈夫なんですか?」
陽乃「戦うよりは軽いわ」
球子「そもそも乗せてくれるのか?」
陽乃「どうかしら……貴女はお腹の中にいて貰うことになるかも」
球子「へぇ〜狐にもお腹に袋あるのかー」
陽乃「ええ。胃袋がある」
球子「待てっ、死ぬだろそれッ!」
吠える球子をしり目に、
陽乃はふっと息を吐いて胸元を押さえる。
死にかけた一昨日の夜
約2日経って、胸やけのような感覚もない
この状態なら、九尾を呼んでおくくらいは問題が無いはずだが。
杏「体調に不安があるなら、時間をかけてでもいいので普通に行きましょう」
1、九尾を呼ぶ
2、呼ばない
↓2
- 639 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 20:42:08.39 ID:6WmpSPfM0
- 1
- 640 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 20:43:26.32 ID:sKN+TC3HO
- 1
- 641 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/22(月) 21:45:36.55 ID:N25V4BBPo
-
陽乃「九尾、お願いできる?」
『小娘を喰ってよいのか?』
陽乃「ダメ」
陽乃の足元から影が伸びる
球子の影と陽乃の影が繋がって、
球子の足元の影が狐の口のように開いて――
球子「ぬわぁぁぁぁっ!?」
不意を突いて実体化する影は瞬く間に大きな狐の形を作り出し、
球子の体を飲み込んだかと思えば、
牙のような歯で球子の服を咥えこんでいる
球子「なっ、なん……やめろぉっ!」
九尾「お主は胃の中に収めよ。と言うのが我が主の命じゃ」
球子「やめろっ死ぬっ! 死ぬからっ!」
止めてくれと叫ぶ球子をよそに、
陽乃は九尾の身体を見上げる
四つ足の状態で標準的な建物一階の天井に接しそうな大きさの九尾
子供三人なんて、簡単に乗せられそうだ
陽乃「伊予島さん、馬に乗ったことはある?」
杏「ない、ですけど……」
ちらりと、球子を見上げる杏
ずり擦りと服が脱げ始める球子の叫びを聞き届けて
杏「まずは、タマっち先輩を降ろしてあげてください」
- 642 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/22(月) 22:33:12.51 ID:N25V4BBPo
-
陽乃「それで九尾、頼めるかしら」
九尾「ふむ……よかろう」
陽乃「この二人も乗せて平気?」
九尾「主様が望むならば致し方あるまい」
そう言って九尾は屈んでくれたけれど
それでもかなり高い位置にある
球子「毛を毟ってやるからなっ」
九尾「喰い殺すぞ小娘」
陽乃「投げ飛ばすわよ」
球子「なんだよ……なんだよぉっ!」
杏「私が後ろから持ち上げてあげるから……」
球子「そういう問題じゃなぁいっ!」
喚き散らす球子をよそに、
一足先に九尾の背中へと上がった陽乃は、自分の胸に触れる
力を使っている感覚はあるが、
まだ大丈夫そうだ
杏「ほらっ、タマっち先輩! 急ごうよ」
球子「ぐぬぬ……もう少し優しくしてくれたって良いじゃないかっ」
陽乃「そうしてあげる理由がないもの」
2人が九尾の背中に上った野を確認した陽乃はそう言って、九尾の首筋を撫でる
陽乃「お願い。私を諏訪に連れて行って」
九尾「振り落とされるでないぞ」
九尾は言うや否や、駆け出す
自転車なんて比にならないほどの早さで駆け出す勢いに、3人は九尾の体に縋る
かなりの距離があるはずの瀬戸大橋は、あっという間に過ぎていく
- 643 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/22(月) 22:42:59.98 ID:N25V4BBPo
-
11〜20 バーテックス
41〜50 バーテックス
81〜90 バーテックス
↓1のコンマ
※ぞろ目 人
※バーテックスの場合は再判定
- 644 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 22:44:46.17 ID:yWy3eSjVO
- あ
- 645 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 22:46:50.33 ID:8O6NXwWcO
- きたか…
頼むぞ杏タマコンビ
- 646 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/22(月) 22:54:29.86 ID:N25V4BBPo
-
↓1コンマ
01〜99
※コンマ=バーテックスの数
- 647 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 22:56:28.07 ID:6WmpSPfM0
- あ
- 648 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/22(月) 22:58:13.99 ID:N25V4BBPo
-
ではここまでとさせていただきます
明日も可能であればお昼ごろから
バーテックス7体
- 649 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 22:59:14.36 ID:8O6NXwWcO
- 乙
よかったよかった
肩慣らし程度だな
- 650 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 23:09:45.30 ID:yWy3eSjVO
- 乙
この数ならパパッと片付けて先に進めそうだな
あとなんとなく陽乃さんが心を開き始めてきた感じがして嬉しい
- 651 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 15:27:50.49 ID:zO5DXF6Lo
- では少しずつ
- 652 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 15:28:33.58 ID:zO5DXF6Lo
-
陽乃「ん……」
全力で走る九尾
その背中に跨る娘3人
狐の体は、馬のようになだらかな背中をしていない。
走るときも、
後ろ足が前に出る際に背中の部分が盛り上がったりもして、
少なくとも人を背中に乗せるような構造をしていないし、乗り心地は最悪だ。
球子「ぬわぁぁぁぁああああああっ!?」
杏「痛っ……っあっ!?」
陽乃「下手に喋ると舌を噛むわよ」
振り落とされかねない勢いに叫ぶ球子
身体が浮いたかと思えば、股座を九尾の背中に直撃する杏
そんな2人の前で平然としつつ、
降りた後が怖いと自分の擦れ具合を気にする陽乃
九尾「主様っ!」
陽乃「どうしたの?」
九尾「異形共の気配がある。数は少ないが――真っ直ぐ向かってきておる」
球子「てってき……敵かっ!?」
杏「うっ……うぷっ……」
陽乃「バーテックスだけど、対応できるの?」
球子「タマにまかせタマ……うぉぁっあ゛っ!?」
不安しかない。
- 653 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 15:49:50.13 ID:zO5DXF6Lo
-
九尾が感知してからすぐに、建物の隅から数体のバーテックスが飛び出してくる
合計、7体の白餅バーテックス
進化体の名称はまだ出来ていないし、
単純に白餅で良いだろうか。
陽乃「白餅7個! いける!?」
球子「いけっ……いっ……うにゃっ!?」
杏「く、久遠さっ……」
陽乃「あぁもう……っ!」
乗馬の経験があろうがなかろうが、
九尾の背中に乗った状態で流鏑馬めいたことをしろと言うのは無理がある
足を止めて戦うなら、陽乃が戦えば良い
7匹程度連れていくのも無理ではないが、
それが増え続けるのは避けたい
陽乃「出来るの? 出来ないの?」
杏「っはっ……建物の上っ……せめて一度、滞空時間を作って下さっ……ひゃぁっ!?」
陽乃「九尾!」
九尾「軟弱な小娘共め、捕まっておれ」
より速く、九尾の体が動く
足元のがれきを蹴飛ばし、崩れかけの建物の側面を蹴り上がって
まだ崩れていないビルの屋上へと辿り着く
陽乃「2人とも!」
白餅は後ろからついてきている
お手並み拝見だ
杏「っ」
- 654 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 15:51:40.37 ID:zO5DXF6Lo
-
↓1コンマ判定 一桁
0〜9
※杏の撃破数
※7以上で終了
- 655 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/23(火) 15:54:59.76 ID:CM/W5uIlO
- あ
- 656 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 15:59:16.00 ID:zO5DXF6Lo
-
↓1コンマ判定 一桁
0〜9
※球子の撃破数
※1以上で終了
- 657 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/23(火) 16:03:42.64 ID:fDowCT9+O
- あ
- 658 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 16:24:05.24 ID:zO5DXF6Lo
-
杏「………」
九尾の背中の揺れ、体にぶつかってくる風
ただでさえバランスが悪いのに、杏は今日が初めての実践だった。
バーテックスに襲われた経験はあるけれど
それを撃退した経験が杏にはないのだ。
自分の武器を模したものを使っての戦闘訓練を行ったことはある。
それはあくまで木の板だったり、
模擬戦として若葉達ほかの勇者に向けたものだった。
初戦闘。
怖くないと言えば嘘になる。
怖くて、不安で、苦しくて、辛い
けれど……戦えなければ足手纏いだ。
あの日、救われた時と何一つ変わらない
本気で力を使って抵抗すれば振り払えたにも関わらず、
それをせずに抑え込まれ、目の前で陽乃が大人を殴り飛ばすのを見ていることしかできなかったのと何も変わらない
杏「っ……はぁ……」
後悔した。
大人一人を怪我させてでも力を振り絞り、
あの場で立ち上がって、たった一言 "勇者に委ねろ" と言えばよかったと。
そんな後悔は、もうしたくない。
陽乃「跳ぶわよ!」
杏「はいっ!」
ビルの屋上から九尾が跳ぶ
長い胴体をまっすぐ伸ばして、限りなく平坦を保つ。
口にはしない九尾の気遣いに杏は小さく礼を述べて、クロスボウを構えた
- 659 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 17:02:07.84 ID:zO5DXF6Lo
-
狙えば横にも縦にも切り開ける球子の楯……旋刃盤と違って
杏の武器はその射程こそはるかに長いが、一直線に進んでいくだけの代物だ
敵の動きが直線的なら問題ないが、
縦横無尽に逃げ回れる状況では、命中精度という部分に難がある
だから当然――鍛練ではそれを重点的に鍛え上げている
杏「……ふぅ」
九尾が動いているならともかく、
跳躍中の滞空時間なら、偏差射撃はそう難しいことではない。
九尾の体が落下していく、減算
バーテックスが建物の影から飛び出してくる、加算
ほぼ風のない今、計算すべきはそれだけで十分だ
杏「タマっち先輩は私の後にお願いッ!」
球子「お、おうっ!」
球子の攻撃による乱れは、狙いさえも不確かにする
だから、球子には後出しを願いバーテックスの動く先を狙って――連射する
次から次へと、近づいて来るバーテックスに金色の矢が突き刺さり、撃墜していく
一つ、二つ、三つ
躱そうと動くバーテックスをも巻き込んで
杏「タマっち先輩! 一つ!」
球子「まっかっせ――ろぉッ!」
逃れに逃れ、近づいて来る最後の一匹へと球子の旋刃盤が投げ込まれて、直撃する
- 660 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 17:17:37.23 ID:zO5DXF6Lo
-
7匹いたバーテックスはあっという間に砕けて消え去り、
九尾の足が目の前に迫ってきていたビルの屋上へと触れる
杏「っあ――いっ……いったぁぁぁぁ!?」
着地までの滞空による浮遊感
地に足着いた九尾の体を追いかける杏の身体を、
駆け出す九尾の背中が迎え撃った激痛に悲鳴を上げて蹲る杏
球子「ちょまっ――落ちるぅぅぅぅぅぅ!!!」
投げた旋刃盤を受け止める体勢に入っていた球子は
バランスを崩し、足が離れた危機感に叫ぶ口が塞がる前に九尾のしっぽが球子を巻き取る
九尾「喚くな小娘共」
球子「ちょっとは加減してくれよっ!」
九尾「妾の顕現が長引けば長引くほど主様が消耗する。迅速でなければならぬ」
杏「うぅ……っ……く、お、んさんはっ……平気ですか?」
陽乃「戦いでは消耗していないから、まだまだ平気」
杏「それなら、良かったです……っ……」
目元に涙を浮かべる杏は安心したように呟きながら、
九尾の身体に全身を使って抱き着く姿勢のまま顔を伏せる
陽乃「大丈夫?」
杏「暫く、お風呂には入れないかもしれません……」
陽乃「……でしょうね」
- 661 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 17:44:28.21 ID:zO5DXF6Lo
-
あっという間に岡山の瀬戸内市に入り、
通り過ぎて、兵庫の姫路をまっすぐ突き抜けていく
陽乃「戦うときは移動しながらは厳しそうね」
杏「えっと……初めてだからっていうのもあると、思います」
陽乃「それだけ?」
杏「………移動しているものを狙う、偏差射撃については鍛練を積んでいるのでどうにか。問題はその、やはり体の揺れですね」
杏は、
的が動いている状態、自分が動いている状態
その両方が動いている状態
その全てのパターンをどうにかすべく、鍛錬を積んできている
自分の足で走っている場合は、
自分の身体の動きと言うのもあって、体の揺れを調整するのも把握するのも容易だ
しかし、それが他人となると勝手が違う。
意識していない時に上下左右に振られると、当然ながら照準はブレる
狙うのをやめて乱射するというのも手段の一つだが
今回みたいな少数の敵には効果が薄い
杏「でも、慣れればどうにかできると思います」
陽乃「そう……で、貴女は?」
球子「タマは踏ん張りが利かないと難しいな。雑魚は良いけど固い奴には弾かれる」
- 662 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 18:04:09.91 ID:zO5DXF6Lo
-
陽乃「だとすると、やっぱり足を止めた方が良いんじゃない?」
杏「そう、ですね……」
杏は少し考える。
足を止めて対応するのが一番楽だが、
それでは時間を出来るだけかけずに向かうという計画が損なわれる。
なにより、回避を足の速い九尾に委ねておくというのは安心感が違う
敵に奇襲を受ける可能性もグッと低くなるはずだ。
今後も陽乃と共に戦うなら、
この状態での戦いには慣れておくのが吉だと考えられる。
杏「いえ、次は乱射で対応してみます」
球子「タマも戦い方をもうちょっと考えてみるべきか……」
九尾「お主はそのまま投げ飛ばせばよかろう」
球子「踏ん張りがきかないって言ってるだろ」
陽乃「九尾の尾を使って土居さんを投擲するのはありだと思うけど……」
球子「そうだと思ったよッ!」
今回は数が少なかったお陰で、
多少グダついても難なく対応することは出来ただろう
しかし、
進化体が出現したり、数が増えた場合はそううまくいくとは思えない
不得意な状況での戦闘方法もしっかり考えておくべきだ
- 663 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 18:15:45.55 ID:zO5DXF6Lo
-
31〜40 バーテックス
60〜69 バーテックス
81〜90 バーテックス
↓1のコンマ
※33・66・88で進化体
※バーテックスの場合は再判定
- 664 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/23(火) 18:17:51.53 ID:+Myakom30
- はい
- 665 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 18:57:21.32 ID:zO5DXF6Lo
-
兵庫を駆け抜け大阪へと入ったはいいものの、
特に観光名所らしきところも何もない地区をまっすぐ走って京都にたどり着く
金閣寺があったであろう方向にも、もはやその影もない
杏「3年間……たったそれだけでこんなにも荒れちゃうなんて」
崩れた建物は多く、
そうなっていない建物も九尾が足場にしてしまえば崩れるのではないかと不安になる
人影なども微塵もない
動物がいるような雰囲気も感じられない
ただ。
球子「空気は悪くないな……キャンプ場とかで感じるような良い空気を感じる」
陽乃「人がいなくなった方が地球には優しいって話?」
球子「ん……まぁ、簡単に言えばそうだな」
ある意味、荒れていたのは今までであり、
これはむしろ、あるべき姿に戻っていっているとも考えられるのではないか。と、3人は感じる
水や土の状態を確かめる気はないが、
空気を信じるなら、それらも良くなっている可能性は十分にある
杏「……人が荒らし過ぎたからバーテックスが現れたとか?」
球子「無いとは言い切れないな……っていうか……いや、何でもない」
- 666 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 19:24:59.55 ID:zO5DXF6Lo
-
京都から滋賀
愛知には入らず、岐阜に入って真っ直ぐ諏訪を目指す
人がいた頃よりも自然が見える世界
建物は崩れ、
雑草が生い茂り、
アスファルトは割れて……微かに緑が見える
そんな街並みを一瞥して、球子は奥歯を噛みしめる。
球子「これなら車よりも早いんじゃないか?」
九尾「小娘2匹がおらねばより早くたどり着けるがのう」
陽乃「そんな速さで動かれたら、私でも振り落とされるわよ」
今でも、振り落とされないようにとそれなりに頑張る必要がある
なのに、今以上に速く走るなんてことになったら
その風圧に耐えられない可能性がある。
早朝に出発して、戦闘を挟んで、今は昼過ぎ
戦闘があった分減速して警戒を強めているからだ。
近くにバーテックスの反応はないが、
遠くにはバーテックスの反応が強く感じられるらしい。
それも、諏訪に近づけば近づくほど多くなってきているという
杏「諏訪への集中攻撃を目論んでいるんでしょうか?」
陽乃「遅かれ早かれ、総攻撃が行われると思うわ」
- 667 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 19:59:46.85 ID:zO5DXF6Lo
-
杏「……あの、久遠さん」
陽乃「なに? お手洗いなら最悪止まっても良いけど」
球子「それ以外止まらない気かよ……」
杏「あ、いえ……それも、あの。そうなんですが」
杏は思わぬ言葉に気恥ずかしそうにしながら、
首を振る。
今したい話はそれではない。
なにより、今はちょっと、辛い。
杏「諏訪周辺のバーテックスを一部叩いてしまうのはどうですか?」
陽乃「自分から戦いに行くってこと?」
杏「そうです。総力戦が行われることが確定しているなら、その戦力を削って負担を減らしてみませんか?」
球子「そうは言うけど、突っ込めばその分敵が来るじゃんか。そうなったら諏訪に入れないだろ」
杏「九尾さんの速度なら、頃合いを見計らって離脱できるのでは?」
九尾「無論可能じゃが、主様が消耗する」
つまりは却下。ということだ
九尾はそんな余計なことをする気はないらしい
1、大丈夫。少しくらい削っておきましょ
2、死にたくないって言ったでしょ。さっさと諏訪入りするわ
↓2
- 668 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/23(火) 20:01:05.02 ID:+Myakom30
- 2
- 669 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/23(火) 20:01:29.16 ID:9uHeQKL8O
- 1
- 670 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/23(火) 20:02:31.33 ID:f/kCLqhz0
- 2
- 671 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 20:36:53.85 ID:zO5DXF6Lo
-
陽乃「大丈夫。少しくらい削っておきましょ」
九尾「主様」
陽乃「大丈夫、少しはね」
陽乃は胸元に手をあてがう
ここに来るまで、ずっと九尾の力を使い続けている
四国を出る前は痛みもなかった体
今は少し、胸の内に違和感を感じる
けれど口の中に血の味はない
血を吐くような兆候も感じられないし、
今しばらくは力を使っても問題ないはずだ
球子「本当に大丈夫か?」
杏「あの、無理をして欲しいわけでは」
陽乃「いずれにしろ、通り道なら叩くだけだわ」
九尾「主様、分かっておると思うが妾を出したまま戦うのは負荷が重いぞ」
陽乃「分かってる」
総攻撃は阻止することは出来ない
だが、総攻撃を延期させたりその戦力を削ぐことは出来る
延期でも戦力減少でもどちらでもいい
総攻撃を乗り越えた後に諏訪を脱出して四国に戻るのが一番いいだろうか。
いや、あるいは。
そのまま諏訪の防衛に努めるというのも悪くない話だ
- 672 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 21:34:32.35 ID:zO5DXF6Lo
-
長野西部、岐阜県側からの長野への進入を試みる
四国のように、付近を広く巻き込んでの強力な結界は発生しておらず、
諏訪湖を含むほんの一部の区画のみが結界によって守られている
岐阜との県境などはもう、守られていない
陽乃「……結界、弱ってるわね」
九尾「三年前に比べればもはやないも同然の状態じゃな」
球子「三年前? 来たことあるのか?」
陽乃「ううん、九尾が感じ取ってくれただけ」
目視では確認できないが、
九尾曰く、四国の結界に似た力を感じるのは諏訪湖の南東の部分だけだという
そこから展開されている微弱な結界によって
どうにか維持されているという状態のようだ
杏「敵が一番多いのは、どのあたりですか?」
九尾「ふむ……やはり結界の要付近じゃな。そこから散っておる」
陽乃「散ってるって、どの程度?」
九尾「数十は下らんな」
数十……十数匹ではない。
極端に言えば、99匹いる可能性もある
陽乃「私も、少しは力を使うから大丈夫ね」
球子「少しだぞ。杏とタマもいるんだ。ちゃんと協力してくれ」
陽乃「期待はしないでおくわ」
- 673 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 21:38:27.54 ID:zO5DXF6Lo
-
↓1コンマ
01〜00
※ぞろ目2倍
※01〜09の場合、+再判定
- 674 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/23(火) 21:42:05.39 ID:9uHeQKL8O
- あ
- 675 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 22:25:02.61 ID:zO5DXF6Lo
-
バーテックスの戦力の一部を削るための、ルート変更
当初の予定では、
岐阜方面から諏訪大社に直行する手はずだった
しかし、バーテックスの数を減らすとなると、
最も狙われている諏訪大社の付近からは入れない。
寧ろその真逆
諏訪湖北側から侵入するのが一番だ
そこなら敵も手薄なはずなので
総攻撃を行う際の戦力を削りつつ、
こちら側に被害を出さない絶妙な戦況になる
最も、本当にそうなるかは賭けだ
球子「バーテックスの数は?」
九尾「ふむ……そう多くはないな」
杏「……そう、でしょうか」
鉢盛山の麓の影に隠れつつ、様子を窺う
陸地や、建物に張り付いているように見える白餅の数々
埋め尽くしているそれらは数えていられない
陽乃「準備は出来てる? 最悪、ここで死ぬ可能性もあるって思っておいて」
球子「死ぬかもなんて思いながら戦えるかよ」
球子は首を振って、陽乃を見る
球子「勝てなくてもいいけど、生きていたいじゃんか」
杏「今回は勝てないと困るけど……でも。そうだよね。死ぬかもしれないけど、でも生き残れるって信じましょう」
陽乃「そう……まぁ、死んでも責任は取らないから勝手にしなさい」
陽乃は素っ気なく言い捨てて、胸を押さえる
まだ平気、まだ大丈夫
深く息を吐いて――九尾の背中に跨る
陽乃「行くわよ!」
- 676 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 22:35:14.31 ID:zO5DXF6Lo
- ↓1コンマ判定 一桁 球子
↓2コンマ判定 一桁 杏
0〜9
※ぞろ目倍
- 677 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/23(火) 22:36:06.40 ID:9uHeQKL8O
- あ
- 678 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/23(火) 22:41:17.18 ID:f/kCLqhz0
- あ
- 679 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 22:47:14.71 ID:zO5DXF6Lo
-
球子 ⇒10
杏 ⇒8
39−(10+8)=21
- 680 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 23:24:21.74 ID:zO5DXF6Lo
-
せっかくの奇襲と言う利点を活かさない理由はない
中・遠距離の攻撃可能な球子と杏に先んじて仕掛けさせる
球子「頼むっ、タマをぶん投げてくれ!」
九尾「回収はせぬぞ」
球子「してく――」
球子が反応するよりも早く、
九つの尾の一つが球子の身体を巻き上げて、背中から引き摺り落とす
投擲に備えて力を蓄える九尾の尾は、
背中に跨るよりも酷く揺れ動く
その勢いが頂点に達する寸前に、がくんっと下がって――
球子「ぬおぁぁぁぁぁぁ!」
九尾は前足でブレーキをかけると、
身体をぐるりと回転させて、横向きに球子の身体を放り投げる
叫びながら消えていく球子
それを見ることなく九尾は投げた勢いをそのままに体を回してまた駆け出す。
球子「ぅ……ぉぁっ……」
投げ出された体は空気に押しつぶされ、
圧迫される肺から酸素が逃げ出してしまう
腕と足がもぎ取られるような感覚が伝わってくる
苦しい、辛い、痛い……苦しい……苦しい……
意識が消えそうなほどの勢いをその身に受けながら
それでも球子は歯を食いしばって、楯を構える
球子「がふっ……ふっ……ふーっ……ん゛っ」
楯を掴み、息を吐いて、吐いて、吐いて
身体の中から空気が抜けたまま、心臓の動きを止め、息を止め
力の全てを構える右手に集中させ――
球子「ぶっっっっとべぇぇぇぇぇッ!」
九尾によって生み出された勢いをその一投に含めて、バーテックスの大群へと投げ込む
- 681 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 23:43:55.07 ID:zO5DXF6Lo
-
陽乃「動いたわよっ、伊予島杏!」
杏「!」
九尾の身体から投げ出されないように必死にしがみ付いていた杏が顔を上げる。
はるか上空の赤い光が瞬き、一筋の星が流れ落ちて――
バーテックスの密集地を爆発させる
もちろん、球子の攻撃によって爆発したわけではなく、
建物や地面を粉砕したが故の爆音に似た轟と粉塵が舞っただけだが
それでも、それなりの数のバーテックスが吹き飛び、圧殺され、叩ききられた
その奇襲を受けて、白い球体上のバーテックスがぞろぞろと空中に散らばっていく
杏「はぁ……っ……」
空に広がりつつあるバーテックスへと
今度は杏がクロスボウを向け、狙いを定めることなく乱射する
陽乃「九尾……真っ直ぐ!」
九尾「うむ」
杏と球子の奇襲攻撃によって、
半分に近いバーテックスが消えていく
それでもまだ視界を埋め尽くすばかりの数いる
そして諏訪は今まで、それ以上の襲撃を受けてなお健在なのだ
陽乃「諏訪の勇者……白鳥歌野さん。ね」
九尾「主様!」
陽乃「分かってるってば」
- 682 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/24(水) 00:03:01.60 ID:jDukJghDo
-
空から球子が降ってくる
九尾は回収しないと言っていたけれど、
このまま駆け抜ければ無事に球子を回収することができるだろう
陽乃「伊予島さん、土居さんを回収するために真っ直ぐ駆け抜けて」
杏「久遠さんは?」
陽乃「まだ残ってるバーテックスがいるから、殴りに行くわ」
杏「久遠さんっ!?」
上に投げ出された球子、九尾に跨ったままの杏
2人は遠距離からの攻撃が可能なため、
安全地帯からでもバーテックスの撃退が出来る
だが、陽乃はそうではない
その拳を叩きこむのが、普通の戦闘スタイルだ
だから――九尾と杏を先に行かせて飛び降りる
陽乃「九尾、5分!」
九尾「たわけ! 三つじゃ!」
言うだけ言って走り去っていく九尾を一瞥し、
陽乃は胸を押さえる
陽乃「ちょっと痛いけど……まだ、平気」
1、全力で戦う
2、中くらいの力で戦う
3、加減して戦う
↓2
※それぞれ討伐補正有
※それぞれ陽乃の体調判定追加
- 683 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/24(水) 00:05:53.04 ID:7nveebhUO
- 3
- 684 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/24(水) 00:09:56.87 ID:PLjZzSiQO
- 2
- 685 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/24(水) 00:14:19.84 ID:jDukJghDo
-
↓1 コンマ判定
1桁+2桁
※ぞろ目はさらに倍
- 686 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/24(水) 00:17:03.00 ID:mqlKCH9IO
- ゾロ目出したいな
- 687 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/24(水) 00:19:50.11 ID:Gc14lahSO
- このゾロ目はひょっとしてオーバーキル?
- 688 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/24(水) 00:23:41.46 ID:7nveebhUO
- 0という可能性も
- 689 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/24(水) 00:24:36.77 ID:jDukJghDo
- ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
(10+10)*2=40
バーテックスの残数(21)超過のため終了
- 690 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/24(水) 00:34:15.35 ID:mqlKCH9IO
- 乙
やったぜ
やっぱり久遠さんはつえーや
- 691 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/24(水) 00:34:31.13 ID:Gc14lahSO
- 乙
陽乃さん圧倒的な戦闘力だな…
杏とタマも活躍してサクサク進めてるのもいいね
- 692 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/24(水) 00:37:20.15 ID:7nveebhUO
- 乙
圧倒的じゃないか!
- 693 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/24(水) 20:43:54.66 ID:jDukJghDo
-
では少しだけ
- 694 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/24(水) 20:46:28.54 ID:jDukJghDo
-
陽乃「ふぅ……っ……」
陽乃が自覚している本気としては、二通りある。
一つは、九尾の力を用いた身体強化を最大限まで行うこと。
血の一滴、取り込む酸素、髪の先から爪の先まで。
久遠陽乃と言う人間を形成するすべてに力を流し込んでいく戦い方だ
それをすると外側だけでなく内側にまで力が巡る為、かなりの力を得られる
けれど、吐血は免れないし意識の混濁や消失が起こる。
もう一つが九尾ではない力、伊邪那美命の御力を借り受けること。
ただ、これに関しては未知数としか言いようがない。
九尾ですら抗うことのできない強力な死の力
間違いなく九尾より強いが、それがどのような効果を発揮するのかは分からない。
ただ姿を見せているだけで吐血し、瞬く間に気を失うほどの負荷がかかる力だ
その力を持って戦うなら、死の覚悟は必須
陽乃「はぁ……」
それは出来ない
それをするのは今ここではない
であれば、確実に生き延びるための戦い方を選ぶ。
九尾の力を身に纏い、ゆっくりと握り拳を作る
陽乃「ふぅ……っ、げほっ……」
喉は痛むが、血は吐いていない
まだ平気だ。何も問題ない
視界も良好、霞んでいない
足元を確かめて、バーテックスを見上げた
- 695 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/24(水) 20:55:22.96 ID:jDukJghDo
-
白餅と言いかえたバーテックスの軍勢は、
空から落ちてくる球子ではなく、眼下に見える陽乃の方を向いている。
一匹残らず陽乃へと向き、しかしながらむやみやたらと突撃してくることもない。
まるで、陽乃が触れてはならない天敵であると学習しているかのように。
陽乃「っ……」
割れたアスファルトを踏みしめて、摺り足気味に下がっていく右足に力を籠める
踵が低く上がり、つま先に力が上乗せされていく
強く、強く
陽乃「はぁー……」
敵を前にしてもなお、冷静に。
穏やかに、強く
陽乃は5分と言ったが、九尾は3つと言った。
猶予はたったの3分間
残った敵は目視が正確なら21
1分で7体叩ければ、確かに3分で終えることが出来る
陽乃「時間がないの……来てくれないのなら、こっちから行かせて貰うわ」
地面を抉るように蹴りだして、すぐそばのビルの側面を足場にさらに高く飛び上がる
数秒前まで見上げていた白い巨躯を見下ろすこともなく、体をひねって――
陽乃「ふっ!」
バーテックスの身体に踵を叩きこむ。
- 696 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/24(水) 21:05:57.02 ID:jDukJghDo
-
白餅のように潰れて歪んだ体はそのままねじ切れて真っ二つに割れ、消えていく
バーテックスに仲間意識があるのかは定かではないが、
すぐ横に居た同類が消え去ったことを察知したのだろう、
目らしきもののない、口だけの表面を陽乃へと向けるが――
陽乃「っ!」
陽乃は後ろにいたバーテックスに蹴りこみ足場として、正面のバーテックスを殴り飛ばし
突撃してきたバーテックスを蹴り潰して、体をひねり、上から落ちて来ていたもう一つの個体を殴り飛ばす。
足場が減り、落ちていく陽乃を追いかけるように白い体が迫ってくる
地面に落ちた瞬間からあれが降ってきたら、流石の陽乃でも無事では済まない
しかし、落下しないという方法は存在しない。
陽乃は当然空を飛べないし、足場になってくれる建物もなければバーテックスもいない。
だから――潔く落ちて、すぐに受身を取って体を回し、バーテックスの落下軌道から外れる
陽乃「かふっ……ふっ……」
九尾の顕現と、戦闘での力の利用
徐々に体が蝕まれていくのが分かる不快感と痛み
咳き込みそうになる喉の奥にはじわじわと鉄臭さが滲んでいるような錯覚を覚える
それでも陽乃は、拳を握り、足場を踏みしめて前を向き、
人間の言葉を理解しているとは思えないが、
陽乃は苦笑交じりにバーテックスを見上げる
九尾がくれた3分
その残り1分半くらいを生き延びることが出来たら、褒美に身体を齧らせてあげてもいい
なんて。
陽乃「まだあと1分以上あるし……耐えきれたら、私のことを食べても良いわよ?」
そんな挑発をして、
向かってくるバーテックスを殴り飛ばし、蹴り潰し、叩き潰して――
陽乃「ほら、もっと口を開かなきゃ」
バーテックスの口のような器官に手を突っ込み、引き裂く
九尾が球子と杏を乗せて戻ってくるころにはもう、バーテックスは跡形もなく消滅していた
- 697 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/24(水) 21:16:23.05 ID:csA3/lWCO
- つよい
- 698 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/24(水) 21:17:23.36 ID:jDukJghDo
-
杏「久遠さんっ!」
陽乃「あんまり大声出さないで」
杏「なら出させないでくださいっ……戦うならまだしも、一人であんな大量のバーテックスを相手にするなんて」
球子「って言ってもタマがいるにもかかわらず、あいつら見向きもしなかったしな……」
空を飛ぶことも出来ない勇者が空中にいるというのは、
敵にとってはこれ以上ないほどにねらい目と言うべきか、最高の的のはずだった。
楯を持つ球子は突撃を防ぐのも容易く、空気抵抗を持たせられるという意味でそれなりに有利
かつ、楯を下にして落下する隕石爆撃めいた突貫技も出来なくもない。
だとしても、ほとんど無防備に近い状態だったのだ。
なのに、バーテックスは陽乃に釘付けだった。
その姿をあるのかも分からない視界に捉えたまま、陽乃が動き出すまで動くことすらなかった
杏「でもっ、それならそれで引き付けて連れてきてくれるだけで良かったのにっ」
遠距離攻撃かつ、連射可能な杏と
中距離かつ、それなりの広範囲を攻撃できる球子
その一方で、体一つで戦わなければならない陽乃は手数が圧倒的に足りない。
にもかかわらず、あの数に立ち向かい、陽動するでもなく殲滅してしまったのだから
陽乃の身を案じる杏としては気が気ではなかったらしい。
杏「久遠さんは確かに強いです。あの数なんて気にもならなかったと思います。でも、万が一もあるって、分かってくださいっ」
陽乃「だから5分……九尾のせいで3分だけって時間制限したでしょ。その間だけ私が戦う。残ってたら私一人では厳しかったってだけで、殲滅出来たらそれで終わり」
杏「っ……武器があるわけじゃないんですよっ?」
球子「あんずっ、落ち着け」
- 699 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/24(水) 21:29:53.28 ID:jDukJghDo
-
球子は前のめり気味に陽乃へと迫る杏の肩を掴んで、
自分の方へと引き寄せるように引っ張る
球子「あんずらしくないぞ。もっとわかりやすく言ってやれ」
杏「分かりやすく……?」
球子「そんな回りくどく言って "ごめんなさい" とか "分かった" とか言ってくれると思うか?」
陽乃「回りくどくなくても言わないけど……」
球子「ほらな? だからもう、とりあえず言いたいこと言っとけ」
球子は困ったように笑いながら、杏の身体を押す。
揺れた体はまっすぐ伸びて、
もう一度、その視界に陽乃を映した
杏「単刀直入に言います……力を使いすぎないでください」
陽乃「この戦いを提案したのは貴女よ。伊予島杏」
杏「はい。でも、私とタマっち先輩がいるから、倒しきるほど力を使う必要はなかったはずです。それこそ、半分倒してあとは任せるって言って欲しかった……」
陽乃にとっては、些細な事だろう。
たった20匹程度の敵だ。
準備運動にも満たないような容易い戦いだったかもしれない。
でも、それでも疲労は蓄積する。
陽乃「私はそんなに貧弱じゃないわ」
杏「でもっ……無理をしたら血を吐くことだってある。気を失っちゃうことだってある。だったらっ……必要ない時は最小限でいてくださいっ」
お願いしますと杏は願う。
1、死なないためには、常に最善を尽くすこと。手を抜くなんて死にたがりのすることだわ
2、はいはい。考えておいてあげる
3、馬鹿なこと言わないで
↓2
- 700 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/24(水) 21:31:12.19 ID:csA3/lWCO
- 1
- 701 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/24(水) 21:33:59.70 ID:pzoP6hMm0
- 1
- 702 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/24(水) 21:53:11.64 ID:jDukJghDo
-
陽乃「死なないためには、常に最善を尽くすこと。手を抜くなんて死にたがりのすることだわ」
杏が死んでほしいと思っているなら話は別だ。
けれど、話を聞く限りでは杏はそんなことなど毛頭考えていない
寧ろ、死んでほしくないからこそ物申している。
球子は顔をしかめたが、反論はしない。
いや、出来ないが正しいだろうか。
何も言わない杏を見ると、球子は口を開いた
球子「そりゃそうだ。油断大敵……だったっけ」
杏「でも、久遠さんの場合は力を使うこと自体が死にたがりに通じているのでは?」
陽乃の言葉に一理ある。
だがそれでもと、杏は首を横に振った。
化け物相手に手加減するのは死にたがりの愚行
けれども陽乃の力は身を滅ぼす諸刃の剣
杏「……久遠さんが戦わなくていいくらいに強くなればいいですか?」
陽乃「そうね……私が戦わなくてもいいならそれが一番ね」
陽乃の力は最終兵器
バーテックスと戦うのはほかの勇者5人に任せて、
陽乃は進化体に備えて温存……なんてことが出来るのが理想だろうか。
杏「久遠さんの代わりを、諏訪の勇者様が担うことは出来ないかな……」
球子「次元が違うからなぁ……でも、普通のあの、白丸いバーテックス相手なら出て来なくても問題なくなるんじゃないか?」
- 703 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/24(水) 22:15:05.39 ID:jDukJghDo
-
杏「なら、是が非でも諏訪から四国に移送したいな……」
陽乃「諏訪の生存者がそれを望まないと無理だと思うけど」
球子「ん〜……交渉次第だろ。たぶん」
球子はそう言って、バーテックスがいなくなった周辺を見渡す。
ついさっきまでバーテックスが住処としていた場所。
球子の爆撃にも似た一撃によって多くの建物が倒壊したが、
それがなくても荒れ地となっていた長野の町
四国に比べて酷く小さく、貧弱と言われた結界
いつ壊されるかも分からない結界の中にいるよりも、
辿り着けさえすれば、今しばらく生きていくことのできる四国に行きたいという人は少なからずいるはずだ。
いや……そうとは、限らないだろうか?
球子「とりあえず、早く結界の方に行くぞ」
杏「そう、だね」
陽乃「ふぅ……」
四国から諏訪までの九尾の顕現
そして、今さっきの戦闘
力を使ったことによる負荷を感じる
球子「ここからは歩くか?」
陽乃「平気よ。気にしないで」
九尾に跨り、球子と杏も同じように引き上げてまた走る
そうして――九尾のおかげで半日程度で結界の中へと辿り着いた
- 704 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/24(水) 22:20:58.37 ID:jDukJghDo
-
↓1コンマ判定
01〜00 (00=100)
九尾+10、中力+20
※計20〜50でダメージ小
※計51〜70でダメージ中
※計71〜100でダメージ大
※100以上はアウト
- 705 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/24(水) 22:22:36.68 ID:pzoP6hMm0
- あ
- 706 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/24(水) 22:27:16.42 ID:7nveebhUO
- あっぶねえ
- 707 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/24(水) 22:43:25.92 ID:jDukJghDo
-
√ 2018年 8月9日目 夕:諏訪
九尾に跨ったまま入るのはと、
その直前で九尾を隠して歩きで結界の中へと入る
杏「あっ……」
「おや……見ない顔だねぇ……」
諏訪までの道中、人の気配は全くしなかった。
崩れそうな建物、崩れた建物
割れたアスファルト、無造作に伸びた雑草
以前は人がいたはずなのに、
すっかりもぬけの殻となってしまった世界
それらを見てきたからこそ、
ここまで来てようやく、自分達以外の人の声を聞いた球子と杏は思わず涙を零しそうになる
「ま、まさか外から来たのかい?」
杏「はい……えっと、その……ここに勇者様がいると聞いたのですが」
「それなら神楽殿の方に――!」
見たこともない少女たちの登場に共学を隠し切れていなかったおじいさんの目が、より見開く
悍ましいものを見てしまったかのような、血の気が失せていく顔
何なのかと困惑する球子は声をかけようとして――
陽乃「ごぷっ……ぁ……はっ……ははっ」
すぐ後ろで、あからさまにヤバい声が聞こえて、振り返る
口元を押さえる手は真っ赤に汚れて、目元も赤く
空気と共に吐き出されているのか、指の隙間から血しぶきが飛んで……陽乃の体が崩れ落ちる
杏「久遠さん!」
杏の悲鳴にも似た声に、陽乃は何も返せなかった
- 708 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/24(水) 22:45:36.05 ID:jDukJghDo
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
68(コンマ)+30(九尾+戦闘)=98
100は越えていないので死にはしません
- 709 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/24(水) 22:55:30.16 ID:csA3/lWCO
- 乙
陽乃さん早くも倒れてしまったか…
総攻撃翌来るまで絶対安静だな
- 710 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/25(木) 00:23:52.10 ID:E/FBUjIiO
- 乙
まあひとまずは長野でゆっくりしよう
- 711 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 20:34:08.57 ID:M/BybS93o
- では少しだけ
- 712 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 20:34:41.70 ID:M/BybS93o
-
√ 2018年 8月9日目 夕:諏訪
夏の陽射しも傾き始めるころ、
諏訪湖の近くにある病院の一室に勇者が集まっていた。
元から諏訪で勇者として活動していた白鳥歌野
歌野を補佐している巫女である藤森水都
四国から来た伊予島杏と土居球子
そして……諏訪に到着してから体調を崩し、今は眠りについている久遠陽乃
杏は陽乃の傍のパイプ椅子に腰かけ、雲ってしまっている酸素マスクを見つめる
杏「……どうして」
球子「昨日、会ったときからヤバそうだったからなぁ……」
瀬戸大橋の付近にある展望台で陽乃を見つけた時のことを思い出して、球子は首を振る。
あの疲労感が壱日で回復したとは思えない
そこに九尾の顕現と戦闘
そこから休まずに結界内までの移動
それらがまとまってのしかかってきたのだとしたら、
ああなるのも無理はないのかもしれないと球子は考えて、顔をしかめた
陽乃は手で押さえながらも血を噴出して崩れ落ち、気を失って
それでも止まらずに陽乃は口や目から血を流し続けた。
血反吐を吐くと陽乃は自己申告していたが、
まさかあそこまでとは思っていなかったのだ
球子「……切り札だよなぁ」
歌野「……えぇっと、そろそろ話を聞いても良いかしら」
眠ってしまっている仲間を気にする気持ちを察しつつ、歌野は切り出す
- 713 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/25(木) 20:40:00.84 ID:bZyNQFZaO
- うたのん達も来たか
- 714 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 20:43:25.09 ID:M/BybS93o
-
歌野「四国の勇者である乃木さんからこっちに勇者が来るって話は聞いてたけど……何があったの?」
杏「久遠さんに関しては力を使う代償のようなものなので、これと言って大きなことはありませんでした」
道中に生存者は見られなかったこと
点々とバーテックスの存在を確認しており、諏訪湖周辺の一団を潰してきたことを杏は話し、
もし、希望があれば諏訪から四国に全員を護送するつもりもあるということを伝えた。
もちろん、
それなりのリスクがあることと、全員が生きたままたどり着ける保障がないことも含めて。
だが、四国での陽乃の扱いは流石に伝えられない。
歌野「そっか……やっぱり、外はもう」
水都「うたのん……どうする?」
歌野「ん〜……とりあえず私達が勝手に決めて良いことじゃないと思う」
歌野は少し考えて、答える
歌野「それに、もし一人でもここに残りたいって人がいるなら……ここから離れるわけにはいかないわ」
水都「でも……」
水都は言い淀む。
正直、諏訪はもう限界が近い。
4つあった結界の要である御柱も、その内2つがすでに破壊されてしまっている。
歌野はかなり頑張っているけれど、3つ目が破壊されるのも時間の問題だろう。
そして、結界が破壊されれば安住の地は無くなる
出来るならここから出て新しい場所を探した方が良い
昔の神託では、国土を取り戻していけるという話だったけれど、
でも、もう、そんな希望が残されているようには見えない
水都「とりあえず、みんなを集めて四国への移住について話してみよっか」
歌野「そうね、そうしましょう」
病室と言うのもあって、歌野は少しトーンダウンして同意すると
陽乃を見て、目を細めた
歌野「乃木さんからは、とってもデリケートって聞いてたけど想像以上ね。本当に戦えるの?」
杏「一騎当千の力はあるんです。ただ、その分の負荷が重くて無理すると今回みたいになっちゃうみたいで」
歌野「そっか、まぁ回復するまでは安静にしてて貰った方が良いわね」
- 715 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 20:54:48.17 ID:M/BybS93o
-
球子「そういえば、若葉からどんなふうに話を聞いてるんだ?」
歌野「近々、四国の勇者がそっちに行くと思うから、受け入れてやって欲しいって言われたわ」
歌野はなぜだか困った様子で、水都を一瞥する
球子「何か問題があったのか? 来たらダメだったとか」
水都「えっと……そう言うわけじゃないんですけど」
水都も少し困惑した様子で、
小さくため息をつくと姿勢を正して……視線だけは下向きだった
水都「その連絡が今日の定時連絡で来たばかりだったので、数日後かと思ったんです」
歌野「今日出発だから、5日くらいかかるかもって話だったのに当日中でしょ? もう、何が何やら」
球子「あぁ……」
杏「それはそうですよね……」
その最速到達の理由は、陽乃の九尾だ
瀬戸大橋方面から結界外に出て分かったことだが、
まず車での移動は無理だ
飛行機などでなければ、道中で動けなくなる。
仮に飛行機があっても、軍用のなにがしかでもなければバーテックスに撃墜されかねない
つまり、1日2日で到達するには勇者であっても不眠不休でなければならない
それを、陽乃達は半日で踏破したのだから驚くのも無理はなかった。
杏「それも、久遠さんのおかげなんです。力の一つを使って、ここまで運んでくれました」
歌野「それなら――」
杏「いえ、数人しか運べないと思います。さすがに数十人一度は……」
歌野の言葉を遮って、杏は首を振る
九尾に全員を一度に運んでもらうのは不可能だ
- 716 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 21:07:07.03 ID:M/BybS93o
-
歌野「無い物ねだり。ね。それと周囲にバーテックスが展開してるって言うのが気になるわね」
杏「もしかしたら、総攻撃をしかけてくる可能性もあります」
球子「久遠……ん、陽乃が万全なら、総攻撃だろうと凌ぎきれる可能性はある」
水都「でも、この人は力を使う負荷が重いんですよね? だったら……あてにはできないんじゃ」
水都の言い分はもっともだ
いや、戦力としては十分に宛に出来る
陽乃が本気を出してくれるなら、もしかしたら一人で総攻撃を耐え凌いでくれる可能性だってなくはない。
けれど、その場合は確実に陽乃が死ぬ。
総攻撃において陽乃にどれだけの負担がかかるのかは分からないが、
それでもかなりの重症に陥るのは免れないと言える
球子「昨日、すでに疲れ切った状態だったからなぁ……それがなければここまでじゃなかったと思うぞ」
杏「諏訪への攻撃の程度を知りませんが、通常の襲撃は私たちで対処して久遠さんには総攻撃まで大人しくして貰うべきだと思います」
歌野「今までも私一人だったし、3人に増えるならもうイージーね。それもベリーな」
簡単なことだと歌野は笑って言うが、水都は少し怪訝そうな表情を浮かべていた。
歌野は実力がある
もちろん、実績だって申し分ない
しかし、それでもバーテックスの襲撃によってそれらが破壊されないとは限らないのだ
ネガティブなのは分かっている。
水都「あんまり過信しちゃだめだようたのん。何があるか分からないんだから」
けれど、不安だった
それは杏と球子の二人が戦力として加わってきてくれても拭いきれない。
- 717 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 21:16:30.39 ID:M/BybS93o
-
√ 2018年 8月9日目 夜:諏訪
↓1 コンマ判定
0 00 最悪
1、7、4 お目覚め
3、6、2 歌野
5、9、8 球子
※ぞろ目特殊(00以外)
- 718 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/25(木) 21:18:08.54 ID:bZyNQFZaO
- あ
- 719 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 22:01:45.66 ID:M/BybS93o
-
√ 2018年 8月9日目 夜:諏訪
陽乃「う……げほっ……けほっ……」
目を開くよりも先に、咳き込む
喉の奥から血があふれ出して、
真っ白な枕を汚す代わりに酸素マスクの中を赤黒く満たしていく
身体の内側から感じる熱い痛みは変わらず、
一度咳き込めば、その反動でナイフがより深く刺さったかのように痛みが増す
陽乃「あ゛っ……い゛っ……ぁっ……ごぷっ……」
手が動かない
足も動かない
吐血する体の痙攣だけが、しばらく続いて
すぐそばにあった心拍数を計測する機械がけたたましくアラートを発する
陽乃「っ……こ、こって……」
血の匂い、血の味、霞む視界
自分の居場所でさえまともに理解も出来ないまま、
慌ただしい足音が部屋に駆け込んでくるのをただただ聞いていることしかできなくて。
「久遠さん? 久遠陽乃さん?」
陽乃「ぅ……」
看護師らしき人の呼び声にも、返せる言葉がなかった
- 720 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 22:37:34.17 ID:M/BybS93o
-
目を覚ましてから1時間ほど経過した頃、
医師による処置と検査を終えた陽乃は、体を起こすことが出来るくらいには回復していた。
ベッドから降りた途端に膝から崩れ落ちるくらいには、力を失っているけれど。
「こちらをどうぞ」
看護師から渡されたお茶を飲み、
陽乃はふっと一息ついて、もう一口
「喉の痛みはどう?」
陽乃「少し、痛むけど」
「声も少し枯れているわね……」
看護師は心配そうに言うと、陽乃の前髪の部分を払う
看護師の女性は陽乃よりも二回りほど年上だ
子供がいれば、陽乃と同じほどの年齢でもおかしくない
だからか、看護師の瞳はとても優しいものだった
「声は極力出さないようにね。でも、咳き込むのを我慢したらダメよ?」
陽乃「あり……っ……げほっ……」
「……ごめんなさいね」
話しかけてしまったせいだと、
看護師は申し訳なさそうに陽乃の背中を撫でる
- 721 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 23:14:10.29 ID:M/BybS93o
-
「そうそう。今はまだ万全ではないから、他の勇者様は呼んでいないの」
陽乃「ん……」
陽乃が目を覚ましたことについてはすでに連絡しているのだが
動けない上に長く話せない陽乃を友人に囲ませるわけにもいかない為
早くても明日の面会にして貰うようにしていた。
それで来られないみんなが、
陽乃には会いたくないなんて勘違いされてはと、看護師は説明をする
「だから、安心してね」
陽乃「………」
ここは四国ではなく、長野だ
3年前の大規模な襲来によって
四国から諏訪への連絡手段は勇者間の連絡を除いて、喪失している
そのため、
久遠陽乃と言う人物が一体どのような人間なのか
そして、四国ではどのような境遇にあるのか
そういった情報は一切伝わってきていない
だから……陽乃に対しても敵意も憎悪も、警戒心さえもない
そしてなにより、好意的だ
「あまり無理してはいけないわ」
陽乃はそれに言葉を返すことなく頷く
礼は言いたいけれど、言って咳き込めば心配させるだけだ
「今日はゆっくり寝るのよ? 無理にでも眠らなきゃだめだからね」
そう言って陽乃から離れた看護師の女性は、
出る前にもう一度陽乃に目を向け、手を振って出ていく
本当に、好意的だ
1、休む
2、九尾を呼ぶ
3、体を動かす
↓2
- 722 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/25(木) 23:15:46.95 ID:E/FBUjIiO
- 1
- 723 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/25(木) 23:19:10.32 ID:lpmF/gAP0
- 1
- 724 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 23:20:48.71 ID:M/BybS93o
-
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 725 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/25(木) 23:24:56.76 ID:bZyNQFZaO
- 乙
陽乃さんにとってはやっと楽園にたどり着いた感じがする
あとは元気になってうたのんと対面したいな
- 726 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/26(金) 00:12:43.27 ID:grRhFOLYO
- 乙
今はとにかく体調戻さないとな
- 727 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 20:04:58.62 ID:i2IEf3Bco
- では少しだけ
- 728 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 20:05:37.83 ID:i2IEf3Bco
-
看護師が病室からいなくなると、途端に静かになる
目を覚ましはしたがろくに動く事が出来ず、
また悪化するかも分からないため、
ベッドサイドモニタが稼働している電子音は相変わらず聞こえているが。
陽乃「はぁ……っ……」
意識していなくても口の中に溢れてくる唾液
それを飲みこむと、動く喉の痛みにえづきそうになる
陽乃「………」
看護師はゆっくり寝るべきだと言っていたし、
処置と検査を行ってくれた医師からも、暫く安静にしているようにと言われた。
そのあとでベッドから降りようとして膝から崩れ落ちたので、
本当に何にもできない
球子達勇者のみんながお見舞いに来ることが出来なくても
陽乃の傍には常に九尾がいる。
姿を出させるのは力をより多く使う必要があるために出来ないが
影の中に潜む九尾と話をするのは可能だ。
とはいえ、それも今は声と喉の調子が悪くて出来ない。
やっぱり寝るしかないかな。と、陽乃は目を瞑る
- 729 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 20:13:31.12 ID:i2IEf3Bco
-
3年前、陽乃は護るために力を得て多くを失い、けれども必死に守れるだけを守った。
まだ小学生の小さな手を伸ばし、
取りこぼしてしまったいくつもの命を目の当たりにして傷つきながら、苦しみながら
それでも、今やれるだけのことをやろうともがいて、もがいて――そうして、生贄になれと捧げられた。
仲の良かった従姉妹が目の前で喰い殺され、庇ってくれた父が殺され、
ただ一人、母だけしかその手の中には残らなかった。
命懸けで母を守り、戻った世界は陽乃を受け入れなかった。
それは、陽乃が多くの命を取りこぼしてしまったからだ。
目の前で頭部をかみ砕かれた女性を救えていれば、
伸ばされた手を取り引き出すことが出来ていれば、
もう少し早くたどり着き、人間を食い荒らすバーテックスが落ちるよりも先に手を打てていれば
きっとそうはならなかったはずだ。
陽乃「っ……」
それは無理な話だ。
出来たかもしれない。なんて話ですらない。
努力と運があっても、それはどうしようもなかった話だ。
たった一人で四国という、一人には広すぎる地を駆けまわっていたのだから。
けれど――化け物を殺せる化け物にはそれが出来たはずだと誰かが言った。
なぜ、どうして、と……恨みが生まれた。
生贄を拒み、母と共に生き残ったことが人類への裏切りとされ、
それこそが惨劇の引き金であると言われ、憎まれ、疎まれ、死を願われるようになった。
- 730 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 20:30:15.39 ID:i2IEf3Bco
-
その一方で諏訪にいる人々はこれからの陽乃が何かをしでかさない限り、
その存在を疎むことも憎むこともない。
けれど、この諏訪という小さな世界はもうじき壊れてしまう。
九尾の力のおかげか
それとも、今すでに満身創痍に陥るほどに身体が神の祟りに冒されているからか
諏訪を守る結界がどれほど傷つき、脆くなっているのかが感じられる。
球子と杏の二人が参戦することによって、
一回一回の襲撃による被害は大幅に軽減されるはずだけれど
だとしても少しずつ傷ついていき、やがて一つ、また一つと御柱は砕けて侵入を許すことになる
正直に言ってしまえば、
陽乃は四国に母を残しているという一点を除いて、戻る理由がない。
一度は許しかけた大社も、人一人殺めたとあってはついに許しておくことが出来なくなっただろうし、
人々に蔓延していた言われもない憎悪はその事実を持って真実となり、陽乃を潰しに来ることだろう。
味方であるべき勇者だってそうだ。
若葉は迷っている
けれども、千景は"殺すべきだった"と激怒しているはずで、
人を殺めた陽乃を、高嶋友奈は止めないわけにはいかないと考えている。
話しが聞きたい。なんて言いながら陽乃の前に現れて立ち塞がり、何が何でも連れ帰ろうとするはずだ
だから、きっと。
願い、叶うのであればこのまま諏訪に永住するのが陽乃にとって最も幸せな道なのだろう。
- 731 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 20:48:38.57 ID:i2IEf3Bco
-
諏訪は陽乃にとって、守るだけの価値がある世界だと言えるかもしれない。
けれど、それを守れるだけの力があると陽乃は思えない。
誰一人として死なせることなく、守り抜くだけの力があるとは思えない。
だから陽乃は自分を勇者とは言いたくないし、人々を守るだなんて口が裂けても言いたくはなかった。
約束しなくても、守れなければ恨まれる
なのに、約束なんてしてしまったらより一層その怒りが強くなるからだ。
医師の男性も、看護師の女性も
みんながみんな陽乃を気遣い、優しく接してくれた。
大社に軟禁されていた時とはまるで違って、一人の人間として扱ってくれていた
それが一変してしまう可能性だって秘めている。
陽乃「ぅ……うぅ……」
陽乃は "守れないのが怖くて" 仕方がなかった
この場所は間違いなく、守っていきたいと思える世界だ。
けれどそれを守ることができなかった時が、たまらなく恐ろしかった。
手のひらを返され、お前のせいだと憎まれ、恨まれ、悪意をぶつけられるのが怖かった。
一度経験してしまった恐怖を、陽乃は忘れられない。
人々から向けられる憎悪と悪意
それの宿った瞳を忘れることが出来ない。
初めから嫌ってくれていれば、それで終わる。
互いに何もなければ、守れても守れなくても傷なんて負わないからと誤魔化せるから。
だから、陽乃は決して人を近づけたいとは思わなかった。
今までも、これからも。
陽乃はそう思いながら、固く目を瞑る
寝よう、寝ようと……必死に、目を閉じ続けた
- 732 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/26(金) 21:03:20.57 ID:embYSk5cO
- 病んでるなぁ…
- 733 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 21:08:01.00 ID:i2IEf3Bco
-
↓1コンマ判定一桁 歌野
↓2コンマ判定一桁 水都
※ぞろ目2倍
※絆値+(初期40)
- 734 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/26(金) 21:08:59.64 ID:embYSk5cO
- あ
- 735 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/26(金) 21:10:13.66 ID:sON9xrkU0
- あ
- 736 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 21:14:54.72 ID:i2IEf3Bco
-
1日のまとめ(四国組)
・ 乃木若葉 : 交流無()
・上里ひなた : 交流無()
・ 高嶋友奈 : 交流無()
・ 郡千景 : 交流無()
√ 2018/08/09 まとめ
乃木若葉との絆 62→62(普通)
上里ひなたとの絆 56→56(普通)
高嶋友奈との絆 52→52(普通)
郡千景との絆 21→21(険悪)
1日のまとめ(諏訪組)
・ 白鳥歌野 : 交流無()
・ 藤森水都 : 交流無()
・ 土居球子 : 交流有(遠征、九尾、戦闘、体調不良)
・ 伊予島杏 : 交流有(遠征、九尾、戦闘、体調不良)
・ 九尾 : 交流有(遠征、九尾、戦闘、体調不良)
√ 2018/08/09 まとめ
白鳥歌野との絆 44→44(普通)
藤森水都との絆 52→52(普通)
土居球子との絆 55→55(普通)
伊予島杏との絆 62→62(普通)
九尾との絆 63→63(普通)
- 737 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 21:19:53.76 ID:i2IEf3Bco
-
√ 2018年 8月10日目 朝:諏訪
01〜10 球子
21〜30 水都
41〜50 杏
81〜90 歌野
↓1のコンマ
※それ以外は通常
- 738 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/26(金) 21:21:26.52 ID:sON9xrkU0
- あ
- 739 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 21:53:50.34 ID:i2IEf3Bco
- √ 2018年 8月10日目 朝:諏訪
一定のリズムを刻む電子音を聞きながら眠り、
その音を聞きながら目を覚ます。
クリーム色に近い病室の天井を眺めながら、ゆっくりと手先足先へと意識を向けていく
昨夜は上手く伝わりきらなかった感覚も、今は伝わっている
陽乃「っ……」
布団の中から手を出して、顔の前に掲げる
第二関節まで曲げると、震えてしまう
感覚はあるが、力がまだうまく入らないのだ
陽乃「こんなじゃ、戦うなんて不可能ね……」
九尾の力をもってすれば、
こんな感覚なんて無視して戦うこともできるだろう
けれど、その負荷は積み重なって
二度と体が動かなくなる可能性もあるわけで。
今はまだ、そこまでする必要もないだろうと陽乃は布団の上に手を落とす
陽乃「………」
すぐそばのベッドを動かすリモコンを手に取って、上半身を起こしていく
枕を腰のあたりに下げて、支えにする
足を動かすこともできるけれど、骨が軋むような感じがする
冬場の厚い布団だったら、身動き一つ出来なかったかもしれない
- 740 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 22:27:22.76 ID:i2IEf3Bco
-
部屋は昨日の夜と同じように静かだ
ただただ、電子音が聞こえるだけの病室
外から入り込む虫の声はあるけれど、それくらいしかない。
端的に言ってしまえば、手持ち無沙汰だった。
陽乃の手元には本もスマホもないし、
病室にはもはや役立たずとなったテレビが設置されているわけもなく。
そもそも、本もスマホも今の陽乃は持っていられない
陽乃「……」
昨日の夜、看護師の女性は目が醒めた連絡だけはしたと言っていた。
時間と陽乃の容態を見て、昨日は様子を見に来ないようにとも。
なら、朝になったら来てくれるものではないかと思うけれど――
陽乃「別に、来なくていいけど」
諏訪の勇者である白鳥歌野
そのサポートを担当しているらしい、藤森水都
2人にはもう、会ったのだろうか。
どこまで話して、どうなっているのか。
陽乃は考えて、息を吐く。
1、九尾を呼ぶ
2、寝ておく
3、イベント判定
↓2
- 741 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/26(金) 22:35:09.55 ID:sON9xrkU0
- 1
- 742 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/26(金) 22:36:08.65 ID:embYSk5cO
- 1
- 743 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 22:57:23.15 ID:i2IEf3Bco
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば、お昼ごろから
- 744 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/26(金) 23:06:12.82 ID:embYSk5cO
- 乙
意外にもうたのんよりみーちゃんの方が絆値高くなるとは…
しかし陽乃さん人どころか自分の力すら信用してなくて精神的に深刻だな
- 745 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/27(土) 00:16:03.57 ID:X3Q55+lLO
- 乙
相変わらずメンタルが不安定だなあ
- 746 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 13:47:30.95 ID:FPyLwFj9o
-
では少しずつ
- 747 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 13:48:29.45 ID:FPyLwFj9o
-
陽乃「九尾、いるんでしょう?」
横に伸びる影に向かって声をかける
そこには誰もいないけれど、潜んでいる
陽乃「姿を見せなくてもいいから、色々聞かせて欲しいのよ」
枕元の自分の影を撫でると、
ひそかに揺れて、人の形から狐の形へと歪んでいく。
差し込む光がそうさせているのではなく、九尾が混じっている証拠
『良いのかや?』
陽乃「うん。少しくらいなら話しても問題なさそうだし」
『ふむ……まさか主様があそこまで貧弱とは思わなかった』
陽乃「疲れが溜まってたのよ……たぶん。違うの?」
『いかにも』
そもそも、
かの神―伊邪那美命―を顕現させたことによって、陽乃は体の内側がボロボロになっていた。
それをまた陽乃が持つ別の力を用いて強引に治癒能力を高めて癒したのだ。
ただそれだけの身体で、逃亡し、たった一日休んだだけでの遠征
九尾を呼び続け、力を纏って戦ったのだから
運が悪ければ、癒したばかりの身体の内側がまた酷いことになる可能性があった
そして、
その最悪の結果……いや、最悪の一歩手前になってしまった
- 748 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 14:12:08.19 ID:FPyLwFj9o
-
『数日はおとなしくしておく方が良い』
陽乃「そんなに?」
『拳も握れぬ体で、何を成すというのかや?』
陽乃「それはそうなんだけど……」
九尾の声を聞きながら、もう一度手を上げてみる
握りしめるほどの力は出なくて、
球子に押し倒されたときよりもさらに衰弱しているのが分かる
あの時は若葉からの逃走劇なんて言う茶番もあったが
今の状態で窓から飛び出したら受身も取れずに骨折の一つや二つは免れなかったかもしれない。
『昨夜、主様が眠っている間に小娘共が四国への移住を提案しておる』
陽乃「そう……で、答えは?」
『諏訪の娘どもでは決められぬと、言うておったのう』
陽乃「それはそうよね……」
当たり前と言えば当たり前の話だ
歌野がこの場を離れてなお結界が残ったとしても、それを守る人がいなければ容易くバーテックスに食い潰される。
そうなったら、ここに残った人々は殺されてしまう。
だから、歌野は人々の話を聞く
自分が行くからついてこいだなんて、言わない
『良いのかや? あの国に戻る理由など、主様にはなかろうて』
陽乃「お母さんがいるわ」
『あの国に戻るほどの理由では無かろう』
疎まれ、憎まれ、呪われ、虐げられるだけの場所
母がいるというのは、そこに戻るだけの理由にはならないだろう、九尾は考えている。
だが、九尾からしてみれば戻ろうと戻るまいとどっちでもいい
害になる何かしらがあるのなら、排除するだけである。
1、ねぇ。結界はどうにかできる?
2、白鳥さんを呼んでくれない?
3、この体、もう少し早くどうにかできない?
4、みんなが戻りたいって言うなら、戻るしかないでしょうね
↓2
- 749 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/27(土) 15:05:43.58 ID:EjDNhoNRO
- 2
- 750 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/27(土) 15:08:05.82 ID:AteTOpZkO
- 2
- 751 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/27(土) 17:42:40.23 ID:IasRBKWBO
- ?
- 752 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 17:49:34.69 ID:FPyLwFj9o
-
陽乃「ねぇ、白鳥さんを呼んできてくれない?」
『何じゃ。見舞わぬのが気に入らぬのかや?』
陽乃「違うわよ。話、しないといけないでしょ」
球子たちがある程度話してくれてはいるみたいだけれど
陽乃も話しておく必要がある。
球子と杏は陽乃のことについて話していないようだし、
それどころか、四国移住についての話を進めている。
そうするというなら、陽乃にはどうしようもないけれど。
結界についてや、今までの戦い
これからのことなど、
色々と聞いておきたい話もある
陽乃「呼ぶのが難しければ、別に良いのだけど」
『ふむ……呼ぶこと自体は容易じゃな』
陽乃「なら、お願い」
『うむ……よかろう』
陽乃の影が揺れ動いて伸び、
そうして、ゆっくりと薄れて消えていく
- 753 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 18:01:57.18 ID:FPyLwFj9o
-
九尾の影が離れてから、
歌野が陽乃のもとに来るまで、時間はほんの数十分しか掛からなかった。
陽乃「九尾……また余計な事……」
自然の声に満ちていた病院の外が急激に騒がしくなり、
病院の中にまでその喧騒は広がって、
そうして――なぜか、水都が歌野の腕を掴んで病室へと引っ張りこむ
水都「連れてきたよ!」
歌野「み、みーちゃんったら……一体全体、どうしたの?」
驚きに戸惑い、肩で息をする歌野と、
凄く張り切っている、諏訪の巫女である藤森水都
水都は陽乃の方を見てとても嬉しそうに手を振っているけれど、
陽乃は、初対面だ
陽乃「えぇっと……」
水都「初めまして、藤森水都です!」
歌野「みーちゃん……なんか、変よ? 大丈夫、えっと……何かあった?」
陽乃「……私が呼んできてってお願いしたの」
とっても元気な水都を一瞥した陽乃は、
困惑を隠せない歌野へと目を向けて、ため息をつく
どれだけの付き合いがあるのかは知らないけれど
藤森水都と言う人物の言動に、白鳥歌野が違和感を覚えているのだとしたら
それはきっと、間違っていない
歌野「呼んできてって……」
陽乃「九尾。貴女、藤森さんの観察不足だわ」
水都「え〜? そうかな? うたのんと二人きりの時はこんな感じだったと思うんだけど」
歌野「ノーよ! 全然違うわ!」
水都「そっかぁ……でも、連れて来れたから、オッケーだよね?」
呼ぶこと自体は容易とは、よく言ったものである
- 754 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 18:16:16.52 ID:FPyLwFj9o
-
お茶らけた様子なのは、本当に藤森水都なのか
それとも九尾の悪ふざけなのか、
頭を痛めているような歌野を見た陽乃は、後者だと察して首を振る
陽乃「九尾、もういいから戻って」
水都「何か必要なことがあったら、呼んでねっ!」
そう言い残して、
瞬く間に消えうせる水都を横に見た歌野は、呆然として
おもむろに、陽乃を睨む
歌野「みーちゃんは? 本物のみーちゃんはどこ!?」
陽乃「家にいるか、どこかのお店にいるか、お手洗いか……とにかく、どうにもなっていないはずよ」
歌野を呼んできてとは言ったけれど
こんなやり方をされては、話がこじれるどころの問題ではない
陽乃「大丈夫だから、ほんとうに」
歌野「………」
歌野はしばらく疑わしそうな目をしていたが、
少し考えこんで、軽く頷いてくれた
厳しい表情は、変わらないが。
歌野「あれが、えぇっと……久遠さんの力なの?」
陽乃「私と言うより、私の精霊……って言えばいいかしら。その力ね。惑わすことに長けているのよ」
若葉達がされているように、神々からの加護とは言えない為、
一先ずは精霊として説明する。
ひなたは神獣の類と言っていたので、神の御使いと言っても良かったかもしれない。
- 755 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 18:31:22.30 ID:FPyLwFj9o
-
歌野「……体は、もう?」
陽乃「万全とは言えないけれど、話すくらいは問題ないわ」
長々と話し続けると、
また喉の奥に違和感を覚えて吐血するかもしれないけれど
そう易々と血を吐いたりはしないはずだ
……たぶん。
陽乃「朝のうちに面会に来ると思っていたけど、来なかったから呼ばせて貰ったんだけど……平気?」
歌野「ん〜……平気、と、言えば平気。かしら。色々やりたかったこともあったけど」
そう零した歌野は、
別に久遠さんに会いたくなかったわけじゃない、と、首を振る。
歌野「昨日の夜、目を覚ましてもまだ予断を許さない状態だって言うもんだから、早くてもお昼の方が良いと思ってたの」
陽乃「そう……まぁ、別に来なくても良かったんだけど」
歌野「そんなわけにはいかないわ……久遠さんも、勇者なんでしょ?」
陽乃「さぁ? 戦う力はあるけど……勇者かどうかは微妙なところね」
歌野「え?」
1、それで、これからはどうするの?
2、現状を教えてくれる?
3、私、四国には戻るつもりはないわ
4、ここは、守っていけそうなの?
5、私を戦力として数えるのだけはやめて頂戴
↓2
- 756 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/27(土) 18:43:11.09 ID:QKq5+CeuO
- 1
- 757 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/27(土) 18:45:20.96 ID:slGjnfDG0
- 2
- 758 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 19:06:13.52 ID:FPyLwFj9o
-
陽乃「とりあえず、現状について聞かせてくれる?」
歌野「そうね……簡単な説明になっちゃうけど……」
土居さん達に説明したのと同じような話になると前置きした歌野は、
今の四国の現状について、改めて陽乃に話して聞かせた。
元々は4つだった結界の御柱も、今は2つまで減少し、
すでに結界は諏訪湖の東南の一帯を守るのがやっとの状態であること
住民の規模は数十人程度と非常に少ないこと
襲撃は日に日に厳しさを増してきており
近々3つ目の御柱も破壊されてしまう恐れがあること
外部との連絡は、勇者が用いる通信設備でのみ可能であること
それもやや不安定になりつつあること
今は自給自足でどうにか生活を続けていることなど、
四国と比べて、非常に厳しい現実にあることを、歌野は話してくれた。
どうにか明るくしようという声色ではあったが、
その瞳が陰っているのを陽乃は見逃さなかった
陽乃「ならやっぱり、ここの維持は難しいのね」
歌野「ええ。みんなが協力してくれたとしても、日に日に力が衰えていっているらしいから……たぶん」
陽乃「ここで死にたいって人はいるのかしら」
歌野「必ず助かる保証があるわけじゃない。助かっても、すべてを捨てていかないといけない。それが嫌だって人は、やっぱりいるわ」
今なお生きている人の中には、
この地で、大切な人を喪い、弔っている人もいる。
どうせ死ぬなら、そんな相手の眠る場所でともに眠りたいと願うのは、
無理もない話だと歌野は思う。
- 759 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 19:06:48.11 ID:FPyLwFj9o
-
では少し中断いたします
再開は21時頃からを予定しています
- 760 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/27(土) 19:23:35.09 ID:slGjnfDG0
- 一旦乙
流石に諏訪に残るのは無理そうだな
- 761 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 21:41:56.54 ID:FPyLwFj9o
-
陽乃「そういう人もいるのね」
歌野「久遠さんは、違うの?」
陽乃「違うかもしれない」
陽乃に残っている大切な人は、母親だけしかいない。
母親は四国に骨を埋めることになるだろうけれど、
陽乃は特別、そうでなければいけないだなんて思わない。
あんな場所に骨を埋めたくない
あんな場所で自分のお墓を立てたくない
自分のいなくなったあとのそれが、ハンマーでたたき壊されてしまいそうで。
そうなったら、一緒に眠るかもしれない母が可哀想だ
陽乃「ひっそり、どこかで朽ち果てるのも悪くないって思ってる」
歌野「そんな、怖いこと言わない方が良いわ」
陽乃「本気よ」
歌野「………」
陽乃「そう、まじまじ見つめても。本気なのは変わらない」
- 762 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/27(土) 21:49:58.01 ID:671IIM9qO
- お母さんまでいなくなったら本格的にヤバい…
- 763 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 22:28:54.38 ID:FPyLwFj9o
-
歌野の視線は訝しむようなものではなく、
とても心配してくれているものだった。
陽乃が演技派の少女でなければ、
今浮かべている笑みは本物だということになる。
本気で、
人知れず朽ち果てることを考えていると言うことになる。
それは、あまりにもあんまりだ。
陽乃「そんな顔、させるつもりはなかったのだけど」
歌野「久遠さん……」
陽乃は優しい勇者を一瞥して首を横に振る
その優しさは、有難迷惑だった
歌野「久遠さん。諏訪防衛の戦いは、基本的に私達で対応するわ」
陽乃「なるほど……私の力のことも聞いたわけだ」
歌野「使えば使うほど蝕まれていくって言ってたのだけど」
陽乃「事実よ」
歌野「だったら、何か大きな戦いでない限り久遠さんは戦わないで欲しいの」
- 764 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 23:04:23.99 ID:FPyLwFj9o
-
陽乃「2人に言えって言われた?」
歌野「ううん……久遠さんの惨状を見て聞いた」
陽乃が着ていた服を血塗れにし、それでもなお吐血している姿を見た
その始まりを目撃してしまった住民の話を聞いたりもして
それがどれだけ酷いものであるのかを知った
あれは、些細なことで起こっていい現象ではない
陽乃「あのおじいさん、トラウマになってたりしない?」
歌野「ええ、大丈夫だったけれど……凄く心配していたから目を覚ましたって教えたら凄く安心していたわ」
凄く、凄く。
それがもしも、四国の人だったなら。
陽乃が吐血しての入院は吉報で、
回復してしまったことは凶報となったことだろう。
歌野は小さく笑って、陽乃の震えている手を握る
歌野「私も……凄く心配したわ。もちろん、みんなも」
陽乃「私、貴女にとってのヒーローか何かなの?」
歌野「どういうこと?」
戸惑う歌野から目を背けて、目を閉じる
陽乃「ちょっとだけ、貴女が小説のヒロインの立場に思えただけ」
歌野「あははっ、なにそれ! 久遠さん、ユニークね!」
- 765 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 23:45:13.89 ID:FPyLwFj9o
-
歌野はとても明るい性格だった。
球子に通じるものがあるほどの賑やかさ
けれども、いや、球子もそうだが
陽乃のことを気遣って、大騒ぎと言うレベルには達しない
歌野「お願いね」
陽乃「いずれにしても、暫くは何にもできないわ」
手を握り返せないし、
ベッドから降りて歩いていくこともできない
それだけ衰弱しきってしまった体
意識があって、言葉を発せて、温かくて、中身が綿以外のもので。
そんな違いがあるだけの、人形のような何か。
なんて……言ったら怒られるだろうか。
陽乃「大人しくしておくから安心して」
歌野「治ってもよ」
陽乃「……それは、あなた達の頑張り次第だと思うわよ」
陽乃はそう言って、小さく息を吐く
そんな、疲れを感じる陽乃を歌野は優しく見守る
歌野「さっきの、良く分からないけど……でも、久遠さん達は私たちのヒーローだと思うわ」
独りで守らないといけなかった3年間
ずっとこのままで、最終的には壊されてしまうのではないかという不安が無いと言えば嘘になる。
だから
歌野「来てくれて、嬉しい……ありがとう」
歌野は気遣いではなく本心で、そう言った。
- 766 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 23:47:04.32 ID:FPyLwFj9o
-
√ 2018年 8月10日目 昼:諏訪
01〜10 球子
41〜50 杏
81〜90 水都
↓1のコンマ
※それ以外は通常
- 767 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/27(土) 23:48:07.99 ID:671IIM9qO
- あ
- 768 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 23:53:35.15 ID:FPyLwFj9o
-
ではここまでとさせていただきます
明日も可能であればお昼ごろから
- 769 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/28(日) 00:02:27.54 ID:G4/m29cSO
- 乙
うたのんの暖かい言葉を聞くと諏訪の人たちを是が非でも助けてあげたくなるなぁ
それにしても先祖も子孫もベッドの上で満身創痍な場面が多いこと多いこと
- 770 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/28(日) 06:41:18.61 ID:cUdHBzkQO
- 乙
四国をあんな場所と呼ぶとは相当トラウマになってるな
- 771 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/28(日) 17:33:14.63 ID:iWKJhhBSo
-
では少しだけ
- 772 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/28(日) 17:33:56.76 ID:iWKJhhBSo
- √ 2018年 8月10日目 昼:諏訪
連行されてきていた歌野も畑の手入れの続きをしなければいけないと席を外して、また一人
もしあれならほかに人が来るまで一緒にいてくれると言ってはいたけれど、それは断った
他にやることがあるなら、そっちを優先して欲しいと言ったのは陽乃だ。
歌野は優しい
球子たちと同じように、陽乃を気遣ってくれている
でもだからこそ、
陽乃にはそれが重かった
その優しさを与える理由に、自分が値するだけの何かを差し出せるとは思えない
歌野は、小規模の戦闘には参加しなくていいと言ってくれた
大規模な……それこそ総攻撃レベルの戦いの為に温存しておきたいらしい
陽乃「過度な期待は困るのだけど……」
総攻撃であっても、
陽乃がいればどうにかなると思われているのだとしたら、
それは誤解だとはっきり断じておくべきだろうか。
全力で力を使えばそれなりの貢献は出来るだろうけれど、
そこまで大きな期待をされても困ってしまう
- 773 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/28(日) 17:47:13.94 ID:dhmr8vcEO
- きてたか
- 774 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/28(日) 18:36:27.82 ID:iWKJhhBSo
-
諏訪の結界は残り二つ
一つが壊されても、もう一つが壊されなければ完全な侵攻にはならないらしいけれど
一つ壊されたら結界の範囲はまた小さくなる
自給自足の生活をしている諏訪の住民にとって
生活区域がまた狭まるというのは死に直結するような問題だろう
なによりここまで来て
さらにバーテックスの侵攻を許してしまうという精神的なダメージは許容できるものではないと思う
それを考えると、
諏訪の住民は決死の思いで四国に逃げると考える可能性はある
ここで死ぬつもりの人々と
四国に行く人々
そう別れることになったら、歌野はどうするのだろうか
歌野のことだ、自分は諏訪に残り
球子たちに四国に行く人々を護衛して貰おうと考えそうだと、陽乃は思う
- 775 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/28(日) 19:36:08.23 ID:iWKJhhBSo
-
陽乃「……結界は残り二つ、ね」
結界の外を見ても、
ひと固まりだけで40近い数いるバーテックスの一団がかなりの数ある
独りで防衛しきれるような数ではなかったし
あれの半分でも攻めてきていたら結界が持たなかったはず
球子と杏が参戦しても、
結界の一つが破られてしまう可能性はある
時間がない。
はたして、総攻撃までに体の調子を取り戻せるのだろうか
陽乃「結界の要がどうなってるのか知りたいけど……」
知ってどうにかできるとは思えないが、
もし本当に九尾が言うように神様に愛されているのなら、
この地域の神様にも何らかの干渉が出来るかもしれない。
陽乃「諏訪大社……諏訪大社って、祭神は誰だったっけ……」
神社の繋がりで色々と学んだ覚えはあるけれど、
それから離れて3年
色々あって、記憶があいまいだ
自力で動ければ、調べたりもできるが、今は無理だ
1、九尾を呼ぶ
2、休む
3、イベント判定
↓2
- 776 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/28(日) 19:37:07.44 ID:ymICilyk0
- 1
- 777 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/28(日) 19:38:02.88 ID:dhmr8vcEO
- 3
- 778 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/28(日) 19:49:00.87 ID:iWKJhhBSo
-
01〜10 九尾
11〜20 球子
21〜30 歌野
31〜40 杏
41〜50 水都
51〜60 看護師
61〜70 バーテックス
71〜80 杏
81〜90 ご神託
91〜00 水都
↓1のコンマ
- 779 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/28(日) 19:51:06.94 ID:dhmr8vcEO
- あ
- 780 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/28(日) 20:56:38.07 ID:iWKJhhBSo
-
歌野達が作ったという野菜たっぷりな病院食を食べている最中に、扉が叩かれた
「すみません、今大丈夫ですか?」
陽乃「病室を間違えていなければ」
聞き覚えのない声に答えると、
少し間を置いてから、扉が開かれる。
水都「あって、ます……えぇっと、藤森、水都です。久遠さん」
陽乃「藤森さん? 貴女、巫女なのね」
水都「は、はいっ……そうです」
巫女装束を着ているので、
藤森水都と言う少女が巫女であることは、一目瞭然だ
陽乃「何か神託でもあった?」
水都「いえ、その……うたのんから話も出来そうだって聞いたので」
陽乃「なるほどね」
巫女の正装で着たのは、自分が巫女だと分かって貰うための措置だったそうで、
歌野の畑手伝いをしてから
わざわざ一度帰宅して、身だしなみを整えてきたらしい
- 781 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/28(日) 22:34:06.76 ID:iWKJhhBSo
-
陽乃「ついて早々吐血したって聞いて驚いたでしょ」
水都「驚いたなんて話じゃなかったですよ」
陽乃と一緒にいた球子と杏は大慌てで、
最初に陽乃を見たときのお医者様は、
最悪助からない可能性があるだなんていうほどに。
だから、水都も気が気ではなかった。
水都「でも、だからこそ驚きました……あれからたった半日足らずで意識取り戻して、ここまで回復しているんですから」
陽乃「気味悪い?」
水都「いえ、凄いと思いました」
正直に言ってしまえば、異常だ
勇者の回復力は歌野の傍にいる水都は良く分かっているつもりだったが、
だとしても、その比ではない回復力だった。
出血多量によって死んでもおかしくなかったのに
もう、話せるくらいに回復している
それは、確かに気味が悪いと思えなくもない
水都「久遠さんはその回復力が、勇者としての力なんですか?」
陽乃「いえ、違うわ」
水都「誰かを癒す分、自分が傷つくみたいな力とか」
陽乃「全然、違うわね」
- 782 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/28(日) 23:28:04.78 ID:iWKJhhBSo
-
陽乃「もしそんなご立派な自己犠牲特化の力があっても、私は対象外よ」
水都「そうですか……」
そもそも
神々の力は武器に宿る
拳だったり、剣だったり、楯だったり
特定の、超常的な能力を与えるというのは普通ではない
九尾だって、陽乃に与えられた力と言うよりは
九尾自身が持っている力と言う感じだ
陽乃「……この野菜、白鳥さん達が作ってるって聞いたわ」
水都「たぶん、今朝採れた野菜だと思いますよ。新鮮なの食べさせてあげたいんだって、うたのん張り切ってたので」
嬉しそうに話す水都は、陽乃を見て少し迷う
中々上がらない手を震わせて、
どうにか握っているフォークで刺しながら食べている陽乃は
凄く辛そうに見えるからだ
野菜が嫌いというわけではないだろうが……
――カチャンッと、フォークが皿の上に落ちる
水都「あの……良ければ手伝いましょうか?」
1、大丈夫よ。気にしないで
2、じゃぁ、お願いしようかしら
3、そんなことより、神託は受けてないの?
4、貴女、白鳥さんとは仲良いの?
↓2
- 783 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/28(日) 23:30:20.58 ID:dhmr8vcEO
- 2
- 784 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/28(日) 23:33:12.46 ID:ymICilyk0
- 2
- 785 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/28(日) 23:44:35.94 ID:iWKJhhBSo
-
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 786 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/28(日) 23:51:36.71 ID:dhmr8vcEO
- 乙
こういう弱っている時こそ人を頼りにして絆を深めるのが大事だな
- 787 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/01(月) 02:31:55.89 ID:TCokldgN0
- 乙
休まなきゃだしお話しいっぱいできるな
- 788 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/01(月) 20:24:24.83 ID:qnW33cAQo
-
では少しだけ
- 789 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/01(月) 20:25:02.49 ID:qnW33cAQo
-
陽乃「……じゃぁ、お願いしようかしら」
食事を始めてから、すでに数十分経っている
それなのに、まだ5分の1も食べられていない
フォークで刺して口に運ぶだけでも時間がかかるし、
それを咀嚼するのにも時間がかかる
手伝ってくれるというのなら、手伝って貰う方が良い
このままでは、半分も食べられずに終わってしまう
陽乃「迷惑じゃ無ければだけど」
水都「迷惑だったらそもそも言わないですよ」
皿の上に落ちていたフォークを手に取った水都は、
まだ刺さっているサラダを陽乃の方に差し向ける
陽乃は躊躇わずに咥えて、噛みしめる
水都「ゆっくり食べてくださいね」
陽乃「私なんかの手伝いしてて平気なの?」
水都「うたのんには言ってありますし、私、こう見えても巫女なので」
こう見えても何も、
巫女であるのは明白な格好をしている。
陽乃が小学生時代に見た、
友人が着ていたコスプレの巫女衣裳のような物ではない
ほんとうに、ちゃんとした装束だ
水都「久遠さんが完治するまでは、お世話させてください」
- 790 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/01(月) 20:31:47.21 ID:0E+tKQ8VO
- 久々に尊いシーン
- 791 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/01(月) 20:43:56.58 ID:qnW33cAQo
-
陽乃「本気で言ってるの? 何もできないわよ。私」
着替えも、お手洗いも、入浴も
何一つ、今の陽乃には自力で出来ない
食事だって、かなりの時間をかけなければいけない。
常人離れしている回復力とはいえ、明日には万全と言うわけにはいかないだろう。
伊邪那美命の顕現による身体的ダメージは、2日経っても完治しなかった。
それが治る前に、
上乗せで酷使したことによる後遺症は、どれだけ時間がかかるか。
水都「大丈夫です。それをサポートするのも巫女の役割なので」
陽乃「そう……貧乏くじを引いたわね」
水都「いえ、そんなことは」
水都はまだ子供で、女の子で、陽乃をどうこうできるほどの力もない。
食事を与える、着替えを手伝う……させられて、この程度だろうか。
陽乃は少し考えて、水都を見る
諏訪の勇者、白鳥歌野
諏訪の巫女、藤森水都
勇者が歌野一人であることは聞いていたが、巫女も一人きり。
大社のような組織が無いのが幸いだろう。
水都「私に出来るのは……このくらいですし」
陽乃「このくらいも、私は出来ないけどね」
- 792 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/01(月) 20:51:36.53 ID:qnW33cAQo
-
水都「あっ……っ……すみません」
陽乃「別に謝らなくていいわよ。ただの皮肉だから」
自分に出来るのはこのくらいしかない。
それは諦めと言うよりも、自信のなさの表れだろうか。
水都が嫌味ではなく、
ただ本当に自分にはそれくらいしか役立てないと思っているからこその発言だと分かっているが、
陽乃には、そんなことは関係ない。
事実、陽乃は食事さえまともにできない。
着替えも入浴も……お手洗いにだって行くことが出来ないからそれも手伝いが必要だ
水都「……」
陽乃「2人からどう聞いたのかは知らないけど、私は基本的に役に立たないって思っておいて」
水都「えっ?」
陽乃「到着早々血を吐いて気絶するし、力を使えばまた血を吐くし、治ったと思えばこんな状態だし。ね? 役に立たないでしょ?」
水都「それは……力を使ったからじゃないですか」
陽乃「使えばこうなるんだから、使えない。使えないから使えない。だから、あんまり期待しないで」
水都は陽乃のことを良く知らない
だから、陽乃が自分を気遣ってくれているのかもしれないと思うし、
そうではなく、本当に自分を役立たずだと思っているのかもしれないとも思う
表情から、その判断材料は得られない
- 793 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/01(月) 21:05:09.96 ID:qnW33cAQo
-
水都「でも、久遠さんが二人をここに連れてきてくれたんですよね?」
陽乃「連れてきたというか、付いてきたというか」
水都「どっちでも、ここに来てくれたことに変わりはないです」
ご飯をお箸で摘まんで差し出しながら、水都は言う。
水都「お陰で、もう少しだけ頑張れます」
杏と球子が歌野に協力することで、結界への影響が減らせる
球子と杏は四国の勇者であるため力の根源が違うから、
諏訪の神の力が弱くなっていても、影響がない。
被害0は出来ないかもしれないし、
このまま諏訪を残し続けることが出来るとは思っていない
それでも、歌野一人よりはずっといい
水都「久遠さんって、代償が重い分強い力を持っているんですよね?」
陽乃「普通よりは強いと思うけど……やめてよ? 期待なんて」
水都「………」
陽乃はそう言うが、
一緒に来た杏や球子は一騎当千の力があると言っていた
評価が180度変わっているから
どっちかが嘘を言っているのかもしれない。
だとしたらそれは……
水都は陽乃を見て、箸を運ぶ手を止めた
水都「久遠さん、どうして。そんなに自分を卑下するんですか?」
1、貴女に話すことじゃないわ
2、別に。事実を語っているだけよ
3、期待されたくないし頼られたくもないからよ
4、守れなかったものがたくさんあるからよ
↓2
- 794 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/01(月) 21:07:27.13 ID:0E+tKQ8VO
- 4
- 795 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/01(月) 21:10:29.66 ID:63WYk73N0
- 4
- 796 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/01(月) 22:05:07.34 ID:qnW33cAQo
-
陽乃「そうねぇ……」
別に聞かれたからと言って答えてあげる義理はない。
適当なことを言ってもいいし拒否したって良いだろう
陽乃は水都の動かない手を見て、ため息をつく
水都が手を止めたら、陽乃もお預けをくらってしまう。
陽乃「守れなかったものがたくさんあるからよ」
水都「守れなかったもの……」
水都は繰り返すように呟いて、目を伏せる
勇者である陽乃が守れなかったと言うモノ
自分を卑下するようになるような何か。
水都「………」
陽乃「そんな考えなくても、聞かれたら答えるわよ。早く食べたいし」
水都「へっ? あっ、す、すみませんっ!」
慌てて差し出してくれたおかずを咥えて、軽く噛む
思った以上に慌てさせたのか、
次を摘まんでいる水都を見た陽乃は、早めに飲み込んで
陽乃「たくさん、目の前で死んじゃったのよ……3年前。藤森さんだって経験があるんじゃない?」
- 797 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/01(月) 22:47:19.06 ID:qnW33cAQo
-
水都「それは……」
経験はある。
勇者ではなかった水都は、
目の前で襲われる人々を助ける術を持っていなかった
逃げてくる子供を庇ったりすることはできたけれど、それだけ。
けれど、水都はバーテックスを倒すことなんて出来なかった
自分には元から力の及ばないことだと諦めがついてしまっていた
でも、陽乃は違う。
守れる力があって
それでもなお、目の前で奪われてしまったのだとしたら
それは、どんなにか……
水都はそこまで考えて、歯を食いしばる。
水都は自分の弱さを知っている
いいや、自分の弱さしか知らない
水都「………」
陽乃を見る
腕は上がらず、足も動かない
咀嚼だって辛そうで、飲み物を飲むのだって一苦労
そんな状態にならざるを得ないほどの代償を払う力を持っている陽乃はきっと、
四国の勇者が言うように値千金の力を持っているに違いない
だからこそ、守れなかった後悔は重いのかもしれない。
そんな人に、口出しできるような立場では――ない。
- 798 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/01(月) 23:25:06.65 ID:qnW33cAQo
-
↓1コンマ判定
01〜52 水都「守れなかったからこそ、守れるようになるんじゃないですか?」
※ぞろ目 特殊
- 799 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/01(月) 23:26:25.46 ID:cpGD6QmfO
- あ
- 800 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/01(月) 23:36:50.99 ID:qnW33cAQo
-
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 801 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/01(月) 23:52:14.44 ID:12KJDdz/O
- 乙
みーちゃんがまさかの初対面からの自己主張するとは…
あと陽乃さんもだんだん反応が素直になってきた気がする
- 802 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/02(火) 00:29:07.85 ID:X3iVKvi+0
- 乙
よくやってくれた
- 803 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/02(火) 20:21:31.55 ID:3VSruPD+o
- では少しだけ
- 804 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/02(火) 20:22:19.94 ID:3VSruPD+o
-
水都にはバーテックスと戦うための力がない
陽乃の痛みを知らないし、苦しみを知らないし、辛さを知らない。
それと同等のものを与えられることだって、きっとない
だから、自分には何も言う資格がないことくらい分かっている。
けれど――
水都「……守れなかったからこそ、守れるようになるんじゃないですか?」
陽乃「貴女――」
水都「分かってますっ! 分かってます……ただの一般人みたいな私が、そんなこと言う資格がないってことくらいっ」
陽乃が何かを言う前に水都は遮る
叫ぶように声を張って、お箸を握りしめて、
顔を上げたいのに……上げられなくて。
あぁやっぱり、自分は弱いと思いながら……吐露する
水都「でもっ……でも……守れなかった後悔があるから、次はもう失いたくないって気持ちになるんじゃないんですか?」
それはたぶん、希望だ。
歌野が見せてくれる、勇者としての力強さ
与えてくれる勇気は野菜を育む空の輝きのように温かく、
水都にとっては、それはこれ以上ないほどに特別だった。
なのに
同じ勇者であるはずの陽乃は、しかし、そんなものは感じられない。
自分の力を信じていない。
役に立たないと切り捨てて、期待しないでと笑って、
自分は何も特別なんかではないと言い切っている。
謙遜なんてものではなく、完全に自分と言うものを認めていない。
それは……水都が自分にしているものと、ほとんど同じものだ
- 805 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/02(火) 20:24:35.58 ID:V+U+FMZiO
- よしきた
- 806 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/02(火) 20:37:30.85 ID:3VSruPD+o
-
勇者であるはずの人が、
一般人である自分と、何も変わらないなんてそんなわけがない。
多くを守れなかったと陽乃は言った
それが嘘だとは思えない。
それで挫折してしまったのかもしれない。
だとしても――そこで折れては欲しくない。
水都「久遠さんは、本来数日かかるはずの距離をたった半日で踏破させられる力を持っているんです」
それだけじゃない。と、水都は呟く
水都「同行したお二人は、久遠さんに一騎当千の力があると言っていました」
陽乃「そんなことないわ」
水都「あるかもしれないじゃないですかッ!」
陽乃「っ……」
水都がいきり立って、テーブルが揺れる。
危うく飲み物が落ちそうになって、反射的に動いた体の痛みに陽乃は思わず呻く
そんな陽乃を水都は見て、顔をしかめて、首を振る
水都「久遠さんは、私と似てます……色々あって自信がなくて周りからの評価を素直に受け止めることもできない」
なのに、こんなことを言うなんてどうかしている
自分が信じられていないのに、ほかの人には信じろなんてあまりにも勝手だ。
けれど、でも、
同じように感じられるからこそ、水都は願わずにはいられなかった
水都「そんなままじゃ、きっと……守りたいものも守れなくなっちゃう……」
- 807 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/02(火) 20:47:22.13 ID:3VSruPD+o
-
水都は、守りたくても守れない。
勇者として戦う歌野を水都は守りたい、助けたい
けれど、そうする力が水都には与えられなかった。
向かっていく背中を見送って、
傷だらけで帰ってくる体を支えてあげるくらいしか、自分には出来ない。
その傷の治療も出来ない
歌野が言う、日常の中の一つとしてそこにいることだけが、水都の出来ること。
巫女としての役目なんて、大した内容でもない
だから、思う
水都「戦う力があるのが羨ましいです……守りたいと思えば守れる力が羨ましいです……なのに」
陽乃「………」
水都「そんなに卑屈になっている久遠さんが……妬ましいですっ!」
陽乃「……そう」
陽乃は、偶然力を与えられたわけではない
そこに力を与えてくれる何かがいて、
力を得るか得ないかを選ぶ権利が陽乃にはあった。
選ばなければ死ぬしかなかったのかもしれないが、
それでも、力を得ないという選択は、確かにそこに存在していた。
けれど、陽乃は力を得た
――なぜ?
陽乃「私に何があったかも知らないで、羨ましいだの妬ましいだの。そのお気楽な頭の方が私にとっては羨ましいわよ」
- 808 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/02(火) 21:02:18.24 ID:3VSruPD+o
-
水都「っ」
陽乃の声は、さっきまでのが猫を被っていたのではないかと思うほどに、冷たかった
言葉選びも厳しくて、怒らせたのではないかと水都が震えてしまうほど。
けれど、言っていることは間違っていないと水都は思った。
境遇がまるで違う。
多くの命を守りたくても守れなかったのなら、
それでも……なんて、立ち上がることなんて簡単な話ではない。
なにより、陽乃に何があったのかを水都は知らない。
だから、自分勝手な理想を押し付けてしまう。
水都「……でもっ……私は……」
陽乃「謝罪、しないのね」
水都「え?」
陽乃「ほんの30分足らずで貴女に3回は謝られたものだから、てっきりすぐに頭を下げるものだと思ったのだけど」
陽乃の声色は素っ気ない
知人どころか、どうでもいい赤の他人と話しているかのような感じだ。
水都は少し悩んで、陽乃を見る
水都「だって……久遠さんには自信を持って貰いたいから」
陽乃「どうして?」
水都「それは……」
陽乃「ここまで来たなら躊躇わないでよ」
一度口を閉じたのを見て、陽乃は小さく笑う。
ここで言うのを止めようが止めまいが、もう遅い
それなら言いたいことはすべて言ってしまうべきだ
何度も謝るような性格でありながら、ここまで主張したのだから。
水都「……また守れなかったら辛いじゃないですか」
- 809 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/02(火) 21:32:19.19 ID:3VSruPD+o
-
血を吐いて気を失う……そんな、命にかかわるような代償を必要とする力を使って
数日かけて来たら良い距離を、半日で突き進んできた。
それだけでなく、
3年前の大災害のことを今でも気に病んで、抱えて、苦しんでいる
陽乃は優しい人なのだろうと、水都は思う
優しいから、忘れられない
あの日に響き渡った悲鳴も、
欠損した身体の一部も
すぐそこにいた人が消え去ってしまうあの光景も
そのすべてを忘れることが出来なくて
それを救えるだけの力が自分にはあったからこそ、諦めることが出来ない
だから、期待して欲しくない
自分がそれに応えてあげられる自信がないから
その人々から伸ばされた手を全て取れる自信がないから
それらが自分の手から零れ落ちていく恐怖を、忘れられないから。
――全部妄想だ。
だけど……。
水都「自信がないと100%の力を発揮できないって聞いたことがあるので……もしそれでまた守れなかったら、久遠さんが辛いと思って」
陽乃「………」
水都「さっき、久遠さんは対象外だって言ってましたけど、久遠さんのそれこそまさに自己犠牲で成り立っている力じゃないですか」
水都は考えて、でも躊躇わない。
言いたいことは、一つだけ。
水都「久遠さんは優しい人だと思うから、これ以上……変な迷い方をして欲しくないんです」
どこまでも壊れていく可能性を水都は知っている。
歌野と出会わなかった自分の末路こそがそれだと、今もまだ恐れている
だから、水都は言う。
水都「その体を無暗に犠牲にしていく姿を、誰も見たくないと思います」
1、言ってること、全然分からない
2、優しい? 私が? まさか……
3、何も知らないくせに、勝手なこと言ってくれるじゃない。
4、そんな人、いないでしょ
5、私、人を殺して逃げてきたのよ
↓2
- 810 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/02(火) 21:34:05.77 ID:V+U+FMZiO
- 2
- 811 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/02(火) 21:46:10.25 ID:xZvXvhE50
- 3
- 812 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/02(火) 23:24:31.27 ID:3VSruPD+o
-
陽乃「何も知らないくせに、勝手なこと言ってくれるじゃない」
水都「っ!」
陽乃「貴女と私が同じ? 守れなかったら辛い? 優しい人? 馬鹿なこと言わないで」
手足が出せないのが辛いが、
寧ろ出せなくて良かったのではと、思う
出せてしまったら、
目の前のテーブルに置かれているものすべてを薙ぎ払っていたかもしれない
陽乃「私はね? 期待されたくないの。分かるでしょ? 手のひらを返されるのが嫌なのよ」
水都「手のひらを返されるって……」
悪い方向ではなく、いい方向に
評価が変わったのを実際に目にした水都は、
陽乃はその逆を経験したのかもしれないと……目を見開く
水都「久遠さん、もしかして」
陽乃「そうね。手のひら返しをくらったわ。自慢にもならないけどね」
水都「そんな……」
陽乃は笑っているけれど、
決して面白い話なんかではない
沢山のものを守れなかった
その結果、手のひら返しをくらったのだとしたら……それは
水都は首を振って、歌野のことを考える
歌野が率いてきた3年間
いつ死んでもおかしくなくて、覚悟をしてて
どんな辛い目に遭っても、人は必ず立ち上がれる。なんて志までも抱いて
だから、きっと。
水都「私達はそんなことしません……何があっても、戦ってくれたみんなのことを、絶対に責めたりしません」
陽乃「あなた一人のそれは、ここに住むみんなの言葉だって言えるの?」
水都「それは……」
言えない。
そんなわけがない
黙ってしまった水都を一瞥して、陽乃は小さく息をつく
そんな保証なんて、どこにもないのだ
- 813 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/02(火) 23:33:02.52 ID:3VSruPD+o
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 814 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/02(火) 23:45:58.07 ID:V+U+FMZiO
- 乙
陽乃さんのネガティブ思考がみーちゃんよりも遥かに上回ってるな
せめて明確に味方してくれてる人だけでも信じてあげて欲しいけど…
- 815 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/03(水) 00:40:54.32 ID:g1HXYBCH0
- 乙
いろんな人にメンタルケアしてもらおう
- 816 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/03(水) 21:32:39.44 ID:jpagfzUMo
- では少しだけ
- 817 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/03(水) 21:33:19.40 ID:jpagfzUMo
-
勝手なこと、馬鹿なこと
確かにそうだ
諏訪に構築されている結界の内部に住んでいる全員の言葉を代弁できるような立場でもない。
陽乃は手のひら返しをくらったといった。
煩わしく思って、嘘をついたのかもしれないと水都は頭の片隅に備えながらも、
それを疑ってしまったら……と、息を飲む。
水都「でも……一人くらい、自分の味方がいるって信じてみませんか?」
目を逸らす。
水都自身、まだそれを出来ていない。
唯一の友人で、味方と言える歌野の言葉ですら "歌野がいるから" と切り捨ててしまっている。
でも、それを信じられたら
歌野の言葉を信じて、少しでも自分に自信を持つことができれば
俯かずに、せめて、前を向くことができたのなら。
きっと、何かが変わるはず。
水都「伊予島さん、土居さん、うたのん……それと、私も。少ないですけど……でも、私達は絶対に責めたりしません」
水都は、真っ直ぐ陽乃を見つめる
陽乃の視線が自分へと向けられていても――逸らさない
水都「これは、絶対だって言えます」
- 818 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/03(水) 22:45:49.94 ID:jpagfzUMo
-
陽乃「………」
水都の瞳は、さっきまでと打って変わって力強い
まるで、覚悟を決めたかのよう
自分の言葉が間違ってはいないと、
みんなを信じているかのよう
陽乃「そう……」
水都「ダメ、ですか?」
陽乃「私が決めることじゃないもの。ダメも何もないわ」
水都「そういうことじゃなくて……」
陽乃が言っているのは、
責めるかどうかについてだろう。
水都が言っていることはそうではないと分かっているだろうに、
あえて、そっちを言う
水都「信じて貰えませんか?」
陽乃「貴女達を?」
水都「はい」
- 819 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/03(水) 23:40:54.91 ID:jpagfzUMo
-
陽乃はすっかり止まってしまった水都の手を一瞥して、
水都の目を見つめる。
さっきまでは伏せることもあった目は、まっすぐ見つめ返してくる
手のひらを返されるのが嫌だと陽乃が言ったから
そんなことは絶対にしないと、水都は示したいのだろう
そして、それを信じて欲しいと言う
諏訪の人は、陽乃の評判を知らない
生贄となるべきだったことも
そうしなかったから惨劇が起きたと責められていることも
人を殺してしまったことも。
陽乃「……無理よ」
水都「どうして……どうしてもですか?」
今度は、陽乃が目を伏せる
無理なものは無理だと
そう言ったところで、水都は引き下がってくれるだろうか?
1、無理だからよ
2、どうしてもよ。諦めて
3、じゃぁ……私が人を殺していても、同じことが言える?
4、貴女が何も知らないからよ
↓2
- 820 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/03(水) 23:42:25.45 ID:dD1iaF+3O
- 4
- 821 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/03(水) 23:43:12.83 ID:S0va8D6C0
- 3
- 822 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/03(水) 23:44:16.74 ID:jpagfzUMo
-
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 823 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/03(水) 23:53:55.28 ID:dD1iaF+3O
- 乙
みーちゃんが陽乃さんのために凄い踏ん張ってくれてる…
あとは真実を知ってもなお説得しきれるかだな
- 824 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/04(木) 01:48:03.42 ID:xHMLsfEnO
- 乙
これからが本番だな
- 825 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/04(木) 21:36:16.76 ID:W+qS3eyUo
-
では少しだけ
- 826 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/04(木) 21:36:52.73 ID:W+qS3eyUo
-
正直、驚きだった。
水都は陽乃が眠っているところを見たかもしれないが、
言葉を交わすのは今日が初めてだ。
前知識も何もなく、力を使えば血を吐いて失神する役立たずだと思うべきだった
なのに、水都は執拗に詰め寄ってくる
守れなかったからこそ守れるようになる。なんて言って
羨ましいだの妬ましいだの言って
果てには自分を信じて欲しいとまで言う。
球子や杏も強引ではあったけれど、水都は少し違った強引さがある。
陽乃は溜息をついて、水都を睨む
陽乃「じゃぁ……私が人を殺していても、同じことが言える?」
水都「え……」
陽乃「守れなかったからとか、そういうのじゃなくてこの手で殺してても言える?」
水都「久遠さんが?」
陽乃「ええ。攻撃の流れ弾とかでもないわよ? ほんとうに、私の意思で人を殺したの」
水都「っ……」
嘘だと思いたい
そう思っているのが感じられるほどに困惑している水都
自分の意思で人を殺したと言われては、流石に動揺も隠せない
- 827 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/04(木) 21:38:04.19 ID:sFO9GHV8O
- かもん
- 828 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/04(木) 21:52:56.68 ID:W+qS3eyUo
-
↓1コンマ判定
ぞろ目 または70〜80 水都「それでも、責めたりしません」
- 829 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/04(木) 21:55:41.70 ID:wwJ4KB0Q0
- あ
- 830 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/04(木) 22:01:39.08 ID:sFO9GHV8O
- みーちゃん快進撃
- 831 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/04(木) 22:09:41.74 ID:W+qS3eyUo
-
水都「それでも、責めたりしません」
陽乃「は?」
水都「………」
人を殺したのが、本当のことだとして
もしかしたら知っているかもしれないけれど、
球子と杏がそれを知らないとして
それでも水都は信じたいと思った
水都「久遠さんに何があったのかは知りません。でも、だからこそ……なにか、そうしないといけない理由があったんだって思います」
陽乃「無かったら?」
水都「無かったら、久遠さんには自分を代償にするような力なんてなかったと思います」
陽乃「力を得た後に殺したのよ?」
水都「殺すような人じゃないから、勇者に選ばれて……そんな人だからこそ、人のために身を削るような力を与えられたんだと思います」
贖罪の為に、そんな自己犠牲を必要とする力を与えられた可能性だってもちろんあった。
けれど、水都はそう考えない
元から人を傷つけるような人は勇者にはなれないと信じる
水都「信じます」
- 832 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/04(木) 22:36:24.99 ID:W+qS3eyUo
-
陽乃「っ……」
諦めると思ったのに
言葉を失って、終わってくれると思ったのに
なのに、水都はより一層堂々とした態度で答えた
何も知らない
だからこそ、いい方向に考えたいから信じるって繰り返して
確かに、理由があった。
そうしなければならなかったかはともかくとして
そうしなければ別の、陽乃ではない誰かが傷ついていたかもしれなかったから。
けれど、水都は知らないはずなのだ
球子と杏から聞いていれば
ここに至るまでにそれらしい反応をしているはずだから、絶対に。
なのに。
1、馬鹿じゃないの?
2、私は人を殺したのよ!?
3、……嫌
↓2
- 833 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/04(木) 22:39:10.76 ID:sFO9GHV8O
- 1
- 834 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/04(木) 22:39:38.52 ID:M75hbQ1E0
- 2
- 835 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/04(木) 22:46:56.15 ID:W+qS3eyUo
-
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 836 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/04(木) 22:56:10.54 ID:sFO9GHV8O
- 乙
あの頑なな陽乃さんを逆に動揺させるとは…
このまま陽乃さんの心を救えるといいな
- 837 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/04(木) 23:04:49.81 ID:M75hbQ1E0
- 乙
みーちゃんとかいうはるのんの精神安定剤
長野に来たかいがあったな
- 838 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/05(金) 00:56:13.17 ID:h9RbeiYZO
- 乙
対応がめちゃくちゃイケメンで笑った
- 839 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/05(金) 20:41:59.72 ID:lJdzeDhLo
-
では少しだけ
- 840 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/05(金) 20:42:27.73 ID:lJdzeDhLo
-
陽乃「私は人を殺したのよ!?」
思わず声を張り上げてしまう
喉を酷使するような感情の昂りに痛みを覚えて、陽乃は顔をしかめる
陽乃「っ……げほっ……っ……げほっ」
水都「久遠さんっ!」
陽乃「触らなっ……けほっ……かひゅっ……」
水都「嫌です……」
もう迷わない。
躊躇う必要だってないと、水都は陽乃の身体を抱きしめる
陽乃の口元を拭った袖口が赤く染まっていく
水都「嫌です……ごめんなさい」
陽乃「っ……けほ……ごほっ」
陽乃の瞳に涙が浮かんでいるのは、咳き込む息苦しさからかもしれない。
けれど――
感情的な叫びは
それを携えた辛そうな表情は
水都にも無視できるものではなくて。
水都「久遠さんのことは、諦めません」
陽乃の背中を擦り、撫でて……もう一方の手でナースコールを押す
大声を出したせいではあるが、血を吐いた以上は呼ぶべきだ
- 841 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/05(金) 20:53:57.70 ID:Gd//VFq5O
- このみーちゃん強い…
- 842 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/05(金) 20:59:50.93 ID:lJdzeDhLo
-
陽乃「ぅ……けほっ……」
水都「横になってください」
抱きしめながらベッドを操作して平らにし、
ゆっくりと陽乃の体を寝かしていく
口元を拭って、拭って、血に汚れた肌をきれいにする
陽乃「私……」
水都「良いんです……そんな、無理矢理に一人にならなくても」
人を殺してしまったことなんて、
ここでは言われなければ知ることなんて出来なかっただろうし、
もし四国に逃げ伸びたあとで赤の他人から言われても、信じることだってなかったと思う
だから、自分から言う必要はなかった
なのに、陽乃は自分から言って、叫んで、苦しんで。
それほどまでに人を拒もうとした
それだけ嫌な思いをしたのだと水都は思う
陽乃の希望に沿うなら、離れるべきかもしれないけれど
それではきっと、報われないだろう
――それでいいはずがない
信じてくれる人のありがたみを、水都は知っている
たった一人でも味方がいてくれることの安堵を知っている。
それを受け入れなければどうなるかを知っている。
それは、陽乃がなるべきものではないと断言できる
水都「私は絶対、久遠さんを信じますから」
水都はそう言って、
看護師が到着するまでずっと、陽乃の手を握り続けた
- 843 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/05(金) 21:28:57.25 ID:lJdzeDhLo
- √ 2018年 8月10日目 夕:諏訪
05〜14 歌野
27〜36 杏
41〜50 球子
52〜61 九尾
↓1のコンマ
※それ以外は通常 (水都)
- 844 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/05(金) 21:31:37.14 ID:Gd//VFq5O
- あ
- 845 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/05(金) 22:38:50.47 ID:lJdzeDhLo
- √2018年 8月10日目 夕:諏訪
昼からまた体調を崩した陽乃が目を覚ましたという連絡を受けて、
歌野が陽乃のいる病室へと訊ねてきた。
杏と球子のどちらか
あるいは両方が来るかと思っていたけれど
来たのは歌野だった
歌野「みーちゃん、大丈夫?」
水都「うん。私は全然大丈夫……久遠さんはお話は控えるようにって言われちゃってるけど」
歌野「そう……伊予島さん達は四国の方の現状説明を大人たちに要求されちゃってね。抜けられなかった」
陽乃「別に、聞いてない……」
陽乃の枯れてしまっている声に、歌野は顔を顰める
朝よりも少し、悪いように感じたからだ
歌野「大丈夫?」
陽乃「…………」
陽乃は力なく頷くだけで、目を向けようとはしない。
一緒にいる水都にも目を向けないし、
死に際のように、ゆっくりと瞬きをするだけ。
それが不安になったのか、歌野は一瞬躊躇って口を開く
歌野「良ければ、2人を連れてくるわ……説明も大変そうだったし」
- 846 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/05(金) 22:57:10.35 ID:lJdzeDhLo
-
陽乃が比較的心を許せるであろう、四国から連れてきた二人。
自分達よりも杏や球子の方が良いのではと考えた歌野の気遣いだろう
けれど、陽乃はうんともすんとも言わずに、
歌野を一瞥して、瞬きする
歌野「えぇっと……じゃぁ、歌とか歌ってあげましょうか?」
水都「うたのんっ、しーっ」
歌野「み、みーちゃん……」
陽乃は大した反応を示してくれないし
水都はちょっぴり騒がしい歌野に困った顔を浮かべる
自分は来ない方が良かったのかも。なんて、
歌野は少ししゅんとして椅子に腰を落ち着ける
歌野「そうね……そうよね。ごめんなさい。静かに休みたいわよね」
陽乃「さっきまで……寝てたのだけど」
水都「でもだからって、起きたりしたらダメですよ」
歌野「………」
朝とは雰囲気の違う水都
陽乃に向ける表情も柔らかい
何があったのか気にはなるものの……ここで聞くのは間違いだろうか。と、首を振る
- 847 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/05(金) 23:05:58.06 ID:lJdzeDhLo
-
歌野「子守歌だと思って、聞いておいてね」
歌野はそう前置きをして、
小さく、ゆっくりとした柔らかい声で話し始める
歌野「一応、四国に移住できる可能性があることを話したの」
水都「……それで?」
歌野「ん〜……行きたい。って強く思ってる人は少なかったわ」
どうしようもなければ、そうするのも一つの選択肢
けれど、
出来るだけ、ここに残りたい
出来るのなら、ずっとこの場所で生きていきたい
そういう人がほとんどで
まだまだ、諦める気のない人たちばっかりだったと、歌野は小さく笑う
それは嬉しいことではあるけれど、
限界が見えてきているのを察しているからか、喜べるものでもないらしい
水都「そうなっちゃうよね」
陽乃「………」
1、黙っておく
2、休む
3、貴女達は、どうしたいの?
4、馬鹿な人たちね
↓2
- 848 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/05(金) 23:09:19.22 ID:kuGD92ex0
- 4
- 849 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/05(金) 23:11:08.31 ID:Gd//VFq5O
- 3
- 850 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/05(金) 23:17:37.79 ID:lJdzeDhLo
- ではここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから
- 851 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/05(金) 23:30:56.08 ID:Gd//VFq5O
- 乙
諏訪組二人は最初から好感度高めな対応でありがたく感じるな
特に今作のみーちゃんの精神的な頼もしさよ
- 852 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/06(土) 00:08:24.50 ID:f0FSxTgFO
- 乙
いい方に風向きが変わってきたな
- 853 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/06(土) 21:08:56.02 ID:we9r2hPfo
- では少しだけ
- 854 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/06(土) 21:09:24.76 ID:we9r2hPfo
-
陽乃「貴女達は……けほっ……どう、したいの?」
水都「無理に声を出したら駄目ですよ」
声を発するたびに、咳き込み血を吐くと思われている過保護感
陽乃は苦しさが勝るのか、不満そうには見えないけれど、
その目は水都に向けられている
歌野「私は、ここで生きていきたい人がいるなら、残るわ」
水都「私は、うたのん……ううん、勇者がここに残るのなら残ります」
歌野「……!」
歌野は思わず声を上げそうになったのを控えて、水都を見る
昨日、眠っている陽乃の傍で話した時、水都は言い淀んだ挙句に話を逸らした
なのに、1日足らずで水都は堂々と言い切るようになった
何かがあったのだ
何かは分からないけれど
水都の意識を変える何かが。
歌野「そっか……」
水都「?」
歌野「ふふっ、何でもない」
歌野は水都の視線を感じて首を振り、小さく笑う
歌野「そう言うことだから……もしあれなら、避難したい人達を連れて四国の勇者達で戻って欲しいって思ってる」
- 855 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/06(土) 21:12:28.19 ID:PcZfl0JKO
- 今度はこっちの説得か
- 856 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/06(土) 22:16:15.74 ID:we9r2hPfo
-
陽乃「みんな……置いていけって?」
歌野「みんなじゃないわ。一部は――」
陽乃「かわらない……っ……ごほっげほっ……」
水都「っ」
水都は咳き込む陽乃の体を支えて寝返りを打たせて背中をさすり、
席が泊まったのを確認すると、
枕を腰と背中に当てながらベッドをリモコンで動かして、体を起こさせる
そして、すぐそばの水を手に取って陽乃の口元に宛がう
水都「ゆっくり、飲んでください」
陽乃「ん……」
水都は静かに、ゆっくりとペットボトルを傾けて陽乃の口の中に流す
手つきはとても慎重だが、それでも陽乃の喉が動く速さよりも流れる水の量が多く、
すぐに唇の端から溢れていく
陽乃「っ……ぅ」
歌野「みーちゃん、ストップ……ステイよ。一旦止めた方が良いわ」
水都がペットボトルを引くと、歌野が陽乃の口元をハンカチで拭う
まるでただの介護だと……陽乃は自己嫌悪してしまうが、
2人はまるで気にすることなく、陽乃を気遣う
- 857 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/06(土) 23:13:16.28 ID:we9r2hPfo
-
歌野「あんまり、考えさせる話はしない方が良さそうね」
水都「うたのんが変な子守歌口ずさむからだよ」
歌野「ソーリー、真面目過ぎたわ」
注意されたのに、なぜか嬉しそうな反応を見せた歌野
すぐに申し訳なさそうに眉を顰めて、陽乃の額に張り付く前髪を払い除ける
歌野「ここで生きていきたい人は私達が助ける。だから、ここを出て生きていきたい人たちを助けて欲しい」
みんなを置いていくわけじゃない。
れっきとした協力
適材適所
誰も見捨てるわけではないと歌野は言う
歌野「今日はもう、眠った方が良いわ」
歌野はそう言って、水都へと目を向けた
歌野「みーちゃん、頼める?」
水都「うん、大丈夫。何かあったらナースコールもあるし」
歌野「……そっか」
驚かず、嬉しそうな声
優しい笑顔を浮かべて……また、陽乃を見る
歌野「ゆっくり休んで」
- 858 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/06(土) 23:40:51.27 ID:we9r2hPfo
-
陽乃「っ……ごほっ……」
歌野「ほら、無理に話さなくていいから」
陽乃「ま……」
まだ話すべきことがある。
総攻撃が行われるよりも前に避難させるつもりなのか
それとも、総攻撃を受けた後に避難をするつもりなのか。
前者である場合、
諏訪がそれを耐えきる可能性は0と言っていいかもしれない
だが、
総攻撃を受けた後では……耐えられる可能性はあるが、
犠牲者は少なからず出ることになるだろう
どちらが良いか。と言うのは中々に判断しにくいことだけれど、
元のさやに納まる選択は、間違いなく前者だろう。
しかし、それは諏訪を囮として見捨てるということだ
歌野「少しでも多く助かる人がいるなら、その方が良いと思うわ」
歌野と水都に助けられながら、またベッドに横になる。
歌野はもう、それ以上話を長引かせる気はないようで
水都に任せて、病室を出ていく。
陽乃に声を出させたくないという気遣いだろうが、
聊か狡いと、陽乃は顔をしかめて……重い瞼を閉じた
- 859 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/06(土) 23:46:29.66 ID:we9r2hPfo
- √ 2018年 8月10日目 夜:諏訪
05〜14 球子
41〜50 九尾
52〜61 杏
↓1のコンマ
※それ以外は通常 (水都)
- 860 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/06(土) 23:52:47.48 ID:Xd/rnQnfO
- あ
- 861 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/06(土) 23:54:13.06 ID:we9r2hPfo
-
では短いですがここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから
- 862 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/06(土) 23:58:36.32 ID:Xd/rnQnfO
- 乙
全員生存させて四国に避難が理想だけど住人たちの意向を考えると難しい判断を迫られそうだな
- 863 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/07(日) 00:04:22.68 ID:TpsG6BK0O
- 乙
うたのんや水都は結局救えそうにないの辛いな
- 864 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2021/03/07(日) 00:16:04.16 ID:M/sMOw9k0
- 陽乃のテーマは「頼まれなくても生きる」系だと思っていたが、
死に場所を諏訪に決めた場合どう話を転がすんだこれ
- 865 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 18:48:11.46 ID:jeG9ohHno
- では少しだけ
- 866 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 18:49:29.29 ID:jeG9ohHno
- √ 2018年 8月10日目 夜:諏訪
声が聞こえる。
聞き覚えがあるのに、無いようにも感じる不思議な声
とても優しく、穏やかな……女性の声
陽乃が目を開けると、もう見ることが出来ないはずのものが見えて――目を見開く。
九尾「主様、気が付いたかや?」
陽乃「なんで……どうなって……」
傍らにいる九尾を一瞥して、体を起こす
眠る前までの気怠さはなく、喉の調子も悪くない。
身体の内側から響く痛みもなくて、むしろ……良いくらいの状態だ
しかし、陽乃が驚いたのは病室ではなく、かつて住んでいた自分の部屋にいることだ
丸亀城の寄宿舎ではなく、両親と住んでいた家
その、自室
荒らされ、焼け落ちたはずなのに。
九尾「夢のようなものじゃ。主様、現ではまともに話も出来なかろう」
陽乃「なるほど……明晰夢みたいな?」
九尾「うむ」
これも九尾の力だろうか
- 867 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 18:56:22.47 ID:jeG9ohHno
-
陽乃「まさか、この部屋をもう一度見ることになるとは思わなかったわ」
九尾「望めば、模倣することくらい可能じゃろう」
陽乃「しても、意味はないわ」
机の引き出しを開くと、シャーペンの予備やノート
その日は使わない教科書などが入っている。
箪笥の中も、いつかは分からないがしっかりと洋服が入っていて
手に取ることもできた。
陽乃「それで?」
九尾「主様はどうするつもりかと思うてのう」
陽乃「残るか、帰るか?」
九尾「死ぬか生きるかじゃな」
残れば、死ぬ可能性が高いが
帰れば、辿り着きさえすれば暫く死ぬことはないだろう
陽乃「………」
諏訪の四国移住希望者を連れていくとなると
それなりの日数と、犠牲を覚悟する必要がある。
しかし、
そもそも勇者である歌野を連れ帰ることができないなら、ここに来た本来の意味は果たせない
- 868 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 19:22:50.65 ID:jeG9ohHno
-
陽乃「諏訪はもう、本当に駄目なの?」
九尾「じゃろうな。残りの御柱を一つに束ねようとも、じきに崩壊する」
陽乃「私の力は?」
他の勇者達と違い、
陽乃は神々の力を扱うことができる。
もちろん、使える分の代償はほかの勇者の比ではないため、
使えるが、使うべきではない
しかし
九尾「主様が "死ぬ" ならば可能性もあるじゃろうが、望むことではあるまい?」
陽乃「出来るのね」
九尾「人柱……人身御供となり、主様が結界の要足る御柱の一つとなればよい」
九尾は淡々と答えると、
浅く息を吐いて、陽乃に目を向ける
九尾「それも長くはもつまい。平時ならばともかく、今はのう」
陽乃「そっか」
諏訪はいずれにしても、尽きる運命にあるということだ
陽乃のような人身御供を用意し続ければ保つこともできるかもしれないが、
それは現実的ではない
- 869 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 19:37:05.79 ID:jeG9ohHno
-
つまり、ここに残る歌野や水都はこのままでは死ぬことになる。
2人もそれは理解しているだろう
けれど、ここに残るつもりの人々がいる以上、2人はここを出ていかない
ここを死に場所としている一般人を説得するのは簡単ではないはずだ
陽乃「白鳥さん達を連れ戻さなきゃ、意味がないわ」
九尾「人間を皆殺しにしてしまえばよいではないか」
陽乃「馬鹿なこと言わないでよ」
一人殺してしまった以上、
もう、後戻りできるような状況にはない
けれど、だからと言って何もしていない人々を殺すほど壊れてもいない
九尾「ならばどうする」
ここに残って、守り、死ぬか
ここから出て、守り、生きるか
死にたくないという思いを維持し続けるなら――間違いなく出ていくべきだ
だが。
陽乃「どうするって、言われてもね……」
1、九尾はどうすべきだと思う?
2、2人を連れ出す方法、ないかしら
3、残るわ。手ぶらで帰ったって何も変わらないし
4、帰るわ。死にたい人は死ぬしかないもの
↓2
- 870 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/07(日) 19:37:19.35 ID:TpsG6BK0O
- 2
- 871 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/07(日) 19:39:09.45 ID:uP/LdZ8SO
- 2
- 872 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 20:02:42.68 ID:jeG9ohHno
-
陽乃「2人を連れ出す方法、ないかしら」
九尾「人間を皆殺しにするのは駄目かや?」
陽乃「ダメに決まってるでしょ」
九尾なら陽乃の犯行だと気づかせることなく実行は可能かもしれないが、
それは愚策ですらない蛮行だ
九尾も一度否定されているからか、本気ではないらしい
目を細めると、ため息をつく
九尾「ならば、結界を壊させるしかあるまい」
陽乃「結界を壊させるって……守らないってこと?」
九尾「結界を完全に破壊させたうえで、2人を含めた人間共を守り総攻撃を凌げばよい」
陽乃「それは、えぇっと……」
確かに、
結界が完全になくなってしまえば、
流石に残ると言う人はいないかもしれない
歌野達だって、
そうなっては致し方ないと四国に移住することを推奨するだろうし、
加護が消えたなら……頷く人も少なくないはず。
だが……負担が尋常ではない
- 873 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 20:20:09.43 ID:jeG9ohHno
-
結界が健在であるなら、
その中にいる人々の心配をする必要はない。
彼らが襲われることはないし、
いちいち警戒をし、守ってあげる必要だってない。
しかし、
結界が破壊されて武器らしい武器もない人々が野ざらしになった場合、
勇者達はそれを守らなければいけない。
気を使い、警戒し、盾になる必要だってあるかもしれない
そうしなければ、人々は簡単に奪われていく
陽乃「っ……」
かつて、陽乃が目の当たりにしたように
とても
とても簡単に
陽乃「ぅ……」
九尾「ふむ……恐れておるのかや?」
陽乃「違う……ただ、嫌なだけよ」
- 874 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 20:40:26.21 ID:jeG9ohHno
-
あれから3年も経った
以前から力はあったが、今はより力をうまく扱えるようになっている。
今は満身創痍だけれど、
それは今まで使ったことのない伊邪那美命による影響が残っていたからだ。
無理に無理を重ねた結果だから、
普通の状態なら何も問題はない。
回復に専念して数日過ごせば、大丈夫なはずだと陽乃は思う。
なのに……恐れるわけがない。
滴る血も、
零れ落ちる人の腕も
転がる頭も
散らばる骨も
響き渡る断末魔も
なにも――
九尾「主様」
九尾のやや強い声色にハッとする。
陽乃「っ!」
九尾「妾に虚勢など意味もあるまい」
- 875 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 21:10:59.70 ID:jeG9ohHno
-
陽乃「私は……別に」
九尾「無論。今の主様……いや、万全な主様ならば何も問題はなかろう」
確実に守ることができるはずだ
後々、
血反吐を吐き零して、血だまりに倒れ伏すかもしれないが
それでも、死にはしない。
九尾「それでも主様は恐れておるな」
陽乃「だからっ」
九尾「繰り返すことを、恐れておる」
頑張って、頑張って
守れなかった人々の残骸に心を痛め、
なのに、守れなかった人がいるのを責められて
バーテックスが攻めてきたのはお前のせいだと責められて
そして――
陽乃は首を振って、考えを払う
陽乃「知らないわよ……そんなこと。何人殺されようが、私は」
もう、信じない。
そうされるんだって思っておけば、痛くもない
九尾「ならば良いがのう。して、どうする?」
1、それしかないなら、するしかないわね
2、考えておくわ
3、そんなリスクは取れないわ
↓2
- 876 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/07(日) 21:20:52.83 ID:uP/LdZ8SO
- 1
- 877 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/07(日) 21:22:27.25 ID:IkvscxiS0
- 1
- 878 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 22:01:08.26 ID:jeG9ohHno
-
陽乃「それしかないなら、するしかないわね」
九尾「ふむ。そうか」
陽乃「でも、まだ時間はあるんでしょう?」
外の状態からして、総攻撃が行われるのはまず間違いない。
だが、少なくとも今月中は問題ないように思える
それまでにも、何度か襲撃が来るかもしれないが、3人の勇者で対応しきれるはず。
それだけあれば、陽乃も万全になれる。
総攻撃が行われ、結界が完全に破壊されても、
陽乃が後を考えずに力を使えば人々を守り切れるだろう。
陽乃「時間があるなら、別の手を取れるかもしれないし……一先ずの予定ね」
九尾「結界が割れる前に参戦することになるはずじゃ。手を抜くのじゃぞ」
陽乃「守っちゃいけない。のね」
九尾「うむ」
陽乃は九尾が頷くのを見て目を背けると
溜息をついて自分の唇に触れる
陽乃「守らなくても良いって、気が楽ね」
九尾「出来ればよいがのう」
陽乃「出来るわよ。大丈夫」
- 879 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 22:21:58.75 ID:jeG9ohHno
-
バーテックスの侵攻は結界が防いでくれる。
結界が壊れるまでは、人々に直接的な被害は出ないはずだ
人が死ぬわけではないし、断末魔が轟くわけでもない。
結界が壊れたら、ちゃんと戦って守ってあげれば良い
大丈夫。
陽乃「………」
九尾「結界を守り切れぬことを糾弾されるやもしれぬが」
陽乃「……大丈夫。責められるのは、慣れてるわ」
陽乃は笑って、答える
覚えのあること、無いこと
頑張ったことを無視されて、ただただ、悪いことだけを引き出されて
守った意味が分からなくなるくらい
色々と責められてきたから。
結界を守れなかったことを責められるくらい、何でもない。
だって、守れないのではなく守らなかったのだから。
自分の意思での被害なら、責任があるのは当たり前だ
陽乃「明日には、普通に話せるかしら?」
九尾「興奮しなければ良い。声を張るでないぞ」
陽乃「ん……分かったわ」
- 880 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 22:59:33.64 ID:jeG9ohHno
-
陽乃「私、何にもできないわね……」
九尾「あの小娘を利用してやればよい」
陽乃「藤森さん?」
陽乃の問いに九尾は頷く
藤森水都、諏訪で生き残っていた巫女
水都はなぜだか陽乃に親近感を抱き、
その悩み、苦しみをひっくるめて寄り添おうとしている。
今も、病室で横になっている陽乃の傍にいる
陽乃「私を諦めないって、言ってたわね」
九尾「娘が望んでいるのならば、好きに使い捨ててもよかろう?」
陽乃「まぁ、そう……なんだけど」
それで離れてくれるとは思えない
人を殺したことを話しても、
それでも……と、寄せてきたのだから。
陽乃「……はぁ」
発端は食べるのを手伝って貰ったことだろうか。
あれは軽率だったかもしれないと……陽乃はベッドに身体を倒して目を瞑る
懐かしい、自分の部屋
布団も枕も、あの頃と同じ感触で
けれど
陽乃「ベッドは……ちょっと狭く感じる」
あの日で時間が止まってしまったのを感じながら、落ちていく
- 881 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 23:00:30.60 ID:jeG9ohHno
-
√ 2018年 8月11日目 朝:諏訪
01〜10 歌野
21〜30 球子
41〜50 杏
81〜90 襲撃
↓1のコンマ
※それ以外は通常(水都)
- 882 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/07(日) 23:08:06.78 ID:uP/LdZ8SO
- あ
- 883 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 23:09:45.96 ID:jeG9ohHno
-
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
再開時にまとめ
- 884 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/07(日) 23:15:35.99 ID:uP/LdZ8SO
- 乙
決してリターンが小さい訳ではないけど最悪諏訪の人々にまで恨みを買ったり陽乃さんが死亡したりするかもで大分綱渡りだな
- 885 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/08(月) 06:50:40.10 ID:UEph28OEO
- 乙
結界壊すとか結構スパルタ気味な方法だけど致し方ないか
- 886 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/08(月) 08:03:57.24 ID:xu5V3FmnO
- 乙
つっても諏訪に残るのも悲劇でしかないからなあ
- 887 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/08(月) 21:48:27.29 ID:kuR+76Z/o
- では少しだけ
- 888 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/08(月) 21:48:56.78 ID:kuR+76Z/o
-
1日のまとめ(諏訪組)
・ 白鳥歌野 : 交流有(現状説明、意思確認)
・ 藤森水都 : 交流有(守れなかったもの、勝手なことを、人殺し、意思確認)
・ 土居球子 : 交流無()
・ 伊予島杏 : 交流無()
・ 九尾 : 交流有(歌野を呼ぶ、2人を連れ出す方法、結界破壊)
√ 2018/08/10 まとめ
白鳥歌野との絆 44→45(普通)
藤森水都との絆 52→58(普通) ※特殊交流
土居球子との絆 55→55(普通)
伊予島杏との絆 62→62(普通)
九尾との絆 63→64(普通)
- 889 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/08(月) 21:49:32.89 ID:kuR+76Z/o
-
√ 2018年 8月11日目 朝:諏訪
まだ、瞼が重い
意識が覚醒するにつれて、
身体の節々の痛みまで戻ってくる
腕を上げるだけで、骨が軋む
震えてしまって握り拳もまともに作れない
昨日大声を出してしまったのが相当、負担になっているらしい
正しく言えば、大声を出したというより興奮してしまった事だろうか。
陽乃「ん……けほっ……けほっ」
喉の異様な渇きに咳き込む。
潤いを失っているせいか、ピリピリとした痛みを感じる
陽乃「誰……か……」
身体がまともに動かせなくて、起こすことすら難しい陽乃は
ナースコールを押そうと手を動かす
けれど、頭の横の方にあるそれに手を伸ばす事すらできない
水は冷水だと刺激が強いということもあって、
常温保存のために近くのテーブルの上に新しいペットボトルが置かれているけれど、取れない
陽乃「けほっ……げほっ……っ……ごほっ……」
水都「久遠さんっ」
陽乃「ぅ……」
水都「待ってください。今用意しますから」
陽乃の目が向けられている方向とは逆側から水都の声がしたかと思えば、
ばたばたと慌ただしい音を立てて、視界の端に水都が入り込み右から左へと駆け抜ける
- 890 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/08(月) 22:02:08.91 ID:kuR+76Z/o
-
慣れた手つきで陽乃の身体を支えてベッドを操作しつつ体を起こさせると
ペットボトルを手に取り、キャップを開けて薬飲み器に注ぐ
陽乃「それ……」
水都「昨日、ペットボトルだと大変そうだったので用意して貰ったんです。飲みやすいはずですよ」
陽乃「……っ」
薬飲み器を受け取ろうとしたものの、自分の口にまで持ち上げられそうにない
陽乃の表情を酌んで、水都はそうっと陽乃の口元に吸い口を宛がう
陽乃はストローなどで吸い上げることも難しいため、
水都にゆっくりと流し込んでもらう
陽乃「んっ……んっ……っ……」
5秒程度流し、一旦離してまた数秒流す
それを数回繰り返して、陽乃の喉を潤していく
陽乃「っは……はっ……んっ……」
水都「大丈夫ですか?」
陽乃「大丈夫……」
体を起こして貰い、水を与えて貰い、口を拭って貰う
それだけして貰わなければいけない状態が大丈夫と言えるのならだけれど。
- 891 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/08(月) 22:18:28.05 ID:kuR+76Z/o
-
水都「昨日の夜、凄く魘されていて……心配しました」
陽乃「魘されてた……?」
水都「はい」
声をかけても、体を揺すっても目を覚まさない
ナースコールを押して医者を呼んだが、
通常の手段はどうすることもできないとなって……見守っているしかなかったのだという。
幸いにも数時間経って治まったが
再発する可能性も考えて、水都はずっと隣に控えていたらしい
陽乃「そう……ずっと起きてたわけではないのね」
水都「すみません、寝ちゃいました」
陽乃は水都へと目を向ける
昨日と同じ巫女装束は皺だらけで
髪は元々ふわふわしていたが、今はぼさぼさで
頬には装束の袖の痕がくっきりと残っている
昨日から着替えてすらいないらしい
陽乃「別に責めてはいないわ」
昨夜……だろうか。
九尾の何らかの力によって陽乃はかつての自室にいた
そこで二人きりで今後のことを話し、
あえて守らずに結界を壊させることにした
それを知ったら、今度こそ藤森水都は離れてくれるだろうか?
- 892 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/08(月) 22:39:57.94 ID:kuR+76Z/o
-
水都「食事はできそうですか?」
陽乃「……噛まないものなら」
水都「そう伝えておきます。入浴と、あの……えぇっと」
陽乃「そうね。色々と頼みたいわ」
もちろん、それらの世話はさすがに水都ではない
ちゃんと看護師を呼んで、対応して貰う。
水都はその間に身なりを整えてくるだろう
陽乃「私、外出できると思う?」
水都「許可を戴けると思ってます?」
手足がまともに動かせないし、声を張れば血を吐くし悪化する
そんな病弱極まっている状態の陽乃を外に出すなんて不可能だ
水都「どこか行きたいところでも?」
陽乃「諏訪に来てからずっと、病院にいるのもつまらないから」
水都「ならまず、体を休ませてください」
まさにその通りだし、それしか無理だ
陽乃はため息もつけずに小さく息を吐く
水都「私も一旦帰ります。久遠さんの準備が終わったころにまた来ますね」
1、もう来なくていいわ
2、どうして?
3、白鳥さんは良いの?
4、伊予島さんと土居さんを呼んできて
↓2
- 893 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/08(月) 22:40:48.43 ID:I7dDBD61O
- 3
- 894 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/08(月) 22:42:43.24 ID:JAhn8ZwWO
- 4
- 895 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/08(月) 23:15:14.32 ID:kuR+76Z/o
-
陽乃「だったら、伊予島さんと土居さんを呼んできて」
水都「え……」
水都は思わず驚きを露わにしてしまう。
陽乃からのお願い
水都から問い、陽乃がそれに答えたものではなく、
陽乃からこうして欲しいと言ったのだ
驚きは瞬く間に喜びへと変わっていく
水都「は、はいっ!」
陽乃「あまり……大声出さないで」
水都「すみません……つい」
一旦帰る
だったらもう、来なくていいと言われる可能性さえあった
もちろん、それでもまた来るというつもりではあったが、
陽乃はそれなら……と、頼みごとをしてくれた
水都「分かりました。絶対に連れてきますね」
水都は安堵したように、息をついて答える
その二人は勇者だ
四国移住についての話などもあって忙しいかもしれない
でも、絶対に連れてこようと頷く
水都「任せてください」
- 896 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/08(月) 23:16:29.66 ID:kuR+76Z/o
- では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 897 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/08(月) 23:26:21.80 ID:JAhn8ZwWO
- 乙
みーちゃんの絆値が既にタマを超えてるとは陽乃さんも妹分に好かれやすい傾向があるな
あと陽乃さんのヨボヨボぶりを見るとこれからの戦いを乗り切れるのか心配だ…
- 898 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/08(月) 23:47:05.46 ID:5AqfBPTAO
- 乙
みーちゃん嬉しそう
久遠さんはとりあえずお休みだな
- 899 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/09(火) 00:31:40.06 ID:3Jcdz4D0O
- 乙 ほんとに長野来てよかったなあ
- 900 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/09(火) 20:17:28.23 ID:QYG8xpm4o
-
では少しだけ
- 901 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/09(火) 20:18:14.93 ID:QYG8xpm4o
-
水都「それにしても、静かに話すなら問題なさそうで何よりです」
陽乃「貴女のせいで悪化したのよ」
水都「すみません……嫌なことを言ってしまって」
陽乃が感情的になったのは、
水都が諦めてくれなかったからだ。
人を殺したことを話しても、
水都はそれを信じないのではなく、
信じた上で、それでも……と寄せてきたのだから。
水都も、そこまでしてしまったのは申し訳なかったと思っている
しかし、そこまでしたからこそ本心を感じられたと思う
水都「でも、久遠さんの話が聞けて良かったです」
陽乃「……悪化させたいの?」
水都「すみません」
すみません。と、謝罪するのは口だけ。
興奮出来ないから、穏やかなだけだと分かっているのに
水都は嬉しさを隠しきれていない
水都「あと1日……最低でも2日は入院した方が良さそうですね」
陽乃「最低3日くらいじゃない? こんなだもの」
水都に見えるように左手を上げて見せる
ベッドに放っていた左腕が臍の上にまで上がったところで、酷く震える
ベッドに落として握り拳を作るけれど、棒の一本すら握っていられそうにない
陽乃「足なんて、こんな掛布団を払い除ける力さえないのよ」
- 902 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/09(火) 20:22:43.31 ID:G74wZ8R+O
- 来てたか
- 903 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/09(火) 20:39:20.29 ID:QYG8xpm4o
-
水都「せめて、自分で飲み物を飲めるくらいにはなると良いですね」
陽乃「この手でペットボトルを持ったらお漏らしするって約束できるわ」
水都「何言ってるんですか」
とはいえ、
今の陽乃は、ペットボトルを持つこともできない。
500mlでさえ、その手から滑り落ちてベッドにぶちまける事になる
吸い飲み器でさえ、傾いて同じ結果になるかもしれない
水都「遠慮なく頼ってください」
陽乃「だったら、二人を連れてきて貰える?」
水都「看護師さんたちの準備が整うまではお傍にいます」
お手洗いとか、入浴とか、食事とか。
水都では難しい、いくつかの介助を行うための準備がある。
それが終わるまで、陽乃が一人にならないようにしたいらしい
水都「目を離した時に悪化されたら……って、不安で」
陽乃「貴女がいなければ悪化しないから」
水都「だ、大丈夫です。大人しくしておくので」
水都はそう言って、看護師が来るまで本当に静かだった。
飲み物は必要か、体は辛くないか
時々、そういう確認はしていたけれど、
陽乃のことを根掘り葉掘り聞こうとはしなかった。
水都「久遠さん……その、出来たら名前で呼んで貰えませんか?」
陽乃「名前って、藤森さんではなく?」
水都「はい……水都。藤森水都なので、水都で」
1、意味が分からないわ。お断りよ
2、考えておくわ
3、で、貴女は私を名前で呼びたいのね
4、さん? ちゃん? 呼び捨て?
↓2
- 904 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/09(火) 20:40:33.03 ID:G74wZ8R+O
- 3
- 905 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/09(火) 20:42:46.73 ID:Yj4tfjV10
- 2
- 906 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/09(火) 21:37:15.70 ID:QYG8xpm4o
-
陽乃「……分かったわ。考えておく」
水都「あ、ありがとう……」
陽乃「なんでそうなるのよ」
照れくさそうに礼を呟く水都を一瞥した陽乃は、
ゆっくり瞬きをして、小さく息を吐く
陽乃「断られると思った?」
水都「う、うん……断られると思ってた」
ならなんで言い出したのか……なんて、
陽乃は聞かずに目を背ける
首を横に振るのすら今は辛い
陽乃「考えておくとしか言ってないんだけど」
水都「それでも良いです」
すぐに断るのではなく、考えてくれる
たとえ後々嫌だと言われても
考えてくれたというだけで十分だと、水都は嬉しそうに笑みを見せる
だから、ありがとう。なのだ
- 907 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/09(火) 22:10:15.26 ID:QYG8xpm4o
-
水都「そう言えば、久遠さんって今何歳なんですか?」
陽乃「15よ。今年で」
水都「じゃぁ、私よりも一つ上ですね」
正直、たった一つ上には思えないのだが、
かといってそこで嘘をつく意味もないだろうと思う
冗談……も、今の体調からしてそんな無駄話をする気にはならないはずだ
水都「うたのんも同じで久遠さんより一つ下なんですけど……でも、なんだかそうは思えない感じで」
陽乃「それはそう……でしょうね。普通じゃないもの」
普通に生きていれば絶対に経験しないであろう経験をした
目に見て、手に取って、鼻を通って、肌に感じた
そんなことがあってもまだ、普通の中学生でいられたのだとしたら
それはどこか壊れてしまっているとさえ思う。
もちろん、陽乃がした経験はもっと性格が歪むものだったし、
それを参考には出来ないけれど。
陽乃「普通でいられたら、良かったけど」
水都「……そうですね」
陽乃「でも、そうじゃ、ないのよ」
水都「わかってます」
- 908 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/09(火) 22:57:30.48 ID:QYG8xpm4o
-
もう普通ではいられない。
みんなが失って、もう二度と取り戻せないかもしれないもの
けれど、歌野はその中でも日常を作り上げようとしている
凄いと思う。
立派だと思う。
自分にはそんなこと、絶対に出来ない
陽乃「もう帰ったら?」
水都「ぁっ……」
陽乃「貴女が何を悩んで、いても……私は知らないし、聞く気もないわ」
水都「すみません」
水都は反射的に謝って、首を振る
きっと今の自分は分かってしまう表情だろうから。
陽乃が何があったのかなんて聞いてくれるだなんて思っていないし、そうして欲しかったわけでもない。
ただ、考えてしまっただけ。
水都「もう大丈夫です。私は私の出来ることをするって、決めたので」
陽乃「そう……羨ましいわね。私は出来ること、なにもないから」
水都「しばらく休めば、大丈夫ですよ」
嫌味っぽい返し
歌野だったら絶対しないそれは少し、特別な感じがした
- 909 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/09(火) 23:01:17.59 ID:QYG8xpm4o
-
√ 2018年 8月11日目 昼:諏訪
01〜10 歌野
34〜43 襲撃
↓1のコンマ
※それ以外は杏・球子交流
- 910 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/09(火) 23:02:14.31 ID:lUi51s83O
- あ
- 911 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/09(火) 23:08:47.29 ID:QYG8xpm4o
-
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 912 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/09(火) 23:13:20.24 ID:DrSN0yFgO
- 乙
陽乃さんに共感してるのもあってかグイグイ引っ張っていくみーちゃんってなんだか新鮮だなぁ
- 913 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/10(水) 00:49:10.47 ID:QZ40bTIRO
- 乙
みーちゃんグイグイ来てくれるの助かる
- 914 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/10(水) 21:14:09.03 ID:5E/bhfpKo
-
では少しだけ
- 915 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/10(水) 21:14:35.66 ID:5E/bhfpKo
-
√ 2018年 8月11日目 昼:諏訪
杏「思っていたより、大丈夫そうですね」
陽乃「まぁ……そう、ね」
球子「会いたかったのに、中々会えなくて悪かったな」
陽乃「別に」
何もできなかったうえにまともに話すこともできなかったし、
杏と球子とはそこまで親しいわけでもない。
諏訪にいる人々の中では、距離が近いとは思うけれど
その程度。
病床に伏せっているときに会いたくなるかと言われれば、特別、そうでもない
陽乃「諏訪はどう?」
杏「向こうに比べると、色々と不足しているように感じます。食料とか……みんなで畑を耕して頑張っているからこそ、って感じで」
球子「でも、活気はあるな……もしかしたら、これに関しては四国よりも良いかもしれないぞ」
人口が関係しているかもしれないが、
諏訪は四国に比べて、バーテックスに対しての恐れが重くない
天空恐怖症候群と言われているあの精神的な病気の発症が見られないのだ
久遠家に関する噂などもないので、
妙な緊迫感と言うか、後ろ暗い雰囲気が感じられない
球子「歌野のお陰だろうな。たぶん」
- 916 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/10(水) 21:37:16.51 ID:5E/bhfpKo
-
陽乃「そう……諏訪は良い場所なのね」
杏「みんな優しくて、温かくて、凄くいい場所ですよ。久遠さんのことも凄く気にかけていました」
陽乃「私? どうして……」
歌野がむやみやたらと広めるとは思えない
水都も、同じように余計なことを言うようには思えない
では――と、陽乃が球子を見ると、
球子は不思議そうに目をしばたたかせて、はっとする
球子「た、タマは何にもしてないぞ!」
陽乃「何も言ってないのだけど……」
球子「こっち見たじゃないかっ!」
杏「タマっち先輩、しーっ」
球子を宥めた杏は、大丈夫だよ。と笑って
杏「久遠さん、いきなり血を吐いて倒れたから……見てた人が凄く驚いちゃって」
それが広まっていったのだと、杏は言う。
外から来ただけでもあり得ないことなのに、
それで血を吐いて気絶した挙句、それが歌野が紹介した四国からの使者……勇者だっていうのだから、
陽乃のことがあっという間に広まるのも無理はなかった。
目は覚ましたのか、体は大丈夫なのか
色々と気にかけてくれているらしい。
陽乃「向こうじゃあり得ない、わね……」
- 917 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/10(水) 21:49:58.39 ID:5E/bhfpKo
-
杏「久遠さんは、諏訪に残りたいですか?」
陽乃「残ったって……」
杏「そうですね。厳しいと思います」
諏訪の結界は長く持たない
陽乃達が防衛に参加したとしても
多少の延命が出来るだけで、最終的には無くなってしまう
だから、出ていかなければならない
またあの場所に戻らなければならない
その時、陽乃の評判はどうなっているのだろうか。
本当に人を殺めてしまった久遠家の娘は、果たして……どう扱われるのか。
球子「でもまぁ、出来る限り守った方が良いんじゃないか?」
杏「でも、白鳥さんは安全なうちに希望者を連れて行って欲しいって言ってたよね」
球子「そうは言ったって、総攻撃があるか分からないけどそれの後じゃないと危険だろ」
杏「うん……」
1、貴女達はどうしたいの?
2、私、総攻撃でここの結界を壊させようと思ってるの
3、総攻撃の後、私は荷物になると思うわ
4、気を付ければ大丈夫でしょ。どうにかなるわ
↓2
- 918 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/10(水) 21:59:26.69 ID:SE+y8YCcO
- 2
- 919 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/10(水) 22:00:51.51 ID:Zm/l+IhX0
- 3
- 920 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/10(水) 22:30:11.61 ID:5E/bhfpKo
-
陽乃「総攻撃の後、私は荷物になると思うわ」
球子「あぁ……確かに」
杏「確かにって、タマっち先輩言葉を選ぼうよ」
球子「事実だから仕方がないだろ」
総攻撃では、流石に陽乃も参戦する
結界を破壊させる予定ではあるが、
そうではなかったとしても、全力で力を使うのであれば、今みたいな状況に陥るのは確定と言ってもいい
そうなった場合、
陽乃は置き去りにされたら、確実に死ぬ。
恐らく、そうなったなら九尾が出てくるだろうけれど。
球子「その時はタマが運んでやるから安心して良いぞ」
陽乃「貴女だって戦いで傷ついているはずよ」
球子「腕が取れてたら難しいけど、そうじゃなきゃ大丈夫だ」
杏「も〜変な事言わないで」
球子「なる可能性もある……だろ?」
もちろん、なる気はないが
万が一なってしまう可能性も考えて、球子は言う
自分が勇者だから。なんて、慢心はない
球子「その時は杏が頼む」
- 921 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/10(水) 23:19:44.38 ID:5E/bhfpKo
-
杏「私、久遠さんをおんぶして歩く自信がないよ」
少しなら歩けるかもしれない
勇者の力があるから、それなりに支えることは出来るだろうけれど
杏だって、勇者として戦う立場にある。
球子のように腕を奪われずにいたとしても
そうなってしまった球子の分、頑張らなければならない
球子「台車に乗せるしかないな……」
陽乃「……置いていくって選択肢はないの?」
杏「ありえません」
球子「ないな」
陽乃「そう……」
向こうにいる人々や、千景、大社からしてみれば、
陽乃は遠征から帰ってくることなく死亡し
代わりに歌野が新たに加わってくれる方が良いと思うはずだ。
陽乃「連れ帰らない方が良いんじゃない?」
球子「そりゃ、向こうじゃそうかもしれないけどな……それとタマ達は別だろ」
杏「久遠さんを置いていくなんてありえません。諏訪が安全なら、それも考えますけど……そうじゃないなら、絶対に」
- 922 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/10(水) 23:24:32.70 ID:5E/bhfpKo
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 923 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/10(水) 23:44:24.16 ID:SE+y8YCcO
- 乙
陽乃さんにとっては四国に戻るメリットがないのがな…
諏訪に残る選択をしてたらどうなってたんだろうか
- 924 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/11(木) 00:08:17.69 ID:Ap3yDi3OO
- 乙
なんにせよ総攻撃を退けないと
- 925 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/11(木) 20:37:48.34 ID:TfbGYnvMo
- では少しだけ
- 926 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/11(木) 20:38:30.76 ID:TfbGYnvMo
-
杏「四国への移住に関しても、なんにしても。私たちの予定としては総攻撃の後になります」
球子「絶対にあるとは限らないからな、適度に外の状況を確認して総攻撃起きないくらいにバーテックスが減っていれば……ってのも考えてるけどな」
陽乃「期間、は?」
杏「持てば半年くらいは考えています」
総攻撃が起こらず、
諏訪の周辺からバーテックスが一掃できるまで、少しずつ襲撃があることも考えて、
そのくらいの期間があれば、周辺も少しは落ち着くはずだと考える。
それが、半年くらいだという想定だ
もちろん、結界が持つ前提の話になる。
持たなければ早々に出ていかなければならないし、
そうなってしまったら最悪、歌野達は諦めなければならない
杏「でも、おそらく総攻撃があるのは確定だと思います……昨日、時間を見て結界の外を覗いたんですけど、バーテックスは増えているように感じたので……」
球子「通信の回線も繋がりにくくなってるみたいだからな。バーテックスのせいか力が弱ってるせいかは分からないけど」
陽乃「通信……四国、と、だったっけ……」
四国……若葉との定時連絡
向こうでは、若葉とひなたと共にその場にいたこともあるので、
少しくらいは状況を分かってはいる。
陽乃が向こうで聞いたときは、通信には何の問題もなかったが、
それに影響が出始めているというのは聊か不穏だ
- 927 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/11(木) 20:55:06.38 ID:WLXA3S+1O
- 来てたか
- 928 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/11(木) 21:36:54.17 ID:TfbGYnvMo
-
杏「一応、向こうはまだ襲撃とかは起きていないみたいです」
陽乃「そう……」
手薄になったことにバーテックスが気付き、
四国にも攻撃を始める可能性も少なくはないと思う。
陽乃達がいなくなってまだ1日だ
昨日今日は平気でも、
明日は襲撃されるかもしれない
そうなったとき、向こうは耐えられるのだろうか
若葉は戦闘経験があると聞いているけれど
2人はどうだったか……
陽乃に対して武器を手に取れるのなら、千景は大丈夫かもしれない
陽乃「動けないって不便ね……」
諏訪を見て回ることもできないから
全部、話を聞かなければならない
1、乃木さん達はどんな感じだった?
2、それで? 私のことも聞いたんでしょう?
3、向こうが心配じゃないの?
4、総攻撃以外は任せて良いのよね?
↓2
- 929 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/11(木) 21:39:34.32 ID:WLXA3S+1O
- 1
- 930 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/11(木) 21:41:30.51 ID:PWAjTl4E0
- 2
- 931 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/11(木) 21:58:14.17 ID:TfbGYnvMo
- ↓1コンマ判定 一桁
1269 聞いてない
5378 聞いた
40 聞いた(特殊)
※特殊 歌野達
※奇数 悪 ぞろ目 最悪
※偶数 普通 ぞろ目 良
- 932 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/11(木) 22:00:06.75 ID:PWAjTl4E0
- あ
- 933 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/11(木) 22:49:10.55 ID:TfbGYnvMo
-
陽乃「それで? 私のことも聞いたんでしょう?」
球子「あー……まぁ、その」
杏「……聞いてます」
露骨に揺らぐ言葉
陽乃からそれていく視線
話しは聞いたけれど、
少なくとも朗報ではなかったと分かる仕草
嘘が苦手なのだろう
杏「ただ、えぇと……なんと言えば良いか」
球子「聞いたって面白くないぞ」
陽乃「……私の、ことでしょ」
自分自身のことだから
つまらない話だから聞かなくていいとはならない
杏「大社は正式に久遠さんを拘束するようにって、要求しているみたいです」
球子「……勇者の力を使ってでもな。タマ達はスマホが圏外になってるから内容は見れないけどな」
陽乃「圏外?」
杏「あ、はい。四国を出てから途中までは電波が届いていたんですけど、今は圏外です」
- 934 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/11(木) 23:01:20.96 ID:TfbGYnvMo
-
杏「お陰で、大社からの通達を確認せずに済んでます」
そう言って笑った杏は、
またすぐに……表情を曇らせる
大社からの通達がそれほどまでに問題なのかもしれないと、
陽乃は小さく息を吐く
球子「話すのか?」
杏「うん……」
球子の不安そうな問い
それだけでも少し怖いが、杏の神妙な面持ちが余計に不安を煽る
杏「実は郡さんが私達を久遠さんが殺したのでは。と、大社に詰め寄ったらしいです
事実無根ですが、この通り圏外で全く連絡がつかないせいか……証明が出来なくて」
陽乃「あの通信を……使えば良いんじゃ、ないの?」
球子「言ったろ? 繋がりにくいって。そのせいで本当にタマ達がいるって証明にはなってないんだ」
そもそもビデオ通話のような、顔見せが出来るわけではないので
声だけでは本人じゃないと言われたら困ってしまう。
流石に、杏や球子の両親を連れ出して通信に対応して貰うわけにもいかないだろうから。
陽乃「なるほど……ね。私、嫌われて……るから」
千景は嫌がらせでも、杏たちを心配してでもなく
本気で陽乃のことを嫌悪し、疑っているのだ
まして、本当に人を殺したとあっては疑わざるを得ないのだろう
- 935 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/11(木) 23:05:01.34 ID:TfbGYnvMo
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 936 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/11(木) 23:15:47.33 ID:WLXA3S+1O
- 乙
ますます四国に戻りづらい状況だな…
千景に至ってはもう仲直り出来そうにないのも辛い
- 937 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/12(金) 00:22:46.60 ID:p3EG15nMO
- 乙
でも千景の行く末考えたらお互いがお互いに本当の理解者になれるかもしれん
- 938 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/12(金) 20:52:23.00 ID:MXPySprAo
- では少しだけ
- 939 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/12(金) 20:53:23.72 ID:MXPySprAo
-
陽乃「そこは、あなた達が無事に……帰れば解決するでしょ?」
球子「それはそうだけど」
杏「でも、だからって諏訪を放って帰るわけにはいきません」
諏訪から四国へと移住することを選んでくれた人々を連れて四国への帰還をすることが出来れば
外の状況、諏訪の現状
そして杏と球子の無事を伝えることが出来る。
諏訪への総攻撃の可能性を伝え、
若葉達を連れて諏訪の加勢に来ることだって敵うかもしれない
けれど。
そうはならないかもしれないのだ。
道中で襲撃を受け、多くの犠牲者が出るかもしれない。
大社が陽乃の力を知っているせいで、杏と球子が本人であると思われず、
一定期間拘束されることになるかもしれない
そうならなくとも、加勢に行くことは止められる可能性が高い
だから、総攻撃を退けた後の出発を考えている
そこで何かしらの被害が出るとしても、諏訪を諦めるのと諦めないのとでは話が変わってくる
杏「……そこで一つ問題があるんです」
杏は困り果てた顔で、切り出す
杏「総攻撃後に久遠さんが動けなくなって、諏訪の結界が破壊されてしまっていた場合……久遠さんが回復するのを待たずに四国に連れて帰ることになります」
- 940 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/12(金) 21:20:00.58 ID:MXPySprAo
-
今もこうして陽乃が療養できているのは、
諏訪に医療施設があり、結界で守られているからこそだ。
そうでなければ、いつバーテックスに襲われるかも分からないあの緊迫感の中で
身も心も中途半端な休息をとらなければいけなくなる
そんな状態では陽乃の体が元に戻るとは思えない。
四国に着いた後、大社に知られることなく安全に逃がすことは不可能だと言っていい
杏「でも、総攻撃で力を温存して欲しいとは言えません」
球子「総攻撃の規模にもよるけど、やばいだろうからなー。まぁ、そこはタマ達も死ぬ気で頑張るってことで」
気落ちした様子の杏の一方で、
球子は張り上げることなく、明るい声で笑う。
そうするしかないという諦めもあるのかもしれない
けれど――球子はお茶らけて見せているだけで、内心は本気のように感じられる
球子「絶対に諏訪を守る。結界の一つは壊されるかもしれないけどな……もう一つは絶対に守ってやる。だから安心して、ぶっ倒れてくれ」
杏「倒れないのが一番なのにっ」
球子「そ、そうなっても良いってはなっ――」
杏に詰め寄られて、椅子から転げ落ちる球子
鈍い音と、椅子が倒れる騒音が病室に響いたかと思えば、
すぐさま廊下をかけてくる音が聞こえて、看護師や水都達がなだれ込んできた
「お静かに願います。大きな音でも頭に響いたりすることもあるんですから。説明したように絶対安静ですし、そもそもここは病院なので……
それが守れないのであれば、いくら勇者様と言えど出入り禁止にさせていただきますからね」
看護師は陽乃に何かがあったわけではないと安堵しつつも、
お尻を押さえて蹲る球子へと、注意を叩きつけた
- 941 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/12(金) 21:30:46.99 ID:MXPySprAo
-
√ 2018年 8月11日目 夕:諏訪
01〜10 歌野
21〜30 九尾
81〜90 襲撃
↓1のコンマ
※それ以外は通常(水都)
- 942 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/12(金) 21:31:51.78 ID:5h9B8SQLO
- あ
- 943 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/12(金) 22:19:32.50 ID:MXPySprAo
- √ 2018年 8月11日目 夕:諏訪
騒がしさを運ぶ球子を杏が連れていき、また静かになった病室
けれど陽乃一人になったわけではない
陽乃「貴女は帰らないの?」
水都「久遠さんが眠るまでは、傍にいます」
球子や杏の使っていた椅子を片付けて、
新しいペットボトルを用意して
陽乃の腰下まで下がっていた布団を引き上げていく
水都「横になりますか?」
陽乃「……そうね」
腰を支えていた枕を外し、
ベッドの角度を整えて、陽乃の体を横向きに寝かせる
水都「少し、体ほぐしますね」
陽乃「そこまでしなくても大丈夫よ」
水都「そうですか?」
陽乃「そういうのは、看護師さん達がやってくれるから」
- 944 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/12(金) 23:37:29.25 ID:MXPySprAo
-
水都「声、ちゃんとしてきましたね」
陽乃「そう……?」
水都「水以外も飲めるかどうか、看護師さんに確認しますね」
陽乃の喉が非常に弱っていること
喉だけでなく、体の内側まで傷ついていたため、
炭酸飲料はもちろんのこと、
下手にジュースなどを飲ませるわけにもいかなかった
けれど、やはり勇者の身体
治りは早いらしい
大人しくしておけば……だが。
水都「……四国との通信ですが、乃木若葉さんも久遠さんのこと凄く気にしていましたよ
絶対に無理するはずだって、言ってました」
陽乃「まだ何の役にも立ってないって、ちゃんと言った?」
水都「言ってませんよ」
そんなこと、絶対に言わないです。と
水都は首を横に振る
水都「ただちょっと、最近はノイズが入るようになってきたのが心配です」
- 945 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/13(土) 00:12:26.49 ID:xSHr3uk2o
-
前から、
数回に一度、ほんの数秒程度にノイズが入るのはあった。
けれど最近は一回の通信中に何度も途切れたり、ノイズが入ったり
確実に乱れていると感じる
いつ通信できなくなってもおかしくはない
水都「本当に近いうちに総攻撃が行われるかも、しれません」
陽乃「神託は?」
水都「まだ、ありません……」
陽乃「そう」
神託がどのくらいの精度で行われているのかを陽乃は知らない
数日前に来るのか、本当に直前に来るのか
水都の巫女としての素質は、九尾がもてはやさないのを見るに
そこまで高くはないのだろう
そして、諏訪の神々の力が弱まってきているのなら、
神託も遅れるのではないかと、陽乃は目を細める
水都「すみません……私、巫女としての素質はそこまでないので」
陽乃「一般人よりは、貴女の方が素質はあるでしょ……直前でも知れるなら、襲われてから気付くよりはマシだわ」
- 946 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/13(土) 00:14:34.38 ID:xSHr3uk2o
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日も可能であればお昼ごろから
- 947 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/13(土) 00:35:05.45 ID:nM4LZMLmO
- 乙
水都ちゃん本当に面倒いいな
ボロボロになって陽乃のメンタルケアには助かる
- 948 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/13(土) 07:21:08.00 ID:7sSax0rsO
- 乙
うたのんやみーちゃんをこのまま死なせたくないなぁ
- 949 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/13(土) 18:20:01.88 ID:xSHr3uk2o
- では少しだけ
- 950 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/13(土) 18:21:04.06 ID:xSHr3uk2o
-
水都「そうですね……何か神託があったらすぐにでも報告します」
陽乃「私に報告してどうするの?」
水都「もちろん、うたのん達に伝えるのが先にはなると思います
でも、万が一総攻撃だと思われる神託があったなら、真っ先に久遠さんに伝える必要があるかなって」
陽乃「総攻撃なら、私に出る出ないは選べないと思うけど」
水都「そうかもしれないですけど……」
陽乃の素っ気ない対応にも、
水都は悲しそうというよりも、訳知り顔で小さく笑う
水都「久遠さんはほかの人よりもずっと、命懸けですから」
陽乃「命懸けなら、そこに差はないわ」
水都「じゃぁ、死んでしまう可能性が一番高いから。というのはどうですか?」
死ぬ可能性なんて、0か1かだ
バーテックスに殺される可能性があるのはみんな一緒だが、
陽乃には自分の力で死ぬ可能性がある
だとしても生きるか死ぬかでしかないと陽乃は息を吐く
陽乃「総攻撃で一番死にやすいのは、最も誰かを守ろうとする愚かな勇者よ」
水都「だとしたら、久遠さんかうたのん……かな?」
陽乃「私が誰かを守ろうとするわけ、ないでしょ」
- 951 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/13(土) 18:27:30.05 ID:wcBlFO34O
- 来てたか
- 952 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/13(土) 19:04:26.64 ID:xSHr3uk2o
-
水都「そうですか」
肯定するような口ぶりではあるけれど、
水都の表情は柔らかで、まるで信じていないように見える
陽乃が他人を守らないはずがないと、信じているのだろう
陽乃「勝手な事ばっかり」
水都「……だって、久遠さんの自己評価と伊予島さん達の話が全然違うから」
陽乃が自分を悪と言うとすれば、
杏たちは揃って、陽乃は善だと言う
だったら、陽乃は他人を救ってしまう人だ。
水都「そう言えば、久遠さんの体について少し調べてみました」
陽乃「私の身体?」
水都「そうです。勇者の力は神様から頂いた力なので、それに類する何かがあったんじゃないかなって」
陽乃「……で?」
水都「まだ古文書の翻訳中です。ただ、神様の力を借りるって言う点で憑依が怪しいのではと思ってます
所謂、神降ろしですね。それによる代償として久遠さんは体を供物として捧げているのではないかと」
陽乃「へえ……」
水都「その供物として捧げられた体の一部を実際に神様が口にしているから、身体の内側が傷ついている。とか」
陽乃「たくましい想像力ね……枯渇したサブカルチャーを担えそう」
水都「それはちょっと難しいです」
- 953 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/13(土) 19:38:21.35 ID:xSHr3uk2o
-
水都「とにかく、久遠さんの体はなんだかすごく……普通じゃないと思います」
普通に検査しても、
陽乃の体は異常な回復力を持つ女の子の身体でしかない
水都が知る歌野よりも優れた回復力ではあるけれど、
勇者としての力が強いことを加味するなら、普通と言えるかもしれない。
だけど、力を使って体の内側を削られるなんて普通ではない
それでも回復する陽乃もまた、おかしい
水都「気を付けて欲しいのは、回復したからと言って本当に元に戻ったとは限らないということです」
陽乃「……また妄想?」
水都「ただの杞憂であって欲しい心配です。
久遠さんは明らかに普通の勇者とは違うので、治った体が普通から外れていっている可能性もあるんです」
神降ろしは母も語っていたことだ
久遠家は依り代としての役割を持っており、
生贄に捧げられるべき血筋であると
もしもそれが、巫女ではなく勇者となることで歪んだのだとしたら。
1、余計な詮索はしない方が良いわ
2、四国との通信、どうにかする方法はないの?
3、私の血筋は、そもそもそういうことを主としたものだから
4、どこかに禊が出来るような場所、ある?
↓2
- 954 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/13(土) 19:39:40.63 ID:wcBlFO34O
- 4
- 955 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/13(土) 19:40:56.13 ID:yBHkfTbT0
- 3
- 956 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/13(土) 20:20:32.26 ID:xSHr3uk2o
-
陽乃「私の血筋は、そもそもそういうことを主としたものだから……」
水都「そういうことって、神降ろしとかですか?」
陽乃「……ええ」
水都は驚き、戸惑った様子で視線を彷徨わせる。
神降ろしをしている状態ではないかと想像はしたが、
実際にそれを行っているという確証はどこにもなかった。
しかし、陽乃がその家系の子であるというなら話は変わってくる
水都「もしかして、久遠さんは巫女の家柄なんですか?」
陽乃「そう、なるわね」
水都「巫女で、勇者……」
陽乃「そうなるわね」
歌野は、ただの女の子から勇者になった。
杏と球子も同様だったと聞いている
だが、陽乃はそうではなく巫女の家系として存在していたのに、
巫女ではなく勇者となった
普通じゃないのは、それがあるからだろうか。
水都「神降ろしを行う巫女の家系……それって、まさか人身御供っていうのとも――」
陽乃「関係があるか無いかで言えば、あるわね」
- 957 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/13(土) 21:23:26.08 ID:xSHr3uk2o
-
水都「……あの、もしかしたらなんですけど」
陽乃「なぁに?」
水都「久遠さんが特別なのは、初めからそれだけの力を使えているだけで
本来は勇者だったら使えるっていう可能性はありませんか?」
陽乃は力が強すぎると言われている
しかも、それには代償まで伴うという
だが、歌野の力には代償らしい代償もない
力を使ったら内側がダメージを受けるなんてことはないし吐血もない
それがもし、
力の扱い方、あるいは力の差でしかないのだとしたらどうだろうか。
水都「久遠さんが憑依させる形で力を使っているとしたら、うたのん達は表面的に力を纏わせている程度でしかないってことです」
陽乃「………」
巫女の素質と言う言葉を借りるなら
陽乃は勇者としての素質と巫女としての素質がありすぎて、
表面上に力を纏うなんてことは出来ず、内側に取り込むことしかできない
水都「久遠さんと同じような強い力を、うたのん達も使える可能性があるんじゃないでしょうか」
- 958 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/13(土) 22:22:29.67 ID:xSHr3uk2o
-
間違いなく使わない方が良い力と言うことになるだろうけれど
けれど、今の陽乃と同等の力をみんなも使える可能性がある。
陽乃は、その素質のせいでそんな危険な使い方しかできないのかもしれない
土地次第では作れない作物がある様なものだろうか。なんて考えて、
それは違うと、水都は首を振る
陽乃「他の人が使えるから、なに?」
水都「えっと……その、久遠さんだけが無理しなくても良くなるかもしれないって」
陽乃「私がこうなるのに?」
水都「……です、よね」
陽乃「普通の人がこんな力を使ったら大変な事になるでしょ」
陽乃のことをみんな切り札と呼ぶが、
やはり、その力もまた切り札だ
そんなものを当てにするわけにはいかない
水都「……久遠さんのこと、もう少し教えて貰えませんか?」
陽乃「教えることなんて、無いわ」
水都「でも、一番大事なこと教えてくれたじゃないですか」
- 959 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/13(土) 23:27:40.57 ID:xSHr3uk2o
-
家が、巫女の血筋であること
離さなくても良いことを陽乃は水都に話した。
人を殺してしまったことと比べれば、
大したことではないのかもしれないけれど
陽乃「だから、貴女になら全部曝け出すって?」
水都「そうしてくれたら嬉しいな。とは、思っています」
水都は睨まれても、笑みを浮かべる
まだ、1日2日の知り合いでしかない
それで何でもかんでも話して貰えるだなんて思えない
水都「私はただ、久遠さんのことを知ることができれば、力になるかなって思っただけで……」
そう言った水都は、
ちょっぴり照れくさそうに笑うと、自分の胸に手を当てる
頑張るって決めたから
水都「今回みたいに体が弱ることがないように対策できるかもしれませんから」
陽乃「それは無理よ」
水都「出来るかもしれないってだけです……とにかく、可能な限り調べてみますね」
陽乃の目に入りそうな髪を払い除けると、
水都はペットボトルを手に取って、飲み器へと注ぐ
出来ることを頑張ると決めたから、少しずつやっていければ良いのだ
――時間が許す限りではあるけれど。
- 960 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 00:15:45.12 ID:vJTXdnq1o
-
√ 2018年 8月11日目 夜:諏訪
01〜10 歌野
21〜30 水都
61〜70 球子
81〜90 杏
↓1のコンマ
※それ以外は通常
- 961 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 00:21:32.18 ID:RVRUeXZvO
- あ
- 962 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 00:23:00.21 ID:pHS3jJ9AO
- あ
- 963 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 00:27:07.56 ID:vJTXdnq1o
-
では遅くなりましたが本日はここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから
- 964 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 00:34:33.87 ID:RVRUeXZvO
- 乙
陽乃さんこのままだと普通に死にそう…
せめてこの状況を切り抜けるためにもみんなとできるだけ情報を共有したいなぁ
- 965 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 02:15:28.39 ID:zHVJXKIKO
- 乙
とりあえず柱壊されてから総攻撃に対する反撃に転じようとしてるってのは共有したいけどなあ
少なくとも杏たちには
- 966 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 14:31:43.76 ID:vJTXdnq1o
- では少しずつ
- 967 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 14:32:10.43 ID:vJTXdnq1o
- √ 2018年 8月11日目 夜:諏訪
陽乃「はぁ……」
声は出せるようになったし、
足は持ち上げるのは無理だが、横に動かすことは出来る
腕はまだ上げられそうにないし震えも残っているけれど。
少しずつ回復していっていることだけは分かる
もう数日休めば、出歩くこともできるだろうか
諏訪を見て回るか
若葉との通信に参加するか
出歩けるようになったからと言って、
1日中の外出はきっと許されないだろうから、考えておく方が良いかもしれない
陽乃「そんな制約、真に受けてあげる義理もないのに」
向こうだったら間違いなく抜け出している。
いいや、大人しく病院で療養すらしなかったかもしれない
なにせ、大社管理の病院に入院させられてそのまま監禁されるのだから。
けれどここでは水都を除けば、
みんな久遠陽乃と言う人物がどういうものかを知らないから、
ただの勇者として丁重に扱ってくれている
陽乃「知ったら……こんな部屋に放っておかれたりしないでしょうね」
身体が動かないなんて関係なしに拘束具はあるだろうし、
監視カメラだって設置されるだろう
陽乃「……結界の維持、できるのが一番なんだろうけど」
それは、出来ない
- 968 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 14:33:51.14 ID:vJTXdnq1o
-
↓1コンマ判定 一桁
19 圏外
3 通信
※ぞろ目特殊
- 969 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 14:34:41.92 ID:CrBY5vzcO
- あ
- 970 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 15:34:32.36 ID:vJTXdnq1o
-
通信が乱れているのが総攻撃の兆候だと考えるなら、
早くて今月末
遅くても来月中にはそれが来ると考えておいた方が良い
その間に襲撃がないのなら問題ないが、
バーテックスがそんな生易しいことをするとは思えない。
バーテックス達は、
諏訪の戦力が増強されたことに気付いているはずだ。
実際にバーテックスに被害を与えたし、
そのうえで諏訪に合流したのだから、確実に。
白くて丸い体のバーテックスではなく、
進化体と呼ばれる、強力な形態のバーテックスをいくつも投入してくるか、
物量で押しつぶしに来るか。
その両方か。
どちらか一方であれば勝機はあるかもしれないけれど
その両方だったなら、
手を抜くかどうかなんて考えも必要なく、蹂躙される気がしてならない
- 971 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 16:26:46.02 ID:vJTXdnq1o
-
水都が言うように、
陽乃と同レベルの力を使えるようになった方が良い気がすると、
陽乃は考えてすぐに目を閉じる
仮に、自分の素質が高いとして
それでもあれだけの代償が必要なのだとしたら
球子たちがそれを使うにはどれだけの代償を伴うのだろうか。
陽乃で吐血したりするなら
球子たちの体はどれだけ傷つくのだろう
それを考えると、水都に言ったようにあてにはできない
陽乃「……どうするべきかしら」
総攻撃に参戦するのは確定だ
だが、それ以外の戦いには不参加の予定
しかし、そこに進化体が現れた場合、
球子たちだけで対応できるかどうか。
1、休む
2、九尾を呼ぶ
3、球子たちの力について
4、通信について
5、イベント判定
↓2
- 972 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 16:27:55.35 ID:w96GhjoK0
- 1
- 973 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 16:30:08.05 ID:F/qqPojHO
- 3
- 974 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 17:32:19.25 ID:vJTXdnq1o
-
陽乃「切り札……」
球子たちの切り札の力
それが神々の力なのか、
九尾のように妖といった一段階下がる力なのか
前者であればその反動は間違いなく重いものになるけれど
後者であれば、影響は最小限に抑えられるのではないだろうか
もっとも、九尾はひなたが言っていたように神獣クラスの力を持っている
それに匹敵する力では、やはり代償が重いかもしれない
陽乃「……ん」
単純な戦闘能力を底上げするには、
やはり、それぞれに戦い方を考えて貰うのが一番だ。
球子の武器と、杏の武器
それらの長所を生かして、短所を庇い合って
――なんて、出来れば一番だが。
陽乃「土居さんには、楯を投げた後の隙があるのよね……伊予島さんは一手一手が弱い」
球子に火力があって手数が少ないとしたら
杏には火力がなくて手数が多い
白餅……初期バーテックスが相手なら杏のそれで十分だが、
相手が進化体にもなれば、力不足感は否めないだろう
- 975 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 18:03:33.22 ID:vJTXdnq1o
-
陽乃「戦い方を極めるか、力をそもそも底上げするか……」
そこを決めるのは陽乃ではない
球子達がどう考えるかだ
陽乃「そう言えば、端末が圏外なんだったっけ」
陽乃は、常に九尾を連れているため
端末なんてなくても勇者としての力を扱うことができる
しかし、球子たちはそうではない
神樹様という神々が集った強大な根源から、
端末を通して力を身に纏い、武器に宿し、戦う
以前は武器に宿すだけだったのだから、進歩していると言ってもいい
問題は、その端末が圏外であることだ
もし、この圏外が
ただ単にネットワークに繋がらないだとか、
電波が届かないとかではなく、
いつも借り受けている神々の力そのものにアクセスできていないという状態であるなら、
2人の力は、そのうち使用できなくなるのではないだろうか? と、
陽乃は目を細める
- 976 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 18:45:55.92 ID:vJTXdnq1o
-
ここに来るまで、半日
その間勇者の力を使い続けて、二度の戦闘
杏は外に出たと言っていたし
その時にも勇者の力を使っているかもしれない。
繋がりの絶たれた球子たちの力が有限なら
それはあとどれだけ使えるのか
そして、諏訪の結界が突破されて力が失われたとき、
歌野の勇者としての力はどうなるのか。
陽乃「……もし、みんなの力が使えなくなるとしたら」
球子たちが有限で、
歌野が諏訪の結界が崩壊するとともに勇者ではなくなってしまうとしたら
そうなったら、もう、全滅するほかない
いいや、陽乃が死ぬ気で戦えばどうにかなるかもしれない
その場合、生き残れたとしても数日の入院では済まないだろう
陽乃「……九尾なら、分かるかしら」
1、九尾を呼ぶ
2、今日は休んでおく
↓2
- 977 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 18:52:10.20 ID:w96GhjoK0
- 2
- 978 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 18:54:15.07 ID:UkgDMqkPO
- 2
- 979 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 19:38:01.41 ID:vJTXdnq1o
-
陽乃「……明日、でもいいかな」
少し考えて陽乃は目を閉じる
小さく息を吸い、吐き出す
諏訪の病院の一室も、もう見慣れたと言えるだろうか。
白い天井は見飽きたし、
横に控える電子機器の音も聞き飽きた
病院で使われるシャンプーと薬品の匂いも……
全く体を動かせないせいで、
見える景色がほぼ変わらないのが原因だ
陽乃「身体、早く治さないと……」
そのためにも、夜更かしはすべきではない
きっと、見回りも来るだろうし
九尾に聞くなり、杏たちに確認するなり
あとは、襲撃にも警戒して――
陽乃「……ん」
今日は、水都はいない
別にどうでもいいことだと陽乃は息を吐く
身体から力を抜いていくと、
今の自分の体がどれほど追い詰められているのかがはっきりしてくる
両手足、胸の内、腹部……まだ違和感がある
- 980 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 20:11:08.50 ID:vJTXdnq1o
-
身体が使えない分、頭を使いたくなる
けれど、使ってしまったらまた疲労が蓄積する
今日はもう休んでしまうべきだろう
明日は自分で水を飲めるくらいにはなるだろうか
それとも、車椅子に移るくらいは出来るだろうか
そのどちらも、まだ難しいかもしれない
陽乃「明日も藤森さん……くるのかしら」
あの調子なら、きっと来る
自分を水都と呼んで欲しいとまで言ってきたのだから
人を殺したこと
自分が巫女の家系であること
内側のことを話してしまった唯一の相手
陽乃「はぁ……付け込まれたわ……」
身も心もボロボロだったとはいえ
聊か気を許し過ぎたかもしれないと陽乃は思って、薄く開いた瞳でどこかを睨む
- 981 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 20:19:50.33 ID:vJTXdnq1o
-
1日のまとめ(諏訪組)
・ 白鳥歌野 : 交流無()
・ 藤森水都 : 交流有(杏と球子を呼んで、名前呼び、血族)
・ 土居球子 : 交流有(総攻撃、陽乃について)
・ 伊予島杏 : 交流有(総攻撃、陽乃について)
・ 九尾 : 交流無()
√ 2018/08/10 まとめ
白鳥歌野との絆 45→45(普通)
藤森水都との絆 58→62(普通) ※特殊交流
土居球子との絆 55→56(普通)
伊予島杏との絆 62→63(普通)
九尾との絆 64→64(普通)
- 982 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 20:33:18.79 ID:vJTXdnq1o
-
√ 2018年 8月12日目 朝:諏訪
01〜10 歌野
21〜30 九尾
51〜60 杏
81〜90 球子
↓1のコンマ
※ぞろ目 襲撃
※それ以外は通常(水都)
- 983 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 20:35:46.21 ID:ku9Eb8SyO
- あ
- 984 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 20:43:38.73 ID:vJTXdnq1o
-
√ 2018年 8月12日目 朝:諏訪
諏訪に来てから、もう3日目の朝
朝でなくてもいいなら今日で4日目になる
初日に気を失って、それからずっと病院の景色
そのほとんどにいる藤森水都の姿は
今日に限っては、見えなかった
九尾「目が醒めたかや?」
陽乃「九尾……?」
水都でも歌野でもなく
球子たち諏訪の勇者の誰でもない、女性
金色の髪に、赤い瞳のその人は、
馴染んだ声色で問ながら、陽乃の頬に触れてくる
九尾「案ずるな。妾がこの場にいても大した負担にはならぬ」
陽乃「それは良いのだけど、どうして」
九尾「主様は妾に問いがあるのじゃろう?」
喉を鳴らすような、笑い方
見た目で言えばとても綺麗な女性の瞳は、つり上がって鋭い
- 985 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 21:48:28.24 ID:vJTXdnq1o
-
九尾「あの小娘共の力は有限では無かろう。しかし、安心はできぬな」
陽乃「普通に使えるんでしょう?」
九尾「四国との通信があるじゃろう? あれが有効ならば、小娘共も問題なく力を使えるはずじゃ」
四国と諏訪の通信技術
あれは神の力を織り交ぜた普通ではない方法で行われている
それが四国の神々と球子達の架け橋となって、
力を供給してくれるはずだと九尾は言う
しかし、今はそれが乱れている状態で、より一層酷くなっていると言う話がある
だから安心はできないのだ
九尾「主様の目的を達成するならば、小娘共は勇者としての力を一時的に喪失する可能性はある」
陽乃「そんな話……」
九尾「圏外とやらは知らぬが、力の供給が足りておらぬとは思わなんだ」
くつくつと喉を鳴らすように笑うと
わざとらしく手の甲で口許を隠す仕草を見せて、細めた瞳で陽乃を見る
九尾「通信だけならば、妾でどうにでも出来るが」
陽乃「……本当に?」
九尾「通信に用いる力を強制的に書き換えて安定させるだけじゃからのう……妾にも出来ることではある
向こうに上里ひなたを残しておるじゃろう? あの娘が場におらねばならぬが」
- 986 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 21:56:57.99 ID:vJTXdnq1o
-
ひなたに授けた加護もまた、九尾の力だ
それが通信設備に接することで同じく接した九尾と力を繋ぎ合わせ、
織り交ぜられている神々の力の代替とするのだと言う。
もちろん、それでも陽乃には多少の負荷がかかることになるが、
万全であれば、それほど大きな負担ではなく
少し疲労感を覚えるという程度らしい
九尾「じゃが、問題は妾の力を織り交ぜたからと言って、小娘共に力の供給が出来るとは限らぬということじゃな」
陽乃「出来るかもしれないし、出来ないかもしれないってこと?」
九尾「運次第。と言うやつじゃな」
楽しそうに九尾は笑うけれど、全然笑える話ではない。
通信が出来なくなるだけなら良いが、
それによって球子たちが戦えなくなるというのは大問題だ
それもまた絶対ではないらしいが、
その可能性があるという時点で……不安が残る。
総攻撃を乗り越えても、四国に戻れないかもしれないのだ
1、対策は?
2、ねぇ、白鳥さんはどうなの?
3、通信、回復させましょ
4、みんなを呼んできて貰えないかしら
↓2
※4は昼使用
- 987 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 21:59:39.54 ID:ku9Eb8SyO
- 3
- 988 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 21:59:48.38 ID:pHS3jJ9AO
- 3
- 989 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 22:32:49.22 ID:vJTXdnq1o
-
陽乃「通信、回復させましょ」
九尾「良いのかや?」
陽乃「ただ音信不通になるよりはましだわ」
通信を回復してもしなくても
球子たちの力が使えなくなる可能性はある
四国とのつながりが完全に断たれてしまうのなら
通信を回復しない方が、そのリスクは高いと言える
陽乃「……一応、みんなには話すべきだとは思うけどね」
幸いにも、
ここには大社という組織が存在していない
歌野も水都も球子たちも協力的だ
可能性があるならと、承諾してくれるに違いない
だが、問題は向こう側だ
陽乃「上里さんって、確か大社預かりよね?」
九尾「うむ。そう言う話じゃったな」
陽乃「戻ってきてると思う?」
九尾「思わぬな」
- 990 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 23:09:40.77 ID:vJTXdnq1o
-
諏訪側の説得は容易いが、四国側の説得が簡単ではない。
現状、すでに通信は乱れているという。
伝わるまで繰り返して、若葉にひなたを連れてくるよう求められたとしても
若葉がひなたを連れ出せるように説得するのは難しい
今、四国のどこかに陽乃がいるのではないかという話になっているはずだ
ひなたが陽乃に殺されないために大社が匿っているという建前は、今や本音になっているかもしれない
陽乃が四国には居ないことを証明するには、
通信で陽乃が話す必要がある
しかし、通信のノイズを理由にそれを認められない可能性がある
陽乃「悪いことばかり考えていても仕方がないけど、乃木さんに説得して貰うしかないのよね?」
九尾「ふむ……出さねば諏訪を潰すとでも脅すかや?」
陽乃「……それなら、みんなには話せないわね」
絶対に反対される
水都はもちろん、球子や杏にも
歌野は……どうだろうか。
演技だからと説得することは可能だろうか?
いや、難しいだろう
- 991 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 23:51:55.63 ID:vJTXdnq1o
-
陽乃「どうやって上里さんを連れてきてもらうか、考えた方が良いわね」
九尾「主様が考える必要はなかろう」
陽乃「それはそうなんだけど……」
お願いする手前――じゃなくて。
陽乃「スムーズに話を進めたいじゃない」
九尾「ならば、やはり脅せばよい」
陽乃「私は良いけど、みんなが許さないでしょ」
向こうに戻ったとき、また一段と陽乃の立場が悪くなる
今以上に悪くなるのかと言う疑問はあるけれど、
だとしてもみんなが許してはくれないはずだ
九尾「黙らせればよいではないか」
陽乃「貴女はまたそうやって……」
九尾「惑わせばよい」
陽乃「………」
九尾の手段が一番早い……かもしれない
ただ、それを聞くのは若葉だ
その若葉の言葉を大社が鵜呑みにしてくれなければいけないのだ
陽乃「とりあえず、話してからになるわね」
ひなたを連れて来させる方法を検討して
らちが明かなそうなら――九尾の言うやり方
というのが一番だろうと、陽乃は困ったようにため息をついた
- 992 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 23:53:37.61 ID:vJTXdnq1o
-
√ 2018年 8月12日目 昼:諏訪
01〜10 歌野
34〜43 杏
67〜76 襲来
87〜98 球子
↓1のコンマ
※ぞろ目 襲撃(悪)
※それ以外は通常(水都)
- 993 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 23:56:05.03 ID:ku9Eb8SyO
- あ
- 994 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 23:57:06.28 ID:vJTXdnq1o
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 995 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/15(月) 00:03:50.14 ID:YOQqXu37O
- 乙
陽乃さんに負担や気苦労が次々と襲ってくるなぁ
とにかくみんなと相談しないと
- 996 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/15(月) 21:35:47.65 ID:YUZDJJSio
- では少しだけ
- 997 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/15(月) 21:36:46.72 ID:YUZDJJSio
-
√ 2018年 8月12日目 昼:諏訪
歌野「だいぶ元気になったみたいで、良かったわ」
陽乃「ええ……おかげさまで」
ここに来てからずっと入院、安静、付きっ切り介護
一回悪化させたせいもあるけれど、ここまで過保護にされていては、
休まる以外にはないだろう
もっとも、手足が動かせず水もろくに飲めないのだから当然ではあるが。
陽乃「それで、どうしてここに?」
歌野「久遠さん一人じゃ食事もできないって聞いたから」
陽乃「あなた達が来なくたって――」
歌野「そうね。看護師さん達が手伝ってくれる。けど、手伝いたかったの」
歌野はそう言いながら、
新しく用意されたスポーツドリンクを飲み器に注ぐ
水かお茶かスポーツドリンクかで選んだ一つ
風邪を引いたときなどに良く見たそれは、むしろ今の陽乃には適しているそうだ。
歌野「個人的に話したいこともあったから」
陽乃「……それほど親しい中でもなかったと思うけど」
いや、親しくないから話があるのか、
それとも藤森水都から何か話を聞いたのか。
陽乃が少し考えつつ歌野に目を向けると、笑みが返ってくる
歌野「少し飲む?」
陽乃「じゃぁ、少し」
水都ではなく歌野というのが少し違和感があったけれど、
飲み物の流し方は、不思議と歌野の方が丁寧で優しく感じられる
歌野が水をやり慣れているというのが、理由だろうか
- 998 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/15(月) 21:39:13.41 ID:YUZDJJSio
- 次スレ続きはこちら
【安価でのわゆ】久遠陽乃は勇者である【3頁目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1615811898/
- 999 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/15(月) 21:41:14.09 ID:00N4qW91O
- 乙
- 1000 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/15(月) 21:46:09.43 ID:wGMuDTc2O
- 了解
- 1001 :1001 :Over 1000 Thread
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