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【安価でのわゆ】久遠陽乃は勇者である【2頁目】

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702 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/24(水) 21:53:11.64 ID:jDukJghDo

陽乃「死なないためには、常に最善を尽くすこと。手を抜くなんて死にたがりのすることだわ」

杏が死んでほしいと思っているなら話は別だ。

けれど、話を聞く限りでは杏はそんなことなど毛頭考えていない

寧ろ、死んでほしくないからこそ物申している。

球子は顔をしかめたが、反論はしない。

いや、出来ないが正しいだろうか。

何も言わない杏を見ると、球子は口を開いた

球子「そりゃそうだ。油断大敵……だったっけ」

杏「でも、久遠さんの場合は力を使うこと自体が死にたがりに通じているのでは?」

陽乃の言葉に一理ある。

だがそれでもと、杏は首を横に振った。

化け物相手に手加減するのは死にたがりの愚行

けれども陽乃の力は身を滅ぼす諸刃の剣

杏「……久遠さんが戦わなくていいくらいに強くなればいいですか?」

陽乃「そうね……私が戦わなくてもいいならそれが一番ね」

陽乃の力は最終兵器

バーテックスと戦うのはほかの勇者5人に任せて、

陽乃は進化体に備えて温存……なんてことが出来るのが理想だろうか。

杏「久遠さんの代わりを、諏訪の勇者様が担うことは出来ないかな……」

球子「次元が違うからなぁ……でも、普通のあの、白丸いバーテックス相手なら出て来なくても問題なくなるんじゃないか?」
703 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/24(水) 22:15:05.39 ID:jDukJghDo

杏「なら、是が非でも諏訪から四国に移送したいな……」

陽乃「諏訪の生存者がそれを望まないと無理だと思うけど」

球子「ん〜……交渉次第だろ。たぶん」

球子はそう言って、バーテックスがいなくなった周辺を見渡す。

ついさっきまでバーテックスが住処としていた場所。

球子の爆撃にも似た一撃によって多くの建物が倒壊したが、

それがなくても荒れ地となっていた長野の町

四国に比べて酷く小さく、貧弱と言われた結界

いつ壊されるかも分からない結界の中にいるよりも、

辿り着けさえすれば、今しばらく生きていくことのできる四国に行きたいという人は少なからずいるはずだ。

いや……そうとは、限らないだろうか?

球子「とりあえず、早く結界の方に行くぞ」

杏「そう、だね」

陽乃「ふぅ……」

四国から諏訪までの九尾の顕現

そして、今さっきの戦闘

力を使ったことによる負荷を感じる

球子「ここからは歩くか?」

陽乃「平気よ。気にしないで」

九尾に跨り、球子と杏も同じように引き上げてまた走る

そうして――九尾のおかげで半日程度で結界の中へと辿り着いた
704 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/24(水) 22:20:58.37 ID:jDukJghDo

↓1コンマ判定


01〜00 (00=100)

九尾+10、中力+20

※計20〜50でダメージ小
※計51〜70でダメージ中
※計71〜100でダメージ大
※100以上はアウト
705 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/24(水) 22:22:36.68 ID:pzoP6hMm0
706 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/24(水) 22:27:16.42 ID:7nveebhUO
あっぶねえ
707 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/24(水) 22:43:25.92 ID:jDukJghDo

√ 2018年 8月9日目 夕:諏訪


九尾に跨ったまま入るのはと、

その直前で九尾を隠して歩きで結界の中へと入る

杏「あっ……」

「おや……見ない顔だねぇ……」

諏訪までの道中、人の気配は全くしなかった。

崩れそうな建物、崩れた建物

割れたアスファルト、無造作に伸びた雑草

以前は人がいたはずなのに、

すっかりもぬけの殻となってしまった世界

それらを見てきたからこそ、

ここまで来てようやく、自分達以外の人の声を聞いた球子と杏は思わず涙を零しそうになる

「ま、まさか外から来たのかい?」

杏「はい……えっと、その……ここに勇者様がいると聞いたのですが」

「それなら神楽殿の方に――!」

見たこともない少女たちの登場に共学を隠し切れていなかったおじいさんの目が、より見開く

悍ましいものを見てしまったかのような、血の気が失せていく顔

何なのかと困惑する球子は声をかけようとして――

陽乃「ごぷっ……ぁ……はっ……ははっ」

すぐ後ろで、あからさまにヤバい声が聞こえて、振り返る

口元を押さえる手は真っ赤に汚れて、目元も赤く

空気と共に吐き出されているのか、指の隙間から血しぶきが飛んで……陽乃の体が崩れ落ちる

杏「久遠さん!」

杏の悲鳴にも似た声に、陽乃は何も返せなかった
708 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/24(水) 22:45:36.05 ID:jDukJghDo

では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


68(コンマ)+30(九尾+戦闘)=98
100は越えていないので死にはしません
709 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/24(水) 22:55:30.16 ID:csA3/lWCO

陽乃さん早くも倒れてしまったか…
総攻撃翌来るまで絶対安静だな
710 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/25(木) 00:23:52.10 ID:E/FBUjIiO

まあひとまずは長野でゆっくりしよう
711 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 20:34:08.57 ID:M/BybS93o
では少しだけ
712 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 20:34:41.70 ID:M/BybS93o

√ 2018年 8月9日目 夕:諏訪


夏の陽射しも傾き始めるころ、

諏訪湖の近くにある病院の一室に勇者が集まっていた。

元から諏訪で勇者として活動していた白鳥歌野

歌野を補佐している巫女である藤森水都

四国から来た伊予島杏と土居球子

そして……諏訪に到着してから体調を崩し、今は眠りについている久遠陽乃

杏は陽乃の傍のパイプ椅子に腰かけ、雲ってしまっている酸素マスクを見つめる

杏「……どうして」

球子「昨日、会ったときからヤバそうだったからなぁ……」

瀬戸大橋の付近にある展望台で陽乃を見つけた時のことを思い出して、球子は首を振る。

あの疲労感が壱日で回復したとは思えない

そこに九尾の顕現と戦闘

そこから休まずに結界内までの移動

それらがまとまってのしかかってきたのだとしたら、

ああなるのも無理はないのかもしれないと球子は考えて、顔をしかめた

陽乃は手で押さえながらも血を噴出して崩れ落ち、気を失って

それでも止まらずに陽乃は口や目から血を流し続けた。

血反吐を吐くと陽乃は自己申告していたが、

まさかあそこまでとは思っていなかったのだ

球子「……切り札だよなぁ」

歌野「……えぇっと、そろそろ話を聞いても良いかしら」

眠ってしまっている仲間を気にする気持ちを察しつつ、歌野は切り出す
713 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/25(木) 20:40:00.84 ID:bZyNQFZaO
うたのん達も来たか
714 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 20:43:25.09 ID:M/BybS93o

歌野「四国の勇者である乃木さんからこっちに勇者が来るって話は聞いてたけど……何があったの?」

杏「久遠さんに関しては力を使う代償のようなものなので、これと言って大きなことはありませんでした」

道中に生存者は見られなかったこと

点々とバーテックスの存在を確認しており、諏訪湖周辺の一団を潰してきたことを杏は話し、

もし、希望があれば諏訪から四国に全員を護送するつもりもあるということを伝えた。

もちろん、

それなりのリスクがあることと、全員が生きたままたどり着ける保障がないことも含めて。

だが、四国での陽乃の扱いは流石に伝えられない。

歌野「そっか……やっぱり、外はもう」

水都「うたのん……どうする?」

歌野「ん〜……とりあえず私達が勝手に決めて良いことじゃないと思う」

歌野は少し考えて、答える

歌野「それに、もし一人でもここに残りたいって人がいるなら……ここから離れるわけにはいかないわ」

水都「でも……」

水都は言い淀む。

正直、諏訪はもう限界が近い。

4つあった結界の要である御柱も、その内2つがすでに破壊されてしまっている。

歌野はかなり頑張っているけれど、3つ目が破壊されるのも時間の問題だろう。

そして、結界が破壊されれば安住の地は無くなる

出来るならここから出て新しい場所を探した方が良い

昔の神託では、国土を取り戻していけるという話だったけれど、

でも、もう、そんな希望が残されているようには見えない

水都「とりあえず、みんなを集めて四国への移住について話してみよっか」

歌野「そうね、そうしましょう」

病室と言うのもあって、歌野は少しトーンダウンして同意すると

陽乃を見て、目を細めた

歌野「乃木さんからは、とってもデリケートって聞いてたけど想像以上ね。本当に戦えるの?」

杏「一騎当千の力はあるんです。ただ、その分の負荷が重くて無理すると今回みたいになっちゃうみたいで」

歌野「そっか、まぁ回復するまでは安静にしてて貰った方が良いわね」
715 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 20:54:48.17 ID:M/BybS93o

球子「そういえば、若葉からどんなふうに話を聞いてるんだ?」

歌野「近々、四国の勇者がそっちに行くと思うから、受け入れてやって欲しいって言われたわ」

歌野はなぜだか困った様子で、水都を一瞥する

球子「何か問題があったのか? 来たらダメだったとか」

水都「えっと……そう言うわけじゃないんですけど」

水都も少し困惑した様子で、

小さくため息をつくと姿勢を正して……視線だけは下向きだった

水都「その連絡が今日の定時連絡で来たばかりだったので、数日後かと思ったんです」

歌野「今日出発だから、5日くらいかかるかもって話だったのに当日中でしょ? もう、何が何やら」

球子「あぁ……」

杏「それはそうですよね……」

その最速到達の理由は、陽乃の九尾だ

瀬戸大橋方面から結界外に出て分かったことだが、

まず車での移動は無理だ

飛行機などでなければ、道中で動けなくなる。

仮に飛行機があっても、軍用のなにがしかでもなければバーテックスに撃墜されかねない

つまり、1日2日で到達するには勇者であっても不眠不休でなければならない

それを、陽乃達は半日で踏破したのだから驚くのも無理はなかった。

杏「それも、久遠さんのおかげなんです。力の一つを使って、ここまで運んでくれました」

歌野「それなら――」

杏「いえ、数人しか運べないと思います。さすがに数十人一度は……」

歌野の言葉を遮って、杏は首を振る

九尾に全員を一度に運んでもらうのは不可能だ
716 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 21:07:07.03 ID:M/BybS93o

歌野「無い物ねだり。ね。それと周囲にバーテックスが展開してるって言うのが気になるわね」

杏「もしかしたら、総攻撃をしかけてくる可能性もあります」

球子「久遠……ん、陽乃が万全なら、総攻撃だろうと凌ぎきれる可能性はある」

水都「でも、この人は力を使う負荷が重いんですよね? だったら……あてにはできないんじゃ」

水都の言い分はもっともだ

いや、戦力としては十分に宛に出来る

陽乃が本気を出してくれるなら、もしかしたら一人で総攻撃を耐え凌いでくれる可能性だってなくはない。

けれど、その場合は確実に陽乃が死ぬ。

総攻撃において陽乃にどれだけの負担がかかるのかは分からないが、

それでもかなりの重症に陥るのは免れないと言える

球子「昨日、すでに疲れ切った状態だったからなぁ……それがなければここまでじゃなかったと思うぞ」

杏「諏訪への攻撃の程度を知りませんが、通常の襲撃は私たちで対処して久遠さんには総攻撃まで大人しくして貰うべきだと思います」

歌野「今までも私一人だったし、3人に増えるならもうイージーね。それもベリーな」

簡単なことだと歌野は笑って言うが、水都は少し怪訝そうな表情を浮かべていた。

歌野は実力がある

もちろん、実績だって申し分ない

しかし、それでもバーテックスの襲撃によってそれらが破壊されないとは限らないのだ

ネガティブなのは分かっている。

水都「あんまり過信しちゃだめだようたのん。何があるか分からないんだから」

けれど、不安だった

それは杏と球子の二人が戦力として加わってきてくれても拭いきれない。
717 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 21:16:30.39 ID:M/BybS93o

√ 2018年 8月9日目 夜:諏訪

↓1 コンマ判定

0 00 最悪
1、7、4 お目覚め
3、6、2 歌野
5、9、8 球子

※ぞろ目特殊(00以外)
718 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/25(木) 21:18:08.54 ID:bZyNQFZaO
719 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 22:01:45.66 ID:M/BybS93o

√ 2018年 8月9日目 夜:諏訪


陽乃「う……げほっ……けほっ……」

目を開くよりも先に、咳き込む

喉の奥から血があふれ出して、

真っ白な枕を汚す代わりに酸素マスクの中を赤黒く満たしていく

身体の内側から感じる熱い痛みは変わらず、

一度咳き込めば、その反動でナイフがより深く刺さったかのように痛みが増す

陽乃「あ゛っ……い゛っ……ぁっ……ごぷっ……」

手が動かない

足も動かない

吐血する体の痙攣だけが、しばらく続いて

すぐそばにあった心拍数を計測する機械がけたたましくアラートを発する

陽乃「っ……こ、こって……」

血の匂い、血の味、霞む視界

自分の居場所でさえまともに理解も出来ないまま、

慌ただしい足音が部屋に駆け込んでくるのをただただ聞いていることしかできなくて。

「久遠さん? 久遠陽乃さん?」

陽乃「ぅ……」

看護師らしき人の呼び声にも、返せる言葉がなかった
720 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 22:37:34.17 ID:M/BybS93o

目を覚ましてから1時間ほど経過した頃、

医師による処置と検査を終えた陽乃は、体を起こすことが出来るくらいには回復していた。

ベッドから降りた途端に膝から崩れ落ちるくらいには、力を失っているけれど。

「こちらをどうぞ」

看護師から渡されたお茶を飲み、

陽乃はふっと一息ついて、もう一口

「喉の痛みはどう?」

陽乃「少し、痛むけど」

「声も少し枯れているわね……」

看護師は心配そうに言うと、陽乃の前髪の部分を払う

看護師の女性は陽乃よりも二回りほど年上だ

子供がいれば、陽乃と同じほどの年齢でもおかしくない

だからか、看護師の瞳はとても優しいものだった

「声は極力出さないようにね。でも、咳き込むのを我慢したらダメよ?」

陽乃「あり……っ……げほっ……」

「……ごめんなさいね」

話しかけてしまったせいだと、

看護師は申し訳なさそうに陽乃の背中を撫でる
721 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 23:14:10.29 ID:M/BybS93o

「そうそう。今はまだ万全ではないから、他の勇者様は呼んでいないの」

陽乃「ん……」

陽乃が目を覚ましたことについてはすでに連絡しているのだが

動けない上に長く話せない陽乃を友人に囲ませるわけにもいかない為

早くても明日の面会にして貰うようにしていた。

それで来られないみんなが、

陽乃には会いたくないなんて勘違いされてはと、看護師は説明をする

「だから、安心してね」

陽乃「………」

ここは四国ではなく、長野だ

3年前の大規模な襲来によって

四国から諏訪への連絡手段は勇者間の連絡を除いて、喪失している

そのため、

久遠陽乃と言う人物が一体どのような人間なのか

そして、四国ではどのような境遇にあるのか

そういった情報は一切伝わってきていない

だから……陽乃に対しても敵意も憎悪も、警戒心さえもない

そしてなにより、好意的だ

「あまり無理してはいけないわ」

陽乃はそれに言葉を返すことなく頷く

礼は言いたいけれど、言って咳き込めば心配させるだけだ

「今日はゆっくり寝るのよ? 無理にでも眠らなきゃだめだからね」

そう言って陽乃から離れた看護師の女性は、

出る前にもう一度陽乃に目を向け、手を振って出ていく

本当に、好意的だ


1、休む
2、九尾を呼ぶ
3、体を動かす

↓2
722 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/25(木) 23:15:46.95 ID:E/FBUjIiO
1
723 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/25(木) 23:19:10.32 ID:lpmF/gAP0
1
724 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 23:20:48.71 ID:M/BybS93o

ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
725 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/25(木) 23:24:56.76 ID:bZyNQFZaO

陽乃さんにとってはやっと楽園にたどり着いた感じがする
あとは元気になってうたのんと対面したいな
726 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/26(金) 00:12:43.27 ID:grRhFOLYO

今はとにかく体調戻さないとな
727 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 20:04:58.62 ID:i2IEf3Bco
では少しだけ
728 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 20:05:37.83 ID:i2IEf3Bco

看護師が病室からいなくなると、途端に静かになる

目を覚ましはしたがろくに動く事が出来ず、

また悪化するかも分からないため、

ベッドサイドモニタが稼働している電子音は相変わらず聞こえているが。

陽乃「はぁ……っ……」

意識していなくても口の中に溢れてくる唾液

それを飲みこむと、動く喉の痛みにえづきそうになる

陽乃「………」

看護師はゆっくり寝るべきだと言っていたし、

処置と検査を行ってくれた医師からも、暫く安静にしているようにと言われた。

そのあとでベッドから降りようとして膝から崩れ落ちたので、

本当に何にもできない

球子達勇者のみんながお見舞いに来ることが出来なくても

陽乃の傍には常に九尾がいる。

姿を出させるのは力をより多く使う必要があるために出来ないが

影の中に潜む九尾と話をするのは可能だ。

とはいえ、それも今は声と喉の調子が悪くて出来ない。

やっぱり寝るしかないかな。と、陽乃は目を瞑る
729 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 20:13:31.12 ID:i2IEf3Bco

3年前、陽乃は護るために力を得て多くを失い、けれども必死に守れるだけを守った。

まだ小学生の小さな手を伸ばし、

取りこぼしてしまったいくつもの命を目の当たりにして傷つきながら、苦しみながら

それでも、今やれるだけのことをやろうともがいて、もがいて――そうして、生贄になれと捧げられた。

仲の良かった従姉妹が目の前で喰い殺され、庇ってくれた父が殺され、

ただ一人、母だけしかその手の中には残らなかった。

命懸けで母を守り、戻った世界は陽乃を受け入れなかった。

それは、陽乃が多くの命を取りこぼしてしまったからだ。

目の前で頭部をかみ砕かれた女性を救えていれば、

伸ばされた手を取り引き出すことが出来ていれば、

もう少し早くたどり着き、人間を食い荒らすバーテックスが落ちるよりも先に手を打てていれば

きっとそうはならなかったはずだ。

陽乃「っ……」

それは無理な話だ。

出来たかもしれない。なんて話ですらない。

努力と運があっても、それはどうしようもなかった話だ。

たった一人で四国という、一人には広すぎる地を駆けまわっていたのだから。

けれど――化け物を殺せる化け物にはそれが出来たはずだと誰かが言った。

なぜ、どうして、と……恨みが生まれた。

生贄を拒み、母と共に生き残ったことが人類への裏切りとされ、

それこそが惨劇の引き金であると言われ、憎まれ、疎まれ、死を願われるようになった。
730 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 20:30:15.39 ID:i2IEf3Bco

その一方で諏訪にいる人々はこれからの陽乃が何かをしでかさない限り、

その存在を疎むことも憎むこともない。

けれど、この諏訪という小さな世界はもうじき壊れてしまう。

九尾の力のおかげか

それとも、今すでに満身創痍に陥るほどに身体が神の祟りに冒されているからか

諏訪を守る結界がどれほど傷つき、脆くなっているのかが感じられる。

球子と杏の二人が参戦することによって、

一回一回の襲撃による被害は大幅に軽減されるはずだけれど

だとしても少しずつ傷ついていき、やがて一つ、また一つと御柱は砕けて侵入を許すことになる

正直に言ってしまえば、

陽乃は四国に母を残しているという一点を除いて、戻る理由がない。

一度は許しかけた大社も、人一人殺めたとあってはついに許しておくことが出来なくなっただろうし、

人々に蔓延していた言われもない憎悪はその事実を持って真実となり、陽乃を潰しに来ることだろう。

味方であるべき勇者だってそうだ。

若葉は迷っている

けれども、千景は"殺すべきだった"と激怒しているはずで、

人を殺めた陽乃を、高嶋友奈は止めないわけにはいかないと考えている。

話しが聞きたい。なんて言いながら陽乃の前に現れて立ち塞がり、何が何でも連れ帰ろうとするはずだ

だから、きっと。

願い、叶うのであればこのまま諏訪に永住するのが陽乃にとって最も幸せな道なのだろう。
731 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 20:48:38.57 ID:i2IEf3Bco

諏訪は陽乃にとって、守るだけの価値がある世界だと言えるかもしれない。

けれど、それを守れるだけの力があると陽乃は思えない。

誰一人として死なせることなく、守り抜くだけの力があるとは思えない。

だから陽乃は自分を勇者とは言いたくないし、人々を守るだなんて口が裂けても言いたくはなかった。

約束しなくても、守れなければ恨まれる

なのに、約束なんてしてしまったらより一層その怒りが強くなるからだ。

医師の男性も、看護師の女性も

みんながみんな陽乃を気遣い、優しく接してくれた。

大社に軟禁されていた時とはまるで違って、一人の人間として扱ってくれていた

それが一変してしまう可能性だって秘めている。

陽乃「ぅ……うぅ……」

陽乃は "守れないのが怖くて" 仕方がなかった

この場所は間違いなく、守っていきたいと思える世界だ。

けれどそれを守ることができなかった時が、たまらなく恐ろしかった。

手のひらを返され、お前のせいだと憎まれ、恨まれ、悪意をぶつけられるのが怖かった。

一度経験してしまった恐怖を、陽乃は忘れられない。

人々から向けられる憎悪と悪意

それの宿った瞳を忘れることが出来ない。

初めから嫌ってくれていれば、それで終わる。

互いに何もなければ、守れても守れなくても傷なんて負わないからと誤魔化せるから。

だから、陽乃は決して人を近づけたいとは思わなかった。

今までも、これからも。

陽乃はそう思いながら、固く目を瞑る

寝よう、寝ようと……必死に、目を閉じ続けた
732 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/26(金) 21:03:20.57 ID:embYSk5cO
病んでるなぁ…
733 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 21:08:01.00 ID:i2IEf3Bco


↓1コンマ判定一桁 歌野

↓2コンマ判定一桁 水都

※ぞろ目2倍
※絆値+(初期40)
734 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/26(金) 21:08:59.64 ID:embYSk5cO
735 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/26(金) 21:10:13.66 ID:sON9xrkU0
736 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 21:14:54.72 ID:i2IEf3Bco

1日のまとめ(四国組)

・ 乃木若葉 : 交流無()
・上里ひなた : 交流無()
・ 高嶋友奈 : 交流無()
・  郡千景 : 交流無()

√ 2018/08/09 まとめ

 乃木若葉との絆 62→62(普通)
上里ひなたとの絆 56→56(普通)
 高嶋友奈との絆 52→52(普通)
  郡千景との絆 21→21(険悪)


1日のまとめ(諏訪組)

・ 白鳥歌野 : 交流無()
・ 藤森水都 : 交流無()
・ 土居球子 : 交流有(遠征、九尾、戦闘、体調不良)
・ 伊予島杏 : 交流有(遠征、九尾、戦闘、体調不良)
・   九尾 : 交流有(遠征、九尾、戦闘、体調不良)

√ 2018/08/09 まとめ

 白鳥歌野との絆 44→44(普通) 
 藤森水都との絆 52→52(普通) 
 土居球子との絆 55→55(普通) 
 伊予島杏との絆 62→62(普通) 
   九尾との絆 63→63(普通)
737 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 21:19:53.76 ID:i2IEf3Bco

√ 2018年 8月10日目 朝:諏訪

01〜10 球子
21〜30 水都
41〜50 杏
81〜90 歌野

↓1のコンマ

※それ以外は通常
738 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/26(金) 21:21:26.52 ID:sON9xrkU0
739 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 21:53:50.34 ID:i2IEf3Bco
√ 2018年 8月10日目 朝:諏訪


一定のリズムを刻む電子音を聞きながら眠り、

その音を聞きながら目を覚ます。

クリーム色に近い病室の天井を眺めながら、ゆっくりと手先足先へと意識を向けていく

昨夜は上手く伝わりきらなかった感覚も、今は伝わっている

陽乃「っ……」

布団の中から手を出して、顔の前に掲げる

第二関節まで曲げると、震えてしまう

感覚はあるが、力がまだうまく入らないのだ

陽乃「こんなじゃ、戦うなんて不可能ね……」

九尾の力をもってすれば、

こんな感覚なんて無視して戦うこともできるだろう

けれど、その負荷は積み重なって

二度と体が動かなくなる可能性もあるわけで。

今はまだ、そこまでする必要もないだろうと陽乃は布団の上に手を落とす

陽乃「………」

すぐそばのベッドを動かすリモコンを手に取って、上半身を起こしていく

枕を腰のあたりに下げて、支えにする

足を動かすこともできるけれど、骨が軋むような感じがする

冬場の厚い布団だったら、身動き一つ出来なかったかもしれない
740 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 22:27:22.76 ID:i2IEf3Bco

部屋は昨日の夜と同じように静かだ

ただただ、電子音が聞こえるだけの病室

外から入り込む虫の声はあるけれど、それくらいしかない。

端的に言ってしまえば、手持ち無沙汰だった。

陽乃の手元には本もスマホもないし、

病室にはもはや役立たずとなったテレビが設置されているわけもなく。

そもそも、本もスマホも今の陽乃は持っていられない

陽乃「……」

昨日の夜、看護師の女性は目が醒めた連絡だけはしたと言っていた。

時間と陽乃の容態を見て、昨日は様子を見に来ないようにとも。

なら、朝になったら来てくれるものではないかと思うけれど――

陽乃「別に、来なくていいけど」

諏訪の勇者である白鳥歌野

そのサポートを担当しているらしい、藤森水都

2人にはもう、会ったのだろうか。

どこまで話して、どうなっているのか。

陽乃は考えて、息を吐く。



1、九尾を呼ぶ
2、寝ておく
3、イベント判定


↓2
741 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/26(金) 22:35:09.55 ID:sON9xrkU0
1
742 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/26(金) 22:36:08.65 ID:embYSk5cO
1
743 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 22:57:23.15 ID:i2IEf3Bco

では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば、お昼ごろから
744 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/26(金) 23:06:12.82 ID:embYSk5cO

意外にもうたのんよりみーちゃんの方が絆値高くなるとは…
しかし陽乃さん人どころか自分の力すら信用してなくて精神的に深刻だな
745 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/27(土) 00:16:03.57 ID:X3Q55+lLO

相変わらずメンタルが不安定だなあ
746 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 13:47:30.95 ID:FPyLwFj9o

では少しずつ
747 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 13:48:29.45 ID:FPyLwFj9o

陽乃「九尾、いるんでしょう?」

横に伸びる影に向かって声をかける

そこには誰もいないけれど、潜んでいる

陽乃「姿を見せなくてもいいから、色々聞かせて欲しいのよ」

枕元の自分の影を撫でると、

ひそかに揺れて、人の形から狐の形へと歪んでいく。

差し込む光がそうさせているのではなく、九尾が混じっている証拠

『良いのかや?』

陽乃「うん。少しくらいなら話しても問題なさそうだし」

『ふむ……まさか主様があそこまで貧弱とは思わなかった』

陽乃「疲れが溜まってたのよ……たぶん。違うの?」

『いかにも』

そもそも、

かの神―伊邪那美命―を顕現させたことによって、陽乃は体の内側がボロボロになっていた。

それをまた陽乃が持つ別の力を用いて強引に治癒能力を高めて癒したのだ。

ただそれだけの身体で、逃亡し、たった一日休んだだけでの遠征

九尾を呼び続け、力を纏って戦ったのだから

運が悪ければ、癒したばかりの身体の内側がまた酷いことになる可能性があった

そして、

その最悪の結果……いや、最悪の一歩手前になってしまった
748 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 14:12:08.19 ID:FPyLwFj9o

『数日はおとなしくしておく方が良い』

陽乃「そんなに?」

『拳も握れぬ体で、何を成すというのかや?』

陽乃「それはそうなんだけど……」

九尾の声を聞きながら、もう一度手を上げてみる

握りしめるほどの力は出なくて、

球子に押し倒されたときよりもさらに衰弱しているのが分かる

あの時は若葉からの逃走劇なんて言う茶番もあったが

今の状態で窓から飛び出したら受身も取れずに骨折の一つや二つは免れなかったかもしれない。

『昨夜、主様が眠っている間に小娘共が四国への移住を提案しておる』

陽乃「そう……で、答えは?」

『諏訪の娘どもでは決められぬと、言うておったのう』

陽乃「それはそうよね……」

当たり前と言えば当たり前の話だ

歌野がこの場を離れてなお結界が残ったとしても、それを守る人がいなければ容易くバーテックスに食い潰される。

そうなったら、ここに残った人々は殺されてしまう。

だから、歌野は人々の話を聞く

自分が行くからついてこいだなんて、言わない

『良いのかや? あの国に戻る理由など、主様にはなかろうて』

陽乃「お母さんがいるわ」

『あの国に戻るほどの理由では無かろう』

疎まれ、憎まれ、呪われ、虐げられるだけの場所

母がいるというのは、そこに戻るだけの理由にはならないだろう、九尾は考えている。

だが、九尾からしてみれば戻ろうと戻るまいとどっちでもいい

害になる何かしらがあるのなら、排除するだけである。


1、ねぇ。結界はどうにかできる?
2、白鳥さんを呼んでくれない?
3、この体、もう少し早くどうにかできない?
4、みんなが戻りたいって言うなら、戻るしかないでしょうね


↓2
749 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/27(土) 15:05:43.58 ID:EjDNhoNRO
2
750 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/27(土) 15:08:05.82 ID:AteTOpZkO
2
751 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/27(土) 17:42:40.23 ID:IasRBKWBO
752 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 17:49:34.69 ID:FPyLwFj9o

陽乃「ねぇ、白鳥さんを呼んできてくれない?」

『何じゃ。見舞わぬのが気に入らぬのかや?』

陽乃「違うわよ。話、しないといけないでしょ」

球子たちがある程度話してくれてはいるみたいだけれど

陽乃も話しておく必要がある。

球子と杏は陽乃のことについて話していないようだし、

それどころか、四国移住についての話を進めている。

そうするというなら、陽乃にはどうしようもないけれど。

結界についてや、今までの戦い

これからのことなど、

色々と聞いておきたい話もある

陽乃「呼ぶのが難しければ、別に良いのだけど」

『ふむ……呼ぶこと自体は容易じゃな』

陽乃「なら、お願い」

『うむ……よかろう』

陽乃の影が揺れ動いて伸び、

そうして、ゆっくりと薄れて消えていく
753 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 18:01:57.18 ID:FPyLwFj9o

九尾の影が離れてから、

歌野が陽乃のもとに来るまで、時間はほんの数十分しか掛からなかった。

陽乃「九尾……また余計な事……」

自然の声に満ちていた病院の外が急激に騒がしくなり、

病院の中にまでその喧騒は広がって、

そうして――なぜか、水都が歌野の腕を掴んで病室へと引っ張りこむ

水都「連れてきたよ!」

歌野「み、みーちゃんったら……一体全体、どうしたの?」

驚きに戸惑い、肩で息をする歌野と、

凄く張り切っている、諏訪の巫女である藤森水都

水都は陽乃の方を見てとても嬉しそうに手を振っているけれど、

陽乃は、初対面だ

陽乃「えぇっと……」

水都「初めまして、藤森水都です!」

歌野「みーちゃん……なんか、変よ? 大丈夫、えっと……何かあった?」

陽乃「……私が呼んできてってお願いしたの」

とっても元気な水都を一瞥した陽乃は、

困惑を隠せない歌野へと目を向けて、ため息をつく

どれだけの付き合いがあるのかは知らないけれど

藤森水都と言う人物の言動に、白鳥歌野が違和感を覚えているのだとしたら

それはきっと、間違っていない

歌野「呼んできてって……」

陽乃「九尾。貴女、藤森さんの観察不足だわ」

水都「え〜? そうかな? うたのんと二人きりの時はこんな感じだったと思うんだけど」

歌野「ノーよ! 全然違うわ!」

水都「そっかぁ……でも、連れて来れたから、オッケーだよね?」

呼ぶこと自体は容易とは、よく言ったものである
754 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 18:16:16.52 ID:FPyLwFj9o

お茶らけた様子なのは、本当に藤森水都なのか

それとも九尾の悪ふざけなのか、

頭を痛めているような歌野を見た陽乃は、後者だと察して首を振る

陽乃「九尾、もういいから戻って」

水都「何か必要なことがあったら、呼んでねっ!」

そう言い残して、

瞬く間に消えうせる水都を横に見た歌野は、呆然として

おもむろに、陽乃を睨む

歌野「みーちゃんは? 本物のみーちゃんはどこ!?」

陽乃「家にいるか、どこかのお店にいるか、お手洗いか……とにかく、どうにもなっていないはずよ」

歌野を呼んできてとは言ったけれど

こんなやり方をされては、話がこじれるどころの問題ではない

陽乃「大丈夫だから、ほんとうに」

歌野「………」

歌野はしばらく疑わしそうな目をしていたが、

少し考えこんで、軽く頷いてくれた

厳しい表情は、変わらないが。

歌野「あれが、えぇっと……久遠さんの力なの?」

陽乃「私と言うより、私の精霊……って言えばいいかしら。その力ね。惑わすことに長けているのよ」

若葉達がされているように、神々からの加護とは言えない為、

一先ずは精霊として説明する。

ひなたは神獣の類と言っていたので、神の御使いと言っても良かったかもしれない。
755 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 18:31:22.30 ID:FPyLwFj9o

歌野「……体は、もう?」

陽乃「万全とは言えないけれど、話すくらいは問題ないわ」

長々と話し続けると、

また喉の奥に違和感を覚えて吐血するかもしれないけれど

そう易々と血を吐いたりはしないはずだ

……たぶん。

陽乃「朝のうちに面会に来ると思っていたけど、来なかったから呼ばせて貰ったんだけど……平気?」

歌野「ん〜……平気、と、言えば平気。かしら。色々やりたかったこともあったけど」

そう零した歌野は、

別に久遠さんに会いたくなかったわけじゃない、と、首を振る。

歌野「昨日の夜、目を覚ましてもまだ予断を許さない状態だって言うもんだから、早くてもお昼の方が良いと思ってたの」

陽乃「そう……まぁ、別に来なくても良かったんだけど」

歌野「そんなわけにはいかないわ……久遠さんも、勇者なんでしょ?」

陽乃「さぁ? 戦う力はあるけど……勇者かどうかは微妙なところね」

歌野「え?」



1、それで、これからはどうするの?
2、現状を教えてくれる?
3、私、四国には戻るつもりはないわ
4、ここは、守っていけそうなの?
5、私を戦力として数えるのだけはやめて頂戴


↓2
756 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/27(土) 18:43:11.09 ID:QKq5+CeuO
1
757 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/27(土) 18:45:20.96 ID:slGjnfDG0
2
758 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 19:06:13.52 ID:FPyLwFj9o

陽乃「とりあえず、現状について聞かせてくれる?」

歌野「そうね……簡単な説明になっちゃうけど……」

土居さん達に説明したのと同じような話になると前置きした歌野は、

今の四国の現状について、改めて陽乃に話して聞かせた。

元々は4つだった結界の御柱も、今は2つまで減少し、

すでに結界は諏訪湖の東南の一帯を守るのがやっとの状態であること

住民の規模は数十人程度と非常に少ないこと

襲撃は日に日に厳しさを増してきており

近々3つ目の御柱も破壊されてしまう恐れがあること

外部との連絡は、勇者が用いる通信設備でのみ可能であること

それもやや不安定になりつつあること

今は自給自足でどうにか生活を続けていることなど、

四国と比べて、非常に厳しい現実にあることを、歌野は話してくれた。

どうにか明るくしようという声色ではあったが、

その瞳が陰っているのを陽乃は見逃さなかった

陽乃「ならやっぱり、ここの維持は難しいのね」

歌野「ええ。みんなが協力してくれたとしても、日に日に力が衰えていっているらしいから……たぶん」

陽乃「ここで死にたいって人はいるのかしら」

歌野「必ず助かる保証があるわけじゃない。助かっても、すべてを捨てていかないといけない。それが嫌だって人は、やっぱりいるわ」

今なお生きている人の中には、

この地で、大切な人を喪い、弔っている人もいる。

どうせ死ぬなら、そんな相手の眠る場所でともに眠りたいと願うのは、

無理もない話だと歌野は思う。
759 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 19:06:48.11 ID:FPyLwFj9o

では少し中断いたします
再開は21時頃からを予定しています
760 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/27(土) 19:23:35.09 ID:slGjnfDG0
一旦乙
流石に諏訪に残るのは無理そうだな
761 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 21:41:56.54 ID:FPyLwFj9o

陽乃「そういう人もいるのね」

歌野「久遠さんは、違うの?」

陽乃「違うかもしれない」

陽乃に残っている大切な人は、母親だけしかいない。

母親は四国に骨を埋めることになるだろうけれど、

陽乃は特別、そうでなければいけないだなんて思わない。

あんな場所に骨を埋めたくない

あんな場所で自分のお墓を立てたくない

自分のいなくなったあとのそれが、ハンマーでたたき壊されてしまいそうで。

そうなったら、一緒に眠るかもしれない母が可哀想だ

陽乃「ひっそり、どこかで朽ち果てるのも悪くないって思ってる」

歌野「そんな、怖いこと言わない方が良いわ」

陽乃「本気よ」

歌野「………」

陽乃「そう、まじまじ見つめても。本気なのは変わらない」
762 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/27(土) 21:49:58.01 ID:671IIM9qO
お母さんまでいなくなったら本格的にヤバい…
763 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 22:28:54.38 ID:FPyLwFj9o

歌野の視線は訝しむようなものではなく、

とても心配してくれているものだった。

陽乃が演技派の少女でなければ、

今浮かべている笑みは本物だということになる。

本気で、

人知れず朽ち果てることを考えていると言うことになる。

それは、あまりにもあんまりだ。

陽乃「そんな顔、させるつもりはなかったのだけど」

歌野「久遠さん……」

陽乃は優しい勇者を一瞥して首を横に振る

その優しさは、有難迷惑だった

歌野「久遠さん。諏訪防衛の戦いは、基本的に私達で対応するわ」

陽乃「なるほど……私の力のことも聞いたわけだ」

歌野「使えば使うほど蝕まれていくって言ってたのだけど」

陽乃「事実よ」

歌野「だったら、何か大きな戦いでない限り久遠さんは戦わないで欲しいの」
764 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 23:04:23.99 ID:FPyLwFj9o

陽乃「2人に言えって言われた?」

歌野「ううん……久遠さんの惨状を見て聞いた」

陽乃が着ていた服を血塗れにし、それでもなお吐血している姿を見た

その始まりを目撃してしまった住民の話を聞いたりもして

それがどれだけ酷いものであるのかを知った

あれは、些細なことで起こっていい現象ではない

陽乃「あのおじいさん、トラウマになってたりしない?」

歌野「ええ、大丈夫だったけれど……凄く心配していたから目を覚ましたって教えたら凄く安心していたわ」

凄く、凄く。

それがもしも、四国の人だったなら。

陽乃が吐血しての入院は吉報で、

回復してしまったことは凶報となったことだろう。

歌野は小さく笑って、陽乃の震えている手を握る

歌野「私も……凄く心配したわ。もちろん、みんなも」

陽乃「私、貴女にとってのヒーローか何かなの?」

歌野「どういうこと?」

戸惑う歌野から目を背けて、目を閉じる

陽乃「ちょっとだけ、貴女が小説のヒロインの立場に思えただけ」

歌野「あははっ、なにそれ! 久遠さん、ユニークね!」
765 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 23:45:13.89 ID:FPyLwFj9o

歌野はとても明るい性格だった。

球子に通じるものがあるほどの賑やかさ

けれども、いや、球子もそうだが

陽乃のことを気遣って、大騒ぎと言うレベルには達しない

歌野「お願いね」

陽乃「いずれにしても、暫くは何にもできないわ」

手を握り返せないし、

ベッドから降りて歩いていくこともできない

それだけ衰弱しきってしまった体

意識があって、言葉を発せて、温かくて、中身が綿以外のもので。

そんな違いがあるだけの、人形のような何か。

なんて……言ったら怒られるだろうか。

陽乃「大人しくしておくから安心して」

歌野「治ってもよ」

陽乃「……それは、あなた達の頑張り次第だと思うわよ」

陽乃はそう言って、小さく息を吐く

そんな、疲れを感じる陽乃を歌野は優しく見守る

歌野「さっきの、良く分からないけど……でも、久遠さん達は私たちのヒーローだと思うわ」

独りで守らないといけなかった3年間

ずっとこのままで、最終的には壊されてしまうのではないかという不安が無いと言えば嘘になる。

だから

歌野「来てくれて、嬉しい……ありがとう」

歌野は気遣いではなく本心で、そう言った。
766 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 23:47:04.32 ID:FPyLwFj9o

√ 2018年 8月10日目 昼:諏訪

01〜10 球子
41〜50 杏
81〜90 水都

↓1のコンマ

※それ以外は通常
767 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/27(土) 23:48:07.99 ID:671IIM9qO
768 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 23:53:35.15 ID:FPyLwFj9o

ではここまでとさせていただきます
明日も可能であればお昼ごろから
769 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/28(日) 00:02:27.54 ID:G4/m29cSO

うたのんの暖かい言葉を聞くと諏訪の人たちを是が非でも助けてあげたくなるなぁ
それにしても先祖も子孫もベッドの上で満身創痍な場面が多いこと多いこと
770 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/28(日) 06:41:18.61 ID:cUdHBzkQO

四国をあんな場所と呼ぶとは相当トラウマになってるな
771 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/28(日) 17:33:14.63 ID:iWKJhhBSo

では少しだけ
772 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/28(日) 17:33:56.76 ID:iWKJhhBSo
√ 2018年 8月10日目 昼:諏訪


連行されてきていた歌野も畑の手入れの続きをしなければいけないと席を外して、また一人

もしあれならほかに人が来るまで一緒にいてくれると言ってはいたけれど、それは断った

他にやることがあるなら、そっちを優先して欲しいと言ったのは陽乃だ。

歌野は優しい

球子たちと同じように、陽乃を気遣ってくれている

でもだからこそ、

陽乃にはそれが重かった

その優しさを与える理由に、自分が値するだけの何かを差し出せるとは思えない

歌野は、小規模の戦闘には参加しなくていいと言ってくれた

大規模な……それこそ総攻撃レベルの戦いの為に温存しておきたいらしい

陽乃「過度な期待は困るのだけど……」

総攻撃であっても、

陽乃がいればどうにかなると思われているのだとしたら、

それは誤解だとはっきり断じておくべきだろうか。

全力で力を使えばそれなりの貢献は出来るだろうけれど、

そこまで大きな期待をされても困ってしまう
773 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/28(日) 17:47:13.94 ID:dhmr8vcEO
きてたか
774 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/28(日) 18:36:27.82 ID:iWKJhhBSo

諏訪の結界は残り二つ

一つが壊されても、もう一つが壊されなければ完全な侵攻にはならないらしいけれど

一つ壊されたら結界の範囲はまた小さくなる

自給自足の生活をしている諏訪の住民にとって

生活区域がまた狭まるというのは死に直結するような問題だろう

なによりここまで来て

さらにバーテックスの侵攻を許してしまうという精神的なダメージは許容できるものではないと思う

それを考えると、

諏訪の住民は決死の思いで四国に逃げると考える可能性はある

ここで死ぬつもりの人々と

四国に行く人々

そう別れることになったら、歌野はどうするのだろうか

歌野のことだ、自分は諏訪に残り

球子たちに四国に行く人々を護衛して貰おうと考えそうだと、陽乃は思う
775 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/28(日) 19:36:08.23 ID:iWKJhhBSo

陽乃「……結界は残り二つ、ね」

結界の外を見ても、

ひと固まりだけで40近い数いるバーテックスの一団がかなりの数ある

独りで防衛しきれるような数ではなかったし

あれの半分でも攻めてきていたら結界が持たなかったはず

球子と杏が参戦しても、

結界の一つが破られてしまう可能性はある

時間がない。

はたして、総攻撃までに体の調子を取り戻せるのだろうか

陽乃「結界の要がどうなってるのか知りたいけど……」

知ってどうにかできるとは思えないが、

もし本当に九尾が言うように神様に愛されているのなら、

この地域の神様にも何らかの干渉が出来るかもしれない。

陽乃「諏訪大社……諏訪大社って、祭神は誰だったっけ……」

神社の繋がりで色々と学んだ覚えはあるけれど、

それから離れて3年

色々あって、記憶があいまいだ

自力で動ければ、調べたりもできるが、今は無理だ



1、九尾を呼ぶ
2、休む
3、イベント判定

↓2
776 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/28(日) 19:37:07.44 ID:ymICilyk0
1
777 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/28(日) 19:38:02.88 ID:dhmr8vcEO
3
778 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/28(日) 19:49:00.87 ID:iWKJhhBSo

01〜10 九尾
11〜20 球子
21〜30 歌野
31〜40 杏
41〜50 水都
51〜60 看護師
61〜70 バーテックス
71〜80 杏
81〜90 ご神託
91〜00 水都


↓1のコンマ
779 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/28(日) 19:51:06.94 ID:dhmr8vcEO
780 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/28(日) 20:56:38.07 ID:iWKJhhBSo

歌野達が作ったという野菜たっぷりな病院食を食べている最中に、扉が叩かれた

「すみません、今大丈夫ですか?」

陽乃「病室を間違えていなければ」

聞き覚えのない声に答えると、

少し間を置いてから、扉が開かれる。

水都「あって、ます……えぇっと、藤森、水都です。久遠さん」

陽乃「藤森さん? 貴女、巫女なのね」

水都「は、はいっ……そうです」

巫女装束を着ているので、

藤森水都と言う少女が巫女であることは、一目瞭然だ

陽乃「何か神託でもあった?」

水都「いえ、その……うたのんから話も出来そうだって聞いたので」

陽乃「なるほどね」

巫女の正装で着たのは、自分が巫女だと分かって貰うための措置だったそうで、

歌野の畑手伝いをしてから

わざわざ一度帰宅して、身だしなみを整えてきたらしい
781 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/28(日) 22:34:06.76 ID:iWKJhhBSo

陽乃「ついて早々吐血したって聞いて驚いたでしょ」

水都「驚いたなんて話じゃなかったですよ」

陽乃と一緒にいた球子と杏は大慌てで、

最初に陽乃を見たときのお医者様は、

最悪助からない可能性があるだなんていうほどに。

だから、水都も気が気ではなかった。

水都「でも、だからこそ驚きました……あれからたった半日足らずで意識取り戻して、ここまで回復しているんですから」

陽乃「気味悪い?」

水都「いえ、凄いと思いました」

正直に言ってしまえば、異常だ

勇者の回復力は歌野の傍にいる水都は良く分かっているつもりだったが、

だとしても、その比ではない回復力だった。

出血多量によって死んでもおかしくなかったのに

もう、話せるくらいに回復している

それは、確かに気味が悪いと思えなくもない

水都「久遠さんはその回復力が、勇者としての力なんですか?」

陽乃「いえ、違うわ」

水都「誰かを癒す分、自分が傷つくみたいな力とか」

陽乃「全然、違うわね」
782 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/28(日) 23:28:04.78 ID:iWKJhhBSo

陽乃「もしそんなご立派な自己犠牲特化の力があっても、私は対象外よ」

水都「そうですか……」

そもそも

神々の力は武器に宿る

拳だったり、剣だったり、楯だったり

特定の、超常的な能力を与えるというのは普通ではない

九尾だって、陽乃に与えられた力と言うよりは

九尾自身が持っている力と言う感じだ

陽乃「……この野菜、白鳥さん達が作ってるって聞いたわ」

水都「たぶん、今朝採れた野菜だと思いますよ。新鮮なの食べさせてあげたいんだって、うたのん張り切ってたので」

嬉しそうに話す水都は、陽乃を見て少し迷う

中々上がらない手を震わせて、

どうにか握っているフォークで刺しながら食べている陽乃は

凄く辛そうに見えるからだ

野菜が嫌いというわけではないだろうが……

――カチャンッと、フォークが皿の上に落ちる

水都「あの……良ければ手伝いましょうか?」



1、大丈夫よ。気にしないで
2、じゃぁ、お願いしようかしら
3、そんなことより、神託は受けてないの?
4、貴女、白鳥さんとは仲良いの?

↓2
783 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/28(日) 23:30:20.58 ID:dhmr8vcEO
2
784 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/28(日) 23:33:12.46 ID:ymICilyk0
2
785 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/28(日) 23:44:35.94 ID:iWKJhhBSo

ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
786 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/28(日) 23:51:36.71 ID:dhmr8vcEO

こういう弱っている時こそ人を頼りにして絆を深めるのが大事だな
787 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/01(月) 02:31:55.89 ID:TCokldgN0

休まなきゃだしお話しいっぱいできるな
788 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/01(月) 20:24:24.83 ID:qnW33cAQo

では少しだけ
789 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/01(月) 20:25:02.49 ID:qnW33cAQo

陽乃「……じゃぁ、お願いしようかしら」

食事を始めてから、すでに数十分経っている

それなのに、まだ5分の1も食べられていない

フォークで刺して口に運ぶだけでも時間がかかるし、

それを咀嚼するのにも時間がかかる

手伝ってくれるというのなら、手伝って貰う方が良い

このままでは、半分も食べられずに終わってしまう

陽乃「迷惑じゃ無ければだけど」

水都「迷惑だったらそもそも言わないですよ」

皿の上に落ちていたフォークを手に取った水都は、

まだ刺さっているサラダを陽乃の方に差し向ける

陽乃は躊躇わずに咥えて、噛みしめる

水都「ゆっくり食べてくださいね」

陽乃「私なんかの手伝いしてて平気なの?」

水都「うたのんには言ってありますし、私、こう見えても巫女なので」

こう見えても何も、

巫女であるのは明白な格好をしている。

陽乃が小学生時代に見た、

友人が着ていたコスプレの巫女衣裳のような物ではない

ほんとうに、ちゃんとした装束だ

水都「久遠さんが完治するまでは、お世話させてください」
790 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/01(月) 20:31:47.21 ID:0E+tKQ8VO
久々に尊いシーン
791 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/01(月) 20:43:56.58 ID:qnW33cAQo

陽乃「本気で言ってるの? 何もできないわよ。私」

着替えも、お手洗いも、入浴も

何一つ、今の陽乃には自力で出来ない

食事だって、かなりの時間をかけなければいけない。

常人離れしている回復力とはいえ、明日には万全と言うわけにはいかないだろう。

伊邪那美命の顕現による身体的ダメージは、2日経っても完治しなかった。

それが治る前に、

上乗せで酷使したことによる後遺症は、どれだけ時間がかかるか。

水都「大丈夫です。それをサポートするのも巫女の役割なので」

陽乃「そう……貧乏くじを引いたわね」

水都「いえ、そんなことは」

水都はまだ子供で、女の子で、陽乃をどうこうできるほどの力もない。

食事を与える、着替えを手伝う……させられて、この程度だろうか。

陽乃は少し考えて、水都を見る

諏訪の勇者、白鳥歌野

諏訪の巫女、藤森水都

勇者が歌野一人であることは聞いていたが、巫女も一人きり。

大社のような組織が無いのが幸いだろう。

水都「私に出来るのは……このくらいですし」

陽乃「このくらいも、私は出来ないけどね」
792 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/01(月) 20:51:36.53 ID:qnW33cAQo

水都「あっ……っ……すみません」

陽乃「別に謝らなくていいわよ。ただの皮肉だから」

自分に出来るのはこのくらいしかない。

それは諦めと言うよりも、自信のなさの表れだろうか。

水都が嫌味ではなく、

ただ本当に自分にはそれくらいしか役立てないと思っているからこその発言だと分かっているが、

陽乃には、そんなことは関係ない。

事実、陽乃は食事さえまともにできない。

着替えも入浴も……お手洗いにだって行くことが出来ないからそれも手伝いが必要だ

水都「……」

陽乃「2人からどう聞いたのかは知らないけど、私は基本的に役に立たないって思っておいて」

水都「えっ?」

陽乃「到着早々血を吐いて気絶するし、力を使えばまた血を吐くし、治ったと思えばこんな状態だし。ね? 役に立たないでしょ?」

水都「それは……力を使ったからじゃないですか」

陽乃「使えばこうなるんだから、使えない。使えないから使えない。だから、あんまり期待しないで」

水都は陽乃のことを良く知らない

だから、陽乃が自分を気遣ってくれているのかもしれないと思うし、

そうではなく、本当に自分を役立たずだと思っているのかもしれないとも思う

表情から、その判断材料は得られない
793 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/01(月) 21:05:09.96 ID:qnW33cAQo

水都「でも、久遠さんが二人をここに連れてきてくれたんですよね?」

陽乃「連れてきたというか、付いてきたというか」

水都「どっちでも、ここに来てくれたことに変わりはないです」

ご飯をお箸で摘まんで差し出しながら、水都は言う。

水都「お陰で、もう少しだけ頑張れます」

杏と球子が歌野に協力することで、結界への影響が減らせる

球子と杏は四国の勇者であるため力の根源が違うから、

諏訪の神の力が弱くなっていても、影響がない。

被害0は出来ないかもしれないし、

このまま諏訪を残し続けることが出来るとは思っていない

それでも、歌野一人よりはずっといい

水都「久遠さんって、代償が重い分強い力を持っているんですよね?」

陽乃「普通よりは強いと思うけど……やめてよ? 期待なんて」

水都「………」

陽乃はそう言うが、

一緒に来た杏や球子は一騎当千の力があると言っていた

評価が180度変わっているから

どっちかが嘘を言っているのかもしれない。

だとしたらそれは……

水都は陽乃を見て、箸を運ぶ手を止めた

水都「久遠さん、どうして。そんなに自分を卑下するんですか?」


1、貴女に話すことじゃないわ
2、別に。事実を語っているだけよ
3、期待されたくないし頼られたくもないからよ
4、守れなかったものがたくさんあるからよ


↓2
794 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/01(月) 21:07:27.13 ID:0E+tKQ8VO
4
795 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/01(月) 21:10:29.66 ID:63WYk73N0
4
796 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/01(月) 22:05:07.34 ID:qnW33cAQo

陽乃「そうねぇ……」

別に聞かれたからと言って答えてあげる義理はない。

適当なことを言ってもいいし拒否したって良いだろう

陽乃は水都の動かない手を見て、ため息をつく

水都が手を止めたら、陽乃もお預けをくらってしまう。

陽乃「守れなかったものがたくさんあるからよ」

水都「守れなかったもの……」

水都は繰り返すように呟いて、目を伏せる

勇者である陽乃が守れなかったと言うモノ

自分を卑下するようになるような何か。

水都「………」

陽乃「そんな考えなくても、聞かれたら答えるわよ。早く食べたいし」

水都「へっ? あっ、す、すみませんっ!」

慌てて差し出してくれたおかずを咥えて、軽く噛む

思った以上に慌てさせたのか、

次を摘まんでいる水都を見た陽乃は、早めに飲み込んで

陽乃「たくさん、目の前で死んじゃったのよ……3年前。藤森さんだって経験があるんじゃない?」
797 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/01(月) 22:47:19.06 ID:qnW33cAQo

水都「それは……」

経験はある。

勇者ではなかった水都は、

目の前で襲われる人々を助ける術を持っていなかった

逃げてくる子供を庇ったりすることはできたけれど、それだけ。

けれど、水都はバーテックスを倒すことなんて出来なかった

自分には元から力の及ばないことだと諦めがついてしまっていた

でも、陽乃は違う。

守れる力があって

それでもなお、目の前で奪われてしまったのだとしたら

それは、どんなにか……

水都はそこまで考えて、歯を食いしばる。

水都は自分の弱さを知っている

いいや、自分の弱さしか知らない

水都「………」

陽乃を見る

腕は上がらず、足も動かない

咀嚼だって辛そうで、飲み物を飲むのだって一苦労

そんな状態にならざるを得ないほどの代償を払う力を持っている陽乃はきっと、

四国の勇者が言うように値千金の力を持っているに違いない

だからこそ、守れなかった後悔は重いのかもしれない。

そんな人に、口出しできるような立場では――ない。
798 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/01(月) 23:25:06.65 ID:qnW33cAQo

↓1コンマ判定

01〜52 水都「守れなかったからこそ、守れるようになるんじゃないですか?」

※ぞろ目 特殊
799 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/01(月) 23:26:25.46 ID:cpGD6QmfO
800 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/01(月) 23:36:50.99 ID:qnW33cAQo

ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
801 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/01(月) 23:52:14.44 ID:12KJDdz/O

みーちゃんがまさかの初対面からの自己主張するとは…
あと陽乃さんもだんだん反応が素直になってきた気がする
802 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/02(火) 00:29:07.85 ID:X3iVKvi+0

よくやってくれた
803 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/02(火) 20:21:31.55 ID:3VSruPD+o
では少しだけ
804 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/02(火) 20:22:19.94 ID:3VSruPD+o

水都にはバーテックスと戦うための力がない

陽乃の痛みを知らないし、苦しみを知らないし、辛さを知らない。

それと同等のものを与えられることだって、きっとない

だから、自分には何も言う資格がないことくらい分かっている。

けれど――

水都「……守れなかったからこそ、守れるようになるんじゃないですか?」

陽乃「貴女――」

水都「分かってますっ! 分かってます……ただの一般人みたいな私が、そんなこと言う資格がないってことくらいっ」

陽乃が何かを言う前に水都は遮る

叫ぶように声を張って、お箸を握りしめて、

顔を上げたいのに……上げられなくて。

あぁやっぱり、自分は弱いと思いながら……吐露する

水都「でもっ……でも……守れなかった後悔があるから、次はもう失いたくないって気持ちになるんじゃないんですか?」

それはたぶん、希望だ。

歌野が見せてくれる、勇者としての力強さ

与えてくれる勇気は野菜を育む空の輝きのように温かく、

水都にとっては、それはこれ以上ないほどに特別だった。

なのに

同じ勇者であるはずの陽乃は、しかし、そんなものは感じられない。

自分の力を信じていない。

役に立たないと切り捨てて、期待しないでと笑って、

自分は何も特別なんかではないと言い切っている。

謙遜なんてものではなく、完全に自分と言うものを認めていない。

それは……水都が自分にしているものと、ほとんど同じものだ
805 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/02(火) 20:24:35.58 ID:V+U+FMZiO
よしきた
806 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/02(火) 20:37:30.85 ID:3VSruPD+o

勇者であるはずの人が、

一般人である自分と、何も変わらないなんてそんなわけがない。

多くを守れなかったと陽乃は言った

それが嘘だとは思えない。

それで挫折してしまったのかもしれない。

だとしても――そこで折れては欲しくない。

水都「久遠さんは、本来数日かかるはずの距離をたった半日で踏破させられる力を持っているんです」

それだけじゃない。と、水都は呟く

水都「同行したお二人は、久遠さんに一騎当千の力があると言っていました」

陽乃「そんなことないわ」

水都「あるかもしれないじゃないですかッ!」

陽乃「っ……」

水都がいきり立って、テーブルが揺れる。

危うく飲み物が落ちそうになって、反射的に動いた体の痛みに陽乃は思わず呻く

そんな陽乃を水都は見て、顔をしかめて、首を振る

水都「久遠さんは、私と似てます……色々あって自信がなくて周りからの評価を素直に受け止めることもできない」

なのに、こんなことを言うなんてどうかしている

自分が信じられていないのに、ほかの人には信じろなんてあまりにも勝手だ。

けれど、でも、

同じように感じられるからこそ、水都は願わずにはいられなかった

水都「そんなままじゃ、きっと……守りたいものも守れなくなっちゃう……」
807 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/02(火) 20:47:22.13 ID:3VSruPD+o

水都は、守りたくても守れない。

勇者として戦う歌野を水都は守りたい、助けたい

けれど、そうする力が水都には与えられなかった。

向かっていく背中を見送って、

傷だらけで帰ってくる体を支えてあげるくらいしか、自分には出来ない。

その傷の治療も出来ない

歌野が言う、日常の中の一つとしてそこにいることだけが、水都の出来ること。

巫女としての役目なんて、大した内容でもない

だから、思う

水都「戦う力があるのが羨ましいです……守りたいと思えば守れる力が羨ましいです……なのに」

陽乃「………」

水都「そんなに卑屈になっている久遠さんが……妬ましいですっ!」

陽乃「……そう」

陽乃は、偶然力を与えられたわけではない

そこに力を与えてくれる何かがいて、

力を得るか得ないかを選ぶ権利が陽乃にはあった。

選ばなければ死ぬしかなかったのかもしれないが、

それでも、力を得ないという選択は、確かにそこに存在していた。

けれど、陽乃は力を得た

――なぜ?

陽乃「私に何があったかも知らないで、羨ましいだの妬ましいだの。そのお気楽な頭の方が私にとっては羨ましいわよ」
808 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/02(火) 21:02:18.24 ID:3VSruPD+o

水都「っ」

陽乃の声は、さっきまでのが猫を被っていたのではないかと思うほどに、冷たかった

言葉選びも厳しくて、怒らせたのではないかと水都が震えてしまうほど。

けれど、言っていることは間違っていないと水都は思った。

境遇がまるで違う。

多くの命を守りたくても守れなかったのなら、

それでも……なんて、立ち上がることなんて簡単な話ではない。

なにより、陽乃に何があったのかを水都は知らない。

だから、自分勝手な理想を押し付けてしまう。

水都「……でもっ……私は……」

陽乃「謝罪、しないのね」

水都「え?」

陽乃「ほんの30分足らずで貴女に3回は謝られたものだから、てっきりすぐに頭を下げるものだと思ったのだけど」

陽乃の声色は素っ気ない

知人どころか、どうでもいい赤の他人と話しているかのような感じだ。

水都は少し悩んで、陽乃を見る

水都「だって……久遠さんには自信を持って貰いたいから」

陽乃「どうして?」

水都「それは……」

陽乃「ここまで来たなら躊躇わないでよ」

一度口を閉じたのを見て、陽乃は小さく笑う。

ここで言うのを止めようが止めまいが、もう遅い

それなら言いたいことはすべて言ってしまうべきだ

何度も謝るような性格でありながら、ここまで主張したのだから。

水都「……また守れなかったら辛いじゃないですか」
809 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/02(火) 21:32:19.19 ID:3VSruPD+o

血を吐いて気を失う……そんな、命にかかわるような代償を必要とする力を使って

数日かけて来たら良い距離を、半日で突き進んできた。

それだけでなく、

3年前の大災害のことを今でも気に病んで、抱えて、苦しんでいる

陽乃は優しい人なのだろうと、水都は思う

優しいから、忘れられない

あの日に響き渡った悲鳴も、

欠損した身体の一部も

すぐそこにいた人が消え去ってしまうあの光景も

そのすべてを忘れることが出来なくて

それを救えるだけの力が自分にはあったからこそ、諦めることが出来ない

だから、期待して欲しくない

自分がそれに応えてあげられる自信がないから

その人々から伸ばされた手を全て取れる自信がないから

それらが自分の手から零れ落ちていく恐怖を、忘れられないから。

――全部妄想だ。

だけど……。

水都「自信がないと100%の力を発揮できないって聞いたことがあるので……もしそれでまた守れなかったら、久遠さんが辛いと思って」

陽乃「………」

水都「さっき、久遠さんは対象外だって言ってましたけど、久遠さんのそれこそまさに自己犠牲で成り立っている力じゃないですか」

水都は考えて、でも躊躇わない。

言いたいことは、一つだけ。

水都「久遠さんは優しい人だと思うから、これ以上……変な迷い方をして欲しくないんです」

どこまでも壊れていく可能性を水都は知っている。

歌野と出会わなかった自分の末路こそがそれだと、今もまだ恐れている

だから、水都は言う。

水都「その体を無暗に犠牲にしていく姿を、誰も見たくないと思います」


1、言ってること、全然分からない
2、優しい? 私が? まさか……
3、何も知らないくせに、勝手なこと言ってくれるじゃない。
4、そんな人、いないでしょ
5、私、人を殺して逃げてきたのよ


↓2
810 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/02(火) 21:34:05.77 ID:V+U+FMZiO
2
811 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/02(火) 21:46:10.25 ID:xZvXvhE50
3
812 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/02(火) 23:24:31.27 ID:3VSruPD+o

陽乃「何も知らないくせに、勝手なこと言ってくれるじゃない」

水都「っ!」

陽乃「貴女と私が同じ? 守れなかったら辛い? 優しい人? 馬鹿なこと言わないで」

手足が出せないのが辛いが、

寧ろ出せなくて良かったのではと、思う

出せてしまったら、

目の前のテーブルに置かれているものすべてを薙ぎ払っていたかもしれない

陽乃「私はね? 期待されたくないの。分かるでしょ? 手のひらを返されるのが嫌なのよ」

水都「手のひらを返されるって……」

悪い方向ではなく、いい方向に

評価が変わったのを実際に目にした水都は、

陽乃はその逆を経験したのかもしれないと……目を見開く

水都「久遠さん、もしかして」

陽乃「そうね。手のひら返しをくらったわ。自慢にもならないけどね」

水都「そんな……」

陽乃は笑っているけれど、

決して面白い話なんかではない

沢山のものを守れなかった

その結果、手のひら返しをくらったのだとしたら……それは

水都は首を振って、歌野のことを考える

歌野が率いてきた3年間

いつ死んでもおかしくなくて、覚悟をしてて

どんな辛い目に遭っても、人は必ず立ち上がれる。なんて志までも抱いて

だから、きっと。

水都「私達はそんなことしません……何があっても、戦ってくれたみんなのことを、絶対に責めたりしません」

陽乃「あなた一人のそれは、ここに住むみんなの言葉だって言えるの?」

水都「それは……」

言えない。

そんなわけがない

黙ってしまった水都を一瞥して、陽乃は小さく息をつく

そんな保証なんて、どこにもないのだ
813 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/02(火) 23:33:02.52 ID:3VSruPD+o

では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
814 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/02(火) 23:45:58.07 ID:V+U+FMZiO

陽乃さんのネガティブ思考がみーちゃんよりも遥かに上回ってるな
せめて明確に味方してくれてる人だけでも信じてあげて欲しいけど…
815 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/03(水) 00:40:54.32 ID:g1HXYBCH0

いろんな人にメンタルケアしてもらおう
816 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/03(水) 21:32:39.44 ID:jpagfzUMo
では少しだけ
817 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/03(水) 21:33:19.40 ID:jpagfzUMo

勝手なこと、馬鹿なこと

確かにそうだ

諏訪に構築されている結界の内部に住んでいる全員の言葉を代弁できるような立場でもない。

陽乃は手のひら返しをくらったといった。

煩わしく思って、嘘をついたのかもしれないと水都は頭の片隅に備えながらも、

それを疑ってしまったら……と、息を飲む。

水都「でも……一人くらい、自分の味方がいるって信じてみませんか?」

目を逸らす。

水都自身、まだそれを出来ていない。

唯一の友人で、味方と言える歌野の言葉ですら "歌野がいるから" と切り捨ててしまっている。

でも、それを信じられたら

歌野の言葉を信じて、少しでも自分に自信を持つことができれば

俯かずに、せめて、前を向くことができたのなら。

きっと、何かが変わるはず。

水都「伊予島さん、土居さん、うたのん……それと、私も。少ないですけど……でも、私達は絶対に責めたりしません」

水都は、真っ直ぐ陽乃を見つめる

陽乃の視線が自分へと向けられていても――逸らさない

水都「これは、絶対だって言えます」
818 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/03(水) 22:45:49.94 ID:jpagfzUMo

陽乃「………」

水都の瞳は、さっきまでと打って変わって力強い

まるで、覚悟を決めたかのよう

自分の言葉が間違ってはいないと、

みんなを信じているかのよう

陽乃「そう……」

水都「ダメ、ですか?」

陽乃「私が決めることじゃないもの。ダメも何もないわ」

水都「そういうことじゃなくて……」

陽乃が言っているのは、

責めるかどうかについてだろう。

水都が言っていることはそうではないと分かっているだろうに、

あえて、そっちを言う

水都「信じて貰えませんか?」

陽乃「貴女達を?」

水都「はい」
819 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/03(水) 23:40:54.91 ID:jpagfzUMo

陽乃はすっかり止まってしまった水都の手を一瞥して、

水都の目を見つめる。

さっきまでは伏せることもあった目は、まっすぐ見つめ返してくる

手のひらを返されるのが嫌だと陽乃が言ったから

そんなことは絶対にしないと、水都は示したいのだろう

そして、それを信じて欲しいと言う

諏訪の人は、陽乃の評判を知らない

生贄となるべきだったことも

そうしなかったから惨劇が起きたと責められていることも

人を殺してしまったことも。

陽乃「……無理よ」

水都「どうして……どうしてもですか?」

今度は、陽乃が目を伏せる

無理なものは無理だと

そう言ったところで、水都は引き下がってくれるだろうか?


1、無理だからよ
2、どうしてもよ。諦めて
3、じゃぁ……私が人を殺していても、同じことが言える?
4、貴女が何も知らないからよ

↓2
820 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/03(水) 23:42:25.45 ID:dD1iaF+3O
4
821 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/03(水) 23:43:12.83 ID:S0va8D6C0
3
822 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/03(水) 23:44:16.74 ID:jpagfzUMo

ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
823 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/03(水) 23:53:55.28 ID:dD1iaF+3O

みーちゃんが陽乃さんのために凄い踏ん張ってくれてる…
あとは真実を知ってもなお説得しきれるかだな
824 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/04(木) 01:48:03.42 ID:xHMLsfEnO

これからが本番だな
825 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/04(木) 21:36:16.76 ID:W+qS3eyUo

では少しだけ
826 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/04(木) 21:36:52.73 ID:W+qS3eyUo

正直、驚きだった。

水都は陽乃が眠っているところを見たかもしれないが、

言葉を交わすのは今日が初めてだ。

前知識も何もなく、力を使えば血を吐いて失神する役立たずだと思うべきだった

なのに、水都は執拗に詰め寄ってくる

守れなかったからこそ守れるようになる。なんて言って

羨ましいだの妬ましいだの言って

果てには自分を信じて欲しいとまで言う。

球子や杏も強引ではあったけれど、水都は少し違った強引さがある。

陽乃は溜息をついて、水都を睨む

陽乃「じゃぁ……私が人を殺していても、同じことが言える?」

水都「え……」

陽乃「守れなかったからとか、そういうのじゃなくてこの手で殺してても言える?」

水都「久遠さんが?」

陽乃「ええ。攻撃の流れ弾とかでもないわよ? ほんとうに、私の意思で人を殺したの」

水都「っ……」

嘘だと思いたい

そう思っているのが感じられるほどに困惑している水都

自分の意思で人を殺したと言われては、流石に動揺も隠せない
827 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/04(木) 21:38:04.19 ID:sFO9GHV8O
かもん
828 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/04(木) 21:52:56.68 ID:W+qS3eyUo

↓1コンマ判定

ぞろ目 または70〜80 水都「それでも、責めたりしません」
829 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/04(木) 21:55:41.70 ID:wwJ4KB0Q0
830 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/04(木) 22:01:39.08 ID:sFO9GHV8O
みーちゃん快進撃
831 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/04(木) 22:09:41.74 ID:W+qS3eyUo

水都「それでも、責めたりしません」

陽乃「は?」

水都「………」

人を殺したのが、本当のことだとして

もしかしたら知っているかもしれないけれど、

球子と杏がそれを知らないとして

それでも水都は信じたいと思った

水都「久遠さんに何があったのかは知りません。でも、だからこそ……なにか、そうしないといけない理由があったんだって思います」

陽乃「無かったら?」

水都「無かったら、久遠さんには自分を代償にするような力なんてなかったと思います」

陽乃「力を得た後に殺したのよ?」

水都「殺すような人じゃないから、勇者に選ばれて……そんな人だからこそ、人のために身を削るような力を与えられたんだと思います」

贖罪の為に、そんな自己犠牲を必要とする力を与えられた可能性だってもちろんあった。

けれど、水都はそう考えない

元から人を傷つけるような人は勇者にはなれないと信じる

水都「信じます」
832 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/04(木) 22:36:24.99 ID:W+qS3eyUo

陽乃「っ……」

諦めると思ったのに

言葉を失って、終わってくれると思ったのに

なのに、水都はより一層堂々とした態度で答えた

何も知らない

だからこそ、いい方向に考えたいから信じるって繰り返して

確かに、理由があった。

そうしなければならなかったかはともかくとして

そうしなければ別の、陽乃ではない誰かが傷ついていたかもしれなかったから。

けれど、水都は知らないはずなのだ

球子と杏から聞いていれば

ここに至るまでにそれらしい反応をしているはずだから、絶対に。

なのに。


1、馬鹿じゃないの?
2、私は人を殺したのよ!?
3、……嫌


↓2
833 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/04(木) 22:39:10.76 ID:sFO9GHV8O
1
834 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/04(木) 22:39:38.52 ID:M75hbQ1E0
2
835 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/04(木) 22:46:56.15 ID:W+qS3eyUo

ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
836 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/04(木) 22:56:10.54 ID:sFO9GHV8O

あの頑なな陽乃さんを逆に動揺させるとは…
このまま陽乃さんの心を救えるといいな
837 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/04(木) 23:04:49.81 ID:M75hbQ1E0

みーちゃんとかいうはるのんの精神安定剤
長野に来たかいがあったな
838 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/05(金) 00:56:13.17 ID:h9RbeiYZO

対応がめちゃくちゃイケメンで笑った
839 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/05(金) 20:41:59.72 ID:lJdzeDhLo

では少しだけ
840 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/05(金) 20:42:27.73 ID:lJdzeDhLo

陽乃「私は人を殺したのよ!?」

思わず声を張り上げてしまう

喉を酷使するような感情の昂りに痛みを覚えて、陽乃は顔をしかめる

陽乃「っ……げほっ……っ……げほっ」

水都「久遠さんっ!」

陽乃「触らなっ……けほっ……かひゅっ……」

水都「嫌です……」

もう迷わない。

躊躇う必要だってないと、水都は陽乃の身体を抱きしめる

陽乃の口元を拭った袖口が赤く染まっていく

水都「嫌です……ごめんなさい」

陽乃「っ……けほ……ごほっ」

陽乃の瞳に涙が浮かんでいるのは、咳き込む息苦しさからかもしれない。

けれど――

感情的な叫びは

それを携えた辛そうな表情は

水都にも無視できるものではなくて。

水都「久遠さんのことは、諦めません」

陽乃の背中を擦り、撫でて……もう一方の手でナースコールを押す

大声を出したせいではあるが、血を吐いた以上は呼ぶべきだ
841 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/05(金) 20:53:57.70 ID:Gd//VFq5O
このみーちゃん強い…
842 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/05(金) 20:59:50.93 ID:lJdzeDhLo

陽乃「ぅ……けほっ……」

水都「横になってください」

抱きしめながらベッドを操作して平らにし、

ゆっくりと陽乃の体を寝かしていく

口元を拭って、拭って、血に汚れた肌をきれいにする

陽乃「私……」

水都「良いんです……そんな、無理矢理に一人にならなくても」

人を殺してしまったことなんて、

ここでは言われなければ知ることなんて出来なかっただろうし、

もし四国に逃げ伸びたあとで赤の他人から言われても、信じることだってなかったと思う

だから、自分から言う必要はなかった

なのに、陽乃は自分から言って、叫んで、苦しんで。

それほどまでに人を拒もうとした

それだけ嫌な思いをしたのだと水都は思う

陽乃の希望に沿うなら、離れるべきかもしれないけれど

それではきっと、報われないだろう

――それでいいはずがない

信じてくれる人のありがたみを、水都は知っている

たった一人でも味方がいてくれることの安堵を知っている。

それを受け入れなければどうなるかを知っている。

それは、陽乃がなるべきものではないと断言できる

水都「私は絶対、久遠さんを信じますから」

水都はそう言って、

看護師が到着するまでずっと、陽乃の手を握り続けた
843 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/05(金) 21:28:57.25 ID:lJdzeDhLo
√ 2018年 8月10日目 夕:諏訪


05〜14 歌野
27〜36 杏
41〜50 球子
52〜61 九尾

↓1のコンマ

※それ以外は通常 (水都)
844 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/05(金) 21:31:37.14 ID:Gd//VFq5O
845 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/05(金) 22:38:50.47 ID:lJdzeDhLo
√2018年 8月10日目 夕:諏訪


昼からまた体調を崩した陽乃が目を覚ましたという連絡を受けて、

歌野が陽乃のいる病室へと訊ねてきた。

杏と球子のどちらか

あるいは両方が来るかと思っていたけれど

来たのは歌野だった

歌野「みーちゃん、大丈夫?」

水都「うん。私は全然大丈夫……久遠さんはお話は控えるようにって言われちゃってるけど」

歌野「そう……伊予島さん達は四国の方の現状説明を大人たちに要求されちゃってね。抜けられなかった」

陽乃「別に、聞いてない……」

陽乃の枯れてしまっている声に、歌野は顔を顰める

朝よりも少し、悪いように感じたからだ

歌野「大丈夫?」

陽乃「…………」

陽乃は力なく頷くだけで、目を向けようとはしない。

一緒にいる水都にも目を向けないし、

死に際のように、ゆっくりと瞬きをするだけ。

それが不安になったのか、歌野は一瞬躊躇って口を開く

歌野「良ければ、2人を連れてくるわ……説明も大変そうだったし」
846 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/05(金) 22:57:10.35 ID:lJdzeDhLo

陽乃が比較的心を許せるであろう、四国から連れてきた二人。

自分達よりも杏や球子の方が良いのではと考えた歌野の気遣いだろう

けれど、陽乃はうんともすんとも言わずに、

歌野を一瞥して、瞬きする

歌野「えぇっと……じゃぁ、歌とか歌ってあげましょうか?」

水都「うたのんっ、しーっ」

歌野「み、みーちゃん……」

陽乃は大した反応を示してくれないし

水都はちょっぴり騒がしい歌野に困った顔を浮かべる

自分は来ない方が良かったのかも。なんて、

歌野は少ししゅんとして椅子に腰を落ち着ける

歌野「そうね……そうよね。ごめんなさい。静かに休みたいわよね」

陽乃「さっきまで……寝てたのだけど」

水都「でもだからって、起きたりしたらダメですよ」

歌野「………」

朝とは雰囲気の違う水都

陽乃に向ける表情も柔らかい

何があったのか気にはなるものの……ここで聞くのは間違いだろうか。と、首を振る
847 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/05(金) 23:05:58.06 ID:lJdzeDhLo

歌野「子守歌だと思って、聞いておいてね」

歌野はそう前置きをして、

小さく、ゆっくりとした柔らかい声で話し始める

歌野「一応、四国に移住できる可能性があることを話したの」

水都「……それで?」

歌野「ん〜……行きたい。って強く思ってる人は少なかったわ」

どうしようもなければ、そうするのも一つの選択肢

けれど、

出来るだけ、ここに残りたい

出来るのなら、ずっとこの場所で生きていきたい

そういう人がほとんどで

まだまだ、諦める気のない人たちばっかりだったと、歌野は小さく笑う

それは嬉しいことではあるけれど、

限界が見えてきているのを察しているからか、喜べるものでもないらしい

水都「そうなっちゃうよね」

陽乃「………」


1、黙っておく
2、休む
3、貴女達は、どうしたいの?
4、馬鹿な人たちね


↓2
848 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/05(金) 23:09:19.22 ID:kuGD92ex0
4
849 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/05(金) 23:11:08.31 ID:Gd//VFq5O
3
850 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/05(金) 23:17:37.79 ID:lJdzeDhLo
ではここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから
851 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/05(金) 23:30:56.08 ID:Gd//VFq5O

諏訪組二人は最初から好感度高めな対応でありがたく感じるな
特に今作のみーちゃんの精神的な頼もしさよ
852 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/06(土) 00:08:24.50 ID:f0FSxTgFO

いい方に風向きが変わってきたな
853 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/06(土) 21:08:56.02 ID:we9r2hPfo
では少しだけ
854 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/06(土) 21:09:24.76 ID:we9r2hPfo

陽乃「貴女達は……けほっ……どう、したいの?」

水都「無理に声を出したら駄目ですよ」

声を発するたびに、咳き込み血を吐くと思われている過保護感

陽乃は苦しさが勝るのか、不満そうには見えないけれど、

その目は水都に向けられている

歌野「私は、ここで生きていきたい人がいるなら、残るわ」

水都「私は、うたのん……ううん、勇者がここに残るのなら残ります」

歌野「……!」

歌野は思わず声を上げそうになったのを控えて、水都を見る

昨日、眠っている陽乃の傍で話した時、水都は言い淀んだ挙句に話を逸らした

なのに、1日足らずで水都は堂々と言い切るようになった

何かがあったのだ

何かは分からないけれど

水都の意識を変える何かが。

歌野「そっか……」

水都「?」

歌野「ふふっ、何でもない」

歌野は水都の視線を感じて首を振り、小さく笑う

歌野「そう言うことだから……もしあれなら、避難したい人達を連れて四国の勇者達で戻って欲しいって思ってる」
855 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/06(土) 21:12:28.19 ID:PcZfl0JKO
今度はこっちの説得か
856 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/06(土) 22:16:15.74 ID:we9r2hPfo

陽乃「みんな……置いていけって?」

歌野「みんなじゃないわ。一部は――」

陽乃「かわらない……っ……ごほっげほっ……」

水都「っ」

水都は咳き込む陽乃の体を支えて寝返りを打たせて背中をさすり、

席が泊まったのを確認すると、

枕を腰と背中に当てながらベッドをリモコンで動かして、体を起こさせる

そして、すぐそばの水を手に取って陽乃の口元に宛がう

水都「ゆっくり、飲んでください」

陽乃「ん……」

水都は静かに、ゆっくりとペットボトルを傾けて陽乃の口の中に流す

手つきはとても慎重だが、それでも陽乃の喉が動く速さよりも流れる水の量が多く、

すぐに唇の端から溢れていく

陽乃「っ……ぅ」

歌野「みーちゃん、ストップ……ステイよ。一旦止めた方が良いわ」

水都がペットボトルを引くと、歌野が陽乃の口元をハンカチで拭う

まるでただの介護だと……陽乃は自己嫌悪してしまうが、

2人はまるで気にすることなく、陽乃を気遣う
857 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/06(土) 23:13:16.28 ID:we9r2hPfo

歌野「あんまり、考えさせる話はしない方が良さそうね」

水都「うたのんが変な子守歌口ずさむからだよ」

歌野「ソーリー、真面目過ぎたわ」

注意されたのに、なぜか嬉しそうな反応を見せた歌野

すぐに申し訳なさそうに眉を顰めて、陽乃の額に張り付く前髪を払い除ける

歌野「ここで生きていきたい人は私達が助ける。だから、ここを出て生きていきたい人たちを助けて欲しい」

みんなを置いていくわけじゃない。

れっきとした協力

適材適所

誰も見捨てるわけではないと歌野は言う

歌野「今日はもう、眠った方が良いわ」

歌野はそう言って、水都へと目を向けた

歌野「みーちゃん、頼める?」

水都「うん、大丈夫。何かあったらナースコールもあるし」

歌野「……そっか」

驚かず、嬉しそうな声

優しい笑顔を浮かべて……また、陽乃を見る

歌野「ゆっくり休んで」
858 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/06(土) 23:40:51.27 ID:we9r2hPfo

陽乃「っ……ごほっ……」

歌野「ほら、無理に話さなくていいから」

陽乃「ま……」

まだ話すべきことがある。

総攻撃が行われるよりも前に避難させるつもりなのか

それとも、総攻撃を受けた後に避難をするつもりなのか。

前者である場合、

諏訪がそれを耐えきる可能性は0と言っていいかもしれない

だが、

総攻撃を受けた後では……耐えられる可能性はあるが、

犠牲者は少なからず出ることになるだろう

どちらが良いか。と言うのは中々に判断しにくいことだけれど、

元のさやに納まる選択は、間違いなく前者だろう。

しかし、それは諏訪を囮として見捨てるということだ

歌野「少しでも多く助かる人がいるなら、その方が良いと思うわ」

歌野と水都に助けられながら、またベッドに横になる。

歌野はもう、それ以上話を長引かせる気はないようで

水都に任せて、病室を出ていく。

陽乃に声を出させたくないという気遣いだろうが、

聊か狡いと、陽乃は顔をしかめて……重い瞼を閉じた
859 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/06(土) 23:46:29.66 ID:we9r2hPfo
√ 2018年 8月10日目 夜:諏訪


05〜14 球子
41〜50 九尾
52〜61 杏

↓1のコンマ

※それ以外は通常 (水都)
860 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/06(土) 23:52:47.48 ID:Xd/rnQnfO
861 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/06(土) 23:54:13.06 ID:we9r2hPfo

では短いですがここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから
862 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/06(土) 23:58:36.32 ID:Xd/rnQnfO

全員生存させて四国に避難が理想だけど住人たちの意向を考えると難しい判断を迫られそうだな
863 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/07(日) 00:04:22.68 ID:TpsG6BK0O

うたのんや水都は結局救えそうにないの辛いな
864 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2021/03/07(日) 00:16:04.16 ID:M/sMOw9k0
陽乃のテーマは「頼まれなくても生きる」系だと思っていたが、
死に場所を諏訪に決めた場合どう話を転がすんだこれ
865 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 18:48:11.46 ID:jeG9ohHno
では少しだけ
866 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 18:49:29.29 ID:jeG9ohHno
√ 2018年 8月10日目 夜:諏訪


声が聞こえる。

聞き覚えがあるのに、無いようにも感じる不思議な声

とても優しく、穏やかな……女性の声

陽乃が目を開けると、もう見ることが出来ないはずのものが見えて――目を見開く。

九尾「主様、気が付いたかや?」

陽乃「なんで……どうなって……」

傍らにいる九尾を一瞥して、体を起こす

眠る前までの気怠さはなく、喉の調子も悪くない。

身体の内側から響く痛みもなくて、むしろ……良いくらいの状態だ

しかし、陽乃が驚いたのは病室ではなく、かつて住んでいた自分の部屋にいることだ

丸亀城の寄宿舎ではなく、両親と住んでいた家

その、自室

荒らされ、焼け落ちたはずなのに。

九尾「夢のようなものじゃ。主様、現ではまともに話も出来なかろう」

陽乃「なるほど……明晰夢みたいな?」

九尾「うむ」

これも九尾の力だろうか
867 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 18:56:22.47 ID:jeG9ohHno

陽乃「まさか、この部屋をもう一度見ることになるとは思わなかったわ」

九尾「望めば、模倣することくらい可能じゃろう」

陽乃「しても、意味はないわ」

机の引き出しを開くと、シャーペンの予備やノート

その日は使わない教科書などが入っている。

箪笥の中も、いつかは分からないがしっかりと洋服が入っていて

手に取ることもできた。

陽乃「それで?」

九尾「主様はどうするつもりかと思うてのう」

陽乃「残るか、帰るか?」

九尾「死ぬか生きるかじゃな」

残れば、死ぬ可能性が高いが

帰れば、辿り着きさえすれば暫く死ぬことはないだろう

陽乃「………」

諏訪の四国移住希望者を連れていくとなると

それなりの日数と、犠牲を覚悟する必要がある。

しかし、

そもそも勇者である歌野を連れ帰ることができないなら、ここに来た本来の意味は果たせない
868 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 19:22:50.65 ID:jeG9ohHno

陽乃「諏訪はもう、本当に駄目なの?」

九尾「じゃろうな。残りの御柱を一つに束ねようとも、じきに崩壊する」

陽乃「私の力は?」

他の勇者達と違い、

陽乃は神々の力を扱うことができる。

もちろん、使える分の代償はほかの勇者の比ではないため、

使えるが、使うべきではない

しかし

九尾「主様が "死ぬ" ならば可能性もあるじゃろうが、望むことではあるまい?」

陽乃「出来るのね」

九尾「人柱……人身御供となり、主様が結界の要足る御柱の一つとなればよい」

九尾は淡々と答えると、

浅く息を吐いて、陽乃に目を向ける

九尾「それも長くはもつまい。平時ならばともかく、今はのう」

陽乃「そっか」

諏訪はいずれにしても、尽きる運命にあるということだ

陽乃のような人身御供を用意し続ければ保つこともできるかもしれないが、

それは現実的ではない
869 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 19:37:05.79 ID:jeG9ohHno

つまり、ここに残る歌野や水都はこのままでは死ぬことになる。

2人もそれは理解しているだろう

けれど、ここに残るつもりの人々がいる以上、2人はここを出ていかない

ここを死に場所としている一般人を説得するのは簡単ではないはずだ

陽乃「白鳥さん達を連れ戻さなきゃ、意味がないわ」

九尾「人間を皆殺しにしてしまえばよいではないか」

陽乃「馬鹿なこと言わないでよ」

一人殺してしまった以上、

もう、後戻りできるような状況にはない

けれど、だからと言って何もしていない人々を殺すほど壊れてもいない

九尾「ならばどうする」

ここに残って、守り、死ぬか

ここから出て、守り、生きるか

死にたくないという思いを維持し続けるなら――間違いなく出ていくべきだ

だが。

陽乃「どうするって、言われてもね……」


1、九尾はどうすべきだと思う?
2、2人を連れ出す方法、ないかしら
3、残るわ。手ぶらで帰ったって何も変わらないし
4、帰るわ。死にたい人は死ぬしかないもの


↓2
870 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/07(日) 19:37:19.35 ID:TpsG6BK0O
2
871 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/07(日) 19:39:09.45 ID:uP/LdZ8SO
2
872 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 20:02:42.68 ID:jeG9ohHno

陽乃「2人を連れ出す方法、ないかしら」

九尾「人間を皆殺しにするのは駄目かや?」

陽乃「ダメに決まってるでしょ」

九尾なら陽乃の犯行だと気づかせることなく実行は可能かもしれないが、

それは愚策ですらない蛮行だ

九尾も一度否定されているからか、本気ではないらしい

目を細めると、ため息をつく

九尾「ならば、結界を壊させるしかあるまい」

陽乃「結界を壊させるって……守らないってこと?」

九尾「結界を完全に破壊させたうえで、2人を含めた人間共を守り総攻撃を凌げばよい」

陽乃「それは、えぇっと……」

確かに、

結界が完全になくなってしまえば、

流石に残ると言う人はいないかもしれない

歌野達だって、

そうなっては致し方ないと四国に移住することを推奨するだろうし、

加護が消えたなら……頷く人も少なくないはず。

だが……負担が尋常ではない
873 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 20:20:09.43 ID:jeG9ohHno

結界が健在であるなら、

その中にいる人々の心配をする必要はない。

彼らが襲われることはないし、

いちいち警戒をし、守ってあげる必要だってない。

しかし、

結界が破壊されて武器らしい武器もない人々が野ざらしになった場合、

勇者達はそれを守らなければいけない。

気を使い、警戒し、盾になる必要だってあるかもしれない

そうしなければ、人々は簡単に奪われていく

陽乃「っ……」

かつて、陽乃が目の当たりにしたように

とても

とても簡単に

陽乃「ぅ……」

九尾「ふむ……恐れておるのかや?」

陽乃「違う……ただ、嫌なだけよ」
874 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 20:40:26.21 ID:jeG9ohHno

あれから3年も経った

以前から力はあったが、今はより力をうまく扱えるようになっている。

今は満身創痍だけれど、

それは今まで使ったことのない伊邪那美命による影響が残っていたからだ。

無理に無理を重ねた結果だから、

普通の状態なら何も問題はない。

回復に専念して数日過ごせば、大丈夫なはずだと陽乃は思う。

なのに……恐れるわけがない。

滴る血も、

零れ落ちる人の腕も

転がる頭も

散らばる骨も

響き渡る断末魔も

なにも――

九尾「主様」

九尾のやや強い声色にハッとする。

陽乃「っ!」

九尾「妾に虚勢など意味もあるまい」
875 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 21:10:59.70 ID:jeG9ohHno

陽乃「私は……別に」

九尾「無論。今の主様……いや、万全な主様ならば何も問題はなかろう」

確実に守ることができるはずだ

後々、

血反吐を吐き零して、血だまりに倒れ伏すかもしれないが

それでも、死にはしない。

九尾「それでも主様は恐れておるな」

陽乃「だからっ」

九尾「繰り返すことを、恐れておる」

頑張って、頑張って

守れなかった人々の残骸に心を痛め、

なのに、守れなかった人がいるのを責められて

バーテックスが攻めてきたのはお前のせいだと責められて

そして――

陽乃は首を振って、考えを払う

陽乃「知らないわよ……そんなこと。何人殺されようが、私は」

もう、信じない。

そうされるんだって思っておけば、痛くもない

九尾「ならば良いがのう。して、どうする?」


1、それしかないなら、するしかないわね
2、考えておくわ
3、そんなリスクは取れないわ


↓2
876 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/07(日) 21:20:52.83 ID:uP/LdZ8SO
1
877 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/07(日) 21:22:27.25 ID:IkvscxiS0
1
878 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 22:01:08.26 ID:jeG9ohHno

陽乃「それしかないなら、するしかないわね」

九尾「ふむ。そうか」

陽乃「でも、まだ時間はあるんでしょう?」

外の状態からして、総攻撃が行われるのはまず間違いない。

だが、少なくとも今月中は問題ないように思える

それまでにも、何度か襲撃が来るかもしれないが、3人の勇者で対応しきれるはず。

それだけあれば、陽乃も万全になれる。

総攻撃が行われ、結界が完全に破壊されても、

陽乃が後を考えずに力を使えば人々を守り切れるだろう。

陽乃「時間があるなら、別の手を取れるかもしれないし……一先ずの予定ね」

九尾「結界が割れる前に参戦することになるはずじゃ。手を抜くのじゃぞ」

陽乃「守っちゃいけない。のね」

九尾「うむ」

陽乃は九尾が頷くのを見て目を背けると

溜息をついて自分の唇に触れる

陽乃「守らなくても良いって、気が楽ね」

九尾「出来ればよいがのう」

陽乃「出来るわよ。大丈夫」
879 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 22:21:58.75 ID:jeG9ohHno

バーテックスの侵攻は結界が防いでくれる。

結界が壊れるまでは、人々に直接的な被害は出ないはずだ

人が死ぬわけではないし、断末魔が轟くわけでもない。

結界が壊れたら、ちゃんと戦って守ってあげれば良い

大丈夫。

陽乃「………」

九尾「結界を守り切れぬことを糾弾されるやもしれぬが」

陽乃「……大丈夫。責められるのは、慣れてるわ」

陽乃は笑って、答える

覚えのあること、無いこと

頑張ったことを無視されて、ただただ、悪いことだけを引き出されて

守った意味が分からなくなるくらい

色々と責められてきたから。

結界を守れなかったことを責められるくらい、何でもない。

だって、守れないのではなく守らなかったのだから。

自分の意思での被害なら、責任があるのは当たり前だ

陽乃「明日には、普通に話せるかしら?」

九尾「興奮しなければ良い。声を張るでないぞ」

陽乃「ん……分かったわ」
880 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 22:59:33.64 ID:jeG9ohHno

陽乃「私、何にもできないわね……」

九尾「あの小娘を利用してやればよい」

陽乃「藤森さん?」

陽乃の問いに九尾は頷く

藤森水都、諏訪で生き残っていた巫女

水都はなぜだか陽乃に親近感を抱き、

その悩み、苦しみをひっくるめて寄り添おうとしている。

今も、病室で横になっている陽乃の傍にいる

陽乃「私を諦めないって、言ってたわね」

九尾「娘が望んでいるのならば、好きに使い捨ててもよかろう?」

陽乃「まぁ、そう……なんだけど」

それで離れてくれるとは思えない

人を殺したことを話しても、

それでも……と、寄せてきたのだから。

陽乃「……はぁ」

発端は食べるのを手伝って貰ったことだろうか。

あれは軽率だったかもしれないと……陽乃はベッドに身体を倒して目を瞑る

懐かしい、自分の部屋

布団も枕も、あの頃と同じ感触で

けれど

陽乃「ベッドは……ちょっと狭く感じる」

あの日で時間が止まってしまったのを感じながら、落ちていく
881 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 23:00:30.60 ID:jeG9ohHno

√ 2018年 8月11日目 朝:諏訪

01〜10 歌野
21〜30 球子
41〜50 杏
81〜90 襲撃

↓1のコンマ

※それ以外は通常(水都)
882 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/07(日) 23:08:06.78 ID:uP/LdZ8SO
883 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/07(日) 23:09:45.96 ID:jeG9ohHno

ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


再開時にまとめ
884 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/07(日) 23:15:35.99 ID:uP/LdZ8SO

決してリターンが小さい訳ではないけど最悪諏訪の人々にまで恨みを買ったり陽乃さんが死亡したりするかもで大分綱渡りだな
885 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/08(月) 06:50:40.10 ID:UEph28OEO

結界壊すとか結構スパルタ気味な方法だけど致し方ないか
886 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/08(月) 08:03:57.24 ID:xu5V3FmnO

つっても諏訪に残るのも悲劇でしかないからなあ
887 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/08(月) 21:48:27.29 ID:kuR+76Z/o
では少しだけ
888 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/08(月) 21:48:56.78 ID:kuR+76Z/o

1日のまとめ(諏訪組)

・ 白鳥歌野 : 交流有(現状説明、意思確認)
・ 藤森水都 : 交流有(守れなかったもの、勝手なことを、人殺し、意思確認)
・ 土居球子 : 交流無()
・ 伊予島杏 : 交流無()
・   九尾 : 交流有(歌野を呼ぶ、2人を連れ出す方法、結界破壊)

√ 2018/08/10 まとめ

 白鳥歌野との絆 44→45(普通) 
 藤森水都との絆 52→58(普通) ※特殊交流 
 土居球子との絆 55→55(普通) 
 伊予島杏との絆 62→62(普通) 
   九尾との絆 63→64(普通)
889 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/08(月) 21:49:32.89 ID:kuR+76Z/o

√ 2018年 8月11日目 朝:諏訪


まだ、瞼が重い

意識が覚醒するにつれて、

身体の節々の痛みまで戻ってくる

腕を上げるだけで、骨が軋む

震えてしまって握り拳もまともに作れない

昨日大声を出してしまったのが相当、負担になっているらしい

正しく言えば、大声を出したというより興奮してしまった事だろうか。

陽乃「ん……けほっ……けほっ」

喉の異様な渇きに咳き込む。

潤いを失っているせいか、ピリピリとした痛みを感じる

陽乃「誰……か……」

身体がまともに動かせなくて、起こすことすら難しい陽乃は

ナースコールを押そうと手を動かす

けれど、頭の横の方にあるそれに手を伸ばす事すらできない

水は冷水だと刺激が強いということもあって、

常温保存のために近くのテーブルの上に新しいペットボトルが置かれているけれど、取れない

陽乃「けほっ……げほっ……っ……ごほっ……」

水都「久遠さんっ」

陽乃「ぅ……」

水都「待ってください。今用意しますから」

陽乃の目が向けられている方向とは逆側から水都の声がしたかと思えば、

ばたばたと慌ただしい音を立てて、視界の端に水都が入り込み右から左へと駆け抜ける
890 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/08(月) 22:02:08.91 ID:kuR+76Z/o

慣れた手つきで陽乃の身体を支えてベッドを操作しつつ体を起こさせると

ペットボトルを手に取り、キャップを開けて薬飲み器に注ぐ

陽乃「それ……」

水都「昨日、ペットボトルだと大変そうだったので用意して貰ったんです。飲みやすいはずですよ」

陽乃「……っ」

薬飲み器を受け取ろうとしたものの、自分の口にまで持ち上げられそうにない

陽乃の表情を酌んで、水都はそうっと陽乃の口元に吸い口を宛がう

陽乃はストローなどで吸い上げることも難しいため、

水都にゆっくりと流し込んでもらう

陽乃「んっ……んっ……っ……」

5秒程度流し、一旦離してまた数秒流す

それを数回繰り返して、陽乃の喉を潤していく

陽乃「っは……はっ……んっ……」

水都「大丈夫ですか?」

陽乃「大丈夫……」

体を起こして貰い、水を与えて貰い、口を拭って貰う

それだけして貰わなければいけない状態が大丈夫と言えるのならだけれど。
891 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/08(月) 22:18:28.05 ID:kuR+76Z/o

水都「昨日の夜、凄く魘されていて……心配しました」

陽乃「魘されてた……?」

水都「はい」

声をかけても、体を揺すっても目を覚まさない

ナースコールを押して医者を呼んだが、

通常の手段はどうすることもできないとなって……見守っているしかなかったのだという。

幸いにも数時間経って治まったが

再発する可能性も考えて、水都はずっと隣に控えていたらしい

陽乃「そう……ずっと起きてたわけではないのね」

水都「すみません、寝ちゃいました」

陽乃は水都へと目を向ける

昨日と同じ巫女装束は皺だらけで

髪は元々ふわふわしていたが、今はぼさぼさで

頬には装束の袖の痕がくっきりと残っている

昨日から着替えてすらいないらしい

陽乃「別に責めてはいないわ」

昨夜……だろうか。

九尾の何らかの力によって陽乃はかつての自室にいた

そこで二人きりで今後のことを話し、

あえて守らずに結界を壊させることにした

それを知ったら、今度こそ藤森水都は離れてくれるだろうか?
892 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/08(月) 22:39:57.94 ID:kuR+76Z/o

水都「食事はできそうですか?」

陽乃「……噛まないものなら」

水都「そう伝えておきます。入浴と、あの……えぇっと」

陽乃「そうね。色々と頼みたいわ」

もちろん、それらの世話はさすがに水都ではない

ちゃんと看護師を呼んで、対応して貰う。

水都はその間に身なりを整えてくるだろう

陽乃「私、外出できると思う?」

水都「許可を戴けると思ってます?」

手足がまともに動かせないし、声を張れば血を吐くし悪化する

そんな病弱極まっている状態の陽乃を外に出すなんて不可能だ

水都「どこか行きたいところでも?」

陽乃「諏訪に来てからずっと、病院にいるのもつまらないから」

水都「ならまず、体を休ませてください」

まさにその通りだし、それしか無理だ

陽乃はため息もつけずに小さく息を吐く

水都「私も一旦帰ります。久遠さんの準備が終わったころにまた来ますね」


1、もう来なくていいわ
2、どうして?
3、白鳥さんは良いの?
4、伊予島さんと土居さんを呼んできて


↓2
893 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/08(月) 22:40:48.43 ID:I7dDBD61O
3
894 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/08(月) 22:42:43.24 ID:JAhn8ZwWO
4
895 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/08(月) 23:15:14.32 ID:kuR+76Z/o

陽乃「だったら、伊予島さんと土居さんを呼んできて」

水都「え……」

水都は思わず驚きを露わにしてしまう。

陽乃からのお願い

水都から問い、陽乃がそれに答えたものではなく、

陽乃からこうして欲しいと言ったのだ

驚きは瞬く間に喜びへと変わっていく

水都「は、はいっ!」

陽乃「あまり……大声出さないで」

水都「すみません……つい」

一旦帰る

だったらもう、来なくていいと言われる可能性さえあった

もちろん、それでもまた来るというつもりではあったが、

陽乃はそれなら……と、頼みごとをしてくれた

水都「分かりました。絶対に連れてきますね」

水都は安堵したように、息をついて答える

その二人は勇者だ

四国移住についての話などもあって忙しいかもしれない

でも、絶対に連れてこようと頷く

水都「任せてください」
896 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/08(月) 23:16:29.66 ID:kuR+76Z/o
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
897 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/08(月) 23:26:21.80 ID:JAhn8ZwWO

みーちゃんの絆値が既にタマを超えてるとは陽乃さんも妹分に好かれやすい傾向があるな
あと陽乃さんのヨボヨボぶりを見るとこれからの戦いを乗り切れるのか心配だ…
898 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/08(月) 23:47:05.46 ID:5AqfBPTAO

みーちゃん嬉しそう
久遠さんはとりあえずお休みだな
899 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/09(火) 00:31:40.06 ID:3Jcdz4D0O
乙 ほんとに長野来てよかったなあ
900 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/09(火) 20:17:28.23 ID:QYG8xpm4o

では少しだけ
901 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/09(火) 20:18:14.93 ID:QYG8xpm4o

水都「それにしても、静かに話すなら問題なさそうで何よりです」

陽乃「貴女のせいで悪化したのよ」

水都「すみません……嫌なことを言ってしまって」

陽乃が感情的になったのは、

水都が諦めてくれなかったからだ。

人を殺したことを話しても、

水都はそれを信じないのではなく、

信じた上で、それでも……と寄せてきたのだから。

水都も、そこまでしてしまったのは申し訳なかったと思っている

しかし、そこまでしたからこそ本心を感じられたと思う

水都「でも、久遠さんの話が聞けて良かったです」

陽乃「……悪化させたいの?」

水都「すみません」

すみません。と、謝罪するのは口だけ。

興奮出来ないから、穏やかなだけだと分かっているのに

水都は嬉しさを隠しきれていない

水都「あと1日……最低でも2日は入院した方が良さそうですね」

陽乃「最低3日くらいじゃない? こんなだもの」

水都に見えるように左手を上げて見せる

ベッドに放っていた左腕が臍の上にまで上がったところで、酷く震える

ベッドに落として握り拳を作るけれど、棒の一本すら握っていられそうにない

陽乃「足なんて、こんな掛布団を払い除ける力さえないのよ」
902 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/09(火) 20:22:43.31 ID:G74wZ8R+O
来てたか
903 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/09(火) 20:39:20.29 ID:QYG8xpm4o

水都「せめて、自分で飲み物を飲めるくらいにはなると良いですね」

陽乃「この手でペットボトルを持ったらお漏らしするって約束できるわ」

水都「何言ってるんですか」

とはいえ、

今の陽乃は、ペットボトルを持つこともできない。

500mlでさえ、その手から滑り落ちてベッドにぶちまける事になる

吸い飲み器でさえ、傾いて同じ結果になるかもしれない

水都「遠慮なく頼ってください」

陽乃「だったら、二人を連れてきて貰える?」

水都「看護師さんたちの準備が整うまではお傍にいます」

お手洗いとか、入浴とか、食事とか。

水都では難しい、いくつかの介助を行うための準備がある。

それが終わるまで、陽乃が一人にならないようにしたいらしい

水都「目を離した時に悪化されたら……って、不安で」

陽乃「貴女がいなければ悪化しないから」

水都「だ、大丈夫です。大人しくしておくので」

水都はそう言って、看護師が来るまで本当に静かだった。

飲み物は必要か、体は辛くないか

時々、そういう確認はしていたけれど、

陽乃のことを根掘り葉掘り聞こうとはしなかった。

水都「久遠さん……その、出来たら名前で呼んで貰えませんか?」

陽乃「名前って、藤森さんではなく?」

水都「はい……水都。藤森水都なので、水都で」


1、意味が分からないわ。お断りよ
2、考えておくわ
3、で、貴女は私を名前で呼びたいのね
4、さん? ちゃん? 呼び捨て?


↓2
904 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/09(火) 20:40:33.03 ID:G74wZ8R+O
3
905 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/09(火) 20:42:46.73 ID:Yj4tfjV10
2
906 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/09(火) 21:37:15.70 ID:QYG8xpm4o

陽乃「……分かったわ。考えておく」

水都「あ、ありがとう……」

陽乃「なんでそうなるのよ」

照れくさそうに礼を呟く水都を一瞥した陽乃は、

ゆっくり瞬きをして、小さく息を吐く

陽乃「断られると思った?」

水都「う、うん……断られると思ってた」

ならなんで言い出したのか……なんて、

陽乃は聞かずに目を背ける

首を横に振るのすら今は辛い

陽乃「考えておくとしか言ってないんだけど」

水都「それでも良いです」

すぐに断るのではなく、考えてくれる

たとえ後々嫌だと言われても

考えてくれたというだけで十分だと、水都は嬉しそうに笑みを見せる

だから、ありがとう。なのだ
907 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/09(火) 22:10:15.26 ID:QYG8xpm4o

水都「そう言えば、久遠さんって今何歳なんですか?」

陽乃「15よ。今年で」

水都「じゃぁ、私よりも一つ上ですね」

正直、たった一つ上には思えないのだが、

かといってそこで嘘をつく意味もないだろうと思う

冗談……も、今の体調からしてそんな無駄話をする気にはならないはずだ

水都「うたのんも同じで久遠さんより一つ下なんですけど……でも、なんだかそうは思えない感じで」

陽乃「それはそう……でしょうね。普通じゃないもの」

普通に生きていれば絶対に経験しないであろう経験をした

目に見て、手に取って、鼻を通って、肌に感じた

そんなことがあってもまだ、普通の中学生でいられたのだとしたら

それはどこか壊れてしまっているとさえ思う。

もちろん、陽乃がした経験はもっと性格が歪むものだったし、

それを参考には出来ないけれど。

陽乃「普通でいられたら、良かったけど」

水都「……そうですね」

陽乃「でも、そうじゃ、ないのよ」

水都「わかってます」
908 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/09(火) 22:57:30.48 ID:QYG8xpm4o

もう普通ではいられない。

みんなが失って、もう二度と取り戻せないかもしれないもの

けれど、歌野はその中でも日常を作り上げようとしている

凄いと思う。

立派だと思う。

自分にはそんなこと、絶対に出来ない

陽乃「もう帰ったら?」

水都「ぁっ……」

陽乃「貴女が何を悩んで、いても……私は知らないし、聞く気もないわ」

水都「すみません」

水都は反射的に謝って、首を振る

きっと今の自分は分かってしまう表情だろうから。

陽乃が何があったのかなんて聞いてくれるだなんて思っていないし、そうして欲しかったわけでもない。

ただ、考えてしまっただけ。

水都「もう大丈夫です。私は私の出来ることをするって、決めたので」

陽乃「そう……羨ましいわね。私は出来ること、なにもないから」

水都「しばらく休めば、大丈夫ですよ」

嫌味っぽい返し

歌野だったら絶対しないそれは少し、特別な感じがした
909 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/09(火) 23:01:17.59 ID:QYG8xpm4o

√ 2018年 8月11日目 昼:諏訪

01〜10 歌野
34〜43 襲撃

↓1のコンマ

※それ以外は杏・球子交流
910 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/09(火) 23:02:14.31 ID:lUi51s83O
911 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/09(火) 23:08:47.29 ID:QYG8xpm4o

ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
912 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/09(火) 23:13:20.24 ID:DrSN0yFgO

陽乃さんに共感してるのもあってかグイグイ引っ張っていくみーちゃんってなんだか新鮮だなぁ
913 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/10(水) 00:49:10.47 ID:QZ40bTIRO

みーちゃんグイグイ来てくれるの助かる
914 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/10(水) 21:14:09.03 ID:5E/bhfpKo

では少しだけ
915 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/10(水) 21:14:35.66 ID:5E/bhfpKo

√ 2018年 8月11日目 昼:諏訪


杏「思っていたより、大丈夫そうですね」

陽乃「まぁ……そう、ね」

球子「会いたかったのに、中々会えなくて悪かったな」

陽乃「別に」

何もできなかったうえにまともに話すこともできなかったし、

杏と球子とはそこまで親しいわけでもない。

諏訪にいる人々の中では、距離が近いとは思うけれど

その程度。

病床に伏せっているときに会いたくなるかと言われれば、特別、そうでもない

陽乃「諏訪はどう?」

杏「向こうに比べると、色々と不足しているように感じます。食料とか……みんなで畑を耕して頑張っているからこそ、って感じで」

球子「でも、活気はあるな……もしかしたら、これに関しては四国よりも良いかもしれないぞ」

人口が関係しているかもしれないが、

諏訪は四国に比べて、バーテックスに対しての恐れが重くない

天空恐怖症候群と言われているあの精神的な病気の発症が見られないのだ

久遠家に関する噂などもないので、

妙な緊迫感と言うか、後ろ暗い雰囲気が感じられない

球子「歌野のお陰だろうな。たぶん」
916 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/10(水) 21:37:16.51 ID:5E/bhfpKo

陽乃「そう……諏訪は良い場所なのね」

杏「みんな優しくて、温かくて、凄くいい場所ですよ。久遠さんのことも凄く気にかけていました」

陽乃「私? どうして……」

歌野がむやみやたらと広めるとは思えない

水都も、同じように余計なことを言うようには思えない

では――と、陽乃が球子を見ると、

球子は不思議そうに目をしばたたかせて、はっとする

球子「た、タマは何にもしてないぞ!」

陽乃「何も言ってないのだけど……」

球子「こっち見たじゃないかっ!」

杏「タマっち先輩、しーっ」

球子を宥めた杏は、大丈夫だよ。と笑って

杏「久遠さん、いきなり血を吐いて倒れたから……見てた人が凄く驚いちゃって」

それが広まっていったのだと、杏は言う。

外から来ただけでもあり得ないことなのに、

それで血を吐いて気絶した挙句、それが歌野が紹介した四国からの使者……勇者だっていうのだから、

陽乃のことがあっという間に広まるのも無理はなかった。

目は覚ましたのか、体は大丈夫なのか

色々と気にかけてくれているらしい。

陽乃「向こうじゃあり得ない、わね……」
917 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/10(水) 21:49:58.39 ID:5E/bhfpKo

杏「久遠さんは、諏訪に残りたいですか?」

陽乃「残ったって……」

杏「そうですね。厳しいと思います」

諏訪の結界は長く持たない

陽乃達が防衛に参加したとしても

多少の延命が出来るだけで、最終的には無くなってしまう

だから、出ていかなければならない

またあの場所に戻らなければならない

その時、陽乃の評判はどうなっているのだろうか。

本当に人を殺めてしまった久遠家の娘は、果たして……どう扱われるのか。

球子「でもまぁ、出来る限り守った方が良いんじゃないか?」

杏「でも、白鳥さんは安全なうちに希望者を連れて行って欲しいって言ってたよね」

球子「そうは言ったって、総攻撃があるか分からないけどそれの後じゃないと危険だろ」

杏「うん……」


1、貴女達はどうしたいの?
2、私、総攻撃でここの結界を壊させようと思ってるの
3、総攻撃の後、私は荷物になると思うわ
4、気を付ければ大丈夫でしょ。どうにかなるわ


↓2
918 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/10(水) 21:59:26.69 ID:SE+y8YCcO
2
919 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/10(水) 22:00:51.51 ID:Zm/l+IhX0
3
920 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/10(水) 22:30:11.61 ID:5E/bhfpKo

陽乃「総攻撃の後、私は荷物になると思うわ」

球子「あぁ……確かに」

杏「確かにって、タマっち先輩言葉を選ぼうよ」

球子「事実だから仕方がないだろ」

総攻撃では、流石に陽乃も参戦する

結界を破壊させる予定ではあるが、

そうではなかったとしても、全力で力を使うのであれば、今みたいな状況に陥るのは確定と言ってもいい

そうなった場合、

陽乃は置き去りにされたら、確実に死ぬ。

恐らく、そうなったなら九尾が出てくるだろうけれど。

球子「その時はタマが運んでやるから安心して良いぞ」

陽乃「貴女だって戦いで傷ついているはずよ」

球子「腕が取れてたら難しいけど、そうじゃなきゃ大丈夫だ」

杏「も〜変な事言わないで」

球子「なる可能性もある……だろ?」

もちろん、なる気はないが

万が一なってしまう可能性も考えて、球子は言う

自分が勇者だから。なんて、慢心はない

球子「その時は杏が頼む」
921 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/10(水) 23:19:44.38 ID:5E/bhfpKo

杏「私、久遠さんをおんぶして歩く自信がないよ」

少しなら歩けるかもしれない

勇者の力があるから、それなりに支えることは出来るだろうけれど

杏だって、勇者として戦う立場にある。

球子のように腕を奪われずにいたとしても

そうなってしまった球子の分、頑張らなければならない

球子「台車に乗せるしかないな……」

陽乃「……置いていくって選択肢はないの?」

杏「ありえません」

球子「ないな」

陽乃「そう……」

向こうにいる人々や、千景、大社からしてみれば、

陽乃は遠征から帰ってくることなく死亡し

代わりに歌野が新たに加わってくれる方が良いと思うはずだ。

陽乃「連れ帰らない方が良いんじゃない?」

球子「そりゃ、向こうじゃそうかもしれないけどな……それとタマ達は別だろ」

杏「久遠さんを置いていくなんてありえません。諏訪が安全なら、それも考えますけど……そうじゃないなら、絶対に」
922 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/10(水) 23:24:32.70 ID:5E/bhfpKo

では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
923 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/10(水) 23:44:24.16 ID:SE+y8YCcO

陽乃さんにとっては四国に戻るメリットがないのがな…
諏訪に残る選択をしてたらどうなってたんだろうか
924 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/11(木) 00:08:17.69 ID:Ap3yDi3OO

なんにせよ総攻撃を退けないと
925 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/11(木) 20:37:48.34 ID:TfbGYnvMo
では少しだけ
926 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/11(木) 20:38:30.76 ID:TfbGYnvMo

杏「四国への移住に関しても、なんにしても。私たちの予定としては総攻撃の後になります」

球子「絶対にあるとは限らないからな、適度に外の状況を確認して総攻撃起きないくらいにバーテックスが減っていれば……ってのも考えてるけどな」

陽乃「期間、は?」

杏「持てば半年くらいは考えています」

総攻撃が起こらず、

諏訪の周辺からバーテックスが一掃できるまで、少しずつ襲撃があることも考えて、

そのくらいの期間があれば、周辺も少しは落ち着くはずだと考える。

それが、半年くらいだという想定だ

もちろん、結界が持つ前提の話になる。

持たなければ早々に出ていかなければならないし、

そうなってしまったら最悪、歌野達は諦めなければならない

杏「でも、おそらく総攻撃があるのは確定だと思います……昨日、時間を見て結界の外を覗いたんですけど、バーテックスは増えているように感じたので……」

球子「通信の回線も繋がりにくくなってるみたいだからな。バーテックスのせいか力が弱ってるせいかは分からないけど」

陽乃「通信……四国、と、だったっけ……」

四国……若葉との定時連絡

向こうでは、若葉とひなたと共にその場にいたこともあるので、

少しくらいは状況を分かってはいる。

陽乃が向こうで聞いたときは、通信には何の問題もなかったが、

それに影響が出始めているというのは聊か不穏だ
927 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/11(木) 20:55:06.38 ID:WLXA3S+1O
来てたか
928 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/11(木) 21:36:54.17 ID:TfbGYnvMo

杏「一応、向こうはまだ襲撃とかは起きていないみたいです」

陽乃「そう……」

手薄になったことにバーテックスが気付き、

四国にも攻撃を始める可能性も少なくはないと思う。

陽乃達がいなくなってまだ1日だ

昨日今日は平気でも、

明日は襲撃されるかもしれない

そうなったとき、向こうは耐えられるのだろうか

若葉は戦闘経験があると聞いているけれど

2人はどうだったか……

陽乃に対して武器を手に取れるのなら、千景は大丈夫かもしれない

陽乃「動けないって不便ね……」

諏訪を見て回ることもできないから

全部、話を聞かなければならない


1、乃木さん達はどんな感じだった?
2、それで? 私のことも聞いたんでしょう?
3、向こうが心配じゃないの?
4、総攻撃以外は任せて良いのよね?

↓2
929 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/11(木) 21:39:34.32 ID:WLXA3S+1O
1
930 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/11(木) 21:41:30.51 ID:PWAjTl4E0
2
931 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/11(木) 21:58:14.17 ID:TfbGYnvMo
↓1コンマ判定 一桁

1269 聞いてない
5378 聞いた
  40 聞いた(特殊)


※特殊 歌野達
※奇数 悪 ぞろ目 最悪
※偶数 普通 ぞろ目 良
932 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/11(木) 22:00:06.75 ID:PWAjTl4E0
933 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/11(木) 22:49:10.55 ID:TfbGYnvMo

陽乃「それで? 私のことも聞いたんでしょう?」

球子「あー……まぁ、その」

杏「……聞いてます」

露骨に揺らぐ言葉

陽乃からそれていく視線

話しは聞いたけれど、

少なくとも朗報ではなかったと分かる仕草

嘘が苦手なのだろう

杏「ただ、えぇと……なんと言えば良いか」

球子「聞いたって面白くないぞ」

陽乃「……私の、ことでしょ」

自分自身のことだから

つまらない話だから聞かなくていいとはならない

杏「大社は正式に久遠さんを拘束するようにって、要求しているみたいです」

球子「……勇者の力を使ってでもな。タマ達はスマホが圏外になってるから内容は見れないけどな」

陽乃「圏外?」

杏「あ、はい。四国を出てから途中までは電波が届いていたんですけど、今は圏外です」
934 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/11(木) 23:01:20.96 ID:TfbGYnvMo

杏「お陰で、大社からの通達を確認せずに済んでます」

そう言って笑った杏は、

またすぐに……表情を曇らせる

大社からの通達がそれほどまでに問題なのかもしれないと、

陽乃は小さく息を吐く

球子「話すのか?」

杏「うん……」

球子の不安そうな問い

それだけでも少し怖いが、杏の神妙な面持ちが余計に不安を煽る

杏「実は郡さんが私達を久遠さんが殺したのでは。と、大社に詰め寄ったらしいです
  事実無根ですが、この通り圏外で全く連絡がつかないせいか……証明が出来なくて」

陽乃「あの通信を……使えば良いんじゃ、ないの?」

球子「言ったろ? 繋がりにくいって。そのせいで本当にタマ達がいるって証明にはなってないんだ」

そもそもビデオ通話のような、顔見せが出来るわけではないので

声だけでは本人じゃないと言われたら困ってしまう。

流石に、杏や球子の両親を連れ出して通信に対応して貰うわけにもいかないだろうから。

陽乃「なるほど……ね。私、嫌われて……るから」

千景は嫌がらせでも、杏たちを心配してでもなく

本気で陽乃のことを嫌悪し、疑っているのだ

まして、本当に人を殺したとあっては疑わざるを得ないのだろう
935 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/11(木) 23:05:01.34 ID:TfbGYnvMo

では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
936 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/11(木) 23:15:47.33 ID:WLXA3S+1O

ますます四国に戻りづらい状況だな…
千景に至ってはもう仲直り出来そうにないのも辛い
937 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/12(金) 00:22:46.60 ID:p3EG15nMO

でも千景の行く末考えたらお互いがお互いに本当の理解者になれるかもしれん
938 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/12(金) 20:52:23.00 ID:MXPySprAo
では少しだけ
939 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/12(金) 20:53:23.72 ID:MXPySprAo

陽乃「そこは、あなた達が無事に……帰れば解決するでしょ?」

球子「それはそうだけど」

杏「でも、だからって諏訪を放って帰るわけにはいきません」

諏訪から四国へと移住することを選んでくれた人々を連れて四国への帰還をすることが出来れば

外の状況、諏訪の現状

そして杏と球子の無事を伝えることが出来る。

諏訪への総攻撃の可能性を伝え、

若葉達を連れて諏訪の加勢に来ることだって敵うかもしれない

けれど。

そうはならないかもしれないのだ。

道中で襲撃を受け、多くの犠牲者が出るかもしれない。

大社が陽乃の力を知っているせいで、杏と球子が本人であると思われず、

一定期間拘束されることになるかもしれない

そうならなくとも、加勢に行くことは止められる可能性が高い

だから、総攻撃を退けた後の出発を考えている

そこで何かしらの被害が出るとしても、諏訪を諦めるのと諦めないのとでは話が変わってくる

杏「……そこで一つ問題があるんです」

杏は困り果てた顔で、切り出す

杏「総攻撃後に久遠さんが動けなくなって、諏訪の結界が破壊されてしまっていた場合……久遠さんが回復するのを待たずに四国に連れて帰ることになります」
940 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/12(金) 21:20:00.58 ID:MXPySprAo

今もこうして陽乃が療養できているのは、

諏訪に医療施設があり、結界で守られているからこそだ。

そうでなければ、いつバーテックスに襲われるかも分からないあの緊迫感の中で

身も心も中途半端な休息をとらなければいけなくなる

そんな状態では陽乃の体が元に戻るとは思えない。

四国に着いた後、大社に知られることなく安全に逃がすことは不可能だと言っていい

杏「でも、総攻撃で力を温存して欲しいとは言えません」

球子「総攻撃の規模にもよるけど、やばいだろうからなー。まぁ、そこはタマ達も死ぬ気で頑張るってことで」

気落ちした様子の杏の一方で、

球子は張り上げることなく、明るい声で笑う。

そうするしかないという諦めもあるのかもしれない

けれど――球子はお茶らけて見せているだけで、内心は本気のように感じられる

球子「絶対に諏訪を守る。結界の一つは壊されるかもしれないけどな……もう一つは絶対に守ってやる。だから安心して、ぶっ倒れてくれ」

杏「倒れないのが一番なのにっ」

球子「そ、そうなっても良いってはなっ――」

杏に詰め寄られて、椅子から転げ落ちる球子

鈍い音と、椅子が倒れる騒音が病室に響いたかと思えば、

すぐさま廊下をかけてくる音が聞こえて、看護師や水都達がなだれ込んできた

「お静かに願います。大きな音でも頭に響いたりすることもあるんですから。説明したように絶対安静ですし、そもそもここは病院なので……
 それが守れないのであれば、いくら勇者様と言えど出入り禁止にさせていただきますからね」

看護師は陽乃に何かがあったわけではないと安堵しつつも、

お尻を押さえて蹲る球子へと、注意を叩きつけた
941 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/12(金) 21:30:46.99 ID:MXPySprAo

√ 2018年 8月11日目 夕:諏訪

01〜10 歌野
21〜30 九尾
81〜90 襲撃

↓1のコンマ

※それ以外は通常(水都)
942 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/12(金) 21:31:51.78 ID:5h9B8SQLO
943 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/12(金) 22:19:32.50 ID:MXPySprAo
√ 2018年 8月11日目 夕:諏訪


騒がしさを運ぶ球子を杏が連れていき、また静かになった病室

けれど陽乃一人になったわけではない

陽乃「貴女は帰らないの?」

水都「久遠さんが眠るまでは、傍にいます」

球子や杏の使っていた椅子を片付けて、

新しいペットボトルを用意して

陽乃の腰下まで下がっていた布団を引き上げていく

水都「横になりますか?」

陽乃「……そうね」

腰を支えていた枕を外し、

ベッドの角度を整えて、陽乃の体を横向きに寝かせる

水都「少し、体ほぐしますね」

陽乃「そこまでしなくても大丈夫よ」

水都「そうですか?」

陽乃「そういうのは、看護師さん達がやってくれるから」
944 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/12(金) 23:37:29.25 ID:MXPySprAo

水都「声、ちゃんとしてきましたね」

陽乃「そう……?」

水都「水以外も飲めるかどうか、看護師さんに確認しますね」

陽乃の喉が非常に弱っていること

喉だけでなく、体の内側まで傷ついていたため、

炭酸飲料はもちろんのこと、

下手にジュースなどを飲ませるわけにもいかなかった

けれど、やはり勇者の身体

治りは早いらしい

大人しくしておけば……だが。

水都「……四国との通信ですが、乃木若葉さんも久遠さんのこと凄く気にしていましたよ
    絶対に無理するはずだって、言ってました」

陽乃「まだ何の役にも立ってないって、ちゃんと言った?」

水都「言ってませんよ」

そんなこと、絶対に言わないです。と

水都は首を横に振る

水都「ただちょっと、最近はノイズが入るようになってきたのが心配です」
945 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/13(土) 00:12:26.49 ID:xSHr3uk2o

前から、

数回に一度、ほんの数秒程度にノイズが入るのはあった。

けれど最近は一回の通信中に何度も途切れたり、ノイズが入ったり

確実に乱れていると感じる

いつ通信できなくなってもおかしくはない

水都「本当に近いうちに総攻撃が行われるかも、しれません」

陽乃「神託は?」

水都「まだ、ありません……」

陽乃「そう」

神託がどのくらいの精度で行われているのかを陽乃は知らない

数日前に来るのか、本当に直前に来るのか

水都の巫女としての素質は、九尾がもてはやさないのを見るに

そこまで高くはないのだろう

そして、諏訪の神々の力が弱まってきているのなら、

神託も遅れるのではないかと、陽乃は目を細める

水都「すみません……私、巫女としての素質はそこまでないので」

陽乃「一般人よりは、貴女の方が素質はあるでしょ……直前でも知れるなら、襲われてから気付くよりはマシだわ」
946 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/13(土) 00:14:34.38 ID:xSHr3uk2o

では途中ですがここまでとさせていただきます
明日も可能であればお昼ごろから
947 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/13(土) 00:35:05.45 ID:nM4LZMLmO

水都ちゃん本当に面倒いいな
ボロボロになって陽乃のメンタルケアには助かる
948 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/13(土) 07:21:08.00 ID:7sSax0rsO

うたのんやみーちゃんをこのまま死なせたくないなぁ
949 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/13(土) 18:20:01.88 ID:xSHr3uk2o
では少しだけ
950 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/13(土) 18:21:04.06 ID:xSHr3uk2o

水都「そうですね……何か神託があったらすぐにでも報告します」

陽乃「私に報告してどうするの?」

水都「もちろん、うたのん達に伝えるのが先にはなると思います
    でも、万が一総攻撃だと思われる神託があったなら、真っ先に久遠さんに伝える必要があるかなって」

陽乃「総攻撃なら、私に出る出ないは選べないと思うけど」

水都「そうかもしれないですけど……」

陽乃の素っ気ない対応にも、

水都は悲しそうというよりも、訳知り顔で小さく笑う

水都「久遠さんはほかの人よりもずっと、命懸けですから」

陽乃「命懸けなら、そこに差はないわ」

水都「じゃぁ、死んでしまう可能性が一番高いから。というのはどうですか?」

死ぬ可能性なんて、0か1かだ

バーテックスに殺される可能性があるのはみんな一緒だが、

陽乃には自分の力で死ぬ可能性がある

だとしても生きるか死ぬかでしかないと陽乃は息を吐く

陽乃「総攻撃で一番死にやすいのは、最も誰かを守ろうとする愚かな勇者よ」

水都「だとしたら、久遠さんかうたのん……かな?」

陽乃「私が誰かを守ろうとするわけ、ないでしょ」
951 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/13(土) 18:27:30.05 ID:wcBlFO34O
来てたか
952 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/13(土) 19:04:26.64 ID:xSHr3uk2o

水都「そうですか」

肯定するような口ぶりではあるけれど、

水都の表情は柔らかで、まるで信じていないように見える

陽乃が他人を守らないはずがないと、信じているのだろう

陽乃「勝手な事ばっかり」

水都「……だって、久遠さんの自己評価と伊予島さん達の話が全然違うから」

陽乃が自分を悪と言うとすれば、

杏たちは揃って、陽乃は善だと言う

だったら、陽乃は他人を救ってしまう人だ。

水都「そう言えば、久遠さんの体について少し調べてみました」

陽乃「私の身体?」

水都「そうです。勇者の力は神様から頂いた力なので、それに類する何かがあったんじゃないかなって」

陽乃「……で?」

水都「まだ古文書の翻訳中です。ただ、神様の力を借りるって言う点で憑依が怪しいのではと思ってます
    所謂、神降ろしですね。それによる代償として久遠さんは体を供物として捧げているのではないかと」

陽乃「へえ……」

水都「その供物として捧げられた体の一部を実際に神様が口にしているから、身体の内側が傷ついている。とか」

陽乃「たくましい想像力ね……枯渇したサブカルチャーを担えそう」

水都「それはちょっと難しいです」
953 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/13(土) 19:38:21.35 ID:xSHr3uk2o

水都「とにかく、久遠さんの体はなんだかすごく……普通じゃないと思います」

普通に検査しても、

陽乃の体は異常な回復力を持つ女の子の身体でしかない

水都が知る歌野よりも優れた回復力ではあるけれど、

勇者としての力が強いことを加味するなら、普通と言えるかもしれない。

だけど、力を使って体の内側を削られるなんて普通ではない

それでも回復する陽乃もまた、おかしい

水都「気を付けて欲しいのは、回復したからと言って本当に元に戻ったとは限らないということです」

陽乃「……また妄想?」

水都「ただの杞憂であって欲しい心配です。
    久遠さんは明らかに普通の勇者とは違うので、治った体が普通から外れていっている可能性もあるんです」

神降ろしは母も語っていたことだ

久遠家は依り代としての役割を持っており、

生贄に捧げられるべき血筋であると

もしもそれが、巫女ではなく勇者となることで歪んだのだとしたら。



1、余計な詮索はしない方が良いわ
2、四国との通信、どうにかする方法はないの?
3、私の血筋は、そもそもそういうことを主としたものだから
4、どこかに禊が出来るような場所、ある?


↓2
954 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/13(土) 19:39:40.63 ID:wcBlFO34O
4
955 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/13(土) 19:40:56.13 ID:yBHkfTbT0
3
956 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/13(土) 20:20:32.26 ID:xSHr3uk2o

陽乃「私の血筋は、そもそもそういうことを主としたものだから……」

水都「そういうことって、神降ろしとかですか?」

陽乃「……ええ」

水都は驚き、戸惑った様子で視線を彷徨わせる。

神降ろしをしている状態ではないかと想像はしたが、

実際にそれを行っているという確証はどこにもなかった。

しかし、陽乃がその家系の子であるというなら話は変わってくる

水都「もしかして、久遠さんは巫女の家柄なんですか?」

陽乃「そう、なるわね」

水都「巫女で、勇者……」

陽乃「そうなるわね」

歌野は、ただの女の子から勇者になった。

杏と球子も同様だったと聞いている

だが、陽乃はそうではなく巫女の家系として存在していたのに、

巫女ではなく勇者となった

普通じゃないのは、それがあるからだろうか。

水都「神降ろしを行う巫女の家系……それって、まさか人身御供っていうのとも――」

陽乃「関係があるか無いかで言えば、あるわね」
957 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/13(土) 21:23:26.08 ID:xSHr3uk2o

水都「……あの、もしかしたらなんですけど」

陽乃「なぁに?」

水都「久遠さんが特別なのは、初めからそれだけの力を使えているだけで
    本来は勇者だったら使えるっていう可能性はありませんか?」

陽乃は力が強すぎると言われている

しかも、それには代償まで伴うという

だが、歌野の力には代償らしい代償もない

力を使ったら内側がダメージを受けるなんてことはないし吐血もない

それがもし、

力の扱い方、あるいは力の差でしかないのだとしたらどうだろうか。

水都「久遠さんが憑依させる形で力を使っているとしたら、うたのん達は表面的に力を纏わせている程度でしかないってことです」

陽乃「………」

巫女の素質と言う言葉を借りるなら

陽乃は勇者としての素質と巫女としての素質がありすぎて、

表面上に力を纏うなんてことは出来ず、内側に取り込むことしかできない

水都「久遠さんと同じような強い力を、うたのん達も使える可能性があるんじゃないでしょうか」
958 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/13(土) 22:22:29.67 ID:xSHr3uk2o

間違いなく使わない方が良い力と言うことになるだろうけれど

けれど、今の陽乃と同等の力をみんなも使える可能性がある。

陽乃は、その素質のせいでそんな危険な使い方しかできないのかもしれない

土地次第では作れない作物がある様なものだろうか。なんて考えて、

それは違うと、水都は首を振る

陽乃「他の人が使えるから、なに?」

水都「えっと……その、久遠さんだけが無理しなくても良くなるかもしれないって」

陽乃「私がこうなるのに?」

水都「……です、よね」

陽乃「普通の人がこんな力を使ったら大変な事になるでしょ」

陽乃のことをみんな切り札と呼ぶが、

やはり、その力もまた切り札だ

そんなものを当てにするわけにはいかない

水都「……久遠さんのこと、もう少し教えて貰えませんか?」

陽乃「教えることなんて、無いわ」

水都「でも、一番大事なこと教えてくれたじゃないですか」
959 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/13(土) 23:27:40.57 ID:xSHr3uk2o

家が、巫女の血筋であること

離さなくても良いことを陽乃は水都に話した。

人を殺してしまったことと比べれば、

大したことではないのかもしれないけれど

陽乃「だから、貴女になら全部曝け出すって?」

水都「そうしてくれたら嬉しいな。とは、思っています」

水都は睨まれても、笑みを浮かべる

まだ、1日2日の知り合いでしかない

それで何でもかんでも話して貰えるだなんて思えない

水都「私はただ、久遠さんのことを知ることができれば、力になるかなって思っただけで……」

そう言った水都は、

ちょっぴり照れくさそうに笑うと、自分の胸に手を当てる

頑張るって決めたから

水都「今回みたいに体が弱ることがないように対策できるかもしれませんから」

陽乃「それは無理よ」

水都「出来るかもしれないってだけです……とにかく、可能な限り調べてみますね」

陽乃の目に入りそうな髪を払い除けると、

水都はペットボトルを手に取って、飲み器へと注ぐ

出来ることを頑張ると決めたから、少しずつやっていければ良いのだ

――時間が許す限りではあるけれど。
960 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 00:15:45.12 ID:vJTXdnq1o

√ 2018年 8月11日目 夜:諏訪

01〜10 歌野
21〜30 水都
61〜70 球子
81〜90 杏

↓1のコンマ

※それ以外は通常
961 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 00:21:32.18 ID:RVRUeXZvO
962 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 00:23:00.21 ID:pHS3jJ9AO
963 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 00:27:07.56 ID:vJTXdnq1o

では遅くなりましたが本日はここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから
964 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 00:34:33.87 ID:RVRUeXZvO

陽乃さんこのままだと普通に死にそう…
せめてこの状況を切り抜けるためにもみんなとできるだけ情報を共有したいなぁ
965 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 02:15:28.39 ID:zHVJXKIKO

とりあえず柱壊されてから総攻撃に対する反撃に転じようとしてるってのは共有したいけどなあ
少なくとも杏たちには
966 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 14:31:43.76 ID:vJTXdnq1o
では少しずつ
967 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 14:32:10.43 ID:vJTXdnq1o
√ 2018年 8月11日目 夜:諏訪


陽乃「はぁ……」

声は出せるようになったし、

足は持ち上げるのは無理だが、横に動かすことは出来る

腕はまだ上げられそうにないし震えも残っているけれど。

少しずつ回復していっていることだけは分かる

もう数日休めば、出歩くこともできるだろうか

諏訪を見て回るか

若葉との通信に参加するか

出歩けるようになったからと言って、

1日中の外出はきっと許されないだろうから、考えておく方が良いかもしれない

陽乃「そんな制約、真に受けてあげる義理もないのに」

向こうだったら間違いなく抜け出している。

いいや、大人しく病院で療養すらしなかったかもしれない

なにせ、大社管理の病院に入院させられてそのまま監禁されるのだから。

けれどここでは水都を除けば、

みんな久遠陽乃と言う人物がどういうものかを知らないから、

ただの勇者として丁重に扱ってくれている

陽乃「知ったら……こんな部屋に放っておかれたりしないでしょうね」

身体が動かないなんて関係なしに拘束具はあるだろうし、

監視カメラだって設置されるだろう

陽乃「……結界の維持、できるのが一番なんだろうけど」

それは、出来ない
968 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 14:33:51.14 ID:vJTXdnq1o

↓1コンマ判定 一桁

19 圏外
3  通信

※ぞろ目特殊
969 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 14:34:41.92 ID:CrBY5vzcO
970 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 15:34:32.36 ID:vJTXdnq1o

通信が乱れているのが総攻撃の兆候だと考えるなら、

早くて今月末

遅くても来月中にはそれが来ると考えておいた方が良い

その間に襲撃がないのなら問題ないが、

バーテックスがそんな生易しいことをするとは思えない。

バーテックス達は、

諏訪の戦力が増強されたことに気付いているはずだ。

実際にバーテックスに被害を与えたし、

そのうえで諏訪に合流したのだから、確実に。

白くて丸い体のバーテックスではなく、

進化体と呼ばれる、強力な形態のバーテックスをいくつも投入してくるか、

物量で押しつぶしに来るか。

その両方か。

どちらか一方であれば勝機はあるかもしれないけれど

その両方だったなら、

手を抜くかどうかなんて考えも必要なく、蹂躙される気がしてならない
971 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 16:26:46.02 ID:vJTXdnq1o

水都が言うように、

陽乃と同レベルの力を使えるようになった方が良い気がすると、

陽乃は考えてすぐに目を閉じる

仮に、自分の素質が高いとして

それでもあれだけの代償が必要なのだとしたら

球子たちがそれを使うにはどれだけの代償を伴うのだろうか。

陽乃で吐血したりするなら

球子たちの体はどれだけ傷つくのだろう

それを考えると、水都に言ったようにあてにはできない

陽乃「……どうするべきかしら」

総攻撃に参戦するのは確定だ

だが、それ以外の戦いには不参加の予定

しかし、そこに進化体が現れた場合、

球子たちだけで対応できるかどうか。



1、休む
2、九尾を呼ぶ
3、球子たちの力について
4、通信について
5、イベント判定

↓2
972 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 16:27:55.35 ID:w96GhjoK0
1
973 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 16:30:08.05 ID:F/qqPojHO
3
974 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 17:32:19.25 ID:vJTXdnq1o

陽乃「切り札……」

球子たちの切り札の力

それが神々の力なのか、

九尾のように妖といった一段階下がる力なのか

前者であればその反動は間違いなく重いものになるけれど

後者であれば、影響は最小限に抑えられるのではないだろうか

もっとも、九尾はひなたが言っていたように神獣クラスの力を持っている

それに匹敵する力では、やはり代償が重いかもしれない

陽乃「……ん」

単純な戦闘能力を底上げするには、

やはり、それぞれに戦い方を考えて貰うのが一番だ。

球子の武器と、杏の武器

それらの長所を生かして、短所を庇い合って

――なんて、出来れば一番だが。

陽乃「土居さんには、楯を投げた後の隙があるのよね……伊予島さんは一手一手が弱い」

球子に火力があって手数が少ないとしたら

杏には火力がなくて手数が多い

白餅……初期バーテックスが相手なら杏のそれで十分だが、

相手が進化体にもなれば、力不足感は否めないだろう
975 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 18:03:33.22 ID:vJTXdnq1o

陽乃「戦い方を極めるか、力をそもそも底上げするか……」

そこを決めるのは陽乃ではない

球子達がどう考えるかだ

陽乃「そう言えば、端末が圏外なんだったっけ」

陽乃は、常に九尾を連れているため

端末なんてなくても勇者としての力を扱うことができる

しかし、球子たちはそうではない

神樹様という神々が集った強大な根源から、

端末を通して力を身に纏い、武器に宿し、戦う

以前は武器に宿すだけだったのだから、進歩していると言ってもいい

問題は、その端末が圏外であることだ

もし、この圏外が

ただ単にネットワークに繋がらないだとか、

電波が届かないとかではなく、

いつも借り受けている神々の力そのものにアクセスできていないという状態であるなら、

2人の力は、そのうち使用できなくなるのではないだろうか? と、

陽乃は目を細める
976 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 18:45:55.92 ID:vJTXdnq1o

ここに来るまで、半日

その間勇者の力を使い続けて、二度の戦闘

杏は外に出たと言っていたし

その時にも勇者の力を使っているかもしれない。

繋がりの絶たれた球子たちの力が有限なら

それはあとどれだけ使えるのか

そして、諏訪の結界が突破されて力が失われたとき、

歌野の勇者としての力はどうなるのか。

陽乃「……もし、みんなの力が使えなくなるとしたら」

球子たちが有限で、

歌野が諏訪の結界が崩壊するとともに勇者ではなくなってしまうとしたら

そうなったら、もう、全滅するほかない

いいや、陽乃が死ぬ気で戦えばどうにかなるかもしれない

その場合、生き残れたとしても数日の入院では済まないだろう

陽乃「……九尾なら、分かるかしら」


1、九尾を呼ぶ
2、今日は休んでおく

↓2
977 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 18:52:10.20 ID:w96GhjoK0
2
978 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 18:54:15.07 ID:UkgDMqkPO
2
979 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 19:38:01.41 ID:vJTXdnq1o

陽乃「……明日、でもいいかな」

少し考えて陽乃は目を閉じる

小さく息を吸い、吐き出す

諏訪の病院の一室も、もう見慣れたと言えるだろうか。

白い天井は見飽きたし、

横に控える電子機器の音も聞き飽きた

病院で使われるシャンプーと薬品の匂いも……

全く体を動かせないせいで、

見える景色がほぼ変わらないのが原因だ

陽乃「身体、早く治さないと……」

そのためにも、夜更かしはすべきではない

きっと、見回りも来るだろうし

九尾に聞くなり、杏たちに確認するなり

あとは、襲撃にも警戒して――

陽乃「……ん」

今日は、水都はいない

別にどうでもいいことだと陽乃は息を吐く

身体から力を抜いていくと、

今の自分の体がどれほど追い詰められているのかがはっきりしてくる

両手足、胸の内、腹部……まだ違和感がある
980 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 20:11:08.50 ID:vJTXdnq1o

身体が使えない分、頭を使いたくなる

けれど、使ってしまったらまた疲労が蓄積する

今日はもう休んでしまうべきだろう

明日は自分で水を飲めるくらいにはなるだろうか

それとも、車椅子に移るくらいは出来るだろうか

そのどちらも、まだ難しいかもしれない

陽乃「明日も藤森さん……くるのかしら」

あの調子なら、きっと来る

自分を水都と呼んで欲しいとまで言ってきたのだから

人を殺したこと

自分が巫女の家系であること

内側のことを話してしまった唯一の相手

陽乃「はぁ……付け込まれたわ……」

身も心もボロボロだったとはいえ

聊か気を許し過ぎたかもしれないと陽乃は思って、薄く開いた瞳でどこかを睨む
981 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 20:19:50.33 ID:vJTXdnq1o

1日のまとめ(諏訪組)

・ 白鳥歌野 : 交流無()
・ 藤森水都 : 交流有(杏と球子を呼んで、名前呼び、血族)
・ 土居球子 : 交流有(総攻撃、陽乃について)
・ 伊予島杏 : 交流有(総攻撃、陽乃について)
・   九尾 : 交流無()

√ 2018/08/10 まとめ

 白鳥歌野との絆 45→45(普通) 
 藤森水都との絆 58→62(普通) ※特殊交流 
 土居球子との絆 55→56(普通) 
 伊予島杏との絆 62→63(普通) 
   九尾との絆 64→64(普通)
982 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 20:33:18.79 ID:vJTXdnq1o

√ 2018年 8月12日目 朝:諏訪

01〜10 歌野
21〜30 九尾
51〜60 杏
81〜90 球子

↓1のコンマ

※ぞろ目 襲撃
※それ以外は通常(水都)
983 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 20:35:46.21 ID:ku9Eb8SyO
984 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 20:43:38.73 ID:vJTXdnq1o

√ 2018年 8月12日目 朝:諏訪


諏訪に来てから、もう3日目の朝

朝でなくてもいいなら今日で4日目になる

初日に気を失って、それからずっと病院の景色

そのほとんどにいる藤森水都の姿は

今日に限っては、見えなかった

九尾「目が醒めたかや?」

陽乃「九尾……?」

水都でも歌野でもなく

球子たち諏訪の勇者の誰でもない、女性

金色の髪に、赤い瞳のその人は、

馴染んだ声色で問ながら、陽乃の頬に触れてくる

九尾「案ずるな。妾がこの場にいても大した負担にはならぬ」

陽乃「それは良いのだけど、どうして」

九尾「主様は妾に問いがあるのじゃろう?」

喉を鳴らすような、笑い方

見た目で言えばとても綺麗な女性の瞳は、つり上がって鋭い
985 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 21:48:28.24 ID:vJTXdnq1o

九尾「あの小娘共の力は有限では無かろう。しかし、安心はできぬな」

陽乃「普通に使えるんでしょう?」

九尾「四国との通信があるじゃろう? あれが有効ならば、小娘共も問題なく力を使えるはずじゃ」

四国と諏訪の通信技術

あれは神の力を織り交ぜた普通ではない方法で行われている

それが四国の神々と球子達の架け橋となって、

力を供給してくれるはずだと九尾は言う

しかし、今はそれが乱れている状態で、より一層酷くなっていると言う話がある

だから安心はできないのだ

九尾「主様の目的を達成するならば、小娘共は勇者としての力を一時的に喪失する可能性はある」

陽乃「そんな話……」

九尾「圏外とやらは知らぬが、力の供給が足りておらぬとは思わなんだ」

くつくつと喉を鳴らすように笑うと

わざとらしく手の甲で口許を隠す仕草を見せて、細めた瞳で陽乃を見る

九尾「通信だけならば、妾でどうにでも出来るが」

陽乃「……本当に?」

九尾「通信に用いる力を強制的に書き換えて安定させるだけじゃからのう……妾にも出来ることではある
    向こうに上里ひなたを残しておるじゃろう? あの娘が場におらねばならぬが」
986 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 21:56:57.99 ID:vJTXdnq1o

ひなたに授けた加護もまた、九尾の力だ

それが通信設備に接することで同じく接した九尾と力を繋ぎ合わせ、

織り交ぜられている神々の力の代替とするのだと言う。

もちろん、それでも陽乃には多少の負荷がかかることになるが、

万全であれば、それほど大きな負担ではなく

少し疲労感を覚えるという程度らしい

九尾「じゃが、問題は妾の力を織り交ぜたからと言って、小娘共に力の供給が出来るとは限らぬということじゃな」

陽乃「出来るかもしれないし、出来ないかもしれないってこと?」

九尾「運次第。と言うやつじゃな」

楽しそうに九尾は笑うけれど、全然笑える話ではない。

通信が出来なくなるだけなら良いが、

それによって球子たちが戦えなくなるというのは大問題だ

それもまた絶対ではないらしいが、

その可能性があるという時点で……不安が残る。

総攻撃を乗り越えても、四国に戻れないかもしれないのだ



1、対策は?
2、ねぇ、白鳥さんはどうなの?
3、通信、回復させましょ
4、みんなを呼んできて貰えないかしら


↓2

※4は昼使用
987 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 21:59:39.54 ID:ku9Eb8SyO
3
988 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 21:59:48.38 ID:pHS3jJ9AO
3
989 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 22:32:49.22 ID:vJTXdnq1o

陽乃「通信、回復させましょ」

九尾「良いのかや?」

陽乃「ただ音信不通になるよりはましだわ」

通信を回復してもしなくても

球子たちの力が使えなくなる可能性はある

四国とのつながりが完全に断たれてしまうのなら

通信を回復しない方が、そのリスクは高いと言える

陽乃「……一応、みんなには話すべきだとは思うけどね」

幸いにも、

ここには大社という組織が存在していない

歌野も水都も球子たちも協力的だ

可能性があるならと、承諾してくれるに違いない

だが、問題は向こう側だ

陽乃「上里さんって、確か大社預かりよね?」

九尾「うむ。そう言う話じゃったな」

陽乃「戻ってきてると思う?」

九尾「思わぬな」
990 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 23:09:40.77 ID:vJTXdnq1o

諏訪側の説得は容易いが、四国側の説得が簡単ではない。

現状、すでに通信は乱れているという。

伝わるまで繰り返して、若葉にひなたを連れてくるよう求められたとしても

若葉がひなたを連れ出せるように説得するのは難しい

今、四国のどこかに陽乃がいるのではないかという話になっているはずだ

ひなたが陽乃に殺されないために大社が匿っているという建前は、今や本音になっているかもしれない

陽乃が四国には居ないことを証明するには、

通信で陽乃が話す必要がある

しかし、通信のノイズを理由にそれを認められない可能性がある

陽乃「悪いことばかり考えていても仕方がないけど、乃木さんに説得して貰うしかないのよね?」

九尾「ふむ……出さねば諏訪を潰すとでも脅すかや?」

陽乃「……それなら、みんなには話せないわね」

絶対に反対される

水都はもちろん、球子や杏にも

歌野は……どうだろうか。

演技だからと説得することは可能だろうか?

いや、難しいだろう
991 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 23:51:55.63 ID:vJTXdnq1o

陽乃「どうやって上里さんを連れてきてもらうか、考えた方が良いわね」

九尾「主様が考える必要はなかろう」

陽乃「それはそうなんだけど……」

お願いする手前――じゃなくて。

陽乃「スムーズに話を進めたいじゃない」

九尾「ならば、やはり脅せばよい」

陽乃「私は良いけど、みんなが許さないでしょ」

向こうに戻ったとき、また一段と陽乃の立場が悪くなる

今以上に悪くなるのかと言う疑問はあるけれど、

だとしてもみんなが許してはくれないはずだ

九尾「黙らせればよいではないか」

陽乃「貴女はまたそうやって……」

九尾「惑わせばよい」

陽乃「………」

九尾の手段が一番早い……かもしれない

ただ、それを聞くのは若葉だ

その若葉の言葉を大社が鵜呑みにしてくれなければいけないのだ

陽乃「とりあえず、話してからになるわね」

ひなたを連れて来させる方法を検討して

らちが明かなそうなら――九尾の言うやり方

というのが一番だろうと、陽乃は困ったようにため息をついた
992 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 23:53:37.61 ID:vJTXdnq1o

√ 2018年 8月12日目 昼:諏訪

01〜10 歌野
34〜43 杏
67〜76 襲来
87〜98 球子

↓1のコンマ

※ぞろ目 襲撃(悪)
※それ以外は通常(水都)
993 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 23:56:05.03 ID:ku9Eb8SyO
994 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/14(日) 23:57:06.28 ID:vJTXdnq1o

では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
995 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/15(月) 00:03:50.14 ID:YOQqXu37O

陽乃さんに負担や気苦労が次々と襲ってくるなぁ
とにかくみんなと相談しないと
996 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/15(月) 21:35:47.65 ID:YUZDJJSio
では少しだけ
997 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/15(月) 21:36:46.72 ID:YUZDJJSio

√ 2018年 8月12日目 昼:諏訪


歌野「だいぶ元気になったみたいで、良かったわ」

陽乃「ええ……おかげさまで」

ここに来てからずっと入院、安静、付きっ切り介護

一回悪化させたせいもあるけれど、ここまで過保護にされていては、

休まる以外にはないだろう

もっとも、手足が動かせず水もろくに飲めないのだから当然ではあるが。

陽乃「それで、どうしてここに?」

歌野「久遠さん一人じゃ食事もできないって聞いたから」

陽乃「あなた達が来なくたって――」

歌野「そうね。看護師さん達が手伝ってくれる。けど、手伝いたかったの」

歌野はそう言いながら、

新しく用意されたスポーツドリンクを飲み器に注ぐ

水かお茶かスポーツドリンクかで選んだ一つ

風邪を引いたときなどに良く見たそれは、むしろ今の陽乃には適しているそうだ。

歌野「個人的に話したいこともあったから」

陽乃「……それほど親しい中でもなかったと思うけど」

いや、親しくないから話があるのか、

それとも藤森水都から何か話を聞いたのか。

陽乃が少し考えつつ歌野に目を向けると、笑みが返ってくる

歌野「少し飲む?」

陽乃「じゃぁ、少し」

水都ではなく歌野というのが少し違和感があったけれど、

飲み物の流し方は、不思議と歌野の方が丁寧で優しく感じられる

歌野が水をやり慣れているというのが、理由だろうか
998 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/15(月) 21:39:13.41 ID:YUZDJJSio
次スレ続きはこちら

【安価でのわゆ】久遠陽乃は勇者である【3頁目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1615811898/
999 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/15(月) 21:41:14.09 ID:00N4qW91O
1000 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/15(月) 21:46:09.43 ID:wGMuDTc2O
了解
1001 :1001 :Over 1000 Thread
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  °|     /⌒| ̄ __,       i         タンッ  .;.;.;;.;.;.;.;
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |      |              .;.;.;.;.;.;
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/     ノ    カチャカチャカチャカチャ .;...;.;.;.;.;
             |  _/ ̄ ̄ ̄|       パシッ タン .;.;.;.;.;.;.;
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