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【安価でのわゆ】久遠陽乃は勇者である【2頁目】

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703 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/24(水) 22:15:05.39 ID:jDukJghDo

杏「なら、是が非でも諏訪から四国に移送したいな……」

陽乃「諏訪の生存者がそれを望まないと無理だと思うけど」

球子「ん〜……交渉次第だろ。たぶん」

球子はそう言って、バーテックスがいなくなった周辺を見渡す。

ついさっきまでバーテックスが住処としていた場所。

球子の爆撃にも似た一撃によって多くの建物が倒壊したが、

それがなくても荒れ地となっていた長野の町

四国に比べて酷く小さく、貧弱と言われた結界

いつ壊されるかも分からない結界の中にいるよりも、

辿り着けさえすれば、今しばらく生きていくことのできる四国に行きたいという人は少なからずいるはずだ。

いや……そうとは、限らないだろうか?

球子「とりあえず、早く結界の方に行くぞ」

杏「そう、だね」

陽乃「ふぅ……」

四国から諏訪までの九尾の顕現

そして、今さっきの戦闘

力を使ったことによる負荷を感じる

球子「ここからは歩くか?」

陽乃「平気よ。気にしないで」

九尾に跨り、球子と杏も同じように引き上げてまた走る

そうして――九尾のおかげで半日程度で結界の中へと辿り着いた
704 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/24(水) 22:20:58.37 ID:jDukJghDo

↓1コンマ判定


01〜00 (00=100)

九尾+10、中力+20

※計20〜50でダメージ小
※計51〜70でダメージ中
※計71〜100でダメージ大
※100以上はアウト
705 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/24(水) 22:22:36.68 ID:pzoP6hMm0
706 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/24(水) 22:27:16.42 ID:7nveebhUO
あっぶねえ
707 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/24(水) 22:43:25.92 ID:jDukJghDo

√ 2018年 8月9日目 夕:諏訪


九尾に跨ったまま入るのはと、

その直前で九尾を隠して歩きで結界の中へと入る

杏「あっ……」

「おや……見ない顔だねぇ……」

諏訪までの道中、人の気配は全くしなかった。

崩れそうな建物、崩れた建物

割れたアスファルト、無造作に伸びた雑草

以前は人がいたはずなのに、

すっかりもぬけの殻となってしまった世界

それらを見てきたからこそ、

ここまで来てようやく、自分達以外の人の声を聞いた球子と杏は思わず涙を零しそうになる

「ま、まさか外から来たのかい?」

杏「はい……えっと、その……ここに勇者様がいると聞いたのですが」

「それなら神楽殿の方に――!」

見たこともない少女たちの登場に共学を隠し切れていなかったおじいさんの目が、より見開く

悍ましいものを見てしまったかのような、血の気が失せていく顔

何なのかと困惑する球子は声をかけようとして――

陽乃「ごぷっ……ぁ……はっ……ははっ」

すぐ後ろで、あからさまにヤバい声が聞こえて、振り返る

口元を押さえる手は真っ赤に汚れて、目元も赤く

空気と共に吐き出されているのか、指の隙間から血しぶきが飛んで……陽乃の体が崩れ落ちる

杏「久遠さん!」

杏の悲鳴にも似た声に、陽乃は何も返せなかった
708 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/24(水) 22:45:36.05 ID:jDukJghDo

では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


68(コンマ)+30(九尾+戦闘)=98
100は越えていないので死にはしません
709 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/24(水) 22:55:30.16 ID:csA3/lWCO

陽乃さん早くも倒れてしまったか…
総攻撃翌来るまで絶対安静だな
710 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/25(木) 00:23:52.10 ID:E/FBUjIiO

まあひとまずは長野でゆっくりしよう
711 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 20:34:08.57 ID:M/BybS93o
では少しだけ
712 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 20:34:41.70 ID:M/BybS93o

√ 2018年 8月9日目 夕:諏訪


夏の陽射しも傾き始めるころ、

諏訪湖の近くにある病院の一室に勇者が集まっていた。

元から諏訪で勇者として活動していた白鳥歌野

歌野を補佐している巫女である藤森水都

四国から来た伊予島杏と土居球子

そして……諏訪に到着してから体調を崩し、今は眠りについている久遠陽乃

杏は陽乃の傍のパイプ椅子に腰かけ、雲ってしまっている酸素マスクを見つめる

杏「……どうして」

球子「昨日、会ったときからヤバそうだったからなぁ……」

瀬戸大橋の付近にある展望台で陽乃を見つけた時のことを思い出して、球子は首を振る。

あの疲労感が壱日で回復したとは思えない

そこに九尾の顕現と戦闘

そこから休まずに結界内までの移動

それらがまとまってのしかかってきたのだとしたら、

ああなるのも無理はないのかもしれないと球子は考えて、顔をしかめた

陽乃は手で押さえながらも血を噴出して崩れ落ち、気を失って

それでも止まらずに陽乃は口や目から血を流し続けた。

血反吐を吐くと陽乃は自己申告していたが、

まさかあそこまでとは思っていなかったのだ

球子「……切り札だよなぁ」

歌野「……えぇっと、そろそろ話を聞いても良いかしら」

眠ってしまっている仲間を気にする気持ちを察しつつ、歌野は切り出す
713 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/25(木) 20:40:00.84 ID:bZyNQFZaO
うたのん達も来たか
714 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 20:43:25.09 ID:M/BybS93o

歌野「四国の勇者である乃木さんからこっちに勇者が来るって話は聞いてたけど……何があったの?」

杏「久遠さんに関しては力を使う代償のようなものなので、これと言って大きなことはありませんでした」

道中に生存者は見られなかったこと

点々とバーテックスの存在を確認しており、諏訪湖周辺の一団を潰してきたことを杏は話し、

もし、希望があれば諏訪から四国に全員を護送するつもりもあるということを伝えた。

もちろん、

それなりのリスクがあることと、全員が生きたままたどり着ける保障がないことも含めて。

だが、四国での陽乃の扱いは流石に伝えられない。

歌野「そっか……やっぱり、外はもう」

水都「うたのん……どうする?」

歌野「ん〜……とりあえず私達が勝手に決めて良いことじゃないと思う」

歌野は少し考えて、答える

歌野「それに、もし一人でもここに残りたいって人がいるなら……ここから離れるわけにはいかないわ」

水都「でも……」

水都は言い淀む。

正直、諏訪はもう限界が近い。

4つあった結界の要である御柱も、その内2つがすでに破壊されてしまっている。

歌野はかなり頑張っているけれど、3つ目が破壊されるのも時間の問題だろう。

そして、結界が破壊されれば安住の地は無くなる

出来るならここから出て新しい場所を探した方が良い

昔の神託では、国土を取り戻していけるという話だったけれど、

でも、もう、そんな希望が残されているようには見えない

水都「とりあえず、みんなを集めて四国への移住について話してみよっか」

歌野「そうね、そうしましょう」

病室と言うのもあって、歌野は少しトーンダウンして同意すると

陽乃を見て、目を細めた

歌野「乃木さんからは、とってもデリケートって聞いてたけど想像以上ね。本当に戦えるの?」

杏「一騎当千の力はあるんです。ただ、その分の負荷が重くて無理すると今回みたいになっちゃうみたいで」

歌野「そっか、まぁ回復するまでは安静にしてて貰った方が良いわね」
715 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 20:54:48.17 ID:M/BybS93o

球子「そういえば、若葉からどんなふうに話を聞いてるんだ?」

歌野「近々、四国の勇者がそっちに行くと思うから、受け入れてやって欲しいって言われたわ」

歌野はなぜだか困った様子で、水都を一瞥する

球子「何か問題があったのか? 来たらダメだったとか」

水都「えっと……そう言うわけじゃないんですけど」

水都も少し困惑した様子で、

小さくため息をつくと姿勢を正して……視線だけは下向きだった

水都「その連絡が今日の定時連絡で来たばかりだったので、数日後かと思ったんです」

歌野「今日出発だから、5日くらいかかるかもって話だったのに当日中でしょ? もう、何が何やら」

球子「あぁ……」

杏「それはそうですよね……」

その最速到達の理由は、陽乃の九尾だ

瀬戸大橋方面から結界外に出て分かったことだが、

まず車での移動は無理だ

飛行機などでなければ、道中で動けなくなる。

仮に飛行機があっても、軍用のなにがしかでもなければバーテックスに撃墜されかねない

つまり、1日2日で到達するには勇者であっても不眠不休でなければならない

それを、陽乃達は半日で踏破したのだから驚くのも無理はなかった。

杏「それも、久遠さんのおかげなんです。力の一つを使って、ここまで運んでくれました」

歌野「それなら――」

杏「いえ、数人しか運べないと思います。さすがに数十人一度は……」

歌野の言葉を遮って、杏は首を振る

九尾に全員を一度に運んでもらうのは不可能だ
716 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 21:07:07.03 ID:M/BybS93o

歌野「無い物ねだり。ね。それと周囲にバーテックスが展開してるって言うのが気になるわね」

杏「もしかしたら、総攻撃をしかけてくる可能性もあります」

球子「久遠……ん、陽乃が万全なら、総攻撃だろうと凌ぎきれる可能性はある」

水都「でも、この人は力を使う負荷が重いんですよね? だったら……あてにはできないんじゃ」

水都の言い分はもっともだ

いや、戦力としては十分に宛に出来る

陽乃が本気を出してくれるなら、もしかしたら一人で総攻撃を耐え凌いでくれる可能性だってなくはない。

けれど、その場合は確実に陽乃が死ぬ。

総攻撃において陽乃にどれだけの負担がかかるのかは分からないが、

それでもかなりの重症に陥るのは免れないと言える

球子「昨日、すでに疲れ切った状態だったからなぁ……それがなければここまでじゃなかったと思うぞ」

杏「諏訪への攻撃の程度を知りませんが、通常の襲撃は私たちで対処して久遠さんには総攻撃まで大人しくして貰うべきだと思います」

歌野「今までも私一人だったし、3人に増えるならもうイージーね。それもベリーな」

簡単なことだと歌野は笑って言うが、水都は少し怪訝そうな表情を浮かべていた。

歌野は実力がある

もちろん、実績だって申し分ない

しかし、それでもバーテックスの襲撃によってそれらが破壊されないとは限らないのだ

ネガティブなのは分かっている。

水都「あんまり過信しちゃだめだようたのん。何があるか分からないんだから」

けれど、不安だった

それは杏と球子の二人が戦力として加わってきてくれても拭いきれない。
717 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 21:16:30.39 ID:M/BybS93o

√ 2018年 8月9日目 夜:諏訪

↓1 コンマ判定

0 00 最悪
1、7、4 お目覚め
3、6、2 歌野
5、9、8 球子

※ぞろ目特殊(00以外)
718 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/25(木) 21:18:08.54 ID:bZyNQFZaO
719 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 22:01:45.66 ID:M/BybS93o

√ 2018年 8月9日目 夜:諏訪


陽乃「う……げほっ……けほっ……」

目を開くよりも先に、咳き込む

喉の奥から血があふれ出して、

真っ白な枕を汚す代わりに酸素マスクの中を赤黒く満たしていく

身体の内側から感じる熱い痛みは変わらず、

一度咳き込めば、その反動でナイフがより深く刺さったかのように痛みが増す

陽乃「あ゛っ……い゛っ……ぁっ……ごぷっ……」

手が動かない

足も動かない

吐血する体の痙攣だけが、しばらく続いて

すぐそばにあった心拍数を計測する機械がけたたましくアラートを発する

陽乃「っ……こ、こって……」

血の匂い、血の味、霞む視界

自分の居場所でさえまともに理解も出来ないまま、

慌ただしい足音が部屋に駆け込んでくるのをただただ聞いていることしかできなくて。

「久遠さん? 久遠陽乃さん?」

陽乃「ぅ……」

看護師らしき人の呼び声にも、返せる言葉がなかった
720 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 22:37:34.17 ID:M/BybS93o

目を覚ましてから1時間ほど経過した頃、

医師による処置と検査を終えた陽乃は、体を起こすことが出来るくらいには回復していた。

ベッドから降りた途端に膝から崩れ落ちるくらいには、力を失っているけれど。

「こちらをどうぞ」

看護師から渡されたお茶を飲み、

陽乃はふっと一息ついて、もう一口

「喉の痛みはどう?」

陽乃「少し、痛むけど」

「声も少し枯れているわね……」

看護師は心配そうに言うと、陽乃の前髪の部分を払う

看護師の女性は陽乃よりも二回りほど年上だ

子供がいれば、陽乃と同じほどの年齢でもおかしくない

だからか、看護師の瞳はとても優しいものだった

「声は極力出さないようにね。でも、咳き込むのを我慢したらダメよ?」

陽乃「あり……っ……げほっ……」

「……ごめんなさいね」

話しかけてしまったせいだと、

看護師は申し訳なさそうに陽乃の背中を撫でる
721 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 23:14:10.29 ID:M/BybS93o

「そうそう。今はまだ万全ではないから、他の勇者様は呼んでいないの」

陽乃「ん……」

陽乃が目を覚ましたことについてはすでに連絡しているのだが

動けない上に長く話せない陽乃を友人に囲ませるわけにもいかない為

早くても明日の面会にして貰うようにしていた。

それで来られないみんなが、

陽乃には会いたくないなんて勘違いされてはと、看護師は説明をする

「だから、安心してね」

陽乃「………」

ここは四国ではなく、長野だ

3年前の大規模な襲来によって

四国から諏訪への連絡手段は勇者間の連絡を除いて、喪失している

そのため、

久遠陽乃と言う人物が一体どのような人間なのか

そして、四国ではどのような境遇にあるのか

そういった情報は一切伝わってきていない

だから……陽乃に対しても敵意も憎悪も、警戒心さえもない

そしてなにより、好意的だ

「あまり無理してはいけないわ」

陽乃はそれに言葉を返すことなく頷く

礼は言いたいけれど、言って咳き込めば心配させるだけだ

「今日はゆっくり寝るのよ? 無理にでも眠らなきゃだめだからね」

そう言って陽乃から離れた看護師の女性は、

出る前にもう一度陽乃に目を向け、手を振って出ていく

本当に、好意的だ


1、休む
2、九尾を呼ぶ
3、体を動かす

↓2
722 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/25(木) 23:15:46.95 ID:E/FBUjIiO
1
723 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/25(木) 23:19:10.32 ID:lpmF/gAP0
1
724 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/25(木) 23:20:48.71 ID:M/BybS93o

ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
725 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/25(木) 23:24:56.76 ID:bZyNQFZaO

陽乃さんにとってはやっと楽園にたどり着いた感じがする
あとは元気になってうたのんと対面したいな
726 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/26(金) 00:12:43.27 ID:grRhFOLYO

今はとにかく体調戻さないとな
727 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 20:04:58.62 ID:i2IEf3Bco
では少しだけ
728 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 20:05:37.83 ID:i2IEf3Bco

看護師が病室からいなくなると、途端に静かになる

目を覚ましはしたがろくに動く事が出来ず、

また悪化するかも分からないため、

ベッドサイドモニタが稼働している電子音は相変わらず聞こえているが。

陽乃「はぁ……っ……」

意識していなくても口の中に溢れてくる唾液

それを飲みこむと、動く喉の痛みにえづきそうになる

陽乃「………」

看護師はゆっくり寝るべきだと言っていたし、

処置と検査を行ってくれた医師からも、暫く安静にしているようにと言われた。

そのあとでベッドから降りようとして膝から崩れ落ちたので、

本当に何にもできない

球子達勇者のみんながお見舞いに来ることが出来なくても

陽乃の傍には常に九尾がいる。

姿を出させるのは力をより多く使う必要があるために出来ないが

影の中に潜む九尾と話をするのは可能だ。

とはいえ、それも今は声と喉の調子が悪くて出来ない。

やっぱり寝るしかないかな。と、陽乃は目を瞑る
729 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 20:13:31.12 ID:i2IEf3Bco

3年前、陽乃は護るために力を得て多くを失い、けれども必死に守れるだけを守った。

まだ小学生の小さな手を伸ばし、

取りこぼしてしまったいくつもの命を目の当たりにして傷つきながら、苦しみながら

それでも、今やれるだけのことをやろうともがいて、もがいて――そうして、生贄になれと捧げられた。

仲の良かった従姉妹が目の前で喰い殺され、庇ってくれた父が殺され、

ただ一人、母だけしかその手の中には残らなかった。

命懸けで母を守り、戻った世界は陽乃を受け入れなかった。

それは、陽乃が多くの命を取りこぼしてしまったからだ。

目の前で頭部をかみ砕かれた女性を救えていれば、

伸ばされた手を取り引き出すことが出来ていれば、

もう少し早くたどり着き、人間を食い荒らすバーテックスが落ちるよりも先に手を打てていれば

きっとそうはならなかったはずだ。

陽乃「っ……」

それは無理な話だ。

出来たかもしれない。なんて話ですらない。

努力と運があっても、それはどうしようもなかった話だ。

たった一人で四国という、一人には広すぎる地を駆けまわっていたのだから。

けれど――化け物を殺せる化け物にはそれが出来たはずだと誰かが言った。

なぜ、どうして、と……恨みが生まれた。

生贄を拒み、母と共に生き残ったことが人類への裏切りとされ、

それこそが惨劇の引き金であると言われ、憎まれ、疎まれ、死を願われるようになった。
730 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 20:30:15.39 ID:i2IEf3Bco

その一方で諏訪にいる人々はこれからの陽乃が何かをしでかさない限り、

その存在を疎むことも憎むこともない。

けれど、この諏訪という小さな世界はもうじき壊れてしまう。

九尾の力のおかげか

それとも、今すでに満身創痍に陥るほどに身体が神の祟りに冒されているからか

諏訪を守る結界がどれほど傷つき、脆くなっているのかが感じられる。

球子と杏の二人が参戦することによって、

一回一回の襲撃による被害は大幅に軽減されるはずだけれど

だとしても少しずつ傷ついていき、やがて一つ、また一つと御柱は砕けて侵入を許すことになる

正直に言ってしまえば、

陽乃は四国に母を残しているという一点を除いて、戻る理由がない。

一度は許しかけた大社も、人一人殺めたとあってはついに許しておくことが出来なくなっただろうし、

人々に蔓延していた言われもない憎悪はその事実を持って真実となり、陽乃を潰しに来ることだろう。

味方であるべき勇者だってそうだ。

若葉は迷っている

けれども、千景は"殺すべきだった"と激怒しているはずで、

人を殺めた陽乃を、高嶋友奈は止めないわけにはいかないと考えている。

話しが聞きたい。なんて言いながら陽乃の前に現れて立ち塞がり、何が何でも連れ帰ろうとするはずだ

だから、きっと。

願い、叶うのであればこのまま諏訪に永住するのが陽乃にとって最も幸せな道なのだろう。
731 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 20:48:38.57 ID:i2IEf3Bco

諏訪は陽乃にとって、守るだけの価値がある世界だと言えるかもしれない。

けれど、それを守れるだけの力があると陽乃は思えない。

誰一人として死なせることなく、守り抜くだけの力があるとは思えない。

だから陽乃は自分を勇者とは言いたくないし、人々を守るだなんて口が裂けても言いたくはなかった。

約束しなくても、守れなければ恨まれる

なのに、約束なんてしてしまったらより一層その怒りが強くなるからだ。

医師の男性も、看護師の女性も

みんながみんな陽乃を気遣い、優しく接してくれた。

大社に軟禁されていた時とはまるで違って、一人の人間として扱ってくれていた

それが一変してしまう可能性だって秘めている。

陽乃「ぅ……うぅ……」

陽乃は "守れないのが怖くて" 仕方がなかった

この場所は間違いなく、守っていきたいと思える世界だ。

けれどそれを守ることができなかった時が、たまらなく恐ろしかった。

手のひらを返され、お前のせいだと憎まれ、恨まれ、悪意をぶつけられるのが怖かった。

一度経験してしまった恐怖を、陽乃は忘れられない。

人々から向けられる憎悪と悪意

それの宿った瞳を忘れることが出来ない。

初めから嫌ってくれていれば、それで終わる。

互いに何もなければ、守れても守れなくても傷なんて負わないからと誤魔化せるから。

だから、陽乃は決して人を近づけたいとは思わなかった。

今までも、これからも。

陽乃はそう思いながら、固く目を瞑る

寝よう、寝ようと……必死に、目を閉じ続けた
732 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/26(金) 21:03:20.57 ID:embYSk5cO
病んでるなぁ…
733 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 21:08:01.00 ID:i2IEf3Bco


↓1コンマ判定一桁 歌野

↓2コンマ判定一桁 水都

※ぞろ目2倍
※絆値+(初期40)
734 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/26(金) 21:08:59.64 ID:embYSk5cO
735 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/26(金) 21:10:13.66 ID:sON9xrkU0
736 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 21:14:54.72 ID:i2IEf3Bco

1日のまとめ(四国組)

・ 乃木若葉 : 交流無()
・上里ひなた : 交流無()
・ 高嶋友奈 : 交流無()
・  郡千景 : 交流無()

√ 2018/08/09 まとめ

 乃木若葉との絆 62→62(普通)
上里ひなたとの絆 56→56(普通)
 高嶋友奈との絆 52→52(普通)
  郡千景との絆 21→21(険悪)


1日のまとめ(諏訪組)

・ 白鳥歌野 : 交流無()
・ 藤森水都 : 交流無()
・ 土居球子 : 交流有(遠征、九尾、戦闘、体調不良)
・ 伊予島杏 : 交流有(遠征、九尾、戦闘、体調不良)
・   九尾 : 交流有(遠征、九尾、戦闘、体調不良)

√ 2018/08/09 まとめ

 白鳥歌野との絆 44→44(普通) 
 藤森水都との絆 52→52(普通) 
 土居球子との絆 55→55(普通) 
 伊予島杏との絆 62→62(普通) 
   九尾との絆 63→63(普通)
737 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 21:19:53.76 ID:i2IEf3Bco

√ 2018年 8月10日目 朝:諏訪

01〜10 球子
21〜30 水都
41〜50 杏
81〜90 歌野

↓1のコンマ

※それ以外は通常
738 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/26(金) 21:21:26.52 ID:sON9xrkU0
739 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 21:53:50.34 ID:i2IEf3Bco
√ 2018年 8月10日目 朝:諏訪


一定のリズムを刻む電子音を聞きながら眠り、

その音を聞きながら目を覚ます。

クリーム色に近い病室の天井を眺めながら、ゆっくりと手先足先へと意識を向けていく

昨夜は上手く伝わりきらなかった感覚も、今は伝わっている

陽乃「っ……」

布団の中から手を出して、顔の前に掲げる

第二関節まで曲げると、震えてしまう

感覚はあるが、力がまだうまく入らないのだ

陽乃「こんなじゃ、戦うなんて不可能ね……」

九尾の力をもってすれば、

こんな感覚なんて無視して戦うこともできるだろう

けれど、その負荷は積み重なって

二度と体が動かなくなる可能性もあるわけで。

今はまだ、そこまでする必要もないだろうと陽乃は布団の上に手を落とす

陽乃「………」

すぐそばのベッドを動かすリモコンを手に取って、上半身を起こしていく

枕を腰のあたりに下げて、支えにする

足を動かすこともできるけれど、骨が軋むような感じがする

冬場の厚い布団だったら、身動き一つ出来なかったかもしれない
740 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 22:27:22.76 ID:i2IEf3Bco

部屋は昨日の夜と同じように静かだ

ただただ、電子音が聞こえるだけの病室

外から入り込む虫の声はあるけれど、それくらいしかない。

端的に言ってしまえば、手持ち無沙汰だった。

陽乃の手元には本もスマホもないし、

病室にはもはや役立たずとなったテレビが設置されているわけもなく。

そもそも、本もスマホも今の陽乃は持っていられない

陽乃「……」

昨日の夜、看護師の女性は目が醒めた連絡だけはしたと言っていた。

時間と陽乃の容態を見て、昨日は様子を見に来ないようにとも。

なら、朝になったら来てくれるものではないかと思うけれど――

陽乃「別に、来なくていいけど」

諏訪の勇者である白鳥歌野

そのサポートを担当しているらしい、藤森水都

2人にはもう、会ったのだろうか。

どこまで話して、どうなっているのか。

陽乃は考えて、息を吐く。



1、九尾を呼ぶ
2、寝ておく
3、イベント判定


↓2
741 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/26(金) 22:35:09.55 ID:sON9xrkU0
1
742 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/26(金) 22:36:08.65 ID:embYSk5cO
1
743 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/26(金) 22:57:23.15 ID:i2IEf3Bco

では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば、お昼ごろから
744 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/26(金) 23:06:12.82 ID:embYSk5cO

意外にもうたのんよりみーちゃんの方が絆値高くなるとは…
しかし陽乃さん人どころか自分の力すら信用してなくて精神的に深刻だな
745 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/27(土) 00:16:03.57 ID:X3Q55+lLO

相変わらずメンタルが不安定だなあ
746 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 13:47:30.95 ID:FPyLwFj9o

では少しずつ
747 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 13:48:29.45 ID:FPyLwFj9o

陽乃「九尾、いるんでしょう?」

横に伸びる影に向かって声をかける

そこには誰もいないけれど、潜んでいる

陽乃「姿を見せなくてもいいから、色々聞かせて欲しいのよ」

枕元の自分の影を撫でると、

ひそかに揺れて、人の形から狐の形へと歪んでいく。

差し込む光がそうさせているのではなく、九尾が混じっている証拠

『良いのかや?』

陽乃「うん。少しくらいなら話しても問題なさそうだし」

『ふむ……まさか主様があそこまで貧弱とは思わなかった』

陽乃「疲れが溜まってたのよ……たぶん。違うの?」

『いかにも』

そもそも、

かの神―伊邪那美命―を顕現させたことによって、陽乃は体の内側がボロボロになっていた。

それをまた陽乃が持つ別の力を用いて強引に治癒能力を高めて癒したのだ。

ただそれだけの身体で、逃亡し、たった一日休んだだけでの遠征

九尾を呼び続け、力を纏って戦ったのだから

運が悪ければ、癒したばかりの身体の内側がまた酷いことになる可能性があった

そして、

その最悪の結果……いや、最悪の一歩手前になってしまった
748 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 14:12:08.19 ID:FPyLwFj9o

『数日はおとなしくしておく方が良い』

陽乃「そんなに?」

『拳も握れぬ体で、何を成すというのかや?』

陽乃「それはそうなんだけど……」

九尾の声を聞きながら、もう一度手を上げてみる

握りしめるほどの力は出なくて、

球子に押し倒されたときよりもさらに衰弱しているのが分かる

あの時は若葉からの逃走劇なんて言う茶番もあったが

今の状態で窓から飛び出したら受身も取れずに骨折の一つや二つは免れなかったかもしれない。

『昨夜、主様が眠っている間に小娘共が四国への移住を提案しておる』

陽乃「そう……で、答えは?」

『諏訪の娘どもでは決められぬと、言うておったのう』

陽乃「それはそうよね……」

当たり前と言えば当たり前の話だ

歌野がこの場を離れてなお結界が残ったとしても、それを守る人がいなければ容易くバーテックスに食い潰される。

そうなったら、ここに残った人々は殺されてしまう。

だから、歌野は人々の話を聞く

自分が行くからついてこいだなんて、言わない

『良いのかや? あの国に戻る理由など、主様にはなかろうて』

陽乃「お母さんがいるわ」

『あの国に戻るほどの理由では無かろう』

疎まれ、憎まれ、呪われ、虐げられるだけの場所

母がいるというのは、そこに戻るだけの理由にはならないだろう、九尾は考えている。

だが、九尾からしてみれば戻ろうと戻るまいとどっちでもいい

害になる何かしらがあるのなら、排除するだけである。


1、ねぇ。結界はどうにかできる?
2、白鳥さんを呼んでくれない?
3、この体、もう少し早くどうにかできない?
4、みんなが戻りたいって言うなら、戻るしかないでしょうね


↓2
749 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/27(土) 15:05:43.58 ID:EjDNhoNRO
2
750 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/27(土) 15:08:05.82 ID:AteTOpZkO
2
751 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/27(土) 17:42:40.23 ID:IasRBKWBO
752 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 17:49:34.69 ID:FPyLwFj9o

陽乃「ねぇ、白鳥さんを呼んできてくれない?」

『何じゃ。見舞わぬのが気に入らぬのかや?』

陽乃「違うわよ。話、しないといけないでしょ」

球子たちがある程度話してくれてはいるみたいだけれど

陽乃も話しておく必要がある。

球子と杏は陽乃のことについて話していないようだし、

それどころか、四国移住についての話を進めている。

そうするというなら、陽乃にはどうしようもないけれど。

結界についてや、今までの戦い

これからのことなど、

色々と聞いておきたい話もある

陽乃「呼ぶのが難しければ、別に良いのだけど」

『ふむ……呼ぶこと自体は容易じゃな』

陽乃「なら、お願い」

『うむ……よかろう』

陽乃の影が揺れ動いて伸び、

そうして、ゆっくりと薄れて消えていく
753 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 18:01:57.18 ID:FPyLwFj9o

九尾の影が離れてから、

歌野が陽乃のもとに来るまで、時間はほんの数十分しか掛からなかった。

陽乃「九尾……また余計な事……」

自然の声に満ちていた病院の外が急激に騒がしくなり、

病院の中にまでその喧騒は広がって、

そうして――なぜか、水都が歌野の腕を掴んで病室へと引っ張りこむ

水都「連れてきたよ!」

歌野「み、みーちゃんったら……一体全体、どうしたの?」

驚きに戸惑い、肩で息をする歌野と、

凄く張り切っている、諏訪の巫女である藤森水都

水都は陽乃の方を見てとても嬉しそうに手を振っているけれど、

陽乃は、初対面だ

陽乃「えぇっと……」

水都「初めまして、藤森水都です!」

歌野「みーちゃん……なんか、変よ? 大丈夫、えっと……何かあった?」

陽乃「……私が呼んできてってお願いしたの」

とっても元気な水都を一瞥した陽乃は、

困惑を隠せない歌野へと目を向けて、ため息をつく

どれだけの付き合いがあるのかは知らないけれど

藤森水都と言う人物の言動に、白鳥歌野が違和感を覚えているのだとしたら

それはきっと、間違っていない

歌野「呼んできてって……」

陽乃「九尾。貴女、藤森さんの観察不足だわ」

水都「え〜? そうかな? うたのんと二人きりの時はこんな感じだったと思うんだけど」

歌野「ノーよ! 全然違うわ!」

水都「そっかぁ……でも、連れて来れたから、オッケーだよね?」

呼ぶこと自体は容易とは、よく言ったものである
754 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 18:16:16.52 ID:FPyLwFj9o

お茶らけた様子なのは、本当に藤森水都なのか

それとも九尾の悪ふざけなのか、

頭を痛めているような歌野を見た陽乃は、後者だと察して首を振る

陽乃「九尾、もういいから戻って」

水都「何か必要なことがあったら、呼んでねっ!」

そう言い残して、

瞬く間に消えうせる水都を横に見た歌野は、呆然として

おもむろに、陽乃を睨む

歌野「みーちゃんは? 本物のみーちゃんはどこ!?」

陽乃「家にいるか、どこかのお店にいるか、お手洗いか……とにかく、どうにもなっていないはずよ」

歌野を呼んできてとは言ったけれど

こんなやり方をされては、話がこじれるどころの問題ではない

陽乃「大丈夫だから、ほんとうに」

歌野「………」

歌野はしばらく疑わしそうな目をしていたが、

少し考えこんで、軽く頷いてくれた

厳しい表情は、変わらないが。

歌野「あれが、えぇっと……久遠さんの力なの?」

陽乃「私と言うより、私の精霊……って言えばいいかしら。その力ね。惑わすことに長けているのよ」

若葉達がされているように、神々からの加護とは言えない為、

一先ずは精霊として説明する。

ひなたは神獣の類と言っていたので、神の御使いと言っても良かったかもしれない。
755 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 18:31:22.30 ID:FPyLwFj9o

歌野「……体は、もう?」

陽乃「万全とは言えないけれど、話すくらいは問題ないわ」

長々と話し続けると、

また喉の奥に違和感を覚えて吐血するかもしれないけれど

そう易々と血を吐いたりはしないはずだ

……たぶん。

陽乃「朝のうちに面会に来ると思っていたけど、来なかったから呼ばせて貰ったんだけど……平気?」

歌野「ん〜……平気、と、言えば平気。かしら。色々やりたかったこともあったけど」

そう零した歌野は、

別に久遠さんに会いたくなかったわけじゃない、と、首を振る。

歌野「昨日の夜、目を覚ましてもまだ予断を許さない状態だって言うもんだから、早くてもお昼の方が良いと思ってたの」

陽乃「そう……まぁ、別に来なくても良かったんだけど」

歌野「そんなわけにはいかないわ……久遠さんも、勇者なんでしょ?」

陽乃「さぁ? 戦う力はあるけど……勇者かどうかは微妙なところね」

歌野「え?」



1、それで、これからはどうするの?
2、現状を教えてくれる?
3、私、四国には戻るつもりはないわ
4、ここは、守っていけそうなの?
5、私を戦力として数えるのだけはやめて頂戴


↓2
756 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/27(土) 18:43:11.09 ID:QKq5+CeuO
1
757 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/27(土) 18:45:20.96 ID:slGjnfDG0
2
758 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 19:06:13.52 ID:FPyLwFj9o

陽乃「とりあえず、現状について聞かせてくれる?」

歌野「そうね……簡単な説明になっちゃうけど……」

土居さん達に説明したのと同じような話になると前置きした歌野は、

今の四国の現状について、改めて陽乃に話して聞かせた。

元々は4つだった結界の御柱も、今は2つまで減少し、

すでに結界は諏訪湖の東南の一帯を守るのがやっとの状態であること

住民の規模は数十人程度と非常に少ないこと

襲撃は日に日に厳しさを増してきており

近々3つ目の御柱も破壊されてしまう恐れがあること

外部との連絡は、勇者が用いる通信設備でのみ可能であること

それもやや不安定になりつつあること

今は自給自足でどうにか生活を続けていることなど、

四国と比べて、非常に厳しい現実にあることを、歌野は話してくれた。

どうにか明るくしようという声色ではあったが、

その瞳が陰っているのを陽乃は見逃さなかった

陽乃「ならやっぱり、ここの維持は難しいのね」

歌野「ええ。みんなが協力してくれたとしても、日に日に力が衰えていっているらしいから……たぶん」

陽乃「ここで死にたいって人はいるのかしら」

歌野「必ず助かる保証があるわけじゃない。助かっても、すべてを捨てていかないといけない。それが嫌だって人は、やっぱりいるわ」

今なお生きている人の中には、

この地で、大切な人を喪い、弔っている人もいる。

どうせ死ぬなら、そんな相手の眠る場所でともに眠りたいと願うのは、

無理もない話だと歌野は思う。
759 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 19:06:48.11 ID:FPyLwFj9o

では少し中断いたします
再開は21時頃からを予定しています
760 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/27(土) 19:23:35.09 ID:slGjnfDG0
一旦乙
流石に諏訪に残るのは無理そうだな
761 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 21:41:56.54 ID:FPyLwFj9o

陽乃「そういう人もいるのね」

歌野「久遠さんは、違うの?」

陽乃「違うかもしれない」

陽乃に残っている大切な人は、母親だけしかいない。

母親は四国に骨を埋めることになるだろうけれど、

陽乃は特別、そうでなければいけないだなんて思わない。

あんな場所に骨を埋めたくない

あんな場所で自分のお墓を立てたくない

自分のいなくなったあとのそれが、ハンマーでたたき壊されてしまいそうで。

そうなったら、一緒に眠るかもしれない母が可哀想だ

陽乃「ひっそり、どこかで朽ち果てるのも悪くないって思ってる」

歌野「そんな、怖いこと言わない方が良いわ」

陽乃「本気よ」

歌野「………」

陽乃「そう、まじまじ見つめても。本気なのは変わらない」
762 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/27(土) 21:49:58.01 ID:671IIM9qO
お母さんまでいなくなったら本格的にヤバい…
763 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 22:28:54.38 ID:FPyLwFj9o

歌野の視線は訝しむようなものではなく、

とても心配してくれているものだった。

陽乃が演技派の少女でなければ、

今浮かべている笑みは本物だということになる。

本気で、

人知れず朽ち果てることを考えていると言うことになる。

それは、あまりにもあんまりだ。

陽乃「そんな顔、させるつもりはなかったのだけど」

歌野「久遠さん……」

陽乃は優しい勇者を一瞥して首を横に振る

その優しさは、有難迷惑だった

歌野「久遠さん。諏訪防衛の戦いは、基本的に私達で対応するわ」

陽乃「なるほど……私の力のことも聞いたわけだ」

歌野「使えば使うほど蝕まれていくって言ってたのだけど」

陽乃「事実よ」

歌野「だったら、何か大きな戦いでない限り久遠さんは戦わないで欲しいの」
764 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 23:04:23.99 ID:FPyLwFj9o

陽乃「2人に言えって言われた?」

歌野「ううん……久遠さんの惨状を見て聞いた」

陽乃が着ていた服を血塗れにし、それでもなお吐血している姿を見た

その始まりを目撃してしまった住民の話を聞いたりもして

それがどれだけ酷いものであるのかを知った

あれは、些細なことで起こっていい現象ではない

陽乃「あのおじいさん、トラウマになってたりしない?」

歌野「ええ、大丈夫だったけれど……凄く心配していたから目を覚ましたって教えたら凄く安心していたわ」

凄く、凄く。

それがもしも、四国の人だったなら。

陽乃が吐血しての入院は吉報で、

回復してしまったことは凶報となったことだろう。

歌野は小さく笑って、陽乃の震えている手を握る

歌野「私も……凄く心配したわ。もちろん、みんなも」

陽乃「私、貴女にとってのヒーローか何かなの?」

歌野「どういうこと?」

戸惑う歌野から目を背けて、目を閉じる

陽乃「ちょっとだけ、貴女が小説のヒロインの立場に思えただけ」

歌野「あははっ、なにそれ! 久遠さん、ユニークね!」
765 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 23:45:13.89 ID:FPyLwFj9o

歌野はとても明るい性格だった。

球子に通じるものがあるほどの賑やかさ

けれども、いや、球子もそうだが

陽乃のことを気遣って、大騒ぎと言うレベルには達しない

歌野「お願いね」

陽乃「いずれにしても、暫くは何にもできないわ」

手を握り返せないし、

ベッドから降りて歩いていくこともできない

それだけ衰弱しきってしまった体

意識があって、言葉を発せて、温かくて、中身が綿以外のもので。

そんな違いがあるだけの、人形のような何か。

なんて……言ったら怒られるだろうか。

陽乃「大人しくしておくから安心して」

歌野「治ってもよ」

陽乃「……それは、あなた達の頑張り次第だと思うわよ」

陽乃はそう言って、小さく息を吐く

そんな、疲れを感じる陽乃を歌野は優しく見守る

歌野「さっきの、良く分からないけど……でも、久遠さん達は私たちのヒーローだと思うわ」

独りで守らないといけなかった3年間

ずっとこのままで、最終的には壊されてしまうのではないかという不安が無いと言えば嘘になる。

だから

歌野「来てくれて、嬉しい……ありがとう」

歌野は気遣いではなく本心で、そう言った。
766 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 23:47:04.32 ID:FPyLwFj9o

√ 2018年 8月10日目 昼:諏訪

01〜10 球子
41〜50 杏
81〜90 水都

↓1のコンマ

※それ以外は通常
767 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/27(土) 23:48:07.99 ID:671IIM9qO
768 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/27(土) 23:53:35.15 ID:FPyLwFj9o

ではここまでとさせていただきます
明日も可能であればお昼ごろから
769 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/28(日) 00:02:27.54 ID:G4/m29cSO

うたのんの暖かい言葉を聞くと諏訪の人たちを是が非でも助けてあげたくなるなぁ
それにしても先祖も子孫もベッドの上で満身創痍な場面が多いこと多いこと
770 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/28(日) 06:41:18.61 ID:cUdHBzkQO

四国をあんな場所と呼ぶとは相当トラウマになってるな
771 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/28(日) 17:33:14.63 ID:iWKJhhBSo

では少しだけ
772 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/28(日) 17:33:56.76 ID:iWKJhhBSo
√ 2018年 8月10日目 昼:諏訪


連行されてきていた歌野も畑の手入れの続きをしなければいけないと席を外して、また一人

もしあれならほかに人が来るまで一緒にいてくれると言ってはいたけれど、それは断った

他にやることがあるなら、そっちを優先して欲しいと言ったのは陽乃だ。

歌野は優しい

球子たちと同じように、陽乃を気遣ってくれている

でもだからこそ、

陽乃にはそれが重かった

その優しさを与える理由に、自分が値するだけの何かを差し出せるとは思えない

歌野は、小規模の戦闘には参加しなくていいと言ってくれた

大規模な……それこそ総攻撃レベルの戦いの為に温存しておきたいらしい

陽乃「過度な期待は困るのだけど……」

総攻撃であっても、

陽乃がいればどうにかなると思われているのだとしたら、

それは誤解だとはっきり断じておくべきだろうか。

全力で力を使えばそれなりの貢献は出来るだろうけれど、

そこまで大きな期待をされても困ってしまう
773 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/28(日) 17:47:13.94 ID:dhmr8vcEO
きてたか
774 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/28(日) 18:36:27.82 ID:iWKJhhBSo

諏訪の結界は残り二つ

一つが壊されても、もう一つが壊されなければ完全な侵攻にはならないらしいけれど

一つ壊されたら結界の範囲はまた小さくなる

自給自足の生活をしている諏訪の住民にとって

生活区域がまた狭まるというのは死に直結するような問題だろう

なによりここまで来て

さらにバーテックスの侵攻を許してしまうという精神的なダメージは許容できるものではないと思う

それを考えると、

諏訪の住民は決死の思いで四国に逃げると考える可能性はある

ここで死ぬつもりの人々と

四国に行く人々

そう別れることになったら、歌野はどうするのだろうか

歌野のことだ、自分は諏訪に残り

球子たちに四国に行く人々を護衛して貰おうと考えそうだと、陽乃は思う
775 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/28(日) 19:36:08.23 ID:iWKJhhBSo

陽乃「……結界は残り二つ、ね」

結界の外を見ても、

ひと固まりだけで40近い数いるバーテックスの一団がかなりの数ある

独りで防衛しきれるような数ではなかったし

あれの半分でも攻めてきていたら結界が持たなかったはず

球子と杏が参戦しても、

結界の一つが破られてしまう可能性はある

時間がない。

はたして、総攻撃までに体の調子を取り戻せるのだろうか

陽乃「結界の要がどうなってるのか知りたいけど……」

知ってどうにかできるとは思えないが、

もし本当に九尾が言うように神様に愛されているのなら、

この地域の神様にも何らかの干渉が出来るかもしれない。

陽乃「諏訪大社……諏訪大社って、祭神は誰だったっけ……」

神社の繋がりで色々と学んだ覚えはあるけれど、

それから離れて3年

色々あって、記憶があいまいだ

自力で動ければ、調べたりもできるが、今は無理だ



1、九尾を呼ぶ
2、休む
3、イベント判定

↓2
776 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/28(日) 19:37:07.44 ID:ymICilyk0
1
777 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/28(日) 19:38:02.88 ID:dhmr8vcEO
3
778 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/28(日) 19:49:00.87 ID:iWKJhhBSo

01〜10 九尾
11〜20 球子
21〜30 歌野
31〜40 杏
41〜50 水都
51〜60 看護師
61〜70 バーテックス
71〜80 杏
81〜90 ご神託
91〜00 水都


↓1のコンマ
779 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/28(日) 19:51:06.94 ID:dhmr8vcEO
780 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/28(日) 20:56:38.07 ID:iWKJhhBSo

歌野達が作ったという野菜たっぷりな病院食を食べている最中に、扉が叩かれた

「すみません、今大丈夫ですか?」

陽乃「病室を間違えていなければ」

聞き覚えのない声に答えると、

少し間を置いてから、扉が開かれる。

水都「あって、ます……えぇっと、藤森、水都です。久遠さん」

陽乃「藤森さん? 貴女、巫女なのね」

水都「は、はいっ……そうです」

巫女装束を着ているので、

藤森水都と言う少女が巫女であることは、一目瞭然だ

陽乃「何か神託でもあった?」

水都「いえ、その……うたのんから話も出来そうだって聞いたので」

陽乃「なるほどね」

巫女の正装で着たのは、自分が巫女だと分かって貰うための措置だったそうで、

歌野の畑手伝いをしてから

わざわざ一度帰宅して、身だしなみを整えてきたらしい
781 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/28(日) 22:34:06.76 ID:iWKJhhBSo

陽乃「ついて早々吐血したって聞いて驚いたでしょ」

水都「驚いたなんて話じゃなかったですよ」

陽乃と一緒にいた球子と杏は大慌てで、

最初に陽乃を見たときのお医者様は、

最悪助からない可能性があるだなんていうほどに。

だから、水都も気が気ではなかった。

水都「でも、だからこそ驚きました……あれからたった半日足らずで意識取り戻して、ここまで回復しているんですから」

陽乃「気味悪い?」

水都「いえ、凄いと思いました」

正直に言ってしまえば、異常だ

勇者の回復力は歌野の傍にいる水都は良く分かっているつもりだったが、

だとしても、その比ではない回復力だった。

出血多量によって死んでもおかしくなかったのに

もう、話せるくらいに回復している

それは、確かに気味が悪いと思えなくもない

水都「久遠さんはその回復力が、勇者としての力なんですか?」

陽乃「いえ、違うわ」

水都「誰かを癒す分、自分が傷つくみたいな力とか」

陽乃「全然、違うわね」
782 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/28(日) 23:28:04.78 ID:iWKJhhBSo

陽乃「もしそんなご立派な自己犠牲特化の力があっても、私は対象外よ」

水都「そうですか……」

そもそも

神々の力は武器に宿る

拳だったり、剣だったり、楯だったり

特定の、超常的な能力を与えるというのは普通ではない

九尾だって、陽乃に与えられた力と言うよりは

九尾自身が持っている力と言う感じだ

陽乃「……この野菜、白鳥さん達が作ってるって聞いたわ」

水都「たぶん、今朝採れた野菜だと思いますよ。新鮮なの食べさせてあげたいんだって、うたのん張り切ってたので」

嬉しそうに話す水都は、陽乃を見て少し迷う

中々上がらない手を震わせて、

どうにか握っているフォークで刺しながら食べている陽乃は

凄く辛そうに見えるからだ

野菜が嫌いというわけではないだろうが……

――カチャンッと、フォークが皿の上に落ちる

水都「あの……良ければ手伝いましょうか?」



1、大丈夫よ。気にしないで
2、じゃぁ、お願いしようかしら
3、そんなことより、神託は受けてないの?
4、貴女、白鳥さんとは仲良いの?

↓2
783 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/28(日) 23:30:20.58 ID:dhmr8vcEO
2
784 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/28(日) 23:33:12.46 ID:ymICilyk0
2
785 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/28(日) 23:44:35.94 ID:iWKJhhBSo

ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
786 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/28(日) 23:51:36.71 ID:dhmr8vcEO

こういう弱っている時こそ人を頼りにして絆を深めるのが大事だな
787 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/01(月) 02:31:55.89 ID:TCokldgN0

休まなきゃだしお話しいっぱいできるな
788 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/01(月) 20:24:24.83 ID:qnW33cAQo

では少しだけ
789 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/01(月) 20:25:02.49 ID:qnW33cAQo

陽乃「……じゃぁ、お願いしようかしら」

食事を始めてから、すでに数十分経っている

それなのに、まだ5分の1も食べられていない

フォークで刺して口に運ぶだけでも時間がかかるし、

それを咀嚼するのにも時間がかかる

手伝ってくれるというのなら、手伝って貰う方が良い

このままでは、半分も食べられずに終わってしまう

陽乃「迷惑じゃ無ければだけど」

水都「迷惑だったらそもそも言わないですよ」

皿の上に落ちていたフォークを手に取った水都は、

まだ刺さっているサラダを陽乃の方に差し向ける

陽乃は躊躇わずに咥えて、噛みしめる

水都「ゆっくり食べてくださいね」

陽乃「私なんかの手伝いしてて平気なの?」

水都「うたのんには言ってありますし、私、こう見えても巫女なので」

こう見えても何も、

巫女であるのは明白な格好をしている。

陽乃が小学生時代に見た、

友人が着ていたコスプレの巫女衣裳のような物ではない

ほんとうに、ちゃんとした装束だ

水都「久遠さんが完治するまでは、お世話させてください」
790 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/01(月) 20:31:47.21 ID:0E+tKQ8VO
久々に尊いシーン
791 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/01(月) 20:43:56.58 ID:qnW33cAQo

陽乃「本気で言ってるの? 何もできないわよ。私」

着替えも、お手洗いも、入浴も

何一つ、今の陽乃には自力で出来ない

食事だって、かなりの時間をかけなければいけない。

常人離れしている回復力とはいえ、明日には万全と言うわけにはいかないだろう。

伊邪那美命の顕現による身体的ダメージは、2日経っても完治しなかった。

それが治る前に、

上乗せで酷使したことによる後遺症は、どれだけ時間がかかるか。

水都「大丈夫です。それをサポートするのも巫女の役割なので」

陽乃「そう……貧乏くじを引いたわね」

水都「いえ、そんなことは」

水都はまだ子供で、女の子で、陽乃をどうこうできるほどの力もない。

食事を与える、着替えを手伝う……させられて、この程度だろうか。

陽乃は少し考えて、水都を見る

諏訪の勇者、白鳥歌野

諏訪の巫女、藤森水都

勇者が歌野一人であることは聞いていたが、巫女も一人きり。

大社のような組織が無いのが幸いだろう。

水都「私に出来るのは……このくらいですし」

陽乃「このくらいも、私は出来ないけどね」
792 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/01(月) 20:51:36.53 ID:qnW33cAQo

水都「あっ……っ……すみません」

陽乃「別に謝らなくていいわよ。ただの皮肉だから」

自分に出来るのはこのくらいしかない。

それは諦めと言うよりも、自信のなさの表れだろうか。

水都が嫌味ではなく、

ただ本当に自分にはそれくらいしか役立てないと思っているからこその発言だと分かっているが、

陽乃には、そんなことは関係ない。

事実、陽乃は食事さえまともにできない。

着替えも入浴も……お手洗いにだって行くことが出来ないからそれも手伝いが必要だ

水都「……」

陽乃「2人からどう聞いたのかは知らないけど、私は基本的に役に立たないって思っておいて」

水都「えっ?」

陽乃「到着早々血を吐いて気絶するし、力を使えばまた血を吐くし、治ったと思えばこんな状態だし。ね? 役に立たないでしょ?」

水都「それは……力を使ったからじゃないですか」

陽乃「使えばこうなるんだから、使えない。使えないから使えない。だから、あんまり期待しないで」

水都は陽乃のことを良く知らない

だから、陽乃が自分を気遣ってくれているのかもしれないと思うし、

そうではなく、本当に自分を役立たずだと思っているのかもしれないとも思う

表情から、その判断材料は得られない
793 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/01(月) 21:05:09.96 ID:qnW33cAQo

水都「でも、久遠さんが二人をここに連れてきてくれたんですよね?」

陽乃「連れてきたというか、付いてきたというか」

水都「どっちでも、ここに来てくれたことに変わりはないです」

ご飯をお箸で摘まんで差し出しながら、水都は言う。

水都「お陰で、もう少しだけ頑張れます」

杏と球子が歌野に協力することで、結界への影響が減らせる

球子と杏は四国の勇者であるため力の根源が違うから、

諏訪の神の力が弱くなっていても、影響がない。

被害0は出来ないかもしれないし、

このまま諏訪を残し続けることが出来るとは思っていない

それでも、歌野一人よりはずっといい

水都「久遠さんって、代償が重い分強い力を持っているんですよね?」

陽乃「普通よりは強いと思うけど……やめてよ? 期待なんて」

水都「………」

陽乃はそう言うが、

一緒に来た杏や球子は一騎当千の力があると言っていた

評価が180度変わっているから

どっちかが嘘を言っているのかもしれない。

だとしたらそれは……

水都は陽乃を見て、箸を運ぶ手を止めた

水都「久遠さん、どうして。そんなに自分を卑下するんですか?」


1、貴女に話すことじゃないわ
2、別に。事実を語っているだけよ
3、期待されたくないし頼られたくもないからよ
4、守れなかったものがたくさんあるからよ


↓2
794 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/01(月) 21:07:27.13 ID:0E+tKQ8VO
4
795 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/01(月) 21:10:29.66 ID:63WYk73N0
4
796 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/01(月) 22:05:07.34 ID:qnW33cAQo

陽乃「そうねぇ……」

別に聞かれたからと言って答えてあげる義理はない。

適当なことを言ってもいいし拒否したって良いだろう

陽乃は水都の動かない手を見て、ため息をつく

水都が手を止めたら、陽乃もお預けをくらってしまう。

陽乃「守れなかったものがたくさんあるからよ」

水都「守れなかったもの……」

水都は繰り返すように呟いて、目を伏せる

勇者である陽乃が守れなかったと言うモノ

自分を卑下するようになるような何か。

水都「………」

陽乃「そんな考えなくても、聞かれたら答えるわよ。早く食べたいし」

水都「へっ? あっ、す、すみませんっ!」

慌てて差し出してくれたおかずを咥えて、軽く噛む

思った以上に慌てさせたのか、

次を摘まんでいる水都を見た陽乃は、早めに飲み込んで

陽乃「たくさん、目の前で死んじゃったのよ……3年前。藤森さんだって経験があるんじゃない?」
797 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/01(月) 22:47:19.06 ID:qnW33cAQo

水都「それは……」

経験はある。

勇者ではなかった水都は、

目の前で襲われる人々を助ける術を持っていなかった

逃げてくる子供を庇ったりすることはできたけれど、それだけ。

けれど、水都はバーテックスを倒すことなんて出来なかった

自分には元から力の及ばないことだと諦めがついてしまっていた

でも、陽乃は違う。

守れる力があって

それでもなお、目の前で奪われてしまったのだとしたら

それは、どんなにか……

水都はそこまで考えて、歯を食いしばる。

水都は自分の弱さを知っている

いいや、自分の弱さしか知らない

水都「………」

陽乃を見る

腕は上がらず、足も動かない

咀嚼だって辛そうで、飲み物を飲むのだって一苦労

そんな状態にならざるを得ないほどの代償を払う力を持っている陽乃はきっと、

四国の勇者が言うように値千金の力を持っているに違いない

だからこそ、守れなかった後悔は重いのかもしれない。

そんな人に、口出しできるような立場では――ない。
798 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/01(月) 23:25:06.65 ID:qnW33cAQo

↓1コンマ判定

01〜52 水都「守れなかったからこそ、守れるようになるんじゃないですか?」

※ぞろ目 特殊
799 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/01(月) 23:26:25.46 ID:cpGD6QmfO
800 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/01(月) 23:36:50.99 ID:qnW33cAQo

ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
801 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/01(月) 23:52:14.44 ID:12KJDdz/O

みーちゃんがまさかの初対面からの自己主張するとは…
あと陽乃さんもだんだん反応が素直になってきた気がする
802 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/02(火) 00:29:07.85 ID:X3iVKvi+0

よくやってくれた
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