【鯖鱒wiki】ふたたび坂松市で聖杯戦争が行われるようです【AA不使用】2スレ目

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105 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/14(水) 22:48:56.25 ID:3f7sbovco
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/15(木) 08:40:45.90 ID:SHW6sjpCo
乙乙
ベルは自己犠牲しそうなスキルだとずっと思ってたけどどうなるかね
107 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/04/17(土) 21:43:35.86 ID:XmLLvg7C0

【それではゆっくりやっていきます】

108 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/04/17(土) 21:47:12.72 ID:XmLLvg7C0


「お疲れ様。貴女の炎の魔術、しかと拝見させて戴いたわ」
「派手にやったわね。もしかして、そういうのが趣味かしら?」
「うっさいわね……こっちはフルパワー出して疲れてんの!」「ふしゅううう……」


一戦を終えたルゥナはへたり込む。ベルも同様に、顔色を更に悪くして寝転がった
対称的に、どこか余裕すら感じる二人。どうやらあちらもケリがついたのか、魔術師達が倒れ伏していた

何の事は無い。フェリシアとティファが、召集された魔術師よりも遥かに強かっただけ
厄介なアサシンの指揮を失った集団は、もはや単なる烏合の衆と成り果てていたのだった

「……ストレングス、生きてる?」
「いや……動ける。の方がいいのかしら?この際どっちがいいかは気にしないわよ」
「とにかく、戦えるかだけは教えなさい」

煤を叩いて立ち上がり、毅然とした態度で敗北したストレングスに向かい合う
焼け焦げ、灰となった外套から露になるのは鉄の機体。バチバチと火花を散らす姿は、まるで心音を模す様に耳に響く
片腕が動く。だがそれが限界なのか、体を地面に擦りつけて蠢くだけだった

「……コリー!アダムス、ディール!」
「今すぐにストレングスを治療しなさい。応急処置程度なら出来るでしょ!?」

叫ぶ剣幕に気圧されたのか、先程まではルゥナの態度に懐疑的だった面々も周囲に近づく
こいつらは仕事となれば真面目に取り組む集団というのは知っている。当面は任せてもいいだろう


「問題はランサーなのよね……あいつ、念話も切断して何してんのよ……!」


109 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/04/17(土) 22:02:55.36 ID:XmLLvg7C0



「……ここが、聖杯の安置場所ですか!」
「いやはやまさか!学園の地下にこの様な空間が存在していたとは!」

カツカツと音を立てて市長が地下空間に足を踏み入れる。その背後には少々森を連れていて
前回では最後の戦いの舞台として。そして、今は全てを紐解く舞台として。空間は英霊を受け入れる


「そう。ここが総ての始まり」
「かつて、エーデルワイスはとある地で行われた聖杯の争奪戦に勝利し聖杯を手にした」
「だが、勝者は当主に聖杯を授け……それ以降、聖杯は起動しなかった」

「理由はわからない。当時の勝利者がそうあれとしたのか、あるいは魔力が足りなかったか」
「ともあれその力は証明された。聖杯戦争という名の儀式は、天使を召喚する為のものへと姿を変えたのだから!」
「その証明こそ我が親愛なる神の先駆けとして現れたアバドン!この街に降臨し、愚かなる民を粛清する蝗の化身よ!」


恍惚とした表情で夢想を語るロベルトを、にこやかな笑顔で見つめる市長
その顔はいつもの様に。張り付けた風に本心を見せない鉄面皮で笑っていた

ゆらり、新たな影が闇から這い出る。市長は影を見やると満足そうに口角を上げる


「おお、アサシン君!よくぞ無事で!」
「さて、こちらも首尾は上々。と言った所か」
「ありがとう市長。あと少し遅れていたら、私の首は泣き別れだ」

「ああ。それと……人払いは済んでるかい?」
「……何を、当然の事を」
「ここは私と神の逢瀬の場だぞ……?余計な虫は一匹たりとも入れない用に注意を払っている」


ロベルトの返答に、そうかい。と軽蔑した様に顔を歪めるアサシン
その態度が癪に障ったのか、見るからに不機嫌そうに舌を打つ。勢い余ったのか、少々森から手を離して睨み付ける

すると、少々森の手を掴もうとする何者かの手が伸びる。が、触れる事は叶わない
何故ならば……アサシンは手の主に剣を投げて、その腕を貫く。主は思わずたじろぎ、少々森から離れざるをえなかった


「あっちゃあ、やっぱり無茶だったか……!」


110 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/04/17(土) 22:15:53.16 ID:XmLLvg7C0



「貴様、ランサーッ!?」
「おやおや。もしやすると付けてましたか!」

手の主の正体は、禍門邸にて足止めをされていたサーヴァントの一騎。ランサー
突き刺さった剣を引っこ抜くと、思いっきりの力でへし折る。その動きからは消耗を全く感じる事はない

「ご名答。あんた達がいないと気づいた後、この街の監視カメラを片っ端からハッキングしたんだ」
「そこから逆算して、この場所に辿り着いたんだけれど……」

余裕そうな態度から一転して、不安げな声をあげる。その理由は少々森を取り返し損ねたからだけではなく


「……あ、ラン、サー」
「見ない、で……ルゥナに、見せないで……!」
「……擬態が保てなくなってきてる。場所の影響もあるのかもしれないけど」

既に、その肉体からは銀の殻が突き破る異形のモノへと戻りつつある
やはり少々森には時間がない。急がないといけないのだ。彼女の心までが変わり果てる前に……

「さて、ランサー。わかるとは思うが君は私達に手を出す事が出来ない」
「アバドンを『人間として』受肉する為には、出来る限り傷は付けたくは無いだろう?」
「我々は『天使として』アバドンを用いる。傷があろうと受け入れてくれるさ」

短剣を手に、アサシンは厭な笑いを浮かべつつ少々森の首筋をなぞる
ここで三人を相手取る事は不可能ではない。だが逃げに徹されては、少々森が変異してしまう

そして、この場で仕留めねば猶予は無い。ランサーは腹を括る。自らのマスターの判断を仰ごうと


『“……ルゥナ、聞こえてる?”』
『“時間がないんだ。手短に話すから、今すぐに決断してくれ……!”』


111 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/04/17(土) 22:25:45.51 ID:XmLLvg7C0



「……はぁ!?ちょっ、ええ!?」

「どうしたのかしら?急に慌て出して……」

「わかるわ。その気持ち……ゲームの予約日時を間違えたのね!」
「違うわよバカ!早くしないと少々森が危ないんだってば!」

突如送られてきたランサーからのメッセージ。ルゥナはただ困惑するばかりだ
とにかく、情報を整理すると……アサシン陣営とロベルトはこの街の地下空間に逃げていて、早く少々森を解放せねば危険という事

そして、ランサー単独では少々森の奪還は不可能だという事……
ならば、こちらも援軍として馳せ参じねばならないだろう。そうなると、問題は二つ


「移動手段と人員が足りないわね……ストレングスはまだ動けないかしら?」
「無茶言うなっての。こちとら専門じゃねえんだぜ?」

アダムスの表情は芳しくない。時間がかかるのはルゥナも覚悟はしていた事
だが、徒歩や車といった手段では確実に間に合うかはわからない。何せ向こうにも令呪が残存しているのだから……

「……セイバー。私達も行きましょう」
「この街の危機というのなら、手を貸さない理由はないわ。そうでしょう?」

「あーあ。フェリシア、いいのかしら?敵に塩を送る。ってここの国の言葉にあるわよ?」
「ま、何だっていいんだけど!私はフェリシアのサーヴァント。この子がそうしろって言うなら従うわよ」

「……ルゥナ、だったかしら。私が令呪を使い、地下空間に転移するわ」
「だから、貴女が切る必要は無い。それは確実に奴等を倒す為に取っておきなさい」


手を上げたのはセイバー陣営。フェリシアの手には真新しい令呪が三画も
確かに、令呪による転移ならば間に合う可能性が極めて高い。これで一つの問題は解決した

……残る問題は

「人員ね。戦える人間は全員私に……」
「ちょっと待ちなさい。私が抱えられるのは、頑張ったって三人が限度よ」
「確定なのは私のマスターのフェリシア。ランサーのマスターのあんた……」

「つまり、残りは一人だけ!ちゃちゃっと決めてちょうだい!」


112 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/04/17(土) 22:36:48.83 ID:XmLLvg7C0



……一人だけ。いや、当然か
セイバーの体格は極めて恵まれてはいる。が、それは人間の肉体の範疇でだ
背と両手を足したとしても、三人が限度というのはしょうがないだろう


「一人だけ……では、なるべく戦力になる人物がいいだろうな」
「敵は何をしてくるかわからない。対応力の高さも求められるか」
「……すまない。私と禍門の面々は省いては貰えないだろうか?」
「そっか。私達は監督役だから下手に干渉すると協会に目をつけられるんだよね……」


この場にいる人間を一望する。要は戦力の足しになり、ある程度の対応力を持つ人物が必要となるのだろう
完璧でなくてもいい。それらを満たす人物は……

「ううむ。だったら誰が行くべきだ?俺には思いつかんぞマスター」
「君でいいじゃないか吉田君」
「ハァ!?」 

全員が視線を向ける先には、心底驚いた様に目を見開くキャスター
完全に予想外だったのか、その顔は真っ青に血の気が引いている

「いや何で俺なんだ!?戦力にもならんし対応力も無いぞ!?」
「君は魔術師の英霊じゃないか。寧ろここで行かなければ本当にただのアル中だぞ?」
「仕方ないだろうが!飲まなきゃやってられるかこんな所で!」

「決めたわ。あたしとフェリシア。それとキャスターで行く」
「話を聞けお前!俺を連れていっても何の得にもならんとあれ程」
「ああもう、うっさい!サーヴァントを連れていけばアサシンを引き付ける役くらいには使えるでしょうが!」


ルゥナの剣幕に押されたのか、それ以降の文句は口から出ない
結論が出たと判断したのか、フェリシアは腕を掲げ、契約を唱える



「“セイバー。汝がマスター、フェリシア・グロスキュリアが命じます”」
「“私とルゥナ、キャスターを、ランサーの存在する座標まで送り届けなさい!”」


113 : ◆6QF2c0WenUEY [sage]:2021/04/17(土) 22:37:51.61 ID:XmLLvg7C0

【少し離席します】

114 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/17(土) 22:39:42.97 ID:ocllHkmLo
たんおつ
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/17(土) 22:59:18.54 ID:gqXgIfOE0
たんおつ
116 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/04/17(土) 23:57:18.98 ID:XmLLvg7C0






───変わりたいと、そう願っていた

ヒトとしての生に憧れたのもあった。ただ生きたいという単純な欲求もあった

だけど、今は。それよりも強く、……人間の言葉で表すなら。心の奥から溢れる感情は


ずっと、あの子の隣にいたい。……離れたくない


叶うなら、ずっと。人間になりたいと、確かに感じさせてくれたあの子と一緒に

だって、あの子はいつだって強くて。私に手を差し伸べてくれたから

人間になれば、きっと。ルゥナも、私を





「少々森ーーーっ!!」
「………………………………!」



117 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/04/18(日) 00:06:39.49 ID:IMYXt7S30



「あれが……アバドン……!」
「おい……!どう見ても不味くないか!?」

「間に合った……いや、駄目かもしれない」
「ゴメン。オレがしくじったせいで……」

地下空間に降り立つ一同の目に、ランサーと対峙するロベルトとアサシン陣営が映る
有無を言わさず認識するのは、最早人間の姿を認識出来ない程に変質した少々森の存在だった
銀の甲殻は鎧の様に肉体を覆い、鳴り響く羽音は心の底からかき乱す

英霊であるセイバーとキャスター。ランサーですらも怖気が走る
にも関わらず、平気な顔でアサシンは肩を竦めて嘲笑を浮かべていた


「遅かった。いや、私は丁度よかった。と言うべきだろうか」
「何せ、ここで君達は死ぬ。蝗の群れは、君達を跡形も無く喰らい尽くすだろう」
「何言ってんの、あんたはマスターでも何でも無いでしょうが!」

「知った口を聞くのもそこまでだ。セイバー」
「アバドンは私が召喚した存在……謂わば、英霊のシステムの上に立っている」
「私の指示で、アバドンは貴様らに牙を剥く。そして神が望む供物となるのだ」

ロベルトの言葉を証明するかの様に、アバドンから刃を離し、勝ち誇って嗤うアサシン
溢れんばかりの愉悦を浴び、絶望を存分に味わう。その顔が見たかったと口元を歪めながら

……そうだ、これこそが真実。目の前の絶望に折れ、気迫も誇りも全てが無意味
素直に受け入れて死ねばいい。これで、少しはあの馬鹿も理解するだろう……




……なのに、何故。あの小娘は、未だその目に光を灯しているんだ?


118 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/04/18(日) 00:18:37.78 ID:IMYXt7S30



「……少々森!聞こえてるでしょ!?」
「さっさとこっちに来なさい!あんたにはそれが出来るはずよ!」
「来たら、後はあたしが何とかするから!心配しないで早く来いってば!」

「……ルゥナ。もう、アレは少々森じゃない」
「わかるんだ。オレ達サーヴァントは、目の前の存在が何者なのか」
「諦めよう。まだ完全に覚醒していない今ならオレの宝具でも……」

諭す様に語るランサー。誰もがアバドンを殺すか、アバドンに殺されるかの二つで思考を進めている
だが、ルゥナは違う。その目はアサシンでも、ランサーでも、アバドンですら捉えていない

その視線は真っ直ぐに。少々森若子へと向けていた


「勝手に決めるな!勝手にあの子を決めつけんじゃないわよ!」
「あそこにいるのがアバドンか少々森か、そんなのあんた達が決める事じゃないでしょ!?」
「あたしは少々森を信じてる……!あんたの事はあたしが一番知ってるんだから……!」



『“俺は人を信じている。例え、お前がどんな罪を押し付けてもいつかは必ず明かされる”』

『“天は全てを知っている。……そうだろ?”』

「────ッ!?!?」

突如、アサシンの脳内に浮かび上がるのは存在したかつての記憶
あの時、汚れた牢屋にて縛り付けられたあの男は、屈する事なく。あろう事か笑ってそう言ってのけたのだ

……真実として、彼の者に課せられた罪は無く。彼は祖国の英雄としてその勇名は後世まで語り継がれる事となる

その男の名は『岳飛』。謀反の罪を着せられ、拷問による嘘の自白すらも跳ね退けた、まさしく英雄の中の英雄である



119 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/04/18(日) 00:32:17.72 ID:IMYXt7S30



「……ああ、思い出した。何故、あんなにも不快に感じたのか」
「その目だ……その、澄みきった瞳が気にくわなかったんだよ」

一人、口の中で噛み潰す過去の感情。英雄の瞳の中で燃える、その正しさが嫌いだった
だが今回は違う。誰もその正しさを信じない。いや、信じられる訳がない
小娘の戯れ言を信じる奴が、どこにいようか……

「さて……遺言も済んだろう。神に祈り、天にて救われる刻を待て」
「アバドンよ!奴等を喰らい!神が降臨する為の準備をするのだッ!」

「っ!セイバー!前に!」
「さいしょに言っておくけど!私も倒せるかわかんないから!」
「あああ……せめて、もう一本開けとけば……」

「ルゥナ!迷っている暇はない!」
「令呪でオレに魔力を!今なら霊核を砕いて、消滅させられるかもしれないんだ!」
「…………あたしは、あんたの事。信じてる」



「街なんて知らない、人理なんて知らないし、どうだっていいわ」
「後悔なんてしない……どんな結末になっても、きっとあたしはあんたを憎めないもの」
「だって、あたし達は友達でしょ?せめて、あたしだけは信じてるから」

「あんたは。少々森若子は人間だって」


120 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/04/18(日) 00:47:54.63 ID:IMYXt7S30


「………………」
「……?アバドンの動きが止まりましたが?」
「馬鹿な事を……!天使が、たかが人間の、それも小娘の声を聞く訳が」

「天使じゃない!その子は人間だっての!」
「少々森!あんたは結構……いや少し変わってるとこもあるけど!」
「あたしも、さきちゃんも!ずっとあんたを人間として見てたんだから──!」


先程までは刻む様だった羽音が静まる。ルゥナの声に反応するかの様にその殻に罅が入る
こんな事はあり得ない。何故?どうして?平静を保ちつつも、アサシンの胸は穏やかではない
命令を受け付けないアバドンに苛立ったのか、ロベルトは必死に声を荒げていた


「私の命令を聞けッ!私は貴様の上位存在!神の意思を継ぐ者だぞッ!」
「あんたはどっちなの!?人か、天使か。もう一度ここで宣言しなさい!」

ロベルトとルゥナ。二人の声の狭間で、人間に焦がれた虫は決意する

自分が何者なのか、自分は何を望むのか。その意思は銀に光る殻を剥がしていって──


121 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/04/18(日) 00:49:04.15 ID:IMYXt7S30
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122 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/04/18(日) 00:49:41.61 ID:IMYXt7S30
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           _jI斗r─くヽニニニ}0 0 /i/|i:i|-Li:|/i:}リi|iト(Wi]     二-[ __
     >`` __ \ \  }ニニニムr‐匕゙ |i小厂廴}jI抖ミ丁]  {   二_√-=_´
     i      \}_ } 厶ィ--=个   ///:. 人(:. 以ノ ]i:{  ∨ 二_√iミi:i:\          「私は……人間……。それと……」
     {        〕Iト。,_  r‐-=ミ /  {´        厶ィ   :i), 二_√.:i:i:i寸:i}
     \         ア⌒\. .Q〕ァ∧__ r ュ     |  | .:i:i:i:二_√i:寸i:i:У
.        〕ト。,     /     /. ./ヽ. ⌒\)ト、  ,, ]  ∨\i 二_√i:i:i:i〉´
            )ト。,   |   /. ./. . . .∨ . . . \ 〕iく--}トミ}i:i:i:i二 7i:〉⌒′            「私は……ルゥナの、ともだち……!」
            )ト、|    |. /. . . . . .∨. . . . .}. . . .〕iト、 . `ト辷,7´
                  \  ] ] . . . . . . . \. . /. . . . . . . .〕ト √W\
                   \| ] . . . . . . . . . . ∧ . . . . . . . . . / W(. ./
                 勹-寸 . . . . . . /. . \ . . . . . . /二/. ∨
                    忖. . . ./. . . . . |. . . . . ./二/. . .
                         |..∨. . . . . . . . . |. . . . ./二/. __/
                   ∧〈. . . . . . . . . . |. . . ./二/. //
                      ∨, . . . . . . . ..]. . _/二/. //
                          ∨,. . . . . . . .]_/⌒ヽ{- 〈
123 : ◆6QF2c0WenUEY [sage]:2021/04/18(日) 00:50:43.29 ID:IMYXt7S30

【本日はここまで】

124 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/18(日) 01:00:05.13 ID:nmG4oAwiO
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/18(日) 07:56:18.16 ID:+3koyIWg0
おつ
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/18(日) 13:40:31.40 ID:Iub9km2Xo

負けるムードゼロだが果たして…
127 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/04/19(月) 20:54:49.96 ID:NlSYI+gp0

【21:30から、ゆっくりやりたいと思います】

128 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/04/19(月) 21:40:16.60 ID:NlSYI+gp0



異形の中から、少女の体が顕れる。振りかぶる視線はアサシンを捉えていて
その手に握るのは、かつては地の獄を管理していた際の遺物である奈落の鍵
これは、未来を切り開く為。人間としての世界を開く為の鍵との証明


「っ。虫風情が、私の邪魔を」
「アサシン君!お怪我はありませんか!」
「かすり傷だよ、この程度で死にはしないさ。だが……」

「おのれ……おのれおのれおのれッ!神の眷属である貴様はッ!私の意思を無視するのかッ!」
「これはまさしく涜神に他ならない……あってはならない!赦されてはならないのだァーッ!」


ロベルトは少々森の反抗に酷く腹を立て、目を血走らせて絶叫する
無理もない。この場の優位性は全てがアバドン……少々森の力に依るものだ
だが、彼女は明確に建言した。『私は人間であり、そしてルゥナの友達だ』と

「何かよくわかんないけど、要はそいつは私達を攻撃する意思は無いのよね?」
「そ、そうだ!今の内にお前達を倒せば、この問題は全て解決するよな!?」

セイバーとキャスターは、改めて戦闘の態勢を取る。理由はわからないが、このチャンスを逃す手は無い
先程の余裕とは一転して、アサシン達は窮地に追い込まれる……



「あはっ……!ロベルト、困っている様だね」
「一応は、ボクの家族だし……助けてあげるよ」


129 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/04/19(月) 22:07:01.08 ID:NlSYI+gp0



「…………!」
「彼は……いったい?」
「下がってフェリシア。こいつ、何か嫌な感じがするわ……!」

セイバーの言葉に反応するかの様に、全員の体が硬直する。男の姿に総毛立つ
唐突に現れたその人物は、ルゥナはおろか、誰もがこの場に乱入してきた男の真意を計りかねていた

「ボクの名前は……イエス・エーデルワイス」
「そんなに怯えなくてもいいよ。ロベルト、ボクは君を助けに来たんだ」

「おや……ロベルト君のお知り合いですか!では是非ともそのお手をお借りし……」
「駄目だッ!この男はこの世に存在してはならない!悪魔そのものだッ!」

「……何かしら。仲間割れ?」
「いや、と言うよりは……ロベルトが、彼の事を信用していないみたいだ」

友好的な態度を見せる青年を、恐れるかの様な顔を浮かべて睨み付けるロベルト
徐々に、背後に後退していくその姿。あのロベルトですらも恐怖するという事実が周囲の緊張を高めていた

「貴様は……貴様は!何を考えている!?」
「嫌だなあ。ボクはただ同じ血族を助けに来ただけなんだって」




「それに……『ボクが勝ち取った聖杯』を、他の人間には渡したくないからさ」


130 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/04/19(月) 22:56:35.60 ID:NlSYI+gp0



ぞわり。不気味に空間が歪んだ気がした
イエスの双眸は得体の知れない光を湛える。何が見えているのかすらわからない

いや……それよりも気になるのは、先程の言葉。確かに今、あの男は

「勝ち取った聖杯……ですって?そんな事、ありえる訳ないわ」
「だって、この聖杯戦争はあたしが生まれる前から計画されていたって聞いているわよ?」
「それこそ、数十年以上も前に。あんたはそれ以前も、どこかで聖杯戦争があったとでも言いたいのかしら?」


ルゥナの視点は、かつては御三家であったガイスロギヴァテスだからこその指摘だった
エーデルワイスも御三家ではあるが、目の前の青年は自分よりも遥かに年上とは思えない
精々が五、六歳。高く見積もっても十歳が限度だろう

だが、イエスの返答は予想だにしないもので

「うん、そうだよ。ボクがこの街に聖杯をもたらしたんだ」
「とは言っても……偶然、聖杯に触れて生き延びただけのグズだけどね……」
「だけどボクはツイてたんだ!何しろ『天啓』が教えてくれたからね!」


131 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/04/19(月) 23:10:36.79 ID:NlSYI+gp0



「……天啓?」
「あーよくわからんが、要はその聖杯はお宅のものって認識でいいのか?」
「それなら、何故わざわざ聖杯戦争を?聖杯を手にしたなら願いを叶えればいいはず……」

フェリシアの疑問は当然だ。その話が本当ならば、聖杯戦争を起こす理由がない
イエスはさも当然とばかりに笑う。まるで決まりきっていると言いたげに

「そんなの……『君達が苦しむから』以外に、理由がいる?」

澄んだ声は、一切の偽りを感じさせない。それが真意だと明確に告げる
誰も思考を理解できない。それも仕方ないかとイエスは語る

「君達が苦痛に悶える程、君達が欲望に溺れる程にボクが面白いんだよ」
「シュヴァルツはさっさと使いたかったみたいだけど、それだとツマラナイじゃないか!」
「ボクは死にもの狂いで手に入れたんだから、皆もそのくらいはしてもらわないとね!」


あまりにも身勝手な言動に、全員の思考が硬直する。こいつは何を言っているんだ?
ルゥナにフェリシアはおろか、味方であるはずのアサシンすらも目を見開く。その中で、最も速く動いたのは

「そうですか!そのお気持ちはよくわかりますとも!」
「では、この場は共に切り抜けましょう!是非とも私をお見知りおきを!」

市長がにこやかな笑みで手を差し出す。この状況下でもその態度は揺るがない
差し出された手を一瞥するイエス。無言で片手を突き出すと……ドス黒い『泥』が市長の手を呑み込んだ


132 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/04/19(月) 23:11:15.88 ID:NlSYI+gp0

【ごめんなさい。体力の限界が来てしまったので本日はここまでです…】

133 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/19(月) 23:11:56.90 ID:Dj8yp+cEo
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/20(火) 00:15:11.51 ID:aKgrUTUso
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/22(木) 22:40:50.17 ID:3n2DdWRWO
おつ
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/22(木) 22:42:10.06 ID:TWVyUfoa0
おつ
137 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/01(土) 22:23:35.63 ID:7wWUQ+Yf0

【では少しだけ更新していきます】

138 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/01(土) 22:27:05.02 ID:7wWUQ+Yf0



それは、突然の出来事だった
イエスから放たれた『泥』は市長の手に喰らいつき、その先を砕く
あまりにも突然の出来事に、誰も反応する事が出来なかった。……唯の一人。アサシンを除いて

「ひっ……!?がぁああああぁああ!?!?」
「ッ、その男から離れるんだ!」
「あーあ。手が汚れちゃった……」

「……何?仲間割れかしら?」
「油断しないでセイバー。相手の動きから目を離しては駄目よ」
「それにしては……様子がおかしくないか?」

周囲の怪訝そうな目も意に介さず。イエスは隣のロベルトに視線を向ける
その顔はどこか優しげで。それなのに一切の慈悲を感じられない無機質なもので

「さて……ロベルト。キミは勝手にボクの聖杯を使ったね?」
「シュヴァルツの目は誤魔化せても、ボクには通用しない……わかるよね?」
「な……あ、ああ!?」


「さようなら。ロベルト……せめて、泥の中での安寧を貪るといい」



 ◆聖杯の泥
 人の悪性。泥の形をもった純粋かつ圧倒的な呪い。
 触れた者の魂を汚染し、時には肉体ごと呑みこみ消滅させる。
 とある地で行われた聖杯戦争にてこの泥に触れ、敗死した彼は復活を遂げた。
 その為、彼は自分が神に選ばれた存在であると信じ込んでいる。


139 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/01(土) 23:19:27.39 ID:7wWUQ+Yf0


暗澹とした泥がロベルトを呑み込む
濁流となった形ある悪意は、矮小な悪意を容易に飲み干し砕いていく
あまりに圧倒的な暴力に、為す術もなく堕ちていった


「こっ……こんな、こんなハズでは……ッ!?」
「あぁぁーッ!?私と!私が愛する神の!輝かしい未来が消えていくッ!?こんな、こんな事を許していいのか!?」
「止めろおおオオオオオ誰でもいいからイエスを殺し……」

「うるさいなあ。どうしてこうも醜く足掻くのかな?」
「ボクの血族ながら、理解が出来ないよ」


惨めな断末魔だけを遺して、黒幕であったロベルトは呆気なく泥に沈んでいく
まるで、最初からこの世に存在しなかった様に跡形もなく。痕跡すら許さないように

「さて……キミ達には申し訳ないんだけど、ここで全員死んでもらう」
「聖杯戦争の幕引きとしては三流だけど……アハハッ、まあいいか!」

微笑みながらの邪悪な宣言。その一言は否応なしに全員の緊張を漲らせる
泥が周囲に満ちていく。何か得体の知れない、おぞましいモノが這い出てくる──!



「さあ、現れよ!この馬鹿げた戦争の全てを絶望に堕とす為に顕現してくれ!」
「アハハハハハハハハハハハハハハ!!!」


140 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/01(土) 23:32:00.98 ID:7wWUQ+Yf0


ぞぶ、ぞぶ。泥の中から『何か』が出てきた
まるで羽化するかの様に、有象無象の影の群れが沸き上がる。形容の出来ないおぞましさに、思わず目をつむる少々森

「あああ……!私は、私はまだ死にたくない!街を発展させていない!」
「志半ばで死ぬのは嫌だぁぁ……!」

「……っ!あんたはこっちよ!ランサー、これはなんなの!?」
「オレもよくはわからない。けど間違いなく、ヤバいのは確かだよ……!」

「ななななんだ!?コイツら、あの青白い男に従っているみたいだぞ!?」
「セイバー!前衛に出て、私達を守って!……セイバー!?」
「わかってるってば!それにしても……っ!」

一人、前に立つセイバーの顔は苦々しく。眼前の異様な存在に一際強く警戒しながら
担う魔剣は微かに震える。セイバーだけがその影の正体を理解出来たのは、この剣が強い反応を示したからで

だからこそ、この窮地を誰よりも強く、鮮明に理解してしまっていた


「ああもう!なんてモン呼び寄せたのよ!」
「コイツら、『英霊のなり損ない』……要は英霊モドキ!デッドコピーよ!」
「……つまり、コイツらを倒すと」



 ◆堕・英霊召喚
  彼の権限で大聖杯にアクセスし、不完全な英霊「シャドウサーヴァント」を召喚できる。
  召喚された英霊は彼の呪いに汚染され、支配下に置かれる。
  正規の英霊を一騎で倒す力は無いが、数で圧倒することは十分可能。

  なお召喚される英霊が不完全なのは、正規の召喚方法ではないため。
  大聖杯自体にはなんの小細工もしていない。
  ただし、召喚されたシャドウサーヴァントを倒すほど、聖杯が汚染されてゆく。
  悲願を叶えるまでは本意ではないので、容易には切れない切り札。



「確実に聖杯が汚染される!あいつ、本気でこの街を滅ぼしに来てるわよ!!」

141 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/01(土) 23:35:40.79 ID:7wWUQ+Yf0

【本日はここまで。また明日更新します】

142 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/01(土) 23:53:15.88 ID:BdHGgGY/o
乙です
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/01(土) 23:54:39.20 ID:bOb3EjSdo
144 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/02(日) 18:03:27.49 ID:baTryqjv0

【早めに更新。安価は無いのでごゆるりとどうぞ】

145 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/02(日) 18:12:46.96 ID:baTryqjv0


黒く蠢く無数の影が、狭い空間を埋め尽くす
こちらに明確な殺意と悪意を向ける黒の集団。今もなおその数を増殖し続ける
おまけに、此方からの手出しは不可能。この影を倒す度に、聖杯が汚染されていく……


「ランサー、キャスター!アンタ達は下がってフェリシア達を守りなさい!」
「無茶だセイバー!幾ら君でも、この数は!」

「いいから!言っとくけど、アンタ達はこの影を倒したら駄目だからね!」
「あ、オイ!……ああクソっ!やってやる!」

ランサーとキャスターを背後に、セイバーは単身で影を討つ
実力は完全にセイバーの圧勝。だが消滅させる事は不可能である

……はず。なのだが


「ぜぇやあああっ!かかって来い、黒塗り野郎共!」
「アンガンチュールの娘にして、盾持つ乙女!このヘルヴォールがクソ剣に喰わせてやる!」

薙ぐ毎に影が切り伏せられる。斬る毎に黒の体が断たれる。その剣には容赦も躊躇いもない
聖杯の汚染も気にせずに、セイバーはその魔剣を振り回していく……



「……へえ、ティルフィング。魂を喰らう剣か」

146 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/02(日) 18:28:22.73 ID:baTryqjv0



ティルフィング。それは所有した者を悉く破滅させる呪われた剣
様々な人間の命を蝕み、セイバーの父も、息子もその輝きに魅いられ命を落とした邪悪な剣

だが、セイバーだけは違う。彼女だけは何故か剣に魂を啜られる事なく扱えた
それが何故か?そんな事は知らないが、兎も角これを振るえるのはセイバーだけ

つまり、彼女の魂は魔剣に喰らわれず。影英霊の汚染された魂のみを斬り砕く


 『宝具』
 ◆『魂魄啜る破滅の宝剣(ティルヴィング)』  
  ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜3 最大捕捉:10人    
  生命を吸収する宝剣。剣に触れた対象から魔力や神秘、生命力を吸収する。    
  物質の生命を吸い尽くして容易に断ち切る事を可能とし、吸収した命で刀身を常時修復・修繕する。    
  また、剣その物が命を好んでおり、命に向けて刀身を自動誘導する特性を有している。


「……なるほどね。でもセイバーだけじゃこの数は倒しきれないよ」
「他のサーヴァントやマスターの助力も期待できない……絶望的だよね」
「だからボクは焦らないよ。ゆっくり、キミ達が死ぬまでね……」

その言葉通り、幾ら斬り捨てようとも影の数は増していく
セイバーの力も限りがある。今は均衡を保てているものの、このままではいずれ力が尽きる……


147 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/02(日) 18:47:37.87 ID:baTryqjv0



「“汝がマスター、フェリシア・グロスキュリアが令呪を以て命じます!”」
「“立ち上がりなさい!ここで倒れる事は、マスターである許しません!”」

一筋、闇の中から紅い閃光が照らす。マスターからの絶対命令、令呪をここで使ったのだ
膨大な魔力がセイバーを支援する。一瞬だが、均衡は此方に傾いた

「サンキューフェリシア!これでもうちょっとは戦えるわ!」
「……だけど、不味いのは確かね。私はともかくこのままだとフェリシアがやられるかも」
「けど私が下がると……あーっ!面倒な事は苦手なんだっての!」

背後のフェリシアに目を向ける。討ち漏らした影は、ランサーによって食い止められていた
今はランサーが持ちこたえているものの、倒せないという条件が肩に重くのしかかる
自分一人で、この影の群れを全滅させなければこのまま共倒れになるだけ……


「おーーーいっ!セイバーっ!こっちに来てくれーーーっ!」
「なによバカ!今忙しいんだっての!」「バカとは何だ!とにかく一度こっちに戻れ!」

突如、キャスターからの絶叫が背後から響く。こっちは忙しいのに何を、と睨みつけた


148 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/02(日) 19:07:34.60 ID:baTryqjv0




「その剣は!霊体を喰らえば喰らう程強くなるのだろう!?」


「協力する!俺を喰え!サーヴァントをエサにすればより強力になるんじゃないのか!?」



149 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/02(日) 19:16:25.98 ID:baTryqjv0



「……はぁ!?」

キャスターの思いきった発言に、セイバーは思わず目を丸くする
この男は自分を喰えと。そう言ったのか?前線から一時切り上げ、後方に向かう


「仕方ないだろ!?俺だって死にたくない!」

「だがなあ!ここで手をこまねいて見ていても何も状況は変わらないだろ!?」

最後尾では、ランサーとルゥナ。フェリシアが少々森を庇うように影を相手取る
だが、徐々に鈍くなっているのが目に見えてわかっていた

「女子供に犠牲になれとは言えない。ランサーの奴がいないと守れない」

「俺は“英霊(サーヴァント)”なんて大それたモンになったんだろ!なら!」

「この国の、一つの街だろうが……英雄として、守ってやりたいだろうが」

キャスターの足は震えている。その目は泳ぎ、覚悟が未だに決まりきっていない事を如実に表していて
キャスターは恐らく、生前から争いとは無縁な人物だ。学者然とした態度は、剣よりも筆を握る方が得意だと示している
そんな人間が、国の為に命をなげうつ。その恐怖は如何ばかりか。その決意は如何ほどか

セイバー、ヘルヴォールは戦士である。その決意を無下にする事は、不可能に等しかった

「……そうね。幾ら近代人とはいえ、この連中を喰い尽くした分も合わせれば。多分」
「そうかよ。なら頼む!……なるべく、痛くないようにな」



150 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/02(日) 19:39:21.77 ID:baTryqjv0


重々しく、剣を引き抜く。その煌めきは、獲物をねめつける獣の瞳の様な妖しい光を放つ
魔剣はキャスターを捉えて輝く。その身、命を捧げる覚悟はあるのかと

剣に映されるのは、不敵な笑みのキャスターだけ。今更だと笑い飛ばすかの様な強がりの笑み
剣を振りかぶり、暫しの沈黙。戦場に響く怨嗟も、この瞬間だけは観戦に徹して

「そう言えば、あんたの真名って何だっけ?」
「『吉田東伍(よしだ とうご)』だ!あの馬鹿マスター。『どうせわからないからいいじゃないか』って真名で呼びやがって!」
「そ。ありがとう。アンタの命で、絶対に皆を救ってみせるから」



鈍く、肉を斬る音が木霊する。セイバーの魔剣は寸分狂わずキャスターの霊核に食らい付いて
剣に魔力が満ちていく。魂魄を糧とし、勝利を手にする呪われし魔剣

「……頼む、この街を、守ってくれ」
「聞き届けた。ヘルヴォールの名において、剣の魔力を解放する───」

両手は剣を上段に構え、両足は地を踏み締める
魔力の奔流が剣より零れる。影の群れも、その煌めきに目を奪われるばかり

嗚呼、我々も、あの様な剣を担える英雄になる筈だったのに……



「“唸れ、クソ剣ッ!魂魄を啜る破滅の宝具よ。私の願いを聞き届けよッ!”」
「“私が願うは、この影の全滅!フェリシアと、その仲間を!この手で救う為に剣を振るう!”」

「“食い荒らせ!『魂魄啜る破滅の宝剣(ティルヴィング)ッッッ!!この悪夢ごと──!!”」


151 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/02(日) 19:51:13.53 ID:baTryqjv0


喰らう、喰らう、喰らっていく
刀身は空間を断ち斬る程に増強し、影共は為す統べなく呑まれていく
この世に遺すまいと、魔剣が逃げる影を追い、一つ残らず食い潰す。新たに沸こうが関係無い

イエスはその光景をゆっくりと見ていた。抵抗するでもなく、絶望するでもなく
ただ胸にある感情は『郷愁』。かつて聖杯戦争で見たあの光

「あはっ、何だか懐かしいなあ。ボクは必死に逃げたんだっけ」
「……ごめんね、バーサーカー。ボクは勝って、願いを」

言葉は続かない。魔剣がイエスを分断し、体は泥へと沈んでいく
その顔は少し寂しげで、どこか申し訳なさそうら悲しげな表情を遺していた



「らぁああああーーーっ!こ、のっ!クソ剣がああぁあああーーーッ!!!」

セイバーの雄叫びが、地下に蠢く影を塗り潰す
その霊基は既に限界を超え、全身が悲鳴をあげようと剣を振り続ける

そして、空間には静寂が帰る。影も、敵も、絶望も。全て魔剣が喰い尽くした

「セイバー!」
「あ、フェリシアとランサーのマスター。お疲れ様」
「ま、礼はしとくわ。貴女がいなければあたし達は……っ!?」

労おうと近づくフェリシアとルゥナ。その顔には疲弊の色がありありと浮かぶ
とはいえ、功労者であるセイバーに一言くらいは声をかけておかねば。そう思ったルゥナは言葉を失った

……セイバーの身体はほつれ、光の粒子となっていたのだから


152 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/02(日) 20:10:46.23 ID:baTryqjv0
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153 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/02(日) 20:13:29.24 ID:baTryqjv0
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154 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/02(日) 20:14:45.52 ID:baTryqjv0


「……セイ、バー?」
「あんのクソ剣。少し解放したら”もっと魂を寄越せ”とか。ふざけんじゃないっての」
「だから……ごめん、フェリシア。私の霊核、剣にくれてやっちゃった」

冗談めかした言い方だが、セイバーの顔は心底悔しげだ
目の前の少女を勝たせてあげられなかった。出来れば、自分の手で願いを叶えてあげたかった
けれどもその願いは無慈悲に断たれた。彼女が聖杯を手にする事は出来なくなったのだ

「……謝らないで。私は、後悔してないわ」
「家の事は、残念、だけれど。私はやりたい事をやったから。だから」
「どんな結末になって、も……っ!受け入れ、ない、と……っ!」

戦後の静かな地下空間は、すすり泣く声がよく響く
どれだけ気丈に振る舞おうとしても、夢を断たれた哀しみは少女の胸を支配する
ルゥナは泣きじゃくるフェリシアから目を逸らす。そして、セイバーはその頭を優しく撫でた


155 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/02(日) 20:16:31.29 ID:baTryqjv0


「あーもう!泣かないの、フェリシア!アンタは綺麗な顔してるんだから」
「だって、だってぇ……っ!」

「……私も、クソ剣にタダでくれてやった訳じゃないわ。対価もキッチリ請求してる」
「だから、願ってあげたわよ?“フェリシアの願いを叶えてあげて”って」
「けど、素直に叶えるかはわからない……それはフェリシア次第ね」


 ◆『魂魄啜る破滅の宝剣(ティルヴィング)』
  ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜3 最大捕捉:10人
   生命を吸収する宝剣。剣に触れた対象から魔力や神秘、生命力を吸収する。
   物質の生命を吸い尽くして容易に断ち切る事を可能とし、吸収した命で刀身を常時修復・修繕する。
   また、剣その物が命を好んでおり、命に向けて刀身を自動誘導する特性を有している。

   願望器としての機能を有し、吸収・貯蓄した魔力を用いて持ち主の様々な願いを叶える。
   不相応な願いには相応の代償が伴い、魔力が足りなければ持ち主の魔力を過剰に吸収して叶えようとする。
   また、持ち主の悪しき願いに反応して“破滅の呪詛”で汚染し、願いを破滅の方向に歪めてしまう。


「だから、前向いて生きなさい!いい人見つけて、子供いっぱい産んで!幸せになんなさい!」
「あ、私はあんまり参考にしないでね?夫はバカだし息子はアホだし」

「……ありがとう。ヘルヴォール。私のセイバー……!」
「どういたしまして!ぶいっ!」

光に包まれるセイバーを、フェリシアは強く抱きしめる
そんなフェリシアを見つめる顔は、どこか優しげな母の様で
消滅するその寸前まで。フェリシアの身体を抱きしめ返していたのだった


156 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/02(日) 20:50:24.91 ID:baTryqjv0


「セイバーが、消えた」
「そうだね、彼女は皆を守ってくれたから」
「……あり、がとう。セイバー」

セイバー達から少し離れた所では、ランサーと少々森が一息ついていた
その姿はボロボロで。少々森は肩で息をする

ふと、ランサーが目を向けた先。そこには取り残されていた市長と、ズタズタの人間……アサシンが横たわっていた


「ああ……アサシン君!」
「無理だよ、もう彼は消滅する。……自分を盾にして、マスターを守ったんだ」
「君は、例え身を挺してでも守ろうという意志があったんだね……」

「………………何、を。知った、事を」
「私が、何をしたか……知らない、訳じゃないだろうに」

倒れ伏しているにも関わらず、アサシンの視線は目の前のランサーを射抜いていく
ランサーは無言で鎧を外す。素顔を晒したランサーは、アサシンの目を真っ直ぐに見据えて

「君は、国を救いたかったんじゃないかな」
「……………………」


『なあ、お前は国を救いたいんだろ?』
『じゃあ、それもいつかは理解されるさ。何せ天は全てを知っているからな!』

……忌々しい、腹立たしい。何を知った口を聞いているのか
例え天が知っていようと、民が知らねば意味がない。お前の無実は晴らせなかったじゃないか

……昔の記憶。黒く潰したい忘れ難き記憶
そうとも、救ってやったとも。お前とは違うのだと言い聞かせていたのに
結局、奴の言う通りに冤罪は晴らされた。私は売国奴として後ろ指を指され続けた

それでも、私は


「……教えてくれ、岳飛」
「私は、間違ってなど……なかっただろう……」

粒子となるアサシン。その目はランサーを見てはいない
それは、どこか遠くの。遥か彼方の男を見ている様で───

157 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/02(日) 20:50:50.65 ID:baTryqjv0

【一旦中断します】

158 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/02(日) 21:13:21.66 ID:s7NdxKHGo
一旦乙
159 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/02(日) 23:25:27.82 ID:baTryqjv0

【では少しだけ再開します】

160 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/02(日) 23:33:55.65 ID:baTryqjv0


「ルゥナ、大丈夫?」
「なんとかね……少々森は」
「うん。大、丈夫」

戦闘を終えて一息つくルゥナ達は、ぐったりと体を横にする。誰もが疲労に満ちていた
へたり込むルゥナと少々森にフェリシアが近寄る。その横に座ると、咳払いをして

「……おめでとう、ルゥナ」
「貴女のサーヴァント……ランサーが、この聖杯戦争の勝者よ」
「あ……そっか、そうよね」

「……おめでとう。ルゥナ」
「色々と巡り合わせもあるけど……この聖杯戦争は、オレ達の優勝だ!」

バーサーカー、ライダー、アーチャー、キャスター、セイバー、アサシン
この聖杯戦争で召喚された英霊は、自分の召喚したランサーのみを残して消失した
つまり……聖杯は、ルゥナとランサーに使用する権利が与えられた事になる

「ふ、ふふ……えへへ……」
「ねえ少々森。あんた、何か欲しいものとか無いの?」
「せっかく聖杯に叶えて貰うんだから、少しは奮発してくれるわよ」

優勝の実感に、思わず笑みが零れ落ちる。自分の手で何かを為したのは初めてじゃないか
横にいる少々森は、目を閉じて、少し思案して


「私の、願いは、人間になる事」
「でも……あと一つ、叶う、なら……」



「よう。オレを忘れちまったのか?相棒」

161 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/02(日) 23:47:33.04 ID:baTryqjv0


ひょい。と現れたのは、いつかに見た骨の英霊

くつくつと笑ってるのか、それとも厳かに見定めているのか。視線も読めないので判別不能

ただ一つだけ理解出来るのは、この骨も聖杯を狙っているという事だけだった


「貴方は……?」
「フェリシアは下がってなさい。……あんたも、聖杯に召喚されたサーヴァントってワケ!」
「その答えは80点だな。ちなみに満点は1000点満点」

「オレは悩める子羊に……ってのは、異郷の言葉だったか?なあ、ランサー」
「その口ぶりは……オレの真名も知ってるみたいだね」
「まあな。これでも一応働いてたんだぜ?週休二日の賞与付き。ホワイトだろ?骨だけにな」


骨の英霊は飄々と。真意を掴ませない態度で煙に撒く
とにかく、聖杯を手にするにはこいつを倒さねばならない。ルゥナは最後の力を振り絞り立とうとした

「おいおい、ここでおっ始めるのは勘弁してくれよ。こんな暗い所でクライマックスか?」
「それなりに相応しい舞台に行こうぜ。役者もたくさんいる事だしな」

骨の英霊が手を横に振る。すると、ルゥナ達の景色が急に途切れる
再度、世界がルゥナと繋がる。そこは月明かりに照らされた、まっさらな芝の広がる舞台

ルゥナもフェリシアも、見覚えのない場所に困惑の色を隠せない。一人、市長だけが声を震わせた


「ここは……『坂松スタジアム』ではないですか!」



162 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/03(月) 00:00:18.99 ID:jSwtz1Go0



「スタジアム?……そう言えばあったわね」
「この街の復興を賭けた一大プロジェクトで、あと少しで建設が完了するのですが……」
「……ルゥナ!あそこにいるのって」

ランサーの指す先を見やると、そこには幾つかの人影が
おまけに、そこにいた全員はルゥナもよく知る人物だった


「どういう事?いきなり世界が歪んだと思ったら、こんな広い所に」
「むう、僕もこんな事態は初めてだとも。賢者の蔵書に載っていたかな」
「状況の把握を開始する。ここは坂松市の中心に位置するスタジアムと判明。時刻は……」


「ストレングス!?ユーニスにティファも!」
「ルゥナ?これは貴女の仕業なのかしら?」
「違うわ。……あそこにいる英霊。あれが私達をここに呼んだの」

困惑する全員をフェリシアがまとめる。視線の先には骨の英霊が
……その背に浮かぶのは、膨大な魔力の塊。誰もがソレを、『聖杯』だと確信する


「あー、まずは先に言っておく。『この世界はいずれ滅ぶ』」
「だからすまないんだが……願いは諦めて、大人しく死んでくれないか?ランサー」


163 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/03(月) 00:22:53.23 ID:jSwtz1Go0


「……断る。と言ったら?」
「その時は実力行使だな。ここにいる全員の血でシャワーは嫌だろ?」
「っ、あたし達は人質って事!?」

真っ先に反発したのはルゥナだった。自分が人質として扱われる。そんなのはプライドが許さない

「人聞きの悪い事を言わないでくれよ。まあ人に聞かれると不味いだけなんだが」
「オレだって出来る範囲では穏便に済ませたいからな。だからとっとと自害してくれ」
「こいつだって言ってるぜ。また拐われるのはゴメンだってな」

「ルゥナ……」「少々森!?いい加減にこっちに返しなさいよ!」
「そらよ」「案外アッサリ返したわね……」

ぽいと少々森を投げる骨の英霊。宙を舞う少々森を、ストレングスがキャッチする
とにかく交渉の余地はない。目の前の英霊に向かって、ルゥナは力強く叫んだ




「何度でも言ってやるわ……その聖杯は優勝したあたしが使う」


「あんたみたいなぽっと出に使わせない。あたしには叶えたい願いがある!」


「ていうか、そもそもあんたは誰なのよ!どうせ隠す意味なんて無いわ。あんたの真名を名乗りなさい!」


「誰であろうと関係無いわ、あたしとランサーでぶっ倒してやるんだからっ!」



164 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/03(月) 00:27:24.30 ID:jSwtz1Go0


「……哀れ也、哀れ也かな」

「未だ真理を悟れぬ衆愚よ。拙僧の慈悲を以て極楽浄土に至るべし」

「煩悩、無量、誓願断。……なんつってね」

「“───『偽天聖王(チャクラ・ヴァルティン)』”」


聖杯を、骨の身体の内部に取り込む。瞬間、暴力的な魔力がスタジアムを支配した

建物を構成する『石』や『鉄』。それを強引に引き剥がし、新たに石人形を形成していく

そして骨の英霊がいた中心部。そこには無数の石、鉄、骨が集い、一つの新たな建築物を構築していた


……“天に聳える石の塔”。“この世でただ一つ、人間の欲望を受け止めた骸”
それこそが、骨の英霊……否、“救世者”の真名を如実に示していた


「オレは“救世者(セイヴァー)”。名は“覚者”」

「……ではなく、その骸。正式名は“仏舎利”だ」

「お釈迦様のデリバリー。救済の出張サービスだ。特別に無料(タダ)で見てやるぜ」


骨の英霊、真名は仏舎利。この世、全ての欲を見た骸


「オレはエクスペダイト。困難に立ち向かう人の聖人だ」

「だから、オレは最後まで戦う!ルゥナを、世界を!勝手に滅ぶなんて決めつけるな!」


対するは時の聖人、エクスペダイト。最新最速の聖人にして、問題に手をさしのべる者

満点の星と月の柔らかな明かり。光が両者を、ルゥナを、マスター達を照らしだす

この聖杯戦争の最終決戦。この世界の命運を決める、最期の戦いの幕開けだった


165 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/03(月) 00:30:09.41 ID:jSwtz1Go0


『スキル』
 ◆石英の塔:EX   
  翡翠、石英は仏舎利の代用として扱われ、これは現代でも現存、販売されている。
  その「代用品」としての側面を強調するスキル。   
  セイヴァーは自身の肉体の代わりとしてまったく他人の骨や貴石類を用い、消費することでダメージを肩代わりさせることができる。   また、塔のようなシンボルを作成し中心にこれらを配置することで、いつでも意識を移し替え、同じスペックのセイヴァーとして遠隔で活動させることも可能。   
  ただし、その間は本体の操作はできなくなり、活動している遠隔操作体が消滅するほどのダメージを受ければ本体も消滅する。


 『宝具』
 ◆『偽天聖王 (チャクラ・ヴァルティン)』   
  ランク:B+++ 種別:対仏宝具 レンジ:1〜99 最大補足:1000人   
  衆生を救う祈りと悟り、その具現。人を救うはずの期待と執念の賜物とも。   
  仏舎利という形代へ集まる信仰、救われたいという願いが形になった飛行要塞。   
  真名開放とともに大量の人骨と石で出来た超巨大構造体が現れ、以後セイヴァーの戦闘補助を行う。   
  一度発動してしまえば魔力炉による無限の魔力を用いての対粛清防御膜展開・長距離魔力投射や、飛翔するバスターバンカーによるオールレンジ攻撃を絶えず行う。   
  ただし、発動には完成直前の聖杯クラスの莫大な魔力リソースか、構造体を自身で組み上げるだけの「材料」が必要。   

  釈迦は誰もが救われる概念として「悟り」を得て、衆生へ広めようとした。   
  しかし人は、彼の人の遺骨を奪い合い、それに自身の欲望を祈願するという形でこれに応えた。   
  故の対仏宝具。満たされることなき人の欲の象徴としての仏舎利である。


166 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/03(月) 00:30:59.81 ID:jSwtz1Go0

【今回はここまで。次回は最終決戦から始めます】

167 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/03(月) 01:04:07.76 ID:7ucxpyYDo
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/03(月) 01:30:59.61 ID:NMYS72CU0
乙ー
パンチパーマ本人じゃなくてその亡骸が鯖化ってマジか。アレか、ソロモンに対するゲーティアみたいな感じか
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/03(月) 01:44:36.07 ID:QDvlucRNO
おつ
前作がキリスト教だったから今回は仏教ということか
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/03(月) 09:15:25.64 ID:h2paynPDo
171 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/03(月) 17:29:25.55 ID:jSwtz1Go0

【という訳で最終決戦を始めたいと思います】

【安価はありません。なので、ごゆっくり観戦してくださいね】

172 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/03(月) 17:36:11.09 ID:jSwtz1Go0




「──大規模な時空の歪みを観測した」

救世為す塔の内で、仏舎利は言葉を紡いでいく
無限の残骸の祈りは此処に。今こそ苦痛に喘ぐ無数の衆生に、その答えを示さんと


「特異な点、空想の樹。人理への攻撃が開始されている」

「無論、この世界も例外じゃない。いずれ侵略の手はこちらにも及ぶだろう」

「一度始まれば総ての人理は白紙となる。総ての生命は終わりを迎える」

「その前に……『無限に餓う転生(アミダ・アミターバ)』を用いて総ての人間を救済する」

「どうせ何もわからずに消えるなら、救われて死ぬ方がいいだろうよ」


 『宝具』
 ◆『無限に餓う転生 (アミタ・アミターバ)』   
  ランク:EX 種別:対人理宝具 レンジ:9999 最大補足:77億人(現代換算)     『偽天聖王』の最大展開。   
  人類創生に匹敵するエネルギーを集中し、解放する。エネルギー集中には偽天聖王の展開から丸一日ほどが必要。   

 『偽天聖王』の中央に君臨する大仏舎利砲塔から放出された魔力は蓮の花のような形で地球を覆い、   
  通常の人間一人が耐えられるダメージを1ダメージとして、全人類に「現人口/五十六億七千万」ずつのダメージを与える。   
  釈迦は五十六億七千万年後にその座を弥勒に譲るとされている。人類の苦の旅路は、それまで終わることはない。   

  その時点の人類史の長さや版図の広がりによって威力が変動するが、何十億人に同時にダメージを与えるため、   
  理論上これに耐えられる人類コミュニティは存在しない。


その言葉の意味を知る者はいない。その言葉が届く事もない
ただ、眼下にて抗い続ける者達の答えを見定めるのみ
命あるものは必ず滅びる。衆生は苦しみの輪廻にいる

だが、道は一つではない。どう選ぶかは、結局は今を生きる者だけなのだから


173 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/03(月) 17:49:29.31 ID:jSwtz1Go0



「あああ〜!助け、助けてください!」
「誰か助けに来てくれ!僕の土精(グノーム)がボコられている!」

「あんた達は後ろに下がってなさい!足手まといなだけだから!」


石人形が、マスター達を包囲するかの様に動く
各自で破壊等の対処はしているものの、仏舎利の力の影響か。異常に強い
ルゥナ達では自営の出来ない市長とユーニスを庇う余裕はない。大人しく下がる様に指示した

「っと!材料が石だと、あたしの炎が全然通じないのが厄介ね」
「ルゥナ君!後ろに幾つかの人形が……」

ユーニスの叫びに振り向くと、複数の石人形が襲い来ている
マズい……!だが、襲ってきた石人形は、誰かの剣によって粉々に砕け散った

「今度、は……ルゥナは、私が守る……!」
「私、足手まといに、ならないから……!」
「少々森……!なら、気合いを入れなさい!」

「いったい何なの?ワラワラ出てくる雑魚敵にしては強すぎるわ」
「恐らく仏舎利の擬似的な分霊でしょう。私達でも倒しきれない……!」
「俺の魔力弾でも砕けないか。ならば直接、塔を破壊してしまえば」



「ダメだストレングス!仏舎利にダメージを与えるには、石人形を砕かないといけない!」
「石人形を身代わりにダメージを移されてる。時間を稼がれるんだ!」

174 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/03(月) 18:00:12.62 ID:jSwtz1Go0


ランサーの指摘通り、ストレングスが塔に撃ち込んだダメージはみるみる内に修復される

石人形が傷に寄せ集まり、治癒している。まるで瘡蓋の様だ。塔を人形が守っている
では、ちまちまと戦っていては埒が明かない。この場を一掃する程の攻撃が必要だろう

「つまり、こいつらを全滅させる威力の攻撃を叩き込めって事ね!?」
「一瞬でいい!一瞬でも隙が出来れば、オレの槍であの塔を穿つ!」
「あんた達!協力しなさい。この石人形を木っ端微塵にするわよ!」

響き渡るルゥナの声。戦える者はより奮起し、それぞれの得物を敵に向けた


「……わかったわ!グロスキュリアの力、見せてあげましょう!」

「無論だ。俺は元よりこの街を守る為に戦っている。……誰も消させたりはしない」

「合体技ね!……ふふふ。私、こういうシチュを待ってたのよ!」

「……ルゥナ、私、も。頑張る!」


フェリシア、ストレングス、ティファ。そしてルゥナと少々森
四人の力を重ねれば、この人形共を蹴散らすなんて容易いはずだ

だが、それは彼方も承知の事。石の壁が迫り、彼女達を押し潰さんと──



「──“私は、その事象を『拒絶』する”」
「“輝け、私の『魔眼』!ロシュフォールの威信を示しなさい──!”」


175 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/03(月) 18:10:00.44 ID:jSwtz1Go0


ティファの左眼。眼帯に隠されていた瞳が輝く
迫る石壁を『視た』瞬間。壁はまるで存在を否定されたかの様に脆く崩れさる

これこそが『魔眼の一族』であるロシュフォールの秘奥。最上級の魔眼の力
次期当主ティファニー・フォン・ロシュフォールの隠し球。『拒絶の魔眼』


 ◆拒絶の魔眼   
  彼女の左眼に持つ魔眼の一種で彼女が先天的に持つ本来の魔眼。ランクは『宝石』   
  その能力は事象の拒絶。 彼女がある事象を魔眼で目視することで、事象そのものを打ち消す事が出来る。   
  目視することで彼女に向かって放たれた銃弾は彼女に届く前に消滅し   
  彼女を拘束する為の魔術は、魔眼の目視によって強制的に無効化する。   
  場合によっては宝具の真名解放をも拒絶することが出来る。   

  一見万能に見える魔眼であるが、拒絶できるのはあくまで「現在進行形」の事象だけである。   
  過去に確定してしまった事象を拒絶することは出来ない。   
 (例えば放たれた銃弾を拒絶することは出来ても、撃たれて死が確定した人物の『死』そのもの事象は拒絶できない)   
  そして目視することが重要なので、目視出来なかった事象を拒絶することは不可能であり
  また長時間の使用または拒絶する事象の規模によっては精気(オド)を多く消耗し、最低でも失明最悪死亡することもある。   
  現在彼女の左眼はロシュフォール家特注の眼帯で隠しており、魔眼の魔術回路そのものを切っている。


壁を構成していた石人形は、最早ただの瓦礫と化す。しかし、それでも未だ健在な人形も数多く
大きく崩れた人形達は、直ぐ様こちらに襲いかかってきた

176 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/03(月) 18:20:14.51 ID:jSwtz1Go0



「……私は、もう迷わないわ」

「お父さん。……この槍を、使わせて戴きます」

フェリシアが取り出したのは、神々しい魔力すら感じる一本の槍
ロシュフォールの秘奥『拒絶の魔眼』と同じ様に、彼女のグロスキュリアの持つ切り札

彼女はずっと躊躇っていた。この槍を軽々しく使えないと自制していた
だが、もうそんな悠長な事は言えない。彼女の決断は二人のマスターも動かして

「やるのね、フェリシア。なら、あたしだって全力でやってやるわ……!」
「リミッターを解除する。この一撃で終わらせるぞ……!」

ルゥナとストレングスが、ありったけの魔力を練り上げる
戦いあった二人が、目の前の全てを破壊する。ただ一つを目的として


「食らぇええええぇえええっ!あたしの炎で、全部焼き尽くす──!」
「臨界点突破。敵性存在捕捉完了。殲滅ヲ開始スル……!」


「お願い、“偽・偽・大神宣言(イミテーション・グングニル)”!私達の道を切り拓いて──!!!」



177 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/03(月) 18:30:31.07 ID:jSwtz1Go0


 『スキル』
 ◆偽・偽・大神宣言(イミテーション・グングニル)  
  初代グロスキュリア家当主が再現を試みた戦乙女、の武装。  
  オリジナルには遠く及ばないが、名を詠唱い上げれば追尾機能を発揮する。  
  彼女の慣れない投擲でも、遠方の敵を刺し貫く事が可能。


フェリシアの放った槍は、神々しい光を纏って石人形を寸分違わず砕き尽くす
ルゥナとストレングスの砲撃は、その圧倒的な火力を以て石人形を破壊し尽くす

……これで、石人形は全て消え去った。残るは天を目指さんとする石塔のみ

「ぜぇ、はぁ……!やった、やっちゃいなさい!少々森、ランサー!」

力尽き、倒れるルゥナ。そして他のマスターも倒れていく
その横を二人の影が通りすぎる。最後に残った少々森とランサーは、仏舎利の座す塔へ走る


「……これは、皆の力で拓けた道だ」
「だから最後は、オレ達が決める!皆の明日を終わらせるなんて許さない!」

「いくよ少々森!力を合わせて塔を砕く!」
「わか、った!ルゥナは、助けてくれたから……!」


ランサーと少々森が高く飛ぶ。狙いは塔のド真ん中
この一撃で終わらせる。槍の穂先が塔に触れる……



「タイムオーバーだ」

178 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/03(月) 18:35:44.77 ID:jSwtz1Go0


「……え?」

槍が塔に弾かれる。その魔力は先程の比ではない程に強く、神秘的
周りから、いや世界から何かの音が優しく聴こえる。これはまるで鈴の音だ
下を見やると、辺りには満面の蓮の花。極楽浄土のごとき穏やかな大地

それ以外には何も感じない。……他のマスター達も、自分のマスターも


「なん、で。ルゥナは、負けて、ない……!」
「そうだ、そうだよ!ルゥナも、皆も!お前なんかに負けるハズが」
「まあ、確かに『全世界』の救世を為すには、まだ時間がかかる。だけどな?」

塔から仏舎利が顕れた。地上でただ一人、生の苦しみから放たれた骸は、聖人と天使に無慈悲に告げる


「『ここにいる人間だけを救う』くらいなら、そんなにかからないってワケなのさ」
「だから、何て言うかな……ご苦労さん」

清浄な光が二人を包み込む。静かに、優しく、抱擁するかの様に

満ち溢れる光の奔流。それが消えると、辺りには何も動かず、花が静かに揺れるだけだった


179 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/03(月) 18:36:20.39 ID:jSwtz1Go0

【一旦休憩します】

180 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/03(月) 19:32:21.90 ID:jSwtz1Go0



「………………」
「……ん、うぅん……」
「………………」

眠い、とにかく眠い。目蓋を開けるのが億劫なくらい今は寝ていたい
それに、なんだか幸せな気分だ。心が穏やかで落ち着いている

今まで頑張ったんだし、寝ていても大丈夫……

けど、何の為に。誰の為に頑張ったのか。それだけは霞の様に思い出せなかった


「……ナ。ルゥナ!ルゥナ!」
「起きるんだ!目を覚ますんだ、早く!」
「早く起きないと仏舎利の宝具が全解放する。この世界が……!」


「ん、うう……別に、いいじゃない……」
「だって、こんなに幸せなんだから……」

181 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/03(月) 19:41:23.51 ID:jSwtz1Go0


誰かから強く叱咤される。けれど、そんなのはもうどうでもいい
諦めたっていい。見て見ぬふりしてもいいじゃないか。あんなに頑張ったんだし……

……まただ。何の為に頑張ったんたっけ。それがどうしても思い出せない
けれど、本当に頑張ったんだし。少しくらいは寝ててもいいじゃないか
……でも、確か。頑張ったのは自分じゃなくて、誰かの為に


「ルゥ、ナ!ルゥナ!ルゥナ!」
「起きて、起きて!目を開けて!」
「……少々、森!?あんた、どうして!?」

一人の少女の声で飛び起きる。そうだ、自分はただ一人の女の子の為に頑張っていたんだ
少々森は不安げに、ルゥナの服を掴んでいる。その目には涙が浮かんでいる

見渡してみると、ここは辺りは桃色の柔らかな霧に包まれた空間だった
そして、目の前にいるのは少々森と、ランサーだけ。ルゥナはまず、思い付いた疑問を口にだした

「……ここは?」
「わからない。死後の世界なのかもしれない。ルゥナの精神の中の世界かもしれない」
「夢の中でサーヴァントと繋がる現象もあるから、その一種なのかもしれない……」


182 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/03(月) 19:50:43.78 ID:jSwtz1Go0


「……で、どうすればいいのかしら」
「あの仏舎利をどうにかしないといけないのは覚えてるんだけど……」

この桃色の空間は、居心地はいいが出なくてはならない
しかし、ルゥナでは見当も付かない。少々森も同様に首を横に振る

おもむろに、ランサーが口を開く。鎧を外したその顔は、穏やかに笑いかけていた

「……ねえ。二人はさ、何がしたい?」
「この聖杯戦争が終わったら、二人は何がやりたいの?」


「あたし?そうねえ……少々森と一緒に、学校に通ってみたいわね」
「ほら、結局途中から行けなかったじゃない。今度は毎日……は面倒ね。行けたら行くわ」
「あ、でも縦島や花村もいるわね。あいつらも一緒……まあいいわ。楽しいと思うし!」

ルゥナは笑う。彼方へ想いを馳せながら、輝くばかりの夢を語る

「私、は。ルゥナの家、行ってみたい」
「あたしの?少々森が見ても、面白い事なんてなにも無いわよ?」
「けど、行ってみたい。ルゥナの住んでいた家に行ってみたい」

「だっ、て。私は、ルゥナと、色んな所に行きたいから」
「それが、私の、新しい願い。私の夢……!」


183 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/03(月) 20:12:51.07 ID:jSwtz1Go0


「………………」
「だ、駄目、かな?」

じっと、ルゥナの顔を見る少々森。かつて見た時とは違う、決意を秘めた強い表情で
そんな真剣な顔で、そんな事を言うようになるなんて。思わずルゥナも笑みが溢れた

「ぷっ!……くく、あはははは!」
「わ、笑わないで……!」
「ゴメンね。けど、あんたからそんな願いが出るなんて以外だったわ」

「……ほら、結局飲まなかったわね。これ」
「あ……」
「……飲んじゃいなさいよ。ここなら邪魔なんて入らないんだから」

ずっとあげたかった缶ジュース。ようやく少々森に手渡せた
くいっと飲むと、ポケットにしまう。さも大切な宝物だと示すかのように


「けど、いいわね。あたしもあんたと同じ事を願おうかしら」
「あんたと一緒なら、どこに行っても楽しそうだし。……それに、あたしは」
「少々森。あんたの事が、大事だから」

「……ありがとう。ルゥナ」
「私を、人間にしてくれて。私に、生きる希望をくれて──」

184 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/03(月) 20:18:12.44 ID:jSwtz1Go0


手を繋ぎ、笑い合う二人


二人の願いはランサーに届く。明日への希望で力が満ちる


その姿はより強く輝き、二人の明日を、未来を祝福する


願いを選ぶ瞬間を。夢へと進む瞬間を。必死に生きる全ての人間よ


世界を終わらせたりなんてしない。させない。この名前に賭けて、貴方達の歩みを肯定する──!



「そうだ……例え世界が滅ぼうと、二人の願いの方がずっと強い」

「その事を、今!お前に叩き込んでやる──!」


185 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/03(月) 20:18:51.66 ID:jSwtz1Go0
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186 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/03(月) 20:21:25.77 ID:jSwtz1Go0
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187 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/03(月) 20:21:54.43 ID:jSwtz1Go0
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188 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/03(月) 20:22:23.62 ID:jSwtz1Go0


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                        | r‐「-=ニニ}:┐ |                    ′/
            <\      | { |ニ||ニl } |        />            // /
              \\_  /| ∨|ニ||ニ|V| |',   _//          // /〉           「ルゥナも少々森の夢も……オレが終わらせない!」
               \ \' ∧ { lニ[]ニ| }| ' ∧ //               / / /
                     \ 〈ニ∧|∧ニニ/ |/∧//            //  /⌒〉
                 |「\\||、 |:i:i:i| /||//}┐   __       __/∧  〈__/
                 └{ {\」}i\〉〈/i{〈/} }」r‐‐‐<⌒\    (_//王〉 // 〉
                      寸>、_〉:i:i:i}L|:i:i:i:/:i:i/彡ヘ\//∧  ',   //王/ (/ 〉         「聞け、世界を救う者よ!人々の苦難を助ける聖人の名を──!」
                     rくニ}「\__/ニニ、__/」{⌒V/ハ ∨/∧  ', 「「王/  (__/ 〉
                「\〈∧ | |ニニニ| | /\__∧/{ ∨/∧   //王V /--L/〉
             ___/   ̄ニ=‐」ニニニL/}   }∧\〉 ∨/∧ |//王王]V  ̄  /〉
          r<ニ=- _ ̄=-    \「 ̄L八_ //∧ \__〉// //王王/〉〉_//
      _ /⌒ ──=ニ=- __\   | 「 \_/ ̄〉/\_ ---〈____ // /ニニニ/             「オレは────“今(エクスペダイト)だ!”」
.       ///ニニ=-  _____ \ニ\}、 ̄ L「\___L/∧\´   /〉 \ / /〉--彡'
189 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/03(月) 20:24:24.25 ID:jSwtz1Go0


金色の槍が、地上から塔を穿ち抜く

ド真ん中を撃ち抜かれた塔は、ガラガラと音を立てて呆気なく崩れさっていく


……ルゥナが目を覚ますと、そこには少々森と他のマスター達

そして、暖かい太陽が彼女を優しく照らしていた


190 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/03(月) 20:25:19.36 ID:jSwtz1Go0

【最終決戦は終了しました。後はエピローグだけです】

【皆様、長らくお付き合いいただきありがとうございます。もう少しだけお待ちください】
 
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/03(月) 20:32:12.47 ID:h2paynPDo
192 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/03(月) 22:58:40.48 ID:jSwtz1Go0

【それでは、エピローグをゆっくりと更新していきます】

【これが本編最後の更新です。どうか、お付き合いいただければ……】

193 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/03(月) 23:07:09.70 ID:jSwtz1Go0



……少し、その後の話をしよう

聖杯戦争は終結した。ランサーは消滅し、残されたのは今を生きる人間だけ

結局、聖杯を手にしたのはルゥナ・ガイスロギヴァテス。彼女達なら、きっと正しく扱えるだろう──



「……で、そんな話を何で俺にするんだよ」

「いや?世話になった礼にな。話だけでも聞かせておこうってな」
「あんたにはこっちの方がいいだろう。少なくとも、ありがたい説法よりはな」

マンションの一室。件の襲撃から幾分か月日が流れ、ようやく片付いた中で二人が向かい合う
そこで寛ぐ部屋の主である青年と、ランサーと戦った骨の英霊……仏舎利

お前は消滅しなかったのか。という青年に対して、仏舎利はカラカラと音を立てて

「ほら、あれだ。デリケートな問題ってのが世の中にあるだろ」
「仏教のご本尊が異教の聖人に負けました。となると本当にヤバいからな。痛み分けって事にしてくれ」
「実際問題として、オレはもう戦えない。別の世界でも救うとするかな」

「そっか。……じゃあな」
「あばよブラザー。……彼女さんと仲良くな」

最後の言葉は簡潔に。ガチャリと扉を開くと、まるで最初から存在しなかったかの様にその姿はかき消えていて
どこか懐かしさを覚えながら、窓を開ける。朝の爽やかな空気と、自分を呼ぶ声がが部屋に入り込んできた


「広夢(ヒロム)。今日の夜、従姉妹がここに泊まるみたい」
「オーケーメリッサ。それじゃ俺は、林道さんの家に泊まるとするよ」

194 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/03(月) 23:23:32.84 ID:jSwtz1Go0



「……ちょっとユーニス。こっちに来なさい」
「どうしたのかねティファ。僕は今解読で忙しいんだが」

書物が山と積まれてるエリクシア家の一室で、二人が顔を付き合わせる
ティファが持ち出したのは世界地図。しかし幾つかの地域にはペンで印がつけられていて

「私達の調べによると、どうやら聖杯戦争は各地で発生し得るらしいの」
「つまり、そこに行けば私達のどっちかはマスターに選ばれるかもしれないじゃない?」
「まあそうかもしれないが。僕はしばらく休みたい気分でね」

「あら、英霊と話したくはないのかしら?」
「吉田君との討論を纏めたくてね。もう暫くはかかりそうだ」
「君こそ、僕らエリクシア家と提携するなんてどういう風の吹きまわしだい」

ユーニスは気だるげに、熱意に燃えるティファに問う
ティファは地図から目を離し、不敵な笑みを浮かべながら断言した


「当然、ロシュフォール家の願いの為によ。今度こそは優勝するわ……!」
「そのガッツは認めざるを得ないね。あ、その時は僕も付いていこう」

195 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/03(月) 23:34:53.81 ID:jSwtz1Go0



「……で!だからコリーさんの動画はだな」
「またその話かよ!いい加減もっと他の動画も見ろよ!」
「うるせー!いいから黙って見とけやこの野郎がー!」

生徒で賑わう高校の、更に賑やかなグループが激しく討論し合っている
その中心にいる生徒……縦島は、花村に動画視聴をしつこく迫っていた

「鬱陶しいっての!……なあ少々森?」
「ん」
「チクショー!なんだってんだよクソーっ!」

こくん。と頷く少女。……少々森若子は、ジュースを飲みながらしげしげと見つめている
かつては天使として祭り上げられた少々森は、今や賑やかな日常を謳歌するだけの無垢な少女に過ぎなかった
二人のやり取りに柔らかな笑みを見せる。この日常は、彼女がくれたものだと確信して

ふと廊下を見ると、外から顔を出す女生徒が。彼女は一つお辞儀をすると、少々森の方へ話しかけた

「……すみません。先輩、少し宜しいですか?」
「あ、う、うん」

「ん?君は見た事無いけど、転校生?」
「はい。先月から留学を、広い世界で学んでこいと、父親が」

「なんだよ少々森、こんな綺麗な後輩がいたのかよ!?あ、俺は縦島っす」
「俺は花村。花村施経だ。君は?」


「はい。私は中等部二年生、フェリシア・グロスキュリアと申します!」



丁寧に礼をする、中等部の制服を着たフェリシア。少々森を呼び出すと、外へ出ていった


196 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/03(月) 23:44:14.59 ID:jSwtz1Go0



「……それで、身体の方は大丈夫ですか?」
「大、丈夫……けど、どうして、そんな口調で」
「聖杯戦争の時はともかく、今は貴女が先輩ですから」

かつて共に戦った間柄の、フェリシアの態度に少し不思議な気分になりつつも少々森は頷く
彼女の身体は完全に人間となった。かつて、虫の群れであった事は完全なる過去のものに

その顔を見たフェリシアは、少しだけ懐かしげな色を見せて


「また、困った事があればいつでも声をかけて下さいね。私も、力を貸しますから」
「あ……ありがとう。フェリシアも、頑張って」
「はい。……ところで、今日ですよね。あの人が帰ってくるのは」
「!」

フェリシアの言葉に、ぴくんと反応する少々森
目はキラキラと輝いて、ソワソワとした態度は興奮を抑えきれていない

「いってらっしゃい。きっと、彼女も待ってくれてるはずよ」
「私も、自分の願いが待ってるって……信じてるから」
「……!うんっ!」

フェリシアの言葉を背に受けて、少々森は駆け出していく
早く会いたい。早く話したい。その気持ちが、ずっと心に燃えてあったから……


197 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/03(月) 23:45:56.02 ID:jSwtz1Go0



「うぇええええぇぇえええっ!?!?嫌です嫌です止めてくださいいいいいいい!!!」
「うるっさいわね!ここまで来たならいい加減に諦めなさいよ!」

駅の真ん中で泣き叫ぶ少女と、それを冷ややかに見つめる複数の人物
彼等はかつて聖杯戦争の補佐として参加し……任務違反とみなされ、謹慎させられていた者達
本来ならば即銃殺刑もかくやという状況だったが今回の功績を踏まえて命だけは助けられた

「しっかし、またこの街に来るとはねえ。ロクな思い出がねえぜ」
「同感だ。しかしストレングスの回収、及び協力の取り付けの功績で何とか首の皮が繋がった訳だしな」
「そうですねえ。今頃は彼も本家でゆっくりとラーニングしているでしょう」

アダムス、コリー、ディールはため息をついて街を見ていた
ほんの少しだけいなかったような。数年は見なかったような。そんな郷愁を胸に秘めて

「ベル!あんたもシャキっとしなさい。市長が特別に豪華なホテルをあんた達に提供してくれるってんだから!」
「ああ、ガイスロギヴァテスと手を組んでニコニコしてやがったあのオッサンか?」

「そうよ。だからあんた達はさっさと──」




「ルゥナーーーっ!!」

198 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/03(月) 23:48:57.16 ID:jSwtz1Go0



「……少々森っ!」


振り返ると、笑顔の少女が駆け寄ってきた

かつては暗い顔しか見せなかった彼女が、今はこんなにも眩しい顔をしているのだ

その事実だけで、自分の選んだ未来は間違ってない。そう確信出来る

思わず、こちらからも走り出す。両手で未来を抱き締めた

「あ、行かないでくださいよぉお!ベルも!」
「ハイハイ。お邪魔虫はさっさと退散だな」


「ルゥナ、ルゥナ!会いたかった、会いたかった……!」

「あたしもだってば。……あんた、なんかまた大きくなってない?」

他愛ない会話、それがどれだけの幸せか。今の二人しか共有し得ないささやかな祝福

時計の針が鐘を鳴らす。これからの時は、君達のものだと知らせるように


「……それじゃ、行きましょう!これから色んな所に連れていってあげるんだから!」
「うんっ!ルゥナ、大好き……っ!」

手を引いて、街に駆け出す。二人の少女は瞬く暇もなく雑踏の中に消えていった

──彼女達の未来に幸あらん事を。それは聖人の託した願い

今、ここに祝福がある。これが天使の願った生なのだ

また、時が刻まれる。彼女達は過去を乗り越え未来を飛び越える

瞬間を必死に生きた少女達。時計は静かに、今を生きる二人を優しく見守っていたのだった



【終わり】
199 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/03(月) 23:53:43.10 ID:jSwtz1Go0

【これにて、『ふたたび坂松市で聖杯戦争が行われるようです』は完結致しました】

【様々な反省点、問題点が表面化し、私としても苦戦した聖杯戦争でしたが、こうして完結まで進められたのも皆様の暖かい応援のおかげです】

【こうしてキャラを動かせたのも、データをくださった皆様の協力無しではなし得ませんでした】

【この拙いスレを読んでくれた方、いつも応援してくださった方、様々な助言をくださった方に、心からの感謝を送ります】


【次回はおーぷん鯖鱒板という場所でやる予定です。場所は変わりますが、また、よろしくお願い致します】


200 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/03(月) 23:56:36.09 ID:h2paynPDo
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/04(火) 00:09:17.17 ID:CqW7mNizo

駆け足な終盤だったけどまあ終わりよければってことで
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/04(火) 00:40:12.46 ID:MfuBTUepo
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/04(火) 10:23:34.29 ID:YJRkIIRCo
204 : ◆6QF2c0WenUEY [saga]:2021/05/04(火) 22:44:14.57 ID:XmRjBYF90

【おーぷん板の方で、スレ立てをしてきました】
【場所は変わりますが、どうかご愛顧の方をよろしくお願いいたします……】

ttps://open.open2ch.net/test/read.cgi/1617870213/1620135138/l10

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