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【鯖鱒wiki】ふたたび坂松市で聖杯戦争が行われるようです【AA不使用】2スレ目
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155 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/02(日) 20:16:31.29 ID:baTryqjv0
「あーもう!泣かないの、フェリシア!アンタは綺麗な顔してるんだから」
「だって、だってぇ……っ!」
「……私も、クソ剣にタダでくれてやった訳じゃないわ。対価もキッチリ請求してる」
「だから、願ってあげたわよ?“フェリシアの願いを叶えてあげて”って」
「けど、素直に叶えるかはわからない……それはフェリシア次第ね」
◆『魂魄啜る破滅の宝剣(ティルヴィング)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜3 最大捕捉:10人
生命を吸収する宝剣。剣に触れた対象から魔力や神秘、生命力を吸収する。
物質の生命を吸い尽くして容易に断ち切る事を可能とし、吸収した命で刀身を常時修復・修繕する。
また、剣その物が命を好んでおり、命に向けて刀身を自動誘導する特性を有している。
願望器としての機能を有し、吸収・貯蓄した魔力を用いて持ち主の様々な願いを叶える。
不相応な願いには相応の代償が伴い、魔力が足りなければ持ち主の魔力を過剰に吸収して叶えようとする。
また、持ち主の悪しき願いに反応して“破滅の呪詛”で汚染し、願いを破滅の方向に歪めてしまう。
「だから、前向いて生きなさい!いい人見つけて、子供いっぱい産んで!幸せになんなさい!」
「あ、私はあんまり参考にしないでね?夫はバカだし息子はアホだし」
「……ありがとう。ヘルヴォール。私のセイバー……!」
「どういたしまして!ぶいっ!」
光に包まれるセイバーを、フェリシアは強く抱きしめる
そんなフェリシアを見つめる顔は、どこか優しげな母の様で
消滅するその寸前まで。フェリシアの身体を抱きしめ返していたのだった
156 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/02(日) 20:50:24.91 ID:baTryqjv0
「セイバーが、消えた」
「そうだね、彼女は皆を守ってくれたから」
「……あり、がとう。セイバー」
セイバー達から少し離れた所では、ランサーと少々森が一息ついていた
その姿はボロボロで。少々森は肩で息をする
ふと、ランサーが目を向けた先。そこには取り残されていた市長と、ズタズタの人間……アサシンが横たわっていた
「ああ……アサシン君!」
「無理だよ、もう彼は消滅する。……自分を盾にして、マスターを守ったんだ」
「君は、例え身を挺してでも守ろうという意志があったんだね……」
「………………何、を。知った、事を」
「私が、何をしたか……知らない、訳じゃないだろうに」
倒れ伏しているにも関わらず、アサシンの視線は目の前のランサーを射抜いていく
ランサーは無言で鎧を外す。素顔を晒したランサーは、アサシンの目を真っ直ぐに見据えて
「君は、国を救いたかったんじゃないかな」
「……………………」
『なあ、お前は国を救いたいんだろ?』
『じゃあ、それもいつかは理解されるさ。何せ天は全てを知っているからな!』
……忌々しい、腹立たしい。何を知った口を聞いているのか
例え天が知っていようと、民が知らねば意味がない。お前の無実は晴らせなかったじゃないか
……昔の記憶。黒く潰したい忘れ難き記憶
そうとも、救ってやったとも。お前とは違うのだと言い聞かせていたのに
結局、奴の言う通りに冤罪は晴らされた。私は売国奴として後ろ指を指され続けた
それでも、私は
「……教えてくれ、岳飛」
「私は、間違ってなど……なかっただろう……」
粒子となるアサシン。その目はランサーを見てはいない
それは、どこか遠くの。遥か彼方の男を見ている様で───
157 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/02(日) 20:50:50.65 ID:baTryqjv0
【一旦中断します】
158 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2021/05/02(日) 21:13:21.66 ID:s7NdxKHGo
一旦乙
159 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/02(日) 23:25:27.82 ID:baTryqjv0
【では少しだけ再開します】
160 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/02(日) 23:33:55.65 ID:baTryqjv0
「ルゥナ、大丈夫?」
「なんとかね……少々森は」
「うん。大、丈夫」
戦闘を終えて一息つくルゥナ達は、ぐったりと体を横にする。誰もが疲労に満ちていた
へたり込むルゥナと少々森にフェリシアが近寄る。その横に座ると、咳払いをして
「……おめでとう、ルゥナ」
「貴女のサーヴァント……ランサーが、この聖杯戦争の勝者よ」
「あ……そっか、そうよね」
「……おめでとう。ルゥナ」
「色々と巡り合わせもあるけど……この聖杯戦争は、オレ達の優勝だ!」
バーサーカー、ライダー、アーチャー、キャスター、セイバー、アサシン
この聖杯戦争で召喚された英霊は、自分の召喚したランサーのみを残して消失した
つまり……聖杯は、ルゥナとランサーに使用する権利が与えられた事になる
「ふ、ふふ……えへへ……」
「ねえ少々森。あんた、何か欲しいものとか無いの?」
「せっかく聖杯に叶えて貰うんだから、少しは奮発してくれるわよ」
優勝の実感に、思わず笑みが零れ落ちる。自分の手で何かを為したのは初めてじゃないか
横にいる少々森は、目を閉じて、少し思案して
「私の、願いは、人間になる事」
「でも……あと一つ、叶う、なら……」
「よう。オレを忘れちまったのか?相棒」
161 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/02(日) 23:47:33.04 ID:baTryqjv0
ひょい。と現れたのは、いつかに見た骨の英霊
くつくつと笑ってるのか、それとも厳かに見定めているのか。視線も読めないので判別不能
ただ一つだけ理解出来るのは、この骨も聖杯を狙っているという事だけだった
「貴方は……?」
「フェリシアは下がってなさい。……あんたも、聖杯に召喚されたサーヴァントってワケ!」
「その答えは80点だな。ちなみに満点は1000点満点」
「オレは悩める子羊に……ってのは、異郷の言葉だったか?なあ、ランサー」
「その口ぶりは……オレの真名も知ってるみたいだね」
「まあな。これでも一応働いてたんだぜ?週休二日の賞与付き。ホワイトだろ?骨だけにな」
骨の英霊は飄々と。真意を掴ませない態度で煙に撒く
とにかく、聖杯を手にするにはこいつを倒さねばならない。ルゥナは最後の力を振り絞り立とうとした
「おいおい、ここでおっ始めるのは勘弁してくれよ。こんな暗い所でクライマックスか?」
「それなりに相応しい舞台に行こうぜ。役者もたくさんいる事だしな」
骨の英霊が手を横に振る。すると、ルゥナ達の景色が急に途切れる
再度、世界がルゥナと繋がる。そこは月明かりに照らされた、まっさらな芝の広がる舞台
ルゥナもフェリシアも、見覚えのない場所に困惑の色を隠せない。一人、市長だけが声を震わせた
「ここは……『坂松スタジアム』ではないですか!」
162 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/03(月) 00:00:18.99 ID:jSwtz1Go0
「スタジアム?……そう言えばあったわね」
「この街の復興を賭けた一大プロジェクトで、あと少しで建設が完了するのですが……」
「……ルゥナ!あそこにいるのって」
ランサーの指す先を見やると、そこには幾つかの人影が
おまけに、そこにいた全員はルゥナもよく知る人物だった
「どういう事?いきなり世界が歪んだと思ったら、こんな広い所に」
「むう、僕もこんな事態は初めてだとも。賢者の蔵書に載っていたかな」
「状況の把握を開始する。ここは坂松市の中心に位置するスタジアムと判明。時刻は……」
「ストレングス!?ユーニスにティファも!」
「ルゥナ?これは貴女の仕業なのかしら?」
「違うわ。……あそこにいる英霊。あれが私達をここに呼んだの」
困惑する全員をフェリシアがまとめる。視線の先には骨の英霊が
……その背に浮かぶのは、膨大な魔力の塊。誰もがソレを、『聖杯』だと確信する
「あー、まずは先に言っておく。『この世界はいずれ滅ぶ』」
「だからすまないんだが……願いは諦めて、大人しく死んでくれないか?ランサー」
163 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/03(月) 00:22:53.23 ID:jSwtz1Go0
「……断る。と言ったら?」
「その時は実力行使だな。ここにいる全員の血でシャワーは嫌だろ?」
「っ、あたし達は人質って事!?」
真っ先に反発したのはルゥナだった。自分が人質として扱われる。そんなのはプライドが許さない
「人聞きの悪い事を言わないでくれよ。まあ人に聞かれると不味いだけなんだが」
「オレだって出来る範囲では穏便に済ませたいからな。だからとっとと自害してくれ」
「こいつだって言ってるぜ。また拐われるのはゴメンだってな」
「ルゥナ……」「少々森!?いい加減にこっちに返しなさいよ!」
「そらよ」「案外アッサリ返したわね……」
ぽいと少々森を投げる骨の英霊。宙を舞う少々森を、ストレングスがキャッチする
とにかく交渉の余地はない。目の前の英霊に向かって、ルゥナは力強く叫んだ
「何度でも言ってやるわ……その聖杯は優勝したあたしが使う」
「あんたみたいなぽっと出に使わせない。あたしには叶えたい願いがある!」
「ていうか、そもそもあんたは誰なのよ!どうせ隠す意味なんて無いわ。あんたの真名を名乗りなさい!」
「誰であろうと関係無いわ、あたしとランサーでぶっ倒してやるんだからっ!」
164 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/03(月) 00:27:24.30 ID:jSwtz1Go0
「……哀れ也、哀れ也かな」
「未だ真理を悟れぬ衆愚よ。拙僧の慈悲を以て極楽浄土に至るべし」
「煩悩、無量、誓願断。……なんつってね」
「“───『偽天聖王(チャクラ・ヴァルティン)』”」
聖杯を、骨の身体の内部に取り込む。瞬間、暴力的な魔力がスタジアムを支配した
建物を構成する『石』や『鉄』。それを強引に引き剥がし、新たに石人形を形成していく
そして骨の英霊がいた中心部。そこには無数の石、鉄、骨が集い、一つの新たな建築物を構築していた
……“天に聳える石の塔”。“この世でただ一つ、人間の欲望を受け止めた骸”
それこそが、骨の英霊……否、“救世者”の真名を如実に示していた
「オレは“救世者(セイヴァー)”。名は“覚者”」
「……ではなく、その骸。正式名は“仏舎利”だ」
「お釈迦様のデリバリー。救済の出張サービスだ。特別に無料(タダ)で見てやるぜ」
骨の英霊、真名は仏舎利。この世、全ての欲を見た骸
「オレはエクスペダイト。困難に立ち向かう人の聖人だ」
「だから、オレは最後まで戦う!ルゥナを、世界を!勝手に滅ぶなんて決めつけるな!」
対するは時の聖人、エクスペダイト。最新最速の聖人にして、問題に手をさしのべる者
満点の星と月の柔らかな明かり。光が両者を、ルゥナを、マスター達を照らしだす
この聖杯戦争の最終決戦。この世界の命運を決める、最期の戦いの幕開けだった
165 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/03(月) 00:30:09.41 ID:jSwtz1Go0
『スキル』
◆石英の塔:EX
翡翠、石英は仏舎利の代用として扱われ、これは現代でも現存、販売されている。
その「代用品」としての側面を強調するスキル。
セイヴァーは自身の肉体の代わりとしてまったく他人の骨や貴石類を用い、消費することでダメージを肩代わりさせることができる。 また、塔のようなシンボルを作成し中心にこれらを配置することで、いつでも意識を移し替え、同じスペックのセイヴァーとして遠隔で活動させることも可能。
ただし、その間は本体の操作はできなくなり、活動している遠隔操作体が消滅するほどのダメージを受ければ本体も消滅する。
『宝具』
◆『偽天聖王 (チャクラ・ヴァルティン)』
ランク:B+++ 種別:対仏宝具 レンジ:1〜99 最大補足:1000人
衆生を救う祈りと悟り、その具現。人を救うはずの期待と執念の賜物とも。
仏舎利という形代へ集まる信仰、救われたいという願いが形になった飛行要塞。
真名開放とともに大量の人骨と石で出来た超巨大構造体が現れ、以後セイヴァーの戦闘補助を行う。
一度発動してしまえば魔力炉による無限の魔力を用いての対粛清防御膜展開・長距離魔力投射や、飛翔するバスターバンカーによるオールレンジ攻撃を絶えず行う。
ただし、発動には完成直前の聖杯クラスの莫大な魔力リソースか、構造体を自身で組み上げるだけの「材料」が必要。
釈迦は誰もが救われる概念として「悟り」を得て、衆生へ広めようとした。
しかし人は、彼の人の遺骨を奪い合い、それに自身の欲望を祈願するという形でこれに応えた。
故の対仏宝具。満たされることなき人の欲の象徴としての仏舎利である。
166 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/03(月) 00:30:59.81 ID:jSwtz1Go0
【今回はここまで。次回は最終決戦から始めます】
167 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2021/05/03(月) 01:04:07.76 ID:7ucxpyYDo
乙
168 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2021/05/03(月) 01:30:59.61 ID:NMYS72CU0
乙ー
パンチパーマ本人じゃなくてその亡骸が鯖化ってマジか。アレか、ソロモンに対するゲーティアみたいな感じか
169 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2021/05/03(月) 01:44:36.07 ID:QDvlucRNO
おつ
前作がキリスト教だったから今回は仏教ということか
170 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2021/05/03(月) 09:15:25.64 ID:h2paynPDo
乙
171 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/03(月) 17:29:25.55 ID:jSwtz1Go0
【という訳で最終決戦を始めたいと思います】
【安価はありません。なので、ごゆっくり観戦してくださいね】
172 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/03(月) 17:36:11.09 ID:jSwtz1Go0
「──大規模な時空の歪みを観測した」
救世為す塔の内で、仏舎利は言葉を紡いでいく
無限の残骸の祈りは此処に。今こそ苦痛に喘ぐ無数の衆生に、その答えを示さんと
「特異な点、空想の樹。人理への攻撃が開始されている」
「無論、この世界も例外じゃない。いずれ侵略の手はこちらにも及ぶだろう」
「一度始まれば総ての人理は白紙となる。総ての生命は終わりを迎える」
「その前に……『無限に餓う転生(アミダ・アミターバ)』を用いて総ての人間を救済する」
「どうせ何もわからずに消えるなら、救われて死ぬ方がいいだろうよ」
『宝具』
◆『無限に餓う転生 (アミタ・アミターバ)』
ランク:EX 種別:対人理宝具 レンジ:9999 最大補足:77億人(現代換算) 『偽天聖王』の最大展開。
人類創生に匹敵するエネルギーを集中し、解放する。エネルギー集中には偽天聖王の展開から丸一日ほどが必要。
『偽天聖王』の中央に君臨する大仏舎利砲塔から放出された魔力は蓮の花のような形で地球を覆い、
通常の人間一人が耐えられるダメージを1ダメージとして、全人類に「現人口/五十六億七千万」ずつのダメージを与える。
釈迦は五十六億七千万年後にその座を弥勒に譲るとされている。人類の苦の旅路は、それまで終わることはない。
その時点の人類史の長さや版図の広がりによって威力が変動するが、何十億人に同時にダメージを与えるため、
理論上これに耐えられる人類コミュニティは存在しない。
その言葉の意味を知る者はいない。その言葉が届く事もない
ただ、眼下にて抗い続ける者達の答えを見定めるのみ
命あるものは必ず滅びる。衆生は苦しみの輪廻にいる
だが、道は一つではない。どう選ぶかは、結局は今を生きる者だけなのだから
173 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/03(月) 17:49:29.31 ID:jSwtz1Go0
「あああ〜!助け、助けてください!」
「誰か助けに来てくれ!僕の土精(グノーム)がボコられている!」
「あんた達は後ろに下がってなさい!足手まといなだけだから!」
石人形が、マスター達を包囲するかの様に動く
各自で破壊等の対処はしているものの、仏舎利の力の影響か。異常に強い
ルゥナ達では自営の出来ない市長とユーニスを庇う余裕はない。大人しく下がる様に指示した
「っと!材料が石だと、あたしの炎が全然通じないのが厄介ね」
「ルゥナ君!後ろに幾つかの人形が……」
ユーニスの叫びに振り向くと、複数の石人形が襲い来ている
マズい……!だが、襲ってきた石人形は、誰かの剣によって粉々に砕け散った
「今度、は……ルゥナは、私が守る……!」
「私、足手まといに、ならないから……!」
「少々森……!なら、気合いを入れなさい!」
「いったい何なの?ワラワラ出てくる雑魚敵にしては強すぎるわ」
「恐らく仏舎利の擬似的な分霊でしょう。私達でも倒しきれない……!」
「俺の魔力弾でも砕けないか。ならば直接、塔を破壊してしまえば」
「ダメだストレングス!仏舎利にダメージを与えるには、石人形を砕かないといけない!」
「石人形を身代わりにダメージを移されてる。時間を稼がれるんだ!」
174 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/03(月) 18:00:12.62 ID:jSwtz1Go0
ランサーの指摘通り、ストレングスが塔に撃ち込んだダメージはみるみる内に修復される
石人形が傷に寄せ集まり、治癒している。まるで瘡蓋の様だ。塔を人形が守っている
では、ちまちまと戦っていては埒が明かない。この場を一掃する程の攻撃が必要だろう
「つまり、こいつらを全滅させる威力の攻撃を叩き込めって事ね!?」
「一瞬でいい!一瞬でも隙が出来れば、オレの槍であの塔を穿つ!」
「あんた達!協力しなさい。この石人形を木っ端微塵にするわよ!」
響き渡るルゥナの声。戦える者はより奮起し、それぞれの得物を敵に向けた
「……わかったわ!グロスキュリアの力、見せてあげましょう!」
「無論だ。俺は元よりこの街を守る為に戦っている。……誰も消させたりはしない」
「合体技ね!……ふふふ。私、こういうシチュを待ってたのよ!」
「……ルゥナ、私、も。頑張る!」
フェリシア、ストレングス、ティファ。そしてルゥナと少々森
四人の力を重ねれば、この人形共を蹴散らすなんて容易いはずだ
だが、それは彼方も承知の事。石の壁が迫り、彼女達を押し潰さんと──
「──“私は、その事象を『拒絶』する”」
「“輝け、私の『魔眼』!ロシュフォールの威信を示しなさい──!”」
175 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/03(月) 18:10:00.44 ID:jSwtz1Go0
ティファの左眼。眼帯に隠されていた瞳が輝く
迫る石壁を『視た』瞬間。壁はまるで存在を否定されたかの様に脆く崩れさる
これこそが『魔眼の一族』であるロシュフォールの秘奥。最上級の魔眼の力
次期当主ティファニー・フォン・ロシュフォールの隠し球。『拒絶の魔眼』
◆拒絶の魔眼
彼女の左眼に持つ魔眼の一種で彼女が先天的に持つ本来の魔眼。ランクは『宝石』
その能力は事象の拒絶。 彼女がある事象を魔眼で目視することで、事象そのものを打ち消す事が出来る。
目視することで彼女に向かって放たれた銃弾は彼女に届く前に消滅し
彼女を拘束する為の魔術は、魔眼の目視によって強制的に無効化する。
場合によっては宝具の真名解放をも拒絶することが出来る。
一見万能に見える魔眼であるが、拒絶できるのはあくまで「現在進行形」の事象だけである。
過去に確定してしまった事象を拒絶することは出来ない。
(例えば放たれた銃弾を拒絶することは出来ても、撃たれて死が確定した人物の『死』そのもの事象は拒絶できない)
そして目視することが重要なので、目視出来なかった事象を拒絶することは不可能であり
また長時間の使用または拒絶する事象の規模によっては精気(オド)を多く消耗し、最低でも失明最悪死亡することもある。
現在彼女の左眼はロシュフォール家特注の眼帯で隠しており、魔眼の魔術回路そのものを切っている。
壁を構成していた石人形は、最早ただの瓦礫と化す。しかし、それでも未だ健在な人形も数多く
大きく崩れた人形達は、直ぐ様こちらに襲いかかってきた
176 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/03(月) 18:20:14.51 ID:jSwtz1Go0
「……私は、もう迷わないわ」
「お父さん。……この槍を、使わせて戴きます」
フェリシアが取り出したのは、神々しい魔力すら感じる一本の槍
ロシュフォールの秘奥『拒絶の魔眼』と同じ様に、彼女のグロスキュリアの持つ切り札
彼女はずっと躊躇っていた。この槍を軽々しく使えないと自制していた
だが、もうそんな悠長な事は言えない。彼女の決断は二人のマスターも動かして
「やるのね、フェリシア。なら、あたしだって全力でやってやるわ……!」
「リミッターを解除する。この一撃で終わらせるぞ……!」
ルゥナとストレングスが、ありったけの魔力を練り上げる
戦いあった二人が、目の前の全てを破壊する。ただ一つを目的として
「食らぇええええぇえええっ!あたしの炎で、全部焼き尽くす──!」
「臨界点突破。敵性存在捕捉完了。殲滅ヲ開始スル……!」
「お願い、“偽・偽・大神宣言(イミテーション・グングニル)”!私達の道を切り拓いて──!!!」
177 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/03(月) 18:30:31.07 ID:jSwtz1Go0
『スキル』
◆偽・偽・大神宣言(イミテーション・グングニル)
初代グロスキュリア家当主が再現を試みた戦乙女、の武装。
オリジナルには遠く及ばないが、名を詠唱い上げれば追尾機能を発揮する。
彼女の慣れない投擲でも、遠方の敵を刺し貫く事が可能。
フェリシアの放った槍は、神々しい光を纏って石人形を寸分違わず砕き尽くす
ルゥナとストレングスの砲撃は、その圧倒的な火力を以て石人形を破壊し尽くす
……これで、石人形は全て消え去った。残るは天を目指さんとする石塔のみ
「ぜぇ、はぁ……!やった、やっちゃいなさい!少々森、ランサー!」
力尽き、倒れるルゥナ。そして他のマスターも倒れていく
その横を二人の影が通りすぎる。最後に残った少々森とランサーは、仏舎利の座す塔へ走る
「……これは、皆の力で拓けた道だ」
「だから最後は、オレ達が決める!皆の明日を終わらせるなんて許さない!」
「いくよ少々森!力を合わせて塔を砕く!」
「わか、った!ルゥナは、助けてくれたから……!」
ランサーと少々森が高く飛ぶ。狙いは塔のド真ん中
この一撃で終わらせる。槍の穂先が塔に触れる……
「タイムオーバーだ」
178 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/03(月) 18:35:44.77 ID:jSwtz1Go0
「……え?」
槍が塔に弾かれる。その魔力は先程の比ではない程に強く、神秘的
周りから、いや世界から何かの音が優しく聴こえる。これはまるで鈴の音だ
下を見やると、辺りには満面の蓮の花。極楽浄土のごとき穏やかな大地
それ以外には何も感じない。……他のマスター達も、自分のマスターも
「なん、で。ルゥナは、負けて、ない……!」
「そうだ、そうだよ!ルゥナも、皆も!お前なんかに負けるハズが」
「まあ、確かに『全世界』の救世を為すには、まだ時間がかかる。だけどな?」
塔から仏舎利が顕れた。地上でただ一人、生の苦しみから放たれた骸は、聖人と天使に無慈悲に告げる
「『ここにいる人間だけを救う』くらいなら、そんなにかからないってワケなのさ」
「だから、何て言うかな……ご苦労さん」
清浄な光が二人を包み込む。静かに、優しく、抱擁するかの様に
満ち溢れる光の奔流。それが消えると、辺りには何も動かず、花が静かに揺れるだけだった
179 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/03(月) 18:36:20.39 ID:jSwtz1Go0
【一旦休憩します】
180 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/03(月) 19:32:21.90 ID:jSwtz1Go0
「………………」
「……ん、うぅん……」
「………………」
眠い、とにかく眠い。目蓋を開けるのが億劫なくらい今は寝ていたい
それに、なんだか幸せな気分だ。心が穏やかで落ち着いている
今まで頑張ったんだし、寝ていても大丈夫……
けど、何の為に。誰の為に頑張ったのか。それだけは霞の様に思い出せなかった
「……ナ。ルゥナ!ルゥナ!」
「起きるんだ!目を覚ますんだ、早く!」
「早く起きないと仏舎利の宝具が全解放する。この世界が……!」
「ん、うう……別に、いいじゃない……」
「だって、こんなに幸せなんだから……」
181 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/03(月) 19:41:23.51 ID:jSwtz1Go0
誰かから強く叱咤される。けれど、そんなのはもうどうでもいい
諦めたっていい。見て見ぬふりしてもいいじゃないか。あんなに頑張ったんだし……
……まただ。何の為に頑張ったんたっけ。それがどうしても思い出せない
けれど、本当に頑張ったんだし。少しくらいは寝ててもいいじゃないか
……でも、確か。頑張ったのは自分じゃなくて、誰かの為に
「ルゥ、ナ!ルゥナ!ルゥナ!」
「起きて、起きて!目を開けて!」
「……少々、森!?あんた、どうして!?」
一人の少女の声で飛び起きる。そうだ、自分はただ一人の女の子の為に頑張っていたんだ
少々森は不安げに、ルゥナの服を掴んでいる。その目には涙が浮かんでいる
見渡してみると、ここは辺りは桃色の柔らかな霧に包まれた空間だった
そして、目の前にいるのは少々森と、ランサーだけ。ルゥナはまず、思い付いた疑問を口にだした
「……ここは?」
「わからない。死後の世界なのかもしれない。ルゥナの精神の中の世界かもしれない」
「夢の中でサーヴァントと繋がる現象もあるから、その一種なのかもしれない……」
182 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/03(月) 19:50:43.78 ID:jSwtz1Go0
「……で、どうすればいいのかしら」
「あの仏舎利をどうにかしないといけないのは覚えてるんだけど……」
この桃色の空間は、居心地はいいが出なくてはならない
しかし、ルゥナでは見当も付かない。少々森も同様に首を横に振る
おもむろに、ランサーが口を開く。鎧を外したその顔は、穏やかに笑いかけていた
「……ねえ。二人はさ、何がしたい?」
「この聖杯戦争が終わったら、二人は何がやりたいの?」
「あたし?そうねえ……少々森と一緒に、学校に通ってみたいわね」
「ほら、結局途中から行けなかったじゃない。今度は毎日……は面倒ね。行けたら行くわ」
「あ、でも縦島や花村もいるわね。あいつらも一緒……まあいいわ。楽しいと思うし!」
ルゥナは笑う。彼方へ想いを馳せながら、輝くばかりの夢を語る
「私、は。ルゥナの家、行ってみたい」
「あたしの?少々森が見ても、面白い事なんてなにも無いわよ?」
「けど、行ってみたい。ルゥナの住んでいた家に行ってみたい」
「だっ、て。私は、ルゥナと、色んな所に行きたいから」
「それが、私の、新しい願い。私の夢……!」
183 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/03(月) 20:12:51.07 ID:jSwtz1Go0
「………………」
「だ、駄目、かな?」
じっと、ルゥナの顔を見る少々森。かつて見た時とは違う、決意を秘めた強い表情で
そんな真剣な顔で、そんな事を言うようになるなんて。思わずルゥナも笑みが溢れた
「ぷっ!……くく、あはははは!」
「わ、笑わないで……!」
「ゴメンね。けど、あんたからそんな願いが出るなんて以外だったわ」
「……ほら、結局飲まなかったわね。これ」
「あ……」
「……飲んじゃいなさいよ。ここなら邪魔なんて入らないんだから」
ずっとあげたかった缶ジュース。ようやく少々森に手渡せた
くいっと飲むと、ポケットにしまう。さも大切な宝物だと示すかのように
「けど、いいわね。あたしもあんたと同じ事を願おうかしら」
「あんたと一緒なら、どこに行っても楽しそうだし。……それに、あたしは」
「少々森。あんたの事が、大事だから」
「……ありがとう。ルゥナ」
「私を、人間にしてくれて。私に、生きる希望をくれて──」
184 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/03(月) 20:18:12.44 ID:jSwtz1Go0
手を繋ぎ、笑い合う二人
二人の願いはランサーに届く。明日への希望で力が満ちる
その姿はより強く輝き、二人の明日を、未来を祝福する
願いを選ぶ瞬間を。夢へと進む瞬間を。必死に生きる全ての人間よ
世界を終わらせたりなんてしない。させない。この名前に賭けて、貴方達の歩みを肯定する──!
「そうだ……例え世界が滅ぼうと、二人の願いの方がずっと強い」
「その事を、今!お前に叩き込んでやる──!」
185 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/03(月) 20:18:51.66 ID:jSwtz1Go0
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186 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/03(月) 20:21:25.77 ID:jSwtz1Go0
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187 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/03(月) 20:21:54.43 ID:jSwtz1Go0
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188 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/03(月) 20:22:23.62 ID:jSwtz1Go0
l | /〉
|', /| / ′
| | ′
| | __ ,| | / /
| r‐「-=ニニ}:┐ | ′/
<\ | { |ニ||ニl } | /> // /
\\_ /| ∨|ニ||ニ|V| |', _// // /〉 「ルゥナも少々森の夢も……オレが終わらせない!」
\ \' ∧ { lニ[]ニ| }| ' ∧ // / / /
\ 〈ニ∧|∧ニニ/ |/∧// // /⌒〉
|「\\||、 |:i:i:i| /||//}┐ __ __/∧ 〈__/
└{ {\」}i\〉〈/i{〈/} }」r‐‐‐<⌒\ (_//王〉 // 〉
寸>、_〉:i:i:i}L|:i:i:i:/:i:i/彡ヘ\//∧ ', //王/ (/ 〉 「聞け、世界を救う者よ!人々の苦難を助ける聖人の名を──!」
rくニ}「\__/ニニ、__/」{⌒V/ハ ∨/∧ ', 「「王/ (__/ 〉
「\〈∧ | |ニニニ| | /\__∧/{ ∨/∧ //王V /--L/〉
___/  ̄ニ=‐」ニニニL/} }∧\〉 ∨/∧ |//王王]V  ̄ /〉
r<ニ=- _ ̄=- \「 ̄L八_ //∧ \__〉// //王王/〉〉_//
_ /⌒ ──=ニ=- __\ | 「 \_/ ̄〉/\_ ---〈____ // /ニニニ/ 「オレは────“今(エクスペダイト)だ!”」
. ///ニニ=- _____ \ニ\}、 ̄ L「\___L/∧\´ /〉 \ / /〉--彡'
189 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/03(月) 20:24:24.25 ID:jSwtz1Go0
金色の槍が、地上から塔を穿ち抜く
ド真ん中を撃ち抜かれた塔は、ガラガラと音を立てて呆気なく崩れさっていく
……ルゥナが目を覚ますと、そこには少々森と他のマスター達
そして、暖かい太陽が彼女を優しく照らしていた
190 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/03(月) 20:25:19.36 ID:jSwtz1Go0
【最終決戦は終了しました。後はエピローグだけです】
【皆様、長らくお付き合いいただきありがとうございます。もう少しだけお待ちください】
191 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2021/05/03(月) 20:32:12.47 ID:h2paynPDo
乙
192 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/03(月) 22:58:40.48 ID:jSwtz1Go0
【それでは、エピローグをゆっくりと更新していきます】
【これが本編最後の更新です。どうか、お付き合いいただければ……】
193 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/03(月) 23:07:09.70 ID:jSwtz1Go0
……少し、その後の話をしよう
聖杯戦争は終結した。ランサーは消滅し、残されたのは今を生きる人間だけ
結局、聖杯を手にしたのはルゥナ・ガイスロギヴァテス。彼女達なら、きっと正しく扱えるだろう──
「……で、そんな話を何で俺にするんだよ」
「いや?世話になった礼にな。話だけでも聞かせておこうってな」
「あんたにはこっちの方がいいだろう。少なくとも、ありがたい説法よりはな」
マンションの一室。件の襲撃から幾分か月日が流れ、ようやく片付いた中で二人が向かい合う
そこで寛ぐ部屋の主である青年と、ランサーと戦った骨の英霊……仏舎利
お前は消滅しなかったのか。という青年に対して、仏舎利はカラカラと音を立てて
「ほら、あれだ。デリケートな問題ってのが世の中にあるだろ」
「仏教のご本尊が異教の聖人に負けました。となると本当にヤバいからな。痛み分けって事にしてくれ」
「実際問題として、オレはもう戦えない。別の世界でも救うとするかな」
「そっか。……じゃあな」
「あばよブラザー。……彼女さんと仲良くな」
最後の言葉は簡潔に。ガチャリと扉を開くと、まるで最初から存在しなかったかの様にその姿はかき消えていて
どこか懐かしさを覚えながら、窓を開ける。朝の爽やかな空気と、自分を呼ぶ声がが部屋に入り込んできた
「広夢(ヒロム)。今日の夜、従姉妹がここに泊まるみたい」
「オーケーメリッサ。それじゃ俺は、林道さんの家に泊まるとするよ」
194 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/03(月) 23:23:32.84 ID:jSwtz1Go0
「……ちょっとユーニス。こっちに来なさい」
「どうしたのかねティファ。僕は今解読で忙しいんだが」
書物が山と積まれてるエリクシア家の一室で、二人が顔を付き合わせる
ティファが持ち出したのは世界地図。しかし幾つかの地域にはペンで印がつけられていて
「私達の調べによると、どうやら聖杯戦争は各地で発生し得るらしいの」
「つまり、そこに行けば私達のどっちかはマスターに選ばれるかもしれないじゃない?」
「まあそうかもしれないが。僕はしばらく休みたい気分でね」
「あら、英霊と話したくはないのかしら?」
「吉田君との討論を纏めたくてね。もう暫くはかかりそうだ」
「君こそ、僕らエリクシア家と提携するなんてどういう風の吹きまわしだい」
ユーニスは気だるげに、熱意に燃えるティファに問う
ティファは地図から目を離し、不敵な笑みを浮かべながら断言した
「当然、ロシュフォール家の願いの為によ。今度こそは優勝するわ……!」
「そのガッツは認めざるを得ないね。あ、その時は僕も付いていこう」
195 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/03(月) 23:34:53.81 ID:jSwtz1Go0
「……で!だからコリーさんの動画はだな」
「またその話かよ!いい加減もっと他の動画も見ろよ!」
「うるせー!いいから黙って見とけやこの野郎がー!」
生徒で賑わう高校の、更に賑やかなグループが激しく討論し合っている
その中心にいる生徒……縦島は、花村に動画視聴をしつこく迫っていた
「鬱陶しいっての!……なあ少々森?」
「ん」
「チクショー!なんだってんだよクソーっ!」
こくん。と頷く少女。……少々森若子は、ジュースを飲みながらしげしげと見つめている
かつては天使として祭り上げられた少々森は、今や賑やかな日常を謳歌するだけの無垢な少女に過ぎなかった
二人のやり取りに柔らかな笑みを見せる。この日常は、彼女がくれたものだと確信して
ふと廊下を見ると、外から顔を出す女生徒が。彼女は一つお辞儀をすると、少々森の方へ話しかけた
「……すみません。先輩、少し宜しいですか?」
「あ、う、うん」
「ん?君は見た事無いけど、転校生?」
「はい。先月から留学を、広い世界で学んでこいと、父親が」
「なんだよ少々森、こんな綺麗な後輩がいたのかよ!?あ、俺は縦島っす」
「俺は花村。花村施経だ。君は?」
「はい。私は中等部二年生、フェリシア・グロスキュリアと申します!」
丁寧に礼をする、中等部の制服を着たフェリシア。少々森を呼び出すと、外へ出ていった
196 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/03(月) 23:44:14.59 ID:jSwtz1Go0
「……それで、身体の方は大丈夫ですか?」
「大、丈夫……けど、どうして、そんな口調で」
「聖杯戦争の時はともかく、今は貴女が先輩ですから」
かつて共に戦った間柄の、フェリシアの態度に少し不思議な気分になりつつも少々森は頷く
彼女の身体は完全に人間となった。かつて、虫の群れであった事は完全なる過去のものに
その顔を見たフェリシアは、少しだけ懐かしげな色を見せて
「また、困った事があればいつでも声をかけて下さいね。私も、力を貸しますから」
「あ……ありがとう。フェリシアも、頑張って」
「はい。……ところで、今日ですよね。あの人が帰ってくるのは」
「!」
フェリシアの言葉に、ぴくんと反応する少々森
目はキラキラと輝いて、ソワソワとした態度は興奮を抑えきれていない
「いってらっしゃい。きっと、彼女も待ってくれてるはずよ」
「私も、自分の願いが待ってるって……信じてるから」
「……!うんっ!」
フェリシアの言葉を背に受けて、少々森は駆け出していく
早く会いたい。早く話したい。その気持ちが、ずっと心に燃えてあったから……
197 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/03(月) 23:45:56.02 ID:jSwtz1Go0
「うぇええええぇぇえええっ!?!?嫌です嫌です止めてくださいいいいいいい!!!」
「うるっさいわね!ここまで来たならいい加減に諦めなさいよ!」
駅の真ん中で泣き叫ぶ少女と、それを冷ややかに見つめる複数の人物
彼等はかつて聖杯戦争の補佐として参加し……任務違反とみなされ、謹慎させられていた者達
本来ならば即銃殺刑もかくやという状況だったが今回の功績を踏まえて命だけは助けられた
「しっかし、またこの街に来るとはねえ。ロクな思い出がねえぜ」
「同感だ。しかしストレングスの回収、及び協力の取り付けの功績で何とか首の皮が繋がった訳だしな」
「そうですねえ。今頃は彼も本家でゆっくりとラーニングしているでしょう」
アダムス、コリー、ディールはため息をついて街を見ていた
ほんの少しだけいなかったような。数年は見なかったような。そんな郷愁を胸に秘めて
「ベル!あんたもシャキっとしなさい。市長が特別に豪華なホテルをあんた達に提供してくれるってんだから!」
「ああ、ガイスロギヴァテスと手を組んでニコニコしてやがったあのオッサンか?」
「そうよ。だからあんた達はさっさと──」
「ルゥナーーーっ!!」
198 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/03(月) 23:48:57.16 ID:jSwtz1Go0
「……少々森っ!」
振り返ると、笑顔の少女が駆け寄ってきた
かつては暗い顔しか見せなかった彼女が、今はこんなにも眩しい顔をしているのだ
その事実だけで、自分の選んだ未来は間違ってない。そう確信出来る
思わず、こちらからも走り出す。両手で未来を抱き締めた
「あ、行かないでくださいよぉお!ベルも!」
「ハイハイ。お邪魔虫はさっさと退散だな」
「ルゥナ、ルゥナ!会いたかった、会いたかった……!」
「あたしもだってば。……あんた、なんかまた大きくなってない?」
他愛ない会話、それがどれだけの幸せか。今の二人しか共有し得ないささやかな祝福
時計の針が鐘を鳴らす。これからの時は、君達のものだと知らせるように
「……それじゃ、行きましょう!これから色んな所に連れていってあげるんだから!」
「うんっ!ルゥナ、大好き……っ!」
手を引いて、街に駆け出す。二人の少女は瞬く暇もなく雑踏の中に消えていった
──彼女達の未来に幸あらん事を。それは聖人の託した願い
今、ここに祝福がある。これが天使の願った生なのだ
また、時が刻まれる。彼女達は過去を乗り越え未来を飛び越える
瞬間を必死に生きた少女達。時計は静かに、今を生きる二人を優しく見守っていたのだった
【終わり】
199 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/03(月) 23:53:43.10 ID:jSwtz1Go0
【これにて、『ふたたび坂松市で聖杯戦争が行われるようです』は完結致しました】
【様々な反省点、問題点が表面化し、私としても苦戦した聖杯戦争でしたが、こうして完結まで進められたのも皆様の暖かい応援のおかげです】
【こうしてキャラを動かせたのも、データをくださった皆様の協力無しではなし得ませんでした】
【この拙いスレを読んでくれた方、いつも応援してくださった方、様々な助言をくださった方に、心からの感謝を送ります】
【次回はおーぷん鯖鱒板という場所でやる予定です。場所は変わりますが、また、よろしくお願い致します】
200 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2021/05/03(月) 23:56:36.09 ID:h2paynPDo
乙
201 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2021/05/04(火) 00:09:17.17 ID:CqW7mNizo
乙
駆け足な終盤だったけどまあ終わりよければってことで
202 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2021/05/04(火) 00:40:12.46 ID:MfuBTUepo
乙
203 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2021/05/04(火) 10:23:34.29 ID:YJRkIIRCo
乙
204 :
◆6QF2c0WenUEY
[saga]:2021/05/04(火) 22:44:14.57 ID:XmRjBYF90
【おーぷん板の方で、スレ立てをしてきました】
【場所は変わりますが、どうかご愛顧の方をよろしくお願いいたします……】
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