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【安価でのわゆ】久遠陽乃は勇者である【4頁目】
- 836 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/15(日) 21:59:40.74 ID:ydCK/8Wvo
-
陽乃「私は大したこと言ってないわ。むしろ、嫌われるようなことを言った覚えしかない」
歌野「嫌われるようなこと?」
陽乃「……今、笑ったわね」
歌野「っ」
口にはしなかったが、心の中で。
何を言ってるの? と、
つまらない冗談を言われた時のような、
そんな、ささやかな笑いを感じたと、陽乃は目を細める。
歌野「だって、みんなにバレてたじゃない」
陽乃「バレるも何もないわ」
歌野「でも」
陽乃「ないって言ってるでしょ」
陽乃はそう言っても、
間違いなく、そこにはあって。
歌野と違って、その本心を感じ取れない人々にも、
やんわりと察せられてしまっていた。
- 837 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/15(日) 22:24:52.46 ID:ydCK/8Wvo
-
歌野「久遠さんがどう言っていても、残していってしまうことに変わりはないから」
陽乃「だから?」
歌野「もし、責任を感じるとしても、久遠さん一人だと思わないで」
残していくのは歌野もだ。
それも、諏訪の勇者でありながら、
諏訪の生存者を残していくのだ。
責任を重く受け止めるべきなのは、むしろ、自分の方だと歌野は考えている。
陽乃「そうは言ったって、貴女こそ強制的じゃない」
普通なら、歌野は諏訪の勇者として責任を感じることもあるだろうが、
今はもう、歌野の力は陽乃を経由する形になっている。
陽乃が居なければ勇者としてのお役目を果たすことが出来ないといった状態であるのなら、
否が応でも、置いていくしかない。
歌野「なにより、久遠さんが来てくれたからこそ……こんな責任が生まれてるのよ」
- 838 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/15(日) 22:46:36.43 ID:ydCK/8Wvo
-
陽乃のせいとでも言うかのような言い方だが、
歌野はそれを、責任を押し付けるために使っているわけではない。
語弊が生じるかもしれないが、
そもそも歌野が言いたいのは " 陽乃のせい " ではなく " 陽乃のおかげ " だ
陽乃達が来てくれたからこそ、
そんなことを悩む余裕が生まれた。
歌野「言ったっけ? それとも、心の中で言った?」
本心を聞かれることをからかうように歌野は笑う。
歌野「久遠さんが来てくれなかったら、私達はみんな死んでた。全滅してたのよ。だれ一人残らず」
勇者である自分が言ってはいけないことだと思いながら、
けれど事実だからと、歌野は考えて。
その全てが、陽乃へと流れ込む。
歌野「もちろん、私は最後まで抗うつもりではあったけど、いずれ力尽きると思ってた」
- 839 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/15(日) 23:28:29.65 ID:ydCK/8Wvo
-
なのに、乃木若葉から勇者が行くと知らされて、
数日かかると思えば、半日でたどり着いて
弱っていた力を強化してくれたし、
ここ数日の平穏な日々は、陽乃の力によるものが大きい
歌野「それなのに、大多数の人を連れて、四国に連れ出せるまでになったなんて、もう奇跡みたいな話だわ」
諏訪を捨てるというのは、やはり、辛いことではあるが、
今は預けると言うだけだ
いずれまた、ここに戻ってくる
歌野「……何度だって言うわ。感謝してる」
多くの人がここに残るとしても、
それ以上もの人々を救うことが出来る。
歌野「恩返し、させて貰うわ」
1、期待はしないわ
2、好きにしなさい
3、しなくていいわ
4、結果を示してくれればそれで十分よ
↓2
- 840 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/15(日) 23:31:00.69 ID:zD0oldQTO
- 2
- 841 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/15(日) 23:31:36.34 ID:juzlsT6hO
- 2
- 842 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/15(日) 23:34:05.52 ID:ydCK/8Wvo
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 843 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/15(日) 23:52:19.87 ID:zD0oldQTO
- 乙
説得はしきれなかったけど連れて行ける人もいるだけ全滅よりはマシだしね
あと陽乃さんの刺々しさが大分減ってきたな
- 844 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/16(月) 01:17:55.77 ID:LE//7LDAO
- 乙
どのみち本心漏れちゃうしな
- 845 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/16(月) 23:16:42.89 ID:VIX+Zv5fo
-
すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から
- 846 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/16(月) 23:19:40.42 ID:EgBeNgEBO
- 乙です
- 847 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/17(火) 22:55:34.42 ID:rXwgL4oOo
- 遅くなりましたが、少しだけ
- 848 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/17(火) 23:01:20.16 ID:rXwgL4oOo
-
陽乃「好きにしなさい」
歌野「ええ、好きにさせて貰うわ」
今までも陽乃は、そう言った素っ気なさを感じさせる返しをしていたけれど、
それでも、歌野は普段より嬉しそうだ。
歌野「あの事を知らなくてももちろんだけど……知っちゃった以上は、なおさらね」
陽乃は歌野の過去を夢に見たし、歌野は陽乃の過去を夢に見た
それが、歌野を後押ししているらしい
歌野「久遠さんは、1人にしたくない」
陽乃「私は1人になりたいんだけど」
歌野「それは分かってるけど、ね」
1人になる時間をすべて奪う気はないと歌野は言うけれど、
可能な限り、自分ではなく水都でもいいから、
誰かと一緒にいて欲しいと歌野は考えている
- 849 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/17(火) 23:46:34.55 ID:rXwgL4oOo
-
歌野「1人になる時間も大事だとは思うけど、でも、1人だからこそ考えちゃうことだってあると思うし……」
さっき陽乃を呼び止めたのだって、それが理由だった。
けれど、その行動が良いこともあれば悪いこともある。
それをわかっているからだろうか。
歌野は、少し悩まし気に陽乃から目を背ける。
歌野「久遠さんはどちらかといえば邪魔に感じる方でしょ?」
陽乃「どちらかといえばというか」
歌野「……ほらやっぱり」
本心を察知して小さく呟く歌野を陽乃は一瞥する。
陽乃「前々から言ってたことだと思うけど」
歌野「そう、なんだけど」
今回は、普段と違って説得の件という重い話もあったため、
いつものようにというわけにはいかなかったのだ。
なんて、
そんな歌野の葛藤の一部など、陽乃は考える間でもなく、知っている。
- 850 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/18(水) 00:16:34.66 ID:1ttJIS5So
-
陽乃「まぁいいわよ。今更だわ」
ここまで散々、近寄ってきていて、
説得が良くて50%程度の出来だったからって遠慮されても困る。
なにより、その心の内側での葛藤は聞こえるし、
きっと、足を止めたことの後悔だって、聞こえてくるだろう。
陽乃「話したいことだってあったんだから、それでいいじゃない」
歌野「久遠さんって、やっぱり優しいわ」
陽乃「気のせいよ」
別に、励ましたつもりはない。
けれど、歌野はそう感じたようで。
歌野「ほんと、だから……」
少し、悲し気な表情を見せる。
なんであんなことにならなければならなかったのか
どうしてあんな扱いをされなければいけなかったのか
陽乃の過去を憂いているような心のうちに、
陽乃は、顔を顰めて、首を振る
陽乃「同情は嫌いよ」
1、知った気にならないで
2、どういう家柄だっただけのことだわ
3、私は貴女達の方が優しいと思うけど
4、優しいだなんて、私には合わない言葉よ
↓1
- 851 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/18(水) 00:16:56.24 ID:LxRjgV2IO
- 3
- 852 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/18(水) 00:28:46.47 ID:1ttJIS5So
-
では短いですがここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 853 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/18(水) 05:50:58.34 ID:rtYMTk6CO
- 乙
陽乃さんは嫌がりそうだけどできるなら過去の記憶を仲間たちともっと共有したいな
- 854 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/18(水) 08:04:07.27 ID:2w9xT/kUO
- 乙
色々知ったせいかここ最近歌野が猛追してる気がする
- 855 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/18(水) 23:41:23.03 ID:1ttJIS5So
-
すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から
- 856 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/18(水) 23:46:13.19 ID:pxreFAZNO
- 連絡乙ですー
- 857 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/19(木) 22:50:25.09 ID:2a2vVqNmo
- 遅くなりましたが少しだけ
- 858 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/19(木) 22:51:22.40 ID:rVDeLSEw0
- エッチなシーンはないですか?
- 859 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/19(木) 22:51:34.60 ID:2a2vVqNmo
-
陽乃「私は貴女達の方が優しいと思うけど」
歌野「そうかしら? そんなに優しい?」
歌野は人の嫌がることは極力避けようとしてはいるが、
陽乃に対しては嫌がらせのように距離感が近かった。
実際、陽乃は嫌がっているようなそぶりを何度も見せていたし、
あまり、いい気分ではなかったように思えたのだ。
歌野「本当に?」
陽乃「私よりはね」
陽乃はそう言って、少し、困ったように顔を顰める
陽乃「相手が悪いのよ。優しさは私以外の人に向けてあげるべきよ」
歌野「もちろん、他の人だっておろそかにしたりしないわ」
だけど。と、歌野は言う
歌野「久遠さんはもっと大事だから」
- 860 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/19(木) 23:43:55.85 ID:2a2vVqNmo
-
陽乃「大事にしたって、報われることはないわよ」
歌野「そんなことないわ」
勇者としては戦力になるし、
陽乃がいるおかげで歌野も戦うことが出来るし
今までよりも強い力を借り受けることが出来る。
そんな利用価値があるから……なんて、
陽乃は考えたが、
歌野はそれを察してか、首を振る
歌野「久遠さんは、大事な友人よ」
陽乃「友人ね……」
歌野「嫌?」
陽乃「嫌というか、なんていうか」
トラウマだと陽乃はいう気はないが、
友人というものには嫌な思いをしたため、
いまいち、好ましく思うことが出来ないのだ。
- 861 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/20(金) 00:01:25.47 ID:59qYkgwNo
-
陽乃の過去を見てしまった影響だろう。
歌野は自分の言葉にはっとして、少し、表情を影らせる。
歌野「そうね」
赤の他人にも、知人にも、友人にも
陽乃は切り捨てられた。
そのせいで家族を失っているので
家族だというのも少し憚られる……という歌野の心もまた陽乃には筒抜けだ
純度の高いその悩みに、
陽乃は口を閉ざして、目を背ける
陽乃「まぁいいわよ。別に、好きに思ってくれても」
思うのは勝手だ
けれど、それに対して応えるかは別の話
1、報われるとは思わないでおいて
2、ただ、外では言わないで
3、最後まで言えるのかどうか見ものだわ
4、友人? ただの協力者でしょ
↓2
- 862 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/20(金) 00:03:07.87 ID:CplkcZTWO
- 1
- 863 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/20(金) 00:04:22.69 ID:D21NtPE2O
- 1
- 864 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/20(金) 00:10:03.82 ID:59qYkgwNo
-
では短いですがここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 865 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/20(金) 00:19:04.70 ID:g6GhCqROO
- 乙
思えば陽乃さんはお母さんを救えたのがピークでそれ以降ことごとく運の悪さで報われる気配が全然しないのがな…
せめて今度の脱出は上手くいくといいけど
- 866 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/20(金) 00:29:48.82 ID:vBMUUeaAO
- 乙
でも陽乃ほんとに柔らかくなったよな
ツンデレみを感じる
- 867 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/21(土) 23:39:04.05 ID:TWq5Z9T7o
-
すみませんが本日もお休みとさせていただきます
再開は明日、可能であればお昼ごろから
- 868 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/21(土) 23:45:05.09 ID:8+QTOduxO
- 乙です
お昼再開待ってます
- 869 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/22(日) 21:03:17.17 ID:hSWosgPRo
- 遅くなりましたが少しだけ
- 870 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/22(日) 21:06:41.87 ID:hSWosgPRo
-
陽乃「けど、報われるとは思わないでおいて」
歌野「久遠さんは、あの人たちとは違うわ」
陽乃「だから何?」
報いてくれるとでもいうのか。
そんなわけがないと陽乃は否定する強い口調で返したが、
歌野は笑みを浮かべている。
威圧感を感じさせるようなものだったけれど、
怯んでいるような様子は見えない
歌野「久遠さんは、違うわ」
陽乃「だとしても、分かるでしょ?」
歌野はぐっと歯噛みするそぶりを見せて、
けれど、首を振る。
分かるが、分からないと
歌野「辛い思いをしたのは、知ってる、けれど、それとこれとは話が違うはずよ」
- 871 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/22(日) 22:06:10.42 ID:hSWosgPRo
-
歌野「久遠さんが私やみーちゃん、伊予島さん達を信じられない気持ちは、分かるわ」
信じた人々に裏切られたし、
救った人々の一部にも、それに賛同するような動きも見られていて、
他人なんて誰も信じたくないと思うのは仕方がないことだと歌野も思っている。
歌野「けれど、それは久遠さんの話で私達が信じない理由にはならないし」
なにより
歌野「報われているかどうかなんて、本人次第だって思わないかしら」
歌野は、薄く笑みを浮かべて、
困ったことに。とでも言いたげな様子を見せる。
陽乃と同じ、約3年前の話のできごとのことだろう。
歌野にとっては、意味のあることだったが、
他の人々にとってはそうではなかったようで
なぜ、そんなに頑張るのか
命の危険を冒してまで救って、意味があるのか。
歌野はそれを尋ねられたことがあるのだ
歌野「……ね?」
- 872 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/22(日) 23:01:18.88 ID:hSWosgPRo
-
歌野「久遠さんから何か施しが貰えなくても、向こうで何か嫌な思いをすることになるとしても、私にとって久遠さんが友人であることには変わりがないわ」
陽乃「後悔しても知らないわよ」
歌野「……してもいいわ。別に」
歌野は、少し驚いた表情を見せたが、
すぐに笑みを見せると、そう答えた。
歌野「だって、久遠さんを切り捨てること以上に後悔することなんて、きっとないもの」
陽乃「……」
陽乃は、顔を顰める
歌野は冗談ではなく本気で言っているのは分かっている
その自信満々な答えが気に入らなくて。
けれど、歌野は陽乃の内面を感じてか、少し、悲し気に眉を潜めて。
歌野「久遠さん、どちらかといえば私達が嫌な名遭うことを気にしているでしょ」
- 873 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/22(日) 23:18:49.37 ID:hSWosgPRo
-
陽乃「さぁ?」
陽乃はとぼけて言うが、
その内側が伝わってしまっている影響だろう。
歌野は分かってると言いたげな表情を浮かべていて、
陽乃が不満そうに顔を顰めれば、
歌野は首を振って。
歌野「大丈夫よ。久遠さんはこれから凄いことをするんだから」
陽乃「そうなると良いわね」
陽乃は否定せずに、適当にあしらう。
諏訪から生存者を連れ帰るという偉業
だけれど、それをできる保証はなく、
そして、それ以前に――
歌野「2人は大丈夫」
陽乃「っ」
歌野「あの伊予島さんと土居さんのことだもの。きっと、また会える。ゆっくりしすぎちゃったって、私達が出発した後に連絡があるかもしれないわ」
可能性は低い。
歌野もそれは分かっているようだが、
しかし、陽乃とは違って、希望はあると信じている。
歌野「信じましょ。希望じゃなくて、あの2人を」
- 874 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/22(日) 23:30:02.42 ID:hSWosgPRo
-
√ 2018年 9月7日目 夜:諏訪
23〜32 歌野
56〜65 水都
89〜98 九尾
↓1のコンマ
※それ以外は通常
※ぞろ目特殊
- 875 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/22(日) 23:31:40.86 ID:mjH/hQmnO
- あ
- 876 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/22(日) 23:54:00.77 ID:hSWosgPRo
-
√ 2018年 9月7日目 夜:諏訪
水都「今日は、早く寝た方が良いと思います」
明日の朝には、諏訪を発つ予定だ
ここにいる間はゆっくりと休息をとることが出来ていたけれど、
ひとたび、諏訪から足を踏み出せば、その時間は極端に減ることになる。
一般の人々だって不安な日々になるだろうし、
歌野と陽乃は、2人で大勢の人々をバーテックスから守らなければならないため、
到着まで、毎日……24時間警戒していなければならない。
日中の警戒も必要なため、
どちらかが寝ずの番などするわけにはいかないので、
数時間交代制で休むことになる。
それが毎日になるのだから、
特に、2人はよく休んでおくべきだ。
水都「うたのん、久遠さんのこと連れ出したりしないでね?」
歌野「えっ」
- 877 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/23(月) 00:10:34.65 ID:X0spGRpEo
-
そんなことを疑われる覚えがないといった様子の歌野だけれど、
歌野が急に距離を詰めたことを訝しんでだろう。
こっそりとなにか話し合いをする……とか、
とにかく、
まだ眠れないからと何かするのではないかと水都は思ったようだ
歌野「どうしたのみーちゃん。久遠さんって」
陽乃さんと呼んでいたのに、久遠さんと呼んだことに歌野が疑問を浮かべたが、
陽乃はさして興味がないといった様子で、
それについて何かを言うことはない。
水都「……別に」
プイッと顔を背けた水都の視線は、
歌野から、陽乃の方へとむく。
若干の疎外感を感じているといったその態度は、
襲来が起こる前の世界で見聞きしたことのあるものだ。
1、貴女の要望に応えるような人間ではないわよ。私
2、そんな顔したって、私は何もしないわよ
3、別に何もないわよ
4、本来の距離感でしょ。問題はないわ
5、別に、白鳥さんを取ったりしないわよ
↓2
- 878 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/23(月) 00:13:27.99 ID:529EQJFsO
- 2
- 879 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/23(月) 00:16:01.56 ID:iGIzs0nbO
- 2
- 880 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/23(月) 00:18:29.78 ID:X0spGRpEo
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 881 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/23(月) 00:21:51.42 ID:GsQgUG75O
- 乙
嫉妬するみーちゃんかわいい
そういえば最近うたのんの方がずっと絡んでたもんな
- 882 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/23(月) 01:12:58.22 ID:xGu6f8KEO
- 乙
嫉妬みーちゃんかわいい
- 883 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/24(火) 22:54:01.49 ID:el2fRBLlo
- 遅くなりましたが少しだけ
- 884 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/24(火) 22:55:18.99 ID:el2fRBLlo
-
陽乃「そんな顔したって、私は何もしないわよ」
水都「別に、普通ですっ」
陽乃「そう?」
普段の水都と比べると、
少し、しかめっ面なようにも感じるのだが、
本人が普通と言うなら普通なのだろうと陽乃は大して気にも留めていないように言うけれど、
歌野はいやいや、と、割って入る
歌野「みーちゃん、ちょっと怒ってない?」
水都「怒ってないよ」
陽乃「普通って言ってるんだからそれでいいじゃない」
歌野「久遠さんはもうちょっと興味持ってっ」
明らかに普通じゃない
歌野に言われなくても、なんとなく察してはいるが、
それだけだ。
無意味に突っ込む気はない
- 885 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/24(火) 23:50:12.90 ID:el2fRBLlo
-
陽乃「そんなこと言われても困るのだけど」
歌野「久遠さんもちょっと関係あるのに」
陽乃「それは理不尽じゃないかしら」
陽乃としては1人になりたい時間等もあったが、
それを返上させたのは歌野の行動だ
陽乃からそう言ったものを求めた覚えはない
……と、考えた陽乃は、
歌野の視線を感じて、ため息をつく。
1回は陽乃にも責任はある。
陽乃「けど、言った通り私は何もしないわよ」
水都が妬いたような表情を見せていようが
歌野が困った表情を見せていようが
陽乃「特別、こうするって気はないもの」
- 886 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/25(水) 00:25:32.27 ID:cIB7bgbco
-
水都が心配しているようなことは起こらないし、
歌野が期待しているようなこともない。
2人に悪いというべきなのか、水都にはいいというべきなのか。
陽乃「私は今までと変わらないわよ」
水都「周りには、興味を持たない。ですか?」
陽乃「まぁ、そうね」
歌野「それは困るわ」
水都「……」
相変わらず困り顔な歌野と、
やっぱり、どこか怒っているような雰囲気を感じさせる水都。
水都の目は陽乃に向けられていて。
水都「別に、陽乃さんがうたのんに興味を持つのは良いです」
もちろん。ほかの人にも
なんて、意味のないことを付け加えた水都は、伏し目がちに、息を吐いて。
水都「……2人で、秘密ありそうだなって思っただけ」
1、無いわ
2、勇者同士の繋がりなだけよ。特別なことはないわ
3、あったら、なに?
4、否応なしに繋がりが深いのよ。仕方がないでしょ
↓1
- 887 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/25(水) 00:27:03.96 ID:5BmXqfc40
- 4
- 888 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/25(水) 00:29:15.60 ID:cIB7bgbco
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 889 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/25(水) 00:35:25.03 ID:0YcLaefvO
- 乙
仲間外れ感もあるしみーちゃんにも繋がったりできないかな
悲惨な過去を見て耐えられるかは分からないけど
- 890 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/25(水) 00:53:05.65 ID:dAI0BMyrO
- 乙
みーちゃんマジでかわいくてニヤニヤしてしまう
道中仲良くしよう
- 891 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/26(木) 23:32:53.97 ID:wXkd6Y+3O
- ここのところ平日の休載率高いな
- 892 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/27(金) 00:05:11.76 ID:ehoHD38Bo
- すみませんが本日もお休みとさせていただきます
明日は通常時間からできるかと思います
- 893 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/27(金) 06:03:01.51 ID:1Xm9B6+IO
- 乙
- 894 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/27(金) 23:02:46.80 ID:ehoHD38Bo
- 遅くなりましたが少しだけ
- 895 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/27(金) 23:07:28.54 ID:ehoHD38Bo
-
陽乃「否応なしに繋がりが深いのよ。仕方がないでしょ」
水都「そうなの?」
歌野「うん……すっごく」
歌野は、自分の胸に手を宛がって、頷く
照れくささを感じさせるような歌野の雰囲気に、
水都は眉を潜める。
水都「深いって、どんな風に? 体は大丈夫なの?」
歌野「ええ。体に異常はないわ」
体に痛みが有ったり、
陽乃のように毒が回ったような感覚を感じることはない。
水都のように、失神することだってない。
けれど。
歌野「互いに、心を感じるの」
水都「……心?」
歌野「私は、こう、なんていうか、やんわりと感じるんだけど、久遠さんには私の心の声……って言ったら良いのかしら? それが伝わっちゃうみたいなの」
- 896 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/27(金) 23:46:58.50 ID:ehoHD38Bo
-
水都「それって、やっぱり勇者だから?」
陽乃「まぁ、そうでしょうね」
水都「……巫女では、難しいですか?」
巫女も勇者も、
神様から力を借り受けていることには変わりがない。
しかし、その許容量がまるで変わってくる。
諏訪の巫女としてより集中的に力を感じていた水都は、
恐らく、四国の巫女と比べて飛躍的にその力は高まっていることだろう。
だけれど、
歌野と同様に繋がりを持つには、巫女では力不足だ。
陽乃「出来るわよ。死ぬと思うけど」
ほんの一瞬
つながりを感じて、その夢心地のまま、命を落とすことになる。
- 897 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/28(土) 00:24:35.94 ID:5LufCoBVo
-
水都「死……っ……」
あまりにもあっさりと飛び出してきた言葉
それほどまでに危険なものなのかと思ったのか、水都は勢いよく歌野に目を向けたが、
陽乃は首を横に振る。
忌々しいことにとは思わないけれど、
さすがにというべきか、歌野はほとんど体に影響が出ていないのだ。
そこに、嘘はない。
陽乃「別に信じろだなんて言わないけど、白鳥さんは平気よ」
水都「信じ、ますけど……」
水都はしょんぼりと、肩を落とす。
歌野の身を案じて焦ったわけではないようで。
歌野「み、みーちゃんにはみーちゃんの利点があるからっ」
水都「……今も、心を感じられるの?」
水都は歌野に訊ねたようだが、
歌野は、陽乃に伺いを立てるように目を向ける
1、普段は何もないわよ
2、常に繋がってるから
3、歌野に任せる
4、寝てるときには過去を盗み見ることもできるわ
↓1
- 898 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/28(土) 01:08:16.25 ID:XqeX9otJO
- 2
- 899 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/28(土) 01:11:30.57 ID:5LufCoBVo
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから
- 900 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/28(土) 01:56:33.92 ID:XqeX9otJO
- 乙
みーちゃん粘るな
最近話がどう動くかワクワクしてるので明日も楽しみにしてます
- 901 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/28(土) 03:11:18.02 ID:Qa/Cmi2vO
- 乙
何だかみーちゃん誤解してそう
- 902 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/28(土) 17:33:32.51 ID:5LufCoBVo
- 遅くなりましたが少しずつ
- 903 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/28(土) 17:39:19.86 ID:5LufCoBVo
-
陽乃「それはそうよ。常に繋がってるから」
水都「私とも、ですか?」
陽乃「当たり前でしょ」
力加減に差はあるが、
諏訪の神々がそうしていたように、
歌野と水都とは常に繋がっている状態にある。
その力加減は本来、陽乃の自由ではあるものの、
先日の実験によって広がりすぎた道は陽乃が思っているよりも多く力を吸い出していく。
水都はその部分が小さいため、
歌野のように、内面が伝わるような状況にまでは至らない
そして、血管に似たその流れを無理矢理に広げてしまえば、死に至る。
それは水都はもちろんのこと、
歌野だってこれ以上は耐えられるとは思えない。
陽乃「白鳥さんも藤森さんも今が限界よ。死にたくなければ、無駄なことはするべきではないわ」
- 904 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/28(土) 18:20:39.21 ID:5LufCoBVo
-
陽乃「そもそも、暴かれるのは不本意だわ。懇願されたって同じようにしたくない」
水都「巫女は勇者と神様のサポートが主な役割なので……」
陽乃「私を人殺しにしたいなら、どうぞ」
陽乃はそう言って、水都へと手を差し出す。
手を繋いだりと言った行為は一切不要だけれど、
それを視覚化するといった意味で、その手は重要だ
陽乃「この手を取る覚悟があるなら殺してあげる」
水都「……」
死に至らしめると分かっていてやることを、人殺しと陽乃は言う。
それだけの覚悟があるのか試している可能性も否定はできないけれど、
行えば死ぬことになるだろう。
しかし、水都がだとしてもというのなら陽乃はやるかもしれない。
そんな焦りが陽乃のもとへと流れ込んで――
歌野「だ、ダメ!」
水都ではなく、歌野がその手を取る。
- 905 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/28(土) 19:12:15.17 ID:5LufCoBVo
-
歌野「みーちゃん、無理は駄目!」
水都「うたのん……」
歌野「久遠さんのことを知りたい気持ちは分かるけど、無理しすぎだわ」
歌野と違って、水都には耐えうるだけの力がない
それが分かっているのなら
これは無茶ではなく無理でしかないし、無駄になる。
歌野「久遠さんも、みーちゃんを煽らないで」
陽乃「別に煽ってないわよ」
歌野「煽ってるってば、もうっ……みーちゃんが久遠さんのこと気にしてるって分かってるくせに」
困り顔の歌野は、陽乃の手をぎゅっと握る。
歌野「さすがに、力は送ってないのね」
陽乃「貴女に送ったって仕方がないじゃない」
それでなくとも、
明日から大変な日々が続くというのに、
力の浪費なんてしていられない。
陽乃「まぁ、藤森さん相手でもしないわよ。無駄だから」
- 906 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/28(土) 19:37:14.53 ID:5LufCoBVo
-
歌野「またそういう言い方する」
歌野は顔を顰める。
無理を続ければ少しは水都の力も強くなるかもしれないし、
適度であれば、無駄になることはない。
無駄になるのは時間と労力だ。
そういうのは、明日に迫っていることが終わってからでいい。
歌野「みーちゃんだって言ったでしょ? 明日は早いから、早く寝ようって」
水都「う、うん」
歌野「そういうことだから、別に、みーちゃんに力を使うのが無駄って話じゃないわっ」
まるで自分の発言だったかのように言う歌野だが、
陽乃の心情を知れていれば、難しくない。
水都「うん……」
あんまり納得いかないといった様子だったが、
水都は頷いて、小さく謝罪を口にする。
水都「……寝よっか」
- 907 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/28(土) 19:46:53.75 ID:5LufCoBVo
-
1日のまとめ(諏訪組)
・ 白鳥歌野 : 交流有(昨日の話、毒、正直に、明日、説得結果(中)、遺体、任せる、常に)
・ 藤森水都 : 交流有(正直に、明日、説得結果(中)、遺体、任せる、常に)
・ 九尾 : 交流無()
√ 2018/09/07 まとめ
白鳥歌野との絆 77→81(良好) ※特殊交流4
藤森水都との絆 86→88(良好) ※特殊交流8
九尾との絆 75→75(良好)
- 908 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/28(土) 19:47:43.55 ID:5LufCoBVo
-
√ 2018年 9月8日目 朝:諏訪
23〜32 歌野
56〜65 水都
89〜98 九尾
↓1のコンマ
※それ以外は通常
※ぞろ目で特殊
- 909 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/28(土) 19:48:20.66 ID:bCXZDcy5O
- あ
- 910 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/28(土) 20:25:14.06 ID:5LufCoBVo
-
√ 2018年 9月8日目 朝:諏訪
陽乃「はぁ……」
歌野と水都は出立前の最終確認のために、今は外出中だ。
1人、まだ諏訪大社に残っていた陽乃は天逆鉾の前でため息をつく。
急激に早まった、諏訪出立の日
残念ながら全員を連れ出すことはかなわなかったが、
住民の約6割程度は、陽乃達についてきてくれる。
全員ではなく、一部なのだ。
連れ帰れませんでしたは、許されないだろう。
誰かが許すと言っても
陽乃自身が、それを許すことは出来ない。
陽乃「……!」
神社の境内
その中に人の気配が入り込んできたのを感じて目を向けると、
陽乃と同年代くらいの男の子が辺りを警戒するように歩いていた
- 911 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/28(土) 20:49:05.74 ID:5LufCoBVo
-
記憶が確かなら、四国に避難する住民の一人だったはずだ。
大方、これからの旅路の無事を祈るためにここに来たのだろう。
陽乃「祈ったところで、叶えてあげる気はないけれど」
もちろん、可能な限り無事に連れ帰る気ではあるけれど、
その保証まではしてあげられない
それは神様だってそうだし、勇者だってそう。
絶対ということが出来るような状況ではないのだから。
陽乃「……」
男の子はお守りを買うつもりだったのか、
授与所のところへと向かったが、今、ここにはその対応をしてくれる人はいない。
ここで暫く暮らしていた陽乃なら対応しようと思えばしてあげることもできるが、
してあげる義理は、別にない。
1、対応してあげる
2、対応しない
3、どこかに行く(再安価)
↓2
- 912 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/28(土) 20:55:23.87 ID:QMIiKMAd0
- 1
- 913 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/28(土) 20:56:46.40 ID:CIbdmwgSO
- 1
- 914 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/28(土) 21:48:44.85 ID:5LufCoBVo
-
残留する人々に委ねるために持ち出していた鍵を使って、授与所へと入った陽乃は、
窓口を開いて、立ち止まっている少年に声をかける。
陽乃「今日は、営業してないわよ」
「えっ、あっ!」
急に声をかけたせいか、
驚いて後退りした男の子は、それが巫女や住民ではなく、
勇者の一人だと知ったからだろう、はっとして。
「勇者様!」
陽乃「……お守りが欲しいんでしょ? 特別に売ってあげる」
巫女装束も身に纏っていない、一見ただの女の子と言った風体の陽乃だが、
地元では巫女で
ここでは一応、神々の代行者となっているので、問題はないだろう。
むしろ、陽乃のおかげでお守りにより強い効果があるかもしれない。
- 915 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/28(土) 22:34:05.78 ID:5LufCoBVo
-
「まさか、勇者様がいるなんて」
陽乃「勇者がここで生活していることくらい、周知の事実だったでしょうに。何をいまさら」
「あ、いえ……もうすぐ出発なので」
どこかに行っていると思ったという少年は
思いがけない出会いに困惑し、照れくさそうに顔を伏せる。
陽乃「それで、どのお守りが欲しいの? 悪いけど、値引きは出来ないわよ。してもよさそうだけど」
今後、この神社の管理者は神社とはまるで関係のない人々になる。
そして、それもいつまで持つかもわからないといった世界だ
お守りを無償提供したって、罰には当たらないはず。
とはいえ、それを許すのは神々ではない
「あ、えっと……勇者様はお守り買ったりしないの……ですか?」
陽乃「お守りは授かってるもの。改めて買う必要はないわ」
神々から与えられた力。
お守りが、神の御加護とするのならば、
新調する必要もないだろう。
「そう、ですか」
- 916 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/28(土) 23:13:50.56 ID:5LufCoBVo
-
陽乃「それで、買うの? 買わないの?」
「じゃぁ……心身健全守を1つ」
陽乃に急かされるようにして、少年はお守りを1つだけ購入する
名前の通り、
心と体を守ってくれるとされているお守りで、
金色と銀色の2種類がある。
陽乃「色は?」
「……おすすめで」
陽乃「おすすめって」
そう言われても困ると、
陽乃は適当に手に取って、差し出す。
金色の、心身健全守
金と銀、どちらが良いのかは分からないが、
いいとされているのは、金だろうか。
陽乃「なら、これね」
- 917 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/28(土) 23:48:29.00 ID:5LufCoBVo
-
久遠家の所有していた神社でのものとは色々と違っているが、
代金を受け取って、代わりにお守りを渡す。
「ありがとうございます」
陽乃「良かったわね。勇者様に渡して貰えて」
陽乃は冗談めかして笑うと、小さく息をつく。
お守りなんて気休めでしかない。
その家系の者であり、
神々の力を授かるものとして口にしてはいけないとわかっているが、
やはり、それは当てにできないものだ
陽乃「用が済んだならさっさと戻りなさい。置いて行かれても知らないわよ」
「……」
少年は、陽乃から受け取ったお守りをその手にしたまま、
少し、間をおいて、陽乃に目を向ける。
「勇者様、これを貰って貰えませんか?」
今さっき買ったばかりのお守り。
少年はそれを、陽乃へと差し出した。
1、どうして?
2、結構よ。
3、要らないわ
4、受け取ってあげる
5、渡されたって、優先順位は変わらないわよ
↓2
- 918 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/28(土) 23:51:44.20 ID:hE7YrkWDO
- 1
- 919 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/28(土) 23:52:05.79 ID:XqeX9otJO
- 4
- 920 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/28(土) 23:53:03.44 ID:QMIiKMAd0
- 2
- 921 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/28(土) 23:56:58.24 ID:5LufCoBVo
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であればお昼ごろから
- 922 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/28(土) 23:59:58.20 ID:hE7YrkWDO
- 乙
いよいよ出発の前に意味深なお守りイベントとは…
何か後々あるのだろうか
- 923 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/29(日) 02:23:03.15 ID:qT5ZVfOCO
- 乙
このお守りがどんなキーアイテムになるんだろう……
- 924 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/29(日) 14:39:53.61 ID:n1rniW2Yo
- では少しずつ
- 925 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/29(日) 14:41:48.25 ID:n1rniW2Yo
-
陽乃「……なるほど」
陽乃は、少年から差し出されたお守りを手に取る。
渡したばっかりなので、
なんだか、返品されたような気分になってしまうけれど。
陽乃「貴方にとってのお守りは、私だって言いたいわけ?」
「え、あ、いや……別に、そういうわけじゃ……」
陽乃「お守りの方がまだ、ご利益があると思うわ」
陽乃が自分のために戦っていて、
他の誰かのために死ぬような思いをする気はないと言ったことを
この少年だって、聞いているはずだ。
陽乃「今なら、返してあげても良いけど」
「いやっ、それは持っていて欲しい!」
陽乃「っ」
「あ、ごめん……」
急に声を張り上げてしまったことを申し訳なく思った少年は
居心地が悪そうに、陽乃から顔を背ける
「持っていて、欲しいんだ」
- 926 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/29(日) 15:00:31.28 ID:n1rniW2Yo
-
「気休めかもしれないけど、無いよりはあった方が良いと思うし」
陽乃「だったら、これは貴方が――」
「自分の分は、もう持ってるから」
今年も無事に1年が過ごせるようにと
年明けにお守りを買っているのだそう。
だから、自分の分はもう持っていると。
陽乃「なら、なに? はじめから、勇者に渡すつもりだったの?」
「……だって、勇者がやられたら終わりだろ」
陽乃「そうね」
「だから……まぁ、無事でいて欲しいっていうか……」
少年は、歯噛みしているような表情を見せる。
俯きがちで全体は見えないが、
何か気に喰わないことがあると言いたげな雰囲気
「こういうことくらいしかできないだろ? 普通の人間なんて」
- 927 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/29(日) 15:15:08.74 ID:n1rniW2Yo
-
陽乃「そうね」
なるほどと、陽乃は思う。
本当なら戦いたいが、
戦うだけ無駄なのは過去の惨劇が物語っている。
だから、唯一戦うことのできる勇者に託すし
少しでも無事でいてくれるようにと、祈ろうとする。
ただ、この少年はそれを快く思ってはいない。
それに苛立ちを覚えてさえいるようだ。
陽乃「だったらこれは、白鳥さんにも渡してあげるべきじゃないの?」
「いや、だって、前からいるから」
陽乃「……あぁ」
歌野は諏訪にいたから、持っている
けれど、陽乃は四国から来たから持っていないかもしれない。
だから、陽乃の分だけ買おうと思った。
というところだろうか。
陽乃「そうね。確かに、そうよね」
歌野がお守りを持っているという話を聞いた覚えはないけれど、
そんなこと、いちいち話して聞かせることでもない。
- 928 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/29(日) 16:05:00.95 ID:n1rniW2Yo
-
陽乃「分かったわ。ありがたく……貰っておく」
ご利益があるかどうかは別として、
あっても害があるものではないし、くれるというのなら貰っておくのも悪くない。
「あぁ、その……よろしく」
陽乃「逃げるのは貴方達よ。絶対に守るわけでも、守れるわけでもないことを忘れないで」
「分かってる」
少年は、力強く頷く
バーテックスがどんなものなのか分かっている世代
だからこそ
その恐ろしさと、それから逃げる難しさと、立ち向かう勇気がどれほどのものなのか
良く知っているはずだ。
「でも、守ってくれるのは君達だろ? だから、無事でいて欲しい」
陽乃「当たり前でしょ。私は死ぬ気はないわ」
陽乃はそう言って、少年を見つめる。
彼は陽乃の目が向けられるや否や、顔を背けてしまった。
陽乃「なによ。目くらい見たらどうなの」
「そ……そろそろ、戻らないといけないから!」
彼はそう言って、走っていく。
- 929 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/29(日) 16:26:30.04 ID:n1rniW2Yo
-
陽乃「……なによあれ」
九尾「くふふっ、良いではないか」
陽乃「貴女、いたのね」
もちろんだとも。と、からかうように九尾は笑う。
今は狐ではなく、陽乃よりも一回り程大人びた雰囲気の女性の姿。
金色の髪に、赤い瞳
明らかに怪しいけれど、はた目にはそう見えないらしい。
九尾「良いものを貰ったのう。肌身離さず持っているがよい」
陽乃「ご利益があると?」
九尾「さて。どうかのう」
九尾は笑う。
何か裏がありそうな笑みだ。
陽乃「……」
少年がくれたお守り。
同じものがたくさんあって、その中の1つを無造作に選んだだけのもの。
特別なことがあるとは思えない。
1、なんなの?
2、せっかくだから持っておく
3、鞄にしまっておくわ
↓2
- 930 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/29(日) 16:28:08.61 ID:gVxTEbrB0
- 1
- 931 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/29(日) 16:29:11.28 ID:MXsq3NXxO
- 1
- 932 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/29(日) 17:07:53.39 ID:n1rniW2Yo
-
陽乃「何なの?」
九尾「あの小僧は、主様に無事でいて欲しいそうじゃ」
陽乃「ええ。そう言ってたわね」
彼が自分でそれを口にしていたのだから、
改めて九尾に言われる必要はなかった。
なのに、九尾はつまらなそうな顔をして、
足元の少し大きな小石を草履のような履物で踏みつぶす。
九尾「あの小僧が主様に何を求めてるのか、分からぬのかや?」
陽乃「守ってもらいたい。でしょ?」
九尾「お主……」
陽乃「なによ。それ以外に何かあるの?」
九尾「ふむ……」
悩まし気な九尾の声
何かあるのかと陽乃は訝しむが、
九尾はため息をついたかと思えば、首を横に振る。
九尾「主様、それは本気で言うておるのかや?」
- 933 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/29(日) 17:23:49.34 ID:n1rniW2Yo
-
陽乃「なに? どういうこと?」
神様にするように
お守りを捧げものとして、願いをかなえて貰おうとでもいうのか。
例えば、優先的に守って欲しいだとか。
陽乃「なるほど」
だとしたらと、陽乃は頷く。
陽乃「死なないようにできる限りのことをしようとする姿勢が、私みたいだって、言いたいのね?」
九尾「馬鹿め」
陽乃「なんでよ……」
むっとした陽乃の呟きを九尾は聞き流す。
話しても無駄とでも言うかのような九尾の表情
九尾「まぁよい。主様が要であることに変わりはない。その主様を案じることに不思議はなかろうて」
陽乃「でしょ?」
陽乃は答えて 「いや」 と呟く
陽乃「そうは、思わないわ。私はここに馴染みがないもの。案じるべきは白鳥さんであって、私ではないと思うけど」
九尾「存外に、主様は愛されているのやもしれぬぞ」
陽乃「……それは、あまり聞きたくない言葉だわ」
九尾は目を細めると、そうか。と口にするだけだった。
何か思うところはありそうだが、それを語る気は、なさそうだ。
陽乃は貰ったお守りを一瞥する。
鞄にでも、しまっておけばいいだろう。
- 934 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/29(日) 17:48:30.89 ID:n1rniW2Yo
-
√ 2018年 9月8日目 朝:諏訪
陽乃が神社でお守りを受け取ってから1時間もせずに、
結界の境界付近で、みんなが集まっていた。
これからバスに乗り込んで、四国へと避難する人々
そして、
これからも諏訪に残って……終わりを待つ人々。
陽乃「これ、諏訪大社の鍵です」
「あぁ、どうもねぇ」
陽乃は鍵を残留する人の代表に手渡す。
「そんな顔、しないの」
陽乃「っ……別に、普通です」
「歌野ちゃんも水都ちゃんも優しい子だから、頼ってもいいんだよ」
陽乃は、自分の顔が見えない
それはもちろん、誰にだって素のままでは見ることが出来ないのだけれど、
それを見ることのできている目の前の人物は、罪悪感を感じる表情で陽乃を見ている。
陽乃「そう、ですか」
「あぁ、そうだよ」
- 935 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/08/29(日) 18:14:39.35 ID:n1rniW2Yo
-
歌野「これから、諏訪を出ます……基本的にはバスで移動します」
移動が難しい経路は勇者の力で先読みして、極力避ける。
どうしても通らなければならず、
勇者の力でどうにかできるような状況であれば、
どうにかして、通る。
それでも無理ならどうするのか……とすれば、徒歩としか言いようがない。
もっとも、勇者が二人いるなら、大抵の無理は押し通せるだろう。
歌野「1号車には久遠さん、2号車には私が同乗します」
水都「巫女の私は、警戒を担当していない方の勇者と同情しますので、何かあればいるときに声をかけて貰えればと思います」
水都はそういうと、
歌野をちらりと見て、何かを言ったようだが、
歌野は聞こえなかったようで、反応を見せなかった。
歌野「かなり厳しい道のりになるとは思いますが……可能な限り、無事に連れ帰りたいと思います」
弱きかな? と、歌野は困ったように笑うが、
住民から非難の声は飛んでこない。
難しさを、分かっているからだろう。
歌野「久遠さんも、ひとことくらい」
1、指示に従って。それ以外は求めないわ
2、良いわ。いうことはない
3、嫌になったなら、嫌と言って頂戴。諦めた人は捨てていくから
4、守る約束はできないけどやることはやるから、1号車の人は不安だろうけど、何もないように祈ってなさい
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