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【安価でのわゆ】久遠陽乃は勇者である【5頁目】

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853 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/19(金) 00:31:04.06 ID:1iQFWmSnO

最悪勇者死んでるかもしれないのか
ドキドキしてきた
854 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/20(土) 19:30:37.52 ID:mHdUgmjGo
では少しだけ
855 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/20(土) 19:34:21.08 ID:mHdUgmjGo
√ 2018年 9月12日目 夜:移動A


陽乃「ぅ……っ、げほっ……けほっ……ごほっ……」

意識が覚醒したのと同時に、全身から伝わってくる激痛と、

ぐつぐつに煮込まれたかのような内側から湧き上がってくる何かに陽乃はせき込む。

本来なら体を起こしたり横を向いたりするほどのものなのに、

体が微動だにしないせいで咳込んだ傍から喉奥に戻ってきてまた咳込んで、

喉が傷ついたのか、血が滲んだような熱を感じる。

陽乃「ぁ゛っ……ぅ゛……ごほっ……」

歌野「久遠さ――っ! 落ち着いて……大丈夫、大丈夫だからっ」

寝落ちでもしていたのか、

すぐ隣で蹲っていた歌野が慌てて体を起こし、

陽乃の体を横側へと向けて、

血が口元から流れ出ていくようにしてくれる。

陽乃「ぁっう゛っ……ごほっ、げほっ……っ……」

歌野「頑張ってっ、お願い……ちゃんと吐いてっ」

歌野は陽乃の背中を摩りながら支えて、

口から溢れていく泡立った赤い唾液を何度も拭っていく。
856 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/20(土) 19:49:38.61 ID:mHdUgmjGo

それから数分間、ずっと咳込み続けた陽乃は、

歌野の介抱もあってどうにか持ち直した。

けれど九尾の助力がない今は話すこともままならず、

光の薄れた、弱弱しい目で歌野を見ることしかできていない。

歌野「久遠さん……無理をし過ぎよ……」

さっきはちゃんと相談してくれたし、

それを受け入れたのは歌野だ。

けれど、陽乃が無理をし過ぎているのは変わらない。

歌野「本当に死んでしまうわ。今だって、私がいなかったら窒息していたかもしれない」

たまたま歌野がすぐそばにいたからいいが、

これが休憩中などで車内に誰もいない状況だったりしたら陽乃はそのまま命を落としていた可能性がある。

最も、こんな状態の陽乃を1人にしておくような勇者達ではないけれど。

歌野「完治するまでは大人しくしてて。その分、私が頑張るから」
857 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/20(土) 20:23:59.63 ID:mHdUgmjGo

歌野は一応、完成型とも戦える力を持っている。

とはいえ、歌野も相応の無理は必要となるけれど、

陽乃一人が無理をし過ぎるよりはずっと、軽く済む。

特に、陽乃は力が強すぎるせいで代償が重すぎるのだ。

もちろん、その分完成型と言えど一撃で屠れてしまう為、

言ってしまえば過剰戦力に他ならない。

一般人を守るという理由さえなければ、

陽乃は九尾の力でも完成型と渡り合える可能性は十分にある。

歌野が知らないところで延々と力を使い続けているのも症状のの重さと関係があるが。

歌野「予定では、あと数時間程度で四国に着くわ」

歌野はそう言いながら、

陽乃の額に浮かぶ汗を拭い、

口元を拭って陽乃がまた咳込んだりしないかと様子を見る。

歌野「そうしたら、病院に連れて行こうと思っているんだけど……大丈夫?」
858 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/20(土) 20:40:45.33 ID:mHdUgmjGo

歌野がわざわざそれを聞くのは、陽乃を案じてのことだ。

身を案じてのことなら悩むまでもなく病院に連れていくべきだが、

陽乃の場合は大社に関係のある病院でなければ正しい治療はして貰えないし、

その病院でさえ完全な治療が施すことが出来る保証もない。

ただ、病院に入ればその連絡が大社に行き、陽乃は大社に管理されることになるだろう。

だから、歌野はそれを訪ねる。

陽乃の過去のできごとを知っている以上、

ただ治療に専念して貰いたいというだけで陽乃の自由が奪われるようなことをするわけにはいかなかった。

歌野「口では答えられないだろうから……これ。これを見つめて」

歌野はそう言って、ノートを取り出す。

ノートには、

左側に病院に行くと書かれ、右側に病院には行かないと書かれている。

歌野「これを目で追ってくれるだけで良いわ。どっちがいいのか……やっぱり、体を治すには精神面も重要だと思うから」

手術などで治療する必要があるなら選択肢はない

だが、そうではないなら選ぶ権利はある。


1、病院に行く
2、病院に行かない
3、歌野を見つめる


↓2
859 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/20(土) 20:41:57.10 ID:GyA+lB0eO
3
860 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/20(土) 20:45:47.12 ID:WZpg7YvW0
1
861 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/20(土) 22:33:46.64 ID:mHdUgmjGo

陽乃は少しの間歌野を見つめていたものの、その視線をゆっくりと左の方へ向ける。

陽乃から見て左側には病院に行くと書かれており、

歌野は本当にいいのかと確認を取ったが、

陽乃はまた歌野を見て、もう一度左側へと目を向けた。

正直なところ、陽乃は大社に管理されたくはないし、

歌野も大社に任せるのは好ましく思っていなかった。

陽乃の過去を知ってしまったのもそうだし、

仕方がないことだったのかもしれないけれど、

諏訪を完全に切り捨てているような状態だったこともあったからだ。

それでも、陽乃がそれでもいいというなら、歌野は頷く

歌野「分かったわ。そうする」

嫌ではあるものの、

病院が一番、体を治すには最適だ。

だから、それこそ仕方がない。
862 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/20(土) 22:47:27.64 ID:mHdUgmjGo

歌野「でも、久遠さんを1人にしたりはしないから」

1人だけ入院なんてさせないし、

1人だけどこかへと移送なんてこともさせない。

大社がなんて言おうと、

傍には自分か巫女である水都を置いて貰おうと思っていると歌野は言う。

歌野「久遠さんは自由が欲しいだなんて思うかもしれないけど、でも、そのくらいはさせて」

陽乃「……」

心配そうに零し、

陽乃の介護を続ける歌野をじっと見つめていた陽乃は、

何も伝えることなく目を瞑る。

今の陽乃には誰かが必要だった。

九尾はもちろん、

それ以外の誰かの力も。

でなければすぐにでも息絶えてしまうほどに弱っている。

特に、歌野の力がなければ、抜け出ていく力の方が多いのではというくらいに回復が追いついていない。

だから、陽乃は甘んじるしかなかった。
863 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/20(土) 23:00:02.71 ID:mHdUgmjGo

1日のまとめ(諏訪組)

・ 土居球子 : 交流有(完成型は任せて、やることをやるだけ、手を貸す(悪)、肯定、悪かったと思う、球子達を逃がす、共闘)
・ 伊予島杏 : 交流有(完成型は任せて、やることをやるだけ、手を貸す(悪)、肯定、悪かったと思う、球子達を逃がす、共闘)
・ 白鳥歌野 : 交流有(神様の反動、そうね、付いて来られるなら、病院に行く)
・ 藤森水都 : 交流有(深刻なダメージ)
・   九尾 : 交流有(もう一度、球子達)

√ 2018/09/12 まとめ

 土居球子との絆 72→75(良好) ※特殊交流2
 伊予島杏との絆 87→90(良好) ※特殊交流4
 白鳥歌野との絆 85→87(良好) ※特殊交流4
 藤森水都との絆 92→92(良好) ※特殊交流8
   九尾との絆 78→78(良好)

鬱積 12%
864 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/20(土) 23:01:49.84 ID:mHdUgmjGo

√ 2018年 9月13日目 朝:移動@

↓1コンマ判定 一桁

0,5 バーテックス 発見
2,8 バーテックス 襲撃

ぞろ目奇数:悪
ぞろ目偶数:良

※それ以外は四国判定
865 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/20(土) 23:02:40.45 ID:7DMTl5VQO
866 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/20(土) 23:37:00.02 ID:mHdUgmjGo
規模判定

↓1コンマ

01〜00 ※低〜高

ぞろ目で完成型
50以上で進化型
70以上で進化型複数 ※一桁の数
867 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/20(土) 23:40:13.70 ID:pLlinM1EO
868 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/20(土) 23:40:33.46 ID:WZpg7YvW0
869 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/21(日) 00:09:24.87 ID:2EKvnm/io

では本日はここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから
870 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/21(日) 00:19:29.63 ID:EvswKeUFO

最後の最後までバーテックスの殺意高いなぁ…
この調子だと四国に到着したとしても襲撃とか頻発しそうだし陽乃さんの体を治す暇があるか心配
871 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/21(日) 00:26:41.53 ID:esMo9N4LO

進化型10体?
でも襲撃じゃなくて発見なあたりこちらが先に見つけたってことだし優位に立てるんじゃなかろうか
しかし四国すぐそこなのにこんなにいるって四国マジでヤバいんじゃ……
872 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/21(日) 16:13:48.36 ID:2EKvnm/io
遅くなりましたが少しずつ
873 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/21(日) 16:24:24.06 ID:2EKvnm/io

√ 2018年 9月13日目 朝:移動@


瀬戸大橋がもう目の前と言えるほどの場所にまでたどり着いていた陽乃達だったが、

2台のバスは近くにある建物に隠れるようにしながら停車していた。

ここに来てからさらに慎重になった。のではなく、

ここから先にはそうやすやすと進めないような光景が目の前に広がっていたからだ

球子「瀬戸大橋周辺にいる大量のバーテックスをどうにかしないとバスの1台は吹き飛ばされるぞ」

杏「初期個体だけならともかく、軍勢を率いるみたいに進化個体がまばらにいるので、バスを守りながらは厳しいと思う」

歌野「つまり、誰かが囮を務めないといけないってこと?」

杏「単刀直入に言えばそうなります。ただ、問題は昨日のようにバスの護衛が手を出すことは出来ないっていう点です」

昨日の完成型の襲撃の方が危険度ははるかに高いものの、

蠍のようなバーテックスを陽乃が倒してくれたため、

バスを守る勇者が相手をするのは爆発物を射出するバーテックスと、初期個体のみだった。

そのおかげで、気を惹くこともできた。

だが、今回はそうはならない。

進化型は複数の個体がおり、計10体ほど確認されている。

下手に気を引けば守るべき住民の乗るバスが消し飛ばされることになるからだ
874 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/21(日) 16:54:27.43 ID:2EKvnm/io

歌野「どうにかあれを回避する術はないかしら」

バスは2台ある。

それを守護し、そのうえで結界の中にまで持ち込むとなる2人は欲しい

だが、ここには4人しかいない。

そのうち1人は死にかけているし、

バスを持ち込むためだけに力を使って貰うなんて出来る状況ではない。

無駄遣いもいいところだ。

かといって、戦わせるわけには――

陽乃「……別に、私が戦っても良いけど」

歌野「久遠さん!」

陽乃「私の力はむしろ、多勢でこそ発揮するものだから」

杏「それは最終手段にさせてください。久遠さんが死んじゃいますから」

球子「って言ったって、どうするんだ? 何かできることはあるのか?」
875 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/21(日) 17:05:34.14 ID:2EKvnm/io

バーテックスの集団はある程度密集している為、

各個撃破していくなんて先方は取ることが出来ない。

初期個体の1つにでも見つかれば最後

芋づる式にすべてのバーテックスが反応して乱戦になってしまう。

歌野「私の力を使い果たすつもりで使えば何とかなるかもしれないわ」

陽乃「あら、私の代わりに死んでくれるのね」

寝たきりで、九尾の力で無理矢理話しているだけの陽乃が言えたことでは全くないのだが、

実際、歌野が使い果たすつもりで瞬間的に大きく力を使えば、

完成型のいない軍勢なら壊滅させることは出来るはず。

回復特化とはいえ、曲がりなりにも神の力である以上、強力だからだ。

しかし、そうなれば消耗した分を無理矢理に治癒することが出来ずに歌野は死ぬかもしれない。

今の状態の陽乃が力を使う以上に高い確率で。

歌野「だけど、久遠さんだって死ぬ可能性が高いわ。そんな治りきってない体で……さすがに2度目は無理よ」

球子「だったらタマと杏で囮を務めるしかないな」

杏「……」

球子の発現に杏は答えることなく考え込み、

そして、おもむろに顔を上げて。

杏「若葉さん達を呼んでくるのはどうでしょうか」
876 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/21(日) 17:35:37.10 ID:2EKvnm/io

かなり危険な作戦にはなるが、

2人または1人で進み、

バーテックスに発見されないように四国へと帰還して大社に訴えて勇者を派遣して貰う。

杏はその策を1つ目とし、

もう1つ、可能な限り選ぶべきではないとして代案も上げた。

杏「あのバーテックスの軍勢が侵攻を開始するまで待つという手もあります」

歌野「それは断じてノーよ」

杏「……あくまで代案です」

ここに集まってきているのは侵攻を目的としているからで間違いない。

戦力が集まり次第開始し、四国を落とす腹積だろう。

ここまで戦力を集めている理由として考えられるのは、

ある程度戦力を削れたため、一気に畳みかけるつもりだというのが1つ

戦力が中々削れないため、可能な限り揃えてから侵攻するつもりだというのが1つ

どちらもまるで逆の話で、しかし、あり得る話だ。

杏「ここまで消耗し続けた私達でどうにか対応するか、命がけで救援を呼びに行くか。ですが」

3人とも、どうするべきか迷っているようだ



1、呼んだ方が確実でしょ
2、向こうも安否が分からないし、私達で対処しましょ
3、決まらないなら私が出るわよ


↓2
877 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/21(日) 17:38:57.78 ID:6EN/tSQs0
3
878 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/21(日) 17:39:04.19 ID:7X/C2PF3O
3
879 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/21(日) 18:05:19.31 ID:2EKvnm/io

陽乃「決まらないなら私が出るわよ」

歌野「それはっ」

杏「それなら、私とタマっち先輩、それと白鳥さんの3人で戦いを仕掛けます」

陽乃「……やれるの?」

杏「戦力的にはかなり厳しいのは間違いないです」

元々、多勢に無勢の戦いであり、

ここまで消耗してきている杏達では本来の力を十分に出し切るのは難しい。

だが、四国が近づいたことで諏訪付近に入る頃よりは力を感じられ得るし、

進化型が複数いるものの、戦い慣れしている歌野がいる。

完成型相手では厳しくても、進化型と通常個体だけなら歌野は陽乃に次ぐ過剰戦力と言えるだろう。

それでも、物量に飲み込まれてしまう可能性もある。

杏「でも、希望はあります。目と鼻の先に四国が、神樹様が、若葉さん達がいる。なら、戦闘に気づいて出てきてくれる可能性もある」

球子「なら、ド派手に一発決めるのが良いな」

キャンプファイヤーみたいにと言う球子に、杏は困った顔でそうだけど。と呟く。

陽乃「それこそ私の力を――」

歌野「全てのバーテックスが久遠さんに狙いを定めてしまうからダメよ。本当に駄目だと思ったら出てきて」
880 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/21(日) 18:32:50.18 ID:2EKvnm/io

バスは影に隠したまま待機させ、その護衛として陽乃を残す。

戦闘域はバスから多少離れた場所を予定し、

最も近くにいるバーテックスの一団を奇襲して壊滅させ、

そのまま中央突破のように進む。

歌野が最前線で戦い、その援護を球子と杏が行う。

杏は可能な限り四国へと近づき、最悪の場合には一人で乗り込んで救援を求めるつもりだ。

陽乃「私の力を使った方が早いのに」

歌野「それが一番なのは分かってるわ。でも、久遠さんの体が心配だから」

陽乃「……馬鹿ね」

歌野「久遠さんがいつも、していることよ」

自分だっていっぱいいっぱいなのに、

周りよりも一歩先に進んで力を使い、戦いに身を投じていく愚かさ。

それはいつも陽乃がやっていることで、

しかし、今回ばかりは歌野達がそれを担う。

陽乃の体は非常に治りが遅く、前回どころか前々回の分も完治しているとは言えない。

そこにさらに傷を負うのは自殺行為に他ならないから。

歌野「大丈夫。何かあれば真っ先に久遠さんを呼ぶわ。それまでは、私達に任せて」

歌野はそう言って陽乃の手を握り、にこりと笑う。

そして、3人はバスの外へと向かった。
881 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/21(日) 19:12:28.48 ID:2EKvnm/io

↓1コンマ判定 一桁

01〜00 バーテックス討伐率

※一桁で被害判定

0、8    被害なし
1、5、3、6 被害小
7、2、9   被害中
4      被害大 

※ぞろ目特殊
882 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/21(日) 19:17:00.33 ID:dUIqO90jO
883 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/21(日) 20:41:23.17 ID:2EKvnm/io

歌野達はバスから降りると、まず近接戦を行う必要のある歌野が先行し、

そのあとに続いて杏達がバーテックスの方に向かっていく。

進化型は色んな方向に点在しており、

その間を埋めるかのように無数の初期個体のバーテックスが蠢いているといった状態だった。

逃げられるなら逃げたいと言った状況。

杏も球子も緊張に息を飲むが、歌野だけは力強い表情と、歴戦の勇者と言った背中を2人に見せてくれる。

遥かに遠い陽乃という存在

それよりも近いが、ずっと遠くにあるようにも感じる歌野の姿を杏達は追い駆けて。

杏「っ!」

歌野がある程度バーテックスの群れに近づいたのを見て、杏が先制を仕掛ける。

杏はボウガンをバーテックスではなく上空へと向けてひたすらに撃ち放ち、

それが雨のようにバーテックスの軍勢へと降り注いで大量の初期個体を撃ち落としていく。

攻撃に気づいた進化型は、しかし、

その照準が杏へと向かう前に目の前にまで迫って来ていた歌野に叩き伏せられ、鞭打たれて消滅する。
884 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/21(日) 21:21:13.43 ID:2EKvnm/io

その奇襲ですべてのバーテックスが反応し、

大量の初期個体が歌野に群がり、進化型が狙いを定める。

杏は四国の方に近づきながら歌野に近づく初期個体を撃ち落とし、

球子は楯を投げ込んで、

歌野を進化型から見えなくなるようにしつつ、初期型を払い飛ばしていく。

歌野はその球子の楯に隠れながらどんどん突き進み、

宇迦之御魂大神様ではなく、通常の力で薙ぎ払う。

通常の力でも、陽乃の力を経由している分強力で、

そこに3年間の戦闘経験が合わされば、杏が考えていた通り圧倒的だった。

歌野「邪魔よッ!」

群がる初期個体を一振りで薙ぎ払い、

二振りで道を切り開き、

三振りで――

歌野「こんなものッ!」

矢のようなものを発生させた進化型の放った一撃を受け流して、

四振り目でその進化型を叩き潰し、完全に消し去ったその足でさらに大群へと突っ込んでいく。

歌野はまるで足を止める様子がない。

多勢に無勢に慣れ切った歌野は、悉くを蹴散らしていく
885 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/21(日) 21:43:30.16 ID:2EKvnm/io

だが、それでも10体もいた進化型のいくつかの攻撃が戦場を迸って場を荒らし、

蠢く初期個体のバーテックス達が遠くから仕掛けてくる球子達へと戦力を分断して言ったことで、

完全な優勢だったものがだんだんと追い込まれて行ってしまう。

歌野「くっ……」

一番厄介な進化型バーテックスにまで攻撃が通らない。

通らないせいで強力な攻撃が放たれ、杏や球子にまで影響が出るうえ、

一歩間違えば、バスの方向に攻撃が逸れて被害者が出てしまう可能性がある。

杏「っ……やっぱり数が多いっ」

球子「杏っ! 力を貯めてぶっ飛ばせ! 時間はタマが作ってやるッ!」

杏「それじゃ処理が間に合わないよっ!」

球子は広範囲を攻撃出来るけれど、

一度攻撃が通り過ぎてしまった場所から来られたら対処が出来ない。

それを埋めるための杏の攻撃だ。

それがなくなったら完全に押し込まれる。

歌野「っ」

歌野が諦めて宇迦之御魂大神様の力を使おうかとした瞬間――

「勇者ぁぁぁあああああっ、パァアアアアアアアンチ!」

どこからともなく気合いの籠った声が轟き、歌野が目指していた進化型の辺りに何かが落ちる。
886 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/21(日) 21:53:50.23 ID:2EKvnm/io

歌野「な、なに……?」

その衝撃で周辺の初期個体が吹き飛び、

叩き潰され消滅した進化型の代わりに、その場に佇む少女が歌野の目に映る。

友奈「待たせてごめんね! 助っ人に来たよ!」

歌野「高嶋さん!」

友奈「えっと……あれっ? 私を知ってる?」

友奈はまるで見たことのない新しい勇者。

その歌野が自分の名前を呼んだことに驚く間にも、バーテックスは次から次へと襲い掛かってきて。

歌野「細かい話はあとにしましょう! まずは奴らを薙ぎ払うわ!」

友奈「うんっ! 」

歌野が先に動き、続いて友奈が動く。

歌野が蔓を振るって横一閃に薙ぎ払い、

後ろから現れた友奈が拳1つで殴り込み、衝撃波で跳ね除けた個体を歌野が打ちのめし、

開けた道の先にいる進化型を友奈が殴り飛ばす。

杏達の方にも、誰かが向かってくれたようで、一気に押し返していた。

友奈「向こうにはぐんちゃん達が行ってくれてるから大丈夫! 心配しないで!」

歌野「ええ。心配はしてないわ」

諏訪の勇者である白鳥歌野は、

本来は出会うことすら叶わなかっただろう四国の勇者達の姿を見て、笑みを浮かべる。

本当に、やり遂げられたのだと。
887 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/21(日) 21:58:57.29 ID:8GH4lQAqO
これは熱い展開
888 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/21(日) 22:14:36.81 ID:2EKvnm/io

友奈たちが助っ人としてきてくれたことで、

歌野達は軽い怪我をする程度で大量のバーテックスをせん滅し、

バスとその乗客たちを四国へと連れていくことが出来た。

友奈「……久遠さん、大丈夫?」

陽乃「生きてたのね、貴女達」

千景「それはこっちの台詞よ。死んだと思ってたわ。全員」

陽乃はもちろん、杏や球子も。

3人とも諏訪に向かったことは若葉から友奈と千景に伝えられていたが、

生きてたどり着けるとは思っていなかったし

生きて戻ってくるとも思っていなかった。

むしろ、千景の場合は陽乃が死んでおけばよかったとさえ思っているようにも感じる。

若葉「良く戻ってきてくれた。よく、連れ帰ってきてくれた」

陽乃「貴女の目は節穴なの? 連れ帰られたのは私だわ」

寝たきりな陽乃と、先ほどの戦いで傷を負っているだけの歌野達。

普通に考えれば、功績は歌野達のものだろう。

千景「貴女が2人を連れて行ったせいで戦力不足になって、襲撃を受けた際に住民に被害が出たわ」

友奈「ぐんちゃんっ!」

千景「ダメよ。ちゃんと言わなきゃ」

千景は止めようとした友奈を遮り、陽乃を見つめて。

千景「貴女のせいだって声が大きいわ。災いだって……やっぱり貴女を捧げた方が良いんじゃないかって」

陽乃「あら、何にも変わってないってことじゃない。平和で何よりだわ」
889 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/21(日) 22:24:39.34 ID:2EKvnm/io

千景の嫌味のような言葉にも、陽乃は弱弱しく笑う。

本当に、何も変わっていない。

被害が出ようが出まいが、

この今の状況そのものが久遠家のせいだと言われてきていたし、

なら何も変わっていないと陽乃が言うのも無理はなくて。

杏「とにかく、久遠さんを病院に連れていきます」

若葉「ああ……そうだな」

千景「そうね。そのように大社から連絡が来てるし」

千景はそう言って端末を確認し、陽乃にその端末を見せる。

画面に映っているのは大社からのメールで

諏訪の住民含め、陽乃達を検査のために病院に連れてくるようにと指示が来ているようだ。

バスで避難してきたことも伝わっているからか、

大社からの迎えはなく、そのまま病院へと向かうこととなった。
890 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/21(日) 22:33:43.38 ID:2EKvnm/io

√ 2018年 9月13日目 昼:病院

↓1コンマ判定 一桁

01〜10 歌野 
23〜27 九尾
34〜40 友奈
56〜60 杏
61〜65 球子
67〜71 水都
81〜85 若葉 

↓1のコンマ

※それ以外は通常
891 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2021/11/21(日) 22:34:16.19 ID:esMo9N4LO
892 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/21(日) 22:41:16.64 ID:2EKvnm/io

では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から


四国到着
勇者は現存、陽乃・歌野・若葉・友奈・千景・杏・球子
893 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/21(日) 22:49:43.16 ID:8GH4lQAqO

久しぶりの若葉たち再登場でついに勇者全員集合か
ここまで来るのに本当に長かったなぁ…
894 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/22(月) 00:27:28.94 ID:vj2rK/GrO

風向きが良くなってきたな
ピンチからの四国組の救援熱過ぎたわ
895 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/23(火) 20:54:01.78 ID:u6Da//LTo
では少しだけ
896 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/23(火) 20:56:59.94 ID:u6Da//LTo
√ 2018年 9月13日目 昼:病院


数日ぶりに感じる布団の感触

鎮痛剤のおかげで体の痛みこそ問題はないが、安らげるかというとそうでもない。

若葉も友奈も千景も。

四国に残っていた勇者達はみんな無事ではあったが、

生傷は絶えない様子で、

勇者装束を解いた制服姿の時に見えた彼女たちの体には、傷が多かった。

陽乃達が襲撃を受けていると聞いた後も、

何度も襲撃を受けていた可能性がある。

それで、突破できないからと

バーテックスが戦力を補充しているところに陽乃達が到着して。と言ったところだろうか。

陽乃「……はぁ」

四国は安全ではないことは分かっていたが、

ここまで襲撃を受け始めていることを考えると

実は諏訪の方が安全だったのではないか。とさえ思う。

ならここに来なかったのか。と言われれば首を振るが。
897 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/23(火) 21:15:58.15 ID:u6Da//LTo

病院に来るまでに聞いた話だけれど、

現在のリーダーはやはり、千景が担っている。

大役を任されてはいるものの、

それに緊張しているというわけでもなく、

むしろ、期待されていることに快く引き受けてそれなりに上手くやっているのだそうだ。

サポートとして友奈がついているというのも大きいかもしれない。

そして、ひなたについては、まだ大社のところにいるとのことで

神託を受けてもそれを直接伝えず、

常駐している別の巫女が連絡を受けて伝えているのだそうだ。

名前は何と言ったか。

九尾はまだ会っていないし、気に入るかは分からないが

ひなたと同じ程。とはいかないだろう。

陽乃は入院が必要なため、お見舞いにでも来てくれる人がいないなら、

陽乃はここで一人で過ごすことになる。

九尾なら呼べば、来てくれるかもしれないけれど。



1、ゆっくり休む
2、九尾を呼ぶ
3、イベント判定

↓2
898 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/23(火) 21:18:48.80 ID:OPm4kjHtO
3
899 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/23(火) 21:19:04.58 ID:J/U+TNGP0
2
900 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/23(火) 21:59:25.33 ID:u6Da//LTo

体を休めるなら動くこともできないし眠ってしまった方が良いのだけれど、

無理に眠ることも出来ないと、陽乃は九尾を呼ぶことにした。

九尾は杏達と違って端末を解せずに連絡が出来るため、

すぐに呼ぶことが出来るからだ。

陽乃「九尾、いる? それとも怒ってる?」

ここに来るまで散々無理をしてきてしまったし、

そっぽを向いて傍にはいないのではと陽乃は問いかけてみたが、

九尾はいてくれていたようで、どこからともなく姿を現した。

九尾「休んでおればよいもの」

陽乃「……眠れないのよ」

九尾「妾に子守歌でも歌えと言うかや? 贅沢な娘じゃ」

陽乃「そんなつもりはなかったけど、それも悪くはないわね」

九尾「悪夢を見たいなら、歌ってやろう」
901 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/23(火) 22:46:12.19 ID:u6Da//LTo

九尾は冗談めかして言うと、

本当に歌うつもりだとでも言うように、陽乃のそばに椅子を立てて座る。

今は怪しまれない為か、

病院内で使用されている看護婦の制服を着た女性の姿をしている九尾

普通の人は、これが人間ではないだなんて気づかないだろう。

九尾「主様はまず体を休めねば話にならぬぞ。望み通り白鳥歌野を連れてきたのじゃ。主様が無理する必要はあるまい」

陽乃「そう、ね」

九尾「本来はその予定じゃろう? 諏訪の勇者を連れ出し、主様の生存率を上げると。ならば、療養を理由に何もせぬ方が良い」

陽乃「そんな理由がなくたって、この状態じゃ何もできないわよ」

九尾「主様の力ではな」

九尾の力でも、

イザナミ様の力でも。

陽乃はそれを使って無理矢理に動くことが出来る。

体の状態は関係がない。

九尾「主様は延々と力を消耗しておる。治るには時間がかかるぞ」

陽乃「……分かってる」


1、新しい巫女とは仲良くできそう?
2、みんなは?
3、郡さんにリーダーが務まると思う?
4、これからどうなるのかしら

↓2
902 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/23(火) 22:51:18.51 ID:J/U+TNGP0
4
903 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/23(火) 22:52:03.92 ID:OPm4kjHtO
2
904 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/23(火) 23:07:42.66 ID:u6Da//LTo

では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
905 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/23(火) 23:20:11.93 ID:OPm4kjHtO

全治にどれくらいかかるかも気になるけど直談判の件もあるしできればみんなと今後についての相談もしたいなぁ
906 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/24(水) 06:51:20.52 ID:aTyMHrUzO

新しい巫女さんってもしかして花本さんかな?
907 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/24(水) 17:35:18.77 ID:3hOVq+XkO
うたのんと一緒にいないと回復が捗らないんじゃ
908 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/25(木) 23:37:03.81 ID:jt8nY0/uo
すみませんが本日もお休みとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から
909 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/25(木) 23:44:43.90 ID:Qarga7qBO
連絡乙です
910 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/26(金) 23:31:53.44 ID:E/ZR7d7vO
この流れは今日も無理そう?
911 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/27(土) 21:06:32.68 ID:S0Q1Es0bo
遅くなりましたが、少しだけ
912 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/27(土) 21:26:28.81 ID:S0Q1Es0bo

陽乃「ところで、みんなは?」

陽乃は治療のこともあって早々にみんなから引き離されることになってしまったが、

九尾のことだからどうせみんなの方もこっそり様子を見ていたはずだ。

今は看護婦の制服に身を包む女性として姿を見せているけれど、

別に姿を見せていなくても話は出来るし聞くこともできる。

九尾「娘らなら勇者達の住む寮に向かったぞ。新たに白鳥歌野も加わったからのう。案内もせねばなるまい」

陽乃「伊予島さん達は大社に直談判するって話じゃなかったかしら。私がいないから保留なの?」

九尾「ふむ。今日はひとまずと言った様子じゃったな。主様がいずれにせよ、あ奴らは大社に話すつもりじゃろう」

陽乃「……そう」

陽乃が回復するのを待っているような余裕はない。

下手をすれば数ヶ月かかるかもしれないような状況だから、

完治を待ってなんていたら、

完成型や潰しきることのできない物量を持って蹂躙されてしまう可能性があると

杏達も危機感を覚えている。

陽乃だって、今の状況では抗いきれないのは目に見えていた。

陽乃と歌野はともかく、他の勇者達は少しずつ潰されていくことは免れないと。
913 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/27(土) 22:02:31.62 ID:S0Q1Es0bo

陽乃「白鳥さんは……まぁ、気にする必要もないわね」

九尾「そうじゃな。主様と違ってあの娘は協調性もある。問題はなかろう」

陽乃「……悪かったわね」

以前は球子もあまり気に入っていないと言った様子だったが、

たくさん話し、諏訪に行き、今では杏と似たようなものだ。

とはいえ、千景は相変わらず陽乃を気に入っていないし、

今では勇者を束ねるリーダーの役割さえ担っている。

今後、上手く関わっていけるという保証はない。

それとは真逆に、歌野は問題がないはずだ。

陽乃乃件もあって、

もしかしたら千景と衝突してしまう可能性も捨てきれないが、

それを抑える理性はある。

陽乃「離れすぎているせいか、今は白鳥さんを感じないし……喧嘩とかしていたら面白いのに」

九尾「ふむ……白鳥歌野はともかく、主様が連れ帰った人間どもは原住民とは相いれぬやもしれぬ」

陽乃「原住民って……でも、どうして?」

九尾「久遠家の悪評はすでに広まり切っておる。今までは控えめだった勇者という存在の活動も秘め事ではなくなり、公のものとなったからのう」
914 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/27(土) 22:21:58.47 ID:S0Q1Es0bo

バーテックスによる侵攻が終わりではないことが公表され、

それに抗うべく勇者たちが戦っていて、人々を守っていることが知られている。

そうして、その度重なる襲撃による被害が出た。

勇者達への批判は避けられないと思われたが、

四国を守るべき勇者が2人も不在であること、

その原因が陽乃にあることがどこかから漏れたことで、勇者が全員そろっていれば被害は防げたのではないかという話になり、

結局すべてが "あの人物" のせいだとなった。

今回、杏達が戻ったことで多少緩和されたかもしれないが、

その話は、ここに来たばかりの諏訪住民の耳にさえ入るほど大きな声となっていて、

どうしようもなく、耳に入ってしまった。

だが、諏訪から来た人々は陽乃のことをずっと見てきた。

それこそ、目の前で命懸けで戦っている姿も、それによって死にかけている姿も。

そんな人を非難し、あまつさえすべての元凶だといううわさ話を聞かされて、

快く溶け込めるはずもなかったわけだ。
915 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/27(土) 22:53:21.02 ID:S0Q1Es0bo

陽乃「やっぱり、私のことに注意をしておくべきだったってことね」

あまり深いれされないように一線を引いておくべきだったし、

踏み込まれたら踏み込まれたで、

しっかりと突き放しておくべきだった。

杏の両親もそうだが、

諏訪にいた人々を多く連れてきたと言っても、

四国の中では少数の集まりでしかない。

この中では、弾圧だってされかねないし、

この隔離されている世界で乃無意味な争いなんて、やるだけ無駄なことだ。

陽乃「でもまさか、諏訪の人達は暴動でも起こすとか言ってないでしょ?」

九尾「無論、まだ自由に行動できるわけではないからのう」

諏訪の人々は、今のところ大社が用意した住居に住むことになるそうだと九尾は言う。

その状況で下手なことをしても路頭に迷うことになってしまうから、

暫くは何もないだろうとのことだった

陽乃「暫くは、ねぇ」

少し、不安は残ってしまう。
916 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/27(土) 23:14:02.00 ID:S0Q1Es0bo

九尾「ところで、主様は白鳥歌野を感じられておるのかや?」

陽乃「えっと……」

歌野達が寮にいるのなら、諏訪で実験したとき以上に距離が開いている。

これだけ開いていると難しいのではと思うが、

九尾がひなたを感じ取れるように、

陽乃も出来る可能性もあると目を瞑ってみると、

いくつか自分から流れ出て言っているのを感じる。

1つは結界を維持するための力で、

1つは水都、もう1つが歌野で、あとは九尾だろう。

その歌野へと繋がっているだろう力を手繰り寄せていけば、

なんとなくだけれど、歌野のことを感じられているような気がしなくもない。

陽乃「たぶん」

九尾「ならば、歌野も呼ぶことは出来るじゃろう。妾のように物理的なことを無視は出来ぬが、会おうとはするじゃろう」

陽乃「それは、遠回しに私の相手したくないって捉えてもいいの?」

陽乃がそう言うと、

九尾は楽しげに笑って、あくまで選択肢の一つだと言った。
917 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/27(土) 23:19:04.87 ID:S0Q1Es0bo

√ 2018年 9月13日目 夕:病院

↓1コンマ判定 一桁

23〜32 千景・友奈
56〜65 歌野
89〜98 大社

↓1のコンマ

※それ以外は通常
918 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/27(土) 23:21:22.54 ID:XsCPWO0KO
919 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/27(土) 23:51:53.21 ID:S0Q1Es0bo
√ 2018年 9月13日目 夕:病院


諏訪から四国への大移動の際に口にしていた食事よりも味気のない病院食を食べ終えて、

病室から看護婦がいなくなったのを見送ってから、陽乃は息をつく。

陽乃はまだ体を動かすことが出来ない為、全てのことにおいて人の手が必要だ。

今は食事のために体を起こされている状態だが、

起きているベッドを横に戻すことだって陽乃にはできない。

しばらくしたら就寝前の手入れをし、ベッドを戻してくれる人が来るはず。

だが、それまで陽乃は独りだ。

陽乃「何にもできないって、辛いわ」

九尾のおかげで話すことは出来るが、それだけ。

不自由さは相変わらずである。

特別、くだらない内容が流れ続けるテレビをつけてくれているけれど、

退屈なのは変わらない。

これなら本の読み聞かせでもして貰っていた方がまだいい。

精神的には、やや苦々しいけれど。

もう夕方だ。

本来なら面会時間の縛りもあって歌野が来られるとは思えないが、彼女も勇者だ。

特例が許されるかもしれない。


1、休む
2、九尾を呼ぶ
3、歌野を呼んでみる
4、イベント判定

↓2
920 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/27(土) 23:53:48.11 ID:XsCPWO0KO
4
921 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/27(土) 23:54:04.06 ID:gk7T+Hxp0
4
922 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/28(日) 00:05:56.82 ID:XMZ9arOEo
↓1のコンマ

01〜10 水都
11〜20 杏
21〜30 九尾
31〜40 歌野
41〜50 球子
51〜60 若葉
61〜70 千景
71〜80 友奈
81〜90 大社
91〜00 巫女
923 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/28(日) 00:09:11.39 ID:+ERmi+y8O
924 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/28(日) 00:14:55.32 ID:XMZ9arOEo

では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であればお昼ごろから
925 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/28(日) 00:24:28.85 ID:+ERmi+y8O

呼ぶまでもなくうたのん来たな
あと四国に避難しても諏訪の住民のことが気掛かりだなぁ
926 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/28(日) 01:08:22.85 ID:JgtRAWtsO

うたのんありがてえな
927 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/28(日) 17:18:03.94 ID:XMZ9arOEo
遅くなりましたが少しずつ
928 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/28(日) 17:25:41.54 ID:XMZ9arOEo

陽乃が直接呼ぶことが出来るのは歌野と九尾しかいない。

それは、自分の端末を没収されてしまっているからで、

友人とも思っていなかった勇者たちの電話番号が記憶にあるわけもなく、

病院の電話を借りてというわけにもいかなかったからだ。

もっとも、覚えていたところで動くことのできない陽乃にはどうしようもなかったけれど。

そんな中で、少しずつ近づいてくる気配を陽乃は感じて、眉を潜める。

力の繋がりがあるそのぞんざいは、

遠く離れていた場所から少しずつ近づいてきて、

まるで目的地をココとしているように確かな歩みで距離を詰め、

そうして、感じる力が非常に強くなって、声が聞こえるまでになって。

『……ここね』

陽乃の病室の扉が軽く叩かれる。

歌野「久遠さん、入って平気?」

陽乃「……」

『寝ちゃってるのかしら……でも』

歌野「入るわね?」

入らないわけにはいかないと言った様子で入ってきた歌野は、

陽乃の瞳が自分を見ていることに気づいて、困ったように笑った。

歌野「起きてたなら返事をして欲しかったわ」
929 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/28(日) 17:32:56.60 ID:XMZ9arOEo

陽乃「面会時間は過ぎていると思うけど?」

歌野「そもそも面会謝絶だって言うから、こっそり忍び込んじゃった」

歌野はそう言って陽乃のそばに簡易椅子を立てて座ると、

陽乃の額にかかっている前髪をさっと払う。

歌野「久遠さん、以前病院を抜け出したでしょ? それも拘束されている状態から」

陽乃「そんなこともあったわね……」

歌野「だから、凄く警戒されているみたい。また逃げるんじゃないか、また問題を起こすんじゃないかって」

どうやってか逃げ出されてしまうと、責任は病院側に問われる。

拘束もしておいたのにと言っても、

何かを怠ったのだろうと言われれば否定はできない。

陽乃が以前逃亡したのはそんな状況だった。

今回は陽乃が完全に動くことのできない状況の為、

やや緩いけれど、他の勇者の手を借りれば容易に逃げ出せてしまうから、

それを警戒しての面会謝絶だったのだろう。

歌野「……勇者の扱いじゃないわ」

陽乃「なによ、怒ってるの?」

歌野「笑い事じゃ――」

陽乃「貴女はもう、知ってたことでしょ。何をいまさら」
930 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/28(日) 17:44:17.39 ID:XMZ9arOEo

歌野「駄目よ……そんな」

強く感情をあらわにしてはいないが、

不服がにじみ出ている歌野の一方で、

その被害を受けている当人の陽乃は、余裕と言った雰囲気で、笑ってさえいて。

歌野は膝上の手に力を込めて、固い握り拳を作る。

握られたスカートには深いしわが広がっていた。

歌野「久遠さんは私達にとっては英雄よ。間違いなく、死を待つだけだった私達をここまで連れ帰ってくれたんだから」

道中で完全に倒れ伏してしまったと言っても、

そうなるほどに尽力してくれたからこそで、

その1つでも陽乃が担ってくれていなければ、歌野達は杏達と合流もできずに道中で力尽きていたに違いない。

それ以前に、陽乃が自ら四国を飛び出してくれていなかったら、

歌野達は諏訪で滅びていたはずだ。

歌野「なのに、大社は久遠さんに感謝の一言もない」

陽乃「いまさら何言ってるのよ。私に感謝することなんて、彼らにあるわけがないじゃない」

四国に被害が出てしまったのもそうだけれど、

陽乃の存在が四国に不和を招いているのは間違いない。

統一感はややあるものの、あまり善いものでは無いため大社も辟易しているはず。

残念ながら、当然だと言える。
931 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/28(日) 17:57:15.74 ID:XMZ9arOEo

陽乃「私に勇者2人も攫われたなんて醜聞を払拭するために、諏訪への遠征が行われたって話になるし、その功績が貴女達になる。でしょ?」

歌野「……九尾さんから話を聞いたの?」

陽乃「あらかじめ想定していたことよ」

杏達が道中で死亡していれば、その責任を問われ、

生きてたどり着くことのできた歌野達は単なる生還者として英雄視されるし、

そうではなく、全員生きていたなら、

本来の勇者に数えられている杏達が褒め称えられる。

陽乃が原因だという批判は大社の指示ミスであると言われることになるかもしれないが、

幸いにも住民に死者が出たわけではないし、

結果的に勇者を確保できたのだから、

不和に繋がる陽乃に対しての怒りを緩和して、神樹様や大社に対しての信仰心を強められる可能性がある。

陽乃「大社にとって、私の存在はいわば目の上のたん瘤。郡さんもそうだけど、死んでいてくれた方が助かったはず」

歌野「っ……」

陽乃「……厄介ね」

陽乃の言葉が間違いなく本心であることが歌野には分かってしまう。

冗談のような口ぶりで本心を隠しているならそれを指摘できるけれど、

表裏が寸分違わないその卑屈な言葉は、歌野にとっては辛いもののようで。

はっきりと顔に出ているのを見て、陽乃は呟く。




1、それで、何をしに来たの?
2、貴女まで業を背負う必要はないわ
3、その辛気臭い顔止めて頂戴。病人なのよ。私
4、大社からの指示がそんなに不服だったの?


↓2
932 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/28(日) 18:00:03.96 ID:Q+8L+QPBO
4
933 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/28(日) 18:01:32.43 ID:5kk8c2Cl0
1
934 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/28(日) 18:45:40.09 ID:XMZ9arOEo

陽乃「それで、何をしに来たの?」

歌野「何をって……忘れちゃったの? 私がいた方が久遠さんの治りが早くなるって話」

陽乃「てっきり忘れてると思ってたわ」

歌野「忘れるわけないじゃない」

歌野はむっとして否定する。

本当はすぐにでも来たかったが、

色々と話さなければ行けないことや、

面会謝絶だったこともあって、

すぐには来られなかったのだと歌野は言う。

歌野「だから、こうやって忍び込んでまで久遠さんに会いに来たのよ。まぁ……九尾さんの力を借りちゃったけど」

陽乃「でしょうね」

歌野だけでは、ここまで来ることは出来なかったはず。

陽乃が今いる部屋に監視するためのものはなさそうだが、外にはあるはずだし。

もし陽乃のところに誰かが来ているのがばれたら、すぐに人が来るだろう。

歌野「九尾さんも、久遠さんに早く良くなって欲しいって思っているのよ」

陽乃「まさか、治るまでずっとここにいるとは言わないわよね?」

歌野「出来るならそうしたいとは思ってる」
935 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/28(日) 19:08:42.70 ID:XMZ9arOEo

歌野はそう言うけれど、実際には難しいのが現実だ。

ここまで来るのも九尾の力が必要だし、

居続けるにも必要だ。

何より、歌野は諏訪からの生還者として重要な立ち位置にいる。

諏訪と違って、自由に行動できるわけがない。

ある程度は大社に制限を受けることは免れないだろう。

陽乃「でもできない。でしょ?」

歌野「ええ。酷い話……だけど、夜は必ず来ようと思うの」

陽乃「夜? なんで?」

歌野「一緒に寝ようと思って」

陽乃「……は?」

何を言っているのかと陽乃が唖然とした声を漏らすと、

歌野は真剣な表情で「本気よ」と言って。

歌野「夜寝るときから、朝起きるまで。その時間が一番久遠さんと一緒にいられるし、見回りを除いて邪魔が入らない」

陽乃「だからって私の貴重な時間を潰そうって言うの?」

歌野「それで久遠さんの傷が癒えるなら」
936 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/28(日) 19:32:31.08 ID:XMZ9arOEo

歌野「私も、その時間なら朝こっそり戻れば大丈夫なはずだし、寝ていればいいだけだから楽でしょ?」

陽乃「藤森さんは?」

歌野「みーちゃんならいいって。むしろ、自分にもできたらって言ってた」

陽乃「そう……」

歌野が一緒にいないと水都が不安がるのではないかと言えば引くかと思ったが、

それは難しいらしい。

皆と関わらずにいると協調性がないと思われかねないという話も、

夜ならば気にすることはないと一蹴されてしまう。

歌野「嫌でも一緒にいて貰うけど……というより、一緒にいさせて貰うけど……」

歌野は絶対だといった様子で言うと、

少し残念そうな表情で陽乃を見る。

陽乃「なによ……その、何なの?」

心が伝わってしまうので、

歌野の心がもやもやとしているのを聞いて、陽乃は顔を顰めて問う。

歌野「私と一緒は、嫌なの?」

陽乃「貴女ね……」

もしかしたら自分より面倒な女の子なのではないのかと、陽乃はため息をついて。


1、別に嫌ではないわよ
2、そうだと言ったって、貴女はここに居座るんでしょ
3、勇者の中ではそれなりよ


↓2
937 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/28(日) 19:35:52.00 ID:5kk8c2Cl0
1
938 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/28(日) 19:36:03.63 ID:4Q8k0c70O
2
939 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/28(日) 20:08:26.04 ID:XMZ9arOEo

陽乃「そうだと言ったって、貴女はここに居座るんでしょ」

歌野「……いるけどっ」

ちょっぴりむくれる歌野を一瞥して、

陽乃はため息をつきながら目を閉じる。

歌野はせめて嫌ではないと言われたかったようだけれど、

陽乃はそんなに優しくはない。

というより、そんなに心を許せる人間ではない。

それが分かっていてもといった様子ではあるが、

だから何だというのか。

他に誰もいなかった諏訪ならともかく

ここには杏と球子を除いても数名の勇者がいる

大社があって、多くの人々がいる。

陽乃一人に入れ込む必要はない。

むしろ、そうされたら面倒ごとがさらに増えるだけだ

歌野「久遠さん、面倒くさいって思ってるでしょ」

陽乃「今いる知り合いの中で一番面倒なのは、間違いなく貴女でしょうね」

歌野「えっ」

不本意にも内心が伝わる唯一の勇者

それが面倒くさくないわけがなかった。
940 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/28(日) 20:23:19.80 ID:XMZ9arOEo

√ 2018年 9月13日目 夜:病院

↓1コンマ判定 一桁

23〜32 九尾
89〜98 歌野

↓1のコンマ
941 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/28(日) 20:31:36.92 ID:5kk8c2Cl0
942 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/28(日) 20:41:16.88 ID:XMZ9arOEo
√ 2018年 9月13日目 夜:病院


歌野は本当に夜を一緒に過ごすつもりのようで、

陽乃のそばの椅子に座ったままだ。

この部屋は個室で、それなりの広さはあるもののベッドは陽乃が使っている一台しかない。

もう一台ベッドを用意して貰うなんて出来ないだろうし、

どうするのかと思えば、歌野は寝袋を持って来ていると鞄から引っ張り出す。

歌野がそんなものを持っているわけはないので、

球子のものだろう。

歌野「ええ。そうなの。土居さん達は事情を知っているから協力してくれるって」

陽乃「……なるほど」

ベッドの横に寝袋を敷いて、そこで寝る予定だそうだ。

歌野「正直、久遠さんと身体的接触をしている方が楽なんだけど、嫌でしょ?」

陽乃「そもそも本当に治りが早くなるのかしら」

歌野「実際に早くなったのに……もう」

そんなに一緒が嫌なの? と、歌野は少し残念そうに言う。
943 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/28(日) 21:16:01.32 ID:XMZ9arOEo

歌野が言うには……と言っても、九尾から聞いた話そのままのようだが、

歌野から陽乃へと力を供給することで消耗を上回ることも重要だけれど、

歌野から陽乃、陽乃から歌野へと、

力を巡らせることで、陽乃の体に溜まっている穢れを歌野が肩代わりし、

陽乃には歌野と宇迦之御魂大神様の力が流れることで

少しでも影響を軽減させることも狙いなのだとか。

陽乃「……浄水器?」

歌野「九尾さんと同じこと言うのね。分かりやすく言えばそんな感じだって」

陽乃「それで貴女は大丈夫なの?」

歌野「う〜ん……なんというか、心臓がずきずきするみたいな感じはするわ」

陽乃「その程度で済んで良かったじゃない。普通なら死んでもおかしくないんだから」

陽乃は素っ気なく言うけれど、

歌野に死なれでもしたら本当に困ってしまうので

一応、身を案じている。

歌野もそれを分かっているから、穏やかだ。

歌野「確かにそうだわ」

宇迦之御魂大神様の力で強引に回復しているだけで、

じわじわと毒を飲んでいるような状況だから、最悪死ぬのは間違いない。
944 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/28(日) 21:39:31.88 ID:XMZ9arOEo

宇迦之御魂大神様の力があるとはいえ、

歌野は少しばかり堂々としすぎていると陽乃は思う。

長く一緒にいた陽乃があまりにも死に急いでいるから、

少し、感覚がマヒしたと言われても不思議ではないような気はする。

歌野「力の流れが重要だから、感じやすい身体的接触をしておいた方が良いってこと。バスで久遠さんの手を握っていたのもそれが理由よ」

陽乃「つまり義務感でやってるってことね」

歌野「拗ねた?」

陽乃「馬鹿言わないで」

むしろ義務感でただやってくれている方が良い。

歌野は義務感も多少感じてはいるけれど、それ以上に陽乃のことを意識している。

手を握るのも、

動けない陽乃の代わりに汗を拭ったりするのも、

全部好意あってのことだ

歌野「だから久遠さんさえ良ければ、ベッドで寝たいのだけど、それはさすがに嫌でしょ?」



1、嫌よ
2、義務だもの。仕方がないわ
3、良いわよ。別に
4、貴女、少しは自分のことも考えるべきだわ


↓2
945 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/28(日) 21:42:29.74 ID:vyjLDbh6O
4
946 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2021/11/28(日) 21:42:47.80 ID:OVSGk6Jv0
947 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/28(日) 21:43:38.09 ID:OT1gsjGYO
4
948 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/28(日) 22:38:01.02 ID:XMZ9arOEo

陽乃「貴女、少しは自分のことも考えるべきだわ」

歌野「どういうこと? 久遠さんに食べられちゃうとか?」

陽乃「ある意味ではそうね……私の力で貴女の魂が食い殺される可能性があるんだから」

歌野「命を大事にしろってことね」

陽乃「ええ」

分かっているならと陽乃は思ったが、

歌野はやっぱり、首を振る。

陽乃が言えたことではないからだろう。

大移動の時のように戦闘で傷つくわけでもないし、

それと比べれば影響は軽い方だ。

歌野「久遠さんには言われたくない」

陽乃「……でしょうね。けれど、だからって命を捨てられても困るのよ」

歌野「私は捨てる気なんてないわ。ここまで来たんだもの。全力で生きたいと思ってる。でも、それには久遠さんの力が必要不可欠だわ」

陽乃「方便ね」

歌野「かもしれないけど」

陽乃「私への当てつけなの?」

歌野「そんなつもりはないわ。でも、そう思うなら、久遠さんも大事にして欲しい」
949 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/28(日) 23:11:17.28 ID:XMZ9arOEo

戦闘ならともかく、

こうして陽乃の体を癒す程度なら、反動はそう強いものにはならずに済む。

歌野「戦いでは極力温存するけれど、久遠さんはそもそも暫く戦わないで」

陽乃「……必要なければ戦わないわ」

移動中と違って、

陽乃と歌野以外にも十分に戦力がある。

進化型や通常個体相手なら確実に後れは取らない。

問題としては完成型だ。

その対策が他の勇者にもできれば平気だし、

そうではないなら陽乃が出る必要がある。

陽乃「私だって死ぬ気はないの。生きたいの。だから、無用な心配だわ」

歌野「……お願いね」

歌野の力は陽乃による恩恵が大きい

それがなくなれば大幅な戦力ダウンは否めないし、

きっと、歌野はそうではなくても心から案じている。

歌野「私も気を付けるから」

歌野はそう言って、陽乃の手を取る。

陽乃がゆっくりと目を瞑ると、

温かい力が流れ込んでくるのを感じられ、安らぎを覚えて。

陽乃「そうして貰えると助かるわ。苦労が水の泡になるから」

陽乃はやっぱり、少しだけきつい言い方をした。
950 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/11/28(日) 23:14:10.80 ID:XMZ9arOEo

では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
951 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/28(日) 23:27:28.08 ID:OT1gsjGYO

うたのんの思考がどんどん陽乃さんとシンクロしてきてるな
陽乃さんのこと気にし過ぎてうたのんが倒れないように注意しないと
952 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/29(月) 02:02:13.39 ID:ViwfaLqwO

しばらくは交流メインでまったりしたいな
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