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【安価でのわゆ】久遠陽乃は勇者である【7頁目】
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204 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/04/19(火) 23:31:05.07 ID:eps6gap4o
√ 2018年 10月07日目 夜:病院
水都と歌野の儀式の影響を受けて、
昼過ぎからずっと目を覚まさなかったひなた
儀式の当事者の場合、最悪死に至る可能性まであったものだが、
偶然にも伝わってしまったという程度のひなたは、まだ、命に別状はなかったようだ。
皆が寝静まろうかという頃に、ひなたは玉粒の汗を額に浮かべながら目を覚ました。
ひなた「……久遠、さん?」
陽乃「意外に早いお目覚めね」
早くても明日の朝になるかと思っていた陽乃は、意地悪く言いながら額に手を当てる。
比較的冷たい陽乃の手
熱を帯びた体には心地良いようで、ひなたは弱弱しく笑みを浮かべる。
ひなた「まだ……」
陽乃「まだ一日も経ってないわ」
ひなた「そう、ですか」
顔を顰め、ぎゅっと目を瞑って。
ひなた「失望しましたか?」
205 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/04/20(水) 00:21:37.29 ID:scFNpZKto
巫女としての素質が高いと言われながら、
たったこれだけのことで半日近く眠ることになってしまったため、
自分に失望したのではないか。なんて悩んでいるのだろうかと、陽乃は眉を潜める。
陽乃「私は誰にも期待したりしないわ」
ひなた「……久遠さんらしいです」
失望なんてしないと慰めるとか、
失望したと肯定するとかいろいろあるけれど、
陽乃の場合は捻くれているから、慰めるにしても言い方が辛辣だ。
辛辣だけれど、陽乃の言葉遣いを知っていれば、問題はない。
ひなたも分かっている為、困りつつも表情は穏やかだった。
ひなた「私……出来そうですか?」
陽乃「死ぬか死なないかでしかないわ。運が良ければ出来るし、悪ければ出来ない。それだけ」
ひなた「そうですけど……」
陽乃「もちろん、やりたくなければそれでいいのよ。命を大事にでも構わないわ」
ひなた「いえ……大丈夫です」
陽乃「何が大丈夫なんだか」
1、とりあえず寝ておきなさい
2、まぁ、私がやらせないけれど
3、で? 気分は?
4、ならいいわ。頑張りなさい
↓1
206 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2022/04/20(水) 00:26:25.36 ID:JgI9HhwWO
4
207 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2022/04/20(水) 00:26:46.19 ID:92r+L4Rs0
1
208 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/04/20(水) 00:29:43.59 ID:scFNpZKto
では短いですが本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
209 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2022/04/20(水) 00:38:05.51 ID:beGuqYFbO
乙
ひなたが倒れたのは不可抗力なところもあったからなぁ…
本番の時に寝込まないように祈るしかないか
210 :
以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします
[sage]:2022/04/20(水) 02:30:07.07 ID:igbfVb5G0
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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211 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/04/21(木) 23:23:21.57 ID:eKOgcaVRO
すみませんが本日もお休みとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から
212 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2022/04/21(木) 23:31:38.32 ID:fy03JZmAO
いつも乙です
更新が従来のペースに戻るにはまだ時間かかりそう?
213 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/04/23(土) 22:14:49.73 ID:cLairzf/o
遅くなりましたが、少しだけ
214 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/04/23(土) 22:22:42.90 ID:cLairzf/o
陽乃「ならいいわ。頑張りなさい」
ひなた「……はい」
ひなたは薄く笑って咳込む。
まだ全快ではないようだ。
神樹様に見初められているひなたなら……とは思ったが、
流石に、神様そのものは負担が過ぎたのだろう。
それを受け止められている水都は何なのかと思うが、
宇迦之御魂大神様は協力的だし、
水都はその力の影響を一番受ける歌野との関係も良好で
なおかつ、すでに神々の領域に近い神託を受けた経験があったというのもあるから、比較対象とは不適切だろう。
ひなた「藤森さんは……無事に?」
陽乃「貴女と違ってね」
ひなた「……よかったです」
陽乃「まだ安心できるわけではないけど、大した影響はないと思うわ」
でも、だからって、ひなたまで同じとは限らない。
巫女としての適性が高い
だからこそ、余計に負荷を抱えてしまう可能性だって、あるわけで。
全てはやってみなければわからない。
215 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/04/24(日) 00:11:47.46 ID:WGATp9JRo
ひなた「……明日、やりますか?」
陽乃「貴女の状態的に難しいでしょ。私は別に、人を殺したいわけじゃないの。特に、関係者はね」
ひなた「久遠さんは元々……」
人を殺したい人じゃない、と、ひなたは心の中だけで思う。
言ったって否定される。
何より、陽乃やひなたがどう思っていても、人々がそうじゃない。
全てを奪ったバーテックスへの憎悪は消えないし、
誰が扇動したのか
陽乃もバーテックスの一部だなんて、眉唾なうわさが流れ、信じられてしまっている。
今を生きている人々には、余裕がないのだ。
食料も、住居も、心にだって。
だからこそ、希望である勇者が必要で……やっぱり、
その敵だなんて思われている陽乃へと矛先は向かう。
ひなた「……なら、明日はお休みですか?」
陽乃「いつもお休みよ」
どちらにせよ、入院中だ。
退院できるのはまだ先だろうし、
正式に退院できるとなったら、また大社が出てくるだろう。
ひなた「いつまで、入院するつもりですか?」
216 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/04/24(日) 00:40:16.37 ID:WGATp9JRo
陽乃は、退院しようと思えば出来る。
つまりは、逃げようと思えばいつだって逃げられるのだ。
今は、本来の体が非常に弱っている為、それが出来ないが、
もう少し回復したら、本来の退院予定日よりも数日早く逃げ出せるはず。
それに、そうしなければ大社に囚われる。
そう言う態度がいけないと言われればそうなのだが、
陽乃の場合、
そうしなければならない状況にある。
陽乃「さぁ? 身体が治るまででしょ」
ひなた「侵攻があればまた伸びるんですか?」
陽乃「他の勇者が役に立てば伸びないし、立たなければ伸びるわ」
いつものように、他の勇者を敵視しているような口ぶりで、
けれど、実際には、その勇者を護るように戦って自分が傷つく。
それを勇者が頼りないからだと、言っているだけだ。
どちらにせよ、前線へと出て行くのに。
陽乃「どうしてそんなこと聞くのよ」
ひなた「だって、私は久遠さんのそばを離れるわけにはいかないので」
217 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/04/24(日) 02:07:36.86 ID:WGATp9JRo
ひなたは大社の施設から誘拐された身で
大社に見つかった場合、陽乃と同じように連れ戻される。
とはいえ、
陽乃程酷い目には合わないだろうから、最悪の場合保護されても問題はない。
だが、若葉の助力になることもできなくなる。
それを考えると、やはり、陽乃が保護しておく方が良い。
ある意味、自作自演のような状況だが。
陽乃「まぁ、そうね」
ひなた「出来たら、若葉ちゃんも一緒にいて欲しいところですけど」
陽乃「無理よ。立場が違うもの」
陽乃はお尋ね者で、若葉は人々に認められている勇者だ。
陽乃とのかかわりのせいで、ひなたと同様に厄介なことになっているけれど、
それでもまるで違う。
陽乃「一緒にいられる時期はもう、当の昔に終わったのよ」
陽乃が逃亡した時、人を殺めてしまった時
もう、一緒にいられることは出来なくなった。
陽乃「この病院以外ではね」
218 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/04/24(日) 02:08:08.99 ID:WGATp9JRo
では本日はここまでとさせていただきます
明日は可能であれば少し早い時間から
219 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2022/04/24(日) 06:12:30.08 ID:yFgFXG67O
乙
ずっとみんなと一緒にいれないのは辛いなぁ
大社に色々事情を説明して説得出来たらいいんだけど…
220 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/04/24(日) 22:57:41.33 ID:WGATp9JRo
遅くなりましたが、少しだけ
221 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/04/24(日) 23:02:43.27 ID:WGATp9JRo
ひなた「どうにか、仲直り出来ないものでしょうか」
陽乃「不可能よ」
ひなた「でも……」
陽乃「大社の姿勢を考えれば、取り付く島もないのは明白だわ」
大社は個人ではない。
人が集まって作り上げられた組織であり、
四国を取りまとめる役割を持った存在。
人々の反感買うわけにはいかず、その最たる要因となるのは間違いなく陽乃である。
それゆえ、陽乃を受け入れられない。
そうすべき理由があるとしても、
外聞としては、突っ撥ねる必要がある。
陽乃の提案を受け入れ、それを扱っていると世間に知られれば瞬く間に信用を失うことだろう。
陽乃「私は、人殺しだから」
ひなた「久遠さん……」
正当防衛だから。
それが、何だというのか。
人殺しは人殺しだ。
何より、久遠陽乃という人間への評価が、それを許さない。
陽乃「私は誰かを信じる気はないし、頼りたくもない。誰かと慣れ合う気なんて毛頭ない。その点で言えば、郡さんとは気が合うはずだけど、それ以外が全く正反対だし」
なにより、彼女には高嶋友奈という拠り所がいる。
だが、陽乃には――
陽乃「……」
歌野「zzz……」
陽乃「ともかく、不可能な話よ」
222 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/04/24(日) 23:46:07.71 ID:WGATp9JRo
ひなた「久遠さんの力は紛れもなく人類の希望なのに」
陽乃「希望足り得る力は、同時に脅威でもあるものよ」
ひなた「……もう」
ひなたは自分を卑下してやまない陽乃の姿勢に目を細める。
疎まれていると自覚しつつも、それを改善する気が陽乃には全く感じられない。
とはいえ、陽乃から寄り添ったところで。というのはあるし、
仕方がないことだった。
それに、陽乃が言っているのは事実だ。
使い道を失えば、排斥されるべきなのはなんだってそうである。
危険がなかろうと、不要になれば捨てられる。
もしも危険があるなら、扱いに困って、腫れもの扱い
仕方がないことではあるものの、もう少し。と、思ってしまう。
ひなた「……久遠さん、身体を大切にしてくださいね」
陽乃「はぁ?」
ひなた「久遠さんがいるからこそ、起きている問題は確かにあります。でも、いるからこそ救われた命があることを、どうか忘れないでください」
陽乃が生きているから、その行いがあったから。
だからこそ、救われた命が多く、それはきっと、これからだって増えていく。
陽乃が救った歌野が、さらに多くの命を救うことになるかもしれない。
ひなた「久遠さんは、これからも多くを救う力があるんですから……大事に、して貰わないと」
1、そういうのは、他人を気にするだけの余裕を持ってから言いなさい
2、私は私しか大事にしてないわ
3、まずはあなたが自分を大事にしなさい
4、誰に言ってるのよ
↓2
223 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2022/04/24(日) 23:47:18.00 ID:zPTmy5/d0
3
224 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2022/04/24(日) 23:47:26.91 ID:j5dIdhHHO
1
225 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2022/04/24(日) 23:47:52.66 ID:b6wQxDn90
3
226 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/04/25(月) 00:04:26.37 ID:Rl28JkAQo
陽乃「そういうのは、他人を気にするだけの余裕を持ってから言いなさい」
ひなた「……そうですね」
今は特に、反動を受けたこともあって余裕がさらにない。
死にかけというほどでは、無いけれど。
しかし、ひなたは笑みを浮かべる。
ひなた「でも、今は久遠さんの世話係ですから」
不可抗力というべきか、失態というべきか、
不運な事故というべきか。
ひなたを庇ったことで、陽乃の左手は今、ほとんど動かせなくなっていて、
包帯で覆われているが、
その中身はあまりにも酷い状態になっている。
だからひなたは陽乃の左手の代わり。
戦う力にはならないけれど、日常生活においては役に立つ
ひなた「体調管理にも物申します」
陽乃「それは病院側がやっているから、あなたのやることではないわ」
ひなた「……巫女として、気にするべきところ。ですよね?」
実際には若葉の巫女としての役割を与えられているものの、
九尾に認められているし、その力の一端を受けている為、陽乃の巫女とも言えなくもない。
ひなた「……お願い、しますね」
ひなたはそう言って、少しだけ陽乃へと寄り添った。
227 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/04/25(月) 00:05:40.87 ID:Rl28JkAQo
では短いですが本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
228 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2022/04/25(月) 00:18:14.50 ID:LaNy7Ty8O
乙
陽乃さんはまず心の支えを作ることが必要だろうしひなたには頑張ってサポートしてあげて欲しいな
陽乃さんの認識をなんとかしていい方向に変えないと
229 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2022/04/25(月) 06:44:50.43 ID:eRa6eW6HO
乙
どこかで折り合いつけられないもんかねぇ
230 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/04/26(火) 23:46:50.71 ID:dHbLPMFDO
すみませんが、本日もおやすみとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から
231 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2022/04/26(火) 23:58:22.89 ID:EjOZyqPXO
連絡乙ですー
早く続きが気になるけどまだ忙しい感じなのだろうか…?
232 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/04/27(水) 22:38:59.11 ID:rNOe3fGro
では少しだけ
233 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/04/27(水) 22:39:36.10 ID:rNOe3fGro
√ 2018年 10月08日目 朝:病院
↓1コンマ判定 一桁
0 友奈
2 侵攻
4 水都
6 若葉
8 ひなた
ぞろ目 特殊
234 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2022/04/27(水) 22:40:24.42 ID:ogMb/z8OO
あ
235 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/04/27(水) 22:59:54.52 ID:rNOe3fGro
規模判定
↓1コンマ
01〜10 小規模
11〜20 中規模(進化型+1)
21〜30 大規模
31〜40 小規模
41〜50 中規模
51〜60 大規模(完成型+1)
61〜70 小規模
71〜80 中規模(進化型+1)
81〜90 小規模
91〜00 大規模(進化型+1、完成型+1)
※ぞろ目の場合、完成型+1(中または大)
※1桁目偶数の場合、進化型+(1桁÷2)
236 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2022/04/27(水) 23:01:03.14 ID:Z2RHqvtP0
あ
237 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/04/27(水) 23:30:37.83 ID:rNOe3fGro
14:中規模(進化型+1)+(進化型+4÷2)
√ 2018年 10月08日目 朝:病院
もうしばらくは休みをくれてもいいのではないかと思ってしまうものだが、
バーテックスにとっては勇者の体調など知ったことではない。
むしろ、体調が悪い方が好都合でさえあるだろう。
千景の精神面に不安があり、歌野と杏が戦線離脱中
陽乃も無理をすればどうにかといった状況で、それは訪れた。
ふと、テレビの音が消え、フリーズしたかのように動かなくなって静寂に包まれる。
だが、陽乃も歌野も意識はしっかりとあって――
ひなた「……バーテックス、ですか?」
意外にも、ひなたも身動きがとれるようだった。
陽乃「貴女、平気なのね」
歌野「陽乃さんと一緒にいるからかしら……違うわ。九尾さんの力って感じがする」
陽乃「でしょうね」
九尾の加護。
それが、ここまで身近にあることで、
四国を取り囲む神樹様による樹海化の影響を受けなくなっているのだろう。
ということはつまり、水都も今は自由の身になっている可能性が高い。
だからといって。というところではあるが。
238 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/04/28(木) 00:19:18.63 ID:dQXw4usXo
歌野「今出られるのは、高嶋さん、土居さん、乃木さんだったっけ?」
陽乃「大社がそれを許可するなら、郡さんもね」
とはいえ、球子もだいぶ傷ついている。
友奈に関しては病み上がり。
千景は体の傷こそそこそこだが、精神面が重い。
友奈がいる分、中和されるかもしれないが。
歌野「陽乃さんは行くつもり?」
陽乃「貴女は?」
歌野「私は……」
陽乃「今の貴女なら、無理をすればどうにかなるはずよ」
水都の命を削ればという前提にはあるものの、
歌野もまた、戦えるようにはなるはず。
歌野は元々、そう言った力を宇迦之御魂大神様から与えられているからだ。
239 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/04/28(木) 00:38:12.66 ID:dQXw4usXo
歌野「可能なら、とは思うわ」
歌野は生命力に溢れ、癒しと言える力を持っている勇者だ。
歌野がいるかいないかで、生存率が大幅に変わってくるほどに。
けれど、それは。
歌野「みーちゃんを酷使するのは、ちょっと……もちろん、本当に必要な時は仕方がないとは思うけれど」
自分が戦うために。というのは例外だ。
そうしなければ誰かが命を落とすというならいざ知らず、
そうではないなら、やるべきではないだろう。
特に、昨日の今日という状況ではハイリスクだから。
歌野「でも、陽乃さんは関係ない。自分を誤魔化して無理矢理に戦う。でしょう?」
ひなた「……行くんですか?」
確実に戦いに赴くのは、球子と若葉そして友奈。
友奈がいるということを支えに、千景を投入する可能性もあるため、4人いるかもしれない。
ある程度なら、これで十分なはずだが。
1、行く
2、行かない
↓1
240 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2022/04/28(木) 00:54:24.67 ID:Cd4LJT0EO
2
241 :
以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします
[sage]:2022/04/28(木) 02:44:42.96 ID:VSm1fmyH0
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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242 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2022/04/28(木) 03:42:22.87 ID:xn+mfzlCO
今日はこれで乙かな?
体を休めることを優先したようだけどどうなるか
243 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2022/04/28(木) 07:01:14.86 ID:i6GBMihyO
乙
若葉たちに何事もなければいいけどな
244 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2022/04/29(金) 23:31:49.48 ID:l6rmDYUwO
最近連休が多くて寂しい…
245 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2022/05/01(日) 07:20:41.29 ID:cE3hb1rnO
前にもあったけどお知らせもなく休載が続くとずっと長いこと追ってるだけに不安になってくるな…
もしかして話の展開が詰まったりとかしたのだろうか
246 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/01(日) 22:28:35.01 ID:qcQmb2HRo
諸事情で暫くできませんでしたが、少しだけ
247 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/01(日) 22:30:20.73 ID:qcQmb2HRo
陽乃「そう、ね……行くのは止めておくわ」
歌野「……何か企んでる?」
陽乃「どうしてそうなるのよ。3人や2人ならともかく、4人いるならどうにかなるでしょ。今回に関しては、九尾が出張ってこないのを見るに、一番厄介なものもいなさそうだし」
ひなた「なにより、千景さんが出るなら……」
千景は陽乃の有無でそのモチベーションや意識に大きく変化があるだろうし、
その動揺や狂気は、友奈達の負担にもなって返って足手まといになるのは間違いない。
もちろん、だとして、陽乃なら十分に突破可能ではあるが。
相当な鬱憤が溜まっているだろうから、その八つ当たりをバーテックスにして
普段以上の力量を発揮してくれる可能性もある。
それが仇となって集中力を欠いたり……
陽乃「最悪、わざと病院送りになる可能性もあるけど」
歌野「いくら何でもそこまではしないんじゃないかしら」
陽乃「人を殺すことを躊躇わない狂気が、自傷に及ばないとでも?」
ひなた「……」
無いとは言い切れない。と、2人が沈黙すると、
陽乃はため息をついて、歌野を一瞥する。
陽乃「たぶん、貴女を殺しに行くでしょうし。あの子」
歌野「……私?」
陽乃「貴女を殺さないと、私、死なないじゃない」
歌野「えぇ……」
陽乃「そうじゃなくても、貴女に名声を奪われかねないってなってるんだから。死んでもらった方が好都合でしょ」
歌野「それは、やっぱり疑い過ぎなんじゃない?」
陽乃「殺されかけたんだから、信じる気持ちなんて微塵もないに決まってるじゃない」
248 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/01(日) 22:51:13.96 ID:qcQmb2HRo
歌野は、それでも千景を信じたいと思っているようだが、
陽乃としては信じてあげられる部分がこれっぽっちもないし、
そうでなかったとしても、
今の状態の千景は警戒に警戒を重ねてもまだ足りないほどには危険な状態にあると思う。
陽乃を殺しに来たこともあるし、陽乃の手前にいたひなたでさえも手にかけようとしたし、
その結果、美佳がそうすべきではないと断じる実家への謹慎となった。
美佳のことも陽乃はもちろん信じていないものの、
千景に入れ込んでいる美佳が言うのなら――という点での特殊な信頼もあって、
そんな状況に置かれることになった千景が、
まっとうな精神状態で居られるとはとてもではないが、思えない。
そこから解放される樹海化状態の空間で暴挙に走る可能性は極めて高いと言えるだろう。
特に、その元凶である陽乃と、それを生きながらえさせる歌野に対しては。
ほぼ無関係で、力のないひなたさえ殺しかけたのだから、関係の強い2人は確実だ。
と、警戒しておくべきだと陽乃は思う。
陽乃「郡さんの両親が実際にどうなのかは知らないけれど、私がもし、知人の家に預けられるとなったら気が気じゃないでしょうね」
その知人は恐らく死地に追いやった人達の一組だろうし、
どんな扱いをされるかもわからず、寝首をかかれる可能性もあるし、
向こうだって、人を殺したと噂の陽乃を傍に置いておくなんて怖くて堪らないだろう。
歌野は、陽乃の過去を知っているからか、顔を顰めて、目を伏せる。
歌野「それは比較にするべきじゃないわ」
249 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/01(日) 23:17:01.67 ID:qcQmb2HRo
歌野「とにかく、陽乃さんが行かないなら私も待機しておくわ」
歌野がいないと陽乃の回復が遅れるし、
今の歌野の身体では無理をすれば本当に死にかけない。
それも普通に死ぬのではなく力の使い過ぎによる崩壊という形でだ。
考え過ぎだろうが、
もしかしたら樹海の一部にだってなり得る。そんな状態にある。
歌野「郡さんに殺されるかはともかく、ね。それに、こう言ってはあれだけど陽乃さんと私がいない状態でどこまで戦えるのかを知っておく必要があると思う」
ひなた「私個人としては、あまり好ましくない考えですけど……」
力の温存はスポーツや模擬戦程度であるなら状況によっては問題がないと思うけれど、
命に係わるこれにおいては、出し惜しみして欲しくないとひなたは思ってしまう。
けれど、そうせざるを得ない状況にあるのも事実で、
なにより、
非戦闘員でしかない自分にはそれを強要することなどできないと、ひなたは唇を噛む。
ひなた「若葉ちゃん達なら、きっと……」
陽乃「まぁ死にはしないでしょ。そんな軟ではないし。気になることはあるけど」
250 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/01(日) 23:59:11.47 ID:qcQmb2HRo
千景の精神面の不安定さが、
全員の足を引っ張ることになるのではないかという懸念がある
それを差し引いたとして
若葉、友奈、千景の近接戦闘タイプと中遠距離タイプの球子というバランスの悪さが気になる所だ。
友奈は千景のフォローから離れられないだろうから、
若葉と球子が組むことになるはず。
以前の若葉なら猪突猛進の傾向があって危険だったが、今は、球子のこともよく見てくれるだろう……けれど、
いかんせん、バランスが悪く囲まれやすい。
ある程度の怪我は覚悟しておいた方がよさそうだ。
歌野「……ところで、陽乃さんは戦いに行かないでここで大人しくしていてくれるの?」
陽乃「どういう質問よ。それ」
歌野「お母さんを探しに行くのかと思って」
陽乃「あぁ……」
今なら大社に知られることなく忍び込むことは可能だ。
そうして、ひなたを連れ出した時のように母親を見つけ出し、連れ出す。
言うは易しというもので、かなり難しい話だが。
ひなた「もしそうなら私を連れて行ってください。力になれるはずです」
1、1人で行く
2、ひなたを連れていく
3、行かないわ。そんな状態じゃないもの
4、それより……郡さんの実家を見てみたいわ
↓1
251 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2022/05/02(月) 00:01:27.51 ID:MtxSpnPwO
4
252 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2022/05/02(月) 00:03:11.16 ID:mjJoxnX4O
2
253 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/02(月) 00:06:41.05 ID:t1W7pmU7o
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば少し早い時間から
254 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2022/05/02(月) 00:14:33.34 ID:mjJoxnX4O
乙
お母さんの行方も気になるけど千景の掘り下げが先か
現状だと陽乃さんと仲直りできる気が全然しないけど…
255 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/02(月) 23:03:54.09 ID:yb5i9HVqo
すみませんが本日は、おやすみとさせていただきます
明日は可能であれば少し早い時間から
256 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2022/05/02(月) 23:53:04.02 ID:FO0tlES0O
乙です
257 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/03(火) 23:26:23.52 ID:VisrFJn4O
遅くなりましたが、少しだけ
258 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/03(火) 23:28:44.47 ID:VisrFJn4O
陽乃「それより、郡さんの実家を見てみたいわ」
ひなた「お母様は気にならないのですか?」
陽乃「貴女のことがあったばかりなのに行動できるわけがないじゃない」
ひなた「……そう、ですね」
すみません。と、ひなたは頭を下げる。
現状でもほぼほぼ陽乃の仕業で確定しつつあるのだろうけれど、
まだ、断定はされていない。
それは陽乃とひなたの関係が特別良好と呼べるようなものではなかったこと、
ひなたよりも優先するべき人がいること、
ひなたのことを何よりも第一に考えていて、それをやらかしそうな人が他にいるからだ。
そんな中で、陽乃の母親まで似たような手口で奪われ、影も形も見当たらないとなれば、
その疑いの目は陽乃だけに向けられることになるだろう。
陽乃「それに、実家の件が事実なら私、その恨みで殺されることになるだろうから……嫌じゃない? 知りもしないことで殺されるの」
歌野「殺させないわ」
陽乃「殺されないわよ」
だとしても、そんな納得のいかない理由は遠慮したい。
ひなた「事実を確かめて、千景さんを助けるんですか?」
陽乃「まさか。いずれにしたって知ったことじゃないし、一蹴するのは変わらないわ」
でも、それはそれ。これはこれ。
調べておくことに越したことはない。
259 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/03(火) 23:42:52.83 ID:VisrFJn4O
陽乃「私個人としては、両親が生きているならいいじゃないって言いたくはあるし」
とはいえ、その状況にもよる。
陽乃の両親――今はもう母親だけになってしまったが、
少なくとも、母親は味方だ。
周囲の全てが敵だったあの時だって、両親は味方でいてくれた。
けれどもし、
郡千景はその両親でさえ味方ではないのだとしたら。と、思わないこともない。
その兆候はすでに高嶋友奈や勇者という肩書への執着という形で表に出ていることは陽乃も知っている通りで、
だからこそ懸念される。
人々に被害が出始めている今、
郡千景の支えとして存在していた勇者という肩書は、周囲の目にどう映っているのか。
そのリーダーという役目を担っていた千景への手のひら返しはどれほどのものか。
陽乃「……」
歌野「……良いと思うわ」
歌野は、穏やかに頷く。
歌野「陽乃さんが知りたいなら、行くべきだと思う」
陽乃「その、悟った顔止めて頂戴」
歌野「だって」
何考えているか分かっちゃうんだもの。と、歌野は喉に負担がかからないように笑うと
ひなたへと目を向けて一緒に行ってあげて欲しいと言う。
ひなた「私も、ですか?」
歌野「上里さんは郡さんの実家とか知ってるんでしょ?」
ひなた「あ、はい……一応」
陽乃「あまりお荷物は連れていきたくないのだけど」
260 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/03(火) 23:53:54.27 ID:VisrFJn4O
歌野「そう言ったって、陽乃さん知ってるの?」
陽乃「知らないけど、聞けばいいじゃない」
知ってる上里さんに。と陽乃が目を向けると、ひなたはさっと口を塞ぐ。
言わないから連れて行って欲しいという態度。
大社の施設に向かう場合もそうだが、
ひなたは陽乃の手伝いをしたいと思っているようで、そのチャンスがあるならと積極的だった。
ひなたを庇ったことで左手に酷い傷を負ったからだろうか。
そこで庇わなくてもひなたは死ななかったはずだと言っても、たぶん、態度は変わらない。
陽乃「一緒に来たって、特に何もないと思うけど」
ひなた「私も、自分の目で確かめておきたいんです」
郡千景の家庭環境
人伝手に話を聞いたところで、何が真実かなんてわからない。
だから、自分の目で確かめておきたいのだとひなたは言う。
歌野「ね?」
陽乃「貴女はただ私を見ている人を用意したいだけでしょ」
1、連れていく
2、連れていかない
3、ついでに歌野も
↓1
261 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2022/05/04(水) 00:11:00.54 ID:fZM0/eGwO
1
262 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/04(水) 00:51:41.47 ID:Fb4rA4G4O
陽乃「貴女の真意がどうであれ、その目で見たいと言うのならいいわ。来なさい」
ひなた「ありがとうございます」
陽乃「別に感謝されることじゃないわよ」
車は動いていないし、徒歩でどうにかしなければならないという点で苦労はするだろうが。
ひなたは恐らく、
九尾の加護によって樹海化状態での自由を手に入れているのであって、
陽乃の助力があろうとなかろうと自分で郡千景の実家に向かうことが可能だろう。
陽乃からの許可なんて不要で、感謝する必要もないはずなのにひなたは不思議と嬉しそうだった。
歌野「……私はこんな状態だから留守番してるわ」
陽乃「それが賢明だけど……何? 分からず屋って」
歌野「ごめんなさい。つい」
陽乃に知られると思い出して、内と外を統一した歌野の困った顔をひと睨みした陽乃は、
それでも追及はせずに、九尾の力を借りてベッドから降りる。
陽乃「時間もないだろうからさっさと行くわよ。私から離れないで頂戴」
ひなた「離れると、何かあるんですか?」
九尾が離れることで加護の効果が切れる可能性もあれば、
何らかの事故でひなたが戦場の方に放り込まれることになる可能性もある。
後者の場合、陽乃が一緒にいればひなたのそばにいるだろうから、何があってもその命は守れるはずだ。
歌野「……私も巫女だったら、守って貰えたのかしら」
陽乃「貴女、疲れてるんじゃないの? 寝てなさい」
珍しく心配そうな表情を浮かべる陽乃だったが、
歌野はそんな顔しないでとちょっぴり残念そうに笑いながら「そうするわ」と、枕に頭を落とした。
263 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/04(水) 00:53:52.05 ID:Fb4rA4G4O
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば少し早い時間から
264 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2022/05/04(水) 04:10:48.71 ID:iJ6fV74TO
乙
千景の家庭事情を見て陽乃さんの認識がどう変わってくれるか気になるな
265 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2022/05/04(水) 09:47:59.35 ID:Bc38IeyDO
乙
うたのん嫉妬か? 変な方向に拗れないといいが…
266 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/06(金) 00:00:21.93 ID:EhIJGcrZo
遅くなりましたが、少しだけ
安価は明日。
267 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/06(金) 00:05:23.70 ID:EhIJGcrZo
√ 2018年 10月08日目 朝:高知
陽乃「……ん。止まるわ」
唯一千景の実家を知っているひなたの案内でまっすぐ高知へと向かった陽乃は、
田園地帯が広がる中を進み、止まっているバスの中を改める。
陽乃「運転手と……乗客は学生5人のようね。特に問題なさそうだけど」
千景のいた痕跡もないため、
ここから出て行ったというわけではないようだ。
樹海化している為、存在そのものが痴漢されているはずの乗客達は何も起きていないのが正常だが、
万が一のこともあると考えていた陽乃は一息ついて、抱きかかえているひなたを見下ろす。
陽乃「……吐きそうなら休むけど?」
ひなた「だ、大丈夫です……先を急ぎましょう」
普段使える移動手段が軒並み封じられており、徒歩で移動するくらいいか出来ない。
もちろん、それでは間に合わないからと九尾の力を使っている陽乃がひなたを抱きかかえて全速力で移動してきたのだが……
いささか、一般人には耐えがたいものだったようで顔が青い
陽乃「そう? 吐いたら放り投げるわよ」
ひなた「肝に銘じておきます」
忠告しつつ、最初よりは勢いを落として道なりに進み、
一件の建物の前で足を止めた。
268 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/06(金) 00:20:52.25 ID:EhIJGcrZo
1階建てで、古めかしさを感じるところどころの傷みが良く目立つ建物
周辺には雑草が生い茂っており、
庭らしき場所もあまり手が入れられている様子がない。
陽乃「……人、住んでるの?」
ひなた「は、はい……その、はず、です」
下ろした傍からふらふらと数歩歩いてすぐに蹲って口元を抑えたひなたを横目に、
陽乃は表札を確認する。
【郡】
と、苗字が書かれているので、
同姓がこの村の中にいなければ、ここが実家で間違いないだろう。
そもそも、元巫女の代表として情報を多く持っていたひなたが知っている場所がここだ。
ココでないのなら、もう見つからない。
陽乃「……ふむ」
ひなた「何か、気になることが?」
陽乃「あぁ、人気が無いと言うか……陰惨な空気を感じるのよ。ここを実家とは思いたくない感じ」
ひなた「……言われてみれば」
陽乃「とにかく、中に入るわよ」
ひなた「鍵――」
鍵はあるのか。そう、ひなたが問うまでもなく、陽乃が取っ手に手を懸けた瞬間にガチャリと音がして、たやすく扉が開く。
ひなた「……九尾さんですか?」
陽乃「貴女はそこで待っていても良いのよ」
ひなた「いえ、私も行きます」
269 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/06(金) 00:43:26.52 ID:EhIJGcrZo
中に入ると、酷い生活臭が鼻を突く。
他人の生活感は好めないと言う人も少なくはないが、
これはその領域を逸している
纏められただけのゴミ袋、ほったらかしにされてカビの生えている靴
埃もところどころ溜まっていて、掃除の手も足りていないように見える。
ひなた「……これは」
陽乃「私の家よりは綺麗にしてるのね」
ひなた「久遠さんの家って」
色々と大変な目に遭って、
今は半分以上が喪失し、虫の巣窟となっている久遠家
そこに比べれば、確かにマシではあるのだが。
ひなたは比べられるものではないと眉を潜める。
人が住まずに朽ちていくのと、人がいながら朽ちるのとでは話が変わってくる。
郡家は後者だ。
それが、良くない状況であることを示唆しているのは明白だった。
陽乃「貴女はそこにいてもいいのよ」
ひなた「……いえ」
陽乃「そう……なら、靴はちゃんと脱ぎなさい」
言われ、足元を見たひなたは、
自分の右足があと少しで土足のまま床を踏みそうになっていると気付いて、慌てて靴を脱ぎ、
先に進んでいた陽乃の後を追った。
270 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/06(金) 01:01:54.28 ID:EhIJGcrZo
平屋ではあるものの、2階部分を1階に置いたような広さはなく、
敷地としてはやや手狭に感じられる程度で、玄関に続いている廊下からすぐに居間へとたどり着いた。
やせ細り、色素の抜けた髪、まるで年老いた女性のような風貌で臥せっているのが1人、
その奥の襖を開いて今まさに出てこようとしている男性が1人
男性の視線は一度は女性に向けられたものの、すぐに逸らされた揺らぎが感じられ、
顔は少しばかり顰められているように見える。
陽乃「……郡さんの家族構成って、貴女知ってるの?」
ひなた「……」
陽乃「答えて。上里ひなた」
老婆のような女性。
その傍らに膝をついているひなたに脅迫に近い声色で言うと、
ひなたはゆっくりと頭を下げた。
ひなた「郡千景さん。それとご両親のみです」
陽乃「そう」
ひなた「お母様については、天恐のステージ2と聞いていましたが……」
陽乃「どう見ても、そんな軽くは見えないわね」
祖母にも思える見た目でありながら、千景の母である女性。
それから苦々しく目を背ける父親。
そして、放られた庭やゴミ袋……廊下にも転がっていた空き缶
陽乃「確かに、こんな場所に戻されたって精神衛生上、好転するわけがないわ」
両親が生きているならいいじゃない。と、思う気持ちはまだ残るが、
自力では日常生活もままならない母親と、腐っているような父親とでは、
そう思えない気持ちも理解が出来る。
271 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/06(金) 01:02:19.74 ID:EhIJGcrZo
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
272 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2022/05/06(金) 06:17:30.02 ID:PkiopWCuO
乙
陽乃さんとは別ベクトルで悲惨な環境だな…
どうすれば千景のこと助けられるだろうか
273 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2022/05/06(金) 18:07:56.13 ID:ihDcxAkHO
SS避難所
https://jbbs.shitaraba.net/internet/20196/
274 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/06(金) 23:49:21.65 ID:EhIJGcrZo
遅くなりましたが、少しだけ
275 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/06(金) 23:53:30.87 ID:EhIJGcrZo
ひなた「どうにかならないんでしょうか……」
ひなたはそう呟いて、居間の天井にある電球を嵌めるための枠を見つめる。
そうしてふと、おもむろに陽乃を呼ぶ。
ひなた「久遠さんの力なら天恐をどうにかできるのでは?」
陽乃「はぁ?」
ひなた「藤森さんに行った、忘却です」
陽乃「……」
陽乃は口を閉ざしたが、
陽乃が持つ力であれば間違いなくこの状況は改善できる。
母親であろう女性の天恐は、九尾の力で忘却させることが可能だし、
老いまではどうにもならないかもしれないが、
肉体的な衰え程度なら、今は歌野の力となっている宇迦之御魂大神様の力で回復させられるはず。
かといって、それをしてあげる義理はない。
陽乃と千景の関係は、そうしてあげるようなものではないからだ。
ひなた「久遠さん、してあげることは可能ですか?」
1、可能だけど、嫌よ
2、出来ないわ
3、可能だけど、それが?
4、してあげても良いけど、郡さんの態度次第ね
5、する理由がないわ
↓1
276 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2022/05/06(金) 23:54:09.40 ID:ERZc07pfO
4
277 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/07(土) 00:18:25.01 ID:aeomgeKDo
陽乃「してあげても良いけど、郡さんの態度次第ね」
ひなた「う……」
陽乃「今の状態でやってあげるわけがないじゃない。何のメリットもないし」
陽乃はそう吐き捨てるが、メリットはある。
陽乃が両親を救うことで千景からの印象が変わる……かもしれない。
が、もちろん可能性はものすごく低く、逆に悪化する可能性の方が高い。
天恐はステージが上がれば手の施しようがなくなる。
それは専門の病院に入院したとしてもだ。
それを改善できた? あの久遠陽乃が? 絶対に良からぬことをしたはずだ。と。
正直、ほぼデメリットが強い。
だからと言って、今の状態で千景が態度を改めるとは思えない。
家庭環境を改善できる可能性があると言っても、
千景がそれを信じないだろうし、それを頼ろうともしないだろう。
ひなた「助けることは、可能なんですよね?」
陽乃「出来るかできないかで言えば」
ひなた「っ……」
陽乃「言っておくけど、あなたが悩んだって無意味よ」
278 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/07(土) 00:46:54.73 ID:aeomgeKDo
頭を抱えるひなたに陽乃はさらっと助言してため息をつく。
この家庭環境は改善するべきだ。
特に精神的に余裕がない千景のところだから、
少しでも改善させるには一つでも多くの変化が必要のはず。
そうでなくても、ひなたはこの状況を見過ごせないだろう。
だけれど、
もし仮に陽乃から歩み寄っても、千景はきっと態度を変えてはくれない。
そして、陽乃から歩み寄ることがなければ、千景はずっとこのままで、
むしろ悪くなっていく一方だろう。
だから、無意味。
正直に言ってしまうと、改善する余地がない。
もちろん、千景からのバッシング覚悟で両親をどうにかすることも一つの手ではあるが、
千景と陽乃の関係が良くなることはない。
だからひなたも頭を抱えてしまう。
こじれすぎているのだ。
ひなた「はぁ……」
電気をつけられない居間はカーテンも閉め切られていて、夜と勘違いしそうなほどに暗い。
まるで、郡家を表しているかのように。
ひなた「八方ふさがりです」
陽乃「だから無意味なのよ。この状況……変えたところでって感じだわ」
床に転がるゴミを一瞥し、父親の脇から今の奥の部屋を覗く。
廊下や居間よりももっと生活感溢れるその部屋は、
とてもではないが足を踏み入れたくないような酷いありさまだった。
279 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/07(土) 00:53:53.77 ID:aeomgeKDo
↓1コンマ判定 一桁
0 00 樹海化解除
1〜4 千景の部屋
5〜9 周囲の反応
280 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2022/05/07(土) 00:56:00.95 ID:+wLsjERQO
あ
281 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/07(土) 01:00:10.77 ID:aeomgeKDo
では本日はここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから
282 :
以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします
[sage]:2022/05/07(土) 02:42:43.58 ID:hdOI7oi00
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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283 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2022/05/07(土) 05:11:07.81 ID:Ad4xFS9HO
乙
これは散策継続だろうか?
関係改善の手掛かりが見つけられるといいけど…
284 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/07(土) 17:53:54.91 ID:aeomgeKDo
遅くなりましたが少しずつ
285 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/07(土) 18:15:31.36 ID:aeomgeKDo
ひなた「そろそろ戻った方が良いのでは……?」
陽乃「まだ平気よ」
ひなた「ですが……」
巫女にとっては本来、ほんの一瞬のできごと。
瞬きする間に誰かが傷ついたり、
誰かの命が失われたりするのが、バーテックスの侵攻だ。
しかし、今は九尾の加護によってその一瞬を知覚している為、不安なのだろう。
ここで樹海化が解けたら父親に発見される。
千景の友人としてここにきていることにすれば多少は取り繕えるからどうにかなるとは思うが、
千景本人に知られると面倒だ。
特に、陽乃は。
ひなた「久遠さん?」
その陽乃は、父親の足元にしゃがんで奥の部屋に体の半分を潜り込ませて、
何をしているのかと様子を窺っていたひなたに向かってくしゃくしゃに丸められた紙を放った。
ひなた「これは……」
陽乃「随分とお優しい激励がたくさん来ているみたいよ」
ひなた「優しい激励ですか……これが」
286 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/07(土) 18:31:41.71 ID:aeomgeKDo
陽乃に投げられた紙を広げたひなたは、
優しい激励とは思えない罵詈雑言に思わず手に力を込めてしまう。
千景や、その両親には辛い言葉だ。
それを平気で書きなぐり、あまつさえ差し出せてしまう人の悪意に心が痛み、
冗談でもそれを優しい激励と言えてしまう陽乃にも、傾く。
軟禁される以前から、陽乃の評判は最悪だった。
3年前から、相当――酷いことになっている。
それは現実的にも、ネット上でも変わらずに、陽乃へと向けられていた。
だから【クズ】と書かれていても【死ね】と書かれていても、
陽乃は特別、何も思わないのだろう。
ひなた「激励ではありませんよ。これは、罵倒というんです」
陽乃「そう? クズがクズと言って、生かされてることも知らないくせに死ねって言ってるなんて、馬鹿みたいじゃない?」
ひなた「どうしてそう、笑えるんですか……」
陽乃「こんなのにいちいち怒ってたらキリがないでしょ。貴女は相手してあげるの? 説明会とかしてあげるの?」
私だったら。と、
陽乃はにこやかに笑って他の紙を開いてひなたへと見せる。
陽乃「ツアーに引き摺り出して役立って貰うわね。役立たずって言えるほど、自分が有益だって思っている人もいるみたいだから」
実際、餌には使えそうだなんて陽乃は呟く。
ひなた「怖いこと言わないでください」
287 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/07(土) 19:11:53.01 ID:aeomgeKDo
陽乃「逃げる餌に喰いついてくれれば、勇者が安全に対処できるのよ? 怪我が減るわ」
ひなた「本当にやらないでくださいね? 大変なことになってしまいますから」
陽乃「分かってるわよ」
千景はともかく、
若葉や友奈、杏も球子も、歌野だって
みんなそれを認めないだろうから、確実に悪手だ。
陽乃「それはそれとして、これを真に受けるような素直な子は辛いでしょうね」
ひなた「……千景さんの前で絶対に言わないでくださいね」
煽ってるのかとか、喧嘩売っているのか、言い合いになること間違いなしだとひなたは不安そうだが、
陽乃は素知らぬ顔で「はいはい」と手を振る。
陽乃「素直な可愛い子をこっから引っ張り出すか、周りをどうにかしないとそれこそ面倒なことになるわよ」
ひなた「そうですね……」
陽乃「大社に状況を知らせたところで、まともに改善されるかしら」
ひなた「周囲の嫌がらせ……を、止めることは大社にもリスクがあるので、おそらくは郡家そのものを引越しさせるという手段を取るかと」
陽乃「あくまでこの両親と一緒にいさせる気?」
ひなた「彼らは大人ですから。子は親と、親は子と。その方が良いと思うのでは?」
陽乃「ふむ……」
本来なら、そうだろう。
けれど、精神的に摩耗しているような両親と千景が一緒にいて意味はあるのだろうか。
1、もう少し散策を続ける
2、そろそろ戻る
3、他の家の様子を見に行く
4、まぁ、郡さんを高嶋さん達と一緒にいさせれば良いだけなんだけど
↓2
288 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2022/05/07(土) 19:16:12.96 ID:aisY0LVd0
2
289 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2022/05/07(土) 19:16:54.76 ID:dP9IRpgzO
3
290 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/07(土) 20:42:06.95 ID:aeomgeKDo
陽乃「ひとまず、他のところも見てみましょ」
ひなた「他……って、置いていかないでくださいっ」
考える暇も与えてくれずに先に行ってしまう陽乃を慌てて追いかける。
別室ではなく、
郡家を出て道なりに歩いている陽乃の少し後ろを、ひなたは歩く。
ひなた「久遠さんどちらに……」
陽乃「郡さんの状況はある程度分かったから、他を見てみたいのよ」
ひなた「なるほど……侵攻によって被害が出ているご家庭もあるかもしれませんね」
陽乃「だからってどうするわけでもないわよ」
ひなたは何か期待しているのかもしれないが、
その家に対して何らかの施しを与えるわけではない。
死者をよみがえらせる――ことも、もしかしたら不可能ではないかもしれないけれど、
出来たとして、代償は相応のものだから魂が持っていかれることもあり得るし、
今は対話を出来る状況でもない。
あくまで、様子を見るだけだ。
陽乃「諏訪とは違って随分と余裕があるはずなのにね」
ひなた「……そうなんですか?」
陽乃「あっちは、もう限界が近かったわ。限界が近いからこそ、団結するしかなかったのかもしれないけど」
あるいは、勇者である白鳥歌野と、巫女の藤森水都の人徳がなせる業か。
291 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/07(土) 22:57:13.99 ID:aeomgeKDo
陽乃「……ふむ」
千景と違って二階建ての住居で、庭もしっかりと手入れされている家
千景と同じ平屋だが、それなりに広い敷地を持つ家
いくつかの住居に勝手にお邪魔して回った陽乃は、目を細める
ひなた「何か気になることでも?」
陽乃「随分と、平和だと思って」
ひなた「平和?」
陽乃「だって、平時と変わらない状態を維持していたでしょう」
廊下に空き缶が落ちていたり、ゴミ袋が溜まっていたりはせず、
玄関自体も綺麗に整えられていた。
室内や住民にしても、まるで侵攻なんて行われていないかのような状態だった。
もちろん、それが悪いとは言わない。
平穏を保つために、何か別のことに注力するのはおかしくないからだ。
けれど。
陽乃「侵攻が行われていて、その影響で誰かが傷ついていて、失われていて。それが恐ろしくて悲しいから郡さんの家にはあんなものがあったはずなのにね」
まるで、そんな恐怖も悲しみもないくらいに、周囲は平和に思える。
陽乃「結局は、自分には関係のないことだから荒んでいない。たった一つ鬱憤を放り投げればそれで気が晴れるのよ」
身内が亡くなったり、大切な何かが失われて
それが穏やかなものではなく、理不尽であったなら、平静でいられるものか。
生前のままを当たり前のように生きていけるものか。
陽乃「勝手に期待して、勝手に手のひら返して、みんな――」
ひなた「久遠さんっ」
292 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/07(土) 23:43:38.89 ID:aeomgeKDo
それ以上は駄目ですと、ひなたに手を引っ張られて陽乃は言葉を止める。
言ったところでどうにもならない――とは思えない。
陽乃が何かするわけではないし、
神様はいるけれどそれを叶えはしないだろう。
しかし、間違いなく行動に移してしまう存在がいる。
ひなた「久遠さんは、千景さんの為にも怒るんですね」
陽乃「まさか」
嘲笑するように笑った陽乃は、ひなたを見つめる。
陽乃「あの子を刺激されると私達が困るじゃない。殺されかけたの忘れさせたかしら」
ひなた「忘れるわけありませんよ……たとえ、そうされていたとしても」
ひなたは殺されかけただけで、傷1つ負わなかった。
その代わりに陽乃が深手を負って、
ただでさえ忘れられない出来事が絶対に忘れてはならないものになったのだから。
ひなた「ですが、久遠さんも千景さんも通じるものがありますから……」
陽乃「だからってあんな子のために怒ってあげる義理はないわ」
ひなた「そうですか……」
293 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/08(日) 00:21:41.78 ID:x8kzl1ISo
歌野がいたら何か茶化しの1つでも入れられるのだろうか。なんて、
ひなたは掴んだままの手を握る。
当然のように握り返されたりはしないものの、
煩わしいと振り払われることもなく、
少しは距離も縮まったのかとひなたは陽乃の様子を窺って。
ひなた「久遠さん……その、差し出がましいことだとは思いますが、一つだけ」
陽乃「それを言ったってどうにもならないことだって、理解はしているのね?」
ひなた「……」
陽乃を見るひなたの一方で、陽乃はひなたのことを全く見ていない。
しかし、その動きを見ているかのようにふっと息を吐く。
ひなた「可能な限り、千景さんを気遣って頂けないでしょうか」
千景は現状、どうしようもない。
内も外も完全に取りつく島がない状態で、殺意さえある。
それと比べれば、
言葉はきついが内心では突っ撥ね切れていないのが垣間見えている陽乃の方がまだ、
話が通じるし、冷静に対処してくれる。はず……と、ひなたは申し出る。
ひなた「どちらも反発し合うか、片方だけでも歩み寄る姿勢を取れるかで全く違ってくると思うので……」
1、それで貴女が殺されるとしても私は責任取らないわよ
2、無理に決まってるでしょ
3、今でも十分気遣ってあげてるじゃない
4、で? それをして私に何か利益があるの?
↓1
294 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2022/05/08(日) 00:22:47.07 ID:9WNdMi/l0
1
295 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/08(日) 00:24:32.04 ID:x8kzl1ISo
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であればお昼ごろから
296 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2022/05/08(日) 00:33:50.27 ID:XKOqrpwtO
乙
今の千景だと陽乃さんを巡って周りも傷つけかねないし何とかならないもんかなぁ
297 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/08(日) 16:46:11.30 ID:x8kzl1ISo
では少しずつ
298 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/08(日) 16:56:35.43 ID:x8kzl1ISo
陽乃「それで貴女が殺されるとしても私は責任取らないわよ」
ひなた「……お願いしなければ、責任取ってくれるんですか?」
陽乃「貴女は私のそばを離れられないから、手を抜かなくていいのならある程度の責任は持ってあげるわよ」
全部ではないにしても、
ひなたがここまで立場的に追い込まれているのは陽乃の存在が大きく影響している。
大社がもう少し考えてくれるなら。とは思うけれど、期待する気のない陽乃としては、目の前にあるものが全てだ。
大社の施設に置いておくと言う選択肢もあった中で、
陽乃は、ひなたを連れ出すことにしたのだから、その分の責任はある。
授かっている能力的には千景の方が下であっても、
千景だって勇者なのだから、手を抜くようなことをしても他人の身の安全を保障できるとは思えない。
ひなた「でしたら、お願いします」
ひなたは自分の胸元に手を当てながら一礼するように言う。
ひなた「千景さんをどうかよろしくお願いします」
陽乃「殺されるわよ」
ひなた「……はい」
陽乃のそれはただの脅迫には収まらない。
実際にひなたは殺されそうになったし、
陽乃がそこにいなければ、本当に殺されてしまっていた。
ただの巫女である自分が出しゃばった結果とはいえ、だ。
299 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/08(日) 17:15:09.65 ID:x8kzl1ISo
あの頃の千景は本気だった。
まるで容赦なく、確実に殺そうとして来ていた。
それがより悪化しているであろう今の千景は、些細なことでも見逃さないはず。
ひなたは陽乃の左手を見る。
九尾の力で補われているとはいえ、まだ包帯のまかれているその手は、
中指の辺りから縦に切り裂かれた痕がまだ痛々しく残っている。
ひなたを庇わなければ怪我をせずに対処できただろうし、
そもそも、ひなたが千景に向かわなければあんなことは起こらなかったかもしれない。
ひなた「もしもそれで命を落とすことになっても、それは私の選択の結果ですから」
陽乃「ふぅん……」
ひなた「不満。ですか?」
陽乃「だったら遺書でも書くか、事前に周囲に伝えておいて頂戴。全責任は自分にありますって」
ひなた「準備しておきます」
陽乃「……馬鹿じゃないの」
ひなた「え――きゃっ!?」
陽乃は一瞬だけ、ひなたを見つめて顔を顰めると、
捕まれていた手を引いてひなたを躓かせ、その勢いのまま抱きかかえる。
ひなた「久遠さん……?」
気に入らないのかと問いかける視線を陽乃は無視して、歩き出す。
ひなたが遺書を書こうが事前に言いふらしていようが、
陽乃がそうさせたのではないだろうか。などと疑われるのが関の山だ。
陽乃はそうできてしまいかねない力があり、それを大社も千景も知っている。
ひなたを大切に想う若葉は陽乃寄りだが、精霊の影響を受けてまで正常な考えで居られるだろうか。
陽乃「この村は居心地が悪いわ」
300 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/08(日) 17:26:10.13 ID:x8kzl1ISo
↓1コンマ判定 一桁
1,3,6,7,9 樹海化解除
4 九尾
301 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2022/05/08(日) 17:28:17.94 ID:1u/bCw6KO
あ
302 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/08(日) 18:05:56.39 ID:x8kzl1ISo
九尾「主様」
千景の実家がある高知の村に広がる田園地帯
合間を縫って歩いていた陽乃のすぐそばに、大きな狐が姿を現した。
金色の毛並みと赤い瞳を持つ、陽乃の精霊、九尾
ずっと大人しくしていた九尾が姿を現したことに陽乃は少し警戒して目を細める
陽乃「……何かあった?」
九尾「主様、戦闘に介入する気はあるかや?」
陽乃「苦戦でもしてるの?」
ひなた「若葉ちゃんに何かあったんですか?」
九尾「乃木若葉に限らぬぞ」
九尾は陽乃ではなくひなたに目を向けながら口を開く。
九尾「郡千景の視野が狭い。死人は出ぬとは思うが、無意味な怪我人が出るやもしれぬ」
ひなた「友奈さんは……」
九尾「その高嶋友奈がまっさきに重傷を負うぞ」
死人は出ないとは思う。
九尾はそう言ったが、それはあくまで今は。というだけだろう。
重症を負えば死ぬ可能性が高くなる。
なにより、友奈は病み上がりで本調子に比べて衰えているだろうから、千景をカバーしきれるとは思えない。
303 :
◆QhFDI08WfRWv
[saga]:2022/05/08(日) 19:02:11.52 ID:x8kzl1ISo
陽乃「だから私に出て行けと? 死ぬわよ私」
九尾「ちょうどよいではないか。その娘を使えばよい」
ひなた「私に出来ることがあるなら――」
陽乃「貴女は黙ってて」
ひなた「っ」
ひなたの口を塞いで、九尾に目を向ける。
九尾の使えは道具としてだ。
人として協力し合うのではなく、使い捨ててしまえばいいと言う程度の認識。
それはお気に入り登録されているひなたと言え例外ではない。
陽乃「上里さんを無駄に使い潰すの? 郡さんのために?」
九尾「主様が日頃から望んでいることではないか。勇者を生かせば主様の労が減ると。であれば巫女を使うことに躊躇いは不要であろう」
陽乃「上里さんは乃木さんのために使う予定でしょ」
九尾「乃木若葉の負担を減らすより、主様が死なぬようにする方が有益であろう」
ひなた「むぅ……むぐっ……」
戦闘に手を貸さない場合、
最悪友奈が死ぬか重傷を負うことになるが、戦闘自体は終わるはず。
かといって戦闘に出て行ったら本当に死にかける。
歌野のおかげで多少は改善されたため、使いしすぎなければ死にはしないはずだが。
1、上里さんは使わないわ
2、高嶋さんが傷つく方が、あの子にはいい薬になりそうね
3、行くだけ行くわ。死なれたら困るもの
4、上里さんはどうするのよ。巻き込まれるわ
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