【安価でのわゆ】久遠陽乃は勇者である【7頁目】

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634 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/24(土) 00:24:05.19 ID:wLja98K10

では本日はここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから
635 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/24(土) 00:27:49.14 ID:GAhgvy5uO

そういえば安芸先輩の場合は杏とタマの二人分あるけど大丈夫なんだろうか
636 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/09/24(土) 02:44:04.72 ID:VsrGL3oh0
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637 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/24(土) 17:04:07.08 ID:wLja98K10
遅くなりましたが、少しずつ
638 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/24(土) 17:15:28.12 ID:wLja98K10

陽乃「ある程度なら、白鳥さん達でどうにかできるわ」

球子「そりゃそうだろうけど、それだけじゃ危ないからってこういう話になったんじゃないのか?」

陽乃「だからと言って無理強いさせる気はないってだけよ。そんなことしたところで犬死するだけだもの」

球子「そうは言ったって、危ないんだろ?」

陽乃「どっちも変わらないわ」

杏や球子、そして安芸真鈴という巫女が侵す危険も、歌野と水都が侵す危険もどちらも命にかかわることであり、ちょっとしたことで死に至るものだ。

であるならば、無理強いしてそのリスクを高めるよりも、それを覚悟のうえで合意し、踏み込んでいってくれる方が圧倒的にマシになる。

両者の感覚にも左右されることならば、なおのこと。

陽乃「生半可な覚悟で来られたって意味がないのよ」

杏「それは承知しています」

陽乃「貴女達はいいわ。どうせそもそも死ぬ覚悟があるんだから」

球子「そんなわけないだろ。出来るなら死にたくないに決まってる」

だけど。と、球子は続ける。

球子「いつかはそうかもしれないって、思わずにはいられない。だから、少しでも希望がある方に懸けたいって思う」
639 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/24(土) 17:17:46.07 ID:rBU0bQaXO
来てたか
640 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/24(土) 17:53:19.61 ID:wLja98K10

杏「私達は覚悟できています……タマっち先輩が言うように、出来る限り避けたいとは思っていても、現状、それが難しいことは分かっていますから」

以前は陽乃を含めても6人しかいなかった勇者が6人になった。
それも、本来なら失われていてもおかしくなかった諏訪の勇者が加わってくれたのだから、
士気は高まる……はずだった。

けれど、諏訪から勇者と生存者を連れ帰ってくるという功績に四国のリーダーとしての役目を与えられていた千景は嫉妬して歌野に厳しく接し、
それに加えて、完成型のバーテックスの出現による被害や、陽乃の件、家庭の事情など
不幸が重なって勇者達はボロボロになってしまったし、千景は反旗を翻してどこかへと行方をくらませてしまった。

安易な希望なんてものは抱くべきではないと、まさに、現実が知らしめていた。

杏「真鈴さんに関しては、水都さんに確認を取って貰ってからです。もし、真鈴さんが怖がったり、難しいと思っていたりするなら、諦めるしかないとも思っています」

杏はそう言いつつも、少しだけ不安そうな表情を見せる。
断られてしまう可能性が高く、今後に不安を覚えているのだろうか。
それとも、その真逆で、安芸真鈴が勇んで踏み込もうとしてくるだろう。と、思っているからだろうか。
641 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/24(土) 18:57:06.38 ID:wLja98K10

杏が言うように、巫女の意思次第なのは事実だ。
陽乃達だけであれこれと語っていても、結局のところ巫女である安芸真鈴が受け入れてくれなければやるだけ無駄、語るだけ無駄な話でしかない。

陽乃「まぁ、そうね。その巫女次第だわ」

ひなた「……何か、気になることでも?」

陽乃「?」

後に控えていたひなたには表情も見えていないはずなのに、
なぜだか、気がかりなことがあると確信しているかのような声色で、ひなたは訊ねてくる。

振り向けばひなたがいて、その表情はいつもと何ら変わりがない。
陽乃は、もしかしたら九尾が化けているのかもしれないと今更ながら目を細めたが、
ひなたは困ったように「陽乃さん?」と呟くくらいだった。

陽乃「気になることと言うほどでもないのだけど」

安芸真鈴が承諾しなければ無駄になる話だ。
今する必要もないことだが、おそらく、安芸真鈴には2人分を補えるほどの地力はない。
杏か球子どちらかを支えるので精いっぱいだろうし、もしもその限界を超えたいというのなら、
それはやはり、ひなたや水都のように陽乃との関わり合いが必要になってくるだろう。

もちろん、それでも一般の巫女であろう安芸真鈴には耐えがたい苦痛を伴う可能性はあるのだが。


1、伊予島さんと土居さん。どっちが助けて貰うつもりなの?
2、何もないわ
3、貴女、本当に上里さんなの?
4、郡さんの件よ。アレ、どうするのか考えてる?


↓2
642 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/24(土) 18:58:59.64 ID:+ld8oaNAO
1
643 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/24(土) 19:02:11.66 ID:Dxk7166oO
1
644 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/24(土) 19:39:52.02 ID:wLja98K10
陽乃「伊予島さんと土居さん。どっちが助けて貰うつもりなの?」

陽乃がそう問いかけると、杏と球子は揃って互いの名前を口にする。
分かってはいたことだが、球子は杏を救いたいと考えているし、
杏は球子を救いたいと考えている。
そうして恐らくだが安芸真鈴が承諾した場合、彼女は2人を助けたいと思っているだろう。

けれど、それは不可能だろうからどちらかに決めなければならない。
しかし、2人は互いを救いたいと言う。

陽乃「言っておくけれど、不可能よ」

球子「そりゃわかってるさ……ひなたも無理なんだろ?」

ひなた「私の場合、陽乃さんと若葉ちゃんだったので」

得心がいったかのように声を漏らす球子を一瞥した杏は、小さく笑って「重いですから」と呟く。
症状が重いのは間違いないと陽乃は思って。

陽乃「私は別に頼んでないし、断ったわよ」

球子「まぁだろうな。水都もおんなじ……というか、歌野の場合若葉以上だもんなぁ」

ひなた「そうですね……」
645 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/24(土) 20:22:47.38 ID:wLja98K10

陽乃「それで?」

球子「そう言われてもなぁ、あんず〜」

杏「タマっち先輩の方が前に出て行くんだから、タマっち先輩の方が良いと思う」

球子「いやいや、タマは丈夫だからな。全然へっちゃらだぞ」

杏「ただ我慢強いだけのくせに……」

なにおう。と、憤慨する球子と、本当のことだって言い返す杏。
2人からかやの外に追いやられた陽乃は、それを疎まし気に見つめてため息をつく。

ひなた「互いを思うが故、ですよ」

陽乃「そんなことは分かってるわよ。それとこれとは別の話だわ」

互いをどれだけ思いやっていようが、それが結局は足かせになる。
今はそういう状況なのだ。

ひなた「……陽乃さんは、どちらにすべきか考えはあるんですか?」

陽乃「私は別にどっちだって構いわしないわ」
646 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/24(土) 21:26:44.18 ID:wLja98K10

杏は遠距離タイプの戦闘スタイルで、球子も似たようなものではあるが、中距離の戦闘スタイルだ。
しかも球子に至ってはどんどんと前に出て行こうとする。

その為、杏が懸念するのも理解はできる。

――が、ひなたが聞きたいのはそうではないだろう。

陽乃はどっちもどっちな言い合いを繰り広げる2人から目を逸らすように目を瞑る。
どちらの方がより、優先されるべきか。
陽乃としては、何度も言うようにどっちだって構わない。
背中を預けて戦うわけではないし、どちらとも戦い方が違うからだ。

とはいえ。

見ていても仕方がない2人ではなく、ひなたの方に首を傾けると、ひなたは心配そうな表情を浮かべていた。
あのまま2人と安芸真鈴がすれ違っていたら上手くいくものもいかないだろう。
最悪の場合、死に至ることもあるため、ひなたは案じているのかもしれない。



1、伊予島さんね
2、土居さんだわ
3、貴女が仲裁に入ってあげたら?
4、2人の問題よ。私達が首を突っ込むことじゃないわ

↓2
647 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/24(土) 21:29:12.48 ID:eSMO9ZbJ0
2
648 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/24(土) 21:31:37.08 ID:i7SuBCz4O
2
649 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/24(土) 22:02:41.20 ID:wLja98K10
陽乃「個人的に……で、良いならだけど」

陽乃はあんまり言いたくはないと思わせるような前置きをしながら、杏達の方に目を向ける。

陽乃「どちらかと言えば土居さんだわ」

ひなた「それは、守ってくれ――」

陽乃「違うわ」

聞かれるだろうと思っていた陽乃は、ひなたに言い終わらせることなく否定する。
球子の武器は確かに楯だが、別に、それに守られたいとも、守ってくれそうだとも思っていない。

思っていようといまいと、ある程度庇ってくれようとするだろうとは思うけれど、それは関係がない。

陽乃「伊予島さんと一緒よ。土居さんは躊躇なく力を使うわ。白鳥さんと同じくらいに」

それがどれだけ傷つくことか言って聞かせたとしても、
使わざるを得なかったのだと、球子は堂々と力を使おうとするだろう。

それをしなければ杏達を守れなかったかもしれない。ただその可能性だけで、躊躇をしない。
650 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/24(土) 22:35:56.22 ID:wLja98K10

杏はそもそも球子が少しでも無事でいられるようにと思ってのことだろうけれど、
きっと、球子が精霊の力を安易に使えないように制限したいと考えているだろう。

自分の命だけならば躊躇しないが、それが安芸真鈴の命もかかわってくるとなったら、
球子は本当に必要な時にしか精霊を使えなくなるだろう。
もちろん、その一瞬の躊躇いが命取りになりかねないのがバーテックスとの戦いであるため、
正直に言ってしまえば、デメリットしかないとも言える。

けれど、それはあくまで、人の命を軽んじた場合だ。

陽乃「土居さんが死のうが、伊予島さんが死のうが、私にとっては……」

――どうだっていい。

そう言いかけた陽乃は、口を噤んで飲み込む。
一応は気遣ってあげるとしたのだから、多少は言葉を選んであげるべきだと思って。

陽乃「大して影響がないけれど、まぁ、土居さんはともかく、伊予島さんのご両親には恩もあるから」

そののちに色々とあったものだから、帳消しになったと吐き捨てても構わないとは思うものの、
それはそれ、これはこれだ。

陽乃「だから、伊予島さんの味方をしてあげるのよ」
651 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/24(土) 23:15:24.92 ID:wLja98K10

球子はどうしても杏を優先させたいと言った様子だが、
杏だけでなく陽乃からも言われれば、さすがに大人しくなって――

球子「……なんだよ。狡いじゃないか!」

大人しくはならなかったが、何が何でも杏が庇護下に入るべきだと、強気で来ることはなかった。

球子ももう少し力の使い方を考えるべきだと
使うべきタイミングを見極められるようになるべきだと、
そう言われれば、そうかもしれない。なんて、球子は居住まいが悪そうに目を背ける。

陽乃「貴女の代わりがいるならともかく、いないのよ。分かるでしょ」

球子「それは陽乃だってそうだろ」

陽乃「私は代わり以前に私自身が存在していてはいけないのよ。だからと言って死ぬ気はことさらないけれど、でも、私が死んだところでこの世界に悪い意味で大きな影響はないじゃない」

住民たちは喜ぶだろうし、大社は肩の荷が下りたと安堵するかもしれない。
暴走している千景だって、やっと消えてくれたと正気に戻る可能性さえある。
むしろ、いいことづくめだとも言える。

陽乃「だけど、貴女は違――って、何よその顔」

球子「いや、何にもわかってないんだなと思って」

杏「タマっち先輩、若葉さん、歌野さん、水都さん、ひなたさん……私達に多大な悪影響があることは、理解していただきたいです」

今にも涙を流しそうな面持ちで言う杏に、ひなたは同意して。
そんなこと言われても困ると、陽乃はため息をつく。

陽乃「とにかく、よくよく考えておくことね」

そう言い残し、ひなたと共に病室を後にした。
652 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/24(土) 23:17:16.66 ID:wLja98K10

√ 2018年 10月12日目 夕:病院

↓1コンマ判定 一桁

1 ひなた(継続)
3 若葉
5 水都
9 大社

ぞろ目 特殊
653 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/24(土) 23:18:17.56 ID:i7SuBCz4O
654 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/24(土) 23:30:58.38 ID:wLja98K10

では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば少し早い時間から
655 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/24(土) 23:38:10.25 ID:i7SuBCz4O

とりあえずはタマを強化する方針に固まったか
できれば杏も陽乃さんの力を多少借りて強化できたりしたらなお良いんだけども
656 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/25(日) 01:28:54.91 ID:vaqitcab0

出来るかわからんけどむしろ陽乃が巫女代わりに杏のブースターになってちょっと控えていてほしい
戦場に出るたびに死にそうだし
657 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/25(日) 22:58:11.30 ID:tOJm3ttM0
遅くなりましたが、少しだけ
658 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/25(日) 23:00:22.31 ID:BZ8u0XryO
あいよ
659 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/25(日) 23:08:50.21 ID:tOJm3ttM0
√ 2018年 10月12日目 夕:病院


ひなたはいったん、若葉の様子を見てくると言って陽乃のそばを離れた。
そのまま若葉のところにいるわけではなく、夜には戻ってくる予定らしい。

若葉のことが心配ならそのまま傍にいてくれても構わないと陽乃は言ったけれど、
ひなたは「それこそ陽乃さんの傍を離れられなくなりますね」と、笑みを浮かべただけだった。

ひなたと若葉の契りが済んだのなら、
その繋がりを通して、若葉の状態はある程度感じ取ることが出来るはずだ。

歌野と水都、陽乃と歌野……そこまでは深くないにしても、ある程度は。
だからこそ、ひなたは若葉の様子はそれなりで、また戻ってくるつもりなのだろう。と、陽乃はため息をつく。

動けるようになったと言っても、人並だ。
人並と言っても、幼い子供くらいのもので、元気よくと言うわけにはいかない。

――だとすれば、幼い子供と言うよりはご老人だろうか。

陽乃「はぁ」

陽乃はまだ夕方にも関わらず、疲れ切ったようにベッドに横になった。
660 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/25(日) 23:21:32.40 ID:tOJm3ttM0

考えるべきことが山済みだ。
千景のこと、歌野のこと、バーテックスのこと、母親のこと、大社のこと……諏訪のこと。

陽乃の回復力が普段に比べて衰え、疲労がたまりやすい要因の一つが諏訪の件だ。
諏訪から脱出する際に、自分たちは足手まといになるだろうからと、
自らその場に残ることを決めた人々がいた。

皆が名残惜しみ、けれど、致し方がなく捨てるしかなかったその多くの命を、陽乃は今もなお、守護している。
九尾はくだらないと言い、切り捨てるべきだとも言っていたが、
遠ければ遠いほど消耗の激しい力を惜しみなく使い、まだ、諏訪を存続させている。

陽乃「……」

そうして、一番の悩みの種はやはり、千景の件だろう。
彼女がどこかへと消えたおかげで、警戒を解くことが不可能になった。
正直、九尾に全部任せてしまえばどうとでもなるものの、
そうした場合、千景が本当に消息不明になる。
最悪の場合、彼女がいたことさえもこの世から消え去ることになりかねない。
あるいは、その存在を九尾が乗っ取るかもしれない。

とにかく、いい結果が得られないのは確実だった。



1、九尾を呼ぶ
2、少し休む
3、イベント判定

↓1
661 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/25(日) 23:29:52.79 ID:BZ8u0XryO
2
662 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/25(日) 23:56:06.42 ID:tOJm3ttM0

考えるべきことはたくさんある。
……沢山あるものの、今考えてもどうしようもないものばかりだ。

歌野と水都は聞きわけがないし、千景は消息不明、
バーテックスは向こうの出方次第で、母親に関しては大社の施設のどこか。
諏訪の件は現状、今のスタンスを変えるつもりはない。

そうして、陽乃は手持ち無沙汰だと無理矢理に切り替えて重い瞼を閉じる。
けれど休まるのは身体ばかりで、精神的にはさほど良くはならない。

心地よく眠ることが出来たのも、
良い夢が見られたと感じられたのも、
全ては世界が変わってしまう以前の話で、それ以降、陽乃は休まった覚えがなかった。

けれど、四六時中起きているというわけにもいかず、眠るしかなくて。

人の気配のない、病室。
けれど、どこかでは誰かの足音が響き、院内の放送らしきものが聞こえる。

それがもう少しだけ気を惹いて、寝かせずにいてくれるのかもしれないと思いながら、
陽乃は少しずつ、眠りに落ちていく。
663 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/26(月) 00:02:49.47 ID:NbB7prH60
↓1コンマ判定 一桁

0 ひなた
2 水都
5 大社
7 九尾

それ以外、なし。
664 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/26(月) 00:03:42.36 ID:/I/jRpANO
665 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/26(月) 00:08:20.04 ID:NbB7prH60
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
666 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/26(月) 00:14:34.96 ID:/I/jRpANO

束の間の休息で出来るだけ体の調子を回復させたいところだな
667 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/26(月) 06:50:41.55 ID:LSHvMtXAO
668 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/26(月) 23:10:03.23 ID:NbB7prH60
すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から
669 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/26(月) 23:11:44.91 ID:VgWgDpazO
乙ですー
670 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/27(火) 21:59:57.69 ID:G2mzXDds0
では少しだけ
671 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/27(火) 22:01:10.52 ID:G2mzXDds0

√ 2018年 10月12日目 夜:病院

↓1コンマ判定 一桁

2 水都
4 若葉
7 九尾
9 千景


ぞろ目 特殊
672 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/27(火) 22:02:37.49 ID:P6Oao80iO
673 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/27(火) 22:03:49.45 ID:P6Oao80iO
うそーん…
674 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/27(火) 22:14:49.16 ID:LeK9c3b+0
きちゃった?
675 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/27(火) 22:48:20.36 ID:G2mzXDds0
√ 2018年 10月12日目 夜:


以前、久遠陽乃も同じように行方をくらましたことがある。
その時はまだ勇者にも大社にも余裕があって、勇者全員が捜索に駆り出されるほどだった。

久遠陽乃は勇者として秀でているからだ。なんて話もあったし、
それに賛同する勇者もいないわけではなかったけれど、
実際には、ただ、あの女狐の力が未知数だったから勇者で対応せざるを得なかっただけだ。

勇者に与えられた端末の補助なしに勇者としての力を発揮することが出来るところか、
精霊を具現化することさえできてしまうほどの異質な力。
それもゲームにおいては、よくよく強キャラとして扱われる九尾の狐を。

最初から気に入らなかった。
自分には力があるからと、周りを見下しているような態度が不愉快だった。
高嶋さんが一生懸命に気に懸けようとしているのに、
放っておいてと突っ撥ねて、行く姿が、憎たらしかった。

私が勇者になって、誰もが私を敬い、崇め、見上げるようになって、
同じ勇者である高嶋さん達が同等だとしてくれている中で、たった一人、孤高だとでも言うかのような姿が、気に喰わなかった。

そのくせに、勇者としての評価を貶めるような汚点に塗れているというのが、余計に腹立たしくて。
人殺しと言われ、否定もせず、
そうして結局は人殺しとなって逃げだしたと聞いて、どれだけ喜ばしかっただろう。

――なのに。

野垂れ死ぬこともなく、
見捨てられるはずだった諏訪の人間を連れ帰ってくる偉業を達成し、
私が乃木若葉から引き継ぎ、務めを果たし守っていた勇者リーダーという地位を、
その諏訪の勇者である白鳥歌野に明け渡すべきではないかとさえ、大社に言わしめた。

――ずっと、気に入らなかった。
676 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/28(水) 00:10:42.28 ID:7mJHYRNa0

その苛立ちが抑えきれなくて、同じ病院にいた久遠陽乃を殺そうとし、
仕留めることが出来ないどころか返り討ちになった。
悔しいけれど、力は本物で抗いようがないほどに凶悪で。

そのせいで自宅謹慎を言い渡されることになった。
それでも勇者の力を効率よく発揮するための端末を没収されなかったのは僥倖だと思う。
いや、大社が間抜けだったと思う。

もちろん、たった数人の勇者が半壊している状態で権利をはく奪することが難しかったことは理解している。
それでも自宅謹慎だなんて――。

滑稽にも"現実を知らない夢物語"を期待してくれていた大社には、
乾いた笑いさえも出なかった。
疲れ果てた父親、生きているとも死んでいるとも言えない母親。
父親足り得なかった男と、母親足り得なかった女。
どちらもバーテックスの襲撃からは済んでのところで難を逃れたという。

――忌々しくて堪らない。

死んでくれていた方が良かった。
人知れず……いや、私の知らないどこかで、奴らに喰われてしまっていれば、
こんな気持ちになることもなかった。

世界が一転したあの日。
救う価値もない人間を救ったのは、久遠陽乃だった。
称賛を拒むのなら、どうして人助けをしてくれたのかと。

――どうしようもなく、憎かった。
677 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/28(水) 00:38:16.87 ID:7mJHYRNa0

だから、先日の戦闘を終えた後に家には戻らなかった。
戻りたくなかった。
あんな場所にいたって息が詰まるし気分が悪くなるから。

でも、だからってどうしたかったわけじゃない。

どうしたいもこうしたいもなく、
ただただ、彷徨って……そうして、また病院に行きついた。

まるで家であるかのように過ごした病院。
大社によって軟禁されているようなものではあったけれど、自由で、そして高嶋さんがいてくれた場所。

大社に見つかれば連れ戻され、
どこか、今度は家ではないどこかに軟禁、あるいは監禁されると分かっていても、
私の足は進んだ。

疲れ切った心も身体も、
高嶋さんなら……と、思わずにはいられなくて。

――なのに。

なのに、今まで高嶋さんがいた病室はもぬけの殻だった。
退院したわけではないのはすでに見てきた勇者の宿舎で分かっていたし、
集中治療室にいないことも、すでに確認して。
それでも、高嶋さんは見当たらなかった。

千景「……」

ひえびえとしていたものが、ふつふつと再燃していく。
もしかしたら、今度こそ、邪魔な存在を消してしまえるのではないかと。
678 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/28(水) 00:38:42.97 ID:7mJHYRNa0
では短いですがここまでとさせていただきます。
明日も可能であれば通常時間から
679 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/28(水) 00:48:50.83 ID:p7SHY9UmO

千景の独白の闇が陽乃さんとは別の意味で深すぎる…
救われたことでむしろ拗れるとかどうすればいいんだろう?
680 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/28(水) 06:22:37.95 ID:Gz7g8Ns8O

高嶋さんが病院に不在なのもタイミング悪いよな…
681 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/28(水) 23:58:28.62 ID:7mJHYRNa0
すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から
682 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/29(木) 00:00:38.60 ID:ahkOeLKUO
乙です
683 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/09/29(木) 02:39:04.12 ID:VOUA9mK90
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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684 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/29(木) 19:48:46.64 ID:8r/vWR8JO
ここに書き込んでいいかは分からんけどゆゆゆいにて最後の最後に衝撃の事実が判明した模様
くあゆシリーズでもいずれ触れられることになるのだろうか…
685 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/30(金) 12:36:36.46 ID:RnvN3cHPO
昨日も休みだったか

例のアレを見て前作における四年後(卒業から結婚式の間)がどうなってたのかできれば鍛練記録的な短編で見たくなってきたな
686 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/02(日) 00:13:15.95 ID:t9XXuZNhO
またもや休載か…
あんまり長くなるようなら出来るだけ連絡してくれるとありがたいんだけど…
687 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/02(日) 00:45:31.63 ID:HlFZ4HkU0
安価スレって趣味で適当にぶらっと書いて趣味でぶらっと参加するもんだし別にいいんじゃね?
エタりかけたくらいだしあんま圧かけてエタるより展開思いついたときに気楽に書いてほしいわ
688 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/02(日) 22:12:42.27 ID:Dj7FRa1nO
暫くできませんでしたが、少しだけ
689 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/02(日) 22:14:36.92 ID:Dj7FRa1nO

夜の病院の静けさは、深い孤独を感じられる。
煩わしかった日々から解放され、
薄暗く、話声は聞こえず、自分一人の足音だけが遠くへと延びていく。

まるで、ゲームの中に入ったかのようだ。

どちらかと言えばあまり趣味ではないけれど、
ホラーゲームの探索パート……舞台は廃病院とでも言ったところだろうか。
なんて、千景は考えながらゆっくりと奥に向かう。

以前友奈がいた病室に友奈はいなかった。
もしかしたら友奈の病室が変わっているかもしれないと千景は思ったが、
記憶が正しければ、勇者の病室はそうそう変わらない。

というのも症状が悪化した場合を除き、機密性の高い情報である勇者の所在が移るというのは、それなりにリスクがあるからだ。
国民から慕われているが、特別嫌われている者もいる。
中には殺すべきだとさえ言われている勇者だっているのだから。

万が一のことを考慮して、かなりの情報統制が行われており、
それゆえに、勇者の移動範囲は大幅に制限されるし、
病院内だってすべての場所を自由に移動できるかと言うとそういうわけでもない。

だからこそ、ほぼほぼ集中治療室から出られない久遠陽乃の所在は掴みやすい。
必要機材等の条件から移送は容易くなく、そもそも逃走の可能性がある危険人物である以上、その管理は厳しくなる。

千景は病院の中を迷わず歩く。

そうして――。

コツッ……コツッ……コツッ……っと。
足音が聞こえてきて、千景はその影のような容姿を活用して闇に潜む。
足音の聞こえる方角から段々と灯りが伸びてくる。

近付いてきた足音の主は白い衣装を身に纏った人の形をした何か――いや、人間だった。
690 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/02(日) 22:24:16.11 ID:Xf6I+KWeO
来てたか
691 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/02(日) 22:38:27.73 ID:Dj7FRa1nO

白い衣装は病院で良く良く見かける看護婦のもので、見えた灯りは懐中電灯のようだった。
時間も時間のため、巡回をしているだけだろうと、千景はほっと胸を撫でおろす。

ホラーゲームの廃病院とでも考えたからだろうか。
どうしてだか、その姿を見るまで背筋が凍る感覚を覚えてしまったからだ。
勇者として情けない。まるで、底知れない恐怖を味わってこびり付いたトラウマのような悪寒。

その足音は少しずつ、千景の方へ向かってくる。
千景は陽乃とその精霊である九尾と違い、人を化かす力を持ち得ていない。
光を当てられれば姿が露わになってしまう。

息を潜めれば回避できるかもしれない。
そう思って口に手を当てて呼吸を止めた千景のすぐ隣を歩いていく看護師は、千景に目もくれずに歩いていく。
見つからなくてよかったと思う反面、
巡回としてそんな節穴で良いのかと看護師の背中を見送ってから、また陽乃の病室を――。

「――あら」

頭の中に直接響くような声がすぐ真後ろから聞こえ、千景はとっさに飛びのいて壁に背中をぶつける。
その痛みに呻きながらも、どうにか声の主を見上げると、先ほどの看護婦が千景を見下ろしていた。

「消灯時間は過ぎていますよ? えぇと……」

看護婦は千景をまっすぐ見つめて、暗がりの中で思案するようなそぶりを見せて「郡さん」と呟く。

「郡千景さん。ですよね? 病室はこちらではありませんよ」

千景「そう、だったかしら。暗くて迷……」

千景は迷ってしまった。と、安易な嘘をつこうとして言葉を飲み込む。
692 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/02(日) 23:03:21.04 ID:Dj7FRa1nO
何かがおかしい。
勇者がここにいることに驚いていない、入院していることを知っている。

それは何も問題ないけれど、であれば、
千景がここにいることを不思議に思わないわけがない。
自宅謹慎を言い渡され、なおかつ、そこから逃げ出したからだ。

それも、この病院に入院しているはずの久遠陽乃を殺そうとしたために。

なのに、看護婦はまるで動揺していない。
ここにいることをおかしいだなんてこれっぽっちも思っていない。
陽乃を殺そうとしたことは、もしかしたら情報規制され、知らないのかもしれない。

だとしても千景が入院していない以上、病室はここではないというはずがない。
言うなら、そう、面会時間は過ぎていますよ。だろう。

千景は、先ほども感じた不安を覚えて、少し離れたところに見える窓を確認しつつ看護婦を睨む。

「――郡さん?」

看護婦の声は、感情が感じられるのに酷く冷めているようにも感じる。
頭の中に響くと言うべきか、身の毛もよだつというか。

千景「……っ」

千景はぐっっと唇を噛んで、顔を顰めた。
693 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/02(日) 23:07:08.49 ID:Dj7FRa1nO
判定

↓1コンマ

01〜00 ※悪〜良
694 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/02(日) 23:16:10.22 ID:Xf6I+KWeO
695 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/02(日) 23:57:58.24 ID:Dj7FRa1nO

陽乃「っ!?」

どこかで、何かが砕け散る音が響いたように聞こえて、陽乃は跳び起きる。
陽乃のいる病室からは遠くもなく近くもない、そんな感じの距離。

侵入者か、それとも、ただの事故か。侵入者であれば千景の可能性があると陽乃は力を感じ取ろうと目を閉じ、集中する。
繋がりの深い九尾や、歌野と水都、それにひなたのことは集中力が欠けていても感じられるが、
その他は、難しい。

それでも勇者として神樹様とのつながりがあるため、感じ取れないこともなく、
千景だったらどうにか対処法を考えなければならないと思ったからだ。
しかし、千景らしき気配はとても弱弱しく感じられる程度で、本当にそうなのか定かではなかった。

陽乃「……なんなのよ」

勇者の中の誰かが寝ぼけて花瓶でも割ったのだろうか。
だとしたら球子……というのはともかく、精神が若干不安定だったらしい若葉が暴れた可能性もある。
そういえば、ひなたが帰ってきていない。

陽乃「……でも、だとしたら九尾がもっと荒れてるだろうし」

九尾はひなたを守るだろう。
例え若葉であっても容赦なく力を使って捻じ伏せようとするはずだ。
若葉の力なら多少抵抗されるかもしれないが、それでも。

陽乃「……」


1、気のせい
2、九尾を呼ぶ
3、外に出てみる


↓2
696 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/03(月) 00:00:43.05 ID:VqLaIOXtO
3
697 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/03(月) 00:04:21.09 ID:Q8WaMLfxO
3
698 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/03(月) 00:06:14.11 ID:nHefF4CGO

では本日はここまでとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から
699 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/03(月) 00:14:53.68 ID:Q8WaMLfxO

千景が暴走してそうな上にホラー色も強めで怖い展開だな…
九尾のやらかしなら全力で止めないと
700 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/03(月) 07:01:32.99 ID:18Dn36xlO
701 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/03(月) 23:17:51.15 ID:nmfIOkFdo
すみませんが本日はお休みとさせていただきます明日は可能であれば通常時間から
702 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/03(月) 23:23:06.19 ID:PrlDt7PsO
いつも乙ですー
703 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/04(火) 23:50:06.11 ID:rAWP9FFZ0
遅くなりましたが、少しだけ。
恐らく安価まではいきません。
704 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/04(火) 23:51:26.03 ID:rAWP9FFZ0
お化けが怖いからと、布団にくるまって見えない聞こえないとしても、
もし万が一千景だった場合、また殺しに来る可能性がある。
放っておくのが賢いとは思うが、
病室からそれなりの距離ともなるとさすがに気づかなかったふりは出来ない。

陽乃「っ……」

ベッド脇に置かれていた車椅子に手を伸ばし、
どうにかベッドから乗り移って、ゆっくりと動かす。

陽乃に与えられた車椅子は勇者だからなのかかなりしっかりしたもので、
一般の患者に貸し出されるようなものとはまるで違う。
少しの力で動かすことが出来るし、動く音もほとんどしない。

ここまでするなら電動のものにしてくれてもよかったのではと思いつつ、
病室と廊下を隔てる扉に耳を当てて外の音を確認する。

陽乃「……静かね」

陽乃にとっては大きな音だったが、
寝静まった人々の耳には些細な音だったのか、それとも、気のせいだと割り切ってまた眠ったのか。

九尾が何か細工をした可能性を考慮しつつ、陽乃は可能な限り静かにドアを開け、
左右の通路を確認してから、廊下へと出る。
705 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/05(水) 00:56:31.62 ID:gaL4j6Ha0

確かこっちの方から音がしたはず……と。
定かではない感覚の残る頭を振って、千景らしき気配が感じられる方へと向かう。

千景が本当にいるなら危ないところだが、
千景がいるならいるで、何かが砕けた音がしたのは気がかりだ。

人ではなく物に怒りをぶつけた程度なら構わないが、
もしも勇者に出会ったり、大社の関係者に出会ったり
あるいは、ひなたに出くわしたりしていたら……大変なことになっているかもしれない。

陽乃「……まぁ、上里さんではなさそうだけど」

九尾の反応がそこまで荒れていない為、
ひなたに何かがあったわけではないと陽乃は思っているが。

絶対とは言い切れないから。なんて、
一応は身を案じて進むと、どこからともなく、
冷めた空気が勢いよく流れ込んできたのを肌に感じて、目を細める。
706 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/05(水) 01:14:13.30 ID:gaL4j6Ha0
風が吹き込んでくる音がする。
どこかを走る車の音が、はっきりと聞こえる。
窓でも開いているのかとさらに進んでいった陽乃は、
通路の途中にある窓の一部が完全に割れて無くなっていることに気づいて、ゆっくりと近づく。

床に細かい破片が散らばっているのか、
車椅子のタイヤがじゃりじゃりと音をたてたものの、
大きな破片はなく、全て外側に散っていったのだろうと陽乃は割れた窓ガラスを見つめる。

陽乃「……入ってきた。わけじゃなさそうね」

刺々しく割れた窓ガラス
その縁側の辺りから壁、そうして床へと……点々と赤い色が続いていて、
窓から少し離れたところには少量の血だまりのようなものもある。

窓ガラスは外側に割れているけれど、病院の中には争った形跡。
侵入してきたのは大社の人間か、それとも千景か。
あるいは、危害を加えるつもりの一般人か。

少なくとも、悪意があって。
それに気づいた何かが、それを追い払ったのだろう。

――十中八九、九尾だ。

若葉らしくないし、球子や杏も違う。
歌野だって違うだろうし、巫女であるひなたや水都には無理だ。
かといって、大社の人間や病院関係者にも出来ることは限られる。

そう考えれば――いや。
この惨状を見れば、答えはその1つしかなかった。
707 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/05(水) 01:17:39.49 ID:gaL4j6Ha0

では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
708 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/05(水) 01:27:32.23 ID:vL4Knfjw0

せっかく話す機会だと思ったけど下手したら千景ここで退場か
709 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/10/05(水) 02:43:25.25 ID:hRR4jIA60
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710 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/05(水) 06:04:57.67 ID:ogDyGHuIO

不味いことになってきたな…
なんとか千景を助けたいんだけど
711 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/05(水) 23:23:33.18 ID:gaL4j6Ha0
すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から
712 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/05(水) 23:36:33.85 ID:qmmQO+HzO
連絡乙です

どうやら公式に新しい動きがあるそうで改めてくあゆシリーズも一緒に長く続いて欲しいな
713 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/06(木) 23:51:56.44 ID:3wNJfQej0
すみませんが本日もお休みとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から
714 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/06(木) 23:53:05.75 ID:6dcp/CLDO
715 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/09(日) 23:07:41.36 ID:TYxW3c520
遅くなりましたが、少しだけ
716 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/09(日) 23:10:03.14 ID:TYxW3c520

血だまりと言っても少量のため、そこまで傷が深いわけではないだろう。
だが、怪我を負ったことに変わりはない。
本当に千景だという確証はないものの、ほんのりと千景らしい感じが残っているし、
相対したのは誰が何と言おうと確実に九尾だ。

陽乃「……何をやってるのよ」

ひなたに危害が加えられそうになったならともかく、そうでもなさそうな状況での流血沙汰は完全にアウトだ。
もしかしたら陽乃の部屋に向かっているのだと判断してのものだったのかもしれないが。

だとしても、これはやりすぎだと陽乃は思う。
ひなたが殺されかけ、庇った陽乃が左手を負傷したし、その仕返しとしての行為だとしても、千景は勇者だ。
それも、ただでさえ人手が足りない中での無敵とも言える力を使える貴重な勇者。

なにより、今の千景は刺激すればするほど危うくなる。
それが分からない九尾ではないだろうに。

割れた窓に近づき、破片で手を傷つけないようにと気を付けながら外を覗いてみる。
真っ暗で人影は見えず、当然ながら血の匂いが感じ取れるわけもなく、
諦めて身を引くと、足音が近づいてきたのを耳にして動こうとタイヤを掴む。

べちゃりと音がした手を見れば、タイヤの赤い線が手のひらにべったりと付いていて、
逃げてもタイヤの跡を追われて見つかるのは時間の問題だと陽乃は目を細めて――ため息をつく。

陽乃「はぁ……」

逃げたり隠れたりしたって、意味がない。
むしろ疑われるだけだろうとその場に留まっていると、当直らしき看護師が2人、駆け寄ってきた。
717 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/09(日) 23:17:16.59 ID:4bh6yHbIO
来てくれたか
718 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/09(日) 23:57:02.15 ID:TYxW3c520

「これは……っ」

血を見て叫んだり腰を抜かしたりとしないのはさすが医療従事者と言うべきなのだろうか
それとも、バーテックスの襲撃による惨状を経験して、耐性がついたからなのか。

駆け寄ってきた2人は血を踏まないよう跳ねるような足取りで陽乃に近づく。

「お怪我は?」

陽乃「……別に」

「これは、その……久遠様が?」

陽乃「私が出来ると思う?」

車椅子でどうにかと言った状態の陽乃。

陽乃自身が怪我をしているならともなく、
そうではない誰かの血が流れている通路を見てよく聞けたものだと睨むような眼をした陽乃だったが、
突っかかるようなことを言わずに首を振る。

陽乃「私が来た時からこの状態だったわ。貴女達こそ何か見ていないの?」

「いえ、なにも……大きな音がして、急いで戻ってきたので」

陽乃「……大きな音。ね」

陽乃もはっきりと聞こえたため、間違いなく周囲に響き渡っただろう。
響き渡ったはずなのに、すぐ近く病室から人が確認に出てくるようなこともないのは、勇者のための隔離措置が取られているからだろう。

「とにかく、ここにいるのは危険ですから、病室にお連れします」

看護師の1人はそういうと、陽乃の乗る車椅子の持ち手を掴んで、
病室の方へと反転させる。



1、任せる
2、そんなことより、乃木さんの病室にお願い
3、白鳥さんのところにお願い
4、暫くここにいるわ

↓1
719 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/09(日) 23:58:15.68 ID:4bh6yHbIO
2
720 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/10(月) 00:39:09.87 ID:7aqqXd1Y0
陽乃「そんなことより、乃木さんの病室にお願い」

「ですがそれは……」

陽乃「良いから。大事なことなのよ」

若葉のところにはひなたがいる。ひなたがいるなら、九尾もいるだろう。
ひなたが負傷しているなら歌野か水都のところに連れて行く方が良いし、もしもそうではないなら、
九尾に今回の件を問いたださなければならない。

悠長に部屋に戻っておやすみなさいとはしていられない。

陽乃「それとも、私を他の人のところにはいかせるなと?」

陽乃は冗談でも言うかのように訊ねたが、看護師の眉がぴくりと動いたのをみて……察する。
どうしてそのことを。なんて驚きを示す眉の動き。
ほんの少し見開き、すぐに取り繕って、けれど、その返答前の沈黙が答えだった。

陽乃「今は有事でしょ。勇者としてすべきことがあるのよ」

「だめですよ」

「あっ……」

躊躇う看護師の横から割り込んだもう一人の看護師は、陽乃の車椅子の持ち手を変わって、ぐっっと押して歩く。
陽乃が「ちょっと」と声をかけても、その看護師は「駄目です」と取り付く島もない。

陽乃「大事なことなんだって言っているでしょう」

「有事だからこそ、久遠様含め、勇者の方々の安全が最優先です。それこそ、一度襲撃をされている久遠様は特に警戒しなければなりません」

そもそも一人でここまで来ていること自体が問題だという看護師は、
最悪の場合、病室に鍵をかけなければならないようなことをしているんですよ。とまで言う。

「大人しく病室にお戻りください。出ないと、強制させていただくことになります」

陽乃「……もう、強制しているじゃない」

車椅子の主導権を奪い、病室への連行。
これが強制ではないのなら何だというのかと不満げに言う陽乃だが、どうにかするわけにもいかなかった。
721 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/10(月) 00:47:46.13 ID:7aqqXd1Y0

では本日はここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから
722 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/10(月) 00:52:20.14 ID:WtJuojJmO

こういう非常事態にこそみんなと相談したいけどなぁ…
あと九尾も問い詰めないと
723 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/10(月) 07:30:33.37 ID:pglnR+aEO


見返してる時に気付いたけど途中で日数がずれてる気がする
724 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/13(木) 00:11:45.06 ID:fNGsQDcFO
遅い時間のため、安価は後日
725 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/13(木) 00:14:57.04 ID:fNGsQDcFO

「久遠様のご心配は無用ですよ。皆様ご無事であることは確認しております」

陽乃「無事、ねぇ」

「はい」

大丈夫ですよと繰り返す看護師に連れられて、陽乃は自身の病室へと戻り、
看護師がいなくなったのを見送ってから、ひと息つく。

流血沙汰があったし、勇者の誰かが傷ついたのではないか、
あるいは、勇者の誰かがそんなことをしたのか。

それを気にしていると考えてのことの可能性もあるが、
勇者のことを知っているとなると千景の暴挙も知っているだろうし、
すでに確認済みなのかもしれない。

いや、最優先で確認しているだろう。

ひなた「若葉ちゃんのところにも確認しに来られましたよ」

陽乃「まぁ、そうよね……私のところにも来たのかしら」

いつの間に戻ってきたのか、
陽乃の隣で座っているひなたからの一言に、静かに答える。

勇者のことを知っているから千景のことも知っている。
だからこそ、勇者の安否は最優先に確認するようにしていても不思議ではない。

命を狙われたと思われている自分のことも気にかけているのだろうか。と、
それとなく言うと、ひなたはあんまり喜ばしくないと言った様子で。

ひなた「いえ、おそらく監視……防犯カメラで見ていたんだと思います」

陽乃「まぁ、そうよね」

さっきと打って変わって、陽乃は嘲笑するように呟いて鼻で笑う。
726 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/13(木) 00:35:14.03 ID:fNGsQDcFO

九尾の力を使っていれば別だが、
使っていなければ、陽乃の姿は防犯カメラにはっきりと映ってしまう。
それで安否確認とアリバイ確認くらいはしていたはずだ。

とはいえ、看護師は「大きな音がした」と言っていたため、
陽乃を追ってきたわけでもなかった。
連絡用の端末をそれぞれ持っているようだったし、
それで他の看護師、あるいは医師と確認を取ったのだろうか。

陽乃「それで? 貴女はいつ戻ってきたのよ」

ひなた「少し前です。若葉ちゃんのところにお医者様が来て……巡回とは言っていましたけど、少し慌てているようにも見えて……」

だから、何かあったのだろうと急いで戻ってきたのだとひなたは言う。
危機が迫っているという確証はなかったけれど、
その焦り具合からして、少なくともいいことではないとみて、走ったらしい。

ひなた「若葉ちゃんが、いつもの巡回とは違うって言っていましたし……」

そう呟いたひなたは「千景さんですか?」と、心配そうに問う。

陽乃「さぁ? 誰と何があったのかまでは知らないわ」

見たのは少量の血痕。
浅くはないが、致命傷とまでは言っていなさそうな出血量
もちろん、急所に傷を受けていたとしたらその限りではないが。

争ったのは間違いない。
727 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/13(木) 00:51:20.36 ID:fNGsQDcFO

ひなたは、千景が来た可能性を考えている。
若葉と一緒にいたのだから、バーテックスの夜間襲撃ではないことは確信しているだろうし、
看護師に聞こえたなら、ひなたにもあの音が聞こえていたかもしれない。
それでも窓のところではなく陽乃のところへ来たのはなぜだろうか。

陽乃「……音、聞こえたんじゃないの?」

ひなた「何かが砕けるような音ですか?」

ガラス製の何かを勢いよく叩き割ったような大きな音。
若葉とひなたにも聞こえていたようで、
その後に巡回の医師が来て、ひなたは一目散に陽乃の病室に来たらしい。

ひなた「もしかしたら陽乃さんを狙って来たのかと思って……ここに来たのですけど」

肝心の陽乃はいないし車椅子もない。
争った形跡は見当たらないから自分の意思で出て行ったのだろうと、
後を追おうとしたところで、陽乃が看護師に連れて来られたというのが、ひなた側の経緯らしい。

ひなた「陽乃さんが無事で何よりです」

ほっと安堵したように胸を撫でおろすひなたは、
あんまり、無理に出歩かないでください。と、掛布団を少しだけ引き上げて、陽乃の動きを鈍らせる。

ひなた「……大丈夫そうなら、ゆっくり休んでください。心配なら、私が見ていますから」
728 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/13(木) 00:52:06.84 ID:fNGsQDcFO

では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
729 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/13(木) 06:39:03.40 ID:EfYqZ9aLO

千景の安否がますます心配だな…
730 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/15(土) 23:59:00.12 ID:B76IdMlIO
忙しいのか更新回数がすっかり減ってきて寂しい…
731 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/16(日) 23:40:21.69 ID:E/PyZdrB0
遅くなりましたが、少しだけ
732 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/16(日) 23:40:57.55 ID:E/PyZdrB0

陽乃「……子供のように諭そうとするのね」

ひなた「そんなつもりはなかったのですが……」

別に怒りを覚えているわけではない。
ひなたはいつもそのような雰囲気を醸し出しているし、
若葉も特殊ではあるが、球子達と比べれば、一歩引いた視点を持っているようにも見える。

なにより、そんな些細なことで腹を立てるほど、余力がない。
いや、気力がないというのが正しいだろうか。

陽乃「別に構わないわよ。私も貴女も、乃木さん達だってまだ、子供なんだもの」

全員が同じ年齢ではないし、
多少の差はあるけれど、どうしたって、まだ中学生の子供でしかなかった。
そんな少女の集まりが勇者であり、陽乃達だった。

陽乃「もっとも、何を持ってして子供だって定義するかにもよるんだろうけど」

ひなた「……子供で良いじゃないですか」

陽乃「そういう扱いをして貰えるなら、ね」

陽乃が嘲笑を含んで答えると、ひなたは悲し気に目を細める。
年齢だけで言えば子供だが、
今までの経験も人々からの扱いも、抱いている覚悟も。
何もかもが子供のそれではなくて。

陽乃「……だから、貴女も休みなさい。貴女が見張りをしていたって何の役にも立たないんだから」

そう言いながらひなたの頭に触れて、ぐっっと隣に抱き寄せる。


1、貴女は子供であるべきだわ。守られる側の、子供でいるべきなのよ
2、もう休みましょう
3、私が見張っておいてあげるわ

↓1
733 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/16(日) 23:50:27.58 ID:Q6j0VgQGO
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