佐久間まゆ「凛ちゃん聞いてください! まゆ、プロデューサーさんとキスしました!」
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◆E055cIpaPs
2017/10/29(日) 16:01:35.09 ID:T3zoKt8I0
次の日、まゆは読者モデルをやっていた頃に歩いていた道を一人で歩き直していました。
何度も集合場所に使ったステンドグラス前、撮影に使った青葉通りのケヤキの並木道と広瀬通りのイチョウの並木道、モデル仲間と夢を語り合ったオープンカフェ。
なにもかもがあの頃のままで、あの頃と同じように輝きに満ちていて。
誰の目も気にせずに、自分が可愛いと思う服を着て駆け抜けたアーケード通り、雑誌の編集者さんに連れて行ってもらったちょっとだけ高い牛タンのお店、なんとなく人目を避けて噛り付きながら笑いあったハンバーガーショップ。
そんな思い出深い道を一つ一つ踏みしめていくたび、まゆは自分の足どりがどんどん重くなっていくのを感じていました。
少し前に挑戦させて頂いた舞台のお仕事。
その中で、まゆが演じた役の女の子が故郷の街を、昔の思い出に元気付けられながら歩くというシーンがありました。
そんな彼女と同じように故郷の街を歩いている筈なのに、まゆの心はただひたすらに重くなるばかりで。
それはきっと、罪なのでしょう。
楽しいことや未来のことにばかり目を向けて、過去の思い出から目を逸らし続けてきた、まゆの罪なのでしょう。
それはきっと、勢いのままに切り捨ててしまった地元での生活のことや、成長だと思い込んで失ってしまった沢山のことや、自分がアイドルになるためのステップだったということにして目をそらした読書モデル時代のこと。
そんな思い出の一つ一つが、足や肩に絡みついているのを確かに感じるのです。
そうしてまゆの足がもう動かなくなくなってしまった時、目の前にあったのは、全ての始まりだったファッション雑誌のテナントビルと、その会社の前で呆然とこちらを見つめている昔の担当編集者さんでした。
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