松田亜利沙「大好きを繋ぐレスポンス」
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12: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/10/29(日) 23:17:15.80 ID:s1IKgLXf0
 早々と学校に欠席の連絡を入れたまではよかったけど、プロデューサーさんにも伝えなくちゃと思うと、ひどく気が重かった。
 この大事な時期に何もせずに休んでいなきゃいけないなんて、そんなの許されるはずがない。許されるはずがないけど、どうしようもないのだ。

 メールを打ち込む。
 熱を出したからお休みする……それだけのことを伝えれば十分なはずなのに、画面に触れるか触れないかのところで指は完全に止まっていた。

 いつもはどんな口調でメールを送っていたっけ、絵文字はどれくらい?
 悩みながらも書いては消して、一度保存しては書き直して、そんなことをしているうちに時間だけがどんどんと過ぎる。
 結局、明るくふるまったりすることもない、ごくごく普通の文章ができあがっていた。

 意を決してメールを送信して、ベッドに潜り込んで口元まで布団をかけて。
 どこもかしこも苦しかった。寒さなんて感じてないのに震えてしまう。
 じっとしていると、吐かずにいた弱音とか泣き言とかが頭の中を埋めていくものだから、眠れる気がしない。

 頑張ろうって決心したのに、自分なりに努力してきたのに、その結果がこれだった。
 客観的に見ればレッスンの量だって特別多かったわけじゃない。それでもありさは必死だった。報われるって、信じてきたのに。

 でもやっぱり、何よりもつらいのはあんなに楽しみだったアイドルちゃんとしての活動を、今は気が重いとさえ感じてしまうことだった。
 アイドルちゃんはキラキラしてて、楽しげで……それなのに、ありさは今、楽しめてないよ。
 プロデューサーさんにも、劇場のみんなにも大丈夫、頑張るって空元気を返して、その言葉の通りにやってきたけど、もう疲れてしまった。

 何がいけないのかな。運動がニガテで、歌だって特別上手じゃないから?
 ううん、アイドルちゃんって、そういうものじゃない。そう信じたい。
 だとしたら、ありさは結局アイドルちゃんのファンにしかなれない、自分がアイドルちゃんになるのは向いてない子だったのかな。そうだとしたら、悲しいな。

 アイドルちゃんって、なんだったっけ。
 すぐに、答えられたはずなのに。答えを疑うことなんて、しなかったはずなのに。

 そういえば、最近はありさメモを書けてない。
 ライブのたびに、新曲のたびに、果てはラジオ一つ聞いただけで色んなことを書いていたノートは、鞄の奥底に埋まったままだ。
 劇場に入ってすぐのころなんて、箸が転んでもそれを書き連ねていたような気がする。
 あの時は確かに湧き上がっていた言葉と熱量は、どこへいっちゃったんだろう。



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