7:名無しNIPPER[saga]
2018/02/13(火) 18:40:56.51 ID:K48b6BSl0
「私が体調を崩した時にさ」
「うん?」
「Pさん、お見舞いに来てくれたよね」
「そうだな」
「あの時、私は化粧をしてなくて、すっぴんだったけど……Pさん、なんて言ったっけ」
「ちゃんと覚えてないけど、加蓮がどういう顔をしていたのかは覚えてる。化粧をしなくてもいつもと同じくらいかわいかった、って」
「それ」
「それ?」
「デリカシー、ないよね」
「えっ」
彼が驚いたような声を出す。褒め言葉のつもりだったのだろう。あるいは、デリカシーがないという発言を撤回させるための言葉だったのかもしれない。
でも、それこそがデリカシーのない発言だということに、彼はきっと気付いていない。
「素顔を褒められて、嬉しくないって言ったら嘘になるけど、化粧をしている時と遜色ないとまで言われると……個人的には、複雑なんだよね」
素顔を褒められた方が嬉しいと感じる人もいるのかもしれない。でも、私はそうじゃない。
「だって、私が化粧をするのは、もっとかわいくなるためだから。もっと綺麗になるためだから。それなのに、化粧をしていない状態と同じくらいとか言われると……『お前の努力に意味はない』って言われるような気分かも」
「それは……ごめん」
「いいよ。私も、そこまで重く受け止めているわけじゃないし。そういうものだって、わかっているつもりだから」
ただ、好きになるならそういうところまで気を遣えるような、私のことをわかってくれるような人だと思ってた。そう言いたかっただけだから。
「なら、俺はとことん加蓮の好みからは離れているってことになるな」
「そうなるかもね。残念?」
「多少は」
「多少ね」
その言葉が強がりなのかどうか。推測することはできるけど、声の調子だけでは判別できない。私が何を考えているのか、今の彼にはわからないように。
17Res/18.02 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20