6: ◆bncJ1ovdPY[saga]
2018/04/01(日) 23:55:56.44 ID:ZQSaMPV50
「そ、その……ね……」
「ん、どうかしたの?」
「鞄の中の……見ちゃった、の……」
「え、何を……」
杏奈があまりに普通じゃない顔をしているからか、分かりやすく狼狽える百合子さん。
そう、杏奈の考えた悪戯はーー
「……ちょっと……えっちな……やつ……」
「……あ、あー……え……?」
本が大好きな百合子さんなら、「そういう本」の一冊や二冊持っていてもおかしくない。
勿論事務所に持ってきてるとは思わないけど、「中を覗いたら入ってた」ということにすれば間違って持ってきたと思い込むはず……。
「そ、その……杏奈……驚いただけ、だから……。百合子さんも、そういう本……読むんだな、って……」
「ち、違うの杏奈ちゃん!あれは……そ、そう!来る途中で押し付けられて……」
「百合子さん……嘘吐くの、下手……」
「う……」
弁解しようとする百合子さんの顔が、絶望に染まっていく。
それを見ているのが楽しくて、ネタばらしはもう少しだけ遅らせることにした。
これが杏奈の考えた嘘。入っていた本を覗き見てしまったことにして、間違って持ってきたと思わせる。
そもそも「そういう本」を持っていないと成り立たないけど……案の定、百合子さんは既に持っていたみたい。
「あ、そういうの持ってるのが……おかしいとかじゃ、なくて……」
「うぅ……嫌いになったよね……あんな本、読んでるなんて……」
「え、えっと……嫌いになんて、ならないよ……?」
当然百合子さんの読んでいる「そういう本」の中身なんて知らなくて、どんな内容なんだろうって気になってしまうけど……。
会話が終わってしまうと意味がないし、そろそろネタばらしかな……。
「ごめんね……気持ち悪いよね……私、あっち行ってるね……」
「あ……百合子、さん……」
ーー杏奈を避けるように、離れていってしまった。
ネタばらしをするタイミングを失ってしまって、「ちょっとやりすぎたかな……」とちょっとだけ後悔。
百合子さんが事務所の扉を開けて出ていったのを確認して立ち上がり、追いかけるように事務所を出た。
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