高垣楓「君の名は!」P「はい?」
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28: ◆PL.V193blo[sage]
2018/04/18(水) 23:36:12.71 ID:hD9nuK1M0

「――――あ、せんせぇだ!! せんせぇーーーー!!!!」

場にカンと日差しが射すような、底明るい声だった。

「おー!」

男の表情は、その声の方向にぱっと明るんだ。
声とともに走り掛かってきた子を受け止めると、次々に子供らが駆け寄って来る。たちまちに腕やら背中やらにへばりついて鈴なりになった。

「あーせんせぇ! 川島せんせいの事泣かしたの!?」
「ケンカはダメでごぜーますよ! ケンカはダメだってせんせぇがいつも言ってやがるじゃねーですか!」
「いやいや。川島先生は偉い武士じゃ、武士が人前で泣くはずがなかろ。先生はな、心の汗を出しておられたんじゃ」
「心の汗は目から出るですか?」
「そうよ。薫も仁奈も大人になったら目から心の汗が出るんじゃぞ」
「そっかー!!」

男は子供らの目線に膝を付き、愚にもつかぬ冗談でからからと笑っている。
新撰組では、目上の隊士を「〜先生」と呼ぶ慣習があった。川島や彼も古参の隊士からしばしば先生と呼ばれるから、子供らもそれを真似して先生と呼ぶようになった。
もっとも、子供らが男を先生と呼ぶときの響きには、なにかそういうおしきせの決まり事ではない、寺子屋の先生や若い父親を呼ぶような、自然な親しみを含む響きがあった。
子供は概して子供好きの大人になつくものだから、そういうことかも知れなかった。

「なーせんせー、剣術教えてくれよ。せんせーは実は物凄えつえーんだって、こないだ見舞いに行った時に、沖田せんせーが言ってたぜ」
「晴ぅ、お前はもっと女子らしゅうせい。嫁の貰い手が無くなるだろうが」
「っ……お行儀よく嫁入り修行なんてしてるばあいかよ! 薩長のやつらはすぐそこまで来てんだぜ!」

げしげし、とかかとを蹴っていた少女が、頭をがしがしと撫でられると、しばし撫でられた後に、びしっ、と拳を勇ましく向けた。


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