10:名無しNIPPER[saga]
2019/12/06(金) 23:28:08.35 ID:o9kFpOMF0
ありがたい。メロスは馬のように大きな胴震いを一つして、すぐにまた部屋を急いだ。
一刻といえども、むだには出来ない。陽は既に西に傾きかけている。
ぜいぜい荒い呼吸をしながら階段をのぼり、のぼり切る途中で、ほっとした時、突然、目の前に一家の大黒柱(父親)が躍り出た。
「待て」
「何をするのだ。私は陽の沈まぬうちに部屋へ行かなければならぬ。放せ」
「どっこい放さぬ。お前は家族の恥だ、警察に突き出す」
「私には、なろう作家となろう小説をバカにする以外、何も無い。たった一つの命(アカウント)も、これから王にくれてやるのだ」
「その、アカウントが欲しいのだ(もう恥をかきたくない)」
「さては、なろう王の命令で、ここで私を待ち伏せしていたのだな」
父親は、ものも言わず掃除機の吸引棒を振り挙げた。
メロスはひょいと、からだを折り曲げ、飛鳥の如く父親に襲いかかり、その掃除機の吸引棒を奪い取って「気の毒だが正義のためだ!」と猛然一撃、たちまち、父親の股間を吸引し、あばばばばばば、と叫ぶ父親に哀れみの目を見せ、さっさと階段を上った。
一気に階段を登ったが、流石に疲労し、窓から午後の灼熱の太陽がまともに、かっと照って来て、メロスは幾度となく眩暈を感じ、これではならぬ、と気を取り直しては、よろよろ二、三歩あるいて、ついに、がくりと膝を折った。
立ち上る事が出来ぬのだ。くやし泣きに泣き出した。
ああ、あ、警官を振り切り、父親の股間も撃ち倒し韋駄天、ここまで突破して来たメロスよ。
なろう小説がくだらないことを知っている真の勇者、メロスよ。
今、ここで、疲れ切って動けなくなるとは情け無い。
ヲタ友は、おまえを信じたばかりに、やがて職場で殺されなければならぬ。
おまえは、稀代の不信の人間、まさしくなろう王の思う壺つぼだぞ、と自分を叱ってみるのだが、
全身も股間も萎えて、もはや芋虫ほどにも前進かなわぬ。
階段を上り切って部屋まで数メートルのところにごろりと寝ころがった。
身体疲労すれば、精神も共にやられる。もう、どうでもいいという、勇者に不似合いな(というか元々)不貞腐れた根性が、心の隅に巣喰った。
私は、これほど、なろうを卑下するために努力したのだ。
約束を破る心は、みじんも無かった。
神も照覧、私は精一ぱいに努めて来たのだ。動けなくなるまでなろうをバカにして生きたいのだ。
私は文学の徒では無い。けど私でも書けるようなくだらない小説は認めない。
ああ、できる事なら私の胸を割って、偽りもない正義の輝きを放つ真紅の心臓をお目に掛けたい。
愛と信実の血液となろうへの憎しみだけで動いているこの心臓を見せてやりたい。
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