1:名無しNIPPER
2020/02/04(火) 00:51:56.48 ID:WiWOK0yq0
※間に合わなかった飛鳥誕生日SSです。
午前5時。
柄にもなくこんな時間に目が覚めたのは、昨日の疲れのせいだと思う。
昨日はいつになくレッスンが厳しく、ヘトヘトになった身体は安息を求めて寮のベッドに飛び込んだ。
確か仮眠を取って眠気目を擦って夕飯を取ったっけ。
食べた夕飯の内容も覚えておらず、そのままベッドに再度飛び込んで……今に至るわけだ。
記念すべき日の境目を寝て過ごしたというのは少しもったいないと感じつつ。
手元に置いていたスマートフォンを手に取ると、眠気を覚ますほどの大量の通知。
一件目に映るのは……まさかの志希だった。
SSWiki : ss.vip2ch.com
2:名無しNIPPER
2020/02/04(火) 00:52:53.74 ID:WiWOK0yq0
コンマ1秒ずれることなく、0:00:00にメールが届いている。
タイトルは簡潔に「おめでとう」、だけ。
志希らしくもあり、らしくもないようなこそばゆいメールだ。
そのメールを見て思う。
3:名無しNIPPER
2020/02/04(火) 00:54:32.15 ID:WiWOK0yq0
早過ぎる時間に何をするか考える。
もう一度寝る?悪くない、まだ少し微睡んでも問題ないだろう。
メールを見る?それもいい、誕生日を祝ってくれている仲間の声を今すぐにでも読んでみたい。
今したいのは……後者。
ベッドで体勢を変えて、スマホを覗き込むようにして……。
4:名無しNIPPER
2020/02/04(火) 00:55:13.30 ID:WiWOK0yq0
彼はボクが寝ている間もアイドル達のコールを真摯に受け止めたのだろう。
そしてボクが目を覚ましたのを見て、力尽きたわけだ。
そう考えるならそのタイミングも許せるかな、と思案する。
寝起きで思考が緩んでいるのがよくわかる。
普段ならこんな考え方はしないはずだから。
5:名無しNIPPER
2020/02/04(火) 00:56:08.92 ID:WiWOK0yq0
そしてボクはコートまで着込んで、自分の部屋どころから寮から出て歩いていた。
目的はない。スマホだってない。エクステだってつけてない。
ポケットに小銭だけ入れて、やっと道路が見えるほどに明るくなった道を歩く。
誕生日という特別な日だからこそ、と意味もなく誕生日の朝の道を行く。
6:名無しNIPPER
2020/02/04(火) 00:56:50.31 ID:WiWOK0yq0
つい気分が乗って、気が急いて歩く足取りも軽くなる。
どこに行くかも決めてない、多分コンビニか公園止まり。
いつもの道の、いつもの店の、いつも歩いた道であっても。
今は、特別な感じがして−−−−−−
7:名無しNIPPER
2020/02/04(火) 00:57:29.87 ID:WiWOK0yq0
急に現実に戻されたような、足が地についたような感覚がして、ついは足元を見る。
連れていた子犬はこちらを見るに舌を出して上機嫌だ。
挨拶もほどほどに別れて、また一人の時間に戻る。
けれど一度戻った現実感は拭えるものではなくて。
8:名無しNIPPER
2020/02/04(火) 00:58:31.49 ID:WiWOK0yq0
「いらっしゃいませー」
最寄りのコンビニ、いつものお店。
品揃えは昨日見たところからは週刊誌が入ったくらいしか変わらなくて。
9:名無しNIPPER
2020/02/04(火) 00:59:30.43 ID:WiWOK0yq0
結局何も買わずに、近場の公園の自販機に小銭を入れる。
公園には誰もいない……ということもなく。
『日課』のランニングをしている人達、
『いつもどおり』犬と休む人達、
そしてそれをベンチに座って見ているだけのボク、だ。
10:名無しNIPPER
2020/02/04(火) 00:59:59.34 ID:WiWOK0yq0
誕生日を迎えたのだから、先に進んだのだから、飲めるかもなんて考えたブラックコーヒーは相変わらず苦くて。
口に入れたコーヒーをなんとか飲み込んで、改めて周りを見る。
周りはいつもどおりで代わり映えのしない日常で。
平日で、学校で、会社で。
11:名無しNIPPER
2020/02/04(火) 01:00:30.50 ID:WiWOK0yq0
何かを求めて外に出て出た自分が急にちっぽけに見えてきて。
特別な時になることを期待して空を見た自分が矮小に見えてきて。
変わらない日常の光景を嫌だと思っている自分を認識してしまっていた。
12:名無しNIPPER
2020/02/04(火) 01:01:26.87 ID:WiWOK0yq0
誕生日であっても、特別な日であっても、他の人には当たり前の日々であることを痛感して、道を歩く。
寮につけばまだ起きるには早く、むしろ寝直す時間すらあるくらいだった。
部屋につけば充電も終わっているだろう。メールを見れば特別な気持ちを味わえるかもしれない。
でも、それよりも寝直して一日をやり直したい気分だった。
13:名無しNIPPER
2020/02/04(火) 01:02:43.16 ID:WiWOK0yq0
驚くこともないほどの音に呆気に取られて前を見ると、
そこには
「誕生日おめでとう」
14:名無しNIPPER
2020/02/04(火) 01:04:23.23 ID:WiWOK0yq0
確かに外に出る時は意気揚々と出たものだから、静かに開けるなんてしていなかったかもしれない。
そして窓から外を見たらボクを見た……と。
「ふふふ、我が盟友よ。この生誕の時を1番に祝ったのはこの魔王ぞ!」
15:名無しNIPPER
2020/02/04(火) 01:05:59.11 ID:WiWOK0yq0
礼を言うととても嬉しそうに頷いて、寮の奥へと歩いていく。
みんなが使う広間。
そこおいてあるホワイトボードには『今日の主役!』とデカデカとボクの名前が書いてあって。
思い思いのメッセージが名前を囲むようにして描かれている。
その一つ一つが読めば誰が書いたかなんて一目瞭然で、つい口元が緩む。
16:名無しNIPPER
2020/02/04(火) 01:07:41.18 ID:WiWOK0yq0
朝日が入り込む広間で二人でメッセージを読みながらみんなが起きてくるのを待つ。
何もないし、今日は学校だ。授業もあればレッスンだってあるだろう。
でも祝ってくれる友人が隣にいて、この先もまた増えてくれるなら。
やっぱり今日は特別な日なのだろうと思える。
17:名無しNIPPER
2020/02/04(火) 01:08:43.62 ID:WiWOK0yq0
メッセージの主がどんな言葉をくれるだろうと考えていると。
蘭子がボクの肩を叩いて、少し照れ臭そうに。
「バ、バレンタインの練習で……チョコケーキがあるから。みんなが起きる前に……誕生日ケーキ……一緒に食べよ?」
18:名無しNIPPER
2020/02/04(火) 01:12:27.97 ID:WiWOK0yq0
というわけで間に合わなかった飛鳥誕生日SSでした。
誕生日って特別な感じしていいですよね。
でも他の人からすると日常なんです。
依頼だしてきます。
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