高森藍子が一人前の水先案内人を目指すシリーズ【ARIA×モバマス】
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20: ◆jsQIWWnULI
2020/08/08(土) 19:09:22.65 ID:b+VIQ/E60
高森藍子「水没の空・雨雲の街」


前略

今日はとてものんびりしています。

事の始まりは朝でした


いつも通り制服に着替え髪の毛をセットし終わると、私は二階のダイニングに向かった。火星の朝。いつもならアイさんがキッチンで朝食を作っている音がするけれど、今朝は静かだ。二階にアイさんの姿が無かったので、そのまま一階へと続く階段を下りる。そして、じゃぼんという音がした。

「はへ?」

そして靴下が、思いっきり水たまりに飛び込んだみたいに水を吸収する感覚。

「えええっ!?」

私は前代未聞の体験におののきながら、踵を返し階段に戻る。数段昇ると、そこはいつもの階段だった。

「何が起きてるの……?」

私がそうつぶやくと、階段を覗くアイさんの顔が見えた。

「ア、アイさん!」

私は思わずすがるような声を出す。アイさんはニヨニヨ顔で私を見ながら口を開く。

「おはよう、藍子ちゃん。目はばっちり覚めた?」

「……はい、これまでないほどに」

「それは良かった。藍子ちゃんにびっくりしてほしくて、昨日の夜言わなかったんだよね」

アイさんはそう言って嬉しそうに笑う。

「な、何をですか……?もしかして、この浸水現象、アイさんがやったんですか?」

私はアイさんに尋ねた。アイさんが会社を水浸しにしてまで私を驚かせようとするいたずら心があったなんて思わなかった。私の言葉に、アイさんは笑いながら返す。

「違う違う。この浸水現象はね、アクア・アルタって言うの」

「アクア……アルタ……?」

私はアイさんの言葉を反芻する。

「そう。毎年この時期に起こる高潮現象のことをアクア・アルタって言うの。南風と潮の干潮に気圧の変化が重なって起きるんだって」

「へぇ〜……」

なるほど。その影響で、海辺に会社がある我がARIAカンパニーにも潮が満ちてきたというわけですね。

「アクア・アルタの間は街の機能がほとんどマヒ状態になるから、この時期はみんな家でゆっくりするんだ」

「そうだったんですね……」

「うん。街と海の境がなくなってるから、ゴンドラにも乗っちゃだめだよ。乗り上げちゃうと危ないから」

「そうなんですね……わかりました!」

アイさんの言葉に私はしっかりと返事をする。

「いや〜、それにしても。藍子ちゃんの驚いた顔、可愛かったよ」

アクアアルタについての説明が終わると、アイさんは再びニヨニヨ顔に戻ってそう言った。

「ア、アイさんっ!」

私は恥ずかしくなって、思わずアイさんの腕をとる。

「昨日のうちに浸水しそうなところにあったものを全部一人でどかすっていう重労働があったけど、藍子ちゃんのびっくりした顔が見れただけで帳消しされたよ」

「も、もう……言ってくれたら手伝ったのに……」

「それじゃあ、驚いた顔が見れなくなっちゃうじゃない」


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