高森藍子が一人前の水先案内人を目指すシリーズ【ARIA×モバマス】
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◆jsQIWWnULI
2020/08/08(土) 19:19:38.63 ID:b+VIQ/E60
「そういえば、さっきの亜子さんって、どういう人なの?」
食堂でご飯を食べて大浴場でお風呂に入った後、あずきちゃんの部屋でおしゃべりをしていた。あずきちゃんに貸してもらった和服風のパジャマは、あずきちゃんの匂いが少しした。
「亜子さん?亜子さんはね、自称ネオ・ヴェネツィア一お金の管理が上手い事務員さんだよ。本当に一番うまいのかどうかはわからないけど」
「へぇ〜。じゃあ、支店長さんは?」
「支店長はねぇ〜。新・水の三大妖精の一人で、姫屋支店の店長で、私の先輩の先輩、かな」
「水の三大妖精?」
聞き慣れない単語が聞こえたので、私はあずきちゃんに質問した。
「そ。ネオ・ヴェネツィアにいる水先案内人の中でも実力・人気共に抜きんでてる存在のことを三大妖精って言ってるんだけど……。なんで支店長がそう言われてるのか、私にはさっぱりだよ」
「あ、あははは……」
「先輩もめちゃくちゃ厳しいけど、支店長は先輩よりも厳しいし、すぐに制服直せって注意してくるし……」
「……」
「あずき、支店長に嫌われてるのかな……」
「……」
いつの間にか夜深くまで来ていた。時刻はすでに丑三つ時。外から雨の降る音は聞こえなかった。私は少し重くなった空気を入れ替えるために窓を開けた。
「わぁ……綺麗……」
窓を開けると、そこには凪いだ水面に映し出された、もう一つの夜空があった。それはまるで、世界が鏡みたいに反転してしまったかのように見えた。地面に空があって、空に街があるみたいな。そんな不思議な景色。
「ほら、あずきちゃん。綺麗だよ」
「……うん」
先ほどの話の流れで少ししょんぼりしているあずきちゃんを窓辺に誘う。あずきちゃんはゆっくりと膝を擦りながらこちらにやって来た。
「……ね?綺麗でしょう?」
「……うん。綺麗……」
あずきちゃんの顔が、窓の外を見る前よりも少し明るくなった気がした。
「……私ね、支店長さんがあずきちゃんのことを嫌ってるとは、思えないな」
「え?」
「だって、私、さっき支店長さんに言われたの。あずきちゃんと仲良くしてねって」
「……」
「それって、嫌いな相手のためには言わないんじゃないかな?」
「……でも……」
「もちろん、支店長さんがあずきちゃんを厳しく叱ることがあるかもしれない。けど、それって愛情の裏返しなんじゃないかな。あずきちゃんに期待しているからこそ、厳しく指導してるんだと思う。どうかな?」
「……そうなのかな」
「うん、そうだよ。支店長さんも亜子さんもあずきちゃんの先輩も、もちろん私も、あずきちゃんのことが好きなんだよ」
「……うん、そうだね!」
あずきちゃんの顔がパッと明るくなった。
「さっ、あずきちゃん。もう夜も遅いから寝よう?」
「うん」
それから私たちは横になった。
「おやすみ、藍子ちゃん」
「おやすみなさい、あずきちゃん」
少しだけ空いた窓の隙間から、優しい月明かりが部屋を包む。その明るさは、不思議と私たちを眠りに誘っていった。
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