18:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 21:02:16.34 ID:u50g9+A20
私はそんな二人を横目に、書類に目を通す。これからのスケジュールや予定が簡素にまとめられていた。
基本的に『レッスン』の繰り返し。『ボイスレッスン』『ダンスレッスン』『ビジュアルレッスン』。
変わり映えのしない言葉が続いていたけど、最後の項目に『打ち合わせ(未定)』という文字があって、私はドキリとした。
「プロデューサー、この打ち合わせって」
「え、ああ。デビューシングルの打ち合わせ」
「奏さんが、デビューですか?」
パッと文香の表情が明るくなる。自分の事を知らされた時より喜んでいるみたいで、私にはおかしかった。
「んー、まあ」
でもなんだか、プロデューサーは素気なかった。喜ばないのは、自分の立場を考えて敢えて感情を出さないようにしているのか。
正直、つまらなかったけど、そのかわり、文香が喜んでくれたからプラスマイナスは0、と考えていいだろう。
「凄いです、奏さん」
「ありがとう。でも、文香もきっとすぐよ」
「いえ……私なんてまだまだで」
「それは文香次第だよ。今みたいにしっかり出来るなら、奏と同時期デビューだって夢じゃないかも」
プロデューサーは御世辞をいうタイプではない。素っ気ない口ぶりは、返って真実味が増していた。
「そんな……私が、デビューだなんて」
「あら、何の為にこの事務所に来てるのか忘れたの? アイドル候補生さん」
「それは……」
「奏の言うとおりだよ。アタシがスカウトしたんだから、胸を張って。貴方は立派な、アイドルの原石なんだから」
素っ気ない癖に、うちのプロデューサーは妙に自信がある人だった。
85Res/117.90 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20