4:名無しNIPPER
2022/06/22(水) 12:52:39.36 ID:Tm5B+AGi0
提督「――吹雪」
吹雪「はいっ。おにぎりですね」ゴソゴソ
冬月「ぐっ。そんなもの……! どうせ金にあかせた悪趣味な代物だろうっ」
提督「ふっ。いいや、そんなことはせんさ。貴様が嫌がる様な事は特に、な。これはただの麦を混ぜた握り飯だ」
吹雪「そうですよ〜。お米も麦も、それから具のカボチャのお漬物も、スーパーで買って来た普通のものを使ってます」
提督「ど、いうわけだ。安心して喰らうがいい」ア〜ン
冬月「ん……はぐっ」
冬月「んぐっ、むぐむぐ……」
提督「……どうだ?」
冬月「…………んくっ」
冬月「……た、たしかにこれは……高級食材は使っていない」
提督「だろう? さあおかわりだ」
冬月「もぐ……塩味で……お米がほろりと口の中でいい具合に解けて……」
冬月「ああ、具も美味いな。カボチャがハリハリとしていい具合に固く、それでいて漬け過ぎず、きちんと味が染み込んでいる」カリッカリッ
冬月「甘い……懐かしい味だ」
冬月「心が安らぐ……」
提督「んっん〜〜? 今なんと言った?」
冬月「はっ! ち、違うっ!!今のはただ……」
提督「いいや、違う。そこではない。お前は勘違いしている」
冬月「なにっ!?」
提督「言っただろう。私の目的は貴様をイモに染め上げることだと」
冬月「まさか……」
提督「美味かったんだよなぁ」ニチャァ
提督「懐かしい味だったんだよなぁ」
冬月「ま、惑わすようなことを言うなっ! これはカボチャだっ! 間違いなくカボチャで出来ている漬け物であって、イモなんて入る余地はないっ!! 麦飯にだって、イモはひとかけらも入っていなかった!!」
提督「ああ、その食材自体にはイモは使われていないさ」
冬月「なら私の体にイモの汁どころか細胞ひとつたりとて侵入させてはいない! ふざけたことを――」
提督「そのカボチャの漬物は、ぬか床ならぬイモ床の漬物だからなぁ!!」
冬月「なにぃぃっ!?」
提督「福島県会津地方の郷土料理でな。麹が手に入りにくかった時代に廃棄されるようなジャガイモを使って床を作ったのだ」
提督「すると乳酸菌発酵をしないからか酸味が少なく、でんぷんの淡い甘さが沁み込んだ、なかなかどうして味わい深い漬物に仕上がったというわけだよ」
冬月「そんな……そんな……」
提督「確かにお前はジャガイモをまったく侵入させてはいないかもしれない」
冬月「やめ、いわないでくれ……」
提督「だがお前は間違いなくジャガイモ翌料理を食って、しかも美味いと言っていたのだぁぁぁっ!!」
冬月「いやぁぁぁっ!!」
冬月「違うっ!! 私が美味しいと思ったのはカボチャだったからであって、断じてジャガイモのおかげではないっ! だけど……だけど……」
提督「だけど、なんだ?」
冬月「――くっ」
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