【ぼざろSS】あなたの温度
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15:名無しNIPPER[sage saga]
2023/01/07(土) 14:11:47.05 ID:FRtckmfc0
「ひとりちゃんが書く歌詞ね……」
(えっ……ダメ出しされる!?)
「ああ、ごめんなさい。けなすつもりじゃないの。本当にいいなって思うけど……」
「ほっ……」
「でも……私はひとりちゃんの想いとか伝えたいメッセージとか、ちゃんと聞いてくれる人に届けられてるのかなぁって……」
「……」
「ひとりちゃんの歌詞に、感情が載せきれていないんじゃないかって……最近すごく不安なの……」
 いつになく弱気な声で、悩みを打ち明ける郁代。
 郁代のこんな声を、ひとりははじめて聞いた。

「私とひとりちゃんって、やっぱり性格とか……違うでしょ。それは仕方ないことだと思うし、みんながみんな似た者同士である必要はないと思う……でも、ひとりちゃんが必死に考え出した歌詞を、何も考えずに歌っちゃう私って、なんなんだろうって……」
「喜多ちゃん……」
「歌詞が暗いって言われることもあるけど、それは大事な個性だと思う。リョウ先輩も、『誰かには深く刺さるんじゃないかな』っていつも言ってるし……でも、まずは私に刺さらなきゃ! 私の心に沁みて、私が本当に心から共感してなきゃ……誰の心にも響かない気がして……」
「……」
「ひとりちゃんが一生懸命考えた、ひとりちゃんの想いがたくさん詰まった、宝石みたいな歌詞だもの……届ける私がしっかりしなきゃ……」
 気づけばひとりは、郁代の手を握っていた。
 あの本屋の前で温めてくれた手。今日は何かとつなぎっぱなしの手。
 今はどちらかといえば、郁代の方が自分よりも冷たい気がする。
「ひとりちゃん……」
「……」
 郁代の悩みを解決する術は、すぐには思い浮かばない。
 けれど、少しでもその不安を解消してあげたかった。


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