10:第一話 『新鮮緑豆もやし200g 前編』[sage saga]
2011/12/04(日) 03:13:17.70 ID:AzEYozbn0
壁を見ても先輩の制服は掛かっていない。その代わりに赤と黒の二つのスカジャンが並んでハンガーに掛けられている。
何時間待てども、風呂場からバスローブ姿の先輩が現れる事はないだろう。
現実に帰れば淡い幻想など、いとも容易く打ち砕かれてしまうものだ。
そう、妄想の中ではサバの味噌煮弁当だった夕食も今は――。
「弁当? 著莪、お前にはこのスティックパンが弁当に見えるのか?」
普段なら、どん兵衛を買って腹を満たしているが、車が“不慮の事故”で壊れてしまった親父からの仕送りが激減してしまった。
その為、いまや安くなったスティックパンを齧りながら飢えを凌ぐのがやっとだ。
腹の虫は準備運動バッチリ! でも金が無いので半額弁当を手に入れることは不可能。
どんな苦行だよ。と、ため息を漏らしながら、黙々と齧りつく。ちなみに、この食習慣は一昨日から続いている。
9本あったパンも今では残り2本となって非常に危うい状況である。
しかも、パンを買った時点で残金が既に100円を切ったのだ。果たしてこの無期限連休を生き残れるのか……。
ああ――考えただけでも憂鬱になる。
そんな僕をよそに、著莪は仕事を終えた電子レンジから弁当を取り出し、蓋を開けた。
『から揚げニンニクスタミナ弁当』なんとも食欲をそそるネーミングだが、今置かれている状況では拷問にしかならない。
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